説明

計時装置、電子機器および計時装置の時刻調整方法

【課題】 手動で操作する場合に表示時刻を標準時刻に正確に合わせることができるようにする。
【解決手段】 基準クロック信号を生成する発振回路30と、前記基準クロック信号に基づいて所定周波数の計時用クロック信号を生成する分周回路31と、前記計時用クロック信号に同期して時刻を表示する時刻表示部20とを備えた腕時計1において、時刻のタイミング修正を指示するタイミング修正指示手段21と、前記タイミング修正指示手段21によりタイミング修正が指示された場合に、前記分周回路31から出力される前記計時用クロック信号の出力タイミングを所定時間だけずらす時刻微調整回路35とを具備する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻を正確に合わせるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腕時計には竜頭やボタンなどの操作子が配設されており、この操作子を操作することで表示時刻を修正可能にしている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。一般的に、ユーザが操作子を操作して表示時刻を修正する場合には、ユーザが操作子を操作して運針を停止させた後、この操作子を操作して、表示時刻を現在時刻よりも先の時刻にセットする。その後、ユーザは、例えば電話回線やTV放送を通じて提供される標準時刻の時報を視聴しながら、標準時刻が上記表示時刻になったタイミングを見計らって操作子を操作して運針を再開させて、表示時刻を標準時刻に合わせている。
【特許文献1】特開昭58−42988号公報
【特許文献2】特開平2−138895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の技術にあっては、標準時刻が表示時刻になったタイミングと運針を再開させるタイミングとの間にずれが生じ易く、表示時刻を標準時刻に正確に合わせることは非常に困難である。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、手動で時刻を修正する際に表示時刻を標準時刻に正確に合わせることのできる計時装置、電子機器および計時装置の時刻調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、基準クロック信号を生成する発振手段と、前記基準クロック信号に基づいて所定周波数の計時用クロック信号を生成する計時用クロック信号生成手段と、前記計時用クロック信号に同期して時刻を表示する時刻表示手段とを備えた計時装置において、時刻のタイミング修正を指示するタイミング修正指示手段と、前記タイミング修正指示手段によりタイミング修正が指示された場合に、前記計時用クロック信号生成手段から出力される前記計時用クロック信号の出力タイミングを所定時間だけずらすタイミング修正手段とを具備することを特徴とする。
【0005】
この発明によれば、前記タイミング修正指示手段によりタイミング修正が指示された場合に、前記計時用クロック信号生成手段から出力される前記計時用クロック信号の出力タイミングが所定時間だけずらされるため、時刻表示の更新タイミング(指針式時計にあっては運針タイミング)が通常のタイミングから所定時間だけずれ、表示時刻が所定時間だけ進み、または遅れることとなる。
したがって、ユーザは、表示時刻と標準時刻とのずれ量に合わせて前記タイミング修正指示手段によりタイミング修正を指示して所定時間ずつ時刻表示を順次進め、或いは、遅らせることで、表示時刻と標準時刻とを正確に合わせることができる。
【0006】
ここで、上記発明において、前記タイミング修正指示手段が時刻の調整量を指定可能に構成され、前記タイミング修正手段は、前記タイミング修正指示手段により指定された調整量だけ、前記計時用クロック信号生成手段から出力される前記計時用クロック信号の出力タイミングをずらすことが望ましい。
この望ましい構成によれば、ユーザが表示時刻と標準時刻とのずれ量に応じた調整量を指定できるため、より少ない調整回数および操作回数で表示時刻と標準時刻とを正確に合わせることができる。
【0007】
また、上記発明において、前記タイミング修正指示手段が時刻表示を進ませる調整、および、遅らせる調整のいずれかを選択可能に構成され、前記タイミング修正手段は、前記タイミング修正指示手段による指定に応じて、前記計時用クロック信号生成手段から出力される前記計時用クロック信号の出力タイミングを調整量だけ進ませ、または、遅らせることが望ましい。
この望ましい構成によれば、標準時刻からの表示時刻の進み、または、遅れに応じた調整が可能となる。
【0008】
また、上記発明において、前記タイミング修正指示手段が竜頭を有し、前記タイミング修正手段は前記竜頭の回転量および回転方向を検出する回転検出手段を備え、前記竜頭の回転量により前記調整量を指定し、前記竜頭の回転方向により時刻表示を進ませる調整、および、遅らせる調整のいずれかを指定可能に構成されたことも望ましい。
この望ましい構成によれば、竜頭だけでタイミング修正の指示入力操作が実現され、他に操作子を設ける必要がなく、以って、低コスト化および装置の小型化を図ることができる。
【0009】
また、上記発明において、前記タイミング修正指示手段が1秒以下の調整量を指定可能に構成されていることも望ましい。
この望ましい構成によれば、表示時刻と標準時刻とを1秒以下の精度で合わせることができ、以って、正確な時刻合わせが実現可能となる。
【0010】
また、上記発明において、前記計時用クロック信号生成手段は、複数の分周段を有する分周回路を備え、タイミング修正手段は、前記調整量に応じて少なくともいずれか1つの分周段が出力するクロック信号を増減させ、前記計時用クロック信号生成手段から出力される前記計時用クロック信号の出力タイミングをずらす構成も望ましい。
この望ましい構成によれば、分周回路の分周段のクロック信号を増減させて計時用クロック信号の出力タイミングをずらすため、簡単な構成で、かつ、精度よく、出力タイミングをずらすことが可能となる。
また、上記発明において、前記時刻表示手段は、前記タイミング修正中も前記計時用クロック信号に同期した時刻表示を行う構成も望ましい。
【0011】
さらにまた、上記発明において、少なくとも前記タイミング修正指示手段によりタイミング修正が指示されている間、前記計時用クロック信号の出力タイミングを報知する報知手段をさらに具備する構成も望ましい。
この望ましい構成によれば、計時用クロック信号の出力タイミング、すなわち、時刻表示の切り換えタイミング(指針式時計にあっては運針タイミング)が報知されるため、この報知を基準にしてユーザは表示時刻と標準時刻とのずれ量を容易かつ正確に判断することができる。
