説明

記録媒体駆動装置

【課題】 媒体ケースの挿入動作および排出動作をスムーズに行えるようにした記録媒体駆動装置を提供すること。
【解決手段】 媒体ケース1を挿入するときには、移送部材25に設けられた係止凸部25aが媒体ケース1側の係止凹部2Aを係止して、装置奥部方向(Y1方向)に引き込む。移動中は一対の押圧部25cの上に天面21Aが対向しているため、不用意に係止状態が解除されることがない。また排出時には、一対の押圧部25cが媒体ケース1のY1側の前端を押圧するため、媒体ケース1を確実に排出することが可能となる。よって、媒体ケース1の挿入動作および排出動作をスムーズに行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクなどの記録媒体に対して記録・再生を行う記録媒体駆動装置に係わり、特にオートローディングタイプの記録媒体駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1には、ローディングタイプの記録媒体駆動装置が記載されている。
この記録媒体駆動装置では、引込み部材に設けられた掛止凸部がカセットテープ(記録媒体)のリール穴(係止凹部)を係止する。アームが回動し、引込み部材が装置奥部方向に移動させられると、引込み部材に係止されたカセットテープが装置奥部に引き込まれる。
【0003】
またイジェクトスイッチが押されると、カムスライダが出入口方向に押し出され、アームに設けられた操作ピンが前記カムスライダにより回動させられる。これにより、アームの先端に設けられた引込み部材が出入口方向に移動させられ、前記引込み部材の掛止凸部に係止されたカセットテープが出入口から排出される。
【特許文献1】特開2003−123350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものでは、記録媒体の搬入および搬送が、ともに引込み部材に形成された同じ係止凸部のみで行われる構成である。
【0005】
前記係止凸部はテーパ面を有する構成であり、引込み部材から記録媒体側への駆動力の伝達は、このテーパ面と記録媒体側の係止凹部(リール穴)とを介してのみ行われている。
【0006】
しかし、テーパ面と係止凹部の少なくとも一方に変形などがあると、テーパ面と係止凹部との間に滑りが生じ、引込み部材側の駆動力を記録媒体に効率良く伝達することが困難となる。
【0007】
また搬送中に、引込み部材を上方に持ち上げる力が発生し、ホルダの下面を引込み部材の上面が摺動することよる抵抗力が発生しやすくなる。
このため、記録媒体をスムーズに搬送することができなくなるといった問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、ローディングタイプの記録媒体駆動装置において、記録媒体の挿入動作および排出動作をスムーズに行えるようにした記録媒体駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも記録媒体を有する媒体ケースの出し入れが行われる出入口と、前記媒体媒体と電気的に接続される接続部を有するとともに前記出入口に挿入されたケースを支持するシャーシと、前記出入口と装置奥部との間で前記媒体ケースを移動方向に移送する移送部材と、を備えた記録媒体駆動装置において、
前記移送部材は、前記媒体ケースに形成された係止凹部を係止する係止凸部と、前記係止凸部が前記係止凹部を係止する付勢力を与える付勢部材と、排出時に前記媒体ケースの前端に当接して前記排出方向に押し出す押圧部とを有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明では、係止凸部だけでなく、押圧部によっても媒体ケースを押し出すことができるため、媒体ケースを確実に排出させることができる。
【0011】
上記において、前記媒体ケースには移動方向に移動するとともに前記移送部材を回動自在に支持するスライダが設けられ、
