説明

試料処理が電気化学的に作動するマイクロ流体装置および方法

統合マイクロ流体チップに電気化学作動を採用して流体を移送し、試料を準備し、分離し、検出する。この電気化学作動は、オンチップ流体処理用の高圧を発生させることができる。電源のみを用いて外部流体サポートなしにオンチップ流体処理を制御する技術および方法も開発されている。この装置および方法の用途には、マイクロ・スケールHPLC、ESI-MSなどが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2002年6月26日に出願され参照として本明細書に組み入れられる米国暫定特許出願第60/391,822号への優先権を主張する。
【0002】
連邦政府の後援による研究開発の下で行われた発明の権利に関する声明
本明細書に記載された研究は、部分的にNSF助成金第EEC-9402726号(NSF Grant No. EEC-9402726)およびNIH助成金第R01RR 06217号(NIH Grant No. R01 RR06217)の支援を受けている。したがって、米国政府は、本発明におけるある権利を有する。
【0003】
発明の背景
本発明は、概してマイクロ流体技術に関する。特に、本発明は、複数のマイクロ流体流路のうちの1つを通る電気エネルギーを用いて流体移送プロセスを実行する方法およびシステムを提供する。本発明は、単に一例として、統合マイクロ流体チップを用いた高圧液体クロマトグラフィに適用されている。しかし、本発明が、薬物供給、携帯化学分析システムなど、これよりもずっと広い適用範囲を有することが認識されよう。
【0004】
この数年の間に化学分析技術は進歩を遂げている。初期の分析手順には、化合物を分離し浄化するプロセスに関する液体クロマトグラフィが含まれていた。初期の商業的な液体クロマトグラフィ方法は、科学者が実験室で行うには非常に困難な方法であった。後に、ある化学的分離において、オープン・カラム・クロマトグラフィ、ペーパー・クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィなどの技術が使用されるようになった。残念なことに、これらの技術にはある種の制限があった。たとえば、これらのクロマトグラフィ技術は、化合物の定量化および類似した化合物の分解には不十分であることが多かった。したがって、圧力液体クロマトグラフィが開発された。このような圧力クロマトグラフィは、カラム手法によって分離されたある種の化合物の浄化時間を短くすることが多いフロー・スルー時間を改善した。残念なことに、流量は一定でないことが多かった。Analytical Chem.第62巻第19号(1990年10月1日)を参照されたい。
【0005】
したがって、従来の技術のこのような制限のいくつかを解消するために高圧液体クロマトグラフィ(「HPLC」)が開発された。高圧液体クロマトグラフィによってカラムの設計および材料の開発が改善された。高圧液体クロマトグラフィの改良によって、類似したある種の化合物の分離が改善された。最近では、効率を高めるためにHPLCにコンピュータおよびその他のオートメーションが付加されている。HPLCの電気浸透力には他の技術も依存している。このようなHPLCの例は、界面動電高圧水圧システム(Electrokinetic High Pressure Hydraulic System)という名称の米国特許第6572749号(以下「'749号特許」)に記載されている。'749号特許は概して、電解液に加えられる電気浸透力を用いた流体流用の装置を請求している。電気浸透力はHPLC用途に使用されている。残念なことに、HPLC用の電気浸透力には多数の制限がある。たとえば、電界を用いた電気浸透流は電界を用いて圧力を発生させ液体を汲み出し、かつ/または圧縮する。高圧を得るには、3000Vなどの高電圧が必要である。さらに、マイクロチャネルの内側に多孔性材料を詰めることも望ましい。HPLCは数年にわたって向上しているが、依然として多数の制限がある。
【0006】
上記のことから、改良されたHPLC技術を有することが望ましい。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明によれば、マイクロ流体用途用の技術が提供される。特に、本発明は、複数のマイクロ流体流路の1つを通る電気エネルギーを用いて流体移送プロセスを実行する方法およびシステムを提供する。本発明は、単に一例として、統合マイクロ流体チップを用いた高圧液体クロマトグラフィに適用されている。しかし、本発明が、薬物供給、携帯化学分析システムなど、これよりもずっと広い適用範囲を有することが認識されよう。
【0008】
特定の態様では、本発明は、液体クロマトグラフィ用のマイクロ流体システムを提供する。このシステムは、様々な要素を有する基板を含む。複数の電解液ポンプおよび少なくとも1つの出口を有する電解ポンプ・システムが基板上に配置されている。各ポンプは、少なくとも1つの出口を有する。各電解ポンプは、チャンバと、電源に結合された複数の電極とを有する。流体が、チャンバの内側に存在し、電極に接触する。ポンプは入口および出口も有する。分離カラムが基板上に配置されている。入口と出口との間にマイクロチャネルが形成されている。固体固定相材料(たとえば、シリカやアルミナ)がマイクロチャネルに詰め込まれている。好ましくは、分離カラムの入口は、電気化学ポンプ・システムの少なくとも1つの出口に結合される。電気化学ポンプ・システムおよび分離カラムは、電気化学ポンプ・システムが分離カラム内の分離プロセス用の溶離を供給するように構成されている。
【0009】
他の特定の態様では、本発明は、エレクトロスプレー・イオン化(ESI)および質量分析(MS)用のマイクロ流体システムを提供する。このシステムは基板を有し、基板上に電気化学ポンプ・システムが配置されている。電気化学ポンプ・システムは、複数の電解ポンプと少なくとも1つの出口とを有する。各ポンプは、チャンバと、電源に結合された複数の電極とを有する。流体が、チャンバの内側に存在し、好ましくは電極に接触する。ポンプは入口および出口も有する。
【0010】
好ましくは、基板上にエレクトロスプレー・イオン化(ESI)ノズルも配置されている。ESIノズルは、入口と、出口と、入口と出口との間に結合されたマイクロチャネルと、マイクロチャネル内のESI電極とを有する。ESIノズルの入口は、電気化学ポンプ・システムの出口に結合することができる。システムは、ESIノズルの出口に結合された入口を含む質量分析計も有する。電気化学ポンプ・システムおよびESIノズルは、電気化学ポンプ・システムが、流体をESIノズルのマイクロチャネルを通過させ、ESIノズルの出口から排出させる駆動力を与えるように構成されており、ESI電極と質量分析計との間に電圧源が印加されたときに、ESIノズルの出口から放出された流体が質量分析計に移送される。
【0011】
他の態様では、本発明は、電気化学的作動に基づいてマイクロ流体チップ上で流体を移送する方法を提供する。この方法は、流体を基板内の入口を通してチャンバ内に移送する段階と、チャンバに結合された複数の電極を用いて電気接続を備える段階とを含む。この方法は、電気接続を用いて複数の電極に電気エネルギーを印加しつつ、流体の一部を出口を通してチャンバから送り出し、流体のこの一部が外部流体源に結合せずに移送する段階を含む。流体の一部の移送は、電気エネルギーが複数の電極に印加されたことに応答して行われる。
