説明

記録媒体および情報再生装置

【課題】 記録容量を低下させることなく、簡易な方法で記録媒体のコア層に対する入射光の相対的な傾きを補正することが可能な記録媒体および情報再生装置を提供する。
【解決手段】 線状ビームCLは、記録媒体端面15において、反射素子11a,11bからは反射光RLa,RLbとしてそれぞれ反射され、それ以外では、コア層101cに結合して導波光PWとなる。導波光PWは、コア層101cを伝搬中に、コア層101cに形成されたホログラム16によって散乱され、回折光DWとして記録媒体表面100から出射される。回折光DWは、撮像素子12の撮像面に、ホログラム画像IMとして結像される。撮像素子22は、ホログラム画像IMを取り込むことによって、コア層101cにホログラム16として記録された情報を読み出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記録媒体および情報再生装置に関し、より特定的には、ホログラムを用いて情報を記録する記録媒体、およびその記録媒体に記録された情報を再生する情報再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポケットに入れて持ち運びが可能な情報カードとして、テレホンカードのような磁気カードが一般に用いられてきた。近年では、磁気カードの他にIC(Integrated Circuit)カードが登場し、電子商取引への適用が考えられている。しかし、磁気カードは、安価ではあるものの、外部磁化による情報の劣化や偽造などの危険性が高い。ICカードは、セキュリティが高く偽造されにくいが、1枚あたりのコストが高く、情報記録媒体としてはビット単価が高くなる。
【0003】
このような課題を克服するために考案されたのが、ホログラム画像を生成する回折格子を含む平面型シングルモード光導波路を多層に重ねて作った平面導波型のホログラム情報記録媒体である。平面導波型のホログラム情報記録媒体については、特許文献1,2に詳細に記載されており、以下では簡単に紹介する。
【0004】
平面型シングルモード光導波路とは、石英やプラスチックなどの板状の透明な媒質をコア層とし、それよりも低い屈折率の媒質をクラッド層として両側から挟んだ、いわゆるスラブ光導波路である。スラブ光導波路は、コア層に光を閉じ込めることで面内方向に光を伝搬させることができ、半導体レーザ等の光通信用の部品に応用されている。平面導波型のホログラム情報記録媒体は、このスラブ光導波路を幾重にも重ね、かつ各導波層がホログラムを有することを特徴としている。
【0005】
図16は、ホログラム情報記録媒体20に記録された情報を再生する従来の情報再生装置2000の概略的な構成を示した斜視図である。図16を参照して、情報再生装置2000は、撮像素子22と、シリンドリカルレンズ24とを含む。撮像素子22は、たとえば、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等の2次元光アレイ検出器、または光スポット位置検出器などである。情報再生装置2000は、平面導波路型のホログラム情報記録媒体20の情報を再生する。
【0006】
ホログラム情報記録媒体20は、記録媒体端面25を有し、記録媒体表面200からクラッド層202a,コア層201a,クラッド層202b,コア層201b,…,クラッド層202e,コア層201e,クラッド層202fが順に積層された構造を有する。コア層201a,201b,・・・は、クラッド層202a,202bよりも屈折率の高い導波層である。コア層201a,201b,・・・には、屈折率を変調する等の方法で予め情報が重畳された散乱要因(ホログラム)26が形成されている。
【0007】
図16を参照して、図示しないレーザ光源から出射された平面光波PLは、シリンドリカルレンズ24によって、記録媒体端面25に円筒状の波面を有する線状ビームCLとして集光される。線状ビームCLは、コア層201cに結合して導波光PWとなる。導波光PWは、コア層201cを伝搬中に、コア層201cに形成されたホログラム26によって散乱され、回折光DWとして記録媒体表面200から出射される。回折光DWは、撮像素子22の撮像面に、ホログラム画像IMとして結像される。
【0008】
撮像素子22は、ホログラム画像IMを取り込むことによって、コア層201cにホログラム26として記録された情報を読み出す。情報再生装置2000は、シリンドリカルレンズ24を図中y方向に動かすことによって、平面光波PLを結合させるコア層201a,201b,・・・を選択する。これにより、コア層201a,201b,・・・の各々に記録された情報が個別に読み出される。
【0009】
上記のように、情報再生装置2000は、複数のコア層201a,201b,・・・のうち1つだけに線状ビームCLを集光させることによって、ホログラム情報記録媒体20から再生されるホログラム画像IMを逐次的に読み出す。このため、ホログラム情報記録媒体20へ入射する線状ビームCLがコア層201a,201b,・・・に対して相対的に傾斜している(図18参照)と、コア層201a,201b,・・・の複数に線状ビームCLが入射してしまう。その結果、ホログラム画像IMの複数が重なり合ってクロストークが生じ、ホログラム画像IMが劣化する。これを防ぐ方法が特許文献2に記載されており、以下では簡単に紹介する。
【0010】
図17は、図16のホログラム情報記録媒体20における任意のコア層201を伝搬する導波光PWの様子を示した図である。図17に示すように、コア層201には、位置合わせ用ホログラム26a,26bと、情報記録用ホログラム26cとが形成されている。位置合わせ用ホログラム26a,26bは、コア層201を伝搬する導波光PWの進行方向に対して左右一対で形成される。
【0011】
導波光PWは、コア層201を伝搬中に、位置合わせ用ホログラム26a,26bによって回折光DWa,DWbがそれぞれ生じ、情報記録用ホログラム26cによって回折光DWcが生じる。回折光DWa,DWbは、図16の撮像素子22の方向へ選択的に回折され、撮像素子22の撮像面上で結像するように設計されている。撮像素子22は、撮像面上のどの深さに回折光DWa,DWbの焦点があるのかを検知する。これにより、情報再生装置2000は、図16の線状ビームCLがホログラム情報記録媒体20のどのコア層へ入射して導波しているのかを判別できる。
