試料の予備濃縮システム
脱着前に予備濃縮装置ハウジング(2)を排気する際に、化学分析装置(7)と予備濃縮装置ハウジング(2)のあいだの流動制限物質および/またはメンブレン(15)が省略されうるように、化学分析装置の内圧に実質的に等しいレベルまで予備濃縮装置ハウジングの内圧をポンプシステム(13)が低減させる、化学分析システムを開示する。化学分析システムは、化学分析装置(7);関心対象化学物質を吸着または脱着させるために吸収材料を加熱するように構成された温度制御要素(5、18)と吸収材料(1)とをその中に入れた、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング(2);および関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム(13)を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み入れられる、2009年8月27日に提出された米国特許仮出願第61/237,457号に対する優先権の恩典を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、化学分析および検出の分野に関し、より詳しくは、質量分析装置などの検出デバイスに導入される試料の濃度を増加させるために、吸着、脱着、およびチャンバー排気技術を利用する試料収集および導入システムを用いることに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
質量分析は、高分解能の測定を実現できることにより、および質量分析計が、機器に導入された化学物質の根本的な特性を測定することから、化学分析に用いることに関して十分に認められている。イオン移動度分光分析計、表面弾性波デバイス、電気化学セル、および類似の機器などの他の形状の化学分析機器は、共鳴周波数の変化、電圧変化、およびドリフト時間測定などの関連現象の測定からその存在を推測することによって、試料の構成成分を測定する。
【0004】
質量分析装置は、これらの他の機器で用いられる圧力よりかなり低い圧力で作動する。質量分析計は、典型的に10-6から10-3 Torrの圧力で作動するが、他の分析機器は典型的にほぼ1気圧で作動する。しかし、特定の機器の特異的設計に基づいて、本明細書において参照される圧とは異なる機器の作動圧を選択してもよく、それらも本明細書において開示される実施の性質を変化させないことに注意すべきである。
【0005】
質量分析計は、大気圧よりかなり低い圧力で作動することから、より高圧で作動するそれらの機器の場合より、機器の単位体積あたりに存在するモル数がより少ないであろう。これは、理想気体の法則:
pV-nRT
によって十分に説明され、式中pは機器の分析チャンバー内の圧力であり、Vは分析チャンバーの体積であり、nは存在する分子数であり、Rは8.314 J mol-1K-1に等しい定数であり、およびTは試料の温度である。
【0006】
多くの応用に関して、化学分析機器の大きさを低減させることが望ましい。たとえば、大きさが小さいことは、空港の審査官が、容疑者または物体周囲の空気を分析する段階、および爆発材料の痕跡を探す段階によって爆発物の存在を検出することができる機器を施設の中に運ぶために望ましい可能性がある。もう1つの例は、どの化学物質が存在するかに関する予備知識を獲得するために、一次応答者が火事または化学消防隊の状況に機器を運ぶために望ましい可能性がある点である。さらなる例は、疾患の指標となりうる化学物質に関して患者の呼気を分析するために、医療の専門家が患者のベッドサイドに運ぶことができる携帯型機器を有することは望ましい可能性がある点である。しかし、これらの例は、小型化機器の必要性の例証として単に提供されるに過ぎないことに注意すべきである。
【0007】
質量分析計の大きさを、容易に持ち運び可能にする大きさまで減少させると、機器の体積は減少する。質量分析計は、典型的に他の化学分析機器より低い作動圧を用いることから、および質量分析計の大きさが、容易に持ち運び可能にするために減少しているために、分析の際に機器に存在する分子数は有意に低減される。このことは、pおよびVの双方を減少させることによって先に触れた理想気体の法則によって例証される。その結果、存在する分子数nがそれに従って低減される。
【0008】
機器の検出体積を低減させる効果は、機器の感度を低減させることであるが、感度は、機器によって測定することができる試料の最小外部濃度である。たとえば、分析チャンバーの体積1 mm3で、25℃で作動して10-3 Torrで作動する質量分析計では、分子32.3×109個が存在するであろう。大気圧(760 Torr)で作動する対応する機器では、分子24.6×1015個が存在するであろう。10-3 Torrで作動するが、1 cm3である分析チャンバーを有する対応する機器では、分子32×1012個が存在するであろう。これらの計算は、より低い圧力で作動する小型の機器では、分析に利用できる分子数が有意により少ないことを例証するために提供される。他の圧力で操作するおよび/または異なる体積の分析チャンバーを有する機器を分析することができ、類似の計算を行うことができる。
【0009】
試料を小型の質量分析計に導入すると、その試料中に存在する関心対象化学物質の存在を検出する可能性はこのように有意に低減される。典型的な野外携帯型質量分析計は、機器に導入された空気試料中の化学物質の存在をおよそ1 ppm(百万分率)まで検出することができる。機器の感度を改善するための技術が当業者に利用可能である。たとえば、質量分析計をガスクロマトグラフに連結させることによって、特殊な熱脱着プローブを用いて、および分析を何回も繰り返すことによって。他にも例が存在して、これらは例証目的のために限って提供されることに注意すべきである。これらの技術を用いる際の問題は、分析を行うために必要な時間が、典型的に数秒から数分まで有意に増加する点であり、または質量分析計に連結させたガスクロマトグラフの場合には、典型的に30分まで増加する点である。
【0010】
有効であるためには、携帯型機器は、1 ppb(十億分率)またはそれ未満で存在する化学物質を検出することができなければならない。たとえば、表1は、いくつかの一般的な化学兵器物質(CWA)に関する脱出限界濃度(Immediate Danger to Life and Health)(IDLH)値を示す(Sun, Y. and Ong, K, Detection Technologies for Chemical Warfare Agents and Toxic Vapors, CRC Press, 2005(非特許文献1)から改作)。
【0011】
この表を調べるとわかるように、一般的な物質のいくつかは、2 ppbまでの濃度で危険である。このゆえに、機器は、このレベルより下を検出することができなければならない。
【0012】
【表1】
【0013】
同様に、化学物質を検出することができる質量分析計に関しても、化学物質はガス様形状で機器に導入される。多くの爆発物が非常に低い揮発指数を有することおよびそういうものとして考慮すると、周辺空気に放出される蒸気は非常に少量である。
【0014】
その結果、単に機器の近位の空気を分析することによって爆発物の存在を検出することができる携帯型機器では、極めて低レベル、理想的には一兆分率(ppt)の濃度を検出することができなければならない。
【0015】
この低濃度検出を促進するために、いくつかのシステムには、化学分析装置に導入される試料の見かけの濃度を増加させるために化学物質予備濃縮装置が含まれる。たとえば、分析装置に導入される試料の見かけの濃度は、標的種を分析装置の中に流れさせるが、一定の種を除去または遮断するために試料注入口と化学分析装置のあいだにメンブレンを用いることによって増加させることができる。メンブレン注入口は、商業的応用において有効であることが証明されているが、それらは典型的に小さい濃度増加(<100)に限定され、メンブレンを通過することが許容される材料のタイプに選択的である。代替アプローチは、関心対象種を捕捉するために固体吸収剤チューブを用いることである。従来の吸収剤チューブは典型的に、吸収材料、固体吸収剤(たとえば、塩化カルシウム、シリカゲル)、もしくは特定の応用にとって適した多様な吸収材料によってコーティングされたもしくはそれらを含むグラスファイバーまたはビーズを充填した金属もしくはガラスのチューブで構成される。吸収(検体とバルク材料との相互作用を意味する)および吸着(材料の表面との相互作用を意味する)という用語はいずれも互換的に用いられることに注意すべきである。検体を収集する特異的機構は、材料に依存して、全ての形状の収集物が本開示の範囲に含まれる。管材料は典型的に、その中に電流を通すと管材料を加熱するニクロム線によって覆われる。収集相のあいだ、試料をチューブの中に通過させると(たとえば、担体ガスまたは液体によって)、吸収材料が検体を吸着する。次に、これらの吸収剤を加熱して、検体を分析装置の中にそれらが吸収された時間よりかなり短い時間放出させて、このように化学分析装置が「調べる」濃度を増加させる。
【0016】
吸収材料を間接的に加熱することはしばしば、無駄な努力に終わる。たとえば、吸収材料は典型的に不良な熱伝導経路を提供して、このように吸収材料の内部への熱の流れを妨害する。さらに、周辺への熱の損失を代償するために、追加の動力および時間が典型的に必要である。濃度の増加は、脱着にとって必要な時間に反比例することから、脱着時間もまた性能の観点から重要である。加えて、吸収材料はしばしば、試料採取および脱着の際に担体ガスの通過を妨げる。なおさらに、濃度の大きい増加が可能であるものの、従来のアセンブリは、たとえば以下が含まれる他の欠点を有しうる:1)十分な材料を吸着および脱着させるために必要な時間および動力がかなりの量でありうる;2)吸収材料上の様々な位置が同時に加熱されず、このように化学物質を異なる時間で放出して、それゆえに任意の1つの試料時間で見られる見かけの濃度を低減させて、予備濃縮装置の全体的な分解能を広げる;3)化学物質、吸収剤、およびバックグラウンドマトリクスのあいだの反応は、化学分析装置に未知部分を導入することによって測定を歪曲することがありうる;4)吸収材料は均一に加熱されず、このように化学物質は異なる時間および異なる程度に放出されるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Sun, Y. and Ong, K, Detection Technologies for Chemical Warfare Agents and Toxic Vapors, CRC Press, 2005
【発明の概要】
【0018】
概要
1つの全般的局面において、脱着の前に予備濃縮装置ハウジングを排気する際に、化学分析装置と予備濃縮装置ハウジングのあいだに流動制限物質および/またはメンブレンが省略されうるように、ポンプシステムが化学分析装置の内圧に実質的に等しいレベルまで予備濃縮装置ハウジングの内圧を低減させる、化学分析システムが開示される。化学分析システムには、化学分析装置、関心対象化学物質を吸着または脱着させるために吸収材料を加熱するように構成された温度制御要素と吸収材料とをその中に入れる、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング;ならびに関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステムが含まれる。
【0019】
もう1つの全般的局面において、化学物質試料の予備濃縮は、関心対象化学物質を吸着または脱着させるために吸収材料を加熱するように構成された温度制御要素と吸収材料とをその中に入れる、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング、ならびに関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステムを提供する段階;予備濃縮装置ハウジング内の内圧を低減させるために予備濃縮装置ハウジングを排気する段階;ならびに次に、関心対象化学物質を、吸収材料から排気された予備濃縮装置ハウジングの中に脱着させるために、温度制御要素の中に電流を伝導させる段階によって達成され、予備濃縮装置ハウジングを排気する際に、予備濃縮装置ハウジングの内圧は化学分析装置の内圧に実質的に等しいレベルまで低減される。
【0020】
なおもう1つの全般的局面において、より低い動力必要性、増加した感度、および増加した分析速度を有する化学物質予備濃縮システムは、吸収材料によって少なくとも部分的にコーティングされ、本質的に同心円の様式でチューブ状メンブレンの周囲を覆って注入口アセンブリを形成する温度制御要素を用いることによって実施される。化学物質予備濃縮システムにはまた、以下が含まれる:化学分析装置;化学分析装置に連結されて、およびチューブ状メンブレンと、脱着段階の際に関心対象化学物質を脱着させるためにチューブ状メンブレンおよび吸収材料を加熱するように構成された、吸収材料によって少なくとも部分的にコーティングされた温度制御要素とをその中に入れる予備濃縮装置ハウジング;ならびに脱着段階の前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム。
【0021】
もう1つの全般的局面において、化学物質試料の予備濃縮は、チューブ状メンブレンと、本質的に同心円の様式でチューブ状メンブレン周囲を覆う、吸収材料によって少なくとも部分的にコーティングされた温度制御要素とをその中に入れる、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング、ならびに予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステムを提供する段階;予備濃縮装置ハウジング内の内圧を低減させるために、ポンプシステムによって予備濃縮装置ハウジングを排気する段階;ならびに次に、チューブ状メンブレンおよび吸収材料を温度制御要素によって熱伝導加熱することによって関心対象化学物質を脱着させる段階によって達成される。
【0022】
なおもう1つの全般的局面において、低い動力必要条件ならびに改善された感度および分析速度を有する化学物質予備濃縮システムは、メンブレンの温度およびメンブレンに関連する温度制御要素の状況に基づいて、吸収モードおよび脱着/半透過性モードで操作可能であるメンブレンを用いて実施される。化学物質予備濃縮システムには、化学分析装置;関心対象化学物質を脱着させるためにメンブレンを加熱するように構成された温度制御要素と、高温より低温で低い拡散速度を有するメンブレンとをその中に入れる、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング;ならびに関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するよう構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム(13)が含まれる。
【0023】
もう1つの全般的局面において、化学物質試料の予備濃縮は、関心対象化学物質を脱着させるためにメンブレンを加熱するように構成された温度制御要素と、高温より低温で低い拡散速度を有するメンブレンをその中に入れる、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング、ならびに関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム、を提供する段階;予備濃縮装置ハウジング内の内圧を低減させるために予備濃縮装置ハウジングを排気する段階;ならびに次に、メンブレンを吸収モードから脱着/半透過性モードに移行するために温度制御要素の温度設定を調整する段階、によって達成される。
【0024】
本明細書において、吸収材料と、備えられている場合にはメンブレとンが本質的に同じハウジングに入っている化学分析装置の実施が開示される。同様に、吸収材料とメンブレンとを含有するハウジングの中に含まれるがそれに対する分析が望ましくない気体が、脱着の前にほとんど排気される実施を行うための技術が開示される。この排気段階により、予備濃縮装置ハウジングのデッドボリュームが本質的になくなり、このように検体の濃度を最大限にする。
【0025】
加えて、本明細書において、試料を分析チャンバーに導入する前に試料を予備濃縮することによって、携帯型質量分析機器の感度を改善するための技術が開示される。1つの例において、吸収材料、ヒーター、温度センサー、弁、および予備濃縮装置ハウジングの中に試料気体を流すための適当な固定具を含有する予備濃縮装置ハウジングは、予備濃縮装置ハウジングと分析チャンバーとがアクセスできるように質量分析計分析チャンバーの注入口の近くに位置する。もう1つの例において、予備濃縮装置ハウジングは、質量分析計分析チャンバーの注入口の近くに位置し、吸収材料、ヒーター、温度センサー、メンブレン、および予備濃縮装置の中に試料気体を流すための固定具を含有する。実施において、方法および固定具は、検体の十分量が吸収材料によって吸収された後に予備濃縮装置ハウジングから残留空気を除去させる;吸収材料(1)には1つより多くの吸収材料が含まれる。
【0026】
