説明

設計支援装置

【課題】構造物の設計支援装置において、構造設計の手間および時間を減少させると共に、精度の高い構造設計を実現する。
【解決手段】設計支援装置Aに、構造物の剛性の強化対策を行う対策範囲と、その強化対策により得られる希望効果とを含む対策条件の入力を受け付けるデータ取得部20と、仮想的に想定した解析モデルから求めた、所定剛性基準を満足させる剛性強化対策を示す対策情報であって、評価範囲毎に、複数の剛性強化対策、および該剛性強化対策毎の対策効果が関連付けられた対策情報が格納された剛性強化対策DB45と、剛性強化対策DB45に格納された対策情報の中から、受け付けた対策条件に含まれる対策範囲と差異が小さい評価範囲に関連付けられ、且つ、希望効果を満たす剛性強化対策を選定する構造解析部30とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品や部品等の構造物の構造設計を支援する設計支援装置に関し、例えば、構造物の設計情報、物性値情報、拘束条件、および荷重条件を含む入力データを用いた有限要素法による構造解析を行い、構造物の構造設計を支援する設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工業製品等の構造物の設計に、コンピュータが利用されており、コンピュータに構造物の剛性評価等の解析を行わせるプログラムや、そのプログラムを実装したシステムが提案されている。
例えば、特許文献1には、製品の剛性設計に利用されるCAE(Computer Aided Engineering)システムの構成が開示されている。このCAEシステムは、CAD装置から3次元製品の形状データ等を取得し、その取得した形状データ等をもとに製品を有限要素(Finite Element)と呼ばれる有限の領域に離散化する有限要素分割を行う。そして、前記CAEシステムは、リブ設計、肉厚設計等の構造設計を行うための有限要素法による構造解析を行い、その解析結果(製品の変位や形状変形)を出力する。設計者は、前記解析結果より、初期段階の製品形状に修正を加えていき、製品スペックを満たす最適な製品形状を設計する。
以下、従来から行われているコンピュータによるシミュレーションを利用した構造設計の手順について説明する。なお、コンピュータによるシミュレーションは、コンピュータに、公知のCAE(Computer Aided Engineering)プログラムを実行させることにより行われる。
【0003】
具体的には、先ず、設計者は、構造物の設計図面等を用いて図面DR(デザインレビュー)を行い、構造物の中から弱体部位(所定の剛性基準を満たさない部分)と考えられる部分を予測する。
【0004】
つぎに、設計者は、前記コンピュータによるシミュレーションを利用して、予測した弱体部位が剛性基準を満たすか否かを検証する。
具体的には、設計者が、前記コンピュータに、構造物の「設計情報、物性値情報、拘束条件、荷重条件、予測した弱体部位を指定する位置情報」等の入力データを与える。前記コンピュータは、与えられた入力データを用いて、予測した弱体部位に対して集中荷重を加えた有限要素法による構造解析(集中荷重による剛性CAE)を行い、構造物の変位を求め、その求めた変位を示す情報を出力する。
そして、設計者は、前記コンピュータが出力した構造物の変位を示す情報を見て、予測した弱体部位に剛性強化対策が必要か否かを判断する。
【0005】
つぎに、設計者は、剛性強化対策が必要と判断した弱体部位について、前記コンピュータに、有限要素法によるトポロジ最適化処理を実行させ、構造物の剛性強化が必要な部位を示した解析結果を出力させる。
【0006】
ここで、トポロジ最適化処理により得られた解析結果を図7に例示する。
なお、図示する符合100は、自動車のインストルメントパネル(インパネ)を示している。また、図示する解析結果では、符号102で示す部分(斜線で示した領域)が、インパネ100の剛性強化が必要な部位として、他の部位(剛性強化が不要な領域)と識別可能に示されている。
そして、設計者は、前記の解析結果(図7)を見て、必要な剛性強化対策(リブの追加や板厚の増加等)を考え、剛性強化が必要な部位に対して、剛性強化対策を行っていた。
【0007】
【特許文献1】特開2000−293548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来から行われている構造設計の手法は、以下に示す技術的課題を有している。
