説明

記録装置

【課題】記録媒体に対する印字精度を向上することができる記録装置を提供する。
【解決手段】制御部7は、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴よりも体積の小さい液滴、および第2液体吐出孔29aから吐出される液滴よりも飛翔速度の小さい液滴の少なくとも1つを、第1液体吐出孔29aから吐出させるように、液体吐出ヘッド5を制御し、送風部61は、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴を、記録媒体101に着弾しないように、当該液滴に対して風力を加え、かつ第2液体吐出孔29aから吐出された液滴を、記録媒体101に着弾するように、当該液滴に対して風力を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出孔から液滴を吐出することにより記録媒体に対して印字する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット方式を利用した記録装置が、一般消費者向けのプリンタだけでなく、例えば、電子回路の形成、液晶ディスプレイ用のカラーフィルタの製造、有機ELディスプレイの製造といった工業用途にも広く用いられている。このような記録装置は、複数の液体吐出孔を有した液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドの動作を制御する制御部とを備え、液体吐出孔から液滴を吐出することにより画像データに基づいた画像を記録媒体に対して印字する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−349749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の記録装置では、複数の液体吐出孔のうち長時間使用されていない液体吐出孔が存在する。この液体吐出孔に充填された液体は、空気に晒されるため、その液体の表面から徐々に乾燥する。液体が乾燥すると、液体の粘度が大きくなる。このため、長時間使用されていない液体吐出孔から再び液滴を吐出しようとすると、液体の粘度が大きくなっているため、所望の体積および所望の飛翔速度で液滴を吐出することができない可能性があった。また、液体吐出孔から液滴そのものを吐出することができない可能性もあった。そのため、記録媒体に対する印字精度が低下する。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録媒体に対する印字精度を向上することができる記録装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置における一態様は、複数の液体吐出孔を有した液体吐出ヘッドと、前記液体吐出孔から吐出された液滴に対して力を加えるための印加部と、前記液体吐出ヘッドの動作を制御する制御部とを備え、前記液体吐出孔から液滴を吐出することにより記録媒体に対して印字する記録装置であって、前記複数の液体吐出孔のうち、液滴が吐出されてから所定時間以上次の液滴が吐出されていない液体吐出孔を第1液体吐出孔とし、液滴が吐出されてから所定時間未満に次の液滴が吐出された液体吐出孔を第2液体吐出孔とするとき、前記制御部は、前記第2液体吐出孔から吐出される液滴よりも体積の小さい液滴、および前記第2液体吐出孔から吐出される液滴よりも飛翔速度の小さい液滴の少なくとも1つを、前記第1液体吐出孔から吐出させるように、前記液体吐出ヘッドを制御し、前記印加部は、前記第1液体吐出孔から吐出された液滴を、前記記録媒体に着弾しないように、当該液滴に対して力を加え、かつ前記第2液体吐出孔から吐出された液滴を、前記記録媒体に着弾するように、当該液滴に対して力を加える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の記録装置は、記録媒体に対する印字精度を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る記録装置の要部を模式的に示す斜視図である。
【図2】上記の記録装置の液体吐出ヘッドの一部を破断・拡大して示す模式的な斜視図である。
【図3】上記の記録装置の液体吐出ヘッドを模式的に示す平面図である。
【図4】上記の記録装置の要部を模式的に示すブロック図である。
【図5】上記の記録装置の液体吐出ヘッドにおける液体吐出孔からの液滴の吐出タイミングを説明する図である。
【図6】変形例に係る記録装置の要部を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る記録装置1の要部を模式的に示す斜視図である。
【0010】
