説明

記憶情報の漏洩を防止する機能を有する電子機器

【課題】外部からの指令により、電子機器の記憶情報を記憶する記憶部を機械的に破壊し、第三者への漏洩を完全に防止する記憶情報漏洩防止電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器40は、電子機器40の記憶部44を破壊する破壊指令信号を受信する無線受信部42と、無線受信部42で受信した破壊指令信号に基づいて電子情報が記憶される記憶部44を機械的に破壊する破壊制御部46とを備える。記憶部44は、磁性体51をコーティングした円板であるプラッタ52と、磁性体51へ電子情報の書き込みと読み出しとを行う磁気ヘッド54と、磁気ヘッド54に添設され、磁気ヘッド54とプラッタ52との間隔を一定に保つスライダ56と、スライダ56を支持するスウィングアーム58とを備えるハードディスク50であり、破壊制御部46は、プラッタ52を回転させながら、プラッタ52とスライダ56とを接触させて記憶部44を破壊する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の記憶部に記憶される電子情報の漏洩を防止する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パソコンや携帯電話等の電子機器の紛失や盗難にあった場合に備えて、これら電子機器に記憶される電子データが第三者へ漏洩することから防止したり、不正使用から禁止したりするための技術が提案されている(例えば、特許文献1〜4)。
【0003】
特許文献1には、無線通信を介して他の電子機器から情報を取得し、この取得した情報に基づいてセキュリティの設定と解除とを制御する電子機器が開示されている。これは、例えば、第三者より電子機器の電源スイッチがオンにされた場合でも、他の電子機器からの無線通信を介した特定の識別情報を取得しない限り、この電子機器の電源を入れることができないようにするものである。
【0004】
また、特許文献2には、紛失又は盗難にあった携帯電話に対し、その不正使用を禁止するための不正使用登録を予め基地局へ登録しておき、登録後この携帯電話から通話送信が初めてなされた時に、携帯電話が送信した情報を基に基地局で登録された不正使用登録を検索し、不正使用の登録があった場合に、不正使用禁止指令をこの携帯電話に返送し、以後不正送信を禁止する携帯電話機が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、ハードディスクに記録される電子情報の暗号化と復号化とを行う暗号復号化回路と、電子情報が記録される記録面を破壊する破壊手段とを備え、不正使用者が、電子機器内に備えられるこのハードディスクを開封した時に、ハードディスク内の暗号複合化回路と電子情報が記録される記録面とを破壊するハードディスク装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、電子機器と、この電子機器と無線で情報を交換する携帯端末とから構成されるシステムであって、電子機器に過度の振動や落下を検出した場合、又は電子機器が携帯端末との情報交換が不可能になった場合、又は携帯端末との位置関係が所定の距離以上離れた場合に、電子機器に備える記憶装置内のデータを解読不可能なように破壊するセキュリティシステムが開示されている。
【特許文献1】特開2001−125661号公報
【特許文献2】特開平9−182158号公報
【特許文献3】特開2004−55020号公報
【特許文献4】特開2003−345659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、パソコンや携帯電話等の電子機器には、その内部にハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶装置が内装されており、これらの電子機器が紛失や盗難にあった場合、記憶装置に記憶される情報が第三者に漏洩することが考えられる。
【0008】
しかしながら、特許文献1〜2に開示された技術では、外部からこれら電子機器へのセキュリティの設定、電源、及び電子機器の送信等を制御できても、専門知識を持つ者から、その電子機器に内装される記憶装置を取り出され、他の電子機器を用いた記憶情報の読み取りをなされるおそれがあるため、これらの電子機器に記憶される情報の完全な漏洩防止は困難である。
【0009】
