説明

試料ホルダー及び試料ホルダー駆動装置

【課題】
本発明は、複数の試料、例えば、観察したい試料と、収差補正の標準調整試料を同時に装着し、それぞれの試料を観察できる試料ホルダーにより、大幅な利便を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の試料ホルダーは、試料ホルダーを駆動するための試料ホルダー駆動機構を有する試料ホルダーであって、前記試料ホルダー駆動機構は、前記試料ホルダーの略長手方向において前記試料ホルダーを可変可能であることを特徴とする。また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、前記試料ホルダー駆動機構は、前記試料ホルダーとは別個に設置された試料ホルダーの略長手方向の駆動機構とは無関係に、試料ホルダーの保持筒への試料ホルダーの挿入深さを可変することが可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ホルダーに関し、特に、試料ホルダーを駆動するための試料ホルダー駆動機構を有する試料ホルダーに関する。また、本発明は、試料ホルダー駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)(以降、TEMと記す。)と、走査透過型電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope)(以降、STEMと記す。)とを用い、試料を観察する場合、その手段として、試料ホルダーの先端に試料を取り付け、これら電子顕微鏡に有するゴニオステージ(試料ホルダーに装着した試料位置を電子顕微鏡の電子線光軸に対し、XYZに駆動可能さらには、X軸周りに傾斜回転が可能な装置。)に、その試料ホルダーを挿入し保持させて、観察したい試料の視野位置を選択する。
【0003】
これについて詳述すると以下のようである。すなわち、ゴニオステージにおいて、図1で示す様に、試料の視野を観察すべく駆動するために、試料ホルダー3を保持筒8に挿入し保持させ、試料固定部1を電子顕微鏡鏡筒15の電子線位置(13と14の交点)に運び入れ、電子顕微鏡鏡筒15の電子線位置(13と14の交点)を通過する電子線経路と直交する面上で、ゴニオステージに有する試料ホルダー略長手方向に駆動するX軸駆動機構(21、22,23)と、前記面上にて試料ホルダー略長手方向軸14と直交するY軸方向13に駆動するY駆動機構(18,19、20)と、さらには、電子線軸上に駆動するZ軸駆動機構を用い、試料ホルダー3に取り付けた試料固定位置1を、電子線の位置(13と14の交点)に対し、位置制御することで、試料固定位置1の任意の視野を駆動し、観察することが可能であり、さらに試料ホルダー略長手方向の軸14を中心とした回転軸にて回転傾斜(以降、α傾斜と記す。)させることが可能である。
【0004】
なお試料ホルダーの説明において、向きの表現を明確化するために、電子顕微鏡の電子光軸を向く方を、試料ホルダーの前方(前方側)と記し、その反対側の向く方を、試料ホルダーの後方(後方側)と記す。
【0005】
TEMや、STEMにおいて、試料ホルダー3の試料装着部12は、真空であるため、試料を観察する場合、試料ホルダーを電子顕微鏡内の真空部に挿入する前に、ゴニオステージに試料ホルダー挿入セットした段階で、ゴニオステージの保持筒8と試料ホルダー3との勘合空間部を、真空に排気(以後、真空予備排気と記す。)した後に、ゴニオステージに有する真空遮断用の開閉バルブを開き、最終的な試料ホルダー3の保持位置10まで試料ホルダーを挿入させることになるが、真空予備排気にかける時間は、電子顕微鏡の運用上、通常1〜3分にて行う実態では、良質な真空に到達させる事はできない。
【0006】
つまり、試料交換の都度に、電子顕微鏡本体の真空中へ、真空予備排気による残留分子の持ち込み、電子顕微鏡本体の真空度の悪化や、コンタミネーションの増加になる。よって、可能であれば、一回の試料ホルダー挿入作業で、数個の試料を挿入できることが望まれている。
【0007】
なお、ゴニオステージの真空遮断バルブ開閉機構は、図1の4の中に組み込まれているが、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの構成に対し、特に意図するものではないので、図の簡素化のために、前記の構造は省いた。
【0008】
従来の技術において、試料ホルダーには、予め数個の試料を試料ホルダー略長手方向に並べて装填できる試料保持部材を、試料ホルダーに摺動可能な機構にて試料ホルダーの前方に組み込み、観察中に、前記の試料保持部材を摺動させ、試料を切り替えながら観察が可能な試料ホルダーは存在するが、試料ホルダー本体の略長手方向の軸14に直交する軸13(以降、Y軸と記す。)の軸回りの傾斜(以降、β傾斜と記す。)機構を有する試料ホルダーは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−179805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の技術において、予め数個の試料を試料ホルダー略長手方向に並べて装填できる試料保持部材を略長手方向に摺動させ、試料観察可能な位置にずらし替えることが可能な試料ホルダーは、試料ホルダー本体の略長手方向の軸14に直交する軸13(以降、Y軸と記す。)の軸回りの傾斜(以降、β傾斜と記す。)機構を有しない試料ホルダーの場合には組み込み可能である。しかし、β傾斜を有する試料ホルダーの場合、前記の試料観察可能な位置にずらし替えることが可能な試料ホルダーは、これまで知られていない。
