説明

試料容器の震盪装置

【課題】 受け内に試料容器を新たに設置する際、又は交換する際に、混合動作が中断されないようにした試料容器を震盪する装置を提供する。
【解決手段】 開口を有する上端と閉じた下端とを有する個々の試料容器を震盪する装置であって、受けの移動時に試料容器の下端が共動駆動されるように試料容器の下端が係合できる受けと、受けに結合され、試料容器の震盪のため受けを特に水平面内で駆動する駆動装置と、受け内の所定位置に試料容器を設置した際に駆動装置のための始動信号を発生し、且つ受け内の所定位置から試料容器を除去した後に駆動装置のための停止信号を発生するセンサとを有する形式のものにおいて、駆動装置が、センサ(18a,18b)による停止信号の発生後になお所定の追従時間にわたって受け(14)を更に駆動するように、構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に係る、試料容器を震盪する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は、通常、ボルテックスミキサと呼ばれる。このミキサによって、一般にオペレータが上端を保持した試料容器、特に、例えば、試験管又は遠心分離用ガラス管を震盪する。
【0003】
この種の装置は、ミキサ上面に設けた受けを高周波数で、例えば、狭い円軌道上又は混合に適した他の軌道上を動かすことのできる駆動装置を有する。
【0004】
受けは、通常の試料容器、例えば、試験管又は遠心分離用ガラス管の下端を、受けの運動が該容器に伝達されるように、受け内又は受け上に設置できるように構成されている。
【0005】
この種の装置は、特に、微生物学実験室又は細胞実験室において使用される。通常の使用目的は、一例として挙げると、ペレット化細胞の再懸濁である。この場合、混合中に容器内に生ずる渦流は、特に、そうでなければ壁からの分離が極めて困難なペレットを溶解させるのに役立つ。しかしながら、固体を溶解する又は液体を相互に混合する他の任意の用途も考えられる。
【0006】
操作を容易化するため、通常の装置の場合、試料容器、例えば、試験管又は遠心分離用ガラス管を受け内の所定位置に設置した際に、混合操作を自動的に開始することを意図する。
【0007】
若干の装置は、このため、その上面に、例えば、受け内の試験管の存在を検知し、次いで、駆動装置のための始動信号を自動的に発生する光学的センサを有する。他の装置の場合、圧力センサが設けられている。この場合、震盪すべき容器によって受けを押し下げなければならず、この場合、容器の所定位置又は容器によって負荷される受けの所定位置において、駆動装置のための始動信号が発生される。第1の事例においては試験管が光学的センサの範囲から除去された場合、又は第2の事例においては受けの負荷が除かれた場合、それに対応して、停止信号が発生され、この場合、この種の装置では、混合操作が直ちに停止される。
【0008】
公知のセンサ制御式の装置には、通常の器具の混合操作が、例えば、受け内に試料容器を新たに設置する際に、又は混合すべき容器を交換する際に、望ましくなく中断されるという欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記欠点を有していない装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴部記載の構成を有する装置によって解決される。
【0011】
本発明に係る装置は、基本的に、上述の種類の装置に対応する。しかしながら、これらの装置とは異なり、停止信号の発生後に直ちに、駆動装置を停止するのではなく、なお所定の追従時間にわたって受けを混合速度で更に駆動することを意図する。
【0012】
追従時間は、器具固有に又は用途固有に決定できる。一般に、追従時間は、受け内の試料容器の交換又はまさに混合操作中の容器の新たな設置又は位置変更が、駆動装置を停止することなく、可能であるように、設定されている。一般に、追従時間は、大半の実験室使用について、1〜10秒の範囲、特に、2〜5秒の範囲で十分である。
【0013】
本発明に係る装置は、一連の利点を提供する。本装置は、上述の種類の装置と同様、センサ制御で始動され、更なる混合操作がもはや意図されない場合、停止される。この場合、追従時間が、トラブルを生ずることはない。なぜならば、本発明に係る装置の場合、駆動装置は、比較的迅速に停止されるからである。しかしながら、更なる混合を意図した場合に、短時間で試料容器を受けから除去するか他の容器と交換すれば、追従時間内に受け内に試料容器を新たに設置し新たな始動信号を発生することにもとづき、混合操作を中断することなく継続できる。これは、決定的な作業の簡単化をもたらす。なぜならば、上述の状況において、上述の種類の装置の場合に現れる駆動装置の停止及び再始動は行われないからである。
