説明

記録媒体と、その再生装置

【課題】記録媒体と、その再生装置に関し、記録媒体の記録容量を大きくする。
【解決手段】ブランクディスク内の厚さ方向に、所定間隔をおいて、水平方向に渦巻帯状となったホログラム層45を、複数設け、上下方向に隣接する渦巻帯状のホログラム層45の内、少なくとも一方は、その円周方向において、上下方向に連続的に湾曲させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体と、その再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、記録容量を大きくするために、下記特許文献1に示すごとく、多層記録可能な記録媒体が提案されている。
【0003】
すなわち、下記特許文献1に示すものでは、図25(c)のごとく、円板状の記録媒体1内の厚さ方向に、複数のホログラム層2を多層状態で設けているので、記録容量は大きくなる。
【0004】
この特許文献1に示した従来例の特徴点は、記録媒体1内に、マイクロホログラム3が渦巻状に配置されたホログラム層2を、複数層設けているので、この記録媒体1への記録時でも、再生時でも、記録媒体1の片側から、そのマイクロホログラム3に向けて光を照射すれば良いという点である。
【0005】
すなわち、記録時には、記録媒体1の片側から、その記録部分のマイクロホログラム3に光を照射し、光学的な変質を起こさせ、マイクロホログラム3を消失させる部分と、光を照射せず、マイクロホログラム3を残存させる部分とを形成することで、デジタル的な記録を行うことが出来る。
【0006】
また、再生時にも、記録媒体1の片側から、マイクロホログラム3の消失部分と、マイクロホログラム3の残存部分に光を照射し、そこからの反射光を読み取れば、デジタル的な再生を行うことが出来る。
【0007】
上記従来例においては、下記の手順により記録媒体1を、製造している。
【0008】
先ず、図22に示すように、マスターディスク4の一外面側から(例えば上面から)、このマスターディスク4に向けて参照光5を入射させるとともに、このマスターディスク4の他外面側から(例えば下面から)、このマスターディスク4に向けて記録光6を入射させ、マスターディスク4内にマイクロホログラム7を形成し、これによりマスターディスク4を完成させる。
【0009】
次に、図23に示すように、マスターディスク4に共役マスターディスク8を重合させ、その状態で図24(a)のごとく、共役マスターディスク8側から平行光9を入射させる。
【0010】
すると、図24(b)のごとく、マスターディスク4内のマイクロホログラム7からの反射光10が発生し、この反射光10と前記平行光9が共役マスターディスク8内で干渉することで、この共役マスターディスク8内にホログラム11が形成される。つまり、図24(c)の共役マスターディスク8が完成する。
【0011】
その後、図25(a)に示すように、共役マスターディスク8に、まだブランクディスク状態の記録媒体1を重合させ、記録媒体1側から平行光12を入射させる。
【0012】
すると、図25(b)に示すように、ホログラム11からの回折光13が発生し、この回折光13と前記平行光12がブランクディスク状態の記録媒体1内で干渉することで、この記録媒体1内にマイクロホログラム3が形成される。つまり、図25(c)の記録媒体1が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第7388695号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、記録媒体1は、その内部の厚さ方向に、複数のホログラム層2を多段状態で設けているので、記録容量は大きくなる。
【0015】
しかしながら、このように記録媒体1内の厚さ方向に、複数のホログラム層2を多段状態で設けていると、図26、図27に示すごとく、再生時に、上下のホログラム層2のマイクロホログラム3からの反射光が干渉するので、ノイズが発生してしまう。
【0016】
この点を具体的に説明すると、図26では、最下層に位置するホログラム層2の「四の部分」のマイクロホログラム3から再生信号を読み出そうとしており、その時には、メインの再生光は、一→二→三→四→五→六→七及び七→六→五→四→三→二→一と進む。
【0017】
ここで、上下のホログラム層2間の間隔d1〜dnのうち、隣り合うものが同じ間隔である場合、例えば、d1=d2である場合は、下から二段目のホログラム層2のマイクロホログラム3で反射して、三段目のホログラム層2のマイクロホログラム3に集光する光(一→二→三→八→五→六→七及び七→六→五→八→三→二→一と進む)は、三段目のホログラム層2の情報を再生してしまい、しかもこの場合には、上記メインの再生光と光路長が同じになる。
【0018】
この結果、メインの再生光と三段目のホログラム層の再生光が干渉し、これによりノイズが発生してしまうのである。
