説明

記録用インク及びインクジェット記録装置

【課題】吐出安定性、保存安定性、及び定着性に優れ、普通紙上での画像濃度が高く、インクヘッド構成部材の腐食を防止できるインクジェット記録方式に好適な記録用インク及び該記録用インクを用いたインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】少なくとも水、水溶性有機溶剤、樹脂微粒子、及び表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を有するカーボンブラックを含有してなり、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が110〜350m/g、一次粒子径が10〜30nm、及びDBP吸油量が100〜180cm/100gであり、前記カーボンブラック表面の親水基末端の少なくとも一部が、特定の化合物のカチオンで置換されており、カーボンブラックが水中で分散した状態での体積平均粒径が80〜200nmであり、かつ前記記録用インクのpHが8〜11である記録用インクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出安定性、保存安定性、及び定着性に優れ、普通紙上での画像濃度が高く、インクヘッド構成部材の腐食を防止できるインクジェット記録方式に好適な記録用インク及び該記録用インクを用いたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクジェット記録用インクの着色剤としては染料が用いられているが、該染料インクは耐水性及び耐侯性に劣り、普通紙で滲みやすいという欠点がある。これらの欠点を改良するため、着色剤として顔料を用いた顔料インクが提案されている。この顔料インクは、耐水性や耐侯性に優れ、滲みの少ない画像を記録できるものの、定着性に劣るという問題がある。そこで、様々な樹脂を添加して定着性を向上させる試みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、カーボンブラックとソープフリーエマルジョンを含む記録液が提案されている。この提案の記録液中に含まれるカーボンブラックは界面活性剤によって分散されており、表面に直接親水基を有するものではない。このような記録液は、カーボンブラックを分散させるために多量の界面活性剤を添加するので長期保存性や消泡性に劣るという欠点がある。
また、特許文献2では、光学濃度が高く定着性の良好な画像を得るため、最低造膜温度(MFT)が30〜60℃の樹脂と自己分散型顔料を用いたインク組成において、有機溶剤の水に対する溶解度を規定することが提案されている。この提案では、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルからなる樹脂は、pHによっては保存性の低下を招くという問題がある。また、前記特許文献2に記載のインク組成ではpHを8以上に調整すると、室温以上の環境下で長期間保存された後の増粘率が高くなり、特に、顔料に高ストラクチャーカーボンを用いた場合、顔料自体の分散性を高めないと長期保存により沈降しやすくなり、増粘を加速させてしまうことになる。
【0004】
また、特許文献3では、酸化カーボンブラックと水溶性樹脂を含むインク組成が提案されている。この提案の水溶性樹脂は紙等の記録媒体上での凝集性が劣るため形成された画像の濃度が劣る傾向にある。この提案の平均分子量が50,000以下の水溶性樹脂は塗膜形成力が劣り、カーボンブラックを記録媒体に定着させる力が不足するため、形成された画像の耐擦過性が十分ではない。
【0005】
また、インクジェット記録装置のインクヘッドは、液室と、該液室にインクを供給する流体抵抗部と、該流体抵抗部を介して液室に供給するための共通インク液室と、インク滴を吐出するためのノズルとから構成されている。前記ノズルの孔径は25〜35μmと微細である。このようなノズルの孔径を精度良く形成する方法として、本願出願人は、ニッケル電鋳法を提案している(特許文献4参照)。また、加工精度や耐久性、液滴吐出特性を改善するために検討を重ねて、特許文献5及び特許文献6などを提案している。
【0006】
また、インクの吐出方法としては、例えば圧電素子を用いて液室の壁面を形成する振動板を変形させてインク滴を吐出させるようにしたもの(特許文献7参照)、発熱抵抗体を用いて液室内でインクを加熱して気泡を発生させることによる圧力でインク滴を吐出させるようにしたもの(特許文献8参照)、液室の壁面を形成する振動板と電極とを平行に配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることでインク滴を吐出させるようにしたもの(特許文献9参照)などが提案されている。
このように圧電素子や静電エネルギーによってインクを吐出させる手段においては振動板が必要であり、この振動板の材料としては、加工性や耐久性に優れたニッケルが使用されている(特許文献10参照)。
【0007】
前記インクヘッド構成部材の材料としては、ニッケルが好適に用いられているが、長期間インクと接することで腐食が起きた場合には、インクの吐出に悪影響を及ぼす恐れがある。そこで、本願出願人は、ニッケルの腐食を防止できるインク組成について提案している(特許文献11及び特許文献12参照)。
しかし、これらの提案では、樹脂微粒子を用いたインク組成において、一定のpH範囲に調整し、同時にDBP吸油量が100cm/100g以上の比較的高ストラクチャーなカーボンブラックを酸化処理した後、水酸化ナトリウムで中和して用いると、インクの保存性が低下してしまうという問題がある。
【0008】
したがって上述したように高ストラクチャーのカーボンブラックを用いることによって、画像濃度の向上が見込めるが、インクの保存性が悪化するため、そのままでは使用することが困難であり、更なる改良、開発が望まれているのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特許第3489289号公報
【特許文献2】特開2004−115589号公報
【特許文献3】特許第3583230号公報
【特許文献4】特許第2901989号公報
【特許文献5】特開2002−103615号公報
【特許文献6】特開2005−088357号公報
【特許文献7】特開平2−51734号公報
【特許文献8】特開昭61−59911号公報
【特許文献9】特開平6−71882号公報
【特許文献10】特開2000−313984号公報
【特許文献11】特開2003−238866号公報
【特許文献12】特開2003−268269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、DBP吸油量の大きな高ストラクチャーのカーボンブラックを使用しても沈降、凝集、及び増粘を引き起こすことなく、普通紙上で高画像濃度が得られ、かつインクヘッド構成部材の腐食を防止でき、長期保存安定性、吐出安定性、及び定着性に優れたインクジェット記録方式に好適な記録用インク及び該記録用インクを用いたインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため本発明者が鋭意検討を重ねた結果、表面に親水基を有するカーボンブラックの分散性を向上させることによって、アクリル系モノマーを重合させてなる樹脂微粒子を用いてpHを8〜11に調整したインク組成においても、保存性を悪化させることなく、高ストラクチャーなカーボンブラックを使用できることを知見した。
また、前記カーボンブラックの分散性向上のための手段としては、特定構造の化合物のカチオンで、親水基末端の少なくとも一部を置換することが有効であることを知見した。
また、カーボンブラックの分散性が向上すると記録媒体にインクが着弾直後の凝集力が低下することから、画像濃度が劣る傾向にあるが、通常よりも高い画像濃度が得られるDBP吸油量が100cm/100g以上の高ストラクチャーのカーボンブラックを使用し、かつインクの着弾直後すばやく凝集が起こりカーボンブラックを記録媒体に定着させることができるアクリル系樹脂微粒子を併用することによって、高い画像濃度が実現できることを知見した。
【0012】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも水、水溶性有機溶剤、樹脂微粒子、及び表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を有するカーボンブラックを含有する記録用インクであって、
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が110〜350m/gであり、前記カーボンブラックの一次粒子径が10〜30nmであり、かつ前記カーボンブラックのDBP吸油量が100〜180cm/100gであり、
前記カーボンブラック表面の親水基末端の少なくとも一部が、下記構造式(1)から(4)のいずれかで表される化合物のカチオンで置換されてなり、
前記カーボンブラックが水中で分散した状態での体積平均粒径が、80〜200nmであり、かつ前記記録用インクのpHが、8〜11であることを特徴とする記録用インクである。
【化2】

