説明

記録装置およびその制御方法

【課題】 通信エラーが発生した場合に、当該通信エラーが当該RF−IDタグの故障に起因するものであるか否かを判断したうえで、RF−IDタグの故障としての処理を行う記録装置を提供する。
【解決手段】 記録機能とRF−IDタグへの書き込み機能とを備える記録装置の制御方法であって、搬送中の連続ラベル紙のラベルに内蔵されたRF−IDタグへの電子情報の書き込みが正常に終了しなかった場合に(ステップS805)、該連続ラベル紙を電子情報の書き込み位置まで戻し(ステップS808)、搬送停止状態で再度電子情報の書き込み処理を行ったうえで(ステップS810)、RF−IDタグが故障しているか否かの判定を行う(ステップS811)ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置における制御技術に関するものであり、特にRF−IDタグを内蔵する記録媒体に対する電子情報の書き込み機能と記録機能とを備える記録装置における制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触で電子情報の送受信が可能なRF−ID(Radio Frequency Identification)を用いたシステムが普及しつつある。RF−IDシステムは、主に、電子情報を記憶するための不揮発性メモリを搭載したICチップとICチップに電気的に接続されたアンテナとを備えるRF−IDタグと、該RF−IDタグをコントロールするRF−IDリーダ/ライタとから構成されている。
【0003】
当該システムの特徴は、電子情報の新規書き込みや記憶が可能であることに加え、複数のRF−IDタグと同時に通信を行うことができ、かつ障害物等の影響を受けにくい点にある。このため、例えば、RF−IDタグを商品等に搭載させることで、当該商品の流通管理システム等を構築することができる。
【0004】
ここで、RF−IDタグを商品等に搭載するための搭載方法としては様々な方法がある。その中でも、RF−IDタグを商品情報等を記録するラベル(記録媒体)に内蔵させ、該ラベルを商品等に貼り付けることで、RF−IDタグを商品に搭載する方法が一般的に知られている。
【0005】
通常、このようなラベルを用いて商品管理システム等を構築するにあたっては、該ラベル表面への記録処理とRF−IDタグへの電子情報の書き込み処理とを行っておく必要がある。しかし、これらの処理を別々の装置を用いて分担して行ったのでは手間がかかることから、最近では、記録装置にRF−IDリーダ/ライタを搭載させ、ラベル表面への記録処理と、RF−IDタグへの電子情報の書き込み処理とを一括して行うことが可能なRF−IDタグ書き込み機能付き記録装置が普及しつつある。
【0006】
そして、これまで、当該RF−IDタグ書き込み機能付き記録装置では、RF−IDリーダ/ライタが備えるRF−ID用通信アンテナの下に、RF−IDタグが内蔵されたラベルを移動させた後、該ラベルの搬送を一旦停止させ搬送停止状態にて、電子情報の書き込みを行うこととしていた。
【0007】
これは、RF−IDアンテナのサイズの違いや、使用されているICチップの違いなどによりRF−IDタグごとに、書き込み可能な最大容量や通信時間が異なるためである。
【0008】
しかしながら、RF−IDタグ機能付き記録装置の場合、ラベル表面への記録処理用として複数のフルラインヘッドをラベルの搬送方向に複数並べて配置する構成を採っており、記録処理に関しては搬送を停止させることなく連続して行うことができるようになっている。このため、上述のようにRF−IDタグへの電子情報の書き込み処理のために、搬送を停止させるのは、全体のスループットを向上させるうえで望ましくない。
【0009】
このような背景のもと、ラベルの搬送を停止させることなく搬送状態でRF−IDタグへの電子情報の書き込みが可能な装置が提案されてきている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
特許文献1によれば、RF−IDタグが内蔵されたラベルが複数配された連続ラベル紙の搬送を停止させることなく、RF−IDタグに対して確実に電子情報を書き込むことができるよう、記録条件や通信条件に基づいて連続ラベル紙の搬送速度を制御することとしている。
【特許文献1】特開2003−140548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1のように、電子情報を確実に書き込むことができるように搬送速度を制御することとすると、一部のRF−IDタグの記録条件や通信条件が原因で、連続ラベル紙全体のスループットが著しく抑えられてしまう場合がある。
【0012】
