説明

計量システム

【課題】酵素等の液体を正確に計量し、確実に添加できる計量技術の実現。
【解決手段】酵素液を貯蔵する酵素タンク1と、酵素タンク内に貯蔵された酵素液を計量するロードセル1aと、酵素タンクから払い出された所定量の酵素液が添加される仕込槽2と、酵素タンク1と仕込槽2の間に配置され、酵素タンクから払い出された酵素液を一時的に貯蔵し計量する計量タンク4と、酵素タンク1と仕込槽2とを計量タンク4を介して接続し酵素液を移送するための酵素輸送配管3と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ビール、発泡酒、雑酒等の発泡性飲料の製造工程において酵素を正確に計量して添加する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、貯蔵タンク内の液体燃料を分配する際に、タンクから出入りする液体量を液面計で測定すると共に、分配された液体の各体積量を測定して、両者の誤差によりタンクの上部から底部までの高さ全体に亘って液体量を構成する技術が記載されている。また、特許文献2には、タンクから出る液体量を液面計で測定すると共に、液体を払い出す計量機の給油信号と比較して、両者の誤差を検出する技術が記載されている。
【特許文献1】特開平9−301500号公報
【特許文献2】特開2001−249045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、ビール、発泡酒、雑酒等の発泡性飲料の仕込工程において、麦芽や副原料(米、コーングリッツ、コーンスターチ)に含まれるデンプンやタンパク質を分解するために添加する酵素は重要であり、無添加や添加量の変動が発生すると工程中製品が不良となり、廃棄処分ともなり得る。酵素の種類や量は製造処方や分解したい成分に応じて適宜選択される。同様に添加場所も製造処方や目的に応じて仕込釜、仕込槽、煮沸釜等適宜選択される。一例として、仕込工程においてデンプンを加水分解して糖化するために仕込槽にデンプン分解酵素を添加する等がある。この場合、ビールの仕込工程においては、酵素タンクごとに付加された計量器1つによりタンクから払い出される酵素量を計量して仕込槽に添加しているが、無添加や添加量のミスが直接製品不良を引き起こすため途中での復旧が難しくなる。
【0004】
また、上記特許文献1,2はいずれも異なる計量手段(液面計と液量計(体積や重量))による測定結果を比較して正確な計量を行うものであるが、ビール、発泡酒、雑酒等の発泡性飲料の製造工程においては、酵素等の添加物を正確に計量するだけでなく、確実に添加を実施することも重要となる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、酵素等の液体を正確に計量し、確実に添加できる計量技術を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る計量システムは、添加物(酵素液)を貯蔵する第1のタンク1と、前記第1のタンク内に貯蔵された添加物を計量する計量器1aと、前記第1のタンクから払い出された所定量の添加物が供給される第2のタンク2と、前記第1のタンクと前記第2のタンクの間に配置され、前記第1のタンクから供給された添加物を一時的に貯蔵し計量する計量タンク4と、前記第1のタンクと前記第2のタンクとを前記計量タンクを介して接続し前記添加物を移送するための添加物輸送配管3と、を有する。
【0007】
また、好ましくは、複数の前記第1のタンク及び前記第2のタンクを有し、前記添加物輸送配管3には、前記第1のタンクと前記計量タンクとの連通及び遮断を行う開閉弁1c,3dと、前記計量タンクと前記第2のタンクとの連通及び遮断を行う開閉弁3eとがそれぞれ設けられ、前記各開閉弁の連通及び遮断を制御することで前記第1のタンクのいずれかから払い出される所定量の添加物を前記第2のタンクのいずれかに振り分ける。
【0008】
また、好ましくは、前記添加物輸送配管3は、前記第1のタンクと前記計量タンクとを接続する上流側輸送配管3aと、前記計量タンクと前記第2のタンクとを接続する下流側輸送配管3bとを有し、前記上流側及び下流側の各輸送配管には、前記開閉弁3d,3eにより連通及び遮断が制御される排出配管11,12が接続されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酵素等の液体を正確に計量し、確実に添加できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0011】