前記シャーシには、前記移送部材の係止凸部が出入りする開口部と前記移送部材の回動を可能とする拡張部が設けられており、
前記スライダが出入口側に位置するときには、前記押圧部が前記拡張部に位置して前記移送部材の回動が許容され、前記スライダが装置奥部方向に位置するときには前記押圧部を規制して前記移送部材の回動が制限されるものが好ましい。
【0012】
上記手段では、前記スライダが出入口側に位置するときには媒体ケースを係止および係止解除を行うことができ、前記スライダが装置奥部方向に位置するときには媒体ケースの係止を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、係止凸部だけでなく、押圧部によっても媒体ケースを押し出すことができるため、媒体ケースを確実に排出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、本発明である記録媒体駆動装置において使用される記録媒体について説明する。
図1は記録媒体を備えた媒体ケースを示す外観斜視図、図2は媒体ケースの正面図である。
【0015】
図1および図2に示すように、この媒体ケース1の外観は略箱型形状をしており、媒体ケース1の上側(Z1側)部分を覆う上部ケース2と下側(Z2側)部分を覆う下部ケース3とを有している。
【0016】
前記上部ケース2と下部ケース3との間には、例えばハードディスクなどから構成される記録媒体(図示せず)が収納されている。記録媒体を備えた媒体ケース1自体の厚み寸法(上部ケース2の表面と下部ケース3の表面間の厚み寸法)はhである。なお、媒体ケース1に収納される記録媒体は、ハードディスクに限られるものではなく、例えばフラッシュメモリなど半導体素子から構成される記録媒体、あるいはホログラム型の記録媒体などであってもよい。
【0017】
前記上部ケース2のY1方向の前方位置には、一定の幅寸法および深さ寸法を有する搬送用の係止凹部2Aが形成されている。この係止凹部2Aは、後述するように移送部材に設けられた係止凸部によって係止されて搬送される。
【0018】
上部ケース2の四つのコーナーには、上部ケース2の内方に向かって凹状に窪む凹部2a,2b,2cおよび2dが設けられている。凹部2a,2bは上部ケース2の前方側の位置に設けられ、凹部2c,2dは上部ケース2の後部側の位置に設けられている。
【0019】
一方、下部ケース3の四つのコーナーには、下部ケース3の表面から凸状に突出形成された凸部3a,3b,3cおよび3dが設けられている。凸部3a,3bは下部ケース3の前方側の位置に設けられ、凸部3c,3dは下部ケース3の後部側の位置に設けられている。
【0020】
前記凸部3a,3b,3cおよび3dの高さ方向の寸法はΔhであり、凸部3a,3b,3cおよび3dを考慮した媒体ケース1全体の厚み寸法はh+Δhである。
【0021】
図2に示すように、X1側の位置に設けられた凹部2a,2cと、同じく図示X1側の位置に設けられた凸部3a,3cとは、ともに媒体ケース1の幅方向の中心線Om−OmからX1方向に所定の距離La1だけ離れた位置に設けられている。また図示X2側の位置に設けられた凹部2b,2dと、同じく図示X2側の位置に設けられた凸部3b,3dとは、ともに中心線Om−OmからX2方向に所定の距離La2だけ離れた位置に設けられている。
【0022】
前記距離La1と距離La2とはLa1>La2の関係にある。すなわち、中心線Om−Omに対し、上側ケース2に設けられたX1側の凹部2a,2cとX2側の凹部2b,2dとは左右非対称の位置に形成されている。同様に、下側ケース3に設けられたX1側の凸部3a,3cとX2側の凸部3b,3dとは左右非対称の位置に形成されている。
【0023】
なお、前記媒体ケース1では、2台以上の媒体ケース1を揃えた状態で積み重ねると、上側に位置する媒体ケース1の下部ケース3に設けられた4つの凸部3a,3b,3cおよび3dが、下側に位置する媒体ケース2の上部ケース1に設けられた4つの凸部2a,2b,2cおよび2dに嵌合的に入り込む。このため、2台以上の媒体ケース1を、高さ方向(Z方向)に規則正しく積み上げることが可能とされている。