【0012】
さらに、本発明は、液体クロマトグラフィ用途においてマイクロ流体システムによって流体を制御する方法を提供する。この方法は、複数の電極の間に電源を印加し、複数の電極に結合されたチャンバ内の第1の流体内で電気化学反応を生じさせる。この方法は、第1の流体における電気化学反応によって気体種を発生させ、チャンバ内の圧力を高める。好ましくは、この方法は、第2の流体を分離チャネルを通過させ、チャンバに関連する圧力を用いて第2の流体中の1つ以上の成分を分離して液体クロマトグラフィを行う。
【0013】
さらに他の態様では、本発明は、マルチチャンバ構成を用いて液体クロマトグラフィを実行する方法を提供する。この方法は、複数の電極間に電源を印加して第1のチャンバの第1の流体内で電気化学反応を生じさせる段階を含む。好ましくは、第1のチャンバは複数のチャンバのうちの1つである。各チャンバは1からNまで番号が付けられている。ここでNは1よりも大きな整数である。第1の流体は、1からNまで番号が付けられた複数の流体のうちの1つであり、各流体はそれぞれ、少なくとも1つのチャンバに関連付けされている。この方法は、第1の流体における電気化学反応によって気体種を発生させて第1のチャンバ内の第1の圧力を高くする段階と、第1のチャンバに関連する第1の圧力を用いて第1の液体クロマトグラフィ流体を第1の容器から分離カラムに移送する段階とを含む。第1の液体クロマトグラフィ流体は、1からNまで番号が付けられた複数の液体クロマトグラフィ流体のうちの1つである。各液体クロマトグラフィ流体は、やはり1からNまで番号が付けられたそれぞれの容器チャンバに関連付けされている。この方法は、態様に応じて、他のあらゆるそれぞれの流体を含む他のあらゆるチャンバおよび容器についての取付け段階、発生段階、および移送段階をさらに含む。
【0014】
他の特定の態様では、本発明は、ESI-MS用のマイクロ流体システムによって流体を制御する方法を提供する。この方法は、第1の流体を入口から、基板の第1の部分上に形成されたチャンバに移送する段階を含む。チャンバは、第1の流体に電気力を印加するように構成された複数の電極を有する。この方法は、複数の電極間に電源を印加する段階と、第1の流体に結合された電極上に電源が印加されることに基づいてチャンバ内で電気化学反応を生じさせる段階とを含む。この方法は、電気化学反応によって気体種を発生させてチャンバ内の圧力を高める段階も含む。チャンバ内の圧力を用いて、ESI-MS用の第2の流体を注入する駆動力が与えられる。好ましくは、注入は、複数の電極に結合された電源を調整することによって制御される。
【0015】
本発明を用いて従来の技術に勝る多数の利益が得られる。たとえば、本発明は、質量分析計(MS)および他の用途に適用することができる。好ましくは、本発明は、電解ベースのマイクロ・ポンプ、マイクロ・ミキサー、エレクトロスプレー・イオン化(ESI)ノズル、その他の要素のような様々なマイクロ流体構成要素と一体化されたシステムを提供する。態様に応じて多層パリレン表面マイクロマシニングが使用されている。ただし、他の製造技術を使用してもよい。さらに、本システムの用途には、MS用のマルチソース厳密投与およびHPLC用の勾配溶離が含まれる。本方法を用いることによって、単一のチップ上で複雑な流体処理を行うことができ、ある態様では、電気制御のみを用いてオートメーションも簡略化される。このシステムは、商業化のためにより安いコストで大量生産することもできる。態様に応じて、これらの利益の1以上を実現することができる。これらおよびその他の利益は、本明細書全体にわたって記載され、特に以下に記載されている。
【0016】
本発明の他の様々な目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって完全に理解することができる。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明によれば、マイクロ流体用途用の技術が提供される。特に、本発明は、複数のマイクロ流体流路の1つを通る電気エネルギーを用いて流体移送プロセスを実行する方法およびシステムを提供する。本発明は、単に一例として、統合マイクロ流体チップを用いた高圧液体クロマトグラフィに適用されている。しかし、本発明が、薬物供給、携帯化学分析システムなど、これよりもずっと広い適用範囲を有することが認識されよう。
【0018】
図1は、本発明の態様による統合システム100の概略図である。この図は、一例に過ぎず、特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者には、多数の変形態様、変更態様、および修正態様が認識されよう。図示のように、統合マイクロ流体システム100は、液体クロマトグラフィ、好ましくは質量分析用のシステムである。システムは基板101を含む。基板は、様々な材料で作ることができる。このような材料には、単一の材料、合金、および多層構造、またはこれらの任意の組合せが含まれる。基板は、シリコン、ガラス、プラスチック、および様々なポリマー材料で作ることができる。もちろん、使用される基板は用途に依存する。
【0019】
図示のように、システムは基板上に電気化学ポンプ・システム105(たとえば、複数または単一)を含んでいる。各ポンプは少なくとも1つの出口を有している。各ポンプは、チャンバと、電源に結合された複数の電極と、チャンバの内側の流体と、入口および出口とを有している。流体は、入口から入り出口から出る。システムは、入口および出口を有する分離カラム119も基板上に含んでいる。分離カラムは、マイクロチャネルと、マイクロチャネルの内側に詰められた固体固定相材料も有している。分離カラムの入口は電気化学ポンプの出口に結合されている。電気化学ポンプ・システムおよび分離カラムは、電気化学ポンプ・システムが分離カラムの内側で分離プロセス用の溶離を与えるように構成されている。
【0020】
態様に応じて、基板上に他の要素を集積することもできる。このような要素には、フィルタおよび弁107、ミキサー109、スプリッタ111、注入器113、ガードカラム115、検出器121、エレクトロスプレー・チップまたはノズル123が含まれる。これらの要素はそれぞれ、本明細書に記載された技術を用いて基板上に製造されるが、他の技術を使用してもよい。質量分析計103は、ノズルに結合されているが、基板上の集積要素の外側に位置することが多い。他のシステムを分離カラムに結合することもできる。このようなシステムには、特に、UV分析器、導電率分析器、屈折率分析器、蛍光分析器、電気化学分析器、光散乱分析器が含まれる。システムのこれらおよびその他の特徴は、本明細書全体に詳しく記載されているが、特に以下に記載されている。
【0021】
