記録方法、記録装置、および記録物
【課題】感圧接着層の充分な接着力を確保しつつ、インクオフセットを防止することができる記録方法、記録装置、および記録物を提供すること。
【解決手段】感圧接着シート100の感圧接着層104に付与したインク303が硬化したときに、その硬化したインクから感圧接着層104の凸部101が露出する程度に、インク303を付与して画像を記録する。
【解決手段】感圧接着シート100の感圧接着層104に付与したインク303が硬化したときに、その硬化したインクから感圧接着層104の凸部101が露出する程度に、インク303を付与して画像を記録する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像を記録する記録方法、記録装置、および記録結果物としての記録物に関するものである。
【0002】
さらに詳しくは、重ね合わせた面を情報担持面とする情報担持用シートの記録に用いて好適な記録方法、記録装置、および記録結果物としての記録物に関するものである。その情報担持用シートとしては、例えば、折り重ねや切り重ねにより重ね合わせた面を情報担持面とする折り畳みシート、重ね合わせシートのような親展性を有する情報伝達用シート、または寸法拡大可能な整理シートなどの情報伝達用シートなどがある。
【背景技術】
【0003】
通常、互いに重ね合わせられる基体シートの重ね合わせ面に、情報を担持する情報担持用シートにおいては、その重ね合わせ面同士を剥離可能に接着させるために、それらの面に感圧性接着剤による感圧接着層が形成されている。感圧接着層は、重ね合わせ面同士を重ね合わせたときに互いに対接するように、それらの全面や特定部分に所定のパターンまたは線状に形成される。この感圧性接着剤は自接着性感圧性接着剤とも称されており、それにより形成された感圧接着層同士を対接させて強く加圧することにより、それらの感圧接着層における高分子が自己拡散により密着する。感圧性接着剤の組成物の種類や加圧の程度により、永久的な接着性や剥離可能な接着性が具現される。重ね合わせ面が剥離可能な情報担持用シートは、以下、「感圧接着シート」ともいう。
【0004】
最近では、このような感圧接着シートの重ね合わせ面に、住所、氏名、および個別情報などを記録するための方法として、インクジェット記録方式が急速に普及してきている。特に、カラーインクの普及により、従来の製版技術に匹敵するようなカラー印刷(プロセス印刷)も可能になってきている。
【0005】
このような感圧接着シートにおいては、情報が記録されてから感圧接着層によって接着された重ね合わせ面を剥離した際に、一方の重ね合わせ面に記録されている情報が他方の重ね合わせ面に移転(以下、「インクオフセット」という)することがあった。このようなインクオフセットは、インクジェット記録方式を用いた場合にも生じることがある。また、インクジェット記録方式に用いられるインクが水溶性染料インクの場合には、記録画像の耐水性が不足するおそれがある。
【0006】
これらの対応策として、インクジェット記録方式に用いられる感圧接着シートの感圧接着層中にカチオン性化合物を添加し、また、耐水性に優れた顔料を主成分とするインクを用いる方法が提案されている(特許文献1,特許文献2,特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】特開平11−48651号公報
【特許文献2】特開平11−334201号公報
【特許文献3】特開平09−058118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような方法によってもインクオフセットを防止することは難しく、耐水性に優れた顔料を主成分とするインクを用いた場合には強く現れてしまう。しかも、カチオン性化合物の添加により感圧接着層の塗工液がゲル化して、その塗工が不可能となることがあった。また、ウエットオフセット印刷時に、カチオン樹脂が溶出して印刷版汚れを起こすおそれもある。
【0009】
本発明の目的は、感圧接着層の充分な接着力を確保しつつ、インクオフセットを防止することができる記録方法、記録装置、および記録物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の記録方法は、微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像を記録する記録方法において、前記感圧接着層に付与した前記液状のインクが硬化したときに、当該硬化したインクから前記感圧接着層の凸部が露出する程度に、前記液状のインクを付与して画像を記録することを特徴とする。
【0011】
本発明の記録装置は、微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像を記録する記録装置において、前記感圧接着層に付与した前記液状のインクが硬化したときに、当該硬化したインクから前記感圧接着層の凸部が露出する程度に、前記液状のインクを付与するインク付与手段を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の記録物は、微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像が記録された記録物であって、液状のインクが硬化した状態において、当該硬化したインクから前記感圧接着層の凸部が露出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、感圧接着シートの感圧接着層に付与したインクが硬化したときに、その硬化したインクから感圧接着層の凸部が露出する程度に、インクを付与して画像を記録する。これにより、感圧接着層の充分な接着力を確保しつつ、インクオフセットを防止することができる。また、感圧接着層の凹部内にインクが硬化させることにより、感圧接着層の接着性を維持しつつ、記録濃度の反射濃度の低下を抑えることができ、しかも高温多湿等においてもインクの滲み出しが少なく、保存性の良い記録物を作製することもできる。
【0014】
また、インクジェット記録ヘッドを用いることにより、比較的少ない熱エネルギーによって非接触でインクを吐出して付与することができて、感圧接着層の接着性の低下を招くおそれがない。また、その場合に、紫外線硬化型などの活性エネルギー線硬化型の水系インクなどを用いることにより、メンテナンス性の良いインクジェット方式の記録方法および記録装置を提供することができる。また、活性エネルギー線硬化型の水系インクを使用することにより、感圧接着層が存在しない感圧接着シートの部分にも、インクジェット記録方式により画像を記録することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(感圧接着シート)
図1は、本発明の感圧接着シート100の構成例を説明するための模式図であり、図1(a)および(b)は、感圧接着シート100の断面図および平面図であり、図1(a)は、図1(b)のI−I線に沿う断面図である。
【0017】
本例の感圧接着シート100は、基材103上に感圧性接着剤の層(感圧接着層)104が形成されており、その感圧接着層104には凸部101と凹部102が形成されている。感圧接着層104は、基材103上に塗布等の方法によって感圧性接着剤を付与することにより形成される。凸部101は、基材103に密着するように形成されており、独立して点在する形態、または一部が互いにつながった形態となっており、基材103上において互いにつながっている部分がある。凹部102は、凸部101の相互間において溝状に連続する形態、または個々に分断された形態となっている。
【0018】
感圧接着層104は通常状態では接着せず、感圧接着層104同士を対接させて所定の圧力を付与することにより、その感圧接着層104同士が剥離可能に接着する。感圧接着層104は、このような機能を発揮することができればよく、その種類は特に限定されない。
【0019】
本発明の感圧接着シートは、基材103の一方の面に感圧接着層104が形成されたものである。感圧接着層104の表面に凸部101を形成するための型付け方法は、特に限定されない。例えば、基材103上に感圧接着層104を形成した後に、エンボスロール等を用いて型付け処理を行う方法を用いることができる。また、エンボスロールの形状の選定により、感圧接着層104の凹部102の側面が傾斜面を成すように型付けすることも可能である。型付け処理を施した感圧接着層104の面は、JIS−B−0651に規定される触針式表面粗さ測定器を用いて計測したときに、JIS−B−0601で規定されるカットオフ値0.8mmにおける十点平均粗さ(Rz)が30μm〜100μmであることが好ましい。Rzが30μm未満の場合には、記録した画像が感圧接着層104の表面に定着するおそれがあり、それがインクオフセットの原因となりやすくなる。Rzが100μmを超えた値の場合には、複数の凸部101間に形成される凹部102内にインクが沈み込むために、記録画像の濃度ムラまたは白抜けが生じやすくなる。
【0020】
したがって、感圧接着層104の表面のカットオフ値0.8mmにおける十点平均粗さは、画像記録前の十点平均粗さ(Rz)が30μm〜100μmの範囲にあることが好ましい。さらに、そのRzと画像記録後の十点平均粗さ(Rz′)の比率Rz′/Rzは、0.3〜0.9の範囲にあることが好ましい。
【0021】
感圧接着層104の全面積に対する凸部101の面積は、感圧接着層104の全面積に対して、30%〜80%あることが好ましい。それが30%未満の場合には、接着力が低下して、接着した感圧接着層同士が剥がれやすくなるおそれがあり、それが80%を超える場合には、接着力が強くなり過ぎて、接着した感圧接着層同士を剥離するときに基材が破れて、記録された情報が破損するおそれがある。ここで、凸部101の面積とは、感圧接着層104の表面を垂直方向上部から見たときの凸部101の最上面の面積である。
【0022】
このような感圧接着シートに対して、インクジェット記録方式により水性インクを用いて情報を記録する場合、感圧接着シートの感圧接着層は、水に対する接触角を90°以下(または以上)の範囲とすることが好ましい。これにより、インクオフセットを有効に防止することができる。その接触角が90°以上(または以下)の場合には、凹部へのインクの沈降量が不充分となり、感圧接着層同士を圧着および剥離した際にインクオフセットが生じやすくなる。ここで接触角とは、感圧接着層上に置かれた水滴の表面と感圧接着層との交点において、水滴に対する接線と感圧接着層とが成す角度であり、この角度が小さい程、水性インクに対する濡れ性が高いことを意味する。本発明における接触角の値は、次のような測定方法により得られる。すなわち、感圧接着層を設けた感圧接着紙を23℃、50%RHで12時間放置した後、感圧接着層上に純水2μlを滴下した。そして、その液量が変化しない範囲(液滴が感圧接着層に吸収されず、かつ蒸発しない範囲)において、液滴の広がりが最大となる時点(滴下後0.1〜60秒後)の角度を、接触角計を用いて測定した。その測定には、自動接触角計CA−VP(協和界面科学(株)社製)を使用した。
【0023】
感圧接着シート100に用いる基材103は、特に制限されない。例えば、非塗被紙である上質紙、中質紙、ザラ紙、コットン紙;塗被紙であるアート紙、コート紙、軽量コート紙、樹脂被覆紙、布、プラスチックラミネート布、プラスチックフィルム、金属箔などを挙げることができる。基材の坪量は、通常50〜160g/m2程度である。基材として、樹脂被覆紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成プラスチックフィルムを用いる場合には、これらの基材の表面をコロナ放電などによって易接着処理をすることが好ましい。また、基体の表面上における感圧接着層の乾燥後の塗布厚は、特に限定されない。例えば、感圧接着層の接着性、剥離性、透明性などを維持するためには、1μm〜20μmが好ましい。
【0024】
感圧接着層104の組成に主として含まれる接着剤は、通常の状態で接着することなく、加圧により接着する性質を有するものであれば特に制限はない。例えば、天然ゴム、合成ゴム等の一般的な感圧接着層の組成に慣用されているものの中から任意に選択して用いることができる。特に、天然ゴムにスチレンとメタクリル酸メチルとをグラフト共重合させて得られた天然ゴムラテックスは、耐ブロッキング性、耐熱性、耐摩耗性等の点で好適である。このような組成を含め、適宜選択して使用することができる。
【0025】
また感圧接着層104には、その他の添加剤として、分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、帯電防止剤、老化防止剤、などを適宜配合することもできる。
【0026】
基材103に対する感圧接着層104の組成(感圧性接着剤)の塗工は、従来の感圧接着シートにおける感圧性接着剤の塗工方法と同様の方法を用いることが可能である。また、感圧接着層の乾燥塗工量は、一般的に3〜30g/m2、好ましくは3〜20g/m2、さらに好ましくは3〜15g/m2である。それが3g/m2未満では接着力が不充分となりやすく、また、それが30g/m2を超えると接着力が強過ぎて、剥離時に基材が破れて記録情報を破損してしまうおそれがある。
【0027】
図2は、感圧接着シート100に活性エネルギー線硬化型の水性インクを付与して、それを硬化させた場合の感圧接着シート100の断面図および平面図であり、図2(a)は、図2(b)のII−II線に沿う断面図である。
【0028】
本例の場合、活性エネルギー線硬化型の水性インクは、後述するように、インクジェット記録ヘッドによって感圧接着層104の上に吐出され、その後、複数の凸部101間の凹部102内に浸透する。これにより凸部101は、水性インクの色材303Aに覆われず露出した状態となる。
【0029】
(活性エネルギー線硬化型の水性インク)
本例において用いられるインク(記録液)は、色材、光重合開始剤、活性エネルギー線硬化型モノマー、オリゴマー、ポリマー、および、それらの混合物によって構成される。また、インクジェット適性を得るために、イオン交換水、有機溶剤、界面活性剤等を添加してもよい。特に、プラスチック、金属などのインクを吸収しない非吸収性記録媒体に記録する場合には、紫外線硬化型モノマーやオリゴマーを溶剤として使用することにより、環境に負荷のない密着性の良い記録物を提供することが可能である。活性エネルギー線硬化型モノマー、オリゴマー、ポリマーは、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を1つ以上含有する化合物であればどのようなものでもよい。しかし、顔料分散剤や溶剤との相溶性を考慮して選択する必要がある。また、インクジェット適性と記録物の堅牢性を得るために、それらを2種以上を所定の比率で併用することも可能である。
【0030】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、単官能のアクリレートとしてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、グリシジルエチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0031】
また、2つ以上の官能基を有するものとして、1,4ブチレングリコールジアクリレート、1,3ブチレンクリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等が挙げられる。その他、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等が挙げられる。これらの物質は、記録液中に5重量%から90重量%含有される。
【0032】
光重合開始剤には、用いられる紫外線硬化型モノマー、オリゴマー、ポリマーを硬化可能な公知慣用のものをいずれも使用することができる。光重合開始剤としては、分子開裂型または水素引き抜き型のものが好適である。具体的には、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド、さらに、これらの物質に、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖を導入して水溶性を向上させた光開始剤を使用することも可能である。
【0033】
