言語障害者間の語音の認識を向上させるための方法および装置
【課題】言語障害者間の語音の認識を向上させるための方法および装置を提供する。
【解決手段】言語障害を有する個人の言語に対する認識を高めるように訓練するためのコンピュータ装置であって、聴覚刺激を生成するプロセッサと、前記プロセッサと結合し、前記個人に前記聴覚刺激を音響的に提示するスピーカーと、前記プロセッサと結合し、前記個人に実験環境を図式的に提示するディスプレーと、前記プロセッサと結合し、前記個人に前記刺激に対する回答を指定させる入力装置と、を備え、前記コンピュータ装置は、前記個人に刺激間間隔により分離された少なくとも2つの前記聴覚刺激を提示し、前記個人に前記少なくとも2つの聴覚刺激を区別し前記入力装置を介して前記区別を表示するように要求し、前記個人が前に提示された前記刺激を正しく区別する時に前記刺激間間隔を減少するように前記刺激の提示をN回反復する。
【解決手段】言語障害を有する個人の言語に対する認識を高めるように訓練するためのコンピュータ装置であって、聴覚刺激を生成するプロセッサと、前記プロセッサと結合し、前記個人に前記聴覚刺激を音響的に提示するスピーカーと、前記プロセッサと結合し、前記個人に実験環境を図式的に提示するディスプレーと、前記プロセッサと結合し、前記個人に前記刺激に対する回答を指定させる入力装置と、を備え、前記コンピュータ装置は、前記個人に刺激間間隔により分離された少なくとも2つの前記聴覚刺激を提示し、前記個人に前記少なくとも2つの聴覚刺激を区別し前記入力装置を介して前記区別を表示するように要求し、前記個人が前に提示された前記刺激を正しく区別する時に前記刺激間間隔を減少するように前記刺激の提示をN回反復する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間的な処理障害のために、言語障害のある人および言語に基づく学習不能症(L/LD)の人が、自分達の語音(スピーチ)聴取、語音作成、言語の理解および読書能力を改善できるようにするための、可聴周波音、特に語音の音の修正に関する。さらに、本発明は、語音および言語に基づいた学習不能症の人が、より正確により明瞭に基本的な語音要素および通常のつなげられた語音を理解できるように、自分の時間処理の欠損を克服するのを助けるための訓練法も含む。加えて、本発明は、健常者が、その母国語または外国語の訓練のどちらかで、その語音聴取能力を改善するのを助ける訓練法も含む。
【背景技術】
【0002】
最近の研究から、特殊言語障害(SLI)者および特殊読書障害(失読症)者は、自然の語音の中のある種の子音および子音−母音の組み合わせを認識し、区別することができないことが分かった。また、彼らには、聴覚語音を理解する上での問題から生じると考えられる書き言葉を理解する上での障害もある。この聴覚語音理解の障害の結果、読書技能の発達が遅れ、通常は不完全となる。研究により、語音聴取および読書能力取得でのこれらの問題点が、末梢神経の聴力または視覚の欠損の結果なのではなく、むしろ語音の急速に変化する構成要素を正しく認識するための脳の受容能力および認知能力のないためであることが分かった。
【0003】
例えば、L/LD者は、やや短い子音の音(1ミリ秒の数10分の1の長さ)を正しく識別したり、それらを結び付いた長い母音の音から確実に分離したりするのに困難をきたす。その結果、これらの人は、脳で母国語の基礎的な音声要素の確かな表現を作り出すことができない。その結果、障害者は、話された単語およびつなげられた語音の文字列の一意の音を正しく識別するのが困難であるだけではなく、たいていの場合それに関連して、正確に語音を明瞭に発音するようになるのに苦労する。さらに、障害者の、単語および長い語音文字列を正確に認識することに依存する認知能力は限られ、書き言葉を脳の聴覚語音の不十分な表現に認識して結び付ける能力が限られる場合がある。
【0004】
特に、子音の音には、通常、音周波数が上昇または下降するか、あるいは25ミリ秒以下から80ミリ秒以上まで継続する休止により遮られるように周波数変調済みの構成要素が含まれる。この上昇または下降する音周波数または子音の音の短い中断の後または前には、比較的に一定したまたはさらにゆっくりと変化するスペクトル内容を持ち、通常、数10ミリ秒から数100ミリ秒までの音長で伸びる母音の音が来る。L/LD(不全失語症または失読症)者の大半は、子音/b/および/d/の周波数変調済み構成要素が、(例えば、60から80ミリ秒以下の長さの)通常の音長の場合、(例えば、/ba/と/da/、または/ab/と/ad/などの)子音−母音の組み合わせを区別することができない。
【0005】
L/LDの基本的な時間処理欠損は、一般的には正常な語音聴取での連続する音声要素に関して発生するような、高速で連続で提示される音を識別するという失語症または失読症の患者の能力を試験することにより、確実に証明される。例えば、L/LDの児童または成人は、通常、それぞれが50ミリ秒の長さの2つの異なった連続する母音のような刺激の表示の順序を、それらが100ミリ秒を超える時間、またしばしば数100ミリ秒を超える時間で区切られない限り、正確に識別できない。対照的に、健常者は、このような刺激の提示の連続順序を、それらの音がすぐに連続する、つまり介在する刺激間時間間隙がない場合も識別できる。
【0006】
短い音長で、かつ速く連続する語音の構成要素の聴取でのこの根本的な問題の結果は、この時間処理障害による失語症および失読症であると診断された人が、学業の成就において同級生より2年から4年、およびおそらくそれ以上の年数の遅れをとる学校制度において容易に明白である。その結果、L/LD障害者は、一般的には、語音の認識および語音の作成に大きな重点をおいた補助的な専門的な訓練を必要とする。失読症患者は、同様に、読書の学習を助ける特殊訓練を受ける。特別な語音聴取、語音作成、および読書訓育は、通常、供給源があれば、これらの障害者の多くに対して初等教育および中等教育の全般を通して継続する。障害は、多くの場合、教育の打ち切りにつながり、一般的には障害を生涯のものとする結果となる。しかしながら、特殊教育ではある程度の成功が見られている。
【0007】
当初、60ミリ秒を下回る短音長の子音周波数変調のある/ba/および/da/のような子音−母音組み合わせの識別ができないこと、あるいは150ミリ以上で区別されていない限り単純な音響刺激の時間的な順序を識別できないことにより、この時間処理欠損のあるL/LD者を確認する方法が設立された。しかし、以前の訓練方法のいずれも、L/LDの根底にある時間処理欠損を克服する上で一貫して前向きの結果を示すことはなかった。この時間処理欠損を克服すれば、この障害を持つ人にとってさらに有益で、一般並みの生活が得られるはずである。
【0008】
最近の研究から、これらの語音および言語に基づく学習不能症は、脳による感覚情報の時間処理の欠陥に起因することが分かった。さらに、研究から、時間処理能力は健常者での強力な学習効果に依存していることも分かった。この時間処理学習の基礎となる基本的なプロセスはますますよく理解されてきている。
【0009】
L/LDに加えて、脳に損傷を受けた人も同様の症状を示した。特に、脳卒中を患った人またはそれ以外に脳の言語を支配する大脳半球の部分の損傷を受けた人は、一般的には、通常の子音の音を弁別する能力を失い、L/LD者の時間処理欠損に非常に類似した時間処理欠損を示す。L/LD者での場合と同様に、これらの失語症の人も、語音の要素が減速した形で患者に提示される場合には、語音の要素を正確に識別できる。
【0010】
老人も、これらの同じ試験により判断されるように、その時間処理能力において漸進性の悪化を示す。この悪化は、老人の語音聴取および一般的な認知能力に影響を及ぼす認知に基づいた欠損の一因となる。
【0011】
固有の環境での外国語の聴取または学習は困難であり、その言語が話される速度のため、健常者にとってもほぼ克服できない場合もある。その結果、外国語は丸暗記および反復練習問題により学習され、会話の速度は話される言語を理解する能力に釣り合って引き上げられる。固有の環境(つまり、その言語の自国内)で外国語を学習する人にとって、その外国語の話し手に「減速」するか、繰り返すように頼むことによる以外、定まった方法はない。この固有の環境で外国語を学習する上での問題点の多くは、入ってくる語音の音の、ある人の脳の中での高速な出来事の時間的な処理での認識の欠如に起因する。
【0012】
外国語の音素は英語言語と構造が異なるが、すべての話される言語の原理は不変のままである。すなわち、すべての言語は音素として知られる基本の音の構造体に分割することができる。学習されなければならない基本的な基礎単位を形成するのが、英語言語での子音−母音の音節/ba/および/da/のようなこれらの音素の認識である。L/LD者の場合でのように、外国語を学ぶ学生は、これらの音素を、それらが母国語の話し手により通常の要素音長および通常の要素シーケンス速度で提示される場合、確実に認識しない。L/LDでの場合のように、これらの音素は互いに正確に弁別することが可能で、語音が人工的に減速されると正しく認識することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、L/LD者において音素および結合した語音の認識を容易にするための方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明の第2の目的は、L/LD者において音素および結合した語音の認識を迅速かつ漸進的に改善するための訓練方法を提供することである。
【0015】
本発明の第3の目的は、学習練習を通じて達成される時間的な処理での変更を生成するために、通常の語音よりさらに強力な訓練信号を利用することである。
【0016】
本発明の第4の目的は、L/LD者を識別するために人口を調べる際の方法としてこの訓練方法の修正版を使用することである。
【0017】
本発明の第5の目的は、脳の話し言葉を支配する大脳半球に損傷を受け、その結果L/LDで記録されるような時間処理欠損が生じた人において、音素および結合した語音の認識、ならびに音素および結合した語音の認識を迅速および漸進的に改善するための訓練方法を提供することである。
【0018】
本発明の第6の目的は、年齢に関係してまたは病気に関係して語音の音の聴取に関する時間処理能力の低下を経験した人において、音素および結合した語音の認識、ならびに音素および結合した語音の認識を迅速および漸進的に改善するための訓練方法を提供することである。
【0019】
本発明の第7の目的は、外国語の学習において音素と結合した語音のさらに容易な認識を実現することである。
【0020】
本発明の第8の目的は、通常流暢に話す人において、学習能力および潜在的な認知言語運用を向上させるためにより良い高速の語音の音の時間処理を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一つの態様は、言語障害を有する個人の言語に対する認識を高めるように訓練するためのコンピュータ装置であって、聴覚刺激を生成するプロセッサと、前記プロセッサと結合し、前記個人に前記聴覚刺激を音響的に提示するスピーカーと、前記プロセッサと結合し、前記個人に実験環境を図式的に提示するディスプレーと、前記プロセッサと結合し、前記個人に前記刺激に対する回答を指定させる入力装置と、を備え、前記コンピュータ装置は、前記個人に刺激間間隔により分離された少なくとも2つの前記聴覚刺激を提示し、前記個人に前記少なくとも2つの聴覚刺激を区別し前記入力装置を介して前記区別を表示するように要求し、前記個人が前に提示された前記刺激を正しく区別する時に前記刺激間間隔を減少するように前記刺激の提示をN回反復する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1を参照すると、言語障害者(L/LD)の間での語音の認識を向上させるために本発明で使用するのに適切なコンピュータ・システムが図示されている。
【0023】
コンピュータ・システム10は、アップルやIBMまたはIBMと互換性のあるクローンの1つから入手できる従来の型のシステムから構成されるプロセッサ12から構成されている。プロセッサ12は、CD−ROM機能14および従来のフロッピー(登録商標)ディスク機能16を備えている。CD−ROMだけではなくフロッピー(登録商標)ディスク機能もサポートするために、適切なソフトウェアがプロセッサ12に搭載されている。
【0024】
プロセッサ12に加えて、カラー・フォーマットは本発明の2つの局面、つまりゲーム・プレイ面および訓練練習面を強化するが、色を表示できる場合もあれば、表示できない場合もある従来の表示端末管つまりVDT18が具備される。追加のVDTも具備されてよい。
【0025】
プロセッサ12に搭載される適切なソフトウェアによりサポートされるスピーカー20が具備される。スピーカー20に加えて、本発明を個々の人に私物化できるヘッドセット22がある。
【0026】
最後に、システムを対象つまり患者にとって有効なものとするために、記憶装置24が利用される適切なプログラムおよび適切なデータも記憶するために具備される。記憶装置24は、VDT18、スピーカー20およびヘッドセット22と同様、プロセッサ12に応答する。記憶装置24は、進歩報告を蓄積し、個々のユーザについての統計を作成するためにも使用できる。
【0027】
VDT18、スピーカー20およびヘッドセット22は、これ以降、システム内で一般的に使用される場合「出力」という。入力装置は、患者により活用されることもあれば活用されないこともあるキーボード26、および本発明全体で使用するのが適切であるマウス28を具備する。タッチ感知式スクリーン33は、マウスの代わりに使用可能で、特に若い児童らには有効である。最後に、L/LD者による語音作成の言語運用を評価する目的でさまざまな口音を記録したり、補助の言葉に関するプログラム資料の作成を助けるために、入力マイクロフォン30が具備されてよい。
【0028】
このシステムで訓練される患者の進捗について出力を行うために、プリンタ32も具備されることがある。
【0029】
プロセッサ12は、必ずしもシステムの一部ではないが、コンピュータ・ネットワーク内のホスト・コンピュータ34に対して周辺装置となる場合がある。ホスト・コンピュータ34は、図1に示されるように適切な周辺装置で複数のプロセッサ12を制御できる。10(b)、(c)、(d)および(e)のようなそれ以外のシステムは、事実上、システム10と本質的に同じである。例えば、さらなる修正により、それぞれのリモート・ステーションでプリンタを所有する必要がないように、プリンタがホスト・コンピュータの直接の制御下に置かれてもよい。
【0030】
前記コンピュータ・ハードウェアに加えて、このシステムを動作し、訓練プログラムを強化するためには、このシステムの運用で学生が使用するためにある種のオーディオ・テープレコーダーが必要となる。これらのテープレコーダーは図1で36および38として図示される。これらは、便宜上ホスト・コンピュータ34に接続されているが、テープレコーダーは独立とすることも可能で、その場合それ専用のヘッドセット36(a)および38(a)が具備されることを理解されたい。さらに、マイクロフォン36(b)および38(b)もテープレコーダーとともに具備される。したがって、テープレコーダー6および38は、ヘッドセット36(a)および38(a)に音声信号を提供するだけでなく、従来の方法でマイクロフォン36(a)および38(b)を通して入力を受け取ることもできる。テープレコーダーは、便宜上のためだけにホスト・コンピュータ34と結び付けて図示されるが、さまざまな試験、ゲームおよび本明細書中の訓練の様式で独立型とすることができる。
【0031】
コンピュータ・システム10は、適切な訓練プログラムを作成すること、および患者が自分の言語技能を練習するため、特に結果的に語音聴取または作成あるいはその両方での障害を生じさせる時間処理でのハンディキャップまたは欠損を克服するため、または通常の時間処理能力を向上させるための方法を提供することを目的とする。特に、コンピュータ・システム10は、異なる音を区別するために、学齢の児童、老人および外国語学習者を含むL/LDまたは健常者、あるいは失語症患者に媒体を提供するために活用される。例えば、CD−ROMに記録されるプログラムでは、5歳と10歳の間の若い児童らに、ゲームが提示され、その場合、コンピュータは訓練を提供するだけではなく、被験者の学生に褒美も与える。本発明で使用される例では、シーケンスは、道化師、動物、および類似物を示す音楽およびビデオ信号を、音声信号に対する背景として完備するサーカス・ゲームの周辺で作成される。
【0032】
図2は、訓練で利用される初歩的なゲームの1つとして提示される可聴周波音の例である。図2では、1つは上昇する周波数S1を伴い、もう1つは減少する周波数S2を伴う2つの異なる音声信号が、プログラムにより決定される刺激間間隔(ISI)をおいて一人の学生に提示される。図2の例で示されるように、信号S1およびS2は、連続して変化する。つまり、第1の提示では上昇する信号S1が先に聞こえ、減少する信号S2が後に続くが、第2の提示では、減少する信号S2の後に上昇する信号S1が続く。学生は、VDT18(図3を参照)に表示される2つのボックス40と42の間でカーソルを移動させることによりマウス28を活用し、回答するように求められる。
【0033】
例えば、大きくなる音はつねに左ボックス40で、小さくなる音はつねに右ボックス42となる。小さくなる音が先に聞こえた場合は、学生はカーソルを右側のボックスに移動し、右ボックスを「クリック」または触る。大きくなる音が先に聞こえた場合は、学生は左ボックスをクリックまたは触る。回答が正しい場合は、道化師が踊り、音楽が流れるか、なんらかの適切な視覚的な褒美が出される画面が表示される。
【0034】
複数回、例えば3回、正解が続くと、刺激間間隔が例えば200ミリ秒から195ミリ秒に短縮される結果となる。このような問題を、4週間から6週間の期間、一人のL/LDの児童に提示する場合に継続的な改善が示された。後述される実施した実験の結果でこれについてさらに多くのことが語られるだろう。
【0035】
患者は、いったん一定量の聴覚シーケンス試験を完了すると、同じまたは別のゲームのフォーマット内でVDT上の異なった種類の表示に移される。特に、停止子音/ba/および/da/のような音素識別を試験および訓練するための停止子音音節は、ゲームでのターゲット信号として使用される。訓練のこの部分は、さまざまな子音を区別する上で不全失語症の患者での共通した弱点を克服することを目的とする。例えば、2つの子音/ba/および/da/は、この状況ではきわめて頻繁に混同される。
【0036】
最初に、患者は前記と類似した方法で試験される。音素識別訓練では、患者は、ターゲット音素がシーケンスの中で最初に提示されたのか、2番目に提示されたのかを示すように要求される。例えば、まず、約500ミリ秒の長い刺激間間隔で音/ba/と/da/を区別することによる。訓練中、患者が音/ba/と/da/およびそれ以外の停止子音の認識で進歩を示すのに従って、ISIが短縮される。ただし、このシステムは、例えば、音素/ba/または音素/da/を採取し、高速で動作する子音または停止子音/b/と/d/をそれぞれ引き伸ばすことを想像する。通常の語音のパターンでは、これらの音素内の子音/b/および/d/は、約40ミリ秒から50ミリ秒で発生するが、文字「a」の続く母音の音は5倍または6倍の長さとなる場合がある。これらの音は図4に図表で表してある。患者のこれらの音の認識を高めるためには、音の子音部分、つまり/b/または/d/が約80ミリ秒に引き伸ばされるか倍増されると、患者は一貫して正確に音素を識別できることが判明している。初期の認識の欠如は、学習不能症を患う人での時間的処理における障害に起因すると考えられる。
【0037】
図5では、この引き伸ばされた子音の音が、母音の音長で相応の短縮を示し図示されている。母音の音の短縮は、訓練段階で達成される必要はないが、後述するように、学習不能症を患う人が、口頭であれ、映像であれ使用するための既存の記録を「写す」ことが必要となる場合には、記録の経過時間が変化しないように、「リアルタイム」で母音の音を切り捨てることが適切である。したがって、ある音素の一部の拡張は、話された単語の別の部分での同等な短縮により達成されなければならない。したがって、図5は、修正された音素の経過時間(240ms)が、図4に示される未修正の音素と同じであるこのような短縮を表している。元の音声情報を注意深く編集することにより、単語または文の間の静寂期間をある程度切り捨てることが可能となる場合がある。
