説明

評価実験用記録装置

【課題】配線の引き回しを無くして評価実験の効率を上げることができる評価実験用記録装置を提供する。
【解決手段】信号処理部22、RAM23、無線通信部24を有する記録計本体1と、歪みゲージ3と、歪み発生部(インバー)4と、駆動電源とを1つのハウジング内に収容することで、配線の引き回しを無くす。信号処理部22は、イベント発生を検知する前は、各サンプリングデータをRAM23に記録すると共に、所定の間引き率で間引きしたサンプリングデータを無線通信によりホストコンピュータ31に送信し、イベント発生を検知したときは、イベント発生前後のデータのみをRAM23が飽和するまで記録してから、RAM23に記録された全データを無線通信によりホストコンピュータ31に一括送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物(自動車等)に物理量を与える評価実験の結果を記録する評価実験用記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の運転状態に関するデータを、静止状態を含めて揮発性のメモリ部に時系列的に一定時間の間隔で記録し、記録したデータを用いて自動車の衝突発生状態の分析を可能とする自動車の事故発生状況記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。ここでは、車体外周の所定箇所に配置されたセンサによって、車外物と車両との衝撃度合いを検出し、これを車体内に装備されるハウジング内に挿入されたメモリ部に記録している。
【0003】
そして、メモリ部の記録領域が飽和状態になった場合、先に記録されたデータを消去して順次新たなデータを記録し、衝突発生時には、衝突を分析するのに必要な衝突直前から衝突発生時までの所定時間分のデータを不揮発性のメモリ部に転写・格納するようになっている。さらに、衝突発生時には、ロック手段によって揮発性のメモリ部及び不揮発性のメモリ部の抜き取りを防止するようになっている。
【特許文献1】特開平7−182548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の自動車の事故発生状況記録装置にあっては、メモリ部と衝撃度合いを検出するセンサとが別々の構成であるため、メモリ部とセンサとの間の配線の設置が複雑になる。したがって、この記録装置を、例えば自動車の安全性に関わる技術発展等を目的として、自動車を壁等に衝突させ自動車各部の衝撃の大きさを計測する評価実験に用いる場合、自動車各部に記録装置を設置する作業が複雑になり、評価実験の効率を悪化させてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、配線の引き回しを無くして評価実験の効率を上げることができる評価実験用記録装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る評価実験用記録装置は、被測定物に物理量を与える評価実験によって得られるデータを記録する評価実験用記録装置であって、前記物理量に依存する前記被測定物の状態を検出する状態検出手段と、前記状態検出手段により検出したデータを記録する記録手段と、外部装置との間で無線通信を行う通信手段と、前記データを前記記録手段へ記録する記録処理手段と、前記データを前記通信手段によって前記外部装置へ送信する送信処理手段と、駆動電源とを備え、これらが1つのハウジング内に収容されていることを特徴としている。
【0007】
このように、状態検出手段と記録手段とを同一ハウジングに収容するので、両者間の配線をハウジング内部で行うことができ、配線の引き回しを無くすことができる。また、外部装置との間で無線通信を行う機能を有するので、外部装置と接続するための通信配線を無くすことができる。さらに、駆動電源を内蔵するので、外部から電源を供給するための電源配線を無くすことができる。
【0008】
また、請求項2に係る評価実験用記録装置は、請求項1に係る発明において、前記ハウジング内に、前記状態検出手段により検出したデータに基づいて、前記被測定物に物理量が与えられるイベントの発生を検知するイベント検知手段をさらに有し、前記記録処理手段は、前記記録手段の記録領域が飽和しているとき、前記記録手段に記録されたデータのうち最も古いデータに、前記状態検出手段により検出したデータを順次上書きするように構成されており、前記イベント検知手段でイベント発生を検知したとき、前記記録手段の記録領域が飽和状態、且つイベント発生を検知する所定時間前のデータが前記記録手段に記録されたデータのうち最も古いデータとなったときに、前記記録手段への記録処理を終了することを特徴としている。
【0009】
これにより、イベント発生を検知したときには、当該イベント発生の所定時間前からのデータを上書きせずに保持し、記録手段の記録領域が飽和するまでデータを記録することができ、イベント発生前後のデータのみを記録手段に記録することができる。
さらに、請求項3に係る評価実験用記録装置は、請求項2に係る発明において、前記送信処理手段は、前記イベント検知手段でイベント発生を検知したとき、前記記録処理手段による記録処理が終了した時点で、前記記録手段に記録された前記データを前記通信手段によって前記外部装置へ一括送信することを特徴としている。