【0019】
図27では、最下層に位置するホログラム層2のマイクロホログラム3の「四の部分」のマイクロホログラム3から再生信号を読み出そうとしており、その時には、メインの再生光は、一→二→三→四→五→六→七及び七→六→五→四→三→二→一と進む。
【0020】
ここで、上下のホログラム層2間の間隔d1〜dnの中に同じ間隔のものがある場合、例えば、d1=dnである場合、他の反射光(一→二→九→五→六→七及び七→六→十→三→二→一と進む)と、上記メインの再生光の光路長が同じになる。
【0021】
この結果、メインの再生光と他の反射光が干渉し、これによってもノイズが発生してしまうのである。
【0022】
そこで、従来は、このようなメインの再生光と他層の再生光あるいは他の反射光の干渉を防止するために、図26、図27とは異なり、上下のホログラム層2の間隔を全て異なるようにしている。
【0023】
具体的には、dn>・・・>d2>d1としているが、このようにすると、限られた厚さの記録媒体1内に、ホログラム層2を多く配置することが出来ず、この結果として記録容量をそれほど大きくすることが出来なかった。
【0024】
そこで、本発明は、記録容量を大きくすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
そして、この目的を達成するために本発明は、ディスク内の厚さ方向に、所定間隔をおいて、ホログラム層を複数設け、上下方向に隣接するホログラム層の内、少なくとも一方は、上下方向に連続的に湾曲させ、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明は、ディスク内の厚さ方向に、所定間隔をおいて、ホログラム層を複数設け、上下方向に隣接するホログラム層の内、少なくとも一方は、上下方向に連続的に湾曲させたものであるので、記録容量を大きくすることが出来る。
【0027】
すなわち、本発明によれば、ディスク内に複数設けたホログラム層を、上下方向に連続的に湾曲させたものであるので、このディスク内に複数のホログラム層を近接して、所定間隔ごとに配置したとしても、上下のホログラム層からの再生光が干渉することはなく、よってディスク内の厚さ方向に、多くのホログラム層を配置することが出来、その結果として、記録媒体としての記録容量を大きくすることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態にかかる共役マスターディスクの製造方法を示すブロック図
【図2】同要部構成図
【図3】同共役マスターディスクを示す図
【図4】本発明の一実施形態にかかる共役マスターディスクを用いた記録媒体の製造方法を示すブロック図
【図5】同要部構成図
【図6】同光の強度を示す図
【図7】同要部構成図
【図8】同要部構成図
【図9】同光の強度を示す図
【図10】同記録媒体を示す図
【図11】同記録媒体を示す図
【図12】同記録媒体を示す図
【図13】同記録媒体を示す図
【図14】同光の強度を示す図
【図15】同記録媒体のホログラムを示す斜視図
【図16】同記録媒体のホログラムを示す図
【図17】同記録媒体のホログラムを示す図
【図18】本発明の他の実施形態の記録媒体のホログラムを示す図
【図19】同他の実施形態の記録媒体のホログラムを示す図
【図20】本発明のさらに他の実施形態の記録媒体のホログラムを示す図
【図21】本発明のさらにまた他の実施形態の記録媒体のホログラムを示す図
【図22】従来の製造方法を示す図
【図23】同製造方法を示す図
【図24】同製造方法を示す図
【図25】同製造方法を示す図
【図26】同記録媒体のホログラムを示す図
【図27】同記録媒体のホログラムを示す図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
【0030】
(実施の形態)
本発明の一実施形態の記録媒体は図10に示す構成となっており、先ずはこの記録媒体(図10の40)の製造方法について、図1から順に説明する。
【0031】
図1の14は、水平配置された円板状の透明回転テーブルで、その中心孔15には回転軸16が貫通されている。
【0032】
回転軸16と透明回転テーブル14は一体化されており、回転軸16をモータ(図示せず)で回転駆動すれば、透明回転テーブル14も回転駆動されるようになっている。
【0033】
また、透明回転テーブル14の上面の、内方と外方には、環状の突起17、18が設けられており、これらの突起17、18に支えられるように透明回転テーブル14上面には、共役マスターディスク19が配置されている。
【0034】
さらに、共役マスターディスク19の上面の、内方と外方には、環状の突起20、21が設けられており、これらの突起20、21上に支えられるように共役マスターディスク19上面には、ダミーディスク22が配置されている。
【0035】
