説明

触針式表面形状測定器用の探針交換用冶具

【課題】探針の交換を、支点を傷めずに、片手でワンタッチで行うことができる触針式表面形状測定器用の探針交換用冶具を提供する。
【解決手段】探針交換用冶具は、触針式表面形状測定器に下方から装着可能なハウジングを備え、ハウジングが測定器に装着された時に、測定器の第一支持部材2に接触して、第一支持部材2を下方から持ち上げて、支点用針5を支点支持面から離間させる押上面26aをハウジングに設け、ハウジングに、探針と共に測定器の第二支持部材を取り外す探針交換部材21を上下方向に移動可能に設け、探針交換部材21の上端に磁石22を配置し、ハウジングを下方から測定器に装着した状態において、探針交換部材21がハウジングに対して最上位置にある時に、磁石22で第二支持部材の高透磁率部材17を吸着し、そのままの状態で、探針交換部材21を下方に下げることにより第二支持部材を第一支持部材2から取り外すように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支点上でバランスする探針と変位センサで構成される触針式表面形状測定器の、探針の交換を簡単に行うための探針交換用冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
変位センサに差動トランスを用いた触針式表面形状測定器では、通常、支点で支持された棒状物の支点から離れた位置に探針と変位センサコアが接続され、試料表面での探針の上下の動きが変位センサに伝えられる(特許文献1:特開2006-226964、特許文献2:特開2009-20050参照)。
変位センサに伝えられる変位は例えば、デジタルシグナルプロセッサDSPを用いたデジタルロックインアンプにより低雑音で高精度に測定される。探針を試料に接触させるために、棒状物に設けた力発生コイルに電流を流し、探針を試料に押し付ける。
ところで、前記探針は消耗品であり交換が必要である。出願人は、探針を含む部品が、変位センサなどの構成体から外せるように構成された触針式表面形状測定器を提案している(特許文献3:特開2007-17296参照)。
図12及び図13は、出願人が提案した前記触針式表面形状測定器の一例の概略図であり、図中、符号51は棒状の第一支持部材を示している。この第一支持部材51はその中間部位に左右両横方向にのびる支点用針取付け部材52を備え、支点用針取付け部材52の両端には二つの支点用針53が取付けられている。これら二つの支点用針53は二つの支点受け部材54で支持され、それにより第一支持部材51は支点受け部材に支点用針53を介して揺動自在に支持される。第一支持部材51の一端には、変位センサ55の測定子すなわちコア56が取付けられている。この変位センサ55は探針の垂直方向変位に応じて電気信号を発生する差動トランスから成り、コイル57を備えている。
前記第一支持部材51の他端には、探針に針圧を加える針圧発生装置58のコア59が設けられ、針圧発生装置58はコイル60を備えている。コア59は、コイル60の中心から軸方向にずれた位置に配置した高透磁率部材から成っている。
また、第一支持部材51の下面には、二つの磁石61が埋め込まれている。これらの磁石61は、前記第一支持部材51における前記二つの支点用針53を結ぶ線を中心として、前後に配置されている。
図中、符号62は、棒状の第二支持部材でありその先端には探針63が下向きに取付けられ、他端は高透磁率部材64で構成されている。
上記した構成により、センサを構成する第一支持部材51に埋め込まれた磁石61が、探針63を備えた第二支持部材62の高透磁率部材64を引き付けて固定し、探針63を備えた第二支持部材62がセンサを構成する第一支持部材51から着脱可能になっている(特許文献3:特開2007-17296参照)。
出願人は、さらに、特許文献3において、触針式表面形状測定器の上下からアクセスして、複数の操作により探針63を備えた第二支持部材62を、第一支持部材51に着脱する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-226964
