記録装置
【課題】ロール体のイナーシャが比較的大きい場合であっても斜行状態の補正能力が低下しない記録装置を提供する。
【解決手段】記録装置は、ロール体20から引き出された記録媒体3をピンチローラ12とともに挟持し、回転することによって記録媒体3を搬送してロール体20を第1の方向に回転させる搬送ローラ11と、ロール体20に第2の方向のトルクを加えてロール体20および搬送ローラ11の間の記録媒体3の弛みを解消するトルク発生機構21と、を備える。ロール体20の周速度を検出するロール体周速度検出センサ22と、ロール体周速度検出センサ22により検出されたロール体20の周速度に基づいてロール体20および搬送ローラ11の間の記録媒体3が弛んでいるか否かを判断し、記録媒体3が弛んでいないと判断した場合に記録媒体3の搬送を搬送ローラ11によって加速させる制御部と、をさらに備えている。
【解決手段】記録装置は、ロール体20から引き出された記録媒体3をピンチローラ12とともに挟持し、回転することによって記録媒体3を搬送してロール体20を第1の方向に回転させる搬送ローラ11と、ロール体20に第2の方向のトルクを加えてロール体20および搬送ローラ11の間の記録媒体3の弛みを解消するトルク発生機構21と、を備える。ロール体20の周速度を検出するロール体周速度検出センサ22と、ロール体周速度検出センサ22により検出されたロール体20の周速度に基づいてロール体20および搬送ローラ11の間の記録媒体3が弛んでいるか否かを判断し、記録媒体3が弛んでいないと判断した場合に記録媒体3の搬送を搬送ローラ11によって加速させる制御部と、をさらに備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に文字や画像を記録する記録装置に関する。特に、記録媒体の斜行状態を補正する機能を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙といった記録媒体に記録ヘッドを用いて文字や画像などの記録を行う記録装置が知られている。記録装置に用いられる記録媒体としては、所定の寸法に予め切断されたカット紙の他に、長尺の記録媒体がロール状に巻き回されてなるロール体が使用されている。
【0003】
ロール体を用いる記録装置では、ロール体は、記録装置に対して回転可能に設けられたスプール軸に保持される。記録装置は、ロール体から引き出された記録媒体を搬送ローラおよびピンチローラで挟持し、該搬送ローラを回転させて記録媒体をスプール軸の回転軸と垂直に交わる方向(以下、搬送方向)へ搬送する。
【0004】
記録媒体が搬送されることによってロール体が所定の方向(以下、正回転方向)へ回転させられ、ロール体から次々と記録媒体が引き出される。搬送ローラにより記録媒体は記録ヘッドへ搬送され、記録ヘッドが記録情報に基づいて動作することによって記録媒体に記録画像が形成される。
【0005】
ところで、ロール体から引き出された記録媒体が搬送方向に対して傾斜した状態(以下、斜行状態)で搬送ローラおよびピンチローラに挟持されていると、記録媒体は搬送方向に対して傾斜した方向に搬送され、記録媒体に記録される画像の品質が低下する。そこで、記録媒体に記録を行う前に記録媒体の斜行状態を補正する機能を備えた記録装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0006】
特許文献1では、記録媒体を一定速度で一定長さ搬送させることによって記録媒体の斜行状態を補正する記録装置が開示されている。当該記録装置には、正回転方向とは反対の方向(以下、逆回転方向)のトルクをロール体に発生させるトルク発生機構が設けられている。逆回転方向のトルクがロール体にかけられた状態で搬送ローラが記録媒体を引っ張ることによって、ロール体と搬送ローラとの間に位置する記録媒体にバックテンションが発生する。
【0007】
記録媒体はバックテンションがかけられた状態で搬送されることによって搬送方向と平行になるように搬送ローラ間をわずかに滑りながら移動する。その結果、記録媒体の斜行状態が補正される。
【0008】
特許文献1に開示されている記録装置は、記録媒体を一定長さ搬送しただけでは斜行状態が解消しない場合に、斜行状態を補正する動作(以下、単に斜行補正と称す)によって搬送された一定長さの記録媒体をロール体に一旦巻き直し、前述の斜行補正を再び行う。すなわち、斜行状態の程度によっては、記録媒体の一部は搬送ローラおよびピンチローラによって複数回挟持され、記録媒体の表面にボコ付きや擦り傷が発生し、記録媒体の品質が劣化しやすかった。特に光沢紙やクリアフィルムなどの高品質の記録媒体では、ボコ付きや擦り傷によって記録画像の品質が著しく低下していた。
【0009】
このような理由から、より短い搬送長さでより程度の悪い斜行状態を補正することができる、すなわち斜行状態の補正能力がより高い記録装置が求められていた。
【0010】
記録媒体にバックテンションを発生させて斜行状態を補正する方法では、記録媒体に発生するバックテンションが大きいほど斜行状態がより補正されやすいことが知られている。また、記録媒体に発生するバックテンションは、記録媒体を一定速度で搬送する場合よりも加速させながら記録媒体を搬送する場合の方が大きいことがわかっている。これらのことを利用して、記録媒体の加速および減速を一定間隔で繰り返し行うことによって斜行状態の補正能力を向上させた記録装置が提案されている。
【0011】
記録媒体の加速および減速を一定間隔で繰り返し行って斜行状態の補正を行う記録装置の動作について、図11を用いて説明する。図11は、当該記録装置における、搬送ローラおよび周速度(搬送ローラおよびロール体の外周における速度をいう)の時系列変化を示すグラフである。
【0012】
図11に示すように、搬送ローラは、時間t1(搬送ローラが停止している状態)から時間t2までの期間では加速回転駆動し、時間t2から時間t3までの期間では等速回転駆動する。さらに搬送ローラは、時間t3から時間t4までは減速回転駆動し、時間t4において回転を停止する。搬送ローラが回転している間は、記録媒体は記録ヘッドへ向かって搬送される。
【0013】
ロール体は、時間t1から時間t2までの期間では、記録媒体に引っ張られ続けるため搬送ローラの周速度とほぼ同じ周速度で正回転方向へ回転する。搬送ローラが等速回転駆動に切り替えられても(時間t2)、ロール体はロール体のイナーシャによりしばらくの間加速を続ける。したがって、ロール体の周速度は搬送ローラの周速度を上回り、搬送ローラとロール体との間の記録媒体が弛む。
【0014】
その後、ロール体は、トルク発生機構のトルクや摩擦抵抗を受けて減速する。ロール体のイナーシャの大きさによっては、ロール体の減速度は搬送ローラの減速度よりも小さくなる。この場合には、搬送ローラの回転が停止(時間t4)してもロール体は回転し続け、搬送ローラとロール体の間の記録媒体がさらに弛む(期間D)。
【0015】
ロール体の周速度が0になる(時間t5)と、ロール体は、トルク発生機構のトルクにより逆回転方向へ回転し始め、弛んでいる記録媒体をロール体へ巻き始める。記録媒体の弛みがなくなったところでロール体の回転が止まる。なお、ロール体へ巻き直される記録媒体は、まだ搬送ローラおよびピンチローラによって狭圧されていない。
【0016】
その後、再び搬送ローラは加速回転駆動し、記録媒体にバックテンションを生じさせながら記録媒体を搬送する。
【0017】
記録媒体の加速および減速を繰り返し行う記録装置では、記録媒体が一定長さ搬送されるまでに記録媒体が複数回加速される。したがって、記録媒体が1回しか加速されない記録装置に比べ、記録媒体により大きいバックテンションを発生させることができ、斜行状態の補正能力が向上する。その結果、より短い搬送長さでより程度の悪い斜行状態を補正することができ、斜行補正の回数が減って記録媒体の品質の劣化を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2006−315777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、記録媒体の加速と減速を繰り返し行う記録装置では、ロール体のイナーシャ(慣性)の大きさによっては、記録媒体を加速させても記録媒体にバックテンションが発生しない場合があった。具体的には、搬送ローラとロール体との間の記録媒体の弛みがなくなる前(図11の期間Dや時間t5のタイミング)に搬送ローラが再び加速回転駆動する場合である。記録媒体が弛んでいる状態で搬送ローラが加速回転駆動しても記録媒体にバックテンションが発生しないため、斜行状態は補正されない。
【0020】
特に、期間Dはロール体のイナーシャの大きさに依存し、ロール体のイナーシャが大きいほど期間Dは長くなる。ロール体のイナーシャは、ロール体の巻径(外径)、ロール体の芯を構成する中空の紙管部材の外径、ロール体の幅および記録媒体の単位質量(坪量)によって異なる。
【0021】
そのため、常に一定間隔で記録媒体の加速および減速を繰り返す記録装置では、イナーシャが比較的大きいロール体を用いた場合に、記録媒体が弛んでいる状態で搬送ローラの加速回転駆動が行われる虞があった。すなわち、記録媒体の加速および減速を繰り返しても記録媒体にバックテンションが発生しないため、記録装置の斜行状態の補正能力が低下していた。
【0022】
そこで、本発明は、ロール体のイナーシャが比較的大きい場合であっても斜行状態の補正能力が低下しない記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明は、回転可能に保持されたロール体から引き出された記録媒体をピンチローラとともに挟持し、回転することによって該記録媒体を搬送して該ロール体を第1の方向に回転させる搬送ローラと、ロール体に第1の方向とは反対の第2の方向のトルクを加えてロール体および搬送ローラの間の記録媒体の弛みを解消するトルク発生機構と、を備えた記録装置に係る。この態様において、ロール体の周速度を検出するロール体周速度検出センサと、ロール体周速度検出センサにより検出されたロール体の周速度に基づいてロール体および搬送ローラの間の記録媒体が弛んでいるか否かを判断し、該記録媒体が弛んでいないと判断した場合に記録媒体の搬送を搬送ローラによって加速させる制御部と、をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の記録装置によれば、ロール体のイナーシャが比較的大きい場合であっても斜行状態の補正能力が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る記録装置の主要部の構成を示す斜視図。
【図2】図1に示す記録装置の側面図。