【0024】
前記媒体ケースのY1側には前面パネル4が設けられている。前記前面パネル4の中央には凹状のコネクタ部5Aを有する第1のコネクタ5が設けられており、第1のコネクタ5のコネクタ部5Aには複数の接続用の外部端子5aが露出されている。前記外部端子5aは銅や金などで形成されており、Z方向を長手方向とする帯状の電極である。これら複数の外部端子5aは、幅方向(X方向)に所定の間隔を置いて並んでいる。この前記外部端子5aに、後述するような記録媒体駆動装置側の第2のコネクタ30を接続し所定の信号を与えることにより、媒体ケース1の内部の記録媒体に対し、データを書き込むことができ、または記録されているデータを読み出せるようになっている。
【0025】
前記コネクタ部5Aの幅方向の左右両端部には、Y方向に延びる一対の位置決め孔6a,6bが形成されている。後述するように、この位置決め孔6a,6bにはガイドピンが挿入される。
【0026】
第1のコネクタ5のとなりには、内部の記録媒体への書き込みの許可および不許可を設定するためのライトプロテクト部7が設けられている。ライトプロテクト部7は、X方向に移動するスライド型のスイッチで形成されており、前面パネル4の表面にはスイッチを操作するための設定凸部7aが突出している。例えば、設定凸部7aをX1方向にスライドさせると、「書き込みの許可」状態に設定され、設定凸部7aをX2方向にスライドさせると、「書き込みの不可」状態に設定される。
【0027】
次に、上記媒体ケースを駆動するための記録媒体駆動装置について説明する。
図3は本発明の記録媒体駆動装置の外観を示す斜視図、図4は記録媒体駆動装置の内側に設けられた駆動装置本体の分解斜視図、図5は駆動装置本体の平面図、図6はスライダと移送部材を示す斜視図、図7はスライダと移送部材との詳細を示す断面図、図8は駆動装置本体を図4とは異なる方向から見た場合を示す斜視図である。
【0028】
図3に示すように、記録媒体駆動装置10は箱型の形状をしており、その前方(Y2)の位置には化粧パネル11が設けられている。化粧パネル11には、媒体ケース1の挿入および排出を行うための出入口12が形成されている。前記出入口12の内側には開閉式のシャッタ13が設けられている。前記シャッタ13は、上端側のX方向の両端部が前記出入口12の両側方向の内面に対して回動自在に支持されており、出入口12の内側に向かって回動可能である。出入口12から挿入された媒体ケース1は、前記シャッタ13を内側に押し開きながら装置奥部方向向かって移動させられる。
【0029】
図4に示すように、記録媒体駆動装置10の内部には、駆動装置本体20が設けられている。
【0030】
駆動装置本体20は金属製のシャーシ21を有している。シャーシ21は、天面21Aと、天面21Aの両側をZ2方向にほぼ直角に折り曲げて形成した側面21B,21Cと、前記側面21B,21Cの先端をさらに内側に向かってほぼ直角に折り曲げ形成した底面21D,21Eとを有している。したがって、図4に示すように、シャーシ21の正面側には、天面21A、側面21B,21Cおよび底面21D,21Eで囲まれる略四角形状のスペースSが形成される。
【0031】
ここで、天面21Aと底面21D,21Eとの間の高さ方向の対向寸法をHとすると、対向寸法Hは前記媒体ケース1の厚み寸法h以上であり、且つ凸部3a,3b,3cおよび3dの高さ寸法Δhを含めた前記媒体ケース1全体の厚み寸法h+Δh未満の範囲に設定されている(h≦H<h+Δh)。また底面21Eの幅寸法WEは、底面21Dの幅寸法WDよりも幅広に形成されている(WE>WD)。
【0032】
図4に示すように、シャーシ21のZ1側の天面21Aには、媒体ケース1の挿入方向および排出方向である図示Y方向に移動自在に設けられたスライダ22と、回転軸23に対して回転自在に支持されたアーム24が設けられている。
【0033】