一方で、搬送速度を上げて連続ラベル紙を搬送させてしまうと、RF−IDタグの種類によっては通信時間内に通信が完了せず、通信エラー(通信が正常に終了しなかったことを示すエラー)が散発することとなる。ここで、従来のRF−IDタグ書き込み機能付き記録装置では、通信エラーが発生した場合、一律、RF−IDタグの故障と判定し、当該ラベルを不良品として排出していた。しかしながら、上述のように搬送速度を上げて使用していた場合には、必ずしも、その全てがRF−IDタグの故障が原因で発生したものとは限らない。
【0013】
このため、スループットの向上のために搬送速度を上げて使用する場合にあっては、通信時間内に通信が完了せずに通信エラーとなったRF−IDタグに関して、これを区別して取り扱うことが望ましい。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、通信エラーが発生した場合でも、当該通信エラーが当該RF−IDタグの故障に起因するものであるか否かを判断したうえでRF−IDタグの故障として処理することが可能な記録装置を提供することを目的とする。
【0015】
更に、当該通信エラーが当該RF−IDタグの故障に起因するものでないと判断された場合には、当該RF−IDタグへの電子情報の再度の書き込みを行うことが可能な記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために本発明に係る記録装置は以下のような構成を備える。即ち、
RF−IDタグを内蔵する記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録媒体の表面に記録を行う記録手段と、
前記RF−IDタグと通信を行い、該RF−IDタグに電子情報の書き込みを行う書込手段と、
前記搬送手段による前記記録媒体の搬送中に、前記書込手段による書き込みが正常に終了したか否かを判定する判定手段と、を備え、
前記搬送手段は、
前記判定手段による判定の結果、正常に終了しなかったと判定された場合に、該RF−IDタグを内蔵する記録媒体の表面への記録が完了するまで、該記録媒体の搬送を継続させ、その後、前記書込手段による電子情報の書き込み位置まで該記録媒体を搬送させることで、該記録媒体を該書き込み位置に停止させ、
前記書込手段は、
前記電子情報の再度の書き込みを行い、
前記判定手段は、前記書込手段による前記電子情報の再度の書き込みが正常に終了したか否かを判定し、正常に終了していないと判定した場合に、前記RF−IDタグは故障していると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、通信エラーが発生した場合でも、当該通信エラーが当該RF−IDタグの故障に起因するものであるか否かを判断したうえで、RF−IDタグの故障として処理することが可能となる。
【0018】
更に、当該通信エラーが当該RF−IDタグの故障に起因するものでない判断された場合に、当該RF−IDタグへの電子情報の再度の書き込みを行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について、具体的かつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態では、インクジェット方式に従うフルライン記録ヘッドを用いた記録装置を備える記録システムを例に挙げて説明する。
【0020】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0021】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0022】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0023】
またさらに、「ノズル」とは、特に断らない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0024】
[第1の実施形態]
<記録システムの構成>
図1は本発明の第1の実施形態にかかるインクジェット方式に従うフルライン記録ヘッドを用いたカラー記録装置101(以下、記録装置という)と、ホストコンピュータ100(以下、ホストという)とを使用した記録システムの構成図である。図1に示すように、記録装置101とホスト100とは、プリンタケーブル107で接続され、ホスト100で処理された各種データは記録装置101にて記録されるように構成されている。
【0025】
記録装置101は、後述のフルライン記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)やRF−ID用通信アンテナ、及び搬送部を覆うための上部カバー103と、記録ヘッドに供給される記録剤としての液体インクを貯蓄するタンク部を覆うための前カバー104と、記録媒体(RF−IDタグが内蔵されたラベル)が台紙の長尺方向に複数仮着された連続ラベル紙(後述)を記録部108に給送する給紙部102と、記録部108から搬送される連続ラベル紙を記録媒体ごとにカットするカッタ部109とからその外郭が構成されている。
