説明

記録装置、及び記録装置の制御方法

【課題】ロール体の外径が小さくなった場合においても、被記録媒体に弛みが生じること無く搬送できる記録装置、及び記録装置の制御方法を提供する。
【解決手段】ロール状ターゲット12aを支持するターゲット支持部18と、支持手段28と、駆動ローラー25aを含み、支持手段28にターゲット12を間欠的に搬送するターゲット搬送系25,33と、ターゲット12に対して記録処理を行う記録部36と、駆動ローラー25aによるターゲット12の各搬送動作を制御する制御部44と、ターゲット12の各搬送動作を開始するに先立ちロール状ターゲット12aの外径を測定する外径測定部70と、を備えた記録装置11である。制御部44は外径測定部70がロール状ターゲット12aの外径が所定値以下となった場合、少なくとも駆動ローラー25aを停止状態から所定の速度まで加速させるための加速駆動ステップにおける駆動ローラー25aの加速度を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置、及び記録装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録装置として、インクジェット方式のプリンターが広く知られており、例えば特許文献1には、長尺の被記録媒体をロール状に巻き込んだロール体から引き出した被記録媒体に対して記録を行うプリンターが記載されている。同文献記載のプリンターでは、張力が付与された状態で被記録媒体が搬送される構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−313663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロール体のような被記録媒体を用いる場合、記録動作を行うことでロール体の外径が所定値よりも小さくなると、被記録媒体の送り方向に対して左右の蛇行が現れ、被記録媒体に弛みが生じてしまうという課題がある。このような弛んだ状態の被記録媒体に対しては、良好な記録を行うことができない。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ロール体の外径が小さくなった場合においても、被記録媒体に弛みが生じること無く搬送できる記録装置、及び記録装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の記録装置は、長尺のターゲットをロール状に巻回してなるロール状ターゲットを支持するターゲット支持部と、前記ターゲットを該ターゲットの長さ方向に沿う搬送経路に沿わせて支持する支持手段と、前記長尺のターゲットを巻き掛けることで前記ロール状ターゲットから引き出す駆動ローラーを含み、前記支持手段に前記ターゲットを間欠的に搬送するターゲット搬送系と、前記支持手段により支持された状態の前記ターゲットに対して記録処理を行う記録部と、前記駆動ローラーによる前記ターゲットの各搬送動作を制御する制御部と、前記ターゲット搬送系が前記ターゲットの各搬送動作を開始するに先立ち、前記ロール状ターゲットの外径を測定する外径測定部と、を備え、前記制御部は、前記外径測定部が前記ロール状ターゲットの外径が所定値以下となったことを測定した場合に、前記ロール状ターゲットの外径が所定値よりも大きい場合の搬送動作に対し、前記ターゲットの搬送動作のうち、少なくとも前記駆動ローラーを停止状態から所定の速度まで加速させるための加速駆動ステップにおける該駆動ローラーの加速度を大きくした状態で前記ターゲットの搬送動作を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明の記録装置によれば、ロール状ターゲットの外径が所定値以下となった場合、ターゲットの搬送動作のうち、少なくとも加速駆動ステップの駆動ローラーにおける加速度を大きくした状態でターゲットの搬送動作を行うので、十分な張力を付与した状態でロール状ターゲットから長尺のターゲットを繰り出すことができる。よって、ターゲットの送り方向に対し、左右の蛇行が生じるのを防止し、弛みが生じない状態でターゲットを記録部の下方へと搬送することができる。よって、信頼性の高い記録を行うことができる。
【0008】
また、上記記録装置においては、前記外径測定部は、前記ロール状ターゲットの外径の変化に応じて可動する可動部と、前記可動部に設けられ、前記ロール状ターゲットの外面に当接する当接部と、前記可動部の位置を検出するセンサー部と、を含むのが好ましい。
この構成によれば、外部測定部がロール状ターゲットの外径を簡便且つ確実に測定することができる。
【0009】
また、上記記録装置においては、前記可動部における前記センサー部の検出位置に対応する部分には、他の部分に比べて幅が拡がった拡幅部となっているのが好ましい。
この構成によれば、可動部に拡幅部が設けられているので、センサー部が可動部の位置を確実に検出することができる。また、可動部における拡幅部以外の部分を細く形成できるので、可動部を軽量化することができる。よって、当接部が当接する事でロール状ターゲットに負荷が加わるのを防止できる。
【0010】
また、上記記録装置においては、前記ターゲットの搬送動作は、前記加速駆動ステップの他に、所定の速度まで到達した前記駆動ローラーを一定速度で回転させる定常駆動ステップと、前記駆動ローラーの回転速度を前記所定の速度から減速させる減速駆動ステップと、を含んでおり、前記制御部は、前記外径測定部が前記ロール状ターゲットの外径が所定値以下となったことを測定した場合に、前記ロール状ターゲットの外径が所定値よりも大きいときに行われる搬送動作に比べ、前記減速駆動ステップの前記駆動ローラーにおける減速度を大きくするのが好ましい。
この構成によれば、加速駆動ステップ及び減速駆動ステップに要する時間を短縮することができ、結果的にターゲットの搬送動作に要する時間を短縮することができる。よって、ターゲットの搬送動作を短時間で行うことができ、記録動作のタクトを短縮できる。
【0011】
本発明の記録装置の制御方法は、長尺のターゲットをロール状に巻回してなるロール状ターゲットを支持するターゲット支持部と、前記ターゲットを該ターゲットの長さ方向に沿う搬送経路に沿わせて支持する支持手段と、前記長尺のターゲットを巻き掛けることで前記ロール状ターゲットから引き出す駆動ローラーを含み、前記支持手段に前記ターゲットを間欠的に搬送するターゲット搬送系と、前記支持手段により支持された状態の前記ターゲットに対して記録処理を行う記録部と、前記ロール状ターゲットの外径を測定する外径測定部と、を備えた記録装置の制御方法であって、前記ターゲット搬送系による前記ターゲットの各搬送動作は、前記駆動ローラーの回転速度を加速させる加速駆動ステップと、所定の速度まで到達した前記駆動ローラーを一定速度で回転させる定常駆動ステップと、前記駆動ローラーの回転速度を前記所定の速度から減速させる減速駆動ステップと、を含んでおり、前記ターゲット搬送系が前記ターゲットの各搬送動作を開始するに先立ち、前記外径測定部が前記ロール状ターゲットの外径が所定値以下となったことを測定した場合に、前記ロール状ターゲットの外径が所定値よりも大きいときに行われる搬送動作に比べ、少なくとも前記加速駆動ステップの前記駆動ローラーにおける加速度を大きくした状態で前記ターゲットの搬送動作を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の記録装置の制御方法によれば、ターゲットの各搬送動作において、ロール状ターゲットの外径が所定値以下となった場合、加速駆動ステップの駆動ローラーにおける加速度を大きくした状態でターゲットの搬送動作を行うので、十分な張力を付与した状態でロール状ターゲットから長尺のターゲットを繰り出すことができる。よって、ターゲットの送り方向に対し、左右の蛇行が生じるのを防止し、弛みが生じない状態でターゲットを記録部の下方へと搬送することができる。よって、信頼性の高い記録を行うことができる。