スライダ22のY2方向の先端側には支持ピン22aが設けられている。アーム24の先端にはU字孔24aが形成されており、このU字孔24a内に前記支持ピン22aが挿通されている。すなわち、スライダ22とアーム24とは支持ピン22aを介して連結されている。このため、スライダ22がY1方向またはY2方向に移動すると、支持ピン22aが前記U字孔24aをY方向に押すため、その押圧方向に応じて前記アーム24が時計回り方向または反時計回り方向に回転する。あるいは前記アーム24が時計回り方向または反時計回り方向に回動すると、その回動方向に応じてスライダ22がY1方向またはY2方向に移動する。
【0034】
シャーシ21のY1側の奥部には、略長方形状に形成された開口部21aが形成されている。前記開口部21aのX方向の両端には、開口部21aに幅寸法をX1およびX2方向に広げる拡張部21b,21bが部分的に形成されている。
【0035】
またスライダ22のY1側の奥部にも前記シャーシ21の開口部21aに対応するように形成された角状の開口部22Aが設けられている。
【0036】
図4および図5に示すように、前記開口部21aには移送部材25が配置されている。図6に示すように、移送部材25は、図示Y2側の先端側の下面に形成された係止凸部25aと、Y1側の後端に形成された一対の支持部25b,25bと、係止凸部25aと支持部25b,25bとの中間にX1およびX2方向に突出するように形成された一対の押圧部25c,25cとを有している。なお、図6,図7に示すように、前記係止凸部25aのY2側の先端には傾斜の緩い第1のテーパ部25fが形成され、Y1側には前記第1のテーパ部よりも傾斜のきつい第2のテーパ部が形成されている。
【0037】
また一対の支持部25b,25bには、図示X方向に貫通する貫通孔25b1,25b1が形成されている。さらに一方の支持部25bには、掛止凸部25dとストッパ突起24eとが一体の形成されている。
【0038】
スライダ22の開口部22Aには、その両縁部から内部方向に折り曲げることにより形成された一対の折曲片22b,22bが設けられている。この折曲片22b,22bには貫通孔22b1,22b1が形成されている。
【0039】
前記移送部材25に設けられた一対の貫通孔25b1,25b1の間に、スライダ22に設けられた一対の貫通孔22b1,22b1が位置合わせされ、こららの孔内に支持軸26が挿通される。これにより移送部材25は、支持軸26を中心に、スライダ22に対して図示α1およびα2方向に回動自在に支持されている(図6参照)。また前記支持軸26の周囲には付勢部材としての捩じりコイルばね27が設けられている。図7に拡大して示すように、捩じりコイルばね27の一端27aはスライダ22側に設けられた係止部22cに係止され、他端27bは移送部材25の一方の支持部25bに形成された前記掛止凸部25dに係止されている。このため、前記移送部材25には、常にスライダ22のから離れる図示α1方向の付勢力が作用している。
【0040】
ただし、図7に示すように、移送部材25に形成されているストッパ突起25eの上面が、前記開口部22AのY1側の縁部を形成するスライダ22の下面に当接する。このため、移送部材25は、先端側の係止凸部25aがわずかにα1方向に回動して傾いた傾斜状態が維持される。この状態では、前記一対の押圧部25c,25cは前記スライダ22から離れている。したがって、図7に点線で示すように、スライダ22をZ1方向に押した場合には、スライダ22は一対の押圧部25c,25cの上面が、開口部22Aの両側に位置するスライダ22の下面に当接するまでの間、図示α2方向に回動することが可能である。
【0041】
図8に示すように、シャーシ21のY1方向の奥部には、第2のコネクタ30が設けられている。
【0042】