【0038】
/ba/および/da/の識別あるいは同等な停止子音識別の試験は、前記に類似した方法で達成され、若い児童にさらに魅力的なものとするためにサーカスのようなゲームやそれ以外の文脈により達成できる。患者が指定された音長の子音の音で音素を正しく識別する能力の向上を達成するに従い、タスクは、停止子音音長を80msecから70msecに短くするなどによって、言語運用を改善させるためにさらに難しくすることができる。
【0039】
継続的な興味、多様性、および修正された語音の訓練資料での経験を提供するためには、言葉で表した資料が停止子音を伸ばすように修正され、修正された音が元のビデオ資料と一致させられる場合に、市販されている「ブック・オン・テープ("Books on Tape")」およびビデオゲーム、特に話内容が豊富な対話型CD−ROMを学習障害者も理解できるようになることが判明した。50%から100%の延長が適切であることが分かった。ビデオゲームでの場合のように、付属のビデオや動画グラフィックが存在する場合は、視覚的な資料も修正を必要としたり、音がリアルタイムの状況に適合するために補正圧縮を必要とする場合がある。この同じ手順は、速い子音が初期には適切に引き伸ばされる外国語の教授にも使用できる。
【0040】
延長に加えて、高速子音または停止子音を、例えば20dBそのエネルギーを増加することによって強調することも重要である。これにより、L/LDおよびそれ以外の時間処理障害を持つ人により非常に不完全に理解されるこれらの重大な語音の要素を学習するための相対的な特徴が強められる。この高速語音要素の差動増幅の時間エンベロープは、この高速子音または停止子音の要素語勢の第2の重要な変数である。
【0041】
試験の性質、本発明に関する訓練の性質、および既存の資料に対する必要な変更を簡略に説明したので、内容試験および訓練資料を作成したり、「ブック・オン・テープ」を写したり、あるいは既存のビデオゲームを修正し写すために使用できるソフトウェアに移ることが適切である。
【0042】
図6A〜6Dを参照する。図6A〜6Dのフローチャートは代表例にすぎず、本明細書中に図解されるような単独のプログラムよりはむしろ別々の増分で行うことができることを理解されたい。
【0043】
図6Aを参照すると、ユーザは、最初は、訓練資料を作成するべきか(記録専用−決定ブロック50)、「ブック・オン・テープ」を学習不能症の人が使用するために修正すべきか(音声専用−決定ブロック52)どうか、あるいはビデオゲーム付きのCD−ROMを修正すべきかどうか(マルチメディア−決定ブロック54)についての決定に直面する。前記のように、訓練資料は、例えば/ba/および/da/のような停止子音音素を含む。「ブック・オン・テープ」は、テキストの観点からは明瞭である。ただし、明確化するためには、学習不能症の人が、修正されない場合その人にとって分かりやすくない、修正済みの話された単語を理解できるように「ブック・オン・テープ」を修正することが適切であることが分かった。CD−ROMやマルチメディアにビデオゲームが含まれるのは言うまでもない。
【0044】
この場合に、作成する必要のある試験資料が図6Aに示される決定ブロック50で選択されると仮定すると、第1の工程ではデジタル・オーディオ・テープレコーダー、つまりDATで資料を録音することであり、その趣旨は語音の修正がアナログ・モードでは容易に達成できないということである図6Bに進む。
【0045】
次の工程は、語音のある種の部分の延長に適応可能な特殊フォーマットにデジタル・オーディオ・テープを変換することである。この発明を作成する上で使用されるフォーマットは、アップル・コンピュータにより開発され、シリコン・グラフィックスによりサポートされる音声情報ファイル・フォーマット、つまりAIFFである。このフォーマットは、他のサンプリング速度および整数表記(8ビット、11kHzなど)も使用できるが、22kHzというサンプリング速度での16ビット・ファイルをサポートする。
【0046】
動作ブロック60に示される次の工程は、コンピュータ・メモリ要件を削減するサブファイルに音ストリームを細分化することである。ここでもやはり、本発明では、音ストリームは30秒のサブファイルに細分化されたが、それ以外の長さも使用可能なプロセッサのメモリに応じて等しく適切であろう。
【0047】
その次に、ユーザは、時間スケールを修正するだけなのか、音声ストリームの語勢を修正するだけなのか、あるいは両方を行うのかについての決定に直面する。時間スケールを修正する場合には、さらなる方向のために図6Cに向けられる。この時点では、時間スケールの修正とは、停止子音およびそれ以外の高速語音要素を引き伸ばすことであり、リアルタイム環境の場合には、後続または先頭の母音の音を短縮することであり、それ以外の場合には文の間および単語の間に発生する「死んだ」時間を短縮することであることを理解すべきである。
【0048】
今度は、図6Cおよび動作ブロック66を参照すると、時間スケール修正は、まず、それぞれが複雑なスペクトルにより表される128の同時チャネルから構成される短期高速フーリエ変換により入信信号を変換する。数学の項での複雑なスペクトルは、電子分野および数学分野では有名なフーリエ変換で表される実数部分および虚数部分をそれぞれ有する複素数の列である。
【0049】
それから、この複素スペクトルは、動作ブロック68に示されるような周波数および振幅に変換される。スペクトルは、いったんブロック68に示されるような周波数および振幅表記に変換されると、各周波数チャネル内での時間領域で希望の拡大を作り出すために、連続する短期スペクトル時間スライス間で補間される。すなわち、時間のある特定の場合に指定された周波数および振幅は、高速フーリエ変換により決定される2つの隣接する周波数および振幅に比較され、それぞれの周波数チャネルに振幅の円滑な遷移が作成される。この場合では、音は文字通り広げられ、追加情報がフーリエ変換の音のスペクトルの表記のそれぞれの間に挿入(補間)される。時間内の50%の増加は、学習不能症の人に聞こえる停止子音の必要な変更を達成するには一般的に適切であることが判明した。したがって、スペクトルの補間で示されるブロック70の結果、時間スペクトルが拡大する。同じようにして、時間スペクトルを圧縮することが必要となる場合には、これは、ある特定のフーリエ変換のセットを削除してから、曲線を円滑化するために残りの隣接する変換の間で補間することによって、この段階で達成することができる。
【0050】
補間の後、動作ブロック72で示されるように追加合成が達成される。要約すると、追加合成工程は、周波数および振幅のそれぞれを時間領域に変換するか、あるいは事実上フーリエ逆高速変換を実行する。追加合成の後には、各チャネルは動作ブロック66の前に存在していたような形式の時間領域に戻される。動作ブロック72の後に、プログラムは図6Bに示されるようにメインストリームに戻り、語勢を語音に組み込むべきかどうかを判断する(図6Bの決定ブロック64を参照)。図4と図5の比較は、延長の概要表記を示す。
【0051】
前記のように、学習不能症の人が使用する語音および音素を作成する上では2つのことが達成できる。1つめは、説明したばかりの語音の時間スケールを修正することであり、2つめは、周波数内容での急速な時間変更を含む語音のそれらの部分を、エネルギー内容を増加させることにより強調することである。前記の/ba/または/da/表記のような停止子音が、音素の子音部分のエネルギーが増加するように修正されると、学習不能症の人の学習能力の向上も見られることが分かった。この場合、語勢が望まれるなら、動作ブロック74に示されるような多くの別々の周波数チャネルを作成するために、多重チャネル帯域フィルタリングで始まる図6Cに図解されるように、動的な語勢が引き受けられる。この場合、周波数チャネルの数は40で選択されている。しかし、別の数を選択する
こともできる。
【0052】
4次数ごとのバターワース(Butterworth)フィルターによるフィルタリングにより、各セグメントが30秒から成る過去に細分化された音ストリーム(動作ブロック60を参照)の時間間隔全体で40チャネルが作成される。動作ブロック76(図6C)では、チャネルのすべてが1−6kHzのフィルタでフィルタリングされ、約2−4kHzの間の平坦な帯域に該当する周波数の10−20dBの語勢を提供する。その後、動作ブロック78に示されるように30秒のサブファイルごとに40の周波数バンド・チャネルのそれぞれに総振幅エンベロープが抽出され、定義される。急速な変化(図6C、動作ブロック80を参照)を示すそれらのエンベロープにとって、抽出されたエンベロープは10−20dB強勢される。/ba/および/da/の例のような子音の場合、前記のように/ba/の中の/b/および/da/の中の/d/は、つねに、母音ブロックに見られる比較的に一定したエンベロープとは対照的に、周波数チャネルのエンベロープ内の急速な変化を示す。ある特定の語勢の程度が適用される特殊周波数チャネル、語勢をトリガする端言葉信号の急速な変化の発生をマークする総振幅エンベロープ周波数しきい値、および総振幅エンベロープ変化の急速性(周波数)の関数としての語勢の程度は、すべて別個に選択できる。この明細書中では、自然な語音の場合、約3から約45Hzの範囲、150%時間拡大した語音の場合、約2から約30Hzの範囲の周波数構成要素のある総振幅エンベロープで、2から4kHzのチャネルに、10−20dBの均一な語勢が適用された。語勢は、前記のように、2kHz以下および4kHz以上で漸次的に弱められた。
【0053】
動作ブロック82に示されるように新しいサブバンド・エンベロープを作成するために、それから各チャネルは、ブロック78で決定されたチャネルごとの初期総振幅エンベロープで得られた情報により分割することによって修正される。各チャネルにとって、結果として生じる情報は、動作ブロック80で作成されるチャネル・エンベロープにより乗算される。これから、チャネルごとにエンベロープ修正関数が生まれる。その次に、各チャネル・エンベロープ修正関数は、動作ブロック74で定義される元のチャネル信号でチャネルごとに乗算される。追加合成は、複数の周波数帯域チャネルが、デジタル化された語音に含まれる周波数範囲全体で1つのチャネルに対する加算によって変換できるように、動作ブロック84で実行される。いったん単独チャネルに到達すると、プログラムは、動作ブロック60で決定される音セグメントが動作ブロック86で示されるように再組立てできるように、コネクタEでの図6Bに戻る。
【0054】
図6Aに戻って参照すると、マルチメディアCD−ROMが存在する場合は、決定ブロック54で、それはCD−ROMが記録されていた音声フォーマットを識別するための動作ブロック88に分岐する。例えば、CD−ROMは、そのうちのいくつかがサウンド・リソース・フォーマット(Sound Resource Format)、クイック・タイム・フォーマット(Quick Time Format )、パコ・フォーマット(Paco Format)あるいはこのプログラムの続く工程で使用されるAIFFフォーマットである多くのフォーマットの内の任意の1つとして入ってもよい(AIFFだけではなく同等なプログラムを作成し、その他の音源で動作できることを注記すべきである)。さらに、情報はアナログの場合、デジタルに変換されなければならない。これはブロック88で達成される。
【0055】
便宜上、この時点でフラグが立てられ、プログラムがCD−ROMモードにあることを示す。CD−ROMフラグは動作ブロック90でセットされる。それから、プログラムは、コネクタFで図6Bに示されるメインストリームに分岐する。
【0056】
CD−ROMを使用すると、情報は、時間スケールを修正し、必要がある場合には前記とまったく同じ工程を使用して語勢を適用し、前記のように処理される。
【0057】
音は、動作ブロック86で再組立てされる。その時点で、CD−ROMフラグがチェックされ、オンである場合は、プログラムは図6D、動作ブロック92にシフトされ、修正された音は動作ブロック88で決定される元の音声フォーマットに変換し直される(図6Aを参照)。それから、音は、動作ブロック94に示されるように適切な位置でのソースに挿入し直される。つまり、CD−ROMのビデオまたは動画グラフィックあるいはその両方の部分が修正された音部分と同期される。
【0058】
同時に、ビデオまたは動画グラフィックスあるいはその両方の再生スピードは、ブロック96に示されるように修正された語音に一致するように調整される。代わりに、前記のように、修正されたバージョン内の語音の経過時間は、動作およびCD−ROM上での類似物がオリジナル・バージョンに対応するように、修正版での語音の経過時間が初版の語音の経過時間と同一となるリアルタイム・モードにすることができる。最後に、マスタCD−ROMが、動作ブロック98に示されるように作成され、プログラムが完了する。
【0059】
動作6Bに戻って参照すると、それから出力データが、「ブック・オン・テープ」用またはアナログ・テープを使用して管理できる試験用のアナログ・テープに変換して戻される。代わりに、試験および関連する試験グラフィックスのバージョンを、コンピュータ制御の元で管理できるデジタル形式のコンピュータに格納することもできる。
【0060】
「ブック・オン・テープ」が音声専用の状況であり、いったん「ブック・オン・テープ」がブロック100に示されるデジタル・オーディオ・テープに変換されると試験資料版に正確に対応することに注記すべきである。デジタル・オーディオ・テープヘのその変換に続き、プログラムは試験資料内でとまったく同じ工程に従う。
【0061】
実施例の動作は、前記資料を使用した下記の実験で例証される。
【0062】
実験−矯正研究被験者に使用される手順
特定の開発言語に基づいた学習不能症(L/LD)を患う7人の児童が、この研究で被験者として参加した。それ以外に大きな知覚、運動、認知、感情または神経性の障害を持たず、以下に示す基準を満たしたL/LDの児童が選択された。1)年齢に該当するウェシュラー(Weschler)知能スケールで非口述言語運用IQが85以上、2)言語発達試験の年齢に適した形式での平均「予測」達成レベルを下回る少なくとも1.5の標準偏差、3)聴覚処理のタラル試験で年齢および性別の平均値を下回る少なくとも1.5の標準偏差、4)正常な聴力の鋭敏さ、運動障害なし、調音器官の語音以外の運動に影響を及ぼす口部、運動、または構造的な障害なし、5)幼児期の自閉症、感情障害または明らかな神経疾患(発作、半身付随など)。
【0063】
スケジュール
矯正研究は6週間継続し、児童らは一日に3時間の直接訓練を週に5日間、ラトガーズ大学実験夏期講習で受け、毎日1−2時間の宿題を週に7日間行った。
【0064】
第1週には、彼らの時間処理しきい値だけではなく、一連の規格化された語音および言語手段での一人一人の児童の入門レベルの能力を決定するために、「ベンチマーク(Benchmark)」試験が実施された。規格化された語音試験および言語試験は、テープに記録されていたが、記録されていない場合には、規格化フォーマットに従って指定された。複数の形式の試験が利用できた場合には、つねに形式Aが使用された。「ベンチマーク」試験を記録または実行時、音響修正は使用されなかった。試験の言語運用は、試験マニュアルに従い、規格化された手順を使用して採点された。これらの規格化された語音および言語手段に加えて、聴覚処理のタラル試験(反復試験)が時間のしきい値を設定するために行われた。第1週の試験の結果は「試験前」と呼ばれる。第6週には、「ベンチマーク」手順のすべてが反復された。第6週の試験の結果は「試験後」と呼ばれる。
【0065】
第2週から第5週の間、矯正訓練が行われた。各児童は、2回の、20分の休憩/軽食セッションで分けられた20分の訓練セッションのシリーズを交代で行った。セッションは、各児童が、各20分のコンピュータ・ゲーム・セッション(セッションA、B)およびテープまたはCD−ROM(セッションC)を日に1度完了したことを保証できるようなやり方で予定された。聴取音韻学および文法のセッションのそれぞれ(セッションD、E、F、GおよびK)が週に2回行われた。児童が、一連の実際のまたは意味のない音節、単語、および文の中で聞いたことをまったく同じ言葉で反復しなければならない表現語音および言語のセッション(セッションH、I、およびJ)は、週に1回行われた。
【0066】
前記訓練セッションCからKの間、資料は、CD−ROMディスクから直接テープ記録されるか得られ、その後で、音声信号が本発明に記述される拡張および語勢のプロセスを使用して修正された。これらの修正済みテープは、その後、実験室でのセッションおよび宿題のセッションの間の両方、第2週から第5週の間、すべてのそれ以降の訓練セッションで使用された。規格化された語音試験および言語試験からの資料を使用していた訓練セッションの間、各試験のまったく異なった形式(B形式)が、特殊な語彙および試験項目が訓練されていないことを保証するために構築された。むしろ、訓練は、音韻学上の対照の知覚および作成、構文規則および語形規則に関する知識、および言葉の記憶技能を幅広く矯正することを目的とした。
【0067】
聴取音声学および文法のセッション(セッションD、E、F、G、およびK)の間、それぞれ処理された話命令が提示され、被験者はいくつかの絵の中から(例えば、「テーブルの下にある本を指しなさい」のような)その話命令をもっともよく表していた1枚を選択するように要求された。一度被験者が回答したら、実験者は「親指を上」または「親指を下」に向けるしぐさで回答が正解であったかどうかを示していた。回答が正解であるか、不正解であるかに関係なく、実験者は正しい絵を指し、児童の注意をもっとも顕著な情報を保持していた絵の部分に引き付けた。次に、同じ命令が、被験者が、今回は、正確な回答を先に知っている状態でそれを聞くことができるように、もう一度提示された。表現に関する語音および言語のセッション(セッションH、I、J)では、処理された資料は、フィードバックや反復を行わずに、逐語的に提示された。
【0068】
この研究の各児童は、以下の予定を完了した。(A形式を使用する未処理語音)ベンチマーク基準が、第1週(試験前)に行われた。処理済みの語音および言語の資料(B形式)および処理済みの物語の本およびテープまたはCD−ROMあるいはその両方での対話式教育資料を使用し、コンピュータ化された訓練ゲームおよび練習問題を含んだ訓練セッションが、第2週から第5週に行われた。ベンチマーク方法は、未処理語音A形式を使用して第6週にもう一度行われた。第7週から第11週には、(児童はこの期間自分の正規の学校の授業に戻ったけれども)専門化された訓練は行われなかった。児童は、第12週に実験室に戻され、その時点で再度ベンチマーク方法が行われた。第12週の試験結果は、「試験後の後」と呼ばれる。
【0069】
方法
ベンチマーク方法 − 第1週(試験前)、第6週(試験後)、および第12週(試験後の後)に実施される。
聴覚処理のタラル試験 − (反復試験、タラル、1980年):反復試験では、2つの異なる刺激(刺激1と刺激2)が組み合わされて使用される。自発的な調整手順を使用し、被験者は、知覚する各刺激を、回答パネル上に、重ねて取り付けられている2つの同一のキーのどちらかを押すことによって「反復」するように訓練される。複数の刺激から構成されるトライアルの場合、被験者は、刺激提示の順序で該当する回答キーを押すことによって、パターンを「反復」するように要求される。反復試験は、連続的に重ねて構築されるサブテストの階層セットから成り立つ。これらのサブテストは、1)検出、2)関連/弁別、3)順序制御、4)処理速度、および5)シリアル・メモリの調査を可能にする。検出サブテストで開始し、被験者は次にもっとも高いサブテストに進むために、正解の定められた基準に到達しなければならない。成績点はサブテストごとに受け取られる。加えて、完了した全サブテストの言語運用の複合成績点が示される。
【0070】
1)検出 − 被験者は、最初に1つの項目(刺激1)を提示される。実験者(E)は、刺激1が提示されるたびに、回答パネルの下部キーが押されなければならないことを示す。被験者は、回答するように激励され、訓練はこの刺激に対する5回の正解が得られるまで続行する。次に、もう1つの刺激(刺激2)で同じ手順が繰り返され、被験者は、回答パネルの上部キーを押すように訓練される。トライアル正解数が、刺激1と刺激2に関して記録される。
【0071】