【0010】
これにより、イベント発生前後の詳細なデータを取得することができる。
また、請求項4に係る評価実験用記録装置は、請求項2又は3に係る発明において、前記送信処理手段は、前記イベント検知手段でイベント発生を非検知であるとき、前記状態検出手段により検出したデータを所定の間引き率で間引いて前記通信手段によって前記外部装置へ逐次送信することを特徴としている。
【0011】
このように、イベント発生前はデータの変動がないため、間引きして簡略化されたデータを取得する。これにより、イベント発生前の不必要なデータ数が増大するのを抑制することができる。
さらにまた、請求項5に係る評価実験用記録装置は、請求項4に係る発明において、前記間引き率は、前記通信手段の通信速度に応じて設定することを特徴としている。
【0012】
これにより、データをリアルタイムで外部装置に送信することができる。
また、請求項6に係る評価実験用記録装置は、請求項1〜5の何れか1項に係る発明において、前記評価実験は、前記被測定物としての自動車に衝撃を与える衝突実験であることを特徴としている。
これにより、自動車の衝突実験において、車内に設置した評価実験用記録装置と車外に設置したホストコンピュータ等の外部装置との間の通信配線等を無くし、配線の引き回しを無くすことができる。また、衝突イベントが発生した場合、記録手段に記録された衝突発生前後のみの詳細なデータを取得することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る発明によれば、状態検出手段と記録手段とを同一ハウジングに収容して両者間の配線をハウジング内部で行うと共に、外部からの通信配線や電源配線を無くすことで、複雑な配線作業が不要な構成とするので、大量の評価実験用記録装置を被測定物に設置する場合であっても、評価実験を効率良く行うことができる。
さらに、請求項2に係る発明によれば、イベント発生を検知したときには、イベント発生前後のデータのみを記録手段に記録することができるので、イベント発生より比較的前の不必要なデータが保持されたままとなるのを回避することができる。その結果、データを簡略化することができ、評価実験後のデータ集計に要する時間を短縮することができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明によれば、イベント発生前後の詳細なデータを取得することができるので、データ分析を適正に行うことができる。
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、イベント発生前は間引きして簡略化されたデータを外部装置に送信するので、イベント発生前の不必要なデータ数が増大するのを抑制することができる。
【0015】
また、請求項5に係る発明によれば、イベント発生前のデータをリアルタイムで取得することができる。
さらに、請求項6に係る発明によれば、自動車の衝突実験を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明における衝突試験用記録装置10の概略を示す図であり、(a)は正面図、(b)は斜視図を示している。
衝突試験用記録装置10は、被測定物に衝撃を与えたときに被測定物に加わる衝撃力を検知・記録するものであり、本実施形態では、この衝突試験用記録装置10を、自動車の安全性確保に関わる技術発展等を目的として、自動車を壁や他の自動車に衝突させて自動車各部の衝撃の大きさ等を計測する衝突試験に用い、これを衝突試験用の車内における所定の測定箇所に設置するものとする。
【0017】
図1に示すように、衝突試験用記録装置10は、記録計本体1と、緩衝材2と、歪みゲージ3と、歪み発生部(インバー)4とを有し、これらがハウジング5内に収容されて一体化された構成となっている。
衝突試験用記録装置10は、衝突の際に測定箇所からの応力を伝達させるために、歪み発生部4側(図1の下側)を応力測定したい箇所に向けて設置する。ここで、測定箇所の温度変化により歪み発生部4に歪みが発生するのを抑制するために、歪み発生部4には熱膨張率の小さいインバーを用いることが好ましい。
【0018】
自動車衝突時には、装置下部の歪み発生部4に応力が加わってインバーが歪み、このようにして発生された歪みがインバーの上部に取り付けられた歪みゲージ3で読み取られ、衝撃荷重とモーメントとが求められる。そして、歪みゲージ3で読み取った測定データは、記録計本体1で記録処理される。ここで、歪みゲージ3と記録計本体1との間の配線は、ハウジング5内部で行うものとする。また、緩衝材2は、自動車衝突の際に衝撃から記録計本体1を保護する役割を担っている。
【0019】
また、衝突試験用記録装置10には図示しない駆動電源が内蔵されており、外部からの電源供給を必要としない構成となっている。さらに、衝突試験用記録装置10は、外部のホストコンピュータとの無線通信が可能であり、ホストコンピュータを接続するための通信配線を必要としない構成となっている。