なお、記録装置1および後述する液体吐出ヘッド5は、いずれの方向が上方または下方とされてもよいものであるが、以下では、便宜的に、直交座標系xyzを定義するとともに、z方向の正側(図1の紙面上方)を上方とするものとする。
【0011】
記録装置1は、例えば、記録媒体(例えば、紙、布等)101を矢印y1で示す方向へ搬送する搬送部3と、搬送されている記録媒体101に向けて液滴(インク滴)を吐出する液体吐出ヘッド5と、搬送部3および液体吐出ヘッド5の動作を制御する制御部7とを有している。
【0012】
搬送部3は、例えば、図示しない供給スタックに積層された複数の記録媒体101を一ずつ図示しない排出スタックへ搬送する。搬送部3は、公知の適宜な構成とされてよい。図1では、搬送経路がストレートパスとされ、記録媒体101に当接するローラ9と、ローラ9を回転させるモータ11とが設けられた搬送部3が例示されている。
【0013】
液体吐出ヘッド5は、記録媒体101の搬送経路の途中に配置されており、z方向の正側から記録媒体101に対向する。液体吐出ヘッド5は、記録媒体101の印画面および搬送方向に直交する方向(主走査方向、x方向)にシャトル運動を行うシリアルヘッドであってもよいし、当該直交する方向に固定されたラインヘッドであってもよい。なお、本実施形態においては、液体吐出ヘッド5がラインヘッドである場合を例に挙げて説明する。
【0014】
液体吐出ヘッド5は、x方向の複数位置において液滴を記録媒体101に吐出、付着させる。当該動作が、記録媒体101の搬送に伴って繰り返し行われることにより、記録媒体101には2次元画像が形成される。
【0015】
制御部7は、ROMおよびRAM等のメモリ、CPUを含んで構成されている。制御部7は、モータ用ドライバ13に制御信号を出力することにより、所望の電圧をモータ11に印加して、モータ11を制御する。同様に、制御部7は、液体吐出ヘッド用ドライバ15に制御信号を出力することにより、所望の電圧を液体吐出ヘッド5に印加して、液体吐出ヘッド5を制御する。なお、制御部7による液体吐出ヘッド5の具体的な制御方法については後述する。
【0016】
図2は、液体吐出ヘッド5の一部を破断・拡大して示す模式的な斜視図である。なお、図2の下方が記録媒体101に対向する側である。
【0017】
液体吐出ヘッド5は、例えば、圧電素子の機械的歪により液体(インク)に圧力を付与するピエゾ式のヘッドである。液体吐出ヘッド5は、液滴を吐出する複数の吐出ユニット
19を有している。複数の吐出ユニット19は、xy平面において配列されており、各吐出ユニット19は1ドットに対応している。
【0018】
また、別の観点では、液体吐出ヘッド5は、液体を貯留する空間を形成する流路部材21と、流路部材21に貯留されている液体に圧力を付与するためのアクチュエータユニット23(一部流路部材21に兼用)とを有している。複数の吐出ユニット19は、流路部材21およびアクチュエータユニット23により構成されている。
【0019】
流路部材21の内部には、複数の個別流路25と、複数の個別流路25に通じる共通流路27とが形成されている。個別流路25は、吐出ユニット19毎に設けられている。各個別流路25は、記録媒体101に対向する液体吐出孔29aを含むディセンダ29と、ディセンダ29に通じる圧力室31と、圧力室31に通じるとともに、共通流路27の内周面に開口する供給孔33とを有している。
【0020】
複数の個別流路25および共通流路27には液体が満たされている。複数の圧力室31の容積が変化して液体に圧力が付与されることにより、複数の圧力室31から複数のディセンダ29へ液体が送出され、複数の液体吐出孔29aからは複数の液滴が吐出される。また、複数の圧力室31へは複数の供給孔33を介して共通流路27から液体が補充される。
【0021】
複数の個別流路25および共通流路27の断面形状あるいは平面形状は、適宜に設定されてよい。本実施形態では、圧力室31は、z方向において一定の厚さに形成されるとともに、z方向に見てx方向およびy方向を対角線方向とする菱形とされている。その菱形のy方向の一方の角部はディセンダ29と連通され、他方の角部は供給孔33と連通されている。
【0022】
流路部材21は、例えば、複数の基板が積層されることにより構成されている。具体的には、流路部材21は、複数の個別流路25および共通流路27を構成する貫通孔が形成された第1基板35A〜第8基板35Hと、複数の圧力室31の上面開口を塞ぐ振動板37とを有している。
【0023】
複数の基板35の厚みおよび積層数は、複数の個別流路25および共通流路27の形状等に応じて適宜に設定されてよい。複数の基板35は、適宜な材料により形成されてよく、例えば、金属、セラミック、あるいはシリコンにより形成されている。
