説明

計算機初期化システム、及び計算機初期化システムに用いられるメディア入力装置

【課題】計算機のハードウエア構成及びソフトウエア構成の相違に柔軟に対応でき、かつ、簡便な計算機初期化システムに用いられるメディア入力装置を提供する。
【解決手段】本発明のメディア入力装置6は、初期化対象計算機の初期化データを生成する初期化データサーバに通信手段を介して結合され、初期化データサーバから転送される初期化データを通信バッファ95に格納する初期化通信部94と、初期化対象計算機に通信手段を介して結合され、初期化対象計算機の初期化データを取得する要求に応じて、通信バッファ内の初期化データを読み出す初期化プログラム84を初期化対象計算機に転送する計算機インターフェース82とを有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計算機初期化システムに係り、特に、ユーザが要求する計算機及びソフトウエアの構成に応じて、自動的に計算機を初期化する初期化データを生成する計算機初期化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
計算機にソフトウエアをインストールして初期化する方式として、例えば、特許文献1、2に記載された方式が知られている。特許文献1には、ネットワークを経由してソフトウエアを自動でコンピュータへインストールする技術が開示されている。これによれば、インストールサーバは、初期化対象の複数のコンピュータのネットワークアドレスを用いて、初期化対象の各コンピュータに対応したコンピュータ名などの固有のパラメータを自動的に生成する手段を設け、システムに接続されている複数のコンピュータにソフトウエアをインストールする作業工数を削減することができるとしている。
【0003】
一方、特許文献2には、ユーザの違いに合わせた内容のインストールメディアを作成するためのインストールメディア作成装置が開示されている。このインストールメディア作成装置は、インストール対象のソフトアェアが格納されるイントールソフトウエア記憶手段と、ユーザ依存データを入力する入力手段と、ユーザ依存データを用いてインストールソフトウエアを変更し、ユーザ依存インストールソフトウエアを生成するソフトウエア生成手段と、ソフトウエア生成手段により生成されたユーザ依存インストールソフトウエアに基づいて、インストールメディアを作成するメディア作成手段とを備えて構成されている。
【0004】
ところで、計算機の構成は機能及び用途など応じて異なり、特に装置組み込み向けの計算機は、構成が非常に多岐に渡っている。例えば、ネットワーク接続のためのインターフェースや、CD−ROMやハードディスクを有しない構成の計算機も多く存在する。また、計算機へ格納するソフトウエアについても、汎用の基本ソフトウエア(Operating
System;OS)を使用しないものから、高機能なネットワーク対応のOSを利用するものまで、多種のソフトウエアに対応する必要がある。したがって、計算機ユーザの要求に応じて、実装する応用ソフトウエアを違えて用意することも必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3173361号
【特許文献2】特開平6−51958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献等に記載された計算機の初期化方式は、ユーザが要求する計算機の機能及び用途などに応じて異なる構成に対応すること、あるいは実装する応用ソフトウエアが異なることに対する配慮が十分でないという問題がある。
【0007】
すなわち、特許文献1に開示されたインストールサーバは、被インストール装置のインストール用パラメータを固有情報データベースから検索するため、被インストール装置とインストールサーバとがネットワークで接続されていることが前提となる。したがって、ネットワークインターフェースを有しない計算機に対しては適用できない。また、固有情報データベースに、被インストール装置に対応するパラメータが存在しない場合、予め設定されている規則によりインストール用パラメータを決定するため、事前に規則を決定しておく必要があり、応用ソフトウエアを任意に組み合わるという要望に対応することが困難である。
【0008】
また、特許文献2に開示されるインストールメディア作成装置は、ユーザ依存データ入力部から入力されたユーザ依存データを用いて、インストールソフトウエアを変更し、ユーザ依存インストールソフトウエアを生成して出力する。ここで、ユーザ依存データは、ユーザ名に対応したユーザ個別のコンピュータ環境、ユーザ環境、ソフトウエア環境などの情報である。これは、個別の計算機に対応して搭載する応用ソフトウエアの組み合わせを指定する要望に対しては課題が残る。また、ユーザ依存データ入力部の構成が記載されていないので、ユーザ依存データの登録や参照する方法が明らかでなく、個別の計算機に対応して応用ソフトウエアの組み合わせを登録する方法について解決する必要がある。
【0009】
一般に、装置組込み向け計算機の製品構成は、品種は多いが一品種あたりの生産台数は少ない場合が多い。また、装置あたりの製造コストを低減するため極力部品を削減するので、例えばパーソナルコンピュータ(PC)におけるBIOS(Basic
Input/Output System)ROMやCD−ROMのような、基本的なソフトウエアやインストールメディアのインターフェースも実装しないことが多い。このような制約の元で、製造過程におけるソフトウエア実装作業のみならず、製品出荷後の保守作業までを、安価に紛れなく行うことができる方法が望まれている。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、計算機のハードウエア構成及びソフトウエア構成の相違に柔軟に対応でき、かつ、簡便な計算機初期化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の計算機初期化システムは、作業IDに対応させて計算機を初期化する作業内容が規定された作業データベースと、初期化データIDに対応させて計算機を初期化する初期化データ内容が格納された初期化データベースとを有する初期化データ生成装置を備え、前記初期化データ生成装置は、初期化対象計算機の計算機IDと作業データを入力し、該作業データに規定された前記作業IDと作業順序と前記作業IDに対応する作業で前記初期化対象計算機に搭載するソフトウエア部品の前記初期化データIDとに基づいて、前記作業データベースと前記初期化データベースから前記作業データに対応する作業順序で前記作業内容と前記初期化データ内容を読み出して、前記初期化対象計算機を初期化する初期化データを生成する初期化データ生成手段を有してなることを特徴とする。
【0012】
すなわち、初期化作業のID(識別符号)に対応させて計算機を初期化する作業内容が規定された作業データベースと、ソフトウエア部品の初期化データのID(識別符号)に対応させて計算機を初期化する初期化データ内容が格納された初期化データベースとを初期化データ生成装置内に設ける。そして、初期化対象計算機の計算機IDと、搭載するソフトウエア部品の初期化データIDと作業IDと作業順序を規定した作業データを、初期化データ生成装置に入力することにより、初期化対象計算機のハードウエア構成及びソフトウエア構成の相違に柔軟に対応して、かつ、簡便な作業により、所望の機能を持った計算機を自動で初期化することができる。つまり、計算機を識別する計算機IDと作業データを読み取るだけで、計算機IDに対応した初期化データを生成することが可能となる。また、生成した初期化データを、初期化対象計算機を初期化可能な形式で転送することが可能となる。
【0013】
この場合において、初期化データ生成装置は、計算機IDと作業データを取り込む対象データ取得手段と、初期化データ生成手段により生成された初期化データを初期化対象計算機に転送する初期化データ出力手段を備えて構成することができる。
【0014】
また、初期化対象計算機の計算機IDと作業データとを関連付けて格納する計算機データベースを設け、初期化データ生成装置は、対象データ取得手段により取得された計算機IDと作業データとを関連付けて計算機データベースに格納する関連付け手段を備えて構成することができる。
【0015】
さらに、初期化データ出力手段は、初期化データを初期化対象計算機に接続可能な初期化メディアへ出力する構成とすることができる。
【0016】
また、初期化対象計算機の計算機IDと作業データが記述された無線タグと、無線タグから計算機IDと作業データを読み取って対象データ取得手段に伝送する入力装置とを備えて構成とすることができる。
【0017】
本発明の計算機初期化システムは、初期化対象計算機の計算機IDと該初期化対象計算機を初期化する作業の作業IDと作業順序と前記作業IDに対応する作業で前記初期化対象計算機に搭載するソフトウエア部品の前記初期化データIDが規定された作業データを読み取るID入力装置と、前記作業IDに対応させて計算機を初期化する作業内容が規定された作業データベースと、前記初期化データIDに対応させて計算機を初期化する初期化データ内容が格納された初期化データベースと、前記入力装置に通信手段を介して結合され前記入力装置から入力される前記計算機IDと前記作業データに基づいて、前記作業データベースと前記初期化データベースから前記作業データに対応する作業順序で前記作業内容と前記初期化データ内容を読み出し、前記初期化対象計算機の初期化データを生成する初期化データ生成装置と、前記初期化データ生成装置に通信手段を介して結合され前記初期化データ生成装置から転送される前記初期化データを格納する初期化メディアと、前記初期化対象計算機の初期化プログラムが内蔵されたメモリと、前記初期化対象計算機に通信手段を介して結合され、前記初期化対象計算機の要求に応じて、前記初期化メディア内の前記初期化データを読み出す前記初期化プログラムを前記初期化対象計算機に転送する計算機インターフェースを有してなるメディア入力装置を備えて構成することができる。
【0018】
この場合において、初期化データ生成装置は、さらに計算機データベースと作業データベースと初期化データベースの内容に基づいて計算機タグデータを設定するタグデータ設定手段を設けることができる。この計算機タグデータには、初期化データに含まれるソフトウエア部品のパラメータ、設定用アプリケーションのTCPポート番号、搭載されるソフトウエアのバージョン情報、製造年月日、製造シリアル番号などの少なくとも1つが含まれる。そして、初期化データ生成装置は、計算機タグデータを初期化対象計算機に対応付けて設けられた計算機タグに転送して書き込むことができる。これにより、計算機タグに初期化対象計算機に関する設定データを持たせることが可能となり、初期化対象計算機を保守する際に、初期化データサーバが有する各種データベースをアクセスせずに必要な情報を取得することができ、保守性が向上する。
【0019】
また、本発明の計算機初期化システムを使用する場合、初期化対象計算機に簡単な構成を付加する必要がある。すなわち、メディア入力装置の計算機インターフェースに通信手段を介して結合されたメディア入力装置と、当該初期化対象計算機の演算処理手段をメディア入力装置にアクセスさせる選択手段を設ける必要がある。選択手段がメディア入力装置にアクセスさせる方を選択した場合、演算処理手段はメディア入力装置と計算機インターフェースを介してメディア入力装置の初期化プログラムを読み出して実行し、これにより、初期化メディアに格納された初期化データを当該初期化対象計算機のプログラムメモリに書き込むことにより、初期化が完了する。
【0020】
なお、初期化対象計算機から計算機IDを取得して対応する初期化データを生成し、初期化データを初期化対象計算機へ転送するまでの手順を全て自動化することができ、これにより生産性を向上できる。
【0021】
上述したように、本発明によれば、要求仕様に応じて多様な設定や応用ソフトウエアの組み合わせが必要となる装置組込み向け計算機のソフトウエアのインストール及び設定を、紛れなく初期化することができる。
【0022】
また、製造時のみならず計算機を出荷後の保守作業においても、実装されるソフトウエアの保守を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、計算機のハードウエア構成及びソフトウエア構成の相違に柔軟に対応でき、かつ、簡便な計算機初期化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1の計算機初期化システムの概要構成のブロック図である。
【図2】実施例1の初期化データサーバの構成例を示すブロック図である。
【図3】実施例1の計算機初期化システムの動作フローを示す図である。
【図4】実施例1の作業票の作業データの構成例を示す図である。
