記録装置
【課題】被記録材の搬送量又は搬送速度を高精度に検出することを可能にし、高精度で高速度な被記録材の搬送を実現し、記録品位の向上を図る。
【解決手段】光学検出部は、記録ヘッドの走査方向が反転する位置でシート材8の搬送量又は搬送速度が検出可能なように、記録ヘッド又はキャリッジ2に設けられた複数の移動量読み取りセンサ702,703,704,705を有している。
【解決手段】光学検出部は、記録ヘッドの走査方向が反転する位置でシート材8の搬送量又は搬送速度が検出可能なように、記録ヘッド又はキャリッジ2に設けられた複数の移動量読み取りセンサ702,703,704,705を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材の搬送量又は搬送速度を検出するための光学検出手段を備える記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被記録材を搬送しながら記録手段によって被記録材に画像を形成する記録装置では、高画質化技術として被記録材を任意の搬送量だけ高精度に搬送する必要性が高まっている。そのため、被記録材の搬送量、搬送速度を高精度に検出するための様々な技術が開示されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。ここでその代表的な方法をいくつか挙げる。
【0003】
図13及び図14に示す構成を一例として説明する。この構成では、図13に示すように、被記録材の搬送を行う回転系に対して同期して回転するコードホイール1005と、このコードホイール1005が有するスリットを検出する回転角センサユニット1006とが用いられている。コードホイール1005は、第1の搬送ローラ1001と同一の回転軸上に固定されている。また、図14に示すように、コードホイール1005の側面の外周側端部には、周方向に沿って等間隔でスリット201が設けられており、記録装置内に固定して配置された回転角センサユニット1006によって、このスリット201の位置が検出される。回転角センサユニット1006は、光学式の透過型センサであり、移動するスリット201を検出し、スリット201を検出したタイミングでパルス信号を発信する。発信されたパルス信号によって、コードホイール1005の回転角度が検出され、パルス信号が発信される時間間隔等から、搬送ローラ1001の回転量、回転速度の情報が得られる。この情報に基づいて、被記録材1007の搬送量、搬送速度を間接的に検出することが可能にされている。
【0004】
上述したように、コードホイールが用いられた構成では、搬送ローラ1001の回転量に基づいて、間接的に被記録材1007の搬送量や搬送速度を検出している。このため、搬送ローラ1001による回転力以外の外力で被記録材1007が移動してしまった場合には、被記録材1007の搬送量が正確に検出されないという問題がある。
【0005】
さらに、他の構成例について図15から図18を参照して説明する。この構成例では、光学センサを用いて被記録材1007の挙動を直接的に検出する方法が採られている。この構成例では、図15及び図16に示すように、記録装置が搬送検出センサユニット701を備えている。搬送検出センサユニット701は、光源41と、受光部42とを有している。受光部42としては、例えばCCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の光電変換素子を1次元に配列したラインセンサ、又は2次元に配列したエリアセンサが主に用いられる。また、光源41と受光部42の光路内には、レンズ43が配置されている場合もある。さらに、この構成例では、受光素子によって取得された画像情報の記憶や処理を行うハードウェア44を備えている。
【0006】
そして、この構成例では、搬送される被記録材1007に対して光源41から光を照射し、受光部42が被記録材1007からの反射光を画像情報として受光する。ここでいう画像情報とは、反射光によって被記録材の表面状態を特徴付けることができるものを指している。画像情報としては、例えば被記録材の表面形状によって現れる陰影や、被記録材の表面に記録されている記録物パターン、又はコヒーレント光源からの反射光の干渉によって生じるスペックルパターン等であれば特に制限はない。
【0007】
図17(a)に示すように、ここで任意の時刻T1において、取得された被記録材1007の表面からの第1の反射光情報501を得たとする。図18(a)から図18(c)に示すように、この第1の反射光情報501である画像情報に対して、パターン601で示すような特定領域内(相関窓領域内)の画像情報の一部が相関窓内パターン602として記憶される。続いて、図17(b)に示すように、時刻T1とは異なる時刻T2において、第2の反射光情報502を得る。
【0008】
ここで、相関窓内パターン602が、第2の反射光情報502におけるどの領域に存在しているかが、画像相関処理(比較処理)によって判定される。ここでレンズ43等による光学倍率等を考慮し、光学センサで撮像されている紙面上領域の大きさが決定されれば、図17(c)に示すように、相関窓内パターン602が画像情報上で移動した移動量Mから被記録材の搬送量を検出することができる。また、検出された搬送量と、比較する2つの画像情報を取得した時間差(T2−T1)の情報とに基づいて、被記録材の搬送速度も算出することができる。このように、被記録材の挙動を光学センサによって直接的に検出することで、搬送ローラの回転力以外の外力で被記録材が移動してしまった場合であっても、被記録材の搬送量や搬送速度を高精度に検出することができる。
【特許文献1】特開2002−128313号公報
【特許文献2】特開2002−137469号公報
【特許文献3】特開2005−82289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、光学センサによって取得された画像情報によって、検出対象の移動情報を検出する構成では、被記録材を直接的に検出することで、被記録材の搬送量や搬送速度等の搬送情報を正確に検出することが可能にされている。
【0010】
しかしながら、この構成は、検出対象である被記録材が光学センサの検出領域に存在していない場合に、検出自体を行うことが不可能になってしまう。そのため、被記録材を直接的に検出する光学センサと、搬送ローラを間接的に検出する回転角センサとを併用する構成も考えられている。しかしながら、このように2つのセンサを併用する構成であっても、被記録材を直接的に検出することができない場合があるので、この場合には搬送精度の低下を招くという問題があった。
【0011】
また、特許文献3の構成では、被記録材の移動量を直接的に検出することによって被記録材の搬送量を取得するための移動距離読み取りセンサが、キャリッジ上又はヘッドカートリッジの吐出口面に配置されている。そのため、この構成では、記録動作時に被記録材に移動距離読み取りセンサが対向していない時間が生じてしまうので、記録ヘッドのノズル長の全域において直接的に検出することが不可能となる。したがって、この構成では、被記録材の前端部又は後端部に対する記録動作時に、記録ヘッドを往復走査させてマルチパス記録する際に、直接的な測定に基づいた制御を行うことができないという問題があった。
【0012】
また、光学センサが被記録材の幅方向の基準側又は非基準側のいずれか一方側のキャリッジの反転位置近傍に配置された場合、被記録材の幅方向の他方側で搬送量を測定することができず、被記録材の幅方向全体での搬送量を精度良く検出することが困難であった。
【0013】
そこで、本発明は、上述した課題を鑑み、被記録材の搬送量又は搬送速度を高精度に検出することを可能にし、記録品位の向上を図ることができる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するため、本発明に係る記録装置は、被記録材を搬送する搬送手段と、被記録材の搬送方向に交差する走査方向に移動され記録ヘッドを保持する記録ヘッド保持部材と、被記録材に検出光を照射し被記録材の表面からの反射光を画像情報として異なる時刻でそれぞれ取得して、先に取得された画像情報の一部と、後に取得された画像情報とを比較することで被記録材の搬送量又は搬送速度を検出するための光学検出手段と、光学検出手段による検出結果に基づいて搬送手段を制御する制御手段と、を備え、記録ヘッドを用いて被記録材に記録を行う。そして、光学検出手段は、記録ヘッドの走査方向が反転する位置で被記録材の搬送量又は搬送速度が検出可能なように、記録ヘッド又は記録ヘッド保持部材に設けられた複数の光学センサを有していることを特徴とする記録装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被記録材に対する光学センサの非検出領域が無くなるので、被記録材の搬送量又は搬送速度を高精度に検出することを可能にし、被記録材を高精度に搬送することが可能になる。したがって、本発明によれば、記録品位の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明に適用可能なインクジェット記録装置における主要部の構成を示す平面図である。
【0018】
図1に示すように、記録ヘッドとしてのヘッドカートリッジ1は、記録ヘッド保持部材としてのキャリッジ2に着脱可能に搭載されている。ヘッドカートリッジ1は、インクを例えば液滴として吐出させるノズル列29が設けられた複数の記録素子を備えた記録ヘッドと、各記録素子にインクを補充するためのインクタンク部とを有している。
【0019】
さらに、ヘッドカートリッジ1には、記録ヘッドを駆動する信号等を授受するコネクタが設けられている。キャリッジ2には、コネクタを介してヘッドカートリッジ1に駆動信号等を伝達するためのコネクタホルダが設けられている。
【0020】
インクジェット記録装置の装置本体にはガイドシャフト3が設けられている。キャリッジ2は、ガイドシャフト3によって案内支持されており、ガイドシャフト3の軸方向に沿って、図1中の矢印A方向である走査方向(主走査方向)に往復移動が可能に構成されている。この主走査方向の一端側である図中右側を基準側a1と呼び、主走査方向の他端側である図中左側を非基準側a2と呼ぶ。キャリッジ2の移動は、モータプーリ5、従動プーリ6及びタイミングベルト7等の駆動機構を介して、主走査モータ4によって行われる。また、図示しないが、キャリッジ2上に設けられた回転角センサとコードストリップによって、キャリッジ2の位置情報が得られて、キャリッジ2は位置及び搬送量が制御されている。
【0021】
さらに、キャリッジ2には、ホームポジションセンサ30が設けられている。ホームポジションセンサ30は、ホームポジションの遮蔽板36上を通過することにより、キャリッジ2がホームポジションに位置していることが検出可能にされている。
【0022】
記録動作が行われる前、被記録材としての記録紙やプラスチック薄板等のシート材8は、オートシートフィーダ(ASF)32上に積載されて保持されている。記録動作が開始されたとき、給紙モータ35が駆動され、この駆動力がギアを介してピックアップローラ31に伝達される。これによって、ピックアップローラ31が回転され、シート材8はオートシートフィーダ32から1枚ずつ分離されて記録部37に搬送される。
【0023】
続いて、シート材8は、搬送ローラ1001の回転に伴って、所定の搬送速度で矢印B方向である搬送方向(副走査方向)へ搬送され、ヘッドカートリッジ1のノズル列29と対向する位置を通過する。副走査方向において、ノズル列29から上側を上流側と呼び、ノズル列29から下側を下流側と呼ぶ。また、主走査方向と副走査方向は互いに交差(直交)されている。
【0024】
図1及び図4に示すように、記録部37に対してシート材8の搬送方向の上流側には、第1の搬送部材としての第1の搬送ローラ1001と、この搬送ローラ1001に押圧されて配置され搬送ローラ1001に従動するピンチローラ1003とが設けられている。また、記録部37の搬送下流側には、第2の搬送部材としての第2の搬送ローラ1002と、この搬送ローラ1002に対向して配置されて搬送ローラ1002に押圧され従動する拍車1004とが設けられている。
【0025】
搬送ローラ1001は、搬送手段としての搬送モータ1008による回転駆動力がギアを介して伝達されることによって回転駆動されている。給紙モータ35や搬送モータ1008の駆動力の伝達機構はタイミングベルトが用いられてもよい。第2の搬送ローラ1002も第1の搬送ローラ1001の回転に伴って回転され、シート材8を搬送するように構成されている。第1の搬送ローラ1001と第2の搬送ローラ1002は、搬送モータ1008による駆動力が伝達ギア列によって伝達され、ほぼ同一速度でシート材8を搬送する。なお、第2の搬送ローラ1002は、第1の搬送ローラ1001とは異なる駆動源によって駆動されるように構成されてもよい。