【0024】
アクチュエータユニット23は、例えば、撓みモードピエゾヘッドを構成する、ユニモルフ型の圧電素子により構成されている。具体的には、例えば、アクチュエータユニット23は、圧力室31側から順に積層された、振動板37、共通電極39、圧電体41、および複数の個別電極43を有している。個別電極43は、吐出ユニット19毎に設けられている。
【0025】
振動板37、共通電極39、および圧電体41は、例えば、複数の圧力室31を覆うように複数の圧力室31に共通に設けられている。一方、個別電極43は、圧力室31毎に設けられており、その広さは、圧力室31の広さよりも若干小さい。具体的には、個別電極43は、概ね、圧力室31と相似形(本実施形態では概ね菱形)とされており、また、その角部には、端子45が接続されている。なお、振動体37、共通電極39、および圧電体41は、圧力室31毎に設けられていてもよい。
【0026】
振動板37、共通電極39、圧電体41、および複数の個別電極43は、適宜な材料により形成されてよい。例えば、振動板37は、セラミック、酸化シリコン、あるいは窒化
シリコンにより形成されている。共通電極39および複数の個別電極43は、例えば、白金、あるいはパラジウムにより形成されている。圧電体41は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等のセラミックにより形成されている。
【0027】
圧電体41は、厚さ方向(z方向)を分極方向とされている。したがって、共通電極39および個別電極43に電圧を印加して、圧電体41に対して分極方向に電界を作用させると、圧電体41は面内で収縮する。この収縮により振動板37は、圧力室31側に凸となるように撓み、その結果、圧力室31の体積は変化する。
【0028】
複数の吐出ユニット19は、概ね、記録媒体101の搬送方向(y方向)および搬送方向に直交する方向(x方向)に配列されている。より具体的には、複数の吐出ユニット19がx方向に配列された列に関しては、隣接する列間においては、x方向の位置を互いに異ならせて交互に圧力室31が配置されており、x方向に見て圧力室31同士がy方向において一部重複している。y方向の配列についても同様である。
【0029】
図3は、液体吐出ヘッド5を模式的に示す平面図である。
【0030】
液体吐出ヘッド5は、複数(図3では4つ)のブロック51を有している。図3では図示しないが、複数の吐出ユニット19は、各ブロック51に多数配置されている。アクチュエータユニット23は、例えば、ブロック51毎に設けられている。流路部材21は、例えば、複数のブロック51に共通に設けられている。ブロック51(アクチュエータユニット23)は、例えば、概ね台形状に形成されており、y方向に見て一部が重複するように互い違いにx方向に配列されている。
【0031】
図3においては、共通流路27が点線で示されている。共通流路27は、マニホルド状に形成されており、液体吐出ヘッド5の表面に開口し、図示しないインクタンクから液体が供給される開口部27aと、開口部27aから延びる主流路27bと、主流路27bから分岐する複数の副流路27cとを有している。
【0032】
図2において示された、共通流路27の、供給孔33が開口する部分は、副流路27cであり、x方向に延びるとともに、y方向に配列されている。なお、共通流路27は、ブロック51毎に設けられている。ただし、本実施形態では、複数の共通流路27は、隣接するブロック51間において互いに一部が共有化され、互いに接続されている。
【0033】
図4は、図1の記録装置1の要部を模式的に示すブロック図である。
【0034】
記録装置1は、液体吐出孔29aから吐出された液滴に対して風力を加える送風部61と、液体吐出孔29aから吐出された液滴を回収する回収部62とをさらに有している。なお、図1では、説明の便宜上、送風部61および回収部62の図示を省略している。
【0035】
送風部61は、回転エネルギーを風力に変換するための送風ファンから構成される。送風ファンは、例えば、シロッコファン、ターボファン、サイレントファン、リミットロードファン等である。送風部61が駆動し、送風ファンが回転することで、液体吐出ヘッド5と記録媒体101との間に風が送られることになる。本実施形態では、搬送部3による記録媒体101の搬送方向y1と同じ方向に、送風部61からの風が送られる。すなわち、送られる風向きは、搬送方向y1と同じである。このようにすると、記録媒体101の搬送によって生じる気流により、送風部61から送出される風の風速を大きくすることができる。すなわち、送風部61の駆動電力を低減しつつ、所望の風を、送風部61から送出することができる。本実施形態では、送風部61から送出される風の風速は、送風部61に予め設定されており、送風部61は、当該設定に従って、駆動する。