【0012】
図18は、図16のホログラム情報記録媒体20に線状ビームCLが斜め入射する場合を示した図である。図18において、ホログラム情報記録媒体20は、クラッド層と交互にコア層201a〜201gが積層されており、x方向の両側の一部分に位置合わせ用ホログラム領域26Za,26Zbを含む。位置合わせ用ホログラム領域26Za,26Zbは、コア層201a〜201gにおいて図16の位置合わせ用ホログラム26a,26bがそれぞれ形成されている領域である。なお、ホログラム情報記録媒体20は、図16の情報再生装置2000から取り外して持ち運び可能である。
【0013】
図18のホログラム情報記録媒体20は、情報再生装置2000に装填した直後で、電気を用いない純粋に機械的な位置合わせ(たとえば、0.1mmオーダー)のみが終了した状態を想定している。この状態では、図18に示すように、線状ビームCLは、ホログラム情報記録媒体20のコア層201a〜201gに対して一般に斜め入射する。
【0014】
このとき、図18に示すように、位置合わせ用ホログラム領域26Zaは、線状ビームCLがコア層201eに結合した導波光PWaを受ける。導波光PWaは、位置合わせ用ホログラム領域26Zaにおいて回折光DWaとして散乱される。図16の撮像素子25は、この回折光DWaを受けて、導波光DWaがコア層201eを伝搬していることを検出する。
【0015】
一方、位置合わせ用ホログラム領域26Zbは、線状ビームCLがコア層201cに結合した導波光PWbを受ける。導波光PWbは、位置合わせ用ホログラム領域26Zbにおいて回折光DWbとして散乱される。図16の撮像素子25は、この回折光DWbを受けて、導波光DWbがコア層201cを伝搬していることを検出する。
【0016】
撮像素子25は、回折光DWaとDWbとを比較することにより、線状ビームCLがホログラム情報記録媒体20のコア層201a〜201gに対してどちら向きにどれだけ傾いているかを検出する。情報再生装置2000は、撮像素子25からの当該検出結果を受けて、回折光DWaに対応するコア層201eと回折光DWbに対応するコア層201cとが一致するように、ホログラム情報記録媒体20の角度をずらす。これにより、ホログラム情報記録媒体20のコア層201a〜201gに対する傾きが修正される。
【特許文献1】特開平11−345419号公報
【特許文献2】特開2001−52128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図16〜18で説明した平面導波路型のホログラム情報記録媒体20は、同一の導波路内に、位置合わせ用ホログラム26a,26bと、情報記録用ホログラム26cとが形成されている。このため、情報記録用ホログラム26cの記録容量が相対的に低下するという問題があった。
【0018】
それゆえに、この発明の目的は、記録容量を低下させることなく、簡易な方法で記録媒体のコア層に対する入射光の相対的な傾きを補正することが可能な記録媒体および情報再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明は、平面型の導波路が複数積層された記録媒体であって、散乱領域が形成されたコア層と、コア層と交互に積層され、隣接するコア層より屈折率の低いクラッド層と、記録媒体の一部分に形成され、記録媒体への入射光を反射する反射素子とを備える。
【0020】
好ましくは、反射素子は、記録媒体の端面上において、コア層およびクラッド層が積層する方向に少なくとも一対形成される。
【0021】
好ましくは、反射素子は、コア層とクラッド層とが積層する方向に反射率が段階的に変化する。
【0022】
好ましくは、反射素子は、一対の反射率が相反する方向に変化する。
【0023】
好ましくは、反射素子は、一対の反射率の和がコア層の各々で一定である。
【0024】
好ましくは、反射素子は、一対の反射率が同じ方向に変化する。
【0025】
好ましくは、反射素子は、一対の反射率が同一のコア層で一定である。
【0026】
好ましくは、反射素子は、記録媒体のコア層の端面上に少なくとも形成される。
【0027】
好ましくは、反射素子は、反射率がコア層ごとに異なる。
【0028】
好ましくは、反射素子は、反射率がコア層内において段階的に変化する。
【0029】
好ましくは、反射素子は、誘電体反射膜である。
【0030】
好ましくは、反射素子は、金属薄膜である。
【0031】
好ましくは、反射素子は、コア層の内部において、入射光の方向に少なくとも一対形成される。
【0032】
好ましくは、反射素子は、グレーティングである。
【0033】
好ましくは、反射素子は、ブラッググレーティングである。
【0034】
好ましくは、散乱要因は、ホログラムである。
【0035】
この発明の他の局面によれば、平面型の導波路が複数積層された記録媒体に記録された情報を再生する情報再生装置であって、記録媒体に光を入射する光学系と、記録媒体に設けられた第1の反射素子からの反射光を検出する第1の光検出器と、記録媒体に設けられた第2の反射素子からの反射光を検出する第2の光検出器と、第1および第2の光検出器から出力される信号の和を検出する加算検出回路と、加算検出回路から出力される加算信号に基づいて、記録媒体への入射光と記録媒体との相対的な傾斜を補正するために光学系にサーボ動作をかける駆動回路部とを備える。
【0036】
好ましくは、駆動回路部は、加算検出回路から出力される加算信号と、入射光が記録媒体の所定のコア層に対して水平に入射した場合の加算信号とが一致するように、光学系に回転運動のサーボ動作をかける。
【0037】