2)関連/弁別 − 刺激1および刺激2は、一度に1つずつ無作為な順序で提示される。被験者は、刺激1が提示されるたびに下部キーを押し、刺激2が提示されるたびに上部キーを押すように訓練される。刺激1および2は、16の連続刺激(P<.002、二項試験 − シーゲル(Siegel)、1956年)のシリーズの12の正解の内10という基準が達成されるまで、誤りをすぐに訂正しながら、一度に1つずつ無作為な順序で提示され続ける。各被験者が刺激1と2を区別することができ、これら2つの刺激の組み合わせを活用するさらに複雑なタスクに進む前に、2つの刺激のそれぞれに正しい関連を完全に確立したことを保証することは肝要であるため、この非常に厳しい基準が利用される。基準に沿ったトライアル数および正解数が記録される。24回のトライアルの後、被験者が基準に到達できない場合は、試験はこの時点で終了する。
【0072】
3)順序制御 − 関連サブテストの基準に到達した被験者は、次に、500msecの刺激間隔で、順番に提示される刺激1および2に回答するように訓練される。4通りの考えられる刺激パターン(1−1、2−2、2−1、1−2)は、無作為順に提示される。被験者は、両方の刺激が提示されるまで待機してから、刺激が提示されるのと同じ順序で正しい回答キーを押すように要求される。方法は、Eにより、各被験者ごとに4回示される。それから、12回の試験トライアルが行われる。これらのトライアル中、最高3つのエラーが訂正される。このサブテストの点数が、正解の総数である。
【0073】
4)処理速度 − 順序制御サブテストで使用されたのと同じ2つの要素の刺激ペアの同じシリーズが再び提示される。ただし、このサブテストでは、ISIの期間が、被験者の回答に基づいて心理的なしきい値を設定するための上下階段手順を使用して、漸次に短縮される。被験者は、このサブテストを開始する前に2回の練習トライアルを与えられる。
【0074】
5)シリアル・メモリ − 低速ISI(500msec) − このサブテストでは、同じ2つの刺激要素が使用され、手順は以前の順序制御サブテストの場合と同じとなる。ただし、刺激パターンの要素数は上昇する。これらの刺激パターンは、2つの刺激要素の無作為な組み合わせから構成される3つ、4つ、5つ、6つ、または7つの要素から成り立つ。被験者は、3つの刺激要素(つまり、1−1−2)を取り入れる刺激パターンを与えられる。実験者は、刺激要素が発生した対応する順序で回答パネルを3回押されなければならないことを示す。それから、追加の3要素パターンが提示され、被験者は、パターン全体が提示されるまで待機してから、その刺激パターンに該当する回答を行うように指示される。各被験者は、5通りの3要素パターンを与えられる。被験者が5通りのパターンの内の3通りに正確に回答すると、次にもっとも高いパターン長で同じ手順が繰り返される。ただし、被験者がどのパターン長でも5通りのパターンの内の3通りに正確に回答できない場合には、このサブテストは終了される。シリアル・メモリ−低速サブテストの1つの成績点が得られる。この成績点は、125(5×3+5×4+5×5+5×6+5×7)の内から正しく回答された刺激要素総数から成り立つ。
【0075】
6)シリアル・メモリ − 高速ISI(10、70msec) − 被験者が500msecのISIでシリアル・メモリ・サブテストで5回のトライアルの内の3回で正確に回答した刺激長さのたびに、各追加トライアルが10と70msecのISIで行われる。高速ISIトライアルのすべてを組み合わせる1つのシリアル・メモリ−速サブテスト点数が低速ISIと同様に計算される。
【0076】
この研究では、反復試験は、非口頭聴覚刺激により行われた。2つの異なったコンピュータによって作成された複雑なトーンが使用された。刺激1は、100Hzの基本周波数、刺激2は、300Hzの基本周波数を使用した。しきい値は、それぞれ150msec、75msec、40msecおよび17msecのトーン長で被験者ごとに設定された。シリアル・メモリ・サブテストは行われなかった。
【0077】
試験は、コンピュータにより管理される。コンピュータ・ソフトウェアが、刺激提示、回答記録と採点およびしきい値追跡調査の規格化を保証する。聴覚刺激は、一定した超しきい値レベル(約65dB聴力レベル)でイヤホーン上、両耳に提示される。
【0078】
聴取言語試験
トークン試験(ディシモニ(DiSimoni)、1978年):トークン試験は、最初は、成人の失語症における聴取言語欠損を評価するために開発された。試験は、研究で広範囲に使用され、児童と成人の両方における聴取言語障害だけではなく、幼少期のL/LDの文書化された病歴がある成人における継続的な障害にもきわめて鋭敏であることが判明した。トークン試験は、5色の大小の円形と四角形を活用する。試験は、記憶負荷を増強する4つのサブテストおよび文法的な複雑度が増した5番目のサブテストから構成される。各被験者が試験語彙に精通していることを確認してから、試験は、単純な命令(すなわち、赤い円形に触りなさい)で開始する。それ以降の各サブテストでは、記憶負荷が高められた命令が出される(つまり、大きな赤い円形を触りなさい;赤い円形と黄色い四角形を触りなさい)。第5部では、命令は文法的な複雑度も増す(つまり、青い四角形の代わりに、白の円形を取り上げなさいなど)。正しい総複合採点だけではなく各サブテストの正解数が記録される。
【0079】
文法の聴取に関するビショップ(Bishop)試験(TROG):(ビショップ、1979年)ビショップは、聴取言語を評価するための迅速な方法であるTROGの開発に多数の年月を費やした。この方法は、成人の失語症患者だけではなく、児童の聴取言語疾患を評価する上でもきわめて鋭敏であることが判明した。TROGは、英語での文法上の差異の理解を評価するために作られた個々に管理される複数選択肢試験である。試験は80項目から成り立っている。被験者は、各項目でEによって話される句または文に対応する絵を4つの選択肢の列の中から選択するように要求される。試験は、各ブロックが特殊なタイプの語形または構文の差異についての理解を試験する4つの項目から成るブロックに分割される。試験は、合格ブロック数単位で採点され、合格の基準は、そのブロックの中の4つすべての項目が正しく回答されていることである。差異は、難しさが増す順序で配列される。試験は、5つの連続するブロックが正解であるという基準線で開始され、5つの連続するブロックで失敗した場合に中止される。試験は、4歳から12歳の2,000人の英国人児童で規格化され、未処理点数を標準点数に変換するためのテーブルは試験マニュアルに付属している。正常な成人の点数は、天井レベルに近づく。アベダト(Abbeduto)、ファーマン(Furman)、およびデイビーズ(Davies)による研究(1989年)が、試験が英国人の被験者だけではなく米国人にも適していることを証明した。
【0080】
カーティス(Curtiss)およびヤマダ(Yamada)総合言語評価(CYCLE)(カーティスおよびヤマダ、1980年):CYCLEは、過去に利用できたあらゆる言語評価バッテリーをはるかに超える包括的な方法で聴取言語および表現言語を評価するために使用できる道具である。まだ市販されていないが、研究データは2歳から8歳までの70人の健常児および4歳から8歳までの言語障害児で収集されている。試験に関するかなりの信頼性および有効性データが入手できる。CYCLEには、1)聴取、2)顕在化、および3)自由語音分析の3つのバッテリーがある。この研究では、聴取バッテリー(CYCLE−R)だけを使用した。
【0081】
CYCLE−Rの項目は、音韻学、語彙および相対的な意義論、屈折および文法上の語形論、ならびに構文についての受容知識を試験するために使用された。試験は、前記言語学上の分野のそれぞれの2歳から9歳を対象とする項目1式から成り立っている。言語領域の範囲および対象となる年齢範囲で、これはこの研究にもっとも理想的に適した試験である。試験の各項目には、容易に絵で表すことができ、若い就学前児童に馴染みのある語彙が含まれている。また、各項目は、可能な場合、文法のそれぞれの面についての理解を別個に確認できるように、1つの文法要素または構造だけを試験する。複雑な構造についての知識には、関係する構成要素の単純な構造についての知識が必要となるため、すべての試験項目は、発達にそって配列され、児童がその前のレベルの項目を合格して初めてさらに複雑な項目が管理される。あらゆる項目には、5つの例文が含まれる。このようにして、各構造は、言語運用の一貫性を確立するのに十分な時間試験され、偶然だけによって児童が優れた言語運用をおさめることができないというある程度の保証が存在する。各例文には、子供が偶然任意の項目の合格基準に到達できないことをさらに保証できるほど十分な選択肢が回答列に含まれる。
【0082】
CYCLE−Rは、それを若い児童を試験するためのうまく設計された聴取手段にする複数の機能が取り入れられている。絵を含む各項目が、試験文で言及されるのと同一の要素から成り立つが、正しい試験の絵の関係性とは異なる関係性となっているデコイを使用する。さらに、試験官が、児童が試験文の最初の部分だけに注意を払ったのか、あるいは最後の部分だけに注意を払ったのかを判断できるようにするデコイも含まれる。余分な言語キューおよび冗長な言語キューは、すべての項目から排除されている。したがって、試験列や試験文自体には、試験の言語運用を助けるキューは含まれない。すべての絵は、関連情報を直接的に表す明瞭で、単純な線の図面である。つまり、児童に課される解釈負荷はない。さらに、列の中のすべての絵の間は明確に分離されており、すべてのイラストは児童が見て、解釈できるほど大きい。排除のプロセスが言語運用の上昇に使用できないように、絵の列の中の複数の選択肢が試験されることは決してない。すべてのデコイ選択肢だけではなく、正しい選択肢は、項目全体で無作為化される。例えば、正しい選択肢は各列位置で等しく頻繁に発生する。各区別は、複数のトークン、つまりその区別を反映する語彙項目により試験される。CYCLEの成績は、規範的なデータに基づいた年齢に同等な点数に変換できる未処理点数を生み出す。
【0083】
聴覚弁別のゴールドマン・フリストー・ウッドコック(Goldman-Fristoe-Woodcock)(GFW)試験(ゴールドマン、フリストー、およびウッドコック、1970年):この試験は、3歳8ヶ月の子供から成人までの制御された傾聴状態での単音節単語の話音弁別を評価するために作られた。試験は、以下の2つの部分から成り立っている。1)試験語彙の知識を判断するための前試験、2)絵を指すフォーマットによる単独の単語の聴覚弁別。被験者は、テープレコーダーで提示される1つの単語(例えば、湖(lake))を聞き、4枚の絵(湖(lake)、熊手(rake)、徹夜の集まり(wake)、蛇(snake))の中からその単語を表す絵を選択しなければならない。すべての最小のペア語音音対照が、この試験での弁別に関して評価される。
【0084】
表現言語試験
有節発音のゴールドマン−フリストー試験(ゴールドマン&フリストー、1986年):有節発音のゴールドマン−フリストー試験は、言葉の中に存在する子音の音をはっきりと発音する児童の能力の組織的かつ包括的な基準となる。その結果は、すべての必要な音素の基準となり、誤作成のタイプだけではなく、どの音が不正確に作成されるのかを判断する。最初の位置、真中の位置、または最後の位置にある主要な話音を顕在化するために一連の絵を使用する単語サブテストの音が、それぞれの子供に投与される。試験マニュアルは、2歳から16歳までの規範データを提供する。
【0085】
文の記憶サブテスト(スタンフォード−ビネット(Stanford-Binet)知能スケール:ソーンダイク(Thorndike)、ヘーゲン(Hagen)&サトラー(Sattler)、1986年):このサブテストは、意味のある文を記憶する能力を測定する。被験者は、各文を聞いて、継続する前にまったく同じ言葉でその文をただちに再生することを要求される。各文は、合格/不合格で採点され、4つの文が不合格になると、試験は中止される。文の長さおよび構文の複雑度は、項目が増えるに従って増加する。2歳から23歳までの規範データが提供される。
【0086】
CELF − 想起文サブテスト(セメル(Semel)&ウィーグ(Wiig)、1980年):言語機能総合評価(CELF)言語バッテリーは、6歳から16歳の米国の児童の大規模なサンプルで規格化された。実物教授項目および練習項目の後、被験者は、まったく同じ言葉で、長さと複雑度が増す一連の26個の文を反復することを要求され、回答は、ただし反復の場合3点、誤りが1つある場合には2点、2個から3個の誤りがある場合には1点、4個以上の誤りの場合にはゼロ点が与えられる。試験は、4つ連続してゼロ成績点がついた後に中止される。試験マニュアルは、成績点を概算された点数に変換するためのテーブルを提供する。
【0087】
訓練セッション
特にこの研究のために、11の訓練セッションが開発された。セッションは、前記予定に従い無作為順序で20分間行われた。2つのセッション(セッションAとB)は、すでに本発明の実施例(前記参照)として詳細に記述されたコンピュータ・ゲーム・フォーマットを使用するので、ここでは簡略に記述するだけである。それ以外のセッション(セッションCからK)は、本発明の実施例(後記参照)として詳細に記述される方法を使用し、音響波形がコンピュータにより拡大され、強化されるテープに記録されたまたはCD−ROMの話および言語のセグメントを使用する。
【0088】
セッションA − 非口述時間順序制御訓練
CD−ROMに搭載されている対話型マルチメディア・ゲーム(サーカス・シーケンス・ゲーム)は、より高速の提示速度で非口述音の時間順序制御(例えば、周波数変調済みスイープおよび安定状態トーナル複素語)を訓練するために使用された。非口述刺激は、特に人間の言葉の構成要素を表すために構築された。例えば、速度変化、開始周波数と終了周波数、および周波数変調済みスイープの刺激音長は、健常者の言葉の単独子音語幹形成辞に類似していた。同様に、安定状態トーナル複合体は、人間の言葉の中の母音を模倣するために構築された。被験者は、刺激要素が短い刺激間間隔(ISI)(図2を参照)で分離されていた4通りの考えられる2要素刺激シーケンスの組み合わせから無作為に選択された2要素刺激シーケンスを聞くように訓練された。被験者は、刺激提示の順序を示すためにコンピュータのタッチ・スクリーン上のパネルを押すことにより回答するように要求された(図3を参照)。正しい回答は、つねに正しい回答と結び付いた単独の短い音の提示により強化され、ビデオ・スクリーンに累積成績点として表示される点を得る。加えて、連続して3つの正解が得られた場合、この正しい回答の文字列が、動画シーケンスの大規模なプールから選択される短い動画により褒美を与えられた。動画の高品質およびさまざまな多様性が、ゲームをプレイする上での興味を維持させるのに役立った。プログラム自体は、それ以降の刺激シーケンス提示の刺激間間隔を決定するために、適応追跡調査手順を使用した。つまり、被験者が刺激シーケンス順序を識別するのに成功すると、タスクは、2つの刺激の間の間隔を短縮することにより漸進的にさらに難しくされた。
【0089】
セッションB − 音節弁別
CD−ROMに搭載された対話型マルチメディア・ゲーム(音素道化師ゲーム)は、最小の音素ペアを使用して音節弁別を訓練するために使用された。通常の音素ペアと、時間キューを強化するために音響信号の特殊な面をコンピュータにより修正した修正済み音素ペアの両方が、この訓練練習で使用された。さらに、2つの音素ペアの間の刺激間間隔の長さは、規則正しく変化させられた。これによって、さまざまな音素提示速度での経験および訓練が実現された。コンピュータ・スクリーンには、3つの道化師の顔が含まれるサーカスのシーンが表示されていた。最初、コンピュータ・スクリーンの左側に1つの道化師の顔が表示された。被験者は、この道化師の顔をタッチすることにより各トライアルを開始した。この道化師は、一度タッチされると、ある特定の音節(例えば、/ba/)を言い、大文字Bが道化師の顔の上に表示された。次に、一番左側の道化師が消え、2つの新しい道化師がスクリーンに表示され、さらに2つの音節が次々に提示された。被験者のタスクは、第1の道化師により作成された音および文字に一致したのが第1の音節なのか、それとも第2の音節なのかを判断することであった。L/LD児童は、コンピュータ・スクリーンの右側に表示された第1の道化師または第2の道化師にタッチして、自分の回答を示した。回答が正しいと、ターゲット文字(例えばB)がタッチされた道化師の顔の上に表示され、さまざまなコンピュータ動画、「褒美音」および点により褒美が出された。累積成績点は、コンピュータ・スクリーン上に表示された。不正解の場合は、褒美は出されず、被験者は次のトライアルに進んだ。さらに、トライアルの各50個のブロックが完了した後で、年齢に適した動画映画からの短いビデオ・クリップが、ゲーム・スクリーンに埋め込まれたように表示された。これらのビデオ・クリップは、練習を継続した結果、動画映画の次のセグメントが提示されるように連続していた。
【0090】
セッションC(物語を傾聴)
児童に人気のある物語の本(例えば、ディズニー(Disney)およびセウス(Seuss)の本)が、デジタル・オーディオ・テープレコーダー(つまり、DAT)上でテープに記録されていた。次に、デジタル・オーディオ・テープは、話の波形のある部分の延長および強化が、前記の本発明の項の実施例に記述されるように、実行されるように、デジタル形式でコンピュータに転送された。代わりに、市販されている対話型マルチメディアCD−ROM児童の物語が使用された。CD−ROMのデジタル音声部分は、前記のように処理できるように、抽出され、コンピュータに転送された。いったん修正されると、音声信号は「ブック・オン・テープ」バージョン用のアナログ・テープに変換し直されたか、あるいはCD−ROM物語に適切なデジタル形式に挿入し直され、修正された言葉を記憶した新しいCD−ROMが作成された。この訓練セッションで使用されたのは、これらの言葉が修正された「ブック・オン・テープ」およびCD−ROMベースの物語であった。被験者は、好みの物語を選択し、実験室で毎日少なくとも1回、20分のセッションの間に、本が付属するテープ、またはCD−ROMのどちらかで、物語を聞いた。毎日、各児童は、テープと付属本、またはCD−ROMベースの物語を実験室の図書館から借り出し、毎晩1時間から2時間宿題として聞くために自宅に持ち帰った。資料は翌日または週明けに返却され、次の夜または週末の宿題ように新しい物語が選択され、物語が児童の間で循環できるように、利用できる多様性が増した。被験者は、聞いた物語ごとに50点を受け取った。親は、宿題セッションのこれらの点を、それらが児童の毎週の成績点に加算されるように追跡調査した。
【0091】
セッションD − 聴取文法訓練(CYCLEフォーマット)
聴取文法の特殊な要素を訓練するためには、CYCLEフォーマットが使用された。元のCYCLE(A形式)の各項目ごとに、訓練(B形式)で使用される項目の新しいシリーズを作成するために、新しい項目が選択された。語彙および内容は変更されても、本質的な意義、構文、および語形の要素が同じままとなるように、項目が選択された。例えば、CYCLE A形式に表示される「魚が泳いでいる」という文を取ってみる。児童は、2枚の絵の間で泳いでいる1匹の魚を示す一方と、泳いでいる複数の魚を示すもう一方を選択しなければならない。正しく回答するためには、人は、この場合、動詞が複数についての情報を伝えているため、唯一の正解は複数の魚を示す絵であることを理解しなければならない。これは、複数化についての情報が動詞「いる("are")」だけではなく名詞「犬("dogs")」の両方で発生する文「犬が走っている("dogs are running")」で発生するような大部分のそれ以外の形式の複数化とは異なる。訓練の構成要素にとって、同等な一文が作成され、複数化はB形式に表示された動詞「鹿は食べている("the deer are eating")」によってだけ伝えられた。すべての項目は、語彙を変化させながら、理解に必須の文法上の構成要素を維持するために同じように変換されたため、ある特殊な項目についての訓練知識だけが達成されたのではなく、やや文法上の規則も従われたことを保証する。B形式の項目はテープに記録され、その後、前記手順を使用して音響波形のコンピュータ修正にさらされた。
【0092】
訓練中、被験者は、各命令を表した絵を指すように言われた。被験者は、正解または不正解(つまり、「親指上」または「親指下」)を示す即座のフィードバックを受け取った。回答が正解であったかどうかに関係なく、命令は、児童が、実験者がどれが正しい絵であったのかを示した後に、直接命令を聞くことができるようにもう一度繰り返された。被験者は、このセッションを完了するために、壁のチャートの上に貼られるステッカーを受け取った。
