説明

記録装置

【課題】板状の被記録材の記録可能領域をより精度良く検出する。
【解決手段】記録装置は、記録可能領域41bと、光透過率が記録可能領域41bとは異なる記録不可領域41a,41cと、を有する板状の被記録材41の記録可能領域41bを検出し、記録可能領域41bに記録を行う。記録装置は、被記録材41に光を照射する光源30と、光源30から出射され被記録材41を透過した光の強度を検出する光学センサ18と、を備え、光学センサ18の検出に基づいて記録可能領域が特定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタや画像形成装置等の記録装置に関するものであり、特にトレイに搭載されたCD(コンパクトディスク)等の被記録材に記録することが可能な記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置や画像形成装置等の記録装置によって記録される被記録材として、様々なものが提案されている。その中には、CD−RやDVDやカードのように、小型で厚みのある平板状の被記録材がある(以下、まとめてコンパクトディスク又はCDと表記する)。従来の汎用的な記録装置において、CD等の被記録材を単票用紙と同じ搬送経路に通すと、CDの剛性が高いことに起因して搬送性が低下したり、CDに傷が付いたり、搬送ローラ間の距離に応じては搬送不能になったりするなどの不良が生じることがある。そこで、CD等の小型で厚みのある平板状の被記録材を搬送する場合は、トレイを使用し、単票用紙の搬送経路とは異なる経路を通して搬送することがある。
【0003】
トレイは一般的な単票用紙より厚みがあるので、搬送ローラ対への挿入、搬送ローラ対による挟持、記録ヘッドと被記録材との間の適正なギャップの確保などに十分な配慮をする必要がある。そのための1つの手段として、記録装置に操作レバーを設け、操作レバーの動きに連動して搬送部材の押圧を解除する方法がある。そして、ユーザが、トレイを所定位置まで挿入して位置を合わせたところでレバーを操作して、再び搬送部材を押圧状態にセットする。さらに、操作レバーによって、記録ヘッドを搭載しているキャリッジを上昇させ、ギャップ(記録ヘッドと被記録材との間の距離)の確保を行っている。
【0004】
また、CD(コンパクトディスク)等の被記録材の位置検出についての技術が特許文献1で提案されている。特許文献1に記載の記録装置は、CDを搭載して搬送するトレイ上に位置検出用のマーカを配置し、記録ヘッドを搭載して走査するキャリッジ上に光学センサを備えている。トレイ上のマーカの位置を、反射光を用いて検出することで、CDの位置を把握する。
【0005】
上記以外にも、キャリッジ上に搭載した光学センサによって、直接CDの記録可能領域である白色部分を、反射光を用いて検出する方法が特許文献2で提案されている。
【0006】
さらに、CDのエッジ付近のトレイに透過穴を設け、キャリッジ上に搭載した光学センサによって、CDのエッジ位置を、反射光を用いて検出することで、CDの位置を把握する方法が特許文献3で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−42372号公報
【特許文献2】特開2003−217259号公報
【特許文献3】特開2005−35015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に対しては、CDをトレイにセットしてもCDがトレイ内で微妙に動いてしまうことがあり、またマーカとCDの支持部との間の位置精度には製造公差に基づく限界があり、僅かにばらつくことがある。そのため、マーカの位置が検出できてもCDの位置を必ずしも正確に認識できない場合があった。また、CDの位置を検出しているが、CDの記録可能領域の大きさを検知しているわけではないので、実際に記録を行う場合には、記録可能領域の大きさを毎回測ってプリンタを調整しなければならないという課題があった。
【0009】
特許文献2に対しては、CDの表面状態のばらつき、及び、受光素子自身の感度のばらつきなどの影響により、受光素子が、CDとトレイとの境界を正確に判定できないことがある。また、記録可能領域である白色部分が光沢タイプの場合等には、受光素子がCDとトレイとの境界を正確に判定できず、CDに対してずれた位置に記録をしてしまう場合があった。
【0010】