【特許文献2】特開2009-20050
【特許文献3】特開2007-17296
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出願人が提案している第二支持部材62を着脱する方法は、具体的には、触針式表面形状測定器の上方からアクセスして、第一の冶具70で第一支持部材51を持ち上げて、支点用針53を支点受け部材54から離すと共に、触針式表面形状測定器の下方からアクセスして第二支持部材62を第二の冶具71の磁石で吸着させて、下方に引き下げることにより、第一支持部材51から取り外すものである。
触針式表面形状測定器は、その支点用針の針先を傷めやすく、これを傷めると微弱な力での段差測定ができなくなる。従って、探針の交換時に支点用針の針先を傷めないようにしないといけない。出願人が提案した上記方法によれば、支点用針の交換時に第一支持部材51を上方から持ち上げて、支点用針53を支点受け部材54から離すので、支点用針の針先を傷めることなく探針の交換をすることができる。
しかし、触針式表面形状測定器はクリーンルームで使用されることが多く、クリーン手袋をした状態で探針の交換ができなければならないため、上記した従来の方法のように、触針式表面形状測定器の上下方向から個別の冶具を用いて複数の操作を行わなければならない方法では、触針式表面形状測定器及び冶具が小さいことも相俟って、クリーン手袋での作業が行い難い。
また、上記した従来の方法では、第一の冶具70で第一支持部材51を持ち上げ、かつ、第二の冶具71で第二支持部材62を引き下げなければならないので、これらの作業を行うために、触針式表面形状測定器のカバーを一度全て外さなければならないという問題もある。
本発明は、探針の交換を、支点を傷めずに、片手でワンタッチで行うことができる触針式表面形状測定器用の探針交換用冶具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明に係る触針式表面形状測定器用の探針交換用冶具は、探針と、探針の垂直方向変位を検出する変位センサの測定子と、探針に針圧を加える針圧発生装置の磁性体コアとを取付けた支持体を、支持体に設けられた支点用針の支点で支持し、前記支持体を、変位センサの測定子と針圧発生装置の磁性体コアとを一端及び他端に支持する第一支持部材と、探針を一端に支持する第二支持部材とで構成し、前記第一支持部材に前記支点用針を設けて、該第一支持部材を支点で支持し、前記第二支持部材の他端を高透磁率部材で形成し、第一支持部材に装着した磁石に第二支持部材の他端を吸着させることにより、第二支持部材を第一支持部材に固定するように構成された触針式表面形状測定器に用いられる探針交換用冶具であって、前記触針式表面形状測定器に下方から装着可能なハウジングを備え、前記ハウジングが前記触針式表面形状測定器に装着された時に、前記第一支持部材に接触して、第一支持部材を下方から持ち上げて、前記支点用針を支点支持面から離間させる押上面を前記ハウジングに設け、前記ハウジングに、探針と共に前記第二支持部材を取り外す探針交換部材を上下方向に移動可能に設け、前記探針交換部材の上端に磁石を配置し、前記ハウジングを下方から前記触針式表面形状測定器に装着した状態において、前記探針交換部材が前記ハウジングに対して最上位置にある時に、前記磁石で前記第二支持部材の高透磁率部材を吸着し、前記磁石で前記第二支持部材の高透磁率部材を吸着したままの状態で、前記探針交換部材を下方に下げることにより前記第二支持部材を前記第一支持部材から取り外すように構成したことを特徴とする。
また、本発明に係る探針交換用冶具は、前記探針交換部材の上下方向位置が、ハウジングに対して、最上位置、中間位置及び最下位置の三段階に移動可能にされ、第二支持部材の取り外し工程において、前記探針交換部材が最上位置にある時に、前記探針交換部材の磁石が前記第二支持部材の高透磁率部材に接触し、前記探針交換部材が中間位置にある時に、前記探針交換部材の磁石が、前記第二支持部材を探針交換用冶具のハウジング上に磁力で保持し、前記探針交換部材が最下位置にある時に、前記探針交換部材の磁石が前記第二支持部材から、該第二支持部材を解放可能な距離まで離間されるように構成され得る。