<2> 樹脂微粒子が、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも2種のアクリル系モノマーを共重合してなるアクリル系樹脂微粒子である前記<1>に記載の記録用インクである。
<3> 樹脂微粒子が、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも2種のアクリル系モノマーと、シラン化合物とを共重合してなるアクリル系樹脂微粒子であり、該アクリル系樹脂微粒子が加水分解性シリル基を含まない前記<1>に記載の記録用インクである。
<4> アクリル系モノマーが、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルから選択される前記<2>から<3>のいずれかに記載の記録用インクである。
<5> 樹脂微粒子の質量平均分子量が80,000〜500,000であり、かつ樹脂微粒子が水中で分散した状態での体積平均粒径が80〜200nmである前記<1>から<4>のいずれかに記載の記録用インクである。
<6> 樹脂微粒子の最低造膜温度(MFT)が20℃以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の記録用インクである。
<7> 樹脂微粒子の記録用インクにおける含有量が、カーボンブラック1質量部に対し0.05〜1.2質量部である前記<1>から<6>のいずれかに記載の記録用インクである。
<8> 水溶性有機溶剤が、グリセリン、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−ピロリドン、及びN−メチル−2−ピロリドンから選択される少なくとも1種である前記<1>から<7>のいずれかに記載の記録用インクである。
<9> 25℃における粘度が6〜20mPa・sである前記<1>から<8>のいずれかに記載の記録用インクである。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の記録用インクに刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
<11> 刺激が、熱、圧力、振動及び光から選択される少なくとも1種である前記<10>に記載のインクジェット記録装置である。
<12> インク飛翔手段が少なくともインクヘッドを有し、該インクヘッドを構成する液室部、流体抵抗部、振動板、ノズル部材及びノズルプレート部材から選択される少なくとも一部が、ニッケルを含む材料から形成されている前記<10>から<11>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<13> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の記録用インクを容器中に収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
<14> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の記録用インクに刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
<15> 刺激が、熱、圧力、振動及び光から選択される少なくとも1種である請求項21に記載のインクジェット記録方法。
<16> 記録媒体上に前記<1>から<9>のいずれかに記載の記録用インクを用いて形成された画像を有してなることを特徴とするインク記録物である。
【0013】
本発明の記録用インクは、少なくとも水、水溶性有機溶剤、樹脂微粒子、及び表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を有するカーボンブラックを含有する記録用インクであって、
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が110〜350m/g、カーボンブラックの一次粒子径が10〜30nm、及びカーボンブラックのDBP吸油量が100〜180cm/100gであり、
前記カーボンブラック表面の親水基末端の少なくとも一部が、下記構造式(1)から(4)のいずれかで表される化合物で置換されており、
前記カーボンブラックが水中で分散した状態での体積平均粒径が80〜200nmであり、かつ前記記録用インクのpHが8〜11である。
【0014】
本発明のインクジェット記録装置は、本発明の前記記録用インクに刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含む。本発明のインクジェット記録装置においては、本発明の前記記録用インクを用いているので、インクヘッドを構成する部材がニッケルを含む材料から形成されていても、腐食を起こすことなく、長期間にわたって、安定かつ高画質画像が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、DBP吸油量の大きな、いわゆる高ストラクチャーなカーボンブラックを使用しても沈降、凝集、及び増粘を引き起こすことなく、普通紙上で高画像濃度が得られ、かつインクヘッド構成部材の腐食を防止でき、長期保存安定性、吐出安定性、及び定着性に優れたインクジェット記録方式に好適な記録用インク及び該記録用インクを用いたインクジェット記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(記録用インク)
本発明の記録用インクは、少なくとも水、水溶性有機溶剤、樹脂微粒子、及びカーボンブラックを含有してなり、浸透剤、界面活性剤、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0017】
−カーボンブラック−
前記カーボンブラックは、公知のカーボンブラックの製造方法により製造されたものであり、例えば、チャンネル法、オイルファーネス法、ファーネス法、アセチレンブラック法、サーマルブラック法等で製造されたものが好適である。
前記カーボンブラックは、表面を改質処理し、少なくとも1種の親水基をカーボンブラックの表面に直接若しくは他の原子団を介して結合し、分散剤を使用することなく安定に分散させることができる。
前記表面改質方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過硫酸塩、過硼酸塩、過炭酸塩等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩などの酸化剤水溶液中にカーボンブラックを添加して酸化処理する方法、低温酸化プラズマ処理する方法、オゾンによって酸化する方法などが挙げられる。
【0018】
前記カーボンブラックにおける親水基としては、例えば、−COOH、−SOH、−PO、−SONH、及び−SONHCOR(ただし、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有してもよいアリール基のいずれかを表す)から選択されるいずれかが挙げられる。これらの中でも、−COOH、−SOHが特に好ましい。
前記式中Rにおけるアルキル基としては、炭素数1〜12が好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
前記式中Rにおけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基などが挙げられる。
前記式中Rにおけるアルキル基及びアリール基の置換基としては、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基などが挙げられる。
【0019】
前記カーボンブラック表面の親水基末端の少なくとも一部が、下記構造式(1)から(4)のいずれかで表される化合物のカチオンで置換されたカーボンブラックが用いられる。具体的には、下記構造式(1)から(4)のいずれかで表される化合物のカチオンをMとすると、−COOM、−SOM、−POHM、−POなどが挙げられる。このような表面の親水基末端の少なくとも一部が、下記構造式(1)から(4)のいずれかで表される化合物のカチオンで置換されたカーボンブラックは、親水基末端の少なくとも一部がリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニア等によって置換されたものよりも分散性に優れている。
【化3】