さらに、特許文献3に対しても、CDの位置を検出しているが、記録可能領域の大きさを検知しているわけではないので、実際に記録を行う場合には、記録可能領域の大きさを毎回測ってプリンタを調整しなければならないという課題があった。
【0011】
本発明の目的は、板状の被記録材の記録可能領域をより精度良く検出できる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の記録装置は、記録可能領域と光透過率が記録可能領域とは異なる記録不可領域とを有する板状の被記録材の記録可能領域を検出し、記録可能領域に記録を行う。記録装置は、被記録材に光を照射する光源と、光源から出射され被記録材を透過した光の強度を検出する光学センサと、を備え、前記光学センサの検出に基づいて前記記録可能領域が特定される。
【発明の効果】
【0013】
光学センサは、被記録材の記録可能領域と記録不可領域における透過光の強度差を検出する。これにより、所定の透過光の強度を有する記録可能領域の大きさを直接検出することができるため、自動的に記録可能領域を特定することができる。また、透過光を利用しているため、記録可能領域が光沢タイプだとしても、それに影響されることなくより正確に、記録可能領域と記録不可領域との境界を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例の記録装置としてのプリンタの外観斜視図である。
【図2】図1で示したプリンタの内部機構を示す斜視図である。
【図3】図2で示したプリンタの内部機構を、キャリッジの走査方向に垂直な断面で切った断面図である。
【図4】キャリッジ周辺を図3における矢印B方向から見た図である。
【図5】被記録材としてのCDに記録を行う場合に使用するトレイ及び当該CDの上面図である。
【図6】トレイを装着したプリンタの外観斜視図である。
【図7】CDの記録可能領域を検出するための構成及び動作を説明するための図である。
【図8】CDの各領域と受光強度との関係を説明するための図である。
【図9】本発明の第2の実施例の記録装置においてCDの記録可能領域を検出するための構成及び動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例について、具体的かつ詳細に説明する。下記実施例では、インクジェット方式によって被記録材に記録を行うプリンタ(記録装置)について詳細に説明する。しかし、本発明は、このようなプリンタに限定されず、CD等の平板状の被記録材を搬送して当該被記録材に記録を行う記録装置全般に適用できる。記録方式はインクジェット方式に限定されず任意の方式であって良く、また、インクによる記録に限定されず任意の液体によって記録するものであって良い。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施例であるインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドと呼ぶ。)を用いて被記録材に記録を行うプリンタの外観斜視図である。プリンタは、例えば、電源スイッチなどの操作部19、記録する被記録材を積載するための給紙スタッカ21、記録が終了した被記録材をスタックするための排紙トレイ20、給紙スタッカ21の一部に設けられた被記録材を給紙するための圧板16を備えている。この圧板16から給紙される被記録材は、薄いシート状のものである。
【0017】
図2は、図1で示したプリンタのカバーを取り外した状態で、プリンタの内部機構を示す斜視図である。プリンタは、キャリッジ2、インクタンク3、光学センサ18、ガイドシャフト4、ガイドレール5、キャリッジベルト6、コードストリップ7、搬送ローラ8、ピンチローラ9、第一の排紙ローラ10、第二の排紙ローラ11、キャップ22などを備えている。キャリッジ2は、記録ヘッドを搭載して、図中矢印Aの方向(主走査方向)に往復移動可能に構成されている。インクタンク3は、記録ヘッド(不図示)に供給するためのインクを保持している。光学センサ18は、キャリッジ2に搭載され、被記録材の表面での反射光の強度及び下方からの透過光の強度を検知するための受光素子を備えている。ガイドシャフト4は、キャリッジ2をガイドする。ガイドレール5は、ガイドシャフト4と同様にキャリッジ2をガイドする。キャリッジベルト6は、キャリッジモータ(不図示)の駆動力をキャリッジ2に伝達して、キャリッジ2の主走査を行う。コードストリップ7は、キャリッジ2の、主走査方向Aの位置を、キャリッジ2上に搭載したキャリッジ位置センサであるエンコーダ(不図示)で検知するためのものである。搬送ローラ8は、被記録材をその搬送方向(副走査方向)に搬送する搬送手段として用いられる。ピンチローラ9は、搬送ローラ8に対向して設けられた被記録材を搬送ローラ8に押圧して搬送力を発生させる。第一の排紙ローラ10および第二の排紙ローラ11は、記録された被記録材を排紙するためのローラである。キャップ22は、記録ヘッドに設けられたインク吐出ノズル(以下、ノズル)を密閉するために用いられる。
