説明

試料取違え防止用ラベル核酸

【課題】 臨床検体や実験試料の手動分析操作を行う際に起きる可能性のある取違えを防止するための方法及びそのツールを提供する。
【解決手段】 本発明は、少なくとも1種類以上の核酸を含むラベル核酸を提供するものであり、このラベル核酸を臨床検体や実験試料に混合し、分析の過程で混合ラベル核酸を検出することにより、臨床検体や実験試料の取り違えが生じていないかどうかを確認することを可能とする。また、このラベル核酸のセット、ラベル核酸を用いた標識・識別方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の配列を有する核酸を臨床検体や実験試料に混合し、この配列情報を検出することにより臨床検体や実験試料の取違えが発生していないか検出するためのラベル核酸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の偽造防止を目的としてDNAを繊維に固定化する技術が開示されている(特許文献1参照)。
また、物品の真偽を判別するための標識方法で、核酸、抗体または抗原から選択した非粒子巨大分子の第一化合物(シグナル化合物)、例えば、核酸を品物又は物質の製造中にその中へ入れ、品物又は物質が本物である場合にシグナル化合物に結合することができる標識された核酸プローブをシグナル化合物が占め得る領域に接触させ、このプローブがこの領域でシグナル化合物とハイブリダイズするかどうかを判定する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0003】
しかし、これらの検出システムの目的は物品の真偽判定であり、製造中に或いは製造後に物品のラベル化工程を行うのが前提である。また、ある規格品或いはロットの全製品に統一のラベル種類を付加して、統一のセンサーによりこの情報の解析が行われ、個別化が必要である臨床検体や実験試料の取違え防止に適していない。
【0004】
臨床検査の取違え防止策として、複数の人から採取した検体のそれぞれの成分の定性・定量分析を実行する自動分析装置では、サンプル(検体)を容器に入れ、そのサンプル容器を自動分析装置にセットすることにより分析を実行するようになっているのが一般的である。このとき、あるサンプル容器にどの人(或いはどのような種類(血清,尿等)のサンプルが入っているかを識別するため、サンプル容器毎にバーコード等の情報記録媒体を用いたIDを付与することが普及している。この方法によれば、サンプルの取り違えにより、サンプルの特定成分に異常がある人が異常なしと判断されるようなミスの発生が減少する。また、オペレータがサンプル容器毎に、いちいちサンプルの情報を自動分析装置に登録するという手間も省くことができる。自動分析装置において、容器に貼着されたバーコードを自動的に読み取る技術については、例えば特許文献3に記載されている。
【0005】
しかし、上記検体取違え防止システムは定性・定量分析が完全に自動化されている検査に限り有効であるが、検体検査操作に手動工程が混合している場合、オペレータがバーコードを読み取る方法では検体の取違えが生じる可能性が発生する。
【0006】
【特許文献1】特許公開2005−226187
【特許文献2】WO8706383
【特許文献3】特公平6−64070号公報
【非特許文献1】Hall,JG et al. PNAS 2000年6月18日 97号 8272-8277項
【非特許文献2】Wakai,J et al. Nucleic Acids Res. 2004 32(18)号 E141
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、臨床検体や実験試料の分析操作中、手動工程が含まれている場合にサンプル(臨床検体又は実験試料)の取違えを防止するための方法及びそのツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、臨床検体や実験試料にラベル核酸を混合し、分析の過程に混合ラベル核酸を検出してサンプルの取違えが生じていないか確認することにより、サンプルの取り違えを防止できることを見出し、本発明のラベル核酸を発明するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(22)のラベル核酸並びに該ラベル核酸を用いた標識及び識別方法を提供するものである。
(1)1種類以上の核酸を含んでなり、臨床検体又は実験試料の取違え防止に用いるラベル核酸。
(2)前記核酸が、マイクロカプセルに封入されていることを特徴とする、上記(1)に記載のラベル核酸。
(3)前記核酸が10〜150merであることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載のラベル核酸。
(4)前記核酸が、蛍光標識、ラジオアイソトープ標識、電気化学標識、アフィニティー標識及びエピトープ標識からなる群から選択される1以上の標識により標識されていることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のラベル核酸。
(5)2以上の核酸を含むことを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のラベル核酸。
(6)前記核酸がDNA、RNA又はPNAのいずれかである、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のラベル核酸。
