説明

計器用変成器及び鉄共振抑制回路

【課題】共振抑制素子による鉄共振の抑制と素子自身の破損の抑制との両立が可能な鉄共振抑制機能付きの計器用変成器を提供する。
【解決手段】変圧器本体12の二次側において共振抑制素子25とともに直列に接続されるスイッチ24に対し、共振検出回路22による鉄共振の検出期間中、スイッチ24のオンとオフとを交互に切り替え、共振抑制素子25を断続的に機能させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄共振抑制機能を有する計器用変成器、及びその鉄共振抑制回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
計器用変成器は、主電路上の高電圧や大電流を測定する時や継電器を使用する時等、主電路に電圧計や電流計、継電器等を直接接続不能な場合に用いられる装置であり、例えば特許文献1に示す計器用変圧器では、電力系統の主電路に変圧器の一次巻線が接続され、二次巻線からは二次側機器に適した電圧値まで降圧された電圧として出力される。
【0003】
ところで、主電路上に遮断器が備えられている場合、その遮断器の動作時に生じる電圧の瞬時変化によって、主電路上のコンデンサや線間・大地間に形成される浮遊容量(C)等と計器用変圧器の巻線(L)とによる鉄共振と言われる共振現象が生じることがあり、またこの共振は長時間継続する場合がある。このような共振現象が生じると、計器用変圧器に異常電圧が発生し、変圧器自身や二次側機器の破損や誤動作を招く虞があった。
【0004】
そこで、特許文献1に示される計器用変圧器には、共振現象を抑制する手段が備えられている。即ち、計器用変圧器の二次巻線の端子間にスイッチ(文献では、スイッチング素子)と共振抑制素子(文献では、抑制インピーダンス成分)とが直列に接続され、検出制御回路にて鉄共振が生じたことが検出されると、スイッチが切り替えられて共振抑制素子が機能し、鉄共振が抑制されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平2−8515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
主電路が非常に高電圧である場合等、鉄共振のエネルギーが過大となり得る状況では、共振抑制素子により鉄共振を十分に抑制できず、上記のように検出制御回路が鉄共振を検出している間、共振抑制素子の接続を維持して機能させていると、共振抑制素子の発熱が大きく、場合によっては焼損に至る虞もあった。
【0007】
そのため、大きな鉄共振をも十分抑制し得る大型の共振抑制素子を使用することも考えられるが、コストが高くなる等の別の問題の発生が懸念されるため、共振抑制素子を大型化せずとも対応することが望まれていた。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、共振抑制素子による鉄共振の抑制と素子自身の破損の抑制との両立が可能な鉄共振抑制機能付きの計器用変成器、及びその鉄共振抑制回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、主電路上に設けられる計器用変成器本体と、前記変成器本体の二次側にスイッチを介して接続され該変成器本体で生じる鉄共振を抑制する共振抑制素子と、前記変成器本体で生じる鉄共振を検出する共振検出手段と、該検出手段による鉄共振の検出に基づいて前記共振抑制素子を機能させるべく前記スイッチを制御する制御手段とを備える計器用変成器であって、前記制御手段は、前記共振検出手段による鉄共振の検出期間中、前記スイッチのオンとオフとを交互に切り替えて、前記共振抑制素子を断続的に機能させるようにしたことをその要旨とする。
【0010】
この発明では、計器用変成器本体の二次側において共振抑制素子とともに直列に接続されるスイッチに対し、共振検出手段による鉄共振の検出期間中、スイッチのオンとオフとが交互に切り替えられて、共振抑制素子を断続的に機能させる。これにより、共振抑制素子の接続により計器用変成器にて生じる鉄共振が抑制されつつ、その接続が断続的に行われることから、鉄共振抑制時の素子自身の発熱が軽減され、共振抑制素子の過度な温度上昇が抑制される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の計器用変成器において、所定時間を計時する計時手段を備え、前記制御手段は、前記計時手段の所定時間の計時に基づいて前記スイッチのオン・オフを切り替えるようにしたことをその要旨とする。
【0012】
この発明では、制御手段は、計時手段の所定時間の計時に基づいてスイッチのオン・オフを切り替えるため、簡易な構成にて実現可能である。
請求項3に記載の発明は、主電路上に設けた計器用変成器本体で生じる鉄共振を抑制する鉄共振抑制回路であって、前記変成器本体の二次側にスイッチを介して接続され該変成器本体で生じる鉄共振を抑制する共振抑制素子と、前記変成器本体で生じる鉄共振を検出する共振検出手段と、該検出手段による鉄共振の検出に基づいて前記共振抑制素子を機能させるべく前記スイッチを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記共振検出手段による鉄共振の検出期間中、前記スイッチのオンとオフとを交互に切り替えて、前記共振抑制素子を断続的に機能させるようにしたことをその要旨とする。