【0018】
図3は、図2で示したプリンタの内部機構をキャリッジの主走査方向Aに垂直な断面から見た断面図である。プリンタは、給紙ローラ14、分離ローラ15、圧板バネ17、従動ローラ12,13をさらに有していて良い。給紙ローラ14は、給紙スタッカ21に積載された被記録材を、給紙時に圧板16と共に押圧しながら摩擦力により給紙を行う。分離ローラ15は、給紙する際に、被記録材を1枚ずつ分離する。圧板バネ17は、圧板16を給紙ローラ14に押圧させる押圧力を発生させる。従動ローラ12,13は、夫々、第一の排紙ローラ10と第二の排紙ローラ11に被記録材を押圧して搬送力を発生させる。
【0019】
図4は、キャリッジ2の周辺の構成を、図3における矢印B方向から見た概略斜視図である。記録ヘッド1は、キャリッジ2に搭載され、被記録材にインクを吐出して記録を行う。記録ヘッド1にはインクを吐出するためのノズル1aが設けられている。
【0020】
図5は、CDに記録を行う場合に使用するトレイ及びCDの上面図である。本実施例では、CD41を例に挙げて詳細に説明するが、被記録材は、記録可能領域と、光透過率が記録可能領域とは異なる記録不可領域と、を有する板状の被記録材であれば良い。一般に、被記録材としてのCD41の記録可能領域には、インクなどにより記録が可能な白色部分が設けられている。白色部分は、光を透過せず、反射する部分である。
【0021】
CD41は、トレイ40の所定の位置に設置される。ここで、CD41の略中央には取り付け又は位置決めのための穴が形成され、トレイ40には前記穴に対応する取り付け部又は位置決め部が設けられている。CD41は、記録を行うことができる領域としての記録可能領域41bと、記録ができない領域としての記録不可領域41a,41cとを有する。一般には、CD41は、記録可能領域41bの内側の記録不可領域41aと外側の記録不可領域41cとを有する。記録不可領域41a,41cは、例えば透明若しくは半透明の領域となっている。
【0022】
図6はトレイ40を装着したプリンタの外観斜視図である。図6に示すように、CD41を搭載したトレイ40を、トレイガイド43でガイドしながらプリンタの排出口側から挿入する。そして、CD41の記録可能領域41bの位置を光学センサ18で検知して、記録可能領域41bの位置を特定し記録を行う。このように、平板状の厚い被記録材は、シート状の薄い被記録材とは異なる搬送経路を通る。
【0023】
次に、以上のような構成のプリンタを用いた、平板状の被記録材としてのCD41の記録可能領域41bの位置および大きさの検出について図7を参照して説明する。
【0024】
図7は、トレイ40が導光体により構成されている場合の、CD41の記録可能領域41bの位置および大きさ検出に係る構成部品の位置関係を示す図である。図7(a)は、CD41が搭載されたトレイ40の上面図である。図7(b)は、図7(a)に対して紙面に直交する面で切断した断面図であって、キャリッジ2および光学センサ18も図示されている。導光体により構成されたトレイ40は、一面に照射された光源30からの光をトレイ40上の被記録材41に向けて出射する。つまり、トレイ40は、横にある光源30からの光を面発光の形で上方、つまりトレイ上のCD41を照らすことが出来る。ここで、光源30は、例えばLEDで構成することができる。このように、トレイ40を導光体とすることで、設計上の自由度が向上する。
【0025】
また、トレイ40に搭載されたCD41の上方にはキャリッジ2が設けられている。キャリッジ2は、記録動作を行わないときには主走査方向Aの一端のホームポジションに位置し、記録時にはプリンタ本体の幅方向、すなわち矢印A方向(主走査方向)に往復動できるようになっている。キャリッジ2の下端には記録ヘッド1が設けられると共に、CD41の記録可能領域41bを透過した光を検出するための光学センサ18が設けられている。この光学センサ18は、光の強度を検出し、光の強度変化によって物体を検知するものである。