【0011】
これについて詳述すると以下のようである。すなわち、電子顕微鏡は、電子光学系のレンズを実現するため、強力な磁場を用いているので、試料ホルダーの設計において、磁場に影響しない非磁性材料を用いながら機械的強度を確保させつつ、さらに高分解能を観察倍率でも固有振動が発生しない構造が要求される。しかし、電子光学系のレンズの配置の制約で、試料ホルダー先端部の軸径の確保に限界が生じ、既存するTEM、STEMのゴニオステージに、装着可能な試料ホルダー先端部の軸径は、前記の制約上、6mmφから10mmφ程度で設計されているので、試料ホルダーに数個の試料を切り替える機構と、β傾斜が可能な試料固定部の機構とを、併せ持つ試料ホルダーの機能は、前記の限られた試料ホルダーの軸径内に組み入れるのは困難であり、望まれているが、このような技術はこれまで知られていない。
【0012】
さらに近年、電子線用凸レンズで発生する球面収差Csをはじめ多重の収差,非点を補正する収差補正装置(CsCorrectorと呼ばれている。)が開発され、電子顕微鏡への応用が進み、電子顕微鏡の性能は格段に向上しているが、それら収差,非点の補正を実施するためには、調整に適したアモルファス系の薄膜試料(収差補正の標準調整試料)が必要である。しかし、一般的な運用で観察したい試料は、収差,非点の補正の調整に不向きな場合が多くを占める。
【0013】
これについて詳述すると以下のようである。すなわち、収差補正装置は、補正の調整のために、適したアモルファス系標準調整試料を、電子顕微鏡に挿入し、補正を実施した後、そのコンディションを維持した状態で、速やかに、電子顕微鏡から試料ホルダーを、一旦取り出し、通常な運用で、観察したい試料と入れ替える手間や、さらに真空予備排気の工程を経るなどの不便があった。
【0014】
さらに、前記の工程により、試料ホルダーは大気中を経るので、試料ホルダーの部材は、室温の影響を受け、伸縮変動が発生する。したがって、再び電子顕微鏡に挿入後に、試料ホルダーの温度平衡に収まり、伸縮変動が安定するまで、観察試料のドリフトが発生し続ける問題があるので、待たなければならない不便があった。
【0015】
さらに、TEM、STEMで結晶性試料を観察する際、試料の結晶方位に対し電子線の入射角度を合わせる必要がある観察法の場合に、試料ホルダーの略長手方向のX軸14の回りα傾斜と、Y軸13の回りβ傾斜の2要素により、試料を電子線に対して、全域の合成軸傾斜が可能な機構が望まれている。しかし、β傾斜が可能な機構の観察用試料固定部を持ち、別途に収差補正専用の標準調整試料を同時に装着可能で、電子顕微鏡内に試料ホルダーを装着した後に、任意に切り替えが可能な試料ホルダー駆動装置の技術は、これまで知られていない。
【0016】
そこで、本発明は、複数の試料、例えば、観察したい試料と、収差補正の標準調整試料を同時に装着し、それぞれの試料を観察できる試料ホルダーにより、大幅な利便を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明者は、試料ホルダー用駆動装置の構成について鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、試料ホルダーを駆動するための試料ホルダー駆動機構を有する試料ホルダーであって、前記試料ホルダー駆動機構は、前記試料ホルダーの略長手方向において前記試料ホルダーを可変可能であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、前記試料ホルダー駆動機構は、前記試料ホルダーとは別個に設置された試料ホルダーの略長手方向の駆動機構とは無関係に、試料ホルダーの保持筒への試料ホルダーの挿入深さを可変することが可能であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、前記試料ホルダー駆動機構は、前記可変の可変量を微小に調整可能であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、前記試料ホルダー駆動機構が、リニア駆動可能なアクチュエーター又はマイクロメーターであることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、前記試料ホルダー駆動機構において、ピエソ圧電素子を配置することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、前記試料ホルダー駆動機構によって、観察可能になる複数の試料取り付け位置を有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、前記試料ホルダー駆動機構は、試料ホルダーにおいて、試料ホルダーの略長手方向の軸上で任意の距離に後退させることで観察可能になる位置に、別途試料取り付け位置を配することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置は、試料ホルダーの略長手方向を駆動するための第一の試料ホルダー駆動機構と、前記第一の試料ホルダー駆動機構とは無関係に、試料ホルダーの略長手方向を駆動するための第二の試料ホルダー駆動機構とを有することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置の好ましい実施態様において、前記第二の試料ホルダー駆動機構の配置構成が、ゴニオステージと試料ホルダー本体とは独立した構成、又はゴニオステージと、試料ホルダー本体のいずれかに配置可能な構成であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置の好ましい実施態様において、前記第二の試料ホルダー駆動機構が、試料ホルダーに設置されていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置の好ましい実施態様において、前記第二の試料ホルダー駆動機構が、試料ホルダーの取手部に設置されていることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置の好ましい実施態様において、前記第二の試料ホフダー駆動機構が、リニア駆動可能なアクチュエーター、又はピエソ圧電素子を有することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置の好ましい実施態様において、前記リニア駆動可能なアクチュエーター、及び/又はピエソ圧電素子を、遠隔制御することが可能なことを特徴とする。
【0031】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの好ましい実施形態において、試料ホルダー本体と、試料ホルダー本体の略長手方向に配した観察可能なそれぞれの試料取り付け位置と、前記試料ホルダーに配した観察可能なそれぞれの試料取り付け位置を、所望に切り替えが可能な試料ホルダー駆動装置とを有し、前記試料ホルダー駆動装置は、ゴニオステージに有する試料ホルダー略長手方向の駆動機構とは無関係に、ゴニオステージと、試料ホルダー自体との、挿入深さを、試料ホルダーの略長手方向の軸上にて後退させ、前記位置にて、可変する機構であることを特徴とする。
【0032】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの好ましい実施形態において、前記駆動機構は、試料ホルダー軸自体を駆動させるので、試料ホルダーの試料保持部に配した、既存する技術の構造を制約することが無いので、β傾斜駆動機構を持つ試料ホルダー構成を阻害しないことを特徴とする。
【0033】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの好ましい実施形態において、試料ホルダーはゴニオステージを介し、電子顕微鏡の真空負圧と大気の圧力を利用し電子顕微鏡の中心方向へ自己的に引き込まれているので、前記駆動機構は、試料ホルダーの後方の方向へ、試料ホルダー自体により押し返す作用力のみで、任意の距離に摺動させることができ、さらに前後への摺動が可能なことを特徴とする。
【0034】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの好ましい実施形態において、ゴニオステージの試料ホルダー保持位置とは別途に、ゴニオステージと、試料ホルダーとを、試料ホルダーの方向略長手に、任意の距離に摺動可能な、前記の作用力を与えるために、軸長が可変可能な、駆動構造を特徴とする。
【0035】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの好ましい実施形態において、ゴニオステージの試料ホルダー保持位置とは別途に、ゴニオステージと、試料ホルダーとを、試料ホルダーの方向略長手に、任意の距離に摺動可能な、前記の作用力を与えるために、幅長が可変可能な駆動構造を特徴とする。
【0036】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの好ましい実施形態において、ゴニオステージの試料ホルダー保持位置とは別途に、ゴニオステージと、試料ホルダーとを、試料ホルダーの方向略長手に、任意の距離に摺動可能な、前記の作用力を与えるために、ピストン構造(以降、リニアアクチュエーターと記す。)を特徴とする。
【0037】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの好ましい実施形態において、前記駆動機構の組み込む形態は、試料ホルダーの取手部と、試料ホルダー挿入口面との、間隙を調整駆動することを特徴とする。
【0038】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの好ましい実施形態において、前記駆動機構の組み込む形態は、試料ホルダーの取手部と接続されていることを特徴とする。
【0039】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの好ましい実施形態において、前記駆動機構の組み込む形態は、ゴニオステージに付加可能なことを特徴とする。
【0040】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの好ましい実施形態において、前記駆動機構は、ホルダー本体と脱着可能であることを特徴とする。
