説明

記憶装置

【課題】
高速にデータを記録再生することが可能な記憶装置を提供する。
【解決手段】
実施形態の記憶装置は、複数の領域を有し、前記領域に信号を記憶する記憶媒体と、前記記憶媒体に対向する電極を有し、前記電極を介して、それぞれの前記領域に対して信号の書き込みまたは読み出しを行う複数のプローブとを備え、前記複数のプローブは、第1プローブと、前記第1プローブと第1方向に離間して配置する第2プローブと、前記第1プローブに対して前記第1方向及び前記第1方向とは異なる第2方向にそれぞれずらして配置する第3プローブとを含む記憶装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のプローブを用いてデータを記録再生する記憶装置では、記憶媒体上において、それぞれのプローブがデータの記録再生を担当するエリアが割り当てられている。このエリアとプローブとの配置関係によっては、データを記録再生することができないデッドスペースが存在してしまうことがある。このようなデッドスペースが存在することは、データの高密度化が図れないために好ましくない。
【0003】
そこで、エリアのサイズを大きくすることにより、上記デッドスペースを作らない方法が考えられるが、この場合にはプローブを高密度に配置することができず、複数のプローブが同時にデータを記録再生することによる、記録再生の高速化が図れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4145773号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高速にデータを記録再生することが可能な記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の記憶装置は、複数の領域を有し、前記領域に信号を記憶する記憶媒体と、前記記憶媒体に対向する電極を有し、前記電極を介して、それぞれの前記領域に対して信号の書き込みまたは読み出しを行う複数のプローブと、を備え、
前記複数のプローブは、第1プローブと、前記第1プローブと第1方向に離間して配置する第2プローブと、前記第1プローブに対して前記第1方向及び前記第1方向とは異なる第2方向にそれぞれずらして配置する第3プローブとを含み、
前記領域の前記第1方向の長さをXm、前記領域の前記第2方向の長さをYmとしたとき、前記第1プローブの電極及び前記第2プローブの電極の前記第1方向の距離Xp1、前記第1プローブの電極及び前記第3プローブの電極の前記第1方向の距離Xp2、前記第1プローブの電極及び前記第3プローブの電極の前記第2方向の距離Yp2は、それぞれ次式を満たす記憶装置。
【数1】

【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態の記憶装置の概略図。
【図2】実施形態の記憶装置に用いるアクチュエータの構成図。
【図3】実施形態の記憶装置の断面図(図2のA-A断面)。
【図4】実施形態の記憶装置に用いるプローブの構成図。
【図5】実施形態の記憶装置との比較例。
【図6】実施形態の記憶装置に用いるプローブの配列を説明する図(n=2)。
【図7】実施形態の記憶装置に用いるプローブの配列を説明する図(n=3,4)。
【図8】実施形態の記憶装置に用いる制御部の動作を説明する図。
【図9】記録再生エリアのオーバーラップを説明する図。
【図10】記録再生エリアのマージンを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0009】
図1乃至図3を参照して、本実施形態に係る記憶装置100の構成について詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施形態の記憶装置100の概略図である。なお、図1(a)は記憶装置100の全体を示す図、図1(b)は図1(a)におけるプローブユニット102の裏面を示す図である。
【0011】
図1に示す記憶装置100は、データ(信号)を保持可能な記憶媒体103と、記憶媒体103との間でデータの書き込みと読み出し(以下、記録再生)を行う複数のプローブ101が配列しているプローブユニット102と、プローブ101に対して記憶媒体103を相対的に移動するためのアクチュエータ200と、記録再生及びアクチュエータ200の駆動を制御する制御部300とを備える。
【0012】
プローブユニット102の複数のプローブ101は、第1空間を隔てて記憶媒体103と対向するように配置している。記録再生を行わない非記録再生時には、プローブ101と記憶媒体103とは離間した状態にある。記録再生時には、アクチュエータ200が記憶媒体103を移動させ、プローブ101を記憶媒体103に接触させる。