【0026】
キャリッジ2に搭載されたヘッドカートリッジ1は、そのノズル列29が、2組の搬送ローラ対の間でシート材8に平行になるように保持されている。さらに、シート材8は、記録部37において平坦な記録面を形成するように、その裏面がプラテン10によって支持されている。プラテン10には、図示しない複数のリブが設けられており、シート材8はリブによって支持される。そして、シート材8が記録部37を通過するときに、ヘッドカートリッジ1は、シート材8に対して所定の画像信号に基づいてインクを吐出する。
【0027】
プラテン10には、縁なし記録を可能にするための溝11が設けられており、この溝11内にはインクを受容するインク吸収体12が保持されている。
【0028】
シート材8の搬送経路上には、シート材8の有無を検出可能なペーパセンサ33が配置されている。シート材8の給紙を行う際、ペーパセンサ33によって、シート材8の給紙が正常に行われたか否かの判定が行われる。また、給紙されたシート材8の記録開始位置を確定するためにも、ペーパセンサ33がシート材8の前端部を検出したタイミングが利用される場合がある。さらに、記録動作の最終段階において、シート材8の後端部を検出することによって、その後の記録動作での後端部の位置を把握し、現在記録を行っているシート材8上の位置を割り出すためにも、ペーパセンサ33は用いられている場合がある。
【0029】
キャリッジ2の記録ヘッドのノズル列29の4隅には、シート材8の挙動を直接的に検出可能な光学検出手段としての光学検出部を構成する光学センサとしての4つの移動量読み取りセンサ702、703、704、705が設けられている。これら移動量読み取りセンサ702、703、704、705は、プラテン10の溝11を挟んで上流側と下流側、ノズル列29の基準側a1と非基準側a2の4箇所にそれぞれ設けられている。
【0030】
これら移動量読み取りセンサ702、703、704、705は、シート材8に検出光を照射し、シート材8の表面からの反射光を画像情報として異なる時刻でそれぞれ取得する。そして、光学検出部は、移動量読み取りセンサ702、703、704、705を用いて、先に取得された画像情報の一部と、後に取得された画像情報とを比較する画像相関処理を行うことで、シート材8の搬送量又は搬送速度を検出する。
【0031】
また、移動量読み取りセンサ702、703、704、705は、キャリッジ2に設けられる代わりにヘッドカートリッジ1に設けられてもよい。なお、本発明における記録ヘッドとは、記録ヘッドを備えるヘッドカートリッジ1を含めて指している。また、移動量読み取りセンサは、非基準側a2の上流と基準側a1の下流との2箇所に設けられてもよく、基準側a1の上流と非基準側a2の下流との2箇所に設けられてもよい。また、移動量読み取りセンサは、上流、下流、基準側a1、非基準側a2を組み合わせた2箇所以上に設けられてもよい。
【0032】
本実施形態で適用されるヘッドカートリッジ1は、熱エネルギを利用してインクを吐出するインクジェット方式のヘッドカートリッジであって、熱エネルギを発生するための電気熱変換体を複数備えて構成されている。詳しくは、電気熱変換体に印加されるパルス信号によって熱エネルギを発生し、この熱エネルギによってインク液に膜沸騰を起こさせ、更に膜沸騰の発泡圧力を利用して、吐出口からインクを吐出して記録を行うものである。
【0033】
図2は、本実施形態で適用可能なヘッドカートリッジ1の記録ヘッド26の主要部構造を部分的に模式的に示す斜視図である。
【0034】
図2に示すように、シート材8と所定の間隔(0.5mm〜2.0mm程度)で対面する吐出口面21には、所定のピッチで複数の吐出口22(ノズル列)が形成されている。吐出口22には、共通液室23からそれぞれに連通する液路24が形成されており、液路24の毛細管力によって共通液室に存在するインクを各吐出口まで導いている。液路24のそれぞれの壁面には、熱エネルギを発生するための電気熱変換体(発熱抵抗体等)25が配設されている。電気熱変換体25には、画像信号又は吐出信号に基づいて所定のパルスが印加され、これによって発生した熱が液路24内のインクに膜沸騰を起こさせる。そして、このときの発泡圧力によって吐出口22から所定量のインクが液滴として吐出される。
【0035】
本実施形態では、シリアル型のインクジェット記録装置を適用しており、ヘッドカートリッジ1の吐出口22は、キャリッジ2の走査方向と交差(直交)する方向に配列されている。そして、キャリッジ2を移動走査しながら各吐出口22からインクを吐出する主走査と、シート材8を主走査方向と交差(直交)する方向に所定量搬送する副走査とを交互に繰り返すことによって、シート材8上に順次画像を形成するように構成されている。
【0036】
図3は、本実施形態で適用するインクジェット記録装置における制御回路部の構成を説明するためのブロック図である。
【0037】
図3に示すように、制御回路部は、インクジェット記録装置の制御手段としての主制御部であるコントローラ100を備えている。コントローラ100は、例えばマイクロコンピュータ等のCPU101と、プログラムや所要のテーブルその他の固定データが格納されたROM103と、画像データを展開する領域や作業用の領域等が設けられたRAM105とを有している。
【0038】
ホスト装置110は、インクジェット記録装置の外部に接続されて画像の供給源となる装置である。ホスト装置110は、記録に係る画像等のデータの作成や処理等を行うコンピュータでもよく、画像読み取り用のリーダ部等の形態であってもよい。ホスト装置110から供給される画像データやその他のコマンド、更にステータス信号等は、インターフェイス(I/F)112を介してコントローラ100と送受信可能に構成されている。
【0039】
操作部120は、操作者による入力指示を受容するスイッチ群であり、電源スイッチ122、吸引回復の起動を指示するための回復スイッチ126等を有する。
【0040】
センサ部130は、記録装置の状態を検出するためのセンサ群である。本実施形態において、センサ部130は、上述したホームポジションセンサ30及びペーパセンサ33の他に、環境温度を検出するために設けられた温度センサ134、回転角センサユニット1006、搬送検出センサユニット701等を有している。
【0041】
また、制御回路部はヘッドドライバ140を有しており、ヘッドドライバ140によって記録データに応じて記録ヘッド26の電気熱変換体25を駆動する。また、ヘッドドライバ140には、記録データを複数の電気熱変換体25のそれぞれに対応させて整列させるシフトレジスタ、適宜のタイミングでラッチするラッチ回路、駆動タイミング信号に同期して電気熱変換体25を作動させる論理回路素子等が含まれている。さらに、ヘッドドライバ140には、シート材8上でのドット形成位置を調整するために吐出タイミングを適切に設定するタイミング設定部が含まれている。
【0042】
記録ヘッド26の近傍には、サブヒータ142が設けられている。サブヒータ142はインクの吐出特性を安定させるために、記録ヘッド26の温度調整を行うものである。サブヒータ142は、電気熱変換体25の形成と同様に記録ヘッド26の基板上に形成された形態でもよく、また記録ヘッド26の本体ないしはヘッドカートリッジ1に取り付けられている形態であってもよい。
【0043】
また、制御回路部は、主走査モータ4を駆動するためのモータドライバ150と、搬送モータ1008を駆動するためのモータドライバ170とを有している。主走査モータ4を駆動することによって、キャリッジ2が主走査方向へ移動される。搬送モータ1008を駆動することによって、シート材8が副走査方向に搬送される。
【0044】
また、制御回路部は、給紙モータ35を駆動するためのモータドライバ160を有しており、給紙モータ35を駆動することによって、シート材8はオートシートフィーダ32から分離され、インクジェット記録装置内に給紙される。
【0045】
(第1の実施形態)
図4は、本実施形態におけるそれぞれのタイミングにおける、シート材8の搬送状態を説明するための図である。
【0046】
図4に示すように、記録動作が開始されると、まずシート材8の給紙が開始される。シート材8は、給紙モータ35の駆動によりピックアップローラ31を駆動させて、図4に示す矢印B方向に搬送される。
【0047】
次に、ペーパセンサ33がシート材8の前端部を検出したか否を判断し、前端部が検出されるまで、給紙モータ35は駆動を続けて給紙動作を行う。
【0048】
ペーパセンサ33によってシート材8の前端部が検出されたとき、シート材8を所定量だけ搬送し、搬送ローラ1001と、搬送ローラ1001に従動するピンチローラ1003とのニップ領域(シート材8が挟まれる領域)に前端部を突き当てる。これによって、シート材8の斜行を矯正するレジ取りを行う。この段階は、図5に示している状態に相当する。
【0049】
レジ取り後、主走査モータ4が駆動されることによって、キャリッジ2はシート材8幅方向の基準側a1の端部が、移動量読み取りセンサ702に対向する位置まで移動する。これにより、シート材8の前端部が移動量読み取りセンサ702の位置まで搬送されることで、シート材8の検出が可能となる。
【0050】
その後、搬送モータ1008を駆動させて搬送ローラ1001を回転させることで、キャリッジ2上の移動量読み取りセンサ702によってシート材8の前端部が検出されるまでシート材8を搬送する。シート材8の前端部が移動量読み取りセンサ702によって検出されたときに、記録動作を開始可能となる。この段階は、図6及び図7に示している状態に相当する。以下、縁無し記録を行う場合を一例として説明する。
【0051】
移動量読み取りセンサ702によってシート材8の前端部が検出されたとき、制御回路部のコントローラ100によって主走査モータ4を駆動させることによって、キャリッジ2が基準側a1から非基準側a2に向かって移動される。キャリッジ2が移動されるときに、ヘッドドライバ140を駆動させてノズル列29からインクを吐出して、シート材8に画像を形成する。
【0052】
続いて、キャリッジ2が非基準側a2に移動され、次にキャリッジ2が非基準側a2から基準側a1に向かって移動するとき(反転時)、図8に示すように、非基準側a2では移動量読みセンサ704がシート材8の幅方向の非基準側a2の端部と対向している。このため、移動量読みセンサ704は、搬送モータ1008を駆動させてシート材8を搬送することで、シート材8の搬送量を読み取ることが可能となる。また、キャリッジ2の反転動作の直前であっても、移動量読み取りセンサ704とシート材8とが対向していれば、シート材8の搬送量を読み取ることが可能となる。したがって、移動量読み取りセンサ704の検出結果に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008を駆動することで、搬送モータ1008の駆動量が高精度なものとなる。このため、主走査モータ4と搬送モータ1008の同時駆動が可能になり、記録時間を短縮することができる。
【0053】
シート材8の搬送後又は搬送中に、主走査モータ4を駆動させてキャリッジ2を非基準側a2から基準側a1に向かって移動し、キャリッジ2が移動させるときヘッドドライバ140を駆動させてノズル列29からインクを吐出して、シート材8に画像を形成する。基準側a1でも非基準側a2と同様にキャリッジ2の反転時、又は反転直前に、移動量読み取りセンサ702によって搬送モータ1008の駆動によるシート材8の搬送量を読み取ることができる。この動作によって、主走査方向に対する双方向記録が可能になるので、記録時間を更に短縮することができる。
【0054】
以上の一連の動作を繰り返し続ける。そして、シート材8の後端部が移動量読み取りセンサ702又は704を通過する前に、下流側の移動量読み取りセンサ703、705によって検出される状態に切り替える。これによって、光学検出部は、全記録領域において、シート材8の搬送量を直接的に検出して搬送することが可能となり、シート材8を高精度に搬送することが可能になる。
【0055】
シート材8の全領域の記録が終了した後、搬送モータ1008が駆動されることによってシート材8は記録領域から排出されて、記録動作が終了する。
【0056】