【0041】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの好ましい実施形態において、前記駆動機構の作用力を与える点は、1つ又は複数からなることを特徴とする。
【0042】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの好ましい実施形態において、試料ホルダー自体に、2個または複数個の試料固定位置を配置することを特徴とする。
【0043】
本発明の作用について一例を示せば、本発明は、上記の課題を解決するための手段として、電子顕微鏡の試料ホルダーにおいて、図2のように、電子顕微鏡の真空部12の負圧を利用し電子顕微鏡筒15の中心方向へ自己的に引き込まれている当該の試料ホルダー3自体を、試料ホルダー3の取手部5に、リニアアクチュエーター6を配置し、リニアアクチュエーター6の駆動ピン7の伸縮駆動により、試料ホルダー3の取手部5と、ゴニオステージの試料ホルダー挿入口面9との、間隙を押し開く作用により、ゴニオステージの試料ホルダー保持位置10の挿入されている試料ホルダー3を、試料ホルダー軸上にて、後方の方向へ押し返す構成を示す。
【0044】
なお、ゴニオステージ本体に既存する試料ホルダー3を略長手方向に制御する機構ついて詳述すると以下のようである。ゴニオステージのフレーム11の中に備わる試料ホルダー保持筒8に挿入され、電子顕微鏡鏡筒15内の真空部12により、引き込まれた試料ホルダー3は、試料ホルダー保持筒8に固定されたリニアアクチュエーター21の駆動軸22により、リンク部材23を介し、作用点10にて、試料ホルダー3を受け止め、作用点10にて押し引きすることで、試料ホルダー3を、試料ホルダーの略長手方向の軸14方向に前後に駆動させ、試料取り付け位置1に取り付けられた試料位置を駆動する。
【0045】
しかし本発明の試料ホルダー駆動機構を用いれば、さらにゴニオステージのX駆動機構とは無関係に、ゴニオステージの試料ホルダー保持位置より、試料ホルダー本体自身を、試料ホルダーの略長手方向軸上で、任意の距離に後退させることが可能となり、ゴニオステージのX駆動機構を用いて、観察可能な試料固定部位置1とは別途に、試料ホルダー本体の略長手方向上の先方に配置した、新たな試料固定部位置2に、移動して観察を可能にすることができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明の試料ホルダー駆動機構は、例えば、試料ホルダーを電子顕微鏡のゴニオステージへの1回の挿入作業で、観察用試料固定部1と別途に収差補正専用の標準調整試料を試料固定部2に装着でき、任意に切り替えが可能である。つまり収差補正を実施するための、収差補正の標準調整試料を、同時に装着できるという有利な効果を奏する。
【0047】
または、本発明の試料ホルダー駆動機構は、収差補正装置が組み込まれた、最新の電子顕微鏡TEMや、STEMへの応用として、β傾斜が可能な観察用試料固定部と別途に収差補正専用の標準調整試料を同時に装着でき、任意に切り替えが可能であるから、補正の調整のため収差補正専用の標準調整試料にて補正を実施したのち、速やかに、一般的な運用で観察したい試料を観察できるという、有利な効果を奏する。
【0048】
なお、本発明の試料ホルダー駆動機構において、前記に述べたβ傾斜機構は、既存のどのようなβ傾斜駆動機構の技術を用いた試料ホルダーであっても、機能を阻害せず適用でき、同様に、その他の試料ホルダーの試料固定部に付加された機能であっても、適用可能であるので、特にβ傾斜機構のみを言及するものではない。
【0049】
図2のように、試料ホルダー3の取手部5と、ゴニオステージの試料ホルダー挿入口面9との間隙を調整できるリニアアクチュエーター6を、取手部5に設け、電子顕微鏡筒15内の真空12の負圧と、外部の大気の圧力との、圧力差を利用し、電子顕微鏡の中心方向へ自己的に引き込まれている試料ホルダー3を、ゴニオステージの試料ホルダー保持位置から、試料挿入部入り口方向へ押し返すことで、ゴニオステージ本体に有する試料ホルダーの、略長手方向のX駆動機構(21,22,23)とは無関係に、そのゴニオステージの試料ホルダー保持位置より、試料ホルダー自体が、試料ホルダーの略長手方向軸14上で、任意の距離に後退させることが可能となり、ゴニオステージの試料ホルダー保持位置にて観察可能な試料固定部位置1とは、別途に、試料ホルダー略長手方向の前方へ配置した新たな試料固定部位置2に、移動して観察を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の技術における、電子顕微鏡鏡筒とゴニオステージ周りの機構面図である。
