説明

記録装置

【課題】適切なキャッピングを実行する。
【解決手段】プリンタ1は、ヘッド2,3と、ヘッド2,3に設けられたリップ部材72,73を有する第1キャッピング機構70と、板状部材82,83を有する第2キャッピング機構80と、これらを制御する制御部100とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に液体を吐出する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録ヘッドの周囲に設けられ、支持面(無端ベルト)と当接することで記録ヘッドの吐出面をキャッピングするキャップ部材を含むインクジェット記録装置について記載されている。
【0003】
特許文献2には、記録ヘッドの吐出面と支持面(無端ベルト)とを離隔させ、この間に移動させるとともに吐出面と当接させることによって当該吐出面をキャッピングするキャップを含むインクジェット記録装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−85959号公報
【特許文献2】特開平09−109403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1は支持面を用いて吐出面をキャッピングするキャップ部材だけを、上記特許文献2は支持面を用いず吐出面をキャッピングするキャップだけを、それぞれ有しており、2つのキャッピングのうちのいずれかを選択できない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、適切なキャッピングに切り換えることが可能な記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の記録装置は、液体を吐出する吐出口が形成された吐出面を有する少なくとも1つの液体吐出ヘッドと、記録媒体を支持する支持面を有し、前記支持面に支持された記録媒体が吐出面と対向する位置を通過するように記録媒体を搬送する搬送機構と、前記液体吐出ヘッドの吐出面を取り囲むように前記液体吐出ヘッドの周囲に配設された環状のリップ部材を有し、前記リップ部材の下端を前記支持面に当接させることにより前記吐出面が前記支持面及び前記リップ部材によって覆われる第1キャッピングを行う第1キャッピング機構と、前記吐出面に対向する対向位置と前記吐出面に対向しない退避位置とを選択的に取り得る移動部材を有し、前記対向位置にある少なくとも前記移動部材によって前記吐出面が覆われる第2キャッピングを行う第2キャッピング機構と、前記搬送機構、前記第1キャッピング機構及び前記第2キャッピング機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1キャッピングと前記第2キャッピングのいずれか一方を選択的に実行するものである。
【0008】
これによると、第1キャッピングと第2キャッピングのいずれか一方を選択的に実行することが可能となる。
【0009】
また、本発明において、前記制御部は、前記第1キャッピングを実行する場合は前記液体吐出ヘッドと前記搬送機構とが前記印刷可能状態を取るように、前記移動機構を制御し、前記第2キャッピングを実行する場合は前記液体吐出ヘッドと前記搬送機構とが前記離隔状態をとるように前記移動機構を制御することが好ましい。これにより、動作状況(液体吐出ヘッドからの液体吐出の状況やユーザによるモード設定など)に応じて、適切なキャッピングを実行することが可能となる。したがって、前記制御部は、動作状況に応じて、前記第1キャッピング及び前記第2キャッピングのいずれかを実行するものであると考えることができる。
【0010】
本発明においては、前記第2キャッピングにおいて前記吐出面が覆われて形成される空間の密閉の度合いは、前記第1キャッピングにおいて前記吐出面が覆われて形成される空間の密閉の度合いよりも高いものであることが望ましい。これは、第1キャッピングは支持面を用いるため、第2キャッピングよりも吐出口近傍の液体の保存性能が低いからである。
また制御部は、前記液体吐出ヘッドによる記録媒体に対する液体吐出が予め決められた期間以上行われない可能性があるか否かを判定する判定部をさらに備え、前記液体吐出ヘッドによる記録媒体に対する液体吐出が所定時間以上行われない可能性があると前記判定部が判定した場合に、前記第2キャッピングを実行することが好ましい。液体吐出ヘッドによる記録媒体に対する液体吐出が予め決められた期間以上行われない場合であっても、吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明において、記録装置は、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体貯留部と、前記液体貯留部に貯留された液体が予め定められた量以下であることを検知する液体検知部とをさらに備えており、前記制御部は、前記液体貯留部に貯留された液体が前記予め定められた量以下であると前記液体検知部が検知した場合に、前記第2キャッピングを実行するものであることが好ましい。これにより、液体貯留部に液体が充填又は液体貯留部が交換されるまでの間、吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0012】
また、本発明において、記録装置は、記録媒体を収容する記録媒体収容部と、前記記録媒体収容部に収容された記録媒体の有無を検知する記録媒体検知部とをさらに備えており、
前記制御部は、前記記録媒体収容部に記録媒体が無いと前記記録媒体検知部が検知した場合に、前記第2キャッピングを実行するものであることが好ましい。これにより、記録媒体収容部に記録媒体が収容されるまでの間、吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明において、記録装置は、記録媒体を収容し、装置本体に対して着脱可能な記録媒体収容部と、前記記録媒体収容部から前記搬送機構に記録媒体を供給可能な供給位置に前記記録媒体収容部が配置されているか否かを検知する装着検知部とをさらに備えており、前記制御部は、前記供給位置に前記記録媒体収容部が配置されていないと前記装着検知部が検知した場合に、前記第2キャッピングを実行するものであることが好ましい。これにより、記録媒体収容部が供給位置に配置されるまでの間、吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0014】
また、本発明において、記録装置は、前記搬送機構における記録媒体の搬送異常の発生を検知する搬送異常検知部をさらに備えており、前記制御部は、前記搬送異常検知部が搬送異常の発生を検知した場合に、前記第2キャッピングを実行するものであることが好ましい。これにより、搬送異常の回復処理が行われるまでの間、吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0015】
また、本発明において、前記制御部は、前記記録装置を、画像を記録している状態よりも前記記録装置に供給される電流が小さい状態である省電力状態に移行させる省電力移行部を含み、前記制御部は、前記省電力移行部が、前記記録装置を省電力状態に移行させた場合に、前記第2キャッピングを実行するものであることが好ましい。これによりユーザが電源ボタンを押下したことにより装置の電源がOFF状態にされている間や、保守・メンテナンスなどで装置の電源がOFF状態にされている間、装置の消費電力が抑制されている間、吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0016】
また、本発明において、前記制御部は、液体を前記吐出口のメンテナンスのために吐出させる第1吐出モード及び前記第1吐出モードよりも少ない量の液体を前記吐出口のメンテナンスのために吐出させる第2吐出モードを選択的に設定する第1モード設定部をさらに備えており、前記制御部は、前記第1モード設定部により前記第1吐出モードが設定されている場合は前記第1キャッピングを実行し、前記第1モード設定部により前記第2吐出モードが設定されている場合は前記第2キャッピングを実行するものであることが好ましい。ここで、第1キャッピングは支持面を用いるため、第2キャッピングよりも吐出口近傍の液体の保存性能が低い場合がある。これにより、メンテナンスのために消費される液体量が第1吐出モードよりも少ない第2吐出モードがユーザによって設定されていても、第2キャッピングが行われるため、吐出口の液体の乾燥を効果的に抑制することができる。
【0017】
また、本発明において、前記制御部は、前記吐出口から液体を予備的に吐出するように前記液体吐出ヘッドを制御する予備吐出制御部を含み、前記予備吐出制御部は、前記第1モード設定部により前記第2吐出モードが設定されている場合は、前記第1吐出モードが設定されている場合よりも少ない量の液体を前記吐出口から予備的に吐出させるものであることが好ましい。これにより、設定されたモードに応じて、吐出口を効果的に回復させることができる。
【0018】
また、本発明において、前記制御部は、前記液体吐出ヘッドから強制的に液体を排出させるパージ実行部を含み、前記パージ実行部は、前記第1モード設定部により前記第2吐出モードが設定されている場合は、前記第1吐出モードが設定されている場合よりも少ない量の液体を前記吐出口から強制的に排出させるものであることが好ましい。これにより、設定されたモードに応じて、吐出口を効果的に回復させることができる。
【0019】
また、本発明において、前記制御部は、第1記録モード、及び、前記制御部が印刷データを受信してから記録媒体に対して液体を吐出するまでの期間が前記第1記録モードよりも短い第2記録モードを選択的に設定する第2モード設定部をさらに備えており、前記制御部は、前記第2モード設定部に前記第1記録モードが設定されている場合は前記第2キャッピングを実行し、前記第2記録モードが設定されている場合は前記第1キャッピングを実行することが好ましい。ここで、第1キャッピングは支持面を用いるため、第2キャッピングよりも吐出口近傍の液体の保存性能が低い場合がある。また、第2キャッピングは、移動機構及び第2キャッピング機構を制御する必要があるため、第1キャッピングよりもキャップ状態から記録可能状態となるまでの時間が長い場合がある。これにより、設定された記録モードに応じて、第1及び第2キャッピングを行うことが可能となる。第1記録モードが設定されている場合には、吐出口近傍の液体の保存性能が良く、第2記録モードが設定されている場合には、印刷データを受信してから記録媒体に対して液体を吐出するまでの時間が短い。
【0020】
また、本発明において、前記制御部は、記録媒体に対する画像記録にかかる液体吐出が終了した場合に前記第1キャッピングを実行し、さらに、記録媒体に対する画像記録にかかる液体吐出が終了してから予め定められた期間を越えても次の画像記録を行わない場合に、前記第1キャッピングを解除して前記第2キャッピングを実行することが好ましい。これにより、予め定められた期間内に次の液体吐出が行われる場合は第1キャッピングが行われるため、記録までの時間を短くすることができ、次の液体吐出が予め定められた期間を超える場合は第2キャッピングが実行されるため、吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0021】
また、本発明において、前記少なくとも1つの液体吐出ヘッドは複数備えられており、複数の前記液体吐出ヘッドのうちの一部の前記液体吐出ヘッドだけを用いて記録媒体に画像を記録する第3記録モードを設定する第3モード設定部をさらに備え、前記制御部は、前記第3モード設定部により前記第3記録モードが設定されている間は、前記複数の液体吐出ヘッドのうちの前記一部の前記液体吐出ヘッド以外の前記液体吐出ヘッドに対して前記第2キャッピングを実行することが好ましい。第1キャッピングは、吐出面と支持面との間に形成される記録媒体の搬送経路をリップ部材により塞ぐため、一部の液体吐出ヘッドだけを用いて記録媒体に画像を記録する場合に、当該一部の液体吐出ヘッド以外の液体吐出ヘッドに対して第1キャッピングができない。当該一部の液体吐出ヘッド以外の液体吐出ヘッドに対して第2キャッピングが実行されるため、当該液体吐出ヘッドの吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0022】
また、本発明において、前記制御部は、前記第3モード設定部により前記第3記録モードが設定されている場合は、前記一部の前記液体吐出ヘッドに対して前記第1キャッピングを実行することが好ましい。これにより、第2キャッピングは、移動機構及び第2キャッピング機構を制御する必要があるため、第1キャッピングよりもキャップ状態から記録可能状態となるまでの時間が長い場合があるが、キャップの実行の指令を受信した場合に、記録媒体に対する画像の記録に用いられる一部の液体吐出ヘッドには、第1キャッピングが実行されるため、記録までの時間を短くしつつ当該液体吐出ヘッドの吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0023】
また、本発明において、前記複数の前記液体吐出ヘッドのそれぞれに液体を供給する複数の液体貯留部と、前記複数の液体貯留部のそれぞれに貯留された液体が予め定められた量以下であることを検知する液体検知部(91)とをさらに備えており、前記第3モード設定部は、前記複数の液体貯留部に貯留された液体が前記予め定められた量以下であると前記液体検知部が検知されていない前記液体貯留部に対応する少なくとも1つの前記液体吐出ヘッドだけを用いて記録媒体に画像を記録することを第3モードとして設定するものであることが好ましい。これにより、液体量が予め定められた量以下である一部の液体貯留部に対応する液体吐出ヘッド以外の液体吐出ヘッドを用いて画像を記録することができる。さらに、液体貯留部に液体が充填又は液体貯留部が交換されるまでの間、当該液体貯留部に対応する液体吐出ヘッドについて、吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0024】