本実施形態では、4つの移動量読み取りセンサを備える構成例を挙げて説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば、非基準側a2の上流と基準側a1の下流とに2つの移動量読み取りセンサを備える場合や、基準側a1の上流と非基準側a2の下流とに2つ移動量読み取りセンサを備える場合であっても、上述した実施形態と同様に高精度な搬送が可能である。ただし、2つの移動量読み取りセンサを備える構成の場合には、4つの移動量読み取りセンサを備える場合と比較して記録動作に要する時間が長くなるので、4つの移動量読み取りセンサを備えることが望ましい。
【0057】
上述したように、本実施形態によれば、シート材8に対する移動量読み取りセンサによる非検出領域が無くなるので、シート材8の搬送量又は搬送速度を高精度に検出することを可能にし、シート材8を高精度に搬送することが可能になる。したがって、本実施形態によれば、記録品位の向上を図ることができる。
【0058】
(第2の実施形態)
他の構成例の一例として、非基準側a2の上流と基準側a1の下流とに2つの移動量読み取りセンサを備える構成について説明する。
【0059】
本実施形態と、上述した4つの移動量読み取りセンサを備える構成との差について主に説明する。縁無し記録を行う場合には、シート材8の幅よりも記録領域が大きい。このため、シート材8の前端部に記録を行うとき、記録ヘッド26によって画像を形成しながらキャリッジ2が基準側a1から非基準側a2に向かって移動した際に、移動量読み取りセンサがシート材8の領域から外れてしまう。この状態のままでは移動量読み取りセンサがシート材8の移動量を読み取ることができないので、移動量読み取りセンサをシート材8の幅方向の非基準側a2の端部に移動させるように、主走査モータ4を駆動させてキャリッジ2を基準側a1に移動させる。キャリッジ2を移動させた後、移動量読み取りセンサによってシート材8の搬送量を直接的に検出して、検出された搬送量に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008を駆動させることによってシート材8を搬送する。シート材8の搬送後、主走査モータ4を駆動させて、キャリッジ2を非基準側a2のシート材8の領域外に再度移動させる。そして、主走査モータ4を駆動させることによって、キャリッジ2を非基準側a2から基準側a1に向かって移動させ、キャリッジ2を移動させるときにヘッドドライバ140を駆動させてノズル列29からインクを吐出して、シート材8に画像を形成する。
【0060】
基準側a1においては、シート材8と移動量読み取りセンサとが対向しているため、キャリッジ2の停止位置でシート材8の搬送量を検出することができる。
【0061】
シート材8の前端部が下流の移動量読み取りセンサまで達したとき、非基準側a2におけるシート材8の搬送量は、基準側a1の下流に配置された移動量読み取りセンサによって検出することが可能である。また、基準側a1におけるシート材8の搬送量は、非基準側a2の上流に配置された移動量読み取りセンサによって検出することが可能であるので、画像形成以外のためにキャリッジ2を移動させる必要はない。
【0062】
シート材8の後端部が上流の移動量読み取りセンサから外れた後には、シート材8の前端部に関する非基準側a2における記録動作以外のキャリッジ2の動作と同様の動作を基準側a1で行う。つまり、基準側a1の移動量読み取りセンサがシート材8の幅方向の基準側a1の端部に位置するように、主走査モータ4を駆動してキャリッジ2を非基準側a1に移動する。キャリッジ2の移動後、移動量読み取りセンサによってシート材8の搬送量を直接的に検出して、検出された搬送量に基づいてコントローラ100が搬送モータ1008を駆動させてシート材8が搬送される。シート材8の搬送後、主走査モータ4を駆動させてキャリッジ2を基準側a1のシート材8の領域外に再度移動する。そして、主走査モータ4を駆動させて、キャリッジ2を基準側a1から非基準側a2に向かって移動し、キャリッジ2が移動されるときに、ヘッドドライバ140を駆動させてノズル列29からインクを吐出して、シート材8に画像を形成する。
【0063】
非基準側a2においては、シート材8の幅方向の非基準側a2の端部と移動量読み取りセンサとが対向しているため、キャリッジ2の停止位置でシート材8の搬送量を検出することができる。
【0064】
このように、本実施形態では、画像形成以外のためにキャリッジ2を移動させる必要があるので、画像形成のために要する時間が、4つの画像読み取りセンサが用いられる構成と比べて長くなる。しかし、本実施形態では、使用する移動量読み取りセンサの個数を削減できるので、製造コストを低減することができる。
【0065】
(第3の実施形態)
プラテン34には、図9及び図10に示すように、第1の光学センサ及び第2の光学センサとして、シート材8の搬送量を高精度に検出可能な第1の移動量読み取りセンサ801及び第2の移動量読み取りセンサ802が設けられている。
【0066】
第1及び第2の移動量読み取りセンサ801、802は、プラテン34に設けられた開口部内に配置されて、開口部の上側から見える位置関係で、シート材8の裏面に対向する位置に設置されている。つまり、第1及び第2の移動量読み取りセンサ801、802は、記録ヘッド26のノズル列29と対向する位置に設けられており、シート材8を挟んで記録ヘッド26と反対側から検出するように構成されている。
【0067】
また、第1の移動量読み取りセンサ801は、第1の搬送ローラ1001の搬送方向の下流側近傍、シート材8の幅方向の基準側a1の端部内側に設置されている。第2の移動量読み取りセンサ802は、第2の搬送ローラ1002の搬送方向の上流側近傍、シート材8の幅方向の非基準側a2の端部内側に設置されている。このように第1及び第2の移動量読み取りセンサ801、802が配置されることで、シート材8の全域において移動量を直接的に検出することが可能である。この検出結果(出力情報)に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御して、シート材8を高精度に停止させることを実現し、記録ヘッド26を用いて高画質な記録を行うことができる。
【0068】
図10(a)から図10(d)に、シート材8の搬送位置と搬送量を読み取る状態の断面図を示す。
【0069】
図10(a)に示すように、シート材8が第1の移動量読み取りセンサ801上に到達したときに、シート材8の搬送量が検出されている。この状態では第1の移動量読み取りセンサ801による検出結果(出力情報)に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御する。
【0070】
図10(b)に示すように、シート材8が第2の移動量読み取りセンサ802上に到達すると、シート材8の搬送量を、第1の移動量読み取りセンサ801と第2の移動量読み取りセンサ802との2つのセンサを用いて検出している。シート材8の幅方向の両側における各搬送量は、両側における搬送抵抗の差に伴って一致しておらず、差異が生じる。特に、大きさがA4以上のシート材を用いる場合には、搬送方向に対して比較的長いシート材8の後端部が、給紙部の経路に残っている状態で記録が行われる。このため、シート材8の前端部から中程までの記録中においては、ASFやUターンのパス形状に応じて、シート材8の幅方向の両側における搬送抵抗の差が生じやすい。そのため、記録されたシート材8には、幅方向の片側だけに白筋、黒筋や画像むらが発生する等の現象も生じることがある。本実施形態では、第1の移動量読み取りセンサ801と第2の移動量読み取りセンサ802との2つのセンサを用いて、シート材8の幅方向の両側における各搬送量をそれぞれ検出して、その搬送量の平均値に基づいて搬送量が制御される。これによって、シート材8の幅方向の両側に上述した現象が生じることが抑えられた記録装置を実現可能になる。また、幅方向の両側における搬送量を検出して、シート材8の搬送方向に対する傾き量を判断し、この傾き量を補正した画像形成を行うことで、記録品位を更に向上して、更に高画質に記録を行うことができる。
【0071】
図10(c)に示すように、シート材8が第1の搬送ローラ1002とピンチローラ1003とのニップ領域から抜け、第2の搬送ローラ1002と拍車1004とで狭持されて搬送される状態となる。この状態において、第1の搬送ローラ1001と、押圧力が大きくかけられているピンチローラ1003とのニップ領域をシート材8が抜けるときに、搬送量の変動が大きい。そこで、本実施形態では、第1の移動量読み取りセンサ801と第2の移動量読み取りセンサ802との2つのセンサを用いて、シート材8がニップ領域を通過するタイミングのときに継続して(シート材8が通過した直後に)搬送量を直接的にそれぞれ検出する。そして、第1及び第2の移動量読み取りセンサ801、802による各検出結果(検出情報)に基づいてコントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御する。これにより、シート材8がニップ領域を抜けたときに発生する挙動の変化の影響を小さく抑えることも可能である。また、上述と同様にシート材8の搬送方向に対する傾き量を判断し、傾き量を補正した画像形成を行うことで、更に高画質な記録を可能とする記録装置を提供することができる。
【0072】
その後、図4(d)に示すように、シート材8の後端部が第1の移動量読み取りセンサ801を通過すると、第2の移動量読み取りセンサ802によってシート材8の搬送量を直接的に検出する状態になる。この状態では、第2の移動量読み取りセンサ802の検出結果(出力情報)に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御する。一般的には記録面の画像乱れを防ぐために第2の搬送ローラ1002としてゴム製のローラが用いられ、第2の搬送ローラ1002に対向する従動ローラとして拍車1004が用いられる場合が多い。そのため、搬送精度が第1の搬送ローラ1001で搬送される場合よりも精度が劣る場合が多かった。しかしながら、本実施形態のように第2の移動量読み取りセンサ802によってシート材8の搬送量を直接制御できるため、従来は不安定であった、シート材8の後端部における記録画像の安定化を図ることが可能になる。
【0073】
上述したように本実施形態によれば、記録動作時にシート材8の前端部から後端部までのシート材8の搬送方向の全域において、シート材8の移動量の直接的な検出が可能になる。このため、本実施形態は、シート材8を高精度に搬送することが可能になり、高画質な記録を可能とする記録装置を実現できる。また、本実施形態は、基準側a1と非基準側a2におけるシート材8の搬送量を交互に測定することが可能であるので、シート材8の幅方向の両側における搬送量の差を数値的に算出することができる。また、本実施形態は、シート材8の幅方向の両側における搬送量の差を平均化することで、シート材8の幅方向の略中心における搬送量が求めることができる。このため、本実施形態は、シート材8の一端部の搬送量のみを測定する場合と比べて、搬送量に対する信頼性を向上することができる。さらに、シート材8の幅方向の両側における搬送量の差が所定の値よりも大きい場合には、シート材8の搬送方向に対する傾き量を補正した画像形成を行うことで、更に高画質な記録をすることが可能になる。
【0074】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について図11及び図12を参照して説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態の構成部材と同一の構成部材には同一符号を付して示す。
【0075】
本実施形態では、図11に示すように、キャリッジ50に、第2の移動量読み取りセンサ803が、記録ヘッド26のノズル列29よりも下流側でシート材8の記録面に対向する位置に設けられている。なお、第2の移動量読み取りセンサ803は、キャリッジ50に設けられる代わりにヘッドカートリッジ1に設けられてもよい。
【0076】
図12(a)から図12(d)に、シート材8の搬送位置と搬送量を読み取る状態の断面図を示す。本実施形態では、第3の実施形態における第2の移動量読み取りセンサ802に相当する第2の移動量読み取りセンサ803が、キャリッジ50に設けられた構成における読み取り動作の差異を主として説明する。
【0077】
図12(a)に示すように、シート材8が第1の移動量読み取りセンサ801上に到達すると、シート材8の搬送量を検出している。この状態では第1の移動量読み取りセンサ801の検出結果(出力情報)に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御する。
【0078】