【図5】実施例1の計算機DBの計算機データの構成例を示す図である。
【図6】実施例1の作業DBの作業データの構成例を示す図である。
【図7】実施例1の初期化DBの初期化データの構成例を示す図である。
【図8】実施例1のメディア入力装置と初期化対象計算機の構成と、初期化対象計算機のアドレスマップの一例を示す図である。
【図9】本発明の実施例2の計算機初期化システムの概要構成のブロック図である。
【図10】実施例2の計算機初期化システムの動作フローを示す図である。
【図11】本発明の実施例3の計算機初期化システムの初期化対象計算機の構成例を示す図である。
【図12】本発明の実施例4の計算機初期化システムのメディア入力装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0026】
図1に、本発明の一実施例の計算機初期化システムの概要構成をブロック図で示す。図示のように、本実施例の計算機初期化システムは、初期化データ生成装置に相当する初期化データサーバ1と、ID入力装置2と、初期化対象計算機3と、作業票4と、初期化メディア5と、メディア入力装置6と、初期化メディア5及びメディア入力装置6とからなる初期化データ入力手段7とを備えて構成される。
【0027】
初期化データサーバ1は、初期化対象計算機3を初期化する初期化データを生成する計算機であり、計算機データベース(DB)10、作業データベース(DB)11、初期化データベース(DB)12、IDデータ取得手段15、関連付け手段16、初期化データ生成手段17、メディア出力手段18を備えて構成されている。
【0028】
初期化対象計算機3には、計算機ID8が設定されている。計算機ID8は、初期化対象計算機3を識別するための識別記号であり、固体ごとに唯一の記号を付与しても、あるいは同種の複数の初期化対象計算機3に種別を表す記号を付与してもよい。例えば、世界中でユニークな符合となるEPC(Electronic
Product Code;登録商標)を利用することが可能である。
【0029】
作業票4には、図4に示すように、初期化対象計算機3の初期化等に必要な作業データ9が記述されている。作業データ9は、初期化作業の順序と、作業内容を識別する作業IDと、作業IDに対応する初期化作業でインストールするソフトウエア部品に係る初期化データを識別する初期化データIDを含んでいる。ここで、ソフトウエア部品とは、応用ソフトウエア、それらを動作させるための基本ソフトウエア、設定ファイルなどの部品をいう。本実施例においては、計算機ID8と作業データ9が、RFID(Radio
Frequency Identification)等の無線タグに格納されて、初期化対象計算機3に例えば貼り付けられているものとして説明する。
【0030】
ID入力装置2は、無線通信などのデータ伝達手段を介して、初期化対象計算機3と作業票4にそれぞれ連結されている。したがって、例えば、初期化対象計算機3に貼り付けられた無線タグと交信して、計算機ID8や作業データ9を取得する機能を有して構成されている。また、ID入力装置2は、初期化対象計算機3あるいは作業票4から取得したデータを、初期化データサーバ1へ通信する手段を有して構成されている。
【0031】
IDデータ取得手段15は、ID入力装置2から送信される計算機ID8と作業データ9を取り込み、関連付け手段16に転送するようになっている。関連付け手段16は、図5に示すように、計算機IDと作業データ9を関連付けて計算機データとして計算機DB10に格納するようになっている。
【0032】
また、作業DB11には、図6に示すように、予め、作業データ9の作業IDに対応させて、初期化作業の順序及び内容が格納されている。また、初期化DB12には、図7に示すように、予め、作業データ9の初期化データIDに対応するソフトウエア部品の初期化データ内容が格納されている。初期化データ生成手段17は、初期化DB12に格納されている内容に従って初期化データを生成し、メディア出力手段18を介して初期化データを初期化メディア5へ出力するようになっている。
【0033】
初期化メディア5は、初期化データサーバ1で生成した初期化データを、初期化対象計算機3へ渡すための記憶装置又は通信路などの媒体で構成されている。 メディア入力装置6は、初期化メディア5と初期化対象計算機3とを仲介する装置であり、各種メモリや伝送路を、初期化対象計算機3に適する接続方式に変換する機能を有する。メディア入力装置6の詳細構成は、図8を参照して後述する。
【0034】
ここで、図1においては、ID入力装置2、初期化対象計算機3、作業票4、初期化メディア5は、それぞれ1つの構成で示しているが、これらはそれぞれ複数で構成してもよい。また、1つの初期化対象計算機3に複数の作業票4を関連付けたり、逆に1つの作業票4で複数の初期化対象計算機3と関連付けたりする構成にすることが可能である。
【0035】
図2に、初期化データサーバ1の詳細構成を示す。図示のように、初期化データサーバ1は、CPU20、内部バス21、RAM22、通信部23、不揮発メモリ24、メディア出力部25、IDデータ取得部26などの要素を有して構成されている。これらの構成要素は、内部バス11を介して相互にデータを転送可能に構成されている。CPU20は、不揮発メモリ24に保持されているOS30や、関連付け手段16や初期化データ生成17を実現するプログラムの命令や定数を読み出し、これら命令や定数を必要に応じてRAM22へ格納し、読み出しあるいは書き出しを行い、ソフトウエア処理を実行するようになっている。通信部23は、内部バス21を介してCPU20から要求されたデータをネットワーク32へ送信する処理や、ネットワーク32から受信した処理をCPU20へ報告する処理を行うようになっている。また、通信部23は、自己の状態変化や処理要求が発生したことをCPU20へ割込み信号で通知する。CPU20は、上述した初期化データの作成に係る一連のソフトウエアの実行、通信部23からの割込みの処理を行うようになっている。メディア出力部25は、図1におけるメディア出力手段18の機能を有する装置であり、初期化メディア5への入出力を処理する。IDデータ取得部26は、図1におけるIDデータ取得手段15の機能を有する装置であり、ID入力装置2と接続して、ID入力装置2からのデータを入力する。
【0036】
