説明

記録装置、制御装置、記録装置の制御方法、及び、プログラム

【課題】記録媒体の記録に際して必要な各種動作の効率化を通してスループットを向上する。
【解決手段】ラインインクジェットプリンター1は、搬送機構を制御して記録媒体の位置を調整する媒体搬送部27aと、ラインインクジェットヘッド12、及び、関連する機構を制御して、ラインインクジェットヘッド12による記録の準備に係る処理を行う記録準備部27bと、媒体搬送部27aによる記録媒体の位置の調整に係る処理と、記録準備部27bによるラインインクジェットヘッド12による記録の準備に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させる処理管理27c部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドを有する記録装置、当該記録装置を制御する制御装置、当該記録装置の制御方法、及び、当該記録装置を制御するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドを備える記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種の記録装置では、記録媒体への記録に際し、記録媒体の先端を揃える処理や、ラベル用紙(剥離紙にラベルが間隔をあけて貼付されたシート)に記録する場合は頭出し処理等の記録媒体の位置を調整する処理が行われるものがある。また、この種の記録装置では、インクジェットヘッドによる画像の記録を正常に行うべく、ノズルの乾きを防止するためのキャッピング、ノズルに滞留したインクの増粘を防止するためのフラッシング、その他の記録の準備に係る処理を行うものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−126155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した記録装置のように、記録媒体への記録に際して各種動作を実行する必要のあるものでは、各種動作を効率的に実行し、スループットを向上したいとするニーズがある。特に、スループットを向上することにより、記録の準備に係る処理にキャッピングが含まれている場合は、記録媒体の記録に際して必要な各種動作の効率化により、キャッピングされていない時間帯が不必要に拡張することを防止でき、効果的にインクの増粘を防止できる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、記録媒体の記録に際して必要な各種動作の効率化を通してスループットを向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、記録装置において、インクを吐出するインクジェットヘッドにより記録媒体に記録する記録部と、搬送機構により前記記録媒体を搬送すると共に、前記搬送機構を制御して前記記録媒体の位置を調整する媒体搬送部と、前記インクジェットヘッド、及び、関連する機構を制御して、前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理を行う記録準備部と、前記媒体搬送部による前記記録媒体の位置の調整に係る処理と、前記記録準備部による前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させる処理管理部と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、搬送機構と、インクジェットヘッド及び関連する機構とが独立した機構であることを利用して、搬送機構による記録媒体の位置の調整に係る処理と、インクジェットヘッド及び関連する機構による記録の準備に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させるため、これら処理を効率的に実行でき、スループットを向上することができる。
【0006】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記記録媒体は、画像が記録される複数の独立した描画領域が予め形成された用紙であり、前記記録部による前記記録媒体への記録を開始する場合には、前記描画領域内に画像を記録するための前記媒体搬送部による頭出し処理が必要とされると共に、前記インクジェットヘッドがインクを吐出するための前記記録準備部による事前処理が必要とされ、前記処理管理部は、前記記録部による前記記録媒体への記録を開始する場合、前記媒体搬送部による前記頭出し処理と、前記記録準備部による前記事前処理との少なくとも一部を同時に実行させることを特徴とする。
この構成によれば、記録媒体への記録を開始する場合、記録媒体への記録に必須の処理である頭出し処理と、事前処理との少なくとも一部を同時に実行させるため、これら処理を効率的に実行でき、また、記録媒体への実際の画像の記録をより短時間で開始することが可能となり、スループットを向上することができる。
【0007】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記インクジェットヘッドは、ライン型の記録ヘッドであり、前記媒体搬送部は、記録のために前記記録媒体を搬送する際、搬送の開始後、加速期間を経て、その搬送の速度が一定となるように搬送し、前記記録部は、前記記録媒体に記録する際、前記記録媒体の搬送の速度が一定となった後に、固定位置に位置する前記インクジェットヘッドからインクを吐出して記録し、前記記録準備部は、前記記録部による記録が行われていない間、前記インクジェットヘッドを前記固定位置からホームポジションに移動させ、前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理を行い、前記処理管理部は、前記記録部による前記記録媒体への記録を開始する場合、前記記録媒体の搬送の速度が一定となる前に、前記ホームポジションに位置する前記インクジェットヘッドが前記固定位置に至るように、前記媒体搬送部による前記記録媒体の搬送を開始するタイミングを調整した上で、前記記録準備部による前記インクジェットヘッドの移動に係る処理と、前記媒体搬送部による前記記録媒体の搬送に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させることを特徴とする。
ここで、上記構成の記録装置では、記録媒体の搬送の速度が一定となる前に、インクジェットヘッドが固定位置に至っていれば、正常に、記録媒体への記録が可能である。