図2は、本発明の態様による統合HPLCシステム200のより詳細な図である。この図は、一例に過ぎず、特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者には、多数の変形態様、変更態様、および修正態様が認識されよう。図示のように、システムは、基板上に複数の電解ポンプ203、205を含む電気化学ポンプ・システム201(たとえば、複数または単一)を含んでいる。各電解ポンプは少なくとも1つの出口215を有している。各電解ポンプは、チャンバ217、電源221に結合された複数の電極219、チャンバの内側の流体223(たとえば、有機液体、無機液体、または無機液体もしくは有機液体の組合から選択される電解液(たとえば、アセトニトリル、メタノール、エタノール))、入口213および出口215とを有している。チャンバは、適切な材料、たとえば、パリレン、SU-8、シリコーン、シリコン、酸化ケイ素、ガラス、テフロン、PEEK、その他のポリマー材料、またはこれらの材料の任意の組合せで作ることができる。電極は、導電性の適切な材料で作られている。このような電極材料には、特に、炭素、白金、金、アルミニウム、チタン、クロム、およびその他の貴金属を含めてよい。流体は、入口から入り出口から出る。
【0022】
システムは、入口209および出口211を有する分離カラム207も基板上に含んでいる。分離カラムは、マイクロチャネル225と、マイクロチャネルの内側に詰められた固体固定相材料227も有している。分離カラムの入口は電気化学ポンプの出口に結合されている。態様に応じて、ポンプと分離カラムとの間に他の要素を配置することができる。電気化学ポンプ・システムおよび分離カラムは、電気化学ポンプ・システムが分離カラムの内側で分離プロセス用の溶離を与えるように構成されている。本発明による方法について以下にさらに詳しく説明する。
【0023】
特定の態様によれば、システムは様々な方法を実行することができる。このような方法の一例は、液体クロマトグラフィ用途において本マイクロ流体システムによって流体を制御する方法である。この方法は、流体を入口からチャンバ内に移送する段階を含む。複数の電極間に電源が印加される。電源は、電圧源であっても、電流源であっても、電圧/電流源であってもよい。ここで、電解ポンプは、チャンバ内の流体上に圧力を維持するようになっており、一方、電極には電源を用いてバイアス電圧がかけられる。電極に電源が印加されたことに基づいて、電源からの電気エネルギーによってチャンバ内に電気化学反応が起こる。好ましくは、電極は流体に直接結合される。汲出し作用を生じさせるために、電気化学反応によって気体種が生成され、チャンバ内の圧力が高められる。この圧力を用いて分離カラム内の溶離に駆動力が与えられ、液体クロマトグラフィが行われるに用いられる。特定の態様では、この圧力は1000psiaよりも高くても、1000psiaよりも低くてもよく、また100psiaよりも低くてもよい。態様に応じて、この方法は、液体クロマトグラフィ・プロセスを制御することもできる。ここで、制御は、複数の電極に印加される電源を調整することによって行うことができる。
【0024】
特定の態様では、システムおよび方法は、選択された流体流を実現する。ここで、チャンバからの流体出力は、約1マイクロリットルの流体であってよい。または、チャンバからの流体出力は、約1マイクロメートルを超える流体であってよい。または、チャンバからの流体出力は、約1マイクロメートルよりも少ない流体であってよい。または、電気化学ポンプ・システムは、分離カラムを通る毎分約1ナノリットルから毎分約1マイクロリットルの流量を実現することを特徴としている。または、電気化学ポンプ・システムは、分離カラムを通る毎分約1ナノリットルよりも少ない流量を実現することを特徴とするか、または分離カラムを通る毎分約1マイクロリットルを超える流量を実現することを特徴としている。もちろん、特定の流量は用途に依存する。態様に応じて、各電解ポンプを互いに対して、並列、直列、およびこれらの任意の組合せを含む他の構成に形成することができる。
【0025】
図3A、3B、および3Cは、本発明の態様による電解ポンプの概略図である。これらの図は、一例に過ぎず、特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者には、多数の変形態様、変更態様、および修正態様が認識されよう。図示のように、各ポンプは並列301に構成しても、直列303に構成しても、直並列306に構成してもよい。並列構成のポンプはそれぞれ、他の要素に連結される共通のポートに連結される出口を含んでいる。各ポンプが流体を一緒に与えることも、任意の1つのポンプが、他のポンプとは独立にまたは任意の順序で流体を与えることもできる。直列構成のポンプも、一緒にまたは順次使用することができ、また、任意の1つのポンプを他のポンプとは独立に使用することもできる。または、直並列構成のポンプを、当業者には理解されるいくつかの異なるプロセスで使用することができる。直並列構成のポンプは、特定の態様では、直列のN個のポンプおよび並列のM個のポンプ(NおよびMは1よりも大きい)を含むポンプのアレイを形成する。
【0026】
図4は、本発明の態様による、試料を注入する統合HPLCシステム400の概略図である。この図は、一例に過ぎず、特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者には、多数の変形態様、変更態様、および修正態様が認識されよう。図示のように、システム400は、並列に構成された複数の電解ポンプ401を含んでいる。これらのポンプはそれぞれ、HPLCカラム403の入口に結合されている。HPLCカラムは出口を含んでいる。電解ポンプとカラムとの間に試料注入源405が設けられている。試料注入源は、並列に構成されているが、態様に応じて直列であってもよい複数の電解ポンプ407を含んでいる。各電解ポンプは、HPLCカラムの入口に結合された出口を含んでいる。態様に応じて、試料注入源の各電解ポンプ内に様々な流体を設けることができる。試料注入源の他の態様は、本明細書全体にわたって記載され、特に以下に記載されている。
【0027】
図5は、本発明の他の態様による、試料を注入する統合HPLCシステム500の概略図である。この図は、一例に過ぎず、特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者には、多数の変形態様、変更態様、および修正態様が認識されよう。図示のように、システム500は、基板上に並列に構成された複数の電解ポンプ501を含んでいる。これらの電解ポンプはそれぞれ、HPLCカラム505の入口に結合されている。HPLCカラムは出口を含んでいる。電解ポンプとカラムとの間に試料注入器503が設けられている。試料注入器は、基板の外側に位置してよい試料源507に結合されている。態様に応じて、試料注入器によって様々な流体を与えることができる。システムの他の態様は、本明細書全体にわたって記載され、特に以下に記載されている。
【0028】
図6は、本発明の態様による統合HPLC-ESI-MSシステム600である。この図は、一例に過ぎず、特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者には、多数の変形態様、変更態様、および修正態様が認識されよう。図示のように、システム600は、基板602上に並列に構成された複数の電解ポンプ601を含んでいる。これらの電解ポンプはそれぞれ、HPLCカラム605の入口に結合されている。HPLCカラムは出口を含んでいる。電解ポンプとカラムとの間にミキサー605が設けられている。ミキサーは、態様に応じて、電解ポンプから汲み出された様々な流体を混合する。指摘したように、HPLCカラムは、ノズル607に連結された出口を含んでいる。ノズルは好ましくは、入口、出口、マイクロチャネル、およびESI電極を有する、基板上のエレクトロスプレー・イオン化(ESI)ノズルである。ESIノズルの入口は、HPLCカラムの出口に結合されている。ESIノズルの出口は、基板の外側に位置することが多い質量分析計609に結合されている。
