説明

計測用行き止まり管路の閉塞防止構造及びその閉塞防止方法

【課題】 水蒸気と接触する計測用の行き止まり管路の腐食による閉塞を、手間をかけずに、かつ、長期的に防止することができる計測用行き止まり管路の閉塞防止構造を提供する。
【解決手段】 一端側が水蒸気を有する機器100に内部の水蒸気Sを導くように取り付けられるとともに、他端側が計測用機器16に接続されて行き止まり管路Aとなるように形成され、かつ、管路中に計測用機器16を水を介して水蒸気Sと接触させる水封部15が設けられている計測用行き止まり管路の閉塞防止構造G1であって、水封部15前までの行き止まり管路Aの上流側部分A1のほぼ全外面を、水蒸気Sの凝縮を抑えることにより、水蒸気S中の二酸化炭素及び、アミン類又はアンモニアに起因して生じる腐食による管路閉塞を防止する放熱防止手段H1で覆った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボイラーの蒸気ドラムや蒸気ヘッダのような内部に水蒸気を有する機器や水蒸気配管に、一端側が内部の水蒸気を導くように取り付けられるとともに、他端側が計測用機器に接続されて行き止まり管路となるように形成された計測用行き止まり管路の閉塞防止構造及び、この計測用行き止まり管路の閉塞防止方法に関するものである
【背景技術】
【0002】
例えば、ボイラーの蒸気ドラムには、上部に圧力測定用の導圧管路が設けられ、この導圧管路の上端に圧力計が取り付けられている。また、例えば、流量を測定しようとする蒸気配管中のオリフィスの前後には、オリフィス前後の蒸気圧力を検出するための2つの導圧管路が設けられ、これらの導圧管路の先端に計測用機器(差圧発信器)が取り付けられている。このような水蒸気を有する機器や水蒸気配管に取り付けられた計測用の行き止まり管路は、内部で凝縮水が発生し、この凝縮水が介在して腐食生成物や炭酸塩等のスケールが管路を詰まらせてしまうという不都合があった。
【0003】
このため、例えば、パージラインを有する蒸気ドラム周りの水面計用の管路では、バルブを操作して管路内の付着物を水蒸気により吹き出させて取り除くことができる(例えば非特許文献1)が、パージラインのない上記計測用行き止まり管路では、頻繁に計測用機器側の接続部を取り外し、この取り外し部分から水蒸気を吹き出させて管路を清掃したり、管路内にボイラーペイントを塗布して、管路の腐食を防止する手だてがとられていた(例えば非特許文献2)。
【0004】
【非特許文献1】南雲健治著、「絵とき ボイラーのやさしい知識」オーム社、p.169〜170
【非特許文献2】汽缶化学工業株式会社のホームページ中の「鷲印ボイラぺイント」中の記載等、[online][平成18年11月6日検索]、インターネット<URL:http://www.nmc.ne.jp/hp1/kcic/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、計測用行き止まり管路の計測用機器側の接続部を頻繁に取り外すのは手間がかかって容易でないという問題があった。また、かかる管路に塗布されたボイラーペイントは、設備の発停といった温度変化による収縮膨張によって剥がれやすく、永続性がないという問題があった。
【0006】
この発明は、以上の点に鑑み、水蒸気と接触する計測用の行き止まり管路に対して、手間をかけずに、かつ、長期的に腐食やスケールによる管路の閉塞を防止できる計測用行き止まり管路の閉塞防止構造及び計測用行き止まり管路の閉塞防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の請求項1記載の発明は、一端側が水蒸気を有する機器又は水蒸気配管に内部の水蒸気を導くように取り付けられるとともに、他端側が計測用機器に接続されて行き止まり管路となるように形成され、かつ、管路中に前記計測用機器を水を介して前記水蒸気と接触させる水封部が設けられている計測用行き止まり管路の閉塞防止構造であって、前記水封部前までの前記行き止まり管路の上流側部分のほぼ全外面を、前記水蒸気の凝縮を抑えることにより、前記水蒸気中の二酸化炭素及び、アミン類又はアンモニアに起因する管路閉塞を防止する放熱防止手段で覆っていることを特徴とする。