また、例えば、外部からこれらの電子機器へ無線通信を介し、電子機器の記憶装置に記録されるデータを消去する指令を送信し、これら記憶装置の記憶情報を消去する制御を行う手法も考えられる。しかし、このようなデータ消去手法では、未消去前の記憶情報の微弱な残留磁気が磁性体に残る可能性があるため、これら残留磁気による情報を復旧することで元の記憶情報を再現されるおそれもある。
【0010】
また、特許文献3に開示された技術では、ハードディスクを開封しない限り、電子情報が記録される記録面は破壊されない。このため、ハードディスクを開封しなくても、専門知識を持つ者が、暗号及び復号の処理及び電子情報キーを解読すれば、ハードディスクに記憶される電子情報が入手されるおそれがある。
【0011】
また、特許文献4に開示された技術では、電子機器は、自らと携帯端末との位置関係を確認するために、無線を介して常時又は定期的に送信する動作構成を有する。このため、送信に要する電力を消費することとなり、電子機器内の記憶装置の破壊に要する破壊装置の駆動電力の残存期間を短縮するおそれがある。さらに、特許文献4に開示された技術では、記憶装置の具体的な破壊方法及び構造について講じられていない。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、外部からの指令により、電子機器の記憶情報を記憶する記憶部を機械的に破壊し、第三者への漏洩を完全に防止する記憶情報漏洩防止電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明は、記憶部を備え、この記憶部に記憶される電子情報の漏洩を防止する機能を有する電子機器であって、
前記電子機器の記憶部を破壊する破壊指令信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した破壊指令信号に基づいて前記記憶部を機械的に破壊する破壊制御部とを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0014】
本発明による電子機器によれば、電子機器の記憶部の破壊を指令する破壊指令信号を、電子機器に設けられる受信部により受信し、この受信した破壊指令信号に基づいて電子装置に内装される記憶部を機械的に破壊する。これにより、機械的に破壊された電子データの復旧は不可能であるため、電子機器の記憶部に記憶される電子情報の第三者への漏洩を完全に防止することができる。
【0015】
また、本発明による電子機器によれば、電子機器から外部へ無線を介して常時又は定期的に送信しない。このため、自らの位置情報等を送信するような機能を備える電子機器と比べ、電子機器に備えられる内部バッテリ等の電源の送信に要する電力消費を低減でき、長期間にわたって破壊の制御ができる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、前記電子機器の記憶部は、磁性体をコーティングした円板であって、その中心を軸として回転可能なプラッタと、前記プラッタにコーティングされた磁性体へ電子情報の書き込みと読み出しとを行う磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドに添設され、前記プラッタの回転によって生ずる揚力により、前記磁気ヘッドと前記プラッタとの間隔を一定に保つスライダと、前記スライダを支持するスウィングアームとを備えるハードディスクであり、前記破壊制御部は、前記プラッタを回転させながら、前記プラッタの円板面とスライダとを接触させることにより前記記憶部を破壊することを特徴とする。
【0017】
本発明による電子機器によれば、電子機器を構成する破壊制御部は、ハードディスク内においてプラッタを回転させながら、プラッタの円板面とスライダとを接触させる制御を行う。このため、プラッタとスライダとの間に生じる接触摩擦により、プラッタの円板面にコーティングされた磁性体を破損させ、当該磁性体に記憶された電子情報を破壊することができる。
【0018】
第3の発明は、第2の発明において、前記破壊制御部は、前記プラッタの円板面と前記スライダとの間に生じる揚力が減少して、前記スライダが前記プラッタの円板面に接触するように前記プラッタの回転を低速に制御することにより前記記憶部を破壊することを特徴とする。
【0019】
第4の発明は、第2の発明において、前記破壊制御部は、前記スライダが前記プラッタの円板面に接触するように前記スウィングアームを駆動できるアクチュエータを有し、前記プラッタを回転させながら、前記アクチュエータに、前記スライダが前記プラッタの円板面に接触するように前記スウィングアームを駆動させることにより前記記憶部を破壊することを特徴とする。