【0029】
電気化学ポンプ・システムおよびESIノズルは、電気化学ポンプ・システムが流体をESIノズルから押し出す駆動力を与えるように構成されている。好ましい態様によれば、ESI電極と質量分析計との間に高電圧源が印加される間、ESIプロセスによって、質量分析計に結合されたESIノズルの出口から流体が放出される。より好ましくは、ESI電極が、ESIノズルから押し出された流体に接触する。ノズルは、適切な材料、たとえば、パリレン、SU-8、シリコーン、シリコン、酸化ケイ素、ガラス、テフロン、PEEK、その他のポリマー材料で作ることができる。ESI電極は導電性の適切な材料で作られている。このような電極材料には、特に、炭素、白金、金、アルミニウム、チタン、クロム、その他の貴金属を含めてよい。ESIノズルを有するシステムの他の態様について以下に説明する。
【0030】
図7は、本発明の態様による統合ESI-MSシステム700である。この図は、一例に過ぎず、特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者には、多数の変形態様、変更態様、および修正態様が認識されよう。図示のように、システム700は、基板701上に並列に構成された複数の電解ポンプ703を含んでいる。これらの電解ポンプはそれぞれ、ESIノズル705に結合されている。ノズルは、入口、出口、マイクロチャネル、およびESI電極を有する、基板上のエレクトロスプレー・イオン化(ESI)ノズルである。ESIノズルの入口は、電解ポンプの出口に結合されている。ESIノズルの出口は、基板の外側に位置することが多い質量分析計709に結合されている。
【0031】
電気化学ポンプ・システムおよびESIノズルは、電気化学ポンプ・システムが流体をESIノズルから押し出す駆動力を与えるように構成されている。好ましい態様によれば、ESI電極と質量分析計との間に高電圧源が印加される間、ESIプロセスによって、質量分析計に結合されたESIノズルの出口から流体が放出される。より好ましくは、ESI電極が、ESIノズルから押し出された流体に接触する。ノズルは、適切な材料、たとえば、パリレン、SU-8、シリコーン、シリコン、酸化ケイ素、ガラス、テフロン、PEEK、その他のポリマー材料で作ることができる。ESI電極は導電性の適切な材料で作られている。このような電極材料には、特に、炭素、白金、金、アルミニウム、チタン、クロム、その他の貴金属を含めてよい。ESIノズルを有するシステムの他の態様について以下に説明する。
【0032】
図8は、電解ポンプ用のマルチチャンバ構成を有するHPLCシステムである。この図は、一例に過ぎず、特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者には、多数の変形態様、変更態様、および修正態様が認識されよう。システム800は、電気化学ポンプ・システム801およびHPLCカラム811を含んでいる。HPLCカラム811は、電気化学ポンプ・システム801がHPLCカラム811における分離プロセス用の溶離または試料の注入を行うように電気化学ポンプ・システム801に結合されている。電気化学ポンプ・システム801は、ポンプA803やポンプA809のような複数の電解ポンプを含んでいる。この態様では、複数の電解ポンプが並列に構成されている。ポンプA807は、電解チャンバ805および溶媒容器803を含んでいる。ポンプA803は、電解チャンバA805に電気エネルギーが印加されたときに、電気化学反応によって電解チャンバA805の内側の圧力が高くなり、かつその圧力によって、溶媒容器A807の内側の溶媒をHPLCカラム811に移送する駆動力がもたらされるように構成されている。ポンプA803では複数の流体を使用することができる。電解チャンバA805の内側の流体は電気化学反応用の使用媒体であってよく、溶媒容器A807の内側の流体は、分離プロセス用の溶媒または試料溶液であってよい。他の電解ポンプは、ポンプA803と実質的に同様に構成してよい。
【0033】
図8に示されているHPLCシステムを用いた場合、マルチチャンバ構成によって液体クロマトグラフィを行う方法を実行することができる。この方法は、複数の電極間に電源を印加して電解チャンバA805内の流体内で電気化学反応を引き起こす段階を含む。電解チャンバA805は、複数のチャンバの1つである。複数のチャンバは、電解チャンバA805、電解チャンバB、および他の電解チャンバを含んでいる。各電解チャンバは電解ポンプに属している。図8に示されているように、電気化学ポンプ・システム801は、電解チャンバA、電解チャンバB、および他の電解チャンバを含んでいる。
【0034】
この方法は、流体内の電気化学反応によって気体種を発生させて電解チャンバA805内の圧力を高める段階と、電解チャンバA805に関連する第1の圧力を用いて液体クロマトグラフィ流体を溶媒容器A807からHPLCカラム811に移送して液体クロマトグラフィを行う段階も含む。さらに、この方法は、他のあらゆるチャンバおよび容器に同様の印加プロセス、発生プロセス、および移送プロセスを適用する。各電解チャンバは流体を含み、各溶媒容器は液体クロマトグラフィ流体を含んでいる。さらにここで強調するように、この方法は、一例に過ぎず、特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者には、多数の変形態様、変更態様、および修正態様が認識されよう。
【0035】
本明細書に記載された例および態様が例示のためのみのものであり、当業者には、それを考慮した様々な修正態様または変更態様が構想され、かつそのような態様がこの出願の要旨および範囲内ならびに特許請求の範囲の範囲内に含まれることを理解されたい。本発明の特定の用途の詳細は、本明細書全体にわたって記載され、特に以下に記載されている。
【0036】
実験
本発明の動作を説明するためにある実験を行った。この実験は、一例に過ぎず、特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者には、多数の変形態様、変更態様、および修正態様が認識されよう。この実験は行われた。図9〜18は、本発明の各態様による実験結果の概略図である。これらの図は、一例に過ぎず、特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。当業者には、多数の変形態様、変更態様、および修正態様が認識されよう。
【0037】