さらにまた、本発明に係る探針交換用冶具は、前記探針交換部材の上下方向位置を、ハウジングに対して、最上位置、中間位置及び最下位置の三段階に移動する操作棒をさらに有し、前記操作棒を、前記探針交換部材の上下方向位置を前記三段階に移動するために、前記探針交換部材に係止する最上面、中間面及び最下面の三つの面を有するように折り曲げた形状にし、前記操作棒を、左右に移動させることによって、探針交換部材が前記操作棒の最上面、中間面及び最下面に順次係止して、その上下方向位置が変えられるように構成され得る。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る触針式表面形状測定器用の探針交換用冶具は、触針式表面形状測定器に下方から装着可能なハウジングを備え、前記ハウジングが前記触針式表面形状測定器に装着された時に、前記第一支持部材に接触して、第一支持部材を下方から持ち上げて、前記支点用針を支点支持面から離間させる押上面を前記ハウジングに設け、前記ハウジングに、探針と共に前記第二支持部材を取り外す探針交換部材を上下方向に移動可能に設け、前記探針交換部材の上端に磁石を配置し、前記ハウジングを下方から前記触針式表面形状測定器に装着した状態において、前記探針交換部材が前記ハウジングに対して最上位置にある時に、前記磁石で前記第二支持部材の高透磁率部材を吸着し、前記磁石で前記第二支持部材の高透磁率部材を吸着したままの状態で、前記探針交換部材を下方に下げることにより前記第二支持部材を前記第一支持部材から取り外すように構成されているので、触針式表面形状測定器に対して下方からの作業だけで、支点用針を傷つけることなく、探針を備えた第二支持部材を触針式表面形状測定器から取り外し、かつ、取り付けることができる。よって、探針の交換作業が簡単になり、また、一方向からの作業だけで探針の交換を行うことができるので片手での作業が可能になる。さらに、本発明に係る探針交換用冶具は、下方からの作業だけで探針の交換を行うことができるように構成されているので、探針を交換するために触針式表面形状測定器を上方からアクセス可能に構成する必要がなくなり、よって、触針式表面形状測定器の構造も簡単化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】触針式表面形状測定器の概略内部構成図である。
【図2】ケース1の蓋部材1bを外して触針式表面形状測定器に下方から探針交換用冶具を取り付ける直前の状態を示す触針式表面形状測定器及び探針交換用冶具の横断面図である。
【図3】ケース1の蓋部材1bを外して触針式表面形状測定器に下方から探針交換用冶具を取り付ける直前の状態を示す触針式表面形状測定器及び探針交換用冶具の縦断面図である。
【図4】探針交換用冶具を触針式表面形状測定器に下方から取り付けた状態を示す触針式表面形状測定器及び探針交換用冶具の横断面図である。
【図5】探針交換用冶具を触針式表面形状測定器に下方から取り付けた状態を示す触針式表面形状測定器及び探針交換用冶具の縦断面図である。
【図6】探針交換用冶具の操作棒25を左側に動かして、探針交換部材21を「最上位置」まで上げた状態を示す触針式表面形状測定器及び探針交換用冶具の横断面図である。
【図7】探針交換用冶具の操作棒25を左側に動かして、探針交換部材21を「最上位置」まで上げた状態を示す触針式表面形状測定器及び探針交換用冶具の縦断面図である。している。
【図8】探針交換用冶具の操作棒25を右側に動かして、探針交換部材21を「中間位置」まで下げた状態を示す触針式表面形状測定器及び探針交換用冶具の横断面図である。
【図9】探針交換用冶具の操作棒25を右側に動かして、探針交換部材21を「中間位置」まで下げた状態を示す触針式表面形状測定器及び探針交換用冶具の縦断面図である。
【図10】探針交換用冶具の操作棒25を右側に動かして、探針交換部材21を「最下位置」まで下げた状態を示す触針式表面形状測定器及び探針交換用冶具の横断面図である。