【0008】
流れのない水蒸気管路では、放熱量が多ければ、多くの水蒸気が凝縮し多量の凝縮水が発生する。この凝縮水には、水蒸気中のアミン類又はアンモニアが溶解して、この凝縮水のpHが高められるとともに、水蒸気中の二酸化炭素も溶解する。そして、この凝縮水中では、pHが高められた環境下、管路側から腐食して凝縮水中に溶解した鉄イオンと前記二酸化炭素とが反応して炭酸鉄が形成され、この炭酸鉄の一部が熱分解されて酸化鉄となり、これらが共存する状態となる。そして、水蒸気管路内で、炭酸鉄と酸化鉄とが共存することにより、これらが強固な付着物となりつつ管路内で成長し、管路を閉塞させる。また、凝縮水中で濃縮する系では炭酸アミン塩や炭酸アンモニウム塩等のスケールが析出し、これまた管路の閉塞に寄与する。
【0009】
この発明では、放熱防止手段によって、水封部前までの行き止まり管路の上流側部分の外面、すなわち、水蒸気管路の外面からの放熱が抑えられるので、この水蒸気管路における水蒸気の凝縮と温度低下を抑えることができる。このため、この発明では、水蒸気の凝縮量を減少できる分、この凝縮水中に溶解する二酸化炭素量及び、アミン類又はアンモニアの量を減少させることができ、その分、管路の閉塞を防止することができる。また、この発明では、水蒸気管路内の温度低下を抑制して、この温度を高めに維持できるので、凝縮水中に溶解する鉄イオンと二酸化炭素との反応によって形成される炭酸鉄が熱分解し易くなって炭酸鉄の量を減少させることができるとともに、温度が高くなった分、凝縮水中への二酸化炭素やアミン類又はアンモニアの溶解量を減少させることができ、その分、管路の閉塞を防止することができる。なお、炭酸鉄が減少すれば、この炭酸鉄とこれが熱分解して生じる酸化鉄との共存関係がくずれ、その分、管路内で強固な付着物が形成されるのが防止できる。
【0010】
この発明の請求項2記載の発明は、一端側が水蒸気を有する機器又は水蒸気配管に内部の水蒸気を導くように取り付けられるとともに、他端側が計測用機器に接続されて行き止まり管路となるように形成され、かつ、管路中に止め弁が設けられている計測用行き止まり管路の閉塞防止構造であって、前記水蒸気を有する機器又は前記水蒸気配管に最も近い前記止め弁までの前記行き止まり管路の上流側部分のほぼ全外面を、前記水蒸気の凝縮を抑えることにより、前記水蒸気中の二酸化炭素及び、アミン類又はアンモニアに起因する管路閉塞を防止する放熱防止手段で覆っていることを特徴とする。
【0011】
この発明の請求項3記載の発明は、一端側が水蒸気を有する機器又は水蒸気配管に内部の水蒸気を導くように取り付けられるとともに、他端側が計測用機器に接続されて行き止まり管路となるように形成され、かつ、管路中に前記計測用機器を水を介して前記水蒸気と接触させる水封部が設けられている計測用行き止まり管路の閉塞防止構造であって、前記水封部前までの前記行き止まり管路の上流側部分のほぼ全外面からの、放熱による前記水蒸気の凝縮を抑えることにより、前記水蒸気中の二酸化炭素及び、アミン類又はアンモニアに起因する管路閉塞を防止することを特徴とする。
【0012】
この発明の請求項4記載の発明は、一端側が水蒸気を有する機器又は水蒸気配管に内部の水蒸気を導くように取り付けられるとともに、他端側が計測用機器に接続されて行き止まり管路となるように形成され、かつ、管路中に止め弁が設けられている計測用行き止まり管路の閉塞防止構造であって、前記水蒸気を有する機器又は前記水蒸気配管に最も近い前記止め弁までの前記行き止まり管路の上流側部分のほぼ全外面からの、放熱による前記水蒸気の凝縮を抑えることにより、前記水蒸気中の二酸化炭素及び、アミン類又はアンモニアに起因する管路閉塞を防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明の請求項1及び3記載の発明によれば、水封部前までの行き止まり管路の上流側部分の外面からの放熱を抑えることで、この行き止まり管路の閉塞を防止でき、水蒸気と接触する計測用の行き止まり管路の腐食やスケールによる閉塞を、簡単に、かつ、手間をかけずに、さらに、長期的に防止することができる。
【0014】