【0036】
回収部62は、回転エネルギーを風力に変換するための吸引ファンから構成される。吸引ファンは、送風ファンと同様、例えば、シロッコファン、ターボファン、サイレントファン、リミットロードファン等である。なお、回収部62は、吸引ファンから構成されていなくともよく、単に、液滴を回収するためのトレイ等であってもよい。
【0037】
制御部7は、複数の液体吐出孔29aのうち、液滴が吐出されてから所定時間以上次の液滴が吐出されていない液体吐出孔が存在するか否かを判定する。このため、制御部7は、当該所定時間を示す時間情報を記録したメモリ71を備えている。具体的には、制御部7は、メモリ71に記録された時間情報を参照することにより、所定時間以上使用されていない液体吐出孔が存在するか否かを判定する。なお、以下では、液滴が吐出されてから所定時間以上次の液滴が吐出されていない液体吐出孔を第1液体吐出孔29aとし、液滴が吐出されてから所定時間未満に次の液滴が吐出された液体吐出孔を第2液体吐出孔29aとする。言い換えれば、長時間使用されていない液体吐出孔を第1液体吐出孔29aとし、定期的に使用されている液体吐出孔を第2液体吐出孔29aとする。
【0038】
制御部7は、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴よりも体積が小さくかつ飛翔速度の小さい液滴を、第1液体吐出孔29aから吐出させるように、液体吐出ヘッド用ドライバ15に制御信号を出力する。液体吐出ヘッド用ドライバ15は、制御部7からの制御信号に従って、液体吐出ヘッド5に所望の電圧を印加する。これにより、第1液体吐出孔29aは、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴よりも体積が小さくかつ飛翔速度の小さい液滴を吐出することになる。
【0039】
すなわち、送風部61は、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴を、記録媒体101に着弾しないように、当該液滴に対して風力を加えている。第1液体吐出孔29aから吐出される液滴は、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴よりも体積が小さくかつ飛翔速度が小さいので、記録媒体101に着弾することなく外部へ飛ばされる。本実施形態では、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴は、回収部62によって回収される。第1液体吐出孔29aから吐出された液滴が回収部62によって回収されるので、記録媒体101および液体吐出ヘッド5を汚す可能性を低減できる。また、送風部61は、第2液体吐出孔29aから吐出された液滴を、記録媒体101に着弾するように、当該液滴に対して風力を加えている。第2液体吐出孔29aから吐出される液滴は、第1液体吐出孔29aから吐出される液滴よりも体積が大きくかつ飛翔速度が大きいので、外部へ飛ばされることなく、記録媒体101に着弾する。
【0040】
本実施形態では、送風部61により送出される風の風速は、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴が記録媒体101に着弾しないようにかつ第2液体吐出孔29aから吐出された液滴が記録媒体101に精度良く着弾するように、例えば、0.2m/sec〜4.0m/secの範囲に設定されている。この場合、第1液体吐出孔29aから吐出される液滴の体積は、0.1pL〜2pLであり、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴の体積は、1pL〜30pLである。なお、この値(1pL〜30pL)は、600dpiの解像度で印刷する場合の値である。600dpi以外の解像度で印刷する場合、その解像度に応じた体積で、第2液体吐出孔29aから液滴が吐出される。また、第1液体吐出孔29aから吐出される液滴の飛翔速度は、1m/sec〜4m/secであり、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴の飛翔速度は、6m/sec〜14m/secである。なお、第1液体吐出孔29aから吐出される液滴の体積、および、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴の体積は、互いに異なる値となるように設定する。また、第1液体吐出孔29aから吐出される液滴の飛翔速度、および、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴の飛翔速度は、互いに異なる値となるように設定する。