【0020】
第5の発明は、第2の発明において、前記破壊制御部は、前記スウィングアーム上における前記プラッタの円板面と対向する位置に、磁力制御可能な電磁石を有し、前記プラッタを回転させながら、前記磁力制御により前記電磁石と、前記プラッタの円板面にコーティングされる磁性体との間に引力を発生させて、前記スライダを前記プラッタの円板面に接触させることにより前記記憶部を破壊することを特徴とする。
【0021】
第6の発明は、第1の発明において、前記電子機器の記憶部は、磁性体をコーティングした円板であって、その中心を軸として回転可能なプラッタと、前記プラッタにコーティングされた磁性体へ電子情報の書き込みと読み出しとを行う磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドに添設され、前記プラッタの円板面との間に空気を導引し、前記導引された空気の圧力によって前記プラッタとの間に揚力を生じさせることにより、前記磁気ヘッドと前記プラッタとの間隔を一定に保つスライダと、前記スライダを支持するスウィングアームとを備えるハードディスクであり、前記破壊制御部は、前記ハードディスク内に、前記プラッタの表面にコーティングされる磁性体を破損可能な強度を有する鋭利体と、前記鋭利体を支持するスウィングアームと、前記スウィングアーム駆動制御できるアクチュエータとを備え、前記プラッタを回転させながら、当該アクチュエータに、前記スウィングアームの支持する鋭利体が前記プラッタの円板面へ接触するように前記スウィングアームを駆動させることにより前記記憶部を破壊することを特徴とする。
【0022】
本発明による電子機器によれば、ハードディスク内における前記破壊制御部の鋭利体を駆動させ、プラッタの表面にコーティングされる磁性体を破損させることにより、当該磁性体に記憶された電子情報を完全に破壊することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、外部からの指令により、電子機器の記憶情報を記憶する記憶部を機械的に破壊し、第三者への漏洩を完全に防止する記憶情報漏洩防止電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である電子機器40を含む記憶情報漏洩防止システム10の全体構成を表す機能ブロック図である。図1に示すように、記憶情報漏洩防止システム10は、携帯電話20と、携帯電話回線30と、電子機器40とから構成される。
【0025】
携帯電話20は、電子機器40に備えられる記憶部44を破壊する破壊指令信号を、携帯電話回線30を通じて送信するものである。ここで、携帯電話20から破壊指令信号を送信する際には、例えば、携帯電話20に備える所定のボタン又はキーの操作に応じた破壊指令信号を作成し、この作成された破壊指令信号を携帯電話会社が提供する電子メールサービスを用いて、携帯電話回線30へ送信する方法や、携帯電話20から専用の携帯ウェブサイトを介して携帯電話回線30へアクセスし、当該ウェブサイト上に表示される専用のコンテンツから該当する破壊指令を選択して破壊指令の指示を出す方法等を用いる。
【0026】
携帯電話回線30は、携帯電話回線サーバ32と、携帯電話基地局34とを含む。携帯電話回線サーバ32は、携帯電話20から送信された破壊指令信号を中継して、複数の地区に設けられる各携帯電話基地局34へ配信する。そして、配信された破壊指令信号は、各携帯電話基地局34から電子機器40に向けて送信される。
【0027】
電子機器40は、無線信号の受信を行う無線受信部42と、電子情報が記憶される記憶部44と、無線受信部42から受信した破壊指令信号によって記憶部44を破壊する制御を行う破壊制御部46と、これら無線受信部42と、記憶部44と、破壊制御部46とに電源を供給するバッテリ48とから構成される。
【0028】
無線受信部42は、携帯電話20から携帯電話回線30を介して送信された破壊指令信号を受信するとともに、破壊指令信号を破壊制御部46に転送する。
【0029】
記憶部44は、電子機器40に係る電子情報を記憶する記憶媒体であり、本実施形態ではハードディスクを用いる。
【0030】
破壊制御部46は、無線受信部42が受信した破壊指令信号に基づいて、電子情報が記憶される記憶部44を破壊する制御を行う。記憶部44として用いるハードディスクの具体的な破壊制御の方法及び構造については、後に詳しく述べる。
【0031】