この発明の請求項2及び4記載の発明によれば、水蒸気を有する機器又は水蒸気配管に最も近い止め弁までの行き止まり管路の上流側部分の外面からの放熱を抑えることで、この行き止まり管路の閉塞を防止でき、水蒸気と接触する計測用の行き止まり管路の腐食やスケールによる閉塞を、簡単に、かつ、手間をかけずに、さらに、長期的に防止することができる。また、この発明では、水蒸気を有する機器等から前記止め弁までの管路に閉塞が最も生じやすいことから、より効率的な閉塞防止効果を上げることができるとともに、水封部を有しない行き止まり管路であっても、放熱量の多い管路を残すことにより、計測用機器への水蒸気による熱の影響を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は差圧式水位調整装置を示している。
【0016】
差圧式水位調整装置1は、一端側が蒸気ドラム100の蒸気部100aに連通するように取り付けられた、水位計測用の蒸気連絡管10と、蒸気連絡管10中に設けられた止め弁11及びコンデンサー12と、一端側が蒸気ドラム100のボイラー水部100bに連通するように取り付けられた、水位計測用の水連絡管13と、水連絡管13中に設けられた止め弁14と、蒸気連絡管10と水連絡管13の他端側が連通するように取り付けられた、計測用機器としての差圧発信器15とを有している。なお、蒸気ドラム100の外周面は、放熱による熱損失を小さくするために、所定材質、所定厚さの保温材101によって覆われている。また、止め弁11は、蒸気ドラム100側と差圧発信器15側とを仕切る、蒸気ドラム100側に最も近い弁である。
【0017】
この差圧式水位調整装置1では、コンデンサー12から例えば常温の水を注ぎ込むことにより、このコンデンサー12内と、コンデンサー12より下流側の下流側蒸気連絡管10a内を常温の水で満たし、差圧発信器15が蒸気ドラム100内の高温の水蒸気Sと直接接触しないようにして、この差圧発信器15を保護している。すなわち、ボイラーの運転により、蒸気連絡管10のうち、コンデンサー12より上流側の水平な上流側蒸気連絡管10b内と、止め弁11内と、上流側蒸気連絡管10bが連通するコンデンサー12の上部は、水蒸気Sで満たされるとともに、蒸気ドラム100側の水連絡管13はボイラー水W1で満たされる。この場合、コンデンサー12は、計測用機器を水を介して水蒸気に接触させるようにする水封部としての役割を果たすものである。
【0018】
この差圧式水位調整装置1は、蒸気ドラム100中のボイラー水W1側の水頭圧と水蒸気S側(コンデンサー12側)の水頭圧との差圧ΔPを差圧発信器15により検出し、この差圧発信器15からの差圧信号を例えば給水制御装置(例えば、給水流量制御弁)に送ることにより、蒸気ドラム100内のボイラー水W1の水位を調整する。
【0019】
さて、この差圧式水位調整装置1では、蒸気ドラム100の水蒸気部100a側に連通する、蒸気連絡管10と、止め弁11と、コンデンサー12とで形成される管路が、端部を計測用機器(差圧発信器15)に接続された計測用行き止まり管路(以下行き止まり管路Aという)を形成している。そして、行き止まり管路Aのうち内部に水蒸気Sを有する部分、すなわち、上流側蒸気連絡管10bと止め弁11とにより形成される水蒸気管路A1内は、腐食やスケールによって管路の閉塞が生じ易い。以下水蒸気管路A1の腐食やスケールによる管路閉塞について説明する。
【0020】
行き止まり管路Aは、差圧発信器15に与える熱の影響を抑えるために、外面の保温はなされておらず、金属面がむき出しの状態になっている。したがって、水蒸気管路A1では、外表面からの放熱により内部の水蒸気Sが多量に凝縮して凝縮水となっている。
【0021】
一方、ボイラー水W1中には、ボイラー給水によって持ち込まれた二酸化炭素が溶解しているとともに、ボイラー水W1のpH調整のために注入された、アミン類又はアンモニアが溶解している。そして、ボイラ水W1中の二酸化炭素及び、アミン類又はアンモニアの一部は、ボイラー水W1の蒸発によって水蒸気S中に持ち込まれる。このため、水蒸気管路A1内の凝縮水中には、多くの場合、二酸化炭素と、アミン類又はアンモニアが溶解した状態となる。そして、この凝縮水が水蒸気管路A1中を蒸気ドラム100内に移動することとなる。この凝縮水は、アミン類又はアンモニアによってpHが高くなっているので、炭素鋼材からなる管路側から、この凝縮水中に僅かに溶解した鉄イオンと、この凝縮水中の二酸化炭素とが、下記のような反応が生じて炭酸鉄(FeCO3)を生じさせる。