【図11】探針交換用冶具の操作棒25を右側に動かして、探針交換部材21を「最下位置」まで下げた状態を示す触針式表面形状測定器及び探針交換用冶具の縦断面図である。
【図12】従来の触針式表面形状測定器の概略側面図である。
【図13】従来の触針式表面形状測定器の概略底面図である。
【図14】従来の探針交換用冶具の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下添付図面の図1〜図11を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る探針交換用冶具を用いる触針式表面形状測定器の一例を示す触針式表面形状測定器の概略内部構成図である。
始めに、触針式表面形状測定器の構成について説明していく。
図中、符号1はケースを示しており、このケース1は、下方が開放したケース本体1aとケース本体1aの下側に装着される蓋部材1bとから成る。
触針式表面形状測定器は、前記ケース1の内部に収容されている。
図中2は棒状の第一支持部材であり、この第一支持部材2はその中間部位に下方にのびるホルダー部3が形成されており、該ホルダー部3には、左右両横方向にのびる支点用針取付アーム4が一体に形成されている。支点用針取付アーム4の両端には、それぞれ支点用針5が取付けられている。これら二つの支点用針5は、ケース本体1aに形成された二つの支点受け部6で支持され、それにより第一支持部材1は、ケース本体1aの支点受け部材6に支点用針5を介して揺動自在に支持される。
【0009】
第一支持部材2の一端には、変位センサ7の測定子すなわちコア8が取付けられている。この変位センサ7は探針の垂直方向変位に応じて電気信号を発生する差動トランスから成り、コイル9を備えている。
また、第一支持部材1の他端には、探針に針圧を加える針圧発生装置10のコア11が設けられ、針圧発生装置10はコイル12を備えている。コア11は、コイル12の中心から軸方向にずれた位置に配置した高透磁率部材から成っている。
【0010】
また、第一支持部材1のホルダー部3の下部には、断面台形(図2参照)の長手方向溝13が形成されており、この長手方向溝13の両側壁は下方へ向かってテーバー状に開いている。ホルダー部3の底部(具体的には前記長手方向溝13の底面)には、二つの磁石14が間隔を開けて埋め込まれている。ホルダー部3に埋め込まれた二つの磁石14は、極性が互いに逆向きになるように配置されている。具体的には、長手方向溝13の底部の幅は約2mm、それの入り口の幅は約4mm、それの深さは約2mm、それの長さは20mmであり、また二つの磁石14はそれぞれ直径1.5mm、高さ1.5mmのネオジム磁石から成っている。また、各磁石14の端面はホルダー部3の長手方向溝13の底部の面より0.1mm奥に位置決めされている。
【0011】
図中、符号15は棒状の第二支持部材を示しており、この第二支持部材15は、その先端には探針16が下向きに取付けられ、他端は高透磁率部材17で構成されている。高透磁率部材17の長手方向の両端には上向きにのびるガイド突起18が形成され、これらガイド突起18の対向側面は上方に向って開いた傾斜面として形成され、各傾斜面の水平平面と成す角度は、ホルダー部3の長手方向溝13の両側壁が水平平面と成す角度に合わせられている。この高透磁率部材17の傾斜面は、ホルダー部3における長手方向溝13の両側壁の傾斜面と共に、第一支持部材2に第二支持部材15を取付ける際の互いの位置決めを確保すると共にガイドの役割を果たしている。
前記第二支持部材15の他端における高透磁率部材17は第一支持部材2におけるホルダー部3の溝13に嵌るようにされ、該第二支持部材15は、その高透磁率部材17がホルダー部3に設けられた磁石14によって保持されるが、その際に高透磁率部材17はホルダー部3の溝13の底面には接触するが、二つの磁石14には接触しないように構成されている。
【0012】