また、本発明において、前記制御部が前記第1キャッピングを解除した後及び前記第2キャッピングを解除した後に、前記吐出口から液体を予備的に吐出させる予備吐出制御部をさらに備え、前記予備吐出制御部は、前記制御部が前記第2キャッピングを解除した場合は、前記制御部が前記第1キャッピングを解除した場合よりも少ない量の液体を前記吐出口から予備的に吐出させることが好ましい。これにより、第2キャッピング解除後の予備吐出において使用される液体の量を少なくすることができる。
【0025】
また、本発明において、前記リップ部材は、前記第2キャッピング機構の一部を構成しており、前記第2キャッピング機構は、前記対向位置にある前記移動部材及び前記リップ部材により前記吐出面が覆われる第2キャッピングを行うことが好ましい。これにより、第1及び第2キャッピング機構の一部を兼用することが可能となって、第2キャッピング機構の構成が簡易になる。
また、本発明において、記録装置は、前記リップ部材を前記液体吐出ヘッドに対して相対的に移動させるリップ部材駆動機構をさらに備え、前記第2キャッピング機構は、前記移動部材を前記吐出面に対向する対向位置と前記吐出面に対向しない退避位置とに選択的に移動させる移動部材駆動機構を含むものであり、前記制御部は、前記第1キャッピングから、記録媒体に対して前記液体吐出ヘッドから液体を吐出可能な液体吐出可能状態とする場合は、前記リップ部材駆動機構を制御するものであり、前記制御部は、前記第2キャッピングから前記液体吐出可能状態とする場合は、前記リップ部材駆動機構、前記移動部材駆動機構及び前記移動機構を制御するものであり、前記第1キャッピングから前記液体吐出可能状態となるまでの期間は、前記第2キャッピングから前記液体吐出可能状態となるまでの期間よりも短いことが望ましい。これにより、液体吐出ヘッドの液体の保存性能の低下を犠牲にし、スループットの改善を優先させる場合は第1キャッピングを選択し、スループットの低下を許容し、液体吐出ヘッドの液体の保存性能の改善を優先させる場合は第2キャッピングを選択することが可能となる。
また、本発明において、前記第2キャッピングは、前記リップ部材の下端が前記吐出面に対向する対向位置にある移動部材に当接することにより、前記吐出面が前記リップ部材及び前記移動部材に覆われるものであり、
前記第1キャッピングから前記液体吐出可能状態となるまでに前記リップ部材駆動機構によって移動させられる前記リップ部材の移動量は、前記第2キャッピングから前記液体吐出可能状態となるまでに前記リップ部材駆動機構によって移動させられる前記リップ部材の移動量よりも小さいことが望ましい。これにより、第1キャッピングから液体吐出可能状態となるまでの期間を、第2キャッピングから液体吐出可能状態となるまでの期間よりも短いものとすることが可能となる。
【0026】
また、本発明において、制御部は、時間を計る時計部と、前記時計部により計測された時間に基づいて、記録指令を受信した時間を記憶する記憶部と、分割された複数の時間帯のそれぞれにおいて、前記印刷データを受信した回数をカウントするカウント部とをさらに備えている。そして、前記制御部は、前記複数の時間帯のうちの前記カウント部がカウントした回数が予め定められた回数以下である前記時間帯は、前記第2キャッピングを実行し、これ以外の前記時間帯は、前記第1キャッピングを実行することが好ましい。ここで、第1キャッピングは支持面を用いるため、第2キャッピングよりも吐出口近傍の液体の保存性能が低い場合がある。また、第2キャッピングは、移動機構及び第2キャッピング機構を制御する必要があるため、第1キャッピングよりもキャップ状態から記録可能状態となるまでの時間が長い場合がある。これにより、印刷データを受信する頻度の高い高吐出時間帯においては、記録までの時間を短くすることができ、印刷データを受信する頻度の低い時間帯においては、吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0027】
また、本発明において、前記液体吐出ヘッドに液体を導入する初期導入の有無を検知する初期導入検知部をさらに備えている。そして、前記制御部は、少なくとも前記初期導入検知部が前記初期導入を検知するまで、前記第2キャッピングを実行することが好ましい。ここで、第1キャッピングは支持面を用いるため、第2キャッピングよりも吐出口近傍の液体の保存性能が低い場合がある。これにより、液体吐出ヘッドに液体が初期導入されるまで、吐出口近傍の液体の乾燥又は吐出口から液体吐出ヘッド内の液体の漏れを抑制することができる。
【0028】
また、本発明において、前記液体吐出ヘッドから液体が吐出されることによって画像が記録された記録媒体の表裏を反転させつつ、当該記録媒体を前記搬送機構に再送する再送機構をさらに備えている。そして、前記キャップ実行部は、記録媒体が前記再送機構に案内されてから当該記録媒体が前記再送機構により前記搬送機構に再送されるまでの間は、前記第1キャッピングを実行することが好ましい。これにより、表面に画像が記録された記録媒体が再送される間も第1キャッピングが行われるので、スループットの低下を抑制しつつ吐出口近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の記録装置によると、第1キャッピングと第2キャッピングのいずれか一方を選択的に実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略側面図である。
【図2】図1に示すヘッド及び搬送ユニットの概略平面図である。
【図3】第1キャッピング及び第2キャッピングの状況を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態による制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図5】プリンタの制御部が実行する印刷動作の内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態によるプリンタの制御部が実行する印刷動作の内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3実施形態による制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第4実施形態によるプリンタの制御部が実行する印刷動作の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
先ず、図1及び図2を参照し、本発明に係る記録装置の第1実施形態としてのインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
【0033】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部4が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分されている。空間Aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド2(以下、ヘッド2と称する)、各インクの色素成分を凝集又は析出させるプレコート液を吐出するプレコートヘッド3(以下、ヘッド3と称する)、搬送ユニット(搬送機構)40及び再送ユニット(再送機構)60が配置されている。また、空間Aには、各ヘッド2,3をそれぞれキャッピングする第1及び第2キャッピング機構70,80が設けられている。空間Bには、給紙ユニット23が配置されている。空間Cには、プレコート液を貯留するプレコート液用のタンク(液体貯留部)21及びインクを貯留する4つのインク用のタンク(液体貯留部)22が筐体1aに着脱可能に配置されている。さらに、インクジェットプリンタ1には、これらの動作を制御する制御部100が含まれている。
【0034】
4つのタンク22には、マゼンタ、シアン、イエロー、及びブラックのインクが貯留されており、対応するヘッド2にチューブ(不図示)を介してインクが供給される。同様に、タンク21にはプレコート液が貯留されており、ヘッド3にチューブを介してプレコート液が供給される。また、一般的に顔料インクに対しては顔料色素を凝集させるプレコート液が使用され、染料インクに対しては染料色素を析出させるプレコート液が使用される。プレコート液の材料は、カチオン系高分子やマグネシウム塩等の多価金属塩を含有する液体等、適宜に選択可能である。用紙Pにおいて、かかるプレコート液があらかじめ塗布された領域にインクが着弾すると、多価金属塩等がインクの着色剤である染料又は顔料に作用して、不溶性又は難溶性の金属複合体等が凝集又は析出により形成される。また、筐体1aには、これら5つのタンク21,22の液体量をそれぞれ検知する5つのセンサ(液体検知部)91が設けられている(図4参照)。各センサ91は、対応するタンク21,22内の液体量が所定量以下であると、制御部100に検知信号を出力する。ここでいう所定量とは、タンク21,22を新しいタンク21,22に交換する又は当該タンク21,22に液体を充填する必要がある量であり、例えば、0mlに設定される。
【0035】
なお、これらヘッド2,3のそれぞれと、対応するタンク21,22のそれぞれとを繋ぐチューブの途中部位には、ポンプ(図4参照)20がそれぞれ設けられている。これらポンプ20は制御部100によって駆動されることで、タンク21,22からヘッド2,3にインク及びプレコート液(液体)を送る。また、これらポンプ20には、ポンプ20が駆動されていないときに連通路が構成され、ヘッド2,3とタンク21,22とのそれぞれがチューブ及び連通路によって連通する。
【0036】
4つのヘッド2及びヘッド3は同一構造を有しており、図2に示すように、それぞれ主走査方向に沿って延在し、副走査方向には互いに平行かつ等間隔に配置されている。ヘッド3は、4つのヘッド2の搬送方向Dに関する上流側に配置されている。4つのヘッド2のうち、ブラックインクを吐出するブラック用ヘッド2が搬送方向Dに関して最も上流に配置されている。各ヘッド2及びヘッド3の下面(搬送ベルト43と対向する面)は、図2に示すように、複数の吐出口2b,3bが配列された吐出面2a,3aとなっている。すなわち、プリンタ1は、インク滴が吐出される複数の吐出口2bが主走査方向に配列されたライン式のカラーインクジェットプリンタである。ここで、副走査方向とは、搬送ユニット40による用紙Pの搬送方向Dに平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する直交方向である。
【0037】
インクジェットプリンタ1の内部には、給紙ユニット23から排紙部4に向けて図1に示す太矢印に沿って用紙Pが搬送される用紙搬送経路と、当該用紙搬送経路に沿って搬送された用紙Pが図1に示す白抜き矢印に沿って搬送される用紙再送経路とが形成されている。
【0038】
給紙ユニット23は、筐体1aに対して着脱可能に配置された給紙カセット(記録媒体収容部)24と、給紙ローラ25とを有している。給紙カセット24は、上方に向かって開口した箱形状を有しており、複数枚の用紙Pが積層された状態で収納される。給紙ローラ25は、制御部100の制御によって給紙カセット24の最も上方にある用紙Pを送り出す。また、筐体1aには、給紙カセット24内に用紙Pがあるか否かを検知するセンサ(記録媒体検知部)92が設けられている(図4参照)。このセンサ92は、給紙カセット24内に用紙Pが無い場合に、用紙Pが無いことを示す検知信号を制御部100に出力する。さらに、筐体1aには、給紙カセット24が供給位置に配置されているか否かを検知するセンサ(装着検知部)93が設けられている(図4参照)。給紙カセット24は、通常、図1に示すように、給紙カセット24から用紙Pを搬送ユニット40に向けて供給可能な供給位置に配置されている。そして、センサ93は、給紙カセット24が供給位置に配置されていないと、給紙カセット24が供給位置に配置されていないことを示す検知信号を制御部100に出力する。なお、給紙カセット24が供給位置に配置されていない場合とは、給紙カセット24が筐体1aから抜き取られた状態や、給紙カセット24を筐体1aに対して挿入している最中や、給紙カセット24を筐体1aから抜き取っている最中である。
【0039】
搬送ユニット40の図1中左方には、給紙カセット24から搬送ユニット40に向かって湾曲しながら延在する搬送ガイド31a,31bと、両搬送ガイド31a,31b間に配置された一対の送りローラ32が設けられている。そして、送りローラ32が制御部100の制御によって、給紙ユニット23から送り出され搬送ガイド31aを通ってきた用紙Pを、搬送ガイド31bを通しつつ搬送ユニット40へと搬送する。
【0040】
搬送ユニット40は、図1及び図2に示すように、ベルトローラ41,42、両ローラ41,42間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト43、搬送ベルト43の外側に配置されたニップローラ47及び剥離プレート45、搬送ベルト43の内側に配置された吸着プラテン46等を有する。ベルトローラ42は、駆動ローラであって制御部100によって駆動されて、図1中時計回りに回転する。搬送ベルトの表面44(支持面)は、吐出面2a、3aと対向して配置されている。搬送ベルト43は、ベルトローラ42の回転に伴い、搬送ベルト43の表面44のうちのヘッド2、3と対向する部分が搬送方向Dに移動するように走行する。ベルトローラ41は、従動ローラであって、搬送ベルト43が走行するのに伴って、図1中時計回りに回転する。
【0041】
搬送ベルト43は、例えば、ポリイミド又はフッ素樹脂からなり、10〜1014Ωcm程度の体積抵抗率及び可撓性を有しているが、同様の体積抵抗率及び可撓性を有することが可能であれば、どのような材質であってもよい。搬送ベルト43の表面44は、概ね平滑に形成されている。ここで、搬送ベルト43の体積抵抗率が10〜1014Ωcm程度であり、表面44が平滑であるのは、用紙Pを表面44に吸着させて搬送するのに適しているからである。つまり、搬送ベルト43は、用紙Pを静電気によって表面44に吸着させて搬送するのに適するような材質や形状に形成されている。