いくつかの実施には、以下の特色の1つまたは複数が含まれうる:予備濃縮装置ハウジングの中に入っている温度センサー、感知した温度を通信するための温度感知端子を有する温度センサー;温度制御要素に連結されて、温度制御要素に電流を供給するように構成された温度制御ユニット;感知された温度を通信するための温度感知端子(4)を有する、予備濃縮装置ハウジング(2)の中に入っている温度センサー(3);温度制御要素(5、18)に連結されて、温度制御要素に電流を供給するように構成された温度制御ユニット(6、19);吸収材料(1)には、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリエピクロロヒドリン(PECH)、カーボンブラック、活性炭、フルオロポリオール(FPOL)、マレイン酸ポリエチレン(PEM)、ポリプロピオン酸ビニル(PVPR)、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、および/またはポリビスシアノプロピル-シロキサン(SXCN)の1つまたは複数が含まれ;温度制御要素(18)は、本質的に同心円の様式でメンブレン(15)の周囲を覆って注入口アセンブリ(20)を形成する;メンブレンは、チューブ状の形状に形成される。さらに、いくつかの実施には、以下の技術の1つまたは複数が含まれうる:温度制御要素の中に電流を伝導させる段階には、関心対象化学物質の脱着速度を増加させるために温度制御要素の温度を制御可能に増加させる段階、予備濃縮装置ハウジングにおける温度を感知する段階、関心対象化学物質を吸着させるために温度制御要素の中に電流を伝導させる段階が含まれ;脱着させる段階には、関心対象化学物質の脱着速度を制御可能に増加させるために温度制御要素の中に電流を伝導させる段階が含まれ;関心対象化学物質が第一の関心対象化学物質である場合、脱着させる段階には、第二の関心対象化学物質を脱着させる段階が含まれ;第二の関心対象化学物質を脱着させる段階には、温度制御要素の温度を増加させる段階、関心対象化学物質の脱着速度を増加させるために温度制御要素の温度設定を再調整する段階が含まれ;関心対象化学物質が第一の関心対象化学物質である場合、第二の関心対象化学物質の脱着速度を増加させるために温度制御要素を再調整する段階が含まれる。
【0027】
本明細書において記述される内容の特定の態様は、以下の長所の1つまたは複数を実現するために実施することができる。本予備濃縮装置は、実質的により高い濃度増加を示し、広く多様な化学検出機器に関して感度を有意に改善することができる。熱効率の改善は、予備濃縮装置の全応答時間が実質的に改善されて、迅速な応答が望ましいシナリオ(たとえば、空港の爆発物審査官)において展開を可能にすることを意味する。低減された電力消費を有する迅速かつ均等な加熱を通しての脱着の改善は、加熱要素に吸収剤コーティングを適用することによって達成されうる。測定感度は、脱着チャンバーと分析装置のあいだのメンブレンの必要性をなくすことによって改善されうる。さらに、メンブレンの必要性をなくすことにより、爆発物などのより大きい分子の検出が改善されうる。
【0028】
本明細書において記述される内容の1つまたは複数の態様の詳細を、以下の添付の図面および説明に記述する。本内容の他の特色、局面、および長所は、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図2】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図3】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図4】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図5】円筒形のメンブレンの透視図である。
【図6】隔膜形状のメンブレンの透視図である。
【図7】隔膜形状のメンブレンの上面図である。
【図8】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図9】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図10】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図11】吸収材料によってコーティングされ、メンブレン周囲を覆うワイヤの側面図である。
【図12】図11の吸収剤によって覆われたワイヤの断面図である。
【図13】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図14】例示的な温度制御プロフィールである。
【図15】もう1つの例示的な温度制御プロフィールである。
【0030】
様々な図面における類似の参照記号は、類似の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
以下の説明において、説明する目的のために、本明細書において記述される内容の実施の十分な理解を提供するために、分析のために質量分析計に検体を導入することに関連する特異的例が述べられている。本明細書において記述される実施は、他の施設においても同様に利用することができ、質量分析計に限定される必要はないと認識される。たとえば、実施は、たとえばガスおよび液体クロマトグラフ、イオン移動度分光計、表面弾性波センサー、電気化学セル、および光学分光分析計(たとえば、ラマン、UV-VIS、NIR、および類似の化学検出器)が含まれる他の化学分析装置の操作を改善するために用いられうる。したがって、他の実施も特許請求の範囲の範囲内である。
【0032】
図1は、ハウジング(2)の外部の温度感知端子(4)と共に温度センサー(3)を含有するハウジング(2)の中に吸収材料(1)が入っている例示的な分析装置システムを図解する。ハウジング(2)はまた、温度制御要素に供給される電流を生成するための温度制御ユニット(6)と共に温度制御要素(5)(たとえば、加熱要素)も含有する。いくつかの実施において、ハウジング(2)の内容積は最小である。すなわち、ハウジング(2)は、成分(たとえば、吸収剤、ヒーター)をその中に入れる体積が最小であるように設計される。必要な体積を超えるいかなる体積も予備濃縮による増加を低減させ、ゆえに望ましくない。ハウジング(2)は、弁(8)を含有する入口を通して質量分析計(7)に接続される。他の化学分析装置を用いてもよく、それらも本開示の範囲を変化させない。
【0033】
吸収材料(1)は、関心対象化学物質の貯蔵能を有し、外部制御の適用によってこれらの化学物質を放出する材料を含んでもよい。吸収材料(1)は、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリエピクロロヒドリン(PECH)、カーボンブラック、活性炭、フルオロポリオール(FPOL)、マレイン酸ポリエチレン(PEM)、ポリプロピオン酸ビニル(PVPR)、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、および/またはポリビスシアノプロピル-シロキサン(SXCN)の1つまたは複数であってもよい。材料の吸収および脱着特性を記述する文献において有意な数の参考文献が存在する。Zee, F and Judy, J., MEMS Chemical Gas Sensor, Presented at 13th Biennial University/Government/Industry Microelectronics Symposium (UGIM '99), June 1999;Manoosingh, L., Design of a Chemical Agent Detector Based on Polymer Coated Surface Acoustic Wave (SAW) Resonator Technology, PhD Dissertation, University of South Florida, June 2004;Ho, C. et. al, Development of a Surface Acoustic Wave Sensor for In-Situ Monitoring of Volatile Organic Compounds, Sensors 2003, vol. 3, pp. 236-247;Whitfield, G., MEMS Based Resonant Sensor Arrays: Selective Detection of Volatile and Toxic Chemicals, M. Eng. Dissertation, Massachusetts Institute of Technology, September 2004;Bae, B. et. al, A Fully-Integrated MEMS Preconcentrator For Rapid Gas Sampling, Air Force Technical Report AFRL-PR-WP-TP-2007-224, November 2006;およびGrate, J. et. al, A Smart Sensor System for Trace Organic Vapor Detection using a Temperature Controlled Array of Surface Acoustic Wave Vapor Sensors, Automated Pre-concentrator Tubes, and Pattern Recognition, Presented at the 183rd Electrochemical Society Meeting, May 1993(本明細書において以降、これらの参考文献を「上記の参考文献」と呼ぶ)を参照されたい。Grateらの研究は一般的に、セミナー研究であると考えられる。異なる吸収材料または吸収材料の組を選択してもよく、それらも本発明開示の範囲を変化させないことに注意すべきである。
【0034】
関心対象化学物質は、特定の応用に関して明記されるであろうが、これらには化学兵器物質(CWA)、有害産業廃棄物(TIC)、爆発物、揮発性有機化合物(VOC)、半揮発性有機化合物(SVOC)、炭化水素、空気によって運ばれる汚染物質、除草剤、および殺虫剤が含まれうる。多くのタイプおよびクラスの化学物質が存在し、他の化学物質が明記されうるが、それでも本開示の範囲を変化させないことに注意すべきである。
【0035】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望ましい化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続された試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。吸収材料(1)によって吸収されることが望まれる化学物質は、上記の参考文献において記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵される。温度制御要素(5)を用いて、明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度は温度感知端子(4)により温度センサー(3)によって測定される。十分量の材料が吸収材料(1)によって吸収されると、注入口弁(10)を閉じて、試料採取ポンプ(11)を用いてハウジング(2)から気体を除去する。ハウジング(2)の圧力が所望のレベルまで低減されると、出力弁(12)を閉じて、温度制御要素(5)を調整して、吸収材料(1)に吸収されている化学物質を放出させる。化学物質が吸収材料(1)から放出された後、ハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を弁(8)により開いて、放出された化学物質を分析のために質量分析計(7)に導入する。ハウジング(2)は、吸収材料(1)から化学物質を放出する前にその中に含有される気体の実質的に全てを排気されたことから、質量分析計(7)に導入される化学物質の濃度は、非排気ハウジングから導入された化学物質の濃度より実質的に増加する。
【0036】
説明するために、1つの例において、内容積1128 mm3のハウジング(2)は、40 pg/lのテトラクロロエチレンを含有する流速1 l/分で導入された試料空気流(9)を有する。吸収材料(1)に7.57秒間曝露して、吸収材料(1)がその上を流れるテトラクロロエチレンの20%を貯蔵すると仮定すると、吸収材料(1)はテトラクロロエチレン1.01 pgを貯蔵するであろう。ハウジング(2)の圧力が、先行技術において記述されるように大気圧から低減されない場合、残存空気中の得られたテトラクロロエチレンの濃度は、およそ895 pg/lの濃度を有して、このように予備濃縮によりおよそ22の増加を示すであろう。吸収材料(1)によるテトラクロロエチレンの放出前に、ハウジング(2)の圧力が大気圧から1 Torrまで低減される場合、テトラクロロエチレンは実質的により少ない空気(この例において1/760)の中に放出されて、このように17000の濃度の増加を示すであろう。この例は、説明目的のために限って提供されると認識され、濃度、曝露時間、化学物質、圧力、体積、および効率は、異なってもよく、それらも本開示の範囲を変化させないと認識される。
【0037】
図2は、吸収材料(1)が、ハウジング(2)の外部の温度感知端子(4)と共に温度センサー(3)を含有するハウジング(2)の中に入っている例を図解する。ハウジング(2)はまた、温度制御要素に供給される電流を生成するために温度制御ユニット(6)と共に温度制御要素(5)を含有する。いくつかの実施において、ハウジング(2)の内容積は最小である。ハウジング(2)は、弁(8)を含有する口を通して質量分析計(7)に接続される。他の化学分析装置を用いてもよく、それらも本開示の範囲を変化させない。
【0038】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望まれる化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続される試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。吸収材料(1)によって吸収されることが望まれる化学物質は、上記の参考文献において記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵される。温度制御要素(5)を用いて、明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度は温度感知端子(4)により温度センサー(3)によって測定される。十分量の材料が吸収材料(1)によって吸収されると、注入口弁(10)および排出口弁(12)を閉じる。質量分析計(7)との接続を弁(8)によって開いて、質量分析計(7)に結合するポンプシステム(13)を用いて、質量分析計(7)分析チャンバーによりハウジング(2)を排気する。ハウジング(2)の圧力が所望のレベルまで低減されると、弁(8)を閉じて、温度制御要素(5)を調整して吸収材料(1)に吸収されている化学物質を放出させる。脱着が十分に速い場合には、弁(8)を開いたままにしておけることに注意されたい。化学物質が吸収材料(1)から放出された後、ハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を弁(8)によって開いて、放出された化学物質を分析のために質量分析計(7)に導入する。ハウジング(2)は、吸収材料(1)から化学物質を放出する前にその中に含有されている気体の実質的に全てが排気されたことから、質量分析計(7)に導入された化学物質の濃度は、非排気ハウジングから導入された化学物質の濃度に対して実質的に増加する。
【0039】
図3は、吸収材料(1)が、ハウジング(2)の外部の温度感知端子(4)と共に温度センサー(3)を同様に含有するハウジング(2)の中に入っている実施を図解する。ハウジング(2)はまた、温度制御要素に供給される電流を生成するために温度制御ユニット(6)と共に温度制御要素(5)も含有する。いくつかの実施において、ハウジング(2)の内容積は最小である。ハウジング(2)は、弁(8)を含有する口を通して質量分析計(7)に接続される。ハウジング(2)はまた、質量分析計(7)にも接続されるポンプシステム(13)にも接続される。ポンプシステム(13)の例には、ターボおよび粗引きポンプ、ゲッターポンプ、イオンポンプ、ならびにスクロールケージポンプが含まれる。異なるタイプの化学分析装置(7)または異なるタイプのポンプ(13)を選択してもよく、それらも本開示の範囲を変化させないことに注意すべきである。同様に、ハウジング(2)を、ターボポンプに直接、粗引きポンプに直接、または他の機構などの様々な手段を通してポンプ(13)またはポンプの組み合わせに接続してもよく、それらも本開示の範囲を変化させないことに注意すべきである。同様に、ハウジング(2)を、質量分析計(7)に接続されない外部ポンプに接続してもよく、それらも本開示の範囲を変化させないことに注意すべきである。
【0040】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望まれる化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続される試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。吸収材料(1)によって吸収されることが望まれる化学物質は、上記の参考文献に記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵される。温度制御要素(5)を用いて明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度を温度感知端子(4)により温度センサー(3)によって測定する。十分量の材料が吸収材料(1)によって吸収された後、注入口弁(10)および排出口弁(12)を閉じる。次に、弁(14)を開く段階およびポンプシステム(13)によりハウジング(2)中の気体の実質的に全てを排気する段階によって、ハウジング(2)を排気する。ハウジング(2)の圧力が所望のレベルまで低減された後、弁(14)を閉じて、温度制御要素(5)を調整して吸収材料(1)に吸収されている化学物質を放出させる。化学物質が吸収材料(1)から放出された後、ハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を弁(8)により開いて、放出された化学物質を分析のために質量分析計(7)に導入する。ハウジング(2)は、吸収材料(1)から化学物質を放出する前にその中に含有されている気体の実質的に全てが排気されたことから、質量分析計(7)に導入された化学物質の濃度は、非排気ハウジングから導入された化学物質の濃度に対して実質的に増加する。
【0041】
