説明

記憶媒体収納体及び無線綴じ冊子体

【課題】冊子体に添付可能で、切り離して使用する際に、子供や老人にとっても記憶媒体を取り出しやすい記憶媒体収納体を提供する。
【解決手段】一枚の板紙からなり、背面部材25の一方に連接される前板部材26と、前記背面部材の他方の側に連接される前面部材26と、必要に応じて前記前面部材の他方の側に連接される第二前面部材42を備え、少なくとも背面部材と前面部材には、連接方向と直交方向の少なくとも片側の端に、切り取り予定線又はミシン目M2を介してダミー部材D1、D2が連接され、前板部材と背面部材は連接方向と直交方向の両端部で接着され、さらに、前面部材と背面部材とに連接する各ダミー部材D1、D2が接着されてなる記憶媒体収納体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクトディスク(CD;Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disk)等の記憶媒体を収納する記憶媒体収納体に関する。この記憶媒体収納体は、本や雑誌に貼り込み、綴じ込み又は挟み込んで添付するほか、単体でも店頭での販売や街頭での頒布、郵送又は宅配などに使用することができるものである。
【背景技術】
【0002】
コンパクトディスク、DVDなど記憶媒体を紙製の記憶媒体収納体に入れ、これを綴じ込んだ冊子体は、音声等を記憶媒体に入れて添付することができることから、読者に多様なニーズに応えることができる。例えば、英語等の語学教材、コンピューター雑誌が代表的な例である。そして、このような記憶媒体収納体としては、種々の構造が提案されている。このように、記憶媒体を記憶媒体収納体に収納し、本や雑誌に添付することは公知である。
【0003】
公知文献を以下に示す。
【特許文献1】特開2002−284279号公報
【特許文献2】実開平3−81766号公報
【特許文献3】特開平8−324667号公報
【0004】
特開2002−284279号公報には、図8に示す記憶媒体収納体が記載されている。すなわち、一枚の板紙に孔開け加工部2、筋押し加工部3、切込み加工部4、ミシン目加工部7、8を形成し、綴じ込み用端部6のみが、一枚になるように、切込み加工部4で折り込んだ記憶媒体収納体である。そして、記憶媒体5を収納し、切込み加工部4とミシン目加工部7の交点に、小穴9を設けた記憶媒体収納体1である。
【0005】
この記憶媒体収納体は、綴じ込み用端部6で冊子体に綴じ込まれ、その際には、無線綴じ製本機で冊子体とすることが開示されている。そして、ミシン目加工部8で冊子体から切り離される。そして、ミシン目加工部7を切り取ることにより、記憶媒体収納体の上部が開き、記憶媒体5を取り出すことが可能となる。
【0006】
なお、この収納体には、コートボール(270グラム/平方メートル)を用いること、板紙として190グラム/平方メートル〜400グラム/平方メートルの範囲にあることが好ましく、190グラム/平方メートルより軽いと剛性が小さく薄板状記憶媒体の保護という作用がなくなり、400グラム/平方メートルを超えて重いと、冊子体(本、雑誌、書籍、パンフレットカタログ等)を見るとき剛性が大きすぎフレキシブルでなく、冊子体が読みにくいことが、その公報に記載されている。
【0007】
この記憶媒体収納体は、冊子体の一部として綴じ込まれ、添付されることができ、非常に有用なものであったが、開口部が記憶媒体収納体の上部のみである。そのため、記憶媒体を取り出すときには、上部の両端を挟むように押して開口部を広げ、開口部から指を入れたり、開口部を下にして記憶媒体を自然落下させて記憶媒体を取り出す方法によることが考えられる。
【0008】
しかし、第一の課題として、子供や老人にとっては、上部の両端を挟むように押す動作をすることは必ずしも容易でなく、より記憶媒体を取り出しやすい形態の記憶媒体収納体を提供することが望まれていた。
また、この記憶媒体収納体は、書籍に綴じ込んだ場合に、綴じ込み用端部6が一枚であることで、フレキシブルとなり冊子体が読みやすいという効果を主眼としたもので、冊子体から切り離した後の記憶媒体の保存性を強く意識したものではなかった。
【0009】
第二の課題として、記憶媒体が冊子体の一部として添付された場合でも、記憶媒体の使用時には、記憶媒体はコンパクトディスクプレーヤーやDVDプレーヤー等の再生機器やパソコン機器で用いられることから、これらの機器の近くに置くことが使用上は便利であり、長期間にわたって、より見栄えがよく、これらの機器の近くで保存することができる記憶媒体収納体が望まれていた。
【0010】
ところで、本や雑誌等の冊子体は、書店の店頭で平積みされて販売されたり、書棚にぎっしりと詰め込んで、販売や保管がされることがある。このような場合に、記憶媒体が添付されている冊子体においては、記憶媒体収納体が複雑な構造で、厚い部分と薄い部分を入り混じって有していると、綴じ込まれた記憶媒体収納体が接する、あるいは近接する数枚の頁に記憶媒体収納体の厚みによる跡がつくことがあった。
【0011】
そこで、第三の課題として、このように記憶媒体収納体の厚みにより、綴じ込まれた記憶媒体収納体が接する、あるいは近接する数枚の頁に跡がつく現象を生じさせないことが望まれていた。
【0012】
さらに、第四の課題として、冊子体の輸送や取扱い、さらに冊子体から記憶媒体収納体を分離した後の記憶媒体の輸送や取扱い時に、記憶媒体に傷が生ずるおそれがないような構造が求められていたところであるが、上記したように、記憶媒体の出し入れ動作が容易でないと、出し入れ時に無理が生じ、記憶媒体に傷をつけてしまう可能性も否定しきれなかった。
【0013】
第五の課題として、記憶媒体収納体を冊子体から分離する前の記憶媒体収納体、記憶媒体収納体の記憶媒体が収納された部分が分離された後に冊子体に残存する部品により冊子体が読みにくくならないことも望まれていた。
【0014】
また、第六の課題として、製造工程も簡易である記憶媒体収納体が望まれていた。
【0015】
次に、実開平3−81766号公報には、折丁の一部に、袋状に形成されてなるコンパクトディスク収納用容器を貼り付ける構造が記載されている。図9に示すもので、所定の内容が印刷された折丁11の一部に、コンパクトディスク収納用容器12を貼り付けていたものである。このコンパクトディスク収納用容器12は、その一部分である12Aが袋状に形成されており、内部にコンパクトディスク13が収納される。袋部分12Aの口部が接着剤により貼着されることで封止され、他の部分である12Bの下側に折り込み、貼り付け部分12Cを、接着剤により折丁11に貼着しているというものである。
【0016】
このコンパクトディスク収納用容器を貼り付ける構造は、非常に有用なものであったが、コンパクトディスクを取り出す開口部が、他の部分12Bの側のみであり、上記第一の課題である、コンパクトディスクを容易に取り出すことについては、上述の特開2002−284279号公報記載の技術と同様の課題を有していた。
【0017】
また、記憶媒体収納体を折丁に貼り付けていることから、折丁から剥がして記憶媒体の長期的な保存に用いることは想定されておらず、剥がして用いようとしても、剥がした部分の接着剤の跡で、美しい外観を保つことはできなかった。
そして、袋部分12Aの部分をいったん袋状に加工し、中にコンパクトディスクを入れ、口部を接着剤により貼着する、という工程が複雑であり、さらに、袋部分12Aを他部分12Bの下側に折りこむことは、製造工程の機械化が困難であるという課題を有していた。
【0018】
さらに、折丁11にコンパクトディスク収納用容器12を貼り付けるという工程も、通常の製本工程に加えて必要となる工程であり、工程が増加することは否めなかった。そのため、上記第六の課題である簡易な製造工程で製造できること、という課題を有していた。
【0019】
次に、特開平8−324667号公報には、正面板上のコンパクトディスクを載置し、正面板の四方に連接された板、すなわち、正面板の下側に連接された背面板、両側に連接された糊代板、上側に連接された開閉蓋板を折り曲げることによって、コンパクトディスクを保持する収納体が開示されている。
【0020】
このコンパクトディスク収納体は、上述した第一の課題であるコンパクトディスクの取り出しやすさの点では、上述した従来技術よりは向上しているものの、糊代板がコンパクトディスクの大きな面積を覆っていることから、子供や老人にとっては、出し入れがスムーズに行えない場合もあり、出し入れ時に記憶媒体に爪等で傷をつけてしまう可能性もあった。
【0021】
上記第三の課題についても、糊代板を両側から折り込む構造となっており、この部分では、板紙が少なくとも4枚重なる構造となっており、また、その部分で4枚重なる構造の場合、糊代板の間の部位では、3枚重なる構造となり、U字状の切り込みの部分では2枚が重なる構造となるという状態であり、厚みのばらつきが大きく、綴じ込まれた記憶媒体収納体が接する、あるいは近接する数枚の頁に跡がつく可能性があった。