【0020】
なお、カーボンブラック表面の親水基末端の少なくとも一部が、下記構造式(1)から(4)のいずれかで表される化合物のカチオンで置換されていることは、例えばNMRで検出することができる。
【0021】
前記カーボンブラックのDBP吸油量は、100〜180cm/100gであり、110〜165cm/100gが好ましい。前記DBP吸油量が100cm/100g未満であると、普通紙で十分な画像濃度が得られなくなることがあり、180cm/100gを超えると、長期間安定して分散状態を維持することが困難となり、沈降や凝集を引き起こす。
ここで、前記DBP吸油量とは、個々の凝集体の空隙率がストラクチャーと相関があるので、ジブチルフタレート(DBP)を吸収した量でストラクチャーを間接的に定量しており、例えばJIS K6217−4の方法で測定することができる。
【0022】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積は110〜350m/gであり、130〜300m/gが好ましい。前記窒素吸着比表面積が110m/g未満であると、表面に十分な親水基を導入することができないため沈殿残渣が増加して、インク作製時の濾過フィルター詰まりや長期保存性の悪化を招くことがあり、350m/gを超えると、十分な画像濃度が得られないことがある。ここで、前記窒素吸着比表面積は、カーボンに吸着した窒素量を測定することで比表面積を知ることができる。例えばJIS K6217−2の方法で測定が可能である。
【0023】
前記カーボンブラックの一次粒子径は、10〜30nmであり、15〜25nmがより好ましい。前記一次粒子径が10nm未満であると、光沢メディア上で良好な光沢度が得られないことがあり、30nmを超えると、分散安定性が得られず、保存後に増粘や凝集を起こすことがある。
ここで、前記一次粒子径は、例えば、以下のようにして測定することができる。まず、カーボンブラックを任意の溶媒で希釈し、コロジオン膜付きメッシュ上に希釈液を噴き付けて乾燥させ、透過型電子顕微鏡で撮影する。撮影した写真をデジタル化し、画像解析を行う。抽出された各一次粒子の投影面積に相当する円の直径の分布より求めた算術平均粒子径として測定することができる。
【0024】
前記カーボンブラックの体積平均粒径は、該カーボンブラックが水中に分散した状態で、80〜200nmが好ましく、70〜100nmがより好ましい。前記体積平均粒径が80nm未満であると、普通紙で十分な画像濃度が得られなくなり、200nmを超えると、吐出性が悪化することがある。
ここで、前記カーボンブラックの体積平均粒径は、例えば、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)により測定することができる。
【0025】
前記記録用インク中のカーボンブラック含有量は3〜15質量%が好ましく、4〜10質量%がより好ましい。前記カーボンブラックの含有量が3質量%未満であると、普通紙での画像濃度が低くなることがあり、15質量%を超えると、光沢メディア上での光沢度が低下してしまうことがある。
【0026】
−樹脂微粒子−
前記樹脂微粒子としては、第1形態では、アクリル(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも2種のアクリル系モノマーを共重合してなるアクリル系樹脂微粒子であることが好ましい。
前記樹脂微粒子としては、第2形態では、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも2種のアクリル系モノマーと、シラン化合物とを共重合してなるアクリル系樹脂微粒子であり、該アクリル系樹脂微粒子が加水分解性シリル基を含まないことが好ましい。
ここで、前記重合としては、例えば、ラジカル重合、乳化重合、分散重合、シード重合、懸濁重合などが挙げられる。
【0027】
前記アクリル系モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリロイルモルフォリン、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアクリル酸エステルモノマー;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルモノマー;N−メチロールアクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド等のアミド系アクリレート;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸含有モノマーなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルが特に好ましい。
なお、必要に応じてその他の重合性モノマーを用いることもできる。該その他の重合性モノマーとしては、例えばスチレン等の芳香族ビニルモノマー、アクリルニトリル等の不飽和ニトリル、酢酸ビニル等のビニルエステルなどが挙げられる。
【0028】
前記シラン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
また、一般的にシランカップリング剤として知られている単量体を用いることもでき、その例としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、などが挙げられる。
【0029】
前記加水分解性シリル基とは、加水分解性基を含むシリル基を意味する。前記加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、アミド基、アセトキシ基、アミノ基、イソプロペノキシ基等が挙げられる。前記加水分解性シリル基としては、例えば、ハロゲノシリル基、アシロキシシリル基、アミドシリル基、アミノキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、アルコキシシリル基、チオアルコキシシリル基等が挙げられる。
前記シリル基は、加水分解してシラノール基となり、該シラノール基は脱水縮合してシロキサン結合が生じる。
本発明においては、シリコーン変性アクリル樹脂中の加水分解性シリル基は、重合反応を経て加水分解して消失し、前記シリコーン変性アクリル樹脂中には加水分解性シリル基を含まない。前記加水分解性シリル基が残存していると、記録用インクとしたときの保存性が悪化することがある。
前記シリコーン変性アクリル樹脂が加水分解性シリル基を含まないことの確認は、原材料における29Si−NMRのピークとサンプルの29Si−NMRのピークとを比較し、加水分解性シリル基によるピークが消失していることにより行うことができる。
前記シリコーン変性アクリル樹脂は、熱安定性に優れており、熱エネルギーを印加してインクを飛翔させる手段をとる場合には、コゲーションの発生がなく、安定した吐出が可能となる。
【0030】
前記樹脂微粒子の合成の際には、乳化剤を用いることが好ましい。該乳化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル又はその塩、アルキルナフタレンスルホン酸又はその塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、エチレンジアミンのポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル又はその塩、芳香族又は脂肪族リン酸エステル又はその塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸塩、ラウリル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルフェニルエーテルジスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン脂肪酸エステル、ラウリルアルコールエトキシレート、ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ラウリルエーテルリン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、などが挙げられる。これらの塩としては、例えば、ナトリウム、アンモニウムなどが挙げられる。
また、前記乳化剤として、不飽和二重結合を有する反応性乳化剤を使用することもできる。該反応性乳化剤としては、市販品としては、例えば、アデカリアソープSE、NE、PP(いずれも、旭電化工業株式会社製);ラテムルS−180(花王株式会社製);エレミノールJS−2、エレミノールRS−30(いずれも、三洋化成工業株式会社);アクアロンRN−20(第一工業製薬株式会社製)などが挙げられる。
【0031】
前記樹脂微粒子の体積平均粒径は、樹脂微粒子が水中で分散した状態で、80〜200nmが好ましく、70〜100nmがより好ましい。前記体積平均粒径が80nm未満であると、充分な画像濃度が得られないことがあり、200nmを超えると、ヘッドで目詰まりを起こしやすく、吐出乱れや不吐出を起こすことがある。
ここで、前記樹脂微粒子の体積平均粒径は、例えば粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)により測定することができる。
前記樹脂微粒子の質量平均分子量は、80,000〜500,000が好ましく、100,000〜300,000がより好ましい。
ここで、前記質量平均分子量は、例えばゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0032】
前記樹脂微粒子の前記記録用インクにおける含有量は、前記カーボンブラック1質量部に対し0.05〜1.2質量部が好ましく、0.2〜1.0質量部がより好ましい。前記樹脂微粒子の含有量が0.05質量部未満であると、十分な定着性が得えられないことがあり、1.2質量部を超えると、十分な画像濃度が得られないことがある。
【0033】
前記樹脂微粒子の最低造膜温度(MFT)は20℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。前記最低造膜温度が20℃を超えると、十分な定着性を得ることができないことがあり、印字部を擦ったりマーカーでなぞったりすると顔料が取れて記録媒体を汚してしまうことがある。
ここで、前記最低造膜温度(MFT)は、例えば、造膜温度測定装置により測定することができる。
【0034】
−水溶性有機溶剤−
前記水溶性有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
前記多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等が挙げられる。
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタムなどが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、モノエタノ−ルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、チオジグリコールなどが挙げられる。
これらの中でも、溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果が得られる点から、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンが好ましく、グリセリン、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0035】
前記水溶性有機溶剤の前記記録用インク中における含有量は、15〜40質量%が好ましく、20〜35質量%がより好ましい。前記含有量が少なすぎると、ノズルが乾燥しやすくなり液滴の吐出不良が発生することがあり、多すぎるとインク粘度が高くなり、適正な粘度範囲を超えてしまうことがある。
【0036】
−浸透剤−
前記浸透剤としては、炭素数8〜11のポリオール化合物、又はグリコールエーテル化合物が好適である。
前記炭素数8〜11のポリオール化合物としては、例えば2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが特に好ましい。
前記グリコールエーテル化合物としては、例えば多価アルコールアルキルエーテル化合物、多価アルコールアリールエーテル化合物などが挙げられる。
前記多価アルコールアルキルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
【0037】
前記浸透剤の前記記録用インクにおける含有量は0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。前記含有量が少なすぎると、インクの紙への浸透性が劣り、搬送時にコロで擦られて汚れが発生したり、両面印字のため記録媒体の記録面を反転させる際に搬送ベルトにインクを付着させて汚れが発生したり、高速印字や両面印字に対応できないことがある。一方、前記含有量が多すぎると、印字ドット径が大きくなり、文字の線幅が広くなったり、画像鮮明度が低下することがある。
【0038】
−界面活性剤−
前記界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記アニオン界面活性剤としては、例えばアルキルアリル、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテルエステル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンオレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、エーテルカルボキシレート、スルホコハク酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、脂肪酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ナフテン酸塩などが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩が特に好ましい。
【0040】
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えばアセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0041】
前記カチオン界面活性剤としては、例えばアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、脂肪族アミン塩、ベンザルコニウム塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えばイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン誘導体、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシンなどが挙げられる。
【0042】
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物が挙げられる。
【0043】
【化4】