【図3】ロール体の外径と記録媒体に作用する張力の大きさとの関係を示すグラフ。
【図4】記録媒体の搬送速度、および記録媒体に作用する総バックテンションの大きさの時系列変化を示すグラフ。
【図5】斜行補正のシーケンス全体を説明するためのフローチャート図。
【図6】ピッチ送り搬送のシーケンスを示すローチャート図。
【図7】記録装置の制御ブロック図。
【図8】連続搬送時における、搬送ローラおよびロール体の周速度の時系列変化、および記録媒体に作用する総バックテンションの時系列変化を示すグラフ。
【図9】ピッチ送り搬送時における、搬送ローラおよびロール体の周速度の時系列変化、および記録媒体に作用する総バックテンションの時系列変化を示すグラフ。
【図10】ピッチ送り搬送時における、搬送ローラおよびロール体の周速度の時系列変化、および記録媒体に作用する総バックテンションの時系列変化を示すグラフ。
【図11】記録媒体の搬送速度の加速と減速を一定間隔で繰り返し行う記録装置における、搬送ローラの周速度およびロール体の周速度の時系列変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図面を参照して、本発明に係る記録装置の好適な実施形態を例示する。ただし、本実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する主旨のものではない。
【0027】
図1は、本実施形態に係る記録装置の主要部の構成を示す斜視図である。図1に示すように、記録装置は略直方体形状の筐体1を備えており、筐体1上にプラテン2が配設されている。また筐体1内には、記録媒体3をプラテン2に吸着させるための吸引装置4が設けられている。
【0028】
さらに、筐体1には、筐体1の長手方向に沿ってメインレール5が設置されている。メインレール5にキャリッジ6が支持されており、キャリッジ6はメインレール5に沿った方向(以下、主走査方向X)へ往復移動する。
【0029】
キャリッジ6は、インクジェット方式のプリントヘッド7を搭載している。プリントヘッド7には、発熱体を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電アクチュエータを用いた方式、MEMS素子を用いた方式など、さまざまな方式を用いることができる。
【0030】
また、記録装置は、キャリッジモータ8を備えている。キャリッジモータ8は、キャリッジ6を主走査方向Xへ移動させるための駆動源である。キャリッジモータ8の駆動力はキャリッジベルト9を介してキャリッジ6に伝達される。
【0031】
キャリッジ6の主走査方向Xにおける位置は、リニアエンコーダ(不図示)を用いて把握される。リニアエンコーダは、主走査方向Xに沿って筐体1に設けられた直線状のエンコーダパターン10と、キャリッジ6に搭載され、エンコーダパターン10を光学的、磁気的あるいは機械的に読み取る読取部(不図示)と、を含む。
【0032】
記録装置により文字や画像が記録されるシート状の記録媒体3は、プラテン2上を、主走査方向Xと直交する副走査方向Yへ搬送される。記録媒体3の搬送は、記録媒体3を挟持する搬送ローラ11およびピンチローラ12(図2)、並びに搬送ローラ11を回転させるベルト13および搬送モータ14からなる搬送手段15により行われる。
【0033】
搬送ローラ11の駆動状態(回転角、周速度)は、ロータリエンコーダを含む搬送ローラ周速度検出センサ16で検出される。ロータリエンコーダは、搬送ローラ11の回転角および角速度を検出するものである。
【0034】
ロータリエンコーダには、搬送ローラ11と一緒に回転する円周状のエンコーダパターン17と、エンコーダパターン17を光学的、磁気的あるいは機械的に読み取る読取部18とが設けられている。ロータリエンコーダによって検出された搬送ローラ11の角速度に搬送ローラ11の外径を乗ずることによって搬送ローラ11の周速度が得られる。
【0035】
また、キャリッジ6には、記録媒体3の端部を検出する端部検出センサ19が設けられている。
【0036】
図2は、図1に示す記録装置の側面図である。記録媒体3はロール状に巻き回されている。以下、記録媒体3の、ロール状に巻き回された部分をロール体20と称し、ロール体20から引き出された部分を単に記録媒体3と称す。
【0037】
図2に示すように、ロール体20は記録装置に回転可能に設けられたスプール軸(不図示)に保持されている。したがって、記録媒体3が副走査方向Yへ搬送されることによって、ロール体20は記録媒体3を送り出す方向(以下、第1の方向R1)へ回転させられる。
【0038】
スプール軸には、第1の方向R1とは反対の方向(以下、第2の方向R2)のトルクをロール体20に作用させるためのトルク発生機構21を備えている。具体的には、スプール軸はロール体20と一緒に回転するように設けられており、トルク発生機構21の一部である可変式トルクリミッタ(不図示)がスプール軸に設けられている。
【0039】
可変式トルクリミッタは、ロール体20に作用させるトルクの大きさを変更可能とするものである。可変式トルクリミッタによるトルクを調整することで、記録媒体3に作用する張力の大きさを調整することができる。
【0040】
また、記録装置には、ロール体20の周速度を検出するロール体周速度検出センサ22が設けられている。ロール体周速度検出センサ22は、ロール体20の回転角および角速度を検出するロータリエンコーダ(不図示)を含んでいる。ロータリエンコーダによって検出されたロール体20の角速度にロール体20の外径を乗ずることによって搬送ローラ11の周速度が得られる。
【0041】
ここで、記録媒体3の斜行状態が補正されるメカニズムについて説明する。
【0042】
記録媒体3の斜行状態の補正は、記録媒体3にバックテンションを作用させ、記録媒体3を搬送ローラ11上でわずかに滑らせることによって行われている。したがって、記録媒体3に作用するバックテンションが大きいほど斜行補正の能力が高い。
【0043】
記録媒体3に作用する総バックテンションの大きさは、トルク発生機構21のトルクにより記録媒体3に作用するバックテンションと、ロール体20の慣性力により記録媒体3に作用するバックテンションと、の合算値である。
【0044】
トルク発生機構21のトルクにより記録媒体3に作用するバックテンションTは、トルク発生機構21のトルクMおよびロール体20の外径rを用いて次の式で表される。
【0045】
【数1】
【0046】
すなわち、トルク発生機構21のトルクにより記録媒体3に作用するバックテンションTは次のように表される。
【0047】
【数2】
【0048】
ロール体20の慣性力により記録媒体3に作用するバックテンションFは、ロール体20の慣性モーメントI、ロール体20の回転角θおよびロール体20の外径rを用いて次の式で表される。
【0049】
【数3】
【0050】
ロール体20の慣性モーメントIは、ロール体20の質量t1、ロール体20の外径r、ロール体20の芯を構成する中空の紙管部材の外径(すなわちロール体20の内径R)を用いて次の式で表される。
【0051】
【数4】
【0052】
また、ロール体20の回転角θ、ロール体20の外径rおよび搬送による記録媒体3の加速度αは、次の関係を有している。
【0053】
【数5】
【0054】
さらに、ロール体20の質量t1は、主走査方向Xにおける記録媒体3の幅(すなわちロール体20の幅l)、および記録媒体3の坪量mを用いて次の式で表される。
【0055】
【数6】
【0056】
数3ないし数6に示された式を用いて、ロール体20の慣性力により記録媒体3に作用するバックテンションFは次の式で表される。
【0057】
【数7】
【0058】
図3は、数2および数7に示された式から導き出される、ロール体20の外径rと記録媒体3に作用するバックテンションの大きさとの関係を示すグラフである。図3に示されるグラフにおいて、横軸はロール体20の外径rを示し、縦軸は記録媒体3に作用するバックテンションの大きさを示している。
【0059】
図3に示すように、ロール体20の外径rが小さくなるにつれて、ロール体20の慣性力によるバックテンションFが小さくなり、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTが大きくなる。すなわち、外径rが比較的大きいロール体20では、記録媒体3に作用する総バックテンションに関して、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTに比べてロール体20の慣性力によるバックテンションFが支配的になる。外径rが比較的小さいロール体20では、ロール体20の慣性力によるバックテンションFに比べてトルク発生機構のトルクによるバックテンションTが支配的になる。
【0060】
なお、数7に示される式からわかるように、記録媒体3の坪量m、ロール体20の幅lが大きくなるにつれてロール体20の慣性力によるバックテンションFは大きくなり、ロール体20の内径Rが大きくなるにつれてバックテンションFは小さくなる。すなわち、記録媒体3に作用する総バックテンションに関して、坪量m、幅lが比較的大きく内径Rが比較的小さい場合にはロール体20の慣性力によるバックテンションFが支配的になる。
【0061】
次に、記録媒体3の搬送時に記録媒体3に作用する総バックテンションの大きさについて、図2および図4を用いて説明する。図4は、搬送ローラ11の周速度、および記録媒体3に作用する総バックテンションの大きさの時系列変化を示すグラフである。
【0062】
搬送ローラ11が記録媒体3を副走査方向Yへ搬送することによって、記録媒体3がロール体20から引き出され、ロール体20が第1の方向R1へ回転する。なお、記録媒体3は搬送ローラ11上をわずかに滑るだけであるため、記録媒体3の搬送速度は搬送ローラ11の周速度とほぼ等しい。
【0063】
図4に示すように、搬送ローラ11が加速する期間(加速期間)では、記録媒体3およびロール体20も加速する。したがって、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTとロール体20の慣性力によるバックテンションFが記録媒体3に作用する。
【0064】
記録媒体3が一定速度で搬送される期間(定速期間)では、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTのみが記録媒体3に作用する。ロール体20の周速度が一定になり、ロール体20の慣性力によるバックテンションFが発生しないためである。
【0065】