図3に、本実施例の計算機初期化システムの処理動作のフローチャートを示す。初期化開始の指令が入力されると、ID入力装置2は初期化対象計算機3から計算機ID8を取得するとともに、作業票4から作業データ9(図4)を取得して、これらのデータを初期化データサーバ1のIDデータ取得手段15へ通知する(ステップ100)。IDデータ取得手段15は、通知された計算機ID8と作業データ9とを関連付け手段16に転送する。関連付け手段16は、それらの計算機ID8と作業データ9を紐付けした計算機データ(図5)を生成して計算機DB10へ登録する(ステップ102)。次に、取得した計算機ID8に対応する作業データ9の作業が残っているか検査する(ステップ103)。作業が残っていれば、ステップ104へ分岐し、作業が残っていなければステップ108へ分岐する。
【0037】
作業が残っている場合は、初期化データ生成手段17は、作業データ9の各作業IDに関連付けられている初期化データIDの初期化データ内容を初期化DB12から取得して、初期化データを作成する(ステップ104)。ここで、初期化データには、初期化対象計算機3に要求される機能を達成するためのソフトウエア部品、例えば、応用ソフトウエア、それらを動作させるための基本ソフトウエア、設定ファイル等が含まれる。次いで、メディア出力手段18は、作業DB11から取得した作業内容に従って初期化データ生成手段17が作成した初期化データを使い、初期化メディア5を操作する(ステップ106)。
【0038】
作業が残っていない場合は、初期化データが書き込まれた初期化メディア5は、メディア入力装置6と合わせて初期化入力手段7として、初期化対象計算機3へ接続される(ステップ108)。その後、初期化対象計算機3は、初期化データ入力手段7に蓄積されている初期化データを自己の不揮発メモリ86に転送して初期化処理を終了する(ステップ109)。
【0039】
このように、本実施例の計算機初期化システムは、ID入力装置2により計算機ID8と作業データ9を読み取り、初期化対象計算機3の要求機能を実現するための初期化データを生成し、初期化対象計算機3に転送して初期化させるようになっている。
【0040】
ここで、本実施例により初期化データを生成する手順の具体例を説明する。図4に作業データ9の構成例を示す。図示のように、作業データ9は、作業順序40、作業ID41、初期化データID42等の属性を有して構成される。図4では、作業項目に相当するタプル44〜46を含む作業データ9が設定されている例を示している。図示例のタプル44の意味は、「作業順序“1番目”に、作業IDが指示するOS焼きこみである“INIT−OS”の処理をし、その初期化データはID“0x0012”で示される」ことである。ここで、作業データ9の初期化データID42は、予め初期化DB12に格納されている初期化データIDに対応する。なお、本明細書において、接頭記号として“0x”を有する記号は、16進数で表記された数値を意味するものとする。また、作業IDや初期化データIDとして文字列や数値を例として取り上げたが、それに制限されるものではなく、認識できる記号であればどのような符号であってもよい。
【0041】
一方、タプル45の意味は、「作業順序“2番目”に、作業IDが指示するアプリケーション領域を空白とすることを意味する“ERASE−APL”を処理する」ことである。ERASE−APL処理は、初期化データが不要であるので、タプル45の初期化データID42には、特別な記号である“NULL”が記載されている。同様に、タプル46の意味は、「作業順序“3番目”に、作業IDの“INIT−DRV”が意味するデバイスドライバ焼きこみ処理を、初期化データIDが“0x0014”の初期化データについて行う」ことである。
【0042】
図5に、計算機DB10に格納された計算機データの構成例を示す。関連付け手段16は、IDデータ取得手段15を介して取得した計算機ID8と作業データ9のデータを関連付けて、図5の形式にして計算機DB10へ登録する。この処理は図3における処理フローのステップ102において実行される。
【0043】
本実施例における計算機データは、計算機ID50、作業順序51、作業ID52、初期化データID53等の属性を有して構成される。また、図5は、計算機データとしてタプル56〜59までが記録されている例を示している。計算機ID50は、初期化対象計算機3から取得した計算機ID8と対応する。作業順序51と作業ID52、初期化データID54は、作業データ9から取得した作業順序40、作業ID41、初期化データID42とそれぞれ対応する。このように、計算機データにより、初期化対象計算機3ごとに必要な作業の順序と作業内容、作業に使用する初期化データの対応付けをとることができる。
【0044】
ここで、計算機データに含まれるタプルの意味を、タプル56を例に取り説明する。タプル56は、計算機ID50が“0x0001”の初期化対象計算機3に対して、作業順序51は“1番目”に、作業ID52が“INIT−OS”で示される作業を、初期化データID53が“0x0012”の初期化データをもって処理することを意味する。また、タプル57では、同一の計算機ID50を有する初期化対象計算機3に対して、作業順序51の“2番目”の作業を規定している。つまり、同一の初期化対象計算機3に対して、作業順序51の項目により、異なる複数の作業からなる一連の作業の順序を規定することが可能になっている。
【0045】
図6に、作業DB11の初期化作業データの構成例を示す。作業DB11には、予め図6に示す初期化作業データが格納されている。本実施例における初期化作業データは、作業ID60、作業内順序61、作業内容62等の属性を有して構成される。また、図6では、それぞれの属性を有する初期化作業データとしてタプル65〜69までが記録されている例を示している。初期化作業データの作業ID60は、作業データ9における作業ID41と対応している。また、作業内順序61は、同一作業IDを持つ作業の中で、どの順序に処理されるかを示す。作業内容62は、初期化データサーバ1が処理すべき内容を示し、主に初期化メディア5に対する操作を示す。
【0046】
ここで、初期化作業データに含まれるタプルの意味を、タプル65を例に取り説明する。タプル65は、作業ID60の“INIT−OS”の作業に関する設定を意味し、当該作業IDの作業内順序61は“1番目”に、作業内容62として“OS領域のクリア”を実行することを意味する。“OS領域のクリア”は具体的には、例えば初期化メディア5がPCカード規格によるフラッシュメモリディスクである場合には、OSが格納される領域を所定の値(全ビット0あるいは全ビット1)に設定することである。また、初期化メディア5がCD−RやCD−RWなどの光学メディアの場合、フォーマット処理などを含んでもよい。