【0013】
また、上記記録装置の制御方法においては、前記外径測定部が前記ロール状ターゲットの外径が所定値以下となったことを測定した場合に、前記ロール状ターゲットの外径が所定値よりも大きいときに行われる搬送動作に比べ、前記減速駆動ステップの前記駆動ローラーにおける減速度を大きくするのが好ましい。
この構成によれば、加速駆動ステップ及び減速駆動ステップに要する時間を短縮することができ、結果的にターゲットの搬送動作に要する時間を短縮することができる。よって、ターゲットの搬送動作を短時間で行うことができ、記録動作のタクトを短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態のプリンターを示す図。
【図2】プリンターにおいて印刷を実行する印刷領域の平面図。
【図3】プラテンの側断面図。
【図4】プリンターの機能ブロック図。
【図5】測定装置の周辺構成を示す要部拡大図。
【図6】搬送及び印刷処理に関する処理ルーチンを示すフローチャート。
【図7】搬送処理に関する処理ルーチンを示すフローチャート。
【図8】センサーにおけるON/OFF信号とロール体の状態との関係を示すグラフ。
【図9】連続紙の搬送動作時の速度プロファイルを示す図。
【図10】変形例に係る連続紙の搬送動作時の速度プロファイルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、記録装置及びその制御方法の実施の形態として、プリンター及びプリンターの制御方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0016】
図1は、本実施形態のプリンターを示す図である。図2は、プリンターにおいて印刷を実行する印刷領域の平面図である。図3はプラテンの側断面図である。
【0017】
プリンター11(記録装置)は、印刷方式として、複数の記録ヘッド(液体噴射ヘッド)から連続紙12上に液体を噴射するインクジェット方式を採用したものであり、ロール状に巻回された長尺状の連続紙(ターゲット)12を順次繰り出しつつ印刷処理を行い、印刷後の連続紙12を再びロール状に巻回する。
なお、本実施形態では、水平面内における連続紙12の幅方向をX方向、X方向と直交する連続紙12の搬送方向をY方向、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を設定している。
【0018】
プリンター11は、印刷処理を実行する本体部14と、本体部14に対して連続紙12を供給する繰り出し部13と、本体部14から排出される連続紙12を巻き取る巻き取り部15とを備えている。
【0019】
本体部14は本体ケース16を備えており、繰り出し部13は本体ケース16の搬送方向上流側(−Y側)に設置され、巻き取り部15は本体ケース16の搬送方向下流側(+Y側)に設置されている。本体ケース16の搬送方向上流側(−Y側)の側壁16Aに設けられた媒体供給部16aに繰り出し部13が接続される一方、搬送方向下流側(+Y側)の側壁16Bに設けられた媒体排出部16bに巻き取り部15が接続されている。
【0020】
繰り出し部13は、本体ケース16の側壁16Aの下部に取り付けられた支持板17と、支持板17に設けられた巻き軸(ターゲット支持部)18と、本体ケース16の媒体供給部16aに接続された繰り出し台19と、繰り出し台19の先端に設けられた中継ローラー20と、測定装置(外径測定部)70とを備えている。巻き軸18には、ロール状に巻回された連続紙12から構成されるロール体(ロール状ターゲット)12aが回転可能に支持されている。外径測定装置70は、印刷処理を行うことで経時的に変化していくロール体12aの外径を測定するためのものである。ロール体12aから繰り出された連続紙12は中継ローラー20に巻き掛けられて繰り出し台19の上面に転換され、繰り出し台19の上面に沿って媒体供給部16aへ搬送される。なお、ロール体12aは巻き軸18に取り付けられた初期状態の外径が600mm程度となっている。
【0021】
巻き取り部15は、巻き取りフレーム41と、巻き取りフレーム41に設けられた中継ローラー42及び巻き取り駆動軸43とを備えている。媒体排出部16bから排出される連続紙12は中継ローラー42に巻き掛けられて巻き取り駆動軸43に案内され、巻き取り駆動軸43の回転駆動によりロール状に巻き取られる。
【0022】
本体部14の本体ケース16内には、板状の基台21が水平に設置され、基台21により本体ケース内が2つの空間に区画されている。基台21より上側の空間が連続紙12に印刷処理を施す印刷室22である。印刷室22には、基台21上に固定されたプラテン(媒体支持部)28と、プラテン28の上方に設けられた記録ヘッド(記録処理部)36と、記録ヘッド36を支持するキャリッジ35aと、キャリッジ35aを支持する2本のガイド軸35(図2参照)と、バルブユニット37とが設けられている。2本のガイド軸35は搬送方向(Y方向)に沿って互いに平行に配置され、キャリッジ35aが搬送方向に往復移動可能に構成されている。本実施形態の場合、キャリッジ35aと2本のガイド軸35とが、記録ヘッド36を搬送する記録処理部搬送系に属する。
【0023】
プラテン28は、図1から図3に示すように、上面が開口した箱状の支持台28aと、支持台28aの開口に取り付けられた載置板28bと、を有する。支持台28aは基台21上に固定されており、支持台28aと載置板28bとにより囲まれた内部が負圧室31とされている。載置板28bの支持面PL(図示上面)に連続紙12が載置される。
【0024】
載置板28bには、載置板28bを厚さ方向に貫通する多数の貫通孔28Aが形成されており、支持台28aの一側壁(本実施形態では−Y側の側壁)に、当該側壁を貫通する排気口28Bが形成されている。排気口28Bには吸引ファン29が接続されている。吸引ファン29により負圧室31内を吸引することで、多数の貫通孔28Aを介して連続紙12に吸引力を作用させ、連続紙12を載置板28bの支持面PLに吸着させて平坦化することができる。
【0025】