これらの共役マスターディスク19とダミーディスク22も円板状であり、夫々の中心孔23、24には、下方より回転軸16が貫通されており、この回転軸16の上端部には、磁石よりなる蓋25が装着されている。
【0036】
つまり、回転軸16も磁性体で形成されているので、その上端部に、磁石よりなる蓋25を磁気的に吸着させているのである。そしてこれにより、透明回転テーブル14、共役マスターディスク19、ダミーディスク22はこの図1のごとく重合した状態で、一体的に回転するようになっている。
【0037】
なお、下から上に順に、透明回転テーブル14、共役マスターディスク19、ダミーディスク22を積層するために、透明回転テーブル14の径よりも、共役マスターディスク19の径を大きくしており、さらに共役マスターディスク19の径よりも、ダミーディスク22の径を大きくしている。
【0038】
つまり、このような積層工程においては、透明回転テーブル14、共役マスターディスク19、ダミーディスク22は、いずれもその外周の数箇所と、その近傍の下部を冶具(図示せず)で保持するようになっているので、このように下から上に順に積層するものにおいては、上方のものの径を下方のものの径よりは大きくしておく方が、生産性を高めるためには、好ましい。
【0039】
図1における、26は長コヒーレント光を出射する光源であり、図1(b)に示すように波長が409nmのレーザー光を出射する。
【0040】
この光源26から出射されたレーザー光はレンズ27で平行光に変換され、その後ハーフミラー28で分岐され、その一方は直進して参照光29となり、他方は反射して記録光30となる。
【0041】
参照光29は次にミラー31で反射し、上記透明回転テーブル14、共役マスターディスク19、ダミーディスク22の積層体の下側から、つまり透明回転テーブル14側から上方に進むこととなる。
【0042】
一方、記録光30は、レンズ32、33を介して直進後、ミラー34で反射し、次にパワー変調素子35を通過し、その後ミラー36で反射し、球面収差補正素子37、対物レンズ38を介して、上記透明回転テーブル14、共役マスターディスク19、ダミーディスク22の積層体の上側から、つまりダミーディスク22側から下方に進むこととなる。
【0043】
ただし、記録光30は図2のごとく、ダミーディスク22内で交点を結ぶように対物レンズ38で集光されるようになっており、またダミーディスク22内での交点の深さ位置に応じて、球面収差補正素子37によって球面収差の補正が行われており、記録光30は球面収差が無い状態で、交点を結ぶ。この交点がダミーディスク22内で水平方向に渦巻状に広がるように移動し、その後ダミーディスク22内の下層において再び内方から外方へと渦巻状に広がるように移動し、これが繰り返される。
【0044】
この点をさらに詳細に説明すると、上述したように透明回転テーブル14、共役マスターディスク19、ダミーディスク22の積層体は、回転軸16を介してモータにより回転されている。
【0045】
そしてこの状態で、積層体の上面側のミラー36、球面収差補正素子37、対物レンズ38は一体で、外方に移動し、またこの移動と連動するように、積層体の下面側のミラー31も外方に移動する。
【0046】
その後、ミラー36、球面収差補正素子37、対物レンズ38の一体物は、図2に示すように内方に移動し、次に一段、ダミーディスク22側に接近し、その後は再び外方に移動し、以降はこれを最終段まで繰り返す。
【0047】
また、このミラー36、球面収差補正素子37、対物レンズ38の一体物の移動と連動するように、積層体の下面側のミラー31も、内方から外方への移動を繰り返す。
【0048】
ただし、ミラー31側の光は参照光29であるので、ミラー31を、透明回転テーブル14、共役マスターディスク19、ダミーディスク22の積層体側に接近させることは無い。
【0049】
以上の工程を実行すると、図2、図3に示すように、共役マスターディスク19内においては、透明回転テーブル14を通過した参照光29と、ダミーディスク22を通過した記録光30との干渉によるホログラム39が、多段に形成されることになる。
【0050】
つまり、以上の工程を実行するだけで、図23に示した従来のマスターディスク4を作ることなく、直接共役マスターディスク19を形成できるので、生産性の極めて高いものとなる。
【0051】
また、本実施形態のごとく作成した共役マスターディスク19は、参照光29と記録光30を直接的に干渉させるもので、これらの参照光29と記録光30のエネルギーレベルを自由に調整できるので、共役マスターディスクの感光性記録材料を無駄に感光することがなくなり、感光性記録材料のダイナミックレンジを十分に活用することが可能になり、多くの記録多重度が要求される多層構造のマイクロホログラムを有するマイクロホログラムディスクの共役マスターディスクの作成が可能になる。
【0052】
