説明

記録再生装置、レーザ駆動パルス調整方法

【課題】或る記録エッジの調整が他のマークエッジ位置に与える影響を考慮したウォーキングライトストラテジ調整を実現しつつ、調整区間での記録品質の悪化の防止が図られるようにする。
【解決手段】各ストラテジ調整区間での各記録エッジ位置のシフト量を、既記録部分で測定した評価値と、記録エッジ位置のシフト量に対する各マークエッジ位置についての上記評価値の挙動を表す干渉感度の情報とに基づき求める。このようにすることで、或る記録エッジの調整が他のマークエッジ位置に与える影響(相互干渉)を考慮したストラテジを求めるにあたり、従来手法を踏襲する場合のようにストラテジを何度も振るといった必要性はないものとでき、その結果、相互干渉を考慮したストラテジ調整を、ユーザデータエリア内での記録品質の悪化の防止を図りつつ実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば記録型光ディスク等の光記録媒体に対する記録再生装置、及びレーザ駆動パルス調整方法に関し、特にはレーザ駆動パルス調整(ライトストラテジ調整)を記録動作途中で適宜行ういわゆるウォーキングライトストラテジ調整の技術に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】国際公開第07/010905号パンフレット
【特許文献2】特開2007−200389号公報
【特許文献3】特許第4274183号公報
【背景技術】
【0003】
光ディスクの記録技術において、いわゆるライトストラテジとして知られているように記録のためのレーザ駆動パルスの調整を行うことが知られている。
まず、このライトストラテジに関して、従来の技術と本発明に係る技術で用いる用語として、「記録エッジ位置」「マークエッジ位置」「マークエッジ位置誤差」について説明しておく。
図22(a)(b)(c)にデータビット列、記録波形、再生波形の例を示している。図22(a)のデータビット列は、3Tマーク、2Tスペース、2Tマークが連続する区間としている。Tはチャネルクロック長である。図22(b)の記録波形とは、光学ヘッド(ピックアップ)におけるレーザダイオードの駆動パルスであり、記録しようとするマーク長に応じたパルスとして生成される。図22(c)の再生波形は、図22(b)のレーザ駆動パルスで光ディスクに記録した情報を再生したときに得られる再生RF信号波形である。破線はPLLで生成する再生クロックのタイミングを示しており、再生波形からは、再生クロックタイミングにあたる○で示すタイミングのデータがサンプリングされる。例えばスライスレベルを基準に二値化され、復号処理に供される。
【0004】
本明細書で言う記録エッジ位置とは、記録波形においてライトストラテジで調整に用いるエッジ位置のことであり、例えば図22(b)に矢印REの部分のエッジ位置などである。
マークエッジ位置とは、再生波形とスライスレベルのクロス点の位置と再生クロックタイミングの中間位置との誤差である。例えば図22(c)において、再生波形とスライスレベルのクロス点である矢印MEPの位置である。図22の場合、矢印MEPの位置が、3Tマークから2Tスペースへ移行するときのマークエッジ位置となっている。図22(d)に図22(c)のマークエッジ位置MEP近辺を拡大して示している。本来、再生波形が二値化のためのスライスレベルとクロスするのは、再生クロックタイミングの中間タイミングが望ましい。図22(d)では、その中間タイミングを一点鎖線で示しているが、この中間タイミングと、再生波形とスライスレベルのクロス点のズレ分である矢印MEPがマークエッジ位置である。
また、マークエッジ位置誤差とは、調整時に0にしたい評価値であり、例えばマークエッジ位置そのものでよいし、あるマーク長のマークエッジ位置を基準とし、その基準となるマークエッジ位置からの差分と考えることもできる。
【0005】
マークエッジ位置は、レーザ駆動パルスのストラテジ調整のための評価値として用いることができる。マークエッジ位置誤差は再生波形とスライスレベルとのクロス点と再生クロックタイミングとの時間誤差を示す値であり、このマークエッジ位置誤差を全てのマーク長について揃えるようにストラテジを調整する。
【0006】
ここで、最も単純なエッジ位置の調整手法としては、個々のエッジ位置について、マークエッジ位置誤差を検出し、その誤差量に応じた分だけ個々のエッジ位置を移動させるという調整手法を挙げることができる。
例えば図22のように3Tマークの終端側のマークエッジ位置が他のマークエッジ位置よりもプラス方向(図面上右側)に1[ns]ずれている場合には、3Tマークの記録波形の後ろのエッジ位置REを矢印wx、矢印wyのように左側に1[ns]補正することで、3Tマークの終端のマークエッジ位置を揃えることができる。
【0007】
また、ライトストラテジの調整に関しては、上記特許文献1や特許文献2に記載されるようないわゆるウォーキングライトストラテジ調整を行うものが知られている。
ウォーキングライトストラテジ調整とは、ユーザデータエリアを記録中に逐次記録動作を中断し、既記録部分を再生して得た評価値に基づき、記録波形のエッジ位置を逐次調整していく手法を指す。
ここで、一旦調整したライトストラテジは、ディスク面内における記録感度の誤差や、ディスクのチルトやデフォーカス、さらには温度の上昇などを要因とした最適ストラテジの変動に伴い、記録動作中に徐々に最適ストラテジから乖離するものとなってしまう。そこで、上記のようなウォーキングライトストラテジ調整を行うことで、上記の各要因に起因する最適ストラテジからの乖離を可能な限り補正し、記録動作のさらなる安定化が図られるようにできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3にも開示されているように、評価値としてのマークエッジ位置誤差と記録エッジ位置のシフト量の関係には、以下のような特性がある。

(特性1)評価値となるマークエッジ位置誤差は記録エッジシフト量に対して一定ではないことがある。この理由として、ディスクの記録膜特性によって、マーク形成プロセスや熱干渉の影響に違いがあることが考えられる。

(特性2)マークエッジ位置は記録波形のファーストパルス、マルチパルス、ラストパルスのエッジ位置の移動量に依存することがあり、さらに記録波形のファーストパルス、マルチパルス、ラストパルスの記録エッジ位置の移動量は、始端側のマークエッジ位置、終端側のマークエッジ位置の両方に影響を与えることがある。
なおファーストパルス、マルチパルス、ラストパルスについては図2に示している。例えば2Tマークの記録波形はファーストパルスのみとなる。3Tマークの記録波形はファーストパルスとラストパルスの2つのパルスで形成される。4Tマークの記録波形は、ファーストパルス、マルチパルス、ラストパルスの3つのパルスで形成される。5Tマーク以上では、ファーストパルスとラストパルスの間に配されるマルチパルスの数がマーク長に応じて増えることとなる。

(特性3)他のマーク長の記録エッジシフト量がマークエッジ位置に対して影響を与えることがある。
【0009】
これらの特性より、前述した最も単純な調整手法を採った場合には、調整に多くの時間を要するものとなる。具体的に、ひとつのマークエッジ位置を確認しながら記録エッジ位置をひとつずつ調整していく場合、その記録エッジシフト量は、他のマークエッジ位置に影響を与えるため、一旦最適に調整したマークエッジ位置が、他のマークエッジ位置による記録エッジ位置調整によるとずれてしまうことがある。従って時間がかかるだけでなく、調整精度も悪化する虞がある。
【0010】
またこのことは、ウォーキングライトストラテジ調整を行う場合にも当てはまる。すなわち、ウォーキングライトストラテジ調整を行う場合にも、上記のような或る記録エッジの調整が他のマークエッジ位置に与える影響(以下、相互干渉とも称する)を考慮すべきものとなる。
【0011】
しかしながら、従来のウォーキングライトストラテジ調整に関して、例えば特許文献1や特許文献2の手法では、このような相互干渉については考慮しておらず、仮に、特許文献1に記載の手法に基づき相互干渉を考慮した調整を行うには、ウォーキングライトストラテジ調整であるにも関わらず、ストラテジを振りながら調整を行うことが強いられる。
また特許文献2に記載の手法を採る場合も同様に、相互干渉を考慮した調整とするには、ストラテジを何度も振って最適値を求めることになる。
【0012】
ウォーキングライトストラテジ調整は、ユーザデータエリア内を記録中に実行するものであり、従って上記特許文献1や特許文献2に記載の手法に基づき相互干渉を考慮したストラテジ調整を行うとした場合には、最適とされるストラテジから乖離したストラテジにて記録動作が実行されてしまい、その区間における記録品質が悪化してしまう問題が生じる。
さらには、相互干渉が大きい場合、ストラテジが収束しないといったケースも生じる可能性があり、その場合はもはやウォーキングライトストラテジ調整を行う意義は無くなってしまう。
【0013】
本発明は上記のような問題点に鑑み為されたものであり、ウォーキングライトストラテジ調整に関して、前述のような相互干渉の生じることを考慮に入れたストラテジ調整を実現しつつ、調整区間での記録品質の悪化の防止が図られるようにすることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題の解決のため、本発明では記録再生装置として以下のように構成することとした。
すなわち、光記録媒体に対してレーザ光を照射して、光記録媒体上でマーク及びスペースで表現される情報の書込及び読出を行う光学ヘッド部を備える。
また、記録する情報に応じたレーザ駆動パルスを生成して上記光学ヘッド部に供給し、上記光学ヘッド部に、記録のためのレーザ光照射を実行させるレーザ駆動パルス生成部を備える。
また、上記光学ヘッド部により上記光記録媒体から読み出した信号に基づき、上記マークのエッジ位置の誤差を表す評価値を測定する評価値測定部を備える。
さらに、記録指示された情報の記録中において、予め定められたストラテジ調整区間ごとに、上記評価値測定部により上記ストラテジ調整区間内の既記録部分についての上記評価値を測定させ、測定された既記録部分の上記評価値と、記録エッジ位置のシフト量に対する上記マークの各エッジ位置についての上記評価値の挙動を表す干渉感度の情報とに基づき、各記録エッジ位置のシフト量を求めると共に、
該求めた各記録エッジ位置のシフト量が上記レーザ駆動パルス生成部に設定された状態で次に記録を行うべき上記ストラテジ調整区間に対する記録動作が実行されるように記録制御を行う制御部を備えるようにした。
【0015】
先ず前提として、ウォーキングライトストラテジ調整は、記録指示された情報の記録中において、予め定められたストラテジ調整区間ごとに既記録部分の評価値(マークエッジ位置誤差)を取得して該評価値に基づき逐次最適とされる各記録エッジ位置のシフト量を求めていくようにして行われる。
上記本発明では、各ストラテジ調整区間での各記録エッジ位置のシフト量は、既記録部分で測定させた評価値と、記録エッジ位置のシフト量に対する上記マークの各エッジ位置についての上記評価値の挙動を表す干渉感度の情報とに基づき求めるものとしている。
このようにすることで、或る記録エッジの調整が他のマークエッジ位置に与える影響、すなわち相互干渉を考慮したストラテジを求めるにあたり、従来手法を踏襲する場合のようにストラテジを何度も振るといった必要性はないものとでき、その結果、ユーザデータエリア内での記録品質の悪化の防止を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
上記のように本発明によれば、相互干渉を考慮したウォーキングライトストラテジ調整の実現にあたり、従来手法を踏襲する場合のようにストラテジを何度も振るといった必要性はないものとでき、ユーザデータエリア内での記録品質の悪化の防止を図ることができる。すなわち、相互干渉を考慮したウォーキングライトストラテジ調整を実現しつつ、記録品質の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の記録再生装置の要部のブロック図である。
【図2】実施の形態のレーザ駆動パルスとその記録エッジ位置の説明図である。
【図3】実施の形態のレーザ駆動パルスの動かし方の例の説明図である。
【図4】実施の形態の初期ストラテジ調整処理におけるストラテジ設定の説明図である。
【図5】実施の形態の初期ストラテジ調整処理のフローチャートである。
【図6】実施の形態の最適ストラテジ算出の考え方の説明図である。
【図7】実施の形態の最適ストラテジ算出の考え方の説明図である。
【図8】実施の形態の最適ストラテジ算出の考え方の説明図である。
【図9】実施の形態のマークエッジ位置誤差の種類の説明図である。
【図10】実施の形態の記録エッジ位置誤差の種類の説明図である。
【図11】第1の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整手法について説明するための図である。
【図12】実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整で求めたストラテジの最適ストラテジに対する追従性について説明するための図である。
【図13】第1の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整を実現するための具体的な処理の手順について説明するためのフローチャートである。
【図14】第2の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整手法について説明するための図である。
【図15】第2の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整を実現するための具体的な処理の手順について説明するためのフローチャートである。
【図16】第3の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整手法について説明するための図である。
【図17】第3の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整を実現するための具体的な処理の手順について説明するためのフローチャートである。
【図18】第4の実施の形態において半径方向エリアごとに保持される温度−誤差テーブルのデータ構造を例示した図である。
【図19】第4の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整手法について説明するための図である。
【図20】第4の実施の形態の記録再生装置の要部のブロック図である。
【図21】第4の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整を実現するための具体的な処理の手順について説明するためのフローチャートである。
【図22】レーザ駆動パルスと記録エッジ位置、マークエッジ位置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を次の順序で説明する。