これを踏まえ、上記構成によれば、記録媒体の搬送の速度が一定となる前に、ホームポジションに位置するインクジェットヘッドが固定位置に至るように、インクジェットヘッドの移動を開始するタイミングと、記録媒体の搬送を開始するタイミングとを調整した上で、インクジェットヘッドの移動に係る処理と、記録媒体の搬送に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させるため、記録媒体への正常な記録を担保した上で、スループットを向上可能である。特に、インクジェットヘッドが、ホームポジションにおいてキャッピングされている場合には、キャッピングされていない時間帯が不必要に拡張することを防止でき、効果的にインクの増粘を防止できる。
【0008】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、CPUにおける前記媒体搬送部の処理に係るタスクと、前記記録準備部の処理に係るタスクとを連係して管理することによって、各タスクの機能によって実行される各処理の実行のタイミングを調整することにより、前記処理管理部の機能を実現することを特徴とする。
この構成によれば、タスクの管理を通して処理管理部の機能を好適に実現可能である。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明は、インクを吐出するインクジェットヘッドにより記録媒体に記録する記録部を備える記録装置に接続可能な制御装置であって、搬送機構により前記記録媒体を搬送させると共に、前記搬送機構を制御して前記記録媒体の位置を調整させる媒体搬送部と、前記インクジェットヘッド、及び、関連する機構を制御して、前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理を行わせる記録準備部と、前記媒体搬送部による前記記録媒体の位置の調整に係る処理と、前記記録準備部による前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させる処理管理部と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、搬送機構と、インクジェットヘッド及び関連する機構とが独立した機構であることを利用して、搬送機構による記録媒体の位置の調整に係る処理と、インクジェットヘッド及び関連する機構による記録の準備に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させるため、これら処理を効率的に実行でき、スループットを向上することができる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明は、インクを吐出するインクジェットヘッドにより記録媒体に記録する記録部を備える記録装置の制御方法であって、搬送機構を制御して前記記録媒体の位置を調整する媒体搬送部による前記記録媒体の位置の調整に係る処理と、前記インクジェットヘッド、及び、関連する機構を制御して、前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理を行う記録準備部による前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理と、の少なくとも一部を同時に実行させ、前記記録部により前記記録媒体に記録することを特徴とする。
この制御方法によれば、搬送機構と、インクジェットヘッド及び関連する機構とが独立した機構であることを利用して、搬送機構による記録媒体の位置の調整に係る処理と、インクジェットヘッド及び関連する機構による記録の準備に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させるため、これら処理を効率的に実行でき、スループットを向上することができる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明は、インクを吐出するインクジェットヘッドにより記録媒体に記録する記録部を備える記録装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記制御部を、搬送機構により前記記録媒体を搬送すると共に、前記搬送機構を制御して前記記録媒体の位置を調整する媒体搬送部と、前記インクジェットヘッド、及び、関連する機構を制御して、前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理を行う記録準備部と、前記媒体搬送部による前記記録媒体の位置の調整に係る処理と、前記記録準備部による前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させる処理管理部と、として機能させることを特徴とする。
このプログラムを実行すれば、搬送機構と、インクジェットヘッド及び関連する機構とが独立した機構であることを利用して、搬送機構による記録媒体の位置の調整に係る処理と、インクジェットヘッド及び関連する機構による記録の準備に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させるため、これら処理を効率的に実行でき、スループットを向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、記録媒体の記録に際して必要な各種動作の効率化を通してスループットを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ラインインクジェットプリンターの構成を示す図である。
【図2】ラベル用紙を示す図である。
【図3】記録システムの機能的構成を示すブロック図である。
【図4】媒体搬送部、記録準備部、処理管理部の動作を示すシーケンスフロー。
【図5】CPUにおけるタスクを概念的に示す図である。
【図6】別の実施形態における記録システムの機能的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1(記録装置)の構成を模式的に示す図である。
ラインインクジェットプリンター1は、搬送ローラー10によって記録媒体を搬送正方向YJ1に搬送しつつ、ラインインクジェットヘッド12(インクジェットヘッド)から記録媒体に対してインクを吐出して、記録媒体に画像を記録するライン型のインクジェットプリンターである。
このラインインクジェットプリンター1は、少なくとも、記録媒体たるラベル用紙14に画像を記録可能である。
【0015】
図2は、ラベル用紙14を模式的に示す図である。
図2に示すように、ラベル用紙14は、帯状のシートであり、記録面15に、所定間隔を開けてシール部Sが形成されている。このシール部Sに対応する部位は、シールとなっており、枠に沿って取り剥がし可能である。シール部Sの長手方向の長さは、一定であり、各シール部Sの間隔も一定である。ラインインクジェットプリンター1は、ラベル用紙14に形成されたシール部Sのそれぞれに画像を記録する。