【0026】
光学センサ18は、発光素子と受光素子とを備えていることが好ましい。ここでは、発光素子としてLEDを用い、受光素子としてフォトトランジスタを用いた。具体的には、CD41は、記録可能領域41bと内側の記録不可領域41aと外側の記録不可領域41cとを有する。記録不可領域41a,41cは、例えば、透明若しくは半透明部分として構成される。光学センサ18は、記録可能領域41bと記録不可領域41a,41cとの透過光の強度差を感知して、記録可能領域41bと記録不可領域41a,41cとの境界、つまりCD41の記録可能領域41bの存在を検知する。
【0027】
記録ヘッド1と対向する位置には、記録時に被記録材を下側から支持するプラテン(不図示)が設けられている。また記録ヘッド1の上流側には搬送ローラ8とピンチローラ9が設けられ、記録ヘッド1の下流側には第一の排紙ローラ10と従動ローラ12及び第二の排紙ローラ11と従動ローラ13が設けられている。搬送手段としての搬送ローラ8は、LFモータ(不図示)を正転または逆転することにより、プリンタの前後方向、すなわち矢印C方向(副走査方向)にトレイ40を往復運動させることができる。副走査方向Cは、主走査方向Aと交差、好ましくは直交する方向である。
【0028】
次に、CD41の記録可能領域41bに記録を行う手順について説明し、併せてCD41の記録可能領域41bの位置および大きさの検出方法についても説明する。尚、以下の説明ではプリンタの後方、即ちトレイ40を押し込む方向を+Y方向、その反対方向を−Y方向とし、主走査方向Aにおけるキャリッジ2のホームポジション側を+X方向、その反対方向を−X方向とする。ここで+Y方向および−Y方向は被記録材の搬送方向、即ち副走査方向Cに対応し、+X方向および−X方向はキャリッジ2の走査方向、即ち主走査方向Aに対応する。
【0029】
(1)まず、トレイ40上にCD41を載せ、トレイ40をプリンタ本体に押し込む。この状態で、Y方向に関しては、CD41の中心付近と思われるところをキャリッジ2が通過できるようになっている。
【0030】
(2)ここで記録指示が行われると、キャリッジ2はホームポジションから−X方向に移動しながら、キャリッジ2に設けられた光学センサ18でCD41の記録可能領域41bを検出し始める。このとき、プリンタは、光学センサ18とCD41とを相対的に移動させつつ、光源30からの光をCD41に照射する。
【0031】
(3)光学センサ18は、まずCD41の記録可能領域41bと外側の記録不可領域41cとの境界を検出する。さらに光学センサ18は−X方向に移動してCD41の記録可能領域41bと内側の記録不可領域41aとの境界を検出し、さらに−X方向に移動してCD41の記録可能領域41bと内側の記録不可領域41aとのもうひとつの境界を検出する。そして、さらに−X方向に移動してCD41の記録可能領域41bと外側の記録不可領域41cとのもうひとつの境界を検出する。図8に示すように、CD41の記録可能領域41b、記録不可領域41a,41cと、トレイ40のみの領域を透過した光の強度分布が得られる。この強度分布の強度変化を検知することにより、それらの境界を検出することができる。
【0032】
図8は、キャリッジの位置と受光強度との関係を示すグラフである。図8において、領域Dはトレイ40だけの領域、領域EはCD41の内側の記録不可領域41aおよび外側の記録不可領域41c、領域FはCD41の記録可能領域41bを示している。
【0033】
上記の操作を、CD41の中心と思われるところを中心にして副走査方向Cにトレイ40をある程度動かして複数回行い、CD41の記録可能領域41bの幅(主走査方向Aの幅)が最大となるところを見つける。これにより、CD41の記録可能領域41bの主走査方向Aにおける大きさ及び中心位置を求めることができる。
【0034】
主走査方向Aにおける中心位置でキャリッジ2を固定し、Y方向にトレイ40をCD41の幅と思われる距離以上動かして、X方向と同様の検知操作を行う。これにより、CD41の記録可能領域41bの副走査方向Cにおける大きさ及びCDの中心位置を求めることができる。
【0035】
一般に、CD41の記録可能領域41bの外周は真円であるから、X方向及びY方向での記録可能領域41bの大きさの測定値に違いが生じた場合は、その平均値を記録可能領域41bの大きさと特定する。