[システム構成]
図1は本発明に係る実施形態の酵素添加システムの全体構成を示す図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のシステムは、ビールの仕込工程において酵素等の液体原料を正確に計量し、仕込槽に確実に添加できるようにしたシステムである。
【0013】
上記仕込工程は、麦芽の一部と副原料を加えて仕込釜で煮る工程、残りの麦芽に仕込釜で煮たものを加えて仕込槽でデンプンを糖化させて麦芽糖を生成する工程、仕込槽でできたもろみを麦汁ろ過槽で濾過して透明な麦汁にする工程、麦汁にホップを加えて煮沸釜で煮沸する工程を含む。尚、発泡酒の場合、原料、水(湯)を仕込槽で混合するところから始まり、仕込釜での工程は省略される場合がある。また、雑酒の場合、煮沸釜で原料を混合し、仕込釜及び仕込槽での工程が省略される(例えば、特開2004−024151号公報参照)。
【0014】
本実施形態では、上述した仕込工程において、特に仕込槽に酵素を添加するための酵素添加システムへの適用例を説明する。
【0015】
図1に示すように、酵素添加システムは、酵素液を貯蔵する複数の酵素タンク1と仕込槽2とを酵素輸送配管3で接続し、酵素タンク1と仕込槽2の間の酵素輸送配管3途中に酵素量を計量するための計量タンク4を配置して構成されている。
【0016】
各酵素タンク1には、各タンク内に貯蔵された酵素液の重量を常時計量するためのロードセル(計量器)1aが配設されている。各酵素タンク1は約200リットルの酵素液を貯蔵できる容量を有する。
【0017】
また、計量タンク4には、酵素タンク1から計量タンク内に移送された酵素液の重量を計量するためのロードセル(計量器)4aが配設されている。計量タンク4は約200リットルの酵素液を貯蔵できる容量を有する。
【0018】
ロードセル1a,4aは、タンクのみの重量とタンク内の液体の重量とを合わせた総重量からタンクのみの重量を差し引くことで、タンク内の液体の重量を計量する。
【0019】
酵素輸送配管3は、各酵素タンク1と計量タンク4とを接続する上流側輸送配管3aと、計量タンク4と各仕込槽2とを接続する下流側輸送配管3bとを有する。
【0020】
各酵素タンク1と上流側輸送配管3aとは、分岐配管1bにより夫々接続されており、各分岐配管1bと上流側輸送配管3aとは各酵素タンク1から所定量の酵素液を酵素輸送配管3に払い出すように制御するための開閉弁1cによりが夫々接続されている。これら開閉弁1cは、酵素タンク1から計量タンク4に到る配管中に酵素液が残らないような2重シールバルブ構造を有する。2重シールバルブ構造は、残液が残らず、バルブ閉時のシール不良による漏れがないことを特徴としている。
【0021】
上流側輸送配管3aの一端は、開閉弁9aを介したエアー配管9と開閉弁10aを介した洗浄水配管10の2系統に分岐している。一方、上流側輸送配管3aの他端は排出(ブロー)配管11に接続されている。
【0022】
また、上流側輸送配管3aと計量タンク4とは切替弁3dにより接続されている。切替弁3dは、計量時には上流側輸送配管3aと計量タンク4とを連通(上流側輸送配管3aと排出配管11とを遮断)し、洗浄時には上流側輸送配管3aと排出配管11とを連通(上流側輸送配管3aと計量タンク4とを遮断)するように流路を切り替える。
【0023】
また、計量タンク4と下流側輸送配管3bとは、分岐配管4bにより接続されており、分岐配管4bにはタンク内に貯蔵された酵素液を下流側輸送配管3bに払い出すように制御するための開閉弁4cが配設されている。
【0024】
各酵素タンク1から計量タンク4、計量タンク4から下流側輸送配管3bへの酵素液の移送は重力による自然落下により、最終的にはエアーの押出しにより排出される。即ち、酵素タンク1は上流側輸送配管3aよりも鉛直上方に配置され、上流側輸送配管3aは計量タンク4よりも鉛直上方に配置され、計量タンク4は下流側輸送配管3bよりも鉛直上方に配置されている。
【0025】
そして、下流側輸送配管3bから仕込槽2への酵素液の移送は下流側輸送配管3bと仕込槽2との間に設けられたポンプ6により行う。
【0026】
下流側輸送配管3bの一端は流量計7を介して排出配管12、他端は開閉弁8を介して洗浄配管13に接続されている。
【0027】