<1.記録再生装置の構成>
<2.初期ストラテジ調整>
[2-1.初期ストラテジ調整の基本となる考え方]
[2-2.第1の調整例]
[2-3.第2の調整例]
<3.第1の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整>
<4.第2の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整>
<5.第3の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整>
<6.第4の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整>
<7.変形例>
【0019】
ここで、以下で説明する実施の形態において、ストラテジ調整としては、例えば初期OPC(Optimum Power Control)時など予め定められた所定のタイミングで、ユーザデータエリア以外の調整エリアにおいてストラテジを振って測定させたマークエッジ位置誤差の値に基づき最適なストラテジを求める初期ストラテジ調整と、ユーザデータエリアを記録中に既記録部分で測定させたマークエッジ位置誤差の値から最適とされるストラテジを求めるウォーキングライトストラテジ調整とを行うものとする。以下の説明では、上記初期ストラテジ調整において求めた干渉感度Cの情報に基づき、ウォーキングライトストラテジ調整を行う場合を例示する。
なお、<2.初期ストラテジ調整>において説明する初期ストラテジ調整の手法は、上述した特許文献3においても開示されているものである。
【0020】
<1.記録再生装置の構成>

図1は実施の形態の記録再生装置の要部のブロック図を示している。
先ず、図中の光ディスク1は、ディスク状の光記録媒体とされ、レーザ光の照射により情報の記録/再生が行われる。本例の場合、光ディスク1は、記録膜に有機色素系の記録材料が用いられ、レーザ光の照射により形成されるマーク部分で反射率が上昇するいわゆるLow to Highメディアとされる。
【0021】
光ディスク1は、記録/再生時にはスピンドルモータ2によって回転される。
光学ヘッド3(光学ピックアップ)は、レーザダイオードから出射されたレーザ光を、所定の光学系により対物レンズから光ディスク1に照射する。また光ディスク1からの反射光を、所定の光学系を介してフォトディテクタに導き、反射光量に応じた電気信号を得る。また複数のフォトディテクタで検出された各光量信号に対して演算処理を行い、記録された情報の再生信号(再生RF信号)や、トラッキング、フォーカスなどの各種サーボエラー信号を生成する。
【0022】
記録時には、レーザドライバ10からレーザ駆動パルスが光学ヘッド3に供給され、光学ヘッド3内のレーザダイオードはレーザ駆動パルスに応じて発光駆動される。
記録時には、光ディスク1に記録しようとする記録データが、記録データエンコーダ13で、例えばRLL(1,7)変調等のエンコード処理が施され、そのエンコード信号がライトストラテジ回路12に供給される。ライトストラテジ回路12では、エンコード信号に応じたレーザ駆動パルスを生成する。ライトストラテジ回路12で生成されるレーザ駆動パルスのパルスレベルや記録エッジ位置は、システムコントローラ11からの設定値により調整される。
このライトストラテジ回路12で生成され、ストラテジ調整されたレーザ駆動パルスが、レーザドライバ10を介して光学ヘッド内のレーザダイオードの駆動信号となる。
【0023】
再生時には、光学ヘッド3で読み出された再生信号がイコライザ4で処理された後、AD変換器でサンプリングされてデジタル値としての再生データとされる。
PLL回路6は、再生データに同期した再生クロックCKを生成する。再生クロックCKはA/D変換器5のサンプリングクロックとして用いられると共に、後段のPR等化回路7,最尤復号回路8、マークエッジ位置誤差検出回路9に処理クロックとして供給される。
A/D変換器5からの再生データは、PR等化回路7で所定のパーシャルレスポンス方式に応じたPR等化が施された後、最尤復号器8に供給され、ビタビ復号が行われる。最尤復号器8でビタビ復号された復号データは、図示しない再生処理系に供給される。
【0024】
PR等化回路7で処理されたデータDDは、マークエッジ位置誤差検出回路9にも供給される。マークエッジ位置誤差検出回路9は、データDDのデータ系列から図22(d)で説明したマークエッジ位置及びマークエッジ位置誤差mを検出する。例えばデータDDとして値の異なる2つのサンプル点(「1」と「0」)の間の直線とスライスレベルのクロス点をマークエッジ位置とし、そのマークエッジ位置と再生クロックCKのタイミングからマークエッジ位置誤差mを検出する。このマークエッジ位置誤差検出回路9では例えばマークの始端側となる始端マークエッジ位置誤差、マークの終端側となる終端マークエッジ位置誤差などが検出される。
また最尤復号回路8からは、ビタビ復号で検出されたマーク長/スペース長の情報が、マーク/スペース識別結果情報MSとしてマークエッジ位置誤差検出回路9に供給される。これにより、マークエッジ位置誤差検出回路9はマーク長毎のマークエッジ位置誤差や、エッジ前後のマーク長/スペース長の組み合わせ毎のマークエッジ位置誤差を検出できる。
なお、この構成例では、マークエッジ位置誤差検出回路9は、PR等化回路7からのデータDDについてマークエッジ位置誤差の検出を行うようにしているが、PR等化前のデータ列、つまりA/D変換器5からの出力段階の再生データ列をマークエッジ位置誤差検出回路9に供給して、マークエッジ位置誤差を検出するようにしてもよい。
【0025】
マークエッジ位置誤差検出回路9で検出されるマークエッジ位置誤差の情報はシステムコントローラ11に供給される。
システムコントローラ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ装置を備えて成るマイクロコンピュータで構成される。
システムコントローラ11は、後述するようにして、マークエッジ位置誤差の情報を用いて最適なストラテジ設定を算出し、ライトストラテジ回路12に設定する。
具体的にこの場合、ストラテジ調整としては、上述のように初期OPC時など予め定められた所定のタイミングでユーザデータエリア以外の調整エリアにてストラテジを振って測定させたマークエッジ位置誤差の値に基づき最適なストラテジを求める初期ストラテジ調整と、ユーザデータエリアを記録中に既記録部分で測定させたマークエッジ位置誤差の値から最適とされるストラテジを求めるウォーキングライトストラテジ調整とを行うものとされており、システムコントローラ11は、その双方のストラテジ調整動作を実現するための処理を実行するようにされる。
【0026】
なお、光学ヘッド3におけるフォーカスサーボ、トラッキングサーボ動作や光学ヘッドの移送(スレッド移動)動作などは、図示しないサーボ回路やサーボ駆動機構(光学ヘッド内の二軸機構やスレッド機構など)によって行われる。
またスピンドルモータ2の回転制御もサーボ回路によって行われる。システムコントローラ11は、サーボ回路に指示を行って、記録動作、再生動作のためのスピンドルモータ2の駆動や光学ヘッド3の挙動を制御し、光ディスク1に対する記録動作や再生動作を実行させる。
【0027】
<2.初期ストラテジ調整>
[2-1.初期ストラテジ調整の基本となる考え方]

図1の記録再生装置が実行する初期ストラテジ調整の具体的な説明に先立って、本例の初期ストラテジ調整の基本となる考え方について述べておく。
本例の初期ストラテジ調整は、予め定められた基準となるストラテジ(初期ストラテジと呼ぶ)を基準としてストラテジを調整する。ここで初期ストラテジは、例えば光ディスク1に予め記録されている管理情報に含まれているストラテジ推奨情報であったり、或いは記録再生装置に記憶されているストラテジ設定情報である。記録再生装置においては、例えば光ディスク1の製造メーカーやディスク種別などに応じて、それぞれ対応する初期ストラテジを記憶している場合もある。
【0028】
初期ストラテジ調整処理では、初期ストラテジを基準にして、複数の異なるストラテジ設定の状態でそれぞれ調整用の記録を行う。
例えばシステムコントローラ11は、初期ストラテジを基準にして選定したストラテジ設定をライトストラテジ回路12に設定した状態で、記録データエンコーダ13にランダムデータを供給する。そのランダムデータは、記録データエンコーダ13で例えばRLL(1,7)方式等の変調処理が施され、ライトストラテジ回路12に供給される。ライトストラテジ回路12は、そのときのストラテジ設定に基づいて、ランダムデータの変調データに応じたレーザ駆動パルスを生成する。このレーザ駆動パルスがレーザドライバ10に供給され、光学ヘッド3のレーザダイオードを駆動することで、光ディスク1に調整のための試し記録が行われる。
【0029】
また、システムコントローラ11は、記録したランダムデータを再生させ、そのときにマークエッジ位置誤差検出回路9で検出されるマークエッジ位置誤差の情報を取得する。
このような処理を、複数のストラテジ設定状態で実行し、それぞれのストラテジ設定状態で記録したデータを再生したときに、マークエッジ位置誤差の情報を取得していく。そして各ストラテジ設定状態でのマークエッジ位置誤差の挙動を学習して、マークエッジ位置誤差が0になるようにする最適なストラテジ設定を算出し、当該最適なストラテジ設定をライトストラテジ回路12に設定するものである。
【0030】
初期ストラテジ調整において、検出されるマークエッジ位置誤差からの最適ストラテジの算出は以下の考え方で行う。
先ず、マークエッジ位置誤差と記録エッジ位置のシフト量の関係を線形であると仮定する。
ここで、エッジシフト量の調整対象する記録エッジ位置はq種類あり、ベクトルwで表す。例えば図2には、2Tマーク、3Tマーク、4Tマークのそれぞれの場合のレーザ駆動パルスを示している。図では主にファーストパルスの記録エッジ位置である始端記録エッジ位置のシフトをwF、主にラストパルスの記録エッジ位置である終端記録エッジ位置のシフトをwRで表し、特にこの図ではこれを2T、3T、4Tの別に応じて、w2F、w2R、w3F、w3R、w4F、w4Rというように示している。
後述する第1の調整例では、2Tマーク、3Tマーク、4Tマーク等のマーク長について個別に、ファーストパルスとラストパルスのエッジを調整すべき記録エッジ位置とするが、その場合、調整対象とする記録エッジ位置はwFとwRの2種類となる。つまり上記q=2である。例えば2Tマークのレーザ駆動パルスについて調整のために算出する記録エッジ位置はwFとwRであり、同様に3Tマーク、4Tマークについても、それぞれ調整のために算出する記録エッジ位置はwFとwRである。
また、後述する第2の調整例では、始端記録エッジ位置(主にファーストパルスのエッジ位置)と終端記録エッジ位置(主にラストパルスのエッジ位置)を、それぞれ前後のマーク長/スペース長の組み合わせを考慮して最適な記録エッジ位置を算出し、調整する方式を述べるが、その例ではエッジ前後の2Tマーク、3Tマーク、4Tマーク、5T以上マークと、2Tスペース、3Tスペース、4Tスペース、5T以上スペースの組み合わせにより区別している。その場合、調整するために算出する始端記録エッジ位置として15通りがあり、また調整するために算出する終端マークエッジ位置として15通りがあるため、算出する記録エッジ位置は30種類となる。つまり上記q=30である。
これらについては後述するが、調整すべき記録エッジ位置の例としては多様に考えられる。
【0031】
調整すべき記録エッジ位置は具体的な手法に応じて適切に決定すればよいが、まず考え方として、上記のように調整のために算出すべき記録エッジ位置をq種類とし、ベクトルwで表す。
一方、マークエッジ位置誤差はp種類あるとし、ベクトルmで表す。また、初期ストラテジでのマークエッジ位置誤差をminitで表す。
このとき、次の(数1)に示すp×qの行列Cは、記録エッジ位置のシフト量に対する各マークエッジ位置についてのマークエッジ位置誤差の挙動を表すものであり、以下、「干渉感度」とも呼ぶ。