搬送ローラ11が減速する期間(減速期間)では、搬送ローラ11とロール体20との間で記録媒体3が弛むため、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTやロール体20の慣性力によるバックテンションFは記録媒体3に発生しない。
【0066】
したがって、記録媒体3の総バックテンションに関して慣性力によるバックテンションFが支配的であるロール体20では、加速期間を繰り返し行うピッチ送り搬送で記録媒体3を搬送することによって、記録装置の斜行状態の補正能力が向上する。ロール体20の慣性力によるバックテンションTが複数回記録媒体3に作用するからである。
【0067】
記録媒体3の総バックテンションに関してトルク発生機構21のトルクによるバックテンションTが支配的であるロール体20では、加速期間を繰り返し行うピッチ送り搬送で記録媒体3を搬送しても記録媒体3の総バックテンションはほとんど大きくならない。ロール体20の慣性力によるバックテンションTが比較的小さいからである。したがって、このようなロール体20では、一定の搬送速度で記録媒体3を搬送してもよい。
【0068】
次に、本実施形態の記録装置における斜行補正について、図1,2,5ないし10を用いて説明する。図5は、斜行補正の動作のシーケンス全体を説明するためのフローチャート図である。図6は、図5に示すシーケンスの中から、ピッチ送り搬送のシーケンスを抜き出したフローチャート図である。図7は、記録装置の制御ブロック図である。
【0069】
図1,2,5および7に示すように、記録媒体3が記録装置にセットされた後(S101)、記録媒体3の種類(例えば、光沢紙やクリアフィルムといった種類)が選択される(S102)。記録媒体3の種類が選択されることによって、媒体選択インターフェース23から、記録媒体3の坪量、ロール体20の内径rおよび記録媒体の摩擦係数の情報が制御部24へ入力される。
【0070】
続いて、制御部24は、キャリッジ6を主走査方向Xへ移動させ、端部検出センサ19により記録媒体3の幅(すなわちロール体20の幅l)を検出する(S103)。その後、制御部24は、記録媒体3を搬送ローラ11とロール体20との間でピンと張った状態で記録媒体3を所定の長さ搬送するプレフィードを行う。制御部24はプレフィードによってロール体20の外径rを算出する(S104)。
【0071】
ここで、プレフィードによるロール体20の外径rの算出方法について述べる。
【0072】
記録媒体3は搬送ローラ11上でほとんど滑らないため、記録媒体3の搬送長さは、搬送ローラ11の外周が回転によって移動した距離とほぼ同じである。したがって、搬送ローラ11の回転角に搬送ローラ11の外径を乗ずることによって、搬送長さが得られる。搬送ローラ11の回転角は、ロータリエンコーダを含む搬送ローラ周速度検出センサ16によって検出される。
【0073】
記録媒体3は搬送ローラ11とロール体20との間でピンと張られているため、ロール体20から引き出された記録媒体3の長さは記録媒体3の搬送長さと同じである。したがって、記録媒体3の搬送長さをロール体20の回転角で除することによってロール体20の外径rが得られる。ロール体20の回転角は、ロータリエンコーダを含むロール体周速度検出センサ22から得られる。
【0074】
以上のように、プレフィードによってロール体20の外径rが算出される。
【0075】
制御部24は、入力されたロール体20の外径r、内径Rおよび幅l並びに記録媒体3の坪量から、ロール体20のイナーシャを算出する。また、制御部24は、算出したロール体20のイナーシャが所定の閾値以下であるか否かを判断する(S105)。所定の閾値は、例えば、トルク発生機構21のトルクにより記録媒体3に作用するバックテンションと、ロール体20の慣性力により記録媒体3に作用するバックテンションと、が等しくなるロール体20のイナーシャである。
【0076】
ロール体20のイナーシャが所定の閾値以下の場合、制御部24は、記録媒体3に作用する総バックテンションに関してトルク発生機構21のトルクによるバックテンションがロール体20の慣性力によるバックテンションよりも支配的であると判断する。この場合には、制御部24は、比較的長い時間等速で記録媒体3を搬送する連続搬送を行う(S106)。
【0077】
S105において、制御部24は、ロール体20のイナーシャが所定の閾値よりも以上であると判断した場合にはピッチ送り搬送を行う(S107)。
【0078】
連続搬送動作(S106)における搬送ローラ11およびロール体20の動作並びに記録媒体3に作用する総バックテンションについて、図8を用いて説明する。図8(t1)は、連続搬送時における、搬送ローラ11およびロール体20の周速度の時系列変化を示すグラフである。図8(b)は、連続搬送時における、記録媒体3に作用する総バックテンションの時系列変化を示すグラフである。
【0079】
図8(t1)に示すように、制御部24は、搬送ローラ11を回転させ始める。搬送ローラ11の周速度が所定の周速度まで上昇したところで、搬送ローラ11は当該所定の周速度を維持して回転を続ける。
【0080】
ロール体20のイナーシャは比較的小さいため、ロール体20はトルク発生機構21によるトルクの影響を受けやすく、ロール体20の慣性力で回転することはほとんどない。すなわち、ロール体20の周速度は搬送ローラ11の周速度に追従する。
【0081】
したがって、記録媒体3には、図8(b)に示すように、連続搬送中、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTが常に作用する。ロール体20の慣性力によるバックテンションFは、加速期間だけ記録媒体3に生じ、かつロール体20のイナーシャが比較的小さいためバックテンションFの大きさも比較的小さい。
【0082】
ピッチ送り搬送動作(S107)における搬送ローラ11およびロール体20の動作並びに記録媒体3に作用する総バックテンションについて、図6および図9を用いて説明する。図9(t1)は、ピッチ送り搬送時における、搬送ローラ11およびロール体20の周速度の時系列変化を示すグラフである。図9(b)は、ピッチ送り搬送時における、記録媒体3に作用する総バックテンションの時系列変化を示すグラフである。
【0083】
図6および図9(t1)に示すように、まず制御部24は、ピッチ送り済み回数が設定回数以内か否かを判断する(S201)。なお、当該設定回数は少なくとも1回に設定されている。ピッチ送り済み回数が設定回数以下である場合には、制御部24は搬送ローラ11を加速させる(S202)。
【0084】
搬送ローラ11の周速度が予め設定された第1の周速度に到達したところ、すなわち記録媒体3の搬送速度が第1の搬送速度に到達したところで、制御部24は搬送ローラ11を減速させる(S203)。その後、搬送ローラ11の周速度が予め設定された第2の周速度まで低下したところで、制御部24は搬送ローラ11を第2の周速度で回転させ続ける(S204)。すなわち、記録媒体3の搬送速度は、第1の搬送速度まで上昇した後第2の搬送速度まで低下し、第2の搬送速度で搬送され続ける。
【0085】
ロール体20は、加速期間では、記録媒体3に弛みがないため搬送ローラ11の周速度と同じ周速度で回転する。搬送ローラ11が減速し始めても、ロール体20はロール体20の慣性力により加速を続ける。したがって、ロール体20の周速度が搬送ローラ11の周速度を上回り、記録媒体3が弛む。
【0086】
その後、ロール体20は、トルク発生機構21のトルクや摩擦抵抗により減速し、ロール体20の周速度は搬送ローラ11の周速度を下回る。その結果、記録媒体3の弛みが徐々に解消され、記録媒体3の弛みがなくなったところでロール体20は搬送ローラ11の周速度と同じ周速度で回転する。
【0087】
制御部24は、ロール体周速度検出センサ22により検出されたロール体20の周速度を継続して取得しており(S205)、ロール体20の周速度に基づいて記録媒体3が弛んでいるか否かを判断する(S206)。
【0088】
ここで、制御部24による、記録媒体3が弛んでいるか否かの判断の基準について、例を用いて説明する。
【0089】
記録媒体3が弛んでいない状態では、ロール体20は搬送ローラ11と同じ一定の周速度で回転する。すなわち、ロール体20が一定の周速度で回転していない場合には記録媒体3が弛んでいる状態である。
【0090】
したがって、制御部24は、ロール体20の周速度が変動している場合には記録媒体3が弛んでいると判断し、ロール体20の周速度が変動していない場合には記録媒体3が弛んでいないと判断することができる。
【0091】
また、ロール体20および搬送ローラ11の周速度を比較することによっても記録媒体3が弛んでいるか否かを判断することができる。具体的には、記録媒体3が弛んでいない状態では、ロール体20は搬送ローラ11と同じ周速度で回転する。すなわち、ロール体20の周速度が搬送ローラ11の周速度と一致していない場合、記録媒体3は弛んでいる状態である。
【0092】
記録媒体3が弛んでいる状態であっても、ロール体20および搬送ローラ11の周速度が同じになる場合がある。例えば、ロール体20の周速度が、搬送ローラ11の周速度よりも大きい周速度から搬送ローラ11の周速度よりも小さい周速度へ低下する瞬間である(図9に示すタイミングt6)。
【0093】
このような瞬間を記録媒体3が弛んでいない状態であると制御部24が誤判断しないように、制御部24はロール体20が搬送ローラ11と同じ周速度で少なくとも所定の時間の間、回転している場合にのみ記録媒体3が弛んでいない状態であると判断する。当該所定の時間は予め制御部24に設定されている。
【0094】
なお、ここで言う「同じ周速度」とは、ロール体20の周速度と搬送ローラ11の周速度が完全に一致している場合、に限られず、記録媒体3にわずかな弛みが生じる程度にロール体20の周速度と搬送ローラ11の周速度が異なっている場合も含む。すなわち、制御部24は、ロール体20および搬送ローラ11の周速度の差分値が最小値0m/sおよびその近傍の値以下である場合に記録媒体3が弛んでいないと判断してもよい。
【0095】
このように、制御部24は、記録媒体3が弛んでいるか否かを判断し(S206)、記録媒体3が弛んでいないと判断した場合には1回のピッチ送り搬送が完了したとしてS201を再び実行する。記録媒体3が弛んでいないと判断した場合には、継続して搬送ローラ11を等速駆動させ、再びロール体20の周速度を取得する(S205)。
【0096】
制御部24は再びS201を実行し、ピッチ送り搬送の回数が設定回数以下であるか否かを判断する。ピッチ送り搬送の回数が設定回数以下である場合には、制御部24は搬送ローラ11を加速させる(S202)。
【0097】