【図2】図1に、本発明の試料ホルダー駆動機構を組み入れた機構図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、試料ホルダーを駆動するための試料ホルダー駆動機構を有する試料ホルダーであって、前記試料ホルダー駆動機構は、前記試料ホルダーの略長手方向において前記試料ホルダーを可変可能である。通常、試料ホルダーを、試料ホルダーの長手方向へ駆動するには、ゴニオステージにおいて、X軸駆動機構(図1の21,22、23)を用いて、試料ホルダー3に取り付けた試料固定位置1を制御することが可能である。本発明においては、通常のゴニオステージ等によるX軸駆動機構以外の別の機構を使用して、さらにきめ細かくX軸駆動を制御することができる。しかも、本発明においては、従来技術の既存の機構を残しつつ、さらにX軸駆動、制御等が実現可能である。「略長手方向」としたのは、前記ゴニオステージに装備されている各機構によって、試料ホルダーの向きがX軸と多少傾いている事態もあるために、略としたものである。ここで、ゴニオステージとは、試料ホルダーに装着した試料位置を電子顕微鏡の電子線光軸に対し、XYZに駆動可能さらには、X軸周りに傾斜回転が可能な装置を一般に意味する。また、ゴニオメーターとは、ステージの中心軸上にある点に対して、オブジェクトを回転させる機構を一般に意味することが、電子顕微鏡のメーカー、ユーザー、学会等において、知られている。走査型電子顕微鏡では、上位機種のみに付加価値を見出す表現で「ゴニオメーター機構型試料駆動装置搭載」などと呼ばれることが知られているが、本発明にいうゴニオステージとは、ゴニオメーター型ステージをも含める広い概念である。
【0052】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、前記試料ホルダー駆動機構は、前記試料ホルダーとは別個に設置された試料ホルダーの略長手方向の駆動機構とは無関係に、試料ホルダーの保持筒への試料ホルダーの挿入深さを可変することが可能である。「別個に設置された試料ホルダーの略長手方向の駆動機構」とは、例えば、図1又は2中のアクチュエーター21、22、23などによって構成される駆動などを挙げることができる。これらの既存の機構をそのまま保持しつつ、本発明の駆動機構を設置すれば、既存の機構とは無関係に動作を制御することが可能である。もちろん、既存の機構はそのまま平常通り使用することが可能である。
【0053】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、前記試料ホルダー駆動機構は、前記可変の可変量を微小に調整可能である。
【0054】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、前記試料ホルダー駆動機構が、リニア駆動可能なアクシュエーター又はマイクロメーターであることを特徴とする。
【0055】
リニア駆動可能なアクチュエーターの作動範囲は、仕様にもよるが、数十ミリの範囲を駆動可能である。最小制御能力の限界は、一般に、0.01mm程度以下とされている。一方、後述するピエソ圧電素子の最小制御能力はナノレベルで制御可能である。しかしピエソ圧電素子の作動範囲は、ミクロンレベルとなる。したがって、両方、すなわち、アクチュエータートピエソ圧電素子を組み合わせると、作動範囲と、最小制御能力を併せ持たせることが可能である。このように適宜組み合わせて、所望の能力の試料ホルダー又は試料ホルダー駆動装置を得ることができる。
【0056】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、前記試料ホルダー駆動機構において、ピエソ圧電素子を配置することを特徴とする。ピエソ圧電素子に通電することにより、当該ピエソ圧電素子を含む部材が伸張するので、試料位置の微調整が可能である。
【0057】
また、本発明の試料ホルダーの好ましい実施態様において、前記試料ホルダー駆動機構によって、観察可能になる複数の試料取り付け位置を有する。これは、従来ある駆動機構とは無関係に、試料ホルダー駆動機構を設けているので、本発明の駆動機構によって、試料観察領域を大幅に拡大することができるため、駆動機構に合わせて、測定可能な領域に試料取り付け位置を設置することができる。試料取り付け位置としては、例えば、図2における、試料の取り付け位置2である。図では1つのみ記載されているが、複数設けてもよい。
【0058】
また、前記試料ホルダー駆動機構は、試料ホルダーにおいて、試料ホルダーの略長手方向の軸上で任意の距離に後退させることで観察可能になる位置に、別途試料取り付け位置を配してもよい。これにより、例えば、収差補正の標準調整試料など別の試料を余分に配置することができ、同時に測定等が可能である。
【0059】
次に、本発明の試料ホルダー駆動装置について説明する。
【0060】
すなわち、本発明の試料ホルダー駆動装置は、試料ホルダーの略長手方向を駆動するための第一の試料ホルダー駆動機構と、前記第一の試料ホルダー駆動機構とは無関係に、試料ホルダーの略長手方向を駆動するための第二の試料ホルダー駆動機構とを有する。第一の試料ホルダー駆動機構とは、例えば、図2のアクチュエーター21、22、23などによって構成される駆動などである。また、第二の試料ホルダーとは、たとえば、図2の試料ホルダー取手部に設けられたアクチュエーター6などを挙げることができる。第二の試料ホルダー駆動機構の態様は、これに限定されない。
【0061】
例えば、好ましい実施態様において、前記第二の試料ホルダー駆動機構の配置構成が、ゴニオステージと試料ホルダー本体とは独立した構成、又はゴニオステージと、試料ホルダー本体のいずれかに配置可能な構成である。
【0062】
例えば、第二の駆動機構の配置は、特に限定されるものではないが、以下を例示することができる。
【0063】
(1)試料ホルダーに組込むタイプ
これは、試料ホルダー自身に取り付けたアクチュエーターで、ゴニオステージ保持筒の挿入面を押し、試料ホルダー自身で長手方向にゴニオから相対的にから後退するタイプである。上述の試料ホルダーの取手部6にアクチュエーターを配置したタイプがこのタイプの代表例である。