バッテリ48には、例えば、モバイルPC等で汎用的なニッケル水素電池やリチウムイオン電池等が用いられ、このバッテリ48は、無線受信部42と、記憶部44と、破壊制御部46とへ電源を供給する。ただし、バッテリ48は、電子機器40本体の電源がオフの状態であっても、無線受信部42の受信に係る処理については、常に電源を供給するように設計されており、常時、無線受信部42は破壊指令信号の受信を待機する状態を保つ。なお、バッテリ48の電気容量が低下した場合においても、破壊制御部46の駆動のための電源は、通常、完全放電を避けるためにバッテリ48内に10〜20%程度残存される電力を利用する。
【0032】
次に、上記で述べた記憶部44として用いるハードディスクにおける具体的な内部構造について説明する。
【0033】
図2は、ハードディスク50の一般的な内部構造を示す斜視図である。図2に示すように、ハードディスク50の内部構造は、磁性体51をコーティングした円板であるプラッタ52と、プラッタ52にコーティングされた磁性体51へ電子情報の書き込みと読み出しとを行う磁気ヘッド54と、磁気ヘッド54に添設されて磁気ヘッド54とプラッタ52との間隔を一定に保つ役割をするスライダ56と、スライダ56を支持するスウィングアーム58と、スウィングアーム58をプラッタ52の円板面に沿ってスライドするように駆動制御を行うアクチュエータ60とから構成される。
【0034】
図3は、図2に示されるプラッタ52とスライダ56との間に形成される隙間を拡大した拡大断面図である。図3に示すように、スライダ56は、磁気ヘッド54に添設され、通常、5000〜15000rpmで回転するプラッタ52の円板面との間に気流を導引し、導引された空気の圧力によってプラッタ52との間に生じる揚力により、磁気ヘッド54とプラッタ52との間隔を一定に保つ働きをする。
【0035】
このような構造を備えるハードディスク50に記憶される電子情報の漏洩を防止するための破壊制御部46によるハードディスク50の破壊制御例について、図4〜6に基づき詳細に説明する。
【0036】
図4は、第一の破壊制御例であり、この破壊制御に係るハードディスク50の内部構造の要所を抜粋した縦断面図である。図4に示すように、第一の破壊制御例では、通常、5000〜15000rpmで回転するプラッタ52の回転数を、例えば、100rpm以下の低速に回転させて、プラッタ52とスライダ56との間に生じる空気圧による揚力を減少させることにより、プラッタ52の円板面にスライダ56を接触させる制御を行う。したがって、本破壊制御例によれば、ハードディスク50内においてプラッタ52を回転させながら、プラッタ52の円板面とスライダ56とを接触させる制御を行うため、プラッタ52とスライダ56との間に生じる接触摩擦により、プラッタ52の円板面にコーティングされた磁性体51を破損させ、磁性体51に記憶された電子情報を完全に破壊することができる。
【0037】
図5は、第二の破壊制御例であり、この破壊制御に係るハードディスク50の内部構造の要所を抜粋した縦断面図である。図5に示すように、第2の破壊制御例では、スウィングアーム58を駆動制御するアクチュエータ60とは別に、スライダ56がプラッタ52の円板面に接触するようにスウィングアーム58を駆動できるスウィングアームダウン用アクチュエータ62を設け、プラッタ52を回転させながら、スウィングアームダウン用アクチュエータ62に、スライダ56がプラッタ52の円板面に接触するようにスウィングアーム58を駆動させる制御を行う。したがって、本破壊制御例によれば、第一の破壊制御例と同様に、プラッタ52とスライダ56との間に生じる接触摩擦により、プラッタ52の円板面にコーティングされた磁性体51を破損させ、磁性体51に記憶された電子情報を完全に破壊することができる。
【0038】
図6は、第三の破壊制御例であり、この破壊制御に係るハードディスク50の内部構造の要所を抜粋した縦断面図である。図6に示すように、第3の破壊制御例では、スウィングアーム58におけるプラッタ52の円板面と対向する位置に、磁力制御可能な電磁石64を設け、プラッタ52を回転させながら、磁力制御により電磁石64と、プラッタ52の円板面にコーティングされる磁性体51との間に引力を発生させて、スライダ56をプラッタ52の円板面に接触させる制御を行う。したがって、本破壊制御例によれば、第一の破壊制御例と同様に、プラッタ52とスライダ56との間に生じる接触摩擦により、プラッタ52の円板面にコーティングされた磁性体51を破損させ、磁性体51に記憶された電子情報を完全に破壊することができる。
