記番号認識装置、紙葉類処理装置、自動取引処理装置、及び記番号認識方法
【課題】紙葉類に表記された記番号を確実に認識できる記番号認識装置、紙幣処理装置、自動取引処理装置、及び記番号認識方法を提供する。
【解決手段】紙幣識別部(記番号認識装置)25が、紙幣のカラー画像を撮像し、このカラー画像を用いて、紙幣の金種と紙幣の向きの判定と、記番号の認識と、を行う。紙幣識別部25は、記番号を認識する際には、紙幣の記番号が表示されている領域を切り出し、この領域の背景色や模様を消去して記番号の画像を抽出して文字認識を行う。
【解決手段】紙幣識別部(記番号認識装置)25が、紙幣のカラー画像を撮像し、このカラー画像を用いて、紙幣の金種と紙幣の向きの判定と、記番号の認識と、を行う。紙幣識別部25は、記番号を認識する際には、紙幣の記番号が表示されている領域を切り出し、この領域の背景色や模様を消去して記番号の画像を抽出して文字認識を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類に表記された記番号を認識する記番号認識装置、紙葉類処理装置、自動取引処理装置、及び記番号認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の光源及びイメージセンサを備え、背景色をドロップアウトする色の光源を、金種情報に従い選択的に駆動する記番号識別装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−213560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、紙幣は金種毎に背景色が異なる場合が多い。そのため、特許文献1に記載の発明では、金種に応じた光源を選択するために、まず、繰出し部から紙幣を繰り出して、金種識別部を通過させて金種情報と方向情報を取得し、その紙幣を一時保留部に集積する。続いて、紙幣を記番号読取部に搬送して金種に応じた光源を点灯させて、紙幣の記番号を読み取って記番号の認識処理を行う。このように、従来の記番号認識装置では、紙幣の記番号を読み取るまでに時間がかかるという問題があった。
【0005】
また、記番号を正しく認識するためには、紙幣の背景色に応じて複数色の光源を備える必要があり、コストがかかるという問題があった。
【0006】
また、今までの背景色と異なる紙幣が発行された場合、この金種の記番号を認識するためには、新たな色の光源を追加しなければならないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、紙葉類の記番号を確実に認識できる記番号認識装置、紙葉類処理装置、自動取引処理装置、及び記番号認識方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、撮像手段で紙葉類のカラー画像を撮像し、判別手段でこのカラー画像から紙葉類の種類と向きを判別する。そして、選択手段で、紙葉類の種類と向きの情報に基づいて記番号が表記されている記番号領域を特定し、この領域の画像から、紙葉類の種類情報に基づいて決定した色の画素のみを選択して、選択した画素から成る画像に対して文字認識手段で文字認識を行う。紙葉類によって、記番号や記番号の周囲の背景色や模様が異なるが、紙葉類の種類の情報に基づいて記番号の色は特定できるので、この情報を用いて記番号に相当する画素のみを選択することができ、記番号の文字列を確実に抽出できる。
【0009】
また、本発明では、選択手段は、記番号領域の画像を構成する画素毎に、その画素についてR・G・Bの各明度を取得し、これら各明度に基づく値が閾値の範囲内であれば、その画素を選択する。画素の各明度が閾値の範囲内の場合には、その画素は記番号の文字列を構成する画素である。したがって、紙葉類の印刷によるばらつきや紙葉類の使用による劣化などで、紙葉類の記番号や背景色に幅がある場合でも、記番号を確実に抽出して文字認識を行うことができる。
【0010】
また、本発明では、選択手段は、記番号領域の画像を構成する画素毎に、その画素についてR・G・Bの各明度を取得し、取得したR・G・Bの各明度と紙葉類の種類毎にそれぞれ定義された固有ベクトルとを線形結合した値を算出し、その値が閾値の範囲内であれば選択する。線形結合した値が閾値の範囲内の場合には、その画素は記番号の文字列を構成する画素である。したがって、紙葉類の印刷によるばらつきや紙葉類の使用による劣化などで、紙葉類の記番号や背景色に幅がある場合でも、記番号を確実に抽出して文字認識を行うことができる。
【0011】
また、本発明では、選択手段は、R・G・Bの各明度に基づく値が前記閾値の範囲外であれば、予め設定した別の明度に置換する。画素の各明度または線形結合した値が閾値の範囲外の場合には、その画素は記番号の文字列を構成する画素ではなく、背景の画素である。したがって、記番号の背景の画素を全て予め設定した別の明度に置換することで、記番号の文字列のみを抽出できる。
【0012】
また、本発明では、不要領域除去手段は、選択手段が選択した画素から成る画像に対して、メディアンフィルタにより画像処理を行って不要な画素を除去する。メディアンフィルタにより画像処理を行うと細かい点などのノイズ成分を除去できる。したがって、選択手段により選択された画像に不要な画素が含まれている場合には、不要領域除去手段で画像処理を行うことで、記番号の文字列を確実に抽出できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、記番号の文字列を確実に抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ATMの主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】ATMの内部に形成されている紙幣搬送路を示す概略図である。
【図3】紙幣識別部の主要部の構成を示すブロック図である。
【図4】紙幣の記番号の一例を示す外観図である。
【図5】撮像部における紙幣の画像の撮像時の状態を示す側面図である。
【図6】記番号の抽出結果を示す図である。
【図7】画素を選択する2つの処理方法を対比説明するための図である。
【図8】記番号の不要領域の除去処理結果を示す図である。
【図9】第1の画素選択処理、第2の画素選択処理、及び不要領域除去処理用のデータが記録されたテーブルの一例である。
【図10】紙幣識別部の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】第1の画素選択処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】第2の画素選択処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明では、自動取引処理装置の一例として現金自動預け払い機(以下、ATMと称する。)について説明する。また、紙葉類の一例として紙幣を用いる場合について説明する。図1は、ATMの主要部の構成を示すブロック図である。
【0016】
ATM1は、図1に示すように、主制御部2と、表示・操作ユニット3と、紙幣処理ユニット4と、硬貨処理ユニット5と、カード・明細書処理ユニット6と、通帳処理ユニット7と、通信ユニット8と、利用者検知ユニット10と、を備えている。このATM1は、金融機関の店舗やコンビニエンスストア等に設置され、利用者が要求する種別の取引(入金取引や出金取引等)を処理する。主制御部2は、各ユニットの動作を制御する。また、主制御部2は、利用者検知ユニット10から入力されている信号に基づいて、ATM1本体のモードを待機モードと実行モードとの間で切り替える。待機モードは、ATM1本体の一部の機能に対して動作電源の供給を停止し、ATM1本体における消費電力を抑制するモードである。実行モードは、利用者によって要求された処理を実行するモードである。
【0017】
表示・操作ユニット3は、本体前面に設けた表示器3a(不図示)、及びこの表示器3aの画面上に貼付したタッチパネル3b(不図示)を有している。表示・操作ユニット3は、利用者に対する操作案内画面を表示器3aに表示する。また、表示・操作ユニット3は、タッチパネル3bの押下位置を検知することにより、暗証番号や取引内容(取引種別、入出金金額等)にかかる利用者の入力操作を受け付ける。また、表示・操作ユニット3は、利用者の生体情報(指紋、指静脈、掌紋等)を読み取る生体情報読取部等を有していても良い。
【0018】
紙幣処理ユニット4は、本体前面に設けた紙幣入出金口4a(不図示)と、本体内部に設けられている金種別紙幣カートリッジ(不図示)と、の間に形成された紙幣搬送路に沿って紙幣を搬送する紙幣搬送部(不図示)を有している。また、紙幣処理ユニット4は、紙幣搬送路に沿って搬送されている紙幣毎に、金種(紙幣の種類)、及び真偽を識別する紙幣識別部(不図示)を有している。硬貨処理ユニット5は、本体前面に設けた硬貨入出金口5a(不図示)と、本体内部に収納されている金種別硬貨カートリッジ(不図示)と、の間に形成された硬貨搬送路に沿って硬貨を搬送する硬貨搬送部(不図示)を有している。また、硬貨処理ユニット5は、硬貨搬送路に沿って搬送している硬貨毎に、金種、及び真偽を識別する硬貨識別部(不図示)を有している。紙幣処理ユニット4は、本発明の紙幣処理装置に相当する。
【0019】