衝突試験を行う際には、各装置の時間軸を同期させる必要があるため、衝突試験用記録装置10を車内に設置する前にホストコンピュータからの無線通信により、衝突試験用記録装置10の内部クロックを同期させる。
【0020】
図2は、記録計本体1とその周辺装置の構成を示すブロック図である。
この図2に示すように、記録計本体1は、AD変換部21と、信号処理部22と、RAM23と無線通信部24とで構成されている。
歪みゲージ3で読み取ったアナログ信号値はAD変換部21に入力され、AD変換部21でデジタル信号値に変換された後、これが信号処理部22に入力される。
【0021】
信号処理部22は、後述する図3に示す信号処理を行い、RAM23へのデータ書き込み制御や無線通信部24の制御を行う。ここで、RAM23は揮発性メモリである。また、無線通信部24は、ホストコンピュータ31が有する無線通信機能としての無線通信部32との間で無線通信を行うものであり、電波等の所定の無線通信方式を用いてデータ送信を行う。
【0022】
図3は、信号処理部22で実行される信号処理手順を示すフローチャートである。
この信号処理は所定時間毎に実行され、先ずステップS1で、信号処理部22は、初期化処理を行う。ここでは、例えば、RAM23の初期化や後述するリングバッファポイントj、データの間引き処理を行うための所定値x、衝突確認閾値などの初期設定を行う。
次にステップS2に移行して、信号処理部22は、ループカウントiの初期値(例えば、“0”)を設定し、ステップS3に移行する。
【0023】
ステップS3では、信号処理部22は、AD変換部21から出力されるAD変換値(デジタル信号値)を読み込み、ステップS4に移行する。
ステップS4では、信号処理部22は、前記ステップS3で読み込んだAD変換値と予め設定された閾値とを比較し、衝突確認を行う。ここでは、AD変換値が閾値以下であるときには、衝突が発生していないと判断してステップS5に移行し、AD変換値が閾値を超えているときに、衝突が発生したと判断して後述するステップS9に移行する。
【0024】
ステップS5では、信号処理部22は、前記ステップS3で読み込んだAD変換値をRAM23に書き込み、ステップS6に移行する。このとき、RAM23の記憶領域が飽和している場合には、先に記憶された最も古いデータを消去して新しいデータを記憶する、即ち最も古いデータに新しいデータを上書きするようにする。
ステップS6では、信号処理部22は、ループカウントiをインクリメントしてステップS7に移行する。
【0025】
ステップS7では、信号処理部22は、ループカウントiを所定値xで除した余りが“0”であるか否かを判定し、i%x=0であるときにはステップS8に移行して無線通信部24を制御し、前記ステップS3で読み込んだAD変換値を無線通信部32に送信してから前記ステップS3に移行する。一方、前記ステップS7で、i%x≠0であると判定したときには、そのまま前記ステップS3に移行する。
【0026】
即ち、信号処理部22は、衝突を確認する前は、各サンプリングデータを逐次RAM23に記録すると共に、AD変換部21からのデジタル信号値を予め設定した間引き率によりサンプリングデータを間引いて無線通信を行う。ここで、設定するデータの間引き率は、無線通信部24の通信速度に依存し、車両外部に設置されたホストコンピュータ31へリアルタイムでデータを送信可能なデータ数となるように設定する。
【0027】
また、ステップS9では、信号処理部22は、リングバッファポイントjの最終値tempを設定する。
本実施形態では、前記ステップS4で衝突を確認したとき、RAM23に記録された衝突確認の数サンプリング前(所定時間T前)からのデータを上書きせずに保持すると共に、RAM23の記録領域が飽和するまでデータを記録する。つまり、衝突確認の数サンプリング前のデータが最も古いデータとなるまで、衝突確認後のデータを記録することで、RAM23に衝突前後のデータのみが記録されるようにする。したがって、リングバッファポイントjの最終値tempは、衝突確認後のデータを記録するサンプリング数に設定する。
【0028】
次に、ステップS10に移行して、信号処理部22は、AD変換値をRAM23に記録してステップS11に移行する。このとき、RAM23の記憶領域が飽和している場合には、前記ステップS5と同様に、最も古いデータに新しいデータを上書きする。
ステップS11では、信号処理部22は、リングバッファポイントjをインクリメントしてステップS12に移行し、リングバッファポイントjが最終値tempに達したか否かを判定する。そして、j<tempであるときにはステップS13に移行し、AD変換部21からAD変換値を読み込んで前記ステップS10に移行する。
【0029】
一方、前記ステップS12でj=tempであると判定したときには、ステップS14に移行して、無線通信部24を制御し、RAM23に記録された全データを無線通信部32に一括送信してから信号処理を終了する。
なお、図1の歪みゲージ3及び歪み発生部4が状態検出手段に対応し、図2のRAM23が記録手段に対応し、無線通信部24が通信手段に対応し、ホストコンピュータ31及び無線通信部32が外部装置に対応している。また、図3のステップS4がイベント検知手段に対応し、ステップS5及びS10が記録処理手段に対応し、ステップS7、S8、S12及びS14が送信処理手段に対応している。
