説明

記録方法

【課題】時分割駆動順序により、特に網点方式の高デューティで更に極小液滴で印字した場合、ドット塊の濃度ムラを低減させることができ、濃度安定性の高い画像を形成することができる記録方法を提供すること。
【解決手段】略列状の記録素子列を有し、記録素子列方向に略直行する方向に被記録媒体と相対移動させつつ、記録素子列よりインク滴を吐出させて画像を形成するインクジェット記録方法で、画像を形成する単位画像要素の少なくとも一部にドットの集中塊(ドット集中型画像要素)による擬似中間調記録を行う画像形成方法として、記録素子の吐出時分割駆動順序を設定する工程と、吐出順序はドット集中型画像要素(クラスター)の中心線側を先行させ、クラスター端部をそれより後続の吐出順序に設定する工程を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略列状の記録素子列を有し、記録素子列方向に略直行する方向に被記録媒体と相対移動させつつ、記録素子列よりインク滴を吐出させて画像を形成する記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙、プラスチックシート等の記録媒体に対して記録を行う記録装置は種々の記録方式、例えばワイヤドット方式、感熱式、熱転写方式又はインクジェット方式による記録ヘッドを搭載可能な形態として提案されている。そのような記録装置の中で吐出口からインクを吐出して記録媒体上に記録を行うインクジェット方式の記録装置は、低騒音なノンインパクト方式であり、高密度且つ高速な記録を行うことが可能である。
【0003】
そして、一層の高速度、高精細が要求される現在、インクジェット記録装置は、インクを吐出するための吐出口が多数配列されたものが一般的になってきた。これらのインクジェット記録ヘッドの吐出方式には、吐出口内に設けられた電気熱変換素子等の発熱体(以下、「ノズルヒータ」とも言う)を駆動したときに生じるインクの急激な発泡をインク吐出エネルギーとして利用するものや、ノズルに備えられたピエゾ素子の駆動に伴う収縮現象を利用するもの等がある。
【0004】
何れの方式を採用したものにあっても、記録動作に際し記録素子の全てが同時駆動され得るようにすると、近傍ノズル相互のクロストーク等により吐出が不安定になるだけでなく、大電流によってヘッド近傍では共通電源ラインのロスに起因する電圧ドロップが増加するため、同時駆動ノズル数が大きくなればなるほど、ノズルヒータに印加される駆動電圧の落ち込みが増え、記録安定性を損なう。
【0005】
又、瞬時的な大電流に耐え得る電源を必要とする等の不都合が生じる。このため、記録ヘッド内では通常、全ノズルを数ノズルから数十ノズル毎の複数ブロックに分割し、各ブロック内のノズルを順次時分割駆動するようになして、前述した問題の発生を抑制するようにしている。
【0006】
しかしながら、上述した時分割駆動方式を採用して記録を行う場合、以下のような問題が発生する。
【0007】
即ち、記録媒体上に直線を形成する際に、本来全ノズルが同時にインクを吐出するべきところ、各ブロックのノズルが所定時間をおいて順にインクを吐出するため、形成される画像は真っ直ぐな線にはならず、ギザギザな線になってしまう。
【0008】
取り分け記録ヘッドが記録位置に静止し記録媒体が記録ヘッドの下部を高速に通過しながら記録する所謂ラインプリンタで且つ高品位の画質が要求されるような場合、上記問題が顕在化し易い。
【0009】
又、この吐出方法を用いると、画質が記録ヘッドの特性に起因するといった点が挙げられ、濃度ムラやスジといった記録装置特有の画質劣化が発生し易くなり、問題になっている。
【0010】
一方、高画質プリントを実現する擬似中間調処理として単位マトリクス(M×Nの画素で構成される画像の制御単位)を網点で構成する技術が印刷業界では公知である。又、電子写真技術においても、特にカラーの色再現性を向上させる手段として記録に用いるマトリクス中心から濃度が高くなるに連れてドットを太らせていくドット集中型と呼ばれる擬似中間調処理が知られている(特許文献1)。インクジェット技術においても、網点又はドット集中型単位マトリクスで擬似中間調制御を行うことを利用して画質を向上させる技術としても複数挙げられている。
【0011】
ここで、上述した単位マトリクスによる擬似中間調処理を時分割駆動方式により記録を行う場合を模式的に示す。
【0012】
図8はインクジェット記録ヘッドのノズル列、各ノズルの駆動信号及び各ノズルから吐出している模式図である。
【0013】
