説明

記録流体、その製造方法及び使用方法

【課題】インクの泡立ち等の従来技術の不都合点を有さず、インクジェット法において好ましく用いられるインクを提供する。
【解決手段】(a)ポリマーに完全には被覆されていない着色料と、(b)アルコキシル化アルコール、アルコキシル化アセチレンアルコール、アルコキシル化又は非アルコキシル化アセチレンジオール、アルキルポリグルコシド、糖エステルアルコキシレート、フッ素含有界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びカチオン界面活性剤から選択された2種類以上の湿潤剤と、を含むことを特徴とする水性記録流体が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(a)ポリマーに完全には被覆されていない、1種類以上の着色料と、
(b)アルコキシル化アルコール、アルコキシル化アセチレンアルコール、アルコキシル化又は非アルコキシル化アセチレンジオール、アルキルポリグルコシド、糖エステルアルコキシレート、フッ素含有界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びカチオン界面活性剤から選択された2種類以上の湿潤剤と、
を含むことを特徴とする水性記録流体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法(例えばサーマルインクジェット、ピエゾ式インクジェット、連続式インクジェット、バルブ式インクジェット、転写法)に用いられる記録流体、特にインクは、種々の要求を満たす必要がある。これらは印刷に適する粘度と表面張力を有する必要があり、保管に適していなければならず(例えば凝塊や凝集が生じてはならない)、更にプリンターノズルの詰まりを生じてはならない(これは特に分散状態、すなわち非溶解状態の着色料粒子を含むインクにおいて特に問題となる)。安定に貯蔵するためには、これらのインクにおいて分散状態の着色料粒子が沈降しないことが更に要求される。更に、連続的インクジェットの場合には、伝導性塩を添加してもインクが安定であり、イオン含有率が増加しても凝集傾向が生じないことが必要とされる。更に、得られた印刷物は、色彩的要求を満たすこと、すなわち優れた光沢を示し、明暗の差(depth of shade)が顕著であり、場合により定着等の後処理を施すことにより良好な堅牢性、例えば磨耗堅牢性(耐摩耗性)、耐光堅牢性(耐光性)、水堅牢性(耐水性)、湿潤時水堅牢性(湿潤耐水性)、及び良好な乾燥特性を有することが必要とされる。
【0003】
更に、インクは基体上で急速に乾燥し、印刷される画像や文字がにじまず、異なる色のインク液滴が混ざり合わないというような要求を満たす必要がある。針状のシャープな印刷を行う場合には、印刷乾燥時間の最短化のみならず、印刷乾燥時間内の基体上の印刷液滴の滲出を調節することも必要とされる。液滴が滲まないインクは耐久力(ホールドアウト)に優れると言われる。従来技術によるインクのホールドアウト又は印刷の輪郭の明確さについては更に改良すべき点がある。
【0004】
EP 1 153 992号公報には、アニオン基を有する樹脂で被覆された顔料粒子を有する染料/顔料を含むインクが記載されている。このインクは被覆された顔料の他に、0.1〜質量%のアセチレングリコール界面活性剤及び/又は式A1のポリシロキサン
【0005】
【化1】

も含まれている。上記化学式において、
j及びkはそれぞれ1以上を、
R基は同じでも異なってもよく、それぞれC1−C6アルキルを意味し、
EOPO−Hは1種類以上のエチレンオキシド単位、又は1種類以上のプロピレンオキシド単位、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドの各単位がランダム配置又はブロック形状に配置されていてもよい1種類以上のポリアルキレンオキシド単位を意味する。
【0006】
EP 1 234 859号公報の特許請求の範囲には式A2
【0007】
【化2】