【0047】
また、タプル66は、作業ID60がタプル65と同じく“INIT−OS”であり、作業内順序61は“2番目”で、作業内容62として“データをOS領域に書き込む”ことが指定されている。ここで示されるデータとは、作業データ9に含まれる初期化データID42で規定されるデータとする。このように、作業DB11に格納された初期化作業データの構成によって、作業ID60で示される作業内容を柔軟に設定することができる。
【0048】
図7に初期化DB12に格納されている初期化データの構成例を示す。初期化DB12の初期化データの内容は、初期化データサーバ1を利用する前に、予め設定されて初期化DB12に格納されている。本実施例における初期化データは、初期化データID70と、識別符号71、初期化データ内容72等の属性を有して構成される。また、図7では、それぞれの属性を有する初期化データとして、タプル75〜79までが記録されている例を示している。初期化データID70は、作業データ9における初期化データID42と対応している。識別符号71は、初期化データID70に属する複数の初期化データ内容ごとに対応付ける唯一となる符号であり、本実施例では初期化DB12で通し番号を付している。初期化データ内容72は、実際に初期化に使用するデータであり、データ実体であるオブジェクトコードや設定ファイルを格納することができる。また、データ実体が格納されている位置を示すデータや文字列であってもよい。本実施例では、初期化データサーバ1においてデータ実体が格納されている位置を示す文字列が、初期化データ内容72に格納されている。データ実体は、例えば不揮発メモリ24に構築されるファイルシステム(図示なし)に格納するのが好適である。
【0049】
ここで、初期化データに含まれるタプルの意味を、タプル75を例に取り説明する。タプル75は、初期化データID70が“0x0012”で、識別符号71が“1”である初期化データは、初期化データ内容72により“/data/kernel−1”であることを規定している。そして、初期化データID70として“0x0012”を有する初期化データは、タプル75とタプル76から、“/data/kernel−1”と、“/data/kernel−1−conf”から構成されることが分かる。同様に、初期化データID70が0x0014を有する初期化データは、“/data/etc/drv−1”、“/data/etc/drv−2”、“/data/etc/drv−3”から構成される。
【0050】
このようにして、初期化DB12により、初期化データIDに対応させて、初期化データの実体を柔軟に指定することが可能となる。
【0051】
以上説明した作業データ9、計算機DB10、作業DB11、初期化DB12は、いずれもリレーショナルデータベースとして実装可能な正規化がなされている。タプルの登録、更新、削除を施した場合でも、矛盾の無いようにそれぞれのデータベースが構成されれば、候補キーとなる属性は上記の構成例に限定されない。例えば、初期化DB12における識別符号71は、初期化データID70との組み合わせで主キーとなるよう構成すればよい。具体的には、同一初期化データID70の中で、識別符号が重複しないよう符号付けすればよい。
【0052】
また、計算機DB10、作業DB11、初期化DB12は、常に全てを備えている必要はない。例えば、作業内容が“初期化メディアへの書き込み”だけといった単純なもので、初期化に利用するデータが少なければ、これらのデータベースを結合し、計算機IDと作業内容、初期化データ内容といった必要な属性だけを抽出して構成される計算機初期化作業データベースを用意すればよい。
【0053】
次に、図3におけるステップ104、106の処理、つまり初期化データ生成手段17と、メディア出力手段18の処理について説明する。まず、初期化データ生成手段17は、計算機DB10から初期化対象計算機3の計算機ID8に対応したタプルを選択する。選択したタプルの作業順序51で、対応する作業ID52と初期化データID53を選択する。作業ID52に対応した詳細な作業内容は作業DB11から取得し、初期化データID53に対応する初期化データの内容は初期化DB12から取得する。
【0054】
そして、初期化データ生成手段17は、作業順序51に従い作業DB11から取得した初期化作業データに基づいて、メディア出力部25を介して初期化メディア5を操作する。次いで、初期化データ生成手段17は、初期化DB12から取得した初期化データID53に対応する初期化データ内容72で示されるファイルシステムの位置にファイルが格納されたものが集まったファイルの集合を、初期化データ入力手段7を用いて初期化対象計算機3に転送する。
【0055】
ここで、図8を用いて、初期化データ入力手段7を用いて初期化対象計算機3に初期化データを転送する具体的な実施例について詳細に説明する。図8(a)に、メディア入力装置6と初期化対象計算機3の詳細構成と、それらの接続の例を示す。なお、初期化対象計算機3は、例えば装置組み込み向けの計算機の場合には、通常運用時に使用しないメモリや入出力インターフェースは実装されないのが一般である。そこで、図8では必要最小限の要素で構成される計算機の構成例を示す。しかし、本発明は装置組み込み向けの計算機に限定されず、一般の計算機へ適用可能であることはいうまでもない。
【0056】
図8(a)に示すように、メディア入力装置6は、初期化メディア5と接続するためのメディアインターフェース(以下、インターフェースをI/Fと略す。)80、不揮発メモリ81、初期化対象計算機3と接続するための計算機I/F82を有して構成される。計算機I/F82は、初期化対象計算機3からの要求に従い、不揮発メモリ81と初期化メディア5とに蓄積されているプログラムやデータを転送する。メディアI/F80は、初期化メディア5に固有の電気的、論理的インターフェースを提供し、計算機I/F82と初期化メディア5との間でデータを転送する。不揮発メモリ81には、初期化プログラム84が格納されている。
【0057】
初期化対象計算機3は、計算機ID8を格納する無線タグ84、メディア入力装置6と接続するためのメディア入力装置I/F85、不揮発メモリ86、メモリ選択部87、CPU88を有して構成される。初期化対象計算機3のメディア入力装置I/F85は、伝送路83を介してメディア入力装置6の計算機I/F82に接続される。