図8において、インクジェット記録ヘッドのノズル列500は、例えば32個のノズルから成り、これらのノズルは図中上から8個を安易として、第1セクションから第4セクションまで4つのセクションに分けられている。
【0014】
更に、これらの各セクション内の8個の各ノズルは、8つの駆動ブロックの1つに属しており、記録の際にはブロック毎に時分割で駆動される。即ち、同じブロックのノズルは同時に駆動される。
【0015】
図示した例では、ノズル列500の0番目、8番目、16番目、24番目の4つのノズルが第1駆動ブロック、1番目、9番目、17番目、25番目のノズルが第8駆動ブロックというように、周期的に各駆動ブロックに割り当てられている。そして、第1駆動ブロックから第8駆動ブロックまで昇順に、図2(b)に示すパルス状の駆動信号300によって順次駆動され、各ノズルから駆動信号に対応して図2(c)に示すように、ドット100が紙面上に形成される。
【0016】
現在記録装置の画質劣化の問題として気流の影響があると考えられている。気流とは、プリントヘッドが走査することによって発生するものや、これは図5に示すようにインク自身によって発生するものが考えられているが、その中でもインク自身による気流の影響が画質劣化に強く影響していると考えられている。この気流はインクが着弾する際、特に高デューティで印字を行った場合に空気の乱れを生じ、後続のインクを引き寄せ、後続のインクが理想着弾位置に着弾されないといった問題が発生させている。これは巨視的に黒スジ、白スジ及び濃度ムラと認識され易い。
【0017】
このような問題を無くすために、できるだけ後続のインクに気流の影響を少なくするため、記録ヘッドの速度を遅くするといった手段が考えられているが、それは現在の高速印字と相反するためそれを解決する手段は殆ど無いと考えても良い。
【0018】
【特許文献1】特許第2553045号公報
【特許文献2】特開平07−232434号公報
【特許文献3】特開平11−005298号公報
【特許文献4】特開2000−118007号公報
【特許文献5】特開2000−198237号公報
【特許文献6】特開2000−350026号公報
【特許文献7】特開2002−029097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
以上に述べたインクジェット記録装置で、網点(ドット集中型画像要素)による階調制御を行い、その中でも特にプリント画像が高デューティで、少数回のプリントヘッドと被プリント材との相対移動(走査)でプリントを完成する場合に、ノズルから吐出され被プリント材に着弾する位置が図7(a)のような理想的な目標位置とのズレが生じたとき、例えば図7(b)のように外側のノズルから吐出されたインクが理想位置よりも外側にヨレてしまう癖があるとき等に濃度の非連続を有するアーティファクトが発生し易く、巨視的には濃度ムラとして視覚的に検知され易くなり、ストリーキング、即ち白スジ或は黒スジが認知され画質を劣化させる場合があった。
【0020】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、時分割駆動順序により、特に網点方式の高デューティで更に極小液滴で印字した場合、ドット塊の濃度ムラを低減させることができ、濃度安定性の高い画像を形成することができる記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
一般的なインクジェット記録装置で、高デューティであるプリント画像を印字した場合、図5のように1つのヘッドから吐出されたインクが、隣接したヘッドから吐出されたインクを引き込ませるような気流の乱れを発生させている。それだけではなく、図6のように先に吐出したインク滴が吐出時に分割して発生するサテライトが隣接したヘッドから吐出されたインクの気流によって引き込まれている。
【0022】
そこで、網点(ドット集中型画像要素)による階調制御を行う際、特に高デューティである場合に、記録媒体のサイズを読み取り、その中心から吐出するような時分割駆動順序にすることによって、着弾位置がノズル列より外側にヨレる際にも、図7(c)に示してあるようにそのインクが隣接したインクの気流に引き込まれ、図7(d)のようにドット塊の濃度ムラが低減することができ、記録品質が向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、時分割駆動順序により、特に網点方式の高デューティで更に極小液滴で印字した場合、ドット塊の濃度ムラを低減させることができ、濃度安定性の高い画像が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は本発明の各実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す平面図である。