2つの有力な独立分析技術の組合せであるHPLC-ESI-MS技術は、最近開発された画期的な分析方法である。高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)およびMSのある分析用途は確立されているが、発明者は、質量分析用のポリマー・ベースのエレクトロスプレー・チップを首尾良く作製した。電解に基づく電気化学マイクロ作動は、マイクロ流体用途の適切な技術として立証されている。しかし、通常この装置は、ウェハ・ボンディングのような比較的複雑なパッケージングを含む。ここで、発明者は、発明者が開発したパリレン表面マイクロマシニング技術を用いて電解ベースのマイクロポンプを作製した。この技術によって、電解マイクロ・チップ、受動マイクロ・ミキサー、およびESIノズルがすべて単一のチップ上に集積されている。外部流体結合は必要とされない。試料は、容器に貯留され密封され、次いで電解によって生成された気泡圧力によって汲み出される。試料は、マイクロ・ミキサーで混合された後、統合ESIノズルを通してMS入口に送られる。この独立システムは複雑なパッケージングを必要とせず、チップに接続されるのは電線だけである。これによって、このシステムの動作が簡略化される。動作の原則および製造された装置が図9および10に示されている。
【0038】
この統合システムの重要な用途はオン・チップ勾配溶離である。HPLCにおけるたいていの複雑な分析では勾配溶離が必要である。たいていの場合、勾配システムは、複数の溶媒容器、ポンプ、およびミキサーを含む。ある構成要素は、提案された方法を用いてすでに統合されている。勾配流量、濃度比または勾配、および持続時間はすべて、各チャンバがそれぞれの異なる流体を含む電解ポンプに印加される電圧または電流を調整することによって電気的に調節することができる。同じ機能を実現する他の手法もある。たとえば、汲出しには、静電ポンプ、熱空気ポンプ、電気流体力学ポンプ、電気浸透ポンプ、または電気泳動ポンプを使用できるが、これらに限らない。静電作動ベースのポンプは、発明者のグループですでに調査されている。ミキサーは、静電作動、音響作動、誘電泳動作動のような、ポンプと同様の作動方法を用いる能動ミキサーであってよい。他の適用可能な材料を使用してもよい。たとえば、PDMSのような他のポリマー、またはポリシリコンや金属のような従来のMEMS材料を使用してよい。製造方法について以下に詳しく説明する。
【0039】
装置は、多層パリレン表面マイクロマシニング技術によって製造される。プロセスは、酸化物で被覆されたシリコン基板から始まる。Cr/Au(100Å/2000Å)層によって電解用の電極を形成する。次いで、両側の酸化物をパターニングしてBrF3マスクおよびDRIEマスクを形成する。2つの2μmパリレン層によって挟まれた1つの4μmフォトレジスト犠牲層によってマイクロ・ノズルおよびミキサーを形成する。容器は、15μmのフォトレジスト犠牲層および4μmのパリレンから形成されている。BrF3を用いて下部のシリコンをエッチングすることによって自立ノズルを作製する。DRIEエッチングによるトレンチによってチップは壊れやすくなり、したがって、ノズルが600μm突き出る。最後に、超音波攪拌を用いてアセトンによって犠牲層を除去し、その後メタノールおよびDI水によって洗浄する。図11は、詳細なプロセス・フローを示している。図12は、マイクロ・ポンプ、ミキサー、およびノズルに関する概略図である。
【0040】
試験時に、5%のメタノール、5%の酢酸、および対象試料(50pmol/μLテトラブチルヨウ化アンモニウム)を含む、水ベースの溶液を用いた。試料溶液を入口に滴下し、表面張力によって容器(〜100nL)が溶液で満たされた後、フォトレジストを用いて入口を密封した。次いで、チップをMS入口の前方に配置した。ESI用の高電圧と一緒に電解電圧を印加した。図13および14は、この統合流体投与システムを用いた実際のMSデータによる結果を示している。電解電圧を印加する前にエレクロスプレーは行われず、すなわち、信号は存在しなかった。電解が行われた後、質量スペクトルにおいて、Bu4N+の予想される同位体ピークが観測された。流量は約80nL/分と推定された。このシステムの機能をさらに実証するために、図15に示されているようにマルチ試料分析を行った。2つの異なる目標試料を、ミキサーによって連結された2つの容器に貯留した。次いで、各容器に印加される電解電圧を調節することによって、どの試料溶液をノズルに送り込み、最終的にMSにエレクトスプレーするかを制御した。一方のチャンバにテトラブチルヨウ化アンモニウム(25pmol/μl、m/z 242、緑の線で示されている)を充填し、他方のチャンバにロイプロリドと呼ばれるペプチド(30〜50pmol/μl、m/z 606、赤い線で示されている)を充填した。両方の試料を5%メタノールおよび5%酢酸に溶解した。図15は、示された時間における各試料のイオン・クロマトグラムおよび代表的な質量スペクトルを示している。この実験は、電解マイクロ・チップの効果、システム全体の性能、およびオンチップ勾配溶離の基本的な概念を実証した。
【0041】
質量分析(MS)用のオンチップ統合マイクロ流体システムを提案し開発した。基本概念および設計について論じる。多層パリレン表面マイクロマシニングを用いて、電解ベースのマイクロ・ポンプ、マイクロ・ミキサー、エレクトロスプレー・イオン化(ESI)のような様々なマイクロ流体構成要素を総合的に統合する1つの実現方法を実証した。提案されたシステムの用途には、HPLC-ESI-MSシステム用のマルチソース厳密投与および勾配溶離が含まれる。
【0042】
発明者は、図16〜18によって示されている多重ポンプ構成を用いた本発明も実証した。図16を参照すると分かるように、(ポンプとして)ESIノズルに結合された2つの電解チャンバを含む単一チップ設計を基板上に配置した。各チャンバには、外部電源に結合された複数の電極を含めた。各電源を独立に動作させて本システムおよび方法を実証した。単に一例として、一方のチャンバには、90/10/0.1水/アセトニトリル/ホルム酸に溶かした10pmol/μL TBAIを充填した。他方のチャンバには、95/5/0.2水/メタノール/ホルム酸に溶かした25pmol/μLアンジオテンシンを充填した。図を見れば分かるように、各ポンプは、その選択された流体を用いて作動させられ、流体が出力されている。質量分析計は、ノズルから出力された流体を読み取る。TBAIは第1のピークによって示され、アンジオテンシンは第2のピークによって示された。これは、図17に強度に対して表されている。流体流は、やはり図18に青いプロット(参照番号1)および赤いプロット(参照番号2)によって示されているように、対応するポンプに互いに独立に印加された電流に応答して個別に制御される。したがって、発明者は、出力に対する制御と各チャンバからの流体の分配が正確であることを実証した。
【0043】
図18を参照すると、マイクロアンペア単位の電流が、時間軸と交差する垂直軸に沿って表されている。赤い線(参照番号2)によって表されているように、電流を一方のチャンバに印加してそこから流体を汲み出し、次いで電流を遮断し、再び印加した。やはり図示されているように、他方のチャンバに電流を与え、一方、第1のチャンバをオフにする。質量分析計は、やはり赤い線および青い線に対応する各流体を検出する。流体の出力に対する制御は、高度に予測可能であり、本システムおよび方法によって調節可能である。もちろん、当業者には他の変形態様、修正態様、および変更態様が認識されよう。
【0044】