で表され、式中の符号が上記と同じ意味を有する1種類以上の化合物を含む染料/顔料を含有するインクが記載されている。
【0008】
US6,241,811号明細書の特許請求の範囲には、アルコキシル化又は非アルコキシル化されたアルキレングリコール化合物を含むインク組成物が記載されている。
【0009】
EP 1 333 048号公報には、所定の置換基を有するアセチレンジオールをそれぞれ固体含有率20〜60%のインク組成物が開示されている。
【0010】
EP 1 295 916号公報には、ポリマーに完全に被覆された顔料、又はポリマーに完全に被覆された染料、水、及び1種類以上の所定の化合物(アセチレングリコール化合物、アセチレンアルコール、グリコールエーテル又は1,2−アルキレングリコール)を含むインクジェット法用のインクが開示されている。ポリマーに完全に被覆された顔料及び染料は、例えば被覆対象の各顔料及び染料の存在下に所望のポリマーを製造することにより得られることが、EP 1 295 916号公報に開示されている。EP 1 295 916号公報によると、ポリマーに完全に被覆された顔料を使用することが必須であり、これを用いないと満足な画像が得られないとされている(第12頁54行〜第13頁4行)。
【0011】
しかしながら、従来技術によるインクの印刷特性は、未だ改良が必要なものであることが認識されている。例えば、従来技術のインクには非常に泡立ちやすいものがある。
【0012】
【特許文献1】EP 1 153 992号公報
【特許文献2】EP 1 234 859号公報
【特許文献3】US 6,241,811号明細書
【特許文献4】EP 1 333 048号公報
【特許文献5】EP 1 295 916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の従来技術の不都合点を有さない記録流体、特にインクジェット法に用いられるインクを提供することをその目的とする。更に、本発明は、改良された記録流体、インクジェット法において好ましく用いられるインクの製造方法を提供すること、及び印刷された基体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、
(a)ポリマーに完全には被覆されていない、1種類以上の着色料と、
(b)アルコキシル化アルコール、アルコキシル化アセチレンアルコール、アルコキシル化又は非アルコキシル化アセチレンジオール、アルキルポリグルコシド、糖エステルアルコキシレート、フッ素含有界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びカチオン界面活性剤から選択された2種類以上の湿潤剤と、
を含むことを特徴とする水性記録流体により上記目的が達成されることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、記録流体を、インク又はインクジェット法に用いられるインクとも言う。
【0016】
本発明における記録流体は、好ましくは微粒子の形態を有する1種類以上の着色料a)、例えば顔料又は分散染料を含む。本発明で用いられる顔料は、ドイツ工業規格DIN55944に定義されている通りの、実質的に不溶性であり、微分散された有機又は無機の着色料である。
【0017】
顔料の代表例は以下の通りである。
【0018】
モノアゾ顔料: C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントオレンジ5、13、36及び67、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、8、9、12、17、22、23、31、48:1、48:2、48:3、48:4、49,49:1、52:1、52:2、53、53:1、53:3、57:1、63、112、146、170、184、210、245及び251、C.I.ピグメントイエロー1、3、73、74、65、97、151及び183、
ジアゾ顔料: C.I.ピグメントオレンジ16、34及び44、C.I.ピグメントレッド144、166、214及び242、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、16、17、81、83、106、113、126、127、155、174、176及び188、
アンタンスロン顔料: C.I.ピグメントレッド168(C.I.バットオレンジ3)
アントラキノン顔料: C.I.ピグメントイエロー147及び177、C.I.ピグメントバイオレット31、
アントラピリミジン顔料: C.I.ピグメントイエロー108(C.I.バットイエロー20)、
キナクリドン顔料: C.I.ピグメントレッド122、202及び206、C.I.ピグメントバイオレット119,
キノフタロン顔料: C.I.ピグメントイエロー138、
ジオキサジン顔料: C.I.ピグメントバイオレット23及び37、
フラバントロン顔料: C.I.ピグメントイエロー24(C.I.バットイエロー1)、
インダントロン顔料: C.I.ピグメントブルー60(C.I.バットブルー4)及び64(C.I.バットブルー6)、
イソインドリン顔料: C.I.ピグメントオレンジ69、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントイエロー139及び185、
イソインドリン顔料: C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントレッド257及び260、C.I.ピグメントイエロー109、110、173及び185、
イソビオラントロン顔料: C.I.ピグメントバイオレット31(C.I.バットバイオレット1)、
【0019】
金属錯体顔料: C.I.ピグメントイエロー117、150及び153、C.I.ピグメントグリーン8、
ペリノン顔料: C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.バットバイオレット7)、C.I.ピグメントレッド194(C.I.バットレッド15)、
ぺリレン顔料: C.I.ピグメントブラック31及び32、C.I.ピグメントレッド123、149、178、179(C.I.バットレッド23)、190(C.I.バットレッド29)及び224、C.I.ピグメントバイオレット29、
フタロシアニン顔料: C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6及び16、C.I.ピグメントグリーン7及び36、
ピラントロン顔料: C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレッド216(C.I.バットオレンジ4)、
チオインジゴ顔料: C.I.ピグメントレッド88及び181(C.I.バットレッド1)、C.I.ピグメントバイオレット38(C.I.バットバイオレット3)、
トリアリールカルボニウム顔料: C.I.ピグメントブルー1、61及び62、C.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントレッド81、81:1及び169、C.I.ピグメントバイオレット1、2、3及び27、C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック)、
C.I.ピグメントイエロー101(アルダジンイエロー)、
C.I.ピグメントブラウン22。
【0020】
無機顔料の例は以下の通りである。
【0021】
白色顔料: 二酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト6)、亜鉛華、ピグメントグレード酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、リードホワイト、
黒色顔料: 酸化鉄黒(C.I.ピグメントブラック11)、鉄マンガニーズブラック、スピネルブラック(C.I.ピグメントブラック27)、カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)、
クロム顔料: 酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、クロムグリーン(C.I.ピグメントグリーン48)、コバルトグリーン(C.I.ピグメントグリーン50)、ウルトラマリングリーン、コバルトブルー(C.I.ピグメントブルー28及び36)、ウルトラマリンブルー、アイロンブルー(C.I.ピグメントブルー27)、マンガニーズブルー、ウルトラマリンバイオレット、コバルトバイオレット及びマンガニーズバイオレット、酸化鉄赤(C.I.ピグメントレッド101)、スルホセレン化カドミウム(C.I.ピグメントレッド108)、モリブデンレッド(C.I.ピグメントレッド104)、ウルトラマリーンレッド、
酸化鉄ブラウン、ミックスブラウン、スピネル及びコランダム相(C.I.ピグメントブラウン24、29及び31)、クロムオレンジ、
酸化鉄黄(C.I.ピグメントイエロー42)、ニッケルチタニウムイエロー(C.I.ピグメントイエロー53、C.I.ピグメントイエロー157及び164)、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム及び硫化カドミウム亜鉛(C.I.ピグメントイエロー37及び35)、クロムイエロー(C.I.ピグメントイエロー34)、亜鉛黄、クロム酸アルカリ土類金属塩、ネープルイエロー、バナジン酸ビスマス(C.I.ピグメントイエロー184)、
干渉顔料: 被覆金属小板を基礎とする金属効果を有する顔料、酸化金属で被覆された雲母小板を基礎とするパール光沢顔料、液晶顔料。
【0022】
本発明における好ましい顔料は、モノアゾ顔料(特にレーキBONS顔料、ナフトールASピグメント)、ジアゾ顔料(特にジアリール黄色顔料、ビスアセトアセトアニリド顔料、ジアゾピラゾロン顔料)、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ペリノン顔料、フタロシアニン顔料、トリアリールカルボニウム顔料(アルカリブルー顔料、レーキローダミン、錯体アニオンとの染料塩)、イソインドリン顔料及びカーボンブラック。
【0023】
特に好ましい顔料の例は、特にC.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントブルー15:3及び15:4、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントオレンジ5、38及び43、及びC.I.ピグメントグリーン7。
【0024】
これらの顔料は、本発明の着色料調製品によるインクジェット用インクセット製造用に非常に好適に用いられる。各記録流体又はインクにおける所定の顔料の含有率は、個々の要求(例えば、三色の使用(trichromism))、すなわちシアン、マゼンタ、イエロー及び黒色顔料の割合をそれぞれ調節する等の要求を満たさなければならない。
【0025】
三色の使用の要求に関して、以下の顔料の組み合わせが特に推奨される。
【0026】
C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントブルー15:3、及びピグメントブラック7、
C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントバイオレット122、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4及びピグメントブラック7、
C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントブルー15:3、及びピグメントブラック7、C.I.ピグメントオレンジ43及びC.I.ピグメントグリーン7、
C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントブルー15:3又は15:4、C.I.ピグメントブラック7、ピグメントオレンジ5、及びピグメントグリーン7、
C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントブルー15:3又は15:4、C.I.ピグメントブラック7、ピグメントオレンジ38、及びピグメントグリーン7、
C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントブルー15:3又は15:4、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントオレンジ43、及びC.I.ピグメントグリーン7。
【0027】
代表的な分散染料の具体例は以下の通りである。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
更に、基本構造が下式Bで示される置換ベンゾジフラノン染料も適している。
【0031】
【化3】

【0032】
上記染料は、いずれか一方又は双方のフェニル環に置換基を有していても良い。適する置換基X1及びX2の例は、ハロゲン、非隣接酸素原子により中断されていてもよいアルキル基、酸素原子により中断されていてもよく、かつアルキル部分が置換されていてもよいアルコキシ、ヒドロキシル、置換又は無置換のアミノ、シアノ、ニトロ及びアルコキシカルボニルである。
【0033】
他の適する染料の例は下式Cで示されるものである。
【0034】
【化4】