図12(b)に示すように、シート材8の前端部がキャリッジ50上の第2の移動量読み取りセンサ803の下方に到達すると、記録動作を行いながらキャリッジ50は非基準側a2の反転位置へ移動される。
【0079】
その後、非基準側a2の反転位置にキャリッジ50が移動された状態では、シート材8の幅方向の非基準側a2の端部と第2の移動量読み取りセンサ803とが対向していない。このため、非基準側a2での搬送量を測定するために、シート材8の幅方向の非基準側a2の端部にキャリッジ50を移動させる。続いて、シート材8を搬送させながら、第2の移動量読み取りセンサ803によってシート材8の搬送量を検出する。その後、記録動作を開始するために非基準側a2の反転位置へキャリッジ50を移動させた後、実際に記録を行いながらキャリッジ50を基準側a1の反転位置へ移動させる。
【0080】
これにより、シート材8の搬送量を、第1の移動量読み取りセンサ801と第2の移動量読み取りセンサ803との2つのセンサを用いて検出している。第1の移動量読み取りセンサ801と第2の移動量読み取りセンサ803との2つのセンサによって、シート材8の幅方向の両側における各搬送量をそれぞれ検出して、その搬送量の平均値に基づいてコントローラ100が搬送量を制御する。これによって、シート材8の幅方向の両側に筋や画像むらが生じることが抑えられた記録装置を実現することができる。また、シート材8の幅方向の両側における各搬送量を検出して、シート材8の搬送方向に対する傾き量を判断し、この傾き量を補正した画像形成を行うことで、更に高画質な記録を可能とする記録装置を実現することもできる。
【0081】
図12(c)に示すように、シート材8が第1の搬送ローラ1001とピンチローラ1003とのニップ領域から抜けて、第2の搬送ローラ1002と拍車1004とで狭持されて搬送される状態となる。この状態を、シート材8を第1の移動量読み取りセンサ801と第2の移動量読み取りセンサ803との2つのセンサによって、ニップ領域を抜けるタイミングのときに継続して搬送量を直接的にそれぞれ検出する。そして、これら検出結果(出力情報)に基づいてコントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御する。
【0082】
これにより、シート材8がニップ領域を抜けたときに発生する挙動の変化の影響を小さく抑えることも可能である。また、上述と同様に、シート材8の搬送方向に対する傾き量を判断し、傾き量を補正した画像形成を行うことで、更に高画質な記録を可能とする記録装置を提供することができる。
【0083】
その後、図12(d)に示すように、シート材8の後端部が第1の移動量読み取りセンサ801を通過すると、第2の移動量読み取りセンサ803によってシート材8の搬送量を直接的に検出する状態になる。この状態では、第2の移動量読み取りセンサ803の検出結果に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御する。第2の移動量読み取りセンサ803によってシート材8の搬送量を直接制御できるので、従来は不安定であった、シート材8の後端部における画像の安定化を実現することが可能になる。
【0084】
本実施形態によれば、キャリッジ50に第2の移動量読み取りセンサ803が設けられたことで、キャリッジ50の主走査方向における特定の位置だけでなく、複数の位置において各搬送量を検出することが可能になる。なお、本実施形態では、シート材8の幅方向の非基準側a2の端部における搬送量を検出する構成を示したが、この構成に限定されるものではない。第2の移動量読み取りセンサ803がノズル列の配列方向の基準側a1と非基準側a2のどちらに配置された場合であっても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
また、本実施形態では、特定の用紙サイズを一例に挙げて説明したが、キャリッジ50の非基準側a2での搬送量の測定位置(又は基準側a1での搬送量の測定位置)が、ユーザが指定する用紙サイズの情報に応じて設定されて、検出動作を行う構成にされてもよい。これによって、さまざまな用紙サイズに対応することが可能となる。また、シート材8のセット位置に関して、シート材8の幅方向の右端又は左端基準ですべてのシート材8をセットする給紙機構に限定されるものではない。例えば、オートシートフィーダ32の略中心にシート材8をセットし、書き出し基準位置がシート材8の用紙サイズで異なるような給紙機構においても、移動量読み取りセンサを増やすことなく、各種用紙サイズに応じた搬送量の測定に対応することができる。
【0086】
本発明は、上述した実施形態のインクジェット記録装置に限定されるものではなく、被記録材の搬送を行いながら、被記録材に記録を行う各種の記録装置に適用されて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施形態のインクジェット記録装置を示す平面図である。
【図2】本実施形態におけるヘッドカートリッジの記録ヘッドの構造を示す斜視図である。
【図3】本実施形態のインクジェット記録装置における制御回路部の構成を説明するためのブロック図である。
【図4】本実施形態における搬送系の主要構成を模式的に示す断面図である。
【図5】本実施形態における搬送系の主要構成を模式的に示す断面図である。
【図6】本実施形態における搬送系の主要構成を模式的に示す断面図である。
【図7】本実施形態における搬送系の主要構成を説明するための平面図である。
【図8】本実施形態においてキャリッジが非基準側に移動された状態を示す平面図である。
【図9】第3の実施形態における移動量読み取りセンサの配置を示す平面図である。
【図10】第3の実施形態におけるシート材の搬送位置と搬送量を読み取る動作を説明するための断面図である。
【図11】第4の実施形態における移動量読み取りセンサの配置を示す平面図である。
【図12】第4の実施形態におけるシート材の搬送位置と搬送量を読み取る動作を説明するための断面図である。
【図13】従来の記録装置における搬送系の主要部を説明するための模式図である。
【図14】回転角センサ及びコードホイールの構成を説明するための拡大図である。
【図15】従来の記録装置における搬送系の主要部を説明するための模式図である。
【図16】搬送検出センサユニットの構成例を説明するための側面図である。
【図17】取得された画像情報に基づいて被記録材の移動量を検出する概念を説明するための模式図である。
【図18】相関窓内パターンの抽出について説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0088】
1 ヘッドカートリッジ(記録ヘッド)
2 キャリッジ(ヘッド保持部材)
4 主走査モータ
8 シート材(被記録材)
26 記録ヘッド
29 ノズル列
37 記録部
100 コントローラ(制御手段)
702、703、704、705 移動量読み取りセンサ(光学センサ)
1001 搬送ローラ
1002 搬送ローラ
1008 搬送モータ(搬送手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材の搬送量又は搬送速度を検出するための光学検出手段を備える記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被記録材を搬送しながら記録手段によって被記録材に画像を形成する記録装置では、高画質化技術として被記録材を任意の搬送量だけ高精度に搬送する必要性が高まっている。そのため、被記録材の搬送量、搬送速度を高精度に検出するための様々な技術が開示されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。ここでその代表的な方法をいくつか挙げる。
【0003】
図13及び図14に示す構成を一例として説明する。この構成では、図13に示すように、被記録材の搬送を行う回転系に対して同期して回転するコードホイール1005と、このコードホイール1005が有するスリットを検出する回転角センサユニット1006とが用いられている。コードホイール1005は、第1の搬送ローラ1001と同一の回転軸上に固定されている。また、図14に示すように、コードホイール1005の側面の外周側端部には、周方向に沿って等間隔でスリット201が設けられており、記録装置内に固定して配置された回転角センサユニット1006によって、このスリット201の位置が検出される。回転角センサユニット1006は、光学式の透過型センサであり、移動するスリット201を検出し、スリット201を検出したタイミングでパルス信号を発信する。発信されたパルス信号によって、コードホイール1005の回転角度が検出され、パルス信号が発信される時間間隔等から、搬送ローラ1001の回転量、回転速度の情報が得られる。この情報に基づいて、被記録材1007の搬送量、搬送速度を間接的に検出することが可能にされている。
【0004】
上述したように、コードホイールが用いられた構成では、搬送ローラ1001の回転量に基づいて、間接的に被記録材1007の搬送量や搬送速度を検出している。このため、搬送ローラ1001による回転力以外の外力で被記録材1007が移動してしまった場合には、被記録材1007の搬送量が正確に検出されないという問題がある。
【0005】
さらに、他の構成例について図15から図18を参照して説明する。この構成例では、光学センサを用いて被記録材1007の挙動を直接的に検出する方法が採られている。この構成例では、図15及び図16に示すように、記録装置が搬送検出センサユニット701を備えている。搬送検出センサユニット701は、光源41と、受光部42とを有している。受光部42としては、例えばCCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の光電変換素子を1次元に配列したラインセンサ、又は2次元に配列したエリアセンサが主に用いられる。また、光源41と受光部42の光路内には、レンズ43が配置されている場合もある。さらに、この構成例では、受光素子によって取得された画像情報の記憶や処理を行うハードウェア44を備えている。
【0006】
そして、この構成例では、搬送される被記録材1007に対して光源41から光を照射し、受光部42が被記録材1007からの反射光を画像情報として受光する。ここでいう画像情報とは、反射光によって被記録材の表面状態を特徴付けることができるものを指している。画像情報としては、例えば被記録材の表面形状によって現れる陰影や、被記録材の表面に記録されている記録物パターン、又はコヒーレント光源からの反射光の干渉によって生じるスペックルパターン等であれば特に制限はない。
【0007】
図17(a)に示すように、ここで任意の時刻T1において、取得された被記録材1007の表面からの第1の反射光情報501を得たとする。図18(a)から図18(c)に示すように、この第1の反射光情報501である画像情報に対して、パターン601で示すような特定領域内(相関窓領域内)の画像情報の一部が相関窓内パターン602として記憶される。続いて、図17(b)に示すように、時刻T1とは異なる時刻T2において、第2の反射光情報502を得る。
【0008】
ここで、相関窓内パターン602が、第2の反射光情報502におけるどの領域に存在しているかが、画像相関処理(比較処理)によって判定される。ここでレンズ43等による光学倍率等を考慮し、光学センサで撮像されている紙面上領域の大きさが決定されれば、図17(c)に示すように、相関窓内パターン602が画像情報上で移動した移動量Mから被記録材の搬送量を検出することができる。また、検出された搬送量と、比較する2つの画像情報を取得した時間差(T2−T1)の情報とに基づいて、被記録材の搬送速度も算出することができる。このように、被記録材の挙動を光学センサによって直接的に検出することで、搬送ローラの回転力以外の外力で被記録材が移動してしまった場合であっても、被記録材の搬送量や搬送速度を高精度に検出することができる。
【特許文献1】特開2002−128313号公報
【特許文献2】特開2002−137469号公報
【特許文献3】特開2005−82289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、光学センサによって取得された画像情報によって、検出対象の移動情報を検出する構成では、被記録材を直接的に検出することで、被記録材の搬送量や搬送速度等の搬送情報を正確に検出することが可能にされている。
【0010】