いくつかの実施には任意で、たとえば脱着の際に吸収材料(1)から放出された化学物質が化学分析装置に流れるのを制限するために、ハウジング(2)と質量分析計(7)のあいだに流動制限装置、圧力障壁、または障壁メンブレン(他の実施に関して以下に記述されるメンブレンなどの)などの流動制御デバイスが含まれうる。しかし、一般的に、化学分析装置チャンバーと同じ圧力までハウジング(2)を低減させることによって、および放出された化学物質を化学分析装置に導入するために質量分析計(7)に連結されたポンプシステム(13)における抵抗力を利用することによって、流動制御デバイスを省略することができる。そのような実施により、低減された圧力輸送気体の必要性、および/またはたとえば輸送のために示差的な圧力を作製するために異なるポンプを用いることを通してハウジング(2)内に中間圧力領域を形成する必要性がなくなる。さらに、流動制限装置または障壁メンブレンの必要性がなくなることによって、たとえばより長い平均自由行程により、質量分析計(7)に到達する放出された試料濃度の増加により、一定の化学物質に関して測定感度が改善されうる。対応して、メンブレンまたは他の制限物質をなくすことによって、たとえばその濃度がメンブレンによって減損されているまたは遮断されているより大きい分子構造を有する化学物質が含まれる、より広い範囲の化学物質を分析することができる。しかし、特定の応用において、より狭い範囲の化学物質に関する感度の増加は、関心対象化学物質のみを通過させるメンブレンを用いることによって達成されうる。このように、いくつかの実施において、一定の化学物質の濃度、およびゆえに検出感度は、以下により詳細に記述されるようにメンブレンを用いて改善されうる。
【0042】
図4は、吸収材料(1)が、ハウジング(2)の外部の温度感知端子(4)を有する温度センサー(3)を同様に含有するハウジング(2)の中に入っている例を図解する。ハウジング(2)はまた、温度制御要素に供給される電流を生成するための温度制御ユニット(6)と共に温度制御要素(5)を含有する。いくつかの実施において、ハウジング(2)の内容積は最小である。ハウジング(2)は、弁(8)およびメンブレン(15)を含有する口を通して質量分析計(7)に接続される。図5に図解されるように、メンブレン(15)は、本質的に円筒形であり、チューブ(16)によりハウジング(2)に接続されてプラグ(17)によって閉じられうる。
【0043】
いくつかの実施において、メンブレン(15)は、図6および7に図解される隔膜形状である。メンブレン(15)は、開口部を含有する台座(21)に取り付けられて、いくつかの実施においてヒーター(18)によって加熱されて、開口部を含有する部材(22)によってその場で保持される。この例において、隔膜アセンブリ(23)は、図8に図解されるように、予備濃縮装置ハウジング(2)と質量分析計(7)のあいだに障壁を形成するように、予備濃縮装置ハウジング(2)の中に置かれる。メンブレン(15)を、他の方法で構成してもよい。メンブレン(15)は、関心対象化学物質をメンブレン(15)の中に通過させるが、質量分析計(7)に導入することが望ましくない化学物質を通過させないように選択される。メンブレン(15)は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのポリマー材料で形成されうる。異なるタイプの化学分析装置(7)またはメンブレン材料(15)を用いることができ、それらも本開示の範囲を変化させないことに注意すべきである。この例において、自身の温度制御ユニット(19)を有する第二の温度制御要素(18)を任意で含めてもよい。
【0044】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望ましい化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続される試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。吸収材料(1)によって吸収されることが望まれる化学物質は、上記の参考文献に記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵される。温度制御要素(5)を用いて明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度は温度感知端子(4)により温度センサー(3)によって測定される。十分量の材料が吸収材料(1)によって吸収されると、注入口弁(10)を閉じて、試料採取ポンプ(11)を用いてハウジング(2)から気体を除去する。ハウジング(2)の圧力が望ましいレベルまで低減されると、出力弁(12)を閉じて、温度制御要素(5)を、吸収材料(1)に吸収されている化学物質を放出させるように調整する。化学物質が吸収材料(1)から放出された後、ハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を弁(8)により開いて、温度制御要素(18)により拡散させるようにメンブレン(15)の温度を調整して、放出された化学物質をメンブレン(15)により分析のために質量分析計(7)に導入する。吸収材料(1)から化学物質を放出させる前に、ハウジング(2)は、その中に含有されている実質的に全ての気体が排気されたことから、質量分析計(7)に導入された化学物質の濃度は、非排気ハウジングから導入された化学物質の濃度より実質的に増加している。メンブレン(15)はさらに、望ましくない化学物質をマトリクスから除去することから、濃度はさらに増強される。いくつかの実施において、拡散速度が最小であるように作動するようメンブレン(15)の温度を調整する場合に、試料(9)材料の大部分が真空チャンバー(7)の中を通過するのをメンブレン材料(15)が妨げる場合には、弁(8)を省略する。
【0045】
図9は、吸収材料(1)が、ハウジング(2)の外部の温度感知端子(4)と共に温度センサー(3)を含有するハウジング(2)の中に入っている実施を図解する。ハウジング(2)はまた、温度制御要素に供給される電流を生成するための温度制御ユニット(6)と共に温度制御要素(5)を含有する。いくつかの実施において、ハウジング(2)の内容積は最小である。ハウジング(2)は、弁(8)およびメンブレン(15)を含有する口を通して質量分析計(7)に接続される。メンブレン(15)は、本質的に円筒形であってもよく、チューブ(16)によりハウジング(2)に接続されて、プラグまたはキャップ(17)によって閉じられうる(図5を参照されたい)。メンブレン(15)は、関心対象化学物質をメンブレン(15)の中に通過させるが、質量分析計(7)に導入されることが望ましくない化学物質を通過させないように選択される。メンブレン(15)は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのポリマー材料で形成されうる。ハウジング(2)はまた、質量分析計(7)にも接続されるポンプシステム(13)にも接続される。ポンプシステム(13)の例には、ターボおよび粗引きポンプ、ゲッターポンプ、イオンポンプ、ならびにスクロールケージポンプが含まれる。異なるタイプの化学分析装置(7)または異なるタイプのポンプ(14)を用いてもよく、それらも本開示の範囲を変化させない。この例において、自身の温度制御ユニット(19)を有する第二の温度制御要素(18)を任意で含めてもよい。いくつかの実施において、ハウジング(2)は、質量分析計(7)に接続されない外部ポンプに接続される。
【0046】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望まれる化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続される試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。吸収材料(1)によって吸収されることが望まれる化学物質を、上記の参考文献において記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵する。温度制御要素(5)を用いて、明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度は温度感知端子(4)によって温度センサー(3)によって測定される。十分量の材料が吸収材料(1)によって吸収された後、注入口弁(10)および排出口弁(12)を閉じる。次に、弁(14)を開く段階、およびポンプシステム(13)によってハウジング(2)内のガスの実質的に全てを排気する段階によってハウジング(2)を排気する。ハウジング(2)の圧力が所望のレベルまで低減されると、弁(14)を閉じて、温度制御要素(5)を調整して、吸収材料(1)に吸収されている化学物質を放出させる。化学物質が吸収材料(1)から放出されると、弁(8)によりハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を開き、温度制御要素(18)によって拡散させるようにメンブレン(15)の温度を調整して、放出された化学物質を、メンブレン(15)により、分析するために質量分析計(7)に導入する。ハウジング(2)は、吸収材料(1)からの化学物質を放出する前に、その中に含有される気体の実質的に全てが排気されたことから、質量分析計(7)に導入された化学物質の濃度は、非排気ハウジングから導入された化学物質の濃度に対して実質的に増加する。メンブレン(15)はさらに、マトリクスから望ましくない化学物質を除去することから、濃度はさらに増強される。
【0047】
いくつかの実施において、拡散速度が最小となるよう作動するようにメンブレン(15)の温度を調整する場合、真空チャンバー(7)の中に試料(9)材料の大部分が流れるのをメンブレン材料(15)が妨げる場合には、弁(8)を省略する。
【0048】
図10は、メンブレン(15)が、ハウジング(2)の外部の温度感知端子(4)と共に温度センサー(3)を同様に含有するハウジング(2)の中に入っている例を図解する。ハウジング(2)はまた、温度制御要素に供給される電流を生成するために温度制御ユニット(19)と共に温度制御要素(18)を含有する。いくつかの実施において、ハウジング(2)の内容積は最小である。ハウジング(2)は、弁(8)およびメンブレン(15)を含有する口を通して質量分析計(7)に接続される。メンブレン(15)は、本質的に円筒形であってもよく、チューブ(16)によってハウジング(2)に接続されて、プラグ(17)によって閉じられうる。メンブレン(15)は、ある温度では吸収材料として作用して、もう1つの温度では脱着剤および半透過性メンブレンとして作用するように選択および構成される。ハウジング(2)はまた、質量分析計(7)にも接続されるポンプシステム(13)にも接続される。ポンプシステム(13)の例には、ターボおよび粗引きポンプ、ゲッターポンプ、イオンポンプ、ならびにスクロールケージポンプが含まれる。異なるタイプの化学分析装置(7)または異なるタイプのポンプ(14)を用いてもよく、それらも本開示の範囲を変化させない。
【0049】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望まれる化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続される試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。メンブレン(15)によって吸収されることが望まれる化学物質は、上記の参考文献に記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵される。温度制御要素(18)を用いて、明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度は、吸収速度が脱着速度より実質的に大きいモードで吸収材料(1)が作動するように、温度感知端子(4)により温度センサー(3)によって測定される。十分量の材料が吸収材料(1)によって吸収されると、注入口弁(10)および排出口弁(12)を閉じる。次に、弁(14)を開く段階、およびポンプシステム(13)によりハウジング(2)中の気体の実質的に全てを排気する段階によって、ハウジング(2)を排気する。ハウジング(2)の圧力が所望のレベルまで低減されると、弁(14)を閉じて、脱着速度が吸収速度より実質的に大きくなるよう吸収材料(1)の作動モードを変化させるように、温度制御要素(18)を調整する。ハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を弁(8)によって開き、放出された化学物質を分析のために質量分析計(7)に導入する。ハウジング(2)は、吸収材料(1)から化学物質を放出する前にその中に含有される気体の実質的に全てが排気されたことから、質量分析計(7)に導入された化学物質の濃度は、非排気ハウジングから導入された化学物質の濃度より実質的に増加する。
【0050】
いくつかの実施において、メンブレン(15)の温度が、拡散速度が最小であるよう作動するように調整されている場合、試料(9)材料の大部分が真空チャンバー(7)の中に流れるのをメンブレン材料(15)が妨げる場合には、弁(8)を省略する。図1〜3に関して記述されるハウジング(2)を排気するために代替技術を利用してもよく、それらも本開示の範囲を変化させない。
【0051】
図9を再度参照して、いくつかの実施において、メンブレン(15)は、ある温度で吸収材料として作用して、もう1つの温度では脱着剤および半透過性メンブレンとして作用するように選択および構成される。さらに、吸収材料(1)は、材料の化学物質貯蔵能が高温より低温で大きくなるように選択される。
【0052】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望まれる化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続される試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。吸収材料(1)によって吸収されることが望まれる化学物質は、上記の参考文献に記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵される。温度制御要素(5)を用いて明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度は、吸収速度が脱着速度より実質的に大きいモードで吸収材料(1)が作動するように、温度感知端子(4)により温度センサー(3)によって測定される。温度制御要素(18)は、メンブレン材料が吸収材料(1)と類似の機構を用いて化学物質を吸収するように、メンブレン(15)の温度を制御するために用いられうる。メンブレン(15)および作動温度は、化学物質が吸収されるが、メンブレン(15)を横切る拡散速度は本質的に最小であるように選択される。十分量の材料が吸収材料(1)およびメンブレン(15)によって吸収されると、注入口弁(10)および排出口弁(12)を閉じる。次に、弁(14)を開く段階およびポンプシステム(13)によりハウジング(2)中の気体の実質的に全てを排気する段階によって、ハウジング(2)を排気する。ハウジング(2)の圧力が所望のレベルまで低減すると、弁(14)を閉じて、脱着速度が吸収速度より実質的に大きくなるよう吸収材料(1)の作動モードを変化させるように、温度制御要素(5)を調整する。メンブレン(15)の温度もまた、脱着速度が吸収速度より実質的に高く、およびメンブレン(15)を横切る拡散速度が実質的に増加するように、温度制御要素(18)によって制御される。化学物質が吸収材料(1)から放出されると、ハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を弁(8)により開いて、放出された化学物質を分析のために質量分析計(7)に導入する。ハウジング(2)は、吸収材料(1)から化学物質を放出する前に、その中に含有される気体の実質的に全てを排気されたことから、質量分析計(7)に導入された化学物質の濃度は、非排気ハウジングからの化学物質の濃度に対して実質的に増加する。
【0053】
メンブレン材料(15)の温度を、拡散速度が最小であるよう作動するよう調整する場合、試料(9)材料の大部分が真空チャンバー(7)の中を通過するのをメンブレン材料(15)が妨げる場合には、弁(8)を省略してもよい。さらに、いくつかの例には、メンブレン(15)および吸収材料(1)の拡散速度、脱着速度、および吸着を制御するために、1つの温度制御要素および温度制御ユニットが含まれる。
【0054】
図11は、メンブレン(15)、吸収材料(1)、および温度制御要素(18)が実質的に同じ体積を占める実施を図解する。図12をさらに参照して、温度制御要素(18)の長さの一部は、断面A-Aによって示されるように、吸収材料(1)によってコーティングされる。次に、コーティングされた温度制御要素(18)は、本質的に同心円の様式でチューブ状メンブレン(15)周囲を覆って、図13に示される注入口アセンブリ(20)を形成してもよい。図13に図解されるシステムは、たとえば図4、図9、および/または図10に関して先に記述した技術を用いて作動されうる。
【0055】
先に記述した例において、吸収材料(1)を直接加熱することによって、熱量が間接加熱法と比較して有意に低減されることから、リアルタイムに近い分析が達成されうる。このように、サイクル時間もまた低減することができる。さらに、吸収材料(1)を直接加熱することによって、熱効率は有意に増加する。加えて、ハウジング(2)を低減された圧力まで排気することによって、熱伝導および対流熱損失が低減される。ゆえに、いくつかの実施において、予備濃縮装置は、間接加熱技術より少ない動力(平均値)で操作することができる。さらに、いくつかの実施において、たとえば上記のシステムの検出された化学物質の範囲および/または検出感度を広げるために、注入口アセンブリ(20)のメンブレン(15)を省略する。
【0056】