【0041】
図5は、制御部7により制御される、複数の吐出ユニット19における液体吐出孔29aからの液滴の吐出タイミングを説明する図である。具体的には、図5は、吐出ユニット19(共通電極39および個別電極43)へ出力される吐出信号の波形パターン(時系列変化)を示している。図5の上段は、第2液体吐出孔29aに対応する吐出信号の波形パターンであり、図5の下段は、第1液体吐出孔29aに対応する吐出信号の波形パターンである。図5において、横軸は時刻tを示し、縦軸は電位Eを示している。
【0042】
まず、図5の上段を参照して、第2液体吐出孔29aに対応する吐出信号の波形パターンについて説明する。液体吐出ヘッド5の駆動方式は、Push-Pull方式、Pull-Push方式、Pull-Push-Pull方式等の公知の駆動方式から適宜に選択されてよい。以下では、Pull-Push方式を例にとって説明する。
【0043】
Pull-Push方式では、駆動に先立って、共通電極39および第2液体吐出孔29a
対応する個別電極43に電圧が印加されている(時刻t0)。したがって、振動板37は撓み、圧力室31の容積は縮小されている。そして、パルスの立ち下り(時刻t1)に対応して、圧力室31の容積は拡大し、液体が圧力室31に引き込まれ、パルスの立ち上がり(時刻t2)に対応して、圧力室31の容積は縮小し、液体が圧力室31から送出される。これにより、液滴が第2液体吐出孔29aから吐出される。
【0044】
このように、幅T0の吐出パルス1つにより1つの液滴が吐出される。なお、最後の幅TSのパルスは、残留圧力を除去するためのキャンセルパルスである。
【0045】
図5の上段で示された、第2液体吐出孔29aに対応する吐出信号の波形パターンでは、吐出パルスの幅T0は、圧力室31の固有振動周期の半分の長さである。これにより、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴は、第1液体吐出孔29aから吐出される液滴よりも体積が大きくかつ飛翔速度が大きくなる。この結果、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴は、外部へ飛ばされることなく、記録媒体101に着弾する。
【0046】
次に、図5の下段を参照して、第1液体吐出孔29aに対応する吐出信号の波形パターンについて説明する。
【0047】
図5の上段と同様、駆動に先立って、共通電極39および第1液体吐出孔29aに対応する個別電極43に電圧が印加されている(時刻t0)。したがって、振動板37は撓み、圧力室31の容積は縮小されている。そして、パルスの立ち下り(時刻t1)に対応して、圧力室31の容積は拡大し、液体が圧力室31に引き込まれ、パルスの立ち上がり(時刻t3)に対応して、圧力室31の容積は縮小し、液体が圧力室31から送出される。これにより、液滴が第1液体吐出孔29aから吐出される。
【0048】
このように、幅T1の吐出パルス1つにより1つの液滴が吐出される。なお、最後の幅TSのパルスは、残留圧力を除去するためのキャンセルパルスである。
【0049】
図5の下段で示された、第1液体吐出孔29aに対応する吐出信号の波形パターンでは、吐出パルスの幅T1は、図5の上段の吐出パルスの幅T0よりも小さい。これにより、第1液体吐出孔29aから吐出される液滴は、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴よりも体積が小さくかつ飛翔速度が小さくなる。この結果、第1液体吐出孔29aから吐出される液滴は、記録媒体101に着弾することなく、回収部62によって回収される。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る記録装置1は、制御部7は、第2液体吐出孔29a
から吐出される液滴よりも体積が小さくかつ飛翔速度の小さい液滴を、第1液体吐出孔29aから吐出させるように、液体吐出ヘッド5を制御する。送風部61は、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴を、記録媒体101に着弾しないように、当該液滴に対して風力を加え、かつ第2液体吐出孔29aから吐出された液滴を、記録媒体101に着弾するように、当該液滴に対して風力を加える。このため、長時間使用されていない第1液体吐出孔29aに充填された液体は、乾燥しなくなり、液体の粘度が大きくなってしまう可能性を低減できる。そのため、長時間使用されていない第1液体吐出孔29aから再び液滴を吐出しようとした場合であっても、所望の体積および所望の飛翔速度で液滴を吐出することが可能となる。この結果、記録装置1では、記録媒体101に対する印字精度を向上することができる。