この発明の他の局面によれば、平面型の導波路が複数積層された記録媒体に記録された情報を再生する情報再生装置であって、記録媒体に光を入射する光学系と、記録媒体に設けられた第1の反射素子からの反射光を検出する第1の光検出器と、記録媒体に設けられた第2の反射素子からの反射光を検出する第2の光検出器と、第1および第2の光検出器から出力される信号の差分を検出する差分検出回路と、第1および/または第2の光検出器から出力される信号を検出する信号処理回路と、差分検出回路から出力される差分信号に基づいて記録媒体への入射光と記録媒体との相対的な傾斜を補正するために光学系にサーボ動作をかけるとともに、信号処理回路から出力される処理信号に基づいて記録媒体の任意のコア層を選択するために光学系を移動させる駆動回路部とを備える。
【0038】
好ましくは、駆動回路部は、差分信号がゼロとなるように、光学系に回転運動のサーボ動作をかける。
【0039】
好ましくは、駆動回路部は、信号処理回路から出力される処理信号と、入射光が記録媒体の任意のコア層に対して水平に入射した場合の処理信号とが一致するように、光学系を移動させる。
【0040】
好ましくは、情報再生装置によって情報が再生される記録媒体は、平面型の導波路が複数積層された記録媒体であって、散乱領域が形成されたコア層と、コア層と交互に積層され、隣接するコア層より屈折率の低いクラッド層と、記録媒体の一部分に形成され、記録媒体への入射光を反射する反射素子とを備える。
【発明の効果】
【0041】
この発明によれば、記録容量を低下させることなく、簡易な方法で記録媒体のコア層に対する入射光の相対的な傾きを補正することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0043】
<装置の全体構成および動作>
図1は、この発明の実施の形態による情報再生装置1の概略的な構成を示した斜視図である。図1を参照して、情報再生装置1は、撮像素子12と、シリンドリカルレンズ14とを含む。撮像素子22は、たとえば、CMOS等の2次元光アレイ検出器、または光スポット位置検出器などである。情報再生装置1は、平面導波路型のホログラム情報記録媒体10の情報を再生する。ホログラム情報記録媒体10は、情報再生装置1から取り外して持ち運び可能である。
【0044】
ホログラム情報記録媒体10は、外形がほぼ直方体の形状を有しており、記録媒体端面15においてコア層101a〜101eおよびクラッド層102a〜102fが外部に露出した構造となっている。ホログラム情報記録媒体10は、記録媒体端面15のx方向の両側の一部分に反射素子11a,11bを設けている。反射素子11a,11bは、たとえば、誘電体反射膜、金属薄膜、反射マスクなどである。
【0045】
ホログラム情報記録媒体10は、記録媒体表面100から、クラッド層102a,コア層101a,クラッド層102b,コア層101b,…,クラッド層102e,コア層101e,クラッド層102fが順に積層された構造を有する。コア層101a,101b,・・・は、平面型のシングルモード光導波路を形成する。
【0046】
コア層101a,101b,・・・は、クラッド層102a,102b,・・・よりも屈折率の高い材料を用いて形成された導波層である。コア層101a,101b,・・・は、全てのクラッド層102a〜102fよりも高い屈折率を有する構造であることが好ましいが、構造は必ずしもこれに限定されない。たとえば、コア層101aは、隣接するクラッド層102a,102bの屈折率よりも高くなければならないが、隣接しないクラッド層102fよりも屈折率が低くなる場合があってもよい。
【0047】
コア層101a,101b,・・・は、複数の微小な領域に分割されており、各々のコア層には屈折率を変調する等の方法で予め情報が重畳された散乱要因(ホログラム)16が形成されている。図1では、コア層101cに形成されたホログラム16のみを概念的に平面状に示している。
【0048】
図1を参照して、図示しない光源から出射された平面光波PLは、シリンドリカルレンズ14によって、記録媒体端面15に円筒状の波面を有する線状ビームCLとして集光される。線状ビームCLは、記録媒体端面15において、反射素子11a,11bからは反射光RLa,RLbとしてそれぞれ反射され、それ以外では、コア層101cに結合して導波光PWとなる。
【0049】
導波光PWは、コア層101cを伝搬中に、コア層101cに形成されたホログラム16によって散乱され、回折光DWとして記録媒体表面100から出射される。回折光DWは、撮像素子12の撮像面に、ホログラム画像IMとして結像される。撮像素子22は、ホログラム画像IMを取り込むことによって、コア層101cにホログラム16として記録された情報を読み出す。情報再生装置1は、シリンドリカルレンズ14を図中y方向に動かすことによって、平面光波PLを結合させるコア層101a,101b,・・・を選択する。これにより、情報再生装置1は、コア層101a,101b,・・・の各々に記録された情報を個別に読み出すことができる。
【0050】
以下では、ホログラム情報記録媒体10の一部に設けられた反射素子11a,11bを用いて、ホログラム情報記録媒体10のコア層101a,101b,・・・に対する線状ビームCLの相対的な傾きを補正する手法について説明する。
【0051】
[実施の形態1]
図2は、この発明の実施の形態1によるホログラム情報記録媒体10Aの反射率分布を示した図である。図2を参照して、ホログラム情報記録媒体10Aは、クラッド層と交互にコア層40a〜40gが積層されており、x方向の両側の一部分に反射領域11Xa,11Xbを含む。反射領域11Xa,11Xbは、記録媒体端面15において図1の反射素子11a,11bがそれぞれ形成されている領域である。
【0052】
反射領域11Xaは、+y方向に向かって反射率が段階的に低下していく。逆に、反射領域11Xbは、−y方向に向かって反射率が段階的に低下していく。このように、実施の形態1のホログラム情報記録媒体10Aは、反射領域11Xa,11Xbの反射率が互いに逆方向に同じ階調で段階的に低下していくことを特徴としている。
【0053】
図3は、この発明の実施の形態1によるホログラム情報記録媒体10Aに線状ビームCLが斜め入射する場合を示した図である。図3のホログラム情報記録媒体10Aは、情報再生装置1に装填した直後で、電気を用いない純粋に機械的な位置合わせ(たとえば、0.1mmオーダー)のみが終了した状態を想定している。この状態では、図3に示すように、線状ビームCLは、ホログラム情報記録媒体10Aのコア層40a〜40gに対して一般に斜め入射する。線状ビームCLは、反射領域11Xa,11Xbにおいて反射光RLa,RLbとしてそれぞれ反射される。