本明細書において開示される実施および例を操作するシステムおよび技術の説明において、吸収材料に適用される温度は、吸収材料の温度が、2つの極値のあいだで切り換えられるよりむしろ時間の関数として調整される時間プロフィールを含みうることに注意すべきである。この操作法の効果は、予備濃縮装置の予備濃縮による増加をさらに増加させることである。図14は、3つの候補化学物質、化学物質A(24)、化学物質B(25)、および化学物質C(26)が、異なる温度および異なる時間間隔で特定の選択された吸収剤から実質的に吸収または脱着させる温度対時間のグラフを図解する。図解されるように、この例における3つの候補化学物質の各々は、温度に基づいて異なる速度で吸収材料から脱着する。異なる化学物質は、化学分析装置において一度に限定された数を調べるために望ましいように同じクラス(たとえば、爆発物)、または化学分析装置から1つもしくは複数の化学物質を除外することが望ましいように異なるクラス(たとえば、CWAおよび干渉物質)の全ての化学物質でありうる。図15は、本明細書において記述される予備濃縮装置の実施から最適な性能を実現するために、インテリジェント温度プロフィールがどのように用いられうるかを示すグラフを図解する。この操作法において、全ての関心対象化学物質が吸収剤によって吸収されるように、吸収期間(27)の際に温度を調整する。期間は、本明細書において記述される吸収材料の十分量を生じるように選択される。十分に吸収させた後、脱着期間(28)のあいだに温度を、化学物質AおよびBのほとんどを保持しながら、主に化学物質Cを質量分析計の中に脱着させるレベルに調整する。化学物質Cが脱着された後、脱着期間(26)のあいだに、温度を、化学物質Aのほとんどを保持しながら主に化学物質Bを質量分析計の中に脱着させるレベルに調整する。脱着期間(26)の後、温度を、脱着期間(27)のあいだに、化学物質Aを質量分析計に脱着させるレベルに調整する。これらおよび他の温度制御プロフィールは、温度制御ユニット(6)および/または(19)を用いて実施されうる。材料の選択、温度、ならびに吸収剤によって吸収および脱着されることが望ましい化学物質の数およびタイプの選択は、特定の応用または実施に適するように選択されうること、ならびに本明細書において開示される特定の選択は例として用いられるに過ぎないことに注意すべきである。
【0057】
本明細書において記述される内容および操作の態様は、本明細書において開示される構造が含まれる、デジタル電子回路またはコンピューターソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェア、およびその構造同等物、またはそれらの1つまたは複数の組み合わせにおいて実施されうる。本明細書において記述される内容の態様は、温度制御ユニット(6)および/または(19)および/またはポンプおよび弁制御システムの作動によって実行するために、またはそれらの作動を制御するために、1つまたは複数のコンピュータープログラムとして、たとえばコンピューター保存媒体上で暗号処理されたコンピュータープログラム命令の1つまたは複数のモジュールとして実施することができる。またはもしくは加えて、プログラム命令は、温度制御ユニット(6)および/または(19)によって実行するために適した受信装置に伝達するための情報を暗号処理するために作製される人工的に作製され伝播シグナル、たとえば機械により作製された電気、光学、または電磁シグナル上で暗号処理することができる。コンピューター保存媒体は、コンピューター読み取り可能な保存デバイス、コンピューター読み取り可能な保存基板、ランダムもしくはシリアルアクセスメモリアレイもしくはデバイス、またはそれらの1つもしくは複数の組み合わせでありうる、またはそれらの中に含まれることができる。その上、コンピューター保存媒体は伝播シグナルではないが、コンピューター保存媒体は、人工的に作製された伝播シグナルにおいて暗号処理されるコンピュータープログラム命令のソースまたは宛先でありうる。コンピューター保存媒体はまた、1つまたは複数の個別の物理的成分または媒体(たとえば、多数のCD、ディスク、または他の保存デバイス)でありうるまたはそれらに含まれることができる。
【0058】
「制御ユニット」および「制御システム」(本明細書において全般的に「コントローラー」と呼ばれる)という用語は、例としてプログラム可能なプロセッサー、コンピューター、チップ上のシステム、または前述の複数もしくはその組み合わせが含まれる、本明細書において記述される操作を行うための、全ての種類の装置、デバイス、および機械を包含する。コントローラーには、特殊な目的のロジック回路、たとえば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)が含まれることができる。装置にはまた、ハードウェアの他に、当該コンピュータープログラムのための実行環境を作製する暗号、たとえば、プロセッサーファームウェア、プロトコールスタック、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームランタイム環境、バーチャルマシーン、またはそれらの1つもしくは複数の組み合わせを構成する暗号が含まれることができる。
【0059】
コンピュータープログラム(同様に、プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプトまたは暗号としても知られる)は、コンパイルまたは解釈型言語、宣言型言語または手続き型言語が含まれる任意の形式のプログラミング言語で書くことができ、これは独立したプログラムとして、または計算環境において用いるために適したモジュール、成分、サブルーチン、オブジェクト、または他のユニットとしての場合が含まれる任意の形式で展開することができる。コンピュータープログラムは、ファイルシステムにおけるファイルに対応しうるが、必ずしもその必要はない。プログラムは、他のプログラムまたはデータ(たとえば、構成言語文書で保存された1つまたは複数のスクリプト)を保持するファイルの一部に、当該プログラム専門の1つのファイル、または多数のコーディネートファイル(たとえば、1つまたは複数のモジュール、サブプログラム、または暗号の一部を保存するファイル)に保存することができる。
【0060】
本明細書において記述されるプロセスおよびロジックフローは、入力データに作用して、出力を生成することによって、アクションを行うために1つまたは複数のコンピュータープログラムを実行する1つまたは複数のプログラム可能なプロセッサーによって実行することができる。プロセスおよびロジックフローはまた、特殊な目的のロジック回路、たとえばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)として実行することができる。
【0061】
コンピュータープログラムを実行するために適したプロセッサーには、例として、全般的および特殊な目的のマイクロプロセッサー、および任意の種類のデジタルコンピューターの任意の1つまたは複数のプロセッサーが含まれる。全般的に、プロセッサーは、読み取り専用メモリーまたはランダムアクセスメモリーもしくはその双方からの命令およびデータを受信するであろう。コンピューターの必須要素は、命令に従ってアクションを行うためのプロセッサー、ならびに命令およびデータを保存するための1つまたは複数の記憶デバイスである。全般的に、コンピューターにはまた、データを保存するための1つまたは複数の大容量記憶デバイス、たとえば磁気、磁気-光学ディスク、もしくは光学ディスクが含まれる、またはそれらからデータを受信するもしくはデータを転送する、または双方を行うために機能的に連結されるであろう。しかし、コンピューターは、そのようなデバイスを有する必要はない。コンピュータープログラム命令およびデータを保存するために適したデバイスには、例として半導体メモリデバイス、たとえばEPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイス;磁気ディスク、たとえば内部ハードディスクまたはリムーバブルディスク;磁気-光学ディスク;ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクが含まれる、全ての形状の非揮発性のメモリ、媒体およびメモリデバイスが含まれる。プロセッサーおよびメモリは、特殊な目的のロジック回路によって補助されるまたはその中に組み入れられることができる。
【0062】
本明細書は、多くの特異的実施の詳細を含有するが、これらは、任意の本発明の範囲または特許請求されうる範囲に対する制限であると解釈すべきではなく、むしろ特定の本発明の特定の態様に対して特異的な特色の説明であると解釈すべきである。本明細書において記述される個別の態様の文脈におけるある特色を、同様に1つの態様において組み合わせて実施することができる。逆に、1つの態様の文脈において記述される様々な特色もまた、個別にまたは任意の適した部分的組み合わせで多数の態様において実施することができる。その上、特色は、ある組み合わせにおいて作用するように先に記述されて、たとえ当初そのように特許請求されうるとしても、いくつかの例において、特許請求される組み合わせの1つまたは複数の特色を組み合わせから除去することができ、特許請求される組み合わせは、部分的組み合わせまたは部分的組み合わせの変化形に向けられうる。
【0063】
同様に操作は、図面において特定の順序で描写されているが、これはそのような操作が、示される特定の順序でもしくは連続的順序で行われることを必要とすると理解すべきではなく、図解される操作は全て所望の結果を達成するために行われると理解すべきである。その上、上記の態様における様々なシステムの成分の分離は、全ての態様においてそのような分離を必要とすると理解すべきではなく、記述の成分およびシステムを、全般的に、1つの産物で共に統合する、または多数の産物にパッケージングすることができると理解すべきである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み入れられる、2009年8月27日に提出された米国特許仮出願第61/237,457号に対する優先権の恩典を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、化学分析および検出の分野に関し、より詳しくは、質量分析装置などの検出デバイスに導入される試料の濃度を増加させるために、吸着、脱着、およびチャンバー排気技術を利用する試料収集および導入システムを用いることに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
質量分析は、高分解能の測定を実現できることにより、および質量分析計が、機器に導入された化学物質の根本的な特性を測定することから、化学分析に用いることに関して十分に認められている。イオン移動度分光分析計、表面弾性波デバイス、電気化学セル、および類似の機器などの他の形状の化学分析機器は、共鳴周波数の変化、電圧変化、およびドリフト時間測定などの関連現象の測定からその存在を推測することによって、試料の構成成分を測定する。
【0004】
質量分析装置は、これらの他の機器で用いられる圧力よりかなり低い圧力で作動する。質量分析計は、典型的に10-6から10-3 Torrの圧力で作動するが、他の分析機器は典型的にほぼ1気圧で作動する。しかし、特定の機器の特異的設計に基づいて、本明細書において参照される圧とは異なる機器の作動圧を選択してもよく、それらも本明細書において開示される実施の性質を変化させないことに注意すべきである。
【0005】
質量分析計は、大気圧よりかなり低い圧力で作動することから、より高圧で作動するそれらの機器の場合より、機器の単位体積あたりに存在するモル数がより少ないであろう。これは、理想気体の法則:
pV-nRT
によって十分に説明され、式中pは機器の分析チャンバー内の圧力であり、Vは分析チャンバーの体積であり、nは存在する分子数であり、Rは8.314 J mol-1K-1に等しい定数であり、およびTは試料の温度である。
【0006】
多くの応用に関して、化学分析機器の大きさを低減させることが望ましい。たとえば、大きさが小さいことは、空港の審査官が、容疑者または物体周囲の空気を分析する段階、および爆発材料の痕跡を探す段階によって爆発物の存在を検出することができる機器を施設の中に運ぶために望ましい可能性がある。もう1つの例は、どの化学物質が存在するかに関する予備知識を獲得するために、一次応答者が火事または化学消防隊の状況に機器を運ぶために望ましい可能性がある点である。さらなる例は、疾患の指標となりうる化学物質に関して患者の呼気を分析するために、医療の専門家が患者のベッドサイドに運ぶことができる携帯型機器を有することは望ましい可能性がある点である。しかし、これらの例は、小型化機器の必要性の例証として単に提供されるに過ぎないことに注意すべきである。
【0007】
質量分析計の大きさを、容易に持ち運び可能にする大きさまで減少させると、機器の体積は減少する。質量分析計は、典型的に他の化学分析機器より低い作動圧を用いることから、および質量分析計の大きさが、容易に持ち運び可能にするために減少しているために、分析の際に機器に存在する分子数は有意に低減される。このことは、pおよびVの双方を減少させることによって先に触れた理想気体の法則によって例証される。その結果、存在する分子数nがそれに従って低減される。
【0008】
機器の検出体積を低減させる効果は、機器の感度を低減させることであるが、感度は、機器によって測定することができる試料の最小外部濃度である。たとえば、分析チャンバーの体積1 mm3で、25℃で作動して10-3 Torrで作動する質量分析計では、分子32.3×109個が存在するであろう。大気圧(760 Torr)で作動する対応する機器では、分子24.6×1015個が存在するであろう。10-3 Torrで作動するが、1 cm3である分析チャンバーを有する対応する機器では、分子32×1012個が存在するであろう。これらの計算は、より低い圧力で作動する小型の機器では、分析に利用できる分子数が有意により少ないことを例証するために提供される。他の圧力で操作するおよび/または異なる体積の分析チャンバーを有する機器を分析することができ、類似の計算を行うことができる。
【0009】
試料を小型の質量分析計に導入すると、その試料中に存在する関心対象化学物質の存在を検出する可能性はこのように有意に低減される。典型的な野外携帯型質量分析計は、機器に導入された空気試料中の化学物質の存在をおよそ1 ppm(百万分率)まで検出することができる。機器の感度を改善するための技術が当業者に利用可能である。たとえば、質量分析計をガスクロマトグラフに連結させることによって、特殊な熱脱着プローブを用いて、および分析を何回も繰り返すことによって。他にも例が存在して、これらは例証目的のために限って提供されることに注意すべきである。これらの技術を用いる際の問題は、分析を行うために必要な時間が、典型的に数秒から数分まで有意に増加する点であり、または質量分析計に連結させたガスクロマトグラフの場合には、典型的に30分まで増加する点である。
【0010】
有効であるためには、携帯型機器は、1 ppb(十億分率)またはそれ未満で存在する化学物質を検出することができなければならない。たとえば、表1は、いくつかの一般的な化学兵器物質(CWA)に関する脱出限界濃度(Immediate Danger to Life and Health)(IDLH)値を示す(Sun, Y. and Ong, K, Detection Technologies for Chemical Warfare Agents and Toxic Vapors, CRC Press, 2005(非特許文献1)から改作)。
【0011】
この表を調べるとわかるように、一般的な物質のいくつかは、2 ppbまでの濃度で危険である。このゆえに、機器は、このレベルより下を検出することができなければならない。
【0012】
【表1】
【0013】
同様に、化学物質を検出することができる質量分析計に関しても、化学物質はガス様形状で機器に導入される。多くの爆発物が非常に低い揮発指数を有することおよびそういうものとして考慮すると、周辺空気に放出される蒸気は非常に少量である。
【0014】
その結果、単に機器の近位の空気を分析することによって爆発物の存在を検出することができる携帯型機器では、極めて低レベル、理想的には一兆分率(ppt)の濃度を検出することができなければならない。
【0015】
この低濃度検出を促進するために、いくつかのシステムには、化学分析装置に導入される試料の見かけの濃度を増加させるために化学物質予備濃縮装置が含まれる。たとえば、分析装置に導入される試料の見かけの濃度は、標的種を分析装置の中に流れさせるが、一定の種を除去または遮断するために試料注入口と化学分析装置のあいだにメンブレンを用いることによって増加させることができる。メンブレン注入口は、商業的応用において有効であることが証明されているが、それらは典型的に小さい濃度増加(<100)に限定され、メンブレンを通過することが許容される材料のタイプに選択的である。代替アプローチは、関心対象種を捕捉するために固体吸収剤チューブを用いることである。従来の吸収剤チューブは典型的に、吸収材料、固体吸収剤(たとえば、塩化カルシウム、シリカゲル)、もしくは特定の応用にとって適した多様な吸収材料によってコーティングされたもしくはそれらを含むグラスファイバーまたはビーズを充填した金属もしくはガラスのチューブで構成される。吸収(検体とバルク材料との相互作用を意味する)および吸着(材料の表面との相互作用を意味する)という用語はいずれも互換的に用いられることに注意すべきである。検体を収集する特異的機構は、材料に依存して、全ての形状の収集物が本開示の範囲に含まれる。管材料は典型的に、その中に電流を通すと管材料を加熱するニクロム線によって覆われる。収集相のあいだ、試料をチューブの中に通過させると(たとえば、担体ガスまたは液体によって)、吸収材料が検体を吸着する。次に、これらの吸収剤を加熱して、検体を分析装置の中にそれらが吸収された時間よりかなり短い時間放出させて、このように化学分析装置が「調べる」濃度を増加させる。
【0016】