プラテン28の搬送方向上流側(−Y側)には、複数の搬送ローラーを含む供給搬送系が設けられている。供給搬送系は、プラテン28近傍の印刷室22内に設けられた第1搬送ローラー対25と、本体ケース16の下段側の空間に設けられた中継ローラー24と、媒体供給部16a近傍に設けられた中継ローラー23とを含む。
第1搬送ローラー対25は、第1駆動ローラー(駆動ローラー)25aと、第1従動ローラー25bとからなる。第1駆動ローラー25aには、図2に示すように、第1搬送モーター(第1駆動モーター)26と、第1エンコーダ26Eとが連結されている。
【0026】
供給搬送系において、繰り出し部13から媒体供給部16aを介して本体ケース16内に搬入された連続紙12は、中継ローラー23、24を経由して第1駆動ローラー25aに下方から巻き掛けられ、第1搬送ローラー対25にニップされる。そして、第1搬送モーター26により駆動される第1駆動ローラー25aの回転に伴って、第1搬送ローラー対25からプラテン28の支持面PL上に水平に繰り出される。
【0027】
一方、プラテン28の搬送方向下流側(+Y側)には、複数の搬送ローラーを含む排出搬送系が設けられている。排出搬送系は、プラテン28に対して第1搬送ローラー対25と反対側に設けられた第2搬送ローラー対33と、本体ケース16の下段側の空間に設けられた反転ローラー38及び中継ローラー39と、媒体排出部16b近傍に設けられた送り出しローラー40とを含む。
第2搬送ローラー対33は、第2駆動ローラー33aと、第2従動ローラー33bとからなる。第2駆動ローラー33aには、図2に示すように、第2搬送モーター(第2駆動モーター)34と、第2エンコーダ34Eとが連結されている。なお、第2従動ローラー33bは、連続紙12の印刷面側(上面側)に配置されるため、印刷された画像の損傷を回避するために、連続紙12の幅方向(X方向)の端縁部にのみ当接する構成としてもよい。
【0028】
排出搬送系において、連続紙12をニップした第2搬送ローラー対33は、第2搬送モーター34により駆動される第2駆動ローラー33aの回転に伴ってプラテン28上から連続紙12を搬出する。第2搬送ローラー対33から繰り出された連続紙12は、反転ローラー38及び中継ローラー39を経由して送り出しローラー40へ搬送され、送り出しローラー40により媒体排出部16bを介して巻き取り部15へ繰り出される。
【0029】
本実施形態において、第1搬送ローラー対25を含む供給搬送系と、第2搬送ローラー対33を含む排出搬送系とが、被記録媒体である連続紙12を本体部14内で搬送するターゲット搬送系に属する。
【0030】
次に、本実施形態の場合、複数の記録ヘッド36は、ヘッド取付板36aを介してキャリッジ35aに取り付けられている。ヘッド取付板36aはキャリッジ35a上で媒体幅方向(X方向)に移動可能に構成されている。ヘッド取付板36aはキャリッジ35aに接続されたヘッド位置制御部35bにより位置制御可能であり、ヘッド取付板36aを媒体幅方向(X方向)に移動させることで、複数の記録ヘッド36を一体的に改行動作させることができる。記録ヘッド36は、ヘッド取付板36a上において、隣り合う記録ヘッド36が媒体搬送方向(Y方向)で互い違いに2段になるように、媒体幅方向に一定間隔に並べて配置されている。
なお、ヘッド位置制御部35bは、記録ヘッド36の媒体幅方向(X方向)の位置制御とともに、キャリッジ35aの媒体搬送方向(Y方向;ヘッド走査方向)の位置制御を行い、連続紙12上の所望の位置に記録ヘッド36を配置することができる。
【0031】
複数の記録ヘッド36は、それぞれ図示しないインク供給チューブを介してバルブユニット37と接続されている。バルブユニット37は印刷室22内における本体ケース16の内壁に設けられており、図示しないインクタンク(インク貯留部)と接続されている。
バルブユニット37は、インクタンクから供給されるインクを一時貯留しつつ記録ヘッド36に供給する。
【0032】
記録ヘッド36の下面(ノズル形成面)には、多数のインク吐出ノズルが媒体幅方向(X方向)に列設されている。記録ヘッド36はバルブユニット37から供給されるインクをインク吐出ノズルからプラテン28上の連続紙12に向けて噴射し、印刷を行う。
なお、記録ヘッド36は、複数のインク吐出ノズル列を有していてもよい。この場合には、4色や6色のカラー印刷を行う際に、それぞれのインク吐出ノズル列に色種毎にインクを割り当てれば、1つの記録ヘッド36で複数色のインクの噴射が可能となる。
【0033】
印刷室22において、プラテン28上の領域が、インク吐出ノズルからのインク噴射により連続紙12に対して印刷が行われる印刷領域Rである。連続紙12は、上述した供給搬送系及び排出搬送系により間欠的に搬送される。具体的には、印刷領域Rに相当する長さの連続紙12が印刷を行う毎にプラテン28上にロードされ、印刷処理後に排出搬送系へ送出される。
【0034】
印刷室22内に延在するガイド軸35は、図1及び図2に示すように、印刷領域Rよりも媒体搬送方向の外側にまで延びている。これにより、キャリッジ35aは印刷領域Rの外側の領域まで移動可能とされている。印刷領域Rの媒体搬送方向上流側(−Y側)に第1メンテナンス領域R1が設けられ、媒体搬送方向下流側(+Y側)に第2メンテナンス領域R2が設けられている。
【0035】
第1メンテナンス領域R1には、メンテナンスユニット60が設けられている。メンテナンスユニット60は、例えば、個々の記録ヘッド36に対応して設けられたキャップ部材及びワイピング部材と、キャップ部材に接続されキャップ部材内部を吸引する吸引装置とを備えた構成である。
第2メンテナンス領域R2には、メンテナンスユニットなどは設けられておらず、作業者の手や腕を挿入可能な作業空間とされている。第2メンテナンス領域R2にキャリッジ35aを配置することで上記作業空間内に記録ヘッド36のノズル形成面を露出させることができ、作業者によるノズル形成面の清拭や記録ヘッド36の交換作業などが可能となる。
【0036】
なお、印刷処理後の連続紙12は、排出搬送系内を搬送される間に自然乾燥されるが、インクを強制的に乾燥させ連続紙12に固着させるための加熱装置を備えた構成としてもよい。例えば、プラテン28に載置板28bを加熱するプラテンヒーターを備えた構成としてもよく、排出搬送系内に加熱装置内を設けた構成としてもよい。
【0037】
次に、図4はプリンター11の機能ブロック図である。
図4に示すように、プリンター11は、装置全体の駆動状態を制御するコントローラー(制御部)44を備えている。コントローラー44は、中央処理装置となるCPU45、ROM46、及びRAM47を備えている。ROM46には、後述する印刷処理及び搬送処理に関する処理ルーチンのプログラム等が記憶されている。また、RAM47は、CPU45における演算結果の一時記憶領域や、外部入力装置48から入力される印刷データ等の一時記憶領域として使用される。
【0038】
コントローラー44には、ヘッドドライバー49、第1搬送モータードライバー(第1モーター制御部)50、第2搬送モータードライバー(第2モーター制御部)52、及び吸引ファンモータードライバー54、トルク検出センサー53、圧力検出センサー32、外径測定装置70及び外部入力装置48が接続されている。