【0042】
吸着プラテン46は、搬送方向Dに沿って長尺な複数の長尺部が主走査方向に沿って交互に配置された一対の櫛歯電極(不図示)を有しており、これら電極に電圧が印加されることで搬送ベルト43の表面44に用紙Pを吸着する装置である。吸着プラテン46に電圧を印加する電源(不図示)は、制御部100により制御される。
【0043】
ニップローラ47は、ベルトローラ41と対向する位置に配置されており、給紙ユニット23から送り出された用紙Pを表面44に押さえ付ける。ニップローラ47は、バネなどの弾性部材によって表面44に対して付勢されている。また、ニップローラ47は、従動ローラであり、搬送ベルト43の走行に伴って回転する。また、ニップローラ47とヘッド3との間には、用紙センサ26が設けられている。この用紙センサ26は、ニップローラ47によって押さえられた用紙Pを検知し、その検知信号を制御部100に出力する。
【0044】
この構成において、制御部100の制御により、ベルトローラ42を図1中時計回りに回転させることによって、搬送ベルト43が走行する。このとき、搬送ベルト43の走行に伴ってベルトローラ41及びニップローラ47も回転する。また、このとき、制御部100の制御により、吸着プラテン46の一対の櫛歯電極に互いに異なる電位が印加されると、搬送ベルト43の用紙Pと対向する部分に正又は負の電荷が生じ、用紙Pの搬送ベルト43と対向する面に先の電荷とは極性の異なる電荷が誘起され、これら電荷同士が引き合うことで用紙Pが搬送ベルト43の表面44に吸着される。こうして、給紙ユニット23から送り出された用紙Pは、搬送ベルト43の表面44に支持されつつ、吐出面2a,3aと対向する位置を通過するように搬送方向Dに搬送される。
【0045】
さらに、このとき、搬送ベルト43の表面44に支持されつつ搬送される用紙Pがヘッド2,3の吐出面2a,3aと対向する位置を通過する際に、制御部100が各ヘッド2,3を制御し、用紙Pに向けてプレコート液及び各色のインクを吐出する。プレコート液は、用紙P上において画像が記録される領域にプレコート液が塗布されるように、ヘッド3から吐出される。各色のインクは、用紙Pのプレコート液が塗布された領域に塗布されるように、各ヘッド2から吐出される。こうして、用紙P上に所望のカラー画像が記録される。このとき、用紙P上に塗布されたプレコート液上にインク滴が着弾すると、プレコート液がインク滴の色素成分を凝集又は析出させるため、用紙Pにおけるインク滲みが防止される。剥離プレート45は、ベルトローラ42に対向配置され、用紙Pを表面44から剥離し、さらに搬送方向Dの下流側へと導く。
【0046】
図1に示すように、ヘッド2の右方には、再送ユニット60の一部を構成する、搬送ガイド33a,33bと二対の送りローラ34,35とが設けられている。搬送ガイド33a,33bは、搬送ユニット40から排紙部4に向かって湾曲しながら延在する。なお、各対の送りローラ34,35は、制御部100によって制御される。また、一対の送りローラ34近傍には、用紙センサ27が設けられている。この用紙センサ27は搬送ユニット40から搬送されてきた用紙Pを検知し、その検知信号を制御部100に出力する。
【0047】
この構成において、制御部100の制御により、各対の送りローラ34,35が所定方向に回転することによって、搬送ユニット40から搬送された用紙Pが搬送ガイド33a,33bを通されて図1中上方に送られ、その後、排紙部4に排紙される。一方、用紙Pを排紙部4に排紙せずに用紙Pの裏面(表面に画像が記録された用紙Pの裏面)に画像を記録する場合、制御部100の制御により、用紙Pの後端が一対の送りローラ35に挟持された状態で、各対の送りローラ34,35が所定方向とは逆方向に回転することによって用紙Pを逆方向(図1中下方)に搬送させる。
【0048】
再送ユニット60は、図1に示すように、上述の搬送ガイド33a,33b及び二対の送りローラ34,35に加えて、三対の送りローラ61〜63と、搬送ガイド64〜67とを有している。搬送ガイド64は、送りローラ34と送りローラ61との間に配置され、逆方向に搬送された用紙Pをガイドする。搬送ガイド65は、送りローラ61,62間に配置され、逆方向に搬送された用紙Pをガイドする。搬送ガイド66は、送りローラ62,63間に配置され、逆方向に搬送された用紙Pをガイドする。搬送ガイド67は、送りローラ63と送りローラ32との間に配置され、搬送ガイド31aと合流する。なお、各対の送りローラ61〜63も制御部100によって制御される。また、一対の送りローラ63の近傍には、用紙センサ28が設けられている。用紙センサ28は、再送ユニット60によって搬送されてきた用紙Pを検知し、その検知信号を制御部100に出力する。
【0049】
この構成において、制御部100の制御により、各対の送りローラ61〜63が回転することによって、排紙部4側から逆方向に搬送されてきた用紙Pが搬送ガイド64〜67を通されて一対の送りローラ32に向かって搬送される。そして、制御部100の制御により、一対の送りローラ32が回転することによって用紙Pが搬送ユニット40の搬送方向Dの上流に搬送される。再送ユニット60を経由して搬送される用紙Pは、給紙ユニット23から送り出されたときとはその表裏が反転した状態で搬送ユニット40に搬送される。
【0050】
また、プリンタ1には、5つのヘッド2,3を昇降させるヘッド昇降機構95(移動機構、図4参照)が設けられている。ヘッド昇降機構95は、各ヘッド2,3を選択的に鉛直方向に沿って昇降可能に構成されており、制御部100によって制御される。また、ヘッド昇降機構95は、印刷位置(図1参照)と、離隔位置(図3(b)参照)との間において、これらヘッド2,3を昇降させる。印刷位置は、各ヘッド2,3から用紙Pにプレコート液及びインクを吐出して画像を記録することが可能な状態(記録可能状態)の搬送ベルト43に対する各ヘッド2、3の位置である。記録可能状態とは、吐出面2a、3aと表面44とが所定距離を隔てて対向する状態である。ここで、所定距離とは、用紙Pの印刷面が吐出面2a、3aと接触せず、しかも、液体の正確な着弾位置が確保できる距離であり、画像の記録を行うのに適した距離である。一方、離隔位置は、吐出面2a、3aと表面44との間の距離が所定距離よりも離れた状態(離隔状態)の搬送ベルト43に対する各ヘッド2、3の位置である。また、ヘッド昇降機構95によって離隔位置に移動したヘッド2,3と、搬送ユニット40との間には、後述の板状部材82,83を配置することが可能な空間が形成される。これにより、通常、この空間に対して副走査方向にずれて待機している板状部材82,83を、当該空間に配置してヘッド2,3の吐出面2a,3aと対向させることが可能となる。
【0051】
第1キャッピング機構70は、図1及び図2に示すように、各ヘッド2に設けられた4つのリップ部材72と、ヘッド3に設けられたリップ部材73と、これらリップ部材72,73を移動させる第1移動機構75(リップ部材駆動機構、図4参照)とを有している。リップ部材72,73はいずれも同様な構成を有しており、ヘッド2,3のそれぞれの周囲を取り囲む。そして、リップ部材72,73は内周面上端付近でのみ、対応するヘッド2,3の外周側面と当接している。また、リップ部材72,73の下端部はゴムなどの弾性部材から形成されている。第1移動機構75は、5つのリップ部材72,73を選択的に鉛直方向に沿ってスライド可能に構成されており、制御部100によって制御される。また、第1移動機構75は、第1退避位置と、第1当接位置と、第2当接位置との間において、これらリップ部材72、73を昇降させる。なお、第1退避位置、第1当接位置及び第2当接位置は、いずれも、リップ部材72、73のヘッド2、3に対する相対的な位置を意味する。第1退避位置は、図1、図3(b)、(c)に示すように、リップ部材72、73の下端が表面44及び板状部材72、73から離隔する、リップ部材72、73の位置である。第1当接位置は、図3(a)に示すように、リップ部材72、73の下端が表面44に当接する、リップ部材72、73の位置である。第2当接位置は、図3(d)に示すように、リップ部材72、73の下端が板状部材82、83に当接する、リップ部材72、73の位置である。
【0052】
この構成において、ヘッド2,3が印刷位置に配置された状態において、制御部100の制御により第1移動機構75が駆動され、リップ部材72,73が第1退避位置からリ第1当接位置に移動する。なお、第1退避位置は、吐出面2a,3aがリップ部材72,73及び表面44によって覆われない位置である。一方、第1当接位置は、図3(a)に示すように、吐出面2a,3aがリップ部材72,73及び表面44によって覆われる位置であり、リップ部材72、73が第1退避位置からヘッド2、3に対して相対的に移動量D1だけ下方に移動することにより、リップ部材72、73の下端が表面44に当接する位置をいう。このとき、リップ部材72,73の上端と各ヘッド2,3の外周側面とが当接しているので、吐出面2a,3a、搬送ベルト43の表面44及びリップ部材72,73によって囲まれた空間(吐出口2b,3bと通じる外部空間)が密閉空間となる。これら5つの吐出面2a,3aは、リップ部材72,73及び搬送ベルト43の表面44によって覆われ(第1キャッピングされ)ることにより、密閉されているため、ヘッド2,3の吐出口2b,3b近傍の液体の増粘を抑制することが可能となる。一方、制御部100の制御により、第1移動機構75が駆動され、リップ部材72,73が第1当接位置から第1退避位置に移動する。こうして、第1キャッピングが解除される。なお、第1移動機構75は制御部100の制御によって、5つのリップ部材72,73を選択的に第1退避位置及び第1当接位置のいずれかに配置させることが可能である。なお、吐出面2a、3aが、搬送ベルト43の表面44及びリップ部材72、73に覆われ、これらに囲まれた空間が密閉空間となる状態を第1キャッピング状態である、または第1キャッピング状態が実現されていると表現する。
【0053】
第2キャッピング機構80は、図1及び図2に示すように、第1キャッピング機構70を構成するリップ部材72、73及び第1移動機構75に加えて、さらに、各ヘッド2の図中左方に配置された4つの板状部材(移動部材)82と、ヘッド3の図中左方に配置された板状部材83と、これら板状部材82,83を移動させる第2移動機構85(移動部材駆動機構、図4参照)とを有している。板状部材82,83はいずれも同様な構成を有している。板状部材82、83の上面は平滑に形成され、かつ、各吐出面2a,3aより一回り大きな平面形状を有している。板状部材82、83は、金属板やガラス板により形成される。ここで、金属板やガラス板のガスバリア性は、搬送ベルト43よりも高い。第2移動機構85は、5つの板状部材82,83を選択的に副走査方向に沿ってスライド可能に構成されており、制御部100によって制御される。また、第2移動機構85は、第2退避位置と、対向位置との間において、これら板状部材82、83を移動させる。第2退避位置は、図3(a),(b)に示すように、板状部材82、83が対応する各吐出面2a,3aと対向しない位置である。対向位置は、図3(c),(d)に示すように、板状部材82、83が対応する各吐出面2a,3aに対向する位置である。
【0054】
この構成において、制御部100の制御により、ヘッド昇降機構95が駆動され、ヘッド2,3が図3(a)に示す印刷位置から図3(b)に示す離隔位置に移動する。そして、制御部100の制御により、第2移動機構85が駆動され、板状部材82,83が第2退避位置から対向位置に移動する。そして、制御部100の制御により、第1移動機構75が駆動され、リップ部材72、83が第1退避位置から第2当接位置に移動する。なお、ヘッド2,3が離隔位置にあるときのリップ部材72,73の第1退避位置は、ヘッド2,3が印刷位置にあるときのリップ部材72,73の第1退避位置と、各リップ部材72、73と各ヘッド2,3との相対位置関係においては同じ位置である。第1退避位置は、吐出面2a,3aがリップ部材72,73及び板状部材82,83によって覆われない位置である。一方、第2当接位置は、吐出面2a,3aがリップ部材72,73及び板状部材82,83によって覆われる位置であり、リップ部材72、73が第1退避位置からヘッド2、3に対して相対的に移動量D2だけ下方に移動することにより、リップ部材72、73の下端が板状部材82、83に当接する位置をいう。これら5つの吐出面2a,3aは、リップ部材72,73及び板状部材82、83によって覆われ(第2キャッピングされ)ることにより、密閉されているため、ヘッド2,3の吐出口2b,3b近傍の液体の増粘を抑制することが可能となる。なお、吐出面2a、3aが、板状部材82、83及びリップ部材72、73に覆われ、これらに囲まれた空間が密閉空間となる状態を第2キャッピング状態である、または第2キャッピング状態が実現されていると表現する。そして、この第2キャッピングが行われることで構成された各密閉空間は、搬送ベルト43ではなく板状部材82,83とリップ部材72,73とによって構成されているため、第1キャッピングが行われることで構成された密閉空間よりも吐出口内の液体の保存性能が高い。すなわち、第2キャッピングが行われることで構成された密閉空間の密閉の度合いは、第1キャッピングが行われることで構成された密閉空間の密閉の度合いよりも高いものである。板状部材82,83は、キャッピング専用の部材として採用されたものであり、材質や形状(表面44の形状)を、密閉空間の形成に適するように設定されている。一方、搬送ベルト43は材質や形状は、用紙Pの搬送に適するように設定されているため、板状部材82、83の方が搬送ベルト43よりもガスバリア性や表面荒さなどにおいて優れている。
【0055】