インク(記録液)に使用される色材としては、染料と顔料のいずれも使用可能である。活性エネルギー線照射に対する安定性、記録物信頼性の観点からは、顔料を用いることが好ましい。染料を使用する場合には、耐光性の強い含金染料を用いることが好ましい。本発明において使用するインク(記録液)に含有される色材の量は、重量比で1〜20%、好ましくは、2〜12%の範囲とすることが好ましい。
【0034】
黒インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法、或は、石油コークスを多量のアルカリを用いて賦活化して製造される高比表面積カーボン、そして、以上のようなカーボンブラック素材に対して、気相からの弗素処理、親水性を有する重合性モノマーのプラズマ処理、親水性を有するモノマーの液相からのグラフト重合等の処理が施されたカーボンブラックであってもよい。以上のようなカーボンブラックは、一次粒径が15から40mμ、BET法による比表面積が50から3000平方m/g、DBP吸油量が40から150ml/100g、揮発分が0.5から10%、pH値が2から9を有する。
【0035】
イエロー顔料としては、ピグメントイエロー1,2,3,12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー16、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー55、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー75、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロ−95、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー98、ピグメントイエロー109、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー180などである。
【0036】
マゼンタ顔料としては、ピグメントレッド5、ピグメントレッド7、ピグメント12、ピグメント48(Ca)、ピグメントレッド48(Mn)、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド57(Sr),ピグメントレンド57:2、ピグメントレッド122、ピグメントレッド123、ピグメントレッド168、ピグメント184、ピグメントレッド202、ピグメントレッド238などが適用される。
【0037】
シアン顔料としては、ピグメントブルー1、ピグメントブルー2、ピグメントブルー3、ピグメントブルー16、ピグメントブルー22、ピグメントブルー60、ピグメントブルー15:2、ピグメント15:3、バットブルー1、バットブルー60、などが適用される。こうした顔料は、高分子樹脂を用いて分散して記録液に使用される。高分子樹脂は、使用される溶剤、モノマー、オリゴマー、ポリマーとの相溶性のよいものを選択する。
【0038】
インクジェット適性、記録液の保存安定性、インクジェット記録ヘッドのノズル先端部での保湿性を向上させるために、記録液の成分として、イオン交換水、グリコール系溶剤、ピロリドン系溶剤、低級アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、グリセリン、グリセリン誘導体、尿素、エチレン尿素、尿素誘導体等が使用できる。
【0039】
インク(記録液)が非水系の場合は、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール、エステル系、ケトン系、シリコーンオイル、鉱物油、ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール等を単独あるいは併用して用いる。顔料分散用樹脂としては、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ケトン樹脂、アルキド樹脂、ロジン系樹脂、石油樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合樹脂、エチレンー塩化ビニルー酢酸ビニル共重合樹脂、エチルイミン−ヒドロキシステアリン酸共重合体等が使用できる。
【0040】
本発明において用いるインク(記録液)には、前述した各材料に加えて、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、その他、物性調節のための補助材料を添加することができる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤などが使用できる。これらの界面活性剤は、紙などの記録媒体に対する記録液の浸透性、インクジェット記録ヘッドの構成部材に対するぬれ性、流動特性、分散安定性に対する補助剤などを目的として添加される。
【0041】
また、本発明において使用されるインク(記録液)は、不純物を除去するために色材を洗浄、精製を行ってから使用した方が好ましい。例えば、使用するインクジェット方式に適合した構成成分を記録液に混合した後、それを濾過および遠心分離などを行って不純物を除去して、本発明において使用する記録液とする。
【0042】
また、水性インク中の水の添加量は、インクに対して50重量%〜80重量%の範囲が好ましく、さらには60重量%〜70重量%がより好ましい。それが50重量%未満の場合には、粘度が高くなってインク吐出性が低下するだけでなく、インクの表面張力が高くなって、定着不良やインクオフセットの原因となりやすい。それが80重量%を超えた場合には、硬化速度が遅くなるなどの問題を生じるおそれがある。
【0043】
(インクの粘度)
オンデマンド型のインクジェット装置を用いる場合、インクの粘度は、広い範囲で非線形性がなく、15mPa・sより低い範囲であることが好ましい。より好ましくは、5〜10mPa・s未満である。粘度が15mPa・sを超える場合には、ノズルにインクが付着しやすくなり、ノズル詰まりの原因となりやすい。インクの粘度は、BL形粘度計(東機産業(株)社製)を用いて、標準コーン(外径R=24mm)を、回転速度60rpmの範囲内で適宜調整して回転させて、25℃で測定した。
【0044】
(インクの表面張力)
インクの表面張力は、20mN/m〜50mN/mであることが好ましい。表面張力が20mN/m以下になると、インクが感圧接着層の内部に浸透し、反射画像濃度が低下して、バーコード記録に必要な高精細な画像形成ができなくなるおそれがある。また、表面張力が50mN/m以上になると、記録媒体の表層においてインク滴が効果的に硬化され、ブリードを充分に抑制することができると同時に、高い画像濃度を得ることができる。一方、この画像濃度の確保するたには、後述する活性エネルギー照射時に、ある程度インク滴が被記録媒体に対して濡れている必要もある。そのため、表面張力の上限としては、50mN/m程度であることがより好ましい。ここで表面張力は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学(株)社製)を用い、白金プレートを使用して25℃で測定した静的表面張力である。
【0045】
(感圧接着シートの浸透性)
本発明の感圧接着シートに水を吸収させ、超音波により液吸収を測定する動的浸透性テスターを用いて、超音波最大透過時間を測定した。その超音波最大透過時間は、1秒以上80%以上が好ましいことが分かった。
【0046】
紙媒体に水を吸収させて、その吸収を超音波式の動的浸透性テスターにより測定した場合、超音波最大透過時間が1秒以上で超音波最大透過率が80%以下になると、後述するインクジェット記録方式により形成したインクのドットの広がりが大きくなってしまう。このような場合には、記録画像の反射濃度が低くなり、記録した小文字の精細性やバーコードの読み取り精度を低下させるおそれがある。本例においては、後述するように、感圧接着シートに対して活性エネルギー線硬化型の水性インクを吐出する。
【0047】
(記録方法)
図3および図4は、インクジェット記録ヘッドを用いて、活性エネルギー線硬化型の水性インクとしての紫外線硬化型の水性インク(以下、「UVインク」ともいう)303を感圧接着シート100に吐出して、定着させる工程の説明図である。図3(a)から(d)のそれぞれは、図4(a)から(d)のそれぞれのIII−III線に沿う断面図である。
【0048】
感圧接着シート100は、インクジェット記録装置において矢印X方向に搬送されて、その感圧接着シート100上の記録領域がインクジェット記録ヘッド302と対向したときに、その記録ヘッド302からインクが吐出される。記録ヘッド302は、複数のノズルからUVインク303を吐出して、感圧接着シート100に付与する。
【0049】
感圧接着シート100上に付与されたインク303は、図3(a)および図4(a)のように、感圧接着層104における島状の凸部101上および溝状の凹部102内に着弾する。しかし、凸部101上に着弾したインク303は、図3(b)および図4(b)のように、毛細管現象によって次第に凹部102内に浸透し、その一部または全部が凹部102内に収容される。これに伴い、凸部101の頂部は徐々に露出する。図3(b)および図4(b)は、このようなインク303の浸透現象が完了、もしくは浸透途中の状態を示し、凸部101の頂部はほぼ露出した状態にある。
【0050】
その後、感圧接着シート100が矢印X方向に搬送されて、インク303が付与された記録領域が紫外線照射ランプ306と対向することにより、その記録領域に対してランプ306から紫外線が照射される。その紫外線により、インク303に内包されている紫外線硬化剤(UV硬化剤)が硬化反応を開始する。すなわち、凹部102内に収容されているインク303は、その内部の水分を押し出しながら硬化を始め、図3(c)および図4(c)のように、内部の水分を押し出しながら硬化を開始する。さらに、紫外線または不図示の熱源によって水分が蒸発して、色材303Aが凹部102内に定着する。本例においては、インク303として紫外線硬化型の水性インクを用いることにより、それが凹部102内に浸透して凸部101が露出した状態において、インクが紫外線を受光することになる。また、感圧接着層104が紫外線硬化剤(UV硬化剤)を含む場合には、紫外線の照射により凸部101が硬化反応を開始して、後述する圧接工程を待機するような状態に遷移する。
【0051】
感圧接着シート100に対するインク303の付与量は特に限定されず、それが凹部102内に収容されればよく、使用する感圧接着シート100に応じて適宜、調整することができる。また、インクの付与量が多すぎた場合には、後述するように、インクが感圧接着層の凸部を覆って、所定の接着力が得られなくなるおそれがある。
【0052】
(紫外線照射ランプ)
紫外線照射ランプ306としては、点灯中における水銀の蒸気圧が1〜10Paの所謂低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、蛍光体が塗布された水銀灯等が好ましい。これらの水銀ランプの紫外線領域の発光スペクトルは、450nm以下、特に、黒色或いは着色されたインク中の重合性の物質を効率的に反応させるためには、184nm〜450nmの範囲が適している。このようなランプ306は、小型の電源が使用できるため、その電源を記録装置に搭載する上においても適している。水銀ランプとしては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンフラッシュランプ、デイープUVランプ、マイクロ波を用いて外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、UVレーザー等が実用されている。これらの発光波長領域は上記の範囲を含むため、電源サイズ、入力強度、ランプ形状等が許されれば、このような種々のランプが基本的に適用可能である。光源は、用いる触媒の感度にも合わせて選択する。
【0053】
必要な紫外線強度は、インクの重合速度との関係から、1mW/cm2〜5,000mW/cm2の程度が好ましい。照射強度が不足するとインクの硬化が充分に得られず、インクオフセット現象が発生するおそれがある。また、照射強度が強過ぎた場合には、感圧接着シートの基材がダメージを受けたり、インクの色材の退色を生じたり、感圧接着層の接着力の低下を招くおそれがある。また、感圧接着層を形成する接着剤とインクのそれぞれに適したUV波長をもつ紫外線ランプを複数備えてもよい。
【0054】
(プレヒート)
インク(記録液)が水溶性有機溶媒を含有している場合には、紫外線を照射する前に、ドライヤー、マイクロ波発振装置、遠赤外線ランプ等を用いてインクを加熱することにより、インクに残存している溶剤を除去してもよい。これにより、インクオフセット現象を低減することができる。インクを加熱する時期は、紫外線を照射する前であれば特に限定されものではなく、また、インクジェット記録前に感圧接着シートを加熱してもよい。
【0055】
(感圧接着シート上におけるインクの高さ)
本例の水性インクは、水分を少なくとも50%以上含む。そのため、図3(c)のように、感圧接着シート上に定着したときの厚さHは、それが感圧接着シート上に付与されたときの厚さH0の50%以下となる。HがH0の50%以上の場合には、インクが凸部101を部分的に覆って、感圧接着層の接着力の低下を招いたり、インクオフセットの要因となるおそれがある。感圧接着層に付与されたインクは、硬化することにより厚さが10%〜70%減少することが好ましい。
【0056】
(感圧接着シートの接着および剥離)
前述したように、感圧接着シート100上にインク303を付与してから、紫外線を照射することにより記録物が作成される。次に、このような記録物としての感圧接着シート100同士の接着および剥離について説明する。
【0057】
図5(a)および(b)のように、記録物としての感圧接着シート100を2枚対向させ、あるいは1枚の感圧接着シート100を折り曲げることにより、感圧接着層104同士を対接させる。感圧接着層104同士を対接させる方法は特に限定されるものではなく、例えば、感圧接着シート100を2つ折りまたは3つ折りしてもよい。そして、図5(b)のように、感圧接着層104同士を接触させてから、図5(c)のように所定の圧力を加えることにより、感圧接着層104同士を接着させる。本例においては、感圧接着シート100を図5中の矢印Y方向に搬送しつつ、加圧ローラ401によって圧力を加える。加圧ローラ401による加圧力は、約1kg/cm2〜10kg/cm2圧が好ましく適用できる。
【0058】
感圧接着層104においては、インクの色材303Aが凹部102内に定着し、凸部101は色材303Aに覆われずに露出している。したがって、感圧接着層104同士は、それぞれの凸部101同士が接触して接着されることになる。色材303Aは、凹部102内に定着しているため感圧接着層104同士の接着面上には位置しない。つまり、一方の感圧接着層104において、凹部102内の色材303Aは凸部101により囲まれて、他方の感圧接着層104との接触が防止される。この結果、後述するようにインクオフセットの発生を抑えることができる。
【0059】
また、感圧接着層104が紫外線硬化剤(UV硬化剤)を含む場合には、紫外線を照射することにより、互いに接着する凸部101の接着力を増したり、または部分的に相溶させてより強固に接着することもできる。
【0060】
このように、感圧接着シート同士を張り合わせることにより、いわゆる情報担持シートが形成される。図5(d)は、このような情報担持シートの界面を剥がした場合の模式断面である。上述したように、インク303の色材303Aが凹部102内に収容されて硬化されているため、一方の感圧接着層側の色材303Aが他方の感圧接着層側の凸部101に転写される現象、つまりインクオフセット現象の発生を抑えることができる。また、それぞれの感圧接着層の凸部101同士が色材303に覆われることなく接着されるため、接着力を低下させることなくインクオフセット現象の発生を抑制することができる。
【0061】
(記録物の他の例)
次に、感圧接着シート100上にインク303を付与してから紫外線を照射することにより得られる記録物の他の例について説明する。
【0062】