【0013】
この接触した状態で、たとえば、プローブ101の電極に所定の電圧を加えることにより、プローブ101と記憶媒体103との間でデータの記録再生を行う。
【0014】
記憶媒体103は、例えば電気的な状態変化をデータとして保持することのできる薄膜である。ここでは、記憶媒体103として強誘電体材料の薄膜を用いる。
【0015】
本実施形態では、アクチュエータ200として、3軸(x、y、z軸)に駆動可能な静電駆動型のアクチュエータを用いる。
【0016】
図2に示すアクチュエータ200は、記憶媒体103を載置するための矩形状平板のステージ(可動部)201と、ステージ201の周囲に第2空間を介して設けられる可動フレーム202と、可動フレーム202の周囲に第3空間を介して設けられる固定フレーム203とを備える。
【0017】
固定フレーム203は、導電性の支持部材213、214、215及び216により可動フレーム202を支持している。また、可動フレーム202は、導電性の支持部材217によりステージ201を支持している。
【0018】
ステージ201の平面が図2に示すxy平面に沿って配置されるものとすると、第2空間には第1駆動部204が設けられて、ステージ201を図2中x軸方向に移動する。第3空間には第2駆動部205が設けられて、ステージ201及び可動フレーム202を一体にy軸方向に移動する。また、第1空間には、第3駆動部206が設けられて、ステージ201をz軸方向に移動する。
【0019】
第1駆動部204は、それぞれ同一の矩形状で等間隔に一列(y軸方向)に配置している複数の第1可動部電極207及び複数の第1固定部電極208を備える。ステージ201の側面に設けられる複数の第1可動部電極207と、可動フレーム202の側面に設けられる複数の第1固定部電極208とは、それぞれ第2空間内でx軸方向に突出している。この場合、第1可変部電極207と第1固定部電極208とは、電極間隔の1/2だけy軸方向にずれて、互いに噛み合う配置が好ましい。
【0020】
この第1駆動部204は、隣接する第1可動部電極207と第1固定部電極208との間に働くx軸方向の静電力によりステージ201をx軸方向に移動する。
【0021】
第2駆動部205は、それぞれ同一の矩形状で等間隔に一列(x軸方向)に配置している複数の第2可動部電極209及び複数の第2固定部電極210を備える。可動フレームの側面に設けられる複数の第2可動部電極209と、固定フレーム203の側面に設けられる複数の第2固定部電極210とは、それぞれ第3空間内でy軸方向に突出している。この場合、第2可動部電極209と第2固定部電極210とは、電極間隔の1/2だけx軸方向にずれて、互いに噛み合う配置が好ましい。
【0022】
この第2駆動部205は、隣接する第2可動部電極209と第2固定部電極210との間に働くy軸方向の静電力によりステージ201及び可動フレーム202を一体にy軸方向に移動する。
【0023】
なお、本実施形態においては、ステージ201、可動フレーム202、固定フレーム203は具体的には、第1可動部電極207と第1固定部電極208とが電気的に絶縁関係に、第2可動部電極209と第2固定部電極210とが電気的に絶縁関係となるように構成される。
【0024】
第3駆動部206は、ステージ201上の周辺部に設けられる第1平板電極211と、第1空間を介してステージ201に対向するプローブユニット102に設けられる第2平板電極212とが互いに、中心軸を共有して対向して配置される(図3)。
【0025】
この第3駆動部206は、第1平板電極211と第2平板電極212との間に働くz軸方向の静電力によりステージ201をz軸方向に移動して、プローブ101と記憶媒体103とを接触状態にする。
【0026】
キャップ105は、例えばボンディング部106によりアクチュエータ200に接合され、記憶媒体103をパッケージしている。このキャップ105はアクチュエータ200と電気的に絶縁関係である必要があるため、ボンディング部106には絶縁性の材料が好ましい。
【0027】
位置センサ104は、ステージ201の記憶媒体103を設ける面の裏面の四隅に設ける平板電極と、キャップ105の四隅に設けられる平板電極とがそれぞれ互いに向かい合わせて配置される。そして、この平板電極間の対向面積あるいは距離等の変化により生じる静電容量の変化により、ステージ201のx、y、z軸方向の変位を計測する。
【0028】