吸収材料を間接的に加熱することはしばしば、無駄な努力に終わる。たとえば、吸収材料は典型的に不良な熱伝導経路を提供して、このように吸収材料の内部への熱の流れを妨害する。さらに、周辺への熱の損失を代償するために、追加の動力および時間が典型的に必要である。濃度の増加は、脱着にとって必要な時間に反比例することから、脱着時間もまた性能の観点から重要である。加えて、吸収材料はしばしば、試料採取および脱着の際に担体ガスの通過を妨げる。なおさらに、濃度の大きい増加が可能であるものの、従来のアセンブリは、たとえば以下が含まれる他の欠点を有しうる:1)十分な材料を吸着および脱着させるために必要な時間および動力がかなりの量でありうる;2)吸収材料上の様々な位置が同時に加熱されず、このように化学物質を異なる時間で放出して、それゆえに任意の1つの試料時間で見られる見かけの濃度を低減させて、予備濃縮装置の全体的な分解能を広げる;3)化学物質、吸収剤、およびバックグラウンドマトリクスのあいだの反応は、化学分析装置に未知部分を導入することによって測定を歪曲することがありうる;4)吸収材料は均一に加熱されず、このように化学物質は異なる時間および異なる程度に放出されるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Sun, Y. and Ong, K, Detection Technologies for Chemical Warfare Agents and Toxic Vapors, CRC Press, 2005
【発明の概要】
【0018】
概要
1つの全般的局面において、脱着の前に予備濃縮装置ハウジングを排気する際に、化学分析装置と予備濃縮装置ハウジングのあいだに流動制限物質および/またはメンブレンが省略されうるように、ポンプシステムが化学分析装置の内圧に実質的に等しいレベルまで予備濃縮装置ハウジングの内圧を低減させる、化学分析システムが開示される。化学分析システムには、化学分析装置、関心対象化学物質を吸着または脱着させるために吸収材料を加熱するように構成された温度制御要素と吸収材料とをその中に入れる、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング;ならびに関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステムが含まれる。
【0019】
もう1つの全般的局面において、化学物質試料の予備濃縮は、関心対象化学物質を吸着または脱着させるために吸収材料を加熱するように構成された温度制御要素と吸収材料とをその中に入れる、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング、ならびに関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステムを提供する段階;予備濃縮装置ハウジング内の内圧を低減させるために予備濃縮装置ハウジングを排気する段階;ならびに次に、関心対象化学物質を、吸収材料から排気された予備濃縮装置ハウジングの中に脱着させるために、温度制御要素の中に電流を伝導させる段階によって達成され、予備濃縮装置ハウジングを排気する際に、予備濃縮装置ハウジングの内圧は化学分析装置の内圧に実質的に等しいレベルまで低減される。
【0020】
なおもう1つの全般的局面において、より低い動力必要性、増加した感度、および増加した分析速度を有する化学物質予備濃縮システムは、吸収材料によって少なくとも部分的にコーティングされ、本質的に同心円の様式でチューブ状メンブレンの周囲を覆って注入口アセンブリを形成する温度制御要素を用いることによって実施される。化学物質予備濃縮システムにはまた、以下が含まれる:化学分析装置;化学分析装置に連結されて、およびチューブ状メンブレンと、脱着段階の際に関心対象化学物質を脱着させるためにチューブ状メンブレンおよび吸収材料を加熱するように構成された、吸収材料によって少なくとも部分的にコーティングされた温度制御要素とをその中に入れる予備濃縮装置ハウジング;ならびに脱着段階の前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム。
【0021】
もう1つの全般的局面において、化学物質試料の予備濃縮は、チューブ状メンブレンと、本質的に同心円の様式でチューブ状メンブレン周囲を覆う、吸収材料によって少なくとも部分的にコーティングされた温度制御要素とをその中に入れる、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング、ならびに予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステムを提供する段階;予備濃縮装置ハウジング内の内圧を低減させるために、ポンプシステムによって予備濃縮装置ハウジングを排気する段階;ならびに次に、チューブ状メンブレンおよび吸収材料を温度制御要素によって熱伝導加熱することによって関心対象化学物質を脱着させる段階によって達成される。
【0022】
なおもう1つの全般的局面において、低い動力必要条件ならびに改善された感度および分析速度を有する化学物質予備濃縮システムは、メンブレンの温度およびメンブレンに関連する温度制御要素の状況に基づいて、吸収モードおよび脱着/半透過性モードで操作可能であるメンブレンを用いて実施される。化学物質予備濃縮システムには、化学分析装置;関心対象化学物質を脱着させるためにメンブレンを加熱するように構成された温度制御要素と、高温より低温で低い拡散速度を有するメンブレンとをその中に入れる、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング;ならびに関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するよう構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム(13)が含まれる。
【0023】
もう1つの全般的局面において、化学物質試料の予備濃縮は、関心対象化学物質を脱着させるためにメンブレンを加熱するように構成された温度制御要素と、高温より低温で低い拡散速度を有するメンブレンをその中に入れる、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング、ならびに関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム、を提供する段階;予備濃縮装置ハウジング内の内圧を低減させるために予備濃縮装置ハウジングを排気する段階;ならびに次に、メンブレンを吸収モードから脱着/半透過性モードに移行するために温度制御要素の温度設定を調整する段階、によって達成される。
【0024】
本明細書において、吸収材料と、備えられている場合にはメンブレとンが本質的に同じハウジングに入っている化学分析装置の実施が開示される。同様に、吸収材料とメンブレンとを含有するハウジングの中に含まれるがそれに対する分析が望ましくない気体が、脱着の前にほとんど排気される実施を行うための技術が開示される。この排気段階により、予備濃縮装置ハウジングのデッドボリュームが本質的になくなり、このように検体の濃度を最大限にする。
【0025】
加えて、本明細書において、試料を分析チャンバーに導入する前に試料を予備濃縮することによって、携帯型質量分析機器の感度を改善するための技術が開示される。1つの例において、吸収材料、ヒーター、温度センサー、弁、および予備濃縮装置ハウジングの中に試料気体を流すための適当な固定具を含有する予備濃縮装置ハウジングは、予備濃縮装置ハウジングと分析チャンバーとがアクセスできるように質量分析計分析チャンバーの注入口の近くに位置する。もう1つの例において、予備濃縮装置ハウジングは、質量分析計分析チャンバーの注入口の近くに位置し、吸収材料、ヒーター、温度センサー、メンブレン、および予備濃縮装置の中に試料気体を流すための固定具を含有する。実施において、方法および固定具は、検体の十分量が吸収材料によって吸収された後に予備濃縮装置ハウジングから残留空気を除去させる;吸収材料(1)には1つより多くの吸収材料が含まれる。
【0026】
いくつかの実施には、以下の特色の1つまたは複数が含まれうる:予備濃縮装置ハウジングの中に入っている温度センサー、感知した温度を通信するための温度感知端子を有する温度センサー;温度制御要素に連結されて、温度制御要素に電流を供給するように構成された温度制御ユニット;感知された温度を通信するための温度感知端子(4)を有する、予備濃縮装置ハウジング(2)の中に入っている温度センサー(3);温度制御要素(5、18)に連結されて、温度制御要素に電流を供給するように構成された温度制御ユニット(6、19);吸収材料(1)には、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリエピクロロヒドリン(PECH)、カーボンブラック、活性炭、フルオロポリオール(FPOL)、マレイン酸ポリエチレン(PEM)、ポリプロピオン酸ビニル(PVPR)、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、および/またはポリビスシアノプロピル-シロキサン(SXCN)の1つまたは複数が含まれ;温度制御要素(18)は、本質的に同心円の様式でメンブレン(15)の周囲を覆って注入口アセンブリ(20)を形成する;メンブレンは、チューブ状の形状に形成される。さらに、いくつかの実施には、以下の技術の1つまたは複数が含まれうる:温度制御要素の中に電流を伝導させる段階には、関心対象化学物質の脱着速度を増加させるために温度制御要素の温度を制御可能に増加させる段階、予備濃縮装置ハウジングにおける温度を感知する段階、関心対象化学物質を吸着させるために温度制御要素の中に電流を伝導させる段階が含まれ;脱着させる段階には、関心対象化学物質の脱着速度を制御可能に増加させるために温度制御要素の中に電流を伝導させる段階が含まれ;関心対象化学物質が第一の関心対象化学物質である場合、脱着させる段階には、第二の関心対象化学物質を脱着させる段階が含まれ;第二の関心対象化学物質を脱着させる段階には、温度制御要素の温度を増加させる段階、関心対象化学物質の脱着速度を増加させるために温度制御要素の温度設定を再調整する段階が含まれ;関心対象化学物質が第一の関心対象化学物質である場合、第二の関心対象化学物質の脱着速度を増加させるために温度制御要素を再調整する段階が含まれる。
【0027】
本明細書において記述される内容の特定の態様は、以下の長所の1つまたは複数を実現するために実施することができる。本予備濃縮装置は、実質的により高い濃度増加を示し、広く多様な化学検出機器に関して感度を有意に改善することができる。熱効率の改善は、予備濃縮装置の全応答時間が実質的に改善されて、迅速な応答が望ましいシナリオ(たとえば、空港の爆発物審査官)において展開を可能にすることを意味する。低減された電力消費を有する迅速かつ均等な加熱を通しての脱着の改善は、加熱要素に吸収剤コーティングを適用することによって達成されうる。測定感度は、脱着チャンバーと分析装置のあいだのメンブレンの必要性をなくすことによって改善されうる。さらに、メンブレンの必要性をなくすことにより、爆発物などのより大きい分子の検出が改善されうる。
【0028】
本明細書において記述される内容の1つまたは複数の態様の詳細を、以下の添付の図面および説明に記述する。本内容の他の特色、局面、および長所は、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図2】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図3】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図4】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図5】円筒形のメンブレンの透視図である。
【図6】隔膜形状のメンブレンの透視図である。
【図7】隔膜形状のメンブレンの上面図である。
【図8】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図9】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図10】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図11】吸収材料によってコーティングされ、メンブレン周囲を覆うワイヤの側面図である。
【図12】図11の吸収剤によって覆われたワイヤの断面図である。
【図13】例示的な化学分析システムのシステムブロックダイアグラムを図解する。
【図14】例示的な温度制御プロフィールである。
【図15】もう1つの例示的な温度制御プロフィールである。
【0030】
様々な図面における類似の参照記号は、類似の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
以下の説明において、説明する目的のために、本明細書において記述される内容の実施の十分な理解を提供するために、分析のために質量分析計に検体を導入することに関連する特異的例が述べられている。本明細書において記述される実施は、他の施設においても同様に利用することができ、質量分析計に限定される必要はないと認識される。たとえば、実施は、たとえばガスおよび液体クロマトグラフ、イオン移動度分光計、表面弾性波センサー、電気化学セル、および光学分光分析計(たとえば、ラマン、UV-VIS、NIR、および類似の化学検出器)が含まれる他の化学分析装置の操作を改善するために用いられうる。したがって、他の実施も特許請求の範囲の範囲内である。
【0032】
図1は、ハウジング(2)の外部の温度感知端子(4)と共に温度センサー(3)を含有するハウジング(2)の中に吸収材料(1)が入っている例示的な分析装置システムを図解する。ハウジング(2)はまた、温度制御要素に供給される電流を生成するための温度制御ユニット(6)と共に温度制御要素(5)(たとえば、加熱要素)も含有する。いくつかの実施において、ハウジング(2)の内容積は最小である。すなわち、ハウジング(2)は、成分(たとえば、吸収剤、ヒーター)をその中に入れる体積が最小であるように設計される。必要な体積を超えるいかなる体積も予備濃縮による増加を低減させ、ゆえに望ましくない。ハウジング(2)は、弁(8)を含有する入口を通して質量分析計(7)に接続される。他の化学分析装置を用いてもよく、それらも本開示の範囲を変化させない。
【0033】
吸収材料(1)は、関心対象化学物質の貯蔵能を有し、外部制御の適用によってこれらの化学物質を放出する材料を含んでもよい。吸収材料(1)は、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリエピクロロヒドリン(PECH)、カーボンブラック、活性炭、フルオロポリオール(FPOL)、マレイン酸ポリエチレン(PEM)、ポリプロピオン酸ビニル(PVPR)、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、および/またはポリビスシアノプロピル-シロキサン(SXCN)の1つまたは複数であってもよい。材料の吸収および脱着特性を記述する文献において有意な数の参考文献が存在する。Zee, F and Judy, J., MEMS Chemical Gas Sensor, Presented at 13th Biennial University/Government/Industry Microelectronics Symposium (UGIM '99), June 1999;Manoosingh, L., Design of a Chemical Agent Detector Based on Polymer Coated Surface Acoustic Wave (SAW) Resonator Technology, PhD Dissertation, University of South Florida, June 2004;Ho, C. et. al, Development of a Surface Acoustic Wave Sensor for In-Situ Monitoring of Volatile Organic Compounds, Sensors 2003, vol. 3, pp. 236-247;Whitfield, G., MEMS Based Resonant Sensor Arrays: Selective Detection of Volatile and Toxic Chemicals, M. Eng. Dissertation, Massachusetts Institute of Technology, September 2004;Bae, B. et. al, A Fully-Integrated MEMS Preconcentrator For Rapid Gas Sampling, Air Force Technical Report AFRL-PR-WP-TP-2007-224, November 2006;およびGrate, J. et. al, A Smart Sensor System for Trace Organic Vapor Detection using a Temperature Controlled Array of Surface Acoustic Wave Vapor Sensors, Automated Pre-concentrator Tubes, and Pattern Recognition, Presented at the 183rd Electrochemical Society Meeting, May 1993(本明細書において以降、これらの参考文献を「上記の参考文献」と呼ぶ)を参照されたい。Grateらの研究は一般的に、セミナー研究であると考えられる。異なる吸収材料または吸収材料の組を選択してもよく、それらも本発明開示の範囲を変化させないことに注意すべきである。
【0034】
関心対象化学物質は、特定の応用に関して明記されるであろうが、これらには化学兵器物質(CWA)、有害産業廃棄物(TIC)、爆発物、揮発性有機化合物(VOC)、半揮発性有機化合物(SVOC)、炭化水素、空気によって運ばれる汚染物質、除草剤、および殺虫剤が含まれうる。多くのタイプおよびクラスの化学物質が存在し、他の化学物質が明記されうるが、それでも本開示の範囲を変化させないことに注意すべきである。