【0039】
図7は、第四の破壊制御例であり、この破壊制御に係るハードディスク50の内部構造の要所を抜粋した縦断面図及び平面図である。図7に示すように、第四の破壊制御例では、ハードディスク50の内部に、プラッタ52の表面にコーティングされる磁性体51を破損可能な強度を有する破壊針66と、破壊針66を支持するスウィングアーム58と、スウィングアーム58を駆動制御できる破壊針制御用アクチュエータ68とを設ける。そして、プラッタ52を回転させながら、破壊針制御用アクチュエータ68に、スウィングアーム58の支持する破壊針66がプラッタ52の円板面へ接触するように駆動させる制御を行う。したがって、本破壊制御例によれば、破壊針66がプラッタ52の表面にコーティングされる磁性体51を接触破損することにより、磁性体51に記憶された電子情報を完全に破壊することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態による電子機器40によれば、携帯電話20から携帯電話回線30を介して送信された、電子機器40の記憶部44の破壊を指令する破壊指令信号を、電子機器40に設けられる無線受信部42により受信し、この受信した破壊指令信号に基づいて電子装置に内装される記憶部を機械的に破壊することで、電子機器40の記憶部に記憶される電子情報の第三者への漏洩を完全に防止することができる。
【0041】
また、本実施形態による電子機器40によれば、電子機器40から外部へ無線を介して常時又は定期的に送信しない。このため、自らの位置情報等を送信するような機能を備える電子機器と比べ、電子機器40に備えられる内部バッテリ48の電源の送信に要する電力消費を低減でき、長期間にわたって破壊の制御ができる。
【0042】
なお、電子機器40には、送信の機能を備えないとしたが、携帯電話20から携帯電話回線30を介して送信された破壊指令信号を受信した時に限り、受信を完了した信号を各携帯電話基地局34へ送信する送信部を備えてもよい。また、携帯電話基地局34で受信された受信完了信号を、携帯電話回線サーバ32へ転送してもよい。この時、電子機器40からの送信は、破壊指令信号を受信した時に限るので、常時又は定期的に送信する場合と比べ、電力消費も少ない。また、受信完了信号を受信した携帯電話基地局34を参照することで、電子機器40の破壊制御部46による記憶部44の破壊処理が完了したことが確認できるとともに、電子機器40の送信部から送信する信号の概ねの送信位置が推定できる。また、携帯電話20から携帯電話回線サーバ32にアクセスすることで、遠隔地からこれらの破壊処理の完了や推定される送信位置の情報を確認できる。
【0043】
なお、本実施形態において、記憶情報漏洩防止システム10を構成する電子機器40の記憶部44にハードディスク50を用いた時の破壊制御の方法の例について説明したが、これに限ることなく、記憶部44にフラッシュメモリを用いてもよい。フラッシュメモリを用いた時のフラッシュメモリに記憶された電子情報は、フラッシュメモリに過電圧を印加することによって物理的に破壊される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態である電子機器を含む記憶情報漏洩防止システムの全体構成を表す機能ブロック図である。
【図2】本実施形態に係るハードディスクの一般的な内部構造を示す斜視図である。
【図3】図2に示されるプラッタとスライダとの間に形成される隙間を拡大した拡大断面図である。
【図4】本実施形態に係るハードディスク内の電子情報が記憶される部分である磁性体を破壊する内部構造の要所を抜粋した第一の破壊制御例の縦断面図である。
【図5】本実施形態に係るハードディスク内の電子情報が記憶される部分である磁性体を破壊する内部構造の要所を抜粋した第二の破壊制御例の縦断面図である。
【図6】本実施形態に係るハードディスク内の電子情報が記憶される部分である磁性体を破壊する内部構造の要所を抜粋した第三の破壊制御例の縦断面図である。
【図7】本実施形態に係るハードディスク内の電子情報が記憶される部分である磁性体を破壊する内部構造の要所を抜粋した第四の破壊制御例の縦断面図及び平面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 記憶情報漏洩防止システム 20 携帯電話
30 携帯電話回線 32 携帯電話回線サーバ
34 携帯電話基地局 40 電子機器
42 無線受信部 44 記憶部