ただし、前記一般式(1)中、mは、0〜10の整数を表す。nは、1〜40の整数を表す。
【化5】

ただし、前記一般式(2)中、RFは、CF又はCFCFを表す。mは6〜25の整数を表し、nは1〜4の整数を表し、pは1〜4を表す。
【化6】

ただし、前記一般式(3)中、RFは、CF又はCFCFを表す。qは1〜6の整数を表す。
【0044】
前記一般式(1)〜(3)で表される化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン化合物、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物などが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤の具体的な市販品としては、入手が容易であることから、例えば、ソフタールEP7025(株式会社日本触媒製);サーフロンS−111,S−112,S−113,S121,S131,S132,S−141,S−145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC−93,FC−95,FC−98,FC−129,FC−135,FC−170C,FC−430,FC−431,FC−4430(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470,F−1405,F474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニールFS−300,FSN,FSN−100,FSO(いずれも、デュポン社製)、エフトップEF−351,352,801,802(いずれも、ジェムコ株式会社製)などが好適に挙げられる。これらの中でも,信頼性と発色向上に関して良好なゾニールFS−300、FSN、FSN−100、FSO(いずれもデュポン社製)が、特に好適に使用できる。
なお、前記界面活性剤の添加量は、顔料を安定に分散させ、本発明の他の効果を損なわない範囲で適宣調整することができる。
【0045】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができ、例えば、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
【0046】
前記防腐防黴剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。
【0047】
前記pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響をおよぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて任意の物質を使用することができる。該pH調製剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物;水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。
【0048】
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、などが挙げられる。
【0049】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤、などが挙げられる。
前記フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトライキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。
前記アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ジヒドロキフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンなどが挙げられる。
前記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイドなどが挙げられる。
前記リン系酸化防止剤としては、例えばトリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイトなどが挙げられる。
【0050】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられる。
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
前記サリチレート系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどが挙げられる。
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどが挙げられる。
前記ニッケル錯塩系紫外線吸収剤としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−n−ブチルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)トリエタノールアミンニッケル(II)などが挙げられる。
【0051】
本発明の記録用インクは、少なくとも水、水溶性有機溶剤、樹脂微粒子、及び表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を有するカーボンブラック、更に必要に応じてその他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、更に必要に応じて攪拌混合して製造する。前記分散は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシャイカー、超音波分散機等により行うことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行うことができる。
【0052】
本発明の記録用インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
【0053】
前記粘度は、25℃で、6〜20mPa・sが好ましく、5〜10mPa・sがより好ましい。前記粘度が20mPa・sを超えると、吐出安定性の確保が困難になることがあり、6mPa・s未満であると、滲みやブリードが発生し、画質が低下することがある。
前記表面張力としては、20℃で、25〜55mN/mが好ましい。前記表面張力が、25mN/m未満であると、記録媒体上での滲みが顕著になり、安定した噴射が得られないことがあり、55mN/mを超えると、記録媒体へのインク浸透が十分に起らず、乾燥時間の長時間化を招くことがある。
前記pHは、8〜11である。前記pHが8未満であると、インクヘッド構成部材の耐腐食性が低下することがある。
前記pHは、例えばPHメーター(MODEL HM3A、東亜電波工業株式会社製)などにより測定することができる。
【0054】
本発明の記録用インクの着色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどが挙げられる。これらの着色を2種以上併用したインクセットを使用して記録を行うと、多色画像を記録することができ、全色併用したインクセットを使用して記録を行うと、フルカラー画像を記録することができる。
【0055】
本発明の記録用インクは、インクヘッドとして、インク流路内のインクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの(特開平2−51734号公報参照)、あるいは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させるいわゆるサーマル型のもの(特開昭61−59911号公報参照)、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで,インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの(特開平6−71882号公報参照)などいずれのインクヘッドを搭載するプリンタにも良好に使用できる。
【0056】
本発明の記録用インクは、各種分野において好適に使用することができ、インクジェット記録方式による画像記録装置(プリンタ等)において好適に使用することができ、例えば、印字又は印字前後に被記録用紙及び前記記録用インクを50〜200℃で加熱し、印字定着を促進する機能を有するもののプリンタ等に使用することもでき、以下の本発明のインクカートリッジ、インク記録物、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法に特に好適に使用することができる。
【0057】
<インクカートリッジ>
本発明で用いられるインクカートリッジは、本発明の前記記録用インクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有してなる。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で
形成されたインク袋などを少なくとも有するもの、などが好適に挙げられる。
【0058】
次に、インクカートリッジについて、図1及び図2を参照して説明する。ここで、図1は、本発明のインクカートリッジの一例を示す図であり、図2は図1のインクカートリッジ200のケース(外装)も含めた図である。
インクカートリッジ200は、図1に示すように、インク注入口242からインク袋241内に充填され、排気した後、該インク注入口242は融着により閉じられる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置に供給される。
インク袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋241は、図2に示すように、通常、プラスチック製のカートリッジケース244内に収容され、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
【0059】
本発明のインクカートリッジは、本発明の前記記録用インク(インクセット)を収容し、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いることができ、また、後述する本発明のインクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いるのが特に好ましい。
【0060】
(インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録装置は、インク飛翔手段を少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば刺激発生手段、制御手段等を有してなる。
本発明のインクジェット記録方法は、インク飛翔工程を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば刺激発生工程、制御工程等を含む。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクジェット記録装置により好適に実施することができ、前記インク飛翔工程は前記インク飛翔手段により好適に行うことができる。また、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
【0061】
−インク飛翔工程及びインク飛翔手段−
前記インク飛翔工程は、前記本発明の記録用インクに、刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録する工程である。
前記インク飛翔手段は、前記本発明の記録用インクに、刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録する手段である。該インク飛翔手段としては、特に制限はなく、例えば、インク吐出用の各種のインクヘッド、などが挙げられる。
前記インクヘッドを構成する液室部、流体抵抗部、振動板、ノズル部材及びノズルプレート部材から選択される少なくとも一部が、ニッケルを含む材料から形成されていることが加工性や耐久性に優れている点から好ましい。
前記ニッケルを含む材料としては、例えば、ニッケル、ニッケルとフッ素系高分子(PTRE)の共析メッキ、などが挙げられる。
【0062】
また、インクジェットノズルのノズル径は、30μm以下が好ましく、1〜20μmが好ましい。
また、インクヘッド上にインクを供給するためのサブタンクを有し、該サブタンクにインクカートリッジから供給チューブを介してインクが補充されるように構成することが好ましい。
【0063】
前記刺激は、例えば、前記刺激発生手段により発生させることができ、該刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、熱(温度)、圧力、振動、光、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
【0064】
なお、前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライト、などが挙げられ、具体的には、例えば、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータ等、などが挙げられる。
【0065】
前記記録用インクの飛翔の態様としては、特に制限はなく、前記刺激の種類等応じて異なり、例えば、前記刺激が「熱」の場合、記録ヘッド内の前記記録用インクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを例えばサーマルヘッド等を用いて付与し、該熱エネルギーにより前記記録用インクに気泡を発生させ、該気泡の圧力により、該記録ヘッドのノズル孔から該記録用インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。また、前記刺激が「圧力」の場合、例えば記録ヘッド内のインク流路内にある圧力室と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小して、前記記録ヘッドのノズル孔から該記録用インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。
【0066】
前記飛翔させる前記記録用インクの液滴は、その大きさとしては、例えば、3〜40plとするのが好ましく、その吐出噴射の速さとしては5〜20m/sとするのが好ましく、その駆動周波数としては1kHz以上とするのが好ましく、その解像度としては300dpi以上とするのが好ましい。