本明細書に記載された例および態様が例示のためのみのものであり、当業者には、それを考慮した様々な修正態様または変更態様が構想され、かつそのような態様がこの出願の要旨および範囲内ならびに特許請求の範囲の範囲内に含まれることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
(図1) 本発明の態様による統合システムの概略図である。
(図2) 本発明の態様による統合HPLCシステムのより詳細な図である。
(図3A、3B、および3C) 本発明の態様による電解ポンプの概略図である。
(図4) 本発明の態様による、試料を注入する統合HPLCシステムの概略図である。
(図5) 本発明の他の態様による、試料を注入する統合HPLCシステムの概略図である。
(図6) 本発明の態様による統合HPLC-ESI-MSシステムの図である。
(図7) 本発明の他の態様による統合ESI-MSシステムの図である。
(図8) 本発明の態様による電解ポンプのマルチチャンバ構成を有するHPLCシステムの図である。
(図9〜18) 本発明の態様による実験結果の概略図である。
【図1】

【図2】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、液体クロマトグラフィ用のマイクロ流体システムであって、電気化学ポンプ・システムおよび分離カラムは、電気化学ポンプ・システムが分離カラムの内側での分離プロセス用の溶離を与えるように構成されているシステム:
基板;
複数の電解ポンプを含み、少なくとも1つの出口を有し、各電解ポンプが、
チャンバ、
電源に結合された複数の電極、
電極に接触する、チャンバの内側の流体、および
入口と出口を含む、基板上の電気化学ポンプ・システム;ならびに
入口および出口、マイクロチャネル、マイクロチャネルの内側に詰められた固体固定相材料を有し、入口が電気化学ポンプ・システムの少なくとも1つの出口に結合された、基板上の分離カラム。
【請求項2】
複数の電解ポンプが、並列に構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
複数の電解ポンプが、直列に構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
複数の電解ポンプが、直並列に構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
電気化学ポンプ・システムによって与えられる溶離が、定組成溶離である、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
電気化学ポンプ・システムによって与えられる溶離が、勾配溶離である、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
電解ポンプの1つが試料注入器であり、残りの電解ポンプが分離カラム用の溶離を与えたときに、分離カラムが試料注入器から投与された試料の1つ以上の成分を分離するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
試料を含む試料源と、
電気化学ポンプシステムと分離カラムとの間に結合され、試料源に結合された、同じ基板上の試料注入器とをさらに含み、
電気化学ポンプが分離カラム用の溶離を与えたときに、分離カラムが試料注入器から投与された試料の1つ以上の成分を分離するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
電源が、電圧源、電流源、および電圧/電流源から成る群から選択される、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
電解ポンプが、電源を用いて電極にバイアスがかけられている間チャンバ内の流体に対する圧力を維持するよう適合化されている、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
圧力が、1000psiaよりも高い、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
圧力が、1000psiaよりも低い、請求項10記載のシステム。
【請求項13】
圧力が、100psiaよりも低い、請求項10記載のシステム。
【請求項14】
チャンバが、約1マイクロリットルの流体を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項15】
チャンバが、約1マイクロメーターを超える流体を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項16】
チャンバが、約1マイクロメーターよりも少ない流体を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項17】
電気化学ポンプ・システムが、分離カラムを通して毎分約1ナノリットルから毎分約1マイクロリットルの流量を与えることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項18】
電気化学ポンプ・システムが、分離カラムを通して毎分約1ナノリットル未満の流量を与えることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項19】
電気化学ポンプ・システムが、分離カラムを通して毎分約1マイクロリットルを超える流量を与えることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項20】
チャンバおよび分離カラムが、パリレンを含む材料で作られる、請求項1記載のシステム。
【請求項21】
チャンバおよび分離カラムが、SU-8、シリコーン、シリコン、酸化ケイ素、ガラス、テフロン、PEEK、および他のポリマー材料から成る群から選択された材料で作られる、請求項1記載のシステム。
【請求項22】
電極が、少なくとも、炭素、白金、金、アルミニウム、チタン、クロム、および他の貴金属から成る群から選択された材料で作られる、請求項1記載のシステム。
【請求項23】
流体が、有機液体、無機液体、または無機液体と有機液体の組合せから成る群から選択される電解液である、請求項1記載のシステム。
【請求項24】
有機液体が、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、およびトルエンから成る群から選択される、請求項23記載のシステム。
【請求項25】
電解ポンプが、直列に構成され、各チャンバの内側に同じまたは異なる流体を含む複数のチャンバをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項26】
電気化学ポンプ・システムと分離カラムとの間に結合され、電気化学ポンプ・システムによって与えられる溶離の異なる成分が分離カラムに入る前に互いに混合されるように構成された、同じ基板上のミキサーをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項27】
電気化学ポンプ・システムおよび分離カラムが、電気化学ポンプ・システムと分離カラム間の流体連結によって、分離された基板上に配置され、電気化学ポンプ・システムが分離カラムの内側での分離プロセス用の溶離を与えるように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項28】