(7)前記核酸が、保護基修飾されていることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のラベル核酸。
(8)さらに核酸分解酵素の阻害剤が混合されることを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のラベル核酸。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載のラベル核酸のセットであって、それぞれのラベル核酸に含まれる核酸の配列が互いに異なることを特徴とする、ラベル核酸セット。
(10)上記(9)に記載のラベル核酸セットと、各ラベル核酸をインベーダー法により識別するためのインベーダーオリゴ、プローブ、フレットカセット及びクリベース酵素を含むキット。
【0010】
(11)臨床検体又は実験試料の取違え防止のための標識方法であって、臨床検体又は実験試料に、上記(1)〜(8)のいずれかに記載のラベル核酸を混合することを特徴とする標識方法。
(12)臨床検体又は実験材料の取違え防止のための識別方法であって、臨床検体又は実験材料に、上記(1)〜(8)のいずれかに記載のラベル核酸を混合する工程と、該核酸が混合した臨床検体又は実験材料から該核酸を検出する工程とを含むことを特徴とする識別方法。
(13)臨床検体又は実験試料の分析方法と同じ方法により、ラベル核酸を検出することを特徴とする、上記(12)に記載の識別方法。
(14)前記核酸を検出する工程において、インベーダー法を用いることを特徴とする、上記(12)に記載の識別方法
(15)前記核酸を検出する工程において、蛍光検出、分光光度検出、放射線検出、電気化学的検出及び免疫学的検出からなる群から選択される1以上の検出方法を用いることを特徴とする上記(12)に記載の識別方法。
(16)前記核酸を検出する工程において、前記核酸に相補的な配列を有する第2核酸を用いて、前記核酸と第2核酸のハイブリダイゼーションにより生成される2本鎖分子を選択的に検出する方法を用いることを特徴とする、上記(12)に記載の識別方法。
(17)前記ハイブリダイゼーションにより生成される2本鎖分子の検出が、蛍光検出、発色検出、発光検出、分光光度検出及び電気化学的検出からなる群から選択される1以上の検出方法を用いることを特徴とする、上記(16)に記載の識別方法。
(18)前記2本鎖分子が、蛍光標識、ラジオアイソトープ標識、電気化学標識、アフィニティー標識及びエピトープ標識からなる群から選択される1以上の標識により標識されていることを特徴とする上記(17)に記載の識別方法。
(19)臨床検体又は実験材料の取違え防止のための識別方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする識別方法:
a)請求項1〜8のいずれかに記載のラベル核酸を臨床検体又は実験試料に混合する;
b)前記ラベル核酸の増幅反応を行う;
c)前記増幅反応の生成物を検出する;
d)前記検出の結果を解析し、検体や試料に取違えが起きていないか確認する。
(20)前記増幅反応が、PCR、LAMP、ICAN法からなる群から選択される1の増幅方法であることを特徴とする、上記(19)に記載の識別方法。
(21)前記増幅反応の生成物の検出が、蛍光検出、分光光度検出、放射線検出、電気泳動、電気化学的検出及び免疫学的検出からなる群から選択される1以上の検出方法により行われることを特徴とする、上記(19)又は(20)に記載の識別方法。
(22)前記増幅反応の生成物の検出において、インベーダー法を用いることを特徴とする、上記(19)〜(21)のいずれかに記載の識別方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、臨床現場やバイオ実験室で起きる可能性のある検体や試料の取違えミスを減少させることが可能となる。また、ラベル核酸の検出方法として、臨床検体や実験試料を分析する方法と同じ方法を用いれば、取り違えミスを減少させることができるだけでなく、ラベル核酸の検出をポジティブコントロールとして用いることができ、検体や試料の分析が正常に行われているかどうかを確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のラベル核酸は、1種類以上の核酸を含むものであり、臨床検体や実験試料に混合し、分析の過程で該ラベル核酸を公知の方法により検出して、サンプルの取違えが生じていないか確認することを可能とするものである。
核酸としては、DNA、RNA又はPNA(ペプチド核酸)を用いることができ、また、1本鎖の核酸を用いることも、2本鎖の核酸を用いることもできる。
本発明のラベル核酸に含まれる核酸は、通常は1種類の核酸であるが、互いに配列の異なる2種類以上の核酸を含ませることもでき、この2種以上の核酸を含むラベル核酸を、1サンプルに混合することにより使用することもできる。ラベル核酸に2種類の核酸を含ませた場合には、混合された2種類の核酸のそれぞれを検出することにより、信頼性の程度を、1種類の核酸を用いた時よりも向上させることができる。
核酸の長さとしては、核酸の安定性及び検出容易性の観点から10〜150merとするのが好ましく、より好ましくは、18〜130merである。
【0013】
本発明のラベル核酸に含まれる核酸は、化学的又は酵素的に合成し、あるいは、天然物から抽出したDNAを分解するなどして得ることができる。
