説明

記録用インク及び該インクを用いるインクジェット記録方法

【課題】親水化処理を施した自己分散型顔料を色材として用いた場合の保存安定性に優れたインクを提供し、特に吐出ノズル先端でのインク乾燥による目詰まりが発生せず、常に吐出応答性、吐出安定性が良好であり、紙上においてにじみ、かぶりのない、高解像度、高濃度で均一な画像が得られるインクジェット記録方式に好適に使用される記録用インク、及び該インクを用いるインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも水、水溶性有機溶媒、および少なくとも1種の親水性基を表面に有する自己分散可能な顔料を含有する記録用インクであって、パントテン酸塩を含有させたことを特徴とする記録用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録方式に適用される記録用インクに関し、また該記録用インクを用いるインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式によるインクジェットプリンタは、普通紙への印字が可能、カラー化が容易、小型で安価、ランニングコストが低いなどの理由から、近年、急速に普及してきている。一般に、インクジェット記録方式に用いられる記録用インクに要求される特性としては、高画質を達成するための色調、画像濃度、滲みなど信頼性を達成するための着色剤の溶解安定性・保存安定性等、記録画像の保存性を確保するための耐水性・耐光性等、高速化を達成するためのインクの速乾性などがあり、従来より、該記録用インクについてこれらの特性を満たすための各種提案がなされている。
【0003】
前記記録用インクに用いる着色剤としては、当初、発色性が良好で信頼性が高い等の点で染料が主流であったが、近年、記録画像に耐光性や耐水性等を付与する目的でカーボンブラック等の顔料を用いた水性顔料インク組成物が注目されている。
【0004】
この種の顔料インク組成物には、着色剤用(カラー用)として市販されている種々の銘柄のカーボンブラックが用いられている。これらの中でも酸性カーボンブラックは、中性乃至塩基性のものに比べ水に対する親和性が比較的よく、水性顔料インク組成物等に用いられる。酸性カーボンブラックは、その表面にカルボキシル基のような酸性基が存在すると考えられている。これらは一般にオゾン、硝酸、過酸化水素、及び窒素酸化物のような常套の酸化剤を使用する気相又は液相酸化法、或いはプラズマ処理等の表面改質法よって、例えばファーネスブラックのようなカラー用のカーボンブラックを適度に酸化することによって得られる。
【0005】
このような従来の酸性カーボンブラック、或いはチャンネルブラックは、ある程度の親水性を示すが、水媒体に対する親和性及び分散安定性が不充分であり、単独では水に分散し難い。そこで、これらを水性顔料インク組成物の着色剤として用いる場合には、水溶性の各種合成高分子及び界面活性剤のようないわゆる顔料分散剤の存在下で分散機を使用して水性媒体中に分散、安定化させる必要がある。
【0006】
例えば、特開昭64−6074号公報(特許文献1)、特開平4−149286号公報(特許文献2)には、酸性カーボンブラックと分散剤(アニオン系界面活性剤や高分子分散剤)と緩衝液を含む水性顔料インク組成物が記載されている。また、特開平3−210373号公報(特許文献3)には、揮発分が3.5〜8重量%の酸性カーボンブラックと水溶性樹脂とを含むインクジェット用インク組成物が記載されている。また、特開平3−134073号公報(特許文献4)には、中性または塩基性カーボンブラックと水溶性樹脂とを含むインクジェット用記録液が記載されている。
【0007】
しかし、分散剤として界面活性剤を用いた場合には、表面張力が必要以上に低下し、印字画質の悪化、泡による印字ぬけ等の問題が発生しやすい。また、高分子分散剤を用いた場合には、粘度が高くなり易くインクジェット特性と分散安定性を両立させることは難しい。また、分散剤を使用する方法の共通の問題点として、インク特性を調整するために加える溶媒や添加剤等と、分散剤との相互作用により、分散が不安定になり易いという問題もある。
【0008】
そこで、分散剤を使用しないで、顔料を親水化処理する方法が検討されてきた。例えば、特開平9−286938号公報(特許文献5)では、次亜ハロゲン酸またはその塩により酸化された酸化カーボンブラックを用いた分散剤を含まない水性顔料インクが開示されている。また、芳香族基やアルキル基を連結基としてカーボンブラック表面に親水基を導入した親水顔料を用いたインク(米国特許第5571311号明細書・・・特許文献6)等が提示されている。
【0009】
また、特開2003−73595号公報(特許文献7)では、これら表面に親水基を導入するカーボンブラックとして中性または塩基性のカーボンブラックを使用することにより吐出安定性及び吐出応答性に優れた水性顔料インクが提示されている。
これら顔料表面の親水化処理により顔料を水性媒体中に自己分散させることにより、前述の分散剤使用に起因する問題点を解決もしくは改善してきた。
【0010】
しかし、これら顔料表面を親水化処理したカーボンブラック等の顔料を使用したインクは、水分の蒸発がない、組成変化がない状態では分散安定性が優れているが、吐出ノズル先端で乾燥により水分が蒸発することにより凝集が生じた場合、分散剤の介在がない分堅い、再分散しにくい凝集体を形成しやすいという問題がある。
【0011】
また一般に、インクジェット記録ヘッドの微細な先端から安定に液滴を発生させたり、水性ボールペンの細いペン先でスムーズに筆記するためには、インクジェット記録ヘッドのオリフィスやボールペンチップでインキが固化することを防止することが必要である。このようなペン先での乾燥防止のため(特開2004−91649号公報・・・特許文献8)、或いはエタノール溶媒系インクジェットインキのノズルでの目詰まり防止のため(特開2004−75730号公報・・・特許文献9)、パントテン酸塩を用いることが開示されている。