また、上記発明において、前記発振手段は原子発振器を有し、当該原子発振器が前記基準クロック信号を生成する構成も好ましい。
なお、上記いずれかに記載の計時装置は電子機器に組み込んで実施することも可能である。
【0012】
また上記目的を達成するために、本発明は、基準クロック信号を生成する発振手段と、前記基準クロック信号に基づいて所定周波数の計時用クロック信号を生成する計時用クロック信号生成手段と、前記計時用クロック信号に同期して時刻を表示する時刻表示手段とを備えた計時装置の時刻調整方法において、前記計時用クロック信号生成手段から出力される前記計時用クロック信号の出力タイミングを時刻の調整量に応じた時間だけずらして時刻を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記タイミング修正指示手段によりタイミング修正が指示された場合に、前記計時用クロック信号生成手段から出力される前記計時用クロック信号の出力タイミングが所定時間だけずらされ、結果として、表示時刻が所定時間だけずらされることとなるため、ユーザは、前記タイミング修正指示手段によりタイミング修正を指示して所定時間ずつ時刻表示を順次ずらすことで、手動で時刻を修正する場合であっても表示時刻を標準時刻に正確に合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では計時装置の一態様たる指針式の腕時計に本発明を適用した場合について説明する。
【0015】
(第1実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る腕時計1の構成を模式的に示す図であり、図2は腕時計1の機能的構成を示すブロック図である。
図1に示すように、腕時計1は、時刻を表示する時計本体10と、この時計本体10の12時および6時方向のそれぞれに連結されたバンド11とを備えている。時計本体10は、平面視概略円形に形成された外装ケース12を有し、この外装ケース12には文字板13が嵌め込まれ、この文字板13の上には時刻表示指針としての時針14、分針15および秒針16が同軸に回動可能に設けられており、これら文字板13、時針14、分針15および秒針16により時刻表示部20(図2参照)が構成されている。
【0016】
また、外装ケース12の側面には、回動押下式の操作子たる竜頭17と、押下式の操作子たるAボタン18AおよびBボタン18Bが配設され、これら竜頭17、Aボタン18AおよびBボタン18Bによりタイミング修正指示手段21(図2参照)が構成されている。そして、このタイミング修正指示手段21が時刻表示部20における時刻表示を微調整する際の操作部として機能する。なお、時刻微調整時のタイミング修正指示手段21の具体的な操作態様については後述する。
また時計本体10には、時針14、分針15および秒針16を運針するムーブメント23が内蔵され、さらに、時計本体10には音を出力するスピーカ19が設けられている。このスピーカ19は、時計本体10の正面側に設けられた風防(カバーガラス)などでスピーカ19の音が遮られて聞き取り難くなることを防止すべく、時計本体10の裏蓋側に配設されている。
【0017】
ムーブメント23は、図2に示すように、発振回路30、分周回路31、モータ駆動回路32、モータ33、輪列34、時刻微調整回路(タイミング修正手段)35およびタイミング報時装置(報知手段)36を備えて構成されている。発振回路30は、年差の小さい正確なクロック信号を発振する原子発振器30Aを有し、この原子発振器30Aが生成する所定周波数のクロック信号(以下、「基準クロック信号」という)を分周回路31に出力する。分周回路31は、基準クロック信号を分周して周波数が1Hzの計時用クロック信号を生成し、モータ駆動回路32に出力するものである。ここで、本実施の形態では、発振回路30が生成する基準クロック信号として周波数が32.768kHz(すなわち、2の15乗Hz)の信号が用いられ、また、分周回路31には15段の1/2分周段が設けられており、この構成により、分周回路31によって基準クロック信号から1Hzの計時用クロック信号が生成される。
【0018】
モータ駆動回路32は分周回路31から入力される計時用クロック信号に同期してモータ駆動パルスをモータ33に出力して駆動するものであり、また、モータ33は輪列34に動力を出力するものである。輪列34はモータ33からの動力を上記時針14、分針15および秒針16に伝達し運針するものである。具体的には、輪列34は、1Hz周期でモータ33が駆動されるごとに、すなわち、1秒ごとに秒針16を(60/360)度だけ運針し、また、分針15を(60/(360×60))度、時針14を(12/(360×60×60))度だけ運針するように図示せぬ複数の歯車が組み合わせられて構成されている。
【0019】
時刻微調整回路35は、タイミング修正指示手段21からの入力に基づいて1秒以下の時刻微調整を行うものであり、また、タイミング報時装置36は、分周回路31の計時用クロック信号と同期した報知信号をスピーカ19に出力するものである。これにより、秒針16の運針タイミングに同期して報知音がスピーカ19から出力される。
なお、本実施の形態の腕時計1は、竜頭17を引き出して回転操作することで、従来の腕時計と同様に、時針14や分針15、秒針16の表示位置を調整可能に構成されており、これにより、大まかな時刻修正が可能になっており、このように、竜頭17を引き出して回転操作がなされた場合には、時刻微調整回路35に対する時刻を微調整するための指示入力はなされない。
【0020】
さて、上記時刻微調整回路35による時刻微調整について詳述すると、本実施の形態では、時針14、分針15および秒針16が運針されている状態の下、上記タイミング修正指示手段21が操作された場合、その操作状態に応じた秒数分だけ秒針16の運針タイミングを進め、或いは、遅らせて1秒以下の時刻表示の微調整(秒針16位置の微調整)を可能にしている。
タイミング修正指示手段21の操作状態について詳細には、図3に示すように、タイミング修正指示手段21が備えるAボタン18AおよびBボタン18Bが共にオン(押下状態)となされた場合、時刻微調整回路35に対して時刻微調整開始/終了が指示され、また、時刻微調整開始後にあっては、Aボタン18AおよびBボタン18Bのオン/オフの組み合わせにより、秒針16の進み調整/遅れ調整が時刻微調整回路35に指示される。
【0021】