【0036】
また、CD41の記録可能領域41bの境界が3点以上求められた時点で、計算によってCD41の中心位置を算出しても良い。記録可能領域41bの境界線が円形である場合、境界線上の3点が検出されれば、一意的に円の中心位置を求めることができる。
【0037】
(4)上記で求めたCD41のX方向及びY方向での中心位置から、CD41の中心座標がわかる。また、CD41の記録可能領域41bの大きさ(内径および外径)も分かる。これら情報に基づいて記録すべきデータが展開され、記録ヘッド1からインクを吐出して記録可能領域41bに記録を行う。このように、光学センサと被記録材とを相対的に移動させつつ記録可能領域の境界を検出することで、CD41の中心位置および大きさを特定できる。
【0038】
トレイ40の主走査方向Aの位置と副走査方向Cの位置とは、どちらを先に検出しても良く、トレイ40の主走査方向Aの大きさと副走査方向Cの大きさとは、どちらを先に検出しても良い。
【0039】
次に、図9を参照して、第2の実施例における、CD41の記録可能領域41bの位置および大きさの検出方法について説明する。
【0040】
第2の実施例では、遮光性の部材からなるトレイ40の一部に貫通口40a、40b、40cを設け、貫通口40a、40b、40cを通して光をCD41に照射できる様に構成されている。遮光性の部材は、例えば、黒色の部材で構成することができる。トレイ40は、光源30と光学センサ18との間に設けられている。トレイ40は下側にある光源30からの光を、貫通口40a、40b、40cを通してCD41側に導くことが出来るものとする。
【0041】
本実施例では、3つの貫通口40a、40b、40cが形成されている。貫通口40aは、CD41がトレイ40に置かれたときに、内側の記録不可領域41aと記録可能領域41bとの境界に位置する。貫通口40bは、直径が8cmのCD41がトレイ40に置かれたときに、記録可能領域41bと外側の記録不可領域41cとの境界に位置する。貫通口40cは、直径が12cmのCD41がトレイ40に置かれたときに、記録可能領域41bと外側の記録不可領域41cとの境界に位置する。このように、貫通口40a、40b、40cは、トレイ40に置かれる被記録材の大きさ、より具体的には記録可能領域の大きさに応じて、複数形成されていることが好ましい。
【0042】
貫通口40a、40b、40cが形成されたトレイ40に代えて、一部または全部が光源30からの光を透過する透光部材からなるトレイ40を用いても良い。この場合、光学センサ18は透光部材を通り抜けた光の強度を検出する。
【0043】
また、トレイ40は、トレイ40の位置をキャリッジ2上に設けられた光学センサ18により検知するための被検出部42が設けられていても良い。被検出部42は、互いに直交する2つの端辺を有することが好ましい。また、被検出部42は、例えば、白色若しくは銀色からなるマーカであることが好ましい。
【0044】
トレイ40上のCD41のセット位置と被検出部42の位置とは所定の寸法公差内で製作される。したがって、被検出部42の位置を正確に検知できれば、CD41及びCD41の記録可能領域41bの位置も、記録する上で問題とならないような精度で検出できる。
【0045】
また、CD41の上方にはキャリッジ2が設けられている。キャリッジ2は、記録動作を行わないときには主走査方向Aの一端のホームポジションに位置し、記録時にはプリンタ本体の幅方向、すなわち矢印A方向(主走査方向)に往復動できるようになっている。キャリッジ2の下端には、記録ヘッド1と、被検出部42の位置及びCD41の記録可能領域41bを検出するための光学センサ18とが設けられている。この光学センサ18は、光の強度を検出し、強度変化によって物体の存在を検知するものである。光学センサ18は、発光素子と受光素子とを有している。発光素子としてはLED、受光素子としてはフォトトランジスタを用いることができる。具体的には、発光素子はトレイ40に向けて光を照射し、受光素子はトレイ40からの反射光を検出する。光学センサ18は、被検出部42と被検出部42以外のトレイ部分との反射光の強度差を感知して被検出部42の位置を検知することができる。さらに、光学センサ18は、第1の実施例と同様に、CD41の記録可能領域41b、内側の記録不可領域41aおよび外側の記録不可領域41cにおける透過光の強度差を感知してCD41の記録可能領域41bの位置や大きさを検知することもできる。