【0022】
また、上記第六の課題については、正面板の四方に連接された板を折り曲げるため、方向の異なる折加工が必要であり、製造工程の自動化を図るためには、製造設備、製造工程が複雑にならざるを得ないという課題を有していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上述してきたように、記憶媒体収納体としては種々の形態が知られており、それぞれの形態について開発目的の相違もあるものの、結果的に冊子体の一部として綴じ込む記憶媒体収納体としては、以下のような課題を有していた。
【0024】
すなわち、第一の課題として、子供や老人にとっても、より記憶媒体を取り出しやすい形態の記憶媒体収納体を提供することが望まれていた。
【0025】
第二の課題として、記憶媒体が冊子体の一部として添付された場合でも、記憶媒体の使用時には、記憶媒体は、コンパクトディスクプレーヤーやDVDプレーヤー等の再生機器やパソコン機器で用いられることから、それらの機器の近くに置くことが使用上は便利であり、長期間にわたって、より見栄えがよく、これらの機器の近くで保存することができる記憶媒体収納体が望まれていた。
【0026】
第三の課題として、記憶媒体収納体の厚みにより、添付された記憶媒体収納体が接する、あるいは近接する数枚の頁に跡がつく現象を生じさせないことが望まれていた。
【0027】
第四の課題として、冊子体の輸送や取扱い、さらに冊子体から記憶媒体収納体を分離した後の記憶媒体の輸送や取扱い時に、記憶媒体に傷が生ずるおそれがないような構造であることが望まれていた。
【0028】
第五の課題として、記憶媒体収納体を冊子体から分離する前の記憶媒体収納体、記憶媒体収納体の記憶媒体が収納された部分が分離された後に冊子体に残存する部品により冊子体が読みにくくならないことが望まれていた。
【0029】
第六の課題として、簡易で、効率の高い製造工程で製造できる記憶媒体収納体が望まれていた。
【0030】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、これらの課題を一挙に解決し、単体として使用する用途にも、冊子体に貼り込み、綴じ込み又は挟み込んで添付する用途にも、共に適した記憶媒体収納体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
すなわち、請求項1記載の発明は、一枚の板紙からなる記憶媒体収納体であって、略矩形状の背面部材と、背面部材の一辺に折目線を介して連接される前板部材と、前記背面部材の、前記前板部材が連接される側とは反対側に、折目線を介して連接される略矩形状の前面部材を備え、少なくとも前記背面部材及び前記前面部材の、背面部材と前板部材が連接される方向とは直交する方向の、少なくとも一方の端には、それぞれ、切り取り予定線又はミシン目を介してダミー部材が連接されてなり、前記前板部材が、前記背面部材と重なるようにそれらを接続する折目線で折られ、さらに、前記前面部材が、前記背面部材及び前板部材と重なるように前面部材と背面部材を接続する折目線で折られており、前記前板部材と前記背面部材は、それらが連接される方向とは直交する方向の両端部で接着され、前記前面部材は、前記背面部材及び前板部材のうち少なくとも背面部材とは、前面部材と連接される、少なくとも一つの端の前記ダミー部材で接着されてなる記憶媒体収納体である。
【0032】
また、請求項2記載の発明は、一枚の板紙からなる記憶媒体収納体であって、略矩形状の背面部材と、背面部材の一辺に折目線を介して連接される前板部材とを備え、前記背面部材の、前記前板部材が連接される側とは反対側に、それぞれ折目線を介して背表紙部材及び略矩形状の前面部材が、この順に連接され、少なくとも前記背面部材及び前記前面部材の、背面部材と前板部材が連接される方向とは直交する方向の、少なくとも一方の端には、それぞれ、切り取り予定線又はミシン目を介してダミー部材が連接されてなり、前記前板部材が、前記背面部材と重なるようにそれらを接続する折目線で折られ、さらに、前記前面部材が、前記背面部材及び前板部材と重なるように前記背表紙部材の両側の折目線の少なくとも一方の折目線で折られており、前記前板部材と前記背面部材は、それらが連接される方向とは直交する方向の両端部で接着され、前記前面部材は、前記背面部材及び前板部材のうち少なくとも背面部材とは、前面部材と連接される、少なくとも一つの端の前記ダミー部材で接着されてなる記憶媒体収納体である。
【0033】
さらに、請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明を前提とし、前記前板部材の、前記背面部材と連接される方向の長さが背面部材の長さより短いことを特徴としている。
【0034】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載の発明を前提とし、板紙が、一平方メートルあたり250グラム以上、300グラム以下の板紙であり、かつ、紙目方向が背面部材と前板部材が連接される方向と直交する方向であることを特徴としている。
【0035】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の発明を前提とし、収納が予定される記憶媒体が円盤状記憶媒体であり、前記背面部材と前記前板部材が連接される方向の、背面部材の長さが、収納が予定される円盤状記憶媒体の直径に5ミリメートルを加えた長さより長く、直径に15ミリメートルを加えた長さより短く、前板部材の長さが、収納が予定される円盤状記憶媒体の直径の2分の1より長く、前板部材が背面部材上に折り込まれた状態で、前板部材の端から背面部材の前板部材が連接される折目線とは反対側の折目線までの距離が、収納が予定される円盤状記憶媒体の2分の1から8ミリメートルを引いた長さより長くなるように設計されており、かつ、前板部材の背面部材と連接される側とは反対側の辺の中央部分に、深さが8ミリメートル以上の凹部が形成されていることを特徴としている。
【0036】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載の発明を前提とし、前面部材の、背面部材又は背表紙部材が連接される側とは反対側に、折目線を介して第二前面部材が連接されることを特徴としている。
【0037】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明を前提とし、前記第二前面部材の、前面部材と連接される方向と直交する方向の、少なくとも一方の端には、切り取り予定線又はミシン目を介してダミー部材が連接されてなり、かつ、第二前面部材は、前板部材が背面部材に重なる側と同じ側に、前記前面部材と重なるように、前面部材と連接される折目線で折られ、少なくとも一つの端の前記ダミー部材で接着されてなることを特徴としている。
【0038】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の発明を前提とし、前記第二前面部材は、前板部材が背面部材に重なる側と同じ側に、前記前面部材と重なるように、それらを接続する折目線で折られ、それらが連接される方向とは直交する方向の両端部で前面部材に接着されてなることを特徴としている。
【0039】
請求項9記載の発明は、請求項6乃至請求項8のいずれか一項記載の発明を前提とし、前記第二前面部材の、前記前面部材と連接される方向の長さが前面部材の長さより短いことを特徴としている。
【発明の効果】
【0040】
請求項1記載の発明によれば、一枚の板紙からなる記憶媒体収納体であって、略矩形状の背面部材と、背面部材の一辺に折目線を介して連接される前板部材と、前記背面部材の、前記前板部材が連接される側とは反対側に、折目線を介して連接される略矩形状の前面部材を備え、少なくとも前記背面部材及び前記前面部材の、背面部材と前板部材が連接される方向とは直交する方向の、少なくとも一方の端には、それぞれ、切り取り予定線又はミシン目を介してダミー部材が連接されてなり、前記前板部材が、前記背面部材と重なるようにそれらを接続する折目線で折られ、さらに、前記前面部材が、前記背面部材及び前板部材と重なるように前面部材と背面部材を接続する折目線で折られており、前記前板部材と前記背面部材は、それらが連接される方向とは直交する方向の両端部で接着され、前記前面部材は、前記背面部材及び前板部材のうち少なくとも背面部材とは、前面部材と連接される、少なくとも一つの端の前記ダミー部材で接着されてなる記憶媒体収納体であるため、冊子体に貼り込み又は綴じ込んで添付する場合にあっても、いずれか一つの端のダミー部材の部分で冊子体の表紙又は本文頁に接着し又は冊子体に綴じ込んだ形態とすることで、冊子体から容易に切り離すことができ、さらに、切り取り予定線又はミシン目を切り取ることで、二つ折り形態の記憶媒体収納体を得ることができ、子供や老人にとっても、記憶媒体を取り出すことが非常に容易である形態の記憶媒体収納体を得ることができる。