【0058】
メモリ選択部87は、メモリ選択指示信号89とCPU88からのアドレスにより、CPU88のアクセス先を不揮発メモリ86か、メディア入力装置6の不揮発メモリ81のいずれかに切り替えるようになっている。メモリ選択部87がメディア入力装置I/F85を選択すると、CPU88は、メディア入力装置I/F85を介して不揮発メモリ81から初期化プログラム84を読み出すようになっている。CPU88は、読み出した初期化プログラム84を実行し、初期化メディア5に格納された初期化データ内容72を読み出し、メモリ選択部87を切り替えて自己の不揮発メモリ86へ初期化データとして転送するようになっている。
【0059】
図8(b)に、メモリ選択指示信号89が通常用設定の場合と、初期化用設定の場合での、CPU88から見たアドレスマップを示す。図8(b)の左側は、メモリ選択指示信号89が通常用設定の場合を示し、この場合はCPU88のアクセスは不揮発メモリ86に対して行われる。一方、図8(b)の右側は、メモリ選択指示信号89が初期化用設定の場合を示し、この場合はCPU88のアクセスはアドレスに応じて、不揮発メモリ81と不揮発メモリ86に分配して行われる。
【0060】
なお、メモリ選択指示信号89は、モード切替スイッチ等のハードウエアにより設定するようにしてもよい。また、メディア入力装置I/F85がメディア入力装置6の接続を検出したときに、メモリ選択指示信号89を出力するようにしてもよい。
【0061】
ここで、図8(a)における初期化対象計算機3が、初期化メディア5から初期化データを取得する方法について具体的に説明する。一般に、初期化対象計算機3の不揮発メモリ86は、部品メーカから出荷される段階で初期化される。つまり、部品メーカで必要なプログラムを不揮発メモリ86に焼き付けて出荷したり、初期化対象計算機3の製造メーカが不揮発メモリ86を組み付ける前に、ROMライタによりプログラムを不揮発メモリ86に焼き付ける。しかし、製造メーカがプログラムを不揮発メモリ86に焼き付ける場合は、出荷段階で各計算機に組み付けるプログラムを確定する必要がある。したがって、計算機ごとに個別に異なるプログラムを組み付ける場合には煩雑である。
【0062】
ところで、パーソナルコンピュータ(PC)では、BIOS ROMと呼ばれる不揮発メモリが利用される。その場合、BIOS ROMに外部記憶装置、例えばCD−ROMを読み取り、自己の不揮発メモリやハードディスク装置に必要なプログラムやデータを転送するプログラムを搭載することが可能である。また、装置組み込み型の計算機の場合には、BIOS
ROMによるコスト上昇を嫌って、BIOS ROMを実装しないことが一般的である。この場合、不揮発メモリ86が空の初期状態で出荷されるから、CPU88は不揮発メモリ86にアクセスしても、プログラムが搭載されていないためCPU88は動作できない。したがって、従来は、例えばICE(In
Circuit Emulator)装置を用いて、不揮発メモリ86に直接プログラムを焼き付ける必要があった。しかし、これによれば、ICE装置等の専用装置が必要になるだけでなく、長い作業時間と作業員の技量とを必要とし、生産の効率が良くない。
【0063】
そこで、本実施例では、ICE装置を利用することなく、簡便かつ柔軟に、初期化対象計算機3の不揮発メモリ86を所望の内容に初期化することを特徴とする。すなわち、メモリ選択指示信号89を初期化用設定に切り替えると、初期化対象計算機3のCPU88は、電源が接続されリセットが解除された後に、予め決められたアドレス(図8(b)の例では、0x0000
0000番地)にアクセスして命令を読み取りに行くように設定されている。この0x0000 0000番地がメディア入力装置6の不揮発メモリ81であり、同アドレスに初期化プログラム84を格納しておく。そして、CPU88は、初期化プログラム84を読み出して初期化処理を実行する。初期化プログラム84には、初期化メディア5に格納される初期化データを不揮発メモリ86へ転送する命令を記述しておく。これにより、CPU88は、不揮発メモリ86が空の状態でも、初期化メディア5から初期化データを取得し、不揮発メモリ86へ転送することが可能となる。
【0064】
このようにして、初期化メディア5から必要な分だけ初期化データを不揮発メモリ86へ転送した後に、メディア入力装置6を初期化対象計算機3から切り離す。その時点では、必要なプログラムが初期化対象計算機3の不揮発メモリ86に転送して焼付け済みであるから、メディア入力装置6が無くても初期化対象計算機3は所望の動作を実行できる。
【0065】
ここで、本実施例の計算機初期化システムの使用方法の一例を説明する。初期化対象計算機3の製造ラインにおいて、作業者が初期化対象計算機3と、その初期化対象計算機3に対応する作業票4に、例えばRFIDリーダライタ等のID入力装置2をかざして、計算機ID8と作業データ9とを取得する。ID入力装置2は、取得した計算機ID8と作業データ9を初期化データサーバ1に送信する。初期化データサーバ1は、計算機ID8と作業データ9に対応した初期化データを生成し、初期化データサーバ1に接続されている例えばPCカード型フラッシュメモリカード等の初期化メディア5に初期化データを格納する。そして、作業者は、初期化データサーバ1から初期化メディア5を抜き取り、初期化メディア5をメディア入力装置6に差し込む。メモリ選択指示信号89を初期化用に設定した初期化対象計算機3にメディア入力装置6を接続する。その後、作業者が初期化対象計算機3に電源を投入するだけで、初期化対象計算機3が初期化される。
【0066】
したがって、本実施例によれば、初期化メディア5から初期化対象計算機3の不揮発メモリ86に所望のプログラムを容易に設定することができる。しかも、初期化対象計算機3の種類や機能に応じたプログラムを個別に設定できるから、柔軟に対応できる。
【0067】
すなわち、不揮発メモリ86に予めプログラムを焼き付けてから初期化対象計算機3へ実装する必要がなく、また、ICE装置等の専用装置を用いて初期化対象計算機3の不揮発メモリ86にプログラムを焼き付ける必要がない。そのため、適用先に応じて異なるプログラムを実装する必要のある装置組み込み向け計算機について、同じハードウエア構成の計算機装置を予め大量に生産しておき、適用先が決まってから実装プログラムをインストールできるので、生産の効率を良くすることができる。
【0068】