【0067】
なお、前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0068】
本発明のインクジェット記録装置により本発明のインクジェット記録方法を実施する一の態様について、図面を参照しながら説明する。図3に示すインクジェット記録装置は、装置本体101と、装置本体に装着した用紙を装填するための給紙トレイ102と、装置本体に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ103と、インクカートリッジ装填部104とを有する。なお、図3中、111は上カバー、112は前面を表す。
インクカートリッジ装填部104の上面には、操作キーや表示器などの操作部105が配置されている。インクカートリッジ装填部104は、インクカートリッジ201の脱着を行うための開閉可能な前カバー115を有している。
【0069】
装置本体101内には、図4及び図5に示すように、図示を省略している左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド131とステー132とでキャリッジ133を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ(不図示)によって図5で矢示方向に移動走査する。
【0070】
キャリッジ133には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色の記録用インク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド134を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド134を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを記録用インクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
また、キャリッジ133には、記録ヘッド134に各色のインクを供給するための各色のサブタンク135を搭載している。サブタンク135には、図示しない記録用インク供給チューブを介して、インクカートリッジ装填部105に装填された本発明のインクカートリッジ201から本発明の前記記録用インクが供給されて補充される。
【0071】
一方、給紙トレイ103の用紙積載部(圧板)141上に積載した用紙142を給紙するための給紙部として、用紙積載部141から用紙142を1枚ずつ分離して給送する半月コロ(給紙コロ143)及び給紙コロ143に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド144を備え、この分離パッド144は給紙コロ143側に付勢されている。
【0072】
この給紙部から給紙された用紙142を記録ヘッド134の下方側で搬送するための搬送部として、用紙142を静電吸着して搬送するための搬送ベルト151と、給紙部からガイド145を介して送られる用紙142を搬送ベルト151との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ152と、略鉛直上方に送られる用紙142を略90°方向転換させて搬送ベルト151上に倣わせるための搬送ガイド153と、押さえ部材154で搬送ベルト151側に付勢された先端加圧コロ155とが備えられ、また、搬送ベルト151表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ156が備えられている。
【0073】
搬送ベルト151は、無端状ベルトであり、搬送ローラ157とテンションローラ158との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。この搬送ベルト151は、例えば、抵抗制御を行っていない厚み40μm程度の樹脂材、例えば、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。搬送ベルト151の裏側には、記録ヘッド134による印写領域に対応してガイド部材161が配置されている。なお、記録ヘッド134で記録された用紙142を排紙するための排紙部として、搬送ベルト151から用紙142を分離するための分離爪171と、排紙ローラ172及び排紙コロ173とが備えられており、排紙ローラ172の下方に排紙トレイ103が配されている。
【0074】
装置本体101の背面部には、両面給紙ユニット181が着脱可能に装着されている。両面給紙ユニット181は、搬送ベルト151の逆方向回転で戻される用紙142を取り込んで反転させて再度カウンタローラ152と搬送ベルト151との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット181の上面には手差し給紙部182が設けられている。
【0075】
このインクジェット記録装置においては、給紙部から用紙142が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙142は、ガイド145で案内され、搬送ベルト151とカウンタローラ152との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド153で案内されて先端加圧コロ155で搬送ベルト151に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ156によって搬送ベルト151が帯電されており、用紙142は、搬送ベルト151に静電吸着されて搬送される。そこで、キャリッジ133を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド134を駆動することにより、停止している用紙142にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙142を所定量搬送後、次行の記録を行う。記録終了信号又は用紙142の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙142を排紙トレイ103に排紙する。
そして、サブタンク135内の記録用インクの残量ニアーエンドが検知されると、インクカートリッジ201から所要量の記録用インクがサブタンク135に補給される。
【0076】
このインクジェット記録装置においては、本発明のインクカートリッジ201中の記録用インクを使い切ったときには、インクカートリッジ201における筐体を分解して内部のインク袋だけを交換することができる。また、インクカートリッジ201は、縦置きで前面装填構成としても、安定した記録用インクの供給を行うことができる。したがって、装置本体101の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納したり、あるいは装置本体101の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジ201の交換を容易に行うことができる。
【0077】
なお、ここでは、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット記録装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
【0078】
また、本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法は、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
【0079】
以下、本発明を適用したインクヘッドについて示す。
図6は、本発明の一実施形態に係るインクヘッドの要素拡大図、図7は、同ヘッドのチャンネル間方向の要部拡大断面図である。
このインクヘッドは、インク供給口(不図示)と共通液室1bとなる彫り込みを形成したフレーム10と、流体抵抗部2a、加圧液室2bとなる彫り込みとノズル3aに連通する連通口2cを形成した流路板20と、ノズル3aを形成するノズル板と、凸部6a、ダイヤフラム部6b及びインク流入口6cを有する振動板60と、該振動板60に接着層70を介して接合された積層圧電素子50と、該積層圧電素子50を固定しているベース40を備えている。
ベース40は、チタン酸バリウム系セラミックからなり、積層圧電素子50を2列配置して接合している。
積層圧電素子50は、厚さ10〜50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層と、厚さ数μm/1層の銀・パラジウム(AgPd)からなる内部電極層とを交互に積層している。内部電極層は両端で外部電極に接続する。
積層圧電素子50は、ハーフカットのダイシング加工により櫛歯上に分割され、1つ毎に駆動部5fと支持部5g(非駆動部)として使用する。外部電極の外側はハーフカットのダイシング加工で分割されるように、切り欠き等の加工により長さを制限しており、これらは複数の個別電極となる。他方はダイシングでは分割されずに導通しており共通電極となる。
駆動部の個別電極にはFPC8が半田接合されている。また、共通電極は積層圧電素子の端部に電極層を設けて回し込んでFPC8のGnd電極に接合している。FPC8にはドライバIC(不図示)が実装されており、これにより駆動部5fへの駆動電圧印加を制御している。
【0080】
振動板60は、薄膜のダイヤフラム部6bと、このダイヤフラム部6bの中央部に形成した駆動部5fとなる積層圧電素子50と接合する島状凸部(アイランド部)6aと、支持部に接合する梁を含む厚膜部と、インク流入口6cとなる開口を電鋳工法によるNiメッキ膜を2層重ねて形成している。ダイヤフラム部の厚さは3μm、幅は35μm(片側)である。
この振動板60の島状凸部6aと積層圧電素子50の可動部5f、振動板60とフレーム10の結合は、ギャップ材を含んだ接着層70をパターニングして接着している。
【0081】
流路板20は、シリコン単結晶基板を用いて、流体抵抗部2a、加圧液室2bとなる彫り込み、及びノズル3aに対する位置に連通口2cとなる貫通口をエッチング工法でパターニングした。
エッチングで残された部分が加圧液室2bの隔壁2dとなる。また、このヘッドではエッチング幅を狭くする部分を設けて、これを流体抵抗部2aとしている。
ノズルプレート30は、金属材料、例えば、電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成したもので、インク滴を飛翔させるための微細な吐出口であるノズル3aを多数形成している。このノズル3aの内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成している。また、このノズル3aの径はインク滴出口側の直径で約20〜35μmである。また、各列のノズルピッチは150dpiとした。
このノズルプレート30のインク吐出面(ノズル表面側)は、図示しない撥水性の表面処理を施した撥水処理層3bを設けている。PTFE−Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えば、フッ化ピッチなど)を蒸着コートしたもの、シリコーン系樹脂及びフッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等、インク物性に応じて選定した撥水処理膜を設けて、インクの滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質を得られるようにしている。また、これらの中でも、例えば、フッ素系樹脂としては、色々な材料が知られているが、変性パーフルオロポリオキセタン(ダイキン工業株式会社製、商品名:オプツールDSX)を厚みが30〜100Åとなるように蒸着することで良好な撥水性を得ることができる。
【0082】
インク供給口と共通液室1bとなる彫り込みを形成するフレーム10は樹脂成形で作製されている。
このように構成したインクヘッドにおいては、記録信号に応じて駆動部5fに駆動波形(10〜50Vのパルス電圧)を印加することによって、駆動部5fに積層方向の変位が生起し、振動板60を介して加圧液室2bが加圧されて圧力が上昇し、ノズル3aからインク滴が吐出される。
その後、インク滴吐出の終了に伴い、加圧液室2b内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動パルスの放電過程によって加圧液室2b内に負圧が発生してインク充填行程へ移行する。このとき、インクタンクから供給されたインクは共通液室1bに流入し、共通液室1bからインク流入口6cを経て流体抵抗部2aを通り、加圧液室2b内に充填される。
流体抵抗部2aは、吐出後の残留圧力振動の減衰に効果が有る反面、表面張力による再充填(リフィル)に対して抵抗になる。流体抵抗部を適宜に選択することで、残留圧力の減衰とリフィル時間のバランスが取れ、次のインク滴吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くできる。
【0083】
<インク記録物>
前記インク記録物は、記録媒体上に本発明の前記記録用インクを用いて形成された画像を有してなる。
前記記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記インク記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0085】
−カーボンブラック−
カーボンブラックA〜Hについて、以下のようにして、窒素吸着比表面積、DBP吸油量、及び一次粒子径を測定した。結果を表1に示す。
【0086】
<窒素吸着比表面積の測定>
窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2の方法に準拠して測定した。
【0087】
<DBP吸油量の測定>
DBP吸油量は、JIS K6217−4の方法に準拠して測定した。
【0088】
<一次平均粒径の測定>
酸化処理後のカーボンブラック分散体(固形分20質量%)を水で0.1質量%に希釈し、コロジオン膜付きメッシュ上にこの希釈液を噴き付けて乾燥させた。これを透過型電子顕微鏡で撮影し、写真をデジタル化して抽出された各一次粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(等面積円径)の分布より求めた算術平均径(数平均値)を平均一次粒子径とした。
【0089】
【表1】