しかしながら、この構成は、検出対象である被記録材が光学センサの検出領域に存在していない場合に、検出自体を行うことが不可能になってしまう。そのため、被記録材を直接的に検出する光学センサと、搬送ローラを間接的に検出する回転角センサとを併用する構成も考えられている。しかしながら、このように2つのセンサを併用する構成であっても、被記録材を直接的に検出することができない場合があるので、この場合には搬送精度の低下を招くという問題があった。
【0011】
また、特許文献3の構成では、被記録材の移動量を直接的に検出することによって被記録材の搬送量を取得するための移動距離読み取りセンサが、キャリッジ上又はヘッドカートリッジの吐出口面に配置されている。そのため、この構成では、記録動作時に被記録材に移動距離読み取りセンサが対向していない時間が生じてしまうので、記録ヘッドのノズル長の全域において直接的に検出することが不可能となる。したがって、この構成では、被記録材の前端部又は後端部に対する記録動作時に、記録ヘッドを往復走査させてマルチパス記録する際に、直接的な測定に基づいた制御を行うことができないという問題があった。
【0012】
また、光学センサが被記録材の幅方向の基準側又は非基準側のいずれか一方側のキャリッジの反転位置近傍に配置された場合、被記録材の幅方向の他方側で搬送量を測定することができず、被記録材の幅方向全体での搬送量を精度良く検出することが困難であった。
【0013】
そこで、本発明は、上述した課題を鑑み、被記録材の搬送量又は搬送速度を高精度に検出することを可能にし、記録品位の向上を図ることができる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するため、本発明に係る記録装置は、被記録材を搬送する搬送手段と、被記録材の搬送方向に交差する走査方向に移動され記録ヘッドを保持する記録ヘッド保持部材と、被記録材に検出光を照射し被記録材の表面からの反射光を画像情報として異なる時刻でそれぞれ取得して、先に取得された画像情報の一部と、後に取得された画像情報とを比較することで被記録材の搬送量又は搬送速度を検出するための光学検出手段と、光学検出手段による検出結果に基づいて搬送手段を制御する制御手段と、を備え、記録ヘッドを用いて被記録材に記録を行う。そして、光学検出手段は、記録ヘッドの走査方向が反転する位置で被記録材の搬送量又は搬送速度が検出可能なように、記録ヘッド又は記録ヘッド保持部材に設けられた複数の光学センサを有していることを特徴とする記録装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被記録材に対する光学センサの非検出領域が無くなるので、被記録材の搬送量又は搬送速度を高精度に検出することを可能にし、被記録材を高精度に搬送することが可能になる。したがって、本発明によれば、記録品位の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明に適用可能なインクジェット記録装置における主要部の構成を示す平面図である。
【0018】
図1に示すように、記録ヘッドとしてのヘッドカートリッジ1は、記録ヘッド保持部材としてのキャリッジ2に着脱可能に搭載されている。ヘッドカートリッジ1は、インクを例えば液滴として吐出させるノズル列29が設けられた複数の記録素子を備えた記録ヘッドと、各記録素子にインクを補充するためのインクタンク部とを有している。
【0019】
さらに、ヘッドカートリッジ1には、記録ヘッドを駆動する信号等を授受するコネクタが設けられている。キャリッジ2には、コネクタを介してヘッドカートリッジ1に駆動信号等を伝達するためのコネクタホルダが設けられている。
【0020】
インクジェット記録装置の装置本体にはガイドシャフト3が設けられている。キャリッジ2は、ガイドシャフト3によって案内支持されており、ガイドシャフト3の軸方向に沿って、図1中の矢印A方向である走査方向(主走査方向)に往復移動が可能に構成されている。この主走査方向の一端側である図中右側を基準側a1と呼び、主走査方向の他端側である図中左側を非基準側a2と呼ぶ。キャリッジ2の移動は、モータプーリ5、従動プーリ6及びタイミングベルト7等の駆動機構を介して、主走査モータ4によって行われる。また、図示しないが、キャリッジ2上に設けられた回転角センサとコードストリップによって、キャリッジ2の位置情報が得られて、キャリッジ2は位置及び搬送量が制御されている。
【0021】
さらに、キャリッジ2には、ホームポジションセンサ30が設けられている。ホームポジションセンサ30は、ホームポジションの遮蔽板36上を通過することにより、キャリッジ2がホームポジションに位置していることが検出可能にされている。
【0022】
記録動作が行われる前、被記録材としての記録紙やプラスチック薄板等のシート材8は、オートシートフィーダ(ASF)32上に積載されて保持されている。記録動作が開始されたとき、給紙モータ35が駆動され、この駆動力がギアを介してピックアップローラ31に伝達される。これによって、ピックアップローラ31が回転され、シート材8はオートシートフィーダ32から1枚ずつ分離されて記録部37に搬送される。
【0023】
続いて、シート材8は、搬送ローラ1001の回転に伴って、所定の搬送速度で矢印B方向である搬送方向(副走査方向)へ搬送され、ヘッドカートリッジ1のノズル列29と対向する位置を通過する。副走査方向において、ノズル列29から上側を上流側と呼び、ノズル列29から下側を下流側と呼ぶ。また、主走査方向と副走査方向は互いに交差(直交)されている。
【0024】
図1及び図4に示すように、記録部37に対してシート材8の搬送方向の上流側には、第1の搬送部材としての第1の搬送ローラ1001と、この搬送ローラ1001に押圧されて配置され搬送ローラ1001に従動するピンチローラ1003とが設けられている。また、記録部37の搬送下流側には、第2の搬送部材としての第2の搬送ローラ1002と、この搬送ローラ1002に対向して配置されて搬送ローラ1002に押圧され従動する拍車1004とが設けられている。
【0025】
搬送ローラ1001は、搬送手段としての搬送モータ1008による回転駆動力がギアを介して伝達されることによって回転駆動されている。給紙モータ35や搬送モータ1008の駆動力の伝達機構はタイミングベルトが用いられてもよい。第2の搬送ローラ1002も第1の搬送ローラ1001の回転に伴って回転され、シート材8を搬送するように構成されている。第1の搬送ローラ1001と第2の搬送ローラ1002は、搬送モータ1008による駆動力が伝達ギア列によって伝達され、ほぼ同一速度でシート材8を搬送する。なお、第2の搬送ローラ1002は、第1の搬送ローラ1001とは異なる駆動源によって駆動されるように構成されてもよい。
【0026】
キャリッジ2に搭載されたヘッドカートリッジ1は、そのノズル列29が、2組の搬送ローラ対の間でシート材8に平行になるように保持されている。さらに、シート材8は、記録部37において平坦な記録面を形成するように、その裏面がプラテン10によって支持されている。プラテン10には、図示しない複数のリブが設けられており、シート材8はリブによって支持される。そして、シート材8が記録部37を通過するときに、ヘッドカートリッジ1は、シート材8に対して所定の画像信号に基づいてインクを吐出する。
【0027】
プラテン10には、縁なし記録を可能にするための溝11が設けられており、この溝11内にはインクを受容するインク吸収体12が保持されている。
【0028】
シート材8の搬送経路上には、シート材8の有無を検出可能なペーパセンサ33が配置されている。シート材8の給紙を行う際、ペーパセンサ33によって、シート材8の給紙が正常に行われたか否かの判定が行われる。また、給紙されたシート材8の記録開始位置を確定するためにも、ペーパセンサ33がシート材8の前端部を検出したタイミングが利用される場合がある。さらに、記録動作の最終段階において、シート材8の後端部を検出することによって、その後の記録動作での後端部の位置を把握し、現在記録を行っているシート材8上の位置を割り出すためにも、ペーパセンサ33は用いられている場合がある。
【0029】
キャリッジ2の記録ヘッドのノズル列29の4隅には、シート材8の挙動を直接的に検出可能な光学検出手段としての光学検出部を構成する光学センサとしての4つの移動量読み取りセンサ702、703、704、705が設けられている。これら移動量読み取りセンサ702、703、704、705は、プラテン10の溝11を挟んで上流側と下流側、ノズル列29の基準側a1と非基準側a2の4箇所にそれぞれ設けられている。
【0030】
これら移動量読み取りセンサ702、703、704、705は、シート材8に検出光を照射し、シート材8の表面からの反射光を画像情報として異なる時刻でそれぞれ取得する。そして、光学検出部は、移動量読み取りセンサ702、703、704、705を用いて、先に取得された画像情報の一部と、後に取得された画像情報とを比較する画像相関処理を行うことで、シート材8の搬送量又は搬送速度を検出する。
【0031】
また、移動量読み取りセンサ702、703、704、705は、キャリッジ2に設けられる代わりにヘッドカートリッジ1に設けられてもよい。なお、本発明における記録ヘッドとは、記録ヘッドを備えるヘッドカートリッジ1を含めて指している。また、移動量読み取りセンサは、非基準側a2の上流と基準側a1の下流との2箇所に設けられてもよく、基準側a1の上流と非基準側a2の下流との2箇所に設けられてもよい。また、移動量読み取りセンサは、上流、下流、基準側a1、非基準側a2を組み合わせた2箇所以上に設けられてもよい。
【0032】
本実施形態で適用されるヘッドカートリッジ1は、熱エネルギを利用してインクを吐出するインクジェット方式のヘッドカートリッジであって、熱エネルギを発生するための電気熱変換体を複数備えて構成されている。詳しくは、電気熱変換体に印加されるパルス信号によって熱エネルギを発生し、この熱エネルギによってインク液に膜沸騰を起こさせ、更に膜沸騰の発泡圧力を利用して、吐出口からインクを吐出して記録を行うものである。
【0033】
図2は、本実施形態で適用可能なヘッドカートリッジ1の記録ヘッド26の主要部構造を部分的に模式的に示す斜視図である。
【0034】
図2に示すように、シート材8と所定の間隔(0.5mm〜2.0mm程度)で対面する吐出口面21には、所定のピッチで複数の吐出口22(ノズル列)が形成されている。吐出口22には、共通液室23からそれぞれに連通する液路24が形成されており、液路24の毛細管力によって共通液室に存在するインクを各吐出口まで導いている。液路24のそれぞれの壁面には、熱エネルギを発生するための電気熱変換体(発熱抵抗体等)25が配設されている。電気熱変換体25には、画像信号又は吐出信号に基づいて所定のパルスが印加され、これによって発生した熱が液路24内のインクに膜沸騰を起こさせる。そして、このときの発泡圧力によって吐出口22から所定量のインクが液滴として吐出される。
【0035】
本実施形態では、シリアル型のインクジェット記録装置を適用しており、ヘッドカートリッジ1の吐出口22は、キャリッジ2の走査方向と交差(直交)する方向に配列されている。そして、キャリッジ2を移動走査しながら各吐出口22からインクを吐出する主走査と、シート材8を主走査方向と交差(直交)する方向に所定量搬送する副走査とを交互に繰り返すことによって、シート材8上に順次画像を形成するように構成されている。
【0036】
図3は、本実施形態で適用するインクジェット記録装置における制御回路部の構成を説明するためのブロック図である。
【0037】
図3に示すように、制御回路部は、インクジェット記録装置の制御手段としての主制御部であるコントローラ100を備えている。コントローラ100は、例えばマイクロコンピュータ等のCPU101と、プログラムや所要のテーブルその他の固定データが格納されたROM103と、画像データを展開する領域や作業用の領域等が設けられたRAM105とを有している。
【0038】
ホスト装置110は、インクジェット記録装置の外部に接続されて画像の供給源となる装置である。ホスト装置110は、記録に係る画像等のデータの作成や処理等を行うコンピュータでもよく、画像読み取り用のリーダ部等の形態であってもよい。ホスト装置110から供給される画像データやその他のコマンド、更にステータス信号等は、インターフェイス(I/F)112を介してコントローラ100と送受信可能に構成されている。
【0039】
操作部120は、操作者による入力指示を受容するスイッチ群であり、電源スイッチ122、吸引回復の起動を指示するための回復スイッチ126等を有する。
【0040】