第2のコネクタ30は、シャーシ21に対して固定された基台30Aが設けられており、この基材30AにX方向を長手方向とする凸状のコネクタ部(接続部)31が形成されている。前記コネクタ部31には、X方向に沿って一定の間隔を置いて一列に並ぶ複数の接続ピン32を有している。各接続ピン32は、Y方向に進退自在に設けられており、内部に設けられた図示しない弾性部材の付勢力によって、常に突出するY2方向に付勢されている。このため、接続ピン32をY1方向に押圧すると、接続ピン32はコネクタ部31の内部に隠れ、前記押圧を解除するとY2方向に突出する。複数の接続ピン32が、媒体ケース1の第1のコネクタ5に設けられた複数の外部端子5aがそれぞれ当接することにより、媒体ケース1と駆動装置本体20との間の電気的な接続が行われる。
【0043】
図8に示すように、コネクタ部31のX方向の両端で且つ基材30AのY2側の一面には、図示Y2方向に延びる基準ガイドピン(第1のガイドピン)33と補助ガイドピン(第2のガイドピン)34とが設けられている。基準ガイドピン33は一定の径寸法φ1を有する本体部と、その先端部に先端に向かうほど徐々に径寸法が絞られる細くなる傾斜部を有している。同じく補助ガイドピン34も一定の径寸法φ2を有する本体部と、その先端部に先端に向かうほど徐々に径寸法が絞られる細くなる傾斜部を有している。
【0044】
基準ガイドピン33の本体部の径寸法φ1は、補助ガイドピン34の本体部の径寸法φ2よりも太い径寸法で形成されている(φ1>φ2)。ただし、いずれの径寸法も媒体ケース1の第1のコネクタ5に形成された位置決め孔6a,6bの内径寸法よりも細く形成されている。また一方の基準ガイドピン33の全長は、他方の補助ガイドピン34の全長よりも長い寸法で形成されている。
【0045】
なお、駆動装置本体20には、アーム24を時計回り方向および反時計回り方向に回転する駆動機構、前記駆動機構に動力を与える駆動モータ、および駆動モータの回転、および記録媒体に対する書込みや読み出しなどの制御を行う制御部、さらには各種の検出センサが設けられている。
【0046】
上記記録媒体駆動装置の動作について説明する。
図9は媒体ケースの前後方向を正しい向きで挿入した場合(実線)および逆向きの状態で挿入した場合(点線)とを示す駆動装置本体の正面図、図10は媒体ケースの上下方向を違えて逆さまの状態で挿入した場合を示す駆動装置本体の正面図である。
【0047】
媒体ケース1が挿入される前の初期状態では、スライダ22は、最も出入口12(図示Y2方向)に移動させられており、アーム24は反時計回り方向に回動させられている。このとき、スライダ22に搭載されている移送部材25は、一対の押圧部25c,25cが前記スライダ22に形成されている前記拡張部21b,21b内に位置している。この状態では、移送部材25はα1方向(図7参照)に回動しており、係止凸部25aは、スライダ22に形成された開口部22Aおよびシャーシ21に形成された開口部21aを通じてシャーシ21の内側に突出している。
【0048】
媒体ケース1は、出入口12からシャッタ13を押し開いて内部に押し込まれる。続いて、媒体ケース1はシャーシ21の正面からスペースS内に挿入される。
【0049】
図9に実線で示すように、上述の媒体ケース1を正常な向きで、前記シャーシ21の正面側からスペースS内に挿入されると、図示X2側では下部ケース3に形成されている凸部3b,3dは前記底面21Eの内側の縁部よりも幅方向の中心側に位置し、同様に図示X1側でも下部ケース3に形成されている凸部3a,3cは前記底面21Dの内側の縁部よりも幅方向の中心側に位置する。したがって、正常な向きでは、凸部3a,3cおよび凸部3b,3dが、底面21Dおよび底面21Eに当たることがなく、下部ケース3の左右(X)の端部の表面が前記シャーシ21の底面21E,21Dに支持されながら、その上を奥部方向に向かってスムーズにスライドする。換言すると、媒体ケース1を正常な向きで挿入した場合には、凸部3a,3cおよび凸部3b,3dは、ともにシャーシ21の底面21Dと底面21Eとの間の内側を移動方向に向かって通り抜け、底面21Dおよび底面21Eに当たることがないため、媒体ケース1をスムーズに挿入することができる。
【0050】
一方、媒体ケース1を不正常な向きで、前記シャーシ21を正面側からスペースSに挿入した場合には以下のようになる。
【0051】