図6に示す記録物は、感圧接着シート100の感圧接着層104以外の部分に、前述したインク303と同様または異なるインク501を用いて、種々の情報や画像が記録されている。本例の記録物は葉書などに用いることができ、前述したように、その感圧接着層104に他の感圧接着層を対接させることにより個人情報などを担持すると共に、インク304によって宛名などの情報を記録することができる。インク501として、前述したインク303を用いることにより、高精細かつ高堅牢性の画像を記録することができる。また、感圧接着シート100の一方の面に感圧接着層104が形成される領域と、それが形成されない領域と、が存在する場合には、後者の領域にインク501によって記録を行うことも可能である。
【0063】
図7に示す記録物は、感圧接着層104が形成される前の基材103に、インク502によって種々の情報や画像が印刷(プレ印刷)されている。そのプレ印刷には、オフセット印刷やグラビア印刷等の方式を用いることが可能であり、またインクジェット記録方式を用いることもでき、その場合にはインク502として前述したインク303を好適に用いることができる。インク502の記録内容は、透明または半透明の感圧接着層104を通して視認することができる。また、インク502によって記録された情報や画像と、インク303によって記録された情報や画像と、は、部分的に重ねたりずらしたりすることができる。
【0064】
図8に示す記録物は、感圧接着層104が形成される前の基材103に、インク503によって隠蔽層が形成されている。この隠蔽層は、オフセット印刷やグラビア印刷等によって形成することが可能であり、またインクジェット記録方式を用いることもでき、その場合にはインク503として前述したインク303を好適に用いることができる。この隠蔽層を形成するインク503は、透明または半透明の感圧接着層104を通して視認することができる。また、インク503によって記録された情報や画像と、インク303によって記録された情報や画像と、は、部分的に重ねたりずらしたりすることができる。
【0065】
図9に示す記録物は、その感圧接着層104上に、インク303が部分的に多量に付与されている。インク303が多量に付与された領域Pにおいては、インク303が感圧接着層104の凸部101を覆ったまま硬化することにより、接着力が弱められることなる。インク303が適量に付与された領域Nにおいては、前述したように、インク303が感圧接着層104の凸部101を覆わずに露出させた状態で硬化することにより、充分な接着力を確保することができる。このように、インク303の付与量に応じて接着力を部分的に異ならせることができる。例えば、感圧接着層104同士が剥離可能に接着された情報担持用シートにおいて、それらは剥離し始める部分の接着力を弱めることにより、それらの剥離がしやすくなる。また、感圧接着層104の接着力の低下を目的とする場合には、色材成分を含まないインク(クリアインク)を用いることができる。
【0066】
図10および図11は、図9に示す記録物の製作工程の説明図であり、図10(a),(b)のそれぞれは、図11(a),(b)のそれぞれのX−X線に沿う断面図である。
【0067】
図10(a)および図11(a)のように、感圧接着層104上の領域Nに対しては、前述した図3(a)と同様に充分な接着力が確保できる程度の適量のインク303を付与し、領域にPに対しては多量のインク303を付与する。領域Aは、インク303が付与されない領域である。その後、前述した場合と同様に、紫外線を照射してインク303を硬化させる。これにより、図10(b)および図11(b)のように、領域Nにおける凸部101はインク303の色材303Aに覆われずに露出し、領域Pにおける凸部101は色材303Aにより覆われて露出しない。この結果、感圧接着層104上の領域Nに関しては領域Aと同様に充分な接着力が確保され、領域Pに関しては接着力が弱められることになる。
【0068】
(記録装置の構成例)
図12は、本発明を適用可能な記録装置の構成例を説明するための概略側面図である。本例の記録装置は、後述するプリントモジュール(プリントユニット)が組み込まれたラインプリンタ10を構成している。
【0069】
ラインプリンタ10は、記録ヘッドユニット20と搬送ユニット40が備えられている。記録ヘッドユニット20には、感圧接着シート100にインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録ヘッドK1,K2,K3,K4,K5,K6が搭載されている。搬送ユニット40は、感圧接着シート100を矢印X方向に搬送する。記録ヘッドK1,K2,K3,K4,K5,K6の全てからは黒色のインクが吐出される。記録ヘッドユニット20には、各記録ヘッドK1〜K6を後述するキャッピング位置、記録位置、ワイピング位置に移動させるためのヘッドアップダウンモータ118(図16参照)等が備えられている。記録ヘッドユニット20は板状のエンジンベース30に固定されており、後述するように、エンジンベース30と共に上下動(昇降)する。
【0070】
記録ヘッドユニット20が固定されているエンジンベース30は平面形状が長方形であり、その四隅の位置にはナット32が固定されている。これらナット32は、それぞれに対応するねじ軸34にねじ合わされている。これら4本のねじ軸34の下部にはスプロケット36が固定されており、これら4つのスプロケット36にはチェーン38が掛け渡されている。このチェーン38を駆動モータ41によって回転させることにより、4本のねじ軸34が同期して回転し、ナット32およびエンジンベース30と共に記録ヘッドユニット20が上下動する。
【0071】
搬送ユニット40は、感圧接着シート100を記録ヘッドユニット20の下方位置に通して搬送するための4本の搬送ベルト42を備えている。搬送ベルト42は、従動ローラ44,45,46、エンコーダローラ47、および駆動ローラ48との間に掛け渡されており、テンショナ49によって張力が与えられている。タイミングベルト43を介して、駆動モータ41によって駆動ローラ48が回転されることにより、搬送ベルト42が矢印Xの搬送方向に周回運動する。
【0072】
ラインプリンタ10には、記録ヘッドユニット20にインクを供給するためのインク供給ユニット50が備えられている。インク供給ユニット50の内部には、各記録ヘッドK1〜K6に供給するためのインクを貯留するサブタンク52a〜52fが備えられている。さらに、インク供給ユニット50の内部には、各サブタンク52a〜52fに補給するためのインクを貯留するインクタンク53a〜53f(図15においては、インクタンク53aのみを示す)等が配置されている。サブタンク52aに貯められたインクは記録ヘッドK1に供給され、サブタンク52bに貯められたインクは記録ヘッドK2に供給される。同様に、サブタンク52c〜52fから記録ヘッドK3〜K6のそれぞれにインクが供給される。チューブ56(図15参照)を通して、インクタンク53aからサブタンク52aにインクが供給される。同様に、インクタンク53b〜53eからサブタンク52b〜52eのそれぞれに対してもチューブを通してインクが供給される。
【0073】
インク供給ユニット50と記録ヘッドユニット20との間には、束ねられたインク供給チューブ60a〜60fとインク回帰チューブ62a〜62fが着脱自在に接続されている。インク供給チューブ60a〜60fは、各サブタンク52a〜52fから各記録ヘッドK1〜K6に供給されるインクの供給路を形成する。インク回帰チューブ62a〜62fは、各記録ヘッドK1〜K6から各サブタンク52a〜52fに回帰されるインクの戻し流路を形成する。また、記録ヘッドユニット20には、各記録ヘッドK1〜K6からのインク吐出状態を良好な状態に維持するための回復ユニット22(図15参照)が組み込まれている。
【0074】
306は、前述した紫外線照射ランプ(UVランプ)であり、インクが付与された感圧接着シート100に対して紫外線を照射可能な位置に備えられている。
【0075】
図13は、記録ヘッドユニット20、搬送ユニット40、およびインク供給ユニット50の要部の斜視図である。
【0076】
記録ヘッドユニット20とインク供給ユニット50は、インク供給チューブ60a〜60fとインク回帰チューブ62a〜62fとにより接続されて一体化されており、以下、このように一体化されたものを「プリントモジュール」ともいう。このプリントモジュールには、図16の制御系が組み込まれている。記録ヘッドユニット20に搭載される記録ヘッド記録ヘッドK1〜K6のそれぞれには、インクを吐出可能な複数の吐出口が矢印Xの搬送方向と交差(本例においては直交)する方向に列状に形成されている。それぞれの吐出口列は、記録画像の幅に相当する長さを有し、矢印Xの搬送方向に沿って並ぶように位置する。
【0077】
画像を記録する際には、感圧接着シート100の搬送に伴って、各記録ヘッドK1〜K6が搬送方向上流側に位置するものの順、つまり記録ヘッドK6,K5,K4,K3,K2,K1の順に黒色のインクを吐出する。インク供給ユニット50は記録ヘッドユニット20から離れて配置されており、それらの間には、前述したようにインク供給チューブ60a〜60fとインク回帰チューブ62a〜62fが接続されている(図14参照)。
【0078】
図15は、記録ヘッドユニット20とインク供給ユニット50とにおけるインク流路の説明図である。図15においては、記録ヘッドK1と、それに対応するサブタンク52aおよびインクタンク35aとの間のインク流路を代表して示す。他の記録ヘッドK2〜K6のインク流路についても同様である。
【0079】
黒色のインクが貯められたインクタンク53aは、インク吸引チューブ56によってサブタンク52aに接続されている。インク吸引チューブ56の途中部分には、インクタンク53aのインクを吸引してサブタンク52aに送り込むための吸引ポンプ58が配置されている。例えば、弁81,85を閉じ、かつ弁82,83,84を開けて、吸引ポンプ58を駆動することにより、図15中左側のインクタンク53aのインクが吸引されてサブタンク52aに送り込まれる。インクタンク53aは、記録動作中にインク切れを起こさないように2セット搭載されている。したがって、一方のインクタンク53aのインクが無くなったときは、弁83,84,85,86を適宜に切り換えることにより、インク吸引チューブ56を他方のインクタンク53aに接続させることができる。弁84,86は、インクタンク53a内に大気圧を導入するための大気圧導入弁である。
【0080】
サブタンク52aの内部は大気連通孔88aに接続されており、弁88を開くことにより、サブタンク52aの内部が外気に連通されて大気圧となる。サブタンク52aには、その内部におけるインクの有無およびインク水位を検知するために、電極51a,51b,51cを備えたインク水位センサ(液面検知センサ)51が取り付けられている。これらの電極51a,51b,51c間の抵抗の変化に基づいてインクの有無を検知し、サブタンク52a内のインク水位を常に一定とするように、吸引ポンプ58および弁が制御されている。サブタンク52aと記録ヘッドK1は、インクの水頭差によって記録ヘッドK1のインク吐出口に最適な負圧を与えるような位置に配置されている。
【0081】
サブタンク52aと記録ヘッドK1には、これらの間においてインクを循環させることができるようにインク供給チューブ60aとインク回帰チューブ62aが接続されている。
【0082】
すなわち、サブタンク52aとインク供給チューブ60aはインク供給ポンプ59を介して接続されており、インク供給ポンプ59を駆動させることにより、サブタンク52a内のインクは加圧されて記録ヘッドK1に供給される。その記録ヘッドK1内のインクは、弁87が開かれることにより、インク回帰チューブ62aを通してサブタンク52aに戻される。また、記録ヘッドK1の下方には回復ユニット22が位置しており、記録ヘッドK1に加圧して供給されたインクは、弁87が閉じられることにより、吐出口から押し出されて回復ユニット22のキャップ内に受けられる。回復ユニット22とサブタンク52aは、インク回収チューブ57とインク吸引チューブ56の一部によって接続されている。したがって、弁82を閉じかつ弁81を開いて、吸引ポンプ58を駆動することにより、回復ユニット22のキャップ内に受けられたインクがサブタンク52aに回収される。
【0083】
次に、ラインプリンタ10を新たに設置したときに、各インクタンク53a等から各記録ヘッドK1〜K6にインクを充填するインクの初期充填作業について説明する。
【0084】
インクの初期充填作業は、ラインプリンタ10が初期の立上状態であると判断されたときに実行される。ラインプリンタ10が初期の立上状態であるときは、サブタンク52a、インク吸引チューブ56、インク供給チューブ60a、インク回帰チューブ62a、記録ヘッドK1には、インクが全く無い。インクの初期充填作業では、サブタンク52a、インク供給チューブ60a、およびインク回帰チューブ62aにインクを充填する作業、または、サブタンク52aのみにインクを充填する作業のいずれかが実行される。
【0085】
サブタンク52a、インク供給チューブ60a、およびインク回帰チューブ62aにインクを充填する作業では、サブタンク52aから記録ヘッドK1へのインクの供給に先立って、インク供給チューブ60aと記録ヘッドK1とを非接続状態とする。そして、この非接触状態において、サブタンク52aとインク供給チューブ60aをメインタンク53aからのインクで満たす。その後、インク供給チューブ60aを記録ヘッドK1に接続して、インク供給チューブ60a内のインクを記録ヘッドK1に供給する。インク吐出口が形成されている記録ヘッドK1の吐出口面は、インク初期充填作業の終了後に、不図示のクリーニングブレードによってワイピングされることにより、その吐出口面に付着したインクが拭き取られる。
【0086】
インク供給チューブ60aと記録ヘッドK1とを非接続状態にして、インク供給チューブ60aをインクで満たすときには、まず、インク供給チューブ60aの一端部60atとインク回帰チューブ62aの一端部62atとを直接的または間接的に接続する。そして、インク供給ポンプ58、59を駆動し、メインタンク53aから、サブタンク52a、インク供給チューブ60a、およびインク回帰チューブ62aを経由させるように、これらの間にてインクを循環させる。これにより、インク供給チューブ60aに存在する空気がインクに置換されて、その内部がインクによって満たされる。その後、インク供給チューブ60aとインク回帰チューブ62aとの接続を解除して、インク供給チューブ60aを記録ヘッドK1に接続し、そのインク供給チューブ60a内のインクを記録ヘッドK1に供給する。そのため、インク供給チューブ60aから記録ヘッドK1に空気が入り込むことはない。
【0087】
したがって、記録ヘッドK1のインク吐出口からから回復ユニット22のキャップ内にインクを押し出す際に、多量の気泡と共にインクが押し出されることはなく、キャップからのインク漏れを防止することができる。また、このようなインクの初期充填作業においては、インクタンク53aからサブタンク52aのみにインクを充填してもよい。この場合には、弁81、87を閉じ、かつ弁82を開いて、吸引ポンプ58を駆動させる。
【0088】
図16は、ラインプリンタ10の制御系を説明するためのブロック構成図であり、この制御系は、前述したようにプリントモジュールに内蔵されている。
【0089】
ホストPC(ホスト装置)11から図16の制御系に送信される記録データやコマンドは、インターフェイスコントローラ102を介してCPU101に受信される。CPU101は、ラインプリンタ10における記録データの受信、および記録動作等の全般の制御を司る演算処理装置である。CPU101は、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描画する。イメージメモリ106は、画像展開部として使用される。
【0090】
記録動作前には、まず、入出力ポート114とモータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各記録ヘッドK1〜K6を回復ユニット22のキャップから離して、記録位置(画像形成位置)に移動させる。その後、搬送されてくる感圧接着シート100に対してインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するために、ラインプリンタ10の定位置に備わる先端検知センサ(図示せず)によって、感圧接着シート100の先端位置を検出する。その後、CPU101は、エンコーダローラ47(図12参照)からの出力信号に基づき、感圧接着シート100の搬送に同期して、イメージメモリ106から対応する色の記録データを順次に読み出す。そして、この読み出された記録データは、記録ヘッド制御回路112を経由して、対応する各記録ヘッドK1〜K6に転送される。