化学的に合成する方法としては、固相合成法および液相合成法が挙げられる。固相合成法とは、樹脂やガラス製のビーズ、チップ等の支持体上で、ホスホアミダイト法、ホスホトリエステル法等によりDNAを化学合成する方法である。例えば、ホスホアミダイト法によりDNAを合成する場合には、固相である担体粒子の表面に、アミノ基等の活性基を介して、オリゴヌクレオチドの配列における一番目の塩基に対応するホスホアミダイトを結合させ、ホスホアミダイトのトリチル基を脱離(脱トリチル)させてヒドロキシル基を露出し、次に結合させる塩基に対応するホスホアミダイトを、露出したヒドロキシル基との間で縮合反応させる、というホスホアミダイトの縮合反応を繰り返すことによりDNAを合成する方法である。液相合成法では、縮合反応を行うごとに、反応生成物を単離生成し、次のヌクレオチドを縮合する。
酵素的に合成する方法としては、耐熱性のDNAポリメラーゼ、1対のプライマー及び鋳型DNAを含む反応溶液の温度を昇降させることにより、鋳型DNAの所望の部分を増幅させるPCR法が挙げられる。また、RNAポリメラーゼによりDNAからRNAを合成し、逆に、逆転写酵素によりRNAからDNAを合成することもできる。
天然物から抽出したDNAを分解することにより、本発明で用いる核酸を得る方法としては、動物細胞、植物細胞、ミトコンドリア、葉緑体、細菌、ウイルス等を使用し、除蛋白処理をした後、DNA又はRNAを精製して、制限酵素又はリボザイム、或いは、ジメチル硫酸などの化学的試薬により分解する方法が挙げられる。
本発明のラベル核酸に、PNA(ペプチド核酸)を用いる場合には、ペプチド核酸モノマーを用いて、通常のペプチド合成法であるFmoc法またはtBoc法によりペプチド核酸を合成することができる。
【0014】
本発明のラベル核酸は、核酸をマイクロカプセルに封入したものであってもよい。核酸をマイクロカプセルに封入することにより、ラベル核酸を長期に保存することが可能となる。例えば、核酸を適当な溶媒中に分散し、その表面にモノマー及びプレポリマーを樹脂化してカプセル壁を形成したりゲル化したりすることで、核酸をマイクロカプセルに封入することができる。カプセル壁及びゲルとしては、ゼラチン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ尿素などが挙げられる。核酸をマイクロカプセルに封入する方法としては、例えば、水中乾燥法、界面重合法、コアセルベーション法、融解分散冷却法、液中硬化被膜法等が挙げられる。
水中乾燥法は、高分子が水中で固化して壁を形成する現象を利用したもので、核酸を溶解した水溶液を高分子の溶解した有機溶媒中に分散させW/O型の1次エマルションを調製し、これを攪拌下の温水中に注ぎ、(W/O)/Wの2次エマルションを調製し、最後に安定な分散状態で減圧下で溶媒溜去することにより核酸をマイクロカプセルに封入することができる。
マイクロカプセルに封入されたラベル核酸を検出する際には、加熱又は加圧するなどして、マイクロカプセルを破壊することができる。
【0015】
本発明のラベル核酸に含まれる核酸は、核酸を標識したものであってもよい。核酸を標識するものとしては、蛍光標識、ラジオアイソトープ標識、電気化学的標識、アフィニティー標識、エピトープ標識が挙げられる。
本発明において、蛍光標識とは、蛍光を発する化学構造を持つ物質による標識であり、例えば、フルオレセイン、ローダミン、レゾルフィン、クマリン、Cy3−dUTP及びCy5−dUTP(アマシャム ファルマシア バイオテク社)等による標識が挙げられる。本発明において、ラジオアイソトープ標識とは、自ら放射線を発する放射性同位体による標識で、例えば、炭素又はリンの放射性同位体を標識として用いることができる。本発明において、電気化学標識とは、電気化学的に活性な物質による標識で、例えば、フェロセン、フェリシアナイド、金属ビピリジン錯体等による標識が挙げられる。本発明において、アフィニティー標識とは、特定の他の化学物質との親和性を有する化学物質による標識をいい、例えば、ビオチン、アビジン、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)などによる標識が挙げられる。エピトープ標識とは、抗体に認識される抗原となる物質による標識をいい、例えば、抗原となる化合物や蛋白質により標識することができる。
これらの標識は、サンプル(臨床検体又は実験試料)に混合した核酸を検出するために使用するものである。すなわち、これらの標識を用いて、蛍光検出、放射線検出、電気化学的検出、免疫学的検出等を行うことができる。アフィニティー標識で核酸を標識した場合には、このアフィニティー標識を介してさらに他の標識、例えば、酵素標識などを結合させることができ、酵素標識等により核酸を検出することもできる。酵素標識としては、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリ性ホスファターゼ(ALPまたはAP)、ベータ−ガラクトシダーゼ(GAL)、ホタルルシフェラーゼおよびグルコースオキシダーゼ(GO)が挙げられる。
【0016】
本発明のラベル核酸に含まれる核酸は、保護基により修飾されたものであってもよい。保護基としては、核酸分子に結合して天然の核酸とは異なる化学構造とするものであればよいが、例えば、トリチル骨格、アシル骨格、カルバメート骨格、アミジン骨格を有する保護基が挙げられる。これにより、ラベル核酸に含まれる核酸を保護し、核酸分解酵素により分解されることを防ぐことが可能となる。
【0017】
本発明のラベル核酸は、上記以外に、核酸を安定的に保存するためのバッファー、核酸分解酵素阻害剤、紫外線吸収剤、紫外線錯乱剤、抗酸化剤、防腐剤等の核酸以外の物質を含ませ、又は、混合させることができる。