すなわち、図9に点線で示すように、媒体ケース1の前後の向きを違えて逆差した場合には、挿入方向先端に位置する一方の凸部3cが前記底面21Eの幅寸法WEの範囲内に位置する。この状態では、前記媒体ケース1のうち凸部3cを有する側の前記媒体ケース1全体の厚み寸法h+Δhが、前記天面21Aと底面21Eとの間の対向寸法Hを越える。このため、媒体ケース1の挿入方向の先端が、前記シャーシ21の入口の先端部分で前記天面21Aと底面21Eとの間に挟まれ、媒体ケース1をこれ以上奥部方向に挿入することができなくなる。よって、使用者は、このような挿入作業を行った早期の段階で、媒体ケース1を不正常な向きで挿入したことを認識することが可能である。
【0052】
また図10に示すように、媒体ケース1の上下方向を違えてシャーシ21に逆さまの状態で挿入した場合、媒体ケース1は上部ケース2の表面がシャーシ21の底面21Dおよび21Eに支持されることになる。しかし、この状態でさらに媒体ケース1をシャーシ21に差し込むと、下部ケース3に形成された挿入方向の先端側に位置する凸部3a,3bがシャーシ21の天面21Aに当接する。このため、逆さまの向きにある媒体ケース1のこれ以上の挿入を阻止することができる。よって、この場合にも使用者は、挿入作業を行った早期の段階で、媒体ケース1を不正常な向きで挿入したことを認識することが可能である。
【0053】
なお、媒体ケース1の前後方向および上下方向の双方を違えて挿入した場合にも、上記同様に媒体ケース1の誤挿入を早期の段階で阻止することが可能である。
【0054】
このように、本願発明では、正常な向きで挿入された媒体ケース1に限り媒体ケース1の装置内部への挿入を許容し、不正常な向きで挿入された媒体ケース1については早期の段階でその挿入を防止することができる。
【0055】
図7に示すように、正常な姿勢の媒体ケース1がシャーシ21内を奥部方向に操作されると、その途中で、媒体ケース1の先端、より詳しくは上部ケース2の挿入方向の先端部分が、シャーシ21の内側に突出している移送部材25先端の第1のテーパ部25fに当接する。そして、さらに媒体ケース1を挿入すると、媒体ケース1の先端部分が前記移送部材25の第1のテーパ部25fを図示α2方向に押し上げる。
【0056】
さらに媒体ケース1がシャーシ21の奥部方向に移動させられると、第1のテーパ部25fに続く係止凸部25aが、上部ケース2の表面に乗り上り、その後に前記係止凹部2Aに入り込み、捩じりコイルばね27の付勢力によって前記係止凹部2Aを係止する。なお、このとき上部ケース2の挿入方向の先端部分が、移送部材25の一対の押圧部25c,25cの前面(図示Y2側の面)に接する。
【0057】
そして、さらに媒体ケース1がシャーシ21の奥部方向に移動させられると、媒体ケース1により一対の押圧部25c,25cの前面が挿入方向に押圧されるため、媒体ケース1とともに移送部材25およびこれを支持するスライダ22が一緒に奥部方向に移動させられる。
【0058】
媒体ケース1がシャーシ21の内部に一定量以上挿入されたことは、駆動装置本体20内に設けられた図示しない検出センサにより検出され、図示しない制御部に伝達される。すると、制御部は、駆動モータを始動させ、前記アーム24を図5にて時計回り方向に回転させる。これにより、スライダ22が装置奥部方向に移動させられ、移送部材25の係止凸部25aにより係止された媒体ケース1が装置奥部方向にローディングさせられる。
【0059】
このとき、一対の押圧部25c,25cが、前記天面21Aに形成された前記拡張部21b,21bを出て前記天面21Aの下面に潜り込む。このため、通常は、移動中の移送部材25の前記一対の押圧部25c,25cは天面21Aの下面に接触することなく対向している。また移動中の移送部材25に何らかの力がα2方向に作用した場合には、前記一対の押圧部25c,25cが天面21Aの下面に当接し、移送部材25のα2方向の回動を制限する。よって、移送部材25側の係止凸部25aが媒体ケース1側の係止凹部2Aから外れることがなく、媒体ケース1を確実に引き込むことが可能である。
【0060】