制御部300は、前述のようにアクチュエータ200の第1駆動部204、第2駆動部205、第3駆動部206の駆動を制御する。また、プローブ101を介して記憶媒体103に対して電圧を印加することで、データの記録再生を行う。この制御部300は、例えばMPU等の演算処理装置により実現される。
【0029】
なお、第1駆動部204、第2駆動部205及び第3駆動部206としては、静電駆動型のアクチュエータに限定されるものではなく、例えば磁気駆動型や圧電駆動型のアクチュエータなどを用いることも可能である。
【0030】
また、第3駆動部206によるステージ201のz軸方向への移動に変えて、プローブ101を単体であるいは複数同時にz軸方向に移動することで、プローブ101と記憶媒体103を接触あるいは非接触状態にすることも可能である。
【0031】

(プローブ配列の説明)
以下、図4乃至図7を参照して、プローブ101の構成及びプローブユニット102の構成について詳細に説明する。
【0032】
図4はプローブ101の構成を説明する図である。図4(a)はプローブ101の側面、図4(b)は図4(a)において矢印Cの方向にプローブ101を見たときの図をそれぞれ示している。
【0033】
プローブ101は、アンカー部107を介して、プローブ101のビーム部108の一端を、プローブユニット102に固定した片持ち梁である。また、ビーム部108の先端には、プローブ101が記録再生を行うために、記憶媒体103に接触することで、この記憶媒体103に対して電圧を印加する記録再生部(電極)109を有する。
【0034】
ビーム部108としては、図に示すようにアスペクト比の大きな形状であることが好ましい。これは、プローブ101の記録再生部109を記憶媒体103に対してある程度のバネ性をもって接触させることで、プローブ101先端の接触荷重の低減や、記憶媒体103の高さのばらつきに対するロバスト性を向上させるためである。
【0035】
このように、アスペクト比の大きなビーム部108を有するプローブ101を用いる記憶装置100では、従来のようにプローブ101をマトリクス状に配置する場合には、どのプローブ101を用いても記録再生できないデッドスペースをつくらないために、1本のプローブ101が記録再生を担当するエリア(以下、記録再生エリア)内にプローブ101を収める必要がある。そのため、図5(a)に示すように、記録再生エリアをプローブ101の形状と同様にアスペクト比の大きな領域とする必要がある。
【0036】
ここで、記録再生エリアのサイズは、第1駆動部204及び第2駆動部205によるプローブユニット102と記憶媒体103との相対的な駆動量の上限値によって決まる。すなわち、第1駆動部204によるx軸方向の駆動量が記録再生エリアのx軸方向の長さに相当し、第2駆動部205によるy軸方向の駆動量が記録再生エリアのy軸方向の長さに相当する。
【0037】
したがって、上記のようにアスペクト比の大きな記録再生エリアとする場合には、第1駆動部204によるx軸方向の駆動量と、第2駆動部205によるy軸方向の駆動量とに大きな差が生じることになる。
【0038】
本実施形態では、前述のように、第1駆動部204及び第2駆動部205としては静電駆動型のアクチュエータを用いるので、x軸方向とy軸方向とで大きく駆動量を異ならせるためには、第1駆動部204の櫛歯電極(第1可動部電極207及び第1固定部電極208)の駆動方向の長さと第2駆動部205の櫛歯電極(第2可動部電極209及び第2固定部電極210)の駆動方向の長さに極端な偏りが生じてしまうことになる。
【0039】
したがって、第1駆動部204及び第2駆動部205の上記のような形状の偏りを生じさせないためには、記録再生エリアとしては、アスペクト比が1(正方形)に近い形状であることが好ましい。そこで、上記のように記録再生エリアのアスペクト比を1に近い値とし、さらにプローブ101を記録再生エリア内に収めるためには、図5(b)に示すように、記録再生エリアをプローブ101の長手方向の長さを1辺とする正方形に近い形状にすることが考えられる。
【0040】
しかしながら、この場合には1本のプローブ101が担当する記録再生エリアの面積が大きくなる分、プローブユニット102に配列されるプローブ101の本数が少なくなるため、複数プローブ101が同時に記録再生を行うことによる記録再生の高速化が図れない。
【0041】
そこで、本実施形態においては、プローブユニット102におけるプローブ101の配列と、記録再生エリアのサイズとの関係に規定を設けることで、記憶媒体103上においてどのプローブ101を用いても記録再生を行うことのできないデッドスペースをなくすとともに、プローブユニット102に配列されるプローブ101を高密度化する。