具体的には、トポロジ最適化処理により得られる解析結果(剛性強化が必要な部位を示した情報)は、剛性強化対策が必要な部位を提示しているが、剛性強化対策の具体的な内容まで提示したものではない。そのため、従来の構造設計では、上述の通り、設計者自身が剛性強化対策を考えていた。
しかし、上記の剛性強化対策は、複数通り考えられ(板厚増加、リブの追加、板厚増加およびリブの追加の組合せ等)、その複数通りある剛性強化対策の中から、所望する対策効果が得られる剛性強化対策を選定することは難しかった。
なお、所望する対策効果が得られる剛性強化対策を見つけるために、設計者が、複数の剛性強化対策を想定して、それらの対策効果を順番に検証(例えば、有限要素法による構造解析により検証する)していく方法も考えられるが、この場合、多大な手間および時間が費やされてしまう。
【0009】
本発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであり、構造物の構造設計を支援する設計支援装置において、構造設計の手間および時間を減少させると共に、精度の高い構造設計を実現させる設計支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、構造物の構造設計を支援する設計支援装置に適用される。
そして、前記設計支援装置は、前記構造物の剛性の強化対策を行う対策範囲と、該強化対策により得られる希望効果とを含む対策条件の入力を受け付けるデータ取得手段と、仮想的に想定した解析モデルから求めた、所定剛性基準を満足させるための対策情報であって、評価範囲毎に、複数の剛性強化対策、および該剛性強化対策毎の対策効果が関連付けられた対策情報が格納されたデータベースと、前記データベースに格納された対策情報の中から、前記対策条件に含まれる対策範囲と差異が小さい評価範囲に関連付けられ、且つ、前記希望効果を満たす剛性強化対策を選定する解析手段とを有することを特徴とする。
【0011】
このように本発明では、設計支援装置に、仮想的に想定した解析モデルにより求めた対策情報を格納したデータベースと、そのデータベースの中から、入力された対策条件を満たす剛性強化対策を選択する解析手段とを備える構成を採用している。
この構成により、設計支援装置に「剛性の強化対策を行う対策範囲と、その強化対策により得られる希望効果とを含む対策条件」を入力するだけで、設計支援装置により剛性強化対策が選定される。すなわち、本発明によれば、設計者自身が剛性強化対策を考える必要がないため、構造設計を行う設計者の作業負担が軽減される。
また、設計支援装置が、所定の剛性基準を満たす剛性強化対策を選定するため、例えば、所定の剛性基準を満たす剛性強化対策が見つかるまで剛性強化対策を検証する必要がない。その結果、本発明によれば、構造設計の手間および時間が低減される。
【0012】
また、前記データ取得手段は、前記対策条件の入力の受け付ける処理に先立って、前記構造物の設計情報、物性値情報、拘束条件、および荷重条件を含む入力データと、前記構造物の弱体部位を指定する弱体部位情報とを受け付け、
前記解析手段は、前記受け付けた入力データ、および前記弱体部位情報を用いて、前記弱体部位に対する有限要素法によるトポロジ最適化処理を行い、前記構造物の剛性強化が必要な剛性強化必要部位を求め、該剛性強化必要部位を示す情報と共に、前記対策条件の入力を促す情報を出力することが望ましい。
このように構成することにより、本発明によれば、所定剛性基準を満たす構造設計を行うように設計者を誘導することができる。
【0013】
また、前記データ取得手段は、前記希望効果として、最大を指定する情報および最小を指定する情報のいずれかの入力を受け付け、前記解析手段は、前記希望効果として最大を指定する情報の入力を受け付けた場合には、前記対策条件に含まれる対策範囲と差異が小さい評価範囲に関連付けられた剛性強化対策の中から、対策効果が最大の剛性強化対策を選択し、前記希望効果として最小を指定する情報の入力を受け付けた場合には、前記対策条件に含まれる対策範囲と差異が小さい評価範囲に関連付けられた剛性強化対策の中から、対策効果が最小の剛性強化対策を選択することが望ましい。
このように構成することにより、所望する対策効果を達成できる剛性強化対策を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、構造物の設計を支援する設計支援装置において、構造設計の手間および時間を減少させると共に、精度の高い構造設計を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