このとき、記録媒体3は弛んでいないため、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTおよびロール体20の慣性力によるバックテンションFが再び記録媒体3に作用し、斜行状態が補正される。
【0098】
制御部24は、S201においてピッチ送り搬送の回数が設定回数を超えたと判断した場合には、ピッチ送り搬送を終了する(S207)。
【0099】
図5に示すように、制御部24は、連続搬送(S106)またはピッチ送り搬送(S107)が終了したところで、端部検出センサ19を用いて記録媒体3の主走査方向Xにおける端部を検出する(S108)。検出された記録媒体3の主走査方向Xにおける端部の位置から斜行量を算出し、該斜行量が所定の閾値以下か否かを判断する(S109)。
【0100】
斜行量が所定の閾値以下でないと判断した場合には、記録媒体3を再度セットするように記録装置のユーザーに指示を出す(S110)。斜行量が所定の閾値以下であると判断した場合には、記録媒体3を所定の待機位置へ搬送し(S111)、斜行補正を終了する。
【0101】
本実施形態に係る記録装置の制御部24は、ピッチ送り搬送において、ロール体20の周速度に基づいて記録媒体3が弛んでいるか否かを判断する。すなわち、ロール体20のイナーシャが変化して記録媒体3の弛みが解消されるまでの時間が変化しても、より正確に記録媒体3が弛んでいるか否かを判断することができる。
【0102】
搬送ローラ11の加速時に記録媒体3が弛んでいないため、記録媒体3にはトルク発生機構21のトルクによるバックテンションTおよびロール体20の慣性力によるバックテンションFが作用する。したがって、記録媒体の加速および減速を複数回繰り返しても常に記録媒体にバックテンションが発生し、記録装置の斜行状態の補正能力の低下を抑制することができる。
【0103】
図10は、ピッチ送り搬送時における、搬送ローラ11およびロール体20の周速度の時系列変化、並びに記録媒体3に作用する総バックテンションの時系列変化を示すグラフ。なお、図9に示すグラフと、図10に示すグラフとでは、ロール体20のイナーシャの大きさが異なっており、より小さいイナーシャを有するロール体20を用いた場合が図10に示されている。
【0104】
図9および図10に示すように、ロール体20のイナーシャが小さいほどロール体20の慣性力によるバックテンションは小さくなる。したがって、ピッチ送り搬送における斜行状態の補正能力を高めるために加速および減速の繰り返し回数をより多く設定する必要があると考えられる。
【0105】
しかし、ロール体20のイナーシャが小さいほどロール体20はトルク発生機構21のトルクの影響をより受けやすい。したがって、ロール体20の減速度はより大きくなり、定速期間はより短くなる。すなわち、同一時間内において、搬送ローラ11の加速および減速がより多く繰り返されるため、斜行状態の補正能力は悪化しない。
【0106】
なお、本実施形態では、定速期間において搬送ローラ11が一定の周速度で回転することによって記録媒体3の弛みを解消しているが、定速期間に搬送ローラ11の回転を停止させることもできる。すなわち、定速期間では記録媒体3の搬送が停止される。
【0107】
この場合には、トルク発生機構21がロール体20を第2の方向R2へ回転させるため、搬送ローラ11とロール体20との間で弛んでいる記録媒体3は、ロール体20に再び巻きなおされる。定速期間に記録媒体3が副走査方向Yへ搬送されないため、より短い搬送長さで斜行状態を補正することができる。
【0108】
また、図9に示される加速期間と減速期間の間に、搬送ローラ11が第1の周速度で定速回転をする定速期間を設けてもよい。第1の周速度は第2の周速度よりも大きいため、搬送ローラ11が第1の周速度で記録媒体3を搬送することによって、第2の周速度で記録媒体3の弛みを解消する場合よりも短い時間で記録媒体3の弛みを解消することができる。この場合、制御部24は、記録媒体3の弛みが解消された場合に当該定速期間から減速期間へ移行させることが望ましい。
【0109】
記録媒体3の1回の加速および減速で補正される斜行量は、記録媒体3に作用する総バックテンションの大きさによって変化する。また、記録媒体3に作用する総バックテンションの大きさは、ロール体20のイナーシャの大きさに依存する。
【0110】
したがって、制御部24は、ロール体20のイナーシャの大きさに基づいて、記録媒体3の加速および減速の繰り返し回数を変更するものであってもよい。当該繰り返し回数が減ることによって、斜行補正の時間を短縮することができる。
【0111】
なお、ロール体20のイナーシャは、ロール体20の外径rおよび内径R、並びに記録媒体3の坪量および幅lにより定まるため、これらの値に応じて記録媒体3の加速および減速の繰り返し回数を変更してもよい。
【0112】
また、ロール体20の減速度はロール体20のイナーシャの大きさに依存する。すなわち、ロール体20のイナーシャが大きいほどロール体20の減速度は小さい。したがって、ロール体20のイナーシャがより大きいには搬送ローラ11の減速度をより小さくし、減速期間をより長くしてもよい。
【0113】
その結果、次のような効果が得られる。すなわち、図9に示す場合において、減速期間における搬送ローラ11の周速度は定速期間における搬送ローラ11の周速度よりも大きいため、減速期間のほうが定速期間よりも弛んでいる記録媒体3を多く搬送することができる。したがって、搬送ローラ11の減速度をより小さくして減速期間をより長くすることによって、記録媒体3の弛みをより短い時間で解消することができる。
【0114】
さらに、制御部24は、記録媒体3の摩擦係数に応じて、記録媒体3の加速と減速の繰り返し回数を変更するものであってもよい。記録媒体3の摩擦係数が小さい場合には、記録媒体3は搬送ローラ11上を滑って主走査方向Xへ移動しやすくなる。したがって、より少ない繰り返し回数で斜行状態を補正することができる。
【0115】
本実施形態では、トルク発生機構21は、可変式トルクリミッタによりロール体20に作用するトルクの大きさを変更することができる。この場合には、制御部24は、トルク発生機構21がロール体20に作用させるトルクの大きさに基づいて、記録媒体3の加速と減速の繰り返し回数を変更するものであってもよい。
【0116】
例えば、ロール体20に作用するトルクが大きいほど、記録媒体3に作用するバックテンションは大きくなる。したがって、記録媒体3の加速と減速の繰り返し回数を少なくすることができる。
【0117】
また、制御部24は、図9に示す加速期間における搬送ローラ11の加速度に応じて、記録媒体3の加速と減速の繰り返し回数を変更するものであってもよい。例えば、搬送ローラ11の加速度が大きいほどより大きいバックテンションが記録媒体3に作用する。1回の記録媒体3の加速で補正される斜行量はより大きくなるため、より少ない繰り返し回数で斜行状態を補正することができ、斜行補正の時間を短縮することが可能になる。
【符号の説明】
【0118】
3 記録媒体
11 搬送ローラ
12 ピンチローラ
16 搬送ローラ周速度検出センサ
20 ロール体
21 トルク発生機構
22 ロール体周速度検出センサ
24 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に文字や画像を記録する記録装置に関する。特に、記録媒体の斜行状態を補正する機能を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙といった記録媒体に記録ヘッドを用いて文字や画像などの記録を行う記録装置が知られている。記録装置に用いられる記録媒体としては、所定の寸法に予め切断されたカット紙の他に、長尺の記録媒体がロール状に巻き回されてなるロール体が使用されている。
【0003】
ロール体を用いる記録装置では、ロール体は、記録装置に対して回転可能に設けられたスプール軸に保持される。記録装置は、ロール体から引き出された記録媒体を搬送ローラおよびピンチローラで挟持し、該搬送ローラを回転させて記録媒体をスプール軸の回転軸と垂直に交わる方向(以下、搬送方向)へ搬送する。
【0004】
記録媒体が搬送されることによってロール体が所定の方向(以下、正回転方向)へ回転させられ、ロール体から次々と記録媒体が引き出される。搬送ローラにより記録媒体は記録ヘッドへ搬送され、記録ヘッドが記録情報に基づいて動作することによって記録媒体に記録画像が形成される。
【0005】
ところで、ロール体から引き出された記録媒体が搬送方向に対して傾斜した状態(以下、斜行状態)で搬送ローラおよびピンチローラに挟持されていると、記録媒体は搬送方向に対して傾斜した方向に搬送され、記録媒体に記録される画像の品質が低下する。そこで、記録媒体に記録を行う前に記録媒体の斜行状態を補正する機能を備えた記録装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0006】
特許文献1では、記録媒体を一定速度で一定長さ搬送させることによって記録媒体の斜行状態を補正する記録装置が開示されている。当該記録装置には、正回転方向とは反対の方向(以下、逆回転方向)のトルクをロール体に発生させるトルク発生機構が設けられている。逆回転方向のトルクがロール体にかけられた状態で搬送ローラが記録媒体を引っ張ることによって、ロール体と搬送ローラとの間に位置する記録媒体にバックテンションが発生する。
【0007】
記録媒体はバックテンションがかけられた状態で搬送されることによって搬送方向と平行になるように搬送ローラ間をわずかに滑りながら移動する。その結果、記録媒体の斜行状態が補正される。
【0008】
特許文献1に開示されている記録装置は、記録媒体を一定長さ搬送しただけでは斜行状態が解消しない場合に、斜行状態を補正する動作(以下、単に斜行補正と称す)によって搬送された一定長さの記録媒体をロール体に一旦巻き直し、前述の斜行補正を再び行う。すなわち、斜行状態の程度によっては、記録媒体の一部は搬送ローラおよびピンチローラによって複数回挟持され、記録媒体の表面にボコ付きや擦り傷が発生し、記録媒体の品質が劣化しやすかった。特に光沢紙やクリアフィルムなどの高品質の記録媒体では、ボコ付きや擦り傷によって記録画像の品質が著しく低下していた。
【0009】
このような理由から、より短い搬送長さでより程度の悪い斜行状態を補正することができる、すなわち斜行状態の補正能力がより高い記録装置が求められていた。
【0010】
記録媒体にバックテンションを発生させて斜行状態を補正する方法では、記録媒体に発生するバックテンションが大きいほど斜行状態がより補正されやすいことが知られている。また、記録媒体に発生するバックテンションは、記録媒体を一定速度で搬送する場合よりも加速させながら記録媒体を搬送する場合の方が大きいことがわかっている。これらのことを利用して、記録媒体の加速および減速を一定間隔で繰り返し行うことによって斜行状態の補正能力を向上させた記録装置が提案されている。