一方、制御部100の制御により、第1移動機構75が駆動され、リップ部材72,73が第2当接位置から第1退避位置に移動する。こうして、第2キャッピングが解除される。その後、制御部100の制御により、第2移動機構85が駆動され、板状部材82,83が対向位置から第2退避位置に移動し、その後、ヘッド昇降機構95が駆動され、ヘッド2,3が離隔位置から印刷位置に戻される。第2移動機構85は制御部100の制御によって、5つの板状部材82,83を選択的に第2退避位置及び対向位置のいずれかに配置させることが可能である。ここで、第1キャッピング状態から、用紙Pに対してヘッド2、3から液体を吐出可能な状態(液体吐出可能状態)となる場合、第1移動機構75が駆動される。一方、第2キャッピング状態から、用紙Pに対してヘッド2、3から液体を吐出可能な状態となる場合、第1移動機構75、第2移動機構85、ヘッド昇降機構95が駆動される。そのため、第1キャッピング状態から、用紙Pに対してヘッド2、3から液体を吐出可能な状態となるまでの時間は、第2キャッピングの場合よりも短い。
【0056】
また、プリンタ1には、図1に示すように、ブレード49が設けられている。ブレード49は、ベルトローラ42との間において搬送ベルト43を挟む位置に配置されている。また、ブレード49は、搬送ベルト43の主走査方向の幅よりも若干長く形成されており、搬送ベルト43の幅方向全体と常に接触するように配置されている。この構成により、搬送ベルト43が回転することで、表面44上のインクなどの異物をブレード49で払拭することが可能となる。なお、払拭された異物は筐体1内に設けられた廃棄部(不図示)に廃棄される。
【0057】
次に、図4を参照しつつ、制御部100(切換手段)について説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプ
ログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に
記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御部100を構成する各機能部は、これらハードウェアとEEPROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図4に示すように、制御部100は、プリンタ1全体を制御するものであり、搬送制御部101と、印刷データ記憶部102と、ヘッド制御部103と、予備吐出制御部104と、パージ実行部105と、判定部106と、ジャム判定部108と、初期導入検知部109と、キャップ実行部110と、モード設定部111とを有している。
【0058】
搬送制御部101は、印刷データ記憶部102に記憶された印刷データに含まれる搬送データに基づいて、用紙Pが用紙搬送経路と、用紙搬送経路及び用紙再送経路を通って排紙部4まで搬送されるように、給紙ユニット23、送りローラ32、再送ユニット60、及び、搬送ユニット40を制御する。なお、用紙Pの片面に画像を記録する場合、用紙Pは、用紙搬送経路を通って排紙部4まで搬送される。一方、用紙Pの両面に画像を記録する場合、用紙Pは、用紙搬送経路及び用紙再送経路を通って排紙部4まで搬送される。
【0059】
印刷データ記憶部102は、PC(Personal Computer)等から転送された用紙P上に
記録されるべき画像にかかる画像データ(各ヘッド2,3からの液体の吐出データ)や搬送データを含む印刷データを記憶している。なお、本実施形態において、プレコート液の吐出データは、画像データに基づいて決められている。具体的には、画像データに基づいてヘッド2から吐出されたインクが着弾するドット領域にプレコート液が着弾するように決められている。すなわち、画像が記録される領域にプレコート液が吐出され、画像が記録されない領域にはプレコート液が吐出されない。
【0060】
ヘッド制御部103は、印刷データ記憶部102に記憶された吐出データに基づいて、用紙Pに対して液体を吐出するように、各ヘッド2,3からの液体吐出を制御する。このとき、ヘッド制御部103は、用紙センサ26が用紙Pの前端を検知してから所定時間経過後に、用紙Pに対してプレコート液及びインクの吐出を開始するように各ヘッド2,3を制御する。なお、ここでいう所定時間は、各ヘッド2、3のそれぞれについて、用紙センサ26が用紙Pの前端を検知したときの用紙Pの前端から、最も上流にある吐出口(不図示)までの搬送経路に沿った距離を、用紙Pの搬送速度で割った時間である。
【0061】
モード設定部111は、ユーザによる設定操作に基づいて第1吐出モード及び第2吐出モードを選択的に記憶することで設定する。第1吐出モードは、第1吐出モード用に設定された吐出期間において、第1吐出モード用に設定された吐出量の液体を吐出口2b,3bのメンテナンスのために吐出させるモードである。第2吐出モードは、第1吐出モード用に設定された吐出期間よりも短い第2吐出モード用に設定された吐出期間において、第1吐出モード用に設定された吐出量よりも少ない量の液体を吐出口2b,3bのメンテナンスのために吐出させるモードである。つまり、第1吐出モードは、吐出口2b,3bのメンテナンスのために吐出されるプレコート液及びインクの量は多いが、吐出面2a,3aがキャップされた状態(第1キャッピング)から、記録媒体に対してプレコート液及びインクを吐出可能な状態になるまでの時間が短い。一方、第2吐出モードは、吐出口2b,3bのメンテナンスのために吐出されるプレコート液及びインクの量は少ないが、吐出面2a,3aがキャップされた状態(第2キャッピング)から、用紙Pに対してプレコート液及びインクを吐出可能な状態になるまでの時間が長い。ユーザは、スループットが低下したとしてもプレコート液及びインクの消費量を抑制したい場合に、第2吐出モードを設定し、プレコート液及びインクの消費量が多くても、スループットを向上させたい場合に第1吐出モードを設定する。すなわち、第1キャッピングから吐出可能な状態になるまでの期間と第1吐出モード用に設定された吐出期間の和は、第2キャッピングから吐出可能な状態になるまでの期間と第2吐出モード用に設定された吐出期間の和よりも小さいものとなる。なお、ユーザが第1吐出モード及び第2吐出モードのいずれも選択していない場合には、第1吐出モードが設定されている。
【0062】
予備吐出制御部104は、キャップ実行部110により第1及び第2キャッピングのいずれかが解除された後であって、ヘッド制御部103により用紙Pに対し液体吐出がされるよりも前までに、各ヘッド2,3から搬送ベルト43の表面44に向けて液体を予備吐出させるように、ヘッド2,3を制御する。このとき、モード設定部111において第1吐出モードが設定(記憶)されている場合は、予備吐出制御部104は、第1吐出モード用に設定された吐出期間において、第1吐出モード用に設定された吐出量の液体を各ヘッド2,3から予備吐出させるように、ヘッド2,3を制御する。一方、モード設定部111において第2吐出モードに設定されている場合は、予備吐出制御部104は、第1吐出モード用に設定された吐出期間よりも短い第2吐出モード用に設定された吐出期間において、第1吐出モード用に設定された吐出量よりも少ない量の液体を各ヘッド2,3から予備吐出させるように、各ヘッド2,3を制御する。具体的には、予備吐出制御部104は、第2吐出モードが設定されている場合、各ヘッド2,3の駆動時間を第1吐出モードにおける駆動時間よりも短くする。ここでいう、吐出期間は、予備吐出の開始から終了までの時間である。吐出量は、各ヘッド2,3の吐出口2b,3bのメンテナンス(メニスカスの形成)のために吐出させる液体量である。第2吐出モードに設定されている場合に、各ヘッド2、3から予備吐出される液体の量は、第1吐出モードに設定されている場合に各ヘッド2、3から予備吐出される液体の量よりも少ないが、第2キャッピングは第1キャッピングよりも保存性能が高いので、予備吐出量される液体の量が少なくても同じ性能を確保することができる。このような予備吐出制御部104を有していることで、設定されたモードに応じて予備吐出(予備的な吐出)を行い、吐出口2b,3bを効果的に回復させることができる。なお、予備吐出とは、印刷データに基づく画像記録に先立って、ヘッド2、3から液体を吐出させることであり、予備吐出における液体の吐出は、画像記録にかかる印刷データに基づかない液体の吐出である。
【0063】
変形例として、予備吐出制御部104は、キャップ実行部110により第1キャッピングが解除された後であって、ヘッド制御部103により用紙Pに対し液体が吐出されるまでに、各ヘッド2,3から搬送ベルト43の表面44に向けて第1吐出モード用に設定された吐出期間において、第1吐出モード用に設定された吐出量の液体を予備吐出させるように、ヘッド2,3を制御してもよい。さらに、予備吐出制御部104は、キャップ実行部110が第2キャッピングを解除した後であって用紙Pに対し液体吐出を行うまでに、各ヘッド2,3から搬送ベルト43の表面44に向けて第1吐出モード用に設定された吐出期間よりも短い第2吐出モード用に設定された吐出期間において、第1吐出モード用に設定された吐出量よりも少ない量の液体を予備吐出させるように、ヘッド2,3を制御してもよい。これにより、第2キャッピング解除後の予備吐出において使用される液体の量を少なくすることができる。ここでいう、吐出量も、各ヘッド2,3の吐出口2b,3bのメンテナンス(メニスカスの形成)のために吐出させる液体量である。第2キャッピングは第1キャッピングよりも保存性能が高いので、第2キャッピング解除後の予備吐出量は第1キャッピング解除後の予備吐出量よりも少なくても同じ性能を確保することができる。
【0064】
パージ実行部105は、所定期間ごとであって印刷が行われていないときに、各ヘッド2,3から搬送ベルト43の表面44に向けて液体を強制的に排出(パージ実行により吐出)させるように、各ヘッド2,3に対応するポンプ20を制御する。ここでいう所定期間は、予備吐出による吐出ではヘッド2、3のメンテナンス効果が十分得られない可能性のある期間に設定され、例えば20〜30日に設定される。このとき、モード設定部111において第1吐出モードが設定されている場合は、パージ実行部105は、第1吐出モード用に設定された吐出量の液体を各ヘッド2,3から排出させるように、ポンプ20を制御する。一方、モード設定部111において第2吐出モードが設定されている場合は、パージ実行部105は、第1吐出モード用に設定された吐出量よりも少ない量の液体を各ヘッド2,3から排出させるようにポンプ20を制御する。具体的には、パージ実行部105は、第2吐出モードが設定されている場合、ポンプ20の駆動時間を第1吐出モードにおける駆動時間よりも短くする。つまり、単位時間当たりの吐出量は、第1吐出モード及び第2吐出モードにおいて、同じであるが、駆動時間が第2吐出モードのほうが短いため、第2吐出モードにおいて吐出される液体の量は第1吐出モードよりも少ない。ここでいう、吐出量は、各ヘッド2,3の吐出口2b,3bのメンテナンス(吐出口2b,3b近傍の増粘液体の排出など)のために吐出させる液体量であり、予備吐出の際に吐出される液体量とは異なる値である。第2吐出モードに設定されている場合に、各ヘッド2、3から排出される液体の量は、第1吐出モードよりも少ないが、第2キャッピングは第1キャッピングよりも保存性能が高いので、同じ性能を確保できる。このようなパージ実行部105を有していることで、設定されたモードに応じて定期パージを行い、吐出口2b,3bを効果的に回復させることができる。
【0065】
変形例として、各ヘッド2,3から液体を強制的に排出させる場合に、第2キャッピングを行った状態で、当該キャッピングで形成された密閉空間を負圧にする減圧機構(不図示)をさらに備えていても良い。減圧機構を備えた場合には、パージ実行部105は、第2キャッピングが行われるように第1及び第2移動機構75、85と、ヘッド昇降機構95とを制御した後に、密閉空間を負圧にするように減圧機構を制御する。なお、このときの液体排出量は、上述の実施形態と同様であり、ヘッド2,3から液体を排出させる構成が異なるだけである。また、別の変形例として、パージ実行部105は、モード設定部111において第1吐出モードに設定されている場合は、特定期間(パージを複数回実行しうる長さの期間)においてヘッド2,3からのパージ(強制排出)実行を複数回行い、第2吐出モードに設定されている場合は、前記特定期間におけるパージ実行回数を第1吐出モードにおけるよりも少ない回数になるように、ポンプ20を制御してもよい。言いかえれば、パージが実行される間隔が第1吐出モードよりも第2吐出モードの方が長くなる。例えば、パージ実行部105は、モード設定部111において第1吐出モードに設定されている場合は20日に一回パージを実行し、モード設定部111において第2吐出モードに設定されている場合は30日に一回パージを実行する。こうすれば、前記特定期間におけるヘッド2,3からの液体排出量は、第1吐出モードよりも第2吐出モードの方が少なくなる。
【0066】
判定部106は、5つのセンサ91、およびセンサ92、93からの検知信号に基づいて、ヘッド2,3による用紙Pに対する液体吐出が所定時間(予め定められた期間)以上行われない可能性があるか否かを判定する。具体的には、判定部106は、5つのセンサ91のうち検知信号が出力されたヘッド2,3について、用紙Pに対する液体吐出が所定時間以上行われない可能性があると判定する。つまり、タンク21,22内の液体量が所定量(予め定められた量)以下になってからタンク自体を新しいものに交換するまでの間又はタンク21,22に液体の充填が行われるまでの間、用紙Pに対する液体の吐出は行われない。タンク21、22の交換又はタンク21、22への液体の補充は、ユーザにより行われる。そのため、タンク21,22内の液体が少なくなってから又は無くなってから、タンク21、22の交換又はタンク21、22への液体の補充が行われるまでの間が、所定時間未満であるか所定時間以上であるかは、判定部106は判断できない。そのため、判断部106は、タンク21,22内の液体量が所定量以下である場合に、用紙Pに対する液体吐出が所定時間以上行われない可能性があると判定する。ここでいう、所定時間は、制御部100がヘッド昇降機構95及び第1移動機構75、第2移動機構85を駆動して第2キャッピングを行うのに要する時間である。また、判定部106は、センサ92から検知信号が出力されると、用紙Pに対する液体吐出が所定時間以上行われない可能性があると判定する。つまり、給紙カセット24に用紙Pを補充するまでの間、用紙Pに対する液体の吐出は行われず、給紙カセット24への用紙Pの補充は、ユーザにより行われるためである。また、判定部106は、センサ93から検知信号が出力されると、用紙Pに対する液体吐出が所定時間以上行われない可能性があると判定する。つまり、給紙カセット24が供給位置に配置されるまでの間、用紙Pに対する液体の吐出は行われず、給紙カセット24はユーザにより供給位置に配置されるためである。なお、タンク21、22内の液体量と比較される所定量は、例えば、タンク21、22内の液体量が減少して、制御部100がユーザからの印刷指示を受付けることができる液体量の下限値よりも小さい値とすることができる。すなわち、タンク21、22内の液体量が所定値以下であることがセンサ91により検出された場合は、制御部100はユーザからの印刷指示を実行しない。