【0030】
次に、本実施形態における動作および効果について説明する。
図4は、自動車の衝突実験システムの構成を示す図である。
今、図4に示すように、自動車110を所定車速で走行させて、車両前方に配された壁120に衝突させる衝突実験を行うものとする。この場合、衝突試験用記録装置10は車体外周や運転席など、応力測定したい箇所に設置され、ホストコンピュータ31は車外に設置される。
【0031】
ホストコンピュータ31には、表示装置(ディスプレイ)130が接続されており、実験結果のデータを表示できるようになっている。
衝突試験用記録装置10は、記録計本体1と歪みセンサとしての歪みゲージ3及びインバー4とをハウジング5に収容することで一体化した構成となっており、両者間の配線はハウジング5内部で行われている。そのため、記録計本体1と歪みセンサとを接続する配線を引き回す必要がない。
【0032】
また、衝突試験用記録装置10には駆動電源が内蔵されているため、外部からの電源配線を必要としない。さらに、衝突試験用記録装置10は、ホストコンピュータ31との無線通信が可能であるため、ホストコンピュータ31を接続するための通信配線を必要としない。
このように、本実施形態における衝突試験用記録装置10は、配線の引き回しを無くした構成であるため、各種配線の設置が複雑になることなく衝突試験用記録装置10を被測定物(ここでは自動車の各部)に設置することができ、評価実験を効率良く行うことができる。
【0033】
衝突実験が開始されると、歪みゲージ3において一定間隔で繰り返し計測されるアナログ信号値が記録計本体1のAD変換部21に入力され、これがデジタル信号値に変換される。このとき、実験開始直後であり、衝突が発生していない状態であるものとすると、AD変換部21から出力されるAD変換値が衝突確認用の閾値以下となるため、信号処理部22は、図3のステップS4でNoと判定してステップS5に移行する。
【0034】
そして、ステップS5でRAM23にデータを書込み、ステップS6でループカウントiをインクリメントした後、ステップS7でデータの間引き判定を行う。このステップS7では、ループカウントiを所定値xで除した余りが“0”であるかを判定し、i%x=0であるときにステップS8に移行して、ホストコンピュータ31に対して無線通信によりデータ送信を行うようになっている。つまり、衝突発生前は、x回に1回の頻度でデータ送信を行うことになる。このステップS5からステップS8までの処理は、衝突が発生してAD変換値が閾値を越えるまで繰り返し行われる。
【0035】
また、このとき、衝突発生前にRAM23の記録領域が飽和した場合には、RAM23に記録された最も古いデータに最も新しいAD変換値を上書きすることで、先に記録されたデータを消去し、新しいデータを順次記録していく。
このように、衝突発生前は、各サンプリングデータがRAM23に記録されると共に、所定の間引き率で間引きされたサンプリングデータが無線通信によりホストコンピュータ31に送信される。
【0036】
その後、自動車が壁に衝突すると、衝突試験用記録装置10のインバー4に応力が加わってインバー4が歪み、この歪みが歪みゲージ3で読み取られる。このとき、歪みゲージ3で計測されたアナログ信号値のAD変換値は、閾値を越える値となるため、信号処理部22は、図3のステップS4でYesと判定してステップS9に移行する。
そして、ステップS9でリングバッファポイントの最終値tempを設定し、ステップS10に移行してRAM23にデータを書込む。次いで、ステップS11に移行してリングバッファポイントjをインクリメントした後、ステップS12でリングバッファポイントjが最終値tempに達したか否かを判定し、j=tempとなるまでRAM23に対するデータ書込みを繰り返す。
【0037】
つまり、j<tempであるときには、衝突発生の所定時間T前より古いデータがRAM23内に存在すると判断して、最も古いデータに新しいAD変換値を上書きし、衝突発生の所定時間T前より古いデータを消去していく。そして、j=tempとなった時点で、衝突発生の所定時間T前のデータがRAM23内で最も古いデータとなった状態、言い換えるとRAM23内に衝突前後のデータのみが保持された状態になったと判断して、RAM23へのデータ書込みを終了する。
【0038】
j=tempとなると、信号処理部22は、ステップS12でYesと判定してステップS14に移行し、RAM23内の全データを無線通信によりホストコンピュータ31に一括送信し、信号処理を終了する。このとき送信されるデータは、衝突発生前のような間引きされたデータではなく、各サンプリングで逐次記録された詳細なデータである。したがって、実験終了後は、この一括送信された詳細データを用いて適正な分析を行うことができる。
【0039】
このように、上記実施形態では、記録計本体と歪みセンサとを同一ハウジングに収容するので、両者間の配線をハウジング内部で行うことができ、配線の引き回しを無くすことができる。また、外部装置との間で無線通信を行う機能を有するので、外部装置と接続するための通信配線を無くすことができ、駆動電源を内蔵するので、外部から電源を供給するための電源配線を無くすことができる。その結果、評価実験を行う際に複雑な配線作業を伴わないため効率が良い。