【0091】
CPU101の動作は、プログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム、およびテーブルなどが記憶されている。ワークRAM108は、作業用のメモリとして使用される。各記録ヘッドK1〜K6のクリーニング動作や回復動作時に、CPU101は、入出力ポート114およびモータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動させる。これにより、各記録ヘッドK1〜K6内のインクを加圧して吐出口は排出させたり、吐出口からインクを吸引排出させて、各記録ヘッドK1〜K6のインクの吐出状態の良好に維持することができる。
【0092】
感圧接着シート100に対しては、その搬送に同期した記録水平同期信号に基づいて画像が記録される。その際、1つの画像を6つの記録ヘッドK1〜K6の協働によって記録するように、その画像の記録データを分割して、6つの記録ヘッドK1〜K6のそれぞれに割り当てる。すなわち、記録データをラスター方向のデータに分割(ラスター分割)して、そのデータを記録ヘッドK1〜K6に割り当てる。例えば、記録ヘッドK1に割り当てられた1ラスター分の記録データは、その記録データを記録すべき感圧接着シート100の位置が記録ヘッドK1と対向するタイミングに同期して、イメージメモリ106から記録ヘッド制御回路112に送信される。そして、その1ラスター分の記録データに基づいて、記録ヘッドK1がインクを吐出する。他の記録ヘッドK2〜K6についても同様である。
【0093】
本例の場合は、同じインクを吐出する6つの記録ヘッドK1〜K6をそなえてい。そのため、記録データを1ラスター毎あるいは複数ラスター毎に各記録ヘッドK1〜K6に割り当てることにより、1つの記録ヘッドを用いる場合に比して、理論上、最大6倍の記録速度を達成することができる。記録ヘッドとして、異なるインクを吐出可能な複数の記録ヘッドを備えてもよい。この場合には、同じインクを吐出する複数の記録ヘッドに関して、上述した場合と同様に、記録データをラスター分割して割り当てることができる。
【0094】
(カーボンブラックの水性分散体の作成例)
次に、ブラックインクの具体的な作成例について説明する。以下において、「部」および「%」とあるものは全て質量基準である。
【0095】
まず、スチレン/アクリル酸/ブチルアクリレート共重合体(酸価150,重量平均分子量1100)の水酸化カリウム溶液(中和率110%,樹脂固形分15部)の80部をジエチレングリコールの7部により溶解する。この溶液にカーボンブラック15部を添加した後、サンドミルを用いて分散して、カーボンブラックの水性分散体を作成した。この水性分散体は、固形分濃度が14.5%,平均粒子径が110nmであった。その平均粒子径は、動的光散乱法(レーザー粒径解析システムPARIII,大塚電子株式会社)を用いて測定した。
【0096】
次に、上記の水性分散体を用いて作成した水性インクの組成の具体例(実施例1,2および比較例1,2)について説明する。さらに、それらの水性インクを用いた場合の画像の記録方法、紫外線の照射条件、感圧接着層の凸部の露出程度の評価結果、画像硬化の評価結果、およびインクオフセットの評価結果について説明する。
【0097】
(水性インクの組成の具体例)
実施例1
・上記カーボンブラック水性分散体(固形分14.5%) 30.0部
・水溶性紫外線硬化樹脂モノマー
(メタクリル酸ヒドロキシプロピル) 5.0部
・水溶性紫外線硬化型樹脂オリゴマー
(ペンタエリスリトールジアクリレート系オリゴマー) 7.0部
・光重合開始剤
(イルガキュア2925、チバスペシャルティケミカルズ)4.0部
・アセチレノールE100(川研ファインケミカル(株))1.0部
・イオン交換水 残分
上記組成分を混合して2時間攪拌した後、3μmのメンブレンフィルターにより不純物を除去して、インクを作成した。
【0098】
実施例2
実施例1のアセチレノールE100の添加量を3.0部とした以外は、実施例1と同様にしてインクを作成した。
【0099】
比較例1
作成例1のアセチレノールを削除した以外は、実施例1と同様にしてインクを作成した。
【0100】
比較例2
実施例1の水溶性紫外線硬化モノマー、水溶性紫外線硬化オリゴマー、および光重合開始剤に代えて、エチレングリコールモノブチルエーテル5.0部とグリセリン5.0部を添加した以外は、実施例1と同様にしてインクを作成した。
【0101】
このような作成例1,2および比較例1,2のインクの表面張力を、自動表面張力計(白金プレート)を用いたプレート法により25℃で測定した。それらの測定の結果は、下表1のとおりであった。
【0102】
【表1】
【0103】
(画像の記録方法)
キヤノン(株)から上市されるBJ S600を用いて、感圧接着記録シートPOSTEX(トッパン・フォームズ(株)社製)に、上記実施例1,2および比較例1,2のインクにより、100%のデューティでベタ画像を記録した。その後、以下の条件で紫外線を照射した。比較例2のインクは紫外線硬化機能をもたないため、そのインクによる記録画像には紫外線を照射しなかった。
【0104】
(紫外線の照射条件)
照射装置:F300S(FUSION UV SYSTEMS社製)
・電源ユニットP300M,発光体ユニット1300M
ランプ:FUSION UVモデルF305紫外線ランプ
(無電極ランプバルブ“D”使用,ランプ電力120W/cm)
照射時間:1秒
照射タイミング:画像形成から10秒後
【0105】
(感圧接着層の凸部の露出程度の評価)
実施例1,2および比較例1,2のインクを用いて、上記の記録方法により画像を記録し、その画像に対して、上記の照射条件下における紫外線の照射前と照射後に、画像表面における感圧接着層の凸部の露出程度を目視により評価した。下記のように、紫外線照射前の評価は3段階(○,△,×)とし、紫外線照射後の評価は2段階(○,×)とした。比較例2のインクによる記録画像に関しては、紫外線を照射せずに同様の評価を行なった。それらの評価結果は、下表2のとおりであった。
<紫外線照射前>
○…目視で明らかに凸部が露出していることが確認できる。
△…凸部をインクが覆っているが、画像の盛り上がりは見られない。
×…凸部をインクが覆っており、画像の盛り上がりが視認できる。
<紫外線照射後>
○…目視で明らかに凸部が露出していることが確認できる。
×…凸部をインクが覆っており,画像の盛り上がりが視認できる。
【0106】
(画像硬化の評価)
実施例1,2および比較例1,2のインクを用い、上記の記録方法により画像を記録し、その画像に上記の照射条件下において紫外線を照射し、その照射直後、および照射してから5秒後に画像を指で触り、画像の乾燥状態(タック感、指へのインク付着)を確認した。このような画像硬化の評価は、下記のように3段階(○,△,×)とした。比較例2のインクによる記録画像に関しては、紫外線を照射せずに同様の評価を行なった。それらの評価結果は、下表2のとおりであった。
○…紫外線照射直後に、タック感ナシ。インクの指への付着ナシ。
△…紫外線照射5秒後に、わずかなタック感はあるが、感圧接着シートは指に接着しない。インクの指への付着ナシ。
×…紫外線照射5秒後に、タック感が強く、感圧接着シートは指に接着する。インクが指に付着する。または未乾燥状態。
【0107】
(インクオフセットの評価)
上記の記録方法により記録した画像に、上記の照射条件下において紫外線を照射した感圧接着シートの感圧接着層と、画像が記録されていない感圧接着シートの感圧接着層と、を対接させ、それらを圧着した後に剥離して、画像の転写(インクオフセット)の発生状況を目視により評価した。このようなインクオフセットの評価は、下記のように3段階(○,△,×)とした。それらの評価結果は、下表2のとおりであった。比較例2のインクにより記録した画像に関しては、画像の記録後20分以上室内(25℃RHにて)放置して乾燥させたが、画像が乾かずにべたついていたため、インクオフセットの評価はできなかった。
○…対接した感圧接着層面に画像の転写が見られない。
△…対接した感圧接着層面が薄く黒ずみ、少し画像が転写したと判断される。
×…対接した感圧接着層面にはっきりと、ベタ画像の転写が認められる。
【0108】
【表2】
【0109】
(他の実施形態)
本発明は、上述したように、微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像を記録する際に、そのインクの付与量を特定する。すなわち、感圧接着層に付与した液状のインクが硬化したときに、その硬化したインクから感圧接着層の凸部が露出する程度に、液状のインクを付与して画像を記録する。
【0110】
本発明は、このような条件下において液状のインクを付与して、硬化したインクから感圧接着層の凸部を露出させることができればよく、そのインクの種類や硬化の仕方などは適宜選定することができる。例えば、水性または油性のインクを用いることができ、また、紫外線以外のエネルギー線や熱などを用いてインクを硬化させることもできる。また、インク付与手段は、必ずしもインクジェット記録ヘッドを用いる構成に特定されず、種々の付与方式を採用することができる。また、インクジェット記録ヘッドとしては、電気熱変換体(ヒーター)やピエゾ素子などを用いてインクを吐出する種々の方式のものを用いることができる。電気熱変換体を用いた場合には、その発熱によってインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用してインク吐出口からインクを吐出することができる。
【0111】
また、画像の記録方式は、記録ヘッドの主走査方向の記録走査と、記録媒体としての感圧接着シートを主走査方向と交差する方向に搬送する搬送動作と、を繰り返すことによって画像を記録する、いわゆるシリアルスキャン方式であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】(a)は、本発明の感圧接着シートの構成例を説明するための断面図、(b)は、その平面図である。
【図2】(a)は、図1の感圧接着シートに画像が記録された記録物の断面図、(b)は、その記録物の平面図である。
【図3】(a)から(d)は、図1の感圧接着シートに画像を記録する工程を説明するための断面図である。
【図4】(a)から(d)は、図1の感圧接着シートに画像を記録する工程を説明するための平面図である。
【図5】(a)から(d)は、図1の感圧接着シート同士の接着工程および剥離工程を説明するための断面図である。
【図6】感圧接着シートに画像が記録された記録物の他の構成例を説明するための断面図である。
【図7】感圧接着シートに画像が記録された記録物のさらに他の構成例を説明するための断面図である。
【図8】感圧接着シートに画像が記録された記録物のさらに他の構成例を説明するための断面図である。
【図9】感圧接着シートに画像が記録された記録物のさらに他の構成例を説明するための断面図である。
【図10】(a),(b)は、図9の記録物の作成工程を説明するための断面図である。
【図11】(a),(b)は、図9の記録物の作成工程を説明するための平面図である。
【図12】本発明の記録装置の構成例を説明するための概略側面図である。
【図13】図12の記録装置の要部の斜視図である。
【図14】図12の記録装置に組み込まれるプリントモジュールの斜視図である。
【図15】図14のプリントモジュールにおけるインク流路の説明図である。
【図16】図12の記録装置の制御系を説明するためのブロック構成図である。
【符号の説明】
【0113】
100 感圧接着シート
101 凸部
102 凹部
103 基材
104 感圧接着層
302 記録ヘッド
303 インク
303A 色材
306 紫外線照射ランプ
401 加圧ローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像を記録する記録方法、記録装置、および記録結果物としての記録物に関するものである。
【0002】
さらに詳しくは、重ね合わせた面を情報担持面とする情報担持用シートの記録に用いて好適な記録方法、記録装置、および記録結果物としての記録物に関するものである。その情報担持用シートとしては、例えば、折り重ねや切り重ねにより重ね合わせた面を情報担持面とする折り畳みシート、重ね合わせシートのような親展性を有する情報伝達用シート、または寸法拡大可能な整理シートなどの情報伝達用シートなどがある。
【背景技術】
【0003】
通常、互いに重ね合わせられる基体シートの重ね合わせ面に、情報を担持する情報担持用シートにおいては、その重ね合わせ面同士を剥離可能に接着させるために、それらの面に感圧性接着剤による感圧接着層が形成されている。感圧接着層は、重ね合わせ面同士を重ね合わせたときに互いに対接するように、それらの全面や特定部分に所定のパターンまたは線状に形成される。この感圧性接着剤は自接着性感圧性接着剤とも称されており、それにより形成された感圧接着層同士を対接させて強く加圧することにより、それらの感圧接着層における高分子が自己拡散により密着する。感圧性接着剤の組成物の種類や加圧の程度により、永久的な接着性や剥離可能な接着性が具現される。重ね合わせ面が剥離可能な情報担持用シートは、以下、「感圧接着シート」ともいう。
【0004】
最近では、このような感圧接着シートの重ね合わせ面に、住所、氏名、および個別情報などを記録するための方法として、インクジェット記録方式が急速に普及してきている。特に、カラーインクの普及により、従来の製版技術に匹敵するようなカラー印刷(プロセス印刷)も可能になってきている。
【0005】
このような感圧接着シートにおいては、情報が記録されてから感圧接着層によって接着された重ね合わせ面を剥離した際に、一方の重ね合わせ面に記録されている情報が他方の重ね合わせ面に移転(以下、「インクオフセット」という)することがあった。このようなインクオフセットは、インクジェット記録方式を用いた場合にも生じることがある。また、インクジェット記録方式に用いられるインクが水溶性染料インクの場合には、記録画像の耐水性が不足するおそれがある。
【0006】
これらの対応策として、インクジェット記録方式に用いられる感圧接着シートの感圧接着層中にカチオン性化合物を添加し、また、耐水性に優れた顔料を主成分とするインクを用いる方法が提案されている(特許文献1,特許文献2,特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】特開平11−48651号公報
【特許文献2】特開平11−334201号公報
【特許文献3】特開平09−058118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような方法によってもインクオフセットを防止することは難しく、耐水性に優れた顔料を主成分とするインクを用いた場合には強く現れてしまう。しかも、カチオン性化合物の添加により感圧接着層の塗工液がゲル化して、その塗工が不可能となることがあった。また、ウエットオフセット印刷時に、カチオン樹脂が溶出して印刷版汚れを起こすおそれもある。
【0009】
本発明の目的は、感圧接着層の充分な接着力を確保しつつ、インクオフセットを防止することができる記録方法、記録装置、および記録物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の記録方法は、微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像を記録する記録方法において、前記感圧接着層に付与した前記液状のインクが硬化したときに、当該硬化したインクから前記感圧接着層の凸部が露出する程度に、前記液状のインクを付与して画像を記録することを特徴とする。
【0011】