【0046】
記録ヘッド1と対向する位置には、記録時に被記録材を下側から支持するプラテン(不図示)が設けられている。また記録ヘッド1の上流側には搬送ローラ8とピンチローラ9が設けられ、記録ヘッド1の下流側には第一の排紙ローラ10と従動ローラ12及び第二の排紙ローラ11と従動ローラ13が設けられている。搬送手段としての搬送ローラ8は、LFモータ(不図示)を正転または逆転することにより、トレイ40をプリンタの前後方向、すなわち矢印C方向(副走査方向)Cに往復動させることができる。
【0047】
次に、CD41の記録可能領域41bに記録を行う手順について説明し、併せてCD41の記録可能領域41bの位置および大きさの検出方法についても説明する。尚、以下の説明ではプリンタの後方、即ちトレイ40を押し込む方向を+Y方向、その反対方向を−Y方向とし、キャリッジ2のホームポジション側を+X方向、その反対方向を−X方向とする。ここで+Y方向および−Y方向は被記録材の搬送方向、即ち副走査方向Cに対応し、+X方向および−X方向はキャリッジ2の走査方向、即ち主走査方向Aに対応する。
【0048】
(1)まず、トレイ40上にCD41を載せ、トレイ40をプリンタ本体に押し込む。この状態では、Y方向に関して被検出部42の中心付近と思われるところにキャリッジ2が通過できるようになっている。
【0049】
(2)ここで記録指示が行われると、キャリッジ2がホームポジションから被検出部42付近まで移動する。
【0050】
(3)キャリッジ2の移動後、トレイ40を−Y方向または+Y方向に移動させ、キャリッジ2に設けられた光学センサ18で被検出部42の基準となる第1の辺を検出する。この検出は、被検出部42と遮光性のトレイ40との反射光の強度変化により、その境界を求めることで行われる。
【0051】
(4)次に、キャリッジ2を−X方向または+X方向に移動させ、キャリッジ2に設けられた光学センサ18で、被検出部42の基準となる第1の端辺と直交する第2の端辺を検出する。この検出も、被検出部42と遮光性のトレイ40との反射光の強度差により、その境界を求めることで行われる。
【0052】
被検出部42の互いに直交する2つの端辺を検出することで、トレイ40の位置を特定することができる。被検出部42とトレイ40上のCD41の中心位置との間の位置関係は、トレイの設計上特定されているため、CD41の中心位置を算出することができる。
【0053】
(5)次に、CD41の記録可能領域41bの大きさを検出する。具体的には、CD41の記録可能領域41bのX方向(主走査方向)の大きさを検出するために、キャリッジ2がCD41の中心位置に来るようトレイ40を移動する。
【0054】
(6)次に、キャリッジ2を反ホームポジションから+X方向に移動しながら、キャリッジ2に設けられた光学センサ18でCD41の記録可能領域41bを探し始める。
【0055】
光学センサ18は、光源30から出射され、トレイ40の貫通口40cを通った透過光を検出する。これにより、CD41の記録可能領域41bと外側の記録不可領域41cとの境界を検出する。さらに光学センサ18は+X方向に移動して、トレイ40の貫通口40bからの透過光を検出しようとする。
【0056】
ここで、直径が12cmのCD41を用いた場合(図9参照)、貫通口40bはCD41によって塞がれているため、記録可能領域41bと外側の記録不可領域41cとの境界は検出されない。これに対し、直径が8cmのCDの場合には、貫通口40bを通して、記録可能領域41bと外側の記録不可領域41cとの境界が検出される。直径が12cmのCD41を用いた場合には、さらに光学センサ18は+X方向に移動してトレイ40の貫通口40aからの透過光を検出してCD41の記録可能領域41bと内側の記録不可領域41aとの境界を検出する。
【0057】
すでに、X方向及びY方向のCD41の中心位置も分かっているため、CD41の記録可能領域41bの大きさ(内径および外径)も分かる。これら情報に基づいて記録すべきデータが展開され、記録ヘッド1からインクを吐出して記録可能領域41bに記録を行う。このように、被検出部42を用いて、CD41の中心位置を特定した後に、当該中心位置を通る直線上を光学センサ18で走査して、記録可能領域41bの境界を検出することで記録可能領域41bの大きさを特定できる。なお、トレイ40の主走査方向Aの大きさと副走査方向Cの大きさとは、どちらを先に検出しても良い。