センサ部130は、記録装置の状態を検出するためのセンサ群である。本実施形態において、センサ部130は、上述したホームポジションセンサ30及びペーパセンサ33の他に、環境温度を検出するために設けられた温度センサ134、回転角センサユニット1006、搬送検出センサユニット701等を有している。
【0041】
また、制御回路部はヘッドドライバ140を有しており、ヘッドドライバ140によって記録データに応じて記録ヘッド26の電気熱変換体25を駆動する。また、ヘッドドライバ140には、記録データを複数の電気熱変換体25のそれぞれに対応させて整列させるシフトレジスタ、適宜のタイミングでラッチするラッチ回路、駆動タイミング信号に同期して電気熱変換体25を作動させる論理回路素子等が含まれている。さらに、ヘッドドライバ140には、シート材8上でのドット形成位置を調整するために吐出タイミングを適切に設定するタイミング設定部が含まれている。
【0042】
記録ヘッド26の近傍には、サブヒータ142が設けられている。サブヒータ142はインクの吐出特性を安定させるために、記録ヘッド26の温度調整を行うものである。サブヒータ142は、電気熱変換体25の形成と同様に記録ヘッド26の基板上に形成された形態でもよく、また記録ヘッド26の本体ないしはヘッドカートリッジ1に取り付けられている形態であってもよい。
【0043】
また、制御回路部は、主走査モータ4を駆動するためのモータドライバ150と、搬送モータ1008を駆動するためのモータドライバ170とを有している。主走査モータ4を駆動することによって、キャリッジ2が主走査方向へ移動される。搬送モータ1008を駆動することによって、シート材8が副走査方向に搬送される。
【0044】
また、制御回路部は、給紙モータ35を駆動するためのモータドライバ160を有しており、給紙モータ35を駆動することによって、シート材8はオートシートフィーダ32から分離され、インクジェット記録装置内に給紙される。
【0045】
(第1の実施形態)
図4は、本実施形態におけるそれぞれのタイミングにおける、シート材8の搬送状態を説明するための図である。
【0046】
図4に示すように、記録動作が開始されると、まずシート材8の給紙が開始される。シート材8は、給紙モータ35の駆動によりピックアップローラ31を駆動させて、図4に示す矢印B方向に搬送される。
【0047】
次に、ペーパセンサ33がシート材8の前端部を検出したか否を判断し、前端部が検出されるまで、給紙モータ35は駆動を続けて給紙動作を行う。
【0048】
ペーパセンサ33によってシート材8の前端部が検出されたとき、シート材8を所定量だけ搬送し、搬送ローラ1001と、搬送ローラ1001に従動するピンチローラ1003とのニップ領域(シート材8が挟まれる領域)に前端部を突き当てる。これによって、シート材8の斜行を矯正するレジ取りを行う。この段階は、図5に示している状態に相当する。
【0049】
レジ取り後、主走査モータ4が駆動されることによって、キャリッジ2はシート材8幅方向の基準側a1の端部が、移動量読み取りセンサ702に対向する位置まで移動する。これにより、シート材8の前端部が移動量読み取りセンサ702の位置まで搬送されることで、シート材8の検出が可能となる。
【0050】
その後、搬送モータ1008を駆動させて搬送ローラ1001を回転させることで、キャリッジ2上の移動量読み取りセンサ702によってシート材8の前端部が検出されるまでシート材8を搬送する。シート材8の前端部が移動量読み取りセンサ702によって検出されたときに、記録動作を開始可能となる。この段階は、図6及び図7に示している状態に相当する。以下、縁無し記録を行う場合を一例として説明する。
【0051】
移動量読み取りセンサ702によってシート材8の前端部が検出されたとき、制御回路部のコントローラ100によって主走査モータ4を駆動させることによって、キャリッジ2が基準側a1から非基準側a2に向かって移動される。キャリッジ2が移動されるときに、ヘッドドライバ140を駆動させてノズル列29からインクを吐出して、シート材8に画像を形成する。
【0052】
続いて、キャリッジ2が非基準側a2に移動され、次にキャリッジ2が非基準側a2から基準側a1に向かって移動するとき(反転時)、図8に示すように、非基準側a2では移動量読みセンサ704がシート材8の幅方向の非基準側a2の端部と対向している。このため、移動量読みセンサ704は、搬送モータ1008を駆動させてシート材8を搬送することで、シート材8の搬送量を読み取ることが可能となる。また、キャリッジ2の反転動作の直前であっても、移動量読み取りセンサ704とシート材8とが対向していれば、シート材8の搬送量を読み取ることが可能となる。したがって、移動量読み取りセンサ704の検出結果に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008を駆動することで、搬送モータ1008の駆動量が高精度なものとなる。このため、主走査モータ4と搬送モータ1008の同時駆動が可能になり、記録時間を短縮することができる。
【0053】
シート材8の搬送後又は搬送中に、主走査モータ4を駆動させてキャリッジ2を非基準側a2から基準側a1に向かって移動し、キャリッジ2が移動させるときヘッドドライバ140を駆動させてノズル列29からインクを吐出して、シート材8に画像を形成する。基準側a1でも非基準側a2と同様にキャリッジ2の反転時、又は反転直前に、移動量読み取りセンサ702によって搬送モータ1008の駆動によるシート材8の搬送量を読み取ることができる。この動作によって、主走査方向に対する双方向記録が可能になるので、記録時間を更に短縮することができる。
【0054】
以上の一連の動作を繰り返し続ける。そして、シート材8の後端部が移動量読み取りセンサ702又は704を通過する前に、下流側の移動量読み取りセンサ703、705によって検出される状態に切り替える。これによって、光学検出部は、全記録領域において、シート材8の搬送量を直接的に検出して搬送することが可能となり、シート材8を高精度に搬送することが可能になる。
【0055】
シート材8の全領域の記録が終了した後、搬送モータ1008が駆動されることによってシート材8は記録領域から排出されて、記録動作が終了する。
【0056】
本実施形態では、4つの移動量読み取りセンサを備える構成例を挙げて説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば、非基準側a2の上流と基準側a1の下流とに2つの移動量読み取りセンサを備える場合や、基準側a1の上流と非基準側a2の下流とに2つ移動量読み取りセンサを備える場合であっても、上述した実施形態と同様に高精度な搬送が可能である。ただし、2つの移動量読み取りセンサを備える構成の場合には、4つの移動量読み取りセンサを備える場合と比較して記録動作に要する時間が長くなるので、4つの移動量読み取りセンサを備えることが望ましい。
【0057】
上述したように、本実施形態によれば、シート材8に対する移動量読み取りセンサによる非検出領域が無くなるので、シート材8の搬送量又は搬送速度を高精度に検出することを可能にし、シート材8を高精度に搬送することが可能になる。したがって、本実施形態によれば、記録品位の向上を図ることができる。
【0058】
(第2の実施形態)
他の構成例の一例として、非基準側a2の上流と基準側a1の下流とに2つの移動量読み取りセンサを備える構成について説明する。
【0059】
本実施形態と、上述した4つの移動量読み取りセンサを備える構成との差について主に説明する。縁無し記録を行う場合には、シート材8の幅よりも記録領域が大きい。このため、シート材8の前端部に記録を行うとき、記録ヘッド26によって画像を形成しながらキャリッジ2が基準側a1から非基準側a2に向かって移動した際に、移動量読み取りセンサがシート材8の領域から外れてしまう。この状態のままでは移動量読み取りセンサがシート材8の移動量を読み取ることができないので、移動量読み取りセンサをシート材8の幅方向の非基準側a2の端部に移動させるように、主走査モータ4を駆動させてキャリッジ2を基準側a1に移動させる。キャリッジ2を移動させた後、移動量読み取りセンサによってシート材8の搬送量を直接的に検出して、検出された搬送量に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008を駆動させることによってシート材8を搬送する。シート材8の搬送後、主走査モータ4を駆動させて、キャリッジ2を非基準側a2のシート材8の領域外に再度移動させる。そして、主走査モータ4を駆動させることによって、キャリッジ2を非基準側a2から基準側a1に向かって移動させ、キャリッジ2を移動させるときにヘッドドライバ140を駆動させてノズル列29からインクを吐出して、シート材8に画像を形成する。
【0060】
基準側a1においては、シート材8と移動量読み取りセンサとが対向しているため、キャリッジ2の停止位置でシート材8の搬送量を検出することができる。
【0061】
シート材8の前端部が下流の移動量読み取りセンサまで達したとき、非基準側a2におけるシート材8の搬送量は、基準側a1の下流に配置された移動量読み取りセンサによって検出することが可能である。また、基準側a1におけるシート材8の搬送量は、非基準側a2の上流に配置された移動量読み取りセンサによって検出することが可能であるので、画像形成以外のためにキャリッジ2を移動させる必要はない。
【0062】
シート材8の後端部が上流の移動量読み取りセンサから外れた後には、シート材8の前端部に関する非基準側a2における記録動作以外のキャリッジ2の動作と同様の動作を基準側a1で行う。つまり、基準側a1の移動量読み取りセンサがシート材8の幅方向の基準側a1の端部に位置するように、主走査モータ4を駆動してキャリッジ2を非基準側a1に移動する。キャリッジ2の移動後、移動量読み取りセンサによってシート材8の搬送量を直接的に検出して、検出された搬送量に基づいてコントローラ100が搬送モータ1008を駆動させてシート材8が搬送される。シート材8の搬送後、主走査モータ4を駆動させてキャリッジ2を基準側a1のシート材8の領域外に再度移動する。そして、主走査モータ4を駆動させて、キャリッジ2を基準側a1から非基準側a2に向かって移動し、キャリッジ2が移動されるときに、ヘッドドライバ140を駆動させてノズル列29からインクを吐出して、シート材8に画像を形成する。
【0063】
非基準側a2においては、シート材8の幅方向の非基準側a2の端部と移動量読み取りセンサとが対向しているため、キャリッジ2の停止位置でシート材8の搬送量を検出することができる。
【0064】
このように、本実施形態では、画像形成以外のためにキャリッジ2を移動させる必要があるので、画像形成のために要する時間が、4つの画像読み取りセンサが用いられる構成と比べて長くなる。しかし、本実施形態では、使用する移動量読み取りセンサの個数を削減できるので、製造コストを低減することができる。
【0065】
(第3の実施形態)
プラテン34には、図9及び図10に示すように、第1の光学センサ及び第2の光学センサとして、シート材8の搬送量を高精度に検出可能な第1の移動量読み取りセンサ801及び第2の移動量読み取りセンサ802が設けられている。
【0066】
第1及び第2の移動量読み取りセンサ801、802は、プラテン34に設けられた開口部内に配置されて、開口部の上側から見える位置関係で、シート材8の裏面に対向する位置に設置されている。つまり、第1及び第2の移動量読み取りセンサ801、802は、記録ヘッド26のノズル列29と対向する位置に設けられており、シート材8を挟んで記録ヘッド26と反対側から検出するように構成されている。
【0067】
また、第1の移動量読み取りセンサ801は、第1の搬送ローラ1001の搬送方向の下流側近傍、シート材8の幅方向の基準側a1の端部内側に設置されている。第2の移動量読み取りセンサ802は、第2の搬送ローラ1002の搬送方向の上流側近傍、シート材8の幅方向の非基準側a2の端部内側に設置されている。このように第1及び第2の移動量読み取りセンサ801、802が配置されることで、シート材8の全域において移動量を直接的に検出することが可能である。この検出結果(出力情報)に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御して、シート材8を高精度に停止させることを実現し、記録ヘッド26を用いて高画質な記録を行うことができる。
【0068】
図10(a)から図10(d)に、シート材8の搬送位置と搬送量を読み取る状態の断面図を示す。
【0069】