【0012】
しかし、界面活性剤、又は高分子の分散剤を使用した顔料分散体にこれらパントテン酸塩を用いた場合は、分散剤との相互作用により顔料分散体の分散安定性を阻害するという問題がある。
【0013】
【特許文献1】特開昭64−6074号公報
【特許文献2】特開平4−149286号公報
【特許文献3】特開平3−210373号公報
【特許文献4】特開平3−134073号公報
【特許文献5】特開平9−286938号公報
【特許文献6】米国特許第5571311号明細書
【特許文献7】特開2003−73595号公報
【特許文献8】特開2004−91649号公報
【特許文献9】特開2004−75730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、親水化処理を施した自己分散型顔料を色材として用いた場合の保存安定性に優れた記録用インクを提供し、特に吐出ノズル先端でのインク乾燥による目詰まりが発生せず、常に吐出応答性、吐出安定性が良好であり、紙上においてにじみ、かぶりのない、高解像度、高濃度で均一な画像が得られるインクジェット記録方式に好適に使用される記録用インク、及び該記録用インクを用いるインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、記録用インク、特にインクジェット記録用インクについて色々の角度から検討を行なってきた結果、以下に示す本発明により上記の目的を達成することを見出した。
即ち、上記課題は本発明の(1)〜(12)によって解決される。
(1)「少なくとも水、水溶性有機溶媒、および少なくとも1種の親水性基を表面に有する自己分散可能な顔料を含有する記録用インクであって、パントテン酸塩を含有させたことを特徴とする記録用インク」;
(2)「前記パントテン酸塩が、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カリウム、パントテン酸カルシウムからなる郡から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)に記載の記録用インク」;
(3)「前記パントテン酸塩の含有量が、インク全重量に対し0.01〜10.0重量%であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の記録用インク」;
(4)「前記自己分散可能な顔料が、カーボンブラックを親水化することにより得られる顔料であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の記録用インク」;
(5)「さらに2−エチル−1,3ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールからなるジオール誘導体の郡から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の記録用インク」;
(6)「前記ジオール誘導体の含有量が、インク全重量に対し0.1〜4.5重量%であることを特徴とする前記(5)に記載の記録用インク」;
(7)「さらに界面活性剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の記録用インク」;
(8)「前記界面活性剤の含有量が、インク全重量に対し0.01〜2.0重量%であることを特徴とする前記(7)に記載の記録用インク」;
(9)「前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤であることを特徴とする前記(7)または(8)に記載の記録用インク」;
(10)「さらに尿素または尿素誘導体を特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の記録用インク」;
(11)「前記尿素または尿素誘導体を記録用インク全量に対して0.1〜5重量%であることを特徴とする前記(10)に記載の記録用インク」;
(12)「記録用インクの液滴を記録ヘッドから吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行なうインクジェット記録方法であって、記録用インクとして前記(1)〜(11)のいずれかに記載の記録用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法」。
【0016】
水、水溶性有機溶媒、少なくとも1種の親水性基を表面に有する自己分散可能な顔料を含む記録用インクは、該親水性基を表面に有する自己分散可能な顔料によりインクとしての分散安定性は確保されるが、インクジェット記録法に使用した場合、長期間印字せずに放置すると吐出ノズル先端でインクが固まってしまい、通常の回復操作を行なっても回復しない問題が発生し、これは、特に高精細な印字を目的としたインク滴量の少ないインクジェット記録装置で使用される微細な吐出ノズルで顕著である。これはインク組成の変化しない(インク中の水や水溶性有機溶媒が蒸発しない)密閉された状態では、親水性基を表面に有する自己分散可能な顔料は安定であるが、吐出ノズル先端で水が蒸発した際、固い凝集体を形成し、吸引等の回復操作においても固まった部分を除去できないためと推定される。
【0017】