【0011】
記録媒体の加速および減速を一定間隔で繰り返し行って斜行状態の補正を行う記録装置の動作について、図11を用いて説明する。図11は、当該記録装置における、搬送ローラおよび周速度(搬送ローラおよびロール体の外周における速度をいう)の時系列変化を示すグラフである。
【0012】
図11に示すように、搬送ローラは、時間t1(搬送ローラが停止している状態)から時間t2までの期間では加速回転駆動し、時間t2から時間t3までの期間では等速回転駆動する。さらに搬送ローラは、時間t3から時間t4までは減速回転駆動し、時間t4において回転を停止する。搬送ローラが回転している間は、記録媒体は記録ヘッドへ向かって搬送される。
【0013】
ロール体は、時間t1から時間t2までの期間では、記録媒体に引っ張られ続けるため搬送ローラの周速度とほぼ同じ周速度で正回転方向へ回転する。搬送ローラが等速回転駆動に切り替えられても(時間t2)、ロール体はロール体のイナーシャによりしばらくの間加速を続ける。したがって、ロール体の周速度は搬送ローラの周速度を上回り、搬送ローラとロール体との間の記録媒体が弛む。
【0014】
その後、ロール体は、トルク発生機構のトルクや摩擦抵抗を受けて減速する。ロール体のイナーシャの大きさによっては、ロール体の減速度は搬送ローラの減速度よりも小さくなる。この場合には、搬送ローラの回転が停止(時間t4)してもロール体は回転し続け、搬送ローラとロール体の間の記録媒体がさらに弛む(期間D)。
【0015】
ロール体の周速度が0になる(時間t5)と、ロール体は、トルク発生機構のトルクにより逆回転方向へ回転し始め、弛んでいる記録媒体をロール体へ巻き始める。記録媒体の弛みがなくなったところでロール体の回転が止まる。なお、ロール体へ巻き直される記録媒体は、まだ搬送ローラおよびピンチローラによって狭圧されていない。
【0016】
その後、再び搬送ローラは加速回転駆動し、記録媒体にバックテンションを生じさせながら記録媒体を搬送する。
【0017】
記録媒体の加速および減速を繰り返し行う記録装置では、記録媒体が一定長さ搬送されるまでに記録媒体が複数回加速される。したがって、記録媒体が1回しか加速されない記録装置に比べ、記録媒体により大きいバックテンションを発生させることができ、斜行状態の補正能力が向上する。その結果、より短い搬送長さでより程度の悪い斜行状態を補正することができ、斜行補正の回数が減って記録媒体の品質の劣化を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2006−315777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、記録媒体の加速と減速を繰り返し行う記録装置では、ロール体のイナーシャ(慣性)の大きさによっては、記録媒体を加速させても記録媒体にバックテンションが発生しない場合があった。具体的には、搬送ローラとロール体との間の記録媒体の弛みがなくなる前(図11の期間Dや時間t5のタイミング)に搬送ローラが再び加速回転駆動する場合である。記録媒体が弛んでいる状態で搬送ローラが加速回転駆動しても記録媒体にバックテンションが発生しないため、斜行状態は補正されない。
【0020】
特に、期間Dはロール体のイナーシャの大きさに依存し、ロール体のイナーシャが大きいほど期間Dは長くなる。ロール体のイナーシャは、ロール体の巻径(外径)、ロール体の芯を構成する中空の紙管部材の外径、ロール体の幅および記録媒体の単位質量(坪量)によって異なる。
【0021】
そのため、常に一定間隔で記録媒体の加速および減速を繰り返す記録装置では、イナーシャが比較的大きいロール体を用いた場合に、記録媒体が弛んでいる状態で搬送ローラの加速回転駆動が行われる虞があった。すなわち、記録媒体の加速および減速を繰り返しても記録媒体にバックテンションが発生しないため、記録装置の斜行状態の補正能力が低下していた。
【0022】
そこで、本発明は、ロール体のイナーシャが比較的大きい場合であっても斜行状態の補正能力が低下しない記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明は、回転可能に保持されたロール体から引き出された記録媒体をピンチローラとともに挟持し、回転することによって該記録媒体を搬送して該ロール体を第1の方向に回転させる搬送ローラと、ロール体に第1の方向とは反対の第2の方向のトルクを加えてロール体および搬送ローラの間の記録媒体の弛みを解消するトルク発生機構と、を備えた記録装置に係る。この態様において、ロール体の周速度を検出するロール体周速度検出センサと、ロール体周速度検出センサにより検出されたロール体の周速度に基づいてロール体および搬送ローラの間の記録媒体が弛んでいるか否かを判断し、該記録媒体が弛んでいないと判断した場合に記録媒体の搬送を搬送ローラによって加速させる制御部と、をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の記録装置によれば、ロール体のイナーシャが比較的大きい場合であっても斜行状態の補正能力が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る記録装置の主要部の構成を示す斜視図。
【図2】図1に示す記録装置の側面図。
【図3】ロール体の外径と記録媒体に作用する張力の大きさとの関係を示すグラフ。
【図4】記録媒体の搬送速度、および記録媒体に作用する総バックテンションの大きさの時系列変化を示すグラフ。
【図5】斜行補正のシーケンス全体を説明するためのフローチャート図。
【図6】ピッチ送り搬送のシーケンスを示すローチャート図。
【図7】記録装置の制御ブロック図。
【図8】連続搬送時における、搬送ローラおよびロール体の周速度の時系列変化、および記録媒体に作用する総バックテンションの時系列変化を示すグラフ。
【図9】ピッチ送り搬送時における、搬送ローラおよびロール体の周速度の時系列変化、および記録媒体に作用する総バックテンションの時系列変化を示すグラフ。
【図10】ピッチ送り搬送時における、搬送ローラおよびロール体の周速度の時系列変化、および記録媒体に作用する総バックテンションの時系列変化を示すグラフ。
【図11】記録媒体の搬送速度の加速と減速を一定間隔で繰り返し行う記録装置における、搬送ローラの周速度およびロール体の周速度の時系列変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図面を参照して、本発明に係る記録装置の好適な実施形態を例示する。ただし、本実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する主旨のものではない。
【0027】
図1は、本実施形態に係る記録装置の主要部の構成を示す斜視図である。図1に示すように、記録装置は略直方体形状の筐体1を備えており、筐体1上にプラテン2が配設されている。また筐体1内には、記録媒体3をプラテン2に吸着させるための吸引装置4が設けられている。
【0028】
さらに、筐体1には、筐体1の長手方向に沿ってメインレール5が設置されている。メインレール5にキャリッジ6が支持されており、キャリッジ6はメインレール5に沿った方向(以下、主走査方向X)へ往復移動する。
【0029】
キャリッジ6は、インクジェット方式のプリントヘッド7を搭載している。プリントヘッド7には、発熱体を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電アクチュエータを用いた方式、MEMS素子を用いた方式など、さまざまな方式を用いることができる。
【0030】
また、記録装置は、キャリッジモータ8を備えている。キャリッジモータ8は、キャリッジ6を主走査方向Xへ移動させるための駆動源である。キャリッジモータ8の駆動力はキャリッジベルト9を介してキャリッジ6に伝達される。
【0031】
キャリッジ6の主走査方向Xにおける位置は、リニアエンコーダ(不図示)を用いて把握される。リニアエンコーダは、主走査方向Xに沿って筐体1に設けられた直線状のエンコーダパターン10と、キャリッジ6に搭載され、エンコーダパターン10を光学的、磁気的あるいは機械的に読み取る読取部(不図示)と、を含む。
【0032】
記録装置により文字や画像が記録されるシート状の記録媒体3は、プラテン2上を、主走査方向Xと直交する副走査方向Yへ搬送される。記録媒体3の搬送は、記録媒体3を挟持する搬送ローラ11およびピンチローラ12(図2)、並びに搬送ローラ11を回転させるベルト13および搬送モータ14からなる搬送手段15により行われる。
【0033】
搬送ローラ11の駆動状態(回転角、周速度)は、ロータリエンコーダを含む搬送ローラ周速度検出センサ16で検出される。ロータリエンコーダは、搬送ローラ11の回転角および角速度を検出するものである。
【0034】
ロータリエンコーダには、搬送ローラ11と一緒に回転する円周状のエンコーダパターン17と、エンコーダパターン17を光学的、磁気的あるいは機械的に読み取る読取部18とが設けられている。ロータリエンコーダによって検出された搬送ローラ11の角速度に搬送ローラ11の外径を乗ずることによって搬送ローラ11の周速度が得られる。
【0035】
また、キャリッジ6には、記録媒体3の端部を検出する端部検出センサ19が設けられている。
【0036】
図2は、図1に示す記録装置の側面図である。記録媒体3はロール状に巻き回されている。以下、記録媒体3の、ロール状に巻き回された部分をロール体20と称し、ロール体20から引き出された部分を単に記録媒体3と称す。
【0037】
図2に示すように、ロール体20は記録装置に回転可能に設けられたスプール軸(不図示)に保持されている。したがって、記録媒体3が副走査方向Yへ搬送されることによって、ロール体20は記録媒体3を送り出す方向(以下、第1の方向R1)へ回転させられる。
【0038】
スプール軸には、第1の方向R1とは反対の方向(以下、第2の方向R2)のトルクをロール体20に作用させるためのトルク発生機構21を備えている。具体的には、スプール軸はロール体20と一緒に回転するように設けられており、トルク発生機構21の一部である可変式トルクリミッタ(不図示)がスプール軸に設けられている。
【0039】
可変式トルクリミッタは、ロール体20に作用させるトルクの大きさを変更可能とするものである。可変式トルクリミッタによるトルクを調整することで、記録媒体3に作用する張力の大きさを調整することができる。
【0040】