ラインインクジェットプリンター1によってラベル用紙14への記録が行われる場合は、ラベル用紙14の長手方向と、搬送正方向YJ1とが対応するように、ラベル用紙14がラインインクジェットプリンター1にセットされ、搬送正方向YJ1へ搬送されつつ、適宜、シール部Sに所定の画像が記録される。このシール部Sは、画像が記録される独立した描画領域に該当する。
図2に示すように、シール部Sのそれぞれには、ブラックマークBMが形成されている。ブラックマークBMは、シール部Sの所定の位置に形成された所定の形状の黒色のマークである。図1における図示は省略したが、ラインインクジェットプリンター1において、ラベル用紙14の搬送路上の所定の位置には、搬送されるラベル用紙14のシール部Sに形成されたブラックマークBMを光学的に検出するブラックマークセンサー42(図3)が設けられており、ラインインクジェットプリンター1は、ブラックマークセンサー42の検出値に基づいて、当該センサーに対応する位置にブラックマークBMが至ったことを検出し、検出結果に基づいて、ラベル用紙14の位置の調整や、搬送に係る処理の調整を実行する。通常、ブラックマークBMは、ラベル用紙14の記録面15とは反対の面に形成されることが多く、また、これに対応するようにブラックマーク42も設置される。
【0016】
図1に示すように、ラインインクジェットプリンター1は、上流ヘッドユニット17と、下流ヘッドユニット18とを備えている。
上流ヘッドユニット17には、上流側トップ記録ヘッド17T、上流側左記録ヘッド17L、及び、上流側右記録ヘッド17Rの3つの記録ヘッドが千鳥状に配置されている。同様に、下流ヘッドユニット18には、下流側トップ記録ヘッド18T、下流側左記録ヘッド18L、及び、下流側右記録ヘッド18Rの3つの記録ヘッドが千鳥状に配置されている。
【0017】
上流側トップ記録ヘッド17Tには、ブラックノズル列20と、このブラックノズル列20の下流に配置されたシアンノズル列21が設けられている。
ブラックノズル列20は、インクを微細なインク粒として吐出するノズル孔(不図示)が、搬送正方向YJ1と直交する方向であるノズル列方向YJ2に延在して形成されたノズル列である。ブラックノズル列20には、ブラック(K)のインクカートリッジ(不図示)から、インクが供給される構成となっており、上流側トップ記録ヘッド17Tは、例えばピエゾ素子を用いて構成されるアクチュエーターによって、ブラック(K)のインクカートリッジから供給されるインクを記録媒体へ向かって押し出して、所定のノズル孔から微細なインク粒を吐出する。
同様に、シアンノズル列21は、ブラックノズル列20と同様、ノズル孔がノズル列方向に延在して形成されたノズル列であり、シアン(C)のインクカートリッジ(不図示)からインクが供給される構成となっている。
上流側右記録ヘッド17R、及び、上流側左記録ヘッド17Lは、上流側トップ記録ヘッド17Tと同様の構成であり、それぞれ、ブラックノズル列20、及び、このブラックノズル列20の下流に配置されたシアンノズル列21を備えている。
【0018】
下流側トップ記録ヘッド18Tには、マゼンタノズル列22と、このマゼンタノズル列22の下流に配置されたイエローノズル列23が設けられている。
マゼンタノズル列22は、ブラックノズル列20と同様、ノズル孔がノズル列方向に延在して形成されたノズル列であり、マゼンタ(M)のインクカートリッジ(不図示)からインクが供給される構成となっている。
イエローノズル列23は、ブラックノズル列20と同様、ノズル孔がノズル列方向に延在して形成されたノズル列であり、イエロー(Y)のインクカートリッジ(不図示)からインクが供給される構成となっている。
下流側右記録ヘッド18R、及び、下流側左記録ヘッド18Lは、下流側トップ記録ヘッド18Tと同様の構成であり、それぞれ、マゼンタノズル列22、及び、このマゼンタノズル列22の下流に配置されたイエローノズル列23を備えている。
本実施形態では、最も下流側にあるノズル列であるイエローノズル列23の位置を点線K1、最も上流側にあるノズル列であるブラックノズル列20の位置を点線K2として示している。
なお、図1では、説明の便宜のため、各記録ヘッド、及び、記録ヘッドが備えるノズル列を明示しているが、実際は、ノズル列を構成するノズル孔から鉛直下方へ向かってインクが吐出される構成となっており、当該構成を実現するように各部材が配置されている。
また、搬送正方向YJ1は、ラベル用紙14を上流側から下流側へ正搬送する方向であり、搬送逆方向YJ3は、ラベル用紙14を下流側から上流側へ逆搬送する方向である。
【0019】
ラインインクジェットプリンター1は、記録媒体にインクを吐出してドットを形成し、このドットの組み合わせにより、画像を記録する。以下、記録媒体たるラベル用紙14に、ある1つのドットを形成する場合の基本的な動作について、図1を用いて簡単に説明する。
ラベル用紙14が図1に示す位置に存在しており、このラベル用紙14上の位置P1に所定の色のドットを形成する場合を例にして説明する。所定の色は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及び、イエロー(Y)のインクがそれぞれ所定量ずつ吐出されることによって表現される色であるものとする。また、図1中、位置P2は、上流側トップ記録ヘッド17Tに形成されたブラックノズル列20において、搬送される記録媒体の位置P1が通過する位置である。位置P3、位置P4、及び、位置P5についてもそれぞれ同様である。
ラインインクジェットプリンター1は、ラベル用紙14にドットを形成している間、ラベル用紙14を、予め指定された一定の速さで搬送正方向YJ1へ向かって搬送する。そして、図1に示す状態からラベル用紙14の搬送正方向YJ1への搬送が進行し、ラベル用紙14上の位置P1が位置P2に対応する位置に至ったタイミングで、位置P2に対応するノズルから所定量のブラック(K)のインクを吐出する。同様にして、ラベル用紙14上の位置P1が位置P3に至ったタイミングで、位置P3に対応するノズルから所定量のシアン(C)のインクを吐出し、ラベル用紙14上の位置P1が位置P4に至ったタイミングで、位置P4に対応するノズルから所定量のマゼンタ(M)のインクを吐出し、ラベル用紙14上の位置P1が位置P5に至ったタイミングで、位置P5に対応するノズルから所定量のイエロー(Y)のインクを吐出する。
このようにして、ラベル用紙14上の位置P1に、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及び、イエロー(Y)のインクがそれぞれ所定量ずつ吐出され、位置P1に所定の色のドットが形成される。