カード・明細書処理ユニット6は、本体前面に設けたカード挿入口6a(不図示)に挿入されたカードを取り込み、このカードに記録されているカード情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)の読み取りや、カード情報の書き換え等を行う。カード・明細書処理ユニット6は、磁気カードを処理する構成であっても良いし、ICカードを処理する構成であっても良いし、両方のカード(磁気カード、及びICカード)を処理する構成であっても良い。また、カード・明細書処理ユニット6は、取引内容を明細書に印字する印字部(不図示)を有する。カード・明細書処理ユニット6は、取引内容を印字した明細書を本体前面に設けた明細書放出口6b(不図示)に放出する。
【0020】
通帳処理ユニット7は、本体前面に設けた通帳挿入口7a(不図示)に挿入された通帳を取り込み、この通帳に対して取引履歴を印字する印字部(不図示)を有している。また、通帳処理ユニット7は、取り込んだ通帳のページを捲るページ捲り機構や、通帳に印刷されているページ番号を示すバーコードを読み取るバーコードリーダ、通帳に貼付されている磁気ストライプに記録されている通帳情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)を読み取る磁気ヘッド等も有している。通信ユニット8は、センタに設置されている上位装置(不図示)との間におけるデータ通信を制御する。
【0021】
利用者検知ユニット10は、ATM1本体の利用者を検知する。利用者検知ユニット10は、ATM1本体の天板に取り付ける構成としても、ATM1本体に内蔵する構成としても良い。
【0022】
次に、紙幣処理ユニット4における紙幣の搬送について簡単に説明しておく。図2は、ATMの内部に形成されている紙幣搬送路を示す概略図である。ATM1の下部には、金種別に紙幣を収納する紙幣カートリッジ(紙葉類カートリッジ)21(21a〜21d)や、不良紙幣を回収する回収カートリッジ22が収納される。紙幣カートリッジ21、及び回収カートリッジ22は、ATM1本体に対して着脱自在に構成されている。また、ATM1の上部には、紙幣を一時的に保留する一時保留部23、紙幣入出金口に設けられた入出金紙幣保留部24、紙幣の金種及び紙幣の真偽を識別する紙幣識別部25が設けられている。紙幣搬送路20は、紙幣カートリッジ21、回収カートリッジ22、一時保留部23、入出金紙幣保留部24、紙幣識別部25を結んでいる。紙幣処理ユニット4は、紙幣搬送路20の分岐点に設けたゲート26(26a〜26f)を制御し、紙幣搬送路20上を搬送されている紙幣の搬送先(搬送経路)を切り替える。
【0023】
また、紙幣処理ユニット4は、紙幣搬送路20に沿って配置した複数のセンサにより、紙幣搬送路20上を搬送している紙幣の有無や、紙幣の傾きを検知する。このセンサは、例えば、紙幣搬送路20を挟んで、発光部と、受光部と、を対向させて配置した透過型の光センサである。紙幣搬送路20は、駆動源であるモータ(不図示)によって駆動される。
【0024】
次に、入金紙幣、及び出金紙幣の搬送経路について、簡単に説明しておく。入金紙幣は、入出金紙幣保留部24から1枚ずつ繰り出され、紙幣搬送路20に沿って紙幣識別部25に搬送され、金種や真偽が識別される。紙幣識別部25で金種、及び真券であることが識別された紙幣は、紙幣搬送路20に沿って一時保留部23に搬送される。一方、紙幣識別部25で金種、及び真券であることが識別されなかった紙幣は、紙幣搬送路20に沿って入出金紙幣保留部24に戻される。一時保留部23に保留した紙幣は、取引の終了後、この一時保留部23から1枚ずつ繰り出され、紙幣搬送路20に沿って紙幣識別部25に搬送され、再度金種や真偽が識別される。その後、紙幣搬送路20に沿って、該当する金種の紙幣カートリッジ21に搬送される。
【0025】
また、出金紙幣は、紙幣カートリッジ21から繰り出される。紙幣カートリッジ21から繰り出された出金紙幣は、紙幣搬送路20に沿って紙幣識別部25に搬送され、この紙幣識別部25で金種や真偽が識別される。紙幣識別部25で金種、及び真券であることが識別された紙幣は、紙幣搬送路20に沿って入出金紙幣保留部24に搬送され、それ以外の紙幣は一時保留部23に搬送される。その後、一時保留部23の紙幣(紙幣識別部25で金種、及び真券であることが識別されなかった紙幣)は、紙幣搬送路20を逆転させ、回収カートリッジ22に搬送される。
【0026】
次に、紙幣識別部25の具体的な構成について説明する。図3は、紙幣識別部の主要部の構成を示すブロック図である。紙幣識別部25は、本発明の記番号認識装置に相当する。
【0027】
紙幣識別部25は、制御部30、ROM31、RAM32、撮像部33、金種判別部34、切り出し部35、選択部36、不要領域除去部37、及び文字認識部38を備えている。
【0028】
制御部30は、紙幣識別部25全体の制御を行う。ROM31は、不揮発性メモリであり、制御部30が使う制御プログラム、金種を判別するためのテンプレート画像(ATMで取り扱う複数の金種の紙幣を撮影した画像)、及び金種毎の記番号領域の位置とサイズなどを格納している。RAM32は、揮発性メモリであり、制御部30が使う変数や撮像部33が撮像したカラー画像などを格納している。撮像部33は、紙葉類のカラー画像を撮像する。金種判別部34は、紙幣の金種と向き(方向)を判別する。切り出し部35は、紙幣の金種と向きの情報に基づいて記番号領域を特定し、紙葉類全体のカラー画像の中から記番号領域のカラー画像(記番号画像)を切り出す。選択部36は、記番号領域のカラー画像から、各画素の色情報と紙幣の種類情報に基づいて決定した特定の色の画素を選択することにより文字の画素を抽出する。不要領域除去部37は、選択後の画像に対して不要領域の除去を行う。文字認識部38は、文字が抽出された画像を基に記番号の文字を認識する。
【0029】
図4は、紙幣の記番号の一例を示す外観図である。一般的に、紙幣には、少なくとも1箇所に記番号が印刷されている。図4に示す紙幣40には、1箇所に記番号41が印刷されている。なお、図4に示すように、記番号及び記番号の周囲の背景を含む領域を記番号領域42と称する。また、図4には、英数字を組み合わせた記番号を例示したが、英数字に限らず紙幣を特定できる記号や文字などが使用される。
【0030】
図5は、撮像部における紙幣の画像の撮像時の状態を示す側面図である。撮像部33は、白色光を照射するランプ330A及びランプ330Bと、カラー画像を撮像するラインセンサ331A及びラインセンサ331Bと、を備えている。図5において、紙幣40は、搬送部20(不図示)を矢印45の方向に搬送されている。ランプ330Aは紙幣40の上面全体を照射し、紙幣40から反射された光をラインセンサ331Aで受光する。ラインセンサ331Aが出力したカラー画像のデータは1ライン分であるが、紙幣40が搬送されるにつれてラインセンサ331Aが順次紙幣40の画像を撮像するように設定することで、結果として2次元の画像が得られる。また、紙幣40の下面は、ランプ330Bとラインセンサ331Bの組により撮像されて、上面と同様に2次元の画像が得られる。
【0031】
ここで、紙幣は、金種毎に記番号が印刷されている位置や面が決まっている。例えば、日本の紙幣は、一方の面のみに記番号が印刷されており、他方の面には記番号は印刷されていない。そこで、図5に示した撮像部33は、紙幣のどちらの面が上になって搬送されても良いように、紙幣40の上側と下側に対して画像を撮像する構成を配している。しかし、外国の紙幣で両面に記番号が印刷されているものを扱う場合には、片側だけに画像を撮像する構成を配置しても構わない。また、日本の紙幣など片面だけに記番号が印刷されている紙葉類を扱う装置でも、紙葉類の面の向きを固定して扱える場合には、片側だけにランプ及びラインセンサを配しても構わない。また、ラインセンサに替えて2次元イメージセンサを使っても構わない。この場合、搬送中の紙葉類を1回〜数回に分けて撮像して、紙葉類全体の画像を得るように構成すれば良い。
【0032】
次に、本発明では、記番号を正しく文字認識するために、以下に説明するような方法で記番号を抽出する。
【0033】
[第1の画素選択処理]
紙幣識別部25では、撮像部33が紙幣40のカラー画像を撮像すると、金種判別部34がROM31からテンプレート画像を読み出し、撮像した画像と比較して紙幣の金種を判別する。続いて、切り出し部35がこの判別した金種情報に基づいて記番号の位置情報をROM31から読み出し、この位置情報に対応する記番号領域を紙幣のカラー画像から切り出す。このとき、選択部36は、第1の画素選択処理として、記番号領域のカラー画像から金種毎に決められた範囲内の色である画素を選択することにより、文字の画素を抽出するように設定できる。
【0034】
例えば、画素毎に、R(赤)・G(緑)・B(青)の3つの明度について、金種毎に予め設定した範囲内であるかを確認する。選択した画素の明度が、赤の下限値RL≦R明度≦赤の上限値RH、且つ緑の下限値GL≦G明度≦緑の上限値GH、且つ青の下限値BL≦B明度≦青の上限値BHならば、選択後の画素値に元の画素値を代入する。一方、選択した画素の明度がいずれか一つでも範囲内に入らなければ(範囲外であれば)、選択後の画素値に各々255(最大値)を代入し、背景として白色に設定(置換)する。
【0035】
なお、選択した画素の明度が範囲内に入らない場合には、記番号を背景との色の違いがはっきりする色に変換すれば良い。例えば、紙幣の紙の色(媒体の色)に応じた色に変換すれば良く、紙幣の紙の色が白色の場合には、上記のように、背景として白色を設定する。
【0036】
この処理の具体例を図6に示す。図6は、記番号の抽出結果を示す図である。図6(A)は、切り出し部35により切り出された記番号領域42の画像である。本来はカラー画像であるが、紙面の都合によりグレー画像で表現されている。記番号「EL956293YC」は赤色のインクにより印刷されている。記番号の周囲の背景には水色基調で種々の線画が印刷されている。