【数1】



この(数1)のように、記録エッジ位置のシフト量とマークエッジ位置誤差との関係は線形であると仮定する。
【0032】
ここで、p≧qと選び、q+1通りのストラテジ設定状態で調整のための試し記録を行い、マークエッジ位置誤差を取得することで、行列Cとベクトルminitを求めることができる。例えば、計算方法として求めた行列とベクトルから、次の(数2)の計算をすることで最適な記録エッジシフト量w0を求める方法などがある。


【数2】



この場合、C#はp>qの場合は擬似逆行列となり、p=qの場合は逆行列となる。
【0033】
なお、q+1通りでの試し記録が必要な理由は、上記(数1)の行列Cとベクトルminitを求めるために必要最小限の試し記録数がq+1通りであるためである。
また、q+1通りの試し記録におけるエッジ位置のシフト量wtestは、適当に選んだひとつの記録エッジシフト量w0に対して、w0を基準としたq種類のベクトルが1次独立なベクトルとなるように選べばよい。つまり、適当な記録エッジシフト量w0を選び、w1+w0、w2−w0、・・・ wq+1−w0のベクトルが1次独立になるように選ぶ。
例えば、p=2,q=2の場合はw0を[0 0]Tと選び、1次独立なベクトル[1 0]T、 [0 1]Tを選べばよい。
【0034】
ここで、後述する調整例に用いるマークエッジ位置誤差と記録エッジ位置とについて説明する。
まず、直前のスペース長と直後のマーク長の組み合わせからなるマークエッジ位置を始端マークエッジ位置と呼ぶ。また直前のマーク長と直後のスペース長の組み合わせからなるマークエッジ位置を終端マークエッジ位置と呼ぶ。
後述する調整例では、マーク長とスペース長を2T,3T,4T,5T以上という分け方により分類した。ここでTはチャネルクロック周期である。
なお、第2の調整例においては、特にエッジ前後のマーク長/スペース長の組み合わせにより区別するが、その説明において、例えば2Tスペースから3Tマークへの始端マークエッジ位置の場合はMep2s3mというように表す。また終端マークエッジ位置において、例えば3Tマークから4Tスペースへのエッジ位置の場合はMep3m4sと表す。例えば、図22に示した3Tマークから2Tスペースのマークエッジ位置MEPは、Mep3m2sと表す。
【0035】
次にマークエッジ位置誤差を定義する。第1の調整例では、マークエッジ位置誤差を始端マークエッジ位置誤差mF、終端マークエッジ位置誤差mRとして述べる。
一方、第2の調整例では、エッジ前後のマーク長/スペース長の組み合わせにより区別するため、例えば2Tスペースから3Tマークへの始端マークエッジ位置誤差の場合はMepe2s3mというように表す。
本例の初期ストラテジ調整では、このマークエッジ位置誤差が0になるように記録エッジ位置を調整するものである。
例えばマークエッジ位置誤差を次の<1><2>又は<3>のように定義することができる。
<1>マークエッジ位置そのもの。
<2>基準となるマーク長に調整する。
ある基準となるマークエッジ位置を決定し、基準のマークエッジ位置との差分をマークエッジ位置誤差とする。例えば始端マークエッジ位置(スペースからマーク)については5T以上スペース、5T以上マークのマークエッジ位置を基準とした場合を考え、終端マークエッジ位置(マークからスペース)については5T以上マーク、5T以上スペースのマークエッジ位置を基準とした場合を考え、2Tスペース、2Tマークの始端マークエッジ位置誤差Mepe2s2mと、終端マークエッジ位置誤差Mepe2m2sは、次の(数3)のように定義する。


【数3】


【0036】
<3>すべてのマーク長における平均を基準にする。
始端マークエッジ位置(スペースからマーク)については始端マークエッジ位置の平均値MepXsXmを基準とし、終端マークエッジ位置(マークからスペース)については終端マークエッジ位置の平均値MepXsXmを基準とし、2Tスペース、2Tマークの始端マークエッジ位置誤差Mepe2s2mと、終端マークエッジ位置誤差Mepe2m2sは、次の(数4)のように定義する


【数4】


【0037】
ストラテジ調整では、マークエッジ位置を移動させるために記録波形のエッジ位置を動かす。この場合、レーザ駆動パルスを構成するパルスのどのエッジ位置をどの組み合わせで動かして調整してもよい。
例えば、始端マークエッジ位置を調整する部分を始端記録エッジ位置と呼び、始端マークエッジ位置を調整する部分を終端記録エッジ位置とすると、調整すべき記録エッジ位置は、上記図2のようなエッジ位置シフト(w2F、w2R、w3F、w3R、w4F、w4R)が行われればよい。
また、例えば図3にMV1〜MV7としてファーストパルス、マルチパルス、ラストパルスのエッジを示しているが、それぞれのパルスについてのエッジの動かし方は次のような例が考えられる。
ファーストパルスについては、エッジMV1のみを動かす例、エッジMV2のみを動かす例、或いはエッジMV1、MV2を連動させる例がある。
マルチパルスについては、エッジMV3のみを動かす例、エッジMV4のみを動かす例、或いはエッジMV3、MV4を連動させる例がある。
ラストパルスについては、エッジMV5のみを動かす例、エッジMV6のみを動かす例、エッジMV7のみを動かす例、エッジMV5、MV6を連動させる例、エッジMV5、MV7を連動させる例、エッジMV6、MV7を連動させる例、エッジMV5、MV6、MV7を連動させる例がある。
【0038】
[2-2.第1の調整例]

具体的な初期ストラテジ調整例として、第1の調整例を説明する。
第1の調整例は、エッジ前後のマーク長/スペース長を考慮せず、他のTのマーク/スペースの干渉が少ないと考えた場合の調整例であり、調整時間の短時間化が要求される場合に適したものである。特には、マークエッジ位置誤差と記録エッジのシフト量の関係としての上述した特性1及び特性2を考慮した調整方式といえる。端的に言えば、或る記録エッジ位置を動かすと、その動かした側のエッジ位置のみでなく、他端側のエッジ位置も連動して動くという点を主に考慮した調整方式となる。
【0039】
ここでは前述の通り、マーク長については2T,3T,4T,5T以上という分類をするものとする。そしてマークエッジ位置誤差については、上記<2>のように、5T以上のマークエッジ位置を基準として定義するものとし、2Tマーク、3Tマーク、4Tマークのそれぞれについて始端記録エッジ位置、終端記録エッジ位置を求める例とする。
この場合、すべてのスペースから2Tマークのマークエッジ位置MepeXs2m、すべてのスペースから5T以上マークのマークエッジ位置MepeXs≧5m、すべてのマークから2Tスペースのマークエッジ位置MepeXm2s、すべてのマークから5T以上マークのマークエッジ位置MepeXm≧5sとおくと、2Tマークについての始端マークエッジ位置誤差m2F、終端マークエッジ位置誤差m2Rは、(数5)のように表せる。


【数5】


【0040】
ここで、各マーク長の別を区別しない形で、記録エッジ位置を移動したときのマークエッジ位置誤差の始端部をmF、終端部をmRと表す。
同様に各マーク長を区別しない形で、記録エッジ位置のシフト量を、始端と終端に区別してそれぞれwF, wRで表す。なお確認のため述べておくと、これら始端側のシフト量wF, 終端側のシフト量wRは、それぞれ初期ストラテジとして設定された始端側記録エッジ位置、終端側記録エッジ位置からのシフト量を表すものである。
また、初期ストラテジで記録したときのマークエッジ位置誤差の始端部をmF_init、終端部をmR_initで示す。
このときの記録エッジ位置のシフト量wF, wRに対するマークエッジ位置誤差mF、mRは、上記(数1)の考え方から、次の(数6)のように表される。