【0026】
さらに、図1において、105は記録装置の電源スイッチ、106は記録装置101に操作環境の設定を行うための入力キーや記録装置のエラー発生状況をユーザに知らせるための表示手段とを備えた操作パネルである。操作パネルは、LED110、LCD111、ボタン112から構成される。
【0027】
<連続ラベル紙の構成>
図2は記録装置101が記録する記録媒体(RF−IDタグが内蔵されたラベル)が台紙の長尺方向に複数仮着された連続ラベル紙200の模式図である。
【0028】
図2に示す連続ラベル紙200は、裏面が粘着加工されたラベル201とそのラベルを連続紙として固定するための台紙206とからなり、ラベル201には、RF−IDタグ205が内蔵されている。RF−IDタグ205は電子情報を記憶するための不揮発性メモリを搭載したICチップ203とループアンテナ202とから構成されている。
【0029】
RF−IDタグ205は電源を持たず、記録装置101に配設する後述のRF−ID用通信アンテナから発生する電波を利用して電力を創成する。これを内部電源としてRF−IDタグ205では、RF−ID用通信アンテナから送信される電子情報をICチップに書き込む。
【0030】
<記録装置のハードウェア構成>
図3は、図1に示した記録装置101のハードウェア構成を示す断面図であり、図4は図1に示した記録装置101が用いる記録ヘッド及びRF−ID用通信アンテナの配置を説明するための斜視図である。

記録装置101には最大6色の異なるインクを用いて記録することができるように6つの記録ヘッドが備えられている。具体的には、図3及び図4に示されているように、連続ラベル紙200の搬送方向の上流方向から順に、ブラックインクを吐出する記録ヘッド306Bk、シアンインクを吐出する記録ヘッド306C、淡シアンインクを吐出する記録ヘッド306LC、マゼンタインクを吐出する記録ヘッド306M、淡マゼンタインクを吐出する記録ヘッド306LM、及びイエロインクを吐出する記録ヘッド306Yが備えられている。なお、以下、これら6つの記録ヘッドを総称して言及するときには参照番号305を用いるものとする。
【0031】
記録装置101には、さらに、記録ヘッド305の上流側にRF−ID用通信アンテナ303が設けられている。
【0032】
図3に示すように、記録ヘッド305の下側に位置する搬送部302により、給紙部102にセットされた連続ラベル紙200が後述する給送方法で記録ヘッド305による記録位置に向けて搬送されると、TOF(Top Of Form)センサ304が動作し、連続ラベル紙200上のラベル201の位置が管理される。
【0033】
ラベル201がRF−ID用通信アンテナ303の書き込み位置まで搬送されると、RF−ID用通信アンテナ303によりラベル内に内蔵されたRF−IDタグ205に対して電子情報の書き込みが行われる。
【0034】
さらに、RF−IDタグが内蔵されたラベル201が搬送され記録位置に達すると、6つの記録ヘッド306Bk、306C、306LC、306M、306LM、306Yによってインクが吐出され、ラベル201上に画像が記録される。画像が記録されたラベル201は、最終的にカッタ部109に搬出されるよう構成されている。カッタ部109ではラベルごとに連続ラベル紙200をカットする。
【0035】
搬送部302の下には、各記録ヘッド306Bk、306C、306LC、306M、306LM、306Yに供給される専用のインクを貯蓄するタンク部301が着脱自在に固定されている。
【0036】
<記録装置の機能構成>
次に記録装置101の機能構成について説明する。図5は記録装置101の制御構成を示すブロック図である。
【0037】
図5において、501は記録装置全体を制御するメインコントローラであり、CPU501aを内蔵し、後述する制御コマンドを記憶するための記憶制御機能、データ制御機能、及び、記録動作に必要な種々の設定のための設定制御機能などを有する。メインコントローラ501はインタフェース(不図示)を介してホスト100に接続され、互いに信号の授受を行うことができる。
【0038】
また、502はメインコントローラ501に接続され、制御プログラムなどを格納するROMであり、それらのプログラムに従いメインコントローラ501はRAM512を作業領域として使用して動作する。
【0039】
また、RAM512にはホスト100から転送されRF−IDタグ205に書き込む電子情報が一時的に格納され、メインコントローラ501に接続されたRF−ID通信回路509がRF−ID用通信アンテナ303を通して、RAM512に格納された電子情報をRF−IDタグに書き込む。
【0040】