上述のように第一支持部材2におけるホルダー部3に埋め込まれた二つの磁石14は、その極性が逆になるように配置されているので、磁気双極子が離れた場所に作る磁場が小さくなり、変位センサ7、針圧発生装置10及び試料での磁場を小さくできる。また、この配置により磁石14の下部では磁力線が第二支持部材15における高透磁率部材17の中を通るので、その下方及び探針位置の試料での磁場が小さくなる。
【0013】
一端に探針16を備え、他端に高透磁率部材17を備えた前記第二支持部材15は、交換部品であり、定期的にホルダー部3から取り外されて新しい第二支持部材15に交換される。
【0014】
本発明に係る探針交換用冶具は、上記したように構成された触針式表面形状測定器に対して、蓋部材1bを外して下方から装着され、前記第二支持部材15の交換を行うために用いられる。
以下、図2〜図11を参照して、探針交換用冶具の実施の形態を説明していく。
図2及び図3は、ケース1の蓋部材1bを外して触針式表面形状測定器に下方から探針交換用冶具を取り付ける直前の状態を示す断面図である。図2は、二つの支点用針5を通る横断面図であり、図3は探針16と変位センサ7のコア8とを通る縦断面図である。
【0015】
探針交換用冶具は、蓋部材1bを外したケース1に対して、下方から取り付け可能な寸法を有する本体20から成る。
この本体20は、上下方向に移動可能な探針交換部材21を有する。この探針交換部材21は、直径2mm、高さ2mmの円柱形状のネオジウム磁石22と、該ネオジウム磁石22が上端に固定された円柱状部材23と、前記円柱状部材23の下端が固定されたコ字状部材24とから成る。前記ネオジウム磁石22の着磁方向はその高さ方向である。
前記探針交換部材21は、本体21に形成された上下方向に伸びる孔20a及び該孔20aに連通するように形成された溝20bに、前記円柱状部材23及び前記コ字状部材24がそれぞれ上下方向に摺動可能に嵌るように配置される。前記孔20a及び溝20bは、探針交換用冶具をケース1に取り付けた時に、そのネオジウム磁石22が第一支持部材2の長手方向溝13における二つの磁石14の中間に相当する位置に位置するように本体21に形成されている。
【0016】
前記コ字状部材24には、操作棒25が挿入されている。この操作棒25は、図2に示すように、本体21におけるコ字状部材24の高さ、即ち、探針交換部材21の高さを三段階に調整できるように折り曲げられており、この操作棒25を図2における左右方向に動かすことにより、探針交換部材21は操作棒25によって上方又は下方に押されて、「最下位置」「中間位置」及び「最上位置」の何れかの位置を採る。図2において符号25aは、探針交換部材21を「最下位置」に保持する「最下面」を、符号25bは、探針交換部材21を「中間位置」に保持する「中間面」を、符号25cは、探針交換部材21を「最上位置」に保持する「最上面」をそれぞれ示している。具体的には、最下面25aと、中間面25bとの間の距離は2mmであり、中間面25bと最上面25cとの間の距離は2mmである。
【0017】
さらにまた、本体21には、探針交換用冶具を触針式表面形状測定器に下方から取り付けた時に、触針式表面形状測定器における第一支持部材2のホルダー部3の下端面に接触し、第一支持部材2を上方に持ち上げる押上用突起部26が形成されている。突起部26における押上面26aの高さh1は、触針式表面形状測定器におけるケース本体1の底面から第一支持部材2のホルダー部3の底面までの高さh2に応じて決められ、具体的にはこの実施例では、h1はh2より0.5mm高くされ、これにより、探針交換用冶具を触針式表面形状測定器に下方から取り付けた時に、突起部26の押上面26aが第一支持部材2のホルダー部3の底面に接触して、第一支持部材2が0.5mm押し上げられる。これにより、第一支持部材2の支点用針5が支点受け部6から0.5mm持ち上げられることになる。
【0018】
前記突起部26には、探針交換用冶具を触針式表面形状測定器に下方から取り付けた時に、第一支持部材2の長手方向溝13と同じ方向を向き、かつ、前記長手方向溝13の真下に位置する長手方向溝27が形成されている。
この長手方向溝27は、その両側壁が上方に向かって広がるようにテーパー状に傾斜され、また、その底面27aは、探針交換用磁石部材21が挿入された孔20aに相当する部分より、それ以外の部分が若干高くされている。