図10(a)に示すように、シート材8が第1の移動量読み取りセンサ801上に到達したときに、シート材8の搬送量が検出されている。この状態では第1の移動量読み取りセンサ801による検出結果(出力情報)に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御する。
【0070】
図10(b)に示すように、シート材8が第2の移動量読み取りセンサ802上に到達すると、シート材8の搬送量を、第1の移動量読み取りセンサ801と第2の移動量読み取りセンサ802との2つのセンサを用いて検出している。シート材8の幅方向の両側における各搬送量は、両側における搬送抵抗の差に伴って一致しておらず、差異が生じる。特に、大きさがA4以上のシート材を用いる場合には、搬送方向に対して比較的長いシート材8の後端部が、給紙部の経路に残っている状態で記録が行われる。このため、シート材8の前端部から中程までの記録中においては、ASFやUターンのパス形状に応じて、シート材8の幅方向の両側における搬送抵抗の差が生じやすい。そのため、記録されたシート材8には、幅方向の片側だけに白筋、黒筋や画像むらが発生する等の現象も生じることがある。本実施形態では、第1の移動量読み取りセンサ801と第2の移動量読み取りセンサ802との2つのセンサを用いて、シート材8の幅方向の両側における各搬送量をそれぞれ検出して、その搬送量の平均値に基づいて搬送量が制御される。これによって、シート材8の幅方向の両側に上述した現象が生じることが抑えられた記録装置を実現可能になる。また、幅方向の両側における搬送量を検出して、シート材8の搬送方向に対する傾き量を判断し、この傾き量を補正した画像形成を行うことで、記録品位を更に向上して、更に高画質に記録を行うことができる。
【0071】
図10(c)に示すように、シート材8が第1の搬送ローラ1002とピンチローラ1003とのニップ領域から抜け、第2の搬送ローラ1002と拍車1004とで狭持されて搬送される状態となる。この状態において、第1の搬送ローラ1001と、押圧力が大きくかけられているピンチローラ1003とのニップ領域をシート材8が抜けるときに、搬送量の変動が大きい。そこで、本実施形態では、第1の移動量読み取りセンサ801と第2の移動量読み取りセンサ802との2つのセンサを用いて、シート材8がニップ領域を通過するタイミングのときに継続して(シート材8が通過した直後に)搬送量を直接的にそれぞれ検出する。そして、第1及び第2の移動量読み取りセンサ801、802による各検出結果(検出情報)に基づいてコントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御する。これにより、シート材8がニップ領域を抜けたときに発生する挙動の変化の影響を小さく抑えることも可能である。また、上述と同様にシート材8の搬送方向に対する傾き量を判断し、傾き量を補正した画像形成を行うことで、更に高画質な記録を可能とする記録装置を提供することができる。
【0072】
その後、図4(d)に示すように、シート材8の後端部が第1の移動量読み取りセンサ801を通過すると、第2の移動量読み取りセンサ802によってシート材8の搬送量を直接的に検出する状態になる。この状態では、第2の移動量読み取りセンサ802の検出結果(出力情報)に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御する。一般的には記録面の画像乱れを防ぐために第2の搬送ローラ1002としてゴム製のローラが用いられ、第2の搬送ローラ1002に対向する従動ローラとして拍車1004が用いられる場合が多い。そのため、搬送精度が第1の搬送ローラ1001で搬送される場合よりも精度が劣る場合が多かった。しかしながら、本実施形態のように第2の移動量読み取りセンサ802によってシート材8の搬送量を直接制御できるため、従来は不安定であった、シート材8の後端部における記録画像の安定化を図ることが可能になる。
【0073】
上述したように本実施形態によれば、記録動作時にシート材8の前端部から後端部までのシート材8の搬送方向の全域において、シート材8の移動量の直接的な検出が可能になる。このため、本実施形態は、シート材8を高精度に搬送することが可能になり、高画質な記録を可能とする記録装置を実現できる。また、本実施形態は、基準側a1と非基準側a2におけるシート材8の搬送量を交互に測定することが可能であるので、シート材8の幅方向の両側における搬送量の差を数値的に算出することができる。また、本実施形態は、シート材8の幅方向の両側における搬送量の差を平均化することで、シート材8の幅方向の略中心における搬送量が求めることができる。このため、本実施形態は、シート材8の一端部の搬送量のみを測定する場合と比べて、搬送量に対する信頼性を向上することができる。さらに、シート材8の幅方向の両側における搬送量の差が所定の値よりも大きい場合には、シート材8の搬送方向に対する傾き量を補正した画像形成を行うことで、更に高画質な記録をすることが可能になる。
【0074】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について図11及び図12を参照して説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態の構成部材と同一の構成部材には同一符号を付して示す。
【0075】
本実施形態では、図11に示すように、キャリッジ50に、第2の移動量読み取りセンサ803が、記録ヘッド26のノズル列29よりも下流側でシート材8の記録面に対向する位置に設けられている。なお、第2の移動量読み取りセンサ803は、キャリッジ50に設けられる代わりにヘッドカートリッジ1に設けられてもよい。
【0076】
図12(a)から図12(d)に、シート材8の搬送位置と搬送量を読み取る状態の断面図を示す。本実施形態では、第3の実施形態における第2の移動量読み取りセンサ802に相当する第2の移動量読み取りセンサ803が、キャリッジ50に設けられた構成における読み取り動作の差異を主として説明する。
【0077】
図12(a)に示すように、シート材8が第1の移動量読み取りセンサ801上に到達すると、シート材8の搬送量を検出している。この状態では第1の移動量読み取りセンサ801の検出結果(出力情報)に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御する。
【0078】
図12(b)に示すように、シート材8の前端部がキャリッジ50上の第2の移動量読み取りセンサ803の下方に到達すると、記録動作を行いながらキャリッジ50は非基準側a2の反転位置へ移動される。
【0079】
その後、非基準側a2の反転位置にキャリッジ50が移動された状態では、シート材8の幅方向の非基準側a2の端部と第2の移動量読み取りセンサ803とが対向していない。このため、非基準側a2での搬送量を測定するために、シート材8の幅方向の非基準側a2の端部にキャリッジ50を移動させる。続いて、シート材8を搬送させながら、第2の移動量読み取りセンサ803によってシート材8の搬送量を検出する。その後、記録動作を開始するために非基準側a2の反転位置へキャリッジ50を移動させた後、実際に記録を行いながらキャリッジ50を基準側a1の反転位置へ移動させる。
【0080】
これにより、シート材8の搬送量を、第1の移動量読み取りセンサ801と第2の移動量読み取りセンサ803との2つのセンサを用いて検出している。第1の移動量読み取りセンサ801と第2の移動量読み取りセンサ803との2つのセンサによって、シート材8の幅方向の両側における各搬送量をそれぞれ検出して、その搬送量の平均値に基づいてコントローラ100が搬送量を制御する。これによって、シート材8の幅方向の両側に筋や画像むらが生じることが抑えられた記録装置を実現することができる。また、シート材8の幅方向の両側における各搬送量を検出して、シート材8の搬送方向に対する傾き量を判断し、この傾き量を補正した画像形成を行うことで、更に高画質な記録を可能とする記録装置を実現することもできる。
【0081】
図12(c)に示すように、シート材8が第1の搬送ローラ1001とピンチローラ1003とのニップ領域から抜けて、第2の搬送ローラ1002と拍車1004とで狭持されて搬送される状態となる。この状態を、シート材8を第1の移動量読み取りセンサ801と第2の移動量読み取りセンサ803との2つのセンサによって、ニップ領域を抜けるタイミングのときに継続して搬送量を直接的にそれぞれ検出する。そして、これら検出結果(出力情報)に基づいてコントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御する。
【0082】
これにより、シート材8がニップ領域を抜けたときに発生する挙動の変化の影響を小さく抑えることも可能である。また、上述と同様に、シート材8の搬送方向に対する傾き量を判断し、傾き量を補正した画像形成を行うことで、更に高画質な記録を可能とする記録装置を提供することができる。
【0083】
その後、図12(d)に示すように、シート材8の後端部が第1の移動量読み取りセンサ801を通過すると、第2の移動量読み取りセンサ803によってシート材8の搬送量を直接的に検出する状態になる。この状態では、第2の移動量読み取りセンサ803の検出結果に基づいて、コントローラ100が搬送モータ1008をフィードバック制御する。第2の移動量読み取りセンサ803によってシート材8の搬送量を直接制御できるので、従来は不安定であった、シート材8の後端部における画像の安定化を実現することが可能になる。
【0084】
本実施形態によれば、キャリッジ50に第2の移動量読み取りセンサ803が設けられたことで、キャリッジ50の主走査方向における特定の位置だけでなく、複数の位置において各搬送量を検出することが可能になる。なお、本実施形態では、シート材8の幅方向の非基準側a2の端部における搬送量を検出する構成を示したが、この構成に限定されるものではない。第2の移動量読み取りセンサ803がノズル列の配列方向の基準側a1と非基準側a2のどちらに配置された場合であっても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
また、本実施形態では、特定の用紙サイズを一例に挙げて説明したが、キャリッジ50の非基準側a2での搬送量の測定位置(又は基準側a1での搬送量の測定位置)が、ユーザが指定する用紙サイズの情報に応じて設定されて、検出動作を行う構成にされてもよい。これによって、さまざまな用紙サイズに対応することが可能となる。また、シート材8のセット位置に関して、シート材8の幅方向の右端又は左端基準ですべてのシート材8をセットする給紙機構に限定されるものではない。例えば、オートシートフィーダ32の略中心にシート材8をセットし、書き出し基準位置がシート材8の用紙サイズで異なるような給紙機構においても、移動量読み取りセンサを増やすことなく、各種用紙サイズに応じた搬送量の測定に対応することができる。
【0086】
本発明は、上述した実施形態のインクジェット記録装置に限定されるものではなく、被記録材の搬送を行いながら、被記録材に記録を行う各種の記録装置に適用されて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施形態のインクジェット記録装置を示す平面図である。
【図2】本実施形態におけるヘッドカートリッジの記録ヘッドの構造を示す斜視図である。
【図3】本実施形態のインクジェット記録装置における制御回路部の構成を説明するためのブロック図である。
【図4】本実施形態における搬送系の主要構成を模式的に示す断面図である。
【図5】本実施形態における搬送系の主要構成を模式的に示す断面図である。
【図6】本実施形態における搬送系の主要構成を模式的に示す断面図である。
【図7】本実施形態における搬送系の主要構成を説明するための平面図である。
【図8】本実施形態においてキャリッジが非基準側に移動された状態を示す平面図である。
【図9】第3の実施形態における移動量読み取りセンサの配置を示す平面図である。
【図10】第3の実施形態におけるシート材の搬送位置と搬送量を読み取る動作を説明するための断面図である。
【図11】第4の実施形態における移動量読み取りセンサの配置を示す平面図である。
【図12】第4の実施形態におけるシート材の搬送位置と搬送量を読み取る動作を説明するための断面図である。
【図13】従来の記録装置における搬送系の主要部を説明するための模式図である。
【図14】回転角センサ及びコードホイールの構成を説明するための拡大図である。
【図15】従来の記録装置における搬送系の主要部を説明するための模式図である。