ラベル核酸が検体又は試料中に添加された際には、検体又は試料中に含まれる核酸分解酵素により分解されてしまう場合があるため、核酸分解酵素阻害剤を混合させることが特に好ましい。核酸分解酵素の阻害剤としては、ヌクレアーゼ全般に対する阻害剤であるEDTA、RNase及びDNaseの阻害剤であるテトラクロロ金酸、エキソヌクレアーゼIIIの阻害剤であるPCMB(p−クロロメルクリ安息香酸)等が挙げられる。
また、酸性基を有するカチオン性界面活性剤と反応させて、核酸・カチオン性界面活性剤のポリイオンコンプレックス化合物とするなど、核酸が他の物質と相互作用した形態にしてもよい。
【0018】
本発明は、また、複数のサンプルに混合して、それぞれのサンプルを識別するために使用する、ラベル核酸のセットを提供する。本発明のラベル核酸のセットにおける各ラベル核酸に含まれる核酸は、識別可能であるように互いに配列が異なっている必要があり、好ましくは、それぞれの核酸が、他のすべてのラベル核酸に含まれる核酸と、相同性が90%以下となるラベル核酸のセットであることが好ましい。ここで、識別可能であるように互いに配列が異なっているとは、核酸の長さだけが異なる場合も包含するものである。
本発明のラベル核酸セット、並びに、ラベル核酸セットと該ラベル核酸を検出するための試薬類を含むキットは、複数のサンプルを識別するための利便性の高いツールを提供するものである。
【0019】
本発明のラベル核酸は、臨床検体又は実験試料に混合することにより、分析工程中に生じる恐れのある取り違えを防止するためにサンプルを標識しておくことができ、また、標識されたサンプルから本発明のラベル核酸を検出することにより、サンプルを識別することができる。
図1に、本発明のラベル核酸による臨床検体又は実験試料の標識及び識別の一例を示す。はじめに、臨床検体又は実験試料(01)を採取する。次に、臨床検体又は実験試料の分析操作を開始する前又は分析操作中にラベル核酸を混合する。分析操作の中でも取り違えの生じやすい手動操作の前にラベル核酸の混合を行うことが好ましい。そして、混合された各種のラベル核酸と検体又は試料の関連性が後程明確に出来る様に記録しておく。
一つの臨床検体或いは実験試料に特定の一種類或いは特定の複数種類の核酸ラベル02を混合し、そのラベル核酸を検出することによりラベル核酸の情報を得て、検体・試料を識別することが可能である。ラベル核酸の検出は、分析を行う前、分析と同時、又は分析後に行うことができる。
【0020】
本発明のラベル核酸を検出する方法としては、蛍光検出、分光光度検出、放射線検出、電気化学的検出、免疫学的検出、ハイブリダイゼーションによる検出などが挙げられる。これらの検出法を用いるために、あらかじめラベル核酸を標識しておいてもよい。また、混合したラベル核酸が検出に十分な量でない場合には、ラベル核酸に含まれる核酸を増幅して、増幅した核酸を検出する方法であってもよい。核酸を増幅する方法としては、PCR、LAMP、ICAN法などが挙げられる。
LAMP法とは、鎖置換反応を利用して等温で核酸を増幅させる方法である。4種類のプライマーの設計によって、最初の増幅産物のプライマー結合部位にループ構造ができるようにする。ループ部分は一本鎖構造なので、次のプライマーがアニールすることができ、伸張反応が進んでいく。最終的に、もとの標的配列の整数倍の長さの増幅産物が蓄積し、反応液の白濁を見ることにより、テンプレートが増えたかどうかを確認できる(Natomi et al., 2000, Nucleic Acids Res, 28(12), E63)。
ICAN法とは、DNAとRNAのキメラプライマーを用いて等温で遺伝子を増幅させる方法である。キメラプライマーが鋳型と結合すると、DNAポリメラーゼにより相補鎖が合成され、その後、RNaseHがキメラプライマーのRNA部分を切断し、切断部から鎖置換反応を伴った伸張反応を行う。このサイクルを繰り返し行うことにより、遺伝子を増幅させるものことができる(特許第3433929号)。
【0021】
本発明のラベル核酸を検出するにあたっては、検出シグナルを増幅するような方法により、検出を行ってもよい。例えば、インベーダー法を用いると、等温で反応させるだけで反応が連続的に進んで蛍光シグナルが検出されるので、PCRのような増幅反応を用いずに検出することも可能である。また、検出される核酸に酵素標識を行い、当該酵素による反応を連続的に行って、シグナルを増幅することもできる。
インベーダー法を用いたラベル核酸の検出では(〔非特許文献1〕参照)、非蛍光標識のインベーダーオリゴ及びプローブ、並びに、蛍光標識のフレットカセットが用いられる。
インベーダーオリゴは、ラベル核酸と相補的な塩基配列を有するヌクレオチドからなる。一方、プローブは、ラベル核酸とは無関係な塩基配列であるフラップと、ラベル核酸と相補的な配列を有するヌクレオチドからなる。ここで、フラップは、プローブの5´側に配置されている。そして、ラベル核酸、インベーダーオリゴ及びプローブをハイブリダイズさせたときに、インベーダーオリゴの3´末端で、3重鎖が形成されるように、インベーダーオリゴ及びプローブを設計しておく。
ラベル核酸、インベーダーオリゴ及びプローブをハイブリダイズさせて3重鎖を形成させると、クリベース酵素がこの3重鎖を認識し、プローブを3重鎖の3´側で切断する。その結果、フラップとその次の塩基からなるフラップ遊離体が生成される。
フレットカセットは、5´末端側が自身とハイブリダイゼーションでしてループを形成できる配列を有し、かつ、そのハイブリダイゼーションしている部分から3´末端側にフラップ遊離体に相補的なヌクレオチドを有する。さらにフレットカセットには、蛍光色素とクエンチャー(発光抑制体)が隣接して結合しており、蛍光色素の蛍光はクエンチャーにより抑制されている。