【0035】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望ましい化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続された試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。吸収材料(1)によって吸収されることが望まれる化学物質は、上記の参考文献において記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵される。温度制御要素(5)を用いて、明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度は温度感知端子(4)により温度センサー(3)によって測定される。十分量の材料が吸収材料(1)によって吸収されると、注入口弁(10)を閉じて、試料採取ポンプ(11)を用いてハウジング(2)から気体を除去する。ハウジング(2)の圧力が所望のレベルまで低減されると、出力弁(12)を閉じて、温度制御要素(5)を調整して、吸収材料(1)に吸収されている化学物質を放出させる。化学物質が吸収材料(1)から放出された後、ハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を弁(8)により開いて、放出された化学物質を分析のために質量分析計(7)に導入する。ハウジング(2)は、吸収材料(1)から化学物質を放出する前にその中に含有される気体の実質的に全てを排気されたことから、質量分析計(7)に導入される化学物質の濃度は、非排気ハウジングから導入された化学物質の濃度より実質的に増加する。
【0036】
説明するために、1つの例において、内容積1128 mm3のハウジング(2)は、40 pg/lのテトラクロロエチレンを含有する流速1 l/分で導入された試料空気流(9)を有する。吸収材料(1)に7.57秒間曝露して、吸収材料(1)がその上を流れるテトラクロロエチレンの20%を貯蔵すると仮定すると、吸収材料(1)はテトラクロロエチレン1.01 pgを貯蔵するであろう。ハウジング(2)の圧力が、先行技術において記述されるように大気圧から低減されない場合、残存空気中の得られたテトラクロロエチレンの濃度は、およそ895 pg/lの濃度を有して、このように予備濃縮によりおよそ22の増加を示すであろう。吸収材料(1)によるテトラクロロエチレンの放出前に、ハウジング(2)の圧力が大気圧から1 Torrまで低減される場合、テトラクロロエチレンは実質的により少ない空気(この例において1/760)の中に放出されて、このように17000の濃度の増加を示すであろう。この例は、説明目的のために限って提供されると認識され、濃度、曝露時間、化学物質、圧力、体積、および効率は、異なってもよく、それらも本開示の範囲を変化させないと認識される。
【0037】
図2は、吸収材料(1)が、ハウジング(2)の外部の温度感知端子(4)と共に温度センサー(3)を含有するハウジング(2)の中に入っている例を図解する。ハウジング(2)はまた、温度制御要素に供給される電流を生成するために温度制御ユニット(6)と共に温度制御要素(5)を含有する。いくつかの実施において、ハウジング(2)の内容積は最小である。ハウジング(2)は、弁(8)を含有する口を通して質量分析計(7)に接続される。他の化学分析装置を用いてもよく、それらも本開示の範囲を変化させない。
【0038】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望まれる化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続される試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。吸収材料(1)によって吸収されることが望まれる化学物質は、上記の参考文献において記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵される。温度制御要素(5)を用いて、明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度は温度感知端子(4)により温度センサー(3)によって測定される。十分量の材料が吸収材料(1)によって吸収されると、注入口弁(10)および排出口弁(12)を閉じる。質量分析計(7)との接続を弁(8)によって開いて、質量分析計(7)に結合するポンプシステム(13)を用いて、質量分析計(7)分析チャンバーによりハウジング(2)を排気する。ハウジング(2)の圧力が所望のレベルまで低減されると、弁(8)を閉じて、温度制御要素(5)を調整して吸収材料(1)に吸収されている化学物質を放出させる。脱着が十分に速い場合には、弁(8)を開いたままにしておけることに注意されたい。化学物質が吸収材料(1)から放出された後、ハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を弁(8)によって開いて、放出された化学物質を分析のために質量分析計(7)に導入する。ハウジング(2)は、吸収材料(1)から化学物質を放出する前にその中に含有されている気体の実質的に全てが排気されたことから、質量分析計(7)に導入された化学物質の濃度は、非排気ハウジングから導入された化学物質の濃度に対して実質的に増加する。
【0039】
図3は、吸収材料(1)が、ハウジング(2)の外部の温度感知端子(4)と共に温度センサー(3)を同様に含有するハウジング(2)の中に入っている実施を図解する。ハウジング(2)はまた、温度制御要素に供給される電流を生成するために温度制御ユニット(6)と共に温度制御要素(5)も含有する。いくつかの実施において、ハウジング(2)の内容積は最小である。ハウジング(2)は、弁(8)を含有する口を通して質量分析計(7)に接続される。ハウジング(2)はまた、質量分析計(7)にも接続されるポンプシステム(13)にも接続される。ポンプシステム(13)の例には、ターボおよび粗引きポンプ、ゲッターポンプ、イオンポンプ、ならびにスクロールケージポンプが含まれる。異なるタイプの化学分析装置(7)または異なるタイプのポンプ(13)を選択してもよく、それらも本開示の範囲を変化させないことに注意すべきである。同様に、ハウジング(2)を、ターボポンプに直接、粗引きポンプに直接、または他の機構などの様々な手段を通してポンプ(13)またはポンプの組み合わせに接続してもよく、それらも本開示の範囲を変化させないことに注意すべきである。同様に、ハウジング(2)を、質量分析計(7)に接続されない外部ポンプに接続してもよく、それらも本開示の範囲を変化させないことに注意すべきである。
【0040】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望まれる化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続される試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。吸収材料(1)によって吸収されることが望まれる化学物質は、上記の参考文献に記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵される。温度制御要素(5)を用いて明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度を温度感知端子(4)により温度センサー(3)によって測定する。十分量の材料が吸収材料(1)によって吸収された後、注入口弁(10)および排出口弁(12)を閉じる。次に、弁(14)を開く段階およびポンプシステム(13)によりハウジング(2)中の気体の実質的に全てを排気する段階によって、ハウジング(2)を排気する。ハウジング(2)の圧力が所望のレベルまで低減された後、弁(14)を閉じて、温度制御要素(5)を調整して吸収材料(1)に吸収されている化学物質を放出させる。化学物質が吸収材料(1)から放出された後、ハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を弁(8)により開いて、放出された化学物質を分析のために質量分析計(7)に導入する。ハウジング(2)は、吸収材料(1)から化学物質を放出する前にその中に含有されている気体の実質的に全てが排気されたことから、質量分析計(7)に導入された化学物質の濃度は、非排気ハウジングから導入された化学物質の濃度に対して実質的に増加する。
【0041】
いくつかの実施には任意で、たとえば脱着の際に吸収材料(1)から放出された化学物質が化学分析装置に流れるのを制限するために、ハウジング(2)と質量分析計(7)のあいだに流動制限装置、圧力障壁、または障壁メンブレン(他の実施に関して以下に記述されるメンブレンなどの)などの流動制御デバイスが含まれうる。しかし、一般的に、化学分析装置チャンバーと同じ圧力までハウジング(2)を低減させることによって、および放出された化学物質を化学分析装置に導入するために質量分析計(7)に連結されたポンプシステム(13)における抵抗力を利用することによって、流動制御デバイスを省略することができる。そのような実施により、低減された圧力輸送気体の必要性、および/またはたとえば輸送のために示差的な圧力を作製するために異なるポンプを用いることを通してハウジング(2)内に中間圧力領域を形成する必要性がなくなる。さらに、流動制限装置または障壁メンブレンの必要性がなくなることによって、たとえばより長い平均自由行程により、質量分析計(7)に到達する放出された試料濃度の増加により、一定の化学物質に関して測定感度が改善されうる。対応して、メンブレンまたは他の制限物質をなくすことによって、たとえばその濃度がメンブレンによって減損されているまたは遮断されているより大きい分子構造を有する化学物質が含まれる、より広い範囲の化学物質を分析することができる。しかし、特定の応用において、より狭い範囲の化学物質に関する感度の増加は、関心対象化学物質のみを通過させるメンブレンを用いることによって達成されうる。このように、いくつかの実施において、一定の化学物質の濃度、およびゆえに検出感度は、以下により詳細に記述されるようにメンブレンを用いて改善されうる。
【0042】
図4は、吸収材料(1)が、ハウジング(2)の外部の温度感知端子(4)を有する温度センサー(3)を同様に含有するハウジング(2)の中に入っている例を図解する。ハウジング(2)はまた、温度制御要素に供給される電流を生成するための温度制御ユニット(6)と共に温度制御要素(5)を含有する。いくつかの実施において、ハウジング(2)の内容積は最小である。ハウジング(2)は、弁(8)およびメンブレン(15)を含有する口を通して質量分析計(7)に接続される。図5に図解されるように、メンブレン(15)は、本質的に円筒形であり、チューブ(16)によりハウジング(2)に接続されてプラグ(17)によって閉じられうる。
【0043】
いくつかの実施において、メンブレン(15)は、図6および7に図解される隔膜形状である。メンブレン(15)は、開口部を含有する台座(21)に取り付けられて、いくつかの実施においてヒーター(18)によって加熱されて、開口部を含有する部材(22)によってその場で保持される。この例において、隔膜アセンブリ(23)は、図8に図解されるように、予備濃縮装置ハウジング(2)と質量分析計(7)のあいだに障壁を形成するように、予備濃縮装置ハウジング(2)の中に置かれる。メンブレン(15)を、他の方法で構成してもよい。メンブレン(15)は、関心対象化学物質をメンブレン(15)の中に通過させるが、質量分析計(7)に導入することが望ましくない化学物質を通過させないように選択される。メンブレン(15)は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのポリマー材料で形成されうる。異なるタイプの化学分析装置(7)またはメンブレン材料(15)を用いることができ、それらも本開示の範囲を変化させないことに注意すべきである。この例において、自身の温度制御ユニット(19)を有する第二の温度制御要素(18)を任意で含めてもよい。
【0044】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望ましい化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続される試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。吸収材料(1)によって吸収されることが望まれる化学物質は、上記の参考文献に記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵される。温度制御要素(5)を用いて明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度は温度感知端子(4)により温度センサー(3)によって測定される。十分量の材料が吸収材料(1)によって吸収されると、注入口弁(10)を閉じて、試料採取ポンプ(11)を用いてハウジング(2)から気体を除去する。ハウジング(2)の圧力が望ましいレベルまで低減されると、出力弁(12)を閉じて、温度制御要素(5)を、吸収材料(1)に吸収されている化学物質を放出させるように調整する。化学物質が吸収材料(1)から放出された後、ハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を弁(8)により開いて、温度制御要素(18)により拡散させるようにメンブレン(15)の温度を調整して、放出された化学物質をメンブレン(15)により分析のために質量分析計(7)に導入する。吸収材料(1)から化学物質を放出させる前に、ハウジング(2)は、その中に含有されている実質的に全ての気体が排気されたことから、質量分析計(7)に導入された化学物質の濃度は、非排気ハウジングから導入された化学物質の濃度より実質的に増加している。メンブレン(15)はさらに、望ましくない化学物質をマトリクスから除去することから、濃度はさらに増強される。いくつかの実施において、拡散速度が最小であるように作動するようメンブレン(15)の温度を調整する場合に、試料(9)材料の大部分が真空チャンバー(7)の中を通過するのをメンブレン材料(15)が妨げる場合には、弁(8)を省略する。
【0045】
図9は、吸収材料(1)が、ハウジング(2)の外部の温度感知端子(4)と共に温度センサー(3)を含有するハウジング(2)の中に入っている実施を図解する。ハウジング(2)はまた、温度制御要素に供給される電流を生成するための温度制御ユニット(6)と共に温度制御要素(5)を含有する。いくつかの実施において、ハウジング(2)の内容積は最小である。ハウジング(2)は、弁(8)およびメンブレン(15)を含有する口を通して質量分析計(7)に接続される。メンブレン(15)は、本質的に円筒形であってもよく、チューブ(16)によりハウジング(2)に接続されて、プラグまたはキャップ(17)によって閉じられうる(図5を参照されたい)。メンブレン(15)は、関心対象化学物質をメンブレン(15)の中に通過させるが、質量分析計(7)に導入されることが望ましくない化学物質を通過させないように選択される。メンブレン(15)は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのポリマー材料で形成されうる。ハウジング(2)はまた、質量分析計(7)にも接続されるポンプシステム(13)にも接続される。ポンプシステム(13)の例には、ターボおよび粗引きポンプ、ゲッターポンプ、イオンポンプ、ならびにスクロールケージポンプが含まれる。異なるタイプの化学分析装置(7)または異なるタイプのポンプ(14)を用いてもよく、それらも本開示の範囲を変化させない。この例において、自身の温度制御ユニット(19)を有する第二の温度制御要素(18)を任意で含めてもよい。いくつかの実施において、ハウジング(2)は、質量分析計(7)に接続されない外部ポンプに接続される。
【0046】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望まれる化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続される試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。吸収材料(1)によって吸収されることが望まれる化学物質を、上記の参考文献において記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵する。温度制御要素(5)を用いて、明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度は温度感知端子(4)によって温度センサー(3)によって測定される。十分量の材料が吸収材料(1)によって吸収された後、注入口弁(10)および排出口弁(12)を閉じる。次に、弁(14)を開く段階、およびポンプシステム(13)によってハウジング(2)内のガスの実質的に全てを排気する段階によってハウジング(2)を排気する。ハウジング(2)の圧力が所望のレベルまで低減されると、弁(14)を閉じて、温度制御要素(5)を調整して、吸収材料(1)に吸収されている化学物質を放出させる。化学物質が吸収材料(1)から放出されると、弁(8)によりハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を開き、温度制御要素(18)によって拡散させるようにメンブレン(15)の温度を調整して、放出された化学物質を、メンブレン(15)により、分析するために質量分析計(7)に導入する。ハウジング(2)は、吸収材料(1)からの化学物質を放出する前に、その中に含有される気体の実質的に全てが排気されたことから、質量分析計(7)に導入された化学物質の濃度は、非排気ハウジングから導入された化学物質の濃度に対して実質的に増加する。メンブレン(15)はさらに、マトリクスから望ましくない化学物質を除去することから、濃度はさらに増強される。
【0047】
いくつかの実施において、拡散速度が最小となるよう作動するようにメンブレン(15)の温度を調整する場合、真空チャンバー(7)の中に試料(9)材料の大部分が流れるのをメンブレン材料(15)が妨げる場合には、弁(8)を省略する。
【0048】