Fe+++CO2+2OH-→FeCO3+H2
【0022】
炭酸鉄の一部は熱分解を受け、酸化鉄(例えば、マグネタイト、ヘマタイト、又はアモルファス状の鉄等)に変化するが、この酸化鉄が、炭酸鉄と共存することにより、酸化鉄と炭酸鉄とが非常に強固な付着物となり、この付着物が成長して、水蒸気管路A1を閉塞させる。この管路の閉塞は、経験的に、蒸気管路A1中の止め弁11より上流側(蒸気ドラム100側)の管路で多く生じる。加えて凝縮水中で濃縮する系では、炭酸アミン、炭酸アンモニウム等のスケールが析出し、管路の閉塞に寄与する。
【0023】
つぎに、管路の閉塞を生じさせる条件について説明する。
蒸気管路A1中では水蒸気Sの流れが無いことが条件となる。したがって、通常時水蒸気Sの流れない行き止まり管路が対象となる。また、蒸気管路A1中で多量の水蒸気Sが冷やされて凝縮水となることが条件となる。炭酸ガスやアミン類又はアンモニア等が凝縮水中に溶解している必要があるからである。さらに、水蒸気S中には、0.5〜500mg/L(凝縮水)の二酸化炭素が含まれているとともに、0.5〜500mg/L(凝縮水)のアミン類又はアンモニアが含まれていることが条件となる。二酸化炭素量及び、アミン類又はアンモニアの量は、多ければその分管路の閉塞を促進するとは考えられるが、これらが水蒸気S中に僅かに含まれていても、管路の閉塞は生じ得る。
【0024】
また、管路の材質は、炭素鋼材(配管では、炭素鋼管)であることが条件となる。凝縮水中に鉄イオンが容易に溶出するからである。蒸気管路A1内の温度は、低いことが条件となる。炭酸鉄(FeCO3)は、例えば100℃以上で分解することが知られているからである(化学大辞典)。また、凝縮水の温度が低ければ、これに溶解する二酸化炭素やアミン類又はアンモニアの量を増加させるからである。
【0025】
図2は行き止まり管路Aの閉塞防止構造G1を備えた差圧式水位調整装置1を示している。この行き止まり管路Aの閉塞防止構造G1は、蒸気管路A1の外面(金属外面)を、放熱防止手段である保温材H1で覆ったものである。
【0026】
保温材H1の施工範囲は、蒸気管路A1のほぼ全外面、すなわち、上流側蒸気連絡管10b外面と第1止め弁11の本体部(ハンドル部を除いた部分)外面である。もちろん、蒸気ドラム100用の保温材101で覆われている蒸気管路A1の端部については、保温材H1を施工する必要はない。また、蒸気管路A1中にフランジ部が設けられている場合には、フランジ部外面の保温は必ずしも行わなくてもよい。フランジ部からの放熱は比較的小さく、かつ、フランジ部の保温はかさばるからである。
【0027】
保温材H1の施工厚さは、厚ければ保温効果が大きいが、かさばりコスト高となるので、厚さの割には保温効果のでる厚さ、すなわち、放熱ロスを考慮した一般の配管等に施工される厚さでよい。保温材H1の材質は、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、耐熱シリコーン樹脂等であればよい。なお、差圧式水位調整装置1が屋外に設置されている場合には、保温材H1の外面には防水処理を施す必要がある。
【0028】
この行き止まり管路Aの閉塞防止構造G1では、蒸気管路A1のほぼ全外面を保温材H1で覆い、この蒸気管路A1外面からの放熱を抑えているので、この蒸気管路A1内の水蒸気Sの凝縮量を小さく抑えることができるとともに、この蒸気管路A1内の温度低下も小さく抑えることができる。このため、この閉塞防止構造G1では、水蒸気Sの凝縮量を減少できる分、この凝縮水中に溶解する二酸化炭素量及び、アミン類又はアンモニアの量を減少させることができ、その分、管路の閉塞を防止することができる。また、この閉塞防止構造G1では、蒸気管路A1内の温度低下を抑制して、この温度を高めに維持できるので、炭酸鉄が分解し易くなる。このため、この閉塞防止構造G1では、この炭酸鉄の量が減少して、炭酸鉄と酸化鉄との共存関係がくずれ、その分、管路内で強固な付着物が形成されることが無くなるため、管路の閉塞を防止できる。