【0040】
また、衝突発生前にRAMの記録領域が飽和した場合、RAMに記録されたデータのうち最も古いデータに新しいAD変換値を順次上書きし、衝突発生を検知したときには、衝突発生の所定時間前からのデータを上書きせずに保持し、RAMの記録領域が飽和するまでデータを記録するので、衝突発生前後のデータのみを確実に記録することができる。したがって、衝突発生より比較的前の不必要なデータが保持されたままとなるのを回避することができ、データを簡略化して評価実験後のデータ集計に要する時間を短縮することができる。
【0041】
さらに、衝突発生後は、衝突発生前後の詳細なデータをホストコンピュータに一括送信するので、実験後のデータ分析を適正に行うことができる。
また、衝突発生前は、イベント発生前は間引きして簡略化されたデータをホストコンピュータに送信するので、イベント発生前の不必要なデータ数が増大するのを抑制することができる。
【0042】
さらにまた、データを間引きする際の間引き率は、無線通信における通信速度に応じて設定するので、データをリアルタイムでホストコンピュータに送信することができる。
なお、上記実施形態においては、自動車の衝突試験に本発明を適用する場合について説明したが、例えば、パソコンの落下試験等、自動車以外の被測定物に衝撃を与える評価実験に本発明を適用することもできる。また、被測定物に衝撃を与える評価実験以外に、被測定物に温度変化等を与える評価実験にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の衝突試験用記録装置の外観図である。
【図2】記録計本体とその周辺装置の構成を示すブロック図である。
【図3】信号処理部で実行される信号処理手順を示すフローチャートである。
【図4】自動車の衝突実験システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 記録計本体
2 緩衝材
3 歪みゲージ
4 歪み発生部(インバー)
5 ハウジング
10 衝突試験用記録装置
21 AD変換部
22 信号処理部
23 RAM
24 無線通信部
31 ホストコンピュータ
32 無線通信部
110 自動車
120 壁
130 表示装置(ディスプレイ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に物理量を与える評価実験によって得られるデータを記録する評価実験用記録装置であって、
前記物理量に依存する前記被測定物の状態を検出する状態検出手段と、前記状態検出手段により検出したデータを記録する記録手段と、外部装置との間で無線通信を行う通信手段と、前記データを前記記録手段へ記録する記録処理手段と、前記データを前記通信手段によって前記外部装置へ送信する送信処理手段と、駆動電源とを備え、これらが1つのハウジング内に収容されていることを特徴とする評価実験用記録装置。
【請求項2】
前記ハウジング内に、前記状態検出手段により検出したデータに基づいて、前記被測定物に物理量が与えられるイベントの発生を検知するイベント検知手段をさらに有し、
前記記録処理手段は、前記記録手段の記録領域が飽和しているとき、前記記録手段に記録されたデータのうち最も古いデータに、前記状態検出手段により検出したデータを順次上書きするように構成されており、前記イベント検知手段でイベント発生を検知したとき、前記記録手段の記録領域が飽和状態、且つイベント発生を検知する所定時間前のデータが前記記録手段に記録されたデータのうち最も古いデータとなったときに、前記記録手段への記録処理を終了することを特徴とする請求項1に記載の評価実験用記録装置。
【請求項3】
前記送信処理手段は、前記イベント検知手段でイベント発生を検知したとき、前記記録処理手段による記録処理が終了した時点で、前記記録手段に記録された前記データを前記通信手段によって前記外部装置へ一括送信することを特徴とする請求項2に記載の評価実験用記録装置。
【請求項4】
前記送信処理手段は、前記イベント検知手段でイベント発生を非検知であるとき、前記状態検出手段により検出したデータを所定の間引き率で間引いて前記通信手段によって前記外部装置へ逐次送信することを特徴とする請求項2又は3に記載の評価実験用記録装置。
【請求項5】
前記間引き率は、前記通信手段の通信速度に応じて設定することを特徴とする請求項4に記載の評価実験用記録装置。
【請求項6】
前記評価実験は、前記被測定物としての自動車に衝撃を与える衝突実験であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の評価実験用記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−25790(P2010−25790A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188238(P2008−188238)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】