【0041】
また、二つ折りの形態の記憶媒体収納体は、その背面部材及び前面部材に自由な印刷をすることやシールやラベル等を貼ることも可能であり、市販のコンパクトディスクケース等と並べて保管することも可能である。そのため、再生機器やパソコン機器の近傍に立てる等して保管した場合でも、見栄えがよい保管が可能である。さらに、長期間にわたって保管しても、この発明の形態であれば、紙が自然に折れる等の問題は生じず、長期間の保管が可能である。そして、記憶媒体の出し入れは非常にスムーズに行うことができ、子供や老人が扱った場合でも、記憶媒体に傷をつけてしまう可能性が非常に低い。
【0042】
記憶媒体収納体が単純な構造であり、小さな部材等によって厚みに差が生じにくく、綴じ込まれた記憶媒体収納体が接する、あるいは近接する数枚の頁に跡がつくことがない。
【0043】
さらに、記憶媒体の出し入れが行いやすいため、記憶媒体収納体に収納する際も確実に収納することができ、記憶媒体収納体中における記憶媒体収納体の位置も安定する。したがって、冊子体の輸送や取扱い、さらに冊子体から記憶媒体収納体を分離した後の記憶媒体の輸送や取扱い時に、記憶媒体に傷が生ずるおそれがない。
【0044】
冊子体に貼り込み又は綴じ込んで添付する場合にあっても、いずれか一つの端のダミー部材の部分で冊子体の表紙又は本文頁に接着し又は冊子体に綴じ込んだ形態とすることで、冊子体に直接接着される部分は、最少の場合には一枚の板紙からなる構造とすることができ、しかもその面積を比較的に小面積に抑えることができるので、記憶媒体収納体の記憶媒体が収納された部分が分離された後に冊子体に残存しても、冊子体が読みにくくなることがない。
【0045】
そして、特に顕著な効果として、製造工程においても、一枚の板紙に切り取り予定線又はミシン目加工や筋押し加工を施し、接着部分への接着剤の塗布加工後、平行に形成された折目線を最少の場合には二回、多くとも四回程度折り曲げるのみで製造でき、非常に簡易な工程で製造することが可能である。また、背面部材と前板部材の間及び背面部材と前面部材の間のそれぞれの折目線で曲げる際も、紙目方向と折目線が平行になるため折り曲げやすく、機械加工で折り曲げる際に効率よく折り曲げることができる。
【0046】
このようなことから、製造装置の構造も非常に簡易にすることができる。また、接着剤の塗布加工の前、または後に、背面部材上に記憶媒体を載置する工程を加えることで、記憶媒体を入れることも一連の製造工程で可能になり、高い効率で製造することが可能となる。
【0047】
請求項2記載の発明によれば、一枚の板紙からなる記憶媒体収納体であって、略矩形状の背面部材と、背面部材の一辺に折目線を介して連接される前板部材とを備え、前記背面部材の、前記前板部材が連接される側とは反対側に、それぞれ折目線を介して背表紙部材及び略矩形状の前面部材が、この順に連接され、少なくとも前記背面部材及び前記前面部材の、背面部材と前板部材が連接される方向とは直交する方向の、少なくとも一方の端には、それぞれ、切り取り予定線又はミシン目を介してダミー部材が連接されてなり、前記前板部材が、前記背面部材と重なるようにそれらを接続する折目線で折られ、さらに、前記前面部材が、前記背面部材及び前板部材と重なるように前記背表紙部材の両側の折目線の少なくとも一方の折目線で折られており、前記前板部材と前記背面部材は、それらが連接される方向とは直交する方向の両端部で接着され、前記前面部材は、前記背面部材及び前板部材のうち少なくとも背面部材とは、前面部材と連接される、少なくとも一つの端の前記ダミー部材で接着されてなる記憶媒体収納体であるため、前述した請求項1記載の発明の場合と同等の効果が得られることに加えて、ダミー部材から切り取り予定線又はミシン目で切り取り、背表紙部材と背面部材及び前面部材とを接続する折目線によって、前板部材を内側にして断面扁平コ字状に折り曲げると、ほぼ二つ折り形態の記憶媒体収納体の折曲部分に面状の背表紙部材が存在することによって、当該記憶媒体収納体を単独で見た場合にも、多数並べて立てたり多数平積みにしたりして保管した場合にも、見栄えはより良くなって高級感が増し、立てた状態はより安定化し、また、背表紙部材の表面(外面)に、収納した記憶媒体のタイトル等の情報を印刷したり、シールやラベル等を貼る等すれば、多数並べて立てたり多数平積みにしたりして保管した場合にも、それぞれの記憶媒体収納体を一つずつ取り出さなくても、背表紙部材の表面(外面)の印刷やシール、ラベル等が見えるので、それぞれの記憶媒体収納体に収納された記憶媒体を容易に識別することができ、所望する記憶媒体の存否の確認や選択的な取り出しが極めて容易になる。
【0048】
請求項3記載の発明によれば、前記前板部材の、前記背面部材と連接される方向の長さが背面部材の長さより短いため、これら前板部材と背面部材との間に形成される空間に記憶媒体を収納し、又は当該空間に収納された記憶媒体を取り出す際に、記憶媒体の長さが前板部材の長さよりも長い場合には、記憶媒体はその一部が前記空間からはみ出した状態で収納されることになるため、当該はみ出した部分を持って記憶媒体の収納及び取り出しを行うことによって、記憶媒体の収納及び取り出しを容易に行うことができ、また、記憶媒体の長さが前板部材の長さよりも短い場合には、記憶媒体はその全体が前記空間の内部に収納されることになるが、前板部材の長さが背面部材の長さより短いので、その長さの差によって形成される隙間から前記空間に指を入れ易いため、やはり記憶媒体の収納及び取り出しを容易に行うことができる。
【0049】
請求項4記載の発明によれば、前記板紙が、一平方メートルあたり250グラム以上、300グラム以下の板紙であり、かつ、紙目方向が背面部材と前板部材が連接される方向と直交する方向であるため、記憶媒体収納体が適度な剛性を備えることができ、その剛性により、背面部材と前板部材で記憶媒体を適度な力で押さえることができ、記憶媒体が脱落することがなく、かつ取り出しも行いやすい保管に適した剛性を得ることができる。また、紙目と平行する方向に曲線が生じにくく、このような曲線が生じにくいということは、背面部材と前面部材を接続する折目が、背になるように立てて保管をする、という最もよく行われる保管形態を、長年にわたって採用した場合でも、自重で曲がりが生ずることを避けることができる。
【0050】
さらに、最も厚い部分でも背面部材、前面部材及び前板部材という3枚の板紙が重なる厚みであり、一平方メートルあたり250グラム以上、300グラム以下の板紙であれば、綴じ込まれた記憶媒体収納体が接する、あるいは近接する数枚の頁に跡がつく現象を生じにくくすることができる。
【0051】
請求項5記載の発明によれば、収納が予定される記憶媒体が円盤状記憶媒体であり、前記背面部材と前記前板部材が連接される方向の、背面部材の長さが、収納が予定される円盤状記憶媒体の直径に5ミリメートルを加えた長さより長く、直径に15ミリメートルを加えた長さより短く、前板部材の長さが、収納が予定される円盤状記憶媒体の直径の2分の1より長く、前板部材が背面部材上に折り込まれた状態で、前板部材の端から背面部材の前板部材が連接される折目線とは反対側の折目線までの距離が、収納が予定される円盤状記憶媒体の2分の1から8ミリメートルを引いた長さより長くなるように設計されており、かつ、前板部材の背面部材と連接される側とは反対側の辺の中央部分に、深さが8ミリメートル以上の凹部が形成されているため、円盤状記憶媒体が背面部材と前板部材が連接される方向に動くことが可能な量が5ミリメートルより大きく、15ミリメートルより小さくなる。
【0052】
そして、前板部材に形成された凹部に、円盤状記憶媒体に通常存在する中央の穴が確実に重なり、子供や老人でも円盤状記憶媒体の穴に指を入れて、極めて容易に取り出すことができ、しかも、記憶媒体が落下しにくく、かつ取り出しやすい記憶媒体収納体を得ることができる。
【0053】
請求項6記載の発明によれば、前面部材の、背面部材又は背表紙部材が連接される側とは反対側に、折目線を介して第二前面部材が連接されるため、当該折目線によって第二前面部材を前面部材上に折り重ねた状態で、これら第二前面部材と前面部材との間に、例えば記憶媒体の説明書、解説書、保証書等の関連小冊子や、ユーザー登録又は会員登録用葉書やアンケート葉書、記憶媒体に関連するシールやステッカー、ワッペン、栞等の景品類、或いはもう一つの記憶媒体等の副収納物を収納することができる。また、第二前面部材の表面にも、前面部材や背面部材の表面と同様に、各種の表示を印刷したり、ラベル又はシール等を貼ったりすることができ、これによって、記憶媒体の使用者により多くの情報を提供したり、印刷等による表示の表現の自由度が高まることを利用して顧客の購買意欲をより向上させたりすることもできる。
【0054】