【0093】
セッションE − 聴取記憶訓練(TOKENフォーマット)
TOKEN試験フォーマットは、聴取記憶を訓練するために使用された。前記と同じ手順を使用すると、TOKEN試験のA形式の項目が、B形式を構成する項目の新しいセットを作成するために修正された。例えば、TOKEN試験のA形式に表示される項目「大きい赤い円形と小さい緑の四角形を触りなさい」は、B形式の「小さい黄色の四角形と大きい青の円形を触りなさい」に変更された。新しいB形式項目は、前記と同じように、テープに記録され、コンピュータで修正された。訓練には、やはり前記のフィードバックによる各項目2回の反復が含まれた。被験者は、このセッションを完了するために、壁のチャートの上に貼られるステッカーを受け取った。
【0094】
セッションF − 聴取文法訓練(TROGフォーマット)
TROG試験は、CYCLEと形式が類似する。この方法のB形式を作成し、前記のように訓練で使用するための音響をコンピュータで修正するために、同一の手順が従われた。訓練手順および強化は、CYCLEセッションおよびTOKENセッションに使用されたのと同じであった。
【0095】
セッションG − 聴取音韻学訓練(GWFフォーマット)
GFWフォーマットは、聴取音韻学を訓練するために使用された。ここでは、被験者はテープレコーダーを介して提示される1つの単語を聞き、その単語を表す絵を、話の1つの区別特徴だけで異なる複数の単語を表すその他の絵の中から指差す。前記に類似した手順を使用し、代わりの形式(B形式)が聴取音韻学を訓練するために作成された。新しい項目はテープに記録され、訓練セッション中に提示するためにそれに従い修正された。もう一度、被験者は、正解について事前に知った上で与えられる2回目の反復で各項目を2度受け取った。被験者は、強化のためのステッカーを受け取った。
【0096】
セッションH − 文模倣訓練(CELFフォーマット)
CELF文模倣複試験の項目は、B形式用の項目を作成するための前記の方法と同じように修正された。ただし、これらの項目の場合、言語の同等な周波数およびほぼ類似した音韻学上の複雑度を持った単語の選択に、特別かつ慎重な注意が払われた。それから、B形式の項目が、前記のように、テープ記録され、修正された。被験者は、これらの新しい修正済みの文が提示され、それらをまったく同じ言葉で反復するように求められた。フィードバックは示されなかった。音韻学上の作成誤りを含むすべての誤りが採点された。CELFは、反復のために、文法的に正しい文と文法的に正しくない文の両方を含む。これらのタイプの項目のそれぞれの別個の成績点が分析される。
【0097】
セッションI − 表現記憶訓練(文フォーマットの記憶)
スタンフォード−ビネットの文の記憶複試験は、このセッションのための訓練項目を作成するためのモデルとして使用された。このセッションは、文法上正しい文だけが使用されるという点を除き、前記セッションH(CELF)と同一である。項目作成、刺激修正および試験手順のために従われた手順は、前記手順と同一である。
【0098】
セッションJ − 実音節および無意味音節および単語の反復
特にこの研究のために、無意味な音節および単語の一覧が作成された。刺激セットの音響および音声の特徴に慎重な注意が払われた。この訓練は、入力の音響変更の結果、分析の音響、音声、および音韻学のレベルでの語音の出力の有節コーディングが改善されるかどうかを判断することを目的とした。音響時間キューが変更された資料を使用する訓練の結果、語音作成でのこれらの同じ時間キューの制御が改善されるかどうかを判断することは特に重要であった。
【0099】
セッションK − 聴取文法訓練(サイモン・セズ(Simon Says)フォーマット)
聴取文法および記憶を訓練するためにサイモン・セズ・ゲーム・フォーマットが使用された。特にこの訓練のために、他の聴取言語訓練セッションのいくつかで現れる項目に類似した項目が作成された。ただし、このフォーマットでは、該当する絵を選択したり、静的な円形および四角形を指すことによって回答する代わりに、被験者は、一連の小道具を使用してそれぞれの命令を演ずるように要求された。訓練項目は作成され、テープに記録されてから、前記の同じ音響修正を使用して、コンピュータにより修正された。いくつかの項目は、サイモンがするように言ったことを正確に行うようにという児童の命令である「サイモンが言う("Simon Says")」で始まった。ゲームの楽しさを高めるために、項目は、前の句「サイモンが言う」なしに挿入された。これらの後には、「私に捕まらないでください。サイモンを待ってください。」のような句が続いた。項目は、特に、(「鼻を触ってください("touch your nose")」対「爪先を触ってください("touch your toes")」のような)個々の音韻学上の差異または(「片足でとびなさい("hop on your foot")」対「両足でとびなさい("hop on your feet")」のような)文法上の差異を要求して構築された。その他の項目は(大小のさまざまな色のクレヨンおよびスプーンがプロップとして利用できる場合の)「大きな青のクレヨンの周りを走りまわってから、小さな黄色のスプーンを取り上げなさい」のような聴取記憶を訓練するために構築された。これらの命令のいくつかの前には「サイモンが言う」が来るが、他の命令の前には来なかった。もう一度、他の聴取言語訓練セッションのそれぞれでの場合のように、各命令は2度反復され、児童が不正解であった場合には正しい動作を示すために、児童の回答の後にフィードバックが出された。この後に正解を事前に知った状態で命令を聞いて、演じる2度目の機会が続いた。
【0100】
強化
プログラム全体でのやる気を維持するために、一連の点とステッカーをベースにした強化システムが作成された。セッションAとBで毎日使用されたコンピュータ・ゲームでは、回答のたびにその後にスクリーンに累積表示された獲得された点とステッカーの継続中の合計が、プログラムの中に組み込まれていた。加えて、これらの訓練ゲームでの興味を維持するために、間欠コンピュータ動画および映画クリップが使用された。コンピュータ・ゲームをプレイすることによって獲得された点とステッカーは、毎日の終わりに、グループ活動として、各児童の累積を週ごとに追跡調査した壁に張られたチャートに転載された。各週の最後に、児童は「サーカス・ストア」からおもちゃを「購入する」ためにこれらの点を使用できた。店には、獲得点数に対応する「価格」が記されたおもちゃがあった。
【0101】
これらの週ごとの褒美に加えて、児童は、その他の20分間の訓練セッションのそれぞれを完了することに対してステッカーを獲得した。ただし、コンピュータ・ゲームで使用された点数システムとは異なり、これらは言語運用に基づくのではなく、セッションの完了を示した。これらの「特別ステッカー」は、児童が毎週これらの訓練セッションを通じた自分達の進歩をモニタできるように、チャートに貼られた。いったんチャートがいっぱいになると(児童がその週の必要セッション数を完了したことを示す)、児童は「リスニング・ストア」や「スピーキング・ストア」からおもちゃや食べ物の品目を選択できた。これらの補強材は、個人的な関心および実験者による強化とともに、6週間のプログラムを通してやる気を維持する上できわめて成功であったことが分かった。
【0102】
結果
この研究では、2つの訓練手順が利用された。第1に、本発明の実施例に記述されるサーカス・シーケンスCD−ROMゲーム・フォーマットを使用して第2−5週の間に毎日時間統合速度を選択して訓練することにより、L/LDの児童が第1週(試験前)に示したきわめて損なわれた時間しきい値を変更しようと試みられた。第1週と第6週に、時間処理しきい値の変化を評価するために使用されたベンチマーク基準として、タラル反復試験が行われた。図7の下部に示されるように、試験前(第1週)、各児童は、ISIが0msecの150msecの長さのトーンを使用した反復試験の2つのトーン順序制御複試験を行う能力を示した。これは、じゅうぶんに長い刺激が提示された場合には、各児童がタスクを理解し、高い確度のレベルで回答できたことを証明する。しかしながら、刺激の音長がそれぞれ75msec、40msec、または17msecに短縮されると、L/LD児童の言語運用は低下した。6歳から8歳の正常な制御の児童は、2つの75msecトーンの間に8msecしか必要としないことを思い出す。対照的に、L/LD児童は平均221msecを要した。同様に、刺激提示の音長が40msecまたは17msecに短縮されたときにL/LD児童が示す欠損は、漸次的に高まっていった。
【0103】
サーカス・シーケンス・ゲームを4週間訓練した後の結果は劇的である。図7の上部に示されるように、各児童の(第6週試験後)時間処理しきい値は大きく減少した。グループの合計も、この顕著な改善を反映する。例えば、75msecのトーン長を使用した場合、グループの平均ISIは試験前の221msecから試験後の32msecになり、時間処理速度は正常な範囲である8msecにはるかに近づいた。同様に、40msecトーン長の平均しきい値は、試験前の640msecから286msecという試験後速度になり、やはりかなりの著しい改善を示した。
【0104】
これらのデータは、L/LD児童における時間統合欠損の修正のための、本発明で実現された、時間訓練手順(サーカス・シーケンス・ゲーム)の効力の強力な証拠となる。
【0105】
本発明で作成された第2訓練手段は、語音および言語の機能を訓練するために、コンピュータにより拡張、強化された語音を活用した。より高度な言語学上の能力(語形論、意義学、構文)だけではなく基本的な音韻学上のプロセスの発育速度が、コンピュータにより修正された音響入力を通じて強化されたかどうかが特に重要であった。訓練に使用された流暢な語音で加えられた音響修正の結果、語音(音韻学)および言語理解の聴取面が最高に改善されると仮定された。この仮説は、第1週(試験前)から第6週(試験後)の言語運用を、聴取音韻学および言語処理のベンチマーク試験のそれぞれで比較することにより、直接試すことができる。図8から図11では、データが、最初に研究に参加する個々の被験者のそれぞれに提示されてから、平均値、つまりベンチマーク聴取言語試験のそれぞれの平均が提示された。試験マニュアルで利用できる場合には、試験の規格化された規範データに基づき、年齢に同等の成績点が提示された。年齢に同等なものが入手できない場合には、年齢または未処理点数の百分順位が提示される。
【0106】
図8から図11に示されるように、聴取言語試験および記憶試験のそれぞれに著しい改善が示された(セッションD、E、F、G)。試験前成績点と試験後成績点の間の差異は、きわめて統計的に重要であり、言語の文法上の理解(TROGとCYCLE)(図9と図10)試験および言語の記憶(TOKEN試験)能力(図11)だけではなく、言語の音韻学(GFW試験)(図8を参照)を含む言語聴取での顕著な改善を示す。これらのデータは、L/LD児童にとって最大の困難を引き起こす核となる聴取言語機能での著しくすばらしい改善を示す。さらに、L/LD児童の長期的な結果の研究で彼らのその後の学問的な達成を予言するのにもっとも役立つと示されたのが正確にはこれらの能力である。実際、L/LD児童の過去に完了した5年間の長期的な研究で分かった改善に匹敵するか、あるいは改善を超える改善は、6週間以内に起こった。
【0107】
サンディエゴ長期研究(タラルおよびカーティスが指揮、1980−1987年)では、現在の研究で使用されるのと同じ基準に基づいて選択された60人のL/LD児童が、5年間という期間評価された。同じベンチマーク基準の多くが過去の長期研究と現在の訓練研究の両方で使用されたため、直接的な比較を行うことができる。図12は、長期的な研究での、4歳から8歳までのL/LD児童のCYCLE試験での改善結果を示す。L/LD児童は、長期的な研究の時間過程の間に障害に対して公立学校内で語音、言語、および読書の療法を受けていた。したがって、公立学校でL/LD児童が現在利用できる最新の療法を、本発明で実現された療法で比較することができる。試験前の現在の研究では、1つのグループとしてのL/LD児童(平均年齢=7.2歳)は、CYCLE試験での4.2歳の正常に発育している児童に同等の水準の言語運用をおさめた。ただし、コンピュータ・ゲームを使用する時間順序制御訓練だけではなく、音響的に修正された語音刺激による訓練に4週間参加しただけで、これらの児童は、5.8歳の正常に発育している児童に同等な水準で言語を処理することができた。対照的に、サンディエゴ長期研究の結果は、L/LD児童が言語理解の発達において非常にゆっくりと進歩し、正常に発達している児童が2年半以内に習得するのに同等の技能を発達させるおに5年を要することを示した。著しく対照をなしたことに、現在の矯正研究に参加しているL/LD児童は非常に急速な進歩を遂げた。コンピュータにより修正された語音のによる訓練および時間統合訓練を4週間受けただけで、彼らの核となる言語理解能力の発達が1.6年分改善されたのに対し、長期研究のサンプルは、従来の語音、言語および読書の療法を受けた5年間に同じ基準で2.6年分しか改善されなかった。類似した結果は、トークン試験およびGFWでも見られる(図13、図14を参照)。
【0108】
語音の音響入力のコンピュータによる変更は(音韻学のレベルから構文のレベルまで)明確に言語の聴取面を訓練することを目的としていたが、語音の有節発音および表現言語機能の基準も研究全体で収集された。予測した通り、これらは明示的にこの研究で訓練されたわけではないので、表現言語基準に関しては試験前から試験後まで示された改善は少なかった(図15、図16を参照)。
【0109】
これはこの研究で直接訓練されなかったが、音韻学のレベルで語音有節発音での著しい改善が達成されたことを注記するのは励みになる。L/LD児童の過去の研究は、彼らの時間欠損が、音韻学上のレベルだけではなく音響レベルでの語音入力と出力の両方に影響を及ぼす知覚組織および運動組織の両方で発生することを証明した。したがって、時間的に修正された語音にさらされることだけではなく、知覚レベルでの時間統合の速度で訓練を行うことにより、知覚処理、ひいては聴取言語理解が改善されるだけではなく、語音の有節発音における時間キューの作成の運動精度の率も向上する可能性があると仮定することができる。ゴールマン−フリストー有節発音試験で見られる著しい改善(図17)は、音韻学上のレベルでこの仮説を一時的に裏付ける。強力な裏付けは、この訓練研究の間に得られる語音作成データに基づいた音響レベルと音声学レベルでの正確な時間運動計画についての将来の詳細なコンピュータ分析を待っている。しかしながら、音韻学レベルでの現在の分析は、語音の有節発音での大きな改善を示し、これらの知覚訓練基準が聴取言語および読書の面を改善する可能性があるだけではなく、これらの児童の語音出力の有節発音符号化の時間精度(ひいては明瞭度)の改善に直接的な影響を及ぼす可能性があることを示唆する。
【0110】
結論的に、これらのデータは、本発明で実現される両方の効力についてのきわめて強力な裏付けとなる。これらの療法が、L/LD児童の時間処理、語音、言語、および読書の能力を著しく改善すること、および改善の規模が、現在利用できる療法の結果生じると示されたものよりはるかに大きいことが証明された。
【0111】
7人の児童の内の6人が、修正済みの語音または時間処理の訓練を受けずに6週間受講後に、第12週の試験後評価に役立った(A3としてグラフ表示される)。A3試験結果として過去の数字で見られるように、療法が中止された時点で聴取言語能力にはある程度の低下があったが、進歩のほとんどは維持されていた。これらのデータは、根本的な語音、言語、および読書の機能を完全に矯正し、「固める」には、さらに長い訓練期間が必要となる可能性があることを示唆する。これにも関らず、以上のデータは、この短い訓練期間中になされた進歩の大きな割合を、さらに直接的な訓練を積まなくても維持することができるという点で、有望である。
【0112】
したがって、本発明は、学習不能症を患う人にとっての必要性を満たすだけではなく、不全失語症または失読症であり、受け取られた停止子音を迅速に処理できないため、話された単語の意味を把握できない人で発生する時間処理欠損を「治療する」能力を提供した。
【0113】
前記に説明され、実験が詳細に概略された情報は、本発明の実践を可能にするのに十分な開示であると感じられる。したがって、その動作方法についてさらに説明は行わない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】聴覚による時間処理欠損の矯正を実現するために使用されるコンピュータ・システムの一般的な図である。
【図2】刺激間間隔(ISI)によって分離される低周波数から高周波数に変調済みのスイープ(S1)、および高周波数から低周波数に変調済みのスイープ(S2)の分光写真プロットである。
【図3】グラフィック・アイコンおよびその上にある記号によるVDTの描写である。
【図4】時間に対して周波数を描く、通常の子音−母音組み合わせの図表表記である。
【図5】時間に対して周波数を描く、時間が拡大された子音−母音組み合わせの図表表記である。
【図6A】訓練プログラムを作成するために使用されるコンピュータ・プログラムを示すフローチャートである。
【図6B】訓練プログラムを作成するために使用されるコンピュータ・プログラムを示すフローチャートである。
【図6C】訓練プログラムを作成するために使用されるコンピュータ・プログラムを示すフローチャートである。
【図6D】訓練プログラムを作成するために使用されるコンピュータ・プログラムを示すフローチャートである。
【図7】7人の選ばれたL/LDの児童らの訓練前および訓練後のタラル(Tallal)反復試験の結果のグラフである。
【図8】可能である場合には、試験前、試験後、および訓練期間後の3ヶ月の両方の同等の年齢に対して描かれた実年齢を示す、7人のL/LDの児童らの聴覚弁別のGFW試験の結果のグラフである。
【図9】7人のL/LDの児童らの同等な年齢を示す、試験前回数および試験後回数に関するTROG(文法の聴取に関する試験)の結果のグラフである。
【図10】試験前回数および試験後回数、ならびに可能な場合には訓練3ヶ月後の7人のL/LDの児童らの総合言語評価(CYCLE)試験の結果のグラフである。
【図11】試験前回数および試験後回数、ならびに可能な場合には訓練3ヶ月後の7人のL/LD児童らのトークン(Token)試験(受容的言語)のグラフである。
【図12】4歳から8歳までのL/LDの児童らの5年間の間のCYCLE試験での向上、および本発明を使用して4週間の訓練セッションを経て試験された7人の児童らの向上を示すグラフである。
【図13】4歳から8歳までのL/LDの児童らの5年間の間のトークン試験での向上、および本発明を使用して4週間の訓練セッションを経て試験された7人の児童らの向上を示すグラフである。
【図14】4歳から8歳までのL/LDの児童らの5年間の間のGFW試験での向上、および本発明を使用して4週間の訓練セッションを経て試験された7人の児童らの向上を示すグラフである。
【図15】試験前、試験後、および可能な場合には訓練後3ヶ月の7人の試験されたL/LDの児童のCELF試験(文の模倣)での向上のグラフである。
【図16】試験前、試験後、および可能な場合には訓練後3ヶ月の7人の試験されたL/LDの児童の文の記憶の結果のグラフである。
【図17】試験前、試験後、および可能な場合には訓練後3ヶ月の7人の試験されたL/LDの児童のゴールドマン・フリストー(Goldman-Fristoe)有節発音試験での向上のグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間的な処理障害のために、言語障害のある人および言語に基づく学習不能症(L/LD)の人が、自分達の語音(スピーチ)聴取、語音作成、言語の理解および読書能力を改善できるようにするための、可聴周波音、特に語音の音の修正に関する。さらに、本発明は、語音および言語に基づいた学習不能症の人が、より正確により明瞭に基本的な語音要素および通常のつなげられた語音を理解できるように、自分の時間処理の欠損を克服するのを助けるための訓練法も含む。加えて、本発明は、健常者が、その母国語または外国語の訓練のどちらかで、その語音聴取能力を改善するのを助ける訓練法も含む。
【背景技術】
【0002】