先ず、本実施形態の構造物の設計支援装置の機能構成を図1に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態の設計支援装置の機能ブロック図である。
図示するように、設計支援装置Aは、構造物の構造設計を支援するための各種の情報処理を行う情報処理装置1と、設計者からの各種要求を受け付ける入力装置2と、情報処理装置1が行った処理結果を出力する出力装置3とを備える。また、情報処理装置1は、LAN(Local Area Network)等のネットワークNWを介して、CAD装置4に接続されている。
【0017】
情報処理装置1は、構造物の設計情報、物性値情報、拘束条件、および荷重条件を含む入力データを用いた有限要素法による構造解析を実行する。また、情報処理装置1は、構造物の剛性強化が必要な部位(領域)に対する剛性強化対策(板厚アップ、リブ追加等)を選定し、設計者に選定した剛性強化対策を提示する。
【0018】
入力装置2は、キーボードやマウス等により構成され、設計者からの各種要求や解析条件(物性値情報、拘束条件、荷重条件)等を受け付けて情報処理装置1に出力する。
出力装置3は、液晶ディスプレイ等により構成され、情報処理装置1が出力する画像情報を表示する。
【0019】
また、CAD装置4には、構造解析を行う対象の構造物のCAD情報(例えば、自動車の構成部品の設計情報)が格納されている。そして、CAD装置4は、情報処理装置1からの要求にしたがい、情報処理装置1にCAD情報を出力する。
以下、設計支援装置Aの具体的な構成を説明する。なお、本実施形態のCAD装置4は、公知の技術により実現されるため、詳細な説明は省略する。
【0020】
情報処理装置1は、制御部10、データ取得部20、構造解析部30、出力部40、および剛性強化対策データベース45を有する。
制御部10は、情報処理装置1の全体の動作を制御する。また、制御部10は、入力装置2を介して、設計者が入力する各種要求を受け付ける。そして、制御部10は、上記の受け付けた要求にしたがい、データ取得部20、構造解析部30、および出力部40を制御して、設計者からの要求に応じた処理を行う。
【0021】
データ取得部20は、ネットワークNWに接続されている外部装置(例えば、CAD装置4)と通信を行い、外部装置との間でデータの授受を行う。例えば、データ取得部20は、ネットワークNWを介して、CAD装置4にアクセスし、CAD装置4に格納されている設計情報(CAD情報)を取得する。
また、データ取得部20は、入力装置2を介して、設計者が入力する、解析対象の構造物の「解析条件(物性値情報、拘束条件、荷重条件)」の入力を受け付ける。また、データ取得部20は、入力装置2を介して、設計者が入力する、解析対象の構造物の弱体部位(所定の剛性基準を満たさない領域)を指定する情報(位置情報)を受け付ける。
【0022】
構造解析部30は、「構造物の設計情報」、「構造物の解析条件」、「構造物の弱体部位を指定する情報」を用いて、後述する図5の各処理ステップを実行し、構造物の剛性強化が必要な部位(剛性強化必要部位)を求め、その求めた剛性強化必要部位に対する剛性強化対策を選定する。
出力部40は、構造解析部30から解析結果を取得し、その解析結果を示す画像情報(例えば、図6に示す情報)を生成し、出力装置3に、その生成した画像情報を出力する。
【0023】
剛性強化対策データベース45は、構造物の剛性を強化するための強化対策を示す情報が登録されたデータベースである。この剛性強化対策データベース45は、所定の評価範囲毎(評価対象面積毎)に、所定の剛性基準を満たすための各種の強化対策と、その強化対策による効果とが対応付けられている。
この剛性強化対策データベース45に登録されるデータは、後述するが、仮想的に想定した解析モデルに対して行うコンピュータシミュレーションにより求められている。なお、剛性強化対策データベース45の具体的なデータ構成は後述する。
【0024】
つぎに、本実施形態の情報処理装置1のハードウェア構成を説明する。
図2は、本実施形態の情報処理装置のハードウェア構成図である。
図示するように、情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)50と、RAM(Random Access Memory)等により構成された主記憶装置51と、I/Oインタフェース52と、ハードディスク等により構成された補助記憶装置53と、ネットワークNWに接続されている装置との間で行うデータ授受の制御を行うネットワークインタフェース54とを有する。