【0054】
図4は、この発明の実施の形態1によるホログラム情報記録媒体10Aに線状ビームCLが水平入射する場合を示した図である。図3において、ホログラム情報記録媒体10Aは、クラッド層と交互にコア層40a〜40eが積層されており、x方向の両側の一部分に反射領域11Xa,11Xbを含む。反射領域11Xa,11Xbは、図3で説明したように、反射率が互いに逆方向に同じ階調で段階的に低下していく。
【0055】
反射領域11Xaは、+y方向に向かって反射率が段階的に低下していく。すなわち、反射領域11Xaは、コア層40aで最も反射率が低く、コア層40eで最も反射率が高い(図2参照)。一方、反射領域11Xbは、−y方向に向かって反射率が段階的に低下していく。すなわち、反射領域11Xbは、コア層40aで最も反射率が高く、コア層40eで最も反射率が低い(図2参照)。
【0056】
コア層40a〜40eに水平入射した線状ビームCLは、反射領域11Xa,11Xbにおいてそれぞれ反射される。コア層40aにおいて反射される反射光は、反射領域11Xaで最も反射率が高く、反射領域11Xbで最も反射率が低い。コア層40bにおいて反射される反射光は、反射領域11Xaで2番目に反射率が高く、反射領域11Xbで2番目に反射率が低い。コア層40c,40dについても同様に反射率が変化していき、コア層40eにおいて反射される反射光は、反射領域11Xaで最も反射率が低く、反射領域11Xbで最も反射率が高い。
【0057】
このように、反射領域11Xa,11Xbは、反射率が互いに逆方向に同じ階調で段階的に低下していくので、線状ビームCLがコア層40a〜40eに対して水平に入射する場合、反射領域11Xa,11Xbでの反射光の和は、どのコア層からであっても一定の値となる。
【0058】
実施の形態1の情報再生装置1は、線状ビームCLがコア層40a〜40eのいずれかに対して水平に入射した場合の反射領域11Xa,11Xbからの反射光量を予め水平反射光量として測定しておく。線状ビームCLがコア層40a〜40eに対して斜めに入射した場合、反射領域11Xa,11Xbからの反射光量は上記の水平反射光量と異なってくる。情報再生装置1は、反射領域11Xa,11Xbからの反射光量が上記の水平反射光量と等しくなるまで線状ビームCLのコア層40a〜40eに対する傾斜を補正する。これにより、情報再生装置1は、線状ビームCLをコア層40a〜40eに対して水平に入射させることができる。
【0059】
図5は、実施の形態1のホログラム情報記録媒体10Aにおける傾きを補正して情報を再生する情報再生装置1Aの概略的な構成を示した側面図である。図5を参照して、実施の形態1の情報再生装置1Aは、光源2と、コリメートレンズ3と、ビームスプリッタ4と、光検出器5a,5bと、シリンドリカルレンズ14と、加算検出回路18aと、駆動回路部19とを含む。
【0060】
図5を参照して、光源2から出射された光は、コリメートレンズ3によって平行な平面光波PLに変換される。平面光波PLは、ビームスプリッタ4を透過し、シリンドリカルレンズ14によって、記録媒体端面15に円筒状の波面を有する線状ビームCLとして集光される。線状ビームCLは、記録媒体端面15において、反射素子11a,11bからは反射光RLa,RLbとしてそれぞれ反射され、それ以外では、ホログラム情報記録媒体10Aの各コア層に結合して導波光PWとなる。
【0061】
反射光RLa,RLbは、シリンドリカルレンズ14を通過して、ビームスプリッタ4によって反射される。ビームスプリッタ4で反射された反射光RLa,RLbは、光検出器5a,5bによって、それぞれ独立に検出される。光検出器5a,5bは、検出した信号を加算検出回路18aに送る。加算検出回路18aは、光検出器5a,5bからの信号の和を駆動回路部19に出力する。
【0062】
駆動回路部19は、加算検出回路18aから出力された加算信号が図4で説明した水平反射光量に対応する値と等しくなるように、コリメートレンズ3等の光学素子の位置または傾きを制御する。具体的には、駆動回路部19は、平面光波PLの進行方向の中心を軸にした回転運動のサーボ動作をコリメートレンズ3等にかけることによって、線状ビームCLのホログラム情報記録媒体10Aに対する相対的な傾斜の補正を行なう。
【0063】
なお、線状ビームCLがホログラム情報記録媒体10Aから外れた場合、光検出器5a,5bは、少なくとも一方が反射光RLaまたはRLbを検出できない可能性がある。この場合、駆動回路部19は、光検出器5a,5bが反射光RLa,RLbをそれぞれ検出できる位置にまで、コリメートレンズ3等に対して前述のサーボ動作をかける。
【0064】
以上のように、実施の形態1によれば、ホログラム情報記録媒体に反射素子を設け、当該反射素子からの反射光を検出することによって、ホログラム情報記録媒体の記録容量を低減することなく、ホログラム情報記録媒体に対する集光ビームの相対的な傾斜の補正およびホログラム情報記録媒体の各コア層の選択が可能となる。
【0065】
この発明の実施の形態1の情報再生装置は、ホログラム情報記録媒体における端面の少なくとも2箇所からの反射光を、ホログラム情報記録媒体に対する集光ビームの相対的な傾斜の補正に用いることができる。好ましくは、ホログラム情報記録媒体に設けられる反射素子は、誘電体多層膜または金属薄膜である。
【0066】
好ましくは、ホログラム情報記録媒体に設けられる反射素子は、コア層に応じて反射率が段階的に変化していくように構成されているので、入射光が照射されるコア層の位置によって反射光の光量を変えることができる。当該反射素子は、ホログラム情報記録媒体の少なくともコア層の端面に設けられていればよい。
【0067】
好ましくは、ホログラム情報記録媒体に設けられる一対の反射素子は、互いに相反する方向に反射率が変化していくように構成されているため、入射光が一対の反射素子に照射される位置に応じて反射光の光量を変えることができる。
【0068】