【0035】
適する分散染料の他の例は、WO97/46623号公報、WO98/24850号公報及びWO99/29783号公報に記載されている。
【0036】
本発明の記録流体は2種類以上の異なる着色料の混合物を含んでもよい。しかしながら、本発明の記録流体は2種類以上の異なる着色料の混合物を含まず、1種類のみの着色料を含むことが好ましい。
【0037】
本発明の記録流体は、微粒子状、特に粒子の形態の着色料を含む。粒子は規則的又は不規則的な形状を有し、球体、ほぼ球体、又は針状(針形状)の形状をとることができる。
【0038】
本発明の記録流体に含まれる粒子状の着色料は、高度に微分散されているとよい。着色料粒子の95質量%以上、好ましくは99質量%以上の中央粒径が1μm未満であると好ましく、0.5μm未満であると更に好ましく、0.3μmであると特に好ましい。
【0039】
好ましい実施の形態において、本発明の記録流体は10〜100g/リットル、好ましくは12〜70g/リットルの着色料を好ましくは微粒子状で含む。
【0040】
好ましい実施の形態において、本発明の記録流体はポリマーに不完全に被覆されている1種類以上の着色料、すなわちポリマーにより被覆されているが被覆の状態が完全ではない1種類以上の着色料を含む。本発明において、ポリマーに不完全に被覆されている着色料とは、例えば微粒子状の着色料であって、一部の着色料粒子がポリマーに完全に被覆されており、他の一部の着色料粒子がポリマーに不完全に被覆されているものであってもよい。本発明におけるポリマーに不完全に被覆されている着色料は、例えば一部の着色料粒子がポリマーに完全に被覆されており、他の一部の着色料粒子が全く被覆されていないものであってもよい。更に、ポリマーに不完全に被覆されている着色料は、例えば粒子状であって、ポリマーに全く被覆されていない着色料であってもよい。
【0041】
本発明の特に好ましい実施の形態では、ポリマーに不完全に被覆された着色料とは、0.1質量%以上の着色料粒子がポリマーに完全には被覆されておらず、公知方法、例えば超遠心分離機又は選択した試料についてTEMを用いることにより検出される。
【0042】
本発明の水性記録流体は、更に
(b)アルコキシル化アルコール、アルコキシル化アセチレンアルコール、アルコキシル化又は非アルコキシル化アセチレンジオール、アルキルポリグルコシド、糖エステルアルコキシレート、アニオン界面活性剤、及びカチオン界面活性剤から選択された2種類以上の湿潤剤を含む。
【0043】
本発明のアルコキシル化アルコールは、一回又は複数回、好ましくは30回以下アルコキシル化された、下式Iのアルコールを意味する。
【0044】
【化5】

【0045】
1は無置換又は1個又は2個のヒドロキシル基に置換されたC5−C30アルキルであって、1個又は2個の非隣接CH2基が酸素により置換されていてもよいC5−C30アルキル、例えばn−ペンチル、イソペンチル、イソアミル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、イソデシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、n−エイコシル及び下記1a〜1cで示される基
【0046】
【化6】

を意味し、
AOは同一であっても、異なってもよいアルキレンオキシド単位、例えばプロピレンオキシド単位、ブチレンオキシド単位、及び特にエチレンオキシド単位を意味し、
xは1〜100の整数、好ましくは50以下の整数、更に好ましくは2〜30の整数を意味する。
【0047】
アルコキシル化アルキレンアルコールは、一般式II
【0048】
【化7】

の化合物であると好ましい。上記式中、
2は分岐又は非分岐のC1−C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、iso−アミル、n−ヘキシル、iso−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、更に好ましくはC1−C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、及び
水素、から選択され、
3及びR4は分岐又は非分岐のC1−C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、iso−アミル、n−ヘキシル、iso−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、更に好ましくはC1−C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、及び
水素、から選択され、
yは1〜100の整数、好ましくは50以下、好ましくは2〜30の整数を意味する。
【0049】
本発明の好ましい実施の形態において、R3及びR4の一方又は双方が水素を意味しないとよい。
【0050】
本発明の好ましい実施の形態において、R3及びR4の一方又は双方がメチルであると良い。
【0051】
好ましい実施の形態において、R3がメチル、R4がC1−C10アルキルを意味するとよい。
【0052】
AOは上記と同様の意味を有する。
【0053】
アルコキシル化アセチレンジオール又は非アルコキシル化アセチレンジオールは、一般式III
【0054】
【化8】

の化合物であると好ましい。上記式中、
5、R6、R7、R8は、分岐又は非分岐のC1−C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、neo−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、iso−アミル、n−ヘキシル、iso−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、更に好ましくはC1−C5アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、及びイソペンチル、及び
水素、からそれぞれ選択され、
nは同一でも異なってもよく、0〜50、好ましくは0又は1〜30、更に好ましくは3から20を意味する。
【0055】
AOは上記と同様の意味を有する。
【0056】
本発明の好ましい実施の形態においては、R5とR7の双方が水素を示すことはない。
【0057】
本発明の好ましい実施の形態では、R5とR7の双方がメチルを意味する。
【0058】
本発明の特に好ましい実施の形態において、R5とR7の双方がメチルを意味し、R6とR8の双方がC1-C10アルキル、特にイソブチルを意味する。
【0059】
本発明のアルキルポリグルコシドは、C1位で、C1−C20アルカノール、好ましくはC12−C20アルカノールによりエーテル化されたグルコースであるとよい。同材料の製造操作は、一般に、アルキルポリグリコシドに、C1−C6結合し、C1−C20アルカノールでエーテル化されていてもよいジ−及びポリグリコシドを添加することにより行われる。本発明の好ましい実施の形態では、1.3当量の糖を、1当量のC1−C20アルカノールと結合させる。
【0060】
本発明の糖エステルアルコキシレートは、脂肪酸により一回又は複数回エステル化され、5〜80当量のアルキレンオキシド、特にエチレンオキシドでアルコキシル化された糖アルコールであると好ましい。好ましい糖エステルアルコキシレートは、アルコキシル化ソルビタン脂肪酸、好ましくは脂肪酸により一回又は複数回エステル化され、5〜80当量のアルキレンオキシド、特にエチレンオキシドでアルコキシル化されたアルコキシル化ソルビタン脂肪酸から選択される。
【0061】
本発明のフッ素化界面活性剤は、ペルフルオロC8−C9カルボン酸のアルカリ金属塩であることが好ましく、ナトリウム塩であると特に好ましい。
【0062】
本発明のアニオン界面活性剤は、脂肪酸塩であると好ましく、ステアリン酸及びパルミチン酸等の脂肪酸のアルカリ金属塩であると好ましい。 本発明のカチオン界面活性剤はC8-C20アルキルトリメチルアンモニウム塩、特に塩化物又は臭化物であると好ましい。
【0063】
上述のアルコキシル化アルコール、アルコキシル化アセチレンアルコール、アセチレングリコール及び糖エステルアルコキシレートは、一般に混合物の形態で合成され、合成されたままの混合物の構成成分はアルコキシル化度が異なるのが普通である。すなわち上述の符号x、y及びnはアルコキシル化度の数平均値を意味する。この値は、ゲル透過性クロマトグラフィー(GPC)等の当業者に公知の方法で測定される。慣用の合成法により得られる混合物は本発明において2種類の異なる湿潤剤に限定されない。
【0064】
一実施の形態において、本発明の着色料調整物は、本発明の記録流体の総質量に対して5質量%以下、好ましくは2質量%以下、更に1.5質量%以下の湿潤剤(b)を含む。
【0065】
一実施の形態において、本発明の記録流体は5種類までの異なる湿潤剤(b1)、(b2)、(b3)、(b4)及び(b5)、好ましくは3種類までの異なる湿潤剤(b1)、(b2)、(b3)、更に好ましくは2種類の湿潤剤(b1)及び(b2)を含む。
【0066】
好ましい実施の形態において、本発明の記録流体は2種類の異なる湿潤剤(b1)及び(b2)を、1:20〜20:1、好ましくは1:10〜10:1、更に好ましくは1.5〜5:1の質量割合で含む。
【0067】
一実施の形態において、本発明の記録流体は
(c)1種類以上の分散剤
を含む。
【0068】
好ましい分散剤の例は、マレイン酸−アクリル酸共重合体、特に分子量Mn2000〜10000g/モルのものであり、ランダム共重合体又はブロック共重合体の形態であると好ましい。好ましい分散剤の他の例は、N−ビニルピロリドン単独重合体及びアクリラートN−ビニルピロリドン共重合体、特に分子量Mn2000〜10000g/モルであり、ランダム共重合体又はブロック共重合体の形態のN−ビニルピロリドン単独重合体及びアクリラートN−ビニルピロリドン共重合体である。
【0069】
分散剤の好ましい例は、アルコキシル化され、部分的に硫酸化されたアルキルフェノール、例えばUS4,218,218号明細書等に記載された材料、又はナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物、又はUS5,186,846号明細書等に記載されたアリールスルホン酸−ホルムアルデヒド各種縮合生成物の混合物である。
【0070】
本発明の記録流体は、例えば本発明の記録流体の総質量に対して0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは5質量%以下の分散剤を含んでもよい。
【0071】
一実施の形態において、本発明の記録流体は、
(d)1種類以上のバインダー
を含む。
【0072】
一実施の形態において、本発明の記録流体、及び特に本発明のインクジェット法用インクはバインダーを含む。バインダーは放射線硬化性バインダー、熱硬化性バインダー及び空気乾燥バインダーから選択可能である。適するバインダーはWO99/01516号公報及びWO02/36695号公報等に記載されている。同様に、WO03/29318号公報に記載されている分散バインダー組成物を添加剤として用いることも有益である。
【0073】
バインダーは更に分散特性を有していても良い。このようなバインダーは分散バインダー(dc)とも言われる。本発明において、分散バインダー(dc)を分散剤(c)及びバインダ(d)の片方又は組み合わせの補助として用いることも、代用として用いることもできる。
【0074】
特に適する分散バインダー(dc)は、1種類以上のポリウレタン及び1種類以上のメラミンからなる組み合わせから製造可能である。好ましいポリウレタンは、例えば1種類以上のジイソシアネートと、更なる親水性基を有さない1種類以上のジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール又は1,4−シクロヘキサンジメタノール)、及び1種類以上の親水性基、例えばCOOH(例えばトリメチロールプロピオン酸の導入)又はSO3H基を有する1種類以上のジオールとの、公知方法を用いた反応により得られる。更なる親水性基を有さない特に有用なジオールは、1種類以上のジカルボン酸と、更なる親水性気を有さないジオールとを、反応させることにより得られるポリエステルジオールである。
【0075】
特に適するメラミン樹脂の例は、一般式IV
【0076】
【化9】