つまり、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1では、画像の記録に係る処理中は、ラインインクジェットヘッド12はその位置が固定位置KPに固定された状態であり、この固定されたラインインクジェットヘッド12に対してラベル用紙14が相対的に移動しつつ、ラインインクジェットヘッド12から適宜インクが吐出されてドットが形成され、画像が記録される。
【0020】
ラインインクジェットプリンター1は、フラッシングを実行可能に構成されている。
フラッシングは、各ノズル列に形成されたノズル孔に滞留したインクの増粘に起因した吐出不良を防止するために実行される動作である。
具体的には、上流ヘッドユニット17と、下流ヘッドユニット18は、それぞれキャリッジ(不図示)に搭載されている。そして、上流ヘッドユニット17、及び、下流ヘッドユニット18(ラインインクジェットヘッド12)は、同期して、ホームポジションHPに移動可能である。
ホームポジションHPには、上面が開口した箱状のキャップQPが設けられている。このキャップQPは、鉛直方向における異なる位置に設定された3つの段階のうちのいずれかの段階に移動可能に構成されている。3つの段階のうち、鉛直方向の最も下に位置する段階D1は、ラインインクジェットヘッド12がホームポジションHPへ移動する際、又は、ホームポジションHPから移動する際に、キャップQPが位置すべき段階である。
また、鉛直方向の真ん中に位置する段階D2は、フラッシングが行われる際に、キャップQPが位置すべき段階である。当該段階D2に位置しているキャップQPは、ホームポジションHPに位置するラインインクジェットヘッド12の各インクジェットヘッドから吐出されたインクを受け止め、廃インクとして図示せぬタンクに排出することが可能な構成となっている。
また、鉛直方向の最も上に位置する段階D3は、キャッピングの際にキャップQPが位置すべき段階である。キャッピングについては後述する。
ラインインクジェットヘッド12のフラッシングの際、まず、ラインインクジェットヘッド12がホームポジションHPに位置していない場合は、ホームポジションHPに移動される。そして、キャップQPが、フラッシング用の段階D2に対応する位置に移動される。次いで、ラインインクジェットヘッド12に搭載された各インクジェットヘッドのノズル孔(全てのノズル孔であってもよく、使用頻度等を考慮した所定のノズル孔であってもよい)から所定量だけインクが吐出される。これにより、増粘したインクがノズルから排出され、噴射不良が防止される。
なお、図1では、ホームポジションHP、及び、キャップQPを模式的に表現しているが、実際には、ホームポジションHP、及び、キャップQPは、それぞれ、ラインインクジェットヘッド12に対応した形状をしており、キャッピングの際は、キャップQPによってラインインクジェットヘッド12の各記録ヘッドが隙間なくカバーされることとなる。
【0021】
また、キャッピングとは、ラインインクジェットヘッド12の各ノズルにおけるインクの乾きを抑制する処理である。
具体的には、ラインインクジェットヘッド12のキャッピング時、制御部27の記録準備部27bは、キャップQPを、キャッピング用の段階D3に対応する位置に移動させる。この記録準備部27bの機能は、CPUがファームウェアを読み出して実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。段階D3にキャップQPが位置すると、キャップQPの開口にラインインクジェットヘッド12の各インクジェットヘッドが収納される構成となっている。これにより、キャッピングされている間は、各インクジェットヘッドの各ノズルが外部に露出しない状態となり、各ノズルにおけるインクの乾燥が抑制される。
記録媒体への画像の記録が行われていない間は、ラインインクジェットヘッド12は、ホームポジションHPに移動され、キャッピングされる。そして、記録媒体への画像の記録が開始される場合に、ラインインクジェットヘッド12は、固定位置KPに移動される。
【0022】
図3は、本実施形態に係る記録システム5の機能的構成を模式的に示す図である。
図3に示すように、記録システム5は、ラインインクジェットプリンター1と、このラインインクジェットプリンター1に接続可能であり、ラインインクジェットプリンター1を制御するホストコンピューター25(制御装置)と、を備えている。
【0023】
ラインインクジェットプリンター1の制御部27は、ラインインクジェットプリンター1の各部を中枢的に制御するものであり、演算実行部としてのCPUや、このCPUによって実行可能な基本制御プログラムや、この基本制御プログラムに係るデータ等を不揮発的に記憶するROM、CPUに実行されるプログラムやこのプログラムに係るデータ等を一時的に記憶するRAM、その他の周辺回路等を備えている。
制御部27は、ラインインクジェットヘッド12が備える各インクジェットヘッドが備えるアクチュエーターを駆動し、各ノズル孔から必要量のインクを吐出することにより、記録媒体に画像を記録する。本実施形態では、制御部27や、ラインインクジェットヘッド12、ドライバー回路、その他の関連する機構が協働して、記録部として機能する。
また、制御部27は、キャリッジを移動させるためのキャリッジ駆動モーター35を駆動して、上流ヘッドユニット17、及び、下流ヘッドユニット18(ラインインクジェットヘッド12)を、固定位置KPからホームポジションHPに移動させ、また、ホームポジションHPから固定位置KPに移動させる。
また、制御部27は、キャップQPを移動させるためのキャップ駆動モーター44を駆動して、キャップQPを上述した3段階のうちいずれかの段階に移動させる。
また、制御部27の媒体搬送部27aは、搬送ローラー10を駆動するための紙送りモーター36を駆動して、記録媒体を所定量だけ移動させる。紙送りモーター36の駆動に応じて、搬送ローラー10が回転し、記録媒体が搬送正方向YJ1、又は、搬送正方向YJ1と逆方向の搬送逆方向YJ3に所定量だけ搬送される。媒体搬送部27aの機能は、CPUがファームウェアを実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。本実施形態では、紙送りモーター36は、ステッピングモーターによって構成されており、媒体搬送部27aは、ステップ数により精密に搬送量を管理できる。
【0024】
ブラックマークセンサー42は、搬送路上を搬送されるラベル用紙14のシール部Sのそれぞれに形成されたブラックマークBMを光学的に読み取り、読み取り結果を制御部27に出力する。