これに対し、本発明の記録用インクは、上記の問題は発生せず、かつ良好な分散安定性を保つことができる。通常、記録用インクは、上記の開放系での水分の蒸発を防ぐために湿潤剤として吸湿性の強いグリセリンを入れているが、これだけでは、水分の蒸発を抑えることは困難であり、そこで本発明では吸湿性の強いパントテン酸塩をインクに添加する。このパントテン酸塩の吸湿効果で、インクからの水分蒸発を抑える働きと、また表面を親水化処理した自己分散が可能な顔料の凝集を抑えることにより、吐出ノズル先端での目詰まりを防止する。特に顔料の凝集防止に関しては、通常の界面活性剤または高分子によって分散された顔料分散体より該親水性基を表面に有する自己分散可能な顔料の方の効果が大きい。これはパントテン酸の構造式中にある、アルコール性水酸基、カルボキシル基およびアミド基が分散粒子表面の親水性基と互いに反発し合い、凝集を防止しているのに対し、分散剤を使用した顔料分散体の場合は、粒子の周りに分散剤が存在するためそのような効果が得られないためと考えられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少なくとも水、水溶性有機溶媒、および少なくとも1種の親水性基を表面に有する自己分散可能な顔料を含有する記録用インクであって、パントテン酸塩を含有させることにより、吐出安定性及び吐出応答性に優れ、ノズルの詰まり、保存安定性といったインクに要求される諸特性において高い信頼性を有し、印刷物の印字濃度が高く、かつ印字ムラが発生しにくい記録用インクを提供することができる。
また、本発明によれば、所謂普通紙とインクジェット用コート紙のいずれに対しても良好な濡れ性を示し、浸透速度が速く滲みが少ない記録用インクを提供することができる。
さらに、本発によれば、該記録用インクを用いて印字濃度が高く、印字ムラ、滲み等の発生がない印字が可能なインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、発明をさらに詳細に説明する。
本発明によるインクジェット記録用等に適した記録用インクは、少なくとも水、水溶性有機溶媒、および親水性基を表面に有する自己分散可能な顔料を含有する記録用インクであって、パントテン酸塩を含有させたことを特徴とする。
【0020】
本発明に用いられるパントテン酸塩は、自然界に広く存在するビタミンB群の一種であるパントテン酸の塩であり、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、亜鉛等からなる金属の塩を使用できる。
【0021】
前記パントテン酸塩は記録用インク全量に対して好ましくは0.01〜10.0重量%、より好ましくは0.1〜5.0重量%の範囲で配合される。0.01重量%より少ないと吸湿性による乾燥防止効果或いは凝集防止効果が得難く、10.0重量%より多いと添加した塩が溶解しきれずにインク中の固形分が増加し、インクの粘度が上昇して吐出応答性を悪くする。
【0022】
本発明における少なくとも1種の親水性基を表面に有する自己分散可能な顔料としては、表面に親水性官能基を有し、所謂高分子分散剤または界面活性剤を含まず、自身で溶媒中に分散可能な顔料が用いられる。顔料が有する親水性官能基としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性のいずれの親水性官能基も使用でき、特に、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、りん酸基の単独もしくは2種以上の組み合わせが好ましく、この中でもカルボキシル基の単独、もしくはカルボキシル基を含む2種以上の組み合わせがさらに好ましい。カルボキシル基、スルホン酸基、あるいはりん酸基を有する場合、そのまま遊離酸の状態でも使用できるが、一部又は全てが塩を形成している方が分散性の点で有利であり、好ましい。塩を形成する物質としては、各種の塩基性物質が使用できるが、アルカリ金属、アンモニウム、有機アンモニウム化合物の単独又は2種以上の組み合わせが好ましい。親水性官能基を導入する顔料としては、無機および有機顔料のいずれも使用できる。
【0023】
本発明に用いられる顔料は、特にその種類を限定することなく、無機顔料、有機顔料を使用することができる。無機顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄等に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0024】
顔料として用いるカーボンブラックの種類は特に限定されない。上述の酸性カーボンブラック、中性カーボンブラック、アルカリ性カーボンブラックのいずれでも使用できる。
【0025】
本発明において好ましく用いられる顔料の具体例としては、以下のものが挙げられる。黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
【0026】
カーボンブラックの具体例には、三菱化学社製の#10B、#20B、#30、#33、#40、#44、#45、#45L、#50、#55、#95、#260、#900、#1000、#2200B、#2300、#2350、#2400B、#2650、#2700、#4000B、CF9、MA8、MA11、MA77、MA100、MA220、MA230、MA600及びMCF88等;キャボット社製のモナーク120、モナーク700、モナーク800、モナーク880、モナーク1000、モナーク1100、モナーク1300、モナーク1400、モーガルL、リーガル99R、リーガル250R、リーガル300R、リーガル330R、リーガル400R、リーガル500R及びリーガル660R等;デグサ社製のプリンテックスA、プリンテックスG、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス55、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック4、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック5、スペシャルブラック6、スペシャルブラック100、スペシャルブラック250、カラーブラックFW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160及びカラーブラックS170等が挙げられる。