【0029】
一方、行き止まり管路Aの閉塞防止構造G1を、蒸気管路A1全体でなく、止め弁11までの、この蒸気管路A1の上流側部分を保温材H1で覆ったものとしてもよい。蒸気管路A1の閉塞は、蒸気ドラム100に最も近い止め弁11までの管路に生じ易いからである。また、蒸気ドラム100に最も近い止め弁11までは、蒸気ドラム100と同一材質(多くの場合、炭素鋼材)にする必要があり、管の閉塞を生じさせやすいからであり、この止め弁11より下流側を、別な材質、例えばステンレス材にして管路の閉塞を生じにくくできるからである。さらに、行き止まり管路Aに水封部が設けられていない場合には、ある程度放熱部分を確保できるので、このような閉塞防止構造G1がベターである。
【0030】
また、蒸気管路A1からの放熱を抑えるようにした行き止まり管路Aの閉塞防止方法や、蒸気管路A1の上流側の第1止め弁11までの放熱を抑えるようにした行き止まり管路Aの閉塞防止方法であっても、前記行き止まり管路Aの閉塞防止構造G1と同様な作用効果を得ることができる。
【0031】
図3は蒸気流量計測装置を示している。
蒸気流量計測装置2は、水蒸気配管200中にオリフィス板20を挟み付けるように設置されたオリフィスフランジ21と、一端側がオリフィスフランジ21にそれぞれ接続され、オリフィス板20を境として水蒸気配管200中の低圧側水蒸気Sと高圧側水蒸気Sとを取り込むように設置される低圧側及び高圧側の導圧配管22,23と、導圧配管22,23中に設けられた、止め弁24,25及びコンデンサー26,27と、導圧配管22,23の他端側に接続される計測用機器である差圧電送器28等とから構成されている。なお、止め弁24,25は、水蒸気配管200側と差圧電送器28側とを仕切る水蒸気配管200に最も近い弁であり、コンデンサー26,27は、コンデンサー12と同様な、差圧電送器28が、低温の水を介して高温の水蒸気S側に接触するようにする水封部となるものである。
【0032】
ここで、低圧側の導圧配管22と、止め弁24と、コンデンサー26とにより、低圧側の計測用行き止まり管路(以下導圧管路Bという)が形成され、高圧側の導圧配管23と、止め弁25と、コンデンサー27とにより高圧側の計測用行き止まり管路(以下導圧管路Cという)が形成される。また、導圧管路B,Cのうち、内部に水蒸気を有する、導圧配管22,23のコンデンサー26,27より上流側の上流側導圧配管22a,23aと止め弁24,25とにより、蒸気管路B1,C1が形成される。導圧管路B,Cは、差圧電送器28に与える熱の影響を抑えるために、外面の保温はなされておらず、金属面がむき出しの状態になっている。なお、蒸気配管200中の水蒸気S中には、所定量の二酸化炭素が含まれるとともに、所定量のアミン類又はアンモニアが含まれており、かつ、少なくとも、導圧管路B,Cのうち蒸気管路B1,C1は炭素鋼材にて形成されているものとする。
【0033】
図4は導圧管路の閉塞防止構造G2,G3を備えた蒸気流量計測装置2を示している。
導圧管路Bの閉塞防止構造G2は、導圧管路B中の蒸気管路B1部分のほぼ全外面を放熱防止手段である保温材H2で覆ったものであり、導圧管路Cの閉塞防止構造G3は、導圧管路C中の蒸気管路C1部分のほぼ全外面を放熱防止手段である保温材H3で覆ったものである。この導圧管路B,Cの閉塞防止構造G2,G3においても、管路の閉塞防止という点において、前述の行き止まり管路Aの閉塞防止構造G1と同様な作用効果を得ることができる。もちろん、導圧管路B,Cの閉塞防止構造G2,G3を、止め弁24,25と、蒸気管路B1,C1の止め弁24,25より上流側の部分のほぼ全外面を放熱防止手段である保温材H2,H3で覆うものとしてもよい。なお、オリフィスフランジ21の外面が保温されている場合には、蒸気管路B1,C1のオリフィスフランジ21がわ端部への保温材H2,H3の施工は不要である。
【0034】
図5は圧力計及びこれが設置される蒸気ドラム100上の管路を示している。