【数6】


【0041】
つまりこの場合、始端記録エッジ位置のシフト量wF、終端記録エッジ位置のシフト量wRとして、q=2種類の記録エッジ位置を求めるために、q+1=3とおりのストラテジ設定で調整のための試し記録を行う。そして、それを再生したときに得られる始端マークエッジ位置誤差mF、終端マークエッジ位置誤差mRを0にできるような始端記録エッジ位置シフト量wF、終端記録エッジ位置シフト量wRを算出すればよい。
2種類の記録エッジ位置シフト量wF, wRと2種類以上のマークエッジ位置誤差mF、mRとの関係が線形であると仮定し、3通りのストラテジ設定で試し記録を行う。このときに行列C(C11、C12,C21,C22)とベクトルminit(mF_init、mR_init)を求めることで、上記(数2)から最適ストラテジを求めることができる。
【0042】
調整のための試し記録は次のように行う。
マーク長における分類を 2T、3T、4T、5T以上とし、評価値となるマークエッジ位置誤差については、例えば上記(数3)で説明したように5T以上の場合のマークエッジ位置誤差を基準とする。このため、2Tマーク、3Tマーク、4Tマークについて、それぞれ始端マークエッジ位置誤差mF、終端マークエッジ位置誤差mRを検出し、これを0にできるような始端記録エッジ位置シフト量wF、終端記録エッジ位置シフト量wRを算出する。始端記録エッジ位置シフト量wF、終端記録エッジ位置シフト量wRとして移動させる記録エッジ位置は、例えば2Tマーク、3Tマーク、4Tマークのそれぞれについて図2に示したようなエッジシフトとする。
【0043】
また3通りのストラテジ設定ST1,ST2,ST3を、図4に示すように初期ストラテジを原点とし、波形記録移動量を(始端記録波形移動量,終端記録波形移動量)のように表すと、(1[ns],1[ns])、(−1[ns],1[ns])、(−1[ns],−1[ns])の3点とする。ここで[ns]はnano secの略である。
図4のように3つのストラテジ設定ST1,ST2,ST3で例えばランダムデータを記録したときのマークエッジ位置誤差を測定することにより、(数6)の行列Cとベクトルminitが求まる。そこから(数2)の計算より調整すべきレーザ駆動パルスの記録エッジ位置移動量が計算される。
【0044】
初期ストラテジ調整処理のフローチャートを図5に示す。これはシステムコントローラ11による制御処理となる。
システムコントローラ11は、まずステップS101で変数iを1にセットする。そしてステップS102で、ライトストラテジ回路12を第iのストラテジ設定(STi)に制御する。例えば上記ストラテジ設定ST1の状態、つまり始端記録波形移動量を1[ns]、終端記録波形移動量を1[ns]に設定する。
システムコントローラ11は、この状態でステップS103の記録を実行させる。この場合システムコントローラ11は、調整のための試し記録用のデータとしてランダムデータを発生させ、記録データエンコーダ13に与える。このランダムデータが記録データエンコーダ13で変調され、変調されたデータに応じてライトストラテジ回路12においてレーザ駆動パルスとしての波形が成形される。このときストラテジ設定ST1に従って、始端記録エッジ位置シフト量wF=1[ns]、終端記録エッジ位置シフト量wR=1[ns]としてレーザ駆動パルスが生成される。そしてこのレーザ駆動パルスがレーザドライバ10に供給され、光学ヘッド3内のレーザダイオードが発光駆動されて記録が行われる。
【0045】
続いてステップS104では、ステップS103で記録したデータの読出が行われる。システムコントローラ11は、光学ヘッド3及び再生系各部を制御して再生動作を実行させ、このときマークエッジ位置誤差検出回路9で、マークエッジ位置誤差Mepeを検出(測定)させる。具体的には、2Tマーク、3Tマーク、4Tマークのそれぞれについて、始端マークエッジ位置誤差mF、終端マークエッジ位置誤差mRを検出させる。
【0046】
ステップS105では、変数iを確認し、i≧3でなければ、ステップS106で変数iをインクリメントしてステップS102、S103,S104の処理を同様に実行する。
即ち、次に、始端記録エッジ位置シフト量wF=−1[ns]、終端記録エッジ位置シフト量wR=1[ns]とする第2のストラテジ設定ST2でレーザ駆動パルスを生成させ、ランダムデータの記録を実行させる。そしてそれを再生させて、2Tマーク、3Tマーク、4Tマークのそれぞれについて、始端マークエッジ位置誤差mF、終端マークエッジ位置誤差mRを検出させる。
さらに、ステップS105からS106に進み、変数iをインクリメントしてステップS102、S103,S104の処理を同様に実行する。
即ち、次に、始端記録エッジ位置シフト量wF=−1[ns]、終端記録エッジ位置シフト量wR=−1[ns]とする第3のストラテジ設定ST3でレーザ駆動パルスが生成させ、ランダムデータの記録を実行させる。そしてそれを再生させて、2Tマーク、3Tマーク、4Tマークのそれぞれについて、始端マークエッジ位置誤差mF、終端マークエッジ位置誤差mRを検出させる。
【0047】
以上の処理で、図4に示したストラテジ設定ST1、ST2,ST3のそれぞれで試し記録及び評価値の取得を行ったら、ステップS105からS107に進む。
ステップS107では、システムコントローラ11は、それぞれのストラテジ設定における始端記録エッジ位置シフト量wF、終端記録エッジ位置シフト量wRと、検出された始端マークエッジ位置誤差mF、終端マークエッジ位置誤差mRを用いて、感度計算を行う。
これは、上記(数6)における行列C(C11、C12,C21,C22)とベクトルminit(mF_init、mR_init)を求める処理となる。具体的には、(数6)に、第1〜3のストラテジ設定としての始端記録エッジ位置シフト量wF、終端記録エッジ位置シフト量wRとそれらの設定区間で測定された始端マークエッジ位置誤差mF、終端マークエッジ位置誤差mRとをそれぞれ代入し、それにより得られる3式の連立方程式を解くことで、行列C(C11、C12,C21,C22)とベクトルminit(mF_init、mR_init)とを求める。
【0048】
行列C(C11、C12,C21,C22)とベクトルminit(mF_init、mR_init)を求めたら、ステップS108では、上記(数2)の計算で最適ストラテジを算出する。つまり、始端マークエッジ位置誤差mF、終端マークエッジ位置誤差mRがそれぞれ0となるような始端記録エッジ位置シフト量wF、終端記録エッジ位置シフト量wRを求めるものである。
確認のため述べておくと、(数2)は、(数1)においてm=0とした「0=Cw+minit」より導出されたものである。
【0049】
具体的に、上記ステップS108では、先ずはステップS107にて求めた行列C(干渉感度C)について、その逆行列C#を計算し、該逆行列C#と上記ベクトルminit(mF_init、mR_init)とを用いて(数2)を解くことで、始端マークエッジ位置誤差mF、終端マークエッジ位置誤差mRをそれぞれ0とする始端記録エッジ位置シフト量wF、終端記録エッジ位置シフト量wRを求める。
このように算出された始端記録エッジ位置シフト量wF、終端記録エッジ位置シフト量wRは、初期ストラテジに対する補正量となる。従って、初期ストラテジについて始端記録エッジ位置シフト量wF、終端記録エッジ位置シフト量wRの補正を行ったストラテジ設定を最適ストラテジとする。
なおステップS108において、システムコントローラ11は、上記のようにして計算した干渉感度Cの逆行列C#の情報を、例えば内部のメモリなどの所要のメモリに対して保持(記憶)させておく。
【0050】
そして、システムコントローラ11は、次のステップS109で、算出した最適ストラテジをライトストラテジ回路12に設定する。
以上で初期ライトストラテジの調整処理が完了する。
【0051】
ここで、ステップS107,S108の計算処理の考え方を、図6、図7,図8で説明する。
図6は2Tマーク、図7は3Tマーク、図8は4Tマークについてそれぞれ示している。
各図においては、始端記録エッジ位置シフト量wF、終端記録エッジ位置シフト量wRについて設定される上記の3つのストラテジ設定ST1、DT2,DT3を、それぞれ◇で示している。また実線でマークエッジ位置誤差について値の等高線を示している。等高線の値はそれぞれ下段に示すようになる。
例えば図6(a)の始端マークエッジ位置誤差mFについては、下段に示すように、始端マークエッジ位置誤差mFの値が0となるポイントから右斜め下方向に向かって+、左斜め上に向かって−となっていくような等高線が描かれる。
【0052】
ステップS107での感度計算で行列Cを求めるときには、2種類の記録エッジ位置(始端記録エッジ位置シフト量wF、終端記録エッジ位置シフト量wR)と、上記2種類のマークエッジ位置誤差(始端マークエッジ位置誤差mF、終端マークエッジ位置誤差mR)との関係が線形であることが前提となっており、つまり等高線がリニアになると考えることで、図6(a)(b)のように、始端マークエッジ位置誤差mF、終端マークエッジ位置誤差mRについて、等高線を描くことができる。
ここでステップS108での最適ストラテジの計算は、始端と終端のマークエッジ位置誤差mF、mRの2乗和が最小になる位置にストラテジを調整することになる。図6(c)には、2乗和の等高線を示しているが、この2乗和が最小(例えば0)になるポイントを◆で示している。なお初期ストラテジを●で示している。
つまり初期ストラテジ●と最小ポイント◆の差分が、始端記録エッジ位置シフト量wF、終端記録エッジ位置シフト量wRとしての初期ストラテジに対する補正量となる。
この図6は2Tマークについて示しているが、3Tマーク、4Tマークについても、図7,図8に示すように、最終的に最適ストラテジのポイント(初期ストラテジからの補正量)が◆で示すポイントとして算出される。
このように各図に◆で示すポイントが、始端記録エッジ位置シフト量wF、終端記録エッジ位置シフト量wRとしての最適設定であり、システムコントローラ11は初期ストラテジを補正して、◆で示される最適ストラテジをライトストラテジ回路12に設定することになる。
【0053】
以上のような第1の調整例としての初期ストラテジ調整により、短時間で精度よい調整が可能になり、記録再生装置の調整の効率化と記録性能の向上を実現できる。特にこの調整例の利点は、マーク長の分類をすべて同時に学習することにより他のマーク長のパルス移動の影響を小さくしていることである。
また調整すべき記録エッジ位置の種類を、レーザ駆動パルスの始端エッジと終端エッジの2種類というように少なくすることで、調整時間の短縮効果が大きい。
【0054】
なお上記例にかかわらず、実際の調整においては、各マーク長の分類の数・組み合わせ、調整するパルス移動部の位置と組み合わせ、行列Cを学習する際のパルスの動かし方(ストラテジ設定ST1、ST2,ST3)は自由に選択することができる。
試し記録を行う際のストラテジ設定については、例えば初期ストラテジの設定をその1つにしてもよい。
【0055】
[2-3.第2の調整例]

第2の調整例は、上記第1の調整例よりは時間がかかるが、より精度の高い調整を求める場合に好適な例である。特には、マークエッジ位置誤差と記録エッジのシフト量の関係としての上述した特性1、特性2、及び特性3を考慮した調整方式といえる。
【0056】
調整のために検出するマークエッジ位置は、前述の<2>のように、5T以上のマークエッジ位置を基準として定義するものとし、熱干渉なども考慮して図9のように決定する。即ち、調整マークエッジ位置誤差として30個の要素があるとする。
図9においては、マーク長/スペース長として、2T、3T、4T、5T以上に分類し、始端マークエッジ位置誤差としては、その直前のスペース長と直後のマーク長により、15通りに分類する。
即ち2Tスペース、2Tマークのときの始端マークエッジ位置誤差Mepe2s2mから、4Tスペース、5T以上マークのときの始端マークエッジ位置誤差Mepe4s≧5mまでの15種類である。
また、終端マークエッジ位置誤差としては、その直前のマーク長と直後のスペース長により、15通りに分類する。
即ち2Tマーク、2Tスペースのときの終端マークエッジ位置誤差Mepe2m2sから、5T以上マーク、4Tスペースのときの終端マークエッジ位置誤差Mepe≧5m4sまでの15種類である。
このように、マークエッジ位置誤差として、始端マークエッジ位置誤差Mepe2s2mから終端マークエッジ位置誤差Mepe≧5m4sまでの30種類とする。
【0057】
これに対して、調整すべき記録エッジ位置wの種類は、図10のように30種類とする。
始端記録エッジ位置誤差(シフト量)としては、その直前のスペース長と直後のマーク長により、15通りに分類する。即ち2Tスペース、2Tマークのときの始端記録エッジ位置誤差w2s2mから、4Tスペース、5T以上マークのときの始端記録エッジ位置誤差w4s≧5mまでの15種類である。
また、終端記録エッジ位置誤差(シフト量)としては、その直前のマーク長と直後のスペース長により、15通りに分類する。即ち2Tマーク、2Tスペースのときの終端記録エッジ位置誤差w2m2sから、5T以上マーク、4Tスペースのときの終端記録エッジ位置誤差w≧5m4sまでの15種類である。
このように、調整のための記録エッジ位置誤差wとして、始端記録エッジ位置誤差w2s2mから終端記録エッジ位置誤差w≧5m4sまでの30種類を決める。
【0058】
つまりこの例は、上述した調整する記録エッジ位置の種類の数q=30の例である。
ここで、先の(数1)や(数6)のように記録エッジシフト量とマークエッジ位置誤差との関係が線形であると仮定した場合、この第2の調整例の場合には、(数7)のかたちとなる。


【数7】



即ち行列Cは30×30の行列となる。
この場合、31通りのストラテジ設定で試し記録し、行列CとベクトルMepe_init(この場合ベクトルMepe_initは、Mepe2s2m_init・・・Mepe≧5m4s_initの30通り)を求める。
そして求めた行列CとベクトルMepe_initから先の(数2)の計算を行うことによって、最適ストラテジを求めることができる。つまり始端記録エッジ位置誤差w2s2mから終端記録エッジ位置誤差w≧5m4sまでの30種類が算出でき、初期ストラテジを基準として、マーク/スペース長で分類された各場合における最適な始端記録エッジ位置、終端記録エッジ位置を算出できる。
【0059】
調整処理は基本的には先の図5と同様である。但し、31通りのストラテジ設定ST1〜ST31で試し記録を行うことになるため、ステップS105では、変数i≧31の確認処理を行って、試し記録と再生を31回完了したか否かを判断する。
31通りのストラテジ設定ST1〜ST31とは、例えば始端記録エッジ位置誤差w2s2mから終端記録エッジ位置誤差w≧5m4sまでの各値としては、一例として次のように設定する。
ST1:w2s2mからw≧5m4sをすべて0[ns]とする。
ST2:w2s2mを1[ns]、他(w3s2mからw≧5m4s)を0[ns]とする。
ST3:w3s2mを1[ns]、他(w2s2mとw4s2mからw≧5m4s)を0[ns]とする。
ST4:w4s2mを1[ns]、他(w2s2m、w3s2mとw≧5s2mからw≧5m4s)を0[ns]とする。
ST5:w≧5s2mを1[ns]、他(w2s2mからw4s2mとw2s3mからw≧5m4s)を0[ns]とする。



ST31:w≧5m4sを1[ns]、他(w2s2mからw≧5m3s)を0[ns]とする。
もちろん、31通りのストラテジ設定ST1〜ST31は、これ以外にも考えられる。
【0060】
そして31通りのストラテジ設定ST1〜ST31で記録再生を行い、それぞれについての30種類のマークエッジ位置誤差(Mepe2s2m〜Mepe≧5m4s)を検出したら、ステップS107で30×30の行列CとベクトルMepe_init(Mepe2s2m_init・・・Mepe≧5m4s_init)を求める。そしてステップS108で、先の(数2)に基づきマークエッジ位置誤差(Mepe2s2m〜Mepe≧5m4s)が0になるような補正量としての記録エッジ位置誤差(w2s2m〜w≧5m4s)を求め、30種類の記録エッジ位置としての最適な設定を算出し、ステップS109でライトストラテジ回路12に設定する。
なお、この場合もステップS108における最適ストラテジの算出処理においては、ステップS107で求まった干渉感度Cの逆行列C#を計算することになるが、このように計算した逆行列C#についても、システムコントローラ11は例えば内部のメモリ等に保持しておくものとなる。
【0061】
上記のような第2の調整例によれば、マーク/スペース長で分類した組み合わせ毎に最適な始端記録エッジ位置、終端記録エッジ位置として最適ストラテジを設定することができ、その分、より精度のよいライトストラテジ調整が可能になり、記録再生装置の記録性能のさらなる向上が図られる。
【0062】
ここで、第2の調整例としては、例えば特許文献3の図11及び図12に示すように、調整対象とする記録エッジ位置の種類を始端記録エッジ位置誤差w2s2mから終端記録エッジ位置誤差w≧5m≧5sまでの32種類(q=32)とすることもできる。
或いは、同文献の図13及び図14に示すように、調整すべき記録エッジ位置の分類を、直前/直後のスペース/マーク長のみでなく、さらにその前/後のマーク/スペース長も考慮した分類とすることもできる。すなわち、始端側記録エッジ位置については直前マーク、直前スペース、直後マークの組み合わせで分類し、終端側記録エッジ位置については直前マーク、直後スペース、直後マークの組み合わせで分類するというものである。
【0063】
何れにしても、上記により説明した第1の調整例、第2の調整例のような相互干渉を考慮した初期ストラテジ調整が行われることで、より高精度なライトストラテジ調整を実現できる。またそれと共に、相互干渉の程度を学習したものとなる行列C(干渉感度)についての、逆行列(又は疑似逆行列)C#の情報が得られる。
【0064】
<3.第1の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整>