ローディングされた媒体ケース1が装置奥部に移動させられると、前記媒体ケース1の第1のコネクタ5が駆動装置本体20側の第2のコネクタ30に連結する。
【0061】
この連結動作では、まず前記基準ガイドピン33と補助ガイドピン34とが、前記媒体ケース1の第1のコネクタ5の両側に設けられた位置決め孔6a,6bにそれぞれ挿入される。このとき、長さ寸法の長い基準ガイドピン33が先に媒体ケース1側の位置決め孔6aに挿入され、次に補助ガイドピン34が位置決め孔6bに挿入される。このため、媒体ケース1は前記基準ガイドピン33を基準に装置奥部方向(Y1方向)に案内される。
【0062】
ここで、基準ガイドピン33の表面と位置決め孔6aの内面との間の隙間は、補助ガイドピン34の表面と位置決め孔6bの内面との間の隙間より狭い関係にある。これにより、媒体ケース1が挿入と直交する方向に位置ずれした状態で挿入されたとしても、媒体ケース1の移動とともに徐々にその位置ずれ分を補正することができ、基準ガイドピン33および補助ガイドピン34が位置決め孔6aおよび位置決め孔6b内に完全に収まるときには、媒体ケース1を位置ずれのない正しい位置に戻すことができる。したがって、媒体ケース1側の第1のコネクタ5の凹状のコネクタ部5A内に、駆動装置本体20側の第2のコネクタ30側の凸状のコネクタ部31が正常な状態で連結(凹凸嵌合)する。これにより、媒体ケース1側の複数の外部端子5aと駆動装置本体20側の複数の接続ピン32とがそれぞれ接続される。
【0063】
図8に示すように、基台30Aの前面(Y2側の面)には押圧センサ40が設けられている。装置奥部方向に移動した媒体ケース1の前面パネル4が前記押圧センサ40のアクチュエータ部41を押圧すると、スイッチ状態が切り換わる。このスイッチの切り換わり情報が図示しない制御部に伝達されると、前記制御部は駆動モータを停止させる。そして、制御部が、必要に応じてコネクタ31部およびコネクタ部5Aを介して媒体ケース1内の記録媒体にアクセスすることにより、記録媒体へのデータの書き込み、または書き込まれているデータの読み出しが可能となる。
【0064】
このように、本願発明では、径寸法の太い基準ガイドピン33を基準として、媒体ケース1を駆動本体装置20の奥部方向に案内するようにしたことにより、媒体ケース1が幅方向に位置ずれした状態で挿入された場合であっても、その位置ずれを補正することができ、コネクタ端子間の良好な電気的な接続を確保することができる。
【0065】
図3に示すように、化粧パネル11の前面には、イジェクトスイッチ14が設けられている。使用者により前記イジェクトスイッチ14が押されると、制御部は駆動モータを挿入時とは逆方向に駆動させる。これにより、前記アーム24が図5にて反時計回りに回動させられ、前記スライダ22が排出方向(Y2方向)に移動させられる。すると、スライダ22とともに移動する移送部材25に形成されている一対の押圧部25c,25cの前面が、媒体ケース1の挿入方向の前面に当接してこれを排出方向に押圧する。これにより、媒体ケース1を排出方向に確実に移動させることができる。
【0066】
媒体ケース1がスライダ22とともに排出方向に移動させられると、移送部材25の一対の押圧部25c,25cが、天面21Aの下面に対向する位置から拡張部21b,21b内に入り込む。これにより、移送部材25のα2方向への回動が可能となる(図7参照)。また媒体ケース1が排出方向に移動させられると、媒体ケース1の後端部(Y1側の端部)が出入口12を通じて化粧パネル11の外部に突出させられる。
【0067】
使用者が、媒体ケース1を把持して引き出すと、移送部材25の係止凸部25aを形成するY1側の第2のテーパ部25gが、媒体ケース1側の係止凹部2Aの上縁部を摺動する。このとき、第2のテーパ部25gには図示Z1方向の持ち上げ力が作用し、結果として移送部材25が捩じりコイルばね27の付勢力に抗しながら図示α2に回動させられる。よって、移送部材25の係止凸部25aが係止凹部2Aから外れ、係止凹部2Aによる係止状態が解除される。よって、媒体ケース1を記録媒体駆動装置10の外部に取り出すことができる。