46 破壊制御部 48 バッテリ
50 ハードディスク 51 磁性体
52 プラッタ 54 磁気ヘッド
56 スライダ 58 スウィングアーム
60 アクチュエータ 62 スウィングアームダウン用アクチュエータ
64 電磁石 66 破壊針
68 破壊針制御用アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部を備え、この記憶部に記憶される電子情報の漏洩を防止する機能を有する電子機器であって、
前記電子機器の記憶部を破壊する破壊指令信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した破壊指令信号に基づいて前記記憶部を機械的に破壊する破壊制御部とを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記電子機器の記憶部は、磁性体をコーティングした円板であって、その中心を軸として回転可能なプラッタと、前記プラッタにコーティングされた磁性体へ電子情報の書き込みと読み出しとを行う磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドに添設され、前記プラッタの回転によって生ずる揚力により、前記磁気ヘッドと前記プラッタとの間隔を一定に保つスライダと、前記スライダを支持するスウィングアームとを備えるハードディスクであり、
前記破壊制御部は、前記プラッタを回転させながら、前記プラッタの円板面とスライダとを接触させることにより前記記憶部を破壊することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記破壊制御部は、前記プラッタの円板面と前記スライダとの間に生じる揚力が減少して、前記スライダが前記プラッタの円板面に接触するように前記プラッタの回転を低速に制御することにより前記記憶部を破壊することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記破壊制御部は、前記スライダが前記プラッタの円板面に接触するように前記スウィングアームを駆動できるアクチュエータを有し、前記プラッタを回転させながら、前記アクチュエータに、前記スライダが前記プラッタの円板面に接触するように前記スウィングアームを駆動させることにより前記記憶部を破壊することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記破壊制御部は、前記スウィングアーム上における前記プラッタの円板面と対向する位置に、磁力制御可能な電磁石を有し、前記プラッタを回転させながら、前記磁力制御により前記電磁石と、前記プラッタの円板面にコーティングされる磁性体との間に引力を発生させて、前記スライダを前記プラッタの円板面に接触させることにより前記記憶部を破壊することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項6】
前記電子機器の記憶部は、磁性体をコーティングした円板であって、その中心を軸として回転可能なプラッタと、前記プラッタにコーティングされた磁性体へ電子情報の書き込みと読み出しとを行う磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドに添設され、前記プラッタの円板面との間に空気を導引し、前記導引された空気の圧力によって前記プラッタとの間に揚力を生じさせることにより、前記磁気ヘッドと前記プラッタとの間隔を一定に保つスライダと、前記スライダを支持するスウィングアームとを備えるハードディスクであり、
前記破壊制御部は、前記ハードディスク内に、前記プラッタの表面にコーティングされる磁性体を破損可能な強度を有する鋭利体と、前記鋭利体を支持するスウィングアームと、前記スウィングアーム駆動制御できるアクチュエータとを備え、前記プラッタを回転させながら、当該アクチュエータに、前記スウィングアームの支持する鋭利体が前記プラッタの円板面へ接触するように前記スウィングアームを駆動させることにより前記記憶部を破壊することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−207100(P2007−207100A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27243(P2006−27243)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】