【0039】
ヘッドドライバー49には、複数の記録ヘッド36、及びヘッド位置制御部35bが接続されている。コントローラー44は、印刷処理において、外部入力装置48から入力された印刷データをRAM47から読み出し、読み出した印刷データをヘッドドライバー49に送信する。ヘッドドライバー49は、コントローラー44から受信した印刷データに基づいて記録ヘッド36及びヘッド位置制御部35bを駆動し、記録ヘッド36の連続紙12上の位置を制御しつつ記録ヘッド36のインク吐出ノズルからインク滴を噴射させ、連続紙12上に画像を形成する。
【0040】
第1搬送モータードライバー50は、第1搬送モーター26に連結された第1エンコーダ26Eから出力されるカウント信号に基づいて第1搬送モーター26の回転量を検出し、第1搬送モーター26の回転量をフィードバック制御する。すなわち、第1搬送モータードライバー50は、コントローラー44から入力された所定の搬送長さに達するまで、第1搬送モーター26により第1駆動ローラー25aを回転駆動し、第1搬送ローラー対25から連続紙12をプラテン28上に繰り出す。
【0041】
また、本実施形態においては、第1搬送モータードライバー50は、ロール体12aの外径を測定する外径測定装置70から出力された測定結果に基づいて、第1搬送モーター26の回転加速度を制御するようになっている。
【0042】
一方、第2搬送モータードライバー52は、コントローラー44から入力される制御信号に基づいて、第2搬送モーター34をトルク制御により駆動する。本実施形態では、コントローラー44に第2搬送モーター34のトルクを検出するトルク検出センサー53が接続されており、コントローラー44は、トルク検出センサー53から出力される第2搬送モーター34のトルクの検出結果に基づいて、第2搬送モータードライバー52を介して第2搬送モーター34のトルクをフィードバック制御する。これにより、第2搬送モーター34のトルクに基づいた所定の張力が、第2駆動ローラー33aを介して連続紙12に付与される。
【0043】
なお、一般に、モーターは、トルクと電流とがほぼ比例関係を持つため、モーターの回転速度が一定であれば、モーターの負荷に応じて電流の大きさが決定する。すなわち、ローラーにかかる負荷に応じて、モーターの駆動に必要な電流の大きさが決定される。したがって、モーターを流れる電流の大きさを検出することにより、モーターに荷重される負荷の大きさを検出することができる。そこで本実施形態では、トルク検出センサー53として、第2搬送モーター34に流れる電流の大きさを検出する第2搬送モータードライバー52の電流センサーを用いることとしている。これにより、コントローラー44は、第2搬送モータードライバー52に対して、トルク設定値として第2搬送モーター34の電流値を設定し、第2搬送モータードライバー52は、入力された電流値に基づいて第2搬送モーター34を電流フィードバック制御する。
【0044】
また本実施形態では、第2搬送モーター34をトルク制御により駆動するため、第2搬送モーター34に連結された第2エンコーダ34Eは、連続紙12を搬送する際の送り長さの検出には用いられないが、装置起動時の第2搬送モーター34の初期化動作や、第2駆動ローラー33aの停止制御に使用される。
【0045】
吸引ファンモータードライバー54は、コントローラー44から入力される制御信号に基づいて、吸引ファン29の回転軸に連結された吸引ファンモーター30を駆動制御する。吸引ファンモーター30の駆動力により吸引ファン29を所定の速度で回転させることで、回転速度に基づいた所定の吸引力で負圧室31内を減圧することができる。その結果、連続紙12に対して、負圧室31内の負圧が載置板28bの貫通孔28Aを介してプラテン28の支持面PLに対する吸着力として作用する。
【0046】
図5は外径測定装置70の周辺構成を示す要部拡大図である。外径測定装置70は、図5に示すように、レバー部(可動部)71と、レバー部71の一端に設けられ、巻き軸18に支持されたロール体12aの外面に当接する当接部72と、レバー部71の位置を検出するセンサー部73と、を含んでいる。レバー部71は、ロール体12aの外径の変化に応じて当接部72の位置を変化させることができるように支持板17に対して可動可能に取り付けられている。レバー部71におけるセンサー部73に対応する部分には、ドグ板71aが設けられている。ドグ板71aは、レバー部71の他の部分に比べて幅が拡がった拡幅部により構成されている。なお、レバー部71はロール体12aに接触することはなく、当接部72のみがロール体12aに接触するようになっている。
【0047】
センサー部73は、第1センサー73a、第2センサー73b、及び第3センサー73cを含んでいる。これら第1〜3センサー73a〜73cは、例えば反射型センサーから構成されており、レバー部71に設けられたドグ板71aによって反射された光を受光可能となっている。この構成により、レバー部71のうち、ドグ板71a以外の部分を細く形成することができる。よって、レバー部71を軽量化することができ、レバー部71(当接部72)が当接する事でロール体12aに与える負荷を低減している。
【0048】
第1センサー73aは、上述のロール体12aの交換時に上方の退避位置のレバー部71におけるドグ板71aを検出するためのものである。また、第2センサー73bは、ロール体12aの外径が所定値(例えば、本実施形態では、200mm)となった時のレバー部71におけるドグ板71aを検出するためのものである。また、第3センサー73cは、ロール体12aにおける連続紙12の残量が僅かとなった時のレバー部71におけるドグ板71aを検出するためのものである。
【0049】
当接部72は、例えばロール体12aの回転に伴って回転するローラーにより構成されている。これにより、当接部72とロール体12aとの間に摩擦が生じるのを防止し、ロール体12aの回転を妨げることが防止されている。なお、レバー部71は、例えばロール体12aを交換する際に、ロール体12aとの干渉を避けるため、上方に退避した位置に固定可能となっている。
【0050】
ところで、プリンター11においては、印刷処理によりロール体12aから連続紙12が順次(間欠的に)繰り出されることがロール体12aの外径が経時的に小さく変化する。ロール体12aの外径が所定値よりも小さくなると、ロール体12aの重量が軽くなるため、連続紙12に十分な張力を付与することができなくなり、連続紙12の送り方向に対して左右の蛇行が生じ、記録ヘッド36の下方に搬送される連続紙12に弛みが生じるおそれがある。記録ヘッド36は、このような弛みが生じた連続紙12に対して良好な印刷処理を行うことができないといった問題が発生する。
【0051】