また、補助記憶装置53には、上述した各部(制御部10、データ取得部20、構造解析部30、および出力部40)の機能を実現するためのプログラム(設計支援プログラム55)が格納されている。また、補助記憶装置53には、上述した剛性強化対策データベース45が格納されている。
【0025】
そして、情報処理装置1の各部(制御部10、データ取得部20、構造解析部30、および出力部40)の機能は、CPU50が補助記憶装置53に格納されている設計支援プログラム55を主記憶装置51にロードして実行することにより実現される。
【0026】
続いて、本実施形態の剛性強化対策データベース45のデータ構成について図3及び図4に基づいて説明する。
図3は、本実施形態の剛性強化対策データベースのデータ構成を模擬的に例示した図である。また、図4は、本実施形態の剛性強化対策データベースを作成するための解析モデルを例示した図である。
【0027】
図3に示す剛性強化対策データベース45に格納されるデータは、図4に例示するように、仮想的に想定した解析モデルWに対して行う有限要素法による構造解析(剛性解析)によるコンピュータシミュレーションにより求められる。なお、このコンピュータシミュレーションは既存の技術により実現されるものである。
具体的には、略板状の解析モデルW(図示する拘束数は例示である)を作成し、解析モデルWの面積(評価範囲(L(mm)×W(mm))毎に、解析モデルWに集中荷重Fを加えた有限要素法による構造解析(剛性解析)を実施し、解析モデルWの変位(z1(mm))を求める。なお、ここでは、構造解析の目標変位(剛性基準)を「a(mm)」とする。
【0028】
そして、前記求めた変位(z1(mm))が前記目標変位を満たさなければ(z1>a(mm)ならば)、その解析モデルW(その評価範囲(L(mm)×W(mm)の解析モデルW)に対し、想定される各種の強化対策を施した上で有限要素法による構造解析を行い、強化対策毎にその対策効果を検証する。
すなわち、解析モデルW(評価範囲(L(mm)×W(mm)毎に行う)に対して想定可能な強化対策を順番に行い、強化対策を行った解析モデルWに集中荷重Fを加えた有限要素法による構造解析(剛性解析)を実施し、解析モデルWの変位(z2(mm))を求める。
前記求めた変位(z2(mm))が目標変位(剛性基準)を満たした場合(z2≦a(mm))、その「解析モデルW」および「強化対策、変位(z2(mm))」は、剛性強化対策データベース45に登録される(変位(z2(mm))は対策効果として登録される)。なお、この場合、解析モデルWの評価範囲(L(mm)×W(mm))に、「強化対策、変位(z2(mm))」が強化対策453として、関連付けられる。
以下、図3に示す剛性強化対策データベース45について詳細に説明する。
【0029】
図3に示すように、剛性強化対策データベース45は、構造物(インパネ)の対策範囲と比較される評価範囲451(評価対象の面積)毎に、剛性適用範囲452と、強化対策453とが関連付けられて格納されている。図示する剛性強化対策データベース45は、板厚毎に作成される。
ここで、剛性適用範囲452とは、剛性適用範囲452に対応付けられた剛性強化対策453が適用される構造物(剛性強化対策前の構造物)の剛性強度の範囲をいう。
また、強化対策453には、評価範囲451に適用できる強化対策の具体的内容(項目)を示す情報と、その強化対策を施した場合の効果(対策効果)を示す情報とが含まれている。
【0030】
図示する例では、強化対策の内容(項目)を示す情報として、「板厚アップ」、「リブ追加」、「板厚アップおよびリブ追加の組合せ」が登録されている。また、「板厚アップ」、「リブ追加」、「板厚アップおよびリブ追加の組合せ」は、それぞれ、複数種類登録されている。
例えば、「板厚アップ」の項目として複数の「板厚寸法の増加対策」が登録されており、それぞれの「板厚寸法の増加対策」毎に、その「板厚アップ」による効果(対策効果)を示す情報が対応付けられている。
また、例えば、「リブ追加」の項目として、追加するリブの本数毎に、そのリブの「高さ」と、リブの「板厚」とが対応付けられており、それぞれの組合せ毎に、「リブ追加」による効果(対策効果)を示す情報が対応付けられている。
また、剛性強化対策を施した場合の「対策効果」として、剛性強化対策を施した後に、その評価範囲に所定の集中荷重を加えた場合における構造物(インパネ)の変位が登録されている。