【0026】
キャリッジ20上には複数のインクジェット記録ヘッド(以下、単に「記録ヘッド」と言う)21−1〜21−4が搭載されており、各インクジェット記録ヘッド21にはインクを吐出するためのインク吐出口が複数配列されている。尚、21−1,21−2,21−3,21−4はそれぞれブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の各インクを吐出するための記録ヘッドである。この記録ヘッド21のインク吐出口の内部(液路)には、インク吐出用の熱エネルギーを発生する発熱素子(電気熱変換体)が設けられている。又、インクカートリッジ22は、各インクジェット記録ヘッド21−1〜21−4及びそれらにインクと供給するインクタンク22−1〜22−4とから構成されている。
【0027】
インクジェット記録ヘッド21への制御信号等は、フレキシブルケーブル23を介して送られる。普通紙や高品位専用紙、OHPシート、光沢紙、光沢フィルム、ハガキ等の記録媒体24は、不図示の搬送ローラを経て相対向する一対の排紙ローラ25に挟持され、搬送モータ26の駆動に伴い矢印方向(副走査方向)に送られる。ガイドシャフト27及びリニアエンコーダ28によりキャリッジ20が移動可能に支持されている。
【0028】
キャリッジ20は、駆動ベルト29を介してキャリッジモータ30の駆動により前述ガイドシャフト27に沿って副走査方向と交差(ここでは直交)する主走査方向に往復運動するようになっている。そして、往復移動時には、リニアエンコーダ28からパルス信号が出力され、そのパルス信号をカウントすることにより、キャリッジ20の位置を検出し得るようになっている。
【0029】
又、記録ヘッド21の発熱素子は、キャリッジ20の移動に伴い、記録信号に基づいて駆動され、記録媒体上にインク滴を飛翔、付着させることで画像を形成するようになっている。
【0030】
記録媒体に対する記録動作が行われる主走査方向における領域外に設定されたキャリッジ20のホームポジションには、キャップ部31を持つ回復ユニット32が設置されている。記録を行わないときには、キャリッジ20を前述のホームポジションに移動させてキャップ部31の各キャップ31−1〜31−4によって対応する各インクジェット記録ヘッド21のインク吐出口面を密閉し、インク溶剤の蒸発に起因するインクの増粘、固着或は塵埃等の異物の付着による目詰まりを防止する。
【0031】
又、上記キャップ部31のキャッピング機能は記録頻度の低いインク吐出口の吐出不良や目詰まりを解消するために、インク吐出口から離れた状態にあるキャップ部31へインクを吐出させる空吐出に利用され、キャップ部31した状態で不図示のポンプを作動させ、インク吐出口からインクを吸引し、吐出不良を起こした吐出口の吐出機能の回復に利用される。33はインク受け部で、各インクジェット記録ヘッド21−1〜21−4が記録直前にインク受け部33の上部を通過する時に、インク受け部33に向かって予備吐出を行う。又、キャップ部31との隣接位置に不図示の拭き取り部材(ブレード等)を配置することにより、記録ヘッド21のインク吐出口形成面をクリーニングすることが可能である。
【0032】
図2は前述した記録ヘッド21の構成を拡大して示す説明図である。
【0033】
図2において、記録ヘッドは記録方向に概略垂直な方向に多数のインク吐出ノズルnを有している。この図では、インク吐出ノズルは1つの記録ヘッドにおいて2列で構成している例を示しているが、1列でも数列でも良く、又、直線性をもって並ぶ必要もない。又、図2に示すように隣接するノズルとの副走査方向における間隔W1を記録ヘッドの解像度、ノズルピッチ、ノズルの密度と呼ぶこととする。
【0034】
又、この記録ヘッドは、図の矢印方向(主走査方向)へ記録ヘッドを移動させながらインクを吐出させることで、ノズル列の幅Wに相当する記録が行えるように構成されており、その記録動作(インクの吐出動作)は、記録ヘッドの往動、復動の何れか一方又は双方で行うようにすることが可能である。
【0035】
更に、記録ヘッドは、記録に用いるインク色の数と同数個用意する。例えば、シアン、マゼンタ、イエローの3色のインクを用いてフルカラー記録を行う場合には、3個の記録ヘッドを用意し、ブラックインクのみでモノクロ記録を行う場合には、1個の記録ヘッドを用意すれば良い。又、濃淡インクを利用した記録の場合には、濃シアン、淡シアン、濃マゼンタ、淡マゼンタ、濃ブラック、淡ブラック、濃イエロー、淡イエロー等のそれぞれに応じて記録ヘッドを用意すれば良く、更に特色インクを吐出する記録ヘッドを用いることも可能である。