分離カラムの出口を通して分離カラムに結合され、1つ以上の分離された成分を順次出力するよう適合化されたノズルをさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項29】
ノズルが、エレクトロスプレー・イオン化プロセスを用いて、1つ以上の分離された成分を質量分析プロセスに移送するように結合されている、請求項28記載のシステム。
【請求項30】
分離カラムの出口を通して分離カラムに結合された検出装置をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項31】
検出装置が、分離カラムと一緒に同じ基板上に配置されている、請求項30記載のシステム。
【請求項32】
検出装置が、UV分析器、導電率計、屈折率分析器、蛍光分析器、電気化学分析器、光散乱分析器、および質量分析計から成る群から選択される、請求項30記載のシステム。
【請求項33】
電気化学ポンプ・システムおよび分離カラムが、マルチチップパッケージング、射出成形、フォトリソグラフィ、ドライ・エッチング、ウェット・エッチング、蒸着、スパッタリング、および化学蒸着から成る群から選択される少なくとも1つによって構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項34】
以下を含む、エレクトロスプレー・イオン化(ESI)および質量分析(MS)用のマイクロ流体システムであって、電気化学ポンプ・システムおよびESIノズルは、電気化学ポンプ・システムが、流体をESIノズルのマイクロチャネルを通過させESIノズルの出口から排出させる駆動力を与えるように構成され、ESIノズルの出口から放出された流体は、ESI電極と質量分析計との間に電圧源が印加されたときに質量分析計に移送されるシステム:
基板;
複数の電解ポンプを含み、少なくとも1つの出口を有し、各電解ポンプが、
チャンバ、
電源に結合された複数の電極、
電極に接触する、チャンバの内側の流体、および
入口と出口を含む、基板上に配置された電気化学ポンプ・システム;
基板上に配置され、入口と出口、入口と出口との間に結合されたマイクロチャネル、およびマイクロチャネル内のESI電極を有し、入口が、電気化学ポンプ・システムの出口に結合されたエレクトロスプレー・イオン化(ESI)ノズル;ならびに
ESIノズルの出口に結合された入口を含む質量分析計。
【請求項35】
複数の電解ポンプが、並列に構成されている、請求項34記載のシステム。
【請求項36】
複数の電解ポンプが、直列に構成されている、請求項34記載のシステム。
【請求項37】
複数の電解ポンプが、直並列に構成されている、請求項34記載のシステム。
【請求項38】
電源が、電圧源、電流源、および電圧/電流源から成る群から選択される、請求項34記載のシステム。
【請求項39】
電解ポンプが、電源を用いて電極にバイアスがかけられている間チャンバ内の流体に対する圧力を維持するよう適合化されている、請求項34記載のシステム。
【請求項40】
圧力が、1000psiaよりも低い、請求項39記載のシステム。
【請求項41】
圧力が、100psiaよりも低い、請求項39記載のシステム。
【請求項42】
チャンバが、約1マイクロリットルの流体を含む、請求項34記載のシステム。
【請求項43】
チャンバが、約1マイクロメーターを超える流体を含む、請求項34記載のシステム。
【請求項44】
チャンバは、約1マイクロメーターよりも少ない流体を含む、請求項34記載のシステム。
【請求項45】
電気化学ポンプ・システムが、分離カラムを通して毎分約1ナノリットルから毎分約1マイクロリットルの流量を与えることを特徴とする、請求項34記載のシステム。
【請求項46】
電気化学ポンプ・システムが、分離カラムを通して毎分約1ナノリットル未満の流量を与えることを特徴とする、請求項34記載のシステム。
【請求項47】
電気化学ポンプ・システムが、分離カラムを通して毎分約1マイクロリットルを超える流量を与えることを特徴とする、請求項34記載のシステム。
【請求項48】
チャンバおよびESIノズルが、パリレンを含む材料で作られる、請求項34記載のシステム。
【請求項49】
チャンバおよびESIノズルが、SU-8、シリコーン、シリコン、酸化ケイ素、ガラス、テフロン、PEEK、および他のポリマー材料から成る群から選択された材料で作られる、請求項34記載のシステム。
【請求項50】
電解ポンプの電極およびESI電極が、少なくとも、炭素、白金、金、アルミニウム、チタン、クロム、および他の貴金属から成る群から選択された材料で作られる、請求項34記載のシステム。
【請求項51】
流体が、有機液体、無機液体、または無機液体と有機液体の組合せから成る群から選択される電解液である、請求項34記載のシステム。
【請求項52】
有機液体が、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、およびトルエンから成る群から選択される、請求項51記載のシステム。
【請求項53】
電解ポンプが、直列に構成され、各チャンバの内側に同じまたは異なる流体を含む複数のチャンバをさらに含む、請求項34記載のシステム。
【請求項54】
電気化学ポンプ・システムとESIノズルとの間に結合され、電気化学ポンプ・システムから注入された異なる流体がESIノズルに入る前に互いに混合されるように構成された、同じ基板上のミキサーをさらに含む、請求項34記載のシステム。
【請求項55】
電気化学ポンプ・システムおよびESIノズルは、電気化学ポンプ・システムとESIノズル間の流体連結によって、分離された基板上に配置され、かつ電気化学ポンプ・システムおよびESIノズルは、電気化学ポンプ・システムが、流体をESIノズルを通して押し出す駆動力を与えるように構成されており、ESI電極と質量分析計との間に電圧源が印加されたときに、ESIノズルの出口から放出された流体が質量分析計に移送される、請求項34記載のシステム。
【請求項56】
電気化学ポンプ・システムおよびESIノズルが、マルチチップパッケージング、射出成形、フォトリソグラフィ、ドライ・エッチング、ウェット・エッチング、蒸着、スパッタリング、および化学蒸着から成る群から選択される少なくとも1つから構成される、請求項34記載のシステム。
【請求項57】
以下の段階を含む、電気化学作動に基づいてマイクロ流体チップ上で流体を移送する方法であって、流体の一部を移送する段階が、電気エネルギーが複数の電極に印加されたことに応答して行われる方法:
流体を基板内の入口を通してチャンバ内に移送する段階;
チャンバに結合された複数の電極を用いて電気接続を備える段階;および
電気接続を用いて複数の電極に電気エネルギーを印加しつつ流体の一部を出口を通してチャンバから送り出し、流体の一部が外部流体源に結合せずに移送する段階。
【請求項58】
流体の一部を分離プロセスに使用する段階をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
流体の一部をノズルを通して移送する段階をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項60】