このようなフレットカセットに対して、フラップ遊離体がハイブリダイゼーションすると、フラップ遊離体の3´末端で、再び3重鎖が形成される。その結果、上述のクリベース酵素が3重鎖を再び認識し、フレットカセットの5´末端が切断される。その結果、蛍光色素とクエンチャーが遊離し、蛍光が生じる。この一連のインベーダー反応に生じた蛍光により、ラベル核酸が検出されることになる。
【0022】
本発明のラベル核酸の検出方法の例を、図2を用いさらに詳細に説明する。
ケース1は、臨床検体又は実験試料(図2、01)に混合するラベル核酸が非標識の核酸であり(図2、02)、増幅反応しないで検出するケースである。この場合、このラベル核酸は、例えば、質量分析法等でその存在を検出することが可能である。また、相補配列を有する第2核酸分子(図2、03)と混合して、完全或いは部分的に2本鎖になった状態の分子を、例えば、電気泳動法を用いることにより検出することが可能である。電気泳動法(図2、04)では、2本鎖核酸05と1本鎖核酸分子06の移動距離が異なるため、ラベル核酸02とそれと相補的配列を有する分子03のハイブリダイゼーション後の2本鎖分子のバンド05は、相補的配列とハイブリダイゼーションできない他のラベル核酸の一本鎖バンド06と識別することができる。
【0023】
上記ケース1では、インベーダー法によりラベル核酸を検出することもできる。具体的にクリベース酵素を用いたインベーダー法では、ラベル核酸、インベーダーオリゴ及びプローブをハイブリダイゼーションさせ、上流のインベーダープローブの3‘末端は下流シグナルプローブがラベル核酸と結合している領域の5’末端に侵入した形状が発生する。DNAエンドヌクレアーゼであるクリベース酵素はこの3本鎖構造を認識し、下流シグナルプローブにおいて3重鎖構造となっている部分を切断する。この切断により数塩基から十数塩基から成るプローブの5‘末端は解離し(フラップ遊離体)、更にこれが5’末端がループ構造を形成するフレットカセットの3‘末端と結合して、ループ内に侵入する。クリベース酵素がこの構造を認識し、フレットカセットの5’末端を切断する。切断によりFRET(Fluorescence resonance energy transfer)により蛍光発生が阻害されていた蛍光修飾基の検出が可能となる。
FRETとは蛍光同士が近い距離にある場合、蛍光色素(ドナー)の励起された電子が移動して、近接する蛍光色素(アクセプター)の励起状態が変化することがあり、結果としてドナー蛍光色素の蛍光が弱くなる現象である。アクセプター蛍光色素として、非蛍光のクエンチャーを用いることによって、蛍光強度を一時的に抑えることもできる。
【0024】
図2中のケース2は、臨床検体或いは実験試料(図2、01)に混合するラベル核酸が標識の核酸であり(図2、07)、増幅反応しないで検出するケースである。この場合、このラベル核酸単体は例えば特定の蛍光色素、又は複数の蛍光色素で特定の組み合わせで標識されていて、例えば、これらの標識された核酸を電気泳動法(図2、08)により濃縮し、色素を検出することが可能であるスキャナー等を利用することにより、目的のラベル核酸(図2、09)と他の標識ラベル核酸(図2、10)の区別が可能である。
上記ケース2では、ラベル核酸の増幅反応は起きないが、標識シグナルの増幅を、例えば標識シグナルと結合する抗体を用いて、この抗体を例えHorseradish peroxidase酵素やAlkalinephosphataseで標識し、この酵素の活性により最終的なシグナルが増幅されることも可能である。
【0025】
図2中のケース3は、臨床検体或いは実験試料(図2、01)に混合するラベル核酸は、低濃度の非標識核酸であり(図2、11)、増幅反応を行うことにより検出が可能となるケースである。ラベル核酸を増幅するために、特定のプライマーを用いて、反応としてPCR法、LAMP法、ICAN法を用いることが可能である。
増幅生成物(図2、12)を検出するために電気泳動法、質量分析法、或いは、蛍光色素又は電気化学活性を有するインタカレータを用いた検出方法を用いることができる。例えば、電気泳動法(図2、13)では、初期添加ラベルDNA量は検出感度以下であるが、核酸を増幅することによりバンド(図2、14)として検出することが可能である。
上記ケース3では、インベーダー法によりラベル核酸を検出することもできる。具体的にクリベース酵素を用いたインベーダー法では、ラベル核酸、インベーダーオリゴ及びプローブをハイブリダイゼーションさせ、上流のインベーダーオリゴの3‘末端は下流シグナルプローブがラベル核酸と結合している領域の5’末端に侵入した形状が発生する。DNAエンドヌクレアーゼであるクリベース酵素はこの3本鎖構造を認識し、下流シグナルプローブにおいて3重鎖構造となっている部分を切断する。この切断により数塩基から十数塩基から成るプローブの5‘末端は解離し(フラップ遊離体)、更にこれが5’末端がループ構造を形成するフレットカセットの3‘末端と結合して、ループ内に侵入する。クリベース酵素がこの構造を認識し、フレットカセットの5’末端を切断する。切断によりFRET(Fluorescence resonance energy transfer)により蛍光発生が阻害されていた蛍光修飾基の検出が可能となる。
【0026】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの形態に限定されることはない。