【0013】
この発明では、計器用変成器本体に鉄共振抑制回路を組み込むことで、請求項1と同様に、計器用変成器にて生じる鉄共振が共振抑制素子により抑制されつつ、共振抑制素子の過度な温度上昇が抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、共振抑制素子による鉄共振の抑制と素子自身の破損の抑制との両立が可能な鉄共振抑制機能付きの計器用変成器、及びその鉄共振抑制回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における計器用変圧器の回路図である。
【図2】鉄共振抑制回路の動作を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態における鉄共振抑制機能付き計器用変圧器11を示す。計器用変圧器11は、例えば三相交流電力の送電が行われる電力系統の主電路10上に設置され、主電路10の電圧検出を間接的に行う際に用いられる。計器用変圧器11は、変圧器本体12として、主電路10に直列に接続される一次巻線13と鉄心14を介して磁気的に結合される二次巻線15とを備え、該二次巻線15からは、図示略とした二次側機器に適した電圧値まで降圧された電圧が出力される。
【0017】
また、変圧器本体12に付随して鉄共振抑制回路21が備えられ、該回路21は二次巻線15に接続されている。尚、鉄共振抑制回路21は、変圧器本体12、即ち既存の計器用変圧器に後付け可能に構成されている。変圧器本体12において鉄共振が発生すると、二次巻線15に生じる交流電圧の基本波成分(系統周波数成分)の波高値が数倍高くなるとともに、基本波成分に重畳する1/3調波成分、1/5調波成分等が大きく増加する。これらの電圧変化は変圧器11(変圧器本体12)自身や二次側機器の破損・誤動作を招くため、鉄共振抑制回路21はこれを抑制するように動作する。
【0018】
鉄共振抑制回路21は、共振検出回路22、制御回路23、スイッチ24及び共振抑制素子25を備えている。
共振検出回路22は、LPF(ローパスフィルタ)26、整流回路27、及び判定回路28を備えている。LPF26は、二次巻線15に生じる交流電圧の内、基本波、1/3調波、1/5調波を含む所定成分のみを通過させる。整流回路27は、LPF26を通過した特定成分の交流電圧を直流電圧に変換して判定回路28に出力する。鉄共振が発生した場合では、整流回路27の出力電圧は上昇する。判定回路28はコンパレータよりなり、整流回路27の出力電圧と鉄共振発生の判定のための基準電圧Vthとを比較し、鉄共振発生の有無が判定される。判定回路28は、鉄共振が発生していない場合ではその旨を示すLレベルの判定信号を、鉄共振が発生した場合ではその旨を示すHレベルの判定信号をそれぞれ制御回路23に出力する。
【0019】
制御回路23は、入力される共振検出回路22の判定回路28からの判定信号の論理に基づいて、即ち鉄共振が発生しているか否かの検出に基づいて、スイッチ24を制御する。ここで、スイッチ24と共振抑制素子25とは、変圧器本体12の二次巻線15の端子間に直列に接続されている。スイッチ24はトランジスタ等の半導体スイッチよりなるものであり、共振抑制素子25は本実施形態の変圧器本体12にて発生する鉄共振を抑制するのに好適なインピーダンス成分を含んで構成されるものである。そして、制御回路23は、鉄共振が発生していない場合(判定信号がLレベルの場合)ではスイッチ24をオフ側に切り替え、鉄共振が発生した場合(判定信号がHレベルの場合)ではスイッチ24をオン側に切り替え、共振抑制素子25を二次巻線15の端子間に接続して機能させる。
【0020】
また、制御回路23にはタイマ29が備えられている。制御回路23は、図2に示すように、スイッチ24がオンしてから(判定信号がHレベルとなってから)、タイマ29による所定時間T1の計時を行う。制御回路23は、所定時間T1を計時している間、スイッチ24をオンとして共振抑制素子25を機能させる。所定時間T1の計時後、制御回路23はスイッチ24をオフに切り替える。また、制御回路23は、タイマ29を用い、スイッチ24がオフしてからの所定時間T2の計時も行っている。所定時間T2の計時後、制御回路23は、判定信号が依然としてHレベルである場合(鉄共振が依然として生じている場合)にスイッチ24をオンに切り替える。判定信号がHレベルとなっている期間(鉄共振が依然として生じている期間)では、制御回路23はタイマ29を含めたこれらの動作を繰り返す。そして、判定信号がLレベルとなった時点(鉄共振が十分に収束した時点)で、スイッチ24はオフに切り替えられる。
【0021】