流体をチャンバ内に密封する段階をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項61】
チャンバ内の流体を分離する段階をさらに含む、請求項57記載の方法。
【請求項62】
流体の一部を移送する段階が、マイクロ流体チップに電気エネルギーを印加することによってのみ行われる、請求項57記載の方法。
【請求項63】
以下の段階を含む、液体クロマトグラフィ用途においてマイクロ流体システムによって流体を制御する方法:
流体を入口から、基板の第1の部分上に形成され流体に電気力を印加するように構成された複数の電極を含むチャンバ内に移送する段階;
複数の電極間に電源を印加する段階;
流体に結合された電極上に電源が印加されることに基づいてチャンバ内で電気化学反応を生じさせる段階;
電気化学反応によって気体種を発生させてチャンバ内の圧力を高める段階と、
チャンバに分離カラムを結合する段階;
チャンバ内の圧力を用いて、液体クロマトグラフィ用分離カラム内の溶離用の駆動力を与える段階;および
複数の電極を印加した電源を調整することによって溶離を制御する段階。
【請求項64】
電源が、電流を含む、請求項63記載の方法。
【請求項65】
電源が、電圧を含む、請求項63記載の方法。
【請求項66】
溶離が、定組成溶離である、請求項63記載の方法。
【請求項67】
溶離が、勾配溶離である、請求項63記載の方法。
【請求項68】
チャンバ内の圧力が、分離プロセスにおける試料注入用の駆動力も与える、請求項63記載の方法。
【請求項69】
チャンバ内の流体のパラメータに関連する信号を取り込む段階および取り込まれた信号を用いて複数の電極間の電源のレベルを調整する段階をさらに含む、請求項63記載の方法。
【請求項70】
チャンバ内の流体が第1の流体であり、分離カラムが第2の流体を含み、第1の流体は第2の流体と異なり、第2の流体が、分離カラムを通過する際に第2の流体が1つ以上の成分に分離される、請求項63記載の方法。
【請求項71】
分離カラムから、分離カラムに結合されたノズルを通して1つ以上の成分を順次移送する段階をさらに含む、請求項63記載の方法。
【請求項72】
以下の段階を含む、液体クロマトグラフィ用途においてマイクロ流体システムによって流体を制御する方法:
複数の電極間に電源を印加して、複数の電極に結合されたチャンバの第1の流体内で電気化学反応を生じさせる段階;
第1の流体における電気化学反応によって気体種を発生させて、チャンバ内の圧力を高める段階;および
液体クロマトグラフィ用チャンバに関連する圧力を用いて分離カラムを通して第2の流体を移送させる段階。
【請求項73】
第1の流体が電気化学反応用の使用媒体であり、第2の流体が液体クロマトグラフィ用の溶媒である、請求項72記載の方法。
【請求項74】
分離カラムから、分離カラムに結合されたノズルを通して1つ以上の成分を順次移送する段階をさらに含む、請求項72記載の方法。
【請求項75】
以下の段階を含む、マルチチャンバ構成を用いて液体クロマトグラフィを行う方法:
複数の電極間に電源を印加して、各チャンバに1からN(Nは1より大きな整数)まで番号が付けられた複数のチャンバの中の第1のチャンバ内の、1からNまで番号が付けられ各流体がそれぞれのチャンバにそれぞれ関連付けされた複数の流体に含まれる第1の流体内で、電気化学反応を生じさせる段階;
第1の流体における電気化学反応によって気体種を発生させて、第1のチャンバ内の第1の圧力を高める段階;
第1のチャンバに関連する第1の圧力を用いて、1からNまで番号が付けられ、各液体クロマトグラフィ流体が、やはり1からNまで番号が付けられたそれぞれの容器に関連付けされた複数の液体クロマトグラフィ流体に含まれる第1の液体クロマトグラフィ流体を、第1の容器から分離カラムに移送して液体クロマトグラフィを行う段階;ならびに
他のあらゆるそれぞれの流体を含む他のあらゆるチャンバおよび容器について印加、発生、および移送を行う段階。
【請求項76】
第1の流体が電気化学反応用の使用媒体であり、第1の液体クロマトグラフィ流体が液体クロマトグラフィ用の流体である、請求項75記載の方法。
【請求項77】
第1のチャンバ用の印加、発生、および移送が、他のあらゆるチャンバ用の印加段階、発生段階、および移送段階と同時に行われる、請求項75記載の方法。
【請求項78】
第1のチャンバ用の印加、発生、および移送が、他のあらゆるチャンバ用の印加段階、発生段階、および移送段階と順次行われる、請求項75記載の方法。
【請求項79】
1からNまで番号が付けられた各流体が、同様な物質である、請求項75記載の方法。
【請求項80】
1からNまで番号が付けられた各液体クロマトグラフィ流体が、同様な物質である、請求項75記載の方法。
【請求項81】
以下の段階を含む、ESI-MS用のマイクロ流体システムによって流体を制御する方法:
第1の流体を入口から、基板の第1の部分上に形成され第1の流体に電気力を加えるように構成された複数の電極を含むチャンバ内に移送する段階;
複数の電極間に電源を印加する段階;
第1の流体に結合された電極上に電源が印加されることに基づいてチャンバ内で電気化学反応を生じさせる段階;
電気化学反応によって気体種を発生させて、ESIノズルに結合されたチャンバ内の圧力を高める段階;
チャンバ内の圧力を用いて、質量分析計に用いられる第2の流体のある率の注入をESIノズルを通して生じさせるよう駆動力を与える段階;および
複数の電極に結合される電源を調整することによって注入率を調節する段階。
【請求項82】
電気力が、電流を含む、請求項81記載の方法。
【請求項83】
電気力が、電圧を含む、請求項81記載の方法。
【請求項84】
チャンバ内の第1の流体のパラメータに関連する信号を取り込む段階と、取り込まれた信号を用いて複数の電極間の電源のレベルを調整する段階とをさらに含む、請求項81記載の方法。
【請求項85】
入口からチャンバ内への第1の流体が、ESIノズルを通る第2の流体とは異なり、第2の流体がESIノズルから注入され、かつESIノズルとMSとの間に電圧源が印加されたときに、第2の流体がESIプロセスによってMSに結合される、請求項81記載の方法。
【請求項86】
入口からチャンバ内への第1の流体が、ESIノズルを通る第2の流体と同じであり、第2の流体は、ESIノズルから注入され、かつESIノズルとMSとの間に電圧源が印加されたときに、第2の流体がESIプロセスによってMSに結合される、請求項81記載の方法。

【公表番号】特表2006−515059(P2006−515059A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−517831(P2004−517831)
【出願日】平成15年6月25日(2003.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/020074
【国際公開番号】WO2004/002878
【国際公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(500226339)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (4)
【氏名又は名称原語表記】CALIFORNIA INSTITUTE OF TECHNOLOGY