下記実施例1では、非標識ラベル核酸をゲノムDNAに混合し、インベーダー反応により生じた副産物の蛍光強度を測定することによりこのラベル核酸の検出を行った。ラベル核酸の増幅反応は起きていない。結果的に、特定のラベル核酸が混合されていた試料の特定が可能となった。
下記実施例2では、ビオチン標識ラベル核酸をゲノムDNAに混合し、この混合物を金電極に固定化してあるプローブ核酸とハイブリダイゼーションを行った。更に、アルカリホスファターゼを修飾してあるストレプトアビジンをビオチンと結合し、アルカリホスファターゼ活性により生成した副産物を電気化学反応により検出した。従って、特定のラベル核酸が混合されていた試料の特定が可能となった。
下記実施例3では、非標識ラベル核酸をゲノムDNAに混合し、ラベル核酸のPCR増幅とインベーダー反応により生じた副産物の蛍光強度を測定することによりこのラベル核酸の検出を行った。最終的に、特定の核酸ラベルが混合されていた試料の特定が可能であった。
【実施例1】
【0027】
実施例1では、非標識のラベル核酸(DNA)を増幅反応無しで検出した。精製済み市販ゲノムDNA(米国Coriell DNA bank) Cat. No. NA17247とNA17252とNA17266にそれぞれTAS−1―TaとTAS−2―TaとBCR−ABLラベル核酸(DNA)を添加し、インベーダー反応によりこれらの識別は可能であるか検証した。インベーダー反応を検出法として選んだ理由は一塩基多型の識別能が高いためである。ゲノムDNA5ngあたり、100fmol又は10fmolの比率でラベル核酸(DNA)を混合し、次の反応組成及び条件でインベーダー反応を行った:

反応組成: ラベル核酸(DNA) (100,10fmol/ul) 1ul
ゲノムDNA (5ng/ul) 1ul
10xインベーダバッファー 1ul
10xインベーダオリゴミックス 1或いは2 1ul
40xインベーダ酵素 0.25ul
蒸留水 5.75ul

10xインベーダバッファーや10xインベーダオリゴミックス1と2、40xインベーダー酵素等は米国ウィスコンシン州マディソン市にあるThird Wave Technologies,Inc.(以下TWT社)が提供した試薬である。10xインベーダオリゴミックス1と2はそれぞれ101及び102配列を検出するために最適されたオリゴヌクレオチドの組み合わせを含む試薬である。
各ラベル核酸(DNA)の塩基配列は次のとおりである。
TAS−1―Ta 101:
TGATGCTGAGACACAGCAGCACACAATCACTGTTGCTCAGTGCCTGCCTCTTCACTACATCCCAAAAATTCACCAAGAAAACGAAGGCATTGGTC
TAS−2―Ta:
TCGCGCCACAGAATCAGTAGGGGCACAGAGATGAAGGCAGCACAGGATGATATCACAAAGAAGCAGAAAAAGGAGACAAGAGACTTGAGGGCTT
BCR−ABL:
CCCTTCAGCGGCCAGCCTGAGGCTCAAAGTCAGATGCTACTGGCCGCTGAAGGGCTTTTGAACTCTGCTTAAATCCAGTGGCTGAGTGGACGATGACATTCAGAAACCCATA
反応条件: 95℃10分熱変性を行った後、63℃2分のインベーダー反応を行い、10℃に冷却した。生じた蛍光レスポンスをTECAN社Infinite Reader機で蛍光強度を測定した。
【0028】
その結果を図3に示してある。オリゴミックス1を使用した場合(上グラフ)、正常にTAS−1−Taが混合されていたNA17247DNAサンプルのみにインベーダー反応が起き、蛍光強度は他サンプルとの識別は可能であった。また、オリゴミックス2を使用した場合(下グラフ)、正常にTAS−2−Taが混合されていたNT17252DNAサンプルのみにインベーダー反応が起き、蛍光強度は他サンプルとの識別は可能であった。オリゴミックス1と2と反応しないBCR−ABLラベル核酸が混合してあったNT17266DNAサンプルは両オリゴミックスでも蛍光値の上昇は見られなかった。
【実施例2】
【0029】
実施例2では、標識されたラベル核酸(DNA)を増幅反応無しで検出した。市販されている精製ゲノム(Roche社製、Human Genomic DNA, Cat. No. 11-691-001)5ngあたりに、ラベル核酸(DNA)ST−W1499−Bioが300fmol又は100fmolとなる様に混合して、電気化学法で検出した。コントロールとして非ビオチン化ラベル核酸BCR−ABLを用いて、ラベル核酸の全量が一定の300fmol/5ngゲノムDNAになる様に調整した。
Wakaiら(2004)が報告した方法を用いてプローブDNA(HS−27W−1499)を金電極に固定化し、5mMフェリシアン化カリウムを電解液として用いて、Ag/AgCl参照極に対してディファレンシャルパルスボルタンメトリ(DPV)法で初期電気化学活性値(I0)を測定した。金電極を蒸留水で洗浄して2xSSC(0.3M NaCl, 0.03M Sodium Citrate)塩存在下でゲノムDNAと混合したラベルDNAを1μl/電極を滴下し、15分室温で静置してハイブリダイゼーションを行った。2xSSCで2回洗浄し、水分を窒素ガスでとばした後、2xSSCに溶解してあるストレプトアビジン修飾アルカリホスファターゼ(Roche社製、Cat.No.1-681-451)20ng/μlを1μl/電極滴下し、30分室温で静置し、ビオチン―ストレプトアビジンの結合反応を行った。2xSSCで1回洗浄し、アルカリホスファターゼの基質であるNBT/BCIP(Roche社製、Cat.No.11-093-266-910)を50μl滴下して、更に30分室温で静置してリン酸化反応を行った。リン酸化された基質は沈殿し、金電極表面に蓄積した。再度5mMフェリシアン化カリウムを電解質とした電気化学反応を行い、得られる電流値(I1)をI0電流値と次の計算式により変動率(ΔI)を解析し、電極表面に存在するビオチンを測定した:
計算式01: ΔI = (I1−I0) x 100 (%)
I0
標識されたラベル核酸(ST−W1499−Bio)とプローブDNA(HS−27W−1499)の塩基配列は次のとおりである。
HS−27W−1499:
(HS)-GCAGCAGCAGCGGGAGCTATATTGTTTATCTTGAAACC
ST−W1499−Bio:
TAGCTTCCTCCCTGCAGCAGGGAGACCTGCAGGACACTAAAGAAAACCAGGGAGGAAGCTAGGTTTCAAGATAAACAATATAGCTCCCATCACACAGCTG-Bio
電流値の変動率(ΔI)が負に大きいほど金表面の沈殿物が多い状態を表す。従って、金表面のプローブDNAに結合したビオチン化ラベルDNAが多いほど電流値の減少率が大きく、負のΔIとなる。
実施例2の結果を図4に示してある。ゲノムDNAに混合してあるラベルDNA中、ビオチン標識ラベルDNAの濃度が高いほどΔIがマイナスになり、相関性が得られた。従って、標識ラベルDNAの検出は可能である。
【実施例3】
【0030】
実施例3では臨床検体或いは実験サンプルに低濃度のラベル核酸を混合して、これの増幅反応を行うことにより検出が可能となるケース3の一例である。精製済み市販ゲノムDNA(米国Coriell DNA bank) Cat. No. NA17247とNA17252とNA17266にそれぞれTAS−1―TaとTAS−2―TaとBCR−ABLラベルDNAを添加し、PCRとインベーダ反応によりこれらの識別は可能であるか検証した。PCRとインベーダー反応を検出法として選んだ理由は低濃度核酸を鋳型として利用して一塩基多型の識別能が高いためである。ラベルDNAは100amol/5ngゲノムDNAの比率で混合し、次の反応組成及び条件でインベーダー反応を行った:

反応組成: ラベルDNA (100amol/ul) 1ul
ゲノムDNA (5ng/ul) 1ul
10xインベーダバッファー 1ul
10xインベーダオリゴミックス 1或いは2 1ul
40x酵素ミックス 0.25ul
蒸留水 5.75ul

10xインベーダバッファーや10xインベーダオリゴミックス1と2、40x酵素ミックス 等は米国ウィスコンシン州マディソン市にあるThird Wave Technologies,Inc.(以下TWT社)が提供した試薬である。10xインベーダオリゴミックス1と2はそれぞれ101及び102配列を検出するために最適されたオリゴヌクレオチドの組み合わせを含む試薬である。
【0031】
反応条件: 95℃10分熱変性を行った後、95℃15秒→72℃45秒の増幅サイクルを35回繰り返した。95℃10分熱処理により酵素ミックスに含まれている増幅酵素DNAポリメラーゼを失活化して、63℃2分のインベーダ反応を行い、10℃に冷却した。生じた蛍光レスポンスをTECAN社Infinite Reader機で蛍光強度を測定した。
【0032】
その結果を図5に示してある。オリゴミックス1を使用した場合(上グラフ)、正常にTAS1−Taが混合されていたNA17247DNAサンプルのみに増幅とインベーダ反応が起き、蛍光強度は他サンプルとの識別は可能であった。また、オリゴミックス2を使用した場合(下グラフ)、正常にTAS2−Taが混合されていたNA17252DNAサンプルのみに増幅とインベーダ反応が起き、蛍光強度は他サンプルとの識別は可能であった。オリゴミックス1と2と反応しないBCR−ABLラベル核酸が混合してあったNT17266DNAサンプルでは蛍光値の上昇は見られなかった。
本実施例に使用したラベル核酸の量は実施例1に比べては100〜1000分の一であった。
また、実施例3で得られたPCR産物の電気泳動解析を行い、その結果を図6に示してある。ラベル核酸が鋳型となり増幅産物に相当するバンドはNA17247ゲノムDNAではTAS−1、NA17252ゲノムDNAではTAS−2増幅用反応組成を使用した場合のみ検出された。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、臨床検体或いは実験試料の取違えを防止するためのツールとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】核酸ラベルを使用したシステムのイメージ図
【図2】臨床検体或いは実験試料の取違え防止に用いたラベル核酸の検出法を示す模式図
【図3】実施例1の結果を示すインベーダー反応の蛍光強度測定の図
【図4】実施例2の結果を示す電気化学反応の電流値変動測定の図
【図5】実施例3の結果を示す増幅とインベーダ反応の蛍光強度測定の図
【図6】実施例3の結果を示す電気泳動写真の図
【符号の説明】
【0035】
01 : 臨床検体或いは実験試料
02 : ラベル核酸
03 : ラベル核酸検出用相補配列所有オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション産物
04 : ハイブリダイゼーションサンプルを検出するための電気泳動ゲル
05 : ラベル核酸とその検出用相補配列所有オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション産物検出物
06 : 検出用相補配列所有オリゴヌクレオチドが存在しない場合の分析後ラベル核酸のみ