【0067】
また、判定部106は、主電源スイッチ39(図4参照)がユーザにより押され、主電源スイッチ39から制御部100に電源OFF信号が出力されたときにも(制御部100が電力低下信号を受信したときに)、用紙Pに対する液体吐出が所定時間以上行われない可能性があると判定する。つまり、電源がOFF状態からON状態にされるまでの間、用紙Pに対する液体吐出が行われず、電源のOFF状態からON状態への移行はユーザによりなされるためである。また、電源がOFF状態の間に、搬送ベルト43の交換やメンテナンスが行われる可能性がある。搬送ベルト43の交換時やメンテナンス時に、第1キャッピングが行われていると、吐出面2a,3aに搬送ベルト43等が接触し吐出面2a,3aが損傷する恐れがある。ここで、電源がOFF状態からON状態にされるまでの間、第2キャッピングが行われることで、搬送ベルト43の交換やメンテナンスが行われても、吐出面2a,3aの損傷を防止できる。また、変形例として、プリンタ1の自体の動作が所定時間以上なにも行われなかった場合、自動的に省電力モード(印刷動作などが行われているときよりも消費電力が極めて小さく、供給される電力が低下した状態)に移行し、当該省電力モードに移行したことを示す電力低下信号を出力する省電力移行部120(図4参照)が制御部100に含まれていてもよい。この場合、判定部106は、省電力移行部120が電力低下信号を出力したときに、用紙Pに対する液体吐出が所定時間以上行われない可能性があると判定する。つまり、省電力モードから通常モードに復帰するまでの間、用紙Pに対する液体吐出が行われず、通常モードへの復帰はユーザにより行われるためである。
【0068】
また、判定部106は、ジャム判定部108が用紙Pにジャムが発生したと判定したときにも、用紙Pに対する液体吐出が所定時間以上行われない可能性があると判定する。つまり、ジャムを回復するためのジャム処理が行われている間、ヘッド2,3による用紙Pに対する液体吐出が行われず、ジャム処理はユーザにより行われるためである。また、判定部106は、上述のように用紙Pに対する液体吐出が所定時間以上行われない可能性があると判定したときに、音を発するようにブザー38(図4参照)を制御する。これにより、タンク21,22内の液体量が所定量以下であること、用紙Pが無いこと、給紙カセット24が供給位置に配置されていないこと、用紙Pにジャムが生じたことなどをユーザに知らせることが可能となる。
【0069】
ジャム判定部108は、3つの用紙センサ26〜28による用紙Pの検知間隔が所定時間を超えるときだけ、当該用紙Pにジャムが発生したと判定する。このように3つの用紙センサ26〜28及びジャム判定部108によって用紙Pの搬送異常を検知する搬送異常検知部が構成されている。ここでいう所定時間は、各用紙センサ26〜28間の搬送経路に沿った離隔距離を用紙Pの搬送速度で割った時間である。また、ジャム判定部108は、上述のようにジャムが発生したと判定したときに、ヘッド制御部103及び搬送制御部101を制御して、各ヘッド2,3からの液体吐出を停止、及び、用紙Pの搬送および吸着プラテン46の駆動を停止させる。
【0070】
初期導入検知部109は、ユーザによって主電源スイッチ39が押されて電源がON状態になり、かつ、5つのセンサ91からはじめて検知信号が出力されないときに、タンク21,22からヘッド2,3に液体が初期導入されたと検知する。つまり、初期状態にあったインクジェットプリンタ1の電源投入後、初めて5つのセンサ91すべてから検知信号が出力されないときに、タンク21、22からヘッド2、3に液体が初期導入されたと検知する。初期導入とは、ポンプ20の駆動により、プレコート液及びインクが充填されていない状態のヘッド2,3に対して、タンク21,22からプレコート液及びインクが導入されることである。具体的には、工場から出荷された状態のプリンタ1のヘッド2、3内には、保存液が充填されており、初期導入によって、ヘッド2、3から保存液が排出されてプレコート液及びインクが導入される。
【0071】
キャップ実行部110は、動作状況に応じて、第1キャッピング及び第2キャッピングのいずれかを実行し、第1キャッピングを実行する場合は第1移動機構75を制御し、第2キャッピングを実行する場合は第1及び第2移動機構75,85、及び、ヘッド昇降機構95を制御する。
【0072】
具体的には、キャップ実行部110は、判定部106によってヘッド2,3による用紙Pに対する液体吐出が所定時間以上行われない可能性があると判定された場合に、第2キャッピングを実行する。これにより、ヘッド2,3による用紙Pに対する液体吐出が所定時間以上行われない場合であっても、吐出口2b,3b近傍の液体の乾燥を抑制することができる。タンク21,22に液体が充填又はタンク21,22が交換されるまでの間、用紙Pが給紙カセット24に補充されるまでの間、給紙カセット24が供給位置に配置されるまでの間、ジャム処理が行われている間、電源がOFF状態からON状態にされるまでの間において、吐出口2b,3b近傍の液体の乾燥を抑制することができる。
【0073】
また、キャップ実行部110は、キャップ実行指令を受信したときに、モード設定部111において第1吐出モードに設定されている場合は第1キャッピングを実行し、第2吐出モードに設定されている場合は第2キャッピングを実行する。これにより、第2吐出モードが設定されていても、第2キャッピングが行われるため、吐出口2b,3bの液体の乾燥を効果的に抑制することができる。ここでいう、キャップ実行指令は、制御部100内において、主電源スイッチ39が押されて電源がOFF状態からON状態にされてから所定時間以内に制御部100が印刷データを受信しないときに出力される。さらに、印刷データ記憶部102に記憶された印刷データに基づく印刷動作が終了した後にも出力される。
【0074】
また、キャップ実行部110は、インクジェットプリンタ1の工場出荷時から、初期導入検知部109がタンク21,22からヘッド2,3に液体が初期導入されたと検知するまで第2キャッピングを実行し、初期導入検知部109が初期導入を検知すると、第2キャッピングを解除する。プリンタ1が工場から出荷された後、用紙Pに対して液体吐出が行われるまでの間は、通常、所定時間以上かかる。吐出口2b,3b内の保存液が乾燥すると、液体の初期導入時に、ヘッド2、3へのプレコート液及びインクの充填が十分にできない恐れがある。これにより、ヘッド2,3に液体が初期導入されるまで、吐出口2b,3b近傍の液体(保存液)の乾燥及び液体の吐出口2b,3bからの漏れを抑制することが可能となる。なお、工場出荷時においてヘッド2,3内に保存液が充填されていない場合においても、第2キャッピングを行っていてもよい。
【0075】
また、キャップ実行部110は、用紙Pが搬送ユニット40から再送ユニット60に搬送されてから再送ユニット60から搬送ユニット40に再送されるまで(すなわち、搬送ユニット40から排紙部4に向けて搬送される用紙Pの後端を用紙センサ27が検知してから、用紙Pの前端を用紙センサ28が検知するまで)の間、第1キャッピングを実行する。そして、用紙センサ28が用紙Pの前端を検知すると第1キャッピングを解除する。これにより、用紙Pが再送ユニット60によって搬送ユニット40に再送される間も第1キャッピングが行われるので、スループットの低下を抑制しつつ吐出口2b,3b近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0076】
また、キャップ実行部110は、PC等から転送されてきた印刷データを制御部100が受信したときに、ヘッド2,3に実行している第1及び第2キャッピングを解除する。
【0077】
次に、プリンタ1の初期動作について説明する。プリンタ1は、まず、ユーザによって主電源スイッチ39が押され、電源がOFF状態からON状態にされる。このとき、プリンタ1が工場から出荷された状態である場合には、各ヘッド2,3について第2キャッピングが行われており、電源がONされた後にも第2キャッピングを維持されるようにキャップ実行部110が第2キャッピングを実行している。そして、タンク21,22内の液体量が所定量以下であるとセンサ91から検知信号が出力される。その後、タンク21,22に液体を充填又は新しいタンク21,22がセットされると、センサ91からの検知信号が出力されなくなる。すると、制御部100がポンプ20を制御してタンク21,22からヘッド2,3に液体を自動的に導入する。こうして、ヘッド2,3への液体の初期導入が終了し、初期導入検知部109が初期導入を検知する。このように初期導入検知部109が初期導入を検知すると、これまで継続されてきた第2キャッピングが、キャップ実行部110により解除される。すなわち、リップ部材72,73が第2当接位置から第1退避位置に、板状部材82,83が対向位置から第2退避位置に、ヘッド2,3が離隔位置から印刷位置に戻されて、ヘッド2、3から用紙Pに対して液体の吐出が可能な状態となる。
【0078】
また、キャップ実行部110は、初期導入検知部109が初期導入を検知したか否かに関わらず、主電源スイッチ39が押されて電源がONされてから所定時間(液体の初期導入に要する時間以上の時間)以内に制御部100が印刷データを受信しない場合であって、モード設定部111において第1吐出モードに設定されている場合は第1キャッピングを実行し、第2吐出モードに設定されている場合は第2キャッピングを実行する。こうして、プリンタ1の初期動作が終了する。
【0079】
次に、プリンタ1の印刷動作について説明する。図5に示すように、プリンタ1は、まず、PCなどから印刷データを受信する(S1)。このとき、印刷データ記憶部102は、印刷データに含まれる画像データを各ヘッド2,3からのインク及びプレコート液の吐出データとして記憶するとともに、両面又は片面印刷であるかを示す搬送データも記憶する。
【0080】
次に、ステップ2(S2)において、センサ91〜93から検知信号が出力されていない場合は、ステップ3(S3)に進み、検知信号が出力されている場合はステップ14(S14)に進む。
【0081】
次に、ステップ3(S3)において、制御部100が印刷データを受信するとキャップ実行部110が、ヘッド2,3に行われている第1又は第2キャッピングを解除する。そして、ステップ4(S4)において、第1吐出モードであるか否かを判定し、第1吐出モードである場合はステップ5(S5)に進み、第2吐出モードである場合はステップ6(S6)に進む。
【0082】
ステップ5においては、予備吐出制御部104が各ヘッド2,3を制御して、各ヘッド2,3から搬送ベルト43の表面44に向けて第1吐出モード用に設定された吐出量の液体を予備吐出させる。ステップ6においては、予備吐出制御部104が各ヘッド2,3を制御して、各ヘッド2,3から搬送ベルト43の表面44に向けて当該第1吐出モード用に設定された吐出量よりも少ない量の液体を予備吐出させる。なお、予備吐出された表面44上の液体はブレード49によって表面44から拭き取られる。
【0083】
次に、ステップ7(S7)において、片面印刷の場合(搬送データが片面印刷を示すデータであった場合)、搬送制御部101は、用紙Pが用紙搬送経路を通って排紙部4に搬送されるように、給紙ユニット23、送りローラ32、再送ユニット60の一部である送りローラ34、35、及び、搬送ユニット40を制御する。一方、両面印刷の場合(搬送データが両面印刷を示すデータであった場合)、搬送制御部101は、用紙Pが搬送ユニット40から再送ユニット60に搬送され、再送ユニット60から搬送ユニット40に再送されて排紙部4に搬送されるように、給紙ユニット23、送りローラ32、再送ユニット60、及び、搬送ユニット40を制御する。このとき、ヘッド制御部103が、印刷データ記憶部102に記憶された吐出データに基づいて、各ヘッド2,3を駆動することによって、所望のタイミングで吐出口2b,3bから液体を吐出させる。こうして、搬送ユニット40によって搬送されてきた用紙Pの所望位置(裏面も含む)に、カラー画像が記録され、当該用紙Pに対する印字が終了する。
【0084】
このステップ7において、両面印刷する場合は、キャップ実行部110は用紙センサ27が用紙Pの後端を検知してから用紙センサ28が用紙Pの前端を検知するまでの間、第1キャッピングを実行する。つまり、搬送ベルト43を走行させた状態でリップ部材72,73を第1当接位置に移動させる。このとき、搬送制御部101が搬送ユニット40を制御して、搬送ベルト43の走行を停止しない程度に速度を低下させてよい。そして、用紙センサ28が用紙Pの前端を検知すると、キャップ実行部110が第1キャッピングを解除する。こうして、搬送ユニット40に再送されてきた用紙Pの裏面にも、カラー画像が記録され、当該用紙Pに対する印字が終了する。
【0085】
ステップ8において、ジャム判定部108はジャムが生じているか否かを判定し、ジャムが生じていない場合はステップ9(S9)に進み、ジャムが生じている場合はステップ14に進む。
【0086】