具体的には、共役マスターディスク19は、入射した光エネルギー量に応じて屈折率が変化する感光性記録材料を含む合成樹脂で形成されており、このようなディスク材料は、異なる体積ホログラムを多重に記録できることが知られている。その多重度は、ディスク内の感光性記録材料を如何に有効に利用できるかによって、大きく変化する。感光性材料を無駄に感光することなく、最も効率よくホログラムを作成できるのは、参照光29と記録光30によってできる干渉縞のコントラストが最大になるときであり、それは、参照光29と記録光30のエネルギーレベルが等しいときである。
【0053】
一方、参照光29と記録光30のエネルギーバランスが大きく異なっていると、参照光29と記録光30によってできる干渉縞のコントラストが低くなり、感光性記録材料は直流的に無駄に感光する成分が多くなり、ホログラム記録の多重度が大幅に低くなってしまう。
【0054】
干渉縞のコントラストmは、次式で表現することができ、参照光29と記録光30のエネルギーレベルが等しいときに、最大値の1になる。
【0055】
m=2(Is・Ir)1/2/(Is+Ir)
Is:記録光強度、Ir:参照光強度
本実施形態においては、参照光29と記録光30のエネルギーレベルがほぼ等しくなるようにすることが可能であり、共役マスターディスクの感光性記録材料を無駄に感光することがなくなり、多くの記録多重度が要求される多層構造のマイクロホログラムを有するマイクロホログラムディスクの共役マスターディスクの作成が可能になる。
【0056】
なお、参照光29と記録光30のいずれか一方あるいは両方を連続光ではなく、パルス光にすることも可能であり、本実施例では、パワー変調素子35により、記録光を高速でオン―オフしており、パルス光で記録することにより観光性記録材料の利用効率をさらに高めている。
【0057】
図24(従来例)の共役マスターディスク8内のホログラム11は、この図24に示したように、共役マスターディスク8側から入射させた平行光9と、マイクロホログラム7からのその反射光10とを干渉させることで形成したものであり、この状態では反射光10のエネルギーレベルは平行光9の1/100程度と極めて低いので、干渉縞のコントラストは最大値の1/5程度になってしまい、感光性記録材料もその1/5程度しか有効に利用されず、記録できるホログラムの多重度も1/5以下に低下してしまう。
【0058】
このため、性能の良い観光性記録材料を用いても、多くの記録多重度が要求される多層構造のマイクロホログラムを有するマイクロホログラムディスクの共役マスターディスクの作成は非常に困難になる。
【0059】
これに対して、本実施形態では、参照光29と記録光30のエネルギーレベルがほぼ等しくなるようにすることが可能であり、干渉縞のコントラストは、最大の1になり、感光性記録材料を無駄なく使用することができ、多くの記録多重度が要求される多層構造のマイクロホログラムを有するマイクロホログラムディスクの共役マスターディスク8の作成が可能になる。
【0060】
なお、共役マスターディスク8は、ホログラムの記録後に、感光性を無くす定着処理を行う。したがって、図25のごとく記録媒体1の製造のために、記録媒体1側から平行光12を入射させても、共役マスターディスク8内のホログラム11は劣化することはない。
【0061】
ただ、平行光12とホログラム11からの回折光13の光量がアンバランスであるという問題が残存する。この光量のアンバランスがあると、やはり感光性の記録材料の利用効率が著しく低くなり、作成されるホログラムの反射効率が低くなってしまう。
【0062】
これに対して本実施形態では、図4〜図14において説明する記録媒体40の製造方法において、上記の平行光12とホログラム11からの回折光13の光量のアンバランスも解決している。
【0063】
なお、透明回転テーブル14の下面外周には、アドレスマーカー14aを設けており、このアドレスマーカー14aを利用して、透明回転テーブル14の回転制御を行うようになっている。
【0064】
図4〜図14は、図1〜図3の共役マスターディスク19を用いて記録媒体(図10の40)を製造する工程を説明するものである。
【0065】
なお、図1〜図3は上述のごとく、共役マスターディスク19を製造するための製造装置を示し、また図4〜図14は記録媒体(図10の40)を製造するための製造装置を示し、これらの両装置は別の製造装置ではあるが、基本的な構造は類似しているので、同じ部品には、同じ符号を付して、説明を簡略化する。
【0066】
図4においては、図1のダミーディスク22に代えてブランクディスク41を、図3状態の共役マスターディスク19に重合させる。
【0067】
その後、これら透明回転テーブル14、共役マスターディスク19、ブランクディスク41の重合体の、透明回転テーブル14下側外から、この重合体に向けて参照光29を入射させるとともに、この重合体のブランクディスク41上側外から、この重合体に向けて記録光30を入射させることで、記録媒体(図10の40)を製造しようとしている。