で表され、式中
9〜R14は、同一又は異なり、水素、CH2−OR15又はCH(OR152又はCH2−N(R152から選択され、
15は、それぞれ同じであっても、異なってもよく、
水素、
分岐又は非分岐のC1−C12アルキル、
(−CH2−CH2−O)w−H、(−CHCH3−CH2−O)w−H、(−CH2−CHCH3−O)w−H、(-CH2−CH2−CH2−CH2−O)w−Hから選択されたアルコキシアルキレンを意味し、
wは1〜20の整数を意味する樹脂である。
【0077】
9、R11及びR13はそれぞれ水素であり、R10、R12及びR14はそれぞれ水素ではない。
【0078】
特に適するメラミン樹脂は式IV.1で表される。
【0079】
【化10】

【0080】
本発明で用いられるメラミン樹脂は、一般には、所定の式で示されるような純粋なものではなく、R1〜R6基の分子内転移、すなわちトランスアセタール化反応及びトランスアミナール化反応、及び所定割合での縮合反応及び脱離反応を生じる。上記式IV及び特に式IV.1は置換基の理論的割合を示しているものであり、分子内転移生成物及び縮合生成物が含まれるものとする。
【0081】
適するバインダー、好ましくは分散液又は乳濁液の形態のバインダーは、例えば放射線硬化性、熱硬化性、又は空気乾燥バインダー、すなわち化学的架橋バインダー又は物理的乾燥バインダー(水や有機溶媒等の液相材料が蒸発する)。
【0082】
本発明の記録流体に導入される放射線硬化性バインダーは、特に220〜450nmの電磁線又は電子光線等の高エネルギーの放射線により硬化する。ラジカル重合性またはカチオン重合性バインダー、及びこれらの混合物も好ましく使用可能である。このようなバインダーは公知であり、例えばChemistry and Technology of UV and EB Formulation for Coatings, Inks and Paints, SITA Technology, London 1991, UV and EB Curing Formulation for Printing Inks and Paints, SITA Technology, London 1991, 及びVinyl Ethers - The innovative Challenge (1997年出版物、BASF Aktiengesellshaft)等に記載されている。
【0083】
放射線硬化性バインダーの例としては、アクリラート、ビニルモノマー、エポキシモノマー、これらのプレポリマー、ポリマー及び混合物が挙げられる。
【0084】
アクリラートバインダーはアクリラート又はメタクリラートを主成分とするプレポリマーであると好ましく、アクリラートを主成分とするプレポリマーを用いると特に好ましい。
【0085】
好ましいアクリラート及びメタクリラートは、1分子あたり通常は2〜20、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜6の共重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する。ポリスチレンを標準に、テトラヒドロフランを移動相に用いたゲル透過型クロマトグラフィー(GPC)により測定した平均分子量Mnは、好ましくは≦15000g、更に好ましくは≦5000g、特に好ましくは180〜3000gである。
【0086】
有用な(メタ)アクリラート化合物としては、例えばメタクリル酸エステル、及び好ましくは多価アルコールのアクリル酸エステル、特にヒドロキシル基の他にエーテル基を1個のみ含むか、ヒドロキシル基の他にはいかなる官能基も含まない多価アルコールを挙げることができる。多価アルコールの具体例は、二価アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール及び高級縮合生成物(higher condensation product)、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及び1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルコキシル化フェノール及びビスフェノール、例えばエトキシル化ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノールである。更に、三価アルコール、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール又はトリメチロールエタンも好ましい。
【0087】
メタクリラート化合物としては、ポリエステルオールのメタクリル酸エステルであり、飽和又は不飽和のポリエステル(メタ)アクリラートを挙げることができる。
【0088】
適するポリエステロールは、例えばジー及びポリカルボン酸、好ましくはジカルボン酸をポリオールによりエステル化することにより製造される。好ましいジカルボン酸は琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、及びこれらの異性体及び水素化生成物、及びエステル化誘導体、例えば上記酸の無水物、ジメチルエステル又はジエチルエステルである。適するポリオールの例はエチレングリコール、プロピレングリコール及び高級縮合生成物(higher condensation product)、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及び1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(混合異性体)、及びエチレングリコールとプロピレングリコールとを主要成分とするポリアルキレングリコールである。
【0089】
上記(メタ)アクリラート化合物を効率的に製造する方法は、例えばEP-A0279303号公報に記載されている。
【0090】
(メタ)アクリラート化合物は、エポキシ又はウレタン(メタ)アクリラートであってもよい。エポキシ(メタ)アクリラートは、エポキシ化されたオレフィン又はモノ−、ジ−、ポリグリシジルエーテル、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルと、(メタ)アクリル酸との反応等により製造可能である。ウレタン(メタ)アクリラートは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートと、ジ−又はポリイソシアネートとの反応生成物であると好ましい。
【0091】
更に、(メタ)アクリラート化合物はメラミン(メタ)アクリラート又はシリコン(メタ)アクリラートであってもよい。
【0092】
(メタ)アクリラート化合物は、酸基又はアンモニウム基等を付加することによりイオン性に変性しても、又はアミノ基等を付加することにより非イオン性に変性しても良い。これらの化合物を水性分散液又は乳濁液として使用することも好ましく、例えばEP-A 0 704 469号公報、及びEP-A 0 012 339号公報より公知である。(メタ)アクリラート化合物を、更に、いわゆる反応性希釈剤と混合して粘度を調整してもよい。適する反応性希釈剤の例は、ビニル基含有モノマーであり、具体的には以下の化合物が挙げられる。
【0093】
N−ビニル化合物、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びN−ビニルホルムアミド、
ビニルエーテル、例えばエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチレンモノグリコールビニルエーテル、およびエチレンモノグリコールジビニルエーテル、ジ−、トリ−、及びテトラエチレングリコールモノビニル及びジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールn−ブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、ポリエチレングリコールメチルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールモノビニル及びジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニル及びジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニル及びジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニル及びジビニルエーテル、アミノプロピルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、及びポリテトラヒドロフランジビニルエーテル、
ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、
芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、ビニルトルエン、2−n−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン及び4−n−デシルスチレン、及び
アクリラート含有モノマー、例えばフェノキシエチルアクリラート、tert−ブチルシクロヘキシルアクリラート、1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、及びトリメチロールプロパントリアクリラート。
【0094】
ビニル基含有化合物は、カチオン重合性バインダーとして直接使用可能である。
【0095】
有用は化学線硬化性バインダーの他の例は、エポキシ含有化合物、例えばシクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、及びグリシジルエーテル、例えば1,4−ブタンジオールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、及びペンタエリスリトールジグリシジルエーテルであり、カチオン重合性モノマー、例えば不飽和アルデヒド及びケトン、ジエン、例えばブタジエン又はイソプレン、芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、N−置換ビニルアミン、例えばN−ビニルカルバゾール、及び環状エステル、例えばテトラヒドロフランも使用可能である。
【0096】
バインダーをUV照射により硬化させる場合、印刷物に対してバインダーを重合開始剤と共に施与して重合を開始することが好ましい。
【0097】
ラジカル光重合用の光開始剤の例は、ベンゾフェノン及びベンゾフェノン誘導体、例えば4−フェニルベンゾフェノン又は4−シクロベンゾフェノン、アセトフェノン誘導体、例えば2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノン、及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ベンゾイルシクロヘキサン−1−オール、ベンゾイン及びベンゾインエーテル、例えばメチルベンゾインエーテル、エチルベンゾインエーテル及びブチルベンゾインエーテル、ベンジルケタール、例えばベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、アシルホスフィンオキシド、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド及びビスアシルホスフィンオキシドである。