506はホスト100から送信されてきた記録データを格納するイメージバッファメモリであり、506Bkはブラック成分の記録データを一時的に格納するブラックイメージバッファ、同様に506C、506LC、506M、506LM、506Yはシアン成分、マゼンタ成分、淡マゼンタ成分、シアン成分、淡シアン成分、イエロ成分の記録データを一時的に格納するイメージバッファメモリである。
【0041】
503は記録ヘッド306Bk、306C、306LC、306M、306LM、306Yに内蔵される発熱体(不図示)を駆動させるヘッド駆動回路である。メインコントローラ501に接続されたドライバコントローラ507が、イメージバッファメモリ506に格納された各色成分の記録データに従って、ヘッド駆動回路503を制御することで記録データが記録される。
【0042】
504Dは搬送部302に設けられたフィードモータ504を駆動するモータドライバ、500は給紙部102のロールユニットを駆動させるモータ505を駆動する駆動回路、513はカッタ部109を駆動させるモータ508を駆動する駆動回路であり、いずれもメインコントローラ501によって制御される。
【0043】
また、511は前述したTOFセンサ304を含む種々のセンサを総称したセンサ回路である。
【0044】
<制御コマンドの構造>
図6はホスト100から送信される種々の制御コマンドの構造を示した図である。図6に示すように、全てのコマンドは、そのコマンドの先頭にコマンドの種類を識別する識別コードが配置され、その識別コードに続いて、そのコマンドに関する付帯的な指示を設定するオペランドが配置されている。なお、コマンドの種類によっては、オペランドがなく、識別コードのみで構成される場合もある。
【0045】
制御コマンドとしては、連続ラベル紙200のサイズ等を設定する用紙設定コマンド601、記録データの基準となる位置を設定をするフォーマットコマンド602、記録装置本体の動作設定をする記録装置動作設定コマンド612、文字、イメージ、RF−ID夫々の詳細情報を設定するデータコマンド603、604、605、記録データの終了を示しジョブの開始を指示するジョブ開始コマンド610などがある。
【0046】
それらのコマンドは記録コマンド転送例611に示されるようなコマンド列としてホスト100から記録装置101に出力される。
【0047】
なお、RF−IDタグ205のICチップ203の種類は用紙設定コマンド601のICチップタイプオペランド606に、RF−IDタグサイズはRF−IDタグ取付位置オペランド607に設定される。
【0048】
また、記録装置101の給紙モードは記録装置動作設定コマンド612の給紙モードオペランド613に、記録装置101の搬送速度は搬送速度オペランド614に、記録装置のRF−IDタグ通信開始位置の設定はRF−IDタグ通信開始位置オペランド615に設定される。RF−IDタグ通信開始位置オペランドは、ラベル先端を検出してから、RF−IDタグ205との通信を開始するまでの搬送距離を設定するオペランドとなる。
【0049】
ICチップ203への書き込みデータ量はRF−IDデータコマンド605のデータ長オペランド608に設定され、書き込みデータはデータオペランド609に設定される。
【0050】
<記録処理および書き込み処理の流れ>
次に、上記記録システムにおけるラベル201表面への記録処理及びRF−IDタグ205への書き込み処理について、図7〜図8を参照して説明する。
【0051】
図7aはRF−IDタグ205との通信時に通信エラーが無い場合の記録処理の遷移を示す図である。図7bはRF−IDタグとの通信時に通信エラーが発生した様子を示す図である。図7cはRF−IDタグ通信エラーが発生した場合に、ラベル表面の記録処理のみを続け、排出した様子を示す図である。図7dはRF−IDタグとの通信時に通信エラーが発生した場合に、当該RF−IDタグを再び書き込み位置に戻すべく連続ラベル紙200の搬送を行った様子を示す図である。図7eはRF−IDタグとの通信時に通信エラーが発生したRF−IDに対して、搬送停止状態で再度書き込みを行った様子を示す図である。
【0052】
図8は上記記録システムにおける記録処理および書き込み処理の流れを示すフローチャートである。なお、この記録処理および書き込み処理は、記録装置101の処理部であるCPU501aが、例えば、ROM502に格納されたアプリケーションソフトを実行することにより実現される。以下、図8に示すフローチャートに沿って説明する。
【0053】
記録枚数や用紙サイズ、RF−IDタグ通信開始位置、ICチップタイプなどの各種パラメータと記録データ、及びICチップ203に書き込まれる電子情報は、記録コマンドとしてホスト100から記録装置101に送信される。
【0054】
アプリケーションソフトが起動されると、ステップS801において、ホスト100から送信される記録コマンドを受信し、記録データはイメージバッファメモリ506Bk〜506Yに、その他はRAM512にそれぞれ記憶される。
【0055】