次に、ステップ9において、定期パージを行う所定期間が経過した場合はステップ10(S10)に進み、所定期間が経過していない場合はステップ11(S11)に進む。そして、ステップ10において、パージ実行部105がポンプ20を制御して、各ヘッド2,3から搬送ベルト43の表面44に向けて液体を排出させる。このとき、第1吐出モードである場合は第1吐出モード用に設定された吐出量の液体が各ヘッド2,3から排出され、第2吐出モードである場合は当該第1吐出モード用に設定された吐出量よりも少ない量の液体が各ヘッド2,3から排出される。なお、パージされた表面44上の液体はブレード49によって表面44から拭き取られる。
【0087】
次に、ステップ11において、第1吐出モードであるか否かを判定し、第1吐出モードである場合はステップ12(S12)に進み、第2吐出モードである場合はステップ13(S13)に進む。ステップ12において、キャップ実行部110は、印刷動作が終了した後に出力されたキャップ実行指令に基づいて、第1キャッピングを実行する。ステップ13において、キャップ実行部110は、印刷動作が終了した後に出力されたキャップ実行指令に基づいて、第2キャッピングを実行する。なお、ヘッド制御部103は、印刷データにかかるすべての印刷動作が終了したときに、キャップ実行部110に対してキャップ実行指令を出力する。
【0088】
ステップ14においては、判定部106がブザー38を制御して、タンク21,22内の液体が所定量よりも少ないこと、用紙Pが無いこと、給紙カセット24が供給位置に配置されていないこと、ジャムが生じていることのいずれかをユーザに知らせる。そして、ステップ15(S15)において、キャップ実行部110が第2キャッピングを実行する。こうして、用紙Pに対する印刷動作が終了するとともに、各ヘッド2,3に第1又は第2キャッピングが行われた状態となる。
【0089】
以上のように、本実施形態のプリンタ1によると、判定部106によってヘッド2,3による用紙Pに対する液体吐出が所定時間以上行われない可能性があると判定された場合、キャップ実行指令を受信した場合、初期導入検知部109が初期導入を未だ検知していない場合、用紙センサ27が用紙Pの後端を検知してから用紙センサ28が用紙Pの前端を検知するまでの間、ユーザによるモード設定状況などの動作状況に応じて、第1キャッピング及び第2キャッピングのいずれかを実行することが可能となり、適切なキャッピングを実行することができる。そのため、第1キャッピングが行われる場合は第1キャッピング状態からヘッド2,3が液体を吐出可能な状態となるまでの時間を短縮することが可能となり、第2キャッピングが行われる場合は液体の保存性能が高くなって当該吐出口2b,3b近傍で液体が乾燥しにくくなる。なお、上述の実施形態は、動作状況に応じて第1キャッピング及び第2キャッピングのいずれかを実行するものであるが、例えば、制御部100が第2キャッピングを実行した場合のスループットの低下を許容でき、ヘッド2、3の液体の保存性能の維持を優先させるような動作状況の場合は第2キャッピングを選択し、制御部100が第2キャッピングを実行した場合のヘッド2、3の液体の保存性能を犠牲にし、第1キャッピングを実行した場合のスループットの改善を優先させるような動作状況の場合は第1キャッピングを選択するものである。
また、上述の実施形態は、判定部106によってヘッド2、3による用紙Pに対する液体吐出が所定時間以上行われない可能性があると判定された場合に第2キャッピングを実行するものであるが、所定時間は、例えば、以下のように決めることができる。制御部100が印刷データを受信して、キャッピング状態から画像の印刷が可能な液体吐出状態となるまでの期間(キャッピング状態を解除するのに必要な期間と予備吐出等のメンテナンスに要する期間の和)を第1キャッピング及び第2キャッピングのそれぞれについて設定し、制御部100が第2キャッピングを実行した場合のスループットの低下を許容でき、ヘッド2、3の液体の保存性能の改善を優先させる場合は、所定期間は第2キャッピング状態から液体吐出状態となるまでの期間よりも小さくなるように設定する。また、制御部100が第1キャッピングを実行した場合のヘッド2、3の液体の保存性能の低下を犠牲にし、スループットの改善を優先させる場合は、第1キャッピング状態から液体吐出状態となるまでの期間よりも大きくなるように所定時間を設定する。なお、これ以外にも、例えば、制御部100が第2キャッピングを実行した場合のスループットの低下を許容し、ヘッド2、3の液体の保存性能の改善を優先させる場合は、所定時間は小さくすることが好ましく、制御部100が第1キャッピングを実行した場合のヘッド2、3の液体の保存性能の低下を犠牲にし、スループットの改善を優先させる場合は、所定時間は大きくすることが望ましい。
【0090】
また、本実施形態においては、リップ部材72,73を板状部材82,83に当接させることで第2キャッピングを実現している。つまり、第1及び第2キャッピング機構70,80の一部(リップ部材72,73)が兼用されることで、第2キャッピング機構80の構成が簡易になる。
【0091】
変形例として、板状部材82,83の上面であって吐出面2a,3aと対向する面の周縁部に吐出面2a,3bの周縁部と当接可能な環状突起が形成されていてもよい。この場合、板状部材82,83を対向位置に配置してからヘッド2,3を下降させて吐出面2a,3aと環状突起の先端とを当接させれば、第2キャッピングが行える。つまり、第2キャッピングにおいて、リップ部材72、73を用いず、板状部材82、83及び環状突起により吐出面2a,3aを覆っても良い。
【0092】
また、変形例として、ヘッド昇降機構95に代えて、搬送ユニット40をヘッド2、3に対して接離可能な移動機構を有していてもよい。この場合、ヘッド2、3及び搬送ユニット40が記録可能状態と離隔状態とを取りうるように、当該移動機構は搬送ユニット40を移動させる。また、ヘッド昇降機構95に加えて、搬送ユニット40をヘッド2、3に対して接離可能な移動機構を有していてもよい。この場合、ヘッド2、3及び搬送ユニット40が記録可能状態と離隔状態とを取るように、ヘッド昇降機構95及び当該移動機構がヘッド2、3及び搬送ユニット40を移動させる。
【0093】
また、変形例として、第1移動機構75を設けなくてもよい。第1移動機構75を設けない場合は、リップ部材72,73の搬送ベルト43側の先端が、ヘッド2,3が印刷位置にあるときに吐出面2a,3bと表面44との間であって表面44から離隔した位置に配置される。この場合、第1キャッピングを行うときに、ヘッド2,3自体を搬送ベルト43に近づく方向に移動させてリップ部材72,73の先端と表面44とを当接させればよい。なお、搬送ユニット40をヘッド2,3に対して離接可能な移動機構を有している場合は、当該移動機構を制御して搬送ユニット40をヘッド2,3に近づく方向に移動させてリップ部材72,73の先端と表面44とを当接させてもよい。また、第2キャッピングを行うときも、ヘッド2,3自体を対向位置に配置された板状部材82,83に近づく方向に移動させてリップ部材72,73の先端と板状部材82,83とを当接させればよい。
【0094】
変形例として、タンク21,22内の液体量が、タンク21、22内に収容可能な液体量の半分であるとき、各センサ91が検知信号を制御部100に出力する構成であっても良い。モード設定部111は、センサ91から検知信号が出力されたときに、第2吐出モードを設定しても良い。この場合、タンク21、22内の液体量が少なくなったときに、第2吐出モードによりメンテナンスのための液体の消費量が抑制できる。
【0095】
続いて、本発明の第2実施形態によるプリンタ1について、図6を参照しつつ以下に説明する。本実施形態におけるプリンタ1は、制御部100のモード設定部111、キャップ実行部110の一部の制御内容が第1実施形態と異なるだけであり、これ以外は第1実施形態と同様である。
【0096】
本実施形態におけるモード設定部111は、ユーザによる設定操作によって第1記録モード及び第2記録モードを選択的に記憶することで設定する。第1記録モードは、制御部100が印刷データ(記録指令)を受信してから用紙Pに対して液体を吐出するまでに要する時間が第1記録モード用に設定された期間のモードである。第2記録モードは、制御部100が印刷データ(記録指令)を受信してから用紙Pに対して液体を吐出するまでに要する時間が第1記録モード用に設定された期間よりも短いモードである。なお、第1記録モードが設定されている場合には、後述するように吐出口2b,3bのメンテナンスのために吐出されるプレコート液及びインクの量が第1記録モード用に設定されたプレコート液及びインクの吐出量であり、第2記録モードが設定されている場合には、吐出口2b,3bのメンテナンスのために吐出されるプレコート液及びインクの量が第1記録モード用に設定されたプレコート液及びインクの吐出量よりも多い。ユーザは、プレコート液及びインクの消費量が多くてもスループットを向上させたい場合に、第2記録モードを設定し、スループットが低下したとしてもプレコート液及びインクの消費量を抑制したい場合に、第1記録モードを設定する。なお、モード設定部111は、ユーザが第1記録モード及び第2記録モードのいずれも選択していない場合には、第1記録モードが設定されている。
【0097】
第1記録モードが設定されている場合に、予備吐出制御部104は、キャッピングが解除された後であって、用紙Pに対し液体吐出がされるよりも前までに、各ヘッド2、3から第1吐出モード用に設定された吐出量の液体を予備吐出させるように、ヘッド2、3を制御する。一方、第2記録モードが設定されている場合に、予備吐出制御部104は、キャッピングが解除された後であって、用紙Pに対し液体吐出がされるよりも前までに、各ヘッド2,3から第1記録モード用に設定された吐出量よりも多い量の液体を予備吐出させるように、ヘッド2,3を制御する。
【0098】
パージ実行部105は、所定期間ごとであって印刷が行われていないときに、各ヘッド2,3から搬送ベルト43の表面44に向けて液体を強制的に排出させるように、各ヘッド2,3に対応するポンプ20を制御する。ここでいう所定期間は、予備吐出による吐出ではヘッド2、3のメンテナンス効果が十分得られない可能性のある期間に設定され、例えば20〜30日に設定される。このとき、モード設定部111において第1記録モードが設定されている場合は、パージ実行部105は、第1記録モード用に設定された吐出期間において、第1記録モード用に設定された吐出量の液体を各ヘッド2,3から排出させるようにポンプ20を制御する。一方、モード設定部111において第2記録モードが設定されている場合は、パージ実行部105は、第1記録モード用に設定された吐出期間よりも短い第2記録モード用に設定された吐出期間において、第1記録モード用に設定された吐出量よりも少ない量の液体を各ヘッド2,3から排出させるように、ポンプ20を制御する。
【0099】
キャップ実行部110は、上述と同様のキャップ実行指令を受信したときに、モード設定部111において第1記録モードに設定されている場合は第2キャッピングを実行し、第2記録モードに設定されている場合は第1キャッピングを実行する。これにより、ユーザによって設定された記録モードに応じて、第1及び第2キャッピングを行うことが可能となる。つまり、第2記録モードの方が第1記録モードよりもキャッピング状態から、ヘッド2、3が用紙Pに対して液体を吐出可能な状態になるまでの時間が短い。したがって、第2記録モードは、第1記録モードよりも制御部100が印刷データを受信してから用紙Pに対して液体を吐出するまでに要する時間が短くなる。なお、第2記録モードにおける搬送ベルト43の走行速度を、第1記録モードにおける搬送ベルト43の走行速度よりも速くしてもよい。こうすれば、第2記録モードは、第1記録モードよりも制御部100が印刷データを受信してから用紙Pに対して液体を吐出するまでに要する時間がさらに短くなる。なお、キャップ実行部110は、モード設定部111に係わる以外の制御構成は第1実施形態と同様である。
【0100】
プリンタ1は、まず、ユーザによって主電源スイッチ39が押され、電源がOFF状態からON状態にされる。プリンタ1が工場から出荷された状態である場合には、プリンタ1の初期動作が行われる。プリンタ1の初期動作については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0101】
次に、プリンタの印刷動作について説明する。図6に示すように、プリンタは、第1実施形態と同様に、PCなどから印刷データを受信する(F1)。
【0102】
次に、ステップ2(F2)において、センサ91〜93から検知信号が出力されていな
い場合は、ステップ3(F3)に進み、検知信号が出力されている場合はステップ12(F12)に進む。
【0103】
次に、ステップ3(F3)において、キャップ実行部110が、ヘッド2,3に行われている第1又は第2キャッピングを解除する。そして、ステップ4(F4)において、予備吐出制御部104が各ヘッド2,3を制御して、搬送ベルト43の表面44に向けて所定量の液体を予備吐出させる。なお、予備吐出された表面44上の液体はブレード49によって表面44から拭き取られる。
【0104】
次に、第1実施形態のステップ7〜ステップ9と同様なステップ5(F5)〜ステップ7(F7)が行われる。なお、ステップ12,13(F12,13)も第1実施形態のステップ14,15と同様である。
【0105】
次に、ステップ8(F8)において、パージ実行部105がポンプ20を制御して、各ヘッド2,3から搬送ベルト43の表面44に向けて第1記録モード用に設定された吐出量の液体を排出させる。なお、パージされた表面44上の液体はブレード49によって表面44から拭き取られる。
【0106】
次に、ステップ9(F9)において、第2記録モードであるか否かを判定し、第2記録モードである場合はステップ10(F10)に進み、第1記録モードである場合はステップ11(F11)に進む。ステップ10において、キャップ実行部110は、印刷動作が終了した後に出力されたキャップ実行指令に基づいて、第1キャッピングを実行する。ステップ11において、キャップ実行部110は、印刷動作が終了した後に出力されたキャップ実行指令に基づいて、第2キャッピングを実行する。こうして、用紙Pに対する印刷動作が終了するとともに、各ヘッド2,3に第1又は第2キャッピングが行われた状態となる。