本発明の記録装置は、微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像を記録する記録装置において、前記感圧接着層に付与した前記液状のインクが硬化したときに、当該硬化したインクから前記感圧接着層の凸部が露出する程度に、前記液状のインクを付与するインク付与手段を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の記録物は、微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像が記録された記録物であって、液状のインクが硬化した状態において、当該硬化したインクから前記感圧接着層の凸部が露出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、感圧接着シートの感圧接着層に付与したインクが硬化したときに、その硬化したインクから感圧接着層の凸部が露出する程度に、インクを付与して画像を記録する。これにより、感圧接着層の充分な接着力を確保しつつ、インクオフセットを防止することができる。また、感圧接着層の凹部内にインクが硬化させることにより、感圧接着層の接着性を維持しつつ、記録濃度の反射濃度の低下を抑えることができ、しかも高温多湿等においてもインクの滲み出しが少なく、保存性の良い記録物を作製することもできる。
【0014】
また、インクジェット記録ヘッドを用いることにより、比較的少ない熱エネルギーによって非接触でインクを吐出して付与することができて、感圧接着層の接着性の低下を招くおそれがない。また、その場合に、紫外線硬化型などの活性エネルギー線硬化型の水系インクなどを用いることにより、メンテナンス性の良いインクジェット方式の記録方法および記録装置を提供することができる。また、活性エネルギー線硬化型の水系インクを使用することにより、感圧接着層が存在しない感圧接着シートの部分にも、インクジェット記録方式により画像を記録することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(感圧接着シート)
図1は、本発明の感圧接着シート100の構成例を説明するための模式図であり、図1(a)および(b)は、感圧接着シート100の断面図および平面図であり、図1(a)は、図1(b)のI−I線に沿う断面図である。
【0017】
本例の感圧接着シート100は、基材103上に感圧性接着剤の層(感圧接着層)104が形成されており、その感圧接着層104には凸部101と凹部102が形成されている。感圧接着層104は、基材103上に塗布等の方法によって感圧性接着剤を付与することにより形成される。凸部101は、基材103に密着するように形成されており、独立して点在する形態、または一部が互いにつながった形態となっており、基材103上において互いにつながっている部分がある。凹部102は、凸部101の相互間において溝状に連続する形態、または個々に分断された形態となっている。
【0018】
感圧接着層104は通常状態では接着せず、感圧接着層104同士を対接させて所定の圧力を付与することにより、その感圧接着層104同士が剥離可能に接着する。感圧接着層104は、このような機能を発揮することができればよく、その種類は特に限定されない。
【0019】
本発明の感圧接着シートは、基材103の一方の面に感圧接着層104が形成されたものである。感圧接着層104の表面に凸部101を形成するための型付け方法は、特に限定されない。例えば、基材103上に感圧接着層104を形成した後に、エンボスロール等を用いて型付け処理を行う方法を用いることができる。また、エンボスロールの形状の選定により、感圧接着層104の凹部102の側面が傾斜面を成すように型付けすることも可能である。型付け処理を施した感圧接着層104の面は、JIS−B−0651に規定される触針式表面粗さ測定器を用いて計測したときに、JIS−B−0601で規定されるカットオフ値0.8mmにおける十点平均粗さ(Rz)が30μm〜100μmであることが好ましい。Rzが30μm未満の場合には、記録した画像が感圧接着層104の表面に定着するおそれがあり、それがインクオフセットの原因となりやすくなる。Rzが100μmを超えた値の場合には、複数の凸部101間に形成される凹部102内にインクが沈み込むために、記録画像の濃度ムラまたは白抜けが生じやすくなる。
【0020】
したがって、感圧接着層104の表面のカットオフ値0.8mmにおける十点平均粗さは、画像記録前の十点平均粗さ(Rz)が30μm〜100μmの範囲にあることが好ましい。さらに、そのRzと画像記録後の十点平均粗さ(Rz′)の比率Rz′/Rzは、0.3〜0.9の範囲にあることが好ましい。
【0021】
感圧接着層104の全面積に対する凸部101の面積は、感圧接着層104の全面積に対して、30%〜80%あることが好ましい。それが30%未満の場合には、接着力が低下して、接着した感圧接着層同士が剥がれやすくなるおそれがあり、それが80%を超える場合には、接着力が強くなり過ぎて、接着した感圧接着層同士を剥離するときに基材が破れて、記録された情報が破損するおそれがある。ここで、凸部101の面積とは、感圧接着層104の表面を垂直方向上部から見たときの凸部101の最上面の面積である。
【0022】
このような感圧接着シートに対して、インクジェット記録方式により水性インクを用いて情報を記録する場合、感圧接着シートの感圧接着層は、水に対する接触角を90°以下(または以上)の範囲とすることが好ましい。これにより、インクオフセットを有効に防止することができる。その接触角が90°以上(または以下)の場合には、凹部へのインクの沈降量が不充分となり、感圧接着層同士を圧着および剥離した際にインクオフセットが生じやすくなる。ここで接触角とは、感圧接着層上に置かれた水滴の表面と感圧接着層との交点において、水滴に対する接線と感圧接着層とが成す角度であり、この角度が小さい程、水性インクに対する濡れ性が高いことを意味する。本発明における接触角の値は、次のような測定方法により得られる。すなわち、感圧接着層を設けた感圧接着紙を23℃、50%RHで12時間放置した後、感圧接着層上に純水2μlを滴下した。そして、その液量が変化しない範囲(液滴が感圧接着層に吸収されず、かつ蒸発しない範囲)において、液滴の広がりが最大となる時点(滴下後0.1〜60秒後)の角度を、接触角計を用いて測定した。その測定には、自動接触角計CA−VP(協和界面科学(株)社製)を使用した。
【0023】
感圧接着シート100に用いる基材103は、特に制限されない。例えば、非塗被紙である上質紙、中質紙、ザラ紙、コットン紙;塗被紙であるアート紙、コート紙、軽量コート紙、樹脂被覆紙、布、プラスチックラミネート布、プラスチックフィルム、金属箔などを挙げることができる。基材の坪量は、通常50〜160g/m2程度である。基材として、樹脂被覆紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成プラスチックフィルムを用いる場合には、これらの基材の表面をコロナ放電などによって易接着処理をすることが好ましい。また、基体の表面上における感圧接着層の乾燥後の塗布厚は、特に限定されない。例えば、感圧接着層の接着性、剥離性、透明性などを維持するためには、1μm〜20μmが好ましい。
【0024】
感圧接着層104の組成に主として含まれる接着剤は、通常の状態で接着することなく、加圧により接着する性質を有するものであれば特に制限はない。例えば、天然ゴム、合成ゴム等の一般的な感圧接着層の組成に慣用されているものの中から任意に選択して用いることができる。特に、天然ゴムにスチレンとメタクリル酸メチルとをグラフト共重合させて得られた天然ゴムラテックスは、耐ブロッキング性、耐熱性、耐摩耗性等の点で好適である。このような組成を含め、適宜選択して使用することができる。
【0025】
また感圧接着層104には、その他の添加剤として、分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、帯電防止剤、老化防止剤、などを適宜配合することもできる。
【0026】
基材103に対する感圧接着層104の組成(感圧性接着剤)の塗工は、従来の感圧接着シートにおける感圧性接着剤の塗工方法と同様の方法を用いることが可能である。また、感圧接着層の乾燥塗工量は、一般的に3〜30g/m2、好ましくは3〜20g/m2、さらに好ましくは3〜15g/m2である。それが3g/m2未満では接着力が不充分となりやすく、また、それが30g/m2を超えると接着力が強過ぎて、剥離時に基材が破れて記録情報を破損してしまうおそれがある。
【0027】
図2は、感圧接着シート100に活性エネルギー線硬化型の水性インクを付与して、それを硬化させた場合の感圧接着シート100の断面図および平面図であり、図2(a)は、図2(b)のII−II線に沿う断面図である。
【0028】
本例の場合、活性エネルギー線硬化型の水性インクは、後述するように、インクジェット記録ヘッドによって感圧接着層104の上に吐出され、その後、複数の凸部101間の凹部102内に浸透する。これにより凸部101は、水性インクの色材303Aに覆われず露出した状態となる。
【0029】
(活性エネルギー線硬化型の水性インク)
本例において用いられるインク(記録液)は、色材、光重合開始剤、活性エネルギー線硬化型モノマー、オリゴマー、ポリマー、および、それらの混合物によって構成される。また、インクジェット適性を得るために、イオン交換水、有機溶剤、界面活性剤等を添加してもよい。特に、プラスチック、金属などのインクを吸収しない非吸収性記録媒体に記録する場合には、紫外線硬化型モノマーやオリゴマーを溶剤として使用することにより、環境に負荷のない密着性の良い記録物を提供することが可能である。活性エネルギー線硬化型モノマー、オリゴマー、ポリマーは、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を1つ以上含有する化合物であればどのようなものでもよい。しかし、顔料分散剤や溶剤との相溶性を考慮して選択する必要がある。また、インクジェット適性と記録物の堅牢性を得るために、それらを2種以上を所定の比率で併用することも可能である。
【0030】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、単官能のアクリレートとしてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、グリシジルエチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0031】
また、2つ以上の官能基を有するものとして、1,4ブチレングリコールジアクリレート、1,3ブチレンクリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等が挙げられる。その他、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等が挙げられる。これらの物質は、記録液中に5重量%から90重量%含有される。
【0032】
光重合開始剤には、用いられる紫外線硬化型モノマー、オリゴマー、ポリマーを硬化可能な公知慣用のものをいずれも使用することができる。光重合開始剤としては、分子開裂型または水素引き抜き型のものが好適である。具体的には、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド、さらに、これらの物質に、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖を導入して水溶性を向上させた光開始剤を使用することも可能である。
【0033】
インク(記録液)に使用される色材としては、染料と顔料のいずれも使用可能である。活性エネルギー線照射に対する安定性、記録物信頼性の観点からは、顔料を用いることが好ましい。染料を使用する場合には、耐光性の強い含金染料を用いることが好ましい。本発明において使用するインク(記録液)に含有される色材の量は、重量比で1〜20%、好ましくは、2〜12%の範囲とすることが好ましい。
【0034】
黒インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法、或は、石油コークスを多量のアルカリを用いて賦活化して製造される高比表面積カーボン、そして、以上のようなカーボンブラック素材に対して、気相からの弗素処理、親水性を有する重合性モノマーのプラズマ処理、親水性を有するモノマーの液相からのグラフト重合等の処理が施されたカーボンブラックであってもよい。以上のようなカーボンブラックは、一次粒径が15から40mμ、BET法による比表面積が50から3000平方m/g、DBP吸油量が40から150ml/100g、揮発分が0.5から10%、pH値が2から9を有する。
【0035】
イエロー顔料としては、ピグメントイエロー1,2,3,12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー16、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー55、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー75、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロ−95、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー98、ピグメントイエロー109、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー180などである。
【0036】
マゼンタ顔料としては、ピグメントレッド5、ピグメントレッド7、ピグメント12、ピグメント48(Ca)、ピグメントレッド48(Mn)、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド57(Sr),ピグメントレンド57:2、ピグメントレッド122、ピグメントレッド123、ピグメントレッド168、ピグメント184、ピグメントレッド202、ピグメントレッド238などが適用される。
【0037】
シアン顔料としては、ピグメントブルー1、ピグメントブルー2、ピグメントブルー3、ピグメントブルー16、ピグメントブルー22、ピグメントブルー60、ピグメントブルー15:2、ピグメント15:3、バットブルー1、バットブルー60、などが適用される。こうした顔料は、高分子樹脂を用いて分散して記録液に使用される。高分子樹脂は、使用される溶剤、モノマー、オリゴマー、ポリマーとの相溶性のよいものを選択する。
【0038】
インクジェット適性、記録液の保存安定性、インクジェット記録ヘッドのノズル先端部での保湿性を向上させるために、記録液の成分として、イオン交換水、グリコール系溶剤、ピロリドン系溶剤、低級アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、グリセリン、グリセリン誘導体、尿素、エチレン尿素、尿素誘導体等が使用できる。
【0039】
インク(記録液)が非水系の場合は、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール、エステル系、ケトン系、シリコーンオイル、鉱物油、ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール等を単独あるいは併用して用いる。顔料分散用樹脂としては、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ケトン樹脂、アルキド樹脂、ロジン系樹脂、石油樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合樹脂、エチレンー塩化ビニルー酢酸ビニル共重合樹脂、エチルイミン−ヒドロキシステアリン酸共重合体等が使用できる。
【0040】
本発明において用いるインク(記録液)には、前述した各材料に加えて、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、その他、物性調節のための補助材料を添加することができる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤などが使用できる。これらの界面活性剤は、紙などの記録媒体に対する記録液の浸透性、インクジェット記録ヘッドの構成部材に対するぬれ性、流動特性、分散安定性に対する補助剤などを目的として添加される。
【0041】