具体的には、操作棒25によって探針交換部材21が「中間位置」に維持されている時に、ネオジウム磁石22の上端面より、長手方向溝27の底面27aが0.8mm高くなるように形成されている。
【0019】
以下、上記したように構成された探針交換用冶具の作用を図2〜図11を参照しながら説明していく。
図2及び図3は、上記したようにケース1の蓋部材1bを外して触針式表面形状測定器に下方から探針交換用冶具を取り付ける直前の状態を示している。
探針交換用冶具は、操作棒25によって、その探針交換部材21を最下位置に下げた状態で、下方から触針式表面形状測定器に取り付けられる。
図4及び図5は、探針交換用冶具が触針式表面形状測定器に完全に取り付けられた状態を示している。この状態では、突起部26の押上面26aがホルダー部3の底面に接触して、突起部26がホルダー部3、即ち、第一支持部材2を上方に持ち上げる。前記したように、突起部26における押上面26aの高さh1は、触針式表面形状測定器におけるケース本体1の底面から第一支持部材2のホルダー部3の底面までの高さh2より0.5mm高くされているので、第一支持部材2は0.5mm持ち上げられ、その結果、第一支持部材2の支点用針5が支点受け部6から0.5mm持ち上げられる。
図6及び図7は、探針交換用冶具の操作棒25を左側に動かして、探針交換部材21を「最上位置」まで上げた状態を示している。この状態で、探針交換部材21のネオジウム磁石22の上面が、第二支持部材15の高透磁率部材17の底面に接触する。この時、探針交換部材21の磁石22と第一支持部材2の磁石14の磁場の兼ね合いで、第二支持部材15の高透磁率部材17は、探針交換部材21のネオジウム磁石22に磁力で付く。
図8及び図9は、図6及び図7に示す状態から、探針交換用冶具の操作棒25を右側に動かして、探針交換部材21を「中間位置」まで下げた状態を示している。上記したように、図6及び図7に示す状態(即ち、探針交換部材21の「最上位置」)において、第二支持部材15の高透磁率部材17は、探針交換部材21のネオジウム磁石22に磁力で吸着されているので、第二支持部材15は第一支持部材2から離れて、探針交換部材21と一緒に下方に下がる。この状態から探針交換用冶具をケース1から外して下方に下げると、探針16が設けられた第二支持部材15が触針式表面形状測定器から外れる。
最後に、図10及び図11に示すように、操作棒25を、さらに右側に動かして、探針交換部材21を「最下位置」まで下げると、探針交換部材21の磁石22と第二支持部材15の高透磁率部材17との間の引き合う力は殆どなくなるので、探針16が設けられた第二支持部材15を探針交換用冶具から外すことができるようになる。
新しい探針を触針式表面形状測定器に取り付ける時には、探針交換用冶具の操作棒25を左側に動かして、探針交換部材21を「中間位置」まで上げた状態で、探針16が設けられた第二支持部材15の高透磁率部材17を探針交換用冶具の長手方向溝27に取り付ける。そして、そのままの状態で探針交換用冶具をケース1に下方から取り付け、取り付け後に、探針交換用冶具の操作棒25を左側に動かして、探針交換部材21を「最下位置」まで下げる。これにより、探針交換部材21の磁石22と第二支持部材15の高透磁率部材17との間の引き合う力は殆どなくなるので、第二支持部材15の高透磁率部材17は第一支持部材2の磁石14に引かれて、第一支持部材2に飛び付く。次いで、探針交換用冶具をケース1から取り外して蓋部材1bをケース本体1aに装着すれば探針16が設けられた第二支持部材15の交換は完了する。
【0020】
前記した触針式表面形状測定器及び探針交換用冶具は、作業者の片手の手の中に納まる程度の大きさである。探針交換用冶具の操作棒25は、二本の指で挟んで左右に動かすことができ、片手で全ての作業を終わらせることが可能になる。
【符号の説明】
【0021】
1 ケース
1a ケース本体
1b 蓋部材
2 第一支持部材
3 ホルダー部
4 支点用針取付けアーム
5 支点用針
6 支点受け部