【0027】
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、138、153、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等がある。その他顔料(例えばカーボン)の表面を樹脂等で処理し、水中に分散可能としたグラフト顔料や、顔料(例えばカーボン)の表面にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした加工顔料等が使用できる。
【0028】
本発明において好ましく用いられる上記親水性基を表面に有する自己分散可能な顔料としては、市販品を利用することも可能であり、好ましい例としてはキャボット社のカルボキシル基変性タイプCAB−O−JET300やスルホン基変性タイプCAB−O−JET200、オリエント化学工業株式会社製 BONJET BLACK CW−1、CW−2、等の顔料分散液等が挙げられる。
【0029】
インク中の顔料分散粒子の数平均粒子径は、好ましくは15〜110nm、より好ましくは20〜90nmの範囲に調整される。数平均粒子径が15nm未満では記録物に透明感が出て、充分な光学濃度が得られない。一方、110nmを超えると、粒子の沈降が起こりやすく、インクの保存安定性が低下しやすい。
【0030】
インク組成物への顔料の含有量は、2〜10重量%が好ましく、より好ましくは3〜8重量%程度である。顔料の含有量が2重量%未満では印字又は筆記濃度が不充分となり、10重量%を越えると顔料が凝集し易くなり長期保存中に沈澱が発生したり、吐出安定性が悪くなる。
【0031】
本発明においては、25℃の水中において0.1重量%以上4.5重量%未満の間の溶解度を有するジオールおよび/またはグリコールエーテルを記録用インク全重量に対して0.1〜10.0重量%添加することによって、インクのヘッドインク流路内壁への濡れ性が改良され、少量の添加量でも吐出安定性および周波数安定性が得られた。
【0032】
25℃の水中において4.5重量%以上の溶解度を有するジオールは溶解性が高いために浸透剤としての機能が殆ど示さない。これに対し25℃の水中において0.1重量%以上4.5重量%未満の間の溶解度を有する浸透剤は溶解度が低い代わりに浸透性が非常に高いという長所がある。したがって、25℃の水中において0.1重量%以上4.5重量%未満の間の溶解度を有する浸透剤と他の溶剤との組み合わせや他の界面活性剤との組み合わせで非常に高浸透性のインクを作成することが可能となる。
【0033】
前記25℃の水中において0.1重量%以上4.5重量%未満の間の溶解度を有するジオールおよび/またはグリコールエーテルとしては、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル等が例示されるが、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールが特に好ましい。
【0034】
インク組成物への前記ジオールおよび/またはグリコールエーテルの含有量は、0.1〜4.5重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3重量%程度である。前記ジオールおよび/またはグリコールエーテルの含有量が0.1重量%未満ではインクの浸透性または濡れ性への効果が不充分となり、4.5重量%を越えると未溶解分がインク中に分離し、顔料の凝集を引起す要因となる。
【0035】
本発明のインクジェット記録用インクには、界面活性剤を含有させることが好ましい。ここで用いる界面活性剤は、いわゆる顔料の分散剤として用いるものではなく、自己分散性の顔料の分散安定性を補助する効果や、インクを被記録媒体としての紙中に浸透させる効果等を企図するためのものである。本発明のインクジェット記録用インクに使用できる界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、好ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤である。
【0036】
アニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩界面活性剤、又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸塩、又はポリオキシアルキレンアリールエーテルスルホン酸塩界面活性剤を含有することが好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩界面活性剤の例としては、日光ケミカルズ社製のECT−3NEX、ECTD−3NEX、ECTD−6NEX、ECT−3、ECT−7、AKYPO RLM 45NV(CHEM−Y)、AKYPO RLM45(CHEM−Y)、AKYPO RLM100NV(CHEM−Y)、AKYPO RLM100(CHEM−Y)などを用いることができ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸塩、又はポリオキシアルキレンアリールエーテルスルホン酸塩界面活性剤の例としては、日光ケミカルズ社製のNICOLL SBL−4T、第一工業製薬社製のハイテノールN−07、ハイテノールN−08、ハイテノールN−17、ハイテノールNE−05、ハイテノールNE−15、ハイテノールNF−13、ハイテノール08E、ハイテノール12、ハイテノール18Eなどを用いることができる。特にECTD−3NEXやECTD−6NEX、又はNICOLL SBL−4T、ハイテノール08E、ハイテノール18Eを用いると良好な記録品質を示す。
【0037】
また、非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などの含フッ素系界面活性剤などがある。