また、本発明において使用されるインク(記録液)は、不純物を除去するために色材を洗浄、精製を行ってから使用した方が好ましい。例えば、使用するインクジェット方式に適合した構成成分を記録液に混合した後、それを濾過および遠心分離などを行って不純物を除去して、本発明において使用する記録液とする。
【0042】
また、水性インク中の水の添加量は、インクに対して50重量%〜80重量%の範囲が好ましく、さらには60重量%〜70重量%がより好ましい。それが50重量%未満の場合には、粘度が高くなってインク吐出性が低下するだけでなく、インクの表面張力が高くなって、定着不良やインクオフセットの原因となりやすい。それが80重量%を超えた場合には、硬化速度が遅くなるなどの問題を生じるおそれがある。
【0043】
(インクの粘度)
オンデマンド型のインクジェット装置を用いる場合、インクの粘度は、広い範囲で非線形性がなく、15mPa・sより低い範囲であることが好ましい。より好ましくは、5〜10mPa・s未満である。粘度が15mPa・sを超える場合には、ノズルにインクが付着しやすくなり、ノズル詰まりの原因となりやすい。インクの粘度は、BL形粘度計(東機産業(株)社製)を用いて、標準コーン(外径R=24mm)を、回転速度60rpmの範囲内で適宜調整して回転させて、25℃で測定した。
【0044】
(インクの表面張力)
インクの表面張力は、20mN/m〜50mN/mであることが好ましい。表面張力が20mN/m以下になると、インクが感圧接着層の内部に浸透し、反射画像濃度が低下して、バーコード記録に必要な高精細な画像形成ができなくなるおそれがある。また、表面張力が50mN/m以上になると、記録媒体の表層においてインク滴が効果的に硬化され、ブリードを充分に抑制することができると同時に、高い画像濃度を得ることができる。一方、この画像濃度の確保するたには、後述する活性エネルギー照射時に、ある程度インク滴が被記録媒体に対して濡れている必要もある。そのため、表面張力の上限としては、50mN/m程度であることがより好ましい。ここで表面張力は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学(株)社製)を用い、白金プレートを使用して25℃で測定した静的表面張力である。
【0045】
(感圧接着シートの浸透性)
本発明の感圧接着シートに水を吸収させ、超音波により液吸収を測定する動的浸透性テスターを用いて、超音波最大透過時間を測定した。その超音波最大透過時間は、1秒以上80%以上が好ましいことが分かった。
【0046】
紙媒体に水を吸収させて、その吸収を超音波式の動的浸透性テスターにより測定した場合、超音波最大透過時間が1秒以上で超音波最大透過率が80%以下になると、後述するインクジェット記録方式により形成したインクのドットの広がりが大きくなってしまう。このような場合には、記録画像の反射濃度が低くなり、記録した小文字の精細性やバーコードの読み取り精度を低下させるおそれがある。本例においては、後述するように、感圧接着シートに対して活性エネルギー線硬化型の水性インクを吐出する。
【0047】
(記録方法)
図3および図4は、インクジェット記録ヘッドを用いて、活性エネルギー線硬化型の水性インクとしての紫外線硬化型の水性インク(以下、「UVインク」ともいう)303を感圧接着シート100に吐出して、定着させる工程の説明図である。図3(a)から(d)のそれぞれは、図4(a)から(d)のそれぞれのIII−III線に沿う断面図である。
【0048】
感圧接着シート100は、インクジェット記録装置において矢印X方向に搬送されて、その感圧接着シート100上の記録領域がインクジェット記録ヘッド302と対向したときに、その記録ヘッド302からインクが吐出される。記録ヘッド302は、複数のノズルからUVインク303を吐出して、感圧接着シート100に付与する。
【0049】
感圧接着シート100上に付与されたインク303は、図3(a)および図4(a)のように、感圧接着層104における島状の凸部101上および溝状の凹部102内に着弾する。しかし、凸部101上に着弾したインク303は、図3(b)および図4(b)のように、毛細管現象によって次第に凹部102内に浸透し、その一部または全部が凹部102内に収容される。これに伴い、凸部101の頂部は徐々に露出する。図3(b)および図4(b)は、このようなインク303の浸透現象が完了、もしくは浸透途中の状態を示し、凸部101の頂部はほぼ露出した状態にある。
【0050】
その後、感圧接着シート100が矢印X方向に搬送されて、インク303が付与された記録領域が紫外線照射ランプ306と対向することにより、その記録領域に対してランプ306から紫外線が照射される。その紫外線により、インク303に内包されている紫外線硬化剤(UV硬化剤)が硬化反応を開始する。すなわち、凹部102内に収容されているインク303は、その内部の水分を押し出しながら硬化を始め、図3(c)および図4(c)のように、内部の水分を押し出しながら硬化を開始する。さらに、紫外線または不図示の熱源によって水分が蒸発して、色材303Aが凹部102内に定着する。本例においては、インク303として紫外線硬化型の水性インクを用いることにより、それが凹部102内に浸透して凸部101が露出した状態において、インクが紫外線を受光することになる。また、感圧接着層104が紫外線硬化剤(UV硬化剤)を含む場合には、紫外線の照射により凸部101が硬化反応を開始して、後述する圧接工程を待機するような状態に遷移する。
【0051】
感圧接着シート100に対するインク303の付与量は特に限定されず、それが凹部102内に収容されればよく、使用する感圧接着シート100に応じて適宜、調整することができる。また、インクの付与量が多すぎた場合には、後述するように、インクが感圧接着層の凸部を覆って、所定の接着力が得られなくなるおそれがある。
【0052】
(紫外線照射ランプ)
紫外線照射ランプ306としては、点灯中における水銀の蒸気圧が1〜10Paの所謂低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、蛍光体が塗布された水銀灯等が好ましい。これらの水銀ランプの紫外線領域の発光スペクトルは、450nm以下、特に、黒色或いは着色されたインク中の重合性の物質を効率的に反応させるためには、184nm〜450nmの範囲が適している。このようなランプ306は、小型の電源が使用できるため、その電源を記録装置に搭載する上においても適している。水銀ランプとしては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンフラッシュランプ、デイープUVランプ、マイクロ波を用いて外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、UVレーザー等が実用されている。これらの発光波長領域は上記の範囲を含むため、電源サイズ、入力強度、ランプ形状等が許されれば、このような種々のランプが基本的に適用可能である。光源は、用いる触媒の感度にも合わせて選択する。
【0053】
必要な紫外線強度は、インクの重合速度との関係から、1mW/cm2〜5,000mW/cm2の程度が好ましい。照射強度が不足するとインクの硬化が充分に得られず、インクオフセット現象が発生するおそれがある。また、照射強度が強過ぎた場合には、感圧接着シートの基材がダメージを受けたり、インクの色材の退色を生じたり、感圧接着層の接着力の低下を招くおそれがある。また、感圧接着層を形成する接着剤とインクのそれぞれに適したUV波長をもつ紫外線ランプを複数備えてもよい。
【0054】
(プレヒート)
インク(記録液)が水溶性有機溶媒を含有している場合には、紫外線を照射する前に、ドライヤー、マイクロ波発振装置、遠赤外線ランプ等を用いてインクを加熱することにより、インクに残存している溶剤を除去してもよい。これにより、インクオフセット現象を低減することができる。インクを加熱する時期は、紫外線を照射する前であれば特に限定されものではなく、また、インクジェット記録前に感圧接着シートを加熱してもよい。
【0055】
(感圧接着シート上におけるインクの高さ)
本例の水性インクは、水分を少なくとも50%以上含む。そのため、図3(c)のように、感圧接着シート上に定着したときの厚さHは、それが感圧接着シート上に付与されたときの厚さH0の50%以下となる。HがH0の50%以上の場合には、インクが凸部101を部分的に覆って、感圧接着層の接着力の低下を招いたり、インクオフセットの要因となるおそれがある。感圧接着層に付与されたインクは、硬化することにより厚さが10%〜70%減少することが好ましい。
【0056】
(感圧接着シートの接着および剥離)
前述したように、感圧接着シート100上にインク303を付与してから、紫外線を照射することにより記録物が作成される。次に、このような記録物としての感圧接着シート100同士の接着および剥離について説明する。
【0057】
図5(a)および(b)のように、記録物としての感圧接着シート100を2枚対向させ、あるいは1枚の感圧接着シート100を折り曲げることにより、感圧接着層104同士を対接させる。感圧接着層104同士を対接させる方法は特に限定されるものではなく、例えば、感圧接着シート100を2つ折りまたは3つ折りしてもよい。そして、図5(b)のように、感圧接着層104同士を接触させてから、図5(c)のように所定の圧力を加えることにより、感圧接着層104同士を接着させる。本例においては、感圧接着シート100を図5中の矢印Y方向に搬送しつつ、加圧ローラ401によって圧力を加える。加圧ローラ401による加圧力は、約1kg/cm2〜10kg/cm2圧が好ましく適用できる。
【0058】
感圧接着層104においては、インクの色材303Aが凹部102内に定着し、凸部101は色材303Aに覆われずに露出している。したがって、感圧接着層104同士は、それぞれの凸部101同士が接触して接着されることになる。色材303Aは、凹部102内に定着しているため感圧接着層104同士の接着面上には位置しない。つまり、一方の感圧接着層104において、凹部102内の色材303Aは凸部101により囲まれて、他方の感圧接着層104との接触が防止される。この結果、後述するようにインクオフセットの発生を抑えることができる。
【0059】
また、感圧接着層104が紫外線硬化剤(UV硬化剤)を含む場合には、紫外線を照射することにより、互いに接着する凸部101の接着力を増したり、または部分的に相溶させてより強固に接着することもできる。
【0060】
このように、感圧接着シート同士を張り合わせることにより、いわゆる情報担持シートが形成される。図5(d)は、このような情報担持シートの界面を剥がした場合の模式断面である。上述したように、インク303の色材303Aが凹部102内に収容されて硬化されているため、一方の感圧接着層側の色材303Aが他方の感圧接着層側の凸部101に転写される現象、つまりインクオフセット現象の発生を抑えることができる。また、それぞれの感圧接着層の凸部101同士が色材303に覆われることなく接着されるため、接着力を低下させることなくインクオフセット現象の発生を抑制することができる。
【0061】
(記録物の他の例)
次に、感圧接着シート100上にインク303を付与してから紫外線を照射することにより得られる記録物の他の例について説明する。
【0062】
図6に示す記録物は、感圧接着シート100の感圧接着層104以外の部分に、前述したインク303と同様または異なるインク501を用いて、種々の情報や画像が記録されている。本例の記録物は葉書などに用いることができ、前述したように、その感圧接着層104に他の感圧接着層を対接させることにより個人情報などを担持すると共に、インク304によって宛名などの情報を記録することができる。インク501として、前述したインク303を用いることにより、高精細かつ高堅牢性の画像を記録することができる。また、感圧接着シート100の一方の面に感圧接着層104が形成される領域と、それが形成されない領域と、が存在する場合には、後者の領域にインク501によって記録を行うことも可能である。
【0063】
図7に示す記録物は、感圧接着層104が形成される前の基材103に、インク502によって種々の情報や画像が印刷(プレ印刷)されている。そのプレ印刷には、オフセット印刷やグラビア印刷等の方式を用いることが可能であり、またインクジェット記録方式を用いることもでき、その場合にはインク502として前述したインク303を好適に用いることができる。インク502の記録内容は、透明または半透明の感圧接着層104を通して視認することができる。また、インク502によって記録された情報や画像と、インク303によって記録された情報や画像と、は、部分的に重ねたりずらしたりすることができる。
【0064】
図8に示す記録物は、感圧接着層104が形成される前の基材103に、インク503によって隠蔽層が形成されている。この隠蔽層は、オフセット印刷やグラビア印刷等によって形成することが可能であり、またインクジェット記録方式を用いることもでき、その場合にはインク503として前述したインク303を好適に用いることができる。この隠蔽層を形成するインク503は、透明または半透明の感圧接着層104を通して視認することができる。また、インク503によって記録された情報や画像と、インク303によって記録された情報や画像と、は、部分的に重ねたりずらしたりすることができる。
【0065】
図9に示す記録物は、その感圧接着層104上に、インク303が部分的に多量に付与されている。インク303が多量に付与された領域Pにおいては、インク303が感圧接着層104の凸部101を覆ったまま硬化することにより、接着力が弱められることなる。インク303が適量に付与された領域Nにおいては、前述したように、インク303が感圧接着層104の凸部101を覆わずに露出させた状態で硬化することにより、充分な接着力を確保することができる。このように、インク303の付与量に応じて接着力を部分的に異ならせることができる。例えば、感圧接着層104同士が剥離可能に接着された情報担持用シートにおいて、それらは剥離し始める部分の接着力を弱めることにより、それらの剥離がしやすくなる。また、感圧接着層104の接着力の低下を目的とする場合には、色材成分を含まないインク(クリアインク)を用いることができる。
【0066】
図10および図11は、図9に示す記録物の製作工程の説明図であり、図10(a),(b)のそれぞれは、図11(a),(b)のそれぞれのX−X線に沿う断面図である。
【0067】
図10(a)および図11(a)のように、感圧接着層104上の領域Nに対しては、前述した図3(a)と同様に充分な接着力が確保できる程度の適量のインク303を付与し、領域にPに対しては多量のインク303を付与する。領域Aは、インク303が付与されない領域である。その後、前述した場合と同様に、紫外線を照射してインク303を硬化させる。これにより、図10(b)および図11(b)のように、領域Nにおける凸部101はインク303の色材303Aに覆われずに露出し、領域Pにおける凸部101は色材303Aにより覆われて露出しない。この結果、感圧接着層104上の領域Nに関しては領域Aと同様に充分な接着力が確保され、領域Pに関しては接着力が弱められることになる。
【0068】
(記録装置の構成例)
図12は、本発明を適用可能な記録装置の構成例を説明するための概略側面図である。本例の記録装置は、後述するプリントモジュール(プリントユニット)が組み込まれたラインプリンタ10を構成している。
【0069】
ラインプリンタ10は、記録ヘッドユニット20と搬送ユニット40が備えられている。記録ヘッドユニット20には、感圧接着シート100にインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録ヘッドK1,K2,K3,K4,K5,K6が搭載されている。搬送ユニット40は、感圧接着シート100を矢印X方向に搬送する。記録ヘッドK1,K2,K3,K4,K5,K6の全てからは黒色のインクが吐出される。記録ヘッドユニット20には、各記録ヘッドK1〜K6を後述するキャッピング位置、記録位置、ワイピング位置に移動させるためのヘッドアップダウンモータ118(図16参照)等が備えられている。記録ヘッドユニット20は板状のエンジンベース30に固定されており、後述するように、エンジンベース30と共に上下動(昇降)する。
【0070】