圧力計3は、図5の(a)で示されるように、蒸気ドラム100の水蒸気部100a上部に設けられた計測用行き止まり管路(以下、行き止まり管路Dという)、すなわち、蒸気ドラム100上の蒸気配管30と、この蒸気配管30中に設けられた止め弁31と、この蒸気配管30の上端に設置されたサイホン管32とから形成されるもの、の端部に取り付けられている。サイホン管32は、圧力計3を水蒸気Sから保護するために、例えば常温の水が内部に注入されて、湾曲部を水封部としているので、行き止まり管路D中、蒸気配管30と止め弁31と、サイホン管32の下部直線部32aとが蒸気管路D1を形成する。なお、蒸気ドラム100中の水蒸気S中には、所定量の二酸化炭素が含まれるとともに、所定量のアミン類又はアンモニアが含まれており、かつ、少なくとも、行き止まり管路Dのうち蒸気管路D1は炭素鋼材にて形成されているものとする。
【0035】
行き止まり管路Dの閉塞防止構造G4は、図5の(b)で示されるように、蒸気管路D1のほぼ全外面を放熱防止手段である保温材H4で覆ったものである。この行き止まり管路Dの閉塞防止構造G4においても、行き止まり管路Aの閉塞防止構造G1と同様な作用効果を得ることができる。もちろん、この行き止まり管路Dの閉塞防止構造G4を、止め弁31と、蒸気管路D1のうち止め弁31より上流側の部分のほぼ全外面を放熱防止手段である保温材H4で覆うものとしてもよい。
【0036】
つぎに、行き止まり管路の閉塞防止構造に関する実際の試験結果について説明する。
図6は試験に用いたボイラー装置の概要を示している。図中符号40は、内部のボイラー水W1を水蒸気Sに変えるSUS316L製の蒸気発生器であり、この蒸気発生器40の運転圧力は1.6MPa(温度205℃)である。蒸気発生器40には、給水タンク41を介して、10L/hのボイラー給水W2が供給され、この蒸気発生器40で作られた水蒸気Sのうち一部は、熱交換器42に送られて給水タンク41側に回収される。発生した水蒸気Sの回収率は、昼間(6時〜18時)は70%であり、夜間(18時〜翌日の6時)は30%であって、1日の平均は50%である。熱交換器42からの回収水(復水)W3には、pH調整剤として2−アミノ2−メチルプロパノールが80mg/Lとなるように加えられ、pHが7〜9となるように調整される。給水タンク41への補給水W4には、無機炭酸として、二酸化炭素が50〜60mgCO2/Lだけ含まれており、ボイラー給水W2には、有機系脱酸素剤が溶存酸素量の2倍当量添加される。
【0037】
蒸気発生器40の本体部の水蒸気部側上部には、上端が閉じられた2つの試験片K1,K2(長さ20cmの炭素鋼製の1/4インチ管)が、本体部とは絶縁して(ガルバニック腐食が生じないようにして)取り付けられている。この場合、試験片K2側には、外面にグラスファイバー製の保温材H5が施工されて、行き止まり管路の閉塞防止構造が形成されているが、試験片K1側には保温材は施工されておらず、金属面がむき出しのままとなっている。図7は、このボイラー装置を3ヶ月間連続運転した場合の、試験片K1,K2内をフランジF側から見た状況を示している。
【0038】
図7は外面に保温が施工されていない試験片K1に関するものであり、図から、試験片K1の内面には強固な付着物(炭酸鉄、マグネタイト、ヘマタイト、アモルファス状の鉄により形成されるもの)が成長しつつ付着し、この付着物によって管路が塞がれているのが観察できる。図8は管路の閉塞防止構造を有する(外面に保温材Hが施工されている)試験片K2に関するものであり、図から、試験片K2の内面には、マグネタイト、ヘマタイトといった鉄の酸化物が少し付着しているものの強固な付着物は形成されておらず、管路に閉塞は生じていない。このことから、保温材が施工されていない試験片K1に生じる管路閉塞も、外面に保温材が施工された、すなわち、行き止まり管路の閉塞防止構造が備えられた試験片K2には生じないことが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】差圧式水位調整装置の説明用断面図である。
【図2】行き止まり管路の閉塞防止構造を備えた差圧式水位調整装置の断面図である。
【図3】蒸気流量計測装置の外観斜視図である。