また、図4に示すように、竜頭17が接続された巻真40には、竜頭17の回転方向および回転量に応じた信号を時刻微調整回路35に出力する回転検出器41が設けられており、竜頭17の回転方向および回転量により時刻の調整量が時刻微調整回路35に指示される。詳述すると、回転検出器41は、巻真40の周面に沿って略半円弧状に設けられた検出電極42と、検出電極42に向けて付勢された板ばね状のスイッチ電極43とを有し、スイッチ電極43が検出電極42に接触している場合にオンとなる第1スイッチ44と、この第1スイッチ44と同様に、検出電極45とスイッチ電極46とを有し、スイッチ電極46が検出電極45に接触している場合にオンとなる第2スイッチ47とを備えて構成されており、検出電極42、45のそれぞれは、検出電極42の端部42A、42Bが検出電極45の端部45A、45Bに対して巻真40の中心Oからみて90度ずれるように配設されている。
【0022】
したがって、竜頭17が回転された際、その回転方向が図5に示す時計方向である場合には、図6に示すように、第1スイッチ44が第2スイッチ47よりも先行してオン状態(High状態)となり、これとは逆に、反時計方向である場合には、第2スイッチ47が第1スイッチ42よりも先行してオン状態(High状態)となるため、第1スイッチ44および第2スイッチ47のどちらが先行してオン状態になるかを検出することで、竜頭17の回転方向が検出可能となる。
また、竜頭17が回転されると、図6に示すように、第1スイッチ44および第2スイッチ47のそれぞれが竜頭17の回転量に応じた回数だけオン/オフすることになり、第1スイッチ44および第2スイッチ47がオン状態となった回数(パルスの立ち上がり回数)をカウントすることで、竜頭17の回転量が検出可能となる。
【0023】
なお、回転検出器41にあっては、上記のように、第1および第2スイッチ44、47のスイッチ電極43、46が板ばね状に形成されているため、第1および第2スイッチ44、47のそれぞれがオン/オフするごとにクリック感が得られる。これにより、ユーザは、竜頭17の回転操作時に得られたクリック感に基づいて、竜頭17の回転量、すなわち、入力している時刻の調整量を知ることが可能となっている。
【0024】
さて、時刻微調整回路35は、上記のようにして第1スイッチ44および第2スイッチ47のオン/オフに基づいて竜頭17の回転方向および回転量を検出し、そして、この回転方向および回転量に応じて時刻調整量を決定する。本実施の形態では、図7に示すように、竜頭17の回転方向および回転量(第1スイッチ44および第2スイッチ47のオン回数)に応じて、「0.0625s」、「0.125s」、「0.25s」、「0.5s」および「1s」の5段階の時刻の調整量が予め設定されており、時刻微調整回路35は、竜頭17の回転方向および第1、第2スイッチ44、47のオン回数に応じて時刻の調整量を決定する。この調整量の決定は、竜頭17の回転方向および第1、第2スイッチ44、47のオン回数と予め対応付けられているカウンタ値を内蔵の竜頭位置カウンタ(図示せず)にセットすることで行われる。
【0025】
なお、上記のように、本実施の形態の腕時計1にあっては、竜頭17を引き出して回転操作することで、針14や分針15の表示位置を調整可能に構成されているため、時刻微調整回路35は、竜頭17が引き出されている場合には竜頭17の回転方向および回転量の検出を行わず、竜頭17が押し込まれている場合にのみ竜頭17の回転方向および回転量を検出し、その検出結果に基づいて竜頭位置カウンタの値をセット(或いは更新)するように構成されている。
【0026】
ここで、時刻微調整回路35は、時刻を微調整する際には、分周回路31が出力する計時用クロック信号の出力タイミングを上記調整量の分だけ進ませ、或いは、遅らせることで、秒針16の運針タイミングを早め、或いは、遅らせることとしている。詳述すると、時刻微調整回路35は、秒針16の運針タイミングを前後にずらすべく、分周回路31が有する所定の分周段の信号を加減して、1Hzの計時用クロック信号の出力タイミングを調整量の分だけ前後にずらすこととし、本実施の形態では、分周回路31の各分周段が出力する信号のうち、最小の調整量に相当する8Hz(0.125s周期)の信号を加減させている。
【0027】
例えば、計時用クロック信号の出力タイミングを0.125sだけ進ませる場合には、時刻微調整回路35は、図8に示すように、計時用クロック信号が出力されたタイミングT1の後のタイミングT2において、8Hz信号を出力する分周段の1周期Aの間に、16Hz信号を出力する分周段の信号出力を挿入して8Hz信号が出力するクロック信号を増加させる。この結果、1Hzの計時用クロック信号を出力する分周段にあっては、タイミングT1から1秒経過後のタイミングT3よりも0.125sだけ早いタイミングT4にて計時用クロック信号が立ち下がり、このタイミングT4以降においては、再び1秒周期で計時用クロック信号が出力される。したがって、このタイミングT4にてモータ駆動パルスが出力されることで、0.125sだけ秒針16の運針タイミングが早められることとなる。なお、秒針16の運針タイミングをより大きな調整量だけ早める場合には、タイミングT2よりも調整量に応じた期間だけ先行するタイミングで16Hz信号を8Hz信号出力の分周段に挿入すればよい。
【0028】
一方、計時用クロック信号の出力タイミングを0.125sだけ遅らせる場合には、時刻微調整回路35は、図9に示すように、計時用クロック信号が出力されたタイミングT1の後のタイミングT2において、8Hz信号を出力する分周段の信号出力を1周期Aだけ停止させる。この結果、1Hzの計時用クロック信号を出力する分周段にあっては、タイミングT3から0.125sだけ遅れたタイミングT5にて計時用クロック信号が立ち下がり、このタイミングT5以降においては、再び1秒周期で計時用クロック信号が出力される。したがって、このタイミングT5にてモータ駆動パルスが出力されることで、0.125sだけ秒針16の運針タイミングが遅れることとなる。なお、秒針16の運針タイミングをより大きな調整量だけ遅らせる場合には、タイミングT2から調整量の応じた期間だけ8Hz信号を停止すればよい。
【0029】
次いで、本実施の形態の動作として、時刻微調整時の動作について説明する。
図10は、時刻微調整動作時のフローチャートである。
時刻を微調整する際には、ユーザは、電話回線やテレビ放送などを通じで報知されている時報に基づいて、秒針16が標準時間からどの程度進み、或いは、遅れているかを把握し、竜頭17を回転操作して調整量を入力する。そして、ユーザは、Aボタン18AおよびBボタン18Bを同時に押下してオンすることによって時刻微調整開始を指示する。
【0030】
図10に示すように、時刻微調整回路35は、ステップSa1〜Sa4において、Aボタン18AおよびBボタン18Bのそれぞれのオン(ON)を検出しており、ユーザの操作によりAボタン18AおよびBボタン18Bが共にオン(ON)となった場合には(ステップSa2:Yes、または、ステップSa4:Yes)、時刻微調整回路35は時刻微調整を開始すべく動作モードを時刻微調整モードに移行して(ステップSa5)、次の処理を開始する。