上記のようにして本例としての初期ストラテジ調整が行われることに応じては、相互干渉を考慮したストラテジ調整を行う際に必要となる干渉感度Cの逆行列(又は疑似逆行列)C#の情報が保持されることになる。
実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整では、例えばこのように記録再生装置自らが予め算出して保持するに至ったC#の情報を用いたストラテジ調整を行うことで、相互干渉を考慮した高精度なウォーキングライトストラテジ調整を実現する。
【0065】
図11は、第1の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整手法について説明するための図である。
先ず前提として、ウォーキングライトストラテジ調整を行う際には、光ディスク1上のユーザデータエリアを、図のように複数のウォーキングライトストラテジ調整区間(以下、wWS区間と略称する)で区切ることになる。具体的に当該wWS区間は、例えば半径2mmごとの区間などとして設定される。
【0066】
個々のwWS区間内には、評価値を測定するための評価値測定区間が設定されている。本例の場合、ウォーキングライトストラテジ調整時においても、評価値としてはマークエッジ位置誤差を測定する。
【0067】
本実施の形態のウォーキングライトストラテジ調整の具体的な手順は、以下のようになる。
先ずウォーキングライトストラテジ調整は、記録指示に応じて光ディスク1上の或る記録対象区間に対する記録を開始するタイミングで開始することになる。
記録開始に伴い、先ずは図中の<1>と示すように、上記記録対象区間内における先頭のwWS区間に対する記録を行う。
ここで、第1の実施の形態では、このように記録を開始する先頭のwWS区間で設定するストラテジについては、それ以前において最後に設定されていたストラテジを用いる。例えば、初期ストラテジ調整後に初めて為された記録指示に応じて記録を開始するとき、上記先頭のwWS区間においては、初期ストラテジ調整で求まった最適ストラテジを設定することになる。
【0068】
そして、wWS区間の記録が完了したことに応じて、<2>と示すように、評価値測定区間を再生し評価値を測定する。
ここで、評価値として測定すべきマークエッジ位置誤差は、相互干渉に関してどの程度まで考慮するかに応じて異なる。具体的に、例えば先の第1の調整例のように特性1及び特性2までを考慮するとした場合には、2Tマーク、3Tマーク、4Tマークごとに、それぞれの始端マークエッジ位置誤差、終端マークエッジ位置誤差の値を測定することになる。
或いは、上述した特性1、特性2、及び特性3までを考慮した調整とする場合には、先の図9に示したように、マークエッジ位置誤差として、始端マークエッジ位置誤差Mepe2s2mから終端マークエッジ位置誤差Mepe≧5m4sまでの30種類を測定することになる。
【0069】
このように評価値測定区間における評価値の測定を行った上で、<3>と示すように、測定した評価値と逆行列(又は疑似逆行列)C#とに基づく最適ストラテジの算出を行う。すなわち、今回記録を行ったn番目のwWS区間で測定したマークエッジ位置誤差の値と、干渉感度Cの逆行列(又は疑似逆行列)C#とから、次に記録が行われるべきn+1番目のwWS区間で設定すべき最適ストラテジを逆算するものである。
なお確認のために述べておくと、逆行列(又は疑似逆行列)C#についても、相互干渉に関してどの程度まで考慮するかに応じて異なる値を保持しておくことになる。すなわち、上述した特性1、特性2までを考慮するのであれば、先の第1の調整例にて説明した2×2の行列Cについての逆行列C#を保持しておくものとなり、上述した特性1、特性2、及び特性3までを考慮するのであれば、第2の調整例にて説明した30×30の行列Cについての逆行列C#を保持しておくことになる。
【0070】
ここで本例において、上記n+1番目のwWS区間において設定すべきストラテジ(記録エッジ位置シフト量w(n+1)とする)は、具体的には次の(数8)により算出する。


【数8】



但し(数8)において、w(n)はn番目wWS区間にて設定していた記録エッジ位置シフト量、mはn番目wWS区間にて測定したマークエッジ位置誤差の値を表す。またαは0<α≦1による係数である。
【0071】
ここで、先の(数1)と(数2)との関係を考慮すれば明らかなように、(数8)における「C#m」の項は、マークエッジ位置誤差m=0とするために、n番目wWS区間における記録エッジ位置シフト量w(n)に対して加算すべき記録エッジシフト量を表すものとなる。つまり(数8)によれば、n+1番目のwWS区間にて設定すべき最適な記録エッジ位置シフト量(w(n+1))が求まるものである。
なお、上記係数αについてα=1と設定する(すなわち係数αを省略する)ことにれば、n番目wWS区間にて測定された評価値mと感度の逆行列C#とから逆算した最適ストラテジに完全追従することになる。本例において、「C#m」の項に係数αを与えるようにしていることの意義については後に改めて説明する。
【0072】
上記のようにして記録エッジ位置シフト量w(n+1)としての最適ストラテジを算出したことに応じては、<4>と示すように、算出したストラテジの設定状態で次のwWS区間を記録する。
wWS区間の記録が完了した後は、<5>により先の<2>と同様に評価値測定区間を再生して評価値を測定し、次の<6>において、先の<3>と同様に評価値と逆行列(又は疑似逆行列)C#に基づく最適ストラテジの算出を行う。
【0073】
このようにして実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整では、予め定められたwWS区間ごとに、「既記録部分での評価値の測定→評価値と逆行列(又は疑似逆行列)C#に基づく最適ストラテジの算出→算出した最適ストラテジの設定状態での次wWS区間の記録・・・」を繰り返し行うものとしている。
これにより、例えばディスク面内における記録感度の誤差や、ディスクのチルトやデフォーカス、さらには温度の上昇などに起因して真に最適なストラテジが変化する場合においても、実際に設定されるストラテジと上記真に最適なストラテジとが乖離してしまうことの防止を図ることができ、記録品質の安定化が図られる。
【0074】
そして、実施の形態のウォーキングライトストラテジ調整は、上記のように干渉感度Cの逆行列(又は疑似逆行列)C#を用いて最適とされるストラテジを算出するので、相互干渉を考慮したストラテジ調整を実現できる。
【0075】
また、上記実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整によれば、相互干渉を考慮したストラテジ調整を実現するにあたり、例えば従来のウォーキングライトストラテジ調整手法に基づき相互干渉を考慮したストラテジ調整を実現するとした場合のように、記録動作中にストラテジを振るといった必要性はないものとできる。これによれば、誤ったストラテジの設定により記録が行われる区間が生じないようすることができ、結果、記録品質の安定化を図ることができる。
【0076】
ここで、上記のような実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整において、最適ストラテジの算出に用いる逆行列(又は疑似逆行列)C#は、先に説明したような初期ストラテジ調整により記録再生装置が自ら算出して保持されたものを用いるものとしてもよいし、或いは、予め実験的に求めたものを用いるようにしてもよい。後者の場合、C#は、例えばメディアの種類ごとやMID(Manufacturer ID)ごとに求めておいたものを光ディスク1に記録しておき、記録再生装置側がそれを読み出してウォーキングライトストラテジ調整用に保持するものとすればよい。或いは、メディアの種類やMIDごとにC#を対応づけた情報を予め記録再生装置のメモリに格納しておくものとしてもよい。
なお、第1,第2の調整例のような初期ストラテジ調整を行って算出したC#をウォーキングライトストラテジ調整に用いるものとすれば、実際に装填されたメディアと記録再生装置との組み合わせに応じたより正確なC#を求めることができ、その分、ウォーキングライトストラテジの調整精度を向上できる。
【0077】
ところで、先の(数8)においては、係数αを0<α≦1と定義したが、該係数αを1よりも小さい値に設定する場合には、以下のような効果を得ることができる。
図12は、実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整で求めたストラテジの最適ストラテジに対する追従性について説明するための図である。この図12においては、横軸をウォーキングライトストラテジ調整回数(記録開始後からの温度変化)、縦軸をエッジシフト量[nsec]として、菱形プロットによる実線で最適ストラテジの変化を示すと共に、正方形プロットによる実線で係数α=0.2とした場合に設定されるストラテジの変化を示している。またこの図では比較として、係数α=1とした場合に設定されるストラテジの変化を三角形プロットによる実線で示している。
【0078】
ここで図12は、以下の条件でシミュレーションを行った結果を示すものである。なお図12では簡略化のため1次元の例とした。
<条件>
・最適ストラテジは0[nsec]〜1.5[nsec]まで変化する。
・評価値へのストラテジ感度=1
・測定誤差:ホワイトノイズで平均0[nsec]、標準偏差0.25[nsec]
・初期マークエッジ感度誤差=0
【0079】
係数αを1より小に設定することによっては、評価値の測定誤差や初期のマークエッジ感度誤差ずれに対して、より調整精度を高くすることができる。
ここで、上記「初期のマークエッジ感度誤差ずれ」とは、先の第1,第2の調整例のように初期ストラテジ調整により記録再生装置自らがC#を算出・保持する場合には、干渉感度Cを計算する際に生じた評価値の測定誤差や、ディスク面内での感度誤差を指す。
或いは、予め実験的に求めたC#をディスクに記録しておく手法を採る場合には、同一MIDでもロット間の感度誤差やディスク面内での感度誤差を指すものとなる。
【0080】
図12の結果を参照すると、α=1とした場合よりもα=0.2とした場合の方が、最適ストラテジに対する追従性が向上していることが分かる。このことからも理解されるように、上記初期のマークエッジ感度誤差ずれとしての、評価値の測定誤差やディスク面内での感度誤差がある点を考慮した場合には、係数αとして1より小さい値を設定することで、より精度の高いストラテジ調整とすることができる。
【0081】
なお確認のため述べておくと、α=1とした場合であっても、最適ストラテジの変化に対して追従している点には変わりはない。従って(数8)において係数αを除いた場合、すなわち、少なくともn番目wWS区間で設定していた記録エッジ位置シフト量w(n)と、n番目wWS区間での測定評価値mと、逆行列(又は疑似逆行列)C#とに基づいてn+1番目のwWS区間で設定すべき記録エッジ位置シフト量w(n+1)を求めるものとすれば、最適ストラテジからの乖離を抑制できるという効果は得られるものである。
【0082】
また、上記により説明した実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整手法(少なくとも(数8)において0<α≦1とする手法)は、誤差をフィードバックする手法となり、初期ストラテジ調整のように1回で完全に調整する必要がなく積分系のフィードバック構成にできるため、評価値の測定誤差や初期ストラテジ感度誤差を抑制でき、この点でも調整精度の向上が図られるものである。
【0083】
また、ウォーキングライトストラテジ調整は、特に本例の場合のようにLow to Highメディアに対する記録を行う場合に有効となる。
ここで、記録動作中におけるレーザ駆動パルス調整値についての最適調整値からの乖離を補正するための技術としては、いわゆるウォーキングOPCが知られているが、Low to Highメディアでは熱量に応じたマーク形成が行われるため、記録中の温度変化に対して、ウォーキングOPCで評価値として用いるβ値とエラーレートとの関係性が崩れるものとなってしまう。つまりこの結果、Low to Highメディアの場合にはウォーキングOPCを有効に機能させることが非常に困難となってしまう。
ウォーキングライトストラテジ調整を行う本実施の形態によれば、Low to Highメディアの場合にも、マークのエッジ位置の誤差を表す評価値に基づいて、記録中の温度変化等に起因する最適ストラテジからの乖離を有効に補正することができる。
【0084】
図13は、上記により説明した第1の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整を実現するための具体的な処理の手順について説明するためのフローチャートである。
なお、図13に示す処理は、システムコントローラ11が例えば内部のROM等のメモリに格納されたプログラムに従って実行する。
【0085】
先ず、ステップS201では、記録を開始すべき状態となるまで待機する。すなわち、例えば外部のホストコンピュータなどからの記録指示(記録コマンド)が為されるまで待機する。
記録を開始すべき状態となったことに応じては、先ずステップS202において、N値の設定を行う。後の説明からも明らかとなるように、上記N値は、記録指示されたデータ長から求まる、ディスク上で記録を行うべきwWS区間の数を表す数値となる。
そして、続くステップS203において、wWS区間カウント値nをn=1に設定する。
【0086】
次のステップS204では、n番目のwWS区間の記録を実行させる。
ここで、第1の実施の形態では、ステップS203とステップS204との間にストラテジ設定処理は設けられておらず、従ってn=1のwWS区間としての、記録を開始する先頭のwWS区間に対する記録を行う際は、記録指示以前から設定されていた(つまりそれ以前において最後に設定されていた)ストラテジが維持されるものとなる。
【0087】
上記ステップS204においてn番目wWS区間の記録を実行させた後は、ステップS205において、n=Nであるか否かを判別する。すなわち、記録指示に応じて定まった記録対象区間内における最後のwWS区間に対する記録を実行したか否かを判別するものである。
ステップS205において、n=Nであるとして肯定結果が得られた場合は、この図に示すウォーキングライトストラテジ調整処理は完了となる。
【0088】
一方、ステップS205においてn=Nではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS206に処理を進める。
ステップS206では、n番目のwWS区間内の評価値測定区間を再生させて評価値を測定させる。すなわち、光学ヘッド3及び再生系各部を制御してn番目wWS区間内の評価値測定区間の再生動作を実行させ、このときマークエッジ位置誤差検出回路9でマークエッジ位置誤差Mepeを検出(測定)させ、その値を取得する。
ここで、先の第1の調整例のように前述の特性1及び特性2までを考慮した調整とする場合、マークエッジ位置誤差検出回路9は、2Tマーク、3Tマーク、4Tマークごとにそれぞれの始端マークエッジ位置誤差mF、終端マークエッジ位置誤差mRを測定するように構成しておくことになる。
或いは、上述した特性1、特性2、及び特性3までを考慮した調整とする場合には、マークエッジ位置誤差検出回路9としては、先の図9に示した始端マークエッジ位置誤差Mepe2s2mから終端マークエッジ位置誤差Mepe≧5m4sまでの30種類を測定するように構成しておく。
【0089】
このようにn番目wWS区間の評価値を測定させた上で、次のステップS207において、評価値(m)、感度逆行列(C#)、今回設定ストラテジ(w(n))に基づき、次回ストラテジ(w(n+1))を算出する。
すなわち、ステップS206にて測定させた評価値(マークエッジ感度誤差)をm、n番目wWS区間にて設定していたストラテジ(記録エッジ位置シフト量)をw(n) 、システムコントローラ11が備えるメモリに予め保持された干渉感度Cの逆行列(又は疑似逆行列)をC#としたとき、先の(数8)による演算を行うことで、n+1番目のwWS区間にて設定されるべきストラテジ(記録エッジ位置シフト量)w(n+1)を算出するものである。
【0090】
算出したストラテジw(n+1)は、次のステップS208においてライトストラテジ回路12に設定する。
そして、このようにストラテジw(n+1)を設定した後、ステップS209において、wWS区間カウント値nを1インクリメント(n=n+1)し、図のように先のステップS204に戻る。
【0091】
以上の処理により、先に説明した第1の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整が実現される。
【0092】
<4.第2の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整>