また、メディア入力装置6と初期化メディア5は、初期化対象計算機3を初期化するときにだけ接続すればよく、初期化プログラム84を搭載した不揮発メモリ81を初期化対象計算機3へ実装する必要が無い。そのため、初期化対象計算機3を最小の部品構成で構成することが可能となり、現状広く利用されている装置組み込み向け計算機へ、メモリ選択部87とメディア入力装置I/F85を追加するだけで実現できる。
【0069】
本実施例において、ID入力装置2と初期化対象計算機3及び作業票4との間のデータ伝達手段としては、それらの間で、計算機ID8や作業データ9などのデータを受け渡すことができれば、どのような伝達手段を用いてもよい。例えば、バーコード、二次元バーコード、13.56MHz/UHF/ISM(Industry Science Medical;産業・科学・医療;2.4GHzを中心とする周波数)バンドを利用して能動的あるいは受動的に無線を送受信する無線タグ、赤外線、接触式のICカードなどを適用することができる。
【0070】
また、ID入力装置2と初期化データサーバ1間の通信手段は、有線や無線のネットワーク技術を適用しても、あるいはRS-232Cと呼ばれるシリアル伝送方式を用いてもよい。
【0071】
さらに、初期化メディア5には、例えば、PCカード型の不揮発メモリカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)型の不揮発メモリカード、CD−ROM、DVD−ROM、USBに接続する不揮発メモリを用いることができる。また、初期化メディア5に用いる通信路の例としては、RS−232C、IEEE802.3で規定される通信方式、IEEE802.11で規定される無線通信方式などを適用することができる。
【0072】
また、初期化データサーバ1の不揮発メモリ24等の不揮発メモリには、電気的に消去や書き込みが可能なEEPROMやフラッシュメモリ、ハードディスク装置やCD−ROMなどの光磁気メディアが適用可能である。
【0073】
さらに、図2のネットワーク32として利用するネットワーク技術は、有線のネットワーク技術であるEthernet(登録商標)やRS485、光ファイバなどによるシリアル伝送技術、あるいはSCSIやPCIバスなどのパラレル伝送技術などを適用できるが、これらに限られるものではない。
【実施例2】
【0074】
図9に、本発明の実施例2の計算機初期化システムの概要構成のブロック図を示す。本実施例2が実施例1と相違する点は、実施例1におけるID入力装置2をID入出力装置90に変更したこと、計算機ID8が格納される無線タグを読み書き可能な計算機タグ91に変更したこと、及び初期化データサーバ1にタグデータ設定手段92を追加したことにある。したがって、実施例1と同一である機能や要素等は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
本実施例の特徴は、初期化対象計算機3に搭載される計算機タグ91へ、初期化データサーバ1からデータを設定できるようにしたことにある。初期化データサーバ1から設定するデータとして、OSやアプリケーションの構成情報、初期化対象計算機3を操作するに必要な情報、例えばIPアドレスやRS−232Cの接続パラメータなどが例として挙げることができる。
【0076】
計算機タグ91は、データを保存するメモリを有するタグである。計算機タグ91として、RFIDやIEEE802.11規格を利用した無線タグ、あるいは接触式接点を有するICカードなどが好適である。計算機タグ91には、実施例1における計算機ID8のデータも格納される。
【0077】
ID入出力装置90は、作業データ9を読み取る機能と、計算機タグ91を読み書きする機能を有する。ID入出力装置90は、初期化データサーバ1へ接続して、作業データ9や計算機タグ91からのデータをIDデータ取得手段15へ通知し、タグデータ設定手段92からのデータを計算機タグ91へ設定する。
【0078】
初期化データサーバ1のタグデータ設定手段92は、計算機DB10、作業DB11、初期化DB12に格納されたデータに基づいて、計算機タグデータを生成し、ID入出力装置90に送信する機能を有する。タグデータ設定手段92はプログラムにより実現され、図2における不揮発メモリ24にタグデータ設定プログラムとして搭載される。
【0079】
図10に、本実施例の計算機初期化システムの動作フローを示す。本図の動作フローが図3の動作フローと異なる点は、ステップ107の処理が追加されたことにあり、その他の点は図3の処理と同一である。ステップ107では、初期化データサーバ1におけるタグデータ設定手段92が、計算機DB10、作業DB11、初期化DB12から計算機タグデータを生成する。そして、ID入出力装置90を介して計算機タグデータを計算機タグ91に書き込む。計算機タグデータは、ステップ100からステップ106までの処理で生成された初期化データに関連するデータであり、初期化データに含まれるOSやアプリケーション、デバイスドライバに関連する設定値から構成される。具体的には、初期化対象計算機3と接続するためのパラメータ(IPアドレス、RS−232C通信パラメータなど)や、設定用アプリケーションのTCPポート番号、搭載されるソフトウエアのバージョン情報、製造年月日、製造シリアル番号などが例として挙げられる。
【0080】
本実施例によれば、計算機タグ91に初期化対象計算機3に関する設定データを持たせることが可能となる。その結果、初期化対象計算機3を保守する際に、計算機DB10や作業DB11、初期化DB12へアクセスしないでも、必要な情報を取得することが可能となり、保守性が向上する。
【実施例3】
【0081】
図11に、本発明の実施例3の計算機初期化システムに用いる初期化対象計算機3のブロック構成図を示す。本実施例が実施例1、2の初期化対象計算機3と相違する点は、計算機タグ91とCPU88との間に、計算機タグI/F93を追加したことにある。その他の点は、実施例1、2と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
図11では、本実施例の計算機タグ91が初期化対象計算機3に搭載されているが、実施例1のように無線タグを用いてもよい。計算機タグI/F93は、計算機タグ91に格納されるデータをCPU88で取得するためのインターフェース装置である。例えば、CPU88は、計算機タグ91に記載される初期化対象計算機3の計算機IDを利用することで、初期化対象計算機3の認証処理を行うことができる。初期化対象計算機3の認証には、暗号技術の活用が好適である。