【0037】
図6(B)は、図6(A)に示したカラー画像をグレー画像に変換し、さらに2値化した画像である。このように、画素の選択を行わずに記番号領域全体を2値化すると、右から4つ目の文字「9」の一部が切れていたり、左の先頭からの4文字「EL95」の周囲には記番号の文字以外に背景の線や点が残ってしまったりする。このような画像を文字認識しても精度が悪く、正しく文字認識できない可能性がある。
【0038】
図6(C)は、図6(A)に対して画素の選択処理を行った画像である。文字色が赤なので、文字部分ではG明度とB明度は非常に小さいため、緑の上限値GHと青の上限値BHはかなり小さな値に設定されている。一方、背景は水色基調であるため、B明度が青の上限値BHより大きく、白色に変換されている。背景だけが白色に変換された結果、文字列のみが抽出されており、正しく文字認識を行うことができる。
【0039】
なお、図6(C)に示したように抽出した画素を、図6(D)に示すように2値化しても良い。これにより、文字列の色と背景色との明暗がはっきりするので、文字認識の精度が向上する。
【0040】
以上のように、文字色と背景色が異なる金種について記番号の文字認識を行う際には、画素をその明度に応じて選択することで、記番号の文字を正確に抽出できる。
【0041】
[第2の画素選択処理]
切り出し部35が切り出した記番号領域のカラー画像について、選択部36は、第2の画素の選択処理として、予め設定した固有ベクトルと明度を線形結合した値を演算し、この値が金種毎に定めた範囲内である画素を選択することにより文字の画素を抽出するように設定できる。
【0042】
例えば、予め定めた判定用の固有ベクトルを(WR,WG,WB)で、画素の明度を(RS,GS,BS)とすると、判定用ベクトルと画素の明度を線形結合させた値である特徴量Fは、F=WR*RS+WG*GS+WB*BSとなる。この特徴量Fが、金種毎に予め設定した範囲内であるかを確認する。特徴量Fが、閾値WL≦F≦閾値WHならば、選択後の画素値に元の画素値を代入する。一方、選択した画素の明度がいずれか一つでも範囲内に入らなければ、選択後の画素値に各々255(最大値)を代入し、背景としての白色を設定する。
【0043】
なお、第1の画素選択処理と同様に、選択した画素の明度が範囲内に入らない場合には、記番号を背景との色の違いがはっきりする色に変換すれば良い。
【0044】
この処理の具体例を図7に示す。図7は、画素を選択する2つの処理方法を対比説明するための図である。図7(A)は、明度が特定範囲内の画素を選択する第1の画素選択処理方法であり、図7(B)は、第2の画素選択処理方法である。
【0045】
図7(A)には、RとGを軸とした空間において、文字部分の画素を○でプロットし、背景色Aの模様の画素を□でプロットし、背景色Bの模様の画素を△でプロットしている。なお、図7に示すデータは、実際にはRGBの3次元データであるが、ここでは説明の簡単のためにRGの2次元データとして扱う。文字色と背景色Aと背景色Bが似通っているので、閾値RH,RL,GH,GLでは、記番号の文字だけでなく背景の一部も選択してしまうことを示している。つまり、赤の上限値RH,赤の下限値RL,緑の上限値GH,緑の下限値GLで囲まれた判別範囲内(矩形の内側)が、文字色画素として判定されるが、背景色Aの画素群の一部分がこの判別範囲内(矩形内)に含まれており、これらの画素は背景でありながら文字を構成する画素として判定される。また、背景色Bの画素群の一部分がこの判別範囲内(矩形内)に含まれており、これらの画素も背景でありながら文字の構成する画素として判定される。そのため、文字認識は可能であるが、認識精度が若干低下する。
【0046】
一方、図7(B)に示す本処理方法では、RG空間ではなく、固有ベクトル(WR0,WG0)と画素の明度で線形結合された軸と、固有ベクトル(WR1,WG1)で線形結合された軸と、で表された空間に投影されている。特徴量F0は、F0=WR0*RS+WG0*GS、特徴量F1は、F1=WR1*RS+WG1*GSである。この場合、閾値WH0,閾値WL0,閾値WH1,閾値WL1で囲まれた判別範囲内(矩形内)には、背景色Aと背景色Bの画素は含まれておらず、文字の画素のみが含まれている。そのため、本処理方法を用いることで、記番号の文字を構成する画素のみを抽出できる。
【0047】
この処理方法で記番号の文字のみを抽出するためには、実験などを行って予め金種毎にサンプリングした紙幣の複数のデータに基づいて、固有ベクトルと閾値を適切に設定すれば良い。これにより、文字の抽出精度が向上する。
【0048】
なお、紙葉類の種類によっては、背景に複数の色で模様が描かれている場合には、文字色を複数の色に対して分離するように構成すれば良い。
【0049】
[不要領域除去処理]
次に、上記のように第1の画素選択処理または第2の画素選択処理を行うことで、記番号の文字を抽出することができる。しかし、記番号の文字色と、記番号領域の背景色と、が同系色の場合には、背景の模様も抽出することがある。そこで、このような場合には、第1の画素選択処理または第2の画素選択処理の後に、以下に説明する不要領域除去処理(変換処理)を行うように構成すると良い。
【0050】
図3に示した不要領域除去部37は、メディアンフィルタを備えており、このメディアンフィルタにより、選択部36が選択した各画素に対して不要領域の除去(変換)処理を行う。周知のように、メディアンフィルタは、注目画素とその周辺の画素から成るn×n個の画素に割り当てられた値(例えば明度)をソートして、その中央値を、注目画素の値と置き換える手法であり、この方法により背景の模様など、不要なノイズ成分を除去(消去)することができる。
【0051】
この処理の具体例を図8に示す。図8は、記番号の不要領域の除去処理結果を示す図である。図8(A)は、切り出し部35により切り出された記番号領域の一部の画像である。本来はカラー画像であるが、紙面の都合によりグレー画像で表現されている。記番号「AL8」が赤色のインクで印刷されている。また、この記番号の周囲の背景は同系色であり、明るい赤色調である。
【0052】
図8(B)は、図8(A)に対して画素の選択処理を行った結果の画像である。上記のように文字色と背景色が同形色であるため、画素の選択処理を行っても、文字部分のみを抽出できず、背景の模様も抽出している。特に文字「A」の周囲に文字以外の模様が残っている。
【0053】
図8(C)は、図8(B)に対して不要領域の除去処理を行った画像である。図8(C)に示す画像は、5×5のメディアンフィルタで画像処理しており、図8(B)に見られた小さな斑点状の模様が消えている。
【0054】
図8(D)は、図8(C)に示す画像を2値化処理した画像である。メディアンフィルタでの画像処理後に、画像を2値化することで、記番号の文字列の色と背景色との明暗をはっきりさせることができる。
【0055】
このように、記番号の文字色と背景色が似ていても、選択処理の後に不要領域の除去処理を行うことで、記番号の文字のみを抽出できる。
【0056】
次に、ATM1では、第1の画素選択処理、第2の画素選択処理、及び不要領域除去処理を行うために、ROM31で、紙幣の金種毎にテーブルを記憶している。図9は、第1の画素選択処理、第2の画素選択処理、及び不要領域除去処理用のデータが記録されたテーブルの一例である。
【0057】
図9(A)は、第1の画素選択処理用のテーブルの一例である。図9(A)において、方向とは、搬送路を搬送される紙幣の向きのことである。紙幣の向きは、搬送方向に向かう側を上とすると、紙幣の左辺が上の場合・右辺が上の場合・上辺が上の場合・下辺が上の場合の4通りがある。これらをそれぞれ方向0・方向1・方向2・方向3と称する。また、各金種毎及び各方向毎に切り出しに使う領域開始X座標・領域開始Y座標・領域サイズX座標・領域サイズY座標、及び各金種毎の選択に使うR(赤)・G(緑)・B(青)の各明度の上限値と下限値(R上限値・R下限値・G上限値・G下限値・B上限値・B下限値)が格納されている。
【0058】
また、図9(B)は、第2の画素選択処理用のデータテーブルの一例である。図9(A)と異なる部分のみ説明する。判定個数は、1画素について判定に用いる判定式の個数である。図9(B)に示す例では2個が設定されている。係数セット0は、最初の判定式に使う固有ベクトル(WR0,WG0,WB0)である。これら固有ベクトルと画素の明度との線形結合により特徴量0が求められる。WH0とWL0は特徴量0の判定用の閾値(上限値と下限値)である。同様に、(WR1,WG1,WB1),WH1,WL1は特徴量1を求めるために使用する固有ベクトルと、特徴量1の判定用の閾値(上限値と下限値)である。
【0059】
図9(C)は、不要領域除去処理用のテーブルの一例である。図9(A)と異なる部分のみ説明する。メディアンフィルタ使用フラグは、メディアンフィルタ処理の実行の可否が設定されている。また、メディアンフィルタ処理において、金種毎に異なるパラメータを設定できるようになっている。例えば、フィルタの大きさ(3×3,5×5など)や、中央値ではなくソート後の前からN番目を選択して置換するなど、紙幣の特徴に応じたパラメータを設定可能である。
【0060】
次に、ATM1の識別部の動作について説明する。図10は、紙幣識別部の動作を説明するためのフローチャートである。図11は、第1の画素選択処理を説明するためのフローチャートである。図12は、第2の画素選択処理を説明するためのフローチャートである。