続いて、第2の実施の形態について説明する。
先ず留意点として、以下において説明する第2〜第4の実施の形態は、ウォーキングライトストラテジ調整として、wWS区間ごとに先の(数8)による最適ストラテジの算出を行う点は第1の実施の形態の場合と共通となる。第2〜第4の実施の形態は、記録指示に応じて記録を開始する先頭のwWS区間におけるストラテジの設定に関して、第1の実施の形態とは異なる手法を採るものとなる。
【0093】
図14は、第2の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整手法について説明するための図である。
先ず第2の実施の形態では、図14に示されているように、光ディスク1上の記録領域(ユーザデータエリア)を複数の半径方向エリアで分割する。図示するように各半径方向エリアは、複数のwWS区間から成るものとされる。つまり第2の実施の形態では、ユーザデータエリアを複数のwWS区間で区切った上で、さらに複数のwWS区間ごとに、半径方向エリアを区切っているものである。
このように光ディスク1上に設定される各半径方向エリアに関しては、内周側から順に第1半径方向エリア、第2半径方向エリア、第3半径方向エリア、第4半径方向エリア・・・と称する。
【0094】
第2の実施の形態は、既に一部が記録済みとなった半径方向エリアの未記録部分を記録すべき状態となったときに、その未記録部分で最初に記録を行うwWS区間におけるストラテジとして、既にその半径方向エリアにおいて算出・保持されたストラテジを設定するものである。
【0095】
このような第2の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整の手法について具体的にみていく。
先ず、図中の<1>と示す第1の記録指示により、第2半径方向エリアの先頭のwWS区間から3番目のwWS区間を記録対象区間とした記録を行うべき状態となったとする。そしてそれに応じ、<2>と示すように、上記記録対象区間への記録及びウォーキングライトストラテジ調整を行ったとする。
【0096】
第2の実施の形態では、このように或る記録対象区間を対象とした記録及びそれに伴うウォーキングライトストラテジ調整の実行時において、<3>と示すように、ウォーキングライトストラテジ調整で最後に求めたストラテジを、現在の半径方向エリア(この場合は第2半径方向エリア)のストラテジとして保存する。この場合、先の図13に示したウォーキングライトストラテジ調整処理によると、上記最後に求めたストラテジとは、第2半径方向エリアの2番目のwWS区間で測定した評価値に基づき算出したストラテジとなる。
このように記録対象区間内で最後に求めたストラテジを、その半径方向エリア、すなわち上記記録対象区間内で最後にストラテジを求めたwWS区間が属する半径方向エリアのストラテジとして保存しておく。
【0097】
その後、図中の<4>と示す第2の記録指示により、第4半径方向エリアの先頭wWS区間から3番目のwWS区間を記録区間とした記録を行うべき状態となったとする。これに応じては、先の<2><3>と同様に、記録対象区間への記録及びウォーキングライトストラテジ調整(<5>)と、ウォーキングライトストラテジ調整で最後に求めたストラテジを現在の半径方向エリア(この場合は第4半径方向エリア)のストラテジとして保存する動作が行われる(<6>)。
【0098】
そして、図中の<7>と示す第3の記録指示により、第2半径方向エリアの4番目wWSを記録対象区間とした記録を行うべき状態となったとする。
第2の実施の形態では、このように既に一部記録済みとなった半径方向エリアの未記録部分を対象とした記録を開始すべき状態となったことに応じては、既にその半径方向エリアに対応づけて保存されているストラテジを設定して記録を開始する。
ここで、ディスク面内においてチルトの発生量やデフォーカス量が異なることに起因して、半径方向のエリアごとに最適ストラテジが異なる場合がある。つまりこのことに伴い、半径方向エリアごとに最適ストラテジが異なる場合がある。
そのような場合において、第2の実施の形態のように記録開始時のストラテジとしてエリアごとに保存されたストラテジを設定するものとすれば、記録開始時点における設定ストラテジと最適ストラテジとのずれを抑制することができ、結果、より調整精度を上げることができる。
【0099】
なお確認のために述べておくと、図14における<2>や<5>のように未記録の半径方向エリアに対して初回に記録を開始すべき状態となったときは、記録開始時に設定するストラテジとしては、第1の実施の形態の場合と同様にそれ以前の最後に設定されていたストラテジをそのまま用いることになる。
【0100】
図15は、第2の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整を実現するための具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
この図15に示す処理としても、システムコントローラ11が例えば内部のROM等のメモリに格納されたプログラムに基づき実行するものである。
なお、以降において説明するフローチャートにおいて、既に説明済みとなったものと同様の処理に関しては同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0101】
この図15と先の図13とを比較すると、第2の実施の形態の場合の処理手順は、第1の実施の形態の場合の処理手順と比較して、ステップS203とステップS205との間にステップS301とステップS302とが挿入され、且つステップS303が追加された点が異なる。
【0102】
具体的この場合は、ステップS202においてn=1に設定した後、ステップS301において、初回に記録するエリアか否かを判別する。すなわち、記録指示に応じて記録を開始しようとしている半径方向エリアが、未記録の半径方向エリアであるか否かを判別するものである。
ステップS301において、初回に記録するエリアであるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS204に処理を進める。つまりこの結果、未記録の半径方向エリアに初回に記録を行う場合は、それ以前に設定されていたストラテジがそのまま維持されて記録が開始されるものである。
【0103】
一方、ステップS301において初回に記録するエリアではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS302に処理を進めてそのエリアの保存ストラテジを設定する。すなわち、記録を開始すべき半径方向エリアが初回に記録するエリアでない場合は、後述するステップS303の処理により既にその半径方向エリアについてのストラテジが保存されているので、該ステップS302においては、そのストラテジを読み出してライトストラテジ回路12に設定する。
当該ステップS302の処理を実行した後は、ステップS204に進む。
【0104】
またこの場合は、ステップS205においてn=Nであるとの肯定結果が得られた(すなわち記録を行うべきすべてのwWS区間への記録を行った)ことに応じて、ステップS303に処理を進める。
ステップS303では、最後に算出したストラテジを現在のエリアの最適ストラテジとして保存する処理を実行する。すなわち、記録対象区間内において最後に算出したストラテジを、該ストラテジを算出したwWS区間が属する半径方向エリアと対応づけて、例えばシステムコントローラ11の内部に備えられたメモリなどの所要のメモリに保存する。
【0105】
当該ステップS303の処理の実行を以て、この図に示されるウォーキングライトストラテジ調整処理は完了となる。
【0106】
<5.第3の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整>