請求項7記載の発明によれば、前記第二前面部材の、前面部材と連接される方向と直交する方向の、少なくとも一方の端には、切り取り予定線又はミシン目を介してダミー部材が連接されてなり、かつ、第二前面部材は、前板部材が背面部材に重なる側と同じ側に、前記前面部材と重なるように、前面部材と連接される折目線で折られ、少なくとも一つの端の前記ダミー部材で接着されてなるため、第二前面部材と前面部材とはその面内では接着されていないので、それらの間に形成される副収納物の収納空間は最大となって、ほぼ前面部材と等しい面積の大型の副収納物を収納することができる。また、これら第二前面部材と前面部材とは、記憶媒体収納体から切り取り予定線又はミシン目によってダミー部材を切り離した後には、再び自由に開閉することができるようになるので、第二前面部材及び/又は前面部材の裏面(内面)にも印刷やラベル又はシールの貼付等を施すことによって、表示可能な面積が大幅に増加し、記憶媒体の使用者により多くの情報を提供したり、印刷等による表示の表現の自由度が高まることを利用して顧客の購買意欲をより向上させたりすることもできる。
【0055】
請求項8記載の発明によれば、前記第二前面部材は、前板部材が背面部材に重なる側と同じ側に、前記前面部材と重なるように、それらを接続する折目線で折られ、それらが連接される方向とは直交する方向の両端部で前面部材に接着されてなるため、第二前面部材と前面部材とは、記録媒体収納体から切り取り予定線又はミシン目によってダミー部材を切り離した後にも、それらが連接される方向とは直交する方向の両端部で接着された状態を維持するので、これら第二前面部材と前面部材との間に形成される副収納物の収納空間に副収納物を収納したまま、又は一旦取り出した副収納物を再度収納して、副収納物が記憶媒体収納体から脱落して紛失したり損傷したりすることなく、安全に保存することができる。
【0056】
請求項9記載の発明によれば、前記第二前面部材の、前記前面部材と連接される方向の長さが前面部材の長さより短いため、これら第二前面部材と前面部材との間に形成される空間に副収納物を収納し、又は当該空間に収納された副収納物を取り出す際に、副収納物の長さが第二前面部材の長さよりも長い場合には、副収納物はその一部が前記空間からはみ出した状態で収納されることになるため、当該はみ出した部分を持って副収納物の収納及び取り出しを行うことによって、副収納物の収納及び取り出しを容易に行うことができ、また、副収納物の長さが第二前面部材の長さよりも短い場合には、副収納物はその全体が前記空間の内部に収納されることになるが、第二前面部材の長さが前面部材の長さより短いので、その長さの差によって形成される隙間から前記空間に指を入れ易いため、やはり副収納物の収納及び取り出しを容易に行うことができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0058】
本発明の実施例を図1乃至7に従って説明する。
【0059】
図1は、本発明の記憶媒体収納体の展開説明図である。本実施例では、記憶媒体収納体に収納される予定の記憶媒体が、直径12cmの円盤状記憶媒体であることを想定して、説明している。
【0060】
縦が210mm、横が465mmの大きさで、一平方メートルあたり260グラムである一枚の板紙21を用意した。なお、図の縦方向の板紙21の長さは、210mmに設定しているが、綴じ込まれる冊子体の長さに合わせた大きさにしてもよい。
【0061】
この図は、板紙21を裏面側から見た図である。図の横方向の長さが130mmである背面部材25の一辺に、折目線O2を介して、前板部材26が連接されている。直径12cmの円盤状記憶媒体が収納されると、図の横方向には、最大10mmしか動かないことになり、記憶媒体収納体中における記憶媒体の位置が安定する。したがって、冊子体の輸送や取扱い、さらに冊子体から記憶媒体収納体を分離した後の記憶媒体の輸送や取扱い時に、記憶媒体に傷が生ずるおそれがない。
【0062】
本発明において、好適に使用できる板紙21の材料としては、いわゆるマニラボールの両面コートカード紙が最も好ましい。例示すれば、王子製紙(株)製のサンカード、エルカード、Sカードグリーン100、北越製紙(株)製のノーバックW、ハイラッキー、クリーンコートW、日本大昭和板紙(株)製のユニフェイスW、F−1カードが挙げられる。
【0063】
その他に、マニラボールの片面コートのカード紙が好ましい。三菱製紙(株)製のハイパール、北越製紙(株)製のハイクリーンコート、日本大昭和板紙(株)製のリファイン、北越製紙(株)製のNew−DV、王子製紙(株)製のNewビジョン、PCグリーン100、日本大昭和板紙(株)製のJETエースが挙げられる。
さらに、コートボールである、王子製紙(株)製のUFコート、OKボール、サンコート、レンゴー(株)製のCRC、北越製紙(株)製のマリコート、日本大昭和板紙(株)製のJETスターも好ましく使用することができる。
【0064】
なお、本実施例における折目線O1、O2、O4は、すべて、筋押し加工からなっている。筋押しに代えて、接続部分の間隔が長いミシン目を形成してもよいが、ミシン目の場合は経時的に切断される可能性があることを考慮すると、筋押し加工が好ましい。
【0065】
前板部材26は、図の横方向、すなわち背面部材25と連接される方向の長さが75mmであり、背面部材25と連接される側とは反対側の辺の中央部分に、深さが8mmの半円状の凹部Cが打ち抜かれて形成されている。なお、深さとは、凹部Cの深さのことを意味している。
そして、背面部材25の前板部材26が連接される側とは反対側に、折目線O1を介して、前面部材24が連接されている。
前面部材24の、背面部材25と連接される方向の長さは130mmであり、背面部材25と同じ大きさである。前面部材24と背面部材25を同じ大きさとすることで、コンパクトディスクとして市販されているプラスチックケース等に入れられた音楽用等のコンパクトディスクと一緒に棚に立てて保管する場合にも、見栄えよく保管することができる。
さらに、前面部材24の背面部材25が連接される側とは反対側に、折目線O4を介して、第二前面部材42が連接されている。
第二前面部材42の、前面部材24と連接される方向(横方向)の長さも130mmであり、前面部材24及び背面部材25と同じ大きさである。第二前面部材42を前面部材24と同じ大きさにすると、第二前面部材42の面積が最大となるので、この表面に印刷等によって各種の表示を設ける場合には、当該表示の情報量を最大にできる利点がある。もっとも、第二前面部材42の横方向の長さは、前面部材24よりも短くしてもよい。特に、第二前面部材42と前面部材24とを、それらの連接する方向と直交する方向(縦方向)の両端部で接着して、その間に形成される空間に副収納物を収納する場合には、副収納物があまりに脱落し易くならない限りにおいて、第二前面部材42の横方向の長さを前面部材24よりも短くしたほうが、副収納物の出し入れが容易になる利点がある。なお、この第二前面部材42は、必要がない場合には設けなくてもよい。
【0066】
そして、前板部材26、背面部材25、前面部材24、第二前面部材42の、これらの部材が連接される方向(横方向)とは直交する方向(縦方向)の長さは180mmであり、当該方向の両端には、それぞれ、切り取り予定線又はミシン目M2、M3を介して、当該方向の長さが15mmであるダミー部材D1〜D6、DA、DBが連接されている。このダミー部材D1〜D6、DA、DBの縦方向の長さ、すなわち切り取り予定線又はミシン目M2、M3の紙端からの距離は、短すぎると切り取りにくく、長すぎると材料の無駄につながることから、10mmから25mmが好ましい。ただ、上述したように、冊子体の一部として貼り込み若しくは綴じ込まれるか、又は冊子体に挟み込まれて添付された状態の記憶媒体収納体を、添付される冊子体の長さに合わせた大きさにしてもよく、その場合は、切り取り予定線又はミシン目M2、M3の紙端からの距離を長くし、切り取り予定線又はミシン目M2、M3によってダミー部材D1〜D6、DA、DBが切り取られた状態は、保存に適したコンパクトな大きさにすることが便利である。
なお、上記切り取り予定線又はミシン目M2、M3及びダミー部材D1〜D6、DA、DBは、前板部材26、背面部材25、前面部材24、第二前面部材42の、縦方向の片側の端のみに設けられていてもよい。例えば、切り取り予定線又はミシン目M3及びダミー部材D4〜D6、DBは、設けられていなくてもよい。この場合は、板紙21の縦方向の長さは、前板部材26等の縦方向の長さと、片側分のダミー部材D1〜D3、DAの縦方向の長さとの和の長さとすればよく、例えば、それらの長さを上記と同じそれぞれ180mm及び15mmとする場合には、板紙21の縦方向の長さは、195mmとすればよい。或いは、ダミー部材D4〜D6、DBは、そのうち任意の一部のみが切り取り予定線又はミシン目M3を介して設けられていてもよい。さらに、前板部材26及び/又は第二前面部材42については、その縦方向のいずれの側の端にも、切り取り予定線又はミシン目M2、M3及びダミー部材D3、D6、DA、DBを設けなくてもよい。