【0061】
ATM1の紙幣入出金口4aから1枚ずつ紙幣が繰り出され、紙幣識別部25まで搬送されると、制御部30は、紙葉類検知センサ(不図示)により紙葉類の到来を検知し、撮像部33(ランプ330A、ランプ330B、ラインセンサ331A、及びラインセンサ331B)により紙幣40のカラー画像を撮像する(s1)。
【0062】
続いて、制御部30は、金種判別部34に撮像部33が撮像したカラー画像を出力して、紙葉類の金種と向き(方向)を判別させて、これらの情報を取得する(s2)。制御部30は、ROM31に格納されているテーブルを参照し、取得した金種と方向の情報に対応した記番号領域42の開始位置とサイズの情報を読み出して、切り出し部35により記番号領域をカラー画像から切り出す(s3)。
【0063】
制御部30は、選択部36により、切り出した記番号領域のカラー画像から、文字部分の色成分に着目し、文字部分を選択して抽出する(s4)。具体的には、制御部30は、ステップs3で参照したテーブルに図9(A)に示したようにR・G・Bの上限値と下限値が記載されている場合には、図11に示す第1の画素選択処理を行う。一方、制御部30は、ステップs3で参照したテーブルに図9(B)に示したように固有ベクトルと特徴量の上限値と下限値が記載されている場合には、図12に示す第2の画素選択処理を行う。
【0064】
第1の画素選択処理を行う場合には、以下の手順で行う。図11に示すように、選択処理においては、まず切り出された記番号領域のカラー画像から1画素分のR明度・G明度・B明度を取り出す(s11)。次にテーブルから読み出した閾値(RH,RL,GH,GL,BH,BL)の範囲内であるかを確認する(s12)。
【0065】
もし、RL≦R明度≦RH、且つGL≦G明度≦GH、且つGL≦G明度≦GHならば(s12:Y)、選択後の画素値に元の画素値を代入する(s13)。一方、もし前記条件が成り立たなければ(s12:N)、選択後の画素値に各々255(最大値)を代入し、背景としての白色を設定する(s14)。
【0066】
続いて、全ての画素に対して処理が終わったかチェックし(s15)、まだ終了してなければ次の画素の処理に移り(s11)、終了していれば選択処理を終える。
【0067】
また、第2の画素選択処理を行う場合には、以下の手順で行う。図12に示すように、まず切り出された記番号領域のカラー画像から1画素分のR明度・G明度・B明度を取り出す(s21)。次に、取り出した明度と、テーブルから読み出した固有ベクトルと、を線形結合させ、特徴量F=WR*RS+WG*GS+WB*BSを求め(s22)、この特徴量Fに対して、判定式WL≦F≦WHを判定する(s23)。全ての判定式での判定が終了したかチェックし(s24)、終了していなければ(s24:N)、次の特徴量を求め(s21)、全ての判定式が終了していれば(s24:Y)、全ての判定式が真であったのかをチェックする(s25)。全ての判定式が真であったなら(s25:Y)、選択後の画素値に元の画素値を代入する(s26)。一方、もし判定式が一つでも偽であったならば(s25:N)、選択後の画素値に各々255(最大値)を代入し、背景としての白色を設定する(s27)。
【0068】
続いて、全ての画素に対して処理が終わったかチェックし(s28)、まだ終了してなければ(s28:N)、次の画素の処理に移り(s21)、終了していれば(s28:Y)、選択処理を終了する。
【0069】
なお、選択後の画素値もカラー画像として扱ったが、グレー画像や2値画像に変換しても構わない。これは、後処理においてどのような画像表現で処理するかによって決めれば良い。
【0070】
図10に示したフローチャートに示したように、ステップs4の処理を終了すると、続いて、制御部30は、不要領域除去処理を行う必要があるか否かを、ROM21に設定されている金種毎のテーブルを参照して判定する(s5)。
【0071】
制御部30は、参照したテーブルのメディアンフィルタ使用フラグが「使用」となっていれば(s5:Y)、不要領域除去処理を行い(s6)、「不使用」となっていれば(s5:N)、不要領域除去処理を行わずに次のステップs7を実行する。
【0072】
制御部30は、上記の各画像処理によって得られた記番号の文字列について、文字認識部38により文字認識を行う(s7)。
【0073】
なお、文字認識には種々の周知の手法があるが、任意の手法で行えば良く、ここではその詳細な説明は省略する。
【0074】
以上のように、本発明では、記番号を認識する際に、紙幣の記番号が表示されている領域を切り出し、この領域の背景色や模様を消去して記番号の画像のみを抽出するので、確実に文字認識を行うことができる。また、記番号に基づいて真券と偽造券を容易に判別できる。
【0075】
なお、以上の説明では、紙葉類の一例として紙幣を用いる場合を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、くじ、チケット、有価証券など記番号が表記されている他の紙葉類を用いることも、当然可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…ATM 2…主制御部 4a…紙幣入出金口 20…紙幣搬送路(搬送部) 21…ROM 21…紙幣カートリッジ 22…回収カートリッジ 23…一時保留部 24…入出金紙幣保留部 25…紙幣識別部 30…制御部 31…ROM 32…RAM 33…撮像部 34…金種判別部 35…切り出し部 36…選択部 37…不要領域除去部 38…文字認識部
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類に表記された記番号を認識する記番号認識装置、紙葉類処理装置、自動取引処理装置、及び記番号認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の光源及びイメージセンサを備え、背景色をドロップアウトする色の光源を、金種情報に従い選択的に駆動する記番号識別装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−213560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、紙幣は金種毎に背景色が異なる場合が多い。そのため、特許文献1に記載の発明では、金種に応じた光源を選択するために、まず、繰出し部から紙幣を繰り出して、金種識別部を通過させて金種情報と方向情報を取得し、その紙幣を一時保留部に集積する。続いて、紙幣を記番号読取部に搬送して金種に応じた光源を点灯させて、紙幣の記番号を読み取って記番号の認識処理を行う。このように、従来の記番号認識装置では、紙幣の記番号を読み取るまでに時間がかかるという問題があった。
【0005】
また、記番号を正しく認識するためには、紙幣の背景色に応じて複数色の光源を備える必要があり、コストがかかるという問題があった。
【0006】
また、今までの背景色と異なる紙幣が発行された場合、この金種の記番号を認識するためには、新たな色の光源を追加しなければならないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、紙葉類の記番号を確実に認識できる記番号認識装置、紙葉類処理装置、自動取引処理装置、及び記番号認識方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、撮像手段で紙葉類のカラー画像を撮像し、判別手段でこのカラー画像から紙葉類の種類と向きを判別する。そして、選択手段で、紙葉類の種類と向きの情報に基づいて記番号が表記されている記番号領域を特定し、この領域の画像から、紙葉類の種類情報に基づいて決定した色の画素のみを選択して、選択した画素から成る画像に対して文字認識手段で文字認識を行う。紙葉類によって、記番号や記番号の周囲の背景色や模様が異なるが、紙葉類の種類の情報に基づいて記番号の色は特定できるので、この情報を用いて記番号に相当する画素のみを選択することができ、記番号の文字列を確実に抽出できる。
【0009】
また、本発明では、選択手段は、記番号領域の画像を構成する画素毎に、その画素についてR・G・Bの各明度を取得し、これら各明度に基づく値が閾値の範囲内であれば、その画素を選択する。画素の各明度が閾値の範囲内の場合には、その画素は記番号の文字列を構成する画素である。したがって、紙葉類の印刷によるばらつきや紙葉類の使用による劣化などで、紙葉類の記番号や背景色に幅がある場合でも、記番号を確実に抽出して文字認識を行うことができる。
【0010】
また、本発明では、選択手段は、記番号領域の画像を構成する画素毎に、その画素についてR・G・Bの各明度を取得し、取得したR・G・Bの各明度と紙葉類の種類毎にそれぞれ定義された固有ベクトルとを線形結合した値を算出し、その値が閾値の範囲内であれば選択する。線形結合した値が閾値の範囲内の場合には、その画素は記番号の文字列を構成する画素である。したがって、紙葉類の印刷によるばらつきや紙葉類の使用による劣化などで、紙葉類の記番号や背景色に幅がある場合でも、記番号を確実に抽出して文字認識を行うことができる。
【0011】
また、本発明では、選択手段は、R・G・Bの各明度に基づく値が前記閾値の範囲外であれば、予め設定した別の明度に置換する。画素の各明度または線形結合した値が閾値の範囲外の場合には、その画素は記番号の文字列を構成する画素ではなく、背景の画素である。したがって、記番号の背景の画素を全て予め設定した別の明度に置換することで、記番号の文字列のみを抽出できる。
【0012】