【0031】
続いて、本実施形態の設計支援装置Aが行う構造物の設計支援処理について図5に基づいて説明する。
図5は、本発明の実施形態の設計支援装置が行う構造物の設計支援処理の手順を示したフローチャートである。
なお、図示する処理ステップに先立って、設計支援装置Aを構成する情報処理装置1には、設計対象の構造物の設計情報と、当該構造物の解析条件(物性値情報、拘束条件、荷重条件)とが入力されているものとする。すなわち、情報処理装置1のメモリ(主記憶装置51又は補助記憶装置53)には、前記構造物の設計情報および解析条件が記憶されている。
また、以下のフローチャートでは、設計対象の構造物が、自動車のインストルメントパネル(インパネ)である場合を例にする。また、以下の処理ステップの中で用いられる有限要素法は、周知のものと同様である。
【0032】
先ず、情報処理装置1のデータ取得部20は、入力装置2を介して、設計者が入力する構造物(インパネ)の弱体部位(構造物のうち、所定の剛性基準を満たさない領域)を指定する情報(弱体部位を示す座標情報等)を受け付ける(S10)。
なお、構造物(インパネ)の弱体部位は、予め、設計者が周知の手法により求めておくこととする。
【0033】
つぎに、情報処理装置1の構造解析部30は、前記メモリに記憶されている「構造物(インパネ)の設計情報」および「構造物(インパネ)の解析条件」と、S10で受け付けた「弱体部位を指定する情報」とを用いて、弱体部位に対して、所定の集中荷重(x1(N))を加えた有限要素法による構造解析(集中荷重による剛性CAE)を実施し、インパネの変位(Z(mm))を求める(S20)。
なお、本ステップにおいて、解析部30は、出力部40を介して、インパネの変位を示す情報を出力装置3に出力するようにしてもよい。
【0034】
つぎに、構造解析部30は、「構造物(インパネ)の設計情報」および「構造物(インパネ)の解析条件」と、S10で受け付けた「弱体部位を指定する情報」とを用いて、S10で受け付けた弱体部位を対象にした有限要素法によるトポロジ最適化処理を行い、構造物(インパネ)の中から剛性強化対策が必要な部位(剛性強化必要部位)を求める(S30)。
【0035】
また、S30では、構造解析部30は、出力部40に、「剛性強化必要部位を示す情報」と、「剛性強化対策の対策範囲(剛性強化対策を行う領域)および対策効果(希望効果)の入力を促す情報」とが含まれる解析画像の表示処理を実行させる。
具体的には、構造解析部30は、出力部40に、前記トポロジ最適化処理により得られた解析結果(剛性強化必要部位を示した解析結果)を出力する。出力部40は、構造解析部30からの解析結果を受け付けると、受け付けた解析結果を用いて、前記解析画像を生成する。そして、出力部40は、出力装置3に、生成した前記解析画像を表示する。
例えば、解析部30は、出力部40を介して、図6に例示する解析画像を出力装置3に表示させる。
【0036】
図6は、本実施形態の設計支援装置が表示する解析画像の一例を示した図である。ここで、符合100は、上述した図7と同様、インパネを示している。また、符号102は、インパネ100の中の剛性強化必要部位を示している。
図示するように、解析画像110には、インパネ100の剛性強化必要部位102を示した情報と、「対策範囲(剛性強化対策を行う範囲)および対策効果(希望効果)」の入力を促す入力受付情報111とが含まれている。
このように、解析画像110を表示することにより、設計者に剛性強化必要部位を認識させると共に、剛性強化対策を行うことを促すことができる。
【0037】
図5に戻り、S30の後に行う、S40の処理を説明する。
S40では、構造解析部30は、データ取得部20を介し、設計者が入力する「剛性強化の対策範囲」および「剛性強化対策による対策効果(希望効果)」を含む「対策条件」の入力を受け付ける。
具体的には、設計者が、S30で表示している解析画像110(図6)を参照しながら、入力装置2を介して、情報処理装置1に「剛性強化の対策範囲」、および「剛性強化対策による対策効果(希望効果)」を入力する。
例えば、設計者は、入力装置2を操作して、解析画像110上のカーソル112により「剛性強化の対策範囲」を指定して、情報処理装置1に入力する。また、例えば、設計者は、入力装置2を操作し、入力受付情報111に提示された対策効果の中から、希望する対策効果を選択して、情報処理装置1に入力する。
【0038】