【0090】
次に、表1に記載のカーボンブラックを用いて、以下のようにして、カーボンブラック分散体を調製した。なお、カーボンブラック分散体の体積平均粒径は、以下のようにして測定した。
【0091】
<体積平均粒径の測定>
カーボンブラック分散体(固形分20質量%)を水で0.05質量%に希釈し、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社)で体積平均粒子径(D50)を求めた。
【0092】
(調製例1)
−表面処理したカーボンブラック顔料分散液の調製−
表1に示すカーボンブラックA 150gを濃度2mol/Lの過硫酸ナトリウム水溶液3L中に添加し、60℃の温度で10時間攪拌して酸化処理した。酸化したカーボンブラックは限外ろ過を行い残塩分を取り除いた。その後、下記構造式(1)で表される化合物を15.5g添加してpHを8に調整し、余剰の塩類除去するため、更に限外ろ過を行い、得られた水溶液に精製水を加えて固形分を20質量%となるよう調整して、カーボンブラック分散体を調製した。得られたカーボンブラック分散体の体積平均粒径は、125nmであった。
【化7】

【0093】
(調製例2)
表1に示すカーボンブラックA 150gを濃度2mol/Lの過硫酸ナトリウム水溶液3L中に添加し、60℃の温度で10時間攪拌して酸化処理した。酸化したカーボンブラックは限外ろ過を行い残塩分を取り除いた。その後、下記構造式(2)で表される化合物を20.6g添加してpHを8に調整し、余剰の塩類除去するため更に限外ろ過を行い、得られた水溶液に精製水を加えて固形分を20質量%となるよう調整して、カーボンブラック顔料分散体を調製した。得られたカーボンブラック分散体の体積平均粒径は、127nmであった。
【化8】

【0094】
(調製例3)
調製例2において、カーボンブラックAの代わりに表1に示すカーボンブラックBを用いた以外は、調製例2と同様にして、カーボンブラック顔料分散体を調製した。得られたカーボンブラック分散体の体積平均粒径は、125nmであった。
【0095】
(調製例4)
表1に示すカーボンブラックB 150gを濃度2mol/Lの過硫酸ナトリウム水溶液3L中に添加し、60℃の温度で10時間攪拌して酸化処理した。酸化したカーボンブラックは限外ろ過を行い残塩分を取り除いた。その後、下記構造式(3)で表される化合物を20.8g添加してpHを8に調整し、余剰の塩類除去するため、更に限外ろ過を行い、得られた水溶液に精製水を加えて固形分を20質量%となるよう調製して、カーボンブラック顔料分散体を調製した。得られたカーボンブラック分散体の体積平均粒径は、121nmであった。
【化9】

【0096】
(調製例5)
表1に示すカーボンブラックB 150gを濃度2mol/Lの過硫酸ナトリウム水溶液3L中に添加し、60℃の温度で10時間攪拌して酸化処理した。酸化したカーボンブラックは限外ろ過を行い残塩分を取り除いた。その後、下記構造式(4)で表される化合物を25g添加してpHを8に調整し、余剰の塩類除去するため、更に限外ろ過を行い、得られた水溶液に精製水を加えて固形分を20質量%となるよう調整して、カーボンブラック顔料分散体を調製した。得られたカーボンブラック分散体の体積平均粒径は、120nmであった。
【化10】

【0097】
(調製例6)
調製例2において、カーボンブラックAの代わりに表1に示すカーボンブラックCを用いた以外は、調製例2と同様にして、カーボンブラック顔料分散体を調製した。得られたカーボンブラック分散体の体積平均粒径は、81nmであった。
【0098】
(調製例7)
調製例2において、カーボンブラックAの代わりに表1に示すカーボンブラックDを用いた以外は、調製例2と同様にして、カーボンブラック顔料分散体を調製した。得られたカーボンブラック分散体の体積平均粒径は、92nmであった。
【0099】
(調製例8)
調製例2において、カーボンブラックAの代わりに表1に示すカーボンブラックEを用いた以外は、調製例2と同様にして、カーボンブラック顔料分散体を調製した。得られたカーボンブラック分散体の体積平均粒径は、135nmであった。
【0100】
(調製例9)
調製例2において、カーボンブラックAの代わりに表1に示すカーボンブラックFを用いた以外は、調製例2と同様にして、カーボンブラック顔料分散体を調製した。得られたカーボンブラック分散体の体積平均粒径は、96nmであった。
【0101】
(調製例10)
調製例2において、カーボンブラックAの代わりに表1に示すカーボンブラックGを用いた以外は、調製例2と同様にして、カーボンブラック顔料分散体を調製した。得られたカーボンブラック分散体の体積平均粒径は、255nmであった。
【0102】
(調製例11)
調製例2において、カーボンブラックAの代わりに表1に示すカーボンブラックHを用いた以外は、調製例2と同様にして、カーボンブラック顔料分散体を調製した。得られたカーボンブラック分散体の体積平均粒径は、168nmであった。
【0103】
(調製例12)
表1に示すカーボンブラックA 150gを濃度2mol/Lの過硫酸ナトリウム水溶液3L中に添加し、60℃の温度で10時間攪拌して酸化処理した。酸化したカーボンブラックは限外ろ過を行い残塩分を取り除いた。その後、水酸化ナトリウムを添加してpHを8に調整し、余剰の塩類除去するため更に限外ろ過を行い、得られた水溶液に精製水を加えて固形分を20質量%となるよう調整して、カーボンブラック顔料分散体を調製した。得られたカーボンブラック分散体の体積平均粒径は、120nmであった。
【0104】
(合成例1)
−アクリル系樹脂微粒子の合成−
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えたフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、アデカリアソープSR−10(第一工業製薬株式会社製)10g、過硫酸カリウム1g、及び純水286gを仕込み、65℃に昇温した。次に、メタクリル酸メチル160g、アクリル酸2エチルヘキシル100g、アクリル酸30g、アクアロンRN−20(第一工業製薬株式会社製)を10g、過硫酸カリウム4g、及び純水400gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。80℃で更に3時間加熱熟成した後冷却し、水酸化カリウムでpHを7〜8となるよう調整した。
得られたアクリル系樹脂微粒子の固形分は30質量%であった。また、アクリル系樹脂微粒子の粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した体積平均粒子径(D50%)は60nmであった。また、アクリル系樹脂微粒子のGPC法による質量平均分子量は110,000、最低造膜温度(MFT)は0℃であった。
【0105】
(合成例2)
−加水分解性シリル基を含まないシリコーン変性アクリル樹脂微粒子の合成−
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えたフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、アクアロンRN−20(第一工業製薬株式会社製)10g、過硫酸カリウム1g、及び純水286gを仕込み、65℃に昇温した。次に、メタクリル酸メチル150g、アクリル酸2エチルヘキシル100g、アクリル酸20g、ビニルトリエトキシシラン20g、アクアロンRN−20(第一工業製薬株式会社製)を10g、過硫酸カリウム4g、及び純水400gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。80℃で更に3時間加熱熟成した後冷却し、水酸化カリウムでpHを7〜8となるよう調整した。
得られたシリコーン変性アクリル樹脂微粒子の29Si−NMRのピークを原材料における29Si−NMRのピークと比較し、加水分解性シリル基によるピークが消失していることから加水分解性シリル基を含まないことが確認できた。
29Si−NMRの測定条件>
使用機器:NMR(固体測定)
SR−MAS(Sweat Resin−Magic Angle
Spinning)−29Si−NMR測定を行った。
試料管:ジルコニア製
キャップ:ダイフロン製
【0106】
得られた加水分解性シリル基を含まないシリコーン変性アクリル樹脂微粒子の固形分は30質量%であった。また、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した体積平均粒子径(D50%)は130nmであった。また、シリコーン変性アクリル系樹脂微粒子のGPC法による質量平均分子量は150,000、最低造膜温度(MFT)は0℃であった。
【0107】
(合成例3)
−アクリル系樹脂微粒子の合成−
温度計、滴下ロ−ト、還流冷却管を備え、窒素ガスで置換した反応容器内に、イオン交換水129gを仕込んだ。これに、スチレン25g、メタクリル酸メチル34.3g、アクリル酸2−エチルヘキシル35g、アクリル酸1.5g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル4g、アクリルアミド2g、アデカリアソ−プER−20(反応性ノニオン性界面活性剤1g、アデカリアソープSR−10(反応性アニオン性界面活性剤)2.5g、及びイオン交換水76gを混合撹拌し、モノマーエマルジョンを得た。予め、イオン交換水を仕込んだ反応容器内に、このモノマーエマルジョンの2質量%分を初期分割分として添加し、反応容器の内温を65℃に昇温した後、過硫酸アンモニウムの5質量%水溶液6g及び重亜硫酸ナトリウムの2質量%水溶液7.5gを添加し、反応開始させた。反応開始5分後から乳化プレエマルジョンの残り98%の滴下を開始した。
反応容器の内温を70℃に保ち4時間かけて連続的に滴下し、更にその温度で2時間反応する。冷却後水酸化カリウムでpHを7〜8となるよう調整した。
得られたアクリル系樹脂微粒子の固形分は30質量%であった。また、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した体積平均粒子径(D50%)は220nmであった。また、アクリル系樹脂微粒子のGPC法による質量平均分子量は250,000、最低造膜温度(MFT)は20℃であった。
【0108】
(合成例4)
−アクリル系樹脂微粒子の合成−
温度計、滴下ロ−ト、及び還流冷却管を備え、窒素ガスで置換した反応容器内に、イオン交換水129gを仕込んだ。スチレン25g、メタクリル酸メチル34.3g、アクリル酸2−エチルヘキシル35g、アクリル酸1.5g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル4g、アクリルアミド2g、アデカリアソ−プER−20(反応性ノニオン性界面活性剤)0.5g、アデカリアソープSR−10(反応性アニオン性界面活性剤)3g及びイオン交換水76gを、混合撹拌し、モノマーエマルジョンを得る。予めイオン交換水を仕込んだ反応容器内に、このモノマーエマルジョンの2質量%分を初期分割分として添加し、反応容器の内温を65℃に昇温した後、過硫酸アンモニウムの5質量%水溶液6g及び重亜硫酸ナトリウムの2質量%水溶液7.5gを添加し、反応開始させる。反応開始5分後から乳化プレエマルジョンの残り98質量%の滴下を開始する。
反応容器の内温を70℃に保ち4時間かけて連続的に滴下し、更にその温度で2時間反応する。冷却後水酸化カリウムでpHを7〜8となるよう調整した。
得られたアクリル系樹脂微粒子の固形分は30質量%であった。また、粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)で測定した体積平均粒子径(D50%)は315nmであった。また、アクリル系樹脂微粒子のGPC法による質量平均分子量は150,000、最低造膜温度(MFT)は20℃であった。
【0109】
(実施例1)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例1のカーボンブラック分散体・・・6.0質量%(固形分)
・合成例1の樹脂微粒子・・・4.0質量%(固形分)
・1,5−ペンタンジオール・・・21.0質量%
・グリセリン・・・7.0質量%
・2−ピロリドン・・・2.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)・・・1.0質量%
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・57.0質量%
【0110】
(実施例2)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例2のカーボンブラック分散体・・・7.0質量%(固形分)
・合成例2の樹脂微粒子・・・5.0質量%(固形分)
・1,6−ヘキサンジオール・・・16.0質量%
・グリセリン・・・8.0質量%
・下記一般式(1)で表される界面活性剤・・・1.0質量%
【化11】