ステップS802ではRF−IDデータコマンド605の有無を判断する。ここで、RF−IDデータコマンド605がある、即ち、ICチップ203に書き込む電子情報が存在すると判断された場合は、ステップS803に進み、連続ラベル紙200
の搬送を開始する。
【0056】
搬送開始後、ラベル201がRF−ID用通信アンテナ303の書き込み位置701に搬送されると、ステップS804では、RF−ID用通信アンテナ303が、ラベル201内に内蔵されたRF−IDタグ205に対して電子情報の書き込みを開始する。
【0057】
さらに、連続ラベル紙200が搬送され、当該ラベル201が記録位置(各記録ヘッドの直下)に達すると、RF−IDタグ205への書き込みと平行して、各記録ヘッド306Bk、306C、306LC、306M、306LM、306Yがインクを吐出し、ラベル201上に画像を記録する。
【0058】
RF−IDタグへの電子情報の書き込み終了後、ステップS805では、書き込みが正常に終了したかどうかを調べる。なお、書き込み処理は、RF−IDタグ205への電子情報の書き込みを行った後、当該RF−IDタグ205より、当該電子情報の読み出しを行い、書き込んだ電子情報と読み出した電子情報とが一致しているか否かを判断することにより、書き込みが正常に終了したか否かを判断する。
【0059】
ここで、書き込みが正常終了したと判断され、かつ、次のラベルに書き込むべき電子情報が存在する場合は、図7aに示すように次のRF−IDタグへの電子情報の書き込みを開始し、上述した処理を平行して実行する。そして、RF−IDタグが内蔵されたラベル201表面への記録終了後、ステップS815では、連続ラベル紙をカッタ部109に排出する。
【0060】
一方、ステップS805において、RF−IDタグ205への電子情報の書き込みが正常に終了しなかったと判定された場合には、通信エラーが発生したとして、ステップS806に進み、図7bに示すようにRF−IDタグ205への電子情報の書き込みを中止する。
【0061】
この際、図7cに示すように搬送は停止せず、当該RF−IDタグが内蔵されたラベル201への記録は続け、記録終了後、ステップS807へ進み、当該ラベルをカッタ部109に排出する。
【0062】
排出されたラベルは、搬送停止書き込みを行うために、ステップS808において、図7dに示すように当該RF−IDタグが内蔵されたラベル201がRF−IDタグ書き込み位置701にくるように連続ラベル紙の搬送を行う。
【0063】
当該RF−IDタグが内蔵されたラベル201が書き込み位置701まで戻ったら、ステップS809において連続ラベル紙200の搬送を停止する。搬送の停止を確認したら、ステップS810では、図7eに示すように搬送停止状態のまま再度通信エラーの発生したRF−IDタグに対して電子情報の書き込みを行う。
【0064】
電子情報の書き込み終了後、ステップS811では、書き込みが正常に終了したかどうかを調べる。ここで、書き込みが正常に終了したと判断され、かつ次のRF−IDタグへ書き込む電子情報が存在する場合は、図7aに示すように次のRF−IDタグへの書き込みを開始し、上述した処理を平行して実行する。そして、RF−IDタグが内蔵されたラベル201表面への記録が終了すると、ステップS815では、当該ラベルをカッタ部109に排出する。
【0065】
これに対して、ステップS811において、RF−IDタグ205への電子情報の再度の書き込みが正常に終了しなかったと判断された場合には、ステップS812に進み、操作パネル106内のLCD111にRF−IDタグが故障である旨のエラーメッセージを表示し、ユーザに通知する。
【0066】
そして、ステップS816において、当該RF−IDタグが内蔵されたラベルをカッタ部109に排出し、その後、ステップS817で連続ラベル紙200の搬送を停止しユーザがエラーを解除するまで待機する。ユーザがエラーを解除した後は、エラー発生時の記録データから処理を再開する。上記記録処理および書き込み処理は、すべての記録データがなくなるまで繰り返される。
【0067】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では、連続ラベル紙を搬送させた状態のまま、RF−IDタグへの書き込みを行うことでスループットの低下を防ぐRF−ID書き込み機能付き記録装置において、通信エラーが発生した場合に、通信時間に制限が発生しない状態で(つまり、搬送を停止させた状態で)再度RF−IDタグへの書き込み行う構成とした。つまり、搬送停止状態でも痛心エラーとなる場合に、はじめて当該RF−IDタグが故障していると判断することとした。
【0068】
この結果、従来は、正常なRF−IDタグであるにもかかわらず、一律、RF−IDタグの故障として処理してしまっていたものを、本実施形態によれば、その中からRF−IDタグは正常であるが、通信時間内に処理が完了せずに通信エラーとなってしまったものを排除することが可能となる。つまり、通信エラーが発生した場合でも、当該通信エラーが当該RF−IDタグの故障に起因するものであるか否かを判断することが可能となる。