【0038】
これら界面活性剤の添加量は、インク組成物の0.01〜2.0重量%程度が好ましく、より好ましくは0.1〜1.5重量%程度である。この範囲のアルキルエーテルカルボン酸塩は、にじみをより低減させる。
【0039】
本発明のインクジェット記録用等の記録用インクには、吐出ノズルの目詰まり防止の点で、尿素または尿素誘導体を添加することが好ましく、より好ましくは尿素を添加する。本発明に用いることができる尿素誘導体としては、N,N−ジメチル尿素、N,N−ジエチル尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素等が挙げられる。尿素または尿素誘導体の含有量は、好ましくはインクの0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜4重量%で使用される。含有量が0.1重量%未満では目詰まりに対する効果がなく、5重量%を超えると保存安定性が悪くなる。
【0040】
また、本発明において用いられる水溶性有機溶媒は、水と共に主溶媒を形成するものであり、水との相溶性を有し、インク組成物中の他の成分と好ましくない相互作用を有さないものである限り特に限定されない。
【0041】
本発明のインクは水を液媒体として使用するものであるが、インクを所望の物性にするため、インクの乾燥を防止するために、また、溶解安定性を向上するため等の目的で、例えば下記の水溶性有機溶媒が使用される。これら水溶性有機溶媒は複数混合して使用してもよい。下記の水溶性有機溶媒は、25℃の水中において4.5重量%以上の溶解度を有するため、前記したジオール、グリコールエーテルのような浸透剤としてのとしての効果は弱いが、インクの乾燥防止またインクの物性調整等のために使用される。
【0042】
グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量600以下のポリエチレングリコール、1、3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソプチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−へキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0043】
グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
【0044】
含窒素複素環化合物としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0045】
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0046】
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、その他:プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0047】
これら有機溶媒の中でも、特にジエチレングリコール、チオジエタノール、ポリエチレングリコール200〜600、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペトリオール、1,4一ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。これらは溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果が得られる。
【0048】
これらの水溶性有機溶媒は単独で用いても、2種以上混合してもよい。水溶性有機溶媒の含有量は、記録用インク全重量に対し、好ましくは1〜60重量%、より好ましくは5〜40重量%で使用される。
【0049】
本発明の記録用インクは、糖類を含有させることができる。糖類の添加によってインクジェット記録ヘッドのノズルの目詰まりを有効に防止する。糖類は単糖類、多糖類のいずれであってもよく、その具体例としては、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の他にアルギン酸及びその塩、シクロデキストリン類、セルロース類が挙げられる。その添加量は記録用インク全重量の0.1〜10重量%程度が好ましく、0.1〜5重量%程度がさらに好ましく、特に好ましくは1〜3重量%である。
【0050】
また、本発明の記録用インクは、その諸特性を改善するために防腐剤、防かび剤、pH調整剤、染料溶解助剤、酸化防止剤、導電率調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤などを含有させることができる。
【0051】
防腐剤、防かび剤の好ましい具体例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジペンジソチアゾリン−3−オン(ICI社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルLV)などが挙げられる。
【0052】
また、pH調整剤、染料溶解助剤、酸化防止剤の例としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類及びそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、4級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビューレット、ジメチルビューレット、テトラメチルビューレットなどのビューレット類などや、L−アスコルビン酸及びその塩などが挙げられる。
【0053】