07 : 標識ラベル核酸
08 : 標識ラベル核酸を検出するための電気泳動ゲル
09 : 標的標識ラベル核酸
10 : 非標的標識ラベル核酸
11 : 低濃度のラベル核酸
12 : 増幅反応後のラベル核酸
13 : 増幅反応産物を検出するための電気泳動ゲル
14 : 増幅産物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類以上の核酸を含んでなり、臨床検体又は実験試料の取違え防止に用いるラベル核酸。
【請求項2】
前記核酸が、マイクロカプセルに封入されていることを特徴とする、請求項1に記載のラベル核酸。
【請求項3】
前記核酸が10〜150merであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のラベル核酸。
【請求項4】
前記核酸が、蛍光標識、ラジオアイソトープ標識、電気化学標識、アフィニティー標識及びエピトープ標識からなる群から選択される1以上の標識により標識されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のラベル核酸。
【請求項5】
2以上の核酸を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のラベル核酸。
【請求項6】
前記核酸がDNA、RNA又はPNAのいずれかである、請求項1〜5のいずれかに記載のラベル核酸。
【請求項7】
前記核酸が、保護基修飾されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のラベル核酸。
【請求項8】
さらに核酸分解酵素の阻害剤が混合されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のラベル核酸。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のラベル核酸のセットであって、それぞれのラベル核酸に含まれる核酸の配列が互いに異なることを特徴とする、ラベル核酸セット。
【請求項10】
請求項9に記載のラベル核酸セットと、各ラベル核酸をインベーダー法により識別するためのインベーダーオリゴ、プローブ、フレットカセット及びクリベース酵素を含むキット。
【請求項11】
臨床検体又は実験試料の取違え防止のための標識方法であって、臨床検体又は実験試料に、請求項1〜8のいずれかに記載のラベル核酸を混合することを特徴とする標識方法。
【請求項12】
臨床検体又は実験材料の取違え防止のための識別方法であって、臨床検体又は実験材料に、請求項1〜8のいずれかに記載のラベル核酸を混合する工程と、該核酸が混合した臨床検体又は実験材料から該核酸を検出する工程とを含むことを特徴とする識別方法。
【請求項13】
臨床検体又は実験試料の分析方法と同じ方法により、ラベル核酸を検出することを特徴とする、請求項12に記載の識別方法。
【請求項14】
前記核酸を検出する工程において、インベーダー法を用いることを特徴とする、請求項12に記載の識別方法
【請求項15】
前記核酸を検出する工程において、蛍光検出、分光光度検出、放射線検出、電気化学的検出及び免疫学的検出からなる群から選択される1以上の検出方法を用いることを特徴とする請求項12に記載の識別方法。
【請求項16】
前記核酸を検出する工程において、前記核酸に相補的な配列を有する第2核酸を用いて、前記核酸と第2核酸のハイブリダイゼーションにより生成される2本鎖分子を選択的に検出する方法を用いることを特徴とする、請求項12に記載の識別方法。
【請求項17】
前記ハイブリダイゼーションにより生成される2本鎖分子の検出が、蛍光検出、発色検出、発光検出、分光光度検出及び電気化学的検出からなる群から選択される1以上の検出方法を用いることを特徴とする、請求項16に記載の識別方法。
【請求項18】
前記2本鎖分子が、蛍光標識、ラジオアイソトープ標識、電気化学標識、アフィニティー標識及びエピトープ標識からなる群から選択される1以上の標識により標識されていることを特徴とする請求項17に記載の識別方法。
【請求項19】
臨床検体又は実験材料の取違え防止のための識別方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする識別方法:
a)請求項1〜8のいずれかに記載のラベル核酸を臨床検体又は実験試料に混合する;
b)前記ラベル核酸の増幅反応を行う;
c)前記増幅反応の生成物を検出する;
d)前記検出の結果を解析し、検体や試料に取違えが起きていないか確認する。
【請求項20】
前記増幅反応が、PCR、LAMP、ICAN法からなる群から選択される1の増幅方法であることを特徴とする、請求項19に記載の識別方法。
【請求項21】
前記増幅反応の生成物の検出が、蛍光検出、分光光度検出、放射線検出、電気泳動、電気化学的検出及び免疫学的検出からなる群から選択される1以上の検出方法により行われることを特徴とする、請求項19又は20に記載の識別方法。
【請求項22】
前記増幅反応の生成物の検出において、インベーダー法を用いることを特徴とする、請求項19〜21のいずれかに記載の識別方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−60862(P2009−60862A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232468(P2007−232468)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】