【0068】
ただし、この記録媒体(図10の40)の製造装置においては、ブランクディスク41に向けて進む記録光30の光路中で、ミラー34、36間に1/4波長板42を介在させている。また、ミラー36とブランクディスク41間に、図1では存在していた球面収差補正素子37、対物レンズ38は存在しない。
【0069】
図4においては、先ず光源26から、図4(b)に示すように波長が407nmのレーザー光(長コヒーレント光)を出射する。
【0070】
この図4においては、光源26から出射されるレーザー光をS偏光としており、これがレンズ27で平行光に変換され、その後ハーフミラー28で分岐され、その一方は直進して参照光29となり、他方は反射して記録光30となる。
【0071】
参照光29は次にミラー31で反射し、上記透明回転テーブル14、共役マスターディスク19、ブランクディスク41の積層体の下側から、つまり透明回転テーブル14側から上方に進むこととなる。
【0072】
一方、記録光30は、レンズ32、33を介して直進後、ミラー34で反射し、次にパワー変調素子35、1/4波長板42を通過し、その後ミラー36で反射し、上記透明回転テーブル14、共役マスターディスク19、ブランクディスク41の積層体の上側から、つまりブランクディスク41側から下方に進むこととなる。
【0073】
この時、透明回転テーブル14、共役マスターディスク19、ブランクディスク41の積層体は、回転軸16を介してモータにより回転されている。
【0074】
そしてこの状態で、積層体の上面側のミラー36は、外方に移動し、またこの移動と連動するように、積層体の下面側のミラー31も外方に移動する。
【0075】
図5は上述した参照光29の進行状態を示し、参照光29は、先ずは透明回転テーブル14、共役マスターディスク19を通過し、ブランクディスク41へと向かう。
【0076】
この時、ブランクディスク41の下面、つまり共役マスターディスク19側には、共役マスターディスク19側からブランクディスク41に向けて、1/4波長膜43、機能性膜44が順番に設けられている。
【0077】
機能性膜44は、右旋回反射、左旋回透過の機能を持つものである。
【0078】
したがって、上記透明回転テーブル14、共役マスターディスク19を通過し、ブランクディスク41へと向かう参照光29は、この図5に示すように機能性膜44によって反射されることになる。
【0079】
ただし、この反射により、参照光29は1/4波長膜43を往復で2度通過することで、S偏光平行光からP偏光平行光へと変更される。
【0080】
そしてこのP偏光平行光となった参照光29が、図7のごとく共役マスターディスク19内のホログラム39で反射し、再びそれがブランクディスク41へと進行することになる。
【0081】
この時、1/4波長膜43を通過することで、今度は左旋回となるので、機能性膜44を通過し、ブランクディスク41へと進行する。
【0082】
一方、記録光30は図8のごとく、1/4波長膜43を通過することで右旋回となって、ブランクディスク41内へと進行する。
【0083】
この結果、ブランクディスク41内においては、下方よりの左旋回の参照光29と、上方よりの右旋回の記録光30が干渉し、図10〜図12に示すごとく渦巻帯状のホログラム層45が多段状態で形成される。
【0084】
つまり、ブランクディスク41内のホログラム層45は、図10〜図12に示すごとく一本ずつ渦巻帯状で、この渦巻帯が、ブランクディスク41内において、その厚さ方向に、所定間隔で多段状態に複数設けられているのである。
【0085】
また、ブランクディスク41内に形成されるホログラム層45は、図8のごとく共役マスターディスク19内のホログラム39で反射収束された参照光29と記録光30が衝突状態で形成されるものである。このため、共役マスターディスク19内のホログラム39で反射収束された参照光29と記録光30の光量がほぼ等しくなるようにすることにより、感光性記録材料の利用効率が高くなり、反射効率が高いホログラム層45を作ることができるのである。
【0086】
図10〜図12は、図4〜図9の工程で、ブランクディスク41を記録媒体40化したものであり、これらの図10〜図12に示すように記録媒体40を構成するブランクディスク41内には、上述した説明で理解されるように、渦巻帯状のホログラム層45が所定間隔で、多段状態に形成されている。
【0087】
この記録媒体40への情報記録と、その後の再生は、記録再生装置(図示せず)で行うことになるが、記録時は、図13に示すように記録再生用のレンズ46で、例えば「デジタル信号の1」に相当する場所のホログラム層45部分に記録再生光47(波長405nm)を収束し、その部分のホログラム層45を消失させる。逆に「デジタル信号の0」に相当する部分のホログラム層45部分には光を照射せず、これによりホログラム層45を残す。