【図4】行き止まり管路の閉塞防止構造を備えた蒸気流量計測装置の、一部断面した外観斜視図である。
【図5】圧力計が取り付けられる管路周りを示す図であり、(a)は行き止まり管路の閉塞防止構造を備えないものを示し、(b)は行き止まり管路の閉塞防止構造を備えたものを示している。
【図6】行き止まり管路の閉塞と閉塞防止とを実験で確かめるための試験装置の概念的フロー図である。
【図7】試験で使用された試験片のうち、閉塞防止構造を備えない試験片K1のフランジ側から見た管内状態を示す図(写真)である。
【図8】試験で使用された試験片のうち、閉塞防止構造を備えた試験片K2の管内状態を示す図(写真)である。
【符号の説明】
【0040】
3 圧力計(計測用機器)
12,26,27 コンデンサー(水封部)
15 差圧発信器(計測用機器)
28 差圧電送器(計測用機器)
32 サイホン管(湾曲部が水封部)
100 蒸気ドラム(水蒸気を有する機器)
200 蒸気配管
A,B,C,D 行き止まり管路
G1,G2,G3,G4 行き止まり管路の閉塞防止構造
H1,H2,H3,H4 保温材(放熱防止手段)
S 水蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が水蒸気を有する機器又は水蒸気配管に内部の水蒸気を導くように取り付けられるとともに、他端側が計測用機器に接続されて行き止まり管路となるように形成され、かつ、管路中に前記計測用機器を水を介して前記水蒸気と接触させる水封部が設けられている計測用行き止まり管路の閉塞防止構造であって、
前記水封部前までの前記行き止まり管路の上流側部分のほぼ全外面を、前記水蒸気の凝縮を抑えることにより、前記水蒸気中の二酸化炭素及び、アミン類又はアンモニアに起因する管路閉塞を防止する放熱防止手段で覆っていることを特徴とする計測用行き止まり配管の閉塞防止構造。
【請求項2】
一端側が水蒸気を有する機器又は水蒸気配管に内部の水蒸気を導くように取り付けられるとともに、他端側が計測用機器に接続されて行き止まり管路となるように形成され、かつ、管路中に止め弁が設けられている計測用行き止まり管路の閉塞防止構造であって、
前記水蒸気を有する機器又は前記水蒸気配管に最も近い前記止め弁までの前記行き止まり管路の上流側部分のほぼ全外面を、前記水蒸気の凝縮を抑えることにより、前記水蒸気中の二酸化炭素及び、アミン類又はアンモニアに起因する管路閉塞を防止する放熱防止手段で覆っていることを特徴とする計測用行き止まり配管の閉塞防止構造。
【請求項3】
一端側が水蒸気を有する機器又は水蒸気配管に内部の水蒸気を導くように取り付けられるとともに、他端側が計測用機器に接続されて行き止まり管路となるように形成され、かつ、管路中に前記計測用機器を水を介して前記水蒸気と接触させる水封部が設けられている計測用行き止まり管路の閉塞防止方法であって、
前記水封部前までの前記行き止まり管路の上流側部分のほぼ全外面からの、放熱による前記水蒸気の凝縮を抑えることにより、前記水蒸気中の二酸化炭素及び、アミン類又はアンモニアに起因する管路閉塞を防止することを特徴とする計測用行き止まり配管の閉塞防止方法。
【請求項4】
一端側が水蒸気を有する機器又は水蒸気配管に内部の水蒸気を導くように取り付けられるとともに、他端側が計測用機器に接続されて行き止まり管路となるように形成され、かつ、管路中に止め弁が設けられている計測用行き止まり管路の閉塞防止方法であって、
前記水蒸気を有する機器又は前記水蒸気配管に最も近い前記止め弁までの前記行き止まり管路の上流側部分のほぼ全外面からの、放熱による前記水蒸気の凝縮を抑えることにより、前記水蒸気中の二酸化炭素及び、アミン類又はアンモニアに起因する管路閉塞を防止することを特徴とする計測用行き止まり配管の閉塞防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−145211(P2008−145211A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331431(P2006−331431)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】