最近の研究から、特殊言語障害(SLI)者および特殊読書障害(失読症)者は、自然の語音の中のある種の子音および子音−母音の組み合わせを認識し、区別することができないことが分かった。また、彼らには、聴覚語音を理解する上での問題から生じると考えられる書き言葉を理解する上での障害もある。この聴覚語音理解の障害の結果、読書技能の発達が遅れ、通常は不完全となる。研究により、語音聴取および読書能力取得でのこれらの問題点が、末梢神経の聴力または視覚の欠損の結果なのではなく、むしろ語音の急速に変化する構成要素を正しく認識するための脳の受容能力および認知能力のないためであることが分かった。
【0003】
例えば、L/LD者は、やや短い子音の音(1ミリ秒の数10分の1の長さ)を正しく識別したり、それらを結び付いた長い母音の音から確実に分離したりするのに困難をきたす。その結果、これらの人は、脳で母国語の基礎的な音声要素の確かな表現を作り出すことができない。その結果、障害者は、話された単語およびつなげられた語音の文字列の一意の音を正しく識別するのが困難であるだけではなく、たいていの場合それに関連して、正確に語音を明瞭に発音するようになるのに苦労する。さらに、障害者の、単語および長い語音文字列を正確に認識することに依存する認知能力は限られ、書き言葉を脳の聴覚語音の不十分な表現に認識して結び付ける能力が限られる場合がある。
【0004】
特に、子音の音には、通常、音周波数が上昇または下降するか、あるいは25ミリ秒以下から80ミリ秒以上まで継続する休止により遮られるように周波数変調済みの構成要素が含まれる。この上昇または下降する音周波数または子音の音の短い中断の後または前には、比較的に一定したまたはさらにゆっくりと変化するスペクトル内容を持ち、通常、数10ミリ秒から数100ミリ秒までの音長で伸びる母音の音が来る。L/LD(不全失語症または失読症)者の大半は、子音/b/および/d/の周波数変調済み構成要素が、(例えば、60から80ミリ秒以下の長さの)通常の音長の場合、(例えば、/ba/と/da/、または/ab/と/ad/などの)子音−母音の組み合わせを区別することができない。
【0005】
L/LDの基本的な時間処理欠損は、一般的には正常な語音聴取での連続する音声要素に関して発生するような、高速で連続で提示される音を識別するという失語症または失読症の患者の能力を試験することにより、確実に証明される。例えば、L/LDの児童または成人は、通常、それぞれが50ミリ秒の長さの2つの異なった連続する母音のような刺激の表示の順序を、それらが100ミリ秒を超える時間、またしばしば数100ミリ秒を超える時間で区切られない限り、正確に識別できない。対照的に、健常者は、このような刺激の提示の連続順序を、それらの音がすぐに連続する、つまり介在する刺激間時間間隙がない場合も識別できる。
【0006】
短い音長で、かつ速く連続する語音の構成要素の聴取でのこの根本的な問題の結果は、この時間処理障害による失語症および失読症であると診断された人が、学業の成就において同級生より2年から4年、およびおそらくそれ以上の年数の遅れをとる学校制度において容易に明白である。その結果、L/LD障害者は、一般的には、語音の認識および語音の作成に大きな重点をおいた補助的な専門的な訓練を必要とする。失読症患者は、同様に、読書の学習を助ける特殊訓練を受ける。特別な語音聴取、語音作成、および読書訓育は、通常、供給源があれば、これらの障害者の多くに対して初等教育および中等教育の全般を通して継続する。障害は、多くの場合、教育の打ち切りにつながり、一般的には障害を生涯のものとする結果となる。しかしながら、特殊教育ではある程度の成功が見られている。
【0007】
当初、60ミリ秒を下回る短音長の子音周波数変調のある/ba/および/da/のような子音−母音組み合わせの識別ができないこと、あるいは150ミリ以上で区別されていない限り単純な音響刺激の時間的な順序を識別できないことにより、この時間処理欠損のあるL/LD者を確認する方法が設立された。しかし、以前の訓練方法のいずれも、L/LDの根底にある時間処理欠損を克服する上で一貫して前向きの結果を示すことはなかった。この時間処理欠損を克服すれば、この障害を持つ人にとってさらに有益で、一般並みの生活が得られるはずである。
【0008】
最近の研究から、これらの語音および言語に基づく学習不能症は、脳による感覚情報の時間処理の欠陥に起因することが分かった。さらに、研究から、時間処理能力は健常者での強力な学習効果に依存していることも分かった。この時間処理学習の基礎となる基本的なプロセスはますますよく理解されてきている。
【0009】
L/LDに加えて、脳に損傷を受けた人も同様の症状を示した。特に、脳卒中を患った人またはそれ以外に脳の言語を支配する大脳半球の部分の損傷を受けた人は、一般的には、通常の子音の音を弁別する能力を失い、L/LD者の時間処理欠損に非常に類似した時間処理欠損を示す。L/LD者での場合と同様に、これらの失語症の人も、語音の要素が減速した形で患者に提示される場合には、語音の要素を正確に識別できる。
【0010】
老人も、これらの同じ試験により判断されるように、その時間処理能力において漸進性の悪化を示す。この悪化は、老人の語音聴取および一般的な認知能力に影響を及ぼす認知に基づいた欠損の一因となる。
【0011】
固有の環境での外国語の聴取または学習は困難であり、その言語が話される速度のため、健常者にとってもほぼ克服できない場合もある。その結果、外国語は丸暗記および反復練習問題により学習され、会話の速度は話される言語を理解する能力に釣り合って引き上げられる。固有の環境(つまり、その言語の自国内)で外国語を学習する人にとって、その外国語の話し手に「減速」するか、繰り返すように頼むことによる以外、定まった方法はない。この固有の環境で外国語を学習する上での問題点の多くは、入ってくる語音の音の、ある人の脳の中での高速な出来事の時間的な処理での認識の欠如に起因する。
【0012】
外国語の音素は英語言語と構造が異なるが、すべての話される言語の原理は不変のままである。すなわち、すべての言語は音素として知られる基本の音の構造体に分割することができる。学習されなければならない基本的な基礎単位を形成するのが、英語言語での子音−母音の音節/ba/および/da/のようなこれらの音素の認識である。L/LD者の場合でのように、外国語を学ぶ学生は、これらの音素を、それらが母国語の話し手により通常の要素音長および通常の要素シーケンス速度で提示される場合、確実に認識しない。L/LDでの場合のように、これらの音素は互いに正確に弁別することが可能で、語音が人工的に減速されると正しく認識することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、L/LD者において音素および結合した語音の認識を容易にするための方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明の第2の目的は、L/LD者において音素および結合した語音の認識を迅速かつ漸進的に改善するための訓練方法を提供することである。
【0015】
本発明の第3の目的は、学習練習を通じて達成される時間的な処理での変更を生成するために、通常の語音よりさらに強力な訓練信号を利用することである。
【0016】
本発明の第4の目的は、L/LD者を識別するために人口を調べる際の方法としてこの訓練方法の修正版を使用することである。
【0017】
本発明の第5の目的は、脳の話し言葉を支配する大脳半球に損傷を受け、その結果L/LDで記録されるような時間処理欠損が生じた人において、音素および結合した語音の認識、ならびに音素および結合した語音の認識を迅速および漸進的に改善するための訓練方法を提供することである。
【0018】
本発明の第6の目的は、年齢に関係してまたは病気に関係して語音の音の聴取に関する時間処理能力の低下を経験した人において、音素および結合した語音の認識、ならびに音素および結合した語音の認識を迅速および漸進的に改善するための訓練方法を提供することである。
【0019】
本発明の第7の目的は、外国語の学習において音素と結合した語音のさらに容易な認識を実現することである。
【0020】
本発明の第8の目的は、通常流暢に話す人において、学習能力および潜在的な認知言語運用を向上させるためにより良い高速の語音の音の時間処理を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一つの態様は、言語障害を有する個人の言語に対する認識を高めるように訓練するためのコンピュータ装置であって、聴覚刺激を生成するプロセッサと、前記プロセッサと結合し、前記個人に前記聴覚刺激を音響的に提示するスピーカーと、前記プロセッサと結合し、前記個人に実験環境を図式的に提示するディスプレーと、前記プロセッサと結合し、前記個人に前記刺激に対する回答を指定させる入力装置と、を備え、前記コンピュータ装置は、前記個人に刺激間間隔により分離された少なくとも2つの前記聴覚刺激を提示し、前記個人に前記少なくとも2つの聴覚刺激を区別し前記入力装置を介して前記区別を表示するように要求し、前記個人が前に提示された前記刺激を正しく区別する時に前記刺激間間隔を減少するように前記刺激の提示をN回反復する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1を参照すると、言語障害者(L/LD)の間での語音の認識を向上させるために本発明で使用するのに適切なコンピュータ・システムが図示されている。
【0023】
コンピュータ・システム10は、アップルやIBMまたはIBMと互換性のあるクローンの1つから入手できる従来の型のシステムから構成されるプロセッサ12から構成されている。プロセッサ12は、CD−ROM機能14および従来のフロッピー(登録商標)ディスク機能16を備えている。CD−ROMだけではなくフロッピー(登録商標)ディスク機能もサポートするために、適切なソフトウェアがプロセッサ12に搭載されている。
【0024】
プロセッサ12に加えて、カラー・フォーマットは本発明の2つの局面、つまりゲーム・プレイ面および訓練練習面を強化するが、色を表示できる場合もあれば、表示できない場合もある従来の表示端末管つまりVDT18が具備される。追加のVDTも具備されてよい。
【0025】
プロセッサ12に搭載される適切なソフトウェアによりサポートされるスピーカー20が具備される。スピーカー20に加えて、本発明を個々の人に私物化できるヘッドセット22がある。
【0026】
最後に、システムを対象つまり患者にとって有効なものとするために、記憶装置24が利用される適切なプログラムおよび適切なデータも記憶するために具備される。記憶装置24は、VDT18、スピーカー20およびヘッドセット22と同様、プロセッサ12に応答する。記憶装置24は、進歩報告を蓄積し、個々のユーザについての統計を作成するためにも使用できる。
【0027】
VDT18、スピーカー20およびヘッドセット22は、これ以降、システム内で一般的に使用される場合「出力」という。入力装置は、患者により活用されることもあれば活用されないこともあるキーボード26、および本発明全体で使用するのが適切であるマウス28を具備する。タッチ感知式スクリーン33は、マウスの代わりに使用可能で、特に若い児童らには有効である。最後に、L/LD者による語音作成の言語運用を評価する目的でさまざまな口音を記録したり、補助の言葉に関するプログラム資料の作成を助けるために、入力マイクロフォン30が具備されてよい。
【0028】
このシステムで訓練される患者の進捗について出力を行うために、プリンタ32も具備されることがある。
【0029】
プロセッサ12は、必ずしもシステムの一部ではないが、コンピュータ・ネットワーク内のホスト・コンピュータ34に対して周辺装置となる場合がある。ホスト・コンピュータ34は、図1に示されるように適切な周辺装置で複数のプロセッサ12を制御できる。10(b)、(c)、(d)および(e)のようなそれ以外のシステムは、事実上、システム10と本質的に同じである。例えば、さらなる修正により、それぞれのリモート・ステーションでプリンタを所有する必要がないように、プリンタがホスト・コンピュータの直接の制御下に置かれてもよい。
【0030】
前記コンピュータ・ハードウェアに加えて、このシステムを動作し、訓練プログラムを強化するためには、このシステムの運用で学生が使用するためにある種のオーディオ・テープレコーダーが必要となる。これらのテープレコーダーは図1で36および38として図示される。これらは、便宜上ホスト・コンピュータ34に接続されているが、テープレコーダーは独立とすることも可能で、その場合それ専用のヘッドセット36(a)および38(a)が具備されることを理解されたい。さらに、マイクロフォン36(b)および38(b)もテープレコーダーとともに具備される。したがって、テープレコーダー6および38は、ヘッドセット36(a)および38(a)に音声信号を提供するだけでなく、従来の方法でマイクロフォン36(a)および38(b)を通して入力を受け取ることもできる。テープレコーダーは、便宜上のためだけにホスト・コンピュータ34と結び付けて図示されるが、さまざまな試験、ゲームおよび本明細書中の訓練の様式で独立型とすることができる。
【0031】
コンピュータ・システム10は、適切な訓練プログラムを作成すること、および患者が自分の言語技能を練習するため、特に結果的に語音聴取または作成あるいはその両方での障害を生じさせる時間処理でのハンディキャップまたは欠損を克服するため、または通常の時間処理能力を向上させるための方法を提供することを目的とする。特に、コンピュータ・システム10は、異なる音を区別するために、学齢の児童、老人および外国語学習者を含むL/LDまたは健常者、あるいは失語症患者に媒体を提供するために活用される。例えば、CD−ROMに記録されるプログラムでは、5歳と10歳の間の若い児童らに、ゲームが提示され、その場合、コンピュータは訓練を提供するだけではなく、被験者の学生に褒美も与える。本発明で使用される例では、シーケンスは、道化師、動物、および類似物を示す音楽およびビデオ信号を、音声信号に対する背景として完備するサーカス・ゲームの周辺で作成される。
【0032】
図2は、訓練で利用される初歩的なゲームの1つとして提示される可聴周波音の例である。図2では、1つは上昇する周波数S1を伴い、もう1つは減少する周波数S2を伴う2つの異なる音声信号が、プログラムにより決定される刺激間間隔(ISI)をおいて一人の学生に提示される。図2の例で示されるように、信号S1およびS2は、連続して変化する。つまり、第1の提示では上昇する信号S1が先に聞こえ、減少する信号S2が後に続くが、第2の提示では、減少する信号S2の後に上昇する信号S1が続く。学生は、VDT18(図3を参照)に表示される2つのボックス40と42の間でカーソルを移動させることによりマウス28を活用し、回答するように求められる。
【0033】
例えば、大きくなる音はつねに左ボックス40で、小さくなる音はつねに右ボックス42となる。小さくなる音が先に聞こえた場合は、学生はカーソルを右側のボックスに移動し、右ボックスを「クリック」または触る。大きくなる音が先に聞こえた場合は、学生は左ボックスをクリックまたは触る。回答が正しい場合は、道化師が踊り、音楽が流れるか、なんらかの適切な視覚的な褒美が出される画面が表示される。
【0034】
複数回、例えば3回、正解が続くと、刺激間間隔が例えば200ミリ秒から195ミリ秒に短縮される結果となる。このような問題を、4週間から6週間の期間、一人のL/LDの児童に提示する場合に継続的な改善が示された。後述される実施した実験の結果でこれについてさらに多くのことが語られるだろう。
【0035】
患者は、いったん一定量の聴覚シーケンス試験を完了すると、同じまたは別のゲームのフォーマット内でVDT上の異なった種類の表示に移される。特に、停止子音/ba/および/da/のような音素識別を試験および訓練するための停止子音音節は、ゲームでのターゲット信号として使用される。訓練のこの部分は、さまざまな子音を区別する上で不全失語症の患者での共通した弱点を克服することを目的とする。例えば、2つの子音/ba/および/da/は、この状況ではきわめて頻繁に混同される。
【0036】
最初に、患者は前記と類似した方法で試験される。音素識別訓練では、患者は、ターゲット音素がシーケンスの中で最初に提示されたのか、2番目に提示されたのかを示すように要求される。例えば、まず、約500ミリ秒の長い刺激間間隔で音/ba/と/da/を区別することによる。訓練中、患者が音/ba/と/da/およびそれ以外の停止子音の認識で進歩を示すのに従って、ISIが短縮される。ただし、このシステムは、例えば、音素/ba/または音素/da/を採取し、高速で動作する子音または停止子音/b/と/d/をそれぞれ引き伸ばすことを想像する。通常の語音のパターンでは、これらの音素内の子音/b/および/d/は、約40ミリ秒から50ミリ秒で発生するが、文字「a」の続く母音の音は5倍または6倍の長さとなる場合がある。これらの音は図4に図表で表してある。患者のこれらの音の認識を高めるためには、音の子音部分、つまり/b/または/d/が約80ミリ秒に引き伸ばされるか倍増されると、患者は一貫して正確に音素を識別できることが判明している。初期の認識の欠如は、学習不能症を患う人での時間的処理における障害に起因すると考えられる。
【0037】
図5では、この引き伸ばされた子音の音が、母音の音長で相応の短縮を示し図示されている。母音の音の短縮は、訓練段階で達成される必要はないが、後述するように、学習不能症を患う人が、口頭であれ、映像であれ使用するための既存の記録を「写す」ことが必要となる場合には、記録の経過時間が変化しないように、「リアルタイム」で母音の音を切り捨てることが適切である。したがって、ある音素の一部の拡張は、話された単語の別の部分での同等な短縮により達成されなければならない。したがって、図5は、修正された音素の経過時間(240ms)が、図4に示される未修正の音素と同じであるこのような短縮を表している。元の音声情報を注意深く編集することにより、単語または文の間の静寂期間をある程度切り捨てることが可能となる場合がある。
【0038】
/ba/および/da/の識別あるいは同等な停止子音識別の試験は、前記に類似した方法で達成され、若い児童にさらに魅力的なものとするためにサーカスのようなゲームやそれ以外の文脈により達成できる。患者が指定された音長の子音の音で音素を正しく識別する能力の向上を達成するに従い、タスクは、停止子音音長を80msecから70msecに短くするなどによって、言語運用を改善させるためにさらに難しくすることができる。
【0039】
継続的な興味、多様性、および修正された語音の訓練資料での経験を提供するためには、言葉で表した資料が停止子音を伸ばすように修正され、修正された音が元のビデオ資料と一致させられる場合に、市販されている「ブック・オン・テープ("Books on Tape")」およびビデオゲーム、特に話内容が豊富な対話型CD−ROMを学習障害者も理解できるようになることが判明した。50%から100%の延長が適切であることが分かった。ビデオゲームでの場合のように、付属のビデオや動画グラフィックが存在する場合は、視覚的な資料も修正を必要としたり、音がリアルタイムの状況に適合するために補正圧縮を必要とする場合がある。この同じ手順は、速い子音が初期には適切に引き伸ばされる外国語の教授にも使用できる。
【0040】
延長に加えて、高速子音または停止子音を、例えば20dBそのエネルギーを増加することによって強調することも重要である。これにより、L/LDおよびそれ以外の時間処理障害を持つ人により非常に不完全に理解されるこれらの重大な語音の要素を学習するための相対的な特徴が強められる。この高速語音要素の差動増幅の時間エンベロープは、この高速子音または停止子音の要素語勢の第2の重要な変数である。
【0041】
試験の性質、本発明に関する訓練の性質、および既存の資料に対する必要な変更を簡略に説明したので、内容試験および訓練資料を作成したり、「ブック・オン・テープ」を写したり、あるいは既存のビデオゲームを修正し写すために使用できるソフトウェアに移ることが適切である。
【0042】
図6A〜6Dを参照する。図6A〜6Dのフローチャートは代表例にすぎず、本明細書中に図解されるような単独のプログラムよりはむしろ別々の増分で行うことができることを理解されたい。
【0043】