【0098】
一実施の形態において、本発明の記録流体は、当該記録流体の総質量に対して0.1質量%〜20質量%、好ましくは1質量%〜10質量%、更に好ましくは5質量%以下のバインダーを含む。
【0099】
本発明の記録流体は、有機溶媒、例えば他の助剤(f)として有機溶媒を含んでいても良い。
【0100】
低分子量ポリテトラヒドロフランが好ましい添加剤であり、単独で使用してもよいが、高沸点水溶性又は水混和性有機溶媒と混合して用いると好ましい。
【0101】
好ましい低分子量ポリテトラヒドロフランの平均分子量Mwは、150〜500g/モル、好ましくは200〜300g/モル、更に好ましくは約250g/モルである(所定範囲の分子量分布に対応)。
【0102】
ポリテトラヒドロフランは、テトラヒドロフランのカチオン重合により公知方法で製造可能である。この場合の生成物は直鎖状ポリテトラメチレングリコールとなる。
【0103】
好ましい低分子量ポリテトラヒドロフランを、他の有機溶媒を含む混合物における添加剤として使用する場合、他の有機溶媒としては、一般に高沸点の、従って水に溶解又は混和し、水を保持する(water-retaining)有機溶媒である。高沸点溶媒の沸点は大気圧において>100℃である。
【0104】
適する溶媒の他の例は、多価アルコール、好ましくは、炭素原子数2〜8、特に3〜6の分岐状又は非分岐状多価アルコール、好ましくはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ペンチトール、例えばアラビトール及びキシリトール、及びヘキシトール、例えばソルビトール、マンニトール及びダルシトールである。
【0105】
有用な溶媒の例には、更にポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール(これは低分子量ポリマーとも解される(二量体、三量体、四量体))、及びこれらのモノ(特にC1−C6、特にC1−C4)アルキルエーテルである。平均分子量100〜1500g/モル、特に200〜800g/モル、主に300〜500g/モルのポリエチレン及びポリプロピレングリコールであると好ましい。これらの例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジ−、トリ−、及びテトラ−1,2−及び−1,3−プロピレングリコール、及びジ−、トリ−,及びテトラ−1,2−及び−1,3−プロピレングリコールモノメチル、モノエチル、モノプロピル及びモノブチルエーテルである。
【0106】
この他の使用可能な溶媒の例は、ピロリドン及びアルキル鎖が1〜4、好ましくは1又は2個の炭素原子を含むN−アルキルピロリドンである。適するアルキルピロリドンの例は、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン及びN−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンである。
【0107】
特に好ましい溶媒の例は、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(Mwは300から500g/モル)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ピロリドン、N−メチルピロリドン及びN−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンである。
【0108】
好ましい低分子量ポリテトラヒドロフランは、1種類以上(例えば2、3又は4)の上記溶媒と混合してもよい。
【0109】
本発明の記録流体は、記録流体の総質量に対して通常0〜45質量%、好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは10〜25質量%、特に好ましくは10〜20質量%の1種類以上の溶媒成分を含む。
【0110】
本発明において使用される有機溶媒は室温にて液体状である。
【0111】
本発明の特有の形態における記録流体は、大気圧下にて沸点247℃未満の有機溶媒を含まない。本件発明において「溶媒を含まない」とは、沸点が247℃未満の有機溶媒の一部が、不純物又は汚染成分等として、合計量で0.1質量%未満、好ましくは0.05質量%未満、更に好ましくは0.01質量%未満含まれることを意味する。沸点247℃未満の有機溶媒の例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、N−メチルピロリドン、プロピレングリコール、プロピレンカルボナート、ジエチレンモノメチルエーテル、ジエチレンモノエチルエーテル、ジエチレンモノ−n−ブチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、イソプロパノール及びエタノールである。
【0112】
上記の特に好ましい溶媒の組み合わせを含む1種類以上の有機溶媒に対し、尿素(本発明の記録流体又は本発明のインクジェット法用インクの質量に対して好ましくは0.1〜5質量%)を追加的に使用してもよい。これにより、溶媒又は溶媒混合物の保水効果を更に向上させることが可能となる。
【0113】
本発明の記録流体は、更にインクジェット用の水性インク、及び印刷及び塗料産業で特に慣用されているような他の助剤(f)を含んでも良い。このような助剤の例には、エリスリトール、ペンチトール、例えばアラビトール、アドニトール、及びキシリトール、ヘキシトール、例えばソルビトール、マンニトール及びズルシトールがある。この他の例は、分子量Mwが2000g/モルを超過し、約10000g/モルまでの範囲、及び好ましくは800g/モル以下のポリエチレングリコールである。他の例としては、保存剤、例えば1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン及びそのアルカリ金属塩、粘度調整剤、流動化剤、湿潤剤(例えばエトキシル化又はプロポキシル化された脂肪又はオキソアルコールを主成分とする湿潤界面活性剤、プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロック共重合体、アルキルフェノールエーテルスルファート、アルキルポリグルコシド、アルキルホスホナート、アルキルフェニルホスホナート、アルキルホスファート、アルキルフェニルホスファート、沈降防止剤、光沢改良剤、滑剤、粘着性改良剤、抗剥離剤(anti-skinning agent)、つや消し剤、乳化剤、安定剤,撥水剤、光制御剤、風合い改良剤、帯電防止剤、及びpHを調整するための塩基、例えばK2CO3、又は酸、例えば特に乳酸又はクエン酸等のカルボン酸がある。この様な薬剤が本発明の記録流体の一部とされる場合には、本発明の記録流体の質量に対する当該薬剤の総量を通常が2質量%以下、特に1質量%以下とする。
【0114】
好ましい実施形態において、本発明の記録流体の動的粘度は、20℃にて測定すると、1〜30mPa・s、好ましくは1〜20mPa・s、更に好ましくは2〜15mPa・sである。
【0115】
本発明の記録流体の20℃における表面張力は、通常20〜70mN/mの範囲、特に20〜40mN/mの範囲、更に好ましくは25〜35mN/mの範囲にある。
【0116】
また、本発明の記録流体のpHは、通常5〜10、好ましくは7〜9の範囲にある。
【0117】
本発明の記録流体は水(e)、好ましくは脱イオン水(脱塩水又は完全にイオンを含まない水)を含む。この場合、水性記録流体という。好ましい水含有量は30質量%以上、好ましくは45質量%以上、更に好ましくは65質量%以上である。
【0118】
一実施の形態において、本発明の記録流体は、記録流体の質量に対して500ppm未満、好ましくは400ppm未満の遊離重金属イオンを含む。重金属イオンの具体例は、Cu2+、Co2+、Co3+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Zn2+、Ca2+である。更に好ましくは、本発明の記録流体及び本発明のインクジェット法用のインクは300pp以下の鉄を含む。
【0119】
重金属イオン含有率が500ppm未満の本発明の記録流体は、記録流体の製造の間に、例えば精製した顔料を使用することにより、又は沈殿、塩析、イオン交換処理、濾過、電気泳動法処理、又は他の慣用の脱イオン法等の工程を用いることにより製造可能である。同様に、適宜精製した有機溶媒及び完全にイオン除去した水を用いることも可能である。
【0120】
一実施の形態において、本発明の記録流体は塩化ナトリウムとして得られる、0.05質量%の塩素を含む。
【0121】
インクジェット法用のインクとして使用される本発明の記録流体は、短時間(0.1秒以下)で、非常に小さい表面張力差を有することが観察されている。すなわち、動的表面張力をドイツ工業規格DIN53914により測定すると、静的表面張力に近い値が得られる。換言すると、0.1秒以下の時間が経過した後の静的表面張力と動的表面張力の差は、一般に0.01〜0.45mN/m、好ましくは0.1〜0.4mN/mの範囲にある。
【0122】
更に、本発明によると本発明の記録流体の製造方法が提供される(以下、本発明の製造法ともいう)。本発明の製造法は、一般に1以上の工程を有し、各工程において本発明の記録流体の各成分が混合される。これらの工程は慣用の混合機、例えば溶解/液化装置、タンク、及びミル、例えばロールミル、ボールミル、又は攪拌メディアミルにおいて行われる。
【0123】
一実施の形態において、本発明の製造方法は、
(a)ポリマーに完全には被覆されていない、1種類以上の着色料と、
(b)アルコキシル化アルコール、アルコキシル化アセチレンアルコール、アルコキシル化又は非アルコキシル化アセチレンジオール、アルキルポリグルコシド、糖エステルアルコキシレート、フッ素含有界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びカチオン界面活性剤から選択された2種類以上の湿潤剤と、
(c)場合により、1種類以上の分散剤と、
(d)場合により、1種類以上のバインダーと、
(e)水と、
(f)場合により、他の助剤と、
を1以上の工程で相互に混合する。
【0124】
本発明の製造法の一実施の形態では、不完全にポリマーにより被覆されており、水性プレスケーキ等の形状とした1種類以上の着色料(a)を水(e)と一緒に、溶解機等の適当な機器で予備混合する。得られた混合物を、次いでミル又は振とう装置内に分散し、1種類以上の着色料を所望の粒径とする(一般に数平均粒径1μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下)。この処理の後、2種類以上の湿潤剤(b)、場合により他の助剤(f)、及び場合により更に水(e)を添加する。
【0125】