また、本発明の記録用インクは、酸化防止剤、紫外線吸収剤を含有させることができる。それらの市販品の例としては、チバガイギー社製のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024などがある。
【0054】
また、本発明の記録用インクは、粘度調整剤を含有させることができる。その具体例としては、ロジン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチなどがある。
【0055】
さらに、本発明の記録用インクは、キレート試薬を含有させることができ、キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等がある。その目的に応じて水溶性紫外線吸収剤、水溶性赤外線吸収剤、界面活性剤を添加することができる。
【0056】
本発明にかかる記録用インクは、筆記用具インクやインクジェット記録用インクに用いることができる。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させ、液滴を吐出する記録方法、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出する記録方法があり、それらの記録方法に本発明の記録用インクを好適に用いることができる。インクジェット記録用に用いる場合には、該インクはインクジェットヘッドから吐出可能である特性を有することが好ましい。インクジェットヘッドからの吐出性という観点から、該インクの特性として、表面張力は25〜60mN/mが好ましく、さらには30〜50mN/mが好ましい。粘度は、1.5〜10.0mPa・sが好ましく、さらには2.0〜8.0mPa・sが好ましい。pHはインク中の顔料粒子分散安定性を確保するため、6.0〜11.0が好ましく、さらには6.5〜10.0が好ましい。
【実施例】
【0057】
以下に本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例に記載の各成分の量(%)は重量基準である。以下に示す組成のインク組成物を調製した。
【0058】
[実施例1]
下記処方のインク組成物を作成し、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整した。その後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターで濾過を行ない記録用インクを得た。
カルボキシル基付加型カーボンブラック分散液
CAB−O−JET300(キャボット・
スペシャルティ・ケミカルズ・インク製) 5重量%
(顔料固形分 100%換算)
パントテン酸ナトリウム 1重量%
グリセリン 5重量%
ジエチレングリコール 15重量%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2重量%
ECTD−3NEX(日光ケミカルズ製アニオン性界面活性剤) 0.3重量%
防かび剤 プロキセルLV(20%液) 0.15重量%
イオン交換水 残量
【0059】
[実施例2]
実施例1のインク組成物で、パントテン酸ナトリウム量を0.1重量%に変更した以外は、実施例1と同様の操作で記録用インクを調整した。
【0060】
[実施例3]
実施例1のインク組成物で、パントテン酸ナトリウム量を5.0重量%に変更した以外は、実施例1と同様の操作で記録用インクを調整した。
【0061】
[実施例4]
実施例1のインク組成物で、パントテン酸ナトリウム量を0.009重量%に変更した以外は、実施例1と同様の操作で記録用インクを調整した。
【0062】
[実施例5]
実施例1のインク組成物で、パントテン酸ナトリウム量を11.0重量%に変更した以外は、実施例1と同様の操作で記録用インクを調整した。
【0063】
[実施例6]
実施例1のインク組成物で、ECTD−3NEX(日光ケミカルズ製アニオン性界面活性剤)を除いた以外は、実施例1と同様の操作で記録用インクを調整した。
【0064】
[実施例7]
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にし、pHを水酸化リチウム10%水溶液で9にして記録用インクを調整した。
スルホン基付加型カーボンブラック分散液
CAB−O−JET200(キャボット・
スペシャルティ・ケミカルズ・インク製) 5重量%
(顔料固形分 100%換算)
パントテン酸カリウム 1重量%
グリセリン 5重量%
トリエチレングリコール 15重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
ECTD−6NEX(日光ケミカルズ製アニオン性界面活性剤) 0.5重量%
防かび剤 プロキセルLV(20%液) 0.15重量%
イオン交換水 残量
【0065】
[実施例8]
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウム10%水溶液で9にして記録用インクを調整した。
カルボキシル基付加型カーボンブラック分散液
CAB−O−JET300(キャボット・
スペシャルティ・ケミカルズ・インク製) 5重量%
(顔料固形分 100%換算)
パントテン酸カルシウム 1重量%
グリセリン 5重量%
プロピレングリコール 10重量%
2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール 1重量%
ハイテノール 18E(第一工業製薬(株)製アニオン性界面活性剤) 1重量%
防かび剤 プロキセルLV(20%液) 0.15重量%
イオン交換水 残量
【0066】
[実施例9]
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウム10%水溶液で9にして記録用インクを調整した。その後、平均孔径5μmのメンブレンフィルターで濾過を行ない記録用インクを得た。