表示部39は、複数のLEDを備え、制御部27の制御の下、これらLEDを所定の態様で点灯/消滅させ、ラインインクジェットプリンター1の状態を報知したり、エラーの発生の有無を報知したりする。
入力部40はラインインクジェットプリンター1に設けられた各種操作スイッチに接続され、各種操作スイッチに対する操作を検出し、制御部27に出力する。
記憶部50は、EEPROMや、ハードディスク等の不揮発性メモリーを備え、各種データを書き換え可能に不揮発的に記憶する。
通信インターフェイス41(I/F)は、制御部27の制御の下、ホストコンピューター25との間で所定のプロトコルに準拠した通信を行う。
【0025】
ホストコンピューター25は、図3に示すように、ホストコンピューター25の各部を中枢的に制御するホスト側制御部45と、各種情報を表示するホスト側表示部46と、接続された入力デバイスに対する操作を検出するホスト側入力部47と、各種データを記憶するホスト側記憶部48と、ラインインクジェットプリンター1との間での通信を仲介する通信インターフェイス49(I/F)とを備えている。
ホストコンピューター25には、プリンタードライバー等のラインインクジェットプリンター1を制御するためのプログラムがインストールされており、ホスト側制御部45は、当該プログラムを読み出して実行することにより、ラインインクジェットプリンター1に対して、適宜、制御コマンドを出力して、ラインインクジェットプリンター1を制御する。
【0026】
ところで、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1は、上述したように、ホストコンピューター25から入力された制御コマンドに基づいてラベル用紙14への記録を実行する。
そして、ホストコンピューター25から、ラベル用紙14への記録を開始することが指示された場合、ラインインクジェットプリンター1は、ラベル用紙14への画像の記録を実際に行う前に、以下の3つの処理を必ず行う。
【0027】
必ず行う処理のうちの1つは、頭出し処理である。頭出し処理とは、画像の記録を開始する際に、シール部Sのうち、最初に画像を記録すべきシール部Sから、順次、画像を記録して行けるよう、ラベル用紙14の位置を調整する処理のことである。例えば、図2を参照し、シール部S1、S2、及び、S3のうち、シール部S1への画像の記録が完了した後、一旦、記録に係る処理を停止したとする。この場合、画像の記録を再開する際に、シール部S2から順次画像の記録を行うことができるよう、ラベル用紙14の位置を調整する処理である。位置の調整は、媒体搬送部27aにより、ブラックマークセンサー42の検出結果に基づいて、適切なステップ数に対応する搬送量分、ラベル用紙14が搬送されることにより行われる。
本実施形態に係るラインインクジェットヘッド12では、画像の記録を再開する際、頭出し処理を必ず行う必要がある。理由について、図1、図2を用いて、シール部S1への画像の記録が完了した後、一旦画像の記録を停止し、その後再開してシール部S2に対して画像を記録する場合を例にして説明する。シール部S1への画像の記録が完了した時点では、シール部S1の搬送逆方向YJ3側の端S1bは、下流側右記録ヘッド18R、及び、下流側左記録ヘッド18Lのイエローノズル列23(ラインインクジェットヘッド12の各ノズルのうち、最も搬送正方向YJ1側に設けられたノズル)に対応するラインK1を搬送正方向YJ1側に越えている状態となる。そして、ラベル用紙14において隣接するシール部Sの間隔は、上流側トップ記録ヘッド17Tのブラックノズル列20に対応するラインK2と、上述したラインK1との間隔よりも十分狭くなっており、このため、シール部S1への画像の記録が終了した時点では、シール部S2の端S2tが、ラインK1を搬送正方向YJ1側に越えている状態となる。このため、シール部S1への画像の記録が完了した後、画像の記録を再開してシール部S2に画像を記録する際は、シール部S2の端S2tがラインK2を所定量分だけ搬送逆方向YJ3へ越えるように、頭出し処理を行う必要がある。
【0028】
また、ラベル用紙14への画像の記録を実際に行う前に、必ず行う処理のうちの1つは、少なくともフラッシング、及び、キャップオープン処理を含む事前処理である。
上述したように、ラインインクジェットヘッド12の各インクジェットヘッドは、記録に係る処理が行われていない間は、キャップQPによりキャッピングされている。キャップオープン処理とは、キャップQPによるキャッピングを解除する処理のことである。
また、吐出不良に起因した記録失敗のリスクを低減すべく、本実施形態では、ラベル用紙14への画像の記録を実際に行う前にフラッシングを行う構成となっている。
この事前処理は、記録準備部27bにより以下の手順で行われる。すなわち、記録準備部27bは、キャップ駆動モーター44を駆動して、段階D3の位置にあるキャップQPを段階D2の位置に移動させる。次いで、記録準備部27bは、ラインインクジェットヘッド12、その他の関連する機構を制御して、定められた手順に従ってフラッシングを実行する。次いで、記録準備部27bは、キャップオープン処理を行うことにより、段階D2の位置にあるキャップQPを段階D1の位置に移動させる。
【0029】
また、ラベル用紙14への画像の記録を実際に行う前に、必ず行う処理のうちの1つは、ホームポジションHPに位置しているラインインクジェットヘッド12を、固定位置KPに移動させる処理(以下、「ヘッド移動処理」という。)である。
記録準備部27bは、キャリッジ駆動モーター35を駆動して、ホームポジションHPに位置しているラインインクジェットヘッド12を、固定位置KPに移動させる。
【0030】
このように、本実施形態では、記録に係る処理を開始する前に、頭出し処理、事前処理、及び、ヘッド移動処理のそれぞれを必ず実行する。
ここで、媒体搬送部27aに係る頭出し処理を行う機構(搬送機構)と、記録準備部27bに係る事前処理、及び、ヘッド移動処理を行う機構(インクジェットヘッド、及び、関連する機構)と、はそれぞれ物理的に独立した機構である。従って、媒体搬送部27aに係る処理と、記録準備部27bに係る処理とは、物理的には並行して実行することが可能である。
これらのことを踏まえ、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1は、以下の動作を実行することにより、各処理を効率的に実行し、スループットを向上している。
【0031】
図4は、ラベル用紙14に画像を記録する際の媒体搬送部27a、記録準備部27b、及び、処理管理部27cの動作を示すシーケンスフローであり、(A)は処理管理部27cの動作を示し、(B)は媒体搬送部27aの動作を示し、(C)は記録準備部27bの動作を示している。