なお、板紙21の紙目方向が、矢印Kの方向になるように、板紙21が切断されている。この方向に紙目方向が設計されていると、折目線O1、O2、O4を折る場合には、紙目に沿って折れるため、容易に折ることができる。そして、それと直交する方向に折ろうとすると、折りにくいことになる。このことは、記憶媒体収納体が折目線O1を書籍の背となるような状態で、台の上に立てて保管した場合に、台面と平行な方向には折れたり、曲がったりしにくいこととなる。そのため、長期にわたって保管した場合でも、自重で台面と平行な方向に反ってしまうことが生じにくいという効果を奏することになる。
【0067】
次に、記憶媒体収納体27の製造工程に沿って説明する。図1に示す板紙21が、コンベア(図示せず)の上を矢印Aで示す方向に、流れていく。そして、板紙21上に接着剤が付着される。すなわち、切り取り予定線又はミシン目M2、M3を介して背面部材25と連接するダミー部材D2、D5に、接着剤5S、5Tが付着され、背面部材25の縦方向の両端に、接着剤5U、5Vが付着される。また、切り取り予定線又はミシン目M2、M3を介して前面部材24と連接するダミー部材D1、D4に接着剤4S、4Tが付着され、前面部材24の縦方向の両端に、接着剤4U、4Vが付着される。この接着剤4U、4Vは、第二前面部材42の横方向の長さが前面部材24の横方向の長さよりも短い場合には、前面部材24の、折目線O1から少なくとも前面部材24と第二前面部材42との横方向の長さの差に相当する距離の範囲内の部分には、付着されない。これらの接着剤は、板紙21がコンベア上を流れていく際に、接着剤が付着されたローラを転がすことによって、容易に付着させることができる。接着剤は、通常製本工程で使用される圧着性接着剤などを使用できるが、生産量が少ない場合には、粘着テープを使用して行っても構わない。
なお、ダミー部材D1、D2、D4、D5に付着される接着剤は、縦方向の一方の側のダミー部材(例えばD1、D2)のみに付着させ、反対側のダミー部材(例えばD4、D5)には付着させないようにしてもよい。また、第二前面部材42を設けない場合には、前面部材24の縦方向の両側には、接着剤4U、4Vは付着させない。
【0068】
ところで、背面部材25の縦方向の両端に付着される接着剤5U、5Vの位置は、内側に寄りすぎると、本実施例のように前板部材26を背面部材25に貼り合わせる前の状態でコンパクトディスク22を載置する場合には、コンパクトディスク22に接着剤が付着する可能性があり、また、前板部材26を背面部材25に貼り合わせた後には、コンパクトディスク22が収納される開口部が狭くなり、出し入れしにくくなってしまう。
【0069】
したがって、接着剤5Uの端と接着剤5Vの端との間の距離が、収納される予定の記憶媒体の直径に35mmを加えた長さより短く、記憶媒体の直径に8mmを加えた長さより長く設定すると好ましく、特に、板紙21として、一平方メートルあたり250グラム以上、300グラム以下の板紙を用いた場合には、記憶媒体の直径に35mmを加えた長さより短く、記憶媒体の直径に10mmを加えた長さより長く設定すると、記憶媒体が、保管時や記憶媒体収納体の持ち運び時に折目線O2に平行な方向に動き得る量が小さくなり、記憶媒体に傷が付く可能性を低減できる。しかも、記憶媒体が取り出しにくくない、記憶媒体収納体を得ることができる。すなわち、折目線O2に平行な方向に動き得る量を少なくしようとして、接着剤5Uの端と接着剤5Vの端との間の距離を上記範囲に設定すると、記憶媒体の取り出し時に、前板部材26と背面部材25が記憶媒体を挟む力が大き過ぎず、記憶媒体の取り出しが、子供や老人にとっても行いやすくなる。本実施例では、接着剤5Uの端と接着剤5Vの端との間の距離は、14.5cmに設定した。
【0070】
そして、背面部材25上に記憶媒体であるコンパクトディスク22を載置する。これも、コンパクトディスク22を吸盤で吸着し、コンベア上を流れる板紙に載置すればよい。
【0071】
なお、図2は、図1の板紙21の表面側であり、前面部材24、背面部材25には、それぞれ表示4A、5Aが印刷されている。本実施例では、左開きの冊子体の一部として綴じこまれる記憶媒体収納体を例にとっているため、表示4Aがコンパクトディスク22の表題を示しており、「○○シリーズ」の文字と山の絵が印刷されている。
表示5Aにはコンパクトディスクの内容の説明が示されており、「このCDは、・・・・・」という文字が印刷されている。これらの印刷は、通常のオフセット輪転印刷機、オフセット平台印刷機、グラビア輪転印刷機等の印刷機により行うことができる。
【0072】
そして、図1の折目線O2が折られ、前板部材26が背面部材25上に折り込まれ、図3の状態が得られた。この際、前板部材26は、接着剤5U、5Vで、背面部材25に接着されている。また、前板部材26にダミー部材D3及び/又はD6が連接しており、且つ、それと縦方向の同じ側に背面部材25にダミー部材D2及び/又はD4が連接している場合には、ダミー部材D3及び/又はD6は、接着剤5S及び/又は5Tで、ダミー部材D2及び/又はD4に接着されている。折目線O2は、あらかじめ筋押し加工がされているため、コンベアで板紙21が運ばれる工程で、容易に折り込むことが可能である。第二前面部材42が設けられている場合には、この次に、必要に応じて副収納物が前面部材24上に載置された後、折目線O4で、第二前面部材42が前面部材24上に折り込まれる。この際、前面部材24の縦方向の両端部に接着剤4U、4Vが付着されている場合には、第二前面部材43と前面部材24とは接着剤4U、4Vにより接着され、第二前面部材42にダミー部材DA及び/又はDBが連接しており、且つ、それと縦方向の同じ側に前面部材24にダミー部材D1及び/又はD3が連接している場合には、ダミー部材DA及び/又はDBは、接着剤4S及び/又は4Tで、ダミー部材D1及び/又はD2に接着される。さらに、折目線O1で、前面部材24(第二前面部材42が設けられている場合には前面部材24及び第二前面部材42)が、背面部材25及び前板部材26上に折り込まれる。そして、前板部材26に連接するダミー部材D3及び/又はD6と第二前面部材42に連接するダミー部材DA及び/又はDBとが共に存在しない場合には、接着剤4S及び/又は4Tと、接着剤5S及び/又は5Tとを介して、前板部材26に連接するダミー部材D3及び/又はD6と第二前面部材42に連接するダミー部材DA及び/又はDBとの一方のみが存在するか又は一方の横方向の長さが背面部材25又は前面部材24の横方向の長さよりも短い場合には、接着剤4S及び/又は4Tと、ダミー部材D3及び/又はD6、又は、ダミー部材DA及び/又はDBと、接着剤5S及び/又は5Tとを介して、前板部材26に連接するダミー部材D3及び/又はD6と第二前面部材42に連接するダミー部材DA及び/又はDBとの横方向の長さが共に背面部材25又は前面部材24の横方向の長さと同一である場合には、接着剤4S及び/又は4Tと、ダミー部材D3及び/又はD6と、別途ダミー部材D3及び/又はD6の表面及び/又はダミー部材DA及び/又はDBの表面に付着される図示されない接着剤と、ダミー部材DA及び/又はDBと、接着剤5S及び/又は5Tとを介して、前面部材24と前板部材26が接着される。折目線O1にも、あらかじめ筋押し加工がされているため、コンベアで板紙21が運ばれながら、容易に折り込むことが可能である。なお、前板部材26に連接するダミー部材D3及び/又はD6と第二前面部材42に連接するダミー部材DA及び/又はDBとの一方の横方向の長さが背面部材25又は前面部材24の横方向の長さよりも短い場合にも、折目線O1によって前面部材24を背面部材25上に折り込む前に、ダミー部材D3及び/又はD6の表面及び/又はダミー部材DA及び/又はDBの表面に、図示されない接着剤を別途付着しておくことが好ましい。
【0073】
また、図3で、前板部材26の折目線O2に対向する辺の中央部分に、深さが8mmの半円状の凹部Cが形成されているが、この半円状の凹部Cの直径は、コンパクトディスク22の中心の穴の径よりも大きく、凹部Cに指を入れるとコンパクトディスク22を容易に取り出すことができる。
この図3の状態で、前板部材26の横方向の長さは75mmであり、その端はコンパクトディスク22の中央部を縦に横切っているが、この端から背面部材25と前面部材24が連接される折目線O1までの距離は、65mmとなっている。以上のようにして、図4に示す記憶媒体収納体27が製造された。
【0074】
ここで、それぞれの部材の接着状態を図1に戻って説明すると、背面部材25と前板部材26は、縦方向の両端部の接着剤5U、5Vによって貼り合わせられ、コンパクトディスク22の使用時に切り取り予定線又はミシン目M2及び/又はM3によって連接するダミー部材D1〜D3、DA及び/又はD4〜D6、DBが切り取られた際にも、接着剤5U、5Vによって貼り合わされた状態を維持することができ、引き続きコンパクトディスク22を保持することができる。