図6Aを参照すると、ユーザは、最初は、訓練資料を作成するべきか(記録専用−決定ブロック50)、「ブック・オン・テープ」を学習不能症の人が使用するために修正すべきか(音声専用−決定ブロック52)どうか、あるいはビデオゲーム付きのCD−ROMを修正すべきかどうか(マルチメディア−決定ブロック54)についての決定に直面する。前記のように、訓練資料は、例えば/ba/および/da/のような停止子音音素を含む。「ブック・オン・テープ」は、テキストの観点からは明瞭である。ただし、明確化するためには、学習不能症の人が、修正されない場合その人にとって分かりやすくない、修正済みの話された単語を理解できるように「ブック・オン・テープ」を修正することが適切であることが分かった。CD−ROMやマルチメディアにビデオゲームが含まれるのは言うまでもない。
【0044】
この場合に、作成する必要のある試験資料が図6Aに示される決定ブロック50で選択されると仮定すると、第1の工程ではデジタル・オーディオ・テープレコーダー、つまりDATで資料を録音することであり、その趣旨は語音の修正がアナログ・モードでは容易に達成できないということである図6Bに進む。
【0045】
次の工程は、語音のある種の部分の延長に適応可能な特殊フォーマットにデジタル・オーディオ・テープを変換することである。この発明を作成する上で使用されるフォーマットは、アップル・コンピュータにより開発され、シリコン・グラフィックスによりサポートされる音声情報ファイル・フォーマット、つまりAIFFである。このフォーマットは、他のサンプリング速度および整数表記(8ビット、11kHzなど)も使用できるが、22kHzというサンプリング速度での16ビット・ファイルをサポートする。
【0046】
動作ブロック60に示される次の工程は、コンピュータ・メモリ要件を削減するサブファイルに音ストリームを細分化することである。ここでもやはり、本発明では、音ストリームは30秒のサブファイルに細分化されたが、それ以外の長さも使用可能なプロセッサのメモリに応じて等しく適切であろう。
【0047】
その次に、ユーザは、時間スケールを修正するだけなのか、音声ストリームの語勢を修正するだけなのか、あるいは両方を行うのかについての決定に直面する。時間スケールを修正する場合には、さらなる方向のために図6Cに向けられる。この時点では、時間スケールの修正とは、停止子音およびそれ以外の高速語音要素を引き伸ばすことであり、リアルタイム環境の場合には、後続または先頭の母音の音を短縮することであり、それ以外の場合には文の間および単語の間に発生する「死んだ」時間を短縮することであることを理解すべきである。
【0048】
今度は、図6Cおよび動作ブロック66を参照すると、時間スケール修正は、まず、それぞれが複雑なスペクトルにより表される128の同時チャネルから構成される短期高速フーリエ変換により入信信号を変換する。数学の項での複雑なスペクトルは、電子分野および数学分野では有名なフーリエ変換で表される実数部分および虚数部分をそれぞれ有する複素数の列である。
【0049】
それから、この複素スペクトルは、動作ブロック68に示されるような周波数および振幅に変換される。スペクトルは、いったんブロック68に示されるような周波数および振幅表記に変換されると、各周波数チャネル内での時間領域で希望の拡大を作り出すために、連続する短期スペクトル時間スライス間で補間される。すなわち、時間のある特定の場合に指定された周波数および振幅は、高速フーリエ変換により決定される2つの隣接する周波数および振幅に比較され、それぞれの周波数チャネルに振幅の円滑な遷移が作成される。この場合では、音は文字通り広げられ、追加情報がフーリエ変換の音のスペクトルの表記のそれぞれの間に挿入(補間)される。時間内の50%の増加は、学習不能症の人に聞こえる停止子音の必要な変更を達成するには一般的に適切であることが判明した。したがって、スペクトルの補間で示されるブロック70の結果、時間スペクトルが拡大する。同じようにして、時間スペクトルを圧縮することが必要となる場合には、これは、ある特定のフーリエ変換のセットを削除してから、曲線を円滑化するために残りの隣接する変換の間で補間することによって、この段階で達成することができる。
【0050】
補間の後、動作ブロック72で示されるように追加合成が達成される。要約すると、追加合成工程は、周波数および振幅のそれぞれを時間領域に変換するか、あるいは事実上フーリエ逆高速変換を実行する。追加合成の後には、各チャネルは動作ブロック66の前に存在していたような形式の時間領域に戻される。動作ブロック72の後に、プログラムは図6Bに示されるようにメインストリームに戻り、語勢を語音に組み込むべきかどうかを判断する(図6Bの決定ブロック64を参照)。図4と図5の比較は、延長の概要表記を示す。
【0051】
前記のように、学習不能症の人が使用する語音および音素を作成する上では2つのことが達成できる。1つめは、説明したばかりの語音の時間スケールを修正することであり、2つめは、周波数内容での急速な時間変更を含む語音のそれらの部分を、エネルギー内容を増加させることにより強調することである。前記の/ba/または/da/表記のような停止子音が、音素の子音部分のエネルギーが増加するように修正されると、学習不能症の人の学習能力の向上も見られることが分かった。この場合、語勢が望まれるなら、動作ブロック74に示されるような多くの別々の周波数チャネルを作成するために、多重チャネル帯域フィルタリングで始まる図6Cに図解されるように、動的な語勢が引き受けられる。この場合、周波数チャネルの数は40で選択されている。しかし、別の数を選択する
こともできる。
【0052】
4次数ごとのバターワース(Butterworth)フィルターによるフィルタリングにより、各セグメントが30秒から成る過去に細分化された音ストリーム(動作ブロック60を参照)の時間間隔全体で40チャネルが作成される。動作ブロック76(図6C)では、チャネルのすべてが1−6kHzのフィルタでフィルタリングされ、約2−4kHzの間の平坦な帯域に該当する周波数の10−20dBの語勢を提供する。その後、動作ブロック78に示されるように30秒のサブファイルごとに40の周波数バンド・チャネルのそれぞれに総振幅エンベロープが抽出され、定義される。急速な変化(図6C、動作ブロック80を参照)を示すそれらのエンベロープにとって、抽出されたエンベロープは10−20dB強勢される。/ba/および/da/の例のような子音の場合、前記のように/ba/の中の/b/および/da/の中の/d/は、つねに、母音ブロックに見られる比較的に一定したエンベロープとは対照的に、周波数チャネルのエンベロープ内の急速な変化を示す。ある特定の語勢の程度が適用される特殊周波数チャネル、語勢をトリガする端言葉信号の急速な変化の発生をマークする総振幅エンベロープ周波数しきい値、および総振幅エンベロープ変化の急速性(周波数)の関数としての語勢の程度は、すべて別個に選択できる。この明細書中では、自然な語音の場合、約3から約45Hzの範囲、150%時間拡大した語音の場合、約2から約30Hzの範囲の周波数構成要素のある総振幅エンベロープで、2から4kHzのチャネルに、10−20dBの均一な語勢が適用された。語勢は、前記のように、2kHz以下および4kHz以上で漸次的に弱められた。
【0053】
動作ブロック82に示されるように新しいサブバンド・エンベロープを作成するために、それから各チャネルは、ブロック78で決定されたチャネルごとの初期総振幅エンベロープで得られた情報により分割することによって修正される。各チャネルにとって、結果として生じる情報は、動作ブロック80で作成されるチャネル・エンベロープにより乗算される。これから、チャネルごとにエンベロープ修正関数が生まれる。その次に、各チャネル・エンベロープ修正関数は、動作ブロック74で定義される元のチャネル信号でチャネルごとに乗算される。追加合成は、複数の周波数帯域チャネルが、デジタル化された語音に含まれる周波数範囲全体で1つのチャネルに対する加算によって変換できるように、動作ブロック84で実行される。いったん単独チャネルに到達すると、プログラムは、動作ブロック60で決定される音セグメントが動作ブロック86で示されるように再組立てできるように、コネクタEでの図6Bに戻る。
【0054】
図6Aに戻って参照すると、マルチメディアCD−ROMが存在する場合は、決定ブロック54で、それはCD−ROMが記録されていた音声フォーマットを識別するための動作ブロック88に分岐する。例えば、CD−ROMは、そのうちのいくつかがサウンド・リソース・フォーマット(Sound Resource Format)、クイック・タイム・フォーマット(Quick Time Format )、パコ・フォーマット(Paco Format)あるいはこのプログラムの続く工程で使用されるAIFFフォーマットである多くのフォーマットの内の任意の1つとして入ってもよい(AIFFだけではなく同等なプログラムを作成し、その他の音源で動作できることを注記すべきである)。さらに、情報はアナログの場合、デジタルに変換されなければならない。これはブロック88で達成される。
【0055】
便宜上、この時点でフラグが立てられ、プログラムがCD−ROMモードにあることを示す。CD−ROMフラグは動作ブロック90でセットされる。それから、プログラムは、コネクタFで図6Bに示されるメインストリームに分岐する。
【0056】
CD−ROMを使用すると、情報は、時間スケールを修正し、必要がある場合には前記とまったく同じ工程を使用して語勢を適用し、前記のように処理される。
【0057】
音は、動作ブロック86で再組立てされる。その時点で、CD−ROMフラグがチェックされ、オンである場合は、プログラムは図6D、動作ブロック92にシフトされ、修正された音は動作ブロック88で決定される元の音声フォーマットに変換し直される(図6Aを参照)。それから、音は、動作ブロック94に示されるように適切な位置でのソースに挿入し直される。つまり、CD−ROMのビデオまたは動画グラフィックあるいはその両方の部分が修正された音部分と同期される。
【0058】
同時に、ビデオまたは動画グラフィックスあるいはその両方の再生スピードは、ブロック96に示されるように修正された語音に一致するように調整される。代わりに、前記のように、修正されたバージョン内の語音の経過時間は、動作およびCD−ROM上での類似物がオリジナル・バージョンに対応するように、修正版での語音の経過時間が初版の語音の経過時間と同一となるリアルタイム・モードにすることができる。最後に、マスタCD−ROMが、動作ブロック98に示されるように作成され、プログラムが完了する。
【0059】
動作6Bに戻って参照すると、それから出力データが、「ブック・オン・テープ」用またはアナログ・テープを使用して管理できる試験用のアナログ・テープに変換して戻される。代わりに、試験および関連する試験グラフィックスのバージョンを、コンピュータ制御の元で管理できるデジタル形式のコンピュータに格納することもできる。
【0060】
「ブック・オン・テープ」が音声専用の状況であり、いったん「ブック・オン・テープ」がブロック100に示されるデジタル・オーディオ・テープに変換されると試験資料版に正確に対応することに注記すべきである。デジタル・オーディオ・テープヘのその変換に続き、プログラムは試験資料内でとまったく同じ工程に従う。
【0061】
実施例の動作は、前記資料を使用した下記の実験で例証される。
【0062】
実験−矯正研究被験者に使用される手順
特定の開発言語に基づいた学習不能症(L/LD)を患う7人の児童が、この研究で被験者として参加した。それ以外に大きな知覚、運動、認知、感情または神経性の障害を持たず、以下に示す基準を満たしたL/LDの児童が選択された。1)年齢に該当するウェシュラー(Weschler)知能スケールで非口述言語運用IQが85以上、2)言語発達試験の年齢に適した形式での平均「予測」達成レベルを下回る少なくとも1.5の標準偏差、3)聴覚処理のタラル試験で年齢および性別の平均値を下回る少なくとも1.5の標準偏差、4)正常な聴力の鋭敏さ、運動障害なし、調音器官の語音以外の運動に影響を及ぼす口部、運動、または構造的な障害なし、5)幼児期の自閉症、感情障害または明らかな神経疾患(発作、半身付随など)。
【0063】
スケジュール
矯正研究は6週間継続し、児童らは一日に3時間の直接訓練を週に5日間、ラトガーズ大学実験夏期講習で受け、毎日1−2時間の宿題を週に7日間行った。
【0064】
第1週には、彼らの時間処理しきい値だけではなく、一連の規格化された語音および言語手段での一人一人の児童の入門レベルの能力を決定するために、「ベンチマーク(Benchmark)」試験が実施された。規格化された語音試験および言語試験は、テープに記録されていたが、記録されていない場合には、規格化フォーマットに従って指定された。複数の形式の試験が利用できた場合には、つねに形式Aが使用された。「ベンチマーク」試験を記録または実行時、音響修正は使用されなかった。試験の言語運用は、試験マニュアルに従い、規格化された手順を使用して採点された。これらの規格化された語音および言語手段に加えて、聴覚処理のタラル試験(反復試験)が時間のしきい値を設定するために行われた。第1週の試験の結果は「試験前」と呼ばれる。第6週には、「ベンチマーク」手順のすべてが反復された。第6週の試験の結果は「試験後」と呼ばれる。
【0065】
第2週から第5週の間、矯正訓練が行われた。各児童は、2回の、20分の休憩/軽食セッションで分けられた20分の訓練セッションのシリーズを交代で行った。セッションは、各児童が、各20分のコンピュータ・ゲーム・セッション(セッションA、B)およびテープまたはCD−ROM(セッションC)を日に1度完了したことを保証できるようなやり方で予定された。聴取音韻学および文法のセッションのそれぞれ(セッションD、E、F、GおよびK)が週に2回行われた。児童が、一連の実際のまたは意味のない音節、単語、および文の中で聞いたことをまったく同じ言葉で反復しなければならない表現語音および言語のセッション(セッションH、I、およびJ)は、週に1回行われた。
【0066】
前記訓練セッションCからKの間、資料は、CD−ROMディスクから直接テープ記録されるか得られ、その後で、音声信号が本発明に記述される拡張および語勢のプロセスを使用して修正された。これらの修正済みテープは、その後、実験室でのセッションおよび宿題のセッションの間の両方、第2週から第5週の間、すべてのそれ以降の訓練セッションで使用された。規格化された語音試験および言語試験からの資料を使用していた訓練セッションの間、各試験のまったく異なった形式(B形式)が、特殊な語彙および試験項目が訓練されていないことを保証するために構築された。むしろ、訓練は、音韻学上の対照の知覚および作成、構文規則および語形規則に関する知識、および言葉の記憶技能を幅広く矯正することを目的とした。
【0067】
聴取音声学および文法のセッション(セッションD、E、F、G、およびK)の間、それぞれ処理された話命令が提示され、被験者はいくつかの絵の中から(例えば、「テーブルの下にある本を指しなさい」のような)その話命令をもっともよく表していた1枚を選択するように要求された。一度被験者が回答したら、実験者は「親指を上」または「親指を下」に向けるしぐさで回答が正解であったかどうかを示していた。回答が正解であるか、不正解であるかに関係なく、実験者は正しい絵を指し、児童の注意をもっとも顕著な情報を保持していた絵の部分に引き付けた。次に、同じ命令が、被験者が、今回は、正確な回答を先に知っている状態でそれを聞くことができるように、もう一度提示された。表現に関する語音および言語のセッション(セッションH、I、J)では、処理された資料は、フィードバックや反復を行わずに、逐語的に提示された。
【0068】
この研究の各児童は、以下の予定を完了した。(A形式を使用する未処理語音)ベンチマーク基準が、第1週(試験前)に行われた。処理済みの語音および言語の資料(B形式)および処理済みの物語の本およびテープまたはCD−ROMあるいはその両方での対話式教育資料を使用し、コンピュータ化された訓練ゲームおよび練習問題を含んだ訓練セッションが、第2週から第5週に行われた。ベンチマーク方法は、未処理語音A形式を使用して第6週にもう一度行われた。第7週から第11週には、(児童はこの期間自分の正規の学校の授業に戻ったけれども)専門化された訓練は行われなかった。児童は、第12週に実験室に戻され、その時点で再度ベンチマーク方法が行われた。第12週の試験結果は、「試験後の後」と呼ばれる。
【0069】
方法
ベンチマーク方法 − 第1週(試験前)、第6週(試験後)、および第12週(試験後の後)に実施される。
聴覚処理のタラル試験 − (反復試験、タラル、1980年):反復試験では、2つの異なる刺激(刺激1と刺激2)が組み合わされて使用される。自発的な調整手順を使用し、被験者は、知覚する各刺激を、回答パネル上に、重ねて取り付けられている2つの同一のキーのどちらかを押すことによって「反復」するように訓練される。複数の刺激から構成されるトライアルの場合、被験者は、刺激提示の順序で該当する回答キーを押すことによって、パターンを「反復」するように要求される。反復試験は、連続的に重ねて構築されるサブテストの階層セットから成り立つ。これらのサブテストは、1)検出、2)関連/弁別、3)順序制御、4)処理速度、および5)シリアル・メモリの調査を可能にする。検出サブテストで開始し、被験者は次にもっとも高いサブテストに進むために、正解の定められた基準に到達しなければならない。成績点はサブテストごとに受け取られる。加えて、完了した全サブテストの言語運用の複合成績点が示される。
【0070】
1)検出 − 被験者は、最初に1つの項目(刺激1)を提示される。実験者(E)は、刺激1が提示されるたびに、回答パネルの下部キーが押されなければならないことを示す。被験者は、回答するように激励され、訓練はこの刺激に対する5回の正解が得られるまで続行する。次に、もう1つの刺激(刺激2)で同じ手順が繰り返され、被験者は、回答パネルの上部キーを押すように訓練される。トライアル正解数が、刺激1と刺激2に関して記録される。
【0071】
2)関連/弁別 − 刺激1および刺激2は、一度に1つずつ無作為な順序で提示される。被験者は、刺激1が提示されるたびに下部キーを押し、刺激2が提示されるたびに上部キーを押すように訓練される。刺激1および2は、16の連続刺激(P<.002、二項試験 − シーゲル(Siegel)、1956年)のシリーズの12の正解の内10という基準が達成されるまで、誤りをすぐに訂正しながら、一度に1つずつ無作為な順序で提示され続ける。各被験者が刺激1と2を区別することができ、これら2つの刺激の組み合わせを活用するさらに複雑なタスクに進む前に、2つの刺激のそれぞれに正しい関連を完全に確立したことを保証することは肝要であるため、この非常に厳しい基準が利用される。基準に沿ったトライアル数および正解数が記録される。24回のトライアルの後、被験者が基準に到達できない場合は、試験はこの時点で終了する。
【0072】
3)順序制御 − 関連サブテストの基準に到達した被験者は、次に、500msecの刺激間隔で、順番に提示される刺激1および2に回答するように訓練される。4通りの考えられる刺激パターン(1−1、2−2、2−1、1−2)は、無作為順に提示される。被験者は、両方の刺激が提示されるまで待機してから、刺激が提示されるのと同じ順序で正しい回答キーを押すように要求される。方法は、Eにより、各被験者ごとに4回示される。それから、12回の試験トライアルが行われる。これらのトライアル中、最高3つのエラーが訂正される。このサブテストの点数が、正解の総数である。
【0073】
4)処理速度 − 順序制御サブテストで使用されたのと同じ2つの要素の刺激ペアの同じシリーズが再び提示される。ただし、このサブテストでは、ISIの期間が、被験者の回答に基づいて心理的なしきい値を設定するための上下階段手順を使用して、漸次に短縮される。被験者は、このサブテストを開始する前に2回の練習トライアルを与えられる。
【0074】
5)シリアル・メモリ − 低速ISI(500msec) − このサブテストでは、同じ2つの刺激要素が使用され、手順は以前の順序制御サブテストの場合と同じとなる。ただし、刺激パターンの要素数は上昇する。これらの刺激パターンは、2つの刺激要素の無作為な組み合わせから構成される3つ、4つ、5つ、6つ、または7つの要素から成り立つ。被験者は、3つの刺激要素(つまり、1−1−2)を取り入れる刺激パターンを与えられる。実験者は、刺激要素が発生した対応する順序で回答パネルを3回押されなければならないことを示す。それから、追加の3要素パターンが提示され、被験者は、パターン全体が提示されるまで待機してから、その刺激パターンに該当する回答を行うように指示される。各被験者は、5通りの3要素パターンを与えられる。被験者が5通りのパターンの内の3通りに正確に回答すると、次にもっとも高いパターン長で同じ手順が繰り返される。ただし、被験者がどのパターン長でも5通りのパターンの内の3通りに正確に回答できない場合には、このサブテストは終了される。シリアル・メモリ−低速サブテストの1つの成績点が得られる。この成績点は、125(5×3+5×4+5×5+5×6+5×7)の内から正しく回答された刺激要素総数から成り立つ。