媒体搬送部27aは、搬送機構を制御して、上述した頭出し処理のほか、画像の記録のためにラベル用紙14を搬送する処理(以下、「通常搬送処理」という。)を実行する。
また、記録準備部27bは、上述した事前処理、及び、ヘッド移動処理を実行する。
また、処理管理部27cは、媒体搬送部27a、及び、記録準備部27bによる各処理の開始タイミングを管理することにより、各処理のシーケンスを管理する。処理管理部27cの機能は、CPUがファームウェアを読み出して実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。この処理管理部27cの動作については後述する。
ここで、本実施形態では、媒体搬送部27a、記録準備部27b、及び、処理管理部27cのそれぞれについて独立したタスクを生成し、それぞれCPUを割り当てる構成となっている。より詳細には、本実施形態では、媒体搬送部27aの機能を実現するプログラム群の実行に係るタスクとしてタスクTK1を生成し、同様に、記録準備部27bの機能を実現するプログラム群の実行に係るタスクとしてタスクTK2を生成し、処理管理部27cの機能を実現するプログラム群の実行に係るタスクとしてタスクTK3を生成する。
【0032】
図5は、各タスクを概念的に示す図である。
図5に示すように、処理管理部27cに係るタスクTK3は、媒体搬送部27aに係るタスクTK1、及び、記録準備部27bに係るタスクTK2のそれぞれとタスク間通信する構成となっている。これにより、処理管理部27cに係るタスクTK3は、媒体搬送部27aに係るタスクTK1に対して、各処理の実行の開始の指示を通知でき、また、当該タスクTK1から各処理が終了した旨の通知を受けることができる。同様に、処理管理部27cに係るタスクTK3は、記録準備部27bに係るタスクTK2に対して、各処理の実行の開始の指示を通知でき、また、当該タスクTK2から各処理が終了した旨の通知を受けることができる。以下で説明するように、処理管理部27cに係るタスクTK3は、各処理の開始タイミングを適切に管理することにより、効果的に各処理の効率性の向上を実現している。
なお、以下の説明では、説明の便宜を考慮して、処理管理部27cに係るタスクTK3と、媒体搬送部27aに係るタスクTK1との間で行われるタスク間通信を、処理管理部27cと媒体搬送部27aとの間でのやり取りとして表現するものとする。例えば、処理管理部27cに係るタスクTK3から、媒体搬送部27aに係るタスクTK1に対してタスク間通信により所定の処理を開始の指示を通知することを、単純に、「処理管理部27cから媒体搬送部27aに所定の処理を開始させる」と表現する。タスクTK3と、タスクTK2との間でのタスク間通信についても同様とする。
【0033】
さて、図4に示すように、まず、ホストコンピューター25から画像の記録を実行させる制御コマンドが入力される(ステップSX1)。この制御コマンドには、ラインインクジェットプリンター1の制御に係る各種コマンドのほか、少なくとも、シール部Sに記録すべき画像の画像データ(複数のシール部Sに画像を記録する場合は、それぞれのシール部Sに記録すべき画像データのそれぞれ)が含まれている。
画像の記録を指示する制御コマンドが入力されると、処理管理部27cは、タイミングTM1にて、媒体搬送部27aに頭出し処理を開始させる(ステップSA1)。
次いで、処理管理部27cは、タイミングTM2にて、記録準備部27bに事前処理を開始させる(ステップSA2)。この事前処理は、頭出し処理と比較して、処理に要する時間が短い。
記録準備部27bは、タイミングTM3にて事前処理が終了すると、処理管理部27cにその旨通知する(ステップSA3)。
ここで、図4に示すように、頭出し処理と、事前処理とは、タイミングTM2−タイミングTM3の時間帯において、同時並行的に実行される。このため、これら処理を別個の時間帯でそれぞれ実行していた従来と比較して、処理効率の向上、及び、スループットの向上を図ることが可能である。上述したように、頭出し処理を実行する機構と、事前処理を実行する機構とが物理的に独立した機構であるため、物理的な制約を受けることなくこれら処理を同時並行的に実行可能である。
本実施形態では、タスクとして、媒体搬送部27aに係るタスクTK1と、記録準備部27bに係るタスクTK2とを生成し、これらタスクのそれぞれを処理管理部27cのタスクTK3によって統括的に管理する構成であるため、タスクTK3によってタスクTK1とタスクTK2とに適切なタイミングでそれぞれ独立して処理の開始を指示することが可能であり、また、タスクTK1とタスクTK2とがそれぞれ独立してソフトウェア的に各種処理を並行して実行可能である。上述したように、頭出し処理と、事前処理とはそれぞれ物理的に独立した機構によって実現される処理であるため、これら処理を同時並行的に実行した場合であっても物理的な不具合は起こり得ない。
【0034】
タイミングTM3にて記録準備部27bから事前処理が終了した旨の通知を受けると、処理管理部27cは、タイミングTM4にて、記録準備部27bにヘッド移動処理を開始させる(ステップSA4)。
媒体搬送部27aは、タイミングTM5にて頭出し処理が終了すると、処理管理部27cにその旨通知する(ステップSA5)。頭出し処理が終了することにより、通常搬送処理を実行可能な状態となる。
記録準備部27bは、ヘッド移動処理の実行中、タイミングTM6が到来すると、処理管理部27cに対して、通常搬送処理を開始してもよい状態である旨の通知を行う(ステップSA6)。
以下、タイミングTM6について詳述する。
【0035】
上述したように、ラインインクジェットプリンター1は、予め定められた一定の速度でラベル用紙14を搬送しつつ、ラベル用紙14のシール部Sにインクを吐出して画像を形成する。このため、画像の記録のためにラベル用紙14の搬送を開始した場合、搬送の開始後、ラベル用紙14の搬送の速度が予め定められた一定の速度に至るまでに、搬送の速度を徐々に加速するための加速期間が生じる。この加速期間では、画像の記録(ラインインクジェットヘッド12によるインクの吐出)は行われない。従って、ラインインクジェットヘッド12によってラベル用紙14に対して正常に画像を記録するためには、加速期間が終了する前(ラベル用紙14の搬送の速度が一定になる前)までに、ラインインクジェットヘッド12が固定位置KPに位置していれば良いこととなる。