図10は、メンブレン(15)が、ハウジング(2)の外部の温度感知端子(4)と共に温度センサー(3)を同様に含有するハウジング(2)の中に入っている例を図解する。ハウジング(2)はまた、温度制御要素に供給される電流を生成するために温度制御ユニット(19)と共に温度制御要素(18)を含有する。いくつかの実施において、ハウジング(2)の内容積は最小である。ハウジング(2)は、弁(8)およびメンブレン(15)を含有する口を通して質量分析計(7)に接続される。メンブレン(15)は、本質的に円筒形であってもよく、チューブ(16)によってハウジング(2)に接続されて、プラグ(17)によって閉じられうる。メンブレン(15)は、ある温度では吸収材料として作用して、もう1つの温度では脱着剤および半透過性メンブレンとして作用するように選択および構成される。ハウジング(2)はまた、質量分析計(7)にも接続されるポンプシステム(13)にも接続される。ポンプシステム(13)の例には、ターボおよび粗引きポンプ、ゲッターポンプ、イオンポンプ、ならびにスクロールケージポンプが含まれる。異なるタイプの化学分析装置(7)または異なるタイプのポンプ(14)を用いてもよく、それらも本開示の範囲を変化させない。
【0049】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望まれる化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続される試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。メンブレン(15)によって吸収されることが望まれる化学物質は、上記の参考文献に記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵される。温度制御要素(18)を用いて、明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度は、吸収速度が脱着速度より実質的に大きいモードで吸収材料(1)が作動するように、温度感知端子(4)により温度センサー(3)によって測定される。十分量の材料が吸収材料(1)によって吸収されると、注入口弁(10)および排出口弁(12)を閉じる。次に、弁(14)を開く段階、およびポンプシステム(13)によりハウジング(2)中の気体の実質的に全てを排気する段階によって、ハウジング(2)を排気する。ハウジング(2)の圧力が所望のレベルまで低減されると、弁(14)を閉じて、脱着速度が吸収速度より実質的に大きくなるよう吸収材料(1)の作動モードを変化させるように、温度制御要素(18)を調整する。ハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を弁(8)によって開き、放出された化学物質を分析のために質量分析計(7)に導入する。ハウジング(2)は、吸収材料(1)から化学物質を放出する前にその中に含有される気体の実質的に全てが排気されたことから、質量分析計(7)に導入された化学物質の濃度は、非排気ハウジングから導入された化学物質の濃度より実質的に増加する。
【0050】
いくつかの実施において、メンブレン(15)の温度が、拡散速度が最小であるよう作動するように調整されている場合、試料(9)材料の大部分が真空チャンバー(7)の中に流れるのをメンブレン材料(15)が妨げる場合には、弁(8)を省略する。図1〜3に関して記述されるハウジング(2)を排気するために代替技術を利用してもよく、それらも本開示の範囲を変化させない。
【0051】
図9を再度参照して、いくつかの実施において、メンブレン(15)は、ある温度で吸収材料として作用して、もう1つの温度では脱着剤および半透過性メンブレンとして作用するように選択および構成される。さらに、吸収材料(1)は、材料の化学物質貯蔵能が高温より低温で大きくなるように選択される。
【0052】
操作において、質量分析計(7)によって検出されることが望まれる化学物質(9)を含有する試料を、弁(10)を含有する注入口を通して導入する。試料は、弁(12)を含有する口によってハウジング(2)に接続される試料採取ポンプ(11)によってハウジング(2)の中に引き入れられる。吸収材料(1)によって吸収されることが望まれる化学物質は、上記の参考文献に記述されるいくつかの機構の1つまたは複数によって貯蔵される。温度制御要素(5)を用いて明記された温度で吸収材料(1)を維持してもよく、この温度は、吸収速度が脱着速度より実質的に大きいモードで吸収材料(1)が作動するように、温度感知端子(4)により温度センサー(3)によって測定される。温度制御要素(18)は、メンブレン材料が吸収材料(1)と類似の機構を用いて化学物質を吸収するように、メンブレン(15)の温度を制御するために用いられうる。メンブレン(15)および作動温度は、化学物質が吸収されるが、メンブレン(15)を横切る拡散速度は本質的に最小であるように選択される。十分量の材料が吸収材料(1)およびメンブレン(15)によって吸収されると、注入口弁(10)および排出口弁(12)を閉じる。次に、弁(14)を開く段階およびポンプシステム(13)によりハウジング(2)中の気体の実質的に全てを排気する段階によって、ハウジング(2)を排気する。ハウジング(2)の圧力が所望のレベルまで低減すると、弁(14)を閉じて、脱着速度が吸収速度より実質的に大きくなるよう吸収材料(1)の作動モードを変化させるように、温度制御要素(5)を調整する。メンブレン(15)の温度もまた、脱着速度が吸収速度より実質的に高く、およびメンブレン(15)を横切る拡散速度が実質的に増加するように、温度制御要素(18)によって制御される。化学物質が吸収材料(1)から放出されると、ハウジング(2)と質量分析計(7)との接続を弁(8)により開いて、放出された化学物質を分析のために質量分析計(7)に導入する。ハウジング(2)は、吸収材料(1)から化学物質を放出する前に、その中に含有される気体の実質的に全てを排気されたことから、質量分析計(7)に導入された化学物質の濃度は、非排気ハウジングからの化学物質の濃度に対して実質的に増加する。
【0053】
メンブレン材料(15)の温度を、拡散速度が最小であるよう作動するよう調整する場合、試料(9)材料の大部分が真空チャンバー(7)の中を通過するのをメンブレン材料(15)が妨げる場合には、弁(8)を省略してもよい。さらに、いくつかの例には、メンブレン(15)および吸収材料(1)の拡散速度、脱着速度、および吸着を制御するために、1つの温度制御要素および温度制御ユニットが含まれる。
【0054】
図11は、メンブレン(15)、吸収材料(1)、および温度制御要素(18)が実質的に同じ体積を占める実施を図解する。図12をさらに参照して、温度制御要素(18)の長さの一部は、断面A-Aによって示されるように、吸収材料(1)によってコーティングされる。次に、コーティングされた温度制御要素(18)は、本質的に同心円の様式でチューブ状メンブレン(15)周囲を覆って、図13に示される注入口アセンブリ(20)を形成してもよい。図13に図解されるシステムは、たとえば図4、図9、および/または図10に関して先に記述した技術を用いて作動されうる。
【0055】
先に記述した例において、吸収材料(1)を直接加熱することによって、熱量が間接加熱法と比較して有意に低減されることから、リアルタイムに近い分析が達成されうる。このように、サイクル時間もまた低減することができる。さらに、吸収材料(1)を直接加熱することによって、熱効率は有意に増加する。加えて、ハウジング(2)を低減された圧力まで排気することによって、熱伝導および対流熱損失が低減される。ゆえに、いくつかの実施において、予備濃縮装置は、間接加熱技術より少ない動力(平均値)で操作することができる。さらに、いくつかの実施において、たとえば上記のシステムの検出された化学物質の範囲および/または検出感度を広げるために、注入口アセンブリ(20)のメンブレン(15)を省略する。
【0056】
本明細書において開示される実施および例を操作するシステムおよび技術の説明において、吸収材料に適用される温度は、吸収材料の温度が、2つの極値のあいだで切り換えられるよりむしろ時間の関数として調整される時間プロフィールを含みうることに注意すべきである。この操作法の効果は、予備濃縮装置の予備濃縮による増加をさらに増加させることである。図14は、3つの候補化学物質、化学物質A(24)、化学物質B(25)、および化学物質C(26)が、異なる温度および異なる時間間隔で特定の選択された吸収剤から実質的に吸収または脱着させる温度対時間のグラフを図解する。図解されるように、この例における3つの候補化学物質の各々は、温度に基づいて異なる速度で吸収材料から脱着する。異なる化学物質は、化学分析装置において一度に限定された数を調べるために望ましいように同じクラス(たとえば、爆発物)、または化学分析装置から1つもしくは複数の化学物質を除外することが望ましいように異なるクラス(たとえば、CWAおよび干渉物質)の全ての化学物質でありうる。図15は、本明細書において記述される予備濃縮装置の実施から最適な性能を実現するために、インテリジェント温度プロフィールがどのように用いられうるかを示すグラフを図解する。この操作法において、全ての関心対象化学物質が吸収剤によって吸収されるように、吸収期間(27)の際に温度を調整する。期間は、本明細書において記述される吸収材料の十分量を生じるように選択される。十分に吸収させた後、脱着期間(28)のあいだに温度を、化学物質AおよびBのほとんどを保持しながら、主に化学物質Cを質量分析計の中に脱着させるレベルに調整する。化学物質Cが脱着された後、脱着期間(26)のあいだに、温度を、化学物質Aのほとんどを保持しながら主に化学物質Bを質量分析計の中に脱着させるレベルに調整する。脱着期間(26)の後、温度を、脱着期間(27)のあいだに、化学物質Aを質量分析計に脱着させるレベルに調整する。これらおよび他の温度制御プロフィールは、温度制御ユニット(6)および/または(19)を用いて実施されうる。材料の選択、温度、ならびに吸収剤によって吸収および脱着されることが望ましい化学物質の数およびタイプの選択は、特定の応用または実施に適するように選択されうること、ならびに本明細書において開示される特定の選択は例として用いられるに過ぎないことに注意すべきである。
【0057】
本明細書において記述される内容および操作の態様は、本明細書において開示される構造が含まれる、デジタル電子回路またはコンピューターソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェア、およびその構造同等物、またはそれらの1つまたは複数の組み合わせにおいて実施されうる。本明細書において記述される内容の態様は、温度制御ユニット(6)および/または(19)および/またはポンプおよび弁制御システムの作動によって実行するために、またはそれらの作動を制御するために、1つまたは複数のコンピュータープログラムとして、たとえばコンピューター保存媒体上で暗号処理されたコンピュータープログラム命令の1つまたは複数のモジュールとして実施することができる。またはもしくは加えて、プログラム命令は、温度制御ユニット(6)および/または(19)によって実行するために適した受信装置に伝達するための情報を暗号処理するために作製される人工的に作製され伝播シグナル、たとえば機械により作製された電気、光学、または電磁シグナル上で暗号処理することができる。コンピューター保存媒体は、コンピューター読み取り可能な保存デバイス、コンピューター読み取り可能な保存基板、ランダムもしくはシリアルアクセスメモリアレイもしくはデバイス、またはそれらの1つもしくは複数の組み合わせでありうる、またはそれらの中に含まれることができる。その上、コンピューター保存媒体は伝播シグナルではないが、コンピューター保存媒体は、人工的に作製された伝播シグナルにおいて暗号処理されるコンピュータープログラム命令のソースまたは宛先でありうる。コンピューター保存媒体はまた、1つまたは複数の個別の物理的成分または媒体(たとえば、多数のCD、ディスク、または他の保存デバイス)でありうるまたはそれらに含まれることができる。
【0058】
「制御ユニット」および「制御システム」(本明細書において全般的に「コントローラー」と呼ばれる)という用語は、例としてプログラム可能なプロセッサー、コンピューター、チップ上のシステム、または前述の複数もしくはその組み合わせが含まれる、本明細書において記述される操作を行うための、全ての種類の装置、デバイス、および機械を包含する。コントローラーには、特殊な目的のロジック回路、たとえば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)が含まれることができる。装置にはまた、ハードウェアの他に、当該コンピュータープログラムのための実行環境を作製する暗号、たとえば、プロセッサーファームウェア、プロトコールスタック、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームランタイム環境、バーチャルマシーン、またはそれらの1つもしくは複数の組み合わせを構成する暗号が含まれることができる。
【0059】
コンピュータープログラム(同様に、プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプトまたは暗号としても知られる)は、コンパイルまたは解釈型言語、宣言型言語または手続き型言語が含まれる任意の形式のプログラミング言語で書くことができ、これは独立したプログラムとして、または計算環境において用いるために適したモジュール、成分、サブルーチン、オブジェクト、または他のユニットとしての場合が含まれる任意の形式で展開することができる。コンピュータープログラムは、ファイルシステムにおけるファイルに対応しうるが、必ずしもその必要はない。プログラムは、他のプログラムまたはデータ(たとえば、構成言語文書で保存された1つまたは複数のスクリプト)を保持するファイルの一部に、当該プログラム専門の1つのファイル、または多数のコーディネートファイル(たとえば、1つまたは複数のモジュール、サブプログラム、または暗号の一部を保存するファイル)に保存することができる。
【0060】
本明細書において記述されるプロセスおよびロジックフローは、入力データに作用して、出力を生成することによって、アクションを行うために1つまたは複数のコンピュータープログラムを実行する1つまたは複数のプログラム可能なプロセッサーによって実行することができる。プロセスおよびロジックフローはまた、特殊な目的のロジック回路、たとえばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)として実行することができる。
【0061】
コンピュータープログラムを実行するために適したプロセッサーには、例として、全般的および特殊な目的のマイクロプロセッサー、および任意の種類のデジタルコンピューターの任意の1つまたは複数のプロセッサーが含まれる。全般的に、プロセッサーは、読み取り専用メモリーまたはランダムアクセスメモリーもしくはその双方からの命令およびデータを受信するであろう。コンピューターの必須要素は、命令に従ってアクションを行うためのプロセッサー、ならびに命令およびデータを保存するための1つまたは複数の記憶デバイスである。全般的に、コンピューターにはまた、データを保存するための1つまたは複数の大容量記憶デバイス、たとえば磁気、磁気-光学ディスク、もしくは光学ディスクが含まれる、またはそれらからデータを受信するもしくはデータを転送する、または双方を行うために機能的に連結されるであろう。しかし、コンピューターは、そのようなデバイスを有する必要はない。コンピュータープログラム命令およびデータを保存するために適したデバイスには、例として半導体メモリデバイス、たとえばEPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイス;磁気ディスク、たとえば内部ハードディスクまたはリムーバブルディスク;磁気-光学ディスク;ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクが含まれる、全ての形状の非揮発性のメモリ、媒体およびメモリデバイスが含まれる。プロセッサーおよびメモリは、特殊な目的のロジック回路によって補助されるまたはその中に組み入れられることができる。
【0062】
本明細書は、多くの特異的実施の詳細を含有するが、これらは、任意の本発明の範囲または特許請求されうる範囲に対する制限であると解釈すべきではなく、むしろ特定の本発明の特定の態様に対して特異的な特色の説明であると解釈すべきである。本明細書において記述される個別の態様の文脈におけるある特色を、同様に1つの態様において組み合わせて実施することができる。逆に、1つの態様の文脈において記述される様々な特色もまた、個別にまたは任意の適した部分的組み合わせで多数の態様において実施することができる。その上、特色は、ある組み合わせにおいて作用するように先に記述されて、たとえ当初そのように特許請求されうるとしても、いくつかの例において、特許請求される組み合わせの1つまたは複数の特色を組み合わせから除去することができ、特許請求される組み合わせは、部分的組み合わせまたは部分的組み合わせの変化形に向けられうる。
【0063】
同様に操作は、図面において特定の順序で描写されているが、これはそのような操作が、示される特定の順序でもしくは連続的順序で行われることを必要とすると理解すべきではなく、図解される操作は全て所望の結果を達成するために行われると理解すべきである。その上、上記の態様における様々なシステムの成分の分離は、全ての態様においてそのような分離を必要とすると理解すべきではなく、記述の成分およびシステムを、全般的に、1つの産物で共に統合する、または多数の産物にパッケージングすることができると理解すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学分析装置(7);
関心対象化学物質を吸着または脱着させるために吸収材料を加熱するように構成された温度制御要素(5、18)と吸収材料(1)とをその中に入れた、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング(2);および
関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングと化学分析装置とに連結されたポンプシステム(13)