【0069】
これにより、搬送速度を上げた場合でも、正常なRF−IDタグを不良品として排出してしまうことなく、確実に書き込みを行うことが可能となる。
【0070】
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、通信エラーが発生した場合に、必ず、搬送停止状態でのRF−IDタグへの電子情報の再度の書き込みを実施することとしたが、本発明は特にこれに限られない。例えば、通信エラーの種類によって、搬送停止させた状態での電子情報の書き込みを実施するか否かを判定し、実施すると判定された場合にのみ、電子情報の再度の書き込みを行うようにしてもよい。
【0071】
本実施形態にかかる記録装置における記録処理および書き込み処理の流れを示すフローチャートを図9に示す。
【0072】
記録枚数や用紙サイズ、RF−IDタグ通信開始位置、ICチップタイプなどの各種パラメータと記録データ、及びICチップ203に書き込まれる電子情報は、記録コマンドとしてホスト100から記録装置101に送信される。
【0073】
アプリケーションソフトが起動されると、ステップS901において、ホスト100から送信される記録コマンドを受信し、記録データはイメージバッファメモリ506Bk〜606Yに、その他はRAM512にそれぞれ記憶される。
【0074】
ステップS902ではRF−IDデータコマンド605の有無を判断する。ここで、RF−IDデータコマンド605がある、即ち、ICチップ203に書き込む電子情報が存在すると判断された場合は、ステップS903に進み、連続ラベル紙200の搬送を開始する。
【0075】
搬送開始後、ラベル201がRF−ID用通信アンテナ303の書き込み位置701に搬送されると、ステップS904では、RF−ID用通信アンテナ303が、ラベル201内に内蔵されたRF−IDタグ205に対して電子情報の書き込みを開始する。
【0076】
さらに、連続ラベル紙200が搬送され、当該ラベル201が記録位置(各記録ヘッドの直下)に達すると、RF−IDタグ205への書き込みと平行して、各記録ヘッド306Bk、306C、306LC、306M、306LM、306Yがインクを吐出し、ラベル201上に画像を記録する。
【0077】
RF−IDタグ205への電子情報の書き込み終了後、ステップS905では、書き込みが正常に終了したかどうかを調べる。なお、書き込み処理は、RF−IDタグ205への電子情報の書き込みを行った後、当該RF−IDタグ205より、当該電子情報の読み出しを行い、書き込んだ電子情報と読み出した電子情報とが一致しているか否かを判断することにより、書き込みが正常に終了したか否かを判断する。
【0078】
ここで、書き込みが正常終了したと判断され、かつ、次のRF−IDタグに書き込むべき電子情報が存在する場合は、図7aに示すように次のRF−IDタグへの電子情報の書き込みを開始し、上述した処理を平行して実行する。そして、RF−IDタグが内蔵されたラベル201表面への記録終了後、ステップS915では、連続ラベル紙をカッタ部109に排出する。
【0079】
一方、ステップS905において、RF−IDタグ205への電子情報の書き込みが正常に終了しなかったと判定された場合には、通信エラーが発生したとして、ステップS918に進み、発生した通信エラーの種類を判定する。
【0080】
ここで、通信エラーの種類の判定について説明する。上述したように、RF−IDタグへの電子情報の書き込み処理は、RF−IDタグに書き込んだ電子情報をRF−IDリーダ/ライタが読み出し、書き込んだ電子情報と読み出した電子情報とが一致することを条件に、当該RF−IDタグへの電子情報の書き込み処理が正常に終了したと判定している。
【0081】
このため、書き込み処理が正常に終了しなかった(つまり、通信エラーが発生した)場合としては、所定の通信時間内に、電子情報の書き込み、書き込んだ電子情報の読み出し、ならびに両者の比較が完了しなかった場合と、これらの処理は完了したが、比較の結果、書き込んだ電子情報と読み出した電子情報とが一致しなかった場合とがある。
【0082】
このうち、RF−IDタグが故障していた場合に発生するのは、後者の場合である(故障している場合には、電子情報が正しく書き込まれないため、読み出された電子情報が、書き込もうとした電子情報と一致することはない)。
【0083】
したがって、発生した通信エラーのうち、後者の理由による場合は、RF−IDタグが故障していたことに起因する通信エラーであると判断し、それ以外の場合は、RF−IDタグは正常であると判断する。
【0084】
図9に戻る。通信エラーが、書き込んだ電子情報と読み出した電子情報とが一致しなかったことに起因する通信エラーであった場合には、ラベル内に内蔵されたRF−IDタグが故障していると判断して、ステップS919に進み、ラベルへの記録を中止する。