図16は、第3の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整手法について説明するための図である。
ここで、以降で説明する第3及び第4の実施の形態は、半径位置に応じた予測最適ストラテジをもち、未記録の半径方向エリアへの初回記録時に、当該半径位置に応じた予測最適ストラテジを設定することを前提とした手法となる。
そして、第3の実施の形態は、このような予測最適ストラテジを用いることを前提とした上で、半径方向エリアごとに、上記半径位置に応じた予測最適ストラテジと実際の算出ストラテジとの誤差の情報を算出し保存しておくことで、既記録の半径方向エリアへの記録開始時において、半径位置に応じた予測最適ストラテジの誤差をキャンセルした良好なストラテジが設定できるようにするものである。
【0107】
先ず、第3の実施の形態では、エリアによる最適ストラテジの変化が線形であるものと仮定して、図のような半径位置に応じた予測最適ストラテジを予め定めておく。
具体的に本例の場合は、先の第1の調整例又は第2の調整例のような初期ストラテジ調整を、最内周エリア及び最外周エリアの双方で実行するものとして、図中に○inと○outとして示す最内周側における最適ストラテジと最外周側における最適ストラテジとを得、それらの値から半径位置に応じた最適ストラテジを予測した図のような一次直線(一次関数)を導き出しておくものとしている。
この場合のシステムコントローラ11は、上記のようにして導出した半径位置に応じた予測最適ストラテジを表す一次関数の情報を、例えば内部のメモリ等に保持する。
【0108】
ここで、図16中の<1>と示す記録指示により、ディスク上の或る半径方向エリアにおける先頭のwWS区間から3番目のwWS区間を対象とした記録を開始すべき状態となったとする。
当該<1>の記録指示に応じては、<2>と示すように、●1のストラテジを設定して記録を開始する。つまり第3の実施の形態では、未記録の半径方向エリアに対して初回に記録を行う際には、記録開始位置に応じた予測最適ストラテジを設定して記録を開始するものである。
このように記録開始位置における予測最適ストラテジを設定して記録を開始することで、先の第1,第2の実施の形態の場合よりも、記録開始時における設定ストラテジと最適ストラテジとのずれを抑制することができる。
【0109】
上記のように記録を開始した後は、先の各実施の形態と同様に記録対象区間への記録とwWS区間ごとのウォーキングライトストラテジ調整を行う。
そして、第3の実施の形態では、このように記録対象区間への記録及びウォーキングライトストラテジ調整を行う過程において、<3>と示すように、最後に求めたストラテジとその半径位置での予測最適ストラテジとの誤差を、そのエリアの誤差として保存する。具体的にこの場合は、記録対象区間において最後に求められた2番目のwWS区間における算出ストラテジ(×1)と、当該2番目のwWS区間の半径位置での予測最適ストラテジ(●2)との誤差(Δ1)を算出し、その値を上記最後にストラテジを求めた2番目のwWS区間が属する半径方向エリアと対応づけてメモリに保存することになる。
【0110】
上記<1>の記録指示の後、<4>と示す第2の記録指示により、別の半径方向エリア内の1番目のwWS区間から3番目wWS区間を記録対象区間とした記録を開始すべき状態となったとする。
この場合も対象とする半径方向エリアは未記録であるので、記録開始位置での予測最適ストラテジ(この場合は●3)を設定して記録を開始し(<5>)、その後、記録対象区間内で最後に求めたストラテジ(×2)とその半径位置での予測最適ストラテジ(●4)との誤差(Δ2)を、そのエリアの誤差として保存することになる(<6>)。
【0111】
そしてその後、<7>と示す第3の記録指示により、先の<1>の記録指示で記録対象とした半径方向エリアの未記録部分を対象とした記録を開始すべき状態となったとする。
これに応じては<8>と示すように、●5のストラテジからそのエリアに保存された誤差(Δ1)をキャンセルしたストラテジ(☆)で記録を開始する。すなわち、既に一部記録が行われた半径方向エリアの未記録部分に記録を開始するときは、その記録開始半径位置での予測最適ストラテジを、記録対象とする半径方向エリアに既に対応づけて保存されている誤差により補正したストラテジを設定して、記録を開始するものである。
【0112】
このような第3の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整を行うことで、先の各実施の形態のウォーキングライトストラテジ調整を行う場合よりも記録開始時点においてより最適ストラテジに近いストラテジを設定することができ、その結果、より調整精度を上げることができる。
【0113】
図17は、第3の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整を実現するための具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
なおこの図17に示す処理としてもシステムコントローラ11が例えば内部のメモリ等に格納されたプログラムに従って実行するものである。
【0114】
この図17と先の図15とを比較して分かるように、この場合の処理手順は、第2の実施の形態の場合の処理手順と比較して、ステップS301とステップS204との間にステップS401とステップS402とが挿入されると共に、ステップS303が省略された上で、ステップS403とステップS404とが追加される点が異なる。
【0115】
この場合は、ステップS301の判別処理により初回に記録するエリアであるとの肯定結果が得られた場合に、ステップS401に進み、半径位置に応じた予測最適ストラテジを設定する。すなわち、先に説明した半径位置に応じた予測最適ストラテジを表す一次関数の情報に基づき、記録開始半径位置に応じた予測最適ストラテジを算出し、該算出したストラテジをライトストラテジ回路12に設定するものである。
【0116】
またステップS301において、初回に記録するエリアではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS402に進み、半径位置に応じた予測最適ストラテジから、保存したそのエリアの誤差をキャンセルしたストラテジを設定する。すなわち、記録を開始する半径方向エリアが既に一部記録済みで初回に記録するエリアでないとされる場合は、後述するステップS404にてそのエリアの誤差の値が保存されているので、該誤差の値を用いて、上記予測最適ストラテジの誤差をキャンセルしたストラテジを求め、該ストラテジをライトストラテジ回路12に対して設定するものである。
【0117】
上記ステップS401、又は上記ステップS402の処理を実行した後は、ステップS204に処理を進めることになる。
【0118】
またこの場合は、ステップS205の判別処理によりn=Nであるとの肯定結果が得られたことに応じて、ステップS403に処理を進める。
ステップS403では、n−1番目wWS区間の半径位置に応じた予測最適ストラテジと最後に算出したストラテジとの誤差を計算する。つまり、記録対象区間内において最後にストラテジを算出したn−1番目wWS区間の半径位置に応じた予測最適ストラテジと、該n−1番目wWS区間にて算出したストラテジとの誤差Δを計算するものである。
【0119】
そして、続くステップS404で、計算した誤差をそのエリアの誤差として保存する。つまり、計算した誤差Δを、上記最後にストラテジを算出したn−1番目wWS区間が属する半径方向エリアと対応づけてメモリに保存するものである。
当該ステップS404の処理の実行を以て、この図に示すウォーキングライトストラテジ調整処理は完了となる。
【0120】
なお、上記による説明では、半径位置に応じた予測最適ストラテジを表す情報を関数によりもつ場合を例示したが、もちろん、このような半径位置に応じた予測最適ストラテジを表す情報はテーブルによりもつことも可能である。
また、半径位置に応じた予測最適ストラテジを表す情報は、最内周エリアと最外周エリアで初期ストラテジ調整を行った結果から記録再生装置自らが求めたものではく、予め実験的に求められたものを使用することももちろん可能である。
【0121】
<6.第4の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整>

第4の実施の形態は、第3の実施の形態のような半径方向エリアごとの誤差Δの情報を、さらに温度ごとに分けて管理するようにしたものである。
先ず、第4の実施の形態においては、次の図18に示すような半径方向エリアごとの温度−誤差テーブルを予め記録再生装置に保持させておくことが前提となる。
図示するように各温度−誤差テーブルは、所定の温度範囲ごとに誤差の値を対応づけたデータ構造を有する。この場合、温度範囲は10℃ごとの範囲とし、具体的には、図のように0〜9℃、10〜19℃、20〜29℃、30〜39℃、40〜49℃、50〜59℃、60℃〜の範囲で分けるものとしている。
【0122】
本例において、各温度−誤差テーブルに格納する誤差の値は、例えばメディアの種類やMIDごとなど別に応じて予め実験的に求めた値を格納しておく。各温度−誤差テーブルの情報は、光ディスク1に対して記録しておくものとしてもよいし、或いは記録再生装置側にMIDの別などメディア種別ごとの各温度−誤差テーブルを保持させておき実際に装填された光ディスク1の種別に応じた各温度−誤差テーブルを読み出して使用するものとしてもよい。
【0123】
図19は、第4の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整手法について説明するための図である。
この図19では、第2半径方向エリアを対象とした記録が行われる際の動作を例に、第4の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整の手法について説明する。
例えば<1>と示す第1の記録指示により、第2半径方向エリアの先頭のwWS区間から4番目のwWS区間を対象とした記録を行うべき状態となったとする。
これに応じては、<2>と示すように、先ずは温度を測定した上で、半径位置に応じた予測最適ストラテジから、温度−誤差テーブルの現温度に対応する誤差をキャンセルした値を設定して記録を開始する。
これにより、記録開始位置において、ディスク面内で最適ストラテジが異なる点と温度により最適ストラテジが異なる点の双方を考慮したストラテジ設定を行うことができる。
【0124】
また、上記のように記録対象区間に対する記録を開始した後は、先の第3の実施の形態の場合と同様に、最後に求めたストラテジとその半径位置での予測最適ストラテジとの誤差を計算する(<3>)。
そしてこの場合は、上記のように誤差を計算した後において、温度を測定し、そのエリアの温度−誤差テーブルにおける測定温度に対応する誤差の値を、計算した誤差の値に更新する(<4>)。これにより、該当するエリアの温度−誤差テーブルにおける該当温度範囲の誤差の値が、実際に算出した誤差の値に更新されることになる。
図中では、<4>において測定された温度が例えば32℃であったことに応じて、温度−誤差テーブルにおける30〜39℃の温度範囲に対応する誤差の値が実際に算出された誤差の値に更新された場合を例示している。
【0125】
その後、図中の<5>と示す記録指示により、第2半径方向エリアの未記録部分を対象とした記録を行うべき状態となったとする。
これに応じては、先の<2>と同様に、温度を測定し、半径位置に応じた予測最適ストラテジから温度−誤差テーブルの現温度に対応する誤差をキャンセルした値を設定して記録を開始する(<6>)。
図示もしているように、このとき、<6>で測定した現温度が30〜39℃の範囲内であれば、この場合の記録開始位置では、その半径位置に応じた予測最適ストラテジを実際にそのエリアで算出された誤差の値を用いて補正したより正確なストラテジを設定して記録を開始することができる。つまりこのことで、ディスク面内で最適ストラテジが異なる点と温度に応じて最適ストラテジが変化する点の双方を考慮した記録開始位置でのストラテジ設定を、実際に算出された誤差の値を用いてより精度良く行うことができる。
【0126】
図20は、上記により説明した第4の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整を実現するための記録再生装置の要部のブロック図である。
先の図1に示した記録再生装置との差異は、光学ヘッド3内に温度センサ3Aが設けられる点である。図示するように温度センサ3Aによる測定温度情報は、システムコントローラ11に対して供給される。
【0127】
図21は、第4の実施の形態としてのウォーキングライトストラテジ調整を実現するための具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
なお図21に示す処理としてもシステムコントローラ11が例えば内部のメモリに格納されたプログラムに従って実行するものである。
【0128】
この図21と先の図17とを比較して分かるように、この場合の処理手順は、第3の実施の形態の場合の処理手順と比較して、ステップS203とステップS204との間にステップS501とステップS502とが挿入されると共に、ステップS403及びステップS404が省略された上で、ステップS503〜ステップS505が追加される点が異なる。
【0129】
この場合は、ステップS203においてn=1と設定した後に、ステップS501において温度取得処理を実行する。すなわち、図20に示した温度センサ3Aによる測定温度の情報を取得する。
【0130】
そして、ステップS501において温度を取得した後は、ステップS502において、半径位置に応じた予測最適ストラテジからそのエリアの現温度に応じた誤差をキャンセルしたストラテジを設定する。すなわち、記録開始半径位置に応じた予測最適ストラテジを求めると共に、記録開始位置が属する半径方向エリアについての温度−誤差テーブルからステップS501にて取得した温度に対応する誤差の値を取得する。そして、上記予測最適ストラテジから上記誤差の値をキャンセルしたストラテジを算出して、該算出したストラテジをライトストラテジ回路12に対して設定する。
このようなステップS502による記録開始位置でのストラテジ設定処理を実行した後、ステップS204に処理を進める。
【0131】
またこの場合は、ステップS205の判別処理によりn=Nであるとの肯定結果が得られたことに応じて、ステップS503に処理を進める。
ステップS503では、先の図17におけるステップS403と同様に、n−1番目wWS区間の半径位置に応じた予測最適ストラテジと最後に算出したストラテジとの誤差を計算する。
そしてその後、ステップS504において、温度取得処理を実行する。
【0132】
その上で、次のステップS505において、現エリアの温度−誤差テーブルにおける現温度に対応する誤差の値を、計算した誤差の値に更新する。すなわち、上記最後にストラテジを算出したwWS区間が属する半径方向エリアについての温度−誤差テーブルにおいて、ステップS504による取得温度に対応する温度範囲に対して対応づけられている誤差の値を、ステップS503にて計算した誤差の値に更新するものである。
当該ステップS505の処理の実行を以て、この図に示すウォーキングライトストラテジ調整処理は完了となる。
【0133】
ここで、上記による説明では、各温度−誤差テーブルに対して、実験的に求めた誤差の情報を予め格納しておく場合を例示したが、初期状態では誤差の値は未格納としておき、実際に算出した誤差の値のみを格納(更新)していくようにするといったこともできる。
当然のことながらその場合には、初回に記録を行う半径方向エリアについての誤差の値は未格納であるため、その記録開始位置では、第3の実施の形態の場合と同様に該記録開始半径位置に応じた予測最適ストラテジを設定することになる。またこのことからも理解されるように、この場合は、初回に記録を行うエリアについて、記録開始時点での温度測定は不要とすることができ、また、第3の実施の形態の場合と同様に、記録を開始する半径方向エリアが初回に記録するエリアであるか否かの判別を行う必要がある。具体的にこの場合は、初回に記録するエリアであれば、第3の実施の形態の場合と同様に記録開始半径位置での予測最適ストラテジを設定し、初回に記録するエリアでない場合には、先ずは測定温度を取得し、該当エリアの温度−誤差テーブルに現温度に対応する誤差の値が格納されていればその値で予測最適ストラテジを補正したストラテジで記録を開始し、現温度に対応する誤差の値が格納されていなければ予測最適ストラテジを設定して記録を開始することになる。
このような手法、すなわち初期状態で温度−誤差テーブルに誤差の値が未格納とされる場合に対応した手法とする場合は、既記録の半径方向エリアについて記録を行う場合で且つ現温度に対応する誤差の値が既に格納されている場合において、ディスク面内で最適ストラテジが異なる点と温度により最適ストラテジが変化する点の双方を考慮した記録開始時のストラテジ設定を実現することができる。
【0134】
また、上記による説明では、半径方向エリアごとに温度−誤差の対応関係を表す情報をテーブルによりもつ場合を例示したが、もちろん、関数(近似式)でもつようにすることも可能である。
【0135】
<7.変形例>