また、記録装置には、ロール体20の周速度を検出するロール体周速度検出センサ22が設けられている。ロール体周速度検出センサ22は、ロール体20の回転角および角速度を検出するロータリエンコーダ(不図示)を含んでいる。ロータリエンコーダによって検出されたロール体20の角速度にロール体20の外径を乗ずることによって搬送ローラ11の周速度が得られる。
【0041】
ここで、記録媒体3の斜行状態が補正されるメカニズムについて説明する。
【0042】
記録媒体3の斜行状態の補正は、記録媒体3にバックテンションを作用させ、記録媒体3を搬送ローラ11上でわずかに滑らせることによって行われている。したがって、記録媒体3に作用するバックテンションが大きいほど斜行補正の能力が高い。
【0043】
記録媒体3に作用する総バックテンションの大きさは、トルク発生機構21のトルクにより記録媒体3に作用するバックテンションと、ロール体20の慣性力により記録媒体3に作用するバックテンションと、の合算値である。
【0044】
トルク発生機構21のトルクにより記録媒体3に作用するバックテンションTは、トルク発生機構21のトルクMおよびロール体20の外径rを用いて次の式で表される。
【0045】
【数1】
【0046】
すなわち、トルク発生機構21のトルクにより記録媒体3に作用するバックテンションTは次のように表される。
【0047】
【数2】
【0048】
ロール体20の慣性力により記録媒体3に作用するバックテンションFは、ロール体20の慣性モーメントI、ロール体20の回転角θおよびロール体20の外径rを用いて次の式で表される。
【0049】
【数3】
【0050】
ロール体20の慣性モーメントIは、ロール体20の質量t1、ロール体20の外径r、ロール体20の芯を構成する中空の紙管部材の外径(すなわちロール体20の内径R)を用いて次の式で表される。
【0051】
【数4】
【0052】
また、ロール体20の回転角θ、ロール体20の外径rおよび搬送による記録媒体3の加速度αは、次の関係を有している。
【0053】
【数5】
【0054】
さらに、ロール体20の質量t1は、主走査方向Xにおける記録媒体3の幅(すなわちロール体20の幅l)、および記録媒体3の坪量mを用いて次の式で表される。
【0055】
【数6】
【0056】
数3ないし数6に示された式を用いて、ロール体20の慣性力により記録媒体3に作用するバックテンションFは次の式で表される。
【0057】
【数7】
【0058】
図3は、数2および数7に示された式から導き出される、ロール体20の外径rと記録媒体3に作用するバックテンションの大きさとの関係を示すグラフである。図3に示されるグラフにおいて、横軸はロール体20の外径rを示し、縦軸は記録媒体3に作用するバックテンションの大きさを示している。
【0059】
図3に示すように、ロール体20の外径rが小さくなるにつれて、ロール体20の慣性力によるバックテンションFが小さくなり、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTが大きくなる。すなわち、外径rが比較的大きいロール体20では、記録媒体3に作用する総バックテンションに関して、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTに比べてロール体20の慣性力によるバックテンションFが支配的になる。外径rが比較的小さいロール体20では、ロール体20の慣性力によるバックテンションFに比べてトルク発生機構のトルクによるバックテンションTが支配的になる。
【0060】
なお、数7に示される式からわかるように、記録媒体3の坪量m、ロール体20の幅lが大きくなるにつれてロール体20の慣性力によるバックテンションFは大きくなり、ロール体20の内径Rが大きくなるにつれてバックテンションFは小さくなる。すなわち、記録媒体3に作用する総バックテンションに関して、坪量m、幅lが比較的大きく内径Rが比較的小さい場合にはロール体20の慣性力によるバックテンションFが支配的になる。
【0061】
次に、記録媒体3の搬送時に記録媒体3に作用する総バックテンションの大きさについて、図2および図4を用いて説明する。図4は、搬送ローラ11の周速度、および記録媒体3に作用する総バックテンションの大きさの時系列変化を示すグラフである。
【0062】
搬送ローラ11が記録媒体3を副走査方向Yへ搬送することによって、記録媒体3がロール体20から引き出され、ロール体20が第1の方向R1へ回転する。なお、記録媒体3は搬送ローラ11上をわずかに滑るだけであるため、記録媒体3の搬送速度は搬送ローラ11の周速度とほぼ等しい。
【0063】
図4に示すように、搬送ローラ11が加速する期間(加速期間)では、記録媒体3およびロール体20も加速する。したがって、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTとロール体20の慣性力によるバックテンションFが記録媒体3に作用する。
【0064】
記録媒体3が一定速度で搬送される期間(定速期間)では、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTのみが記録媒体3に作用する。ロール体20の周速度が一定になり、ロール体20の慣性力によるバックテンションFが発生しないためである。
【0065】
搬送ローラ11が減速する期間(減速期間)では、搬送ローラ11とロール体20との間で記録媒体3が弛むため、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTやロール体20の慣性力によるバックテンションFは記録媒体3に発生しない。
【0066】
したがって、記録媒体3の総バックテンションに関して慣性力によるバックテンションFが支配的であるロール体20では、加速期間を繰り返し行うピッチ送り搬送で記録媒体3を搬送することによって、記録装置の斜行状態の補正能力が向上する。ロール体20の慣性力によるバックテンションTが複数回記録媒体3に作用するからである。
【0067】
記録媒体3の総バックテンションに関してトルク発生機構21のトルクによるバックテンションTが支配的であるロール体20では、加速期間を繰り返し行うピッチ送り搬送で記録媒体3を搬送しても記録媒体3の総バックテンションはほとんど大きくならない。ロール体20の慣性力によるバックテンションTが比較的小さいからである。したがって、このようなロール体20では、一定の搬送速度で記録媒体3を搬送してもよい。
【0068】
次に、本実施形態の記録装置における斜行補正について、図1,2,5ないし10を用いて説明する。図5は、斜行補正の動作のシーケンス全体を説明するためのフローチャート図である。図6は、図5に示すシーケンスの中から、ピッチ送り搬送のシーケンスを抜き出したフローチャート図である。図7は、記録装置の制御ブロック図である。
【0069】
図1,2,5および7に示すように、記録媒体3が記録装置にセットされた後(S101)、記録媒体3の種類(例えば、光沢紙やクリアフィルムといった種類)が選択される(S102)。記録媒体3の種類が選択されることによって、媒体選択インターフェース23から、記録媒体3の坪量、ロール体20の内径rおよび記録媒体の摩擦係数の情報が制御部24へ入力される。
【0070】
続いて、制御部24は、キャリッジ6を主走査方向Xへ移動させ、端部検出センサ19により記録媒体3の幅(すなわちロール体20の幅l)を検出する(S103)。その後、制御部24は、記録媒体3を搬送ローラ11とロール体20との間でピンと張った状態で記録媒体3を所定の長さ搬送するプレフィードを行う。制御部24はプレフィードによってロール体20の外径rを算出する(S104)。
【0071】
ここで、プレフィードによるロール体20の外径rの算出方法について述べる。
【0072】
記録媒体3は搬送ローラ11上でほとんど滑らないため、記録媒体3の搬送長さは、搬送ローラ11の外周が回転によって移動した距離とほぼ同じである。したがって、搬送ローラ11の回転角に搬送ローラ11の外径を乗ずることによって、搬送長さが得られる。搬送ローラ11の回転角は、ロータリエンコーダを含む搬送ローラ周速度検出センサ16によって検出される。
【0073】
記録媒体3は搬送ローラ11とロール体20との間でピンと張られているため、ロール体20から引き出された記録媒体3の長さは記録媒体3の搬送長さと同じである。したがって、記録媒体3の搬送長さをロール体20の回転角で除することによってロール体20の外径rが得られる。ロール体20の回転角は、ロータリエンコーダを含むロール体周速度検出センサ22から得られる。
【0074】
以上のように、プレフィードによってロール体20の外径rが算出される。
【0075】
制御部24は、入力されたロール体20の外径r、内径Rおよび幅l並びに記録媒体3の坪量から、ロール体20のイナーシャを算出する。また、制御部24は、算出したロール体20のイナーシャが所定の閾値以下であるか否かを判断する(S105)。所定の閾値は、例えば、トルク発生機構21のトルクにより記録媒体3に作用するバックテンションと、ロール体20の慣性力により記録媒体3に作用するバックテンションと、が等しくなるロール体20のイナーシャである。
【0076】
ロール体20のイナーシャが所定の閾値以下の場合、制御部24は、記録媒体3に作用する総バックテンションに関してトルク発生機構21のトルクによるバックテンションがロール体20の慣性力によるバックテンションよりも支配的であると判断する。この場合には、制御部24は、比較的長い時間等速で記録媒体3を搬送する連続搬送を行う(S106)。
【0077】
S105において、制御部24は、ロール体20のイナーシャが所定の閾値よりも以上であると判断した場合にはピッチ送り搬送を行う(S107)。
【0078】
連続搬送動作(S106)における搬送ローラ11およびロール体20の動作並びに記録媒体3に作用する総バックテンションについて、図8を用いて説明する。図8(t1)は、連続搬送時における、搬送ローラ11およびロール体20の周速度の時系列変化を示すグラフである。図8(b)は、連続搬送時における、記録媒体3に作用する総バックテンションの時系列変化を示すグラフである。
【0079】
図8(t1)に示すように、制御部24は、搬送ローラ11を回転させ始める。搬送ローラ11の周速度が所定の周速度まで上昇したところで、搬送ローラ11は当該所定の周速度を維持して回転を続ける。
【0080】
ロール体20のイナーシャは比較的小さいため、ロール体20はトルク発生機構21によるトルクの影響を受けやすく、ロール体20の慣性力で回転することはほとんどない。すなわち、ロール体20の周速度は搬送ローラ11の周速度に追従する。
【0081】