本発明の製造法の他の実施の形態では、不完全にポリマーにより被覆されており、水性プレスケーキ等の形状とした1種類以上の着色料(a)を1種類以上の分散剤(c)及び水(e)と一緒に、溶解機等の適当な機器で予備混合する。得られた混合物を、次いでミル又は振とう装置内に分散し、1種類以上の着色料を所望の粒径とする(一般に数平均粒径1μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下)。この処理の後、2種類以上の湿潤剤(b)、及び必要に応じて他の助剤(f)、及び必要に応じて更に水(e)を添加する。
【0126】
本発明の製造法の他の実施の形態では、不完全にポリマーにより被覆されており、水性プレスケーキ等の形状とした1種類以上の着色料(a)を1種類以上の分散剤(c)及び水(e)と一緒に、溶解機等の適当な機器で予備混合する。得られた混合物を、次いでミル又は振とう装置内に分散し、1種類以上の着色料を所望の粒径とする(一般に数平均粒径1μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下)。この処理の後、2種類以上の湿潤剤(b)、1種類以上のバインダー(d)、場合により他の助剤(f)、及び場合に応じて更に水(e)を添加する。
【0127】
本発明の製造法の他の実施の形態では、着色料、分散特性(dc)を有しても良いバインダー、及び水(e)を、溶解機等の適当な機器で予備混合する。得られた混合物を、次いでミル又は振とう装置内に分散し、1種類以上の着色料を所望の粒径とする(一般に数平均粒径1μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下)。この処理の後、2種類以上の湿潤剤(b)、場合により他の助剤(f)及び場合により更に水(e)を添加する。
【0128】
本発明の製造方法の好ましい実施の形態において、着色料、分散特性(dc)を有しても良いバインダー、助剤(f)(好ましくはポリエチレングリコール)、及び水(e)を、溶解機等の適当な機器で予備混合する。得られた混合物を、次いでミル又は振とう装置内に分散し、1種類以上の着色料を所望の粒径とする(一般に数平均粒径1μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下)。この処理の後、2種類以上の湿潤剤、場合により他の助剤(f)及び場合により更に水(e)を添加する。
【0129】
本発明の製造方法の好ましい実施の形態において、着色料、バインダー(d)、助剤(f)(好ましくはポリエチレングリコール)、及び水(e)を、溶解機等の適当な機器で予備混合する。得られた混合物を、次いでミル又は振とう装置内に分散し、1種類以上の着色料を所望の粒径とする(一般に数平均粒径1μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下)。この処理の後、2種類以上の湿潤剤、場合により他の助剤(f)及び場合により更に水(e)を添加する。
【0130】
いずれの場合にも、最終工程として1〜0.5μmの範囲の細粒を除去するフィルター手段による濾過を行っても良い。このようにして本発明の記録流体、特に本発明のインクジェット用のインクを製造することができる。
【0131】
本発明の記録流体は、直接インクとして使用しても、インクジェット法等に用いられるインクを製造するために使用してもよい。本発明の記録流体は直接用いられるか、インクジェット法のインクを製造するために用いられると特に好ましい。この他、万年筆用のインクとしても適している。
【0132】
本発明の記録流体をインクを製造するために用いる場合、次工程では通常、本発明の記録流体を水(1種類以上の上述した他の助剤(f)を含んでいてもよい)等で希釈する。希釈は、例えば攪拌しながら混合することにより行われる。
【0133】
また、本発明は、シート状又は三次元形状等の印刷基板を、本発明の記録流体を用いたインクジェット法により、又は本発明のインクにより印刷する方法を提供する。このため、本発明のインクジェット法のインクにより基体に印刷を施し、得られた印刷を次いで定着させる。
【0134】
インクジェット法では、インクを小滴状として基体に直接噴霧する。インクジェット法の一種にコンティニュアス法があり、同方法ではインクを一定割合で加圧してノズルを通過させ、印刷パターンに応じた電場により、ジェットを基体に向ける。更に、インタラプテッド又はドロップ・オン・デマンドインクジェット法があるが、同方法ではカラードットを得るべき場所にのみインクが噴出される。ドロップ・オン・デマンド法ではピエゾ電気結晶又は加熱中空ニードル(バブル又はサーマルジェット法)のいずれかを用いてインク組成物に圧力付与し、これによりインク液滴を噴出する。これらの技術は、Text. Chem. Color 19 (1987), No. 8, 23-29及び21(1989)、No.6、27-32に記載されている。
【0135】
本発明のインクは、バブルジェット(登録商標)法、又はピエゾ電気結晶を用いる方法におけるインクとして特に好ましく使用される。
【0136】
適する基体材料の例は以下の通りである。
【0137】
ラッカー又は他の被覆を有する又は有さないセルロース誘導体、例えば紙、ボール紙、厚紙、木材及び木製基材、
ラッカー又は他の被覆を有する又は有さない金属材料、例えばアルミニウム、鉄、銅、銀、金、亜鉛もしくはこれらの合金から成るフォイル、シート、又は半加工品、
同様に被覆を有する又は有さないシリカ材料、例えばガラス、磁器及びセラミック、
あらゆる種類の高分子材料、例えばポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカルボナート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン及び対応の共重合体及びブロック共重合体、生分解可能ポリマー及び天然ポリマー、例えばゼラチン、
天然及び人口皮革、スムースレザー、ナパ革又はスウェード革、
食料品及び化粧品、及び
特に、繊維基体及びシート状構造物、例えば織物、編み物、織布、不織布、ポリエステル又は変性ポリエステル等から構成された織布、2種類よりも多種の材料から得られるブレンド織布、例えばポリエステルブレンド織物及び綿ブレンド織物、セルロース材料、例えば綿、ジュート、亜麻、麻、及びラミー、ビスコース、ウール、シルク、ポリアミド、ポリアミド混合繊維、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリテトラヒドロフラン、トリアセタート、アセタート、ポリカルボナート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルマイクロファイバー及びガラスファイバー繊維。
【0138】
本発明のインクは、有利な性能、特に良好な印刷開始性能、及び良好な持続的使用性能(kogation)及び更に良好な耐久力(ホールドアウト)に関して優れている。更に、本発明のインクによると、高品質な印刷画像、例えば高光沢及び色合い(明暗の程度)を有し、更に、高い摩耗堅牢性、光堅牢性、水堅牢性、湿潤摩耗堅牢性、洗濯堅牢性、及び化学ドライクリーニングに対する安定性を有する印刷イメージが得られる。本発明のインクは被覆を有する印刷、通常の紙材、及び繊維基体において特に好ましく使用される。
【0139】
一実施の形態において、本発明によると、本発明の上記いずれか方法により印刷が施され、特に鮮明な(crisply)画像又は図形の印刷に適しており、良好な手触りを有する基体、特に織物基体が提供される。
【0140】
本発明の他の実施の形態では、2種類以上、特に3種類以上の異なる記録流体を組み合わせて使用することも可能である。
【0141】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0142】
特に言及しない限り、合成に使用する溶媒は標準的な方法で乾燥したものである(例えばAutorenkollektive Organikum, 第15版第3増刷版、VEB Verlag der Wissenschaften、ライプツィッヒ、1984、F章、Reagenzienanhang (782-809頁)参照)。窒素の乾燥はCaCl2を装填した乾燥塔、及びブルーゲルを装填した乾燥塔を通過させることにより行う。
【0143】
特に言及しない限り、以下に使用する水(e)は、イオン交換体を用いた脱イオンによりイオンを全く含まないように処理した水である。
【0144】
1.分散バインダーの合成
実施例1.1及び1.2で用いたポリエステルジオールは、それぞれヒドロキシル価140mgKOH/1g(ポリエステルジオール)(ドイツ工業規格DIN53240により測定)の材料である。USは、イソフタル酸、アジピン酸、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールを(1:1:2.2)のモル比で製造できる。
【0145】
1.1 分散バインダーの合成(dc.1)
6.85gのネオペンチルグリコール、7.03gのジメチロールプロパン酸、51.95gのポリエステルジオール、53.01gの4,4’−ジフェニルジイソシアナートを、予め実験室における標準的な方法でNa/ベンゾフェノンを用いて蒸留した118.74gのテトラヒドロフランに溶解した。1滴のジラウリル酸ジ−n−ブチル錫を添加し、反応溶液を沸騰させた。遊離イソシアナートが検出されなくなるまで還流下に加熱した(ドイツ工業規格DIN53185による滴定による)。次いで反応溶液を氷浴にて冷却し、6.25gのジエタノールアミンの6.25gの蒸留したテトラヒドロフラン中の溶液と混合し、次いで5.4gのトリエチルアミンと混合した。315gの水を添加し、テトラヒドロフランを留去して、分散バインダー(dc.1)の水溶液を得た。固体含有率は33質量%であった。
【0146】
1.2 分散バインダー(dc.2)の合成
22.7gのネオペンチルグリコール、23.6gのジメチロールプロピオン酸、175.3gのポリエステルジオール、及び178.4gの4,4’−ジフェニルジイソシアナートを、予め実験室における標準的な方法でK2CO3を用いて蒸留した400gのアセトンに溶解した。一滴のジラウリル酸ジ−n−ブチル錫を添加し、これによる反応溶液を沸騰させた。遊離イソシアナートが検出されなくなるまで還流下に加熱した(ドイツ工業規格DIN53185による滴定による)。次いで反応溶液を氷浴にて冷却し、17.8gのジエタノールアミンの61.4gの蒸留したアセトン中の溶液と混合し、次いで17.8gのトリエチルアミンと混合した。500gの水を添加し、500gの水を添加して、テトラヒドロフランを留去して、分散バインダー(dc.2)の水溶液を得た。固体含有率は33質量%であった。
【0147】
2. 着色料組成物の製造
平均粒径0.55mのガラス球体60gの装填された容量100mlのSkandex振とう器を用いて着色料組成物をグラインドとして製造した。
【0148】
2.1 マゼンタ着色料組成物F.1の製造
以下の各成分を秤量して振とう器に装填した。
【0149】
6.0gのP.R.112顔料、
18.02gの分散バインダー(dc.1)、
0.3gの、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのプロピレングリコール20質量%溶液、
2.69gの下式IVのメラミン樹脂(化学量論に基づく割合)、
【0150】
【化11】