【0042】
図6(a)は、1本のプローブ101がデータの記録再生を担当する記録再生エリアを示す図である。
【0043】
記録再生エリアは、x軸方向(第1駆動部の駆動方向)の長さがXm、y軸方向(第2駆動部の駆動方向)の長さがYmの矩形状である。
【0044】
1本のプローブ101は、記憶媒体103と接触した状態で、この記録再生エリアを例えば図中の矢印に沿って移動するとともに記録再生を行う。記録再生のスタート時(または非記録再生時)においては、プローブ101の記録再生部109は記録再生エリアの頂点の一つであるA点(図中左上の頂点)に位置する。
【0045】
図6(b)は、隣接する4つのプローブ101(プローブA乃至D)の配置関係を示す図である。また、図6(c)は、図6(b)における記録再生エリアの配置関係を示す図である。
【0046】
記録再生のスタート時において、プローブAの記録再生部109は記録再生エリアAの左上の頂点(A点)に、プローブBの記録再生部109は記録再生エリアBの頂点(B点)に、プローブCの記録再生部109は記録再生エリアCの頂点(C点)に、プローブDの記録再生部109は記録再生エリアDの頂点(D点)にそれぞれ位置している。
【0047】
なお、以下では図6(b)に示すように、プローブAをk-1列、プローブB及びCをk列、プローブDをk+1列のように定義する。
【0048】
このとき、k列のx軸方向に離間して配置するプローブ(図中では、プローブB及びC)の記録再生部109間のx軸方向の距離をXp1、k-1列のプローブとk列のプローブ(図中では、プローブA及びC)、またはk列のプローブとk+1列のプローブ(プローブB及びD)の記録再生部109間のx軸方向の距離をXp2、y軸方向の距離をYp2とする。
【0049】
本実施形態においては、上記Xp1、Xp2及びYp2と、記録再生エリアのサイズXm及びYmとが以下の規定を満たすようにプローブ101を配列する。ただし、nは2以上の整数(n=2, 3, 4, …)である。
【0050】
Xp1=n*Xm ・・・(式1)
Xp2=Xm ・・・(式2)
Yp=Ym/n ・・・(式3)

このとき、図6(c)に示すように、記録再生エリアB及びDの中心間のx軸方向の距離をXp3、記録再生エリアB及びDの中心間のy軸方向の距離をYp3、記録再生エリアB及びCの中心間のx軸方向の距離をXp4とすると、これらは上記のプローブ101の配列との関係から次式を満たす。
【0051】
Xp3=Xp2 ・・・(式4)
Yp3=Yp2 ・・・(式5)
Xp4= Xp1 ・・・(式6)

上記のような(式1)乃至(式3)により規定されるプローブ101の配列とすることで、プローブユニット102には高密度にプローブ101を配列することができ、データの記録再生を高速化することが可能となる。
【0052】
また、記憶媒体103上においてどのプローブ101を用いても記録再生を行うことのできないデッドスペースが存在しないために、データを高密度に記録することが可能となる。なお、図6は、n=2の例、図7(a)はn=3、(b)はn=4の例をそれぞれ示している。
【0053】
なお、実際には個々のプローブ101の製造時のばらつきや環境の変化等により、プローブ101の記録再生部109間の距離がある程度ばらつくことが考えられる。したがって、上記(式1)乃至(式6)で規定される距離(Xp1、Xp2、Yp2)は厳密にはそれぞれのプローブ101ごとに異なることになる。
【0054】
このように、プローブ101の配置にばらつきが発生する場合、記録再生部109のずれの分だけ個々の記録再生エリアがオーバーラップするため(図9)、隣接する記録再生エリア間で情報を誤って上書きしてしまう可能性がある。これを防ぐためには、ばらつきがなしの状態での理想的な記録再生エリアのサイズ(Xm、Ym)よりも小さい記録再生エリアのサイズ(Xm'、Ym')を策定し、図10のようにばらつきに対するマージンを含めた形で記録再生することが考えられる。
【0055】
例えば、記録再生エリアのサイズ(Xm'、Ym')を、理想的な記録再生エリアのサイズ(Xm、Ym)に対して6%のマージンをとった値とすると次式のように表すことができる。
【0056】
Xm' = Xm * (1−0.06) = 0.94Xm ・・・(式7)
Ym' = Ym * (1−0.06) =0.94Ym ・・・(式8)

上式のように記録再生エリアのマージンを考慮することで、(式1)乃至(式6)の規定では、プローブ101の記録再生部109間の距離に対して±6%の誤差を許容することができる。
【0057】