これに対し、本実施形態に係るプリンター11は上記外径測定装置70を用いることで経時的に小さく変化していくロール体12aの外径を測定し、この測定結果に基づき、コントローラー44が第1搬送モーター26の回転加速度を制御するようにしている。これにより、連続紙12に弛みが生じるのを防止し、ロール体12aの外径が経時的に小さくなった場合においても良好な印刷処理を行うことが可能となっている。
【0052】
以下、図6、7を参照しつつ、プリンター11における搬送制御及び印刷制御について説明する。図6は、搬送及び印刷処理に関する処理ルーチンを示すフローチャートであり、図7は搬送処理に関する処理ルーチンを示すフローチャートである。コントローラー44は、搬送処理及び印刷処理に関する処理ルーチンのプログラムをROM46から読み出して実行することにより、プリンター11における搬送制御及び印刷制御を行う。なお、図示は省略したが、コントローラー44が搬送処理及び印刷処理に関する処理ルーチンのプログラムを実行する際には、連続紙12への印刷に用いられる印刷データが外部入力装置48からRAM47に対して入力され、かかる印刷データがヘッドドライバー49を介して記録ヘッド36に供給される。
【0053】
図6に示すように、まず、ステップS10において、コントローラー44は、吸引ファンモーター30の回転速度を設定することにより、吸引ファン29による負圧室31内の吸引力をF1に設定する。
【0054】
そして次に、ステップS11において、コントローラー44は、吸引ファンモータードライバー54に対して制御指令信号を送信する。すると、吸引ファンモーター30の回転駆動に伴って吸引ファン29が回転駆動を開始することにより、負圧室31内に負圧が生成する。その結果、プラテン28の支持面PL上の連続紙12には、負圧室31内から載置板28bの貫通孔5を介して吸着力が作用する。なお、この場合、連続紙12は、吸引ファン29の吸引力F1とほぼ等しい第2の吸着力でプラテン28の支持面PL上に吸着されるようになっている。
【0055】
なお、吸引ファン29の吸引力は、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送を阻害することがないように、連続紙12がプラテン28の支持面PLに対して強固に張り付くことがない程度の大きさに設定されている。そのため、第2駆動ローラー33aからプラテン28の支持面PL上の連続紙12に対して確実に張力が作用するため、第2駆動ローラー33aは、後述するように連続紙12に対して作用させる張力の大きさを高精度に調整することが可能となっている。また、プラテン28の支持面PLから連続紙12に作用する吸着力が低廉となるため、連続紙12の搬送時における第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34の駆動負荷が過大となることが回避されるようになっている。
【0056】
続いて、ステップS12において、コントローラー44は、負圧室31内に設けられた圧力検出センサー32からの検出信号に基づいて、負圧室31内の圧力が吸引ファン29の回転駆動に伴って吸引ファン29の吸引力F1とほぼ等しい圧力値となるまで減圧されたか否かを判定する。
【0057】
そして、コントローラー44は、ステップS12での判定結果が肯定判定(負圧室31の圧力=F1)である場合、負圧室31内の圧力が所望の圧力値となるまで吸引ファン29による減圧が完了したと判断し、搬送動作(ステップS13)に移行する。
【0058】
一方、コントローラー44は、ステップS12での判定結果が否定判定(負圧室31の圧力≠F1)である場合、吸引ファン29による負圧室31内の減圧が完了していないと判断する。そして、コントローラー44は、負圧室31内の圧力が所望の圧力値となるまで減圧されるように、吸引ファン29による負圧室31内の減圧を継続する。
【0059】
搬送動作(ステップS13)は、図7に示されるステップS21〜S28を含んでいる。搬送動作では、まず連続紙12の搬送動作を行うに先立ち、コントローラー44が外径測定装置70に対して、ロール体12aの外径測定を開始させる制御信号を出力する。制御信号を受信した外径測定装置70は、ロール体12aの外径計測を行うルーチンを開始する(ステップS21)。
【0060】
外径計測ルーチンにおいては、外径測定装置70は、第1センサー73a、第2センサー73b、第3センサー73cにおけるON/OFF信号を検出し、この検出信号に基づいてロール体12aの外径の測定処理を実行する。そして、ロール体12aの外径が所定値となった場合には、コントローラー44に対してその旨を通知する。
【0061】
ここで、外径測定装置70における動作について説明する。図8は外径測定装置70の各センサー73a,73b,73cにおけるON/OFF信号と、ロール体12aの外径との関係を示すグラフである。
【0062】
図8に示されるように、第1センサー73aのみがON状態、第2センサー73b、第3センサー73cがOFF状態の場合は、レバー部71が上方に設定された退避位置に持ち上げられた状態に該当し、このとき外径測定装置70がコントローラー44に通知する信号を第1の信号と称する。
【0063】
また、第1センサー73a、第2センサー73b、第3センサー73cがOFF状態の場合は、ロール体12aの外径が所定値以上である状態に該当し、このとき外径測定装置70がコントローラー44に通知する信号を第2の信号と称する。
【0064】
また、第2センサー73bのみがON状態、第1センサー73a、第3センサー73cがOFF状態の場合は、ロール体12aの外径が所定値(200mm)となった状態に該当し、このとき外径測定装置70がコントローラー44に通知する信号を第3の信号と称する。
【0065】
また、第1センサー73aのみがON状態、第2センサー73b、第3センサー73cがOFF状態の場合は、ロール体12aの外径が小さくなり、連続紙12の残量が僅かとなった状態に該当し、このとき外径測定装置70がコントローラー44に通知する信号を第4の信号と称する。
【0066】
すなわち、コントローラー44は、外径測定装置70から通知された上記第1の信号を検出した場合、プリンター11がロール体12aの交換等のメンテナンス作業時であると判断する(ステップS22)。この場合、コントローラー44は、ロール体12aが交換作業中である旨のエラーを通知する(ステップS23)。
【0067】
また、コントローラー44は、外径測定装置70から通知された上記第2の信号を検出した場合、ロール体12aの外径が所定値以上であると判断する(ステップS24)。このようにロール体12aの外径が所定値以上である場合、連続紙12の蛇行が発生することがない。従って、コントローラー44は、外径測定装置70から第2の信号が通知された場合、すなわちロール体12aの外径が所定値よりも大きい場合、第1搬送モーター26を後述の通常モードで駆動させる(ステップS25)。
【0068】
また、コントローラー44は、外径測定装置70から通知された上記第3の信号を検出した場合、ロール体12aの外径が所定値以下であると判断する(ステップS26)。この場合、コントローラー44は第1搬送モーター26を加速モードで駆動させる(ステップS27)。
【0069】