【0031】
先ず、時刻微調整回路35は、内蔵の竜頭位置カウンタ(図示せず)のカウンタ値を参照し(ステップSa6)、そのカウンタ値に基づいて時刻の調整量をセットする。すなわち、時刻微調整回路35は、竜頭位置カウンタのカウンタ値が「0」の場合には(ステップSa7:Yes)、「0.0625s」を調整量にセットし(ステップSa8)、また、カウンタ値が「1」の場合には(ステップSa9:Yes)「0.125s」を調整量にセットし(ステップSa10)、カウンタ値が「2」の場合には(ステップSa11:Yes)「0.25s」を調整量にセットし(ステップSa12)、カウンタ値が「3」の場合には(ステップSa13:Yes)「0.5s」を調整量にセットする(ステップSa14)。また、カウンタ値が「0」〜「3」のいずれでもない場合には(ステップSa7、Sa9、Sa11およびSa13が共にNo)、時刻微調整回路35は「1S」を調整量にセットする(ステップSa15)。
【0032】
次いで、時刻微調整回路35は、時刻の微調整が進み調整および遅れ調整のいずれであるかを判断すべく、Aボタン18AおよびBボタン18Bの操作状態を検出する。すなわち、Aボタン18Aがオン(ON)(ステップSa16:Yes)であり、かつ、Bボタン18Bがオンでない場合(ステップSa17:No)、進み調整が指示されたことを示すため(図3参照)、時刻微調整回路35は、前掲図8に示すように、1Hzの計時用クロック信号の出力タイミングT3よりも調整量に応じた期間だけ先行するタイミング(例えばタイミングT2)で16Hz信号を8Hz信号出力の分周段に挿入することで、計時用クロック信号の出力タイミングを調整量の分だけ早め、秒針16の運針タイミングを調整量の分だけ進める(ステップSa18)。すなわち、秒針16は計時用クロック信号に同期して運針されているため、1秒間隔で運針されているところ、運針タイミングが早められたときだけ次の運針が1秒よりも早くなり、その後再び1秒間隔で運針されることとなる。この結果、調整量に応じた時間だけ秒針16が正確に進められて表示時刻が微調整される。次いで、時刻微調整回路35は、Aボタン18Aがオフ(OFF)になった場合に(ステップSa19:Yes)、再度、進み或いは遅れ調整が指示されているか否かを判断すべく、処理手順をステップSa16に戻す。
【0033】
一方、Aボタン18Aがオフ(ステップSa16:No)であり、かつ、Bボタン18Bがオンの場合(ステップSa20:Yes)、遅れ調整が指示されたことを示すため(図3参照)、時刻微調整回路35は、前掲図9に示すように、1Hzの計時用クロック信号の出力タイミングT3から調整量の応じた期間だけ8Hz信号を停止することで、計時用クロック信号の出力タイミングを調整量の分だけ遅らせ、秒針16の運針タイミングをより調整量分だけ遅らせる(ステップSa21)。すなわち、秒針16は計時用クロック信号に同期して運針されているため、1秒間隔で運針されているところ、運針タイミングが早められたときだけ次の運針が1秒よりも遅くなり、その後再び1秒間隔で運針されることとなる。この結果、調整量に応じた時間だけ秒針16が正確に遅れて表示時刻が微調整される。次いで、時刻微調整回路35は、Bボタン18Aがオフ(OFF)になった場合に(ステップSa22:Yes)、再度、進み或いは遅れ調整が指示されているか否かを判断すべく、処理手順をステップSa16に戻す。
【0034】
ここで、時刻微調整回路35の動作モードが時刻微調整モードに移行している間は、上述のように、分周回路31から出力される計時用クロック信号がタイミング報時装置36に入力されて、スピーカ19から計時用クロック信号に同期した、すなわち、秒針16の運針タイミングに同期した報知音が出力される。これにより、ユーザは、微調整後の秒針16の運針タイミングが標準時間から、いまだ遅れているか、或いは、進んでいるかを、秒針16の運針タイミングを知らせる報知音と時報のずれとから容易に判断することができる。そして、ユーザは、いまだ秒針16の運針タイミングがずれていると判断した場合には、秒針16の進み或いは遅れに応じてAボタン18AおよびBボタン18Bを操作して、再度、秒針16の運針タイミングの調整を指示する。これにより、時刻微調整回路35がAボタン18AおよびBボタン18Bのオン/オフに応じて上記ステップSa18またはステップSa21を再度実行し、秒針16の運針タイミングを調整量だけ進め、または、遅らせる。そして、時刻の微調整が指示されたびに、次の運針だけが調整量に応じた時間だけ早められ、または、遅らされることとなる。
一方、時刻の微調整後、Aボタン18AおよびBボタン18Bが共にオンになされている場合には(ステップSa16およびSa17が共にYes)、時刻微調整の終了が指示されたことを示すため(図3参照)、時刻微調整回路35は、動作モードを時刻微調整モードから通常モードに移行させ(ステップSa23)、時刻の微調整動作を終了する。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態によれば、タイミング修正指示手段21により時刻の微調整開始が指示された場合に、時刻微調整回路35が分周回路31から出力される計時用クロック信号の出力タイミングを時刻の調整量に応じてずらす構成としたため、ユーザは、表示時刻と標準時刻とのずれ量に合わせて時刻表示を調整量ずつ順次進め、或いは、遅らせることで、表示時刻と標準時刻とを正確に合わせることができる。
【0036】
詳述すると、竜頭を引くなどして運針を一旦停止させ、例えば「○時×分0秒」といったように表示時刻を修正した後、標準時刻が「○時×分0秒」になったタイミングに合わせて竜頭を押し込むことで運針を開始させて時刻を合わせるように構成された一般の時計にあっては、竜頭を押し込む際の人間の反応動作に限界があるため、表示時刻と標準時刻との毎秒を正確に合わせることは非常に困難である。さらに、ユーザが例えば「○時×分0秒」で毎秒合わせに失敗した場合には、分針を1分だけ進めて「○時×+1分0秒」に表示時刻をセットし、再度タイミングを見計らって竜頭を押し込むといったように、1分ごとのタイミングでしか毎秒合わせを行うことができない。したがって、ユーザが十分と感じる程度まで毎秒を合わせるには、ユーザの精度感によっては、かかる毎秒合わせ操作を繰り返し何度も行わなければならず、このようなユーザにとっては毎秒合わせが非常に酷な作業となってしまう。
さらに、従来の電子修正時計にあっても、一般的にはメカ的に時分を修正、あるいは秒を修正する手段を電気的に行なっているため微量を簡単かつ正確に修正するには不向きである。