したがって、記録媒体3には、図8(b)に示すように、連続搬送中、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTが常に作用する。ロール体20の慣性力によるバックテンションFは、加速期間だけ記録媒体3に生じ、かつロール体20のイナーシャが比較的小さいためバックテンションFの大きさも比較的小さい。
【0082】
ピッチ送り搬送動作(S107)における搬送ローラ11およびロール体20の動作並びに記録媒体3に作用する総バックテンションについて、図6および図9を用いて説明する。図9(t1)は、ピッチ送り搬送時における、搬送ローラ11およびロール体20の周速度の時系列変化を示すグラフである。図9(b)は、ピッチ送り搬送時における、記録媒体3に作用する総バックテンションの時系列変化を示すグラフである。
【0083】
図6および図9(t1)に示すように、まず制御部24は、ピッチ送り済み回数が設定回数以内か否かを判断する(S201)。なお、当該設定回数は少なくとも1回に設定されている。ピッチ送り済み回数が設定回数以下である場合には、制御部24は搬送ローラ11を加速させる(S202)。
【0084】
搬送ローラ11の周速度が予め設定された第1の周速度に到達したところ、すなわち記録媒体3の搬送速度が第1の搬送速度に到達したところで、制御部24は搬送ローラ11を減速させる(S203)。その後、搬送ローラ11の周速度が予め設定された第2の周速度まで低下したところで、制御部24は搬送ローラ11を第2の周速度で回転させ続ける(S204)。すなわち、記録媒体3の搬送速度は、第1の搬送速度まで上昇した後第2の搬送速度まで低下し、第2の搬送速度で搬送され続ける。
【0085】
ロール体20は、加速期間では、記録媒体3に弛みがないため搬送ローラ11の周速度と同じ周速度で回転する。搬送ローラ11が減速し始めても、ロール体20はロール体20の慣性力により加速を続ける。したがって、ロール体20の周速度が搬送ローラ11の周速度を上回り、記録媒体3が弛む。
【0086】
その後、ロール体20は、トルク発生機構21のトルクや摩擦抵抗により減速し、ロール体20の周速度は搬送ローラ11の周速度を下回る。その結果、記録媒体3の弛みが徐々に解消され、記録媒体3の弛みがなくなったところでロール体20は搬送ローラ11の周速度と同じ周速度で回転する。
【0087】
制御部24は、ロール体周速度検出センサ22により検出されたロール体20の周速度を継続して取得しており(S205)、ロール体20の周速度に基づいて記録媒体3が弛んでいるか否かを判断する(S206)。
【0088】
ここで、制御部24による、記録媒体3が弛んでいるか否かの判断の基準について、例を用いて説明する。
【0089】
記録媒体3が弛んでいない状態では、ロール体20は搬送ローラ11と同じ一定の周速度で回転する。すなわち、ロール体20が一定の周速度で回転していない場合には記録媒体3が弛んでいる状態である。
【0090】
したがって、制御部24は、ロール体20の周速度が変動している場合には記録媒体3が弛んでいると判断し、ロール体20の周速度が変動していない場合には記録媒体3が弛んでいないと判断することができる。
【0091】
また、ロール体20および搬送ローラ11の周速度を比較することによっても記録媒体3が弛んでいるか否かを判断することができる。具体的には、記録媒体3が弛んでいない状態では、ロール体20は搬送ローラ11と同じ周速度で回転する。すなわち、ロール体20の周速度が搬送ローラ11の周速度と一致していない場合、記録媒体3は弛んでいる状態である。
【0092】
記録媒体3が弛んでいる状態であっても、ロール体20および搬送ローラ11の周速度が同じになる場合がある。例えば、ロール体20の周速度が、搬送ローラ11の周速度よりも大きい周速度から搬送ローラ11の周速度よりも小さい周速度へ低下する瞬間である(図9に示すタイミングt6)。
【0093】
このような瞬間を記録媒体3が弛んでいない状態であると制御部24が誤判断しないように、制御部24はロール体20が搬送ローラ11と同じ周速度で少なくとも所定の時間の間、回転している場合にのみ記録媒体3が弛んでいない状態であると判断する。当該所定の時間は予め制御部24に設定されている。
【0094】
なお、ここで言う「同じ周速度」とは、ロール体20の周速度と搬送ローラ11の周速度が完全に一致している場合、に限られず、記録媒体3にわずかな弛みが生じる程度にロール体20の周速度と搬送ローラ11の周速度が異なっている場合も含む。すなわち、制御部24は、ロール体20および搬送ローラ11の周速度の差分値が最小値0m/sおよびその近傍の値以下である場合に記録媒体3が弛んでいないと判断してもよい。
【0095】
このように、制御部24は、記録媒体3が弛んでいるか否かを判断し(S206)、記録媒体3が弛んでいないと判断した場合には1回のピッチ送り搬送が完了したとしてS201を再び実行する。記録媒体3が弛んでいないと判断した場合には、継続して搬送ローラ11を等速駆動させ、再びロール体20の周速度を取得する(S205)。
【0096】
制御部24は再びS201を実行し、ピッチ送り搬送の回数が設定回数以下であるか否かを判断する。ピッチ送り搬送の回数が設定回数以下である場合には、制御部24は搬送ローラ11を加速させる(S202)。
【0097】
このとき、記録媒体3は弛んでいないため、トルク発生機構21のトルクによるバックテンションTおよびロール体20の慣性力によるバックテンションFが再び記録媒体3に作用し、斜行状態が補正される。
【0098】
制御部24は、S201においてピッチ送り搬送の回数が設定回数を超えたと判断した場合には、ピッチ送り搬送を終了する(S207)。
【0099】
図5に示すように、制御部24は、連続搬送(S106)またはピッチ送り搬送(S107)が終了したところで、端部検出センサ19を用いて記録媒体3の主走査方向Xにおける端部を検出する(S108)。検出された記録媒体3の主走査方向Xにおける端部の位置から斜行量を算出し、該斜行量が所定の閾値以下か否かを判断する(S109)。
【0100】
斜行量が所定の閾値以下でないと判断した場合には、記録媒体3を再度セットするように記録装置のユーザーに指示を出す(S110)。斜行量が所定の閾値以下であると判断した場合には、記録媒体3を所定の待機位置へ搬送し(S111)、斜行補正を終了する。
【0101】
本実施形態に係る記録装置の制御部24は、ピッチ送り搬送において、ロール体20の周速度に基づいて記録媒体3が弛んでいるか否かを判断する。すなわち、ロール体20のイナーシャが変化して記録媒体3の弛みが解消されるまでの時間が変化しても、より正確に記録媒体3が弛んでいるか否かを判断することができる。
【0102】
搬送ローラ11の加速時に記録媒体3が弛んでいないため、記録媒体3にはトルク発生機構21のトルクによるバックテンションTおよびロール体20の慣性力によるバックテンションFが作用する。したがって、記録媒体の加速および減速を複数回繰り返しても常に記録媒体にバックテンションが発生し、記録装置の斜行状態の補正能力の低下を抑制することができる。
【0103】
図10は、ピッチ送り搬送時における、搬送ローラ11およびロール体20の周速度の時系列変化、並びに記録媒体3に作用する総バックテンションの時系列変化を示すグラフ。なお、図9に示すグラフと、図10に示すグラフとでは、ロール体20のイナーシャの大きさが異なっており、より小さいイナーシャを有するロール体20を用いた場合が図10に示されている。
【0104】
図9および図10に示すように、ロール体20のイナーシャが小さいほどロール体20の慣性力によるバックテンションは小さくなる。したがって、ピッチ送り搬送における斜行状態の補正能力を高めるために加速および減速の繰り返し回数をより多く設定する必要があると考えられる。
【0105】
しかし、ロール体20のイナーシャが小さいほどロール体20はトルク発生機構21のトルクの影響をより受けやすい。したがって、ロール体20の減速度はより大きくなり、定速期間はより短くなる。すなわち、同一時間内において、搬送ローラ11の加速および減速がより多く繰り返されるため、斜行状態の補正能力は悪化しない。
【0106】
なお、本実施形態では、定速期間において搬送ローラ11が一定の周速度で回転することによって記録媒体3の弛みを解消しているが、定速期間に搬送ローラ11の回転を停止させることもできる。すなわち、定速期間では記録媒体3の搬送が停止される。
【0107】
この場合には、トルク発生機構21がロール体20を第2の方向R2へ回転させるため、搬送ローラ11とロール体20との間で弛んでいる記録媒体3は、ロール体20に再び巻きなおされる。定速期間に記録媒体3が副走査方向Yへ搬送されないため、より短い搬送長さで斜行状態を補正することができる。
【0108】
また、図9に示される加速期間と減速期間の間に、搬送ローラ11が第1の周速度で定速回転をする定速期間を設けてもよい。第1の周速度は第2の周速度よりも大きいため、搬送ローラ11が第1の周速度で記録媒体3を搬送することによって、第2の周速度で記録媒体3の弛みを解消する場合よりも短い時間で記録媒体3の弛みを解消することができる。この場合、制御部24は、記録媒体3の弛みが解消された場合に当該定速期間から減速期間へ移行させることが望ましい。
【0109】
記録媒体3の1回の加速および減速で補正される斜行量は、記録媒体3に作用する総バックテンションの大きさによって変化する。また、記録媒体3に作用する総バックテンションの大きさは、ロール体20のイナーシャの大きさに依存する。
【0110】
したがって、制御部24は、ロール体20のイナーシャの大きさに基づいて、記録媒体3の加速および減速の繰り返し回数を変更するものであってもよい。当該繰り返し回数が減ることによって、斜行補正の時間を短縮することができる。
【0111】
なお、ロール体20のイナーシャは、ロール体20の外径rおよび内径R、並びに記録媒体3の坪量および幅lにより定まるため、これらの値に応じて記録媒体3の加速および減速の繰り返し回数を変更してもよい。
【0112】
また、ロール体20の減速度はロール体20のイナーシャの大きさに依存する。すなわち、ロール体20のイナーシャが大きいほどロール体20の減速度は小さい。したがって、ロール体20のイナーシャがより大きいには搬送ローラ11の減速度をより小さくし、減速期間をより長くしてもよい。
【0113】
その結果、次のような効果が得られる。すなわち、図9に示す場合において、減速期間における搬送ローラ11の周速度は定速期間における搬送ローラ11の周速度よりも大きいため、減速期間のほうが定速期間よりも弛んでいる記録媒体3を多く搬送することができる。したがって、搬送ローラ11の減速度をより小さくして減速期間をより長くすることによって、記録媒体3の弛みをより短い時間で解消することができる。