【0014】
上述の種類の装置以外に、別個のスイッチによってオン・オフできる別種の装置が知られている。この装置は、持続運転で混合を行うことができる。この装置は、別個のスイッチの作動にもとづき、操作が煩雑であるという点が不利である。
【0015】
本発明に係る装置は、上述の双方の公知のミキサの利点を統合するものである。換言すれば、本発明に係る装置によっても、少なくとも熟練作業の場合、別個のスイッチを作動する必要なく、1種の持続運転を実施できる。
【0016】
本発明の有利な態様を従属請求項に示した。
【0017】
特に適切な追従時間は、1〜10秒の範囲、特に、2〜5秒の範囲にある。この時間範囲は、通常現れる操作起因の混合プロセスの中断、例えば、容器交換又は容器の新たな位置決めをカバーするのに十分に長いということが実証されている。
【0018】
好ましくは水平面内で推移する出来る限り理想的な円軌道上を、好ましくは、均一な大きい角速度で受けを回転することが、効果的な混合に重要である。
【0019】
特に好ましい回転速度は、3000〜3500回転/分(rpm)の範囲である。円軌道の半径は、例えば、1.5mmであれば好ましい。受けの対応する駆動時に試料容器内の混合が確実に保証される限り、受けを駆動するための他の半径又は他の軌道も、勿論考えられる。
【0020】
本発明に係る装置は、特に、3500rpmの回転速度又は周波数で運転される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、3つの図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0022】
図1に、上部領域に振動板12を設けたハウジング11を有する装置10を部分的に示した。振動板12は、運転時に振動板12を平坦な一定の円軌道上を、例えば、3500rpmの回転速度で駆動する偏心駆動装置(図示していない)にロッド13を介して結合されている。振動板の中心領域には、試料容器のための受け14が設けてある。
【0023】
図示の実施例の場合、図2に示すように、試験管19が側方へスリップして離脱することのないように、受け14は凹み15を有する。しかしながら、凹みのない受けも考えられるが、この場合、同様に容器のスリップを阻止する材料で受けを構成すべきである。
【0024】
受け14には、下方へ向く目板16が設けてある。装置10には、運動方向に見て目板16の下方に、図示の実施例の場合は2つの光学的センサ18a,18bを有する遮光壁17が設けてある。
【0025】
図2からわかるように、反応容器(試験管)19の投入後、受け14の領域を押し下げることができ、この場合、目板16は、センサ18a,18bの前の光路に入り、駆動装置(図示していない)のための始動信号を発生させる。
【0026】
このようなセンサ構造又は類似のセンサ構造によって、スイッチオン点(始動信号が発生される)及びスイッチオフ点(停止信号が発生される)を簡単に定めることができる。上記作動点は、例えば、それぞれ、センサによって測定された特定の光度又は光量に関連させることができる。上記作動点を異なるように定めれば、すなわち、例えば、異なる侵入深さに関連させれば、特に有利である。例えば、目板の比較的低い位置において始動信号を発生させ、より高い位置において停止信号を発生させることも考えられる。かくして形成されたヒステリシス態様は、操作を明らかに容易化する。
【0027】
勿論、ヒステリシス態様を実現できる他のセンサ装置、例えば、接近スイッチ又は圧力センサなどを使用することもできる。
【0028】
ここで、本発明は、ヒステリシス態様を実現できる装置に限定されるものではない。基本的に、本発明に係る装置と組合せて、受けの所定位置に試料容器を設置した際に駆動装置の始動信号を発生し、所定位置から試料容器を除去した後に駆動装置の停止信号を発生する全てのセンサ装置を使用できる。この規定−受けの所定位置への試料容器の設置及びこのような位置からの試料容器の除去−は、勿論、受けが、上述の如く、試料容器の位置決めによって移動され、受け又は受けに結合した構造部材の所定位置において始動信号又は停止信号が発生されることを含む。
【0029】