そして、前面部材24と背面部材25は、切り取り予定線又はミシン目M2及び/又はM3を介して連接しているそれぞれのダミー部材D1及び/又はD4、ダミー部材D2及び/又はD5と、接着剤5S及び/又は5T、接着剤4S及び/又は5Tと、場合によってはさらに、前板部材26に連接するダミー部材D3及び/又はD6、及び/又は、第二前面部材42に連接するダミー部材DA及び/又はDBと、必要に応じて当該ダミー部材D3及び/又はD6、及び/又は、ダミー部材DA及び/又はDBの表面に別途付着される図示されない接着剤を介して接着され、これに伴って前面部材24と前板部材26、第二前面部材42が設けられている場合の第二前面部材42と背面部材25、第二前面部材42と前板部材26も、少なくともいずれか2つ以上のダミー部材と、当該ダミー部材に付着された少なくともいずれか1つ以上の接着剤とを介して間接的に接着されるが、これらの接着部分は、コンパクトディスク22の使用時に切り取り予定線又はミシン目M2及び/又はM3によって上記の接着に関与するダミー部材D1〜D3、DA及び/又はD4〜D6、DBが切り取られることで除去され、前面部材24(及び第二前面部材42)と、背面部材25及び前板部材26との接着された状態は解消され、前面部材24(及び第二前面部材42)は、背面部材25及び前板部材26に対して開閉可能な状態となる。
【0075】
したがって、図1では、接着剤4S、4T、5S、5Tは、かなり大きな面積となっているが、コンパクトディスクが使用されるまでの間、接着状態を保持するものであるため、接着剤の節約によるコスト削減のためには、その接着状態の保持ができる強度を有する限度で、小さな面積にしてもよい。他方、接着剤5U、5Vは、記憶媒体収納体27として機能しつづける間、接着状態を保持しなければならず、また、コンパクトディスク22が移動したり、収納される際に、コンパクトディスク22が接着部に接触し、接着部が剥離する可能性があるため、それに耐えるだけの接着強度が必要とされる。
【0076】
次に、この記憶媒体収納体を冊子体の一部として貼り込む場合の例を示す。図5は、本発明の記憶媒体収納体27を、本文28の任意の頁に貼り込んだ、無線綴じ冊子体29の説明図である。なお、無線綴じは、いわゆるアジロ綴じも含む概念である。また、冊子体29、は無線綴じに限られるものではなく、平綴じや中綴じ、上製本であってもよい。また、記憶媒体収納体を貼り込む場合は、本文の頁の代わりに、表紙に貼り込んでもよいし、綴じ込んだり貼り込んだりせずに、単に任意の頁間に挟み込んでもよい。
【0077】
図4に示す形態となった本発明の記憶媒体収納体27を用い、無線綴じによって冊子体を製造した。本文の折丁を8頁折りにして、製本機で丁合を行った。この際、あらかじめ所定の折丁の所定の頁に、記憶媒体収納体27を貼り込んでおいたものを使用して丁合を行い、背の部分をミーリングカットし、ホットメルト型接着剤を塗布した後に、表紙でくるみを行い、冊子体29を製造した。
この冊子体は、左開きの冊子体であり、ノンブル30から明らかなように、本文の21頁の頁面上に、記憶媒体収納体27を貼り込み、冊子体29としたものである。記憶媒体収納体27は、本文に比較して小さい大きさであり、左開きの冊子体であることから、冊子体の天側で位置合わせをしている。
このように、本発明の記憶媒体収納体は、無線綴じで製本を行う際に、本文の折丁に予め貼り込んでおくことで、通常の製本機で通常の要領で丁合を行うことができ、効率的な生産が可能であった。
【0078】
なお、上記のようにして本発明の記憶媒体収納体27を冊子体に貼り込む場合は、後で記憶媒体収納体27の本体部分(前面部材24、背面部材25、前板部材26及び第二前面部材42(設けられている場合)に由来する部分)を冊子体の頁から容易に切り離せる様に、当該本体部分と切り取り予定線又はミシン目M2及び/又はM3で連接された各ダミー部材に由来する接着部分(又は非接着余白部分)31又は32を接着剤で冊子体の頁面に接着することによって貼り込まれる。
この場合、接着部分31又は32は、少なくとも2枚、最大で4枚の板紙(ダミー部材)が貼り合わされて形成されているので、この厚みが大きいと、記憶媒体収納体27の本体部分を切り離した後も、頁面上に残される当該接着部分31又は32が強張るために、冊子体の他の頁が開きにくく、読みにくくなってしまう場合がある。従って、冊子体の頁面上に接着する部分は、可能な限り少ない枚数の板紙(ダミー部材)によって構成されるように設計することが好ましい。
【0079】
最も好ましいのは、縦方向の一方の側にのみ各ダミー部材に由来する接着部分を設け、他方の側には、いずれか1つのダミー部材に由来する1枚の板紙のみからなる非接着余白部分を設けて、この非接着余白部分を冊子体の頁面に接着することである。
例えば、図1に示した展開説明図において、前面部材24及び背面部材25の縦方向の一方の側(図上の天側)には、切り取り予定線又はミシン目M2を介して、それぞれダミー部材D1及びD2を連接させて設け、その裏面上に接着剤4S及び/又は5Sを設ける。縦方向の同じ側に前板部材26及び第二前面部材42(設けられる場合)に連接するダミー部材D3とDAは、設けても設けなくてもよい。そして、縦方向の他方の側(図上の地側)には、前面部材24、背面部材25、前板部材26及び第二前面部材42(設けられる場合)に切り取り予定線又はミシン目M3を介して連接するダミー部材D4、D5、D6又はDAは、これらのうちいずれか1つのみを設ける。例えば、ダミー部材D5、D6及びDAは設けずに、ダミー部材D4のみを設ける。そして、このダミー部材(例えばD4)には、ダミー部材同士の接着を目的としては、接着剤(例えば4T)は設けない。この様にすると、図4に示した状態(図1とは天地が反転している)において、記憶媒体収納体27の本体部分の地側には、切り取り予定線又はミシン目M2を介して、少なくともダミー部材D1及びD2に由来する2枚以上の板紙が接着されて形成された接着部分31が、天側には、切り取り予定線又はミシン目M3を介して、1枚のダミー部材(例えばD4)に由来する1枚の板紙のみからなる非接着余白部分32が、それぞれ連接されて設けられた記憶媒体収納体27が作製される。
そして、この記憶媒体収納体27における非接着余白部分32のみを、接着剤等によって冊子体29の任意の頁面上に接着するようにすれば、記憶媒体収納体27の本体部分を切り取り予定線又はミシン目M3によって切り離した後に頁面上に残るのは、1枚の板紙のみからなる非接着余白部分32のみである(図6参照)ので、冊子体29を読む際の障害を最小限に止めることができる。
【0080】
この場合の非接着余白部分32を形成する1枚のダミー部材は、記憶媒体収納体27を冊子体29の頁面上に貼り込む際に表側に向ける部分に連接するダミー部材とすると、当該部分の表面が本体部分の表面と面一になるので、当該頁を開いた際の見栄えもよく、また、本体部分を意図せずに誤って切り離してしまう事故も発生しにくくなるので、最も好ましい。通例、前面部材24の表面が、タイトル等の主要な表示4Aが施された表紙となって、この面を表側に向けて貼り込まれる場合が多いので、その場合は、図1に示した展開説明図において、縦方向の地側のダミー部材は、背面部材25、前板部材26及び第二前面部材42(設ける場合)に連接するダミー部材D5、D6、DBを設けずに、前面部材24に連接するダミー部材D4のみを設けることが好ましい。
【0081】
なお、本発明の記憶媒体収納体27は、冊子体29の表紙又は本文の頁面上に貼り込むほか、冊子体29の本文を構成する折丁と一緒に丁合により綴じ込むこともできるが、その場合にも、上記と同様の要領によって形成した1枚の板紙からなる非接着余白部分を綴じ込み部材として冊子体の背側に向けて綴じ込む(無線綴じ又は平綴じ等の場合)か、若しくは、当該1枚の板紙からなる非接着余白部分をさらに延長して冊子体29の背に相当する部分に沿って折り曲げた折丁を使用する(中綴じの場合)ことが好ましい。
一方、本発明の記憶媒体収納体27を単に冊子体29の任意の頁間に挟み込む場合や、冊子体とは無関係に単体で流通させる場合等には、記憶媒体収納体27それ自体に十分な強度を持たせて不用意な開封や破損を防止するために、少なくとも2枚以上のダミー部材が接着されて構成された接着部分31、32が本体部分の両側に形成された構成とすることが好ましい。
【0082】
図6は、冊子体29からその頁面上に貼り込まれた記憶媒体収納体27を切り離した状態の説明図である。コンパクトディスク22等の記憶媒体を使用する際には、まず、冊子体29から、記憶媒体収納体27の本体部分を、切り取り予定線又はミシン目M3で、冊子体29の頁面上に接着された接着部分又は非接着余白部分32から切り離す。そして、記憶媒体収納体27の切り取り予定線又はミシン目M2で、前面部材24(及び第二前面部材42)と背面部材25(及び前板部材26)との接着部分(又は非接着余白部分)31、32をそれぞれ切り離す。記憶媒体収納体27の本体部分を冊子体29の頁面上に接着された接着部分又は非接着余白部分32から切り離す際はミシン目M3が、接着部分31を切り離す際はミシン目M2があることから、子供や老人であっても、手で容易に切り離すことが可能である。