【0037】
これに対して、本実施の形態によれば、時刻微調整時には、秒針16の運針タイミングを示す計時用クロック信号をずらし、また、この計時用クロック信号と同期して運秒針16が運針されるため、秒針16の運針を継続しつつ、計時用クロック信号がずらされた分だけ毎秒を微調整することができる構成としている。すなわち、この構成により、秒針16の運針を継続しながらの微調整が可能であるため、表示時刻と標準時刻との毎秒のずれ量が把握し易くなり、さらに、標準時刻の毎秒を追うかの如く短時間の間に繰り返し微調整を行なうことが可能となる。また、このように繰り返し微調整を行うことで、いままでの時計では不可能であった人間の反応動作を補い、表示時刻の毎秒と標準時刻の毎秒との差(すなわち、秒針16の運針タイミングと標準時刻の秒刻みタイミングとの差)を確実に縮めていくことができる。
【0038】
また、本実施の形態によれば、タイミング修正指示手段21により時刻の調整量を選択可能に構成されているため、ユーザは、表示時刻と標準時刻とのずれ量に適した調整量で表示時刻を微調整し、より少ない微調整回数(操作回数)で表示時刻を標準時刻に正確に合わせることが可能となる。
また、本実施の形態によれば、タイミング修正指示手段21により時刻表示の進み調整および遅れ調整のいずれかを指定可能に構成されているため、ユーザは、表示時刻と標準時刻とのずれ方向(進み/遅れ)に応じて表示時刻の微調整を行うことができる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、調整量として1秒以下の調整量を指定可能に構成されているため、表示時刻と標準時刻との毎秒を1秒以下の精度で正確に合わせることができる。
ここで、比較的正確に時刻を自動で合わせることが可能な時計として、標準時刻を示す電波を受信して時刻を自動修正可能に構成された電波時計が従来から知られている。このような電波時計は一般に月差並みの歩度でしかなく、このため、電波の受信頻度を高めることで歩度を補うようにしている。
しかしながら、電波時計にあっては、地表を伝わる電波の伝播経路のばらつきによる遅延や、電波時計のソフトウエア処理系の処理速度のばらつきなどの種々の要因により、電波受信による時刻修正直後であっても、厳密には、標準時刻に対して表示時刻がずれるという問題がある。さらに、電波時計は、電波受信状態の悪い環境にスタンドアロンに設置されると、高精度な時刻を保ち続けることは、もはや不可能となる。
これに対して、本実施の形態によれば、調整量として0.125秒や0.25秒、0.5秒といったように1秒以下の調整量が指定可能に構成されているため、手動調整であるにも拘わらず電波時計よりも高い精度で、なおかつ、簡単に毎秒を微調整することが可能となり、また、これにより、設置環境を問わず高精度な時刻を表示する時計が実現される。
【0040】
また、一般に、秒針の運針においてどのタイミングを正確な毎秒と感じるかは個人差が有る。詳述すると、例えば指針式時計であれば、運針開始時を毎秒と感じる者、或いは、運針中を毎秒と感じる者、運針終了時を毎秒と感じる者がいる。また、デジタル時計であれば、時刻表示切替中を毎秒と感じる者や、時刻表示切替完了時を毎秒と感じる者がおり、さらに、時刻表示が消え始めた時、時刻表示が完全に消えた時、時刻表示が現れ始めた時、表時刻示が完全に現れた時など、毎秒と感じるタイミングは人それぞれである。
しかしながら、上記電波時計にあっては、常に所定のタイミングに毎秒を合わせるように構成されており、ユーザに選択の余地は無い。
これに対して、本実施の形態によれば、上述のように毎秒の高精度な微調整が可能であるため、ユーザ各人の好みに応じたタイミングに秒針16の毎秒を合わせることができる。
【0041】
また、本実施の形態の腕時計1のように、原子発振器30Aにより基準クロック信号を生成する、いわゆる、原子時計にあっては、時刻の1日のずれ量が約±2.4×10-10秒と非常に僅かであるため、表示時刻を標準時刻に合わせる際に毎秒にずれが生じていると、そのずれが維持されたまま運針され続けてしまうという問題がある。また、1日のずれ量が約±0.027秒の年差時計にあっても同様の問題を有する。
これに対して本実施の形態によれば、例えば0.125秒といったように1秒以下の調整を行うことができるため、かかる問題を解決し、表示時刻と標準時刻との毎秒を非常に高い精度で正確に、かつ、容易に合わせることが可能となる。
【0042】
また本実施の形態によれば、時刻を微調整する間、計時用クロック信号の出力タイミング、すなわち、秒針16の運針タイミングに同期した報知音が出力されるため、ユーザは、この報知音に基づいて秒針16の運針タイミングと標準時間との毎秒のずれ量を、より正確に、かつ、容易に判断することができる。
【0043】
(第2実施の形態)
上述した第1実施の形態では、時計本体10に竜頭17、Aボタン18AおよびBボタン18Bを設けてタイミング修正指示手段21を構成したが、本実施の形態では、図11に示すように、タイミング修正指示手段21を竜頭17のみで構成した腕時計1Aについて説明する。この構成においては、時刻微調整開始/終了、時刻の調整量、および、進み調整/遅れ調整を竜頭17だけで入力可能にするために、図12に示すように、竜頭17を多段階(図示例では4段階)に引き出し可能に構成すると共に、竜頭17が引き出された段数ごとに竜頭17による操作指示内容を割り当てる構成としている。このとき、0段の引き出し段数に操作指示内容を割り当ててしまうと、腕時計1がユーザに装着されているときに竜頭17が身体に接触するなどしてユーザの意に反した操作がなされてしまったり、或いは、ユーザが誤って操作してしまったりして誤動作の原因になるため、引き出し段数が1段以上の各段に操作指示内容を割り当てる構成としている。
具体的には、本実施の形態では、竜頭17の引き出し段数が1段には時刻微調整時の調整量指示が割り当てられており、引き出し段数が2段には時刻の微調整開始指示、引き出し段数が3段には通常の時分秒の時刻修正が割り当てられている。また、この他にも、例えば竜頭17の引き出し段数が4段には文字板13に設けられた図示せぬカレンダ表示の修正が割り当てられている。
【0044】
ここで、竜頭17の引き出し段数の検出機構について詳述すると、図13に示すように、ムーブメント23の地板50には、竜頭17が接続された巻真40の軸方向の移動位置、すなわち、引き出し位置を多段階に規制するためのおしどり51およびかんぬき52のそれぞれが設けられている。おしどり51は巻真40の軸と係合する係合端部51Aと、かんぬき52の側面52Aに当接する当接部51Bを有し、当該巻真40の軸方向の移動に応じて回動し、これにより当接部51Bが側面52A上を摺動するように構成されている。かんぬき52の側面52Aには、複数の溝部52Bが形成されており、巻真40の軸方向の移動の際に、おしどり51の当接部51Bが溝部52Bに係合することで、巻真40の引き出し位置が多段階に規制される。