【0088】
その後、以上のごとく記録した情報を再生する時には、図14に示すごとく波長405nmの記録再生光47を図13のごとくレンズ46を介してホログラム層45に照射し、そこからの反射光からデジタル信号の再生を行う。
【0089】
なお、再生時には、記録媒体40が連続的に高速回転しており、記録再生光47の照射時間が極めて短時間であり、また照射パワーも記録時に比較して、非常に低く、よってホログラム層45が劣化することはない。
【0090】
また、以上図4〜図14を用いて説明した記録媒体(図10の40)の製造時において用いるブランクディスク41の下面には、つまり共役マスターディスク19側には、共役マスターディスク19側からブランクディスク41に向けて、1/4波長膜43、機能性膜44を設けている。
【0091】
すなわち、本実施形態では、ブランクディスク41を用いて、記録媒体(図10の40)を製造するに際し、図5で説明したように、参照光29を、機能性膜44によって反射させ、1/4波長膜43を往復で2度通過させ、S偏光平行光からP偏光平行光へと変更させる。そして、P偏光平行光となった参照光29を、図7のごとく共役マスターディスク19内のホログラム39で反射させ、再びブランクディスク41へと進行させ、1/4波長膜43、機能性膜44を通過させ、ブランクディスク41へと進行させるようにしている。
【0092】
このため、図1〜図3に示す共役マスターディスク19の製造時でも、この共役マスターディスク19とダミーディスク22間を通過する光の屈折率を、図4〜図14の記録媒体(図10の40)製造時の、共役マスターディスク19とブランクディスク41間の屈折率と合わせることを目的として、前記ダミーディスク22の共役マスターディスク19側に、ダミーの1/4波長膜43aと、ダミーの機能性膜44aを設けている。
【0093】
なお、本実施形態においては、図1の共役マスターディスク19製造時には光源26から波長が409nmのレーザー光を出射するようにしており、また図4の記録媒体40製造時には光源26から波長が407nmのレーザー光を出射するようにしており、さらに図13の記録再生時には光源(図示せず)から波長が405nmの記録再生光47を照射しているのは、記録再生状態を安定させるためである。
【0094】
つまり、図1の共役マスターディスク19製造時には、光源26から波長が409nmのレーザー光を出射させるようにしている。
【0095】
このため、この時は図2でも説明したように高エネルギーの参照光29と高エネルギーの記録光30とを直接的に干渉させることで、この干渉部において、常温(例えば20度)から約70度の温度上昇が生じており、この温度上昇で共役マスターディスク19は膨張した状態でホログラム39が形成される。
【0096】
ところが、図4の記録媒体40製造時には、共役マスターディスク19内で光の収束状態が発生しないので、この共役マスターディスク19は、例えば常温よりも10度程度しか温度上昇しない。
【0097】
このため、共役マスターディスク19のホログラム39部分は、図1の時よりも収縮した状態で、記録媒体40が形成されることになる。
【0098】
このため、その収縮度合いを考慮して、この図4では光源26から出射されるレーザー光の波長を407nmと、図1の時よりも若干短くし、これにより記録媒体40を形成している。
【0099】
ただし、この記録媒体40作成時には、この記録媒体40自身は、例えば常温よりも70度温度上昇し、この温度上昇した状態で記録媒体40は形成される。
【0100】
しかし、その後の図13に示す再生時には、記録媒体40への記録再生光47の照射時間が短く照射パワーも低く、よってこの記録媒体40は殆ど温度上昇しないので、記録媒体40のホログラム層45部分は図4の時よりも収縮した状態となっている。
【0101】
このため、この再生時には、光源(図示せず)から、波長が405nmの記録再生光47を照射し、これにより、膨張、収縮状態の影響を受けることなく、記録再生が行えるようにしているのである。
【0102】
このため、本実施形態によれば、多層に記録、再生が可能な記録媒体40を用いた時の、記録再生状態を安定させることができる。
【0103】
以上の説明により、記録媒体40の基本構造、およびその製造方法が理解されたところで、以下に本実施形態における最も大きな特徴点について説明する。
【0104】
本実施形態における記録媒体40は、上述のごとく記録媒体40を構成するブランクディスク41内において、渦巻帯状のホログラム層45が、所定間隔で、多段状態に形成されている。
【0105】
また、各段の渦巻帯状のホログラム層45は、図15〜図17に示すように、その円周方向において、上下方向に連続的に湾曲させられており、この点が最も大きな特徴点である。
【0106】