【0107】
本実施形態においては、モード設定部111で設定された記録モードに応じて、印字終了後に第1又は第2キャッピングが行われているが、変形例として、キャップ実行部110は、制御部100が受信した印刷データに基づく用紙Pに対する印字が終了したときに第1キャッピングを実行し、当該印字が終了してから所定時間を超えても次の印字にかかる印刷データを制御部100が受信しないときに、第1キャッピングを解除して第2キャッピングを実行してもよい。これにより、所定時間内に次の液体吐出が行われる場合は第1キャッピングが行われるため、印字までの時間を短くすることができ、次の液体吐出が所定時間を経過しても行われない場合は第2キャッピングが実行されるため、吐出口2b,3b近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。ここでいう所定時間は、任意の時間に設定可能であるが、例えば30分〜60分に設定される。
【0108】
続いて、本発明の第3実施形態によるプリンタについて、図7を参照しつつ以下に説明する。本実施形態におけるプリンタは、制御部100の一部の構成が第1実施形態と異なるだけであり、これ以外は第1実施形態と同様である。
【0109】
本実施形態における制御部100は、図7に示すように、第1実施形態の搬送制御部101と、印刷データ記憶部102と、ヘッド制御部103と、予備吐出制御部104と、パージ実行部105と、判定部106と、ジャム判定部108と、初期導入検知部109と、キャップ実行部110と、モード設定部111とに加えて、記憶部115と、カウント部116とを有している。そして、制御部100には、時間を計るカウンタ(時計部)99が接続されている。
【0110】
記憶部115は、カウンタ99により計測された時間に基づいて、制御部100が印刷データを受信した時間を記憶する。カウント部116は、分割された複数の時間帯(例えば、1日を4分割した時間帯であって0時を超えて6時以下の第1時間帯、6時を超えて12時以下の第2時間帯、12時を超えて18時以下の第3時間帯、18時を超えて24(0)時以下の第4時間帯)のそれぞれにおいて、制御部100が受信した印刷データの受信回数をカウントする。
【0111】
キャップ実行部110は、印刷データ記憶部102に記憶された印刷データに基づく印刷動作が終了した後に出力されるキャップ実行指令を受信したときであって、第1〜第4時間帯のそれぞれにおいてカウント部116がカウントした受信回数が所定回数以下である時間帯は、第2キャッピングを実行し、これ以外の時間帯は第1キャッピングを実行する。ここで、所定回数とは、任意の値に設定可能であるが、例えば、500回〜1000回に設定される。これにより、印刷データを受信する頻度の高い時間帯においては、印字(記録)までの時間を短くすることができ、印刷データを受信する頻度の低い時間帯においては、吐出口2b,3b近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。また、例えば、ある時間帯における制御部100が受信する印刷データの受信回数が比較的多く、当該時間帯における受信回数が、当該時間帯で印刷動作終了時の度に第2キャッピングを実行するとスループットが低下してしまうような受信回数である場合は、キャップ実行部110が第1キャッピングを実行するように、当該時間帯における受信回数よりも小さい受信回数を所定回数に設定する。また、別の時間帯において、当該時間帯における制御部100が受信する印刷データの受信回数が比較的少なく、当該時間帯における受信回数が、当該時間帯で印刷動作終了時の度に第2キャッピングを実行してもスループットが低下しないような受信回数である場合は、当該時間帯における受信回数よりも大きい受信回数を所定回数に設定することができる。
【0112】
具体的な動作として、プリンタの印刷動作においては、キャップ実行部110が、印刷動作が終了した後に出力されたキャップ実行指令に基づいて、第1及び第2キャッピングのいずれかを行う。つまり、今回の印刷で受信した印刷データの時間帯が、所定回数を超えている場合は第1キャッピングを実行し、所定回数以下の場合は第2キャッピングを実行する。こうして、用紙Pに対する印刷動作が終了するとともに、各ヘッド2,3に第1又は第2キャッピングが行われた状態となる。
【0113】
続いて、本発明の第4実施形態によるプリンタについて、図8を参照しつつ以下に説明する。本実施形態におけるプリンタは、制御部100のモード設定部111、キャップ実行部110の一部の制御内容が第1実施形態と異なるだけであり、これ以外は第1実施形態と同様である。
【0114】
なお、本実施形態において、第1キャッピングと第2キャッピングとにおける液体の保存性能はどちらが優れていても良い。具体的には、搬送ベルト43の表面44のうちの全部もしくは一部の領域にフッ素樹脂等からなる撥水コーティングが施されていても良い。また、ヘッド2、3の第1キャッピングから復帰までの時間、及び、第2キャッピングから復帰までの時間はどちらが短くても良い。
【0115】
本実施形態におけるモード設定部111は、ユーザによる設定操作によってヘッド3から用紙Pにプレコート液を吐出する前処理を行う前処理モード、及び、ヘッド3から用紙Pにプレコート液を吐出せず前処理を行わない非前処理モード(第3記録モード)を選択的に記憶することで設定する。また、モード設定部111は、ユーザによる設定操作によって4つのヘッド2からインクを吐出してカラー印字を行うカラー印字モード、及び、ブラックインクを吐出するブラック用ヘッド2からインクを吐出してモノクロ印字を行うモノクロ印字モード(第3記録モード)を選択的に記憶することで設定する。なお、ユーザがこれらモードのいずれも選択していない場合には、前処理モード及びカラー印字モードが設定される。
【0116】
変形例として、モード設定部111は、5つのセンサ91のうちのいずれかから検知信号が出力された場合に、検知信号が出力されたタンク21、22に対応するヘッド2、3以外のヘッド2、3からインクを吐出する第3記録モードを設定してもよい。つまり、ここでいう第3記録モードは、5つのセンサ91のうち検知信号が出力されていないタンク21、22に対応するヘッド2、3から用紙Pに液体を吐出して画像を記録するモードであって、それ以外のヘッド2、3からは、用紙Pに液体を吐出せず画像を記録しないモードである。これにより、タンク21、22のうち一部のタンク21、22の液体量が所定量以下となった場合でも、それ以外のタンク21、22に対応するヘッド2、3を用いて画像を記録することができる。また、モード設定部111は、当該第3記録モードとして、5つのセンサ91のうちのプレコート液を吐出するヘッド3に対応するタンク21のセンサ91から、検知信号が出力された場合に、非前処理モードを設定してもよい。また、モード設定部111は、当該第3記録モードとして、5つのセンサ91のうちのブラックインクを吐出するブラック用ヘッド2に対応するタンク22のセンサ91以外から、検知信号が出力された場合に、モノクロ印字モードを設定してもよい。
【0117】
キャップ実行部110は、モード設定部111により設定されたモードに応じて、液体吐出を行うヘッド2,3以外のヘッド2,3に対して第2キャッピングを実行する。具体的には、キャップ実行部110は、非前処理モードが設定されている場合には、ヘッド3に対して第2キャッピングを実行する。また、キャップ実行部110は、モノクロ印字モードが設定されている場合には、ブラックインクを吐出するブラック用ヘッド2以外のヘッドに対して第2キャッピングを実行する。なお、キャップ実行部110は、前処理モード及びカラー印字モードが設定されている場合には、ヘッド2、3に対して第2キャッピングを実行しない。ここで、第1キャッピングは、吐出面2a,3aをリップ部材72、73及び搬送ベルト43の表面44により覆うため、吐出面2a,3aと表面44との間に形成される記録媒体の搬送経路を塞いでしまう。用紙Pに対して液体を吐出せずに画像を記録しない一部のヘッド2、3に対して第1キャッピングを行うことはできない。そこで、当該一部のヘッド2、3に対しては第2キャッピングを行うことで、当該ヘッド2,3の吐出口2b,3b近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。
【0118】
また、キャップ実行部110は、上述と同様のキャップ実行指令を受信したときに、モード設定部111で設定されたモードに応じて、液体吐出を行うヘッド2,3に対して第1キャッピングを実行する。具体的には、キャップ実行部110は、非前処理モードが設定されている場合には、ヘッド2に対して第1キャッピングを実行する。また、キャップ実行部110は、モノクロ印字モードが設定されている場合には、ブラックインクを吐出するブラック用ヘッド2に対して第1キャッピングを実行する。これにより、キャップ実行指令を受信したときに、用紙Pの画像の記録に用いられるヘッド2,3には、第1キャッピングが実行されるため、当該ヘッド2,3の吐出口2b,3b近傍の液体の乾燥を抑制することが可能となる。なお、キャップ実行部110は、モード設定部111に係わる以外の制御構成は第1実施形態と同様である。
【0119】
具体的な動作として、キャップ実行部110は、初期導入検知部109が初期導入を検知したか否かに関わらず、主電源スイッチ39が押されて電源がONされてから所定時間(液体の初期導入に要する時間以上の時間)以内に制御部100が印刷データを受信しない場合に、モード設定部111において設定されたモードに応じて、対応するヘッド2,3に対して第1及び第2キャピングを行う。
【0120】
次に、プリンタの印刷動作について説明する。図8に示すように、プリンタは、第1実施形態と同様に、PCなどから印刷データを受信する(G1)。
【0121】
次に、ステップ2(G2)において、センサ91〜93から検知信号が出力されていな
い場合は、ステップ3(G3)に進み、検知信号が出力されている場合はステップ18(
G18)に進む。
【0122】
次に、ステップ3(G3)において、前処理モードであるか否かを判定し、前処理モードである場合はステップ4(G4)に進み、非前処理モードである場合はステップ9(G9)に進む。ステップ4において、キャップ実行部110がヘッド3の第1又は第2キャッピングを解除する。ステップ9において、キャップ実行部110がヘッド3に対して第2キャッピングを実行する。なお、予めヘッド3に第2キャッピングが行われている場合は継続して第2キャッピングを行う。
【0123】
次に、ステップ5(G5)において、モノクロ印字モードであるか否かを判定し、モノクロ印字モードである場合はステップ6(G6)に進み、カラー印字モードである場合はステップ8(G8)に進む。ステップ6において、キャップ実行部110は、ブラックインクを吐出するブラック用ヘッド2の第1又は第2キャッピングを解除するとともに、ブラック用ヘッド2以外の3つのカラー用ヘッド2に第2キャッピングを実行する。ここでも、予め3つのカラー用ヘッド2に第2キャッピングが行われている場合は継続して第2キャッピングを行う。
【0124】
次に、ステップ7(G7)において、片面印刷の場合、搬送制御部101は、用紙Pが用紙搬送経路を通って排紙部4に搬送されるように、給紙ユニット23、送りローラ32、再送ユニット60の一部である送りローラ33、34、及び、搬送ユニット40を制御する。一方、両面印刷の場合、搬送制御部101は、用紙Pが搬送ユニット40から再送ユニット60に搬送され、再送ユニット60から搬送ユニット40に再送されて排紙部4に搬送されるように、給紙ユニット23、送りローラ32、再送ユニット60、及び、搬送ユニット40を制御する。このとき、ヘッド制御部103が、印刷データ記憶部102に記憶された吐出データに基づいて、ヘッド3及びブラック用ヘッド2を駆動することによって、所望の体積のインク滴を所望のタイミングで吐出口2bから吐出させる。こうして、搬送ユニット40によって搬送されてきた用紙Pの所望位置(裏面も含む)に、モノクロ画像が記録され、当該用紙Pに対する印字が終了する。
【0125】
次に、ステップ8においては、キャップ実行部110が4つのヘッド2の第1又は第2キャッピングを解除した後、第1実施形態のステップ7と同様な処理が行われて、搬送ユニット40によって搬送されてきた用紙Pの所望位置(裏面も含む)に、カラー画像が記録され、当該用紙Pに対する印字が終了する。
【0126】
次に、ステップ10(G10)において、モノクロ印字モードであるか否かを判定し、モノクロ印字モードである場合はステップ11(G11)に進み、カラー印字モードである場合はステップ13(G13)に進む。ステップ11において、キャップ実行部110は、ブラックインクを吐出するブラック用ヘッド2の第1又は第2キャッピングを解除するとともに、ブラック用ヘッド2以外の3つのカラー用ヘッド2に第2キャッピングを実行する。ここでも、予め3つのカラー用ヘッド2に第2キャッピングが行われている場合は継続して第2キャッピングを行う。
【0127】
次に、ステップ12(G12)においては、ヘッド3が使用されないだけでステップ7とほぼ同様な処理が行われて、搬送ユニット40によって搬送されてきた用紙Pの所望位置(裏面も含む)に、モノクロ画像が記録され、当該用紙Pに対する印字が終了する。
【0128】
次に、ステップ13においては、キャップ実行部110が4つのヘッド2の第1又は第2キャッピングを解除した後、ヘッド3が使用されないだけでステップ8と同様な処理が行われて、搬送ユニット40によって搬送されてきた用紙Pの所望位置(裏面も含む)に、カラー画像が記録され、当該用紙Pに対する印字が終了する。
【0129】
次に、第2実施形態のステップ6〜ステップ8と同様なステップ14(G14)〜ステップ16(G16)が行われる。なお、ステップ18,19(G18,19)も第2実施形態のステップ12,13と同様である。
【0130】