【0045】
また、地板50にはスイッチレバー53が回動自在に軸支されており、その一端53Aが、おしどり51の当接部51Bに連結されており、当接部51Bの多段階の位置決め位置に応じて、スイッチレバー53の他端部53Bが多段階の位置決め位置に移動するように構成されている。このスイッチレバー53の他端部53Bには、地板50に対向する面上に接点電極55が設けられており、また、地板50上には、他端部53Bの位置決め位置ごとに検出電極パターンP1、P2・・・が形成され、各検出電極パターンP1、P2・・・が時刻微調整回路35に接続されている。したがって、時刻微調整回路35は、各検出電極パターンP1、P2・・・の導通状態に基づいて、スイッチレバー53の他端部53Bが、どの検出電極パターンP1、P2・・・の位置に位置決めされているか、すなわち、巻真40が何段階引き出された位置にあるかが検出可能になる。
【0046】
また、この図13に示すように、第1実施の形態と同様に、巻真40には回転検出器41が設けられており、竜頭17の回転方向および回転量に応じた信号が時刻微調整回路35に出力され、これにより、時刻微調整時の調整量が入力可能になされている。なお、本実施の形態においては、竜頭17の回転方向および回転量と調整量との関係は第1実施の形態と同様(図7参照)のものとしている。また、この回転検出器41の構成(図4参照)も第1実施の形態と同様であり、当該回転検出器41の第1および第2スイッチ44、47のそれぞれがオン/オフするごとにクリック感が得られるように構成され、これにより、ユーザは、竜頭17の回転操作時に得られたクリック感に基づいて、竜頭17の回転量、すなわち、入力している時刻の調整量を知ることが可能となっている。
【0047】
以上のように構成された腕時計1Aの時刻をユーザが微調整する際には、先ず、竜頭17を1段階引き出した後、竜頭17を回転操作して時刻微調整時の調整量を入力する。一方、時刻微調整回路35は、図14に示すように、竜頭17が引き出されたことを検出すると(ステップSb1)、引き出された段数を検出して、時刻微調整時の調整量入力を指示する位置、すなわち、1段目であるか否かを判断する(ステップSb2)。次いで、時刻微調整回路35は、内蔵のタイマを動作させ、一定時間が経過するまでの間に竜頭17に対してなされた回転操作を検出し、この回転操作に応じたカウンタ値を内蔵の竜頭位置カウンタ(図示せず)にセットするタイマ処理を実行する(ステップSb3)。その後、時刻微調整回路35は時刻微調整を開始すべく動作モードを時刻微調整モードに移行する(ステップSb4)。
【0048】
次いで、時刻微調整回路35は竜頭位置カウンタのカウンタ値を参照し(ステップSb5)、そのカウンタ値に基づいて時刻の調整量をセットする。すなわち、時刻微調整回路35は、竜頭位置カウンタのカウンタ値が「0」の場合には(ステップSb6:Yes)、「0.0625s」を調整量にセットし(ステップSb7)、また、カウンタ値が「1」の場合には(ステップSb8:Yes)「0.125s」を調整量にセットし(ステップSb9)、カウンタ値が「2」の場合には(ステップSb10:Yes)「0.25s」を調整量にセットし(ステップSb11)、カウンタ値が「3」の場合には(ステップSb12:Yes)「0.5s」を調整量にセットする(ステップSb13)。また、カウンタ値が「0」〜「3」のいずれでもない場合には(ステップSb6、Sb8、Sb10およびSb12が共にNo)、時刻微調整回路35は「1S」を調整量にセットする(ステップSb14)。
【0049】
次いで、時刻微調整回路35は、竜頭17がさらに引き出されたか否かを検出し(ステップSb15)、引き出されている場合には(ステップSb15:Yes)、引き出された段数を検出して、時刻微調整時開始を指示する位置、すなわち、2段目であるか否かを判断する(ステップSb16)。一方、竜頭17が引き出されていない場合には(ステップSb15:No)、時刻微調整時開始が指示されていないため、時刻微調整回路35は、処理手順をステップSb1に戻す。なお、このステップSb15においては、例えばユーザが秒針16の運針タイミングが標準時刻とあっている等の理由で竜頭17が0段目に押し込まれている場合には、時刻の微調整をする必要がないため処理が終了されるようになっている。また、竜頭17が引き出されている場合であっても(ステップSb15:Yes)、時刻微調整時開始を指示する位置でなければ(ステップSb16:No)、時刻微調整回路35は処理手順をステップSb5に戻す。
【0050】
一方、竜頭17が時刻微調整時開始を指示する位置である場合には(ステップSb16:Yes)、時刻微調整回路35は、微調整が進み調整および遅れ調整のいずれであるかを判断すべくタイマ処理を開始する(ステップSb17)。すなわち、このタイマ処理にあっては、時刻微調整回路35は、一定時間が経過するまでの間に竜頭17に対してなされた回転操作を検出し、竜頭17の回転方向に基づいて微調整が進み調整および遅れ調整のどちらであるかを判断する。そして、竜頭17の回転方向が正転(時計方向)である場合には(ステップSb18:Yes)、時刻微調整回路35は、第1実施の形態と同様にして、秒針16の運針タイミングを調整量だけ進め(ステップSb19)、また、竜頭17の回転方向が逆転(反時計方向)である場合には(ステップSb20:Yes)、第1実施の形態と同様にして、秒針16の運針タイミングを調整量だけ遅らせる(ステップSb21)。なお、ステップSb17において竜頭17が回転操作されていない場合には(ステップSb18、Sb20が共にNo)、微調整が進み調整および遅れ調整のいずれであるかを特定するために、時刻微調整回路35は、処理手順をステップSb17に戻しタイマ処理を再度実行する。
【0051】
そして、時刻微調整回路35は、竜頭17が押し込まれ、または、引き出されている否かを判断し(ステップSb22)、竜頭17が押し込まれ、または、引き出されていない場合には(ステップSb22:No)、微調整を繰り返すべく処理手順をステップSb17に戻す。これにより、ユーザは、秒針16の運針タイミングが標準時刻と合ったと認識するまで、何度でも、微調整を繰り返すことができる。
また、竜頭17が押し込まれ、または、引き出されている場合には(ステップSb22:Yes)、時刻微調整の終了が指示されたことを示すため、時刻微調整回路35は、動作モードを時刻微調整モードから通常モードに移行させ(ステップSb23)、時刻の微調整動作を終了する。