各仕込槽2と下流側輸送配管3bとは、分岐配管2bにより夫々接続されており、下流側輸送配管3bと各分岐配管2bとは切替弁3eにより接続されている。各分岐配管2bには、分岐配管2bを流れる酵素液の流量を測定する流量計2cが配設されている。切替弁3eは、仕込槽2への酵素添加時には下流側輸送配管3bと分岐配管2b(仕込槽2)とを連通(下流側輸送配管3bと排出配管12とを遮断)し、洗浄時には下流側輸送配管3bと排出配管12とを連通(下流側輸送配管3bと各分岐配管2bとを遮断)するように流路を切り替える。また、一方の切替弁3eを開、他方の切替弁3eを閉に制御することで酵素液を添加する仕込槽2を振り分ける。
【0028】
[動作説明]
次に、図1の酵素添加システムによる計量動作について説明する。
【0029】
酵素タンク1内の酵素液の重量は、各ロードセル1aにより常時計量されている。
【0030】
計量時は、ロードセル1aにより計量することで予め決められた量の酵素液をいずれかの酵素タンク1から払い出して計量タンク4に移送する。ここで、酵素タンク1から払された酵素液量(払出し前の酵素タンク1の計量値から払出し後の計量値を差し引いた値)と計量タンク4での計量値とを比較する。
【0031】
そして、これらの2つの計量値が予め決められた誤差範囲内に収まっていれば計量OK、誤差範囲外であれば計量NGと判断する。このように、酵素タンク1での計量値と計量タンク4での計量値とを比較することで、酵素タンク1から払い出された酵素液量を2つのタンクで2重にチェックすることができる。また、仕込槽2に添加される酵素液量は、計量タンク4から払い出される酵素液量を超えることはないので、酵素液の過剰な添加を防ぐことができる。
【0032】
更に、各仕込槽2の流量計の測定値と、排出配管12の流量計の測定値とを監視することで、計量タンク4から目的の仕込槽2へ正常に酵素液が添加されたかを確認することができる。
【0033】
尚、本発明は、上述した酵素添加システムに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、正確な計量と確実な添加を必要とするものであれば、他の用途にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る実施形態の酵素添加システムの全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 酵素タンク
2 仕込槽
3 酵素輸送配管
4 計量タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加物を貯蔵する第1のタンクと、
前記第1のタンク内に貯蔵された添加物を計量する計量器と、
前記第1のタンクから払い出された所定量の添加物が供給される第2のタンクと、
前記第1のタンクと前記第2のタンクの間に配置され、前記第1のタンクから供給された添加物を一時的に貯蔵し計量する計量タンクと、
前記第1のタンクと前記第2のタンクとを前記計量タンクを介して接続し前記添加物を移送するための添加物輸送配管と、を有することを特徴とする計量システム。
【請求項2】
複数の前記第1のタンク及び前記第2のタンクを有し、
前記添加物輸送配管には、前記第1のタンクと前記計量タンクとの連通及び遮断を行う開閉弁と、前記計量タンクと前記第2のタンクとの連通及び遮断を行う開閉弁とがそれぞれ設けられ、
前記各開閉弁の連通及び遮断を制御することで前記第1のタンクのいずれかから払い出される所定量の添加物を前記第2のタンクのいずれかに振り分けることを特徴とする請求項1に記載の計量システム。
【請求項3】
前記添加物輸送配管は、前記第1のタンクと前記計量タンクとを接続する上流側輸送配管と、前記計量タンクと前記第2のタンクとを接続する下流側輸送配管とを有し、
前記上流側及び下流側の各輸送配管には、前記開閉弁により連通及び遮断が制御される排出配管が接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の計量システム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−216020(P2008−216020A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53332(P2007−53332)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】