【0051】
なお、上述した実施形態は、本発明の実施形態の一具体例を示すものであり、種々の変形が可能である。以下、いくつかの主な変形例を示す。
【0052】
図6は、変形例に係る記録装置1aの要部を模式的に示すブロック図である。
【0053】
制御部7は、送風部61をさらに制御する。具体的には、制御部7は、送風部61に制御信号を出力することにより、送風部61の駆動を停止し、あるいは送風部61を駆動させることができる。また、制御部7は、送風部61に制御信号を出力することにより、送風ファンの回転数を制御し、送風部61により送出される風の風力も制御することができる。
【0054】
送風部61により第1液体吐出孔29aから吐出された液滴に対して風力を加える際、制御部7は、当該風力を加える方向を基準にした所定範囲に位置する第2液体吐出孔29aから液滴が吐出されていない場合に、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴に対して風力を加えるように、送風部61を制御する。すなわち、制御部7は、風下に位置する第2液体吐出孔29aから液滴が吐出されていない場合に、風上に位置する第1液体吐出孔29aから吐出された液滴に対して風力を加えるように、送風部61を制御する。これにより、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴と、第2液体吐出孔29aから吐出された液滴とが衝突する可能性を低減できる。この結果、記録装置1aは、記録媒体101に対する印字精度を向上することができる。
【0055】
なお、送風部61により第1液体吐出孔29aから吐出された液滴に対して風力を加える際、制御部7は、当該風力を加える方向を基準にした所定範囲に位置する第1液体吐出孔29aおよび第2液体吐出孔29aから液滴が吐出されていない場合に、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴に対して風力を加えるように、送風部61を制御するようにしてもよい。
【0056】
なお、上記では、制御部7は、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴よりも体積が小さくかつ飛翔速度の小さい液滴を、第1液体吐出孔29aから吐出させるように、液体吐出ヘッド5を制御する例について説明したが、これに限定されない。例えば、制御部7は、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴よりも体積が小さい液滴を、第1液体吐出孔29aから吐出させるように、液体吐出ヘッド5を制御してもよい。また、制御部7は、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴よりも飛翔速度が小さい液滴を、第1液体吐出孔29aから吐出させるように、液体吐出ヘッド5を制御してもよい。すなわち、制御部7は、第2液体吐出孔29aから吐出される液滴よりも体積の小さい液滴、および第2液体吐出孔29aから吐出される液滴よりも飛翔速度の小さい液滴の少なくとも1つを、第1液体吐出孔29aから吐出させるように、液体吐出ヘッド5を制御すればよい。
【0057】
また、送風部61の代わりに、偏向電極を用いてもよい。具体的には、液体吐出孔29aの近傍にチャージ電極を設けておく。チャージ電極は、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴に対して正または負の電荷を付与する。偏向電極は、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴に対して付与された電荷の極性と同じ極性を有している。このため、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴は、偏向電極によって斥力が働く。そのため、偏向電極は、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴を、記録媒体101に着弾しないように、当該液滴に対して力を加えることができる。
【0058】
なお、偏向電極は、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴に対して付与された電荷の極性と逆の極性を有していてもよい。この場合、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴は、偏向電極によって引力が働くことになり、偏向電極に吸引される。この結果、偏向電極は、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴を、記録媒体101に着弾しないように、当該液滴に対して力を加えることができる。