プリンター11は、図9に示すような速度プロファイルに基づいて、連続紙12の搬送動作を順次行うようになっている。なお、図9中において両矢印Aで示される区間は、上述の通常モードに基づく第1搬送モーター26の回転速度の変化(速度プロファイル)を示すものであり、両矢印Bで示される区間は、上記加速モードに基づく第1搬送モーター26の回転速度(速度プロファイル)の変化を示すものである。
【0070】
通常駆動モード及び加速モードは、図9に示されるように加速駆動ステップT1、定常駆動ステップT2、及び減速駆動ステップT3により構成される。
具体的に、加速駆動ステップT1は、第1搬送モーター26の回転速度を停止状態から所定速度まで加速させるためのものであり、定常駆動ステップT2は加速駆動ステップT1により所定の速度まで到達した第1搬送モーター26を一定速度で回転させるためのものであり、減速駆動ステップT3は一定速度で回転する第1搬送モーター26の回転速度を減速させるためのものである。
【0071】
本実施形態のプリンター11は、ロール体12aの外径が所定値以下になると、通常モード(ロール体12aの外径が所定値よりも大きい)に比べ、加速駆動ステップT1の加速度を大きくするように第1搬送モーター26の駆動を制御する。具体的に、通常モードでは、加速駆動ステップT1での加速時間と減速駆動ステップT3における減速時間とを1secに設定している。一方、加速モードでは、加速駆動ステップT1での加速時間を0.3secに設定し、減速駆動ステップT3における減速時間を1.0secに設定している。なお、上記各ステップT1〜T3により構成される略台形状の領域の面積で規定される連続紙12の搬送量は、通常モード及び加速モードのいずれにおいても共通とされる。そのため、加速モードにおいては、通常モードに対して定常駆動ステップT2の時間が長く設定されることとなる。
【0072】
このように本実施形態では、連続紙12の搬送動作において、ロール体12aの外径が所定値以下となった場合、加速駆動ステップT1の加速度を通常モードに比べて大きくして第1搬送モーター26の駆動を行うため、外径の小さくなったロール体12aに対して十分な張力を付与することができ、連続紙12を良好に繰り出すことができる。よって、連続紙12の送り方向に対し、左右の蛇行が生じるのを防止し、弛みが生じない状態で連続紙12を記録ヘッド36の下方へと搬送することができる。よって、信頼性の高い印刷処理を行うことが可能となるのである。
【0073】
また、搬送動作においては、コントローラー44が第1搬送モーター26の回転量をCに設定し、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送量(送り長さ)を規定する。第1搬送モーター26の回転量Cは、第1搬送モーター26の回転駆動に伴って第1駆動ローラー25aが回転駆動された場合に、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送量がプラテン28の図1左端(搬送方向下流側端部)から右端(搬送方向上流側端部)までの印刷領域Rに対応する長さとなるように設定される。本実施形態の場合、回転量Cは、第1エンコーダ26Eのカウント数として第1搬送モータードライバー50に入力される。
【0074】
また、コントローラー44は、第2搬送モーター34の管理トルク値をT1に設定することにより、第2駆動ローラー33aから連続紙12に作用させる張力の大きさを設定する。第2搬送モーター34の管理トルク値Tr1は、第2搬送モーター34のトルクに基づいて第2駆動ローラー33aからプラテン28上の連続紙12に作用する張力の大きさが、搬送時における連続紙12のばたつきを十分に抑制することができる程度の大きさとなるように設定される。
【0075】
コントローラー44は、第1搬送モータードライバー50から送信される第1搬送モーター26の回転量情報により、第1搬送モーター26の回転量が上記回転量Cに到達したか否かを判定する。そして、コントローラー44は第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送量が所望の搬送量となるまで、第1駆動ローラー25aによる連続紙12の搬送を継続する。コントローラー44は、連続紙12の搬送が完了したと判断すると、第1搬送モーター26を停止し、連続紙12の搬送を停止する。
【0076】
なお、コントローラー44は、第1駆動ローラー25aの回転量Cを随時監視するのに加えて、トルク検出センサー53からの検出信号に基づいて第2駆動ローラー33aから連続紙12に作用している張力の大きさを随時監視し、更には、圧力検出センサー32からの検出信号に基づいて吸引ファン29の回転駆動に伴う負圧室31内の圧力変化を随時監視している。そして、コントローラー44は、第1駆動ローラー25a、第2駆動ローラー33a、及び吸引ファン29の駆動状態(回転量、張力、吸引力)が、それらを駆動する第1搬送モータードライバー50、第2搬送モータードライバー52、及び吸引ファンモータードライバー54から送信される制御信号に基づいて規定される駆動条件に対してずれを生じた場合には、エラー報知を行う。すなわち、コントローラー44は、第1駆動ローラー25a、第2駆動ローラー33a、及び吸引ファン29が、第1搬送モータードライバー50、第2搬送モータードライバー52、及び吸引ファンモータードライバー54から送信される制御信号に基づいて正常に稼動しているか否かを随時監視している。これにより、上記搬送動作において高い動作信頼性を得ることができる。
【0077】
また搬送時において、吸引ファン29の吸引力は、連続紙12をプラテン28の支持面PLに強固に吸着させない程度の大きさとされる。これにより、プラテン28の吸引力によって連続紙12の搬送が阻害されるのを防止でき、搬送時における第1搬送モーター26及び第2搬送モーター34の駆動負荷が過大となるのを回避できる。また、プラテン28の吸引力に阻害されることなく第2駆動ローラー33aの張力を連続紙12に対して確実に作用させることができることから、張力の大きさを高精度に調整することができる。
【0078】
また、コントローラー44は、外径測定装置70から通知された上記第4の信号を検出した場合、ロール体12aの残量が僅かであると判断し、ユーザーにロール体12aが交換時期となった旨を通知するエラーを通知する(ステップS28)。
【0079】
再び、図6に戻り説明すると、ステップS14において、コントローラー44は、吸引ファンモーター30の回転速度を設定することにより、吸引ファン29の吸引力をF2に変更する。吸引力F2は、ステップS13で設定された吸引ファン29の吸引力F1よりも大きな値である。このとき連続紙12の搬送は停止しており、連続紙12のプラテン28上に配置された部分が、吸引力F2とほぼ等しい第1の吸着力でプラテン28の支持面PLに吸着される。
すなわち本実施形態のプリンター11は、印刷処理の実行時に相対的に大きい第1の吸着力で連続紙12をプラテン28の支持面PLに吸着させる一方、搬送処理の実行時には第1の吸着よりも小さい第2の吸着力(吸引力F1)で連続紙12をプラテン28の支持面PLに吸着させる。