【0085】
さらにステップS912に進み、操作パネル106内のLCD111にRF−IDタグが故障している旨のエラーメッセージを表示し、ユーザに通知する。そして、ステップS916において、当該RF−IDタグが内蔵されたラベルをカッタ部109に排出し、その後、ステップS917で連続ラベル紙の搬送を停止しユーザがエラーを解除するまで待機する。ユーザがエラーを解除した後は、エラー発生時の記録データから処理を再開する。
【0086】
一方、ステップS918において、通信エラーが、所定の通信時間内に処理が完了しなかったことに起因する通信エラーであった場合には、ラベルに内蔵されているRF−IDタグは正常ではあると判定してステップS906に進み、図7bに示すようにRF−IDタグへの電子情報の書き込みを中止する。
【0087】
この際、図7cに示すように搬送は停止せずラベルへの記録は続け、記録終了後、ステップS907へ進み、当該ラベルをカッタ部109に排出する。排出されたラベルは、搬送停止書き込みを行うために、ステップS908において、図7dに示すように当該RF−IDタグが内蔵されたラベルがRF−IDタグ書き込み位置にくるように連続ラベル紙の搬送を行う。
【0088】
当該RF−IDタグが内蔵されたラベルが書き込み位置まで戻ったら、ステップS909において、連続ラベル紙の搬送を停止する。搬送の停止を確認したら、ステップS910では、図7eに示すように搬送停止状態のまま再度通信エラーの発生したRF−IDタグに対して電子情報の書き込みを行う。
【0089】
電子情報の書き込み終了後、ステップS911では、書き込みが正常に終了したかどうかを調べる。ここで、書き込みが正常に終了したと判断され、かつ次のRF−IDタグへ書き込む電子情報が存在する場合は、図7aに示すように次のRF−IDタグへの電子情報の書き込みを開始し、上述した処理を平行して実行する。そして、RF−IDタグが内蔵されたラベル201表面への記録が終了すると、ステップS915では、当該ラベルをカッタ部109に搬出する。
【0090】
これに対して、ステップS911において、RF−IDタグ205への電子情報の再度の書き込みが正常に終了しなかったと判断された場合には、ステップS912に進み、操作パネル106内のLCD111にRF−IDタグが故障である旨のエラーメッセージを表示し、ユーザに通知する。
【0091】
そして、ステップS916において、当該RF−IDタグが内蔵されたラベルをカッタ部109に排出し、その後、ステップS917で連続ラベル紙の搬送を停止しユーザがエラーを解除するまで待機する。ユーザがエラーを解除した後は、エラー発生時の記録データから処理を再開する。上記記録処理及び書き込み処理は、すべての記録データがなくなるまで繰り返される。
【0092】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、通信エラーが発生した場合に、その種類を判定し、所定の通信時間内に処理が完了しなかったことに起因する通信エラーであると判定された場合にのみ、搬送停止状態での再度の書き込み処理を行うこととした。
【0093】
これにより、RF−IDタグの故障に起因して通信エラーとなったRF−IDタグに対してまで、搬送停止状態での再度の電子情報の書き込みを行うことがなくなり、上記第1の実施形態と比較して、全体のスループットを更に向上させることが可能となる。
【0094】
なお、上記説明において、所定の通信時間については特に詳説しなかったが、当該時間についてはユーザが任意に設定できるように構成されていてもよい。また、書き込み対象のラベルの次のラベルの先端位置が所定の位置にきたことを契機に、所定の通信時間が経過したと判断するようにしてもよい。あるいは、書き込み対象のラベルの後端位置が所定の位置を通過したことを契機に、所定の時間が経過したと判断するようにしてもよい。
【0095】
[その他の実施形態]
上記第1及び第2の実施形態では、フルラインタイプのインクジェット方式の記録装置に関する説明をしたが、インクジェット方式以外の記録ヘッドを持つプリンタ、すなわち感熱式、熱転写式、電子写真式等の他の記録方式、或いはモノクロの記録装置にも適用することが可能である。

尚、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器からなる装置に適用してもよい。上述した実施形態の機能を実現するソフトウエアのプログラムコードを記憶した記憶媒体等の媒体をシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体等の媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、本発明が達成されることは言うまでもない。
【0096】