カルボキシル基付加型カーボンブラック分散液
BonJet CW−1 (オリエント化学工業(株)製) 5重量%
(顔料固形分 100%換算)
パントテン酸ナトリウム 1重量%
グリセリン 5重量%
ジエチレングリコール 15重量%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2重量%
2−ピロリドン 2重量%
ECTD−3NEX(日光ケミカルズ製アニオン性界面活性剤) 0.3重量%
尿素 0.5重量%
防かび剤 プロキセルLV(20%液) 0.15重量%
イオン交換水 残量
【0067】
[実施例10]
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウム10%水溶液で9にして記録用インクを調整した。
カルボキシル基付加型カーボンブラック分散液
CAB−O−JET300(キャボット・
スペシャルティ・ケミカルズ・インク製) 5重量%
(顔料固形分 100%換算)
パントテン酸ナトリウム 1重量%
グリセリン 5重量%
トリエチレングリコール 15重量%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2重量%
2−ピロリドン 2重量%
NICOLL SBL-4T(日光ケミカルズ製アニオン性界面活性剤) 1重量%
ノナール 310(東邦化学工業(株)製ノニオン性界面活性剤) 0.3重量%
防かび剤 プロキセルLV(20%液) 0.15重量%
イオン交換水 残量
【0068】
[実施例11]
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウム10%水溶液で9にして記録用インクを調整した。
カルボキシル基付加型カーボンブラック分散液
CAB−O−JET300(キャボット・
スペシャルティ・ケミカルズ・インク製) 5重量%
(顔料固形分 100%換算)
パントテン酸ナトリウム 1重量%
グリセリン 5重量%
トリエチレングリコール 10重量%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2重量%
2−ピロリドン 2重量%
ハイテノール 18E(第一工業製薬(株)製アニオン性界面活性剤) 1重量%
ペグノール TH−8(東邦化学工業(株)製ノニオン性界面活性剤)0.3重量%
防かび剤 プロキセルLV(20%液) 0.15重量%
イオン交換水 残量
【0069】
[実施例12]
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にし、pHを水酸化リチウム10%水溶液で9にして記録用インクを調整した。
スルホン基付加型マゼンタ分散液
CAB−O−JET260M(キャボット・
スペシャルティ・ケミカルズ・インク製) 4重量%
(顔料固形分 100%換算)
パントテン酸カリウム 1重量%
グリセリン 5重量%
トリエチレングリコール 15重量%
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 2重量%
ECTD−6NEX(日光ケミカルズ製アニオン性界面活性剤) 0.5重量%
D(+)グルコース 1重量%
防かび剤 プロキセルLV(20%液) 0.15重量%
イオン交換水 残量
【0070】
[比較例1]
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで9にして記録用インクを調整した。
カルボキシル基付加型カーボンブラック分散液
CAB−O−JET300(キャボット・
スペシャルティ・ケミカルズ・インク製) 5重量%
(顔料固形分 100%換算)
グリセリン 5重量%
ジエチレングリコール 15重量%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2重量%
ECTD−3NEX(日光ケミカルズ製アニオン系界面活性剤) 0.3重量%
防かび剤 プロキセルLV(20%液) 0.15重量%
イオン交換水 残量
【0071】
[比較例2]
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで9にして記録用インクを調整した。
カルボキシル基付加型カーボンブラック分散液
CAB−O−JET300(キャボット・
スペシャルティ・ケミカルズ・インク製) 5重量%
(顔料固形分 100%換算)
グリセリン 5重量%
ジエチレングリコール 15重量%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2重量%
防かび剤 プロキセルLV(20%液) 0.15重量%
イオン交換水 残量
【0072】
[比較例3]
下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、pHを水酸化リチウムで9にして記録用インクを調整した。
カルボキシル基付加型カーボンブラック分散液
CAB−O−JET300(キャボット・
スペシャルティ・ケミカルズ・インク製) 5重量%
(顔料固形分 100%換算)
グリセリン 5重量%
ジエチレングリコール 15重量%
防かび剤 プロキセルLV(20%液) 0.15重量%
イオン交換水 残量
【0073】
[比較例4]
先ず下記の処方にて顔料分散液を調合・混合し(200g)、この混合物を1リットルのベッセルに入れ、直径0.7mmのジルコニアビーズ900gを加え、カンペ社製バッチ式卓上サンドミルで20時間分散し、顔料分散液(A)を得た。
<顔料分散液(A)>
カーボンブラックMA7(三菱化学社製) 15重量%
20%スチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム水溶液 30重量%
(ジョンソンポリマー社製 ジョンクリル679)