本実施形態においては、各ホログラム層45の上下方向の湾曲は、λ/2N(λ:再生光の波長、N:ディスク屈折率)よりも大きくしている。
【0107】
また、上下に隣接するホログラム層45間(上下中心点間)は、隣接する層間では異なるが(d1≠d2、d2≠d3、・・・、dn−1≠dn)、d1、d2、・・・、dnのなかには等しいものがあっても良い(例えば、d1=dn)。こうすれば、dn>・・・>d2>d1のように、層間をどんどんと大きくする必要がないので、ブランクディスク41内の厚さ方向に、多くのホログラム層45を配置することが出来、その結果として、記録媒体40としての記録容量を大きくすることが出来る。
【0108】
このような状態とした場合で、図17(a)に示すように、最下層に位置するホログラム層45の「四の部分」のホログラム層45から再生信号を読み出す場合、その時には、メインの再生光は、一→二→三→四→五→六→七及び七→六→五→四→三→二→一と進み、これにより図17(b)のごとく、反射波は綺麗な球面波となる。
【0109】
また、下からn段目とn+1段目と2段目のホログラム層45で3回反射する他の再生光は、一→二→八→五→六→七及び七→六→九→三→二→一と進む。
【0110】
この下からn段目とn+1段目と2段目のホログラム層45で反射する他の再生光と、上記、最下層に位置するホログラム層45の「四の部分」のホログラム層45からの再生光とは、各ホログラム層45を上下方向に湾曲させたことで、その波面が異なることになり、その結果として、一様な干渉は生じず、上記、最下層に位置するホログラム層45の「四の部分」のホログラム層45からの再生光に、ノイズが混入することは無い。
【0111】
すなわち、この図17(c)から理解されるように、下からn段目とn+1段目と2段目のホログラム層45で反射した他の反射光の波面は、反射される各ホログラム層45をλ/2N(λ:再生光の波長、N:ディスク屈折率))以上の振幅で、上下方向に湾曲させたことにより、本来の球面波が概ねλ(上記再生光の波長)以上の振幅で変調された波面になっている。この変調された波面を有する他の反射光と図17の綺麗な球面波のメインの再生光は、たとえ干渉しても、多数の干渉縞が発生した状態になり、均一な干渉状態ではないので、干渉による光量変動は平均化されてしまい、干渉状態が変化しても、干渉による光量変化はほとんど生じず、メインの再生光はノイズは実質的に発生しないものとなるのである。
【0112】
なお、本実施形態では、図11、図12で説明したように、各層のホログラム層45が、渦巻帯状のホログラム層45となっているため、図15に示すように、各ホログラム層45は、その円周方向において、上下方向に連続的な湾曲面を有する構造となる。勿論、ホログラム層45を、図25で示した複数のマイクロホログラム3を渦巻状に並べて構成することも出来、その時には隣接するマイクロホログラム3を結ぶ線が上下に湾曲した状態となる。
【0113】
図18、図19は、本発明の他の実施形態を示し、上下に隣接するホログラム層45を非平行状態としたものである。
【0114】
つまり、図15〜図17の実施形態では、上下に隣接するホログラム層45が平行状態となっていたが、この図18、図19に示す実施形態では、上下に隣接するホログラム層45を非平行状態としているので、上記、最下層に位置するホログラム層45の「四の部分」のホログラム層45からの再生光と、下からn段目とn+1段目と2段目のホログラム層45で反射した他の反射光とは、その波面間の光路長差がさらに大きく異なることになり、その結果として、干渉による光量変動を防止する効果はさらに大きくなり、上記、最下層に位置するホログラム層45の「四の部分」のホログラム層45からの再生光に、ノイズが混入することは無くなるのである。
【0115】
図20は、本発明のさらに他の実施形態を示し、上下に隣接するホログラム層45を非平行状態としたものである。
【0116】
具体的には、上下二つのホログラム層45の内、一方(L1、Ln)を直線状とし、他方(L2、Ln+1)を上下に湾曲させたものである。
【0117】
そして、このようにした場合でも、上記、最下層に位置するホログラム層45の「四の部分」のホログラム層45からの再生光と、下からn段目とn+1段目と2段目のホログラム層45で反射した他の反射光とは、その波面間の光路長差が大きく異なることになり、その結果として、多数の干渉縞が発生した状態になり、均一な干渉状態ではないので、干渉による光量変動は平均化され、干渉による光量変動は生じず、上記、最下層に位置するホログラム層45の「四の部分」のホログラム層45からの再生光に、ノイズが混入することは無くなるのである。
【0118】
図21は、本発明のさらにまた他の実施形態を示し、この実施形態では、例えば上下方向の四本のホログラム層45をユニット化し、先ず各ユニット間の上下方向距離を一定とする。
【0119】
また、各ユニット内においては、上下方向に隣接するホログラム層45間、d1、d2、d3を異ならせた状態にしている。