【0068】
このように、本願発明では、挿入時には移送部材25に形成された掛止凸部25aが媒体ケース1の掛止凹部2Aを係止するため、媒体ケース1を装置奥部方向に確実に引込むことができる。また排出時には、移送部材25に形成された一対の押圧部25c,25cが媒体ケース1を排出方向に押し出す構成としたことにより、媒体ケース1を確実に排出させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】記録媒体を備えた媒体ケースを示す外観斜視図、
【図2】図1に示す媒体ケースの正面図、
【図3】本発明の記録媒体駆動装置の外観を示す斜視図、
【図4】記録媒体駆動装置の内側に設けられた駆動装置本体の分解斜視図、
【図5】駆動装置本体の平面図、
【図6】スライダと移送部材を示す斜視図、
【図7】スライダと移送部材の詳細を示す断面図、
【図8】駆動装置本体を異なる方向から見た場合を示す斜視図、
【図9】媒体ケースの前後方向を正しい向きで挿入した場合(実線)および逆向きの状態で挿入した場合(点線)とを示す駆動装置本体の正面図、
【図10】媒体ケースの上下方向を違えて逆さまの状態で挿入した場合を示す駆動装置本体の正面図、
【符号の説明】
【0070】
1 媒体ケース
2 上部ケース
2a,2b,2c,2d 凹部
3 下部ケース
3a,3b,3c,3d 凸部
4 前面パネル
5 第1のコネクタ
5a 外部端子
6a,6b 位置決め孔
7 ライトプロテクト部
10 記録媒体駆動装置
11 化粧パネル
12 出入口
13 シャッタ
14 イジェクトスイッチ
20 駆動装置本体
21 シャーシ
21A 天面
21B,21C 側面
21D,21E 底面
21a 開口部
21b,21b 拡張部
22 スライダ22
22b 折曲片
24 アーム
25 移送部材
25a 係止凸部
25c,25c 押圧部
22A 開口部
27 捩じりコイルばね(付勢部材)
30 第2のコネクタ
31 コネクタ部(接続部)
32 接続ピン
33 基準ガイドピン(第1のガイドピン)
34 補助ガイドピン(第2のガイドピン)
40 押圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも記録媒体を有する媒体ケースの出し入れが行われる出入口と、前記媒体媒体と電気的に接続される接続部を有するとともに前記出入口に挿入されたケースを支持するシャーシと、前記出入口と装置奥部との間で前記媒体ケースを移動方向に移送する移送部材と、を備えた記録媒体駆動装置において、
前記移送部材は、前記媒体ケースに形成された係止凹部を係止する係止凸部と、前記係止凸部が前記係止凹部を係止する付勢力を与える付勢部材と、排出時に前記媒体ケースの前端に当接して前記排出方向に押し出す押圧部とを有することを特徴とする記録媒体駆動装置。
【請求項2】
前記媒体ケースには移動方向に移動するとともに前記移送部材を回動自在に支持するスライダが設けられ、
前記シャーシには、前記移送部材の係止凸部が出入りする開口部と前記移送部材の回動を可能とする拡張部が設けられており、
前記スライダが出入口側に位置するときには、前記押圧部が前記拡張部に位置して前記移送部材の回動が許容され、前記スライダが装置奥部方向に位置するときには前記押圧部を規制して前記移送部材の回動が制限される請求項1記載の記録媒体駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−87481(P2009−87481A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257335(P2007−257335)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【出願人】(596099398)イメイション・コーポレイション (37)
【氏名又は名称原語表記】Imation Corp.
【Fターム(参考)】