これによって、図7に示すように、背面部材25及び前板部材26から、前面部材24(及び第二前面部材42)が、接着された状態から開放され、折目線O1を伸ばすことによって、コンパクトディスク22が前板部材26から露出する。そして、凹部Cと重なっているコンパクトディスク22の中央の穴に、指をかけることによって、記憶媒体収納体27から、コンパクトディスク22を容易に取り出すことができる。また、前面部材24と第二前面部材42との間の空間に説明書や解説書の小冊子等の副収納物が収納されている場合には、前面部材24及び第二前面部材42の折目線O1側に形成された開口部から当該副収納物を取り出すことができるものである。
【0083】
前面部材24は、折目線O1によって開閉可能な状態となり、コンパクトディスク22の使用後は、再び記憶媒体収納体27に入れて、また、上記した副収納物がある場合は、これも再び記憶媒体収納体27に入れて、前面部材24を閉じることによって、二つ折り形態の記憶媒体収納体となり、コンパクトディスク22を傷つけることなく、副収納物を紛失することなく、また、外観上も美しい状態で、長期的な保管を図ることができる。
この記憶媒体収納体27は、前面部材24の開閉もスムーズであり、しかも、前板部材26が背面部材25よりも横方向の長さが短く形成されて、この両者の間の空間にコンパクトディスク22を収納した場合に、コンパクトディスク22の一部が開口部の外にはみ出した状態となる様な寸法に設計されているので、コンパクトディスク22の出し入れも極めて行いやすく、前板部材26及び背面部材25で形成された開口部の剛性も適度で、コンパクトディスク22が容易に抜け落ちることがなかった。また、開口部に沿った方向には、コンパクトディスク22は動きにくく、安定した保持が可能であった。
さらに、折目線O1を背にして、立てて保管したが、見た目にも美しく保管をすることができた。
【0084】
なお、本発明の記憶媒体収納体27を冊子体29に綴じ込んだ場合には、冊子体29から記憶媒体収納体27を切り離した状態で、冊子体側29には、接着部分又は非接着余白部分31又は32に由来する綴じ込み部材が残るが、この綴じ込み部材の露出量は、10mm以下が好ましい。10mmを超えると、冊子体として綴じ込み部材が残っている頁の近傍の頁を読むときに、綴じ込み部材のために広げにくくなるためである。この問題を解消するためには、さらに好ましくは5mm以下であるが、逆に露出量をあまり小さくし過ぎると、記憶媒体収納体を切り離す際に、切り離しにくくなることがあるため、5mmから10mmの露出量としておくことが好ましい。
また、上記の例では、第二前面部材42の横方向の長さは前面部材24の横方向の長さと同一の長さに設計されているが、これは前面部材24よりも短く設計してもよい。特に、この両者を縦方向の両端部で接着し、その間の空間に副収納物を収納する場合には、第二前面部材42の横方向の長さを前面部材24の横方向の長さより短くすると、副収納物の出し入れが容易になるので好ましい。例えば、上記の例においては、第二前面部材42の横方向の長さを75mmに設定した場合、副収納物の出し入れを容易にすることができる。
さらに、上記の例では、第二前面部材42は接着剤4U、4Vによって前面部材24に接着した構成としたが、この両者は接着せずに折目線O4によって開閉可能な状態としておいてもよい。こうすると副収納物の収納保管にはやや不便となるが、副収納物がないか保管する必要がない場合には、前面部材24の裏面や第二前面部材42の裏面も各種の表示のためのスペースとして利用することができ、開閉可能な折目線O1、O4を全て開いた時の全体の面積がより大きくなることを利用して、ディスプレイ効果をさらに高めることができる。
【実施例2】
【0085】
本発明の他の実施例を図8乃至図11に従って説明する。
【0086】
図8は、本発明の記憶媒体収納体を裏面から見たときの展開説明図である。本実施例では、背面部材25と前面部材24との間に、縦方向の長さがそれらと同一で、横方向の長さがそれらよりも短い背表紙部材41が、それぞれ折目線O1及び折目線O3を介して折り曲げ可能に連接されて形成されている。
図9は、これを表面から見たときの展開説明図である。なお、ここには図示していないが、背表紙部材41の表面に、収納する記憶媒体のタイトル等の情報を印刷したり、ラベル又はシール等を貼ったりしておくと、記憶媒体収納体27を閉じた状態で多数立てて並べたり積み重ねたりした状態でも、内容物を容易に識別できるので、所望する記憶媒体の存否の確認や取り出しに便利である。
【0087】
この背表紙部材41の横方向の長さは、作製される記憶媒体収納体27に記憶媒体(及び必要に応じて説明書、解説書等の副収納物)を収納し、折目線O1、O3により収納物側を内側にして断面扁平コ字状に折り曲げて記憶媒体収納体27を閉じたときに、前面部材24、第二前面部材42(設ける場合)、背面部材25、前板部材26及び収納物の厚みの和にほぼ等しくなる様に設計すると、記憶媒体収納体27を閉じた状態での見栄えもよく、また、これを多数立てて並べたり積み重ねたりして保存する場合に、各記憶媒体収納体27の背表紙部材41の表面(外面)部分が綺麗に面一に揃い易いので、収まりもよいし、見栄えもよい。通例、この背表紙部材41の横方向の長さは、1mm乃至5mm程度とするのがよい。
なお、前記前面部材が、前記背面部材及び前板部材と重なるように前記背表紙部材の両側の折目線の少なくとも一方の折目線で折られている、という構成については、一方の折目線だけで折られていることで、例えば冊子体に添付されているとき、すなわち記憶媒体収納体として、独立して保管に用いられる以前における厚みを薄くすることができ、その後、冊子体から切り離される等がされ、記憶媒体収納体として保管に用いられるときに、使用者がその両側の折目線で折り直し、上述したように、収納物側を内側にして断面扁平コ字状に折り曲げて使用し、上記効果を得ることが可能となる。
【0088】
また、この背表紙部材41の縦方向の一方又は両方の側であって、前面部材24や背面部材25にダミー部材D1及び/又はD4やD2及び/又はD5が連接されている側には、縦方向にこれらと同じ長さのダミー部材D7及び/又はD8が、切り取り予定線又はミシン目M2及び/又はM3を介して連接されていてもよい。
以上の事項のほかは、前述した実施例1の場合と基本的にほぼ同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0089】
この展開説明図の状態からの記憶媒体収納体27の製造工程も、前述した実施例1の場合と基本的にほぼ同一である。但し、前板部材26を背面部材25の上に折り込んで接着剤5U、5Vを介して接着し(図10)、さらに第二前面部材42を設けた場合にはこれを前面部材24の上に折り込んで必要に応じて接着剤4U、4Vを介して接着した状態から、背面部材25を前面部材24の上に折り込む際には、背面部材25と前面部材24との間の背表紙部材41を挟む2本の折目線O1、O3は、その両方を折り曲げても良いし、その一方のみを折り曲げても良い。
【0090】
背表紙部材41の横方向の長さが、前面部材24、第二前面部材42(設ける場合)、背面部材25、前板部材26、記憶媒体(コンパクトディスク22)及び副収納物(存在する場合)の厚みの和とほぼ等しいか、若しくはこれよりも短い場合には、両方の折目線O1、O3を折り曲げた方が見栄えもよく、また力学的にも安定するので好ましい。
【0091】
これに対して、背表紙部材41の横方向の長さが上記よりも長目に設計されている場合は、両方の折目線O1、O3を同程度の角度で折り曲げて折り込んで接着すると、その記憶媒体収納体27を貼り込み、綴じ込み又は挟み込んで添付した冊子体29を積み重ねたりした場合に、その重みによって背表紙部材41が潰れて折れ曲がってしまい易いので、2本の折目線O1、O3の一方をより鋭角に、他方をより鈍角に折り曲げるなどして調整するか、若しくは、2本の折目線O1、O3のうちの一方のみで折り曲げることが好ましい。
【0092】
このように背表紙部材41を設けた本実施例の記憶媒体収納体27は、前述した実施例1のそれと比較して、各ダミー部材に由来する接着部分又は非接着余白部分31、32を切り取り予定線又はミシン目M2、M3(これらはそれぞれ一方側のみしか設けられていない場合もある)によって切り離して(図11)、背表紙部材41を挟む2本の折目線O1、O3によって収納物側を内側にして断面扁平コ字状に折り曲げると、ほぼ二つ折り形態の記憶媒体収納体27の折曲部分に面状の背表紙部材41が設けられているので、背表紙部材41が設けられていない場合と比較して、より見栄えがよくなって高級感が醸し出され、立てた状態でもより安定して倒れにくくなり、また、同じ記憶媒体収納体27を多数、又は略同形状の他の冊子状体や収納体と共に多数、並べて立てたり平積みにしたりした場合にも、背部分が平面状に綺麗に揃い易いため、見栄えも収まりも良い。さらに、背表紙部材41に収納物のタイトル等を印刷、シール又はラベル貼り等によって表示すれば、背部分しか見えない場合でも収納物を容易に識別できるので、はより良くなって高級感が増し、立てた状態はより安定化し、また、背表紙部材の表面(外面)に、収納した記憶媒体のタイトル等の情報を印刷したり、シールやラベル等を貼る等すれば、多数並べて立てたり多数平積みにしたりして保管した場合にも、それぞれの記憶媒体収納体を一つずつ取り出さなくても、背表紙部材の表面(外面)の印刷やシール、ラベル等が見えるので、多数並べて立てたり平積みにしたりして保管する場合にも、保管中の在庫管理や出し入れの作業にも便利である。