【0120】
そして、このようにした場合でも、読取目標のホログラム層45からの再生光と、下からn段目のホログラム層45で反射する他の再生光とは、光路長が大きく異なることになり、その結果として、干渉は生じず、再生光に、ノイズが混入することは無くなるのである。
【0121】
また、図15から、図21に示した各実施形態において、上下に位置する渦巻帯状のホログラム層45の湾曲周期を異ならせても良い。
【0122】
なお、図15から、図21に示した各実施形態のように、湾曲したホログラム層45、あるいは直線状の記録媒体40をブランクディスク41内に形成するためには、予め共役マスターディスク19内に、それ用のホログラム39を形成しておく必要がある。
【0123】
以上のように図15から、図21に示した各実施形態のように、湾曲したホログラム層45を、ブランクディスク41内に近接して、配置したとしても、上下のホログラム層45からの再生光が干渉することはなく、よってブランクディスク41内の厚さ方向に、多くのホログラム層45を配置することが出来、その結果として、記録媒体40としての記録容量を大きくすることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上のように本発明の記録媒体は、ディスク内の厚さ方向に、所定間隔をおいて、水平方向に渦巻帯状となったホログラム層を、複数設け、各渦巻帯状のホログラム層は、その円周方向において、上下方向に連続的に湾曲させたものであるので、記録容量を大きくすることが出来る。
【0125】
すなわち、本発明によれば、ディスク内に複数設けたホログラム層を、その円周方向において、上下方向に連続的に湾曲させたものであるので、このディスク内に複数のホログラム層を近接して、所定間隔ごとに配置したとしても、上下のホログラム層からの再生光が干渉することはなく、よってディスク内の厚さ方向に、多くのホログラム層を配置することが出来、その結果として、記録媒体としての記録容量を大きくすることが出来るのである。
【0126】
このため、大容量タイプの記録媒体として、活用が期待される。
【符号の説明】
【0127】
14 透明回転テーブル
15 中心孔
16 回転軸
17,18 突起
19 共役マスターディスク
20,21 突起
22 ダミーディスク
23,24 中心孔
25 蓋
26 光源
27 レンズ
28 ハーフミラー
29 参照光
30 記録光
31 ミラー
32,33 レンズ
34 ミラー
35 パワー変調素子
36 ミラー
37 球面収差補正素子
38 対物レンズ
39 ホログラム
40 記録媒体
41 ブランクディスク
42 1/4波長板
43 1/4波長膜
43a ダミーの1/4波長膜
44 機能性膜
45 ホログラム層
46 レンズ
47 記録再生光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク内の厚さ方向に、所定間隔をおいて、ホログラム層を複数設け、上下方向に隣接するホログラム層の内、少なくとも一方は、上下方向に連続的に湾曲させた記録媒体。
【請求項2】
ディスク内の厚さ方向に、所定間隔をおいて、水平方向に渦巻帯状となったホログラム層を、複数設け、上下方向に隣接する渦巻帯状のホログラム層の内、少なくとも一方は、その円周方向において、上下方向に連続的に湾曲させた記録媒体。
【請求項3】
渦巻帯状のホログラム層は、その円周方向において、上下方向に連続的な湾曲面を有する請求項2に記載の記録媒体。
【請求項4】
上下方向の湾曲は、λ/2N(λ:再生光の波長、N:ディスク屈折率)よりも大きくした請求項1〜3のいずれか一つに記載の記録媒体。
【請求項5】
上下に位置するホログラム層を非平行状態とした請求項1〜4のいずれか一つに記載の記録媒体。
【請求項6】
上下に位置するホログラム層の湾曲周期を異ならせた請求項1〜5のいずれか一つに記載の記録媒体。
【請求項7】
ディスク内の厚さ方向に、所定間隔をおいて、ユニット化されたホログラム層を設け、各ユニットにおいては、水平方向のホログラム層を、複数設け、上下方向に隣接するホログラム層の内、少なくとも一方は、その円周方向において、上下方向に連続的に湾曲させた記録媒体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の記録媒体に、その片面側から再生光を供給する構成とした記録媒体の再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−54236(P2011−54236A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202206(P2009−202206)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】