【0036】
尚、本発明に適用可能なインクジェット記録方式は、発熱素子(ヒータ)を使用したバブルジェット方式に限られるものではなく、例えば、インク滴を連続噴射し粒子化するコンティニュアス型の場合には荷電制御型、発散制御型等であっても良い。又、必要に応じてインク滴を吐出するオンデマンド型の場合には、ピエゾ振動素子の機械的振動によりオリフィスからインク滴を吐出する圧力制御方式等も適用可能である。
【0037】
図3は本発明の各実施の形態におけるインクジェット記録装置の制御系の構成一例を示すブロック図である。
図3において、1はスキャナやデジタルカメラ等の画像入力機器からの多値画像データやパーソナルコンピュータのハードディスク等に保存されている多値画像データを入力する画像データ入力部、2は各種パラメータの設定及び記録開始を指示する各種キーを備えている操作部、3は記憶媒体中の各種プログラムに従って後述の種々の演算処理や制御動作を司る制御手段としてのCPUである。
【0038】
4は本記録装置を制御するための制御プログラムやエラー処理プログラムを格納している記憶媒体である。本実施の形態における記録動作は全てこれらプログラムによって実行される。プログラムを格納する記録媒体4としては、ROM、FD、CD−ROM、HD、メモリカード、光磁気ディスク等を用いることができる。5は記憶媒体4中の各種プログラムのワークエリア、エラー処理時の一時待避エリア及び画像処理時のワークエリアとして用いるRAMである。又、RAM5は、記録媒体4の中の各種テーブルをコピーした後、そのテーブルの内容を変更し、その変更したテーブルを参照しながら画像処理を進めることも可能である。
【0039】
6は画像データを処理する画像データ処理部であり、入力された多値画像データをN値の画像データに各画素毎に量子化し、その量子化された各画素が示す階調値“T”に対応する吐出パターンデータを作成する。例えば、8bit(256階調)で表現される多値画像データが画像入力部1に入力され場合、画像データ処理部6においては出力する画像データの階調値を25(=24+1)値に変換する必要がある。
【0040】
尚、ここでは入力階調画像データのT値化処理には多値誤差拡散法を用いたが、T値化所を行う画像処理法としては、多値誤差拡散法に限らず平均濃度保存法、ディザマトリックス法等、任意の中間調処理方法を用いることも可能である。
【0041】
又、画像の濃度情報に基づいて前述のT値化処理を全ての画素数分繰り返すことにより、それぞれのインクノズルに対する各画素毎の吐出、不吐出の2値の駆動信号が形成される。尚、本発明におけるノズル情報作成手段、予測手段及び補正情報作成手段等は、主として、前記画像処理部6とCPU3とによって構成される。又、PC等において処理されるプリンタドライバーで制御することも可能である。
【0042】
7は画像データ処理部6で作成された吐出パターンに基づいてインクを吐出し、記録媒体上にドット画像を形成する記録部であり、インクカートリッジ22及びキャリッジ20等から成る。8は本装置内のアドレス信号、データ、制御信号等を伝送するバスラインである。
【0043】
次に、本発明の特徴的部分である単位画素マトリックス上におけるプリントヘッドの吐出特性についてと実際の印字について説明する。
【0044】
図2は本発明を説明するノズル群の一形態であり、ノズル列は平均2plのインク液滴を吐出するノズルで構成される時の一例である。ここでは、6色分のノズル列が配置された様子を示している。このノズル列の配置は図に示したように3色分をノズルピッチ分ずらして配置し、C,M,Y,Y,M,Cの順で並べる3色ヘッドとして用いても構わない。
【0045】
次に、プリントデータの作成について説明する。
【0046】
本発明のプリントヘッドを用いたプリントデータは、通常のインクジェットプリンタで用いられている手法を利用することができる。本実施の形態では、入力画像を各色のヘッドに対応するよう色分解し、次に、色分解されたグレー画像をドット集中型の組織的ディザにて2値化して各色のプリントヘッドでプリントすべきプリントデータを用意した。組織的ディザによる2値化を上記グレー画像に直接行わずに、グレー画像を誤差拡散やディザにより一旦多値化(例えば、17値化)し、多値データを(例えば、4×4)の単位マトリックスに展開することでドット集中型の吐出非吐出データとしても良い。又、ここでは簡単のため記録に用いるインク液滴は、同一の大きさのドットによる記録で画像形成するものとして記述するが、ドットの大きさは、複数サイズを用いてドット集中型のディザを構成しても良い。