ただし、前記一般式(1)中、mは2、nは10を表す。
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・61.0質量%
【0111】
(実施例3)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例2のカーボンブラック分散体・・・8.0質量%(固形分)
・合成例1の樹脂微粒子・・・5.5質量%(固形分)
・3−メチル−1,3−ブタンジオール・・・16.0質量%
・グリセリン・・・8.0質量%
・N−メチル−2−ピロリドン・・・2.0質量%
・下記構造式(2)で表される界面活性剤・・・1.0質量%
【化12】

ただし、前記一般式(2)中、RFは、CFを表す。mは2を表し、nは4を表し、pは4を表す。
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・57.5質量%
【0112】
(実施例4)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例2のカーボンブラック分散体・・・6.0質量%(固形分)
・合成例4の樹脂微粒子・・・4.0質量%(固形分)
・ジエチレングリコール・・・22.5質量%
・グリセリン・・・7.5質量%
・2−ピロリドン・・・2.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)・・・1.0質量%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・55.0質量%
【0113】
(実施例5)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例3のカーボンブラック分散体・・・8.0質量%(固形分)
・合成例2の樹脂微粒子・・・5.0質量%(固形分)
・1,3−ブタンジオール・・・17.0質量%
・グリセリン・・・10.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)・・・1.0質量%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・57.0質量%
【0114】
(実施例6)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例4のカーボンブラック顔料分散体・・・8.0質量%(固形分)
・合成例2の樹脂微粒子・・・5.0質量%(固形分)
・1,3−ブタンジオール・・・17.0質量%
・グリセリン・・・10.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)・・・1.0質量%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・57.0質量%
【0115】
(実施例7)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例5のカーボンブラック分散体・・・8.0質量%(固形分)
・合成例2の樹脂微粒子・・・5.0質量%(固形分)
・1,3−ブタンジオール・・・17.0質量%
・グリセリン・・・10.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)・・・1.0質量%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・57.0質量%
【0116】
(比較例1)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例2のカーボンブラック分散体・・・6.0質量%(固形分)
・1,3−ブタンジオール・・・21.0質量%
・グリセリン・・・7.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)・・・1.0質量%
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・63.0質量%
【0117】
(比較例2)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例6のカーボンブラック分散体・・・7.0質量%(固形分)
・合成例1の樹脂微粒子・・・4.0質量%(固形分)
・1,3−ブタンジオール・・・21.0質量%
・グリセリン・・・7.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)・・・1.0質量%
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・58.0質量%
【0118】
(比較例3)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例7のカーボンブラック分散体・・・7.0質量%(固形分)
・合成例1の樹脂微粒子・・・4.0質量%(固形分)
・1,3−ブタンジオール・・・21.0質量%
・グリセリン・・・7.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)1.0質量%
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・58.0質量%
【0119】
(比較例4)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例8のカーボンブラック分散体・・・7.0質量%(固形分)
・合成例1の樹脂微粒子・・・4.0質量%(固形分)
・1,3−ブタンジオール・・・21.0質量%
・グリセリン・・・7.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)・・・1.0質量%
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・58.0質量%
【0120】
(比較例5)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例9のカーボンブラック分散体・・・7.0質量%(固形分)
・合成例1の樹脂微粒子・・・4.0質量%(固形分)
・1,3−ブタンジオール・・・21.0質量%
・グリセリン・・・7.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)・・・1.0質量%
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・58.0質量%
【0121】
(比較例6)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例10のカーボンブラック分散体・・・7.0質量%(固形分)
・合成例1の樹脂微粒子・・・4.0質量%(固形分)
・1,3−ブタンジオール・・・21.0質量%
・グリセリン・・・7.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)・・・1.0質量%
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・58.0質量%
【0122】
(比較例7)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例11のカーボンブラック分散体・・・7.0質量%(固形分)
・合成例1の樹脂微粒子・・・4.0質量%(固形分)
・1,3−ブタンジオール・・・21.0質量%
・グリセリン・・・7.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)・・・1.0質量%
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・58.0質量%
【0123】
(比較例8)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが9になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例12のカーボンブラック分散体・・・7.0質量%(固形分)
・合成例1の樹脂微粒子・・・4.0質量%(固形分)
・1,3−ブタンジオール・・・21.0質量%
・グリセリン・・・7.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)・・・1.0質量%
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・58.0質量%
【0124】
(比較例9)
下記処方のインク組成物を調製し、pHが7.6になるように水酸化リチウム10質量%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクを作製した。
<インク組成>
・調製例1のカーボンブラック分散体・・・7.0質量%(固形分)
・合成例1の樹脂微粒子・・・4.0質量%(固形分)
・1,3−ブタンジオール・・・21.0質量%
・グリセリン・・・7.0質量%
・界面活性剤(ソフタノールEP7025、株式会社日本触媒製)・・・1.0質量%
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール・・・2.0質量%
・イオン交換水・・・58.0質量%
【0125】
次に、得られた実施例1〜7及び比較例1〜9の各記録用インクについて、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表2、表3、及び表4に示す。
【0126】
<インクの体積平均粒径>
各記録インクにおける粒度分布測定装置(マイクロトラックUPA、日機装株式会社製)を用いて体積平均粒子径(D50%)を測定した。
【0127】
<インクの粘度>
各記録用インクにおけるインク粘度は、R型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
【0128】
<インクのpH>
各記録用インクにおけるpHは、pHメーター(MODEL HM3A、東亜電波工業株式会社製)を使用して、23℃で測定した。
【0129】
<画像の鮮明性>
図6〜図7に示すインクヘッド(振動板、及びノズルプレートがニッケルを含む材料で形成)を搭載した図3〜図5に示すようなインクジェットプリンタに、実施例1〜7及び比較例1〜9の各記録用インクを充填してType6200紙(株式会社NBSリコー製)に解像度600dpiで印字を行った。印字乾燥後、二色重ねて境界滲み(ブリード)、及び画像滲み(フェザリング)を目視観察し、下記基準により評価した。また、反射型カラー分光測色濃度計(X−Rite社製)を用いて画像濃度を測定した。このときのインク付着量は9.5g/mであった。
〔評価基準〕
○:滲みの発生がなく鮮明な画像である
△:一部にひげ状の滲みが発生している
×:文字の輪郭がはっきりしないほど滲みが発生している
【0130】
<定着性>
図6〜図7に示すインクヘッド(振動板、及びノズルプレートがニッケルを含む材料で形成)を搭載した図3〜図5に示すようなインクジェットプリンタに、実施例1〜7及び比較例1〜9の各記録用インクを充填してType6200紙(株式会社NBSリコー製)に600dpiの解像度で印字を行った。印字乾燥後、綿布で印字部を10回擦り、綿布への顔料の転写具合を目視観察し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
〇:綿布への顔料転写は殆どみられない
△:綿布へ若干の顔料転写が見られる
×:明らかに綿布へ顔料が転写している
【0131】
<耐マーカー性>
図6〜図7に示すインクヘッド(振動板、及びノズルプレートがニッケルを含む材料で形成)を搭載した図3〜図5に示すようなインクジェットプリンタに、実施例1〜7及び比較例1〜9の各記録用インクを充填して、Type6200紙(株式会社NBSリコー製)に600dpiの解像度で印字を行った。印字乾燥後、蛍光マーカー(三菱鉛筆株式会社製、PROPUS2)で印字部をなぞり、印字部の顔料が取れることによって発生する汚れ具合を目視観察し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
〇:色落ちによる汚れが全くみられない
△:若干の汚れが見られる
×:マーカーに沿って汚れが広がっている
【0132】
<インク吐出性>
図6〜図7に示すインクヘッド(振動板、及びノズルプレートがニッケルを含む材料で形成)を搭載した図3〜図5に示すようなインクジェットプリンタに、実施例1〜7及び比較例1〜9の各記録用インクを充填して、Type6200紙(株式会社NBSリコー製)に600dpiの解像度で連続200枚印字を行い、吐出乱れ及び不吐出具合について、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
〇:吐出乱れ及び不吐出がみられない
△:3ノズル以下の不吐出、吐出乱れがある
×:4ノズル以上の不吐出、吐出乱れがある
【0133】
<インク保存性>
実施例1〜7及び比較例1〜9の各記録用インクをインクカートリッジに充填して、65℃にて3週間保存し、増粘及び凝集の状態について、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
〇:増粘及び凝集は全くみられない。
△:若干の増粘がみられる。
×:増粘及び凝集が著しい。
【0134】
<インクヘッド構成部材の耐腐食性>
図6〜図7に示すインクヘッド(振動板、ノズルプレートがニッケルを含む材料で形成)を搭載した図3〜図5に示すインクジェットプリンタに、実施例1〜7及び比較例1〜9の各記録用インクを充填して、50℃、60%RHの環境下、1ヶ月間インクジェットプリンタを放置した。その後、記録用インクをプリンタのヘッドから吸引して抜き取り、該インク中のニッケル(Ni)の溶存量を高周波誘導プラズマ発光分析装置(ICP)で測定し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
○:インク中のNiの溶存量が0.5ppm未満
△:インク中のNiの溶存量が0.5ppm以上1.0ppm未満
×:インク中のNiの溶存量が1.0ppm以上
【0135】
【表2】