【0064】
(2)ゴニオステージ保持筒のゴニオステージ挿入面と、試料ホルダーのハンドル部の間にアクチュエーターを組み付けた単独の機構を挟み込む、アタッチメント的部材タイプ
これは、当該アクチュエーターそれ自身の幅が可変させ、ゴニオステージにたいして、試料ホルダーを長手方向に、抜き差し出来ることが可能となるタイプの例である。
【0065】
(3)ゴニオステージに有するX軸駆動機構とは別途に、試料ホルダーのハンドル部を押しホルダーを長手方向に抜き差しするアクチュエーターを新たに組み込むタイプ
これも、同じ効果を得ることも可能である。これは、上記(1)のタイプと全く逆の発想のものである。このように、いずれにしても、第二の試料ホルダー駆動機構を有していれば、本発明の試料ホルダー駆動装置は特に限定されるものではない。
【0066】
好ましい態様において、前記第二の試料ホルダー駆動機構が、試料ホルダーに設置されている。さらに好ましくは、前記第二の試料ホルダー駆動機構が、試料ホルダーの取手部に設置されている。このように試料ホルダー駆動機構が、試料ホルダーに設置されるタイプのものは、特に大幅な設計変更をする必要がないという観点から、好ましい態様である。
【0067】
また、本発明の試料ホルダー駆動装置の好ましい態様において、前記第二の試料ホルダー駆動機構が、リニア駆動可能なアクチュエーター、又はピエソ圧電素子を有する。また、前記リニア駆動可能なアクチュエーター、及び/又はピエソ圧電素子を、遠隔制御することが可能である。
【0068】
リニア駆動可能なアクチュエーターは、通常、モーターが組み込まれているので、動力制御可能である。ピエソ圧電素子とも、電圧印加で、厚みに変化を持たせることが可能である。
【0069】
すなわち、アクチュエーターやピエソ圧電素子などを用いると、遠隔操作の捜査対象は、(1)リニア駆動可能なアクチュエーター、(2)ピエソ圧電素子、(3)リニア駆動可能なアクチュエーター、及びピエソ圧電素子の両方、となる。また、ピエゾ圧電素子は、個別に制御可能な部材なので、リニア駆動可能なアクチュエーターに併用することも可能です。
【0070】
なお、リニア駆動可能なアクチュエーターとピエソ圧電素子の違いは、最小制御能力と制御可能な作動範囲が異なることである。リニア駆動可能なアクチュエーターの作動範囲は、仕様にもよるが、数十ミリの範囲を駆動可能である。最小制御能力は、0.01mm程度以下である。一方、ピエソ圧電素子の最小制御能力はナノレベルで制御できる。しかし作動範囲は、ミクロンレベルとなる。
【0071】
したがって、両方、すなわち、リニア駆動可能なアクチュエーターとピエソ圧電素子を組み合わせると、作動範囲と、最小制御能力を駆動装置に併せ持たせることが可能となる。
【0072】
次に、本発明の駆動機構の有効性について説明すると以下のようである。すなわち、電子顕微鏡で観察の際に重要な、電子線入射と、試料の結晶方位を、任意に合わせるために、α軸傾斜とβ軸傾斜による合成傾斜角度制御が必要な観察法において、試料ホルダーにβ傾斜機能を必要とするが、従来の技術の、複数個とり付けた試料支持部材を、試料ホルダー本体上で、試料ホルダー略長手方向に摺動するだけの、試料の位置を切り替え可能な機構では、β軸傾斜機構と試料の位置を切り替え可能な機構を合わせ持つ構成は不可能であった。
【0073】
これについて詳述すると以下のようである。既存する電子顕微鏡に装着可能な試料ホルダー先端の軸径は、電子顕微鏡の電子光学系のレンズを実現するため、強力な磁場を用いているので、試料ホルダーの設計に際し、磁場に影響しない非磁性材料を用いながら機械的強度を確保させつつ、さらに高分解能を観察する倍率でも、固有振動が影響が現れない構造が要求されるが、電子光学系のレンズの配置との、物理的な制約で、試料ホルダー先端部の軸径の確保に限界がある(既存する試料ホルダーは、6mmφから10mmφ程度で設計されている。)ので、β傾斜の駆動機構と、試料取り付け位置の切り替えを可能にした機構を、併せもつ構成は、限られた試料ホルダーの軸径内に組み入れるのは困難であり、実現できていない。
【0074】
そこで本発明を実施するための最良の形態として、図2のように、試料ホルダー3の取手部5と、ゴニオステージの試料ホルダー挿入口面9との間隙を調整できるリニアアクチュエーター6を取手部5に設け、電子顕微鏡筒15内の真空12の負圧に対し、試料ホルダー後方から押す大気圧力との、圧力差を利用し、電子顕微鏡の中心方向へ、自己的に引き込まれている試料ホルダー3を、ゴニオステージの試料ホルダー保持位置から、試料ホルダー保持筒8の挿入部の入り口方向へ、試料ホルダー自体を押し返すことで、ゴニオステージの試料ホルダー保持筒8に配された試料ホルダーの略長手方向のX駆動機構(21、22、23)とは無関係に、そのゴニオステージの試料ホルダー保持位置から、試料ホルダー3自体が、試料ホルダーの略長手方向軸上で、任意の距離に後退させることが可能となり、ゴニオステージの試料ホルダー保持位置にて観察可能な試料固定部位置1とは別途に、試料ホルダー本体の略長手方向へ配置した、新たな試料固定部位置2に移動し、観察を可能にすることができる。前記に述べた、収差補正装置搭載の電子顕微鏡では、不可欠な技術であると言える。
【0075】
このような有効な機構を備えた、本発明の試料ホルダー用駆動装置において、上記に述べた試料ホルダーに組み込むβ傾斜機構は、どのような技術を用いた駆動機構の構造であっても阻害することなく、全く異なった位置に組み込みが可能であるので、特に試料ホルダーのβ傾斜機構を言及するものではない。