【0047】
ここでは、ドット集中型のディザは一般に用いられるBayerタイプで説明を行うが、任意に工夫を施したドットのファトニングを行っても構わない。
【0048】
上記のように用意されたドット集中型の単位マトリックスパターンの一例を図7に示す。このうち例えば図7(a)のマトリックスを被記録媒体上に記録すると、記録に用いるノズルの着弾精度や吐出して着弾したドット径のばらつき、或は吐出したインク滴が吐出時に分割してしまい、発生するサテライト等の着弾による影響から所望の形状が再現されないことや従来の時分割駆動順序では先行液滴による気流の影響により図7(b)のようにドット集中型画像要素が形成されてしまうことがあった。この図の場合ノズル2番が上方向に着弾している。
【0049】
そこで、本発明では、理想的なドット集中型画像要素の特徴である画素要素の重心位置が中心にくるように時分割駆動順序を変更することとする。この際、変更は先行液滴の気流を利用することによりノズルの着弾精度等が向上する。例えば、図7(b)のように、6番が上方向に着弾するならば、図8の時分割駆動順序を図9及び図10のように構成することで、結果として画像要素は図7(c)のように外側の液滴が内側にヨレ、結果として図7(d)のような良好な画像要素として記録することができる。
【0050】
次に、本実施の形態における記録ヘッドの駆動方法を詳細に説明する。ここでは、図8のような駆動ブロック数が8で、セクションが4つの構成、即ち32ノズル構成の記録ヘッドを例に挙げて従来例と比較して説明する。
【0051】
従来例の記録ヘッドのノズル構成は、上記で説明した図8のような構成であり、ノズル番号と駆動ブロックとは、以下の表1に示すように対応している。
【0052】
【表1】

ここでブロック番号は、1つのイベントの中で駆動される順番を表している。即ち、0, 1, 2,・・・, 7の順に駆動される。この32個のノズルを有する記録ヘッドを使用してドット集中型画像を印字する。
【0053】
更に、これら各セクション内の8個の各ノズルは、8つの駆動ブロックの1つに属しており、記録の際にはブロック毎に時分割駆動される。即ち、同じブロックのノズルは同時に駆動される。
【0054】
この従来例では、例えばラスタ1に使われるノズルの着弾精度特性が悪い場合、理想位置に着弾せずに巨視的には濃度ムラとして検知され易く、画質の劣化に繋がっていた。
【0055】
本発明では、表2又は図9のように理想的なドット集中型画像要素の特徴である画像要素の重心位置を検知し、その点から時分割駆動させる構成となっている。このようにすると、図5のように先に吐出されたインクの気流によって後に吐出された隣接したインクが引き寄せられ、ラスタ1のノズルの着弾精度が悪いときにも、理想位置に限りなく近く着弾する。それだけではなく、図6のように先に吐出したインク滴が吐出時に分割してしまい、発生するサテライトが隣接したヘッドから吐出されたインクの気流によって引き寄せられている。これらの現象をうまく利用するために本発明では、時分割駆動の順序を重心位置から広げるような構成にしている。この駆動順序にすると、全てのインク液滴が内側に気流を発生し、濃度ムラの少ないドット塊形状が形成され、濃度安定性の高い画像が得られる。
【0056】
【表1】

このとき、図10に示してあるように、本発明は図11のようなドット集中型の高デューティの場合に適用され、上のブロックのノズル7から吐出されたインクが上若しくは下のブロックどちらにも引き寄せられる場合も考えられるが、高デューティな画像のため、それは殆ど影響がないと考えても良く、従来例と比較しても格段に濃度ムラを低減し、画質が向上させている。
【0057】
次に、表3又は図10のような時分割駆動をさせる印字方法を提案する。この場合もドット集中型画像要素の特徴である画像要素の重心位置を検知し、その点から時分割駆動をさせているが、表2又は図9の時分割駆動とはノズル7から吐出されたインクが上下のブロックのどちらにも引き寄せられるような駆動順序であったが、本発明はその曖昧な部分を解決した時分割駆動順序である。この時分割駆動順序でも上記駆動順序と同様に、先の吐出されたインクの気流により後に吐出された隣接したインクを引き寄せ、更に先に吐出したインク滴が吐出時に分割してしまい、発生するサテライトが、隣接したヘッドから吐出されたインクの気流によって引き寄せられる。そのため、濃度ムラを低減させたドット塊形状が形成される。
【0058】
【表3】

以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