記録ヘッドユニット20が固定されているエンジンベース30は平面形状が長方形であり、その四隅の位置にはナット32が固定されている。これらナット32は、それぞれに対応するねじ軸34にねじ合わされている。これら4本のねじ軸34の下部にはスプロケット36が固定されており、これら4つのスプロケット36にはチェーン38が掛け渡されている。このチェーン38を駆動モータ41によって回転させることにより、4本のねじ軸34が同期して回転し、ナット32およびエンジンベース30と共に記録ヘッドユニット20が上下動する。
【0071】
搬送ユニット40は、感圧接着シート100を記録ヘッドユニット20の下方位置に通して搬送するための4本の搬送ベルト42を備えている。搬送ベルト42は、従動ローラ44,45,46、エンコーダローラ47、および駆動ローラ48との間に掛け渡されており、テンショナ49によって張力が与えられている。タイミングベルト43を介して、駆動モータ41によって駆動ローラ48が回転されることにより、搬送ベルト42が矢印Xの搬送方向に周回運動する。
【0072】
ラインプリンタ10には、記録ヘッドユニット20にインクを供給するためのインク供給ユニット50が備えられている。インク供給ユニット50の内部には、各記録ヘッドK1〜K6に供給するためのインクを貯留するサブタンク52a〜52fが備えられている。さらに、インク供給ユニット50の内部には、各サブタンク52a〜52fに補給するためのインクを貯留するインクタンク53a〜53f(図15においては、インクタンク53aのみを示す)等が配置されている。サブタンク52aに貯められたインクは記録ヘッドK1に供給され、サブタンク52bに貯められたインクは記録ヘッドK2に供給される。同様に、サブタンク52c〜52fから記録ヘッドK3〜K6のそれぞれにインクが供給される。チューブ56(図15参照)を通して、インクタンク53aからサブタンク52aにインクが供給される。同様に、インクタンク53b〜53eからサブタンク52b〜52eのそれぞれに対してもチューブを通してインクが供給される。
【0073】
インク供給ユニット50と記録ヘッドユニット20との間には、束ねられたインク供給チューブ60a〜60fとインク回帰チューブ62a〜62fが着脱自在に接続されている。インク供給チューブ60a〜60fは、各サブタンク52a〜52fから各記録ヘッドK1〜K6に供給されるインクの供給路を形成する。インク回帰チューブ62a〜62fは、各記録ヘッドK1〜K6から各サブタンク52a〜52fに回帰されるインクの戻し流路を形成する。また、記録ヘッドユニット20には、各記録ヘッドK1〜K6からのインク吐出状態を良好な状態に維持するための回復ユニット22(図15参照)が組み込まれている。
【0074】
306は、前述した紫外線照射ランプ(UVランプ)であり、インクが付与された感圧接着シート100に対して紫外線を照射可能な位置に備えられている。
【0075】
図13は、記録ヘッドユニット20、搬送ユニット40、およびインク供給ユニット50の要部の斜視図である。
【0076】
記録ヘッドユニット20とインク供給ユニット50は、インク供給チューブ60a〜60fとインク回帰チューブ62a〜62fとにより接続されて一体化されており、以下、このように一体化されたものを「プリントモジュール」ともいう。このプリントモジュールには、図16の制御系が組み込まれている。記録ヘッドユニット20に搭載される記録ヘッド記録ヘッドK1〜K6のそれぞれには、インクを吐出可能な複数の吐出口が矢印Xの搬送方向と交差(本例においては直交)する方向に列状に形成されている。それぞれの吐出口列は、記録画像の幅に相当する長さを有し、矢印Xの搬送方向に沿って並ぶように位置する。
【0077】
画像を記録する際には、感圧接着シート100の搬送に伴って、各記録ヘッドK1〜K6が搬送方向上流側に位置するものの順、つまり記録ヘッドK6,K5,K4,K3,K2,K1の順に黒色のインクを吐出する。インク供給ユニット50は記録ヘッドユニット20から離れて配置されており、それらの間には、前述したようにインク供給チューブ60a〜60fとインク回帰チューブ62a〜62fが接続されている(図14参照)。
【0078】
図15は、記録ヘッドユニット20とインク供給ユニット50とにおけるインク流路の説明図である。図15においては、記録ヘッドK1と、それに対応するサブタンク52aおよびインクタンク35aとの間のインク流路を代表して示す。他の記録ヘッドK2〜K6のインク流路についても同様である。
【0079】
黒色のインクが貯められたインクタンク53aは、インク吸引チューブ56によってサブタンク52aに接続されている。インク吸引チューブ56の途中部分には、インクタンク53aのインクを吸引してサブタンク52aに送り込むための吸引ポンプ58が配置されている。例えば、弁81,85を閉じ、かつ弁82,83,84を開けて、吸引ポンプ58を駆動することにより、図15中左側のインクタンク53aのインクが吸引されてサブタンク52aに送り込まれる。インクタンク53aは、記録動作中にインク切れを起こさないように2セット搭載されている。したがって、一方のインクタンク53aのインクが無くなったときは、弁83,84,85,86を適宜に切り換えることにより、インク吸引チューブ56を他方のインクタンク53aに接続させることができる。弁84,86は、インクタンク53a内に大気圧を導入するための大気圧導入弁である。
【0080】
サブタンク52aの内部は大気連通孔88aに接続されており、弁88を開くことにより、サブタンク52aの内部が外気に連通されて大気圧となる。サブタンク52aには、その内部におけるインクの有無およびインク水位を検知するために、電極51a,51b,51cを備えたインク水位センサ(液面検知センサ)51が取り付けられている。これらの電極51a,51b,51c間の抵抗の変化に基づいてインクの有無を検知し、サブタンク52a内のインク水位を常に一定とするように、吸引ポンプ58および弁が制御されている。サブタンク52aと記録ヘッドK1は、インクの水頭差によって記録ヘッドK1のインク吐出口に最適な負圧を与えるような位置に配置されている。
【0081】
サブタンク52aと記録ヘッドK1には、これらの間においてインクを循環させることができるようにインク供給チューブ60aとインク回帰チューブ62aが接続されている。
【0082】
すなわち、サブタンク52aとインク供給チューブ60aはインク供給ポンプ59を介して接続されており、インク供給ポンプ59を駆動させることにより、サブタンク52a内のインクは加圧されて記録ヘッドK1に供給される。その記録ヘッドK1内のインクは、弁87が開かれることにより、インク回帰チューブ62aを通してサブタンク52aに戻される。また、記録ヘッドK1の下方には回復ユニット22が位置しており、記録ヘッドK1に加圧して供給されたインクは、弁87が閉じられることにより、吐出口から押し出されて回復ユニット22のキャップ内に受けられる。回復ユニット22とサブタンク52aは、インク回収チューブ57とインク吸引チューブ56の一部によって接続されている。したがって、弁82を閉じかつ弁81を開いて、吸引ポンプ58を駆動することにより、回復ユニット22のキャップ内に受けられたインクがサブタンク52aに回収される。
【0083】
次に、ラインプリンタ10を新たに設置したときに、各インクタンク53a等から各記録ヘッドK1〜K6にインクを充填するインクの初期充填作業について説明する。
【0084】
インクの初期充填作業は、ラインプリンタ10が初期の立上状態であると判断されたときに実行される。ラインプリンタ10が初期の立上状態であるときは、サブタンク52a、インク吸引チューブ56、インク供給チューブ60a、インク回帰チューブ62a、記録ヘッドK1には、インクが全く無い。インクの初期充填作業では、サブタンク52a、インク供給チューブ60a、およびインク回帰チューブ62aにインクを充填する作業、または、サブタンク52aのみにインクを充填する作業のいずれかが実行される。
【0085】
サブタンク52a、インク供給チューブ60a、およびインク回帰チューブ62aにインクを充填する作業では、サブタンク52aから記録ヘッドK1へのインクの供給に先立って、インク供給チューブ60aと記録ヘッドK1とを非接続状態とする。そして、この非接触状態において、サブタンク52aとインク供給チューブ60aをメインタンク53aからのインクで満たす。その後、インク供給チューブ60aを記録ヘッドK1に接続して、インク供給チューブ60a内のインクを記録ヘッドK1に供給する。インク吐出口が形成されている記録ヘッドK1の吐出口面は、インク初期充填作業の終了後に、不図示のクリーニングブレードによってワイピングされることにより、その吐出口面に付着したインクが拭き取られる。
【0086】
インク供給チューブ60aと記録ヘッドK1とを非接続状態にして、インク供給チューブ60aをインクで満たすときには、まず、インク供給チューブ60aの一端部60atとインク回帰チューブ62aの一端部62atとを直接的または間接的に接続する。そして、インク供給ポンプ58、59を駆動し、メインタンク53aから、サブタンク52a、インク供給チューブ60a、およびインク回帰チューブ62aを経由させるように、これらの間にてインクを循環させる。これにより、インク供給チューブ60aに存在する空気がインクに置換されて、その内部がインクによって満たされる。その後、インク供給チューブ60aとインク回帰チューブ62aとの接続を解除して、インク供給チューブ60aを記録ヘッドK1に接続し、そのインク供給チューブ60a内のインクを記録ヘッドK1に供給する。そのため、インク供給チューブ60aから記録ヘッドK1に空気が入り込むことはない。
【0087】
したがって、記録ヘッドK1のインク吐出口からから回復ユニット22のキャップ内にインクを押し出す際に、多量の気泡と共にインクが押し出されることはなく、キャップからのインク漏れを防止することができる。また、このようなインクの初期充填作業においては、インクタンク53aからサブタンク52aのみにインクを充填してもよい。この場合には、弁81、87を閉じ、かつ弁82を開いて、吸引ポンプ58を駆動させる。
【0088】
図16は、ラインプリンタ10の制御系を説明するためのブロック構成図であり、この制御系は、前述したようにプリントモジュールに内蔵されている。
【0089】
ホストPC(ホスト装置)11から図16の制御系に送信される記録データやコマンドは、インターフェイスコントローラ102を介してCPU101に受信される。CPU101は、ラインプリンタ10における記録データの受信、および記録動作等の全般の制御を司る演算処理装置である。CPU101は、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描画する。イメージメモリ106は、画像展開部として使用される。
【0090】
記録動作前には、まず、入出力ポート114とモータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各記録ヘッドK1〜K6を回復ユニット22のキャップから離して、記録位置(画像形成位置)に移動させる。その後、搬送されてくる感圧接着シート100に対してインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するために、ラインプリンタ10の定位置に備わる先端検知センサ(図示せず)によって、感圧接着シート100の先端位置を検出する。その後、CPU101は、エンコーダローラ47(図12参照)からの出力信号に基づき、感圧接着シート100の搬送に同期して、イメージメモリ106から対応する色の記録データを順次に読み出す。そして、この読み出された記録データは、記録ヘッド制御回路112を経由して、対応する各記録ヘッドK1〜K6に転送される。
【0091】
CPU101の動作は、プログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム、およびテーブルなどが記憶されている。ワークRAM108は、作業用のメモリとして使用される。各記録ヘッドK1〜K6のクリーニング動作や回復動作時に、CPU101は、入出力ポート114およびモータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動させる。これにより、各記録ヘッドK1〜K6内のインクを加圧して吐出口は排出させたり、吐出口からインクを吸引排出させて、各記録ヘッドK1〜K6のインクの吐出状態の良好に維持することができる。
【0092】
感圧接着シート100に対しては、その搬送に同期した記録水平同期信号に基づいて画像が記録される。その際、1つの画像を6つの記録ヘッドK1〜K6の協働によって記録するように、その画像の記録データを分割して、6つの記録ヘッドK1〜K6のそれぞれに割り当てる。すなわち、記録データをラスター方向のデータに分割(ラスター分割)して、そのデータを記録ヘッドK1〜K6に割り当てる。例えば、記録ヘッドK1に割り当てられた1ラスター分の記録データは、その記録データを記録すべき感圧接着シート100の位置が記録ヘッドK1と対向するタイミングに同期して、イメージメモリ106から記録ヘッド制御回路112に送信される。そして、その1ラスター分の記録データに基づいて、記録ヘッドK1がインクを吐出する。他の記録ヘッドK2〜K6についても同様である。
【0093】
本例の場合は、同じインクを吐出する6つの記録ヘッドK1〜K6をそなえてい。そのため、記録データを1ラスター毎あるいは複数ラスター毎に各記録ヘッドK1〜K6に割り当てることにより、1つの記録ヘッドを用いる場合に比して、理論上、最大6倍の記録速度を達成することができる。記録ヘッドとして、異なるインクを吐出可能な複数の記録ヘッドを備えてもよい。この場合には、同じインクを吐出する複数の記録ヘッドに関して、上述した場合と同様に、記録データをラスター分割して割り当てることができる。
【0094】
(カーボンブラックの水性分散体の作成例)
次に、ブラックインクの具体的な作成例について説明する。以下において、「部」および「%」とあるものは全て質量基準である。
【0095】
まず、スチレン/アクリル酸/ブチルアクリレート共重合体(酸価150,重量平均分子量1100)の水酸化カリウム溶液(中和率110%,樹脂固形分15部)の80部をジエチレングリコールの7部により溶解する。この溶液にカーボンブラック15部を添加した後、サンドミルを用いて分散して、カーボンブラックの水性分散体を作成した。この水性分散体は、固形分濃度が14.5%,平均粒子径が110nmであった。その平均粒子径は、動的光散乱法(レーザー粒径解析システムPARIII,大塚電子株式会社)を用いて測定した。
【0096】
次に、上記の水性分散体を用いて作成した水性インクの組成の具体例(実施例1,2および比較例1,2)について説明する。さらに、それらの水性インクを用いた場合の画像の記録方法、紫外線の照射条件、感圧接着層の凸部の露出程度の評価結果、画像硬化の評価結果、およびインクオフセットの評価結果について説明する。
【0097】
(水性インクの組成の具体例)
実施例1
・上記カーボンブラック水性分散体(固形分14.5%) 30.0部
・水溶性紫外線硬化樹脂モノマー
(メタクリル酸ヒドロキシプロピル) 5.0部
・水溶性紫外線硬化型樹脂オリゴマー
(ペンタエリスリトールジアクリレート系オリゴマー) 7.0部
・光重合開始剤
(イルガキュア2925、チバスペシャルティケミカルズ)4.0部
・アセチレノールE100(川研ファインケミカル(株))1.0部
・イオン交換水 残分
上記組成分を混合して2時間攪拌した後、3μmのメンブレンフィルターにより不純物を除去して、インクを作成した。
【0098】
実施例2
実施例1のアセチレノールE100の添加量を3.0部とした以外は、実施例1と同様にしてインクを作成した。
【0099】
比較例1
作成例1のアセチレノールを削除した以外は、実施例1と同様にしてインクを作成した。
【0100】
比較例2
実施例1の水溶性紫外線硬化モノマー、水溶性紫外線硬化オリゴマー、および光重合開始剤に代えて、エチレングリコールモノブチルエーテル5.0部とグリセリン5.0部を添加した以外は、実施例1と同様にしてインクを作成した。
【0101】
このような作成例1,2および比較例1,2のインクの表面張力を、自動表面張力計(白金プレート)を用いたプレート法により25℃で測定した。それらの測定の結果は、下表1のとおりであった。