好ましくは、ホログラム情報記録媒体に設けられる一対の反射素子は、両者の反射率の和が一定であるため、入射光がコア層に対して平行に照射された場合、反射光量の総和をどのコア層に対しても一定にすることができる。
【0069】
この発明の実施の形態1の情報再生装置は、ホログラム情報記録媒体からの反射光の光量を検出することによって、ホログラム情報記録媒体と入射光との相対的な傾斜の補正を行なうことができる。
【0070】
この発明の実施の形態1の情報再生装置は、一対の反射素子からの反射光を検出し、当該反射光の光量の加算値を算出することによって、ホログラム情報記録媒体と入射光との相対的な傾斜の補正を行なうことができる。
【0071】
[実施の形態2]
図6は、この発明の実施の形態2によるホログラム情報記録媒体10Bの反射率分布を示した図である。図6を参照して、ホログラム情報記録媒体10Bは、クラッド層と交互にコア層50a〜50gが積層されており、x方向の両側の一部分に反射領域11Ya,11Ybを含む。反射領域11Ya,11Ybは、記録媒体端面15において図1の反射素子11a,11bがそれぞれ形成されている領域である。
【0072】
反射領域11Ya,11Ybは、いずれも+y方向に向かって反射率が段階的に低下していく。このように、実施の形態2のホログラム情報記録媒体10Bは、反射領域11Ya,11Ybの反射率が同じ方向に同じ階調で段階的に低下していくことを特徴としている。
【0073】
図7は、この発明の実施の形態2によるホログラム情報記録媒体10Bに線状ビームCLが斜め入射する場合を示した図である。図7のホログラム情報記録媒体10Bは、情報再生装置1に装填した直後で、電気を用いない純粋に機械的な位置合わせ(たとえば、0.1mmオーダー)のみが終了した状態を想定している。この状態では、図7に示すように、線状ビームCLは、ホログラム情報記録媒体10Bのコア層50a〜50gに対して一般に斜め入射する。線状ビームCLは、反射領域11Ya,11Ybにおいて反射光RLa,RLbとしてそれぞれ反射される。
【0074】
図8は、この発明の実施の形態2によるホログラム情報記録媒体10Bに線状ビームCLが水平入射する場合を示した図である。図8において、ホログラム情報記録媒体10Bは、クラッド層と交互にコア層50a〜50eが積層されており、x方向の両側の一部分に反射領域11Ya,11Ybを含む。反射領域11Ya,11Ybは、図6で説明したように、反射率が同じ方向に同じ階調で段階的に低下していく。
【0075】
反射領域11Ya,11Ybは、いずれも+y方向に向かって反射率が段階的に低下していく。コア層50a〜50eに水平入射した線状ビームCLは、反射領域11Ya,11Ybにおいてそれぞれ反射される。反射領域11Ya,11Ybは、いずれも、コア層50aで最も反射率が低く、コア層50bで2番目に反射率が低く、・・・、コア層50eで最も反射率が高い(図6参照)。
【0076】
このように、反射領域11Ya,11Ybは、反射率が同じ方向に同じ階調で段階的に低下していくので、線状ビームCLがコア層50a〜50eに対して水平に入射する場合、各コア層からの反射光は反射領域11Yaと11Ybとで等しくなる。
【0077】
一方、図7のように線状ビームCLがコア層50a〜50eに対して斜めに入射する場合には、各コア層からの反射光は反射領域11Yaと11Ybとで異なった光量となる。したがって、図1の反射素子11a,11bで検出される反射光の差分を検出することにより、線状ビームCLがコア層50a〜50eに対して水平に入射しているのか否かを判定することができる。
【0078】
実施の形態2の情報再生装置1は、線状ビームCLがコア層50a〜50eのいずれかに対して水平に入射した場合の反射領域11Ya,11Ybからの反射光量を予め水平反射光量として測定しておく。情報再生装置1は、反射領域11Ya,11Ybからの反射光量が上記の水平反射光量と等しくなるまで、ホログラム情報記録媒体10Bに入射する線状ビームCLを±y方向に上下させる。これにより、情報再生装置1は、ホログラム情報記録媒体10Bの任意のコア層を選択することができる。
【0079】
図9は、実施の形態2のホログラム情報記録媒体10Bにおける傾きを補正して情報を再生する情報再生装置1Bの概略的な構成を示した側面図である。実施の形態2の情報再生装置1Bは、ホログラム情報記録媒体10Aがホログラム情報記録媒体10Bに、加算検出回路18aが差分検出回路18bおよび信号処理回路18cに置き換わった点においてのみ、実施の形態1の情報再生装置1Aと異なる。したがって、重複する部分の説明は、ここでは繰り返さない。
【0080】
図9を参照して、光源2から出射された光は、コリメートレンズ3、ビームスプリッタ4、シリンドリカルレンズ14を介して、記録媒体端面15に円筒状の波面を有する線状ビームCLとして集光される。線状ビームCLは、記録媒体端面15において、反射素子11a,11bからは反射光RLa,RLbとしてそれぞれ反射され、それ以外では、ホログラム情報記録媒体10Bの各コア層に結合して導波光PWとなる。
【0081】
反射光RLa,RLbは、シリンドリカルレンズ14、ビームスプリッタ4を介して、光検出器5a,5bによってそれぞれ独立に検出される。光検出器5aは、検出した信号を差分検出回路18bに送るとともに信号処理回路18cにも送る。光検出器5bは、検出した信号を差分検出回路18bに送る。差分検出回路18bは、光検出器5a,5bからの信号の差を駆動回路部19に出力する。信号処理回路18cは、光検出器5aからの信号を駆動回路部19に出力する。
【0082】
駆動回路部19は、差分検出回路18bから出力された差分信号がゼロとなるように、コリメートレンズ3等の光学素子の位置または傾きを制御する。具体的には、駆動回路部19は、平面光波PLの進行方向の中心を軸にした回転運動のサーボ動作をコリメートレンズ3等にかけることによって、線状ビームCLのホログラム情報記録媒体10Bに対する相対的な傾斜の補正を行なう。
【0083】
さらに、駆動回路部19は、信号処理回路18cから出力された信号と図8で説明した水平反射光量に対応する値と比較することにより、線状ビームCLがホログラム記録媒体10Bのどのコア層に入射しているのかを検知することができる。