【図16】搬送検出センサユニットの構成例を説明するための側面図である。
【図17】取得された画像情報に基づいて被記録材の移動量を検出する概念を説明するための模式図である。
【図18】相関窓内パターンの抽出について説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0088】
1 ヘッドカートリッジ(記録ヘッド)
2 キャリッジ(ヘッド保持部材)
4 主走査モータ
8 シート材(被記録材)
26 記録ヘッド
29 ノズル列
37 記録部
100 コントローラ(制御手段)
702、703、704、705 移動量読み取りセンサ(光学センサ)
1001 搬送ローラ
1002 搬送ローラ
1008 搬送モータ(搬送手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材を搬送する搬送手段と、前記被記録材の搬送方向に交差する走査方向に移動され記録ヘッドを保持する記録ヘッド保持部材と、前記被記録材に検出光を照射し前記被記録材の表面からの反射光を画像情報として異なる時刻でそれぞれ取得して、先に取得された前記画像情報の一部と、後に取得された画像情報とを比較することで前記被記録材の搬送量又は搬送速度を検出するための光学検出手段と、前記光学検出手段による検出結果に基づいて前記搬送手段を制御する制御手段と、を備え、前記記録ヘッドを用いて前記被記録材に記録を行う記録装置において、
前記光学検出手段は、前記記録ヘッドの前記走査方向が反転する位置で前記被記録材の搬送量又は搬送速度が検出可能なように、前記記録ヘッド又は前記記録ヘッド保持部材に設けられた複数の光学センサを有していることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドの前記走査方向の一端側を基準側とし、他端側を非基準側とすれば、前記光学センサは、前記基準側及び前記非基準側にそれぞれ設けられている、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記光学センサは、前記記録ヘッドに対して前記被記録材の搬送方向の上流及び下流にそれぞれ設けられている、請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記光学センサが、前記基準側の前記上流、前記基準側の前記下流、前記非基準側の前記上流、前記非基準側の前記下流の4箇所にそれぞれ設けられている、請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドが前記基準側から前記非基準側に向かって移動して記録を行う場合と、前記記録ヘッドが前記非基準側から前記基準側に向かって移動して記録を行う場合とにおいて、前記光学検出手段は前記被記録材の搬送量又は搬送速度を検出可能に構成されている、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッド保持部材の駆動と、前記搬送手段の駆動とを同時に行うことが可能に構成されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記搬送手段は、前記記録ヘッドに対して前記被記録材の搬送方向の上流に配置された第1の搬送部材と、前記記録ヘッドに対して前記搬送方向の下流に配置された第2の搬送部材とを有し、
前記光学検出手段は、前記搬送方向における前記記録ヘッドと前記第1の搬送部材との間に位置する第1の光学センサと、前記搬送方向における前記記録ヘッドと前記第2の搬送部材との間に位置する第2の光学センサとを有し、前記第1及び第2の光学センサが、前記記録ヘッドの前記走査方向に平行な前記被記録材の幅方向に対して間隔をあけた2箇所にそれぞれ配置されている、請求項1に記載の記録装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドの前記走査方向の一端側を基準側とし、他端側を非基準側とすれば、
前記第1の光学センサは、前記搬送方向における前記記録ヘッドと前記第1の搬送部材との間、かつ前記被記録材の幅方向の基準側の端部内側に配置され、
前記第2の光学センサは、前記記録ヘッドと前記第2の搬送部材との間、かつ前記被記録材の幅方向の非基準側の端部内側に配置されている、請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記第1の光学センサは前記第1の搬送部材の近傍に配置され、前記第2の光学センサは前記第2の搬送部材の近傍に配置されている、請求項7又は8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記第1及び第2の光学センサは、前記記録ヘッドと対向する位置に設けられ、前記被記録材を挟んで前記記録ヘッドと反対側から検出するように構成されている、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記第1の光学センサは前記記録ヘッドと対向する位置に設けられ、
前記第2の光学センサは前記記録ヘッド保持部材に設けられている、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記第1の光学センサによる検出結果に基づいて前記搬送手段を制御し、前記被記録材が前記第1の光学センサの位置よりも前記搬送方向に対して下流側に位置する場合に、前記制御手段は、前記第2の光学センサによる検出結果に基づいて前記第2の搬送部材を制御する、請求項7乃至11のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記第1の光学センサによる検出結果と前記第2の光学センサによる検出結果とに基づいて、前記記録ヘッドによる画像形成を補正する、請求項7乃至12のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記第1の光学センサ及び前記第2の光学センサによって、前記第1の搬送部材によるニップ領域を前記被記録材が通過した直後の前記被記録材の移動量を直接的に検出した各検出結果に基づいて前記記録ヘッドによる画像形成を補正する、請求項7乃至13のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項15】
前記被記録材に対して前記記録ヘッドからインクを吐出して記録を行う、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項1】
被記録材を搬送する搬送手段と、前記被記録材の搬送方向に交差する走査方向に移動され記録ヘッドを保持する記録ヘッド保持部材と、前記被記録材に検出光を照射し前記被記録材の表面からの反射光を画像情報として異なる時刻でそれぞれ取得して、先に取得された前記画像情報の一部と、後に取得された画像情報とを比較することで前記被記録材の搬送量又は搬送速度を検出するための光学検出手段と、前記光学検出手段による検出結果に基づいて前記搬送手段を制御する制御手段と、を備え、前記記録ヘッドを用いて前記被記録材に記録を行う記録装置において、
前記光学検出手段は、前記記録ヘッドの前記走査方向が反転する位置で前記被記録材の搬送量又は搬送速度が検出可能なように、前記記録ヘッド又は前記記録ヘッド保持部材に設けられた複数の光学センサを有していることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドの前記走査方向の一端側を基準側とし、他端側を非基準側とすれば、前記光学センサは、前記基準側及び前記非基準側にそれぞれ設けられている、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記光学センサは、前記記録ヘッドに対して前記被記録材の搬送方向の上流及び下流にそれぞれ設けられている、請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記光学センサが、前記基準側の前記上流、前記基準側の前記下流、前記非基準側の前記上流、前記非基準側の前記下流の4箇所にそれぞれ設けられている、請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドが前記基準側から前記非基準側に向かって移動して記録を行う場合と、前記記録ヘッドが前記非基準側から前記基準側に向かって移動して記録を行う場合とにおいて、前記光学検出手段は前記被記録材の搬送量又は搬送速度を検出可能に構成されている、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッド保持部材の駆動と、前記搬送手段の駆動とを同時に行うことが可能に構成されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記搬送手段は、前記記録ヘッドに対して前記被記録材の搬送方向の上流に配置された第1の搬送部材と、前記記録ヘッドに対して前記搬送方向の下流に配置された第2の搬送部材とを有し、
前記光学検出手段は、前記搬送方向における前記記録ヘッドと前記第1の搬送部材との間に位置する第1の光学センサと、前記搬送方向における前記記録ヘッドと前記第2の搬送部材との間に位置する第2の光学センサとを有し、前記第1及び第2の光学センサが、前記記録ヘッドの前記走査方向に平行な前記被記録材の幅方向に対して間隔をあけた2箇所にそれぞれ配置されている、請求項1に記載の記録装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドの前記走査方向の一端側を基準側とし、他端側を非基準側とすれば、
前記第1の光学センサは、前記搬送方向における前記記録ヘッドと前記第1の搬送部材との間、かつ前記被記録材の幅方向の基準側の端部内側に配置され、
前記第2の光学センサは、前記記録ヘッドと前記第2の搬送部材との間、かつ前記被記録材の幅方向の非基準側の端部内側に配置されている、請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記第1の光学センサは前記第1の搬送部材の近傍に配置され、前記第2の光学センサは前記第2の搬送部材の近傍に配置されている、請求項7又は8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記第1及び第2の光学センサは、前記記録ヘッドと対向する位置に設けられ、前記被記録材を挟んで前記記録ヘッドと反対側から検出するように構成されている、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記第1の光学センサは前記記録ヘッドと対向する位置に設けられ、
前記第2の光学センサは前記記録ヘッド保持部材に設けられている、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記第1の光学センサによる検出結果に基づいて前記搬送手段を制御し、前記被記録材が前記第1の光学センサの位置よりも前記搬送方向に対して下流側に位置する場合に、前記制御手段は、前記第2の光学センサによる検出結果に基づいて前記第2の搬送部材を制御する、請求項7乃至11のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記第1の光学センサによる検出結果と前記第2の光学センサによる検出結果とに基づいて、前記記録ヘッドによる画像形成を補正する、請求項7乃至12のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記第1の光学センサ及び前記第2の光学センサによって、前記第1の搬送部材によるニップ領域を前記被記録材が通過した直後の前記被記録材の移動量を直接的に検出した各検出結果に基づいて前記記録ヘッドによる画像形成を補正する、請求項7乃至13のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項15】
前記被記録材に対して前記記録ヘッドからインクを吐出して記録を行う、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−131780(P2010−131780A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307720(P2008−307720)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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