【0059】
また、回収部62は必ずしも設ける必要はない。ただし、回収部62を設けておけば、第1液体吐出孔29aから吐出された液滴によって、記録媒体101および液体吐出ヘッド5を汚す可能性を低減できる。
【0060】
また、圧力室31への圧力付与の方法は、適宜な方法とされてよい。すなわち、液体吐出ヘッド5は、ピエゾ式ヘッドに限定されず、例えば、液体を加熱して気泡を発生させることにより液体に圧力を付与するサーマル式ヘッドであってもよい。また、ピエゾ式の液体吐出ヘッド5は、撓みモードヘッドに限定されず、例えば、振動板37の振動方向に圧電体を収縮させる縦モードヘッドであってもよいし、圧電体の剪断変形を利用するシアモードヘッドであってもよい。撓みモードヘッドは、ユニモルフ型ヘッドに限定されず、互いに対向する2つの圧電体を有するバイモルフ型ヘッドであってもよい。
【0061】
また、液体吐出孔29a、ディセンダ29、圧力室31、および供給孔33を含む個別流路25の形状、および、共通流路27の形状は、実施形態において例示したものに限定されない。例えば、液体吐出孔29a、ディセンダ29、圧力室31、および供給孔33は、その一部または全部が一体化されてよく、必ずしもその境界位置が明確でなくてもよい。例えば、サーマルヘッドにおいて、ディセンダと圧力室とは一体化されてよい。また、例えば、共通流路(副流路27c)は、平面視において必ずしも圧力室31に重なっている必要はなく、圧力室31の側方等に位置してもよい。また、例えば、供給孔33が開口する共通流路(副流路27c)は、搬送方向や搬送方向に斜めに交差する方向に延びてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1,1a 記録装置
3 搬送部
5 液体吐出ヘッド
7 制御部
29a 液体吐出孔
29a 第1液体吐出孔
29a 第2液体吐出孔
61 送風部(印加部)
62 回収部
101 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液体吐出孔を有した液体吐出ヘッドと、前記液体吐出孔から吐出された液滴に対して力を加えるための印加部と、前記液体吐出ヘッドの動作を制御する制御部とを備え、前記液体吐出孔から液滴を吐出することにより記録媒体に対して印字する記録装置であって、
前記複数の液体吐出孔のうち、液滴が吐出されてから所定時間以上次の液滴が吐出されていない液体吐出孔を第1液体吐出孔とし、液滴が吐出されてから所定時間未満に次の液滴が吐出された液体吐出孔を第2液体吐出孔とするとき、
前記制御部は、前記第2液体吐出孔から吐出される液滴よりも体積の小さい液滴、および前記第2液体吐出孔から吐出される液滴よりも飛翔速度の小さい液滴の少なくとも1つを、前記第1液体吐出孔から吐出させるように、前記液体吐出ヘッドを制御し、
前記印加部は、前記第1液体吐出孔から吐出された液滴を、前記記録媒体に着弾しないように、当該液滴に対して力を加え、かつ前記第2液体吐出孔から吐出された液滴を、前記記録媒体に着弾するように、当該液滴に対して力を加える、記録装置。
【請求項2】
前記第1液体吐出孔から吐出された液滴を回収する回収部をさらに備える、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記印加部は、前記液体吐出孔から吐出された液滴に対して風力を加えるための送風部である、請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記液体吐出ヘッドに対して前記記録媒体を相対的に移動させる搬送部をさらに備え、
前記制御部は、前記搬送部による前記記録媒体の搬送方向と同じ方向に、前記第1液体吐出孔から吐出された液滴に対して風力を加える、請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記印加部をさらに制御し、
前記印加部により前記第1液体吐出孔から吐出された液滴に対して力を加える際、前記制御部は、当該力を加える方向を基準にした所定範囲に位置する前記第2液体吐出孔から液滴が吐出されていない場合に、前記第1液体吐出孔から吐出された液滴に対して力を加えるように、前記印加部を制御する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−153009(P2012−153009A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14123(P2011−14123)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】