【0084】
実施の形態2の情報再生装置1Bは、コア層50a〜50eを変更してホログラム情報記録媒体10Bに記録された情報を読み出す場合、信号処理回路18cから出力された信号と所望のコア層における上記の水平反射光量とが等しくなるように、駆動回路部19を介して、シリンドリカルレンズ14等をy方向に移動させるか回転動作を加える。これにより、情報再生装置1Bは、ホログラム情報記録媒体10Bの任意のコア層を選択することができる。
【0085】
実施の形態2では、光検出器5aからの信号を信号処理回路18cに送ったが、光検出器5bからの信号、または、光検出器5a,5bからの信号であってもよい。また、差分検出回路18bと信号処理回路18cとは、一体化されていても構わない。
【0086】
なお、線状ビームCLがホログラム情報記録媒体10Bから外れた場合、光検出器5a,5bは、少なくとも一方が反射光RLaまたはRLbを検出できない可能性がある。この場合、駆動回路部19は、光検出器5a,5bが反射光RLa,RLbをそれぞれ検出できる位置にまで、コリメートレンズ3等に対して前述のサーボ動作をかける。
【0087】
以上のように、実施の形態2によれば、ホログラム情報記録媒体に反射素子を設け、当該反射素子からの反射光を検出することによって、ホログラム情報記録媒体の記録容量を低減することなく、ホログラム情報記録媒体に対する集光ビームの相対的な傾斜の補正およびホログラム情報記録媒体の各コア層の選択が可能となる。
【0088】
好ましくは、ホログラム情報記録媒体に設けられる一対の反射素子は、同一の方向に反射率が変化していくように構成されているため、入射光が一対の反射素子に照射される位置に応じて反射光の光量を変えることができる。一対の反射素子の反射率が同一のコア層で一定である場合には、入射光がコア層に対して平行に照射されたとき、反射光量を一定にすることができる。
【0089】
この発明の実施の形態2の情報再生装置は、一対の反射素子からの反射光を検出し、当該反射光の光量の差分値を算出することによって、ホログラム情報記録媒体と入射光との相対的な傾斜の補正を行なうことができる。好ましくは、ホログラム情報記録媒体のコア層ごとに反射光を検出することによって、各コア層からの反射光量に基づいてコア層を選択することができる。
【0090】
[実施の形態3]
図10は、この発明の実施の形態3によるホログラム情報記録媒体10Cを示した図である。図10を参照して、ホログラム情報記録媒体10Cは、クラッド層と交互にコア層60a〜60eが積層されており、x方向の両側の一部分に反射領域11Ca,11Cbを含む。反射領域11Ca,11Cbは、記録媒体端面15において図1の反射素子11a,11bがそれぞれ形成されている領域である。
【0091】
実施の形態3のホログラム情報記録媒体10Cは、反射領域11Ca,11Cbがコア層60a〜60eにのみ配置されていてクラッド層には配置されていない点で、実施の形態1,2のホログラム情報記録媒体10A,10Bと異なる。これにより、反射素子11a,11bによる占有面積を減らすことができ、コストの削減につながる。
【0092】
図11は、この発明の実施の形態3によるホログラム情報記録媒体10Cの反射率分布の一例を示した図である。図11に示すホログラム情報記録媒体10Cは、反射領域11Caにおいて、コア層60aが90%、コア層60bが80%、コア層60cが70%、コア層60dが60%、・・・の反射率を有する。このように、ホログラム情報記録媒体10Cは、コア層ごとに異なる反射率を有する。
【0093】
一方、ホログラム情報記録媒体10Cは、反射領域11Cbにおいて、実施の形態1のように反射率が反射領域11Caと逆方向に同じ階調で段階的に低下するようにしてもよいし、実施の形態2のように反射率が反射領域11Caと同じ方向に同じ階調で段階的に低下するようにしてもよい。
【0094】
実施の形態1に合わせる場合、ホログラム情報記録媒体10Cは、反射領域11Cbにおいて、コア層60aが10%、コア層60bが20%、コア層60cが30%、コア層60dが40%、・・・の反射率を有する。実施の形態2に合わせる場合、ホログラム情報記録媒体10Cは、反射領域11Cbにおいて、コア層60aが90%、コア層60bが80%、コア層60cが70%、コア層60dが60%、・・・の反射率を有する。
【0095】
以上のように、実施の形態3によれば、ホログラム情報記録媒体に反射素子を設け、当該反射素子からの反射光を検出することによって、ホログラム情報記録媒体の記録容量を低減することなく、ホログラム情報記録媒体に対する集光ビームの相対的な傾斜の補正およびホログラム情報記録媒体の各コア層の選択が可能となる。
【0096】
この発明の実施の形態3の情報再生装置は、上記の反射素子がホログラム情報記録媒体の少なくともコア層の端面に設けられていればよい。当該反射素子は、コア層ごとに異なる反射率を有する。
【0097】
[実施の形態4]
図12は、この発明の実施の形態4によるホログラム情報記録媒体10Dを示した図である。図12を参照して、ホログラム情報記録媒体10Dは、クラッド層と交互にコア層70a〜70eが積層されており、x方向の両側の一部分に反射領域11Da,11Dbを含む。反射領域11Da,11Dbは、記録媒体端面15において図1の反射素子11a,11bがそれぞれ形成されている領域である。
【0098】
実施の形態4のホログラム情報記録媒体10Dは、実施の形態3と同様に、反射領域11Da,11Dbがコア層70a〜70eにのみ配置されていてクラッド層には配置されていない点で、実施の形態1,2のホログラム情報記録媒体10A,10Bと異なる。これにより、反射素子11a,11bによる占有面積を減らすことができ、コストの削減につながる。
【0099】
図13は、この発明の実施の形態4によるホログラム情報記録媒体10Dの反射率分布の一例を示した図である。図13に示すホログラム情報記録媒体10Dは、反射領域11Daにおいて、コア層60aが90%から80%に低下、コア層60bが70%から60%に低下、コア層60cが50%から40%に低下、コア層60dが30%から20%に低下、・・・のような反射率を有する。このように、ホログラム情報記録媒体10Dは、各コア層内で反射率が低下している。