これを踏まえ、タイミングTM6とは、当該タイミングTM6にて通常搬送処理を開始した場合であっても、加速期間が終了する前に、ラインインクジェットヘッド12が固定位置KPに至るようなタイミングである。このタイミングTM6は、動作の安定という観点からある程度のマージンを持たせた上で、加速期間が終了するタイミングのできるだけ直前にラインインクジェットヘッド12が固定位置KPに至るようなタイミングに設定される。このように設定することにより、できるだけ早い段階で、通常搬送処理を開始することが可能となり、さらなるスループットの向上を実現できるからである。さらに、このように設定することにより、ラインインクジェットヘッド12がキャッピングされていない時間帯が不必要に拡張することを防止でき、効果的にインクの増粘を防止できる。
例えば、記録準備部27bは、ラインインクジェットヘッド12のホームポジションHPから固定位置KPへの移動を、毎回、一定の動作によって行う。そして、記録準備部27bは、ラインインクジェットヘッド12がホームポジションHPから固定位置KPへ向かって移動している際に、所定の位置に至ったタイミングで、ステップSA6に係る通知を行う。当該所定の位置は、加速期間が終了する直前(ラベル用紙14の搬送の速度が一定になる直前)に、ラインインクジェットヘッド12を固定位置KPに位置させるという観点から事前の実験、シミュレーションにより適切に設定される。
【0036】
さて、タイミングTM6にて記録準備部27bから通常搬送処理を開始してもよい状態である旨の通知を受けると、処理管理部27cは、タイミングTM7にて媒体搬送部27aに通常搬送処理を開始させる(ステップSA7)。
その後、加速期間が終了する前に、タイミングTM8にてヘッド移動処理が終了してラインインクジェットヘッド12が固定位置KPに至り、さらにその後、タイミングTM9にて加速期間が終了し、以後は、一定の速度でラベル用紙14が搬送されることとなる。
ラベル用紙14が一定の速度で搬送されるようになった後は、制御部27により制御コマンドが実行されて、ラベル用紙14のシール部Sに、順次、画像が記録される。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1は、搬送機構により記録媒体を搬送すると共に、搬送機構を制御して記録媒体の位置を調整する媒体搬送部27aと、ラインインクジェットヘッド12、及び、関連する機構を制御して、ラインインクジェットヘッド12による記録の準備に係る処理を行う記録準備部27bと、媒体搬送部27aによる記録媒体の位置の調整に係る処理と、記録準備部27bによるラインインクジェットヘッド12による記録の準備に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させる処理管理部27cと、を備えている。
この構成によれば、搬送機構と、ラインインクジェットヘッド12及び関連する機構とが独立した機構であることを利用して、搬送機構による記録媒体の位置の調整に係る処理と、インクジェットヘッド及び関連する機構による記録の準備に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させるため、これら処理を効率的に実行でき、スループットを向上することができる。
【0038】
また、本実施形態に係るラインインクジェットプリンター1は、画像が記録される複数の独立したシール部S(描画領域)が予め形成された用紙であるラベル用紙14に記録可能である。また、ラインインクジェットプリンター1は、記録部によるラベル用紙14への記録を開始する場合には、シール部Sに正常に画像を記録するための媒体搬送部27aによる頭出し処理を行うと共に、ラインインクジェットヘッド12が正常にインクを吐出するための記録準備部27bによる事前処理を行う。そして、処理管理部27cは、記録部によるラベル用紙14への記録を開始する場合、媒体搬送部27aによる頭出し処理と、記録準備部27bによる事前処理との少なくとも一部を同時に実行させる。
これによれば、記録媒体への記録を開始する場合、記録媒体への記録に必須の処理である頭出し処理と、事前処理との少なくとも一部を同時に実行させるため、これら処理を効率的に実行でき、また、記録媒体への実際の画像の記録をより短時間で開始することが可能となり、スループットを向上することができる。
【0039】
また、本実施形態では、処理管理部27cは、記録部による記録媒体への記録を開始する場合、記録媒体の搬送の速度が一定となる前に、ホームポジションHPに位置するラインインクジェットヘッド12が固定位置KPに至るように、媒体搬送部27aによる記録媒体の搬送を開始するタイミングを調整した上で、記録準備部27bによるラインインクジェットヘッド12の移動に係る処理と、媒体搬送部27aによる記録媒体の搬送に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させる。
これによれば、ラインインクジェットヘッド12による記録媒体への正常な記録を担保した上で、スループットを向上可能である。特に、本実施形態では、記録に係る処理が行われていない間は、ラインインクジェットヘッド12はホームポジションHPにおいてキャッピングされているが、上記構成によれば、キャッピングされていない時間帯が不必要に拡張することを防止でき、効果的にインクの増粘を防止できる。
【0040】
また、本実施形態では、CPUにおける媒体搬送部27aの処理に係るタスクTK1と、記録準備部27bの処理に係るタスクTK2とを、処理管理部27cのタスクTK3によって連係して管理することによって、処理管理部27cのタスクTK3が、タスクTK1と、タスクTK2の機能によって実行される各処理の実行のタイミングを調整する。このようにして、処理管理部27cの機能が実現されている。
これによれば、タスクの管理を通して処理管理部27cの機能を好適に実現可能である。
【0041】
次いで、別の実施形態について説明する。
【0042】
図6は、別の実施形態に係る記録システム5の機能的構成を示すブロック図である。
上述した実施形態では、媒体搬送部27a、記録準備部27b、及び、処理管理部27cの機能を、ラインインクジェットプリンター1の制御部27が備える構成であったが、図6のように、ホストコンピューター25のホスト側制御部45が各機能ブロックを備えるようにしてもよい。すなわち、頭出し処理、事前処理、及び、ヘッド移動処理のそれぞれが、ホスト側制御部45の制御の下実行される構成とし、各処理の開始タイミングを、ホスト側制御部45の処理管理部27cによって管理する構成としてもよい。この場合、媒体搬送部27a、記録準備部27b、及び、処理管理部27cの機能は、例えば、プリンタードライバーに実装される。
【0043】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、図3に示す各機能ブロックはハードウェアとソフトウェアの協働により任意に実現可能であり、特定のハードウェア構成を示唆するものではない。