この場合、記憶媒体等の媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体等の媒体は本発明を構成することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体等の媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、或いはネットワークを介したダウンロードなどを用いることができる。
【0097】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も、本発明に含まれることは言うまでもない。
【0098】
更に、記憶媒体等の媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も、本発明に含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる記録装置とホストとを使用した記録システムの構成図である。
【図2】記録装置が記録媒体として使用するRF−IDタグが内蔵されたラベルが長尺方向に複数仮着された連続ラベル紙の模式図である。
【図3】記録装置のハードウェア構成を示す図である。
【図4】記録装置が備える記録ヘッド及びRF−ID用通信アンテナの配置を示した図である。
【図5】記録装置の制御機能を示すブロック図である。
【図6】ホストから記録装置に送信される制御コマンドの構造を示した図である。
【図7】ラベルへの記録処理およびRF−IDタグへの書き込み処理の流れを示す図である。
【図8】ラベルへの記録処理およびRF−IDタグへの書き込み処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかる記録装置による、ラベルへの記録処理およびRF−IDタグへの書き込み処理の流れを示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF−IDタグを内蔵する記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録媒体の表面に記録を行う記録手段と、
前記RF−IDタグと通信を行い、該RF−IDタグに電子情報の書き込みを行う書込手段と、
前記搬送手段による前記記録媒体の搬送中に、前記書込手段による書き込みが正常に終了したか否かを判定する判定手段と、を備え、
前記搬送手段は、
前記判定手段による判定の結果、正常に終了しなかったと判定された場合に、該RF−IDタグを内蔵する記録媒体の表面への記録が完了するまで、該記録媒体の搬送を継続させ、その後、前記書込手段による電子情報の書き込み位置まで該記録媒体を搬送させることで、該記録媒体を該書き込み位置に停止させ、
前記書込手段は、
前記電子情報の再度の書き込みを行い、
前記判定手段は、前記書込手段による前記電子情報の再度の書き込みが正常に終了したか否かを判定し、正常に終了していないと判定した場合に、前記RF−IDタグは故障していると判定することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
RF−IDタグを内蔵する記録媒体を搬送する搬送工程と、
前記記録媒体の表面に記録を行う記録工程と、
前記RF−IDタグと通信を行い、該RF−IDタグに電子情報の書き込みを行う書込工程と、
前記搬送工程による前記記録媒体の搬送中に、前記書込工程による書き込みが正常に終了したか否かを判定する判定工程と、を備え、
前記搬送工程は、
前記判定工程による判定の結果、正常に終了しなかったと判定された場合に、該RF−IDタグを内蔵する記録媒体の表面への記録が完了するまで、該記録媒体の搬送を継続させ、その後、前記書込工程による電子情報の書き込み位置まで該記録媒体を搬送させることで、該記録媒体を該書き込み位置に停止させ、
前記書込工程は、前記電子情報の再度の書き込みを行い、
前記判定工程は、前記書込工程による前記電子情報の再度の書き込みが正常に終了したか否かを判定し、正常に終了していないと判定した場合に、前記RF−IDタグは故障していると判定することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の制御方法をコンピュータによって実現させるための制御プログラムを格納した記憶媒体。
【請求項4】
請求項2に記載の制御方法をコンピュータによって実現させるための制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−37551(P2009−37551A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203336(P2007−203336)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】