29.94gの水。
【0151】
混合物を4時間振とうし、マゼンタ着色料組成物F.1を製造した。得られた着色料の平均粒径をCoulter LS230 Coulter Counterにより測定した。数平均粒径155nmの値が得られた。透過型電子顕微鏡(TEM)により、全ての着色料粒子がポリマーにより完全に被覆されてはいないことが示された。
【0152】
2.2 ブルー着色料組成物F.2の製造
2.1に記載した方法を、P.R.122の代わりに6.9gのピグメントブルー15:3を用いた以外を同様として行った。4時間振とうすることによりブルー着色料組成物F.2が得られた。得られた着色料の平均粒径をCoulter LS230 Coulter Counterにより測定した。数平均粒径240nmの値が得られた。透過型電子顕微鏡(TEM)により、全ての着色料粒子がポリマーにより完全に被覆されてはいないことが示された。
【0153】
2.3 マゼンタ着色料組成物F.3の製造
2.1に記載した方法を、dc.1の代わりに18.02gのdc.2を用いた以外を同様として行った。4時間振とうすることによりマゼンタ着色料組成物F.3が得られた。得られた着色料の平均粒径をCoulter LS230 Coulter Counterにより測定した。数平均粒径130nmの値が得られた。透過型電子顕微鏡(TEM)により、全ての着色料粒子がポリマーにより完全に被覆されてはいないことが示された。
【0154】
2.4 ブルー着色料組成物F.4の製造
2.3に記載した方法を、P.R.122の代わりに6.9gのピグメントブルー15:3を用いた以外を同様として行った。4時間振とうすることによりブルー着色料組成物F.4が得られた。得られた着色料の平均粒径をCoulter LS230 Coulter Counterにより測定した。数平均粒径145nmの値が得られた。透過型電子顕微鏡(TEM)により、全ての着色料粒子がポリマーにより完全には被覆されていないことが示された。
【0155】
2.5 分散染料を基礎とした赤色着色料組成物F.5の製造
2.1に記載した方法を、以下の物質の混合物を用いた以外を同様として行った。
【0156】
15gのディスパースレッド60染料
7.5gのポリエチレングリコール(分子量Mw600g/モル)
15gの分散剤(c.1)(US5,186,848号明細書の実施例3に記載された分散剤)
0.5gのトリエタノールアミン
62gの水。
【0157】
赤色着色料組成物F.5が得られた。得られた着色料の平均粒径をCoulter LS230 Coulter Counterにより測定した。数平均粒径290nmの値が得られた。粒子はポリマーに被覆されていなかった。
【0158】
2.6 分散染料を基礎としたブルー着色料組成物F.6の製造
2.5に記載した方法を、ディスパースレッド60の代わりにディスパースブルー70を用いた以外を同様として行った。ブルー着色料組成物F.6が得られた。得られた着色料の平均粒径をCoulter LS230 Coulter Counterにより測定した。数平均粒径250nmの値が得られた。粒子はポリマーに被覆されていなかった。
【0159】
3. 本発明の記録流体、及び比較流体の製造
一般的操作
表1に記載した成分をそれぞれ表に記載した順に添加し、攪拌により十分に混合した。各着色料組成物の添加の後に15分間の攪拌を行った。この後、更に孔径1μmのネットによる濾過を行うことにより、表1に記載した本発明の記録流体(インク)を得た。
【0160】
【表3】