なお、本実施の形態においても、第1実施の形態と同様に、時刻微調整回路35の動作モードが時刻微調整モードに移行している間は、分周回路31から出力される計時用クロック信号がタイミング報時装置36に入力される(図2参照)。これにより、スピーカ19から計時用クロック信号に同期した、すなわち、秒針16の運針タイミングに同期した報時音が出力され、ユーザは、微調整後の秒針16の運針タイミングが標準時間から、いまだ遅れているか、或いは、進んでいるかを容易に判断することができるようになされている。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態によれば、上述した第1実施の形態で述べた効果に加え次の効果を奏する。
すなわち、本実施の形態によれば、竜頭17を多段階(図示例では4段階)に引き出し可能に構成すると共に、竜頭17が引き出された段数ごとに、時刻微調整時の調整量指示や時刻の微調整開始指示といった異なる指示機能を割り当てる構成としたため、タイミング修正指示手段21の操作子の数を減らすことで部品点数が削減され低コスト化を図ることができる。
特に、本実施の形態によれば、竜頭17の回転量および回転方向を検出する回転検出器41を設け、竜頭17の回転量により調整量を指定し、また、竜頭17の回転方向により時刻微調整時の進み調整および遅れ調整のいずれかを指定可能に構成したため、1つの操作子だけで簡単に時刻の微調整を行うことができる。
【0053】
(変形例および応用例)
上述した第1および第2の各実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
(1)上述した各実施の形態では、時刻微調整中に報知音を出力する際に、腕時計1、1Aの秒針16の運針タイミングを報知音の出力により報知する構成とした。このとき、時刻微調整モードで動作する期間(すなわち時刻微調整開始指示から終了するまでの期間)が短い場合には、ユーザが報知音に基づいて秒針16の運針タイミングと標準時間とのずれ量を十分に判断する時間を確保すべく、時刻微調整終了後も所定期間の間は報知音の出力を継続する構成としても良い。また、タイミング修正指示手段21から入力した調整量をユーザが認識し易くすべく、時刻微調整中に報知音を出力する際に、調整量が短いものから順に「ピッ」、「ピピッ」、「ピピピッ」というように、調整量に応じて報知音の発音数や報知時間(報知音の出力時間)を異ならせた構成としても良い。このとき、調整量に応じて報知音の報知時間(報知音の出力時間)を長くする構成とする場合には、調整量が最も短いものに対応する報知音の報知時間を、ユーザが十分に可聴な時間長に設定することが望ましい。
なお、秒針16の運針タイミングを報知音の出力により報知する構成これに限らず、LEDなどの光源を用いた光の点滅やバイブレータなどの振動によって報時する構成としても良い。
(2)上述した各実施の形態では、計時装置の一態様たる指針式の腕時計に本発明を適用した場合について説明したが、指針式に限らず、デジタル表示式の腕時計にも本発明を適用することが可能である。デジタル表示式の腕時計1Bにあっては、図15に示すように、時、分および秒の時刻をデジタル表示する液晶表示パネル60が時刻表示部20’に設けられるとともに、ムーブメント23’には、分周回路31から出力される1Hzの計時用クロック信号と同期して液晶表示パネル60に時刻を表示する表示回路61が設けられている。このような構成においても、時刻微調整回路35が分周回路31から出力される1Hzの計時用クロック信号の出力タイミングを進める、または、遅らせることで、液晶表示パネル60における秒表示の表示切替タイミングが進め、または、遅らせられ、時刻の微調整が可能になる。
【0054】
(3)上述した各実施の形態では、計時用クロック信号の基となる基準クロック信号を生成するための発振器として原子発振器30Aを有する腕時計1、1A(原子時計)を説明したが、これに限らず、発振器として水晶発振器やOCXO、TCXO等の高精度水晶発振器を備えた時計、特に、温度補正回路などを内蔵して年差を小さく抑えるように構成された年差時計といったように、非常に高い精度で一定周期の基準クロック信号を出力可能な発振器を用いる構成としても良い。さらに、発振器が発振する基準クロック信号に基づいて時刻を表示する時計であれば、年差や月差にかかわらず任意の時計に本発明を適用可能であることは勿論である。
特に、一般精度や年差精度の時計であっても、当該時計に本発明を適用することにより、時刻微調整を行った直後は精度良く表示時刻を標準時刻に合わせることができるため、特に現時刻にこだわりを持つユーザに満足感を与えることができる。
【0055】
(4)上述した各実施の形態では、腕時計1、1Aの表示時刻の毎秒と、標準時刻の毎秒とを正確に合わせるべく、秒針16の運針を1秒以下の調整量で微調整する場合を例示したが、これに限らない。すなわち、例えば10秒や1分、10分といったように計時用クロック信号の出力タイミングをずらす量を大きくすることで、時刻表示を簡単しかも精度を著しく調整することが可能となり、たとえば、標準時刻から正確に10分進めるというニーズにも対応可能である。
【0056】
(5)上述した電波時計に本発明を適用することも可能であり、これにより、電波時計の表示時刻の微調整が可能となる。
特に、電波時計に本発明を適用する場合には、竜頭17やボタン18A、18Bを用いてタイミング修正指示手段21を構成するのではなく、タイミング修正指示手段21を電波時計の電波修正機能を用いる構成としても良い。詳述すると、電波時計にあっては、上述のように、地表を伝わる電波の伝播経路のばらつきによる遅延や、電波時計のソフトウエア処理系の処理速度のばらつきなどの種々の要因により、電波受信による時刻修正直後であっても、厳密には、標準時刻に対して表示時刻がずれる。そこで、このずれ量をタイミング修正指示手段21に調整量として予め設定しておき、また、電波時計が電波を受信して時刻を修正したタイミングをトリガーとして、タイミング修正指示手段21が調整量を時刻微調整回路35に出力する構成とする。これにより、電波時計が受信電波に基づく時刻修正を行ったときに、タイミング修正指示手段21から時刻微調整回路35に対して表示時刻の微調整が指示されて、表示時刻が標準時刻に合うように調整される。
【0057】
(6)また、上述した実施の形態では、分周回路31の分周段が出力するクロック信号を増減させて調整量に応じた分だけ運針タイミングを進め/遅らせるための構成としたが、この計時用クロック信号の出力タイミングをずらすことが可能な構成であれば、任意の構成を採用することができる。
【0058】