を含み、
予備濃縮装置ハウジングを排気する際に、ポンプシステムが、化学分析装置の内圧に実質的に等しいレベルまで予備濃縮装置ハウジングの内圧を低減させる、化学分析システム。
【請求項2】
感知した温度を通信するための温度感知端子(4)を有する、予備濃縮装置ハウジング(2)の中に入っている温度センサー(3)をさらに含む、請求項1記載の化学分析システム。
【請求項3】
温度制御要素(5、18)に連結されて、温度制御要素に電流を供給するように構成された温度制御ユニット(6、19)をさらに含む、請求項1または2記載の化学分析システム。
【請求項4】
関心対象化学物質を吸着または脱着させるために吸収材料を加熱するように構成された温度制御要素(5、18)と吸収材料(1)とをその中に入れた、化学分析装置(7)に連結された予備濃縮装置ハウジング(2)、および関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム(13)を提供する段階;
予備濃縮装置ハウジング内の内圧を低減するために予備濃縮装置ハウジングを排気する段階;そして
排気された予備濃縮装置ハウジングの中に吸収材料からの関心対象化学物質を脱着させるために温度制御要素の中に電流を伝導させる段階;
を含み、
予備濃縮装置ハウジングを排気する際に、予備濃縮装置ハウジングの内圧が、化学分析装置の内圧と実質的に等しいレベルまで低減される、
試料を予備濃縮する方法。
【請求項5】
温度制御要素の中に電流を伝導させる段階が、関心対象化学物質の脱着速度を増加させるために温度制御要素の温度を制御可能に増加させる段階を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
予備濃縮装置ハウジングにおける温度を感知する段階をさらに含む、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
関心対象化学物質を吸着させるために温度制御要素の中に電流を伝導させる段階をさらに含む、請求項4〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
化学分析装置(7);
該化学分析装置に連結され、チューブ状メンブレン(15)と、吸収材料(1)によって少なくとも部分的にコーティングされた温度制御要素(18)とをその中に入れた、予備濃縮装置ハウジング(2)であって、該温度制御要素が、脱着段階の際に関心対象化学物質を脱着させるためにチューブ状メンブレンおよび吸収材料を加熱するように構成されている、予備濃縮装置ハウジング(2);ならびに
脱着段階の前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングと化学分析装置とに連結されたポンプシステム(13);
を含み、
コーティングされた温度制御要素(18)が、本質的に同心円の様式でチューブ状メンブレン(15)の周囲を覆って注入口アセンブリ(20)を形成する、
化学物質予備濃縮システム。
【請求項9】
吸収材料(1)が、1つより多くの吸収材料を含む、請求項8記載の化学物質予備濃縮システム。
【請求項10】
吸収材料(1)が、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリエピクロロヒドリン(PECH)、カーボンブラック、活性炭、フルオロポリオール(FPOL)、マレイン酸ポリエチレン(PEM)、ポリプロピオン酸ビニル(PVPR)、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、および/またはポリビスシアノプロピル-シロキサン(SXCN)の1つまたは複数を含む、請求項8または9記載の化学物質予備濃縮システム。
【請求項11】
チューブ状メンブレン(15)と、チューブ状メンブレン(15)の周囲を本質的に同心円の様式で覆う、吸収材料(1)によって少なくとも部分的にコーティングされた温度制御要素(18)とをその中に入れた、化学分析装置(7)に連結された予備濃縮装置ハウジング(2)、ならびに予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム(13)を提供する段階;
予備濃縮装置ハウジング内の内圧を低減させるために、予備濃縮装置ハウジングをポンプシステムによって排気する段階;そして
温度制御要素によってチューブ状メンブレンおよび吸収材料を伝導加熱することによって、関心対象化学物質を脱着させる段階、
を含む、試料を予備濃縮する方法。
【請求項12】
脱着させる段階が、関心対象化学物質の脱着速度を制御可能に増加させるために温度制御要素の中に電流を伝導させる段階を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
予備濃縮装置ハウジングにおいて温度を感知する段階をさらに含む、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
関心対象化学物質が、第一の関心対象化学物質であり、脱着させる段階が、第二の関心対象化学物質を脱着させる段階を含む、請求項11〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
第二の関心対象化学物質を脱着させる段階が、温度制御要素の温度を増加させる段階を含む、請求項14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
化学分析装置(7);
関心対象化学物質を脱着させるためにメンブレンを加熱するように構成された温度制御要素(18)と、高温より低温でより低い拡散速度を有するメンブレン(15)とをその中に入れた、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング(2);および
関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム(13)
を含み、
メンブレンが温度制御要素の温度設定に基づいて吸収モードおよび脱着/半透過性モードで操作可能である、
化学分析システム。
【請求項17】
温度制御要素(18)がメンブレン(15)の周囲を本質的に同心円様式で覆って、注入口アセンブリ(20)を形成する、請求項16記載の化学分析システム。
【請求項18】
メンブレンがチューブ状形状で形成された、請求項16または17記載の化学分析システム。
【請求項19】
感知された温度を通信するために温度感知端子(4)を有する、予備濃縮装置ハウジング(2)の中に入れられた温度センサー(3)をさらに含む、請求項16〜18のいずれか1項記載の化学分析システム。
【請求項20】
温度制御要素(18)に連結されて、温度制御要素に電流を供給するように構成された、温度制御ユニット(19)をさらに含む、請求項16〜19のいずれか1項記載の化学分析システム。
【請求項21】
関心対象化学物質を脱着させるためにメンブレンを加熱するように構成された温度制御要素(18)と、高温より低温でより低い拡散速度を有するメンブレン(15)とをその中に入れた、化学分析装置(2)に連結された予備濃縮装置ハウジング(2)、および関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム(13)を提供する段階;
予備濃縮装置ハウジング内の内圧を低減させるために、予備濃縮装置ハウジングを排気する段階;そして
メンブレンを吸収モードから脱着/半透過性モードに移行させるように温度制御要素の温度設定を調整する段階、
を含む、試料を予備濃縮する方法。
【請求項22】
関心対象化学物質の脱着速度を増加させるために温度制御要素の温度設定を再調整する段階をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
予備濃縮装置ハウジングにおける温度を感知する段階をさらに含む、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
関心対象化学物質が第一の関心対象化学物質であり、方法が、第二の関心対象化学物質の脱着速度を増加させるために温度制御要素を再調整する段階をさらに含む、請求項21〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項1】
化学分析装置(7);
関心対象化学物質を吸着または脱着させるために吸収材料を加熱するように構成された温度制御要素(5、18)と吸収材料(1)とをその中に入れた、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング(2);および
関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングと化学分析装置とに連結されたポンプシステム(13)
を含み、
予備濃縮装置ハウジングを排気する際に、ポンプシステムが、化学分析装置の内圧に実質的に等しいレベルまで予備濃縮装置ハウジングの内圧を低減させる、化学分析システム。
【請求項2】
感知した温度を通信するための温度感知端子(4)を有する、予備濃縮装置ハウジング(2)の中に入っている温度センサー(3)をさらに含む、請求項1記載の化学分析システム。
【請求項3】
温度制御要素(5、18)に連結されて、温度制御要素に電流を供給するように構成された温度制御ユニット(6、19)をさらに含む、請求項1または2記載の化学分析システム。
【請求項4】
関心対象化学物質を吸着または脱着させるために吸収材料を加熱するように構成された温度制御要素(5、18)と吸収材料(1)とをその中に入れた、化学分析装置(7)に連結された予備濃縮装置ハウジング(2)、および関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム(13)を提供する段階;
予備濃縮装置ハウジング内の内圧を低減するために予備濃縮装置ハウジングを排気する段階;そして
排気された予備濃縮装置ハウジングの中に吸収材料からの関心対象化学物質を脱着させるために温度制御要素の中に電流を伝導させる段階;
を含み、
予備濃縮装置ハウジングを排気する際に、予備濃縮装置ハウジングの内圧が、化学分析装置の内圧と実質的に等しいレベルまで低減される、
試料を予備濃縮する方法。
【請求項5】
温度制御要素の中に電流を伝導させる段階が、関心対象化学物質の脱着速度を増加させるために温度制御要素の温度を制御可能に増加させる段階を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
予備濃縮装置ハウジングにおける温度を感知する段階をさらに含む、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
関心対象化学物質を吸着させるために温度制御要素の中に電流を伝導させる段階をさらに含む、請求項4〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
化学分析装置(7);
該化学分析装置に連結され、チューブ状メンブレン(15)と、吸収材料(1)によって少なくとも部分的にコーティングされた温度制御要素(18)とをその中に入れた、予備濃縮装置ハウジング(2)であって、該温度制御要素が、脱着段階の際に関心対象化学物質を脱着させるためにチューブ状メンブレンおよび吸収材料を加熱するように構成されている、予備濃縮装置ハウジング(2);ならびに
脱着段階の前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングと化学分析装置とに連結されたポンプシステム(13);
を含み、
コーティングされた温度制御要素(18)が、本質的に同心円の様式でチューブ状メンブレン(15)の周囲を覆って注入口アセンブリ(20)を形成する、
化学物質予備濃縮システム。
【請求項9】
吸収材料(1)が、1つより多くの吸収材料を含む、請求項8記載の化学物質予備濃縮システム。
【請求項10】
吸収材料(1)が、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリエピクロロヒドリン(PECH)、カーボンブラック、活性炭、フルオロポリオール(FPOL)、マレイン酸ポリエチレン(PEM)、ポリプロピオン酸ビニル(PVPR)、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、および/またはポリビスシアノプロピル-シロキサン(SXCN)の1つまたは複数を含む、請求項8または9記載の化学物質予備濃縮システム。
【請求項11】
チューブ状メンブレン(15)と、チューブ状メンブレン(15)の周囲を本質的に同心円の様式で覆う、吸収材料(1)によって少なくとも部分的にコーティングされた温度制御要素(18)とをその中に入れた、化学分析装置(7)に連結された予備濃縮装置ハウジング(2)、ならびに予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム(13)を提供する段階;
予備濃縮装置ハウジング内の内圧を低減させるために、予備濃縮装置ハウジングをポンプシステムによって排気する段階;そして
温度制御要素によってチューブ状メンブレンおよび吸収材料を伝導加熱することによって、関心対象化学物質を脱着させる段階、
を含む、試料を予備濃縮する方法。
【請求項12】
脱着させる段階が、関心対象化学物質の脱着速度を制御可能に増加させるために温度制御要素の中に電流を伝導させる段階を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
予備濃縮装置ハウジングにおいて温度を感知する段階をさらに含む、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
関心対象化学物質が、第一の関心対象化学物質であり、脱着させる段階が、第二の関心対象化学物質を脱着させる段階を含む、請求項11〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
第二の関心対象化学物質を脱着させる段階が、温度制御要素の温度を増加させる段階を含む、請求項14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
化学分析装置(7);
関心対象化学物質を脱着させるためにメンブレンを加熱するように構成された温度制御要素(18)と、高温より低温でより低い拡散速度を有するメンブレン(15)とをその中に入れた、化学分析装置に連結された予備濃縮装置ハウジング(2);および
関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム(13)
を含み、
メンブレンが温度制御要素の温度設定に基づいて吸収モードおよび脱着/半透過性モードで操作可能である、
化学分析システム。
【請求項17】
温度制御要素(18)がメンブレン(15)の周囲を本質的に同心円様式で覆って、注入口アセンブリ(20)を形成する、請求項16記載の化学分析システム。
【請求項18】
メンブレンがチューブ状形状で形成された、請求項16または17記載の化学分析システム。
【請求項19】
感知された温度を通信するために温度感知端子(4)を有する、予備濃縮装置ハウジング(2)の中に入れられた温度センサー(3)をさらに含む、請求項16〜18のいずれか1項記載の化学分析システム。
【請求項20】
温度制御要素(18)に連結されて、温度制御要素に電流を供給するように構成された、温度制御ユニット(19)をさらに含む、請求項16〜19のいずれか1項記載の化学分析システム。
【請求項21】
関心対象化学物質を脱着させるためにメンブレンを加熱するように構成された温度制御要素(18)と、高温より低温でより低い拡散速度を有するメンブレン(15)とをその中に入れた、化学分析装置(2)に連結された予備濃縮装置ハウジング(2)、および関心対象化学物質を脱着させる前に予備濃縮装置ハウジングを排気するように構成された、予備濃縮装置ハウジングおよび化学分析装置に連結されたポンプシステム(13)を提供する段階;
予備濃縮装置ハウジング内の内圧を低減させるために、予備濃縮装置ハウジングを排気する段階;そして
メンブレンを吸収モードから脱着/半透過性モードに移行させるように温度制御要素の温度設定を調整する段階、
を含む、試料を予備濃縮する方法。
【請求項22】
関心対象化学物質の脱着速度を増加させるために温度制御要素の温度設定を再調整する段階をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
予備濃縮装置ハウジングにおける温度を感知する段階をさらに含む、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
関心対象化学物質が第一の関心対象化学物質であり、方法が、第二の関心対象化学物質の脱着速度を増加させるために温度制御要素を再調整する段階をさらに含む、請求項21〜23のいずれか1項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2013−503348(P2013−503348A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527039(P2012−527039)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/047015
【国際公開番号】WO2011/031559
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(511173284)ファースト ディテクト コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/047015
【国際公開番号】WO2011/031559
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(511173284)ファースト ディテクト コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
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