【実施例1】
【0059】
上述したプリントヘッドとして、ノズルが交互に上流側と下流側に配置され1200dpiのノズルピッチで256ノズル配列されたノズル群を、上流側と下流側に交互にノズル群を4個有したものを用意し、図1のインクジェットプリント装置を用いて、上述のプリント方法により色材ドットによるプリントを行った。各インク滴は、2. 0±0.5plで吐出されるよう駆動した。色材を含有するインクとしては、市販のBJF850(キヤノン株式会社製)用のシアンインクを用いた。
【0060】
被プリント材としてはインクジェット専用フォト光沢紙(プロフォトペーパー、PR101:キヤノン株式会社製)を用意した。
【0061】
プリントヘッド及びプリント方法について更に詳述すると、プリントヘッドの気流を排除するためにできるだけキャリッジ速度を落として、更に上流又は下流のノズルどちらかを用いてインク滴のを遅い場合例えば時分割間隔時間約56μsec(1kHz)、早い場合、例えば時分割間隔時間約2μsec(30kHz)として印字した。
【0062】
又、着弾時間が短い場合、引っ付き現象といったものが発生して、気流の影響と混同してしまうため、副走査方向は600dpiとした。2plのドット径は約35μmと予想され、600dpiのドット間距離は42μmであるので、引っ付き現象はないと考えられる。
【0063】
次に、15kHzの吐出駆動周波数で、従来の図8のような時分割駆動順序で印字した場合と、本発明の図9のような時分割駆動順序で印字した。この場合も上記と同様に600dpiで印字した。この場合も上記と同様に600dpiで印字した。上記の方法で被記録材に印字された図11の状態に当たるドット塊の上下の長さを測定する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の概略を示す正面図である。
【図2】本発明に適用可能なインクジェットヘッドの構造を示す図である。
【図3】本発明のインクジェット記録装置の制御系の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明する画像処理のフロー図である。
【図5】本発明のインクによる気流を示す図である。
【図6】本発明のインクの気流によるサテライトの引き寄せを示す図である。
【図7】本発明に理想記録マトリックスへのインクドットの着弾状態を説明する概略図である。
【図8】従来の時分割駆動順序について説明する概略図である。
【図9】本発明の時分割駆動順序について説明する概略図である。
【図10】本発明の一実施形態におけるドット配置の概略図である。
【図11】本発明の時分割駆動順序について説明する概略図である。
【符号の説明】
【0065】
1 画像入力部
2 操作部
3 CPU
4 記憶媒体情報
5 RAM
6 画像処理部
7 プリンタ部
8 バスライン
20 キャリッジ
21 インクジェット記録ヘッド
22 インクカートリッジ
23 フレキシブルケーブル
24 記録媒体
25 排紙ローラ
26 搬送モータ
27 ガイドシャフト
28 ムリニアエンコーダ
29 駆動ベルト
31 キャップ部
32 回復ユニット
33 インク受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略列状の記録素子列を有し、記録素子列方向に略直行する方向に被記録媒体と相対移動させつつ、記録素子列よりインク滴を吐出させて画像を形成するインクジェット記録方法で、画像を形成する単位画像要素の少なくとも一部にドットの集中塊(ドット集中型画像要素)による擬似中間調記録を行う画像形成方法であって、
記録素子の吐出時分割駆動順序を設定する工程と、吐出順序はドット集中型画像要素(クラスター)の中心線側を先行させ、クラスター端部をそれより後続の吐出順序に設定する工程を有することを特徴とする記録方法。
【請求項2】
クラスターの中心線を始点とし順にクラスター端部に向かって吐出順序を設定することを特徴とする請求項1記載の記録方法。
【請求項3】
クラスターの副方向サイズとブロック単位を同一又は整数倍とすることを特徴とする請求項1記載の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−192673(P2006−192673A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5787(P2005−5787)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】