以上、実施の形態について説明してきたが、本発明は上記例に限定されず、具体的な装置構成や調整処理手順、調整する記録エッジ位置の設定、検出するマークエッジ位置誤差の設定などにおいて多様な変形例が考えられる。
また評価値とするマークエッジ位置は、再生波形とスライスレベルとのクロス点と再生クロックとの時間誤差とする以外に、例えば次のような評価値とすることも可能である。即ち、ビタビ復号に於いて、復号ビット列のゼロクロス部前後のマーク・スペースの組み合わせ毎に、最尤パスとその1ビットシフト(エッジシフト)に相当する対抗パスとのメトリック差の分布を統計処理し、エッジ及び振幅ずれの評価指標としたものでもよい。
また第1,第2の調整例のような初期ストラテジ調整は、それを複数回繰り返すことでより精度よくストラテジを調整することができる。また同時に、より精度の良い干渉感度Cの逆行列(又は疑似逆行列)C#を求めることができる。
【0136】
また、これまでの説明では、本発明をLow to Highメディアとしての光記録媒体の記録時に適用する場合を例示したが、もちろん、マーク形成部分で反射率が低下するHigh to Lowメディアとしての光記録媒体に対しても本発明は好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0137】
1 光ディスク、3 光学ヘッド、3A 温度センサ、5 A/D変換器、6 PLL回路、7 PR等化回路、8 最尤復号回路、9 マークエッジ位置誤差検出回路、10 レーザドライバ、11 システムコントローラ、12 ライトストラテジ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光記録媒体に対してレーザ光を照射して、光記録媒体上でマーク及びスペースで表現される情報の書込及び読出を行う光学ヘッド部と、
記録する情報に応じたレーザ駆動パルスを生成して上記光学ヘッド部に供給し、上記光学ヘッド部に、記録のためのレーザ光照射を実行させるレーザ駆動パルス生成部と、
上記光学ヘッド部により上記光記録媒体から読み出した信号に基づき、上記マークのエッジ位置の誤差を表す評価値を測定する評価値測定部と、
制御部とを備え、
上記制御部は、
記録指示された情報の記録中において、予め定められたストラテジ調整区間ごとに、上記評価値測定部により上記ストラテジ調整区間内の既記録部分についての上記評価値を測定させ、測定された既記録部分の上記評価値と、記録エッジ位置のシフト量に対する上記マークの各エッジ位置についての上記評価値の挙動を表す干渉感度の情報とに基づき、各記録エッジ位置のシフト量を求めると共に、
該求めた各記録エッジ位置のシフト量が上記レーザ駆動パルス生成部に設定された状態で次に記録を行うべき上記ストラテジ調整区間に対する記録動作が実行されるように記録制御を行う
記録再生装置。
【請求項2】
上記干渉感度の逆行列又は疑似逆行列の情報が予め所要の記憶部に対して記憶されており、
上記制御部は、
上記評価値測定部により測定させた上記既記録部分の上記評価値と、上記記憶部に記憶された上記干渉感度の逆行列又は疑似逆行列の情報とに基づき、上記各記録エッジ位置のシフト量を求める
請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項3】
上記制御部は、
上記評価値測定部により測定させた上記既記録部分の上記評価値と、上記記憶部に記憶された上記干渉感度の逆行列又は疑似逆行列の情報と、上記既記録部分で設定していた各記録エッジ位置のシフト量とに基づき、上記各記録エッジ位置のシフト量を求める
請求項2に記載の記録再生装置。
【請求項4】
上記制御部は、
上記評価値測定部により測定させた上記既記録部分の上記評価値をm、上記記憶部に記憶された上記干渉感度の逆行列又は疑似逆行列をC#、上記既記録部分で設定していた各記録エッジ位置のシフト量をw(n)としたとき、


【数1】



(但し、0<α≦1である)による演算を行って、上記w(n+1)としての、上記次に記録を行うべき上記ストラテジ調整区間において設定されるべき上記各記録エッジ位置のシフト量を求める
請求項3に記載の記録再生装置。
【請求項5】
上記αとして0<α<1による値を用いる請求項4に記載の記録再生装置。
【請求項6】
上記制御部は、
上記レーザ駆動パルスにおいて調整すべき記録エッジ位置の種類がq種類(qは2以上の整数)であり、上記評価値の測定対象とすべき上記マークのエッジ位置の種類がp種類(pは2以上の整数)である場合において、
上記q種類のそれぞれの記録エッジ位置の、初期ストラテジとして予め設定された記録エッジ位置からのシフト量をベクトルwとし、上記p種類のそれぞれの上記マークのエッジ位置について測定される上記評価値をベクトルmとし、上記初期ストラテジとしての記録エッジ位置の設定状態にて測定される上記p種類のそれぞれの上記マークについての上記評価値をminitとし、上記干渉感度をp×qの行列Cで表したときに、


【数2】



による関係が成り立つと仮定して、各記録エッジ位置についてq+1通りの記録エッジシフト量の設定状態で記録動作を実行させ、それにより記録された信号のそれぞれについて、上記p種類の上記マークのエッジ位置についての上記評価値を上記評価値測定部に測定させ、測定された評価値と上記各記録エッジ位置についての上記q+1通りの記録エッジシフト量の情報とに基づき上記干渉感度としての行列Cと上記評価値minitとを求めた上で、これら評価値minitと上記干渉感度の逆行列又は疑似逆行列C#とを用いて、


【数3】



による演算を行って、上記q種類の各記録エッジ位置についての最適とされる記録エッジシフト量を求めると共に、
上記干渉感度の逆行列又は疑似逆行列C#を上記記憶部に記憶させる
請求項4に記載の記録再生装置。
【請求項7】
上記光記録媒体はディスク状記録媒体とされ、上記光記録媒体上のユーザデータエリアが複数の上記ストラテジ調整区間を含んで成る半径方向エリアによって複数に分割されており、
上記制御部は、
上記記録指示に応じた上記光記録媒体上の所要の記録対象領域への記録時に、上記記録対象領域内において最後に上記各記録エッジ位置のシフト量を求めた最終ストラテジ調整区間における各記録エッジ位置のシフト量を、上記最終ストラテジ調整区間が属する上記半径方向エリアと対応づけて所要の記憶部に記憶させると共に、
新たな記録指示により、既に一部記録の行われた上記半径方向エリアの未記録領域を対象とした記録を開始すべき状態となったとき、その半径方向エリアと対応づけられて上記所要の記憶部に記憶された上記各記録エッジ位置のシフト量が上記レーザ駆動パルス生成部に設定された状態で記録動作が開始されるように制御を行う
請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項8】
上記光記録媒体はディスク状記録媒体とされ、上記光記録媒体上のユーザデータエリアが複数の上記ストラテジ調整区間を含んで成る半径方向エリアによって複数に分割されており、
上記制御部は、
上記光記録媒体の半径位置ごとに最適とされる上記各記録エッジ位置のシフト量を予測した半径−予測最適ストラテジ対応情報を保持していると共に、
上記記録指示に応じた上記光記録媒体上の所要の記録対象領域への記録時に、上記記録対象領域において最後に上記各記録エッジ位置のシフト量を求めた最終ストラテジ調整区間における上記各記録エッジ位置のシフト量と、上記半径−予測最適ストラテジ対応情報から求まる上記最終ストラテジ調整区間の半径位置に応じた上記各記録エッジ位置のシフト量の予測最適値との誤差を算出し、算出した誤差の値を、上記最終ストラテジ調整区間が属する半径方向エリアと対応づけて所要の記憶部に記憶させると共に、
新たな記録指示により、既に一部記録の行われた上記半径方向エリアの未記録領域を対象とした記録を開始すべき状態となったとき、上記半径−予測最適ストラテジ対応情報から求まる記録開始半径位置に応じた上記各記録エッジ位置のシフト量の予測最適値から、上記記録を開始すべき上記半径方向エリアと対応づけられて上記記憶部に記憶された上記誤差の値をキャンセルした上記各記録エッジ位置のシフト量を求め、該求めた上記各記録エッジ位置のシフト量が上記レーザ駆動パルス生成部に設定された状態で記録動作が開始されるように制御を行う
請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項9】
上記制御部は、
上記記録指示により未記録の上記半径方向エリアを対象とした記録を開始すべき状態となったときは、上記半径−予測最適ストラテジ対応情報から求まる記録開始半径位置に応じた上記各記録エッジ位置のシフト量の予測最適値が上記レーザ駆動パルス生成部に設定された状態で記録動作が開始されるように制御を行う
請求項8に記載の記録再生装置。
【請求項10】
上記光記録媒体はディスク状記録媒体とされ、上記光記録媒体上のユーザデータエリアが複数の上記ストラテジ調整区間を含んで成る半径方向エリアによって複数に分割されており、
上記制御部は、
上記光記録媒体の半径位置ごとに最適とされる上記各記録エッジ位置のシフト量を予測した半径−予測最適ストラテジ対応情報を保持していると共に、
温度を測定する温度測定部と、
上記半径−予測最適ストラテジ対応情報から求まる各記録エッジ位置のシフト量の予測最適値についての誤差の値を所定の温度範囲ごとに格納する温度−誤差対応情報が、上記半径方向エリアごとに保持された記憶部とがさらに備えられ、
上記制御部は、
上記記録指示に応じた上記光記録媒体上の所要の記録対象領域への記録時に、上記記録対象領域において最後に上記各記録エッジ位置のシフト量を求めた最終ストラテジ調整区間における上記各記録エッジ位置のシフト量と、上記半径−予測最適ストラテジ対応情報から求まる上記最終ストラテジ調整区間の半径位置に応じた上記各記録エッジ位置のシフト量の予測最適値との誤差を算出すると共に、上記温度測定部による測定温度を取得し、上記記憶部に保持されている上記最終ストラテジ調整区間が属する半径方向エリアの温度−誤差対応情報内において上記取得した温度が属する温度範囲と対応づけられる誤差の値を、上記算出した誤差の値に更新すると共に、
新たな記録指示により記録を開始すべき状態となったときは、上記温度測定部による測定温度を取得し、該取得した測定温度の情報と、上記記憶部に保持される記録を開始すべき半径方向エリアについての上記温度−誤差対応情報と、上記半径−予測最適ストラテジ対応情報から求まる記録開始半径位置に応じた上記各記録エッジ位置のシフト量の予測最適値とに基づき求めた上記各記録エッジ位置のシフト量が、上記レーザ駆動パルス生成部に設定された状態で記録動作が開始されるように制御を行う
請求項1記載の記録再生装置。
【請求項11】
光記録媒体に対してレーザ光を照射して、光記録媒体上でマーク及びスペースで表現される情報の記録を行う記録装置のレーザ駆動パルス調整方法であって、
記録指示された情報の記録中において、予め定められたストラテジ調整区間ごとに、上記ストラテジ調整区間内の既記録部分から読み出した信号に基づき上記マークのエッジ位置の誤差を表す評価値を測定し、測定した既記録部分の上記評価値と、記録エッジ位置のシフト量に対する上記マークの各エッジ位置についての上記評価値の挙動を表す干渉感度の情報とに基づき、各記録エッジ位置のシフト量を求めると共に、
該求めた各記録エッジ位置のシフト量が上記レーザ駆動パルスの調整パラメータとして設定された状態で次に記録を行うべき上記ストラテジ調整区間に対する記録動作を実行する
レーザ駆動パルス調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−175695(P2011−175695A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37513(P2010−37513)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】