7 変位センサ
8 コア(変位センサの測定子)
9 コイル
10 針圧発生装置
11 コア(針圧発生装置のコア)
12 コイル
13 長手方向溝
14 磁石
15 第二支持部材
16 探針
17 高透磁率部材
18 ガイド突起

20 本体
20a 孔
20b 溝
21 探針交換部材
22 ネオジウム磁石
23 円柱状部材
24 コ字状部材
25 操作棒
25a 最下面
25b 中間面
25c 最上面
26 突起部
26a 押上面
27 長手方向溝
27a 底面

51 第一支持部材
52 支点用針取付け部材
53 支点用針
54 支点受け部材
55 変位センサ
56 コア
57 コイル
58 針圧発生装置
59 コア
60 コイル
61 磁石
62 第二支持部材
63 探針
64 高透磁率部材
70 第一の冶具
71 第二の冶具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探針と、
探針の垂直方向変位を検出する変位センサの測定子と、
探針に針圧を加える針圧発生装置の磁性体コアと
を取付けた支持体を、
支持体に設けられた支点用針の支点で支持し、
前記支持体を、変位センサの測定子と針圧発生装置の磁性体コアとを一端及び他端に支持する第一支持部材と、探針を一端に支持する第二支持部材とで構成し、
前記第一支持部材に前記支点用針を設けて、該第一支持部材を支点で支持し、前記第二支持部材の他端を高透磁率部材で形成し、第一支持部材に装着した磁石に第二支持部材の他端を吸着させることにより、第二支持部材を第一支持部材に固定するように構成された触針式表面形状測定器に用いられる探針交換用冶具であって、
前記触針式表面形状測定器に下方から装着可能なハウジングを備え、
前記ハウジングが前記触針式表面形状測定器に装着された時に、前記第一支持部材に接触して、第一支持部材を下方から持ち上げて、前記支点用針を支点支持面から離間させる押上面を前記ハウジングに設け、
前記ハウジングに、探針と共に前記第二支持部材を取り外す探針交換部材を上下方向に移動可能に設け、
前記探針交換部材の上端に磁石を配置し、前記ハウジングを下方から前記触針式表面形状測定器に装着した状態において、
前記探針交換部材が前記ハウジングに対して最上位置にある時に、前記磁石で前記第二支持部材の高透磁率部材を吸着し、
前記磁石で前記第二支持部材の高透磁率部材を吸着したままの状態で、前記探針交換部材を下方に下げることにより前記第二支持部材を前記第一支持部材から取り外すように構成した
ことを特徴とする探針交換用冶具。
【請求項2】
前記探針交換部材の上下方向位置が、ハウジングに対して、最上位置、中間位置及び最下位置の三段階に移動可能にされ、
第二支持部材の取り外し工程において、
前記探針交換部材が最上位置にある時に、前記探針交換部材の磁石が前記第二支持部材の高透磁率部材に接触し、
前記探針交換部材が中間位置にある時に、前記探針交換部材の磁石が、前記第二支持部材を探針交換用冶具のハウジング上に磁力で保持し、
前記探針交換部材が最下位置にある時に、前記探針交換部材の磁石が前記第二支持部材から、該第二支持部材を解放可能な距離まで離間される
ように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の探針交換用冶具。
【請求項3】
前記探針交換部材の上下方向位置を、ハウジングに対して、最上位置、中間位置及び最下位置の三段階に移動する操作棒を設け、
前記操作棒が、前記探針交換部材の上下方向位置を前記三段階に移動するために、前記探針交換部材に係止する最上面、中間面及び最下面の三つの面を有するように折り曲げられ、
前記操作棒を、左右に移動させることによって、探針交換部材が前記操作棒の最上面、中間面及び最下面に順次係止して、その上下方向位置が変えられる
ように構成したことを特徴とする請求項2に記載の探針交換用冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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