(7)上述した各実施の形態では、計時装置として腕時計を例示したが、これに限らず、懐中時計などの携帯型時計、置時計や掛時計、卓上時計、目覚まし時計などの据え置き型の時計にも本発明を適用することが可能である。さらに、本発明が適用された計時装置を例えば携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistance)、ノート型パーソナルコンピュータなどの各種の携帯型電子機器、或いは、固定電話機やファクシミリ機、据え置き型パーソナルコンピュータなどの据え置き型の電子機器に組み込んで実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態に係る腕時計の構成を模式的に示す平面図である。
【図2】同腕時計の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】タイミング修正指示手段の操作態様と指示入力内容とを示す図である。
【図4】竜頭の回転量と回転方向とを検出する回転検出器の構成を示す図である。
【図5】同回転検出器の構成を示す断面図である。
【図6】同回転検出器の検出動作を説明するための図である。
【図7】竜頭の回転量および回転方向と時刻調整量との関係を示す図である。
【図8】時刻の微調整の動作原理を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】時刻の微調整の動作原理を説明するためのタイミングチャートである。
【図10】時刻微調整回路の時刻微調整動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態の腕時計の構成を模式的に示す平面図である。
【図12】竜頭の操作態様を説明するための図である。
【図13】竜頭の操作態様を検出するための構成を示す図である。
【図14】時刻微調整回路の時刻微調整動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の変形例に係るデジタル表示式の腕時計を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1、1A、1B・・・腕時計(計時装置)、16・・・秒針、17・・・竜頭、18A、18B・・・A、Bボタン、20、20’・・・時刻表示部、21・・・タイミング修正指示手段、30・・・発振回路、30A・・・原子発振器、31・・・分周回路、35・・・時刻微調整回路、36・・・タイミング報時装置、41・・・回転検出器、60・・・液晶表示パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロック信号を生成する発振手段と、前記基準クロック信号に基づいて所定周波数の計時用クロック信号を生成する計時用クロック信号生成手段と、前記計時用クロック信号に同期して時刻を表示する時刻表示手段とを備えた計時装置において、
時刻のタイミング修正を指示するタイミング修正指示手段と、
前記タイミング修正指示手段によりタイミング修正が指示された場合に、前記計時用クロック信号生成手段から出力される前記計時用クロック信号の出力タイミングを所定時間だけずらすことを特徴とするタイミング修正手段と
を具備することを特徴とする計時装置。
【請求項2】
前記タイミング修正指示手段が時刻の調整量を指定可能に構成され、
前記タイミング修正手段は、
前記タイミング修正指示手段により指定された調整量だけ、前記計時用クロック信号生成手段から出力される前記計時用クロック信号の出力タイミングをずらす
ことを特徴とする請求項1に記載の計時装置。
【請求項3】
前記タイミング修正指示手段が時刻表示を進ませる調整、および、遅らせる調整のいずれかを選択可能に構成され、
前記タイミング修正手段は、
前記タイミング修正指示手段による選択に応じて、前記計時用クロック信号生成手段から出力される前記計時用クロック信号の出力タイミングを前記調整量だけ進ませ、または、遅らせる
ことを特徴とする請求項2に記載の計時装置。
【請求項4】
前記タイミング修正指示手段が竜頭を有し、
前記タイミング修正手段は前記竜頭の回転量および回転方向を検出する回転検出手段を備え、前記竜頭の回転量により前記調整量を指定し、前記竜頭の回転方向により時刻表示を進ませる調整、および、遅らせる調整のいずれかを指定可能に構成された
ことを特徴とする請求項3に記載の計時装置。
【請求項5】
前記タイミング修正指示手段が1秒以下の調整量を指定可能に構成されている
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の計時装置。
【請求項6】
前記計時用クロック信号生成手段は、複数の分周段を有する分周回路を備え、
タイミング修正手段は、前記調整量に応じて少なくともいずれか1つの分周段が出力するクロック信号を増減させ、前記計時用クロック信号生成手段から出力される前記計時用クロック信号の出力タイミングをずらす
ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の計時装置。
【請求項7】
前記時刻表示手段は、前記タイミング修正中も前記計時用クロック信号に同期した時刻表示を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の計時装置。
【請求項8】
少なくとも前記タイミング修正指示手段によりタイミング修正が指示されている間、前記計時用クロック信号の出力タイミングを報知する報知手段を
さらに具備することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の計時装置。
【請求項9】
前記発振手段は原子発振器を有し、当該原子発振器が前記基準クロック信号を生成することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の計時装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の計時装置を備えた電子機器。
【請求項11】
基準クロック信号を生成する発振手段と、前記基準クロック信号に基づいて所定周波数の計時用クロック信号を生成する計時用クロック信号生成手段と、前記計時用クロック信号に同期して時刻を表示する時刻表示手段とを備えた計時装置の時刻調整方法において、
前記計時用クロック信号生成手段から出力される前記計時用クロック信号の出力タイミングを時刻の調整量に応じた時間だけずらして時刻を調整する
ことを特徴とする時刻調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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