【0102】
【表1】
【0103】
(画像の記録方法)
キヤノン(株)から上市されるBJ S600を用いて、感圧接着記録シートPOSTEX(トッパン・フォームズ(株)社製)に、上記実施例1,2および比較例1,2のインクにより、100%のデューティでベタ画像を記録した。その後、以下の条件で紫外線を照射した。比較例2のインクは紫外線硬化機能をもたないため、そのインクによる記録画像には紫外線を照射しなかった。
【0104】
(紫外線の照射条件)
照射装置:F300S(FUSION UV SYSTEMS社製)
・電源ユニットP300M,発光体ユニット1300M
ランプ:FUSION UVモデルF305紫外線ランプ
(無電極ランプバルブ“D”使用,ランプ電力120W/cm)
照射時間:1秒
照射タイミング:画像形成から10秒後
【0105】
(感圧接着層の凸部の露出程度の評価)
実施例1,2および比較例1,2のインクを用いて、上記の記録方法により画像を記録し、その画像に対して、上記の照射条件下における紫外線の照射前と照射後に、画像表面における感圧接着層の凸部の露出程度を目視により評価した。下記のように、紫外線照射前の評価は3段階(○,△,×)とし、紫外線照射後の評価は2段階(○,×)とした。比較例2のインクによる記録画像に関しては、紫外線を照射せずに同様の評価を行なった。それらの評価結果は、下表2のとおりであった。
<紫外線照射前>
○…目視で明らかに凸部が露出していることが確認できる。
△…凸部をインクが覆っているが、画像の盛り上がりは見られない。
×…凸部をインクが覆っており、画像の盛り上がりが視認できる。
<紫外線照射後>
○…目視で明らかに凸部が露出していることが確認できる。
×…凸部をインクが覆っており,画像の盛り上がりが視認できる。
【0106】
(画像硬化の評価)
実施例1,2および比較例1,2のインクを用い、上記の記録方法により画像を記録し、その画像に上記の照射条件下において紫外線を照射し、その照射直後、および照射してから5秒後に画像を指で触り、画像の乾燥状態(タック感、指へのインク付着)を確認した。このような画像硬化の評価は、下記のように3段階(○,△,×)とした。比較例2のインクによる記録画像に関しては、紫外線を照射せずに同様の評価を行なった。それらの評価結果は、下表2のとおりであった。
○…紫外線照射直後に、タック感ナシ。インクの指への付着ナシ。
△…紫外線照射5秒後に、わずかなタック感はあるが、感圧接着シートは指に接着しない。インクの指への付着ナシ。
×…紫外線照射5秒後に、タック感が強く、感圧接着シートは指に接着する。インクが指に付着する。または未乾燥状態。
【0107】
(インクオフセットの評価)
上記の記録方法により記録した画像に、上記の照射条件下において紫外線を照射した感圧接着シートの感圧接着層と、画像が記録されていない感圧接着シートの感圧接着層と、を対接させ、それらを圧着した後に剥離して、画像の転写(インクオフセット)の発生状況を目視により評価した。このようなインクオフセットの評価は、下記のように3段階(○,△,×)とした。それらの評価結果は、下表2のとおりであった。比較例2のインクにより記録した画像に関しては、画像の記録後20分以上室内(25℃RHにて)放置して乾燥させたが、画像が乾かずにべたついていたため、インクオフセットの評価はできなかった。
○…対接した感圧接着層面に画像の転写が見られない。
△…対接した感圧接着層面が薄く黒ずみ、少し画像が転写したと判断される。
×…対接した感圧接着層面にはっきりと、ベタ画像の転写が認められる。
【0108】
【表2】
【0109】
(他の実施形態)
本発明は、上述したように、微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像を記録する際に、そのインクの付与量を特定する。すなわち、感圧接着層に付与した液状のインクが硬化したときに、その硬化したインクから感圧接着層の凸部が露出する程度に、液状のインクを付与して画像を記録する。
【0110】
本発明は、このような条件下において液状のインクを付与して、硬化したインクから感圧接着層の凸部を露出させることができればよく、そのインクの種類や硬化の仕方などは適宜選定することができる。例えば、水性または油性のインクを用いることができ、また、紫外線以外のエネルギー線や熱などを用いてインクを硬化させることもできる。また、インク付与手段は、必ずしもインクジェット記録ヘッドを用いる構成に特定されず、種々の付与方式を採用することができる。また、インクジェット記録ヘッドとしては、電気熱変換体(ヒーター)やピエゾ素子などを用いてインクを吐出する種々の方式のものを用いることができる。電気熱変換体を用いた場合には、その発熱によってインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用してインク吐出口からインクを吐出することができる。
【0111】
また、画像の記録方式は、記録ヘッドの主走査方向の記録走査と、記録媒体としての感圧接着シートを主走査方向と交差する方向に搬送する搬送動作と、を繰り返すことによって画像を記録する、いわゆるシリアルスキャン方式であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】(a)は、本発明の感圧接着シートの構成例を説明するための断面図、(b)は、その平面図である。
【図2】(a)は、図1の感圧接着シートに画像が記録された記録物の断面図、(b)は、その記録物の平面図である。
【図3】(a)から(d)は、図1の感圧接着シートに画像を記録する工程を説明するための断面図である。
【図4】(a)から(d)は、図1の感圧接着シートに画像を記録する工程を説明するための平面図である。
【図5】(a)から(d)は、図1の感圧接着シート同士の接着工程および剥離工程を説明するための断面図である。
【図6】感圧接着シートに画像が記録された記録物の他の構成例を説明するための断面図である。
【図7】感圧接着シートに画像が記録された記録物のさらに他の構成例を説明するための断面図である。
【図8】感圧接着シートに画像が記録された記録物のさらに他の構成例を説明するための断面図である。
【図9】感圧接着シートに画像が記録された記録物のさらに他の構成例を説明するための断面図である。
【図10】(a),(b)は、図9の記録物の作成工程を説明するための断面図である。
【図11】(a),(b)は、図9の記録物の作成工程を説明するための平面図である。
【図12】本発明の記録装置の構成例を説明するための概略側面図である。
【図13】図12の記録装置の要部の斜視図である。
【図14】図12の記録装置に組み込まれるプリントモジュールの斜視図である。
【図15】図14のプリントモジュールにおけるインク流路の説明図である。
【図16】図12の記録装置の制御系を説明するためのブロック構成図である。
【符号の説明】
【0113】
100 感圧接着シート
101 凸部
102 凹部
103 基材
104 感圧接着層
302 記録ヘッド
303 インク
303A 色材
306 紫外線照射ランプ
401 加圧ローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像を記録する記録方法において、
前記感圧接着層に付与した前記液状のインクが硬化したときに、当該硬化したインクから前記感圧接着層の凸部が露出する程度に、前記液状のインクを付与して画像を記録することを特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記液状のインクは、活性エネルギー線により硬化する活性エネルギー線硬化型のインクであり、
前記感圧接着層に付与された後の前記液状のインクに、前記活性エネルギー線を照射させる工程を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記活性エネルギー線は紫外線であることを特徴とする請求項2に記載の記録方法。
【請求項4】
前記感圧接着層に付与された前記液状のインクは、硬化することにより厚さが10%〜70%減少することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録方法。
【請求項5】
前記感圧接着層の表面のカットオフ値0.8mmにおける十点平均粗さは、画像記録前の十点平均粗さ(Rz)が30μm〜100μmの範囲にあり、かつRzと画像記録後の十点平均粗さ(Rz′)の比率Rz′/Rzが0.3〜0.9の範囲にあること特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録方法。
【請求項6】
前記液状のインクは、水性インクであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の記録方法。
【請求項7】
前記液状のインクは、前記感圧接着層に吸収されないインクであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の記録方法。
【請求項8】
前記感圧接着層同士を重ねて加圧することにより、当該感圧接着層同士を剥離可能に接着することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の記録方法。
【請求項9】
前記液状のインクは、インクジェット記録ヘッドを用いて付与することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の記録方法。
【請求項10】
前記感圧接着層が形成されていない前記感圧接着シートの面、または、前記感圧接着層が形成される前の前記感圧接着シートの面の少なくとも一方に、画像を記録する工程を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の記録方法。
【請求項11】
前記液状のインクの付与量に応じて、前記感圧接着層の凸部が前記硬化したインクから露出する程度を調整することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の記録方法。
【請求項12】
微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像を記録する記録装置において、
前記感圧接着層に付与した前記液状のインクが硬化したときに、当該硬化したインクから前記感圧接着層の凸部が露出する程度に、前記液状のインクを付与するインク付与手段を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項13】
前記液状のインクは、活性エネルギー線により硬化する活性エネルギー線硬化型のインクであり、
前記感圧接着層に付与された後の前記液状のインクに、前記活性エネルギー線を照射させる手段を備える
ことを特徴とする請求項12に記載の記録装置。
【請求項14】
インク付与手段は、インクジェット記録ヘッドを用いて前記液状のインクを付与することを特徴とする請求項12または13に記載の記録装置。
【請求項15】
微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像が記録された記録物であって、
液状のインクが硬化した状態において、当該硬化したインクから前記感圧接着層の凸部が露出していることを特徴とする記録物。
【請求項16】
前記感圧接着層同士が剥離可能に接着されていることを特徴とする請求項15に記載の記録物。
【請求項1】
微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像を記録する記録方法において、
前記感圧接着層に付与した前記液状のインクが硬化したときに、当該硬化したインクから前記感圧接着層の凸部が露出する程度に、前記液状のインクを付与して画像を記録することを特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記液状のインクは、活性エネルギー線により硬化する活性エネルギー線硬化型のインクであり、
前記感圧接着層に付与された後の前記液状のインクに、前記活性エネルギー線を照射させる工程を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記活性エネルギー線は紫外線であることを特徴とする請求項2に記載の記録方法。
【請求項4】
前記感圧接着層に付与された前記液状のインクは、硬化することにより厚さが10%〜70%減少することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録方法。
【請求項5】
前記感圧接着層の表面のカットオフ値0.8mmにおける十点平均粗さは、画像記録前の十点平均粗さ(Rz)が30μm〜100μmの範囲にあり、かつRzと画像記録後の十点平均粗さ(Rz′)の比率Rz′/Rzが0.3〜0.9の範囲にあること特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録方法。
【請求項6】
前記液状のインクは、水性インクであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の記録方法。
【請求項7】
前記液状のインクは、前記感圧接着層に吸収されないインクであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の記録方法。
【請求項8】
前記感圧接着層同士を重ねて加圧することにより、当該感圧接着層同士を剥離可能に接着することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の記録方法。
【請求項9】
前記液状のインクは、インクジェット記録ヘッドを用いて付与することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の記録方法。
【請求項10】
前記感圧接着層が形成されていない前記感圧接着シートの面、または、前記感圧接着層が形成される前の前記感圧接着シートの面の少なくとも一方に、画像を記録する工程を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の記録方法。
【請求項11】
前記液状のインクの付与量に応じて、前記感圧接着層の凸部が前記硬化したインクから露出する程度を調整することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の記録方法。
【請求項12】
微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像を記録する記録装置において、
前記感圧接着層に付与した前記液状のインクが硬化したときに、当該硬化したインクから前記感圧接着層の凸部が露出する程度に、前記液状のインクを付与するインク付与手段を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項13】
前記液状のインクは、活性エネルギー線により硬化する活性エネルギー線硬化型のインクであり、
前記感圧接着層に付与された後の前記液状のインクに、前記活性エネルギー線を照射させる手段を備える
ことを特徴とする請求項12に記載の記録装置。
【請求項14】
インク付与手段は、インクジェット記録ヘッドを用いて前記液状のインクを付与することを特徴とする請求項12または13に記載の記録装置。
【請求項15】
微細な凹部と凸部が形成された感圧接着シートの感圧接着層に、液状のインクを付与して画像が記録された記録物であって、
液状のインクが硬化した状態において、当該硬化したインクから前記感圧接着層の凸部が露出していることを特徴とする記録物。
【請求項16】
前記感圧接着層同士が剥離可能に接着されていることを特徴とする請求項15に記載の記録物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−279612(P2008−279612A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123583(P2007−123583)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】
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