【0076】
なお本発明において、試料ホルダーのβ傾斜機構を例に挙げているが、試料ホルダーの試料保持部に配した、多様な既存する技術の構造を阻害しないので、特に試料ホルダーのβ傾斜機構に限定されることを意図するものではない。
【0077】
本発明をより詳細に説明するために、以下では、図面を用いて本発明の一例を説明するが、本発明は下記例に限定して解釈されることを意図するものではない。
【0078】
本発明において、試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの、リニアアクチュエーター6は、ゴニオステージの試料ホルダー保持位置10から、試料ホルダー後方の方向へ、試料ホルダー自体により押し返すための機構であるので、同様のゴニオステージと、試料ホルダーとの相対位置を、制御可能な効果であれば、ゴニオステージに対し、押し当てる位置や、ホルダーに搭載するリニアアクチュエーター6、および駆動ピン7の、搭載位置を限定するものではなく、一例で述べているリニアアクチュエーター6、および駆動ピン7の、構造、形状、材質等は限定されない。
【0079】
本発明において、試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーにおいて、リニアアクチュエーター6、および駆動ピン7との、ゴニオステージと押し合う作用点の好ましい配置において、試料ホルダーの軸14を中心とした円周上、120度に均等分割した3点で、押し引きすることのより、ホルダー軸に及ぼす歪みを、軽減できる効果があるが、少なくとも1点あれば、押し引きする機能を果たすので、点数を限定されることを意図するものではない。
【0080】
なお試料ホルダー本体の材質は非磁性で、ホルダー自体の機械的な強度を確保できれば特に限定されることはない。例えば、試料ホルダー本体の材質としては、真鍮、りん青銅、アルミ、チタン、さらにはセラミックなどを挙げることができる。
【0081】
なお試料ホルダーは、電子顕微鏡鏡筒15内の真空12に引き込まれているので、リニアアクチュエーター6の駆動ピン7は、試料ホルダー挿入口面9に押し当てられており、駆動ピン7を伸縮せることで、試料ホルダー自体を、試料ホルダー停止位置から引き出す効果が発生する。
【0082】
つまり、試料ホルダー3が、ゴニオステージの試料ホルダー保持位置から、引き出されたことで、電子顕微鏡の電子線光軸位置(13と14の交点)に対し、試料固定位置1から、試料固定位置2の位置に、移動可能となる。
【0083】
さらに、試料固定位置2において、リニアアクチュエーター6の駆動ピン7の伸縮量を、微小に制御することで、電子顕微鏡の電子線光軸位置(13と14の交点)に対し、微小な移動が可能となる。
【0084】
この例では、試料ホルダー用駆動機構に、リニアアクチュエーター6と駆動ピン7を用いているが、市販されているマイクロメーターに置き換えた構造にすることでも、可能となるので、リニアアクチュエーターを用いることに、特に限定されることはない。
【0085】
この例では、試料ホルダー用駆動機構に、リニアアクチュエーター6を用いているが、さらに、リニアアクチュエーター6の駆動ピン7の、先端にピエゾ圧電素子を配置し組み合わせることで、微小な制御を可能とする。
【0086】
なお、ピエゾ圧電素子の構成位置は、リニアアクチュエーター6の駆動ピン7が接する、試料ホルダー保持筒8の、試料ホルダー挿入口面9に配しすることも可能であるので、特に限定されることはない。
【0087】
なお図1、および図2で、表すゴニオステージは、試料ホルダー保持筒8を、支点部4を介し、試料ホルダーの略長手方向の軸14と、粗直行する方向12にも(Y軸移動と呼ばれている。)駆動させるために、Y軸用リニアアクチュエーター、および、試料ホルダー保持等8を押し戻すピン19と、ばね20を併せ持つが、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの、機構とは関係しないので、ゴニオステージのY軸駆動機構の、有無に限定して解釈されることを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
近年、収差補正装置が開発され、電子顕微鏡への応用が進み、電子顕微鏡の性能は格段に向上しているが、それら収差,非点の補正を実施するためには、調整に適した標準調整試料にて補正を実施したのち、そのコンディションを維持した状態で、一般的な運用で観察したい試料と入れ替えの必要があるが、試料ホルダーを抜き取り、試料の入れ替えや、試料ホルダーの再挿入作業に伴い、電子顕微鏡内の真空への影響、さらには試料ホルダーを、一旦、電子顕微鏡から取り出すことで、資料ホルダー自体の熱変動により、観察試料位置のドリフトの要因となる。
【0089】
さらに、TEM、STEMで結晶性試料を観察する際、試料の結晶方位に対し、電子線の入射角度を合わせる必要がある観察法の場合に、試料ホルダーの略長手方向のX軸回りのα傾斜に加え、前記と直行するY軸回りのβ傾斜との2要素を用い、試料を電子線に対して、全域の合成軸傾斜の合わせ込みが必要である。
【0090】