また、本発明では、不要領域除去手段は、選択手段が選択した画素から成る画像に対して、メディアンフィルタにより画像処理を行って不要な画素を除去する。メディアンフィルタにより画像処理を行うと細かい点などのノイズ成分を除去できる。したがって、選択手段により選択された画像に不要な画素が含まれている場合には、不要領域除去手段で画像処理を行うことで、記番号の文字列を確実に抽出できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、記番号の文字列を確実に抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ATMの主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】ATMの内部に形成されている紙幣搬送路を示す概略図である。
【図3】紙幣識別部の主要部の構成を示すブロック図である。
【図4】紙幣の記番号の一例を示す外観図である。
【図5】撮像部における紙幣の画像の撮像時の状態を示す側面図である。
【図6】記番号の抽出結果を示す図である。
【図7】画素を選択する2つの処理方法を対比説明するための図である。
【図8】記番号の不要領域の除去処理結果を示す図である。
【図9】第1の画素選択処理、第2の画素選択処理、及び不要領域除去処理用のデータが記録されたテーブルの一例である。
【図10】紙幣識別部の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】第1の画素選択処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】第2の画素選択処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明では、自動取引処理装置の一例として現金自動預け払い機(以下、ATMと称する。)について説明する。また、紙葉類の一例として紙幣を用いる場合について説明する。図1は、ATMの主要部の構成を示すブロック図である。
【0016】
ATM1は、図1に示すように、主制御部2と、表示・操作ユニット3と、紙幣処理ユニット4と、硬貨処理ユニット5と、カード・明細書処理ユニット6と、通帳処理ユニット7と、通信ユニット8と、利用者検知ユニット10と、を備えている。このATM1は、金融機関の店舗やコンビニエンスストア等に設置され、利用者が要求する種別の取引(入金取引や出金取引等)を処理する。主制御部2は、各ユニットの動作を制御する。また、主制御部2は、利用者検知ユニット10から入力されている信号に基づいて、ATM1本体のモードを待機モードと実行モードとの間で切り替える。待機モードは、ATM1本体の一部の機能に対して動作電源の供給を停止し、ATM1本体における消費電力を抑制するモードである。実行モードは、利用者によって要求された処理を実行するモードである。
【0017】
表示・操作ユニット3は、本体前面に設けた表示器3a(不図示)、及びこの表示器3aの画面上に貼付したタッチパネル3b(不図示)を有している。表示・操作ユニット3は、利用者に対する操作案内画面を表示器3aに表示する。また、表示・操作ユニット3は、タッチパネル3bの押下位置を検知することにより、暗証番号や取引内容(取引種別、入出金金額等)にかかる利用者の入力操作を受け付ける。また、表示・操作ユニット3は、利用者の生体情報(指紋、指静脈、掌紋等)を読み取る生体情報読取部等を有していても良い。
【0018】
紙幣処理ユニット4は、本体前面に設けた紙幣入出金口4a(不図示)と、本体内部に設けられている金種別紙幣カートリッジ(不図示)と、の間に形成された紙幣搬送路に沿って紙幣を搬送する紙幣搬送部(不図示)を有している。また、紙幣処理ユニット4は、紙幣搬送路に沿って搬送されている紙幣毎に、金種(紙幣の種類)、及び真偽を識別する紙幣識別部(不図示)を有している。硬貨処理ユニット5は、本体前面に設けた硬貨入出金口5a(不図示)と、本体内部に収納されている金種別硬貨カートリッジ(不図示)と、の間に形成された硬貨搬送路に沿って硬貨を搬送する硬貨搬送部(不図示)を有している。また、硬貨処理ユニット5は、硬貨搬送路に沿って搬送している硬貨毎に、金種、及び真偽を識別する硬貨識別部(不図示)を有している。紙幣処理ユニット4は、本発明の紙幣処理装置に相当する。
【0019】
カード・明細書処理ユニット6は、本体前面に設けたカード挿入口6a(不図示)に挿入されたカードを取り込み、このカードに記録されているカード情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)の読み取りや、カード情報の書き換え等を行う。カード・明細書処理ユニット6は、磁気カードを処理する構成であっても良いし、ICカードを処理する構成であっても良いし、両方のカード(磁気カード、及びICカード)を処理する構成であっても良い。また、カード・明細書処理ユニット6は、取引内容を明細書に印字する印字部(不図示)を有する。カード・明細書処理ユニット6は、取引内容を印字した明細書を本体前面に設けた明細書放出口6b(不図示)に放出する。
【0020】
通帳処理ユニット7は、本体前面に設けた通帳挿入口7a(不図示)に挿入された通帳を取り込み、この通帳に対して取引履歴を印字する印字部(不図示)を有している。また、通帳処理ユニット7は、取り込んだ通帳のページを捲るページ捲り機構や、通帳に印刷されているページ番号を示すバーコードを読み取るバーコードリーダ、通帳に貼付されている磁気ストライプに記録されている通帳情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)を読み取る磁気ヘッド等も有している。通信ユニット8は、センタに設置されている上位装置(不図示)との間におけるデータ通信を制御する。
【0021】
利用者検知ユニット10は、ATM1本体の利用者を検知する。利用者検知ユニット10は、ATM1本体の天板に取り付ける構成としても、ATM1本体に内蔵する構成としても良い。
【0022】
次に、紙幣処理ユニット4における紙幣の搬送について簡単に説明しておく。図2は、ATMの内部に形成されている紙幣搬送路を示す概略図である。ATM1の下部には、金種別に紙幣を収納する紙幣カートリッジ(紙葉類カートリッジ)21(21a〜21d)や、不良紙幣を回収する回収カートリッジ22が収納される。紙幣カートリッジ21、及び回収カートリッジ22は、ATM1本体に対して着脱自在に構成されている。また、ATM1の上部には、紙幣を一時的に保留する一時保留部23、紙幣入出金口に設けられた入出金紙幣保留部24、紙幣の金種及び紙幣の真偽を識別する紙幣識別部25が設けられている。紙幣搬送路20は、紙幣カートリッジ21、回収カートリッジ22、一時保留部23、入出金紙幣保留部24、紙幣識別部25を結んでいる。紙幣処理ユニット4は、紙幣搬送路20の分岐点に設けたゲート26(26a〜26f)を制御し、紙幣搬送路20上を搬送されている紙幣の搬送先(搬送経路)を切り替える。
【0023】
また、紙幣処理ユニット4は、紙幣搬送路20に沿って配置した複数のセンサにより、紙幣搬送路20上を搬送している紙幣の有無や、紙幣の傾きを検知する。このセンサは、例えば、紙幣搬送路20を挟んで、発光部と、受光部と、を対向させて配置した透過型の光センサである。紙幣搬送路20は、駆動源であるモータ(不図示)によって駆動される。
【0024】
次に、入金紙幣、及び出金紙幣の搬送経路について、簡単に説明しておく。入金紙幣は、入出金紙幣保留部24から1枚ずつ繰り出され、紙幣搬送路20に沿って紙幣識別部25に搬送され、金種や真偽が識別される。紙幣識別部25で金種、及び真券であることが識別された紙幣は、紙幣搬送路20に沿って一時保留部23に搬送される。一方、紙幣識別部25で金種、及び真券であることが識別されなかった紙幣は、紙幣搬送路20に沿って入出金紙幣保留部24に戻される。一時保留部23に保留した紙幣は、取引の終了後、この一時保留部23から1枚ずつ繰り出され、紙幣搬送路20に沿って紙幣識別部25に搬送され、再度金種や真偽が識別される。その後、紙幣搬送路20に沿って、該当する金種の紙幣カートリッジ21に搬送される。
【0025】
また、出金紙幣は、紙幣カートリッジ21から繰り出される。紙幣カートリッジ21から繰り出された出金紙幣は、紙幣搬送路20に沿って紙幣識別部25に搬送され、この紙幣識別部25で金種や真偽が識別される。紙幣識別部25で金種、及び真券であることが識別された紙幣は、紙幣搬送路20に沿って入出金紙幣保留部24に搬送され、それ以外の紙幣は一時保留部23に搬送される。その後、一時保留部23の紙幣(紙幣識別部25で金種、及び真券であることが識別されなかった紙幣)は、紙幣搬送路20を逆転させ、回収カートリッジ22に搬送される。
【0026】
次に、紙幣識別部25の具体的な構成について説明する。図3は、紙幣識別部の主要部の構成を示すブロック図である。紙幣識別部25は、本発明の記番号認識装置に相当する。
【0027】
紙幣識別部25は、制御部30、ROM31、RAM32、撮像部33、金種判別部34、切り出し部35、選択部36、不要領域除去部37、及び文字認識部38を備えている。
【0028】