また、例えば、制御部27の機能を、ラインインクジェットプリンター1に外部接続される別の装置に持たせるようにしてもよい。
また、ラインインクジェットプリンター1の外部の記憶媒体に記憶させたプログラムを実行することにより、図4のフローチャートの各ステップを実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…ラインインクジェットプリンター(記録装置)、12…ラインインクジェットヘッド(インクジェットヘッド)、14…ラベル用紙(記録媒体)、25…ホストコンピューター(制御装置)、27…制御部、27a…媒体搬送部、27b…記録準備部、27c…処理管理部、45…ホスト側制御部、S…シール部(描画領域)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインクジェットヘッドにより記録媒体に記録する記録部と、
搬送機構により前記記録媒体を搬送すると共に、前記搬送機構を制御して前記記録媒体の位置を調整する媒体搬送部と、
前記インクジェットヘッド、及び、関連する機構を制御して、前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理を行う記録準備部と、
前記媒体搬送部による前記記録媒体の位置の調整に係る処理と、前記記録準備部による前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させる処理管理部と、を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録媒体は、画像が記録される複数の独立した描画領域が予め形成された用紙であり、
前記記録部による前記記録媒体への記録を開始する場合には、前記描画領域内に画像を記録するための前記媒体搬送部による頭出し処理が必要とされると共に、前記インクジェットヘッドがインクを吐出するための前記記録準備部による事前処理が必要とされ、
前記処理管理部は、
前記記録部による前記記録媒体への記録を開始する場合、前記媒体搬送部による前記頭出し処理と、前記記録準備部による前記事前処理との少なくとも一部を同時に実行させることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドは、ライン型の記録ヘッドであり、
前記媒体搬送部は、
記録のために前記記録媒体を搬送する際、搬送の開始後、加速期間を経て、その搬送の速度が一定となるように搬送し、
前記記録部は、
前記記録媒体に記録する際、前記記録媒体の搬送の速度が一定となった後に、固定位置に位置する前記インクジェットヘッドからインクを吐出して記録し、
前記記録準備部は、
前記記録部による記録が行われていない間、前記インクジェットヘッドを前記固定位置からホームポジションに移動させ、前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理を行い、
前記処理管理部は、
前記記録部による前記記録媒体への記録を開始する場合、前記記録媒体の搬送の速度が一定となる前に、前記ホームポジションに位置する前記インクジェットヘッドが前記固定位置に至るように、前記媒体搬送部による前記記録媒体の搬送を開始するタイミングを調整した上で、前記記録準備部による前記インクジェットヘッドの移動に係る処理と、前記媒体搬送部による前記記録媒体の搬送に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
CPUにおける前記媒体搬送部の処理に係るタスクと、前記記録準備部の処理に係るタスクとを連係して管理することによって、各タスクの機能によって実行される各処理の実行のタイミングを調整することにより、前記処理管理部の機能を実現することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
インクを吐出するインクジェットヘッドにより記録媒体に記録する記録部を備える記録装置に接続可能な制御装置であって、
搬送機構により前記記録媒体を搬送させると共に、前記搬送機構を制御して前記記録媒体の位置を調整させる媒体搬送部と、
前記インクジェットヘッド、及び、関連する機構を制御して、前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理を行わせる記録準備部と、
前記媒体搬送部による前記記録媒体の位置の調整に係る処理と、前記記録準備部による前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させる処理管理部と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
インクを吐出するインクジェットヘッドにより記録媒体に記録する記録部を備える記録装置の制御方法であって、
搬送機構を制御して前記記録媒体の位置を調整する媒体搬送部による前記記録媒体の位置の調整に係る処理と、前記インクジェットヘッド、及び、関連する機構を制御して、前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理を行う記録準備部による前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理と、の少なくとも一部を同時に実行させ、
前記記録部により前記記録媒体に記録することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項7】
インクを吐出するインクジェットヘッドにより記録媒体に記録する記録部を備える記録装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記制御部を、
搬送機構により前記記録媒体を搬送すると共に、前記搬送機構を制御して前記記録媒体の位置を調整する媒体搬送部と、
前記インクジェットヘッド、及び、関連する機構を制御して、前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理を行う記録準備部と、
前記媒体搬送部による前記記録媒体の位置の調整に係る処理と、前記記録準備部による前記インクジェットヘッドによる記録の準備に係る処理との少なくとも一部を同時に実行させる処理管理部と、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−22916(P2013−22916A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162291(P2011−162291)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】