【0100】
一方、ホログラム情報記録媒体10Dは、反射領域11Dbにおいて、実施の形態1のように反射率が反射領域11Daと逆方向に同じ階調で段階的に低下するようにしてもよいし、実施の形態2のように反射率が反射領域11Daと同じ方向に同じ階調で段階的に低下するようにしてもよい。
【0101】
実施の形態1に合わせる場合、ホログラム情報記録媒体10Dは、反射領域11Dbにおいて、コア層60aが10%から20%に増大、コア層60bが30%から40%に増大、コア層60cが50%から60%に増大、コア層60dが70%から80%に増大、・・・のような反射率を有する。
【0102】
実施の形態2に合わせる場合、ホログラム情報記録媒体10Cは、反射領域11Cbにおいて、コア層60aが90%から80%に低下、コア層60bが70%から60%に低下、コア層60cが50%から40%に低下、コア層60dが30%から20%に低下、・・・のような反射率を有する。
【0103】
以上のように、実施の形態4によれば、ホログラム情報記録媒体に反射素子を設け、当該反射素子からの反射光を検出することによって、ホログラム情報記録媒体の記録容量を低減することなく、ホログラム情報記録媒体に対する集光ビームの相対的な傾斜の補正およびホログラム情報記録媒体の各コア層の選択が可能となる。
【0104】
この発明の実施の形態4の情報再生装置は、上記の反射素子がホログラム情報記録媒体の少なくともコア層の端面に設けられていればよい。当該反射素子は、各コア層内で反射率が低下する。
【0105】
[実施の形態5]
図14は、この発明の実施の形態5によるホログラム情報記録媒体10Eを示した上面図である。図14を参照して、ホログラム情報記録媒体10Eは、ホログラム16が形成されたコア層81を含む。コア層81は、x方向の両側の一部分にグレーティング領域85a,85bが形成されている。グレーティング領域85a,85bは、記録領域に関係のない領域に屈折率を変調する等の方法でグレーティングが形成されている。屈折率変調の方法は、たとえば、フォトリソグラフィー、電子ビーム描画法などである。
【0106】
実施の形態5のホログラム情報記録媒体10Eは、記録媒体端面15に反射素子11a,11bが形成された反射領域の代わりに、屈折率を変調する等の方法によるグレーティング領域85a,85bがコア層81の内部に形成された点で、実施の形態1〜4のホログラム情報記録媒体10A〜10Dと異なる。これにより、反射素子11a,11bによる占有面積を減らすことができ、コストの削減につながる。
【0107】
図15は、図14のホログラム情報記録領域10Eにおけるグレーティング領域85の具体的な構造を示した図である。図15を参照して、グレーティング領域85は、y方向においてクラッド層82a,82bの間にコア層81が形成されている。コア層81は、その内部にグレーティング83が形成されている。グレーティング83は、たとえばブラッググレーティングである。
【0108】
ブラッググレーティングとは、光導波路を伝搬する光の波長と同程度の格子周期を有するグレーティングである。ブラッググレーティングは、上記の格子周期に対し、ブラッグ条件を満たす特定の波長の光のみを反射するミラーとして機能する。当該ブラッググレーティングをホログラム情報記録媒体10Eの各コア層に対して形成する領域は、図14のグレーティング領域85a,85b内のどの領域であっても構わない。
【0109】
以上のように、実施の形態5によれば、ホログラム情報記録媒体に反射素子を設け、当該反射素子からの反射光を検出することによって、ホログラム情報記録媒体の記録容量を低減することなく、ホログラム情報記録媒体に対する集光ビームの相対的な傾斜の補正およびホログラム情報記録媒体の各コア層の選択が可能となる。
【0110】
この発明の実施の形態5の情報再生装置は、ホログラム情報記録媒体の導波路端面に設けられる反射素子の代わりに、導波路内にグレーティングを設けることにより、ホログラム情報記録媒体に対する集光ビームの相対的な傾斜を補正することができる。好ましくは、当該グレーティングは、ブラッググレーティングである。
【0111】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】この発明の実施の形態による情報再生装置1の概略的な構成を示した斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるホログラム情報記録媒体10Aの反射率分布を示した図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるホログラム情報記録媒体10Aに線状ビームCLが斜め入射する場合を示した図である。
【図4】この発明の実施の形態1によるホログラム情報記録媒体10Aに線状ビームCLが水平入射する場合を示した図である。
【図5】実施の形態1のホログラム情報記録媒体10Aにおける傾きを補正して情報を再生する情報再生装置1Aの概略的な構成を示した側面図である。
【図6】この発明の実施の形態2によるホログラム情報記録媒体10Bの反射率分布を示した図である。
【図7】この発明の実施の形態2によるホログラム情報記録媒体10Bに線状ビームCLが斜め入射する場合を示した図である。
【図8】この発明の実施の形態2によるホログラム情報記録媒体10Bに線状ビームCLが水平入射する場合を示した図である。
【図9】実施の形態2のホログラム情報記録媒体10Bにおける傾きを補正して情報を再生する情報再生装置1Bの概略的な構成を示した側面図である。
【図10】この発明の実施の形態3によるホログラム情報記録媒体10Cを示した図である。
【図11】この発明の実施の形態3によるホログラム情報記録媒体10Cの反射率分布の一例を示した図である。
【図12】この発明の実施の形態4によるホログラム情報記録媒体10Dを示した図である。
【図13】この発明の実施の形態4によるホログラム情報記録媒体10Dの反射率分布の一例を示した図である。