【0080】
そして次に、ステップS15において、コントローラー44は、吸引ファンモータードライバー54に対して制御指令信号を送信する。すると、吸引ファンモーター30の回転速度が変更されることにより、吸引ファン29の駆動に伴って負圧室31内に生成される負圧が変化する。その結果、プラテン28の支持面PL上の連続紙12は、吸引ファン29の吸引力F2とほぼ等しい吸着力でプラテン28の支持面PL上に吸着されるようになる。この場合、搬送が停止された状態にある連続紙12には、プラテン28の支持面PL上で相対的に大きな吸着力が作用するため、連続紙12がプラテン28の支持面PL上において位置ずれを生じることはほとんどない。
【0081】
なお、本実施形態において、コントローラー44は、ステップS14において吸引ファン29の吸引力の大きさをF2に増大させた後、ステップS19において第2搬送モーター34の管理トルク値をT2に減少させる。すなわち、第2駆動ローラー33aから連続紙12に作用させる張力の大きさが相対的に大きい状態で吸引ファン29の吸引力が増大されるため、連続紙12は、高い平面性を維持しつつプラテン28の支持面PL上で吸着される。したがって、第2駆動ローラー33aから連続紙12に対して作用する張力の大きさが減少したとしても、連続紙12はプラテン28の支持面PL上で強固に吸着されているため、連続紙12がプラテン28の支持面PL上で位置ずれを生じることはほとんどない。
【0082】
続いて、ステップS16において、コントローラー44は、印刷処理を行う。具体的に、コントローラー44は連続紙12に対する印刷データをRAM47から読み出し、読み出した印刷データをヘッドドライバー49に送信する。すると、ヘッドドライバー49は、プラテン28の支持面PL上に支持された連続紙12に対して記録ヘッド36のインク吐出ノズルからインクを噴射させることにより連続紙12に対する印刷動作を開始する。すなわち、記録ヘッド36は、第1搬送モータードライバー50により間欠的に行われる第1駆動ローラー25aの各回転動作間において連続紙12に対する印刷処理を実行するようになっている。
【0083】
コントローラー44は記録ヘッド36による連続紙12に対する印刷動作が完了した後、本処理をステップS17に移行する。コントローラー44は、ステップS17において連続紙12に対する印刷処理を継続するか否かを判断する。そして、コントローラー44は、ステップS17において連続紙12に対する印刷処理を継続すると判断した場合には、本処理をステップS10に移行して、ステップS10からステップS16までの処理を再帰的に実行する。一方、コントローラー44は、ステップS17において連続紙12に対する印刷処理を継続しないと判断した場合には、連続紙12に対する搬送処理及び印刷処理に関する処理ルーチンのプログラムを終了する。
【0084】
上記実施形態に係るプリンター11の制御方法及びプリンター11によれば、連続紙12の搬送動作において、ロール体12aの外径が所定値以下となった場合、加速モードに基づき、第1搬送モーター26の駆動を行うようにしているので、十分な張力を付与した状態でロール体12aから連続紙12を繰り出すことができる。よって、連続紙12の送り方向に対し、左右の蛇行が生じるのを防止し、弛みが生じない状態で連続紙12を記録ヘッド36の下方へと搬送することができる。よって、信頼性の高い印刷処理を行うことができる。
【0085】
また、本実施形態のプリンター11によれば、外径測定装置70がロール体12aの外面に当接する当接部72と、レバー部71の位置を検出するセンサー部73と、を含んだ構成となっているので、ロール体12aの外径を簡便且つ確実に測定することができる。
また、外径測定装置70のレバー部71には他の部分に比べて幅が拡がった拡幅部により構成されるドグ板71aが設けられているので、センサー部73の各センサー73a,73b,73cによってレバー部71の位置を確実に検出することができる。また、レバー部71のうち、ドグ板71a以外の部分を細く形成することができるので、レバー部71を軽量化することができる。よって、レバー部71(当接部72)が当接する事でロール体12aに与える負荷を低減することができる。
【0086】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
例えば、上記実施形態では、ロール体12aの外径が所定値よりも小さくなった場合に、1段階だけ加速駆動ステップT1の加速度などを変化させる場合について説明したが、ロール体12aの外径に応じて2段階、3段階のように複数の段階的に加速駆動ステップT1の加速度を変化させるようにしてもよい。この構成によれば、よりロール体12aの外径の変化に応じた連続紙12の送り出しが可能となるので、より信頼性の高い搬送動作を行うことができる。
【0087】
また、上記実施形態では、コントローラー44がロール体12aの外径が所定値以下であると判断した場合に、通常モードに比べて加速駆動ステップT1の加速度のみを大きくする場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。図10に示すようにコントローラー44がロール体12aの外径が所定値以下であると判断した場合に、加速駆動ステップT1の加速度とともに減速駆動ステップT3の減速度を大きくする構成であっても構わない。具体的には、加速駆動ステップT1での加速時間及び減速駆動ステップT3における減速時間をいずれも0.3secに設定している。
【0088】
この構成によれば、加速駆動ステップT1及び減速駆動ステップT3に要する時間を短縮することができ、結果的に連続紙12の搬送動作に要する時間を短縮することができる。よって、連続紙12の搬送動作を短時間で行うことができ、印刷処理のタクトを短縮できる。
【0089】
プラテン28の支持面PLに対して連続紙12を吸着させる吸着手段として、プラテン28の支持面PLに対して連続紙12を静電吸着させる静電吸着装置を採用してもよい。
この場合に、静電吸着装置は、連続紙12の印刷処理時には、第1の静電吸着力で連続紙12をプラテン28の支持面PLに静電吸着させ、連続紙12の搬送処理時には、第1の静電吸着力よりも小さい第2の静電吸着力で連続紙12をプラテン28の支持面PLに静電吸着させる構成とすることが望ましい。
【0090】
連続紙12の材質毎に個別に対応する第2搬送モーター34の管理トルク値Tr1、Tr2の一覧データをROM46に予め記憶させる構成としてもよい。この場合、コントローラー44は、連続紙12の搬送処理時及び印刷処理時には、各処理が行われる連続紙12の材質に応じて第2搬送モーター34の管理トルク値Tr1、Tr2をROM46から読み出し、読み出した第2搬送モーター34の管理トルク値Tr1、Tr2にて第2駆動ローラー33aをトルク制御することとなる。
【0091】