なお、S40において、設計者から受け付ける「対策効果(希望効果)」は特に限定されるものではないが、以下では、「最大(Max)」および「最小(Min)」のいずれかを受け付けることとする。
具体的には、設計者は、所定剛性基準を満たす剛性強化対策のうち、剛性強化部位の剛性が最も高くなる剛性強化対策を希望する場合、「最大(Max)」を入力する。一方、設計者は、所定剛性基準を満たす剛性強化対策のうち、剛性強化部位の剛性が最も低くなる剛性強化対策を希望する場合には、「最小(Min)」を入力する。
【0039】
つぎに、構造解析部30は、S20で求めた「変位」と、S40において受け付けた「対策範囲」および「対策効果(希望効果)」と、剛性強化対策データベース45(図3参照)とを用いて、剛性強化対策の形状を判定する(S50)。
【0040】
具体的には、構造解析部30は、剛性強化対策データベース45の中から、S40で受け付けた「対策範囲」に対応する「評価範囲451」と、S20で求めた「変位」が入る「剛性適用範囲452」とに関連付けられている「強化対策453」を選択する(例えば、図3の破線460で囲む強化対策を選択する)。
なお、S40で受け付けた「対策範囲」に対応する「評価範囲451」とは、S40で受け付けた「対策範囲」に一番近い値の「評価範囲451」のことをいう(例えば、「対策範囲」との差異(「対策範囲」−「評価範囲」)の絶対値が最小の「評価範囲451」のことをいう)。
また、S20で求めた「変位」が入る「剛性適用範囲452」とは、例えば、S20で求めた「変位が「2b(mm):bは0以外の整数」」である場合、「剛性適用範囲452が、「b(mm)〜3b(mm)」のようなケースをいう。
【0041】
そして、構造解析部30は、前記選択された強化対策の中から、S40で受け付けた「対策効果(希望効果)」を満たす強化対策を抽出し、その抽出した強化対策を構造物(インパネ)に対する剛性強化対策に決定する。
例えば、S40で受け付けた「対策効果(希望効果)」が「Min」であれば、前記選択された強化対策の中から、対策効果が最も小さい強化対策が選択される(例えば、図3の破線460で囲む強化対策の中から破線461で囲む強化対策を抽出する)。また、例えば、S40で受け付けた「対策効果(希望効果)」が「Max」であれば、前記選択された強化対策の中から、対策効果が最も大きい強化対策が選択される。
また、本ステップ(S50)において、構造解析部30は、出力部30を介して、決定した剛性強化対策を示す情報を出力装置3に表示する。
【0042】
つぎに、構造解析部30は、S50で決定した剛性強化対策(例えば、リブの追加)を実行し、すなわち、インパネの設計情報に対して、S50で判定した剛性強化対策を行い、処理を終了する(S60)。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の設計支援装置Aは、設計者からの「剛性強化対策を施したい範囲(評価範囲)」および「剛性強化対策の対策効果」の入力を受け付けると、仮想的に想定した解析モデルWから求めた強化対策が登録された剛性強化対策データベース45の中から、入力された条件に対応する剛性強化対策を抽出するように構成されている。
したがって、本実施形態によれば、設計者が、設計支援装置Aに「評価範囲」と、「剛性強化対策の対策効果」とを入力するだけで剛性強化対策が求められる。すなわち、本実施形態によれば、設計者自身が剛性強化対策を考える必要がなくなるため、設計者の作業負担が軽減される。
また、設計支援装置Aが、所定剛性基準を満たす剛性強化対策を抽出するため、例えば、設計者が、所定剛性基準を満たす剛性強化対策が見つかるまで剛性強化対策を試す必要がなくなる。その結果、構造設計の設計工数が低減される。
【0044】
また、本実施形態では、複数ある剛性強化対策の中から、設計者が望む対策効果を満たす剛性強化対策が抽出するため、構造設計の設計効率を高めることができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなくその要旨の範囲内において、種々の変形が可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態の剛性強化対策データベース45では、「対策効果」として、強化対策を施した後に、その評価範囲に所定の集中荷重を加えた場合における構造物の変位が登録されているが、特にこれに限定されるものではない。剛性強化対策データベース45に登録される対策効果として、前記構造物の変位に加え、さらに、強化対策のコストを登録しておくようにしてもよい。