【図14】この発明の実施の形態5によるホログラム情報記録媒体10Eを示した上面図である。
【図15】図14のホログラム情報記録領域10Eにおけるグレーティング領域85の具体的な構造を示した図である。
【図16】ホログラム情報記録媒体20に記録された情報を再生する従来の情報再生装置2000の概略的な構成を示した斜視図である。
【図17】図16のホログラム情報記録媒体20における任意のコア層201を伝搬する導波光PWの様子を示した図である。
【図18】図16のホログラム情報記録媒体20に線状ビームCLが斜め入射する場合を示した図である。
【符号の説明】
【0113】
1,1A,1B,2000 情報再生装置、2 光源、3 コリメートレンズ、4 ビームスプリッタ、5a,5b 光検出器、10,10A〜10E,20 ホログラム情報記録媒体、11a,11b 反射素子、12,22 撮像素子、14,24 シリンドリカルレンズ、16,26 ホログラム、18a 加算検出回路、18b 差分検出回路、18c 信号処理回路、19 駆動回路部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面型の導波路が複数積層された記録媒体であって、
散乱領域が形成されたコア層と、
前記コア層と交互に積層され、隣接する前記コア層より屈折率の低いクラッド層と、
前記記録媒体の一部分に形成され、前記記録媒体への入射光を反射する反射素子とを備える、記録媒体。
【請求項2】
前記反射素子は、前記記録媒体の端面上において、前記コア層および前記クラッド層が積層する方向に少なくとも一対形成される、請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記反射素子は、前記コア層と前記クラッド層とが積層する方向に反射率が段階的に変化する、請求項2に記載の記録媒体。
【請求項4】
前記反射素子は、前記一対の反射率が相反する方向に変化する、請求項3に記載の記録媒体。
【請求項5】
前記反射素子は、前記一対の反射率の和が前記コア層の各々で一定である、請求項4に記載の記録媒体。
【請求項6】
前記反射素子は、前記一対の反射率が同じ方向に変化する、請求項3に記載の記録媒体。
【請求項7】
前記反射素子は、前記一対の反射率が同一の前記コア層で一定である、請求項6に記載の記録媒体。
【請求項8】
前記反射素子は、前記記録媒体の前記コア層の端面上に少なくとも形成される、請求項2に記載の記録媒体。
【請求項9】
前記反射素子は、反射率が前記コア層ごとに異なる、請求項8に記載の記録媒体。
【請求項10】
前記反射素子は、反射率が前記コア層内において段階的に変化する、請求項8に記載の記録媒体。
【請求項11】
前記反射素子は、誘電体反射膜である、請求項1〜10のいずれかに記載の記録媒体。
【請求項12】
前記反射素子は、金属薄膜である、請求項1〜10のいずれかに記載の記録媒体。
【請求項13】
前記反射素子は、前記コア層の内部において、前記入射光の方向に少なくとも一対形成される、請求項1に記載の記録媒体。
【請求項14】
前記反射素子は、グレーティングである、請求項13に記載の記録媒体。
【請求項15】
前記反射素子は、ブラッググレーティングである、請求項14に記載の記録媒体。
【請求項16】
前記散乱要因は、ホログラムである、請求項1〜15のいずれかに記載の記録媒体。
【請求項17】
平面型の導波路が複数積層された記録媒体に記録された情報を再生する情報再生装置であって、
前記記録媒体に光を入射する光学系と、
前記記録媒体に設けられた第1の反射素子からの反射光を検出する第1の光検出器と、
前記記録媒体に設けられた第2の反射素子からの反射光を検出する第2の光検出器と、
前記第1および前記第2の光検出器から出力される信号の和を検出する加算検出回路と、
前記加算検出回路から出力される加算信号に基づいて、前記記録媒体への入射光と前記記録媒体との相対的な傾斜を補正するために前記光学系にサーボ動作をかける駆動回路部とを備える、情報再生装置。
【請求項18】
前記駆動回路部は、前記加算検出回路から出力される前記加算信号と、前記入射光が前記記録媒体の所定のコア層に対して水平に入射した場合の前記加算信号とが一致するように、前記光学系に回転運動のサーボ動作をかける、請求項17に記載の情報再生装置。
【請求項19】
平面型の導波路が複数積層された記録媒体に記録された情報を再生する情報再生装置であって、
前記記録媒体に光を入射する光学系と、
前記記録媒体に設けられた第1の反射素子からの反射光を検出する第1の光検出器と、
前記記録媒体に設けられた第2の反射素子からの反射光を検出する第2の光検出器と、
前記第1および前記第2の光検出器から出力される信号の差分を検出する差分検出回路と、
前記第1および/または前記第2の光検出器から出力される信号を検出する信号処理回路と、
前記差分検出回路から出力される差分信号に基づいて前記記録媒体への入射光と前記記録媒体との相対的な傾斜を補正するために前記光学系にサーボ動作をかけるとともに、前記信号処理回路から出力される処理信号に基づいて前記記録媒体の任意のコア層を選択するために前記光学系を移動させる駆動回路部とを備える、情報再生装置。
【請求項20】
前記駆動回路部は、前記差分信号がゼロとなるように、前記光学系に回転運動のサーボ動作をかける、請求項19に記載の情報再生装置。
【請求項21】
前記駆動回路部は、前記信号処理回路から出力される前記処理信号と、前記入射光が前記記録媒体の任意のコア層に対して水平に入射した場合の前記処理信号とが一致するように、前記光学系を移動させる、請求項19に記載の情報再生装置。
【請求項22】
前記記録媒体は、請求項1〜16のいずれかに記載の記録媒体である、請求項17〜21のいずれかに記載の情報再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−269012(P2006−269012A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88360(P2005−88360)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】