【0058】
本発明によれば、光学センサ18が、記録可能領域41bの境界における透過光の強度差を測定することにより、記録可能領域41bの大きさを直接検出することができる。従って、本発明では自動的に記録可能領域41bの位置および大きさを特定することができる。また、記録可能領域41bが、白色の光沢タイプだとしても、記録不可領域41a,41cを透過する光は当該白色部分に影響されることがないため、より正確に記録可能領域41bの境界を検出することができる。
【0059】
この光学センサ18は、被記録材上におけるインク滴の付着位置を調整するための調整値(いわゆる、レジ調のためのレジ調整値)を求めるレジ調整機能を兼ねていても良い。この場合、光学センサ18の発光素子から出射され被記録材で反射した光を受光素子で受光する。このように、少なくとも受光素子が、レジ調整機能と板状の被記録材の記録可能領域41bの検出機能とを兼用することで、プリンタが簡易な構成となる。
【符号の説明】
【0060】
18 光学センサ
30 光源
40 トレイ
41 CD
41a 記録不可領域
41b 記録可能領域
41c 記録不可領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録可能領域と、光透過率が該記録可能領域とは異なる記録不可領域と、を有する板状の被記録材の前記記録可能領域を検出し、前記記録可能領域に記録を行う記録装置であって、
前記被記録材に光を照射する光源と、前記光源から出射され前記被記録材を透過した光の強度を検出する光学センサを備え、前記光学センサの検出に基づいて前記記録可能領域が特定されることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記光学センサが設けられ、主走査方向に往復移動可能に構成されたキャリッジと、前記被記録材を前記主走査方向と交差する副走査方向に搬送する搬送手段と、を有し、
前記光学センサと前記被記録材とを相対的に移動させつつ、前記光源からの光を前記被記録材に照射し、前記光学センサによって前記記録可能領域と前記記録不可領域とを透過した光の強度差を検出するように構成されている、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記被記録材を搭載するトレイを備え、
前記トレイは、一面に照射された前記光源からの光を前記トレイ上の前記被記録材に向けて出射する導光体によって構成されている、請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記光源と前記光学センサとの間に設けられ、前記被記録材を搭載するトレイを備え、前記トレイは貫通口を有する遮光性の部材からなり、前記光学センサは前記貫通口を通り抜けた光の強度を検出する、請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記光源と前記光学センサとの間に設けられ、前記被記録材を搭載するトレイを備え、前記トレイの一部または全部が前記光源からの光を透過する透光部材からなり、前記光学センサは前記透光部材を通り抜けた光の強度を検出する、請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項6】
前記光学センサは、前記トレイに向けて光を出射する発光素子をさらに備え、
前記トレイは、前記発光素子からの光を反射する被検出部を有しており、
前記光学センサによって前記被検出部の位置を検出することにより前記トレイに設置された前記被記録材の位置が算出される、請求項4または5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記被検出部は互いに直交する2つの端辺を有し、前記直交する2つの端辺を検出することによって、前記トレイに設置された前記被記録材の中心位置が算出される、請求項6に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−255506(P2011−255506A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129068(P2010−129068)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】