管理トルク値Tr1、Tr2の大小関係は上記実施形態に限定されない。例えば、連続紙12としてインクを吸収する際の膨潤比率が極めて大きいものを用いる場合には、搬送処理時における第2搬送モーター34の管理トルク値Tr1よりも、印刷処理時における第2搬送モーター34の管理トルク値T2の方が大きくなるように設定してもよい。
【0092】
プラテン28に、負圧室31内を大気開放する大気開放弁を設けてもよい。吸引ファン29による吸引力調整と大気開放弁を併用することにより負圧室31内の減圧度を速やかに低下させることができ、より早いタイミングで連続紙12の搬送を開始することができる。
【0093】
上記実施形態に係る圧力検出センサー32に代えて、吸引ファン29を介して排気される空気の流量を検出する流量検出センサーを設けてもよい。吸引ファン29により負圧室31内を廃棄すると、圧力の低下に伴って排気流量が低下するため、流量検出センサーにより検出される排気流量に基づいて負圧室31内の圧力を推定することができる。
【0094】
また、被記録媒体として、長尺状のプラスチックフィルム等を用いてもよい。
【0095】
上記実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンターに具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。
例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体(液状体)を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの液体(流状体)を噴射する液体噴射装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
T1…加速駆動ステップ、T2…定常駆動ステップ、T3…減速駆動ステップ、11…プリンター(記録装置)、12…連続紙(ターゲット)、12a…ロール体(ロール状ターゲット)、25…第1駆動ローラー(駆動ローラー)、28…プラテン(媒体支持部)、33a…第2駆動ローラー、34…第2搬送モーター(第2駆動モーター)、34E…第2エンコーダ、36…記録ヘッド(記録処理部)、44…コントローラー(制御部)、71…レバー部(可動部)、71a…ドグ板(拡幅部)、72…当接部、73…センサー部73

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のターゲットをロール状に巻回してなるロール状ターゲットを支持するターゲット支持部と、
前記ターゲットを該ターゲットの長さ方向に沿う搬送経路に沿わせて支持する支持手段と、
前記長尺のターゲットを巻き掛けることで前記ロール状ターゲットから引き出す駆動ローラーを含み、前記支持手段に前記ターゲットを間欠的に搬送するターゲット搬送系と、
前記支持手段により支持された状態の前記ターゲットに対して記録処理を行う記録部と、
前記駆動ローラーによる前記ターゲットの各搬送動作を制御する制御部と、
前記ターゲット搬送系が前記ターゲットの各搬送動作を開始するに先立ち、前記ロール状ターゲットの外径を測定する外径測定部と、を備え、
前記制御部は、前記外径測定部が前記ロール状ターゲットの外径が所定値以下となったことを測定した場合に、前記ロール状ターゲットの外径が所定値よりも大きい場合の搬送動作に対し、前記ターゲットの搬送動作のうち、少なくとも前記駆動ローラーを停止状態から所定の速度まで加速させるための加速駆動ステップにおける該駆動ローラーの加速度を大きくした状態で前記ターゲットの搬送動作を行うことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記外径測定部は、前記ロール状ターゲットの外径の変化に応じて可動する可動部と、前記可動部に設けられ、前記ロール状ターゲットの外面に当接する当接部と、前記可動部の位置を検出するセンサー部と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記可動部における前記センサー部の検出位置に対応する部分には、他の部分に比べて幅が拡がった拡幅部となっていることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記ターゲットの搬送動作は、前記加速駆動ステップの他に、所定の速度まで到達した前記駆動ローラーを一定速度で回転させる定常駆動ステップと、前記駆動ローラーの回転速度を前記所定の速度から減速させる減速駆動ステップと、を含んでおり、
前記制御部は、前記外径測定部が前記ロール状ターゲットの外径が所定値以下となったことを測定した場合に、前記ロール状ターゲットの外径が所定値よりも大きいときに行われる搬送動作に比べ、前記減速駆動ステップの前記駆動ローラーにおける減速度を大きくすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
長尺のターゲットをロール状に巻回してなるロール状ターゲットを支持するターゲット支持部と、前記ターゲットを該ターゲットの長さ方向に沿う搬送経路に沿わせて支持する支持手段と、前記長尺のターゲットを巻き掛けることで前記ロール状ターゲットから引き出す駆動ローラーを含み、前記支持手段に前記ターゲットを間欠的に搬送するターゲット搬送系と、前記支持手段により支持された状態の前記ターゲットに対して記録処理を行う記録部と、前記ロール状ターゲットの外径を測定する外径測定部と、を備えた記録装置の制御方法であって、
前記ターゲット搬送系による前記ターゲットの各搬送動作は、前記駆動ローラーの回転速度を加速させる加速駆動ステップと、所定の速度まで到達した前記駆動ローラーを一定速度で回転させる定常駆動ステップと、前記駆動ローラーの回転速度を前記所定の速度から減速させる減速駆動ステップと、を含んでおり、
前記ターゲット搬送系が前記ターゲットの各搬送動作を開始するに先立ち、前記外径測定部が前記ロール状ターゲットの外径が所定値以下となったことを測定した場合に、前記ロール状ターゲットの外径が所定値よりも大きいときに行われる搬送動作に比べ、少なくとも前記加速駆動ステップの前記駆動ローラーにおける加速度を大きくした状態で前記ターゲットの搬送動作を行うことを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項6】
前記外径測定部が前記ロール状ターゲットの外径が所定値以下となったことを測定した場合に、前記ロール状ターゲットの外径が所定値よりも大きいときに行われる搬送動作に比べ、前記減速駆動ステップの前記駆動ローラーにおける減速度を大きくすることを特徴とする請求項5に記載の記録装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−62128(P2012−62128A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205235(P2010−205235)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】