制御部30は、紙幣識別部25全体の制御を行う。ROM31は、不揮発性メモリであり、制御部30が使う制御プログラム、金種を判別するためのテンプレート画像(ATMで取り扱う複数の金種の紙幣を撮影した画像)、及び金種毎の記番号領域の位置とサイズなどを格納している。RAM32は、揮発性メモリであり、制御部30が使う変数や撮像部33が撮像したカラー画像などを格納している。撮像部33は、紙葉類のカラー画像を撮像する。金種判別部34は、紙幣の金種と向き(方向)を判別する。切り出し部35は、紙幣の金種と向きの情報に基づいて記番号領域を特定し、紙葉類全体のカラー画像の中から記番号領域のカラー画像(記番号画像)を切り出す。選択部36は、記番号領域のカラー画像から、各画素の色情報と紙幣の種類情報に基づいて決定した特定の色の画素を選択することにより文字の画素を抽出する。不要領域除去部37は、選択後の画像に対して不要領域の除去を行う。文字認識部38は、文字が抽出された画像を基に記番号の文字を認識する。
【0029】
図4は、紙幣の記番号の一例を示す外観図である。一般的に、紙幣には、少なくとも1箇所に記番号が印刷されている。図4に示す紙幣40には、1箇所に記番号41が印刷されている。なお、図4に示すように、記番号及び記番号の周囲の背景を含む領域を記番号領域42と称する。また、図4には、英数字を組み合わせた記番号を例示したが、英数字に限らず紙幣を特定できる記号や文字などが使用される。
【0030】
図5は、撮像部における紙幣の画像の撮像時の状態を示す側面図である。撮像部33は、白色光を照射するランプ330A及びランプ330Bと、カラー画像を撮像するラインセンサ331A及びラインセンサ331Bと、を備えている。図5において、紙幣40は、搬送部20(不図示)を矢印45の方向に搬送されている。ランプ330Aは紙幣40の上面全体を照射し、紙幣40から反射された光をラインセンサ331Aで受光する。ラインセンサ331Aが出力したカラー画像のデータは1ライン分であるが、紙幣40が搬送されるにつれてラインセンサ331Aが順次紙幣40の画像を撮像するように設定することで、結果として2次元の画像が得られる。また、紙幣40の下面は、ランプ330Bとラインセンサ331Bの組により撮像されて、上面と同様に2次元の画像が得られる。
【0031】
ここで、紙幣は、金種毎に記番号が印刷されている位置や面が決まっている。例えば、日本の紙幣は、一方の面のみに記番号が印刷されており、他方の面には記番号は印刷されていない。そこで、図5に示した撮像部33は、紙幣のどちらの面が上になって搬送されても良いように、紙幣40の上側と下側に対して画像を撮像する構成を配している。しかし、外国の紙幣で両面に記番号が印刷されているものを扱う場合には、片側だけに画像を撮像する構成を配置しても構わない。また、日本の紙幣など片面だけに記番号が印刷されている紙葉類を扱う装置でも、紙葉類の面の向きを固定して扱える場合には、片側だけにランプ及びラインセンサを配しても構わない。また、ラインセンサに替えて2次元イメージセンサを使っても構わない。この場合、搬送中の紙葉類を1回〜数回に分けて撮像して、紙葉類全体の画像を得るように構成すれば良い。
【0032】
次に、本発明では、記番号を正しく文字認識するために、以下に説明するような方法で記番号を抽出する。
【0033】
[第1の画素選択処理]
紙幣識別部25では、撮像部33が紙幣40のカラー画像を撮像すると、金種判別部34がROM31からテンプレート画像を読み出し、撮像した画像と比較して紙幣の金種を判別する。続いて、切り出し部35がこの判別した金種情報に基づいて記番号の位置情報をROM31から読み出し、この位置情報に対応する記番号領域を紙幣のカラー画像から切り出す。このとき、選択部36は、第1の画素選択処理として、記番号領域のカラー画像から金種毎に決められた範囲内の色である画素を選択することにより、文字の画素を抽出するように設定できる。
【0034】
例えば、画素毎に、R(赤)・G(緑)・B(青)の3つの明度について、金種毎に予め設定した範囲内であるかを確認する。選択した画素の明度が、赤の下限値RL≦R明度≦赤の上限値RH、且つ緑の下限値GL≦G明度≦緑の上限値GH、且つ青の下限値BL≦B明度≦青の上限値BHならば、選択後の画素値に元の画素値を代入する。一方、選択した画素の明度がいずれか一つでも範囲内に入らなければ(範囲外であれば)、選択後の画素値に各々255(最大値)を代入し、背景として白色に設定(置換)する。
【0035】
なお、選択した画素の明度が範囲内に入らない場合には、記番号を背景との色の違いがはっきりする色に変換すれば良い。例えば、紙幣の紙の色(媒体の色)に応じた色に変換すれば良く、紙幣の紙の色が白色の場合には、上記のように、背景として白色を設定する。
【0036】
この処理の具体例を図6に示す。図6は、記番号の抽出結果を示す図である。図6(A)は、切り出し部35により切り出された記番号領域42の画像である。本来はカラー画像であるが、紙面の都合によりグレー画像で表現されている。記番号「EL956293YC」は赤色のインクにより印刷されている。記番号の周囲の背景には水色基調で種々の線画が印刷されている。
【0037】
図6(B)は、図6(A)に示したカラー画像をグレー画像に変換し、さらに2値化した画像である。このように、画素の選択を行わずに記番号領域全体を2値化すると、右から4つ目の文字「9」の一部が切れていたり、左の先頭からの4文字「EL95」の周囲には記番号の文字以外に背景の線や点が残ってしまったりする。このような画像を文字認識しても精度が悪く、正しく文字認識できない可能性がある。
【0038】
図6(C)は、図6(A)に対して画素の選択処理を行った画像である。文字色が赤なので、文字部分ではG明度とB明度は非常に小さいため、緑の上限値GHと青の上限値BHはかなり小さな値に設定されている。一方、背景は水色基調であるため、B明度が青の上限値BHより大きく、白色に変換されている。背景だけが白色に変換された結果、文字列のみが抽出されており、正しく文字認識を行うことができる。
【0039】
なお、図6(C)に示したように抽出した画素を、図6(D)に示すように2値化しても良い。これにより、文字列の色と背景色との明暗がはっきりするので、文字認識の精度が向上する。
【0040】
以上のように、文字色と背景色が異なる金種について記番号の文字認識を行う際には、画素をその明度に応じて選択することで、記番号の文字を正確に抽出できる。
【0041】
[第2の画素選択処理]
切り出し部35が切り出した記番号領域のカラー画像について、選択部36は、第2の画素の選択処理として、予め設定した固有ベクトルと明度を線形結合した値を演算し、この値が金種毎に定めた範囲内である画素を選択することにより文字の画素を抽出するように設定できる。
【0042】
例えば、予め定めた判定用の固有ベクトルを(WR,WG,WB)で、画素の明度を(RS,GS,BS)とすると、判定用ベクトルと画素の明度を線形結合させた値である特徴量Fは、F=WR*RS+WG*GS+WB*BSとなる。この特徴量Fが、金種毎に予め設定した範囲内であるかを確認する。特徴量Fが、閾値WL≦F≦閾値WHならば、選択後の画素値に元の画素値を代入する。一方、選択した画素の明度がいずれか一つでも範囲内に入らなければ、選択後の画素値に各々255(最大値)を代入し、背景としての白色を設定する。
【0043】
なお、第1の画素選択処理と同様に、選択した画素の明度が範囲内に入らない場合には、記番号を背景との色の違いがはっきりする色に変換すれば良い。
【0044】
この処理の具体例を図7に示す。図7は、画素を選択する2つの処理方法を対比説明するための図である。図7(A)は、明度が特定範囲内の画素を選択する第1の画素選択処理方法であり、図7(B)は、第2の画素選択処理方法である。
【0045】
図7(A)には、RとGを軸とした空間において、文字部分の画素を○でプロットし、背景色Aの模様の画素を□でプロットし、背景色Bの模様の画素を△でプロットしている。なお、図7に示すデータは、実際にはRGBの3次元データであるが、ここでは説明の簡単のためにRGの2次元データとして扱う。文字色と背景色Aと背景色Bが似通っているので、閾値RH,RL,GH,GLでは、記番号の文字だけでなく背景の一部も選択してしまうことを示している。つまり、赤の上限値RH,赤の下限値RL,緑の上限値GH,緑の下限値GLで囲まれた判別範囲内(矩形の内側)が、文字色画素として判定されるが、背景色Aの画素群の一部分がこの判別範囲内(矩形内)に含まれており、これらの画素は背景でありながら文字を構成する画素として判定される。また、背景色Bの画素群の一部分がこの判別範囲内(矩形内)に含まれており、これらの画素も背景でありながら文字の構成する画素として判定される。そのため、文字認識は可能であるが、認識精度が若干低下する。
【0046】
一方、図7(B)に示す本処理方法では、RG空間ではなく、固有ベクトル(WR0,WG0)と画素の明度で線形結合された軸と、固有ベクトル(WR1,WG1)で線形結合された軸と、で表された空間に投影されている。特徴量F0は、F0=WR0*RS+WG0*GS、特徴量F1は、F1=WR1*RS+WG1*GSである。この場合、閾値WH0,閾値WL0,閾値WH1,閾値WL1で囲まれた判別範囲内(矩形内)には、背景色Aと背景色Bの画素は含まれておらず、文字の画素のみが含まれている。そのため、本処理方法を用いることで、記番号の文字を構成する画素のみを抽出できる。
【0047】
この処理方法で記番号の文字のみを抽出するためには、実験などを行って予め金種毎にサンプリングした紙幣の複数のデータに基づいて、固有ベクトルと閾値を適切に設定すれば良い。これにより、文字の抽出精度が向上する。
【0048】
なお、紙葉類の種類によっては、背景に複数の色で模様が描かれている場合には、文字色を複数の色に対して分離するように構成すれば良い。
【0049】
[不要領域除去処理]