次に、ステップ17(G17)において、印刷動作が終了した後に出力されたキャップ実行指令に基づいて、キャップ実行部110が、設定されたモードに応じて液体吐出が行われるヘッド2,3に対して第1キャッピングを実行する。つまり、前処理モード又は非前処理モード及びモノクロ印字モード又はカラー印字モードに応じて液体吐出が行われるヘッド2,3に第1キャッピングを実行する。このときの液体吐出が行われないヘッド2,3は第2キャッピングが継続して実行されている。
【0131】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の各実施形態においては、モード設定部111は、ユーザの設定操作によってモードが設定されているが、モードデータが含まれた印刷データを受信したときに、自動的にモードを設定してもよい。
【0132】
また、上述の各実施形態における用紙Pの搬送機構としては、搬送ベルト43が用いられた搬送ユニット40が採用されているが、搬送機構としてはローラとプラテンとを用いた公知のプラテン搬送機構を採用してもよい。
【0133】
また、上述の各実施形態において、切換手段は制御部100により構成されているが、これに限らない。例えば、第1キャッピング機構及び第2キャッピング機構をプリンタ1に対して着脱可能に構成し、ユーザがいずれか一方をプリンタ1に装着することにより切り換えても良い。また、第1キャッピング機構及び第2キャッピング機構を、メカ構成のみで切り換えても良い。
【0134】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う記録装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。
【符号の説明】
【0135】
1 インクジェットプリンタ(記録装置)
2,3 ヘッド(液体吐出ヘッド)
21,22 タンク(液体貯留部)
24 給紙カセット(記録媒体収容部)
40 搬送ユニット(搬送機構)
60 再送ユニット
70 第1キャッピング機構
72,73 リップ部材
80 第2キャッピング機構
82,83 板状部材(移動部材)
91 センサ(液体検知部)
92 センサ(記録媒体検知部)
93 センサ(装着検知部)
95 ヘッド昇降機構(移動機構)
99 カウンタ(時計部)
100 制御部(切換手段)
104 予備吐出制御部
105 パージ実行部
106 判定部
110 キャップ実行部
111 モード設定部(第1〜第3モード設定部)
115 記憶部
116 カウント部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口が形成された吐出面を有する少なくとも1つの液体吐出ヘッドと、
記録媒体を支持する支持面を有し、前記支持面に支持された記録媒体が吐出面と対向する位置を通過するように記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記液体吐出ヘッドの吐出面を取り囲むように前記液体吐出ヘッドの周囲に配設された環状のリップ部材を有し、前記リップ部材の下端を前記支持面に当接させることにより前記吐出面が前記支持面及び前記リップ部材によって覆われる第1キャッピングを行う第1キャッピング機構と、
前記吐出面に対向する対向位置と前記吐出面に対向しない退避位置とを選択的に取り得る移動部材を有し、前記対向位置にある少なくとも前記移動部材によって前記吐出面が覆われる第2キャッピングを行う第2キャッピング機構と、
前記搬送機構、前記第1キャッピング機構及び前記第2キャッピング機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1キャッピングと前記第2キャッピングのいずれか一方を選択的に実行するものである記録装置。
【請求項2】
前記液体吐出ヘッドと前記搬送機構とが、前記搬送機構によって搬送される記録媒体に対して前記液体吐出ヘッドから液体を吐出して画像を記録するときの記録可能状態と、前記画像記録状態よりも前記液体吐出ヘッドと前記支持面との間の距離が大きい離隔状態とを選択的に取り得るように、前記液体吐出ヘッド及び前記搬送機構の少なくとも一方を移動させる移動機構をさらに備え、
前記制御部は、前記第1キャッピングを実行する場合は前記液体吐出ヘッドと前記搬送機構とが前記印刷可能状態を取るように前記移動機構を制御し、前記第2キャッピングを実行する場合は前記液体吐出ヘッドと前記搬送機構とが前記離隔状態をとるように前記移動機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第2キャッピングにおいて前記吐出面が覆われて形成される空間の密閉の度合いは、前記第1キャッピングにおいて前記吐出面が覆われて形成される空間の密閉の度合いよりも高いものである請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体貯留部と、
前記液体貯留部に貯留された液体が予め定められた量以下であることを検知する液体検知部とをさらに備えており、
前記制御部は、前記液体貯留部に貯留された液体が前記予め定められた量以下であると前記液体検知部が検知した場合に、前記第2キャッピングを実行するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
記録媒体を収容する記録媒体収容部と、
前記記録媒体収容部に収容された記録媒体の有無を検知する記録媒体検知部とをさらに備えており、
前記制御部は、前記記録媒体収容部に記録媒体が無いと前記記録媒体検知部が検知した場合に、前記第2キャッピングを実行するものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
記録媒体を収容し、装置本体に対して着脱可能な記録媒体収容部と、
前記記録媒体収容部から前記搬送機構に記録媒体を供給可能な供給位置に前記記録媒体収容部が配置されているか否かを検知する装着検知部とをさらに備えており、
前記制御部は、前記供給位置に前記記録媒体収容部が配置されていないと前記装着検知部が検知した場合に、前記第2キャッピングを実行するものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記搬送機構における記録媒体の搬送異常の発生を検知する搬送異常検知部をさらに備えており、
前記制御部は、前記搬送異常検知部が搬送異常の発生を検知した場合に、前記第2キャッピングを実行するものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記記録装置を、画像を記録している状態よりも前記記録装置に供給される電流が小さい状態である省電力状態に移行させる省電力移行部を含み、
前記制御部は、前記省電力移行部が、前記記録装置を省電力状態に移行させた場合に、前記第2キャッピングを実行するものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記制御部は、液体を前記吐出口のメンテナンスのために吐出させる第1吐出モード及び前記第1吐出モードよりも少ない量の液体を前記吐出口のメンテナンスのために吐出させる第2吐出モードを選択的に設定する第1モード設定部をさらに備えており、
前記制御部は、前記第1モード設定部により前記第1吐出モードが設定されている場合は前記第1キャッピングを実行し、前記第1モード設定部により前記第2吐出モードが設定されている場合は前記第2キャッピングを実行するものである請求項1〜8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記吐出口から液体を予備的に吐出するように前記液体吐出ヘッドを制御する予備吐出制御部を含み、
前記予備吐出制御部は、前記第1モード設定部により前記第2吐出モードが設定されている場合は、前記第1吐出モードが設定されている場合よりも少ない量の液体を前記吐出口から予備的に吐出させるものである請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記液体吐出ヘッドから強制的に液体を排出させるパージ実行部を含み、
前記パージ実行部は、前記第1モード設定部により前記第2吐出モードが設定されている場合は、前記第1吐出モードが設定されている場合よりも少ない量の液体を前記吐出口から強制的に排出させるものである請求項9又は10に記載の記録装置。
【請求項12】
前記制御部は、第1記録モード、及び、前記制御部が印刷データを受信してから記録媒体に対して液体を吐出するまでの期間が前記第1記録モードよりも短い第2記録モードを選択的に設定する第2モード設定部をさらに備えており、
前記制御部は、前記第2モード設定部に前記第1記録モードが設定されている場合は前記第2キャッピングを実行し、前記第2記録モードが設定されている場合は前記第1キャッピングを実行するものである請求項1〜11のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項13】
前記制御部は、記録媒体に対する画像記録にかかる液体吐出が終了した場合に前記第1キャッピングを実行し、さらに、記録媒体に対する画像記録にかかる液体吐出が終了してから予め定められた期間を越えても次の画像記録を行わない場合に、前記第1キャッピングを解除して前記第2キャッピングを実行するものである請求項1〜12のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの液体吐出ヘッドは複数備えられており、
複数の前記液体吐出ヘッドのうちの一部の前記液体吐出ヘッドだけを用いて記録媒体に画像を記録する第3記録モードを設定する第3モード設定部をさらに備え、
前記制御部は、前記第3モード設定部により前記第3記録モードが設定されている間は、前記複数の液体吐出ヘッドのうちの前記一部の前記液体吐出ヘッド以外の前記液体吐出ヘッドに対して前記第2キャッピングを実行するものである請求項1〜8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記第3モード設定部により前記第3記録モードが設定されている場合は、前記一部の前記液体吐出ヘッドに対して前記第1キャッピングを実行するものである請求項14に記載の記録装置。
【請求項16】
前記複数の前記液体吐出ヘッドのそれぞれに液体を供給する複数の液体貯留部と、
前記複数の液体貯留部のそれぞれに貯留された液体が予め定められた量以下であることを検知する液体検知部とをさらに備えており、
前記第3モード設定部は、前記複数の液体貯留部に貯留された液体が前記予め定められた量以下であると前記液体検知部が検知されていない前記液体貯留部に対応する少なくとも1つの前記液体吐出ヘッドだけを用いて記録媒体に画像を記録することを第3モードとして設定するものである請求項14又は15に記載の記録装置。
【請求項17】
前記制御部が前記第1キャッピングを解除した後及び前記第2キャッピングを解除した後に、前記吐出口から液体を予備的に吐出させる予備吐出制御部をさらに備え、
前記予備吐出制御部は、前記制御部が前記第2キャッピングを解除した場合は、前記制御部が前記第1キャッピングを解除した場合よりも少ない量の液体を前記吐出口から予備的に吐出させるものである請求項14〜16のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項18】
前記リップ部材は、前記第2キャッピング機構の一部を構成しており、
前記第2キャッピング機構は、前記対向位置にある前記移動部材及び前記リップ部材により前記吐出面が覆われる第2キャッピングを行うことを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項19】
前記リップ部材を前記液体吐出ヘッドに対して相対的に移動させるリップ部材駆動機構をさらに備え、
前記第2キャッピング機構は、前記移動部材を前記吐出面に対向する対向位置と前記吐出面に対向しない退避位置とに選択的に移動させる移動部材駆動機構を含むものであり、
前記制御部は、前記第1キャッピングから、記録媒体に対して前記液体吐出ヘッドから液体を吐出可能な液体吐出可能状態とする場合は、前記リップ部材駆動機構を制御するものであり、
前記制御部は、前記第2キャッピングから前記液体吐出可能状態とする場合は、前記リップ部材駆動機構、前記移動部材駆動機構及び前記移動機構を制御するものであり、
前記第1キャッピングから前記液体吐出可能状態となるまでの期間は、前記第2キャッピングから前記液体吐出可能状態となるまでの期間よりも短いものである請求項2〜18に記載の記録装置。
【請求項20】
時間を計る時計部と、
前記時計部により計測された時間に基づいて、記録指令を受信した時間を記憶する記憶部と、
分割された複数の時間帯のそれぞれにおいて、前記記録指令を受信した回数をカウントするカウント部とをさらに備えており、
前記キャップ実行部は、前記複数の時間帯のうちの前記カウント部がカウントした回数が所定回数以下である前記時間帯は、前記第2キャッピングを行い、これ以外の前記時間帯は、前記第1キャッピングを行うことを特徴とする請求項1〜8に記載の記録装置。
【請求項21】
前記液体吐出ヘッドに液体を導入する初期導入の有無を検知する初期導入検知部をさらに備え、
前記キャップ実行部は、少なくとも前記初期導入検知部が前記初期導入を検知するまで、前記第2キャッピングを行うことを特徴とする請求項1〜13に記載の記録装置。
【請求項22】
前記液体吐出ヘッドによって画像が記録された記録媒体の表裏を反転させつつ、当該記録媒体を前記搬送機構に再送する再送機構をさらに備えており、
前記キャップ実行部は、記録媒体が前記再送機構に案内されてから当該記録媒体が前記再送機構により前記搬送機構に再送されるまでの間は、前記第1キャッピングを行うことを特徴とする請求項1〜13に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−106496(P2012−106496A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236782(P2011−236782)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】