したがって、β傾斜が可能な機構を有する試料ホルダーの、観察用試料固定部と別途に、収差補正専用の標準調整試料を、同時に装着可能で、電子顕微鏡内に試料ホルダーを装着した後に、任意に切り替えが可能な、試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーの技術が望まれている。
【0091】
そこで、本発明の試料ホルダー駆動装置および試料ホルダーを用いることで、ゴニオステージ本体に有する、試料ホルダーの略長手方向の駆動機構とは、無関係に、そのゴニオステージの試料ホルダー保持位置より、試料ホルダー本体自身を、試料ホルダーの略長手方向軸上で、任意の距離に後退する機構を有することで、β傾斜が可能な観察用試料固定部と、別途に、収差補正専用の標準調整試料を同時に装着できる場所を設けることで、両者試料を任意に切り替える事が可能となり、収差補正装置ための、収差補正専用の標準調整試料にて、補正を実施した後、速やかに、観察したい試料を観察できるという、有利な効果を奏する。
【符号の説明】
【0092】
1 ゴニオステージのX軸制御で観察可能な試料の取り付け位置
2 本発明により新たに観察可能になった、試料の取り付け位置
3 試料ホルダー軸部
4 試料ホルダー保持筒に有する試料位置の駆動支点にあたる部位
5 試料ホルダーの取手部
6 試料ホルダー用駆動機構のリニアアクチュエーター
7 符号6の駆動ピン
8 試料ホルダーの保持筒(ここに試料ホルダーが収まる。)
9 試料ホルダーの保持筒の挿入口面
10 ゴニオステージのX軸制御による、試料ホルダーの出し入れ基準面
および、符号23の作用点
11 ゴニオステージ機構のフレーム(図例では、筒状を表す)
12 電子顕微鏡鏡筒内部の真空な部分
13 電子線経路で、符号14と直行するY軸の中心線(β軸回り)
14 試料ホルダー略長手方向のX軸の中心線(α軸回り)
15 電子顕微鏡鏡筒
16 試料ホルダーに取り付けられた真空遮断用Oリング
17 電子顕微鏡とゴニオステージの符号4との真空遮断Oリング
18 試料ホルダーのY軸駆動用リニアアクチュエーター
19 試料ホルダーのY軸押し返しピン
20 符号19に力を与える、押しバネスプリング
21 試料ホルダーのX軸駆動用リニアアクチュエーター
22 符号21の駆動ピン
23 X軸駆動力伝達に用いるリンク部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ホルダーを駆動するための試料ホルダー駆動機構を有する試料ホルダーであって、前記試料ホルダー駆動機構は、前記試料ホルダーの略長手方向において前記試料ホルダーを可変可能であることを特徴とする試料ホルダー。
【請求項2】
前記試料ホルダー駆動機構は、前記試料ホルダーとは別個に設置された試料ホルダーの略長手方向の駆動機構とは無関係に、試料ホルダーの保持筒への試料ホルダーの挿入深さを可変することが可能である請求項1記載の試料ホルダー。
【請求項3】
前記試料ホルダー駆動機構は、前記可変の可変量を微小に調整可能である請求項1又は2項に記載の試料ホルダー。
【請求項4】
前記試料ホルダー駆動機構が、リニア駆動可能なアクチュエーター又はマイクロメーターである請求項1〜3項のいずれか1項に記載の試料ホルダー。
【請求項5】
前記試料ホルダー駆動機構において、ピエソ圧電素子を配置した請求項1〜4項のいずれか1項に記載の試料ホルダー。
【請求項6】
前記試料ホルダー駆動機構によって、観察可能になる複数の試料取り付け位置を有する請求項1〜5項のいずれか1項に記載の試料ホルダー。
【請求項7】
前記試料ホルダー駆動機構は、試料ホルダーにおいて、試料ホルダーの略長手方向の軸上で任意の距離に後退させることで観察可能になる位置に、別途試料取り付け位置を配することを特徴とする請求項1〜6項のいずれか1項に記載の試料ホルダー。
【請求項8】
試料ホルダーの略長手方向を駆動するための第一の試料ホルダー駆動機構と、前記第一の試料ホルダー駆動機構とは無関係に、試料ホルダーの略長手方向を駆動するための第二の試料ホルダー駆動機構とを有する試料ホルダー駆動装置。
【請求項9】
前記第二の試料ホルダー駆動機構の配置構成が、ゴニオステージと試料ホルダー本体とは独立した構成、又はゴニオステージと、試料ホルダー本体のいずれかに配置可能な構成であることを特徴とする請求項8記載の試料ホルダー駆動装置。
【請求項10】
前記第二の試料ホルダー駆動機構が、試料ホルダーに設置されている請求項8又は9項に記載の試料ホルダー駆動装置。
【請求項11】
前記第二の試料ホルダー駆動機構が、試料ホルダーの取手部に設置されている請求項10記載の試料ホルダー駆動装置。
【請求項12】
前記第二の試料ホルダー駆動機構が、リニア駆動可能なアクチュエーター、又はピエソ圧電素子を有することを特徴とする請求項8〜11項のいずれか1項に記載の試料ホルダー駆動装置。
【請求項13】
前記リニア駆動可能なアクチュエーター、及び/又はピエソ圧電素子を、遠隔制御することが可能な請求項12記載の試料ホルダー駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−40505(P2010−40505A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19548(P2009−19548)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(505391986)
【Fターム(参考)】