なお、(数1)及び(数3)をプローブ101の記録再生部109間の距離のみを用いて次式のように規定することもできる。ただし、Xp1は、図6に示すプローブB及びプローブCの記録再生部109間のx軸方向の距離である。
【0058】
Xp1=n* Xp2 ・・・(式9)
Yp2= Yp1/n ・・・(式10)
(制御部の動作)
以下、図8を参照して、制御部300の動作について説明する。
【0059】
(z軸方向の駆動)
制御部300は、第1平板電極211に対して電圧V1、第2平板電極212に対して電圧V2を印加する(ただし、V1≠V2)。
【0060】
このとき、第1平板電極211と第2平板電極212との間には、電位差(V1−V2)による静電力(引力)が発生する。この静電力により、第2平板電極212側(z軸正の方向)へ第1平板電極211を引き付けることで、ステージ201をz軸正の方向へ移動する。
【0061】
(x及びy軸駆動)
制御部300は、上記のようにステージ201をz軸方向へ駆動するとともに、x軸及びy軸方向への駆動を行うことで記憶媒体103の平面内でのプローブ101の位置決めを行う。
【0062】
図8(a)は図2におけるA-A断面の図である。
【0063】
制御部300は、例えば電極パッド(図示せず)等を介して、第1可動部電極207a及び第1可動部電極207bに対して電圧V1を印加する。また、同時に第1固定部電極208aに対して電圧V2、第1固定部電極208bに対して電圧V3を印加する(ただし、V2>V1、V3>V1)。
【0064】
このとき、V2>V3であれば、|V2−V1|>|V3−V1|となるために、第1可動部電極207aと第1固定部電極208aとの間に生じるx軸方向の静電力が、第1可動部電極207bと第1固定部電極208bとの間に生じるx軸方向の静電力を上回ることで、ステージ201はx軸正の方向へ移動する。
【0065】
逆に、V3>V2であれば、|V3−V1|>|V2−V1|となるために、第1可動部電極207bと第1固定部電極208bとの間に生じるx軸方向の静電力が、第1可動部電極207aと第1固定部電極208aとの間に生じるx軸方向の静電力を上回ることで、ステージ201はx軸負の方向へ移動する。
【0066】
図8(b)は図2におけるB-B断面の図である。
【0067】
制御部300は、例えば電極パッド(図示せず)等を介して、第2可動部電極209aに対して電圧V4を、第2可動部電極209bに対して電圧V5を印加する。また、同時に第2固定部電極210aに対して電圧V6、第2固定部電極210bに対して電圧V7を印加する(ただし、V6>V4、V7>V5)。
【0068】
このとき、|V6−V4|>|V7−V5|であれば、第2可動部電極209aと第2固定部電極210aとの間の静電力が、第2可動部電極209bと第2固定部電極210bとの間の静電力を上回ることで、ステージ201はy軸正の方向へ移動する。
【0069】
逆に、|V7−V5|>|V6−V4|であれば、第2可動部電極209bと第2固定部電極210bとの間の静電力が、第2可動部電極209aと第2固定部電極210aとの間の静電力を上回ることで、ステージ201はy軸負の方向へ移動する。
【0070】
なお、x軸方向及びy軸方向の駆動量の上限値(すなわち、記録再生エリアのサイズ)は、各駆動部の櫛歯電極が対向する側面に接触しない範囲内において、さらにプローブ101の配列により予め決定することができる。
【0071】
また、具体的な電圧の値としては、制御部300が、位置センサ104が計測するステージ201の変位を入力として、例えば変位の目標値との差が0に収束する方向に算出する。
【0072】
(記録再生)
プローブ101及び記憶媒体103が接触状態において、ステージ201及びプローブ101の電極は強誘電体材料の記憶媒体103を介して部分的な強誘電キャパシタを形成する。そして、上記のように、プローブ101の記憶媒体103に対する相対的な位置決めを行うとともにデータの記録再生を行う。
【0073】
具体的には、記録時には、制御部300がプローブ101の記録再生部109を介して記憶媒体103に対して電圧を印加し、記憶媒体103に電荷の分極を生じさせることでデータの記録を行う。一方で、再生時には、制御部300がプローブ101の記録再生部109を介して記憶媒体103に対してパルス電圧を印加して、電荷の分極反転により生じる電流を検出することで、データの再生を行う。
【0074】
この際、複数のプローブ101は各々あるいは同時に、記憶媒体103に対して電圧を印加することでデータの記録再生を行うことができる。
【0075】