【0075】
6)シリアル・メモリ − 高速ISI(10、70msec) − 被験者が500msecのISIでシリアル・メモリ・サブテストで5回のトライアルの内の3回で正確に回答した刺激長さのたびに、各追加トライアルが10と70msecのISIで行われる。高速ISIトライアルのすべてを組み合わせる1つのシリアル・メモリ−速サブテスト点数が低速ISIと同様に計算される。
【0076】
この研究では、反復試験は、非口頭聴覚刺激により行われた。2つの異なったコンピュータによって作成された複雑なトーンが使用された。刺激1は、100Hzの基本周波数、刺激2は、300Hzの基本周波数を使用した。しきい値は、それぞれ150msec、75msec、40msecおよび17msecのトーン長で被験者ごとに設定された。シリアル・メモリ・サブテストは行われなかった。
【0077】
試験は、コンピュータにより管理される。コンピュータ・ソフトウェアが、刺激提示、回答記録と採点およびしきい値追跡調査の規格化を保証する。聴覚刺激は、一定した超しきい値レベル(約65dB聴力レベル)でイヤホーン上、両耳に提示される。
【0078】
聴取言語試験
トークン試験(ディシモニ(DiSimoni)、1978年):トークン試験は、最初は、成人の失語症における聴取言語欠損を評価するために開発された。試験は、研究で広範囲に使用され、児童と成人の両方における聴取言語障害だけではなく、幼少期のL/LDの文書化された病歴がある成人における継続的な障害にもきわめて鋭敏であることが判明した。トークン試験は、5色の大小の円形と四角形を活用する。試験は、記憶負荷を増強する4つのサブテストおよび文法的な複雑度が増した5番目のサブテストから構成される。各被験者が試験語彙に精通していることを確認してから、試験は、単純な命令(すなわち、赤い円形に触りなさい)で開始する。それ以降の各サブテストでは、記憶負荷が高められた命令が出される(つまり、大きな赤い円形を触りなさい;赤い円形と黄色い四角形を触りなさい)。第5部では、命令は文法的な複雑度も増す(つまり、青い四角形の代わりに、白の円形を取り上げなさいなど)。正しい総複合採点だけではなく各サブテストの正解数が記録される。
【0079】
文法の聴取に関するビショップ(Bishop)試験(TROG):(ビショップ、1979年)ビショップは、聴取言語を評価するための迅速な方法であるTROGの開発に多数の年月を費やした。この方法は、成人の失語症患者だけではなく、児童の聴取言語疾患を評価する上でもきわめて鋭敏であることが判明した。TROGは、英語での文法上の差異の理解を評価するために作られた個々に管理される複数選択肢試験である。試験は80項目から成り立っている。被験者は、各項目でEによって話される句または文に対応する絵を4つの選択肢の列の中から選択するように要求される。試験は、各ブロックが特殊なタイプの語形または構文の差異についての理解を試験する4つの項目から成るブロックに分割される。試験は、合格ブロック数単位で採点され、合格の基準は、そのブロックの中の4つすべての項目が正しく回答されていることである。差異は、難しさが増す順序で配列される。試験は、5つの連続するブロックが正解であるという基準線で開始され、5つの連続するブロックで失敗した場合に中止される。試験は、4歳から12歳の2,000人の英国人児童で規格化され、未処理点数を標準点数に変換するためのテーブルは試験マニュアルに付属している。正常な成人の点数は、天井レベルに近づく。アベダト(Abbeduto)、ファーマン(Furman)、およびデイビーズ(Davies)による研究(1989年)が、試験が英国人の被験者だけではなく米国人にも適していることを証明した。
【0080】
カーティス(Curtiss)およびヤマダ(Yamada)総合言語評価(CYCLE)(カーティスおよびヤマダ、1980年):CYCLEは、過去に利用できたあらゆる言語評価バッテリーをはるかに超える包括的な方法で聴取言語および表現言語を評価するために使用できる道具である。まだ市販されていないが、研究データは2歳から8歳までの70人の健常児および4歳から8歳までの言語障害児で収集されている。試験に関するかなりの信頼性および有効性データが入手できる。CYCLEには、1)聴取、2)顕在化、および3)自由語音分析の3つのバッテリーがある。この研究では、聴取バッテリー(CYCLE−R)だけを使用した。
【0081】
CYCLE−Rの項目は、音韻学、語彙および相対的な意義論、屈折および文法上の語形論、ならびに構文についての受容知識を試験するために使用された。試験は、前記言語学上の分野のそれぞれの2歳から9歳を対象とする項目1式から成り立っている。言語領域の範囲および対象となる年齢範囲で、これはこの研究にもっとも理想的に適した試験である。試験の各項目には、容易に絵で表すことができ、若い就学前児童に馴染みのある語彙が含まれている。また、各項目は、可能な場合、文法のそれぞれの面についての理解を別個に確認できるように、1つの文法要素または構造だけを試験する。複雑な構造についての知識には、関係する構成要素の単純な構造についての知識が必要となるため、すべての試験項目は、発達にそって配列され、児童がその前のレベルの項目を合格して初めてさらに複雑な項目が管理される。あらゆる項目には、5つの例文が含まれる。このようにして、各構造は、言語運用の一貫性を確立するのに十分な時間試験され、偶然だけによって児童が優れた言語運用をおさめることができないというある程度の保証が存在する。各例文には、子供が偶然任意の項目の合格基準に到達できないことをさらに保証できるほど十分な選択肢が回答列に含まれる。
【0082】
CYCLE−Rは、それを若い児童を試験するためのうまく設計された聴取手段にする複数の機能が取り入れられている。絵を含む各項目が、試験文で言及されるのと同一の要素から成り立つが、正しい試験の絵の関係性とは異なる関係性となっているデコイを使用する。さらに、試験官が、児童が試験文の最初の部分だけに注意を払ったのか、あるいは最後の部分だけに注意を払ったのかを判断できるようにするデコイも含まれる。余分な言語キューおよび冗長な言語キューは、すべての項目から排除されている。したがって、試験列や試験文自体には、試験の言語運用を助けるキューは含まれない。すべての絵は、関連情報を直接的に表す明瞭で、単純な線の図面である。つまり、児童に課される解釈負荷はない。さらに、列の中のすべての絵の間は明確に分離されており、すべてのイラストは児童が見て、解釈できるほど大きい。排除のプロセスが言語運用の上昇に使用できないように、絵の列の中の複数の選択肢が試験されることは決してない。すべてのデコイ選択肢だけではなく、正しい選択肢は、項目全体で無作為化される。例えば、正しい選択肢は各列位置で等しく頻繁に発生する。各区別は、複数のトークン、つまりその区別を反映する語彙項目により試験される。CYCLEの成績は、規範的なデータに基づいた年齢に同等な点数に変換できる未処理点数を生み出す。
【0083】
聴覚弁別のゴールドマン・フリストー・ウッドコック(Goldman-Fristoe-Woodcock)(GFW)試験(ゴールドマン、フリストー、およびウッドコック、1970年):この試験は、3歳8ヶ月の子供から成人までの制御された傾聴状態での単音節単語の話音弁別を評価するために作られた。試験は、以下の2つの部分から成り立っている。1)試験語彙の知識を判断するための前試験、2)絵を指すフォーマットによる単独の単語の聴覚弁別。被験者は、テープレコーダーで提示される1つの単語(例えば、湖(lake))を聞き、4枚の絵(湖(lake)、熊手(rake)、徹夜の集まり(wake)、蛇(snake))の中からその単語を表す絵を選択しなければならない。すべての最小のペア語音音対照が、この試験での弁別に関して評価される。
【0084】
表現言語試験
有節発音のゴールドマン−フリストー試験(ゴールドマン&フリストー、1986年):有節発音のゴールドマン−フリストー試験は、言葉の中に存在する子音の音をはっきりと発音する児童の能力の組織的かつ包括的な基準となる。その結果は、すべての必要な音素の基準となり、誤作成のタイプだけではなく、どの音が不正確に作成されるのかを判断する。最初の位置、真中の位置、または最後の位置にある主要な話音を顕在化するために一連の絵を使用する単語サブテストの音が、それぞれの子供に投与される。試験マニュアルは、2歳から16歳までの規範データを提供する。
【0085】
文の記憶サブテスト(スタンフォード−ビネット(Stanford-Binet)知能スケール:ソーンダイク(Thorndike)、ヘーゲン(Hagen)&サトラー(Sattler)、1986年):このサブテストは、意味のある文を記憶する能力を測定する。被験者は、各文を聞いて、継続する前にまったく同じ言葉でその文をただちに再生することを要求される。各文は、合格/不合格で採点され、4つの文が不合格になると、試験は中止される。文の長さおよび構文の複雑度は、項目が増えるに従って増加する。2歳から23歳までの規範データが提供される。
【0086】
CELF − 想起文サブテスト(セメル(Semel)&ウィーグ(Wiig)、1980年):言語機能総合評価(CELF)言語バッテリーは、6歳から16歳の米国の児童の大規模なサンプルで規格化された。実物教授項目および練習項目の後、被験者は、まったく同じ言葉で、長さと複雑度が増す一連の26個の文を反復することを要求され、回答は、ただし反復の場合3点、誤りが1つある場合には2点、2個から3個の誤りがある場合には1点、4個以上の誤りの場合にはゼロ点が与えられる。試験は、4つ連続してゼロ成績点がついた後に中止される。試験マニュアルは、成績点を概算された点数に変換するためのテーブルを提供する。
【0087】
訓練セッション
特にこの研究のために、11の訓練セッションが開発された。セッションは、前記予定に従い無作為順序で20分間行われた。2つのセッション(セッションAとB)は、すでに本発明の実施例(前記参照)として詳細に記述されたコンピュータ・ゲーム・フォーマットを使用するので、ここでは簡略に記述するだけである。それ以外のセッション(セッションCからK)は、本発明の実施例(後記参照)として詳細に記述される方法を使用し、音響波形がコンピュータにより拡大され、強化されるテープに記録されたまたはCD−ROMの話および言語のセグメントを使用する。
【0088】
セッションA − 非口述時間順序制御訓練
CD−ROMに搭載されている対話型マルチメディア・ゲーム(サーカス・シーケンス・ゲーム)は、より高速の提示速度で非口述音の時間順序制御(例えば、周波数変調済みスイープおよび安定状態トーナル複素語)を訓練するために使用された。非口述刺激は、特に人間の言葉の構成要素を表すために構築された。例えば、速度変化、開始周波数と終了周波数、および周波数変調済みスイープの刺激音長は、健常者の言葉の単独子音語幹形成辞に類似していた。同様に、安定状態トーナル複合体は、人間の言葉の中の母音を模倣するために構築された。被験者は、刺激要素が短い刺激間間隔(ISI)(図2を参照)で分離されていた4通りの考えられる2要素刺激シーケンスの組み合わせから無作為に選択された2要素刺激シーケンスを聞くように訓練された。被験者は、刺激提示の順序を示すためにコンピュータのタッチ・スクリーン上のパネルを押すことにより回答するように要求された(図3を参照)。正しい回答は、つねに正しい回答と結び付いた単独の短い音の提示により強化され、ビデオ・スクリーンに累積成績点として表示される点を得る。加えて、連続して3つの正解が得られた場合、この正しい回答の文字列が、動画シーケンスの大規模なプールから選択される短い動画により褒美を与えられた。動画の高品質およびさまざまな多様性が、ゲームをプレイする上での興味を維持させるのに役立った。プログラム自体は、それ以降の刺激シーケンス提示の刺激間間隔を決定するために、適応追跡調査手順を使用した。つまり、被験者が刺激シーケンス順序を識別するのに成功すると、タスクは、2つの刺激の間の間隔を短縮することにより漸進的にさらに難しくされた。
【0089】
セッションB − 音節弁別
CD−ROMに搭載された対話型マルチメディア・ゲーム(音素道化師ゲーム)は、最小の音素ペアを使用して音節弁別を訓練するために使用された。通常の音素ペアと、時間キューを強化するために音響信号の特殊な面をコンピュータにより修正した修正済み音素ペアの両方が、この訓練練習で使用された。さらに、2つの音素ペアの間の刺激間間隔の長さは、規則正しく変化させられた。これによって、さまざまな音素提示速度での経験および訓練が実現された。コンピュータ・スクリーンには、3つの道化師の顔が含まれるサーカスのシーンが表示されていた。最初、コンピュータ・スクリーンの左側に1つの道化師の顔が表示された。被験者は、この道化師の顔をタッチすることにより各トライアルを開始した。この道化師は、一度タッチされると、ある特定の音節(例えば、/ba/)を言い、大文字Bが道化師の顔の上に表示された。次に、一番左側の道化師が消え、2つの新しい道化師がスクリーンに表示され、さらに2つの音節が次々に提示された。被験者のタスクは、第1の道化師により作成された音および文字に一致したのが第1の音節なのか、それとも第2の音節なのかを判断することであった。L/LD児童は、コンピュータ・スクリーンの右側に表示された第1の道化師または第2の道化師にタッチして、自分の回答を示した。回答が正しいと、ターゲット文字(例えばB)がタッチされた道化師の顔の上に表示され、さまざまなコンピュータ動画、「褒美音」および点により褒美が出された。累積成績点は、コンピュータ・スクリーン上に表示された。不正解の場合は、褒美は出されず、被験者は次のトライアルに進んだ。さらに、トライアルの各50個のブロックが完了した後で、年齢に適した動画映画からの短いビデオ・クリップが、ゲーム・スクリーンに埋め込まれたように表示された。これらのビデオ・クリップは、練習を継続した結果、動画映画の次のセグメントが提示されるように連続していた。
【0090】
セッションC(物語を傾聴)
児童に人気のある物語の本(例えば、ディズニー(Disney)およびセウス(Seuss)の本)が、デジタル・オーディオ・テープレコーダー(つまり、DAT)上でテープに記録されていた。次に、デジタル・オーディオ・テープは、話の波形のある部分の延長および強化が、前記の本発明の項の実施例に記述されるように、実行されるように、デジタル形式でコンピュータに転送された。代わりに、市販されている対話型マルチメディアCD−ROM児童の物語が使用された。CD−ROMのデジタル音声部分は、前記のように処理できるように、抽出され、コンピュータに転送された。いったん修正されると、音声信号は「ブック・オン・テープ」バージョン用のアナログ・テープに変換し直されたか、あるいはCD−ROM物語に適切なデジタル形式に挿入し直され、修正された言葉を記憶した新しいCD−ROMが作成された。この訓練セッションで使用されたのは、これらの言葉が修正された「ブック・オン・テープ」およびCD−ROMベースの物語であった。被験者は、好みの物語を選択し、実験室で毎日少なくとも1回、20分のセッションの間に、本が付属するテープ、またはCD−ROMのどちらかで、物語を聞いた。毎日、各児童は、テープと付属本、またはCD−ROMベースの物語を実験室の図書館から借り出し、毎晩1時間から2時間宿題として聞くために自宅に持ち帰った。資料は翌日または週明けに返却され、次の夜または週末の宿題ように新しい物語が選択され、物語が児童の間で循環できるように、利用できる多様性が増した。被験者は、聞いた物語ごとに50点を受け取った。親は、宿題セッションのこれらの点を、それらが児童の毎週の成績点に加算されるように追跡調査した。
【0091】
セッションD − 聴取文法訓練(CYCLEフォーマット)
聴取文法の特殊な要素を訓練するためには、CYCLEフォーマットが使用された。元のCYCLE(A形式)の各項目ごとに、訓練(B形式)で使用される項目の新しいシリーズを作成するために、新しい項目が選択された。語彙および内容は変更されても、本質的な意義、構文、および語形の要素が同じままとなるように、項目が選択された。例えば、CYCLE A形式に表示される「魚が泳いでいる」という文を取ってみる。児童は、2枚の絵の間で泳いでいる1匹の魚を示す一方と、泳いでいる複数の魚を示すもう一方を選択しなければならない。正しく回答するためには、人は、この場合、動詞が複数についての情報を伝えているため、唯一の正解は複数の魚を示す絵であることを理解しなければならない。これは、複数化についての情報が動詞「いる("are")」だけではなく名詞「犬("dogs")」の両方で発生する文「犬が走っている("dogs are running")」で発生するような大部分のそれ以外の形式の複数化とは異なる。訓練の構成要素にとって、同等な一文が作成され、複数化はB形式に表示された動詞「鹿は食べている("the deer are eating")」によってだけ伝えられた。すべての項目は、語彙を変化させながら、理解に必須の文法上の構成要素を維持するために同じように変換されたため、ある特殊な項目についての訓練知識だけが達成されたのではなく、やや文法上の規則も従われたことを保証する。B形式の項目はテープに記録され、その後、前記手順を使用して音響波形のコンピュータ修正にさらされた。
【0092】
訓練中、被験者は、各命令を表した絵を指すように言われた。被験者は、正解または不正解(つまり、「親指上」または「親指下」)を示す即座のフィードバックを受け取った。回答が正解であったかどうかに関係なく、命令は、児童が、実験者がどれが正しい絵であったのかを示した後に、直接命令を聞くことができるようにもう一度繰り返された。被験者は、このセッションを完了するために、壁のチャートの上に貼られるステッカーを受け取った。
【0093】
セッションE − 聴取記憶訓練(TOKENフォーマット)
TOKEN試験フォーマットは、聴取記憶を訓練するために使用された。前記と同じ手順を使用すると、TOKEN試験のA形式の項目が、B形式を構成する項目の新しいセットを作成するために修正された。例えば、TOKEN試験のA形式に表示される項目「大きい赤い円形と小さい緑の四角形を触りなさい」は、B形式の「小さい黄色の四角形と大きい青の円形を触りなさい」に変更された。新しいB形式項目は、前記と同じように、テープに記録され、コンピュータで修正された。訓練には、やはり前記のフィードバックによる各項目2回の反復が含まれた。被験者は、このセッションを完了するために、壁のチャートの上に貼られるステッカーを受け取った。
【0094】
セッションF − 聴取文法訓練(TROGフォーマット)
TROG試験は、CYCLEと形式が類似する。この方法のB形式を作成し、前記のように訓練で使用するための音響をコンピュータで修正するために、同一の手順が従われた。訓練手順および強化は、CYCLEセッションおよびTOKENセッションに使用されたのと同じであった。
【0095】
セッションG − 聴取音韻学訓練(GWFフォーマット)
GFWフォーマットは、聴取音韻学を訓練するために使用された。ここでは、被験者はテープレコーダーを介して提示される1つの単語を聞き、その単語を表す絵を、話の1つの区別特徴だけで異なる複数の単語を表すその他の絵の中から指差す。前記に類似した手順を使用し、代わりの形式(B形式)が聴取音韻学を訓練するために作成された。新しい項目はテープに記録され、訓練セッション中に提示するためにそれに従い修正された。もう一度、被験者は、正解について事前に知った上で与えられる2回目の反復で各項目を2度受け取った。被験者は、強化のためのステッカーを受け取った。
【0096】
セッションH − 文模倣訓練(CELFフォーマット)
CELF文模倣複試験の項目は、B形式用の項目を作成するための前記の方法と同じように修正された。ただし、これらの項目の場合、言語の同等な周波数およびほぼ類似した音韻学上の複雑度を持った単語の選択に、特別かつ慎重な注意が払われた。それから、B形式の項目が、前記のように、テープ記録され、修正された。被験者は、これらの新しい修正済みの文が提示され、それらをまったく同じ言葉で反復するように求められた。フィードバックは示されなかった。音韻学上の作成誤りを含むすべての誤りが採点された。CELFは、反復のために、文法的に正しい文と文法的に正しくない文の両方を含む。これらのタイプの項目のそれぞれの別個の成績点が分析される。