次に、上記のように第1の画素選択処理または第2の画素選択処理を行うことで、記番号の文字を抽出することができる。しかし、記番号の文字色と、記番号領域の背景色と、が同系色の場合には、背景の模様も抽出することがある。そこで、このような場合には、第1の画素選択処理または第2の画素選択処理の後に、以下に説明する不要領域除去処理(変換処理)を行うように構成すると良い。
【0050】
図3に示した不要領域除去部37は、メディアンフィルタを備えており、このメディアンフィルタにより、選択部36が選択した各画素に対して不要領域の除去(変換)処理を行う。周知のように、メディアンフィルタは、注目画素とその周辺の画素から成るn×n個の画素に割り当てられた値(例えば明度)をソートして、その中央値を、注目画素の値と置き換える手法であり、この方法により背景の模様など、不要なノイズ成分を除去(消去)することができる。
【0051】
この処理の具体例を図8に示す。図8は、記番号の不要領域の除去処理結果を示す図である。図8(A)は、切り出し部35により切り出された記番号領域の一部の画像である。本来はカラー画像であるが、紙面の都合によりグレー画像で表現されている。記番号「AL8」が赤色のインクで印刷されている。また、この記番号の周囲の背景は同系色であり、明るい赤色調である。
【0052】
図8(B)は、図8(A)に対して画素の選択処理を行った結果の画像である。上記のように文字色と背景色が同形色であるため、画素の選択処理を行っても、文字部分のみを抽出できず、背景の模様も抽出している。特に文字「A」の周囲に文字以外の模様が残っている。
【0053】
図8(C)は、図8(B)に対して不要領域の除去処理を行った画像である。図8(C)に示す画像は、5×5のメディアンフィルタで画像処理しており、図8(B)に見られた小さな斑点状の模様が消えている。
【0054】
図8(D)は、図8(C)に示す画像を2値化処理した画像である。メディアンフィルタでの画像処理後に、画像を2値化することで、記番号の文字列の色と背景色との明暗をはっきりさせることができる。
【0055】
このように、記番号の文字色と背景色が似ていても、選択処理の後に不要領域の除去処理を行うことで、記番号の文字のみを抽出できる。
【0056】
次に、ATM1では、第1の画素選択処理、第2の画素選択処理、及び不要領域除去処理を行うために、ROM31で、紙幣の金種毎にテーブルを記憶している。図9は、第1の画素選択処理、第2の画素選択処理、及び不要領域除去処理用のデータが記録されたテーブルの一例である。
【0057】
図9(A)は、第1の画素選択処理用のテーブルの一例である。図9(A)において、方向とは、搬送路を搬送される紙幣の向きのことである。紙幣の向きは、搬送方向に向かう側を上とすると、紙幣の左辺が上の場合・右辺が上の場合・上辺が上の場合・下辺が上の場合の4通りがある。これらをそれぞれ方向0・方向1・方向2・方向3と称する。また、各金種毎及び各方向毎に切り出しに使う領域開始X座標・領域開始Y座標・領域サイズX座標・領域サイズY座標、及び各金種毎の選択に使うR(赤)・G(緑)・B(青)の各明度の上限値と下限値(R上限値・R下限値・G上限値・G下限値・B上限値・B下限値)が格納されている。
【0058】
また、図9(B)は、第2の画素選択処理用のデータテーブルの一例である。図9(A)と異なる部分のみ説明する。判定個数は、1画素について判定に用いる判定式の個数である。図9(B)に示す例では2個が設定されている。係数セット0は、最初の判定式に使う固有ベクトル(WR0,WG0,WB0)である。これら固有ベクトルと画素の明度との線形結合により特徴量0が求められる。WH0とWL0は特徴量0の判定用の閾値(上限値と下限値)である。同様に、(WR1,WG1,WB1),WH1,WL1は特徴量1を求めるために使用する固有ベクトルと、特徴量1の判定用の閾値(上限値と下限値)である。
【0059】
図9(C)は、不要領域除去処理用のテーブルの一例である。図9(A)と異なる部分のみ説明する。メディアンフィルタ使用フラグは、メディアンフィルタ処理の実行の可否が設定されている。また、メディアンフィルタ処理において、金種毎に異なるパラメータを設定できるようになっている。例えば、フィルタの大きさ(3×3,5×5など)や、中央値ではなくソート後の前からN番目を選択して置換するなど、紙幣の特徴に応じたパラメータを設定可能である。
【0060】
次に、ATM1の識別部の動作について説明する。図10は、紙幣識別部の動作を説明するためのフローチャートである。図11は、第1の画素選択処理を説明するためのフローチャートである。図12は、第2の画素選択処理を説明するためのフローチャートである。
【0061】
ATM1の紙幣入出金口4aから1枚ずつ紙幣が繰り出され、紙幣識別部25まで搬送されると、制御部30は、紙葉類検知センサ(不図示)により紙葉類の到来を検知し、撮像部33(ランプ330A、ランプ330B、ラインセンサ331A、及びラインセンサ331B)により紙幣40のカラー画像を撮像する(s1)。
【0062】
続いて、制御部30は、金種判別部34に撮像部33が撮像したカラー画像を出力して、紙葉類の金種と向き(方向)を判別させて、これらの情報を取得する(s2)。制御部30は、ROM31に格納されているテーブルを参照し、取得した金種と方向の情報に対応した記番号領域42の開始位置とサイズの情報を読み出して、切り出し部35により記番号領域をカラー画像から切り出す(s3)。
【0063】
制御部30は、選択部36により、切り出した記番号領域のカラー画像から、文字部分の色成分に着目し、文字部分を選択して抽出する(s4)。具体的には、制御部30は、ステップs3で参照したテーブルに図9(A)に示したようにR・G・Bの上限値と下限値が記載されている場合には、図11に示す第1の画素選択処理を行う。一方、制御部30は、ステップs3で参照したテーブルに図9(B)に示したように固有ベクトルと特徴量の上限値と下限値が記載されている場合には、図12に示す第2の画素選択処理を行う。
【0064】
第1の画素選択処理を行う場合には、以下の手順で行う。図11に示すように、選択処理においては、まず切り出された記番号領域のカラー画像から1画素分のR明度・G明度・B明度を取り出す(s11)。次にテーブルから読み出した閾値(RH,RL,GH,GL,BH,BL)の範囲内であるかを確認する(s12)。
【0065】
もし、RL≦R明度≦RH、且つGL≦G明度≦GH、且つGL≦G明度≦GHならば(s12:Y)、選択後の画素値に元の画素値を代入する(s13)。一方、もし前記条件が成り立たなければ(s12:N)、選択後の画素値に各々255(最大値)を代入し、背景としての白色を設定する(s14)。
【0066】
続いて、全ての画素に対して処理が終わったかチェックし(s15)、まだ終了してなければ次の画素の処理に移り(s11)、終了していれば選択処理を終える。
【0067】
また、第2の画素選択処理を行う場合には、以下の手順で行う。図12に示すように、まず切り出された記番号領域のカラー画像から1画素分のR明度・G明度・B明度を取り出す(s21)。次に、取り出した明度と、テーブルから読み出した固有ベクトルと、を線形結合させ、特徴量F=WR*RS+WG*GS+WB*BSを求め(s22)、この特徴量Fに対して、判定式WL≦F≦WHを判定する(s23)。全ての判定式での判定が終了したかチェックし(s24)、終了していなければ(s24:N)、次の特徴量を求め(s21)、全ての判定式が終了していれば(s24:Y)、全ての判定式が真であったのかをチェックする(s25)。全ての判定式が真であったなら(s25:Y)、選択後の画素値に元の画素値を代入する(s26)。一方、もし判定式が一つでも偽であったならば(s25:N)、選択後の画素値に各々255(最大値)を代入し、背景としての白色を設定する(s27)。
【0068】
続いて、全ての画素に対して処理が終わったかチェックし(s28)、まだ終了してなければ(s28:N)、次の画素の処理に移り(s21)、終了していれば(s28:Y)、選択処理を終了する。
【0069】
なお、選択後の画素値もカラー画像として扱ったが、グレー画像や2値画像に変換しても構わない。これは、後処理においてどのような画像表現で処理するかによって決めれば良い。
【0070】
図10に示したフローチャートに示したように、ステップs4の処理を終了すると、続いて、制御部30は、不要領域除去処理を行う必要があるか否かを、ROM21に設定されている金種毎のテーブルを参照して判定する(s5)。
【0071】
制御部30は、参照したテーブルのメディアンフィルタ使用フラグが「使用」となっていれば(s5:Y)、不要領域除去処理を行い(s6)、「不使用」となっていれば(s5:N)、不要領域除去処理を行わずに次のステップs7を実行する。
【0072】
制御部30は、上記の各画像処理によって得られた記番号の文字列について、文字認識部38により文字認識を行う(s7)。
【0073】
なお、文字認識には種々の周知の手法があるが、任意の手法で行えば良く、ここではその詳細な説明は省略する。
【0074】
以上のように、本発明では、記番号を認識する際に、紙幣の記番号が表示されている領域を切り出し、この領域の背景色や模様を消去して記番号の画像のみを抽出するので、確実に文字認識を行うことができる。また、記番号に基づいて真券と偽造券を容易に判別できる。
【0075】