このように構成することにより、図5のS40において、設計者からコストに関する条件(例えば、一番低いコスト)を受け付けるようにすれば、S50において、設計者が望むコストに関する条件を満たす強化対策が選定されるようになる。すなわち、設計者に大きな作業負担をかけることなく、コストを考慮した剛性強化対策が行えるようになる。
【0047】
また、例えば、上記実施形態の設計支援装置は、1台の情報処理装置1が構造設計支援のための各種処理を行うようにしているが、特にこれに限定されるものではない。複数のコンピュータにより構成されたシステムにより、上述した各部(制御部10、データ取得部20、構造解析部30、出力部40)の機能を実現させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態の設計支援装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の設計支援装置を構成する情報処理装置のハードウェア構成図である。
【図3】本発明の実施形態の剛性強化対策データベースのデータ構成を模擬的に例示した図である。
【図4】本発明の実施形態の剛性強化対策データベースを作成するための解析モデルを例示した図である。
【図5】本発明の実施形態の設計支援装置が行う構造物の設計支援処理の手順を示したフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態の設計支援装置が表示する解析画像の一例を示した図である。
【図7】従来技術の有限要素法によるトポロジ最適化処理で得られた解析結果を例示した図である。
【符号の説明】
【0049】
A…設計支援装置
W…解析モデル
1…情報処理装置
2…入力装置
3…出力装置
4…CAD装置
10…制御部
20…データ取得部
30…構造解析部
40…出力部
45…剛性強化対策データベース
50…CPU
51…主記憶装置
52…I/Oインタフェース
53…補助記憶装置
54…NWインタフェース
55…設計支援プログラム
100…インストルメントパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の構造設計を支援する設計支援装置において、
前記構造物の剛性の強化対策を行う対策範囲と、該強化対策により得られる希望効果とを含む対策条件の入力を受け付けるデータ取得手段と、
仮想的に想定した解析モデルから求めた、所定剛性基準を満足させるための対策情報であって、評価範囲毎に、複数の剛性強化対策、および該剛性強化対策毎の対策効果が関連付けられた対策情報が格納されたデータベースと、
前記データベースに格納された対策情報の中から、前記対策条件に含まれる対策範囲と差異が小さい評価範囲に関連付けられ、且つ、前記希望効果を満たす剛性強化対策を選定する解析手段とを有することを特徴とする設計支援装置。
【請求項2】
前記データ取得手段は、前記対策条件の入力の受け付ける処理に先立って、前記構造物の設計情報、物性値情報、拘束条件、および荷重条件を含む入力データと、前記構造物の弱体部位を指定する弱体部位情報とを受け付け、
前記解析手段は、前記受け付けた入力データ、および前記弱体部位情報を用いて、前記弱体部位に対する有限要素法によるトポロジ最適化処理を行い、前記構造物の剛性強化が必要な剛性強化必要部位を求め、該剛性強化必要部位を示す情報と共に、前記対策条件の入力を促す情報を出力することを特徴とする請求項1に記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記データ取得手段は、前記希望効果として、最大を指定する情報および最小を指定する情報のいずれかの入力を受け付け、
前記解析手段は、
前記希望効果として最大を指定する情報の入力を受け付けた場合には、前記対策条件に含まれる対策範囲と差異が小さい評価範囲に関連付けられた剛性強化対策の中から、対策効果が最大の剛性強化対策を選択し、
前記希望効果として最小を指定する情報の入力を受け付けた場合には、前記対策条件に含まれる対策範囲と差異が小さい評価範囲に関連付けられた剛性強化対策の中から、対策効果が最小の剛性強化対策を選択することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の設計支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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