グリセリン 5重量%
イオン交換水 50重量%
【0074】
上記顔料分散液(A)と下記組成物を用いる以外は実施例1と同様にし、pHを水酸化リチウム10%水溶液で9にして記録用インクを調整した。
顔料分散液(A) 4重量%
(顔料固形分 100%換算)
パントテン酸ナトリウム 1重量%
グリセリン 5重量%
ジエチレングリコール 15重量%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2重量%
ECTD−3NEX(日光ケミカルズ製アニオン性界面活性剤) 0.5重量%
防かび剤 プロキセルLV(20%液) 0.15重量%
イオン交換水 残量
【0075】
次に、上記実施例1〜12及び比較例1〜4について、下記の試験を行なった。試験結果は、後述する表1に示す。
1)画像の鮮明性
インクジェットプリンターMJ−930C(セイコーエプソン株式会社製)で、以下のXerox4024紙に印刷を行なった。印刷パターンは、イエロー、マゼンタ、シアンの各カラーインクは100%dutyで、ブラックインクは文字を同時に印刷した。インク吐出量は0.07μg/dot、密度は360dpiとした。乾燥後、2色重ね部境界の滲み、画像滲み、色調、濃度を目視及び反射型カラー分光測色濃度計(X−Rite社製)により総合的に調べ、評価基準にしたがって判定した。評価基準を以下に示す。
【0076】
評価基準
◎:全紙滲みの発生なく鮮明な印刷である。
○:一部の用紙(再生紙)にひげ状の滲みの発生がある。
△:全紙にひげ状の滲みの発生がある。
×:文字の輪郭がはっきりしないほど滲みが発生している。
【0077】
2)画像の乾燥性
印字後の画像に一定条件で濾紙を押しつけインクが濾紙に転写しなくなるまでの時間を測定した。10秒未満で乾燥した場合に○、10〜20秒を△、20秒を超える場合を×と判定した。
【0078】
3)保存安定性
各インクをポリエチレン容器に入れ、−20℃、5℃、20℃、70℃それぞれの条件下で3カ月保存し、保存後の表面張力、粘度、及び沈殿物析出の有無を調べた。どの条件で保存しても、物性等の変化がない場合を○印、沈殿はないが物性変化が大きい場合を△印、沈殿の析出が認められる場合を×印として示した。
【0079】
4)印字休止時の信頼性
プリンター動作中にキャップクリーニング等が行なわれないでどれだけ印字休止しても復帰できるかを調べ、どれだけの時間(秒)で噴射方向がずれるか、あるいは吐出液滴の重量が変化するかでその信頼性を評価し、休止時間が400秒以上で重量変化の少ないものを○、休止時間が400秒未満を×と判定した。
【0080】
【表1】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水、水溶性有機溶媒、および少なくとも1種の親水性基を表面に有する自己分散可能な顔料を含有する記録用インクであって、パントテン酸塩を含有させたことを特徴とする記録用インク。
【請求項2】
前記パントテン酸塩が、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カリウム、パントテン酸カルシウムからなる郡から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の記録用インク。
【請求項3】
前記パントテン酸塩の含有量が、インク全重量に対し0.01〜10.0重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録用インク。
【請求項4】
前記自己分散可能な顔料が、カーボンブラックを親水化することにより得られる顔料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の記録用インク。
【請求項5】
さらに2−エチル−1,3ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールからなるジオール誘導体の郡から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の記録用インク。
【請求項6】
前記ジオール誘導体の含有量が、インク全重量に対し0.1〜4.5重量%であることを特徴とする請求項5に記載の記録用インク。
【請求項7】
さらに界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の記録用インク。
【請求項8】
前記界面活性剤の含有量が、インク全重量に対し0.01〜2.0重量%であることを特徴とする請求項7に記載の記録用インク。
【請求項9】
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項7または8に記載の記録用インク。
【請求項10】
さらに尿素または尿素誘導体を特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の記録用インク。
【請求項11】
前記尿素または尿素誘導体を記録用インク全量に対して0.1〜5重量%であることを特徴とする請求項10に記載の記録用インク。
【請求項12】
記録用インクの液滴を記録ヘッドから吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行なうインクジェット記録方法であって、記録用インクとして請求項1〜11のいずれかに記載の記録用インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。



【公開番号】特開2006−291176(P2006−291176A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42964(P2006−42964)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】