【0136】
【表3】

*表3中、「−」は測定不能を意味する。
【0137】
【表4】

【0138】
表2〜表4の結果から、実施例1〜7は、比較例1〜9に比べて、吐出安定性、保存安定性、及び定着性に優れ、普通紙上での画像濃度が高く、インクヘッド構成部材の腐食を防止できることが認められた。
これに対し、比較例1は、樹脂微粒子を含有していないので、定着性が劣り、画質、耐マーカー性の結果が不良であった。
比較例9は、インクのpHが7.6と低く、インクヘッド構成部材の耐腐食性が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の記録用インクは、吐出安定性、保存安定性、及び定着性に優れ、普通紙上での画像濃度が高く、インクヘッド構成部材の腐食を防止できるので、インクカートリッジ、インク記録物、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に好適に用いることができる。
本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法は、インクジェット記録方式による各種記録に適用することができ、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、などに特に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】図1は、本発明のインクカートリッジの一例を示す概略図である。
【図2】図2は、図1のインクカートリッジのケースも含めた概略図である。
【図3】図3は、インクジェット記録装置のインクカートリッジ装填部のカバーを開いた状態の斜視説明図である。
【図4】図4は、インクジェット記録装置の全体構成を説明する概略図である。
【図5】図5は、本発明のインクヘッドの一例を示す概略拡大図である。
【図6】図6は、本発明のインクヘッドの他の一例を示す要素概略拡大図である。
【図7】図7は、図6のインクヘッドの要部拡大概略断面図である。
【符号の説明】
【0141】
10 フレーム
20 流路板
30 ノズルプレート
40 ベース
50 積層圧電素子
60 振動板
70 接着層
101 装置本体
102 給紙トレイ
103 排紙トレイ
104 インクカートリッジ装填部
111 上カバー
112 前面
115 前カバー
131 ガイドロッド
132 ステー
133 キャリッジ
134 記録ヘッド
135 サブタンク
141 用紙載置部
142 用紙
144 分離パッド
151 搬送ベルト
152 再度カウンタローラ
156 帯電ローラ
157 搬送ローラ
158 デンションローラ
171 分離爪
172 排紙ローラ
173 排紙コロ
181 両面給紙ユニット
200 インクカートリッジ
201 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジ外装

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水、水溶性有機溶剤、樹脂微粒子、及び表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性を有するカーボンブラックを含有する記録用インクであって、
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が110〜350m/gであり、前記カーボンブラックの一次粒子径が10〜30nmであり、かつ前記カーボンブラックのDBP吸油量が100〜180cm/100gであり、
前記カーボンブラック表面の親水基末端の少なくとも一部が、下記構造式(1)から(4)のいずれかで表される化合物のカチオンで置換されてなり、
前記カーボンブラックが水中で分散した状態での体積平均粒径が80〜200nmであり、かつ前記記録用インクのpHが8〜11であることを特徴とする記録用インク。
【化1】

【請求項2】
樹脂微粒子が、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも2種のアクリル系モノマーを共重合してなるアクリル系樹脂微粒子である請求項1に記載の記録用インク。
【請求項3】
樹脂微粒子が、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも2種のアクリル系モノマーと、シラン化合物とを共重合してなるアクリル系樹脂微粒子であり、該アクリル系樹脂微粒子が加水分解性シリル基を含まない請求項1に記載の記録用インク。
【請求項4】
アクリル系モノマーが、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルから選択される請求項2から3のいずれかに記載の記録用インク。
【請求項5】
樹脂微粒子の質量平均分子量が80,000〜500,000であり、かつ樹脂微粒子が水中で分散した状態での体積平均粒径が80〜200nmである請求項1から4のいずれかに記載の記録用インク。
【請求項6】
樹脂微粒子の最低造膜温度(MFT)が20℃以下である請求項1から5のいずれかに記載の記録用インク。
【請求項7】
樹脂微粒子の記録用インクにおける含有量が、カーボンブラック1質量部に対し0.05〜1.2質量部である請求項1から6のいずれかに記載の記録用インク。
【請求項8】
水溶性有機溶剤が、グリセリン、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−ピロリドン、及びN−メチル−2−ピロリドンから選択される少なくとも1種である請求項1から7のいずれかに記載の記録用インク。
【請求項9】
25℃における粘度が6〜20mPa・sである請求項1から8のいずれかに記載の記録用インク。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の記録用インクに刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
刺激が、熱、圧力、振動及び光から選択される少なくとも1種である請求項10に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
インク飛翔手段が少なくともインクヘッドを有し、該インクヘッドを構成する液室部、流体抵抗部、振動板、ノズル部材及びノズルプレート部材から選択される少なくとも一部が、ニッケルを含む材料から形成されている請求項10から11のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−74887(P2008−74887A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252350(P2006−252350)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】