なお、以上の説明では、紙葉類の一例として紙幣を用いる場合を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、くじ、チケット、有価証券など記番号が表記されている他の紙葉類を用いることも、当然可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…ATM 2…主制御部 4a…紙幣入出金口 20…紙幣搬送路(搬送部) 21…ROM 21…紙幣カートリッジ 22…回収カートリッジ 23…一時保留部 24…入出金紙幣保留部 25…紙幣識別部 30…制御部 31…ROM 32…RAM 33…撮像部 34…金種判別部 35…切り出し部 36…選択部 37…不要領域除去部 38…文字認識部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って搬送されている紙葉類に表記されている記番号を認識する記番号認識装置において、
前記紙葉類のカラー画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像したカラー画像に基づいて前記紙葉類の種類と向きを判別する判別手段と、
前記判別手段が判別した紙葉類の種類と向きの情報に基づいて前記記番号が表記されている記番号領域を特定し、この領域の画像から前記紙葉類の種類情報に基づいて決定した色の画素のみを選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した画素から成る画像に対して文字認識する文字認識手段と、
を備えたことを特徴とする記番号認識装置。
【請求項2】
前記選択手段は、
前記記番号領域の画像から画素毎に、その画素について取得したR・G・Bの各明度に基づく値が、閾値の範囲内であれば選択する請求項1に記載の記番号認識装置。
【請求項3】
前記選択手段は、
前記記番号領域の画像から画素毎に、その画素について取得したR・G・Bの各明度と、紙葉類の種類毎にそれぞれ設定された固有ベクトルと、を線形結合した値を算出し、その値が閾値の範囲内であれば選択する請求項2に記載の記番号認識装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記R・G・Bの各明度に基づく値が前記閾値の範囲外であれば、予め設定した別の明度に置換する請求項2または3に記載の記番号認識装置。
【請求項5】
前記選択手段が選択した画素から成る画像に対して、メディアンフィルタにより画像処理を行って、不要な画素を除去する不要領域除去手段を備え、
前記文字認識手段は、不要領域除去手段が不要な画素を除去した画像に対して文字認識する請求項1乃至4のいずれかに記載の記番号認識装置。
【請求項6】
本体前面に設けられた入出金口と、本体内部に設けられた紙葉類カートリッジとの間で、入出金する紙葉類を搬送する紙幣処理装置において、
記番号が表記されている紙葉類のカラー画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像したカラー画像に基づいて紙葉類の種類と向きを判別する判別手段と、
前記判別手段が判別した紙葉類の種類と向きの情報に基づいて前記記番号が表記されている記番号領域を特定し、この領域の画像から前記紙葉類の種類情報に基づいて決定した色の画素のみを選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した画素から成る画像に対して文字認識する文字認識手段と、
を備えたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項7】
本体前面に設けられた入出金口と、本体内部に設けられた紙葉類カートリッジとの間で、入出金する紙葉類を搬送し、入出金取引を処理する自動取引処理装置において、
記番号が表記されている紙葉類のカラー画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像したカラー画像に基づいて紙葉類の種類と向きを判別する判別手段と、
前記判別手段が判別した紙葉類の種類と向きの情報に基づいて前記記番号が表記されている記番号領域を特定し、この領域の画像から前記紙葉類の種類情報に基づいて決定した色の画素のみを選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した画素から成る画像に対して文字認識する文字認識手段と、
を備えたことを特徴とする自動取引処理装置。
【請求項8】
撮像手段が、記番号が表記された紙葉類のカラー画像を撮像する手順と、
判別手段が、前記撮像手段によって撮像されたカラー画像に基づいて前記紙葉類の種類と向きを判別する手順と、
選択手段が、前記判別手段によって判別された紙葉類の種類と向きの情報に基づいて紙葉類の記番号が表記されている記番号領域を特定し、この領域の画像から前記紙葉類の種類情報に基づいて決定した色の画素のみを選択する手順と、
文字認識手段が、前記選択手段によって選択された画素から成る記番号画像に対して文字認識する手順と、
から構成される記番号認識方法。
【請求項1】
搬送路に沿って搬送されている紙葉類に表記されている記番号を認識する記番号認識装置において、
前記紙葉類のカラー画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像したカラー画像に基づいて前記紙葉類の種類と向きを判別する判別手段と、
前記判別手段が判別した紙葉類の種類と向きの情報に基づいて前記記番号が表記されている記番号領域を特定し、この領域の画像から前記紙葉類の種類情報に基づいて決定した色の画素のみを選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した画素から成る画像に対して文字認識する文字認識手段と、
を備えたことを特徴とする記番号認識装置。
【請求項2】
前記選択手段は、
前記記番号領域の画像から画素毎に、その画素について取得したR・G・Bの各明度に基づく値が、閾値の範囲内であれば選択する請求項1に記載の記番号認識装置。
【請求項3】
前記選択手段は、
前記記番号領域の画像から画素毎に、その画素について取得したR・G・Bの各明度と、紙葉類の種類毎にそれぞれ設定された固有ベクトルと、を線形結合した値を算出し、その値が閾値の範囲内であれば選択する請求項2に記載の記番号認識装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記R・G・Bの各明度に基づく値が前記閾値の範囲外であれば、予め設定した別の明度に置換する請求項2または3に記載の記番号認識装置。
【請求項5】
前記選択手段が選択した画素から成る画像に対して、メディアンフィルタにより画像処理を行って、不要な画素を除去する不要領域除去手段を備え、
前記文字認識手段は、不要領域除去手段が不要な画素を除去した画像に対して文字認識する請求項1乃至4のいずれかに記載の記番号認識装置。
【請求項6】
本体前面に設けられた入出金口と、本体内部に設けられた紙葉類カートリッジとの間で、入出金する紙葉類を搬送する紙幣処理装置において、
記番号が表記されている紙葉類のカラー画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像したカラー画像に基づいて紙葉類の種類と向きを判別する判別手段と、
前記判別手段が判別した紙葉類の種類と向きの情報に基づいて前記記番号が表記されている記番号領域を特定し、この領域の画像から前記紙葉類の種類情報に基づいて決定した色の画素のみを選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した画素から成る画像に対して文字認識する文字認識手段と、
を備えたことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項7】
本体前面に設けられた入出金口と、本体内部に設けられた紙葉類カートリッジとの間で、入出金する紙葉類を搬送し、入出金取引を処理する自動取引処理装置において、
記番号が表記されている紙葉類のカラー画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像したカラー画像に基づいて紙葉類の種類と向きを判別する判別手段と、
前記判別手段が判別した紙葉類の種類と向きの情報に基づいて前記記番号が表記されている記番号領域を特定し、この領域の画像から前記紙葉類の種類情報に基づいて決定した色の画素のみを選択する選択手段と、
前記選択手段が選択した画素から成る画像に対して文字認識する文字認識手段と、
を備えたことを特徴とする自動取引処理装置。
【請求項8】
撮像手段が、記番号が表記された紙葉類のカラー画像を撮像する手順と、
判別手段が、前記撮像手段によって撮像されたカラー画像に基づいて前記紙葉類の種類と向きを判別する手順と、
選択手段が、前記判別手段によって判別された紙葉類の種類と向きの情報に基づいて紙葉類の記番号が表記されている記番号領域を特定し、この領域の画像から前記紙葉類の種類情報に基づいて決定した色の画素のみを選択する手順と、
文字認識手段が、前記選択手段によって選択された画素から成る記番号画像に対して文字認識する手順と、
から構成される記番号認識方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図8】
【公開番号】特開2010−225013(P2010−225013A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73228(P2009−73228)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
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