【0093】
以上に述べたような本発明の記憶媒体収納体を添付した冊子体は、英語等の会話が録音された語学教材、音楽、映画、動画、広告、電子書籍等を入れた雑誌、ソフトウェアを入れたコンピューター雑誌、ソフトウェアを販売する際にソフトウェアを入れたDVDに取り扱い説明やマニュアルとして印刷物の小冊子を用いる場合等、多くの用途に好適に用いることができる。
【0094】
本発明の記憶媒体収納体及び無線綴じ冊子体は、上記各実施例の記載に限定されることなく、種々の変形が可能である。
例えば、前面部材24と背面部材25に印刷によって設けた表示4A、5Aも、必ず設けなければならないものではなく、また、印刷によらず、ラベルを貼って表示をしてもよい。また、表示の位置も任意の場所で構わない。
【0095】
また、コンパクトディスクの代わりに、DVD等の様々な記憶媒体を収納することも可能である。
コンパクトディスクの情報記憶面を保護するために、コンパクトディスクを、いったん不織布を備える袋に入れてから、本発明の記憶媒体収納体に入れてもよい。また、記憶媒体収納体の背面部材に不織布を貼り付けておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係る記憶媒体収納体の裏面側展開説明図
【図2】本発明に係る記憶媒体収納体の表面側展開説明図
【図3】本発明に係る記憶媒体収納体の製造工程の説明図
【図4】本発明に係る記憶媒体収納体の説明図
【図5】本発明に係る無線冊子体の説明図
【図6】冊子体から記憶媒体収納体を切り離した状態の説明図
【図7】本発明に係る記憶媒体収納体の説明図
【図8】本発明に係る記憶媒体収納体の裏面側展開説明図
【図9】本発明に係る記憶媒体収納体の表面側展開説明図
【図10】本発明に係る記憶媒体収納体の製造工程の説明図
【図11】本発明に係る記憶媒体収納体の説明図
【図12】従来技術に係る記憶媒体収納体の説明図
【図13】他の従来技術に係る記憶媒体収納体の説明図
【符号の説明】
【0097】
1…記憶媒体収納体
2…孔あけ加工部
3…筋押し加工部
4…切込み加工部
5…記憶媒体
6…綴じ込み用端部
7、8…ミシン目加工部
9…小穴
11…折丁
12…コンパクトディスク収納用容器
12A…袋部分
12B…他の部分
12C…貼り付け部分
12D…切り取り線
13…コンパクトディスク
21…板紙
22…コンパクトディスク

24…前面部材
25…背面部材
26…前板部材
41…背表紙部材
42…第二前面部材
D1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8、DA、DB…ダミー部材
O1、O2、O3、O4…折目線
M2、M3…ミシン目
4S、4T、4U、4V、5S、5T、5S、5T、5U、5V…接着剤
A…板紙の流れ方向
C…凹部
K…紙目方向
4A、5A…表示
27…記憶媒体収納体
28…本文
29…無線綴じ冊子体
30…ノンブル
31…接着部分
32…接着部分(又は非接着余白部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の板紙からなる記憶媒体収納体であって、略矩形状の背面部材と、背面部材の一辺に折目線を介して連接される前板部材と、前記背面部材の、前記前板部材が連接される側とは反対側に、折目線を介して連接される略矩形状の前面部材を備え、
少なくとも前記背面部材及び前記前面部材の、背面部材と前板部材が連接される方向とは直交する方向の、少なくとも一方の端には、それぞれ、切り取り予定線又はミシン目を介してダミー部材が連接されてなり、

前記前板部材が、前記背面部材と重なるようにそれらを接続する折目線で折られ、さらに、前記前面部材が、前記背面部材及び前板部材と重なるように前面部材と背面部材を接続する折目線で折られており、
前記前板部材と前記背面部材は、それらが連接される方向とは直交する方向の両端部で接着され、
前記前面部材は、前記背面部材及び前板部材のうち少なくとも背面部材とは、前面部材と連接される、少なくとも一つの端の前記ダミー部材で接着されてなる記憶媒体収納体。
【請求項2】
一枚の板紙からなる記憶媒体収納体であって、略矩形状の背面部材と、背面部材の一辺に折目線を介して連接される前板部材とを備え、前記背面部材の、前記前板部材が連接される側とは反対側に、それぞれ折目線を介して背表紙部材及び略矩形状の前面部材が、この順に連接され、
少なくとも前記背面部材及び前記前面部材の、背面部材と前板部材が連接される方向とは直交する方向の、少なくとも一方の端には、それぞれ、切り取り予定線又はミシン目を介してダミー部材が連接されてなり、

前記前板部材が、前記背面部材と重なるようにそれらを接続する折目線で折られ、さらに、前記前面部材が、前記背面部材及び前板部材と重なるように前記背表紙部材の両側の折目線の少なくとも一方の折目線で折られており、
前記前板部材と前記背面部材は、それらが連接される方向とは直交する方向の両端部で接着され、
前記前面部材は、前記背面部材及び前板部材のうち少なくとも背面部材とは、前面部材と連接される、少なくとも一つの端の前記ダミー部材で接着されてなる記憶媒体収納体。
【請求項3】
前記前板部材の、前記背面部材と連接される方向の長さが背面部材の長さより短いことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の記憶媒体収納体。
【請求項4】
前記板紙が、一平方メートルあたり250グラム以上、300グラム以下の板紙であり、かつ、紙目方向が背面部材と前板部材が連接される方向と直交する方向であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載の記憶媒体収納体。
【請求項5】
収納が予定される記憶媒体が円盤状記憶媒体であり、
前記背面部材と前記前板部材が連接される方向の、背面部材の長さが、収納が予定される円盤状記憶媒体の直径に5ミリメートルを加えた長さより長く、直径に15ミリメートルを加えた長さより短く、
前板部材の長さが、収納が予定される円盤状記憶媒体の直径の2分の1より長く、前板部材が背面部材上に折り込まれた状態で、前板部材の端から背面部材の前板部材が連接される折目線とは反対側の折目線までの距離が、収納が予定される円盤状記憶媒体の2分の1から8ミリメートルを引いた長さより長くなるように設計されており、
かつ、前板部材の背面部材と連接される側とは反対側の辺の中央部分に、深さが8ミリメートル以上の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の記憶媒体収納体。
【請求項6】
前面部材の、背面部材又は背表紙部材が連接される側とは反対側に、折目線を介して第二前面部材が連接されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載の記憶媒体収納体。
【請求項7】
前記第二前面部材の、前面部材と連接される方向と直交する方向の、少なくとも一方の端には、切り取り予定線又はミシン目を介してダミー部材が連接されてなり、かつ、第二前面部材は、前板部材が背面部材に重なる側と同じ側に、前記前面部材と重なるように、前面部材と連接される折目線で折られ、少なくとも一つの端の前記ダミー部材で接着されてなることを特徴とする請求項6記載の記憶媒体収納体。
【請求項8】
前記第二前面部材は、前板部材が背面部材に重なる側と同じ側に、前記前面部材と重なるように、それらを接続する折目線で折られ、それらが連接される方向とは直交する方向の両端部で前面部材に接着されてなることを特徴とする請求項6記載の記憶媒体収納体。
【請求項9】
前記第二前面部材の、前記前面部材と連接される方向の長さが前面部材の長さより短いことを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか一項記載の記憶媒体収納体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−18815(P2009−18815A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180652(P2007−180652)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】