【0097】
セッションI − 表現記憶訓練(文フォーマットの記憶)
スタンフォード−ビネットの文の記憶複試験は、このセッションのための訓練項目を作成するためのモデルとして使用された。このセッションは、文法上正しい文だけが使用されるという点を除き、前記セッションH(CELF)と同一である。項目作成、刺激修正および試験手順のために従われた手順は、前記手順と同一である。
【0098】
セッションJ − 実音節および無意味音節および単語の反復
特にこの研究のために、無意味な音節および単語の一覧が作成された。刺激セットの音響および音声の特徴に慎重な注意が払われた。この訓練は、入力の音響変更の結果、分析の音響、音声、および音韻学のレベルでの語音の出力の有節コーディングが改善されるかどうかを判断することを目的とした。音響時間キューが変更された資料を使用する訓練の結果、語音作成でのこれらの同じ時間キューの制御が改善されるかどうかを判断することは特に重要であった。
【0099】
セッションK − 聴取文法訓練(サイモン・セズ(Simon Says)フォーマット)
聴取文法および記憶を訓練するためにサイモン・セズ・ゲーム・フォーマットが使用された。特にこの訓練のために、他の聴取言語訓練セッションのいくつかで現れる項目に類似した項目が作成された。ただし、このフォーマットでは、該当する絵を選択したり、静的な円形および四角形を指すことによって回答する代わりに、被験者は、一連の小道具を使用してそれぞれの命令を演ずるように要求された。訓練項目は作成され、テープに記録されてから、前記の同じ音響修正を使用して、コンピュータにより修正された。いくつかの項目は、サイモンがするように言ったことを正確に行うようにという児童の命令である「サイモンが言う("Simon Says")」で始まった。ゲームの楽しさを高めるために、項目は、前の句「サイモンが言う」なしに挿入された。これらの後には、「私に捕まらないでください。サイモンを待ってください。」のような句が続いた。項目は、特に、(「鼻を触ってください("touch your nose")」対「爪先を触ってください("touch your toes")」のような)個々の音韻学上の差異または(「片足でとびなさい("hop on your foot")」対「両足でとびなさい("hop on your feet")」のような)文法上の差異を要求して構築された。その他の項目は(大小のさまざまな色のクレヨンおよびスプーンがプロップとして利用できる場合の)「大きな青のクレヨンの周りを走りまわってから、小さな黄色のスプーンを取り上げなさい」のような聴取記憶を訓練するために構築された。これらの命令のいくつかの前には「サイモンが言う」が来るが、他の命令の前には来なかった。もう一度、他の聴取言語訓練セッションのそれぞれでの場合のように、各命令は2度反復され、児童が不正解であった場合には正しい動作を示すために、児童の回答の後にフィードバックが出された。この後に正解を事前に知った状態で命令を聞いて、演じる2度目の機会が続いた。
【0100】
強化
プログラム全体でのやる気を維持するために、一連の点とステッカーをベースにした強化システムが作成された。セッションAとBで毎日使用されたコンピュータ・ゲームでは、回答のたびにその後にスクリーンに累積表示された獲得された点とステッカーの継続中の合計が、プログラムの中に組み込まれていた。加えて、これらの訓練ゲームでの興味を維持するために、間欠コンピュータ動画および映画クリップが使用された。コンピュータ・ゲームをプレイすることによって獲得された点とステッカーは、毎日の終わりに、グループ活動として、各児童の累積を週ごとに追跡調査した壁に張られたチャートに転載された。各週の最後に、児童は「サーカス・ストア」からおもちゃを「購入する」ためにこれらの点を使用できた。店には、獲得点数に対応する「価格」が記されたおもちゃがあった。
【0101】
これらの週ごとの褒美に加えて、児童は、その他の20分間の訓練セッションのそれぞれを完了することに対してステッカーを獲得した。ただし、コンピュータ・ゲームで使用された点数システムとは異なり、これらは言語運用に基づくのではなく、セッションの完了を示した。これらの「特別ステッカー」は、児童が毎週これらの訓練セッションを通じた自分達の進歩をモニタできるように、チャートに貼られた。いったんチャートがいっぱいになると(児童がその週の必要セッション数を完了したことを示す)、児童は「リスニング・ストア」や「スピーキング・ストア」からおもちゃや食べ物の品目を選択できた。これらの補強材は、個人的な関心および実験者による強化とともに、6週間のプログラムを通してやる気を維持する上できわめて成功であったことが分かった。
【0102】
結果
この研究では、2つの訓練手順が利用された。第1に、本発明の実施例に記述されるサーカス・シーケンスCD−ROMゲーム・フォーマットを使用して第2−5週の間に毎日時間統合速度を選択して訓練することにより、L/LDの児童が第1週(試験前)に示したきわめて損なわれた時間しきい値を変更しようと試みられた。第1週と第6週に、時間処理しきい値の変化を評価するために使用されたベンチマーク基準として、タラル反復試験が行われた。図7の下部に示されるように、試験前(第1週)、各児童は、ISIが0msecの150msecの長さのトーンを使用した反復試験の2つのトーン順序制御複試験を行う能力を示した。これは、じゅうぶんに長い刺激が提示された場合には、各児童がタスクを理解し、高い確度のレベルで回答できたことを証明する。しかしながら、刺激の音長がそれぞれ75msec、40msec、または17msecに短縮されると、L/LD児童の言語運用は低下した。6歳から8歳の正常な制御の児童は、2つの75msecトーンの間に8msecしか必要としないことを思い出す。対照的に、L/LD児童は平均221msecを要した。同様に、刺激提示の音長が40msecまたは17msecに短縮されたときにL/LD児童が示す欠損は、漸次的に高まっていった。
【0103】
サーカス・シーケンス・ゲームを4週間訓練した後の結果は劇的である。図7の上部に示されるように、各児童の(第6週試験後)時間処理しきい値は大きく減少した。グループの合計も、この顕著な改善を反映する。例えば、75msecのトーン長を使用した場合、グループの平均ISIは試験前の221msecから試験後の32msecになり、時間処理速度は正常な範囲である8msecにはるかに近づいた。同様に、40msecトーン長の平均しきい値は、試験前の640msecから286msecという試験後速度になり、やはりかなりの著しい改善を示した。
【0104】
これらのデータは、L/LD児童における時間統合欠損の修正のための、本発明で実現された、時間訓練手順(サーカス・シーケンス・ゲーム)の効力の強力な証拠となる。
【0105】
本発明で作成された第2訓練手段は、語音および言語の機能を訓練するために、コンピュータにより拡張、強化された語音を活用した。より高度な言語学上の能力(語形論、意義学、構文)だけではなく基本的な音韻学上のプロセスの発育速度が、コンピュータにより修正された音響入力を通じて強化されたかどうかが特に重要であった。訓練に使用された流暢な語音で加えられた音響修正の結果、語音(音韻学)および言語理解の聴取面が最高に改善されると仮定された。この仮説は、第1週(試験前)から第6週(試験後)の言語運用を、聴取音韻学および言語処理のベンチマーク試験のそれぞれで比較することにより、直接試すことができる。図8から図11では、データが、最初に研究に参加する個々の被験者のそれぞれに提示されてから、平均値、つまりベンチマーク聴取言語試験のそれぞれの平均が提示された。試験マニュアルで利用できる場合には、試験の規格化された規範データに基づき、年齢に同等の成績点が提示された。年齢に同等なものが入手できない場合には、年齢または未処理点数の百分順位が提示される。
【0106】
図8から図11に示されるように、聴取言語試験および記憶試験のそれぞれに著しい改善が示された(セッションD、E、F、G)。試験前成績点と試験後成績点の間の差異は、きわめて統計的に重要であり、言語の文法上の理解(TROGとCYCLE)(図9と図10)試験および言語の記憶(TOKEN試験)能力(図11)だけではなく、言語の音韻学(GFW試験)(図8を参照)を含む言語聴取での顕著な改善を示す。これらのデータは、L/LD児童にとって最大の困難を引き起こす核となる聴取言語機能での著しくすばらしい改善を示す。さらに、L/LD児童の長期的な結果の研究で彼らのその後の学問的な達成を予言するのにもっとも役立つと示されたのが正確にはこれらの能力である。実際、L/LD児童の過去に完了した5年間の長期的な研究で分かった改善に匹敵するか、あるいは改善を超える改善は、6週間以内に起こった。
【0107】
サンディエゴ長期研究(タラルおよびカーティスが指揮、1980−1987年)では、現在の研究で使用されるのと同じ基準に基づいて選択された60人のL/LD児童が、5年間という期間評価された。同じベンチマーク基準の多くが過去の長期研究と現在の訓練研究の両方で使用されたため、直接的な比較を行うことができる。図12は、長期的な研究での、4歳から8歳までのL/LD児童のCYCLE試験での改善結果を示す。L/LD児童は、長期的な研究の時間過程の間に障害に対して公立学校内で語音、言語、および読書の療法を受けていた。したがって、公立学校でL/LD児童が現在利用できる最新の療法を、本発明で実現された療法で比較することができる。試験前の現在の研究では、1つのグループとしてのL/LD児童(平均年齢=7.2歳)は、CYCLE試験での4.2歳の正常に発育している児童に同等の水準の言語運用をおさめた。ただし、コンピュータ・ゲームを使用する時間順序制御訓練だけではなく、音響的に修正された語音刺激による訓練に4週間参加しただけで、これらの児童は、5.8歳の正常に発育している児童に同等な水準で言語を処理することができた。対照的に、サンディエゴ長期研究の結果は、L/LD児童が言語理解の発達において非常にゆっくりと進歩し、正常に発達している児童が2年半以内に習得するのに同等の技能を発達させるおに5年を要することを示した。著しく対照をなしたことに、現在の矯正研究に参加しているL/LD児童は非常に急速な進歩を遂げた。コンピュータにより修正された語音のによる訓練および時間統合訓練を4週間受けただけで、彼らの核となる言語理解能力の発達が1.6年分改善されたのに対し、長期研究のサンプルは、従来の語音、言語および読書の療法を受けた5年間に同じ基準で2.6年分しか改善されなかった。類似した結果は、トークン試験およびGFWでも見られる(図13、図14を参照)。
【0108】
語音の音響入力のコンピュータによる変更は(音韻学のレベルから構文のレベルまで)明確に言語の聴取面を訓練することを目的としていたが、語音の有節発音および表現言語機能の基準も研究全体で収集された。予測した通り、これらは明示的にこの研究で訓練されたわけではないので、表現言語基準に関しては試験前から試験後まで示された改善は少なかった(図15、図16を参照)。
【0109】
これはこの研究で直接訓練されなかったが、音韻学のレベルで語音有節発音での著しい改善が達成されたことを注記するのは励みになる。L/LD児童の過去の研究は、彼らの時間欠損が、音韻学上のレベルだけではなく音響レベルでの語音入力と出力の両方に影響を及ぼす知覚組織および運動組織の両方で発生することを証明した。したがって、時間的に修正された語音にさらされることだけではなく、知覚レベルでの時間統合の速度で訓練を行うことにより、知覚処理、ひいては聴取言語理解が改善されるだけではなく、語音の有節発音における時間キューの作成の運動精度の率も向上する可能性があると仮定することができる。ゴールマン−フリストー有節発音試験で見られる著しい改善(図17)は、音韻学上のレベルでこの仮説を一時的に裏付ける。強力な裏付けは、この訓練研究の間に得られる語音作成データに基づいた音響レベルと音声学レベルでの正確な時間運動計画についての将来の詳細なコンピュータ分析を待っている。しかしながら、音韻学レベルでの現在の分析は、語音の有節発音での大きな改善を示し、これらの知覚訓練基準が聴取言語および読書の面を改善する可能性があるだけではなく、これらの児童の語音出力の有節発音符号化の時間精度(ひいては明瞭度)の改善に直接的な影響を及ぼす可能性があることを示唆する。
【0110】
結論的に、これらのデータは、本発明で実現される両方の効力についてのきわめて強力な裏付けとなる。これらの療法が、L/LD児童の時間処理、語音、言語、および読書の能力を著しく改善すること、および改善の規模が、現在利用できる療法の結果生じると示されたものよりはるかに大きいことが証明された。
【0111】
7人の児童の内の6人が、修正済みの語音または時間処理の訓練を受けずに6週間受講後に、第12週の試験後評価に役立った(A3としてグラフ表示される)。A3試験結果として過去の数字で見られるように、療法が中止された時点で聴取言語能力にはある程度の低下があったが、進歩のほとんどは維持されていた。これらのデータは、根本的な語音、言語、および読書の機能を完全に矯正し、「固める」には、さらに長い訓練期間が必要となる可能性があることを示唆する。これにも関らず、以上のデータは、この短い訓練期間中になされた進歩の大きな割合を、さらに直接的な訓練を積まなくても維持することができるという点で、有望である。
【0112】
したがって、本発明は、学習不能症を患う人にとっての必要性を満たすだけではなく、不全失語症または失読症であり、受け取られた停止子音を迅速に処理できないため、話された単語の意味を把握できない人で発生する時間処理欠損を「治療する」能力を提供した。
【0113】
前記に説明され、実験が詳細に概略された情報は、本発明の実践を可能にするのに十分な開示であると感じられる。したがって、その動作方法についてさらに説明は行わない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】聴覚による時間処理欠損の矯正を実現するために使用されるコンピュータ・システムの一般的な図である。
【図2】刺激間間隔(ISI)によって分離される低周波数から高周波数に変調済みのスイープ(S1)、および高周波数から低周波数に変調済みのスイープ(S2)の分光写真プロットである。
【図3】グラフィック・アイコンおよびその上にある記号によるVDTの描写である。
【図4】時間に対して周波数を描く、通常の子音−母音組み合わせの図表表記である。
【図5】時間に対して周波数を描く、時間が拡大された子音−母音組み合わせの図表表記である。
【図6A】訓練プログラムを作成するために使用されるコンピュータ・プログラムを示すフローチャートである。
【図6B】訓練プログラムを作成するために使用されるコンピュータ・プログラムを示すフローチャートである。
【図6C】訓練プログラムを作成するために使用されるコンピュータ・プログラムを示すフローチャートである。
【図6D】訓練プログラムを作成するために使用されるコンピュータ・プログラムを示すフローチャートである。
【図7】7人の選ばれたL/LDの児童らの訓練前および訓練後のタラル(Tallal)反復試験の結果のグラフである。
【図8】可能である場合には、試験前、試験後、および訓練期間後の3ヶ月の両方の同等の年齢に対して描かれた実年齢を示す、7人のL/LDの児童らの聴覚弁別のGFW試験の結果のグラフである。
【図9】7人のL/LDの児童らの同等な年齢を示す、試験前回数および試験後回数に関するTROG(文法の聴取に関する試験)の結果のグラフである。
【図10】試験前回数および試験後回数、ならびに可能な場合には訓練3ヶ月後の7人のL/LDの児童らの総合言語評価(CYCLE)試験の結果のグラフである。
【図11】試験前回数および試験後回数、ならびに可能な場合には訓練3ヶ月後の7人のL/LD児童らのトークン(Token)試験(受容的言語)のグラフである。
【図12】4歳から8歳までのL/LDの児童らの5年間の間のCYCLE試験での向上、および本発明を使用して4週間の訓練セッションを経て試験された7人の児童らの向上を示すグラフである。
【図13】4歳から8歳までのL/LDの児童らの5年間の間のトークン試験での向上、および本発明を使用して4週間の訓練セッションを経て試験された7人の児童らの向上を示すグラフである。
【図14】4歳から8歳までのL/LDの児童らの5年間の間のGFW試験での向上、および本発明を使用して4週間の訓練セッションを経て試験された7人の児童らの向上を示すグラフである。
【図15】試験前、試験後、および可能な場合には訓練後3ヶ月の7人の試験されたL/LDの児童のCELF試験(文の模倣)での向上のグラフである。
【図16】試験前、試験後、および可能な場合には訓練後3ヶ月の7人の試験されたL/LDの児童の文の記憶の結果のグラフである。
【図17】試験前、試験後、および可能な場合には訓練後3ヶ月の7人の試験されたL/LDの児童のゴールドマン・フリストー(Goldman-Fristoe)有節発音試験での向上のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
言語障害を有する個人の言語に対する認識を高めるように訓練するためのコンピュータ装置であって、
聴覚刺激を生成するプロセッサと、
前記プロセッサと結合し、前記個人に前記聴覚刺激を音響的に提示するスピーカーと、
前記プロセッサと結合し、前記個人に実験環境を図式的に提示するディスプレーと、
前記プロセッサと結合し、前記個人に前記刺激に対する回答を指定させる入力装置と、を備え、
前記コンピュータ装置は、前記個人に刺激間間隔により分離された少なくとも2つの前記聴覚刺激を提示し、前記個人に前記少なくとも2つの聴覚刺激を区別し前記入力装置を介して前記区別を表示するように要求し、前記個人が前に提示された前記刺激を正しく区別する時に前記刺激間間隔を減少するように前記刺激の提示をN回反復することを特徴とする、コンピュータ装置。
【請求項1】
言語障害を有する個人の言語に対する認識を高めるように訓練するためのコンピュータ装置であって、
聴覚刺激を生成するプロセッサと、
前記プロセッサと結合し、前記個人に前記聴覚刺激を音響的に提示するスピーカーと、
前記プロセッサと結合し、前記個人に実験環境を図式的に提示するディスプレーと、
前記プロセッサと結合し、前記個人に前記刺激に対する回答を指定させる入力装置と、を備え、
前記コンピュータ装置は、前記個人に刺激間間隔により分離された少なくとも2つの前記聴覚刺激を提示し、前記個人に前記少なくとも2つの聴覚刺激を区別し前記入力装置を介して前記区別を表示するように要求し、前記個人が前に提示された前記刺激を正しく区別する時に前記刺激間間隔を減少するように前記刺激の提示をN回反復することを特徴とする、コンピュータ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−146083(P2008−146083A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334988(P2007−334988)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【分割の表示】特願2006−17147(P2006−17147)の分割
【原出願日】平成7年11月21日(1995.11.21)
【出願人】(500027932)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (39)
【出願人】(306010244)ラトガーズ、ザ ステイト ユニバーシティ オブ ニュージャージー (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【分割の表示】特願2006−17147(P2006−17147)の分割
【原出願日】平成7年11月21日(1995.11.21)
【出願人】(500027932)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (39)
【出願人】(306010244)ラトガーズ、ザ ステイト ユニバーシティ オブ ニュージャージー (3)
【Fターム(参考)】
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