【0161】
【表4】

【0162】
省略記号:
PE40: Mw400g/モルのポリエチレングリコール
BIT: 1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのプロピレングリコール20質量%の溶液
P−THF: Mw250g/モルのポリテトラヒドロフラン
【0163】
(c−1)を用いる場合、使用着色料調整剤として記載する。
【0164】
【化12】

【0165】
4.本発明の記録流体、及び比較用の記録流体を用いた印刷テスト
本発明の記録流体を、記録流体ごとにカートリッジに装填した。同様に、比較用流体をそれぞれカートリッジに装填した。
【0166】
Mimaki TX2インクジェットプリンターを用いて、耐水性インクジェット紙に印刷テストを行った。各インクを用いて、8サイクルで、解像度720×720dpiの、べた部分を印刷した。結果を表2に記載する。
表2:印刷テストの結果
【0167】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリマーに完全には被覆されていない1種類以上の着色料と、
(b)アルコキシル化アルコール、アルコキシル化アセチレンアルコール、アルコキシル化又は非アルコキシル化アセチレンジオール、アルキルポリグルコシド、糖エステルアルコキシレート、フッ素含有界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びカチオン界面活性剤から選択された2種類以上の湿潤剤と、
を含むことを特徴とする水性記録流体。
【請求項2】
(c)1種類以上の分散剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の水性記録流体。
【請求項3】
2種類の湿潤剤(b1)及び(b2)を、1:20〜20:1の質量割合で含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の水性記録流体。
【請求項4】
記録流体の総質量に対して2質量%以下の(b)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性記録流体。
【請求項5】
(d)1種類以上のバインダーを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録流体。
【請求項6】
(a)ポリマーに完全には被覆されていない、1種類以上の着色料と、
(b)アルコキシル化アルコール、アルコキシル化アセチレンアルコール、アルコキシル化又は非アルコキシル化アセチレンジオール、アルキルポリグルコシド、糖エステルアルコキシレート、フッ素含有界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びカチオン界面活性剤から選択された2種類以上の湿潤剤と、
(c)場合により、1種類以上の分散剤と、
(d)場合により、1種類以上のバインダーと、
(e)水と、
(f)場合により、他の助剤と、
を1以上の工程で相互に混合することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録流体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録流体、又は請求項6に記載の製造法により製造された記録流体を、インクジェット法用のインクとして使用する方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録流体、又は請求項6に記載の製造方法により製造された記録流体を用いて、インクジェット法により基体を印刷する方法。
【請求項9】
基体が繊維基体であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の方法により得られる印刷された基体。

【公表番号】特表2007−523985(P2007−523985A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500121(P2007−500121)
【出願日】平成17年2月19日(2005.2.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001759
【国際公開番号】WO2005/083017
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】