上述の如く、受けの所定位置において、円軌道上の振動板12の運動を開始する駆動装置(図示していない)のための始動信号が発生される。上記円軌道の半径は、比較的小さい。この半径は、通常、1mmから最大1〜2cmの範囲にある。混合速度に達した場合、受け14は、高周波数震盪運動を反応容器(試験管)19に伝達し、この場合、上記反応容器は、良好な混合を誘起する。
【0030】
受け14の領域は、ばねを付して構成されている。押し下げられた所定位置から反応容器(試験管)19が除去されると直ちに、目板16は、再び、センサ18a,18bの領域の上方に達する。この位置において、従来の器具の場合には、駆動装置の即座の停止を誘起する停止信号が発生される。
【0031】
他方、本発明に係る装置の場合は、駆動装置は、停止信号の発生後、なお若干の時間、混合速度で追従駆動を行うよう構成されている。追従時間中、目板16の押し下げによって、いつでも新しい始動信号が発生され、その結果、次の停止信号まで且つこれに続く追従時間の終了まで、混合操作が継続される。
【0032】
図3は、時間に対して回転数をプロットした曲線の形で典型的な混合操作を示している。図1〜2で説明した目板16の押し下げによって、時点aにおいて、ミキサを始動して比較的迅速に、例えば、3500rpmの回転数を実現させる始動信号が発生される。時点bにおいて停止信号が発生された後も、この速度が一定に保持される。停止信号の発生以降に、本発明にもとづき定めた追従時間が推移し、この追従時間において、本発明に係る装置の駆動装置が、容器(試験管)が受け内にあるか否かに関係なく、不変の速度で受けを更に駆動する。
【0033】
追従時間の終了後且つ新しい始動信号が発生されないことを前提として、駆動装置は、時点cにおいて停止し、速度はゼロにもどる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る装置の実施例の上部領域の部分断面図である。
【図2】試験管を含む装置を示す図1と同一の図面である。
【図3】混合操作の推移を示すグラフである。
【符号の説明】
【0035】
10 装置
11 ハウジング
12 振動板
13 ロッド
14 受け
15 凹み
16 目板
17 遮光壁
18a,18b センサ
19 試験管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する上端と閉じた下端とを有する個々の試料容器を震盪する装置であって、
受けの移動時に試料容器の下端が共動駆動されるように試料容器の下端が係合できる受けと、
受けに結合され、試料容器の震盪のため受けを特に水平面内で駆動する駆動装置と、
受け内の所定位置に試料容器を設置した際に駆動装置のための始動信号を発生し、且つ受け内の所定位置から試料容器を除去した後に駆動装置のための停止信号を発生するセンサとを有する形式のものにおいて、
駆動装置が、センサ(18a,18b)による停止信号の発生後になお所定の追従時間にわたって受け(14)を更に駆動するように、構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
連続作業方式の場合に、受け(14)からの試料容器(19)の除去及び受け(14)内の所定位置への新たな試料容器の設置が、追従時間内に可能であるように、追従時間が設定されていることを特徴とする請求項1に係る装置。
【請求項3】
追従時間が、1〜10秒の範囲、特に、2〜5秒の範囲にあることを特徴とする請求項2に係る装置。
【請求項4】
駆動装置が、1つの、特に、水平な円軌道上で受けを駆動することを特徴とする先行請求項のいずれか1項に係る装置。
【請求項5】
円軌道の半径が、1mm〜20mmの範囲にあることを特徴とする請求項4に係る装置。
【請求項6】
速度が、3000−3500回転/分の範囲にあることを特徴とする請求項4に係る装置。
【請求項7】
センサが、受け内に試料容器を設置したことによる一つの定義位置において始動信号を発生し、受け内から試料容器を除去したことによる他の定義位置において停止信号を発生することを特徴とする先行請求項のいずれか1項に係る装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−152345(P2007−152345A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315000(P2006−315000)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(500555963)エペンドルフ アーゲー (3)
【Fターム(参考)】