【0083】
例えば、公開鍵暗号方式を用いる場合、計算機ID8に対応した秘密鍵と公開鍵を用意する。秘密鍵は計算機タグ91のみに格納しておき、公開鍵は初期化対象計算機3と通信する計算機装置が知ることができる方式、例えばPKI(Public
Key Infastructure)方式で公開する。
【0084】
通信相手は、計算機ID8を通信前に初期化対象計算機3から入手し、計算機ID8に対応した公開鍵もPKIの認証局から入手する。通信相手が公開鍵を使い暗号化した文書を、初期化対象計算機3が対応する秘密鍵を使い復号化できれば、初期化対象計算機3の有する計算機ID8が正当なものであると認証することが可能である。
【0085】
計算機タグ91は、無線技術により外部と通信する場合に、無線通信するためのアンテナをプリント基板上に形成する技術が知られている。プリント基板上に形成されたアンテナを介して計算機タグI/F93にて直接通信することで、CPU88は計算機タグ91のデータを参照することができる。
【0086】
本実施例によれば、実施例1、2の効果に加え、初期化対象計算機3上で稼動するアプリケーション、例えば認証や固体識別などの用途に計算機ID8を利用することが可能となる。
【実施例4】
【0087】
図12に、本発明の実施例4の計算機初期化システムに用いるメディア入力装置のブロック構成図を示す。本実施例が実施例1、2のメディア入力装置6と相違する点は、初期化メディア5とメディアI/F80に代えて、初期化通信部94と通信バッファ95を搭載したことにある。その他の点は、実施例1、2と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
本実施例では、初期化通信部94が、図2の初期化データサーバ1の通信部23やメディア出力部25と通信し、初期化データサーバ1で生成された初期化データを通信バッファ95へ格納する。通信バッファ95としては、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリや、フラッシュメモリやEEPROMなどの不揮発性メモリを用いることができる。計算機I/F82は、初期化データを取得する要求を初期化対象計算機3から受けた場合に、初期化通信部94を介して、通信バッファ95から初期化データを取得する。
【0089】
本実施例のようにメディア入力装置6を構成することで、初期化データサーバ1とメディア入力装置6の間を通信路で結ぶだけでよくなる。事前に初期化データサーバ1とメディア入力装置6、初期化対象計算機3を接続しておけば、初期化対象計算機3から計算機ID8を取得して対応する初期化データを生成し、初期化データを初期化対象計算機3へ転送するまでの手順を自動化することが可能となり、生産性を向上できる。
【符号の説明】
【0090】
1 初期化データサーバ
2 ID入力装置
3 初期化対象計算機
4 作業票
5 初期化メディア
6 メディア入力装置
7 初期化データ入力手段
8 計算機ID
9 作業データ
10 計算機データベース
11 作業データベース
12 初期化データベース
15 IDデータ取得手段
16 関連付け手段
17 初期化データ生成手段
18 メディア出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期化対象計算機の初期化データを生成する初期化データ生成装置に通信手段を介して結合され、前記初期化データ生成装置から転送される前記初期化データを通信バッファに格納する初期化通信部と、
前記初期化対象計算機に通信手段を介して結合され、前記初期化対象計算機からの初期化データを取得する要求に応じて、前記通信バッファ内の前記初期化データを読み出す初期化プログラムを前記初期化対象計算機に転送する計算機インターフェースと、
を有してなる計算機初期化システムに用いられるメディア入力装置。
【請求項2】
請求項1のメディア入力装置を用いてなる計算機初期化システムにおいて、
前記初期化対象計算機は、前記メディア入力装置の計算機インターフェースに通信手段を介して結合されるメディア入力装置インターフェースと、該初期化対象計算機の演算処理手段を前記メディア入力装置にアクセスさせる選択手段とを有し、
前記初期化対象計算機の演算処理手段は、前記メディア入力装置インターフェースと前記計算機インターフェースを介して前記メディア入力装置の前記初期化プログラムを読み出して実行することにより、前通信バッファに格納された初期化データを該初期化対象計算機のプログラムメモリに書き込むことを特徴とする計算機初期化システム。
【請求項3】
請求項1のメディア入力装置を用いてなる計算機初期化システム又は請求項2の計算機初期化システムにおいて、
前記初期化対象計算機は装置組み込み向けの計算機であり、
該初期化対象計算機に貼り付けられた無線タグに格納された前記初期化対象計算機の計算機ID、及び前記無線タグに格納された前記初期化対象計算機を初期化する作業の作業IDと作業順序と前記作業IDに対応する作業で前記初期化対象計算機に搭載するソフトウエア部品の初期化データIDとが規定された作業データを読み取るID入力装置を備え、
前記初期化データ生成装置は、前記作業IDに対応させて計算機を初期化する作業内容が規定された作業データベース、及び前記初期化データIDに対応させて計算機を初期化する初期化データ内容が格納された初期化データベースを有し、前記ID入力装置に通信手段を介して結合され前記ID入力装置から入力される前記計算機IDと前記作業データに基づいて、前記作業データベースと前記初期化データベースから前記作業データに対応する作業順序で前記作業内容と前記初期化データ内容を読み出し、前記初期化対象計算機の前記初期化データを生成する計算機初期化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−49709(P2010−49709A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272164(P2009−272164)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【分割の表示】特願2007−53859(P2007−53859)の分割
【原出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】