なお、記憶媒体103としては、金属酸化物等の材料から形成される絶縁性の薄膜を用いることも可能であるが、この際には、プローブ101が印加する電圧により生じる記憶媒体103の抵抗変化をデータとして記録再生を行うことができる。
【0076】
以上説明した実施形態の記憶装置によれば、高密度にデータを記録することが可能となる。
【0077】
この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
100・・・記憶装置
101・・・プローブ
102・・・プローブユニット
103・・・記憶媒体
104・・・位置センサ
105・・・キャップ
106・・・ボンディング部
107・・・アンカー部
108・・・ビーム部
109・・・記録再生部
200・・・アクチュエータ
201・・・ステージ
202・・・可動フレーム
203・・・固定フレーム
204・・・第1駆動部
205・・・第2駆動部
206・・・第3駆動部
207(207a、207b)・・・第1可動部電極
208(208a、208b)・・・第1固定部電極
209(209a、209b)・・・第2可動部電極
210(210a、210b)・・・第2固定部電極
211・・・第1平板電極
212・・・第2平板電極
213、214、215、216、217・・・支持部材
300・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の領域を有し、前記領域に信号を記憶する記憶媒体と、
前記記憶媒体に対向する電極を有し、前記電極を介して、それぞれの前記領域に対して信号の書き込みまたは読み出しを行う複数のプローブと、
を備え、
前記複数のプローブは、第1プローブと、前記第1プローブと第1方向に離間して配置する第2プローブと、前記第1プローブに対して前記第1方向及び前記第1方向とは異なる第2方向にそれぞれずらして配置する第3プローブとを含み、
前記領域の前記第1方向の長さをXm、前記領域の前記第2方向の長さをYmとしたとき、
前記第1プローブの電極及び前記第2プローブの電極の前記第1方向の距離Xp1、前記第1プローブの電極及び前記第3プローブの電極の前記第1方向の距離Xp2、前記第1プローブの電極及び前記第3プローブの電極の前記第2方向の距離Yp2は、それぞれ次式を満たす記憶装置。
【数1】

【請求項2】
前記領域は、前記第1プローブが前記信号の書き込みまたは読み出しを行う第1領域と、前記第3プローブが前記信号の書き込みまたは読み出しを行う第2領域とを含み、
前記第1領域及び前記第2領域の中心間の前記第1方向の距離Xp3、前記第1領域及び前記第2領域の中心間の前記第2方向の距離Yp3は、それぞれ次式を満たす請求項1に記載の記憶装置。
【数2】

【請求項3】
前記プローブまたは前記記憶媒体を、前記第1方向に駆動する第1駆動部と、
前記プローブまたは前記記憶媒体を、前記第2方向に駆動する第2駆動部と、
を備える請求項1または2に記載の記憶装置。
【請求項4】
前記領域の第1方向の長さXmは、前記第1駆動部が前記プローブまたは前記記憶媒体を前記第1方向へ駆動する駆動量であり、前記領域の第2方向の長さYmは、前記第2駆動部が前記プローブまたは前記記憶媒体を前記第2方向へ駆動する駆動量である請求項3に記載の記憶装置。
【請求項5】
複数の領域を有し、前記領域に信号を記憶する記憶媒体と、
前記記憶媒体に対向する電極を有し、前記電極を介して、それぞれの前記領域に対して信号の書き込みまたは読み出しを行う複数のプローブと、
を備え、
前記複数のプローブは、第1プローブと、前記第1プローブと第1方向に離間して配置する第2プローブと、前記第1プローブに対して前記第1方向及び前記第1方向とは異なる第2方向にそれぞれずらして配置する第3プローブ、前記第1プローブに対して第2方向に離間して配置する第4プローブとを含み、
前記第1プローブの電極及び前記第2プローブの電極の前記第1方向の距離Xp1、前記第1プローブの電極及び前記第3プローブの電極の前記第1方向の距離Xp2、前記第1プローブの電極及び前記第4プローブの電極の前記第2方向の距離Yp1、前記第1プローブの電極及び前記第3プローブの電極の前記第2方向の距離Yp2はそれぞれ次式を満たす記憶装置。
【数3】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−62447(P2013−62447A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201222(P2011−201222)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】