つまり、鉄共振が発生している期間(判定信号がHレベルとなっている期間)では、制御回路23による制御にてスイッチ24のオンとオフとが交互に繰り返され、共振抑制素子25が断続的に機能するように制御している。このように制御することで、共振抑制素子25による鉄共振の抑制を図りながらも、該素子25自身の過度な温度上昇の抑制が図られる。換言すると、スイッチ24をオン・オフさせる所定時間T1,T2は、共振抑制素子25による鉄共振の抑制と自身の温度上昇の抑制との両立を考慮した好適な時間に設定されている。尚、スイッチ24がオンしてからの所定時間T1と、オフしてからの所定時間T2とを同じ時間、若しくは異なる時間のいずれに設定してもよい。
【0022】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)変圧器本体12の二次側において共振抑制素子25とともに直列に接続されるスイッチ24に対し、共振検出回路22による鉄共振の検出期間中、スイッチ24のオンとオフとが交互に切り替えられて、共振抑制素子25を断続的に機能させるようにした。これにより、共振抑制素子25の接続により計器用変圧器11(変圧器本体12)にて生じる鉄共振が抑制されつつ、その接続が断続的に行われることから、鉄共振抑制時の素子25自身の発熱を軽減でき、共振抑制素子25の過度な温度上昇を抑制、即ち破損(焼損)抑制に繋がる。
【0023】
(2)制御回路23は、タイマ29の所定時間T1,T2の計時に基づいてスイッチ24のオン・オフを切り替えるため、簡易な構成にて実現することができる。
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0024】
・上記実施形態では、判定信号がLレベルとなった時点(鉄共振が十分に収束した時点)でスイッチ24をオフに切り替えたが、このとき依然として所定時間T1を計時しているときには鉄共振が収束したとしてもスイッチ24をオン状態(共振抑制素子25の機能発揮)に維持し、計時後にオフさせてもよい。
【0025】
・上記実施形態では、タイマ29の計時に基づいてスイッチ24のオンとオフとの切り替えを行ったが、例えば鉄共振の度合いに応じて好適なスイッチ24のオン・オフ時間をその時々で設定し、これに基づいてスイッチ24のオンとオフとを切り替えるようにしてもよい。
【0026】
・上記実施形態の鉄共振抑制回路21の構成は一例であり、回路21の構成を適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、鉄共振抑制回路21を変圧器本体12と別に組み立てて回路21を変圧器本体12、即ち既存の計器用変圧器に後付け可能に構成したが、鉄共振抑制回路21を変圧器本体12に一体に組み込む態様であってもよい。
【0027】
・上記実施形態では、計器用変圧器11に適用したが、その他の計器用変成器、例えば計器用変圧変流器に適用してもよい。
・上記実施形態では、電力系統の主電路10上に設置する計器用変圧器11に適用したが、電力系統以外の電路上に設置するものに適用してもよい。
【符号の説明】
【0028】
10…主電路、11…計器用変圧器(計器用変成器)、12…変圧器本体(計器用変成器本体、変成器本体)、21…鉄共振抑制回路、22…共振検出回路(共振検出手段)、23…制御回路(制御手段)、24…スイッチ、25…共振抑制素子、29…タイマ(計時手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電路上に設けられる計器用変成器本体と、前記変成器本体の二次側にスイッチを介して接続され該変成器本体で生じる鉄共振を抑制する共振抑制素子と、前記変成器本体で生じる鉄共振を検出する共振検出手段と、該検出手段による鉄共振の検出に基づいて前記共振抑制素子を機能させるべく前記スイッチを制御する制御手段とを備える計器用変成器であって、
前記制御手段は、前記共振検出手段による鉄共振の検出期間中、前記スイッチのオンとオフとを交互に切り替えて、前記共振抑制素子を断続的に機能させるようにしたことを特徴とする計器用変成器。
【請求項2】
請求項1に記載の計器用変成器において、
所定時間を計時する計時手段を備え、
前記制御手段は、前記計時手段の所定時間の計時に基づいて前記スイッチのオン・オフを切り替えるようにしたことを特徴とする計器用変成器。
【請求項3】
主電路上に設けた計器用変成器本体で生じる鉄共振を抑制する鉄共振抑制回路であって、
前記変成器本体の二次側にスイッチを介して接続され該変成器本体で生じる鉄共振を抑制する共振抑制素子と、前記変成器本体で生じる鉄共振を検出する共振検出手段と、該検出手段による鉄共振の検出に基づいて前記共振抑制素子を機能させるべく前記スイッチを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記共振検出手段による鉄共振の検出期間中、前記スイッチのオンとオフとを交互に切り替えて、前記共振抑制素子を断続的に機能させるようにしたことを特徴とする鉄共振抑制回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−38829(P2013−38829A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170341(P2011−170341)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】