【0114】
さらに、制御部24は、記録媒体3の摩擦係数に応じて、記録媒体3の加速と減速の繰り返し回数を変更するものであってもよい。記録媒体3の摩擦係数が小さい場合には、記録媒体3は搬送ローラ11上を滑って主走査方向Xへ移動しやすくなる。したがって、より少ない繰り返し回数で斜行状態を補正することができる。
【0115】
本実施形態では、トルク発生機構21は、可変式トルクリミッタによりロール体20に作用するトルクの大きさを変更することができる。この場合には、制御部24は、トルク発生機構21がロール体20に作用させるトルクの大きさに基づいて、記録媒体3の加速と減速の繰り返し回数を変更するものであってもよい。
【0116】
例えば、ロール体20に作用するトルクが大きいほど、記録媒体3に作用するバックテンションは大きくなる。したがって、記録媒体3の加速と減速の繰り返し回数を少なくすることができる。
【0117】
また、制御部24は、図9に示す加速期間における搬送ローラ11の加速度に応じて、記録媒体3の加速と減速の繰り返し回数を変更するものであってもよい。例えば、搬送ローラ11の加速度が大きいほどより大きいバックテンションが記録媒体3に作用する。1回の記録媒体3の加速で補正される斜行量はより大きくなるため、より少ない繰り返し回数で斜行状態を補正することができ、斜行補正の時間を短縮することが可能になる。
【符号の説明】
【0118】
3 記録媒体
11 搬送ローラ
12 ピンチローラ
16 搬送ローラ周速度検出センサ
20 ロール体
21 トルク発生機構
22 ロール体周速度検出センサ
24 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に保持されたロール体から引き出された記録媒体をピンチローラとともに挟持し、回転することによって該記録媒体を搬送して該ロール体を第1の方向に回転させる搬送ローラと、前記ロール体に前記第1の方向とは反対の第2の方向のトルクを加えて前記ロール体および前記搬送ローラの間の記録媒体の弛みを解消するトルク発生機構と、を備えた記録装置において、
前記ロール体の周速度を検出するロール体周速度検出センサと、
前記ロール体周速度検出センサにより検出された前記ロール体の周速度に基づいて前記ロール体および前記搬送ローラの間の記録媒体が弛んでいるか否かを判断し、該記録媒体が弛んでいないと判断した場合に前記記録媒体の搬送を前記搬送ローラによって加速させる制御部と、をさらに備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記搬送ローラの周速度を検出する搬送ローラ周速度検出センサをさらに備え、
前記制御部は、前記ロール体周速度検出センサにより検出された前記ロール体の周速度と、前記搬送ローラ周速度検出センサにより検出された前記搬送ローラの周速度と、の差分値に基づいて前記記録媒体が弛んでいるか否かを判断することを特徴とする、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、予め設定された時間の間、前記差分値が、該差分値の最小値およびその近傍の値以下である場合に前記記録媒体が弛んでいないと判断することを特徴とする、請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、予め設定された第1の搬送速度まで該記録媒体の搬送を加速させ、該記録媒体の搬送速度が前記第1の搬送速度に達したところで予め設定された第2の搬送速度まで該記録媒体の搬送速度を低下させてその後は前記記録媒体の搬送速度を該第2の搬送速度で維持させるものであり、さらに該制御部は前記記録媒体の加速と減速を複数回繰り返すことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記トルク発生機構が、前記記録媒体に弛みが生じている場合に前記ロール体を前記第2の方向へ回転可能に設けられており、
前記第2の搬送速度は、前記記録媒体の搬送が停止している状態の該記録媒体の搬送速度であることを特徴とする、請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記記録媒体の搬送速度が前記第1の搬送速度に達したところで該搬送速度を該第1の搬送速度で維持させ、前記記録媒体が弛んでいないと判断した場合に該記録媒体の搬送速度を低下させることを特徴とする、請求項4または5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ロール体の外径および内径、並びに前記記録媒体の坪量および幅に応じて、前記搬送ローラによる前記記録媒体の加速および減速の繰り返し回数を変更することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ロール体の外径および内径、並びに前記記録媒体の坪量および幅に応じて、前記記録媒体の搬送速度を低下させる際の減速度を変更することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記記録媒体の摩擦係数に応じて、前記記録媒体の加速および減速の繰り返し回数を変更することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記トルク発生機構が前記ロール体に加えるトルクの大きさを変更可能に設けられており、
前記制御部は、前記トルク発生機構のトルクの大きさに応じて、前記記録媒体の加速および減速の繰り返し回数を変更することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記記録媒体の搬送速度を上昇させる際の加速度に応じて、前記記録媒体の加速および減速の繰り返し回数を変更することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項1】
回転可能に保持されたロール体から引き出された記録媒体をピンチローラとともに挟持し、回転することによって該記録媒体を搬送して該ロール体を第1の方向に回転させる搬送ローラと、前記ロール体に前記第1の方向とは反対の第2の方向のトルクを加えて前記ロール体および前記搬送ローラの間の記録媒体の弛みを解消するトルク発生機構と、を備えた記録装置において、
前記ロール体の周速度を検出するロール体周速度検出センサと、
前記ロール体周速度検出センサにより検出された前記ロール体の周速度に基づいて前記ロール体および前記搬送ローラの間の記録媒体が弛んでいるか否かを判断し、該記録媒体が弛んでいないと判断した場合に前記記録媒体の搬送を前記搬送ローラによって加速させる制御部と、をさらに備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記搬送ローラの周速度を検出する搬送ローラ周速度検出センサをさらに備え、
前記制御部は、前記ロール体周速度検出センサにより検出された前記ロール体の周速度と、前記搬送ローラ周速度検出センサにより検出された前記搬送ローラの周速度と、の差分値に基づいて前記記録媒体が弛んでいるか否かを判断することを特徴とする、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、予め設定された時間の間、前記差分値が、該差分値の最小値およびその近傍の値以下である場合に前記記録媒体が弛んでいないと判断することを特徴とする、請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、予め設定された第1の搬送速度まで該記録媒体の搬送を加速させ、該記録媒体の搬送速度が前記第1の搬送速度に達したところで予め設定された第2の搬送速度まで該記録媒体の搬送速度を低下させてその後は前記記録媒体の搬送速度を該第2の搬送速度で維持させるものであり、さらに該制御部は前記記録媒体の加速と減速を複数回繰り返すことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記トルク発生機構が、前記記録媒体に弛みが生じている場合に前記ロール体を前記第2の方向へ回転可能に設けられており、
前記第2の搬送速度は、前記記録媒体の搬送が停止している状態の該記録媒体の搬送速度であることを特徴とする、請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記記録媒体の搬送速度が前記第1の搬送速度に達したところで該搬送速度を該第1の搬送速度で維持させ、前記記録媒体が弛んでいないと判断した場合に該記録媒体の搬送速度を低下させることを特徴とする、請求項4または5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ロール体の外径および内径、並びに前記記録媒体の坪量および幅に応じて、前記搬送ローラによる前記記録媒体の加速および減速の繰り返し回数を変更することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ロール体の外径および内径、並びに前記記録媒体の坪量および幅に応じて、前記記録媒体の搬送速度を低下させる際の減速度を変更することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記記録媒体の摩擦係数に応じて、前記記録媒体の加速および減速の繰り返し回数を変更することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記トルク発生機構が前記ロール体に加えるトルクの大きさを変更可能に設けられており、
前記制御部は、前記トルク発生機構のトルクの大きさに応じて、前記記録媒体の加速および減速の繰り返し回数を変更することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記記録媒体の搬送速度を上昇させる際の加速度に応じて、前記記録媒体の加速および減速の繰り返し回数を変更することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−112446(P2013−112446A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258815(P2011−258815)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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