説明

試料検査装置及び試料検査方法

【目的】一時的に発生する測定画像の偽像を排除できるパターン検査を行うこと。
【構成】試料のパターンを測定して測定画像を生成する測定画像生成部と、測定画像と基準画像とを比較する比較部と、を備え、測定画像生成部は、2画素以上で構成されるラインセンサを2段以上用いた時間遅延積分センサを2個以上つなげた受光装置を有し、各時間遅延積分センサの画素について、異常な画素値を除いた画素値の平均値を測定画像とする、又は、基準値を超える画素値を異常な画素値として除いた画素値の平均値を測定画像とする、又は、画素値の平均値と所定値の和を基準値とし、基準値を超える画素値を異常な画素値として除いた画素値の平均値を測定画像とする、又は、画素値と、全ての時間遅延積分センサの画素値の平均値との差の絶対値が基準値を超える画素値を異常な画素値として除いた画素値の平均値を測定画像とする、試料検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料のパターンの検査に関し、特に半導体素子や液晶ディスプレイ(LCD)を製作するときに使用されるフォトマスク、ウェハ、あるいは液晶基板などの極めて小さなパターンの欠陥検査に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1ギガビット級のDRAMに代表されるように、大規模集積回路(LSI)を構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになろうとしている。このLSIの製造における歩留まりの低下の大きな原因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるフォトマスクの欠陥があげられる。特に、半導体ウェハ上に形成されるLSIのパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。このため、このような欠陥を検査する装置の開発が行われている。
【0003】
一方、マルチメディア化の進展に伴い、LCDは、500mm×600mm、またはこれ以上への液晶基板サイズの大型化と、液晶基板上に形成されるTFT等のパターンの微細化が進んでいる。従って、極めて小さいパターン欠陥を広範囲に検査することが要求されるようになってきている。このため、このような大面積LCDのパターン及び大面積LCDを製作する時に用いられるフォトマスクの欠陥を短時間で、効率的に検査する試料検査装置の開発も急務となってきている。
【0004】
従来の装置では、試料の画像を取得するためのセンサにおいて、宇宙線又はセンサ内部の電気的なノイズにより、微小なパターンがあるように見える偽像が発生しているため、十分な検査が出来ないなどの問題がある。そのため、センサに宇宙線が衝突したことを検出するためのセンサを設置し、宇宙線の影響を除去する技術があるが(特許文献1参照)、装置構成が大きく構成が複雑になり、また、センサ内部で発生するノイズの影響が残る問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−312955
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(1)本発明は、試料の正確なパターン検査にある。
(2)また、本発明は、一時的に発生する測定画像の偽像を排除できるパターン検査にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の実施の形態では、試料のパターンを測定して測定画像を生成する測定画像生成部と、測定画像と基準画像とを比較する比較部と、を備え、測定画像生成部は、2画素以上で構成されるラインセンサを2段以上用いた時間遅延積分センサを2個以上つなげた受光装置を有し、各時間遅延積分センサの画素について、異常な画素値を除いた画素値の平均値、即ち、異常な画素値を除去して残った画素値の平均値を、測定画像とする、試料検査装置にある。
(2)本発明の実施の形態では、試料のパターンを測定して測定画像を生成する測定画像生成部と、測定画像と基準画像とを比較する比較部と、を備え、測定画像生成部は、2画素以上で構成されるラインセンサを2段以上用いた時間遅延積分センサを2個以上つなげた受光装置を有し、各時間遅延積分センサの画素について、基準値を超える画素値を異常な画素値として除いた画素値の平均値を測定画像とする、試料検査装置にある。
(3)又、本発明の実施の形態では、試料のパターンを測定して測定画像を生成する測定画像生成部と、測定画像と基準画像とを比較する比較部と、を備え、測定画像生成部は、2画素以上で構成されるラインセンサを2段以上用いた時間遅延積分センサを2個以上つなげた受光装置を有し、各時間遅延積分センサの画素について、画素値の平均値と所定値の和を基準値とし、基準値を超える画素値を異常な画素値として除いた画素値の平均値を測定画像とする、試料検査装置にある。
(4)又、本発明の実施の形態では、試料のパターンを測定して測定画像を生成する測定画像生成部と、測定画像と基準画像とを比較する比較部と、を備え、測定画像生成部は、2画素以上で構成されるラインセンサを2段以上用いた時間遅延積分センサを3個以上つなげた受光装置を有し、各時間遅延積分センサの画素について、画素値と、全ての時間遅延積分センサの画素値の平均値との差の絶対値が基準値を超える画素値を異常な画素値として除いた画素値の平均値を測定画像とする、試料検査装置にある。
(5)又、本発明の実施の形態では、試料のパターンを測定して測定画像を生成する測定画像生成部と、測定画像と基準画像とを比較する比較部と、を備え、測定画像生成部は、2画素以上で構成されるラインセンサを2段以上用いた時間遅延積分センサを3個以上つなげた受光装置を有し、各時間遅延積分センサの画素について、画素値の平均値を算出する際、i番目の時間遅延積分センサの画素値と1〜i−1番目の時間遅延積分センサの画素値を用いて計算された平均値との差の絶対値である平均値差が基準値以下であった場合、i番目の時間遅延積分センサの画素値と1〜i−1番目の時間遅延積分センサの画素値の平
均値を新しい平均値とし、該平均値差が基準値以下でない場合、異常な画素値として平均値を更新しない処理を行い、全ての時間遅延積分センサの画素について該処理を繰り返して平均値を求め、該平均値を測定画像とする、試料検査装置にある。
(6)又、本発明の実施の形態では、2画素以上で構成されるラインセンサを2段以上用いた時間遅延積分センサを2個以上つなげた受光装置により試料のパターンを測定して測定画像を生成し、測定画像と基準画像とを比較する試料検査方法において、各時間遅延積分センサの画素について、異常な画素値を除いた画素値の平均値を測定画像とする、試料検査方法にある。
【発明の効果】
【0008】
(1)本発明は、試料の正確なパターン検査を行うことができる。
(2)また、本発明は、一時的に発生する測定画像の偽像を排除できるパターン検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態における試料検査装置と試料検査方法を説明するためのブロック図である。
【図2】実施の形態における試料検査装置の内部構成を示す概念図である。
【図3】測定画像の取得手順を説明するための図である。
【図4】複数の時間遅延積分センサを有する受光部の作用を説明する図である。
【図5】時間遅延積分センサの受光過程を説明する図である。
【図6】偽像を廃棄して、測定画像を取得する説明図である。
【図7】平均値と所定値の和を基準値として、偽像を廃棄して、測定画像を取得する説明図である。
【図8】平均値と所定値の和を基準値として、偽像を廃棄して、測定画像を取得する説明図である。
【図9】順次、平均値と測定値の差を基準値と比較して平均値を求めて、偽像を廃棄して、測定画像を取得する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の詳細を実施の形態によって説明する。
(試料検査の基本構成)
図1は、本発明の実施の形態の試料検査装置と試料検査方法を説明するブロック図である。試料検査装置10は、フォトマスク、ウェハ、あるいは液晶基板などの試料のパターン12を検査するものである。試料検査装置10は、特に、宇宙線などの放射線、又はセンサ内部の電気的なノイズなどによって局所的で一時的に発生する出力画像の偽像の影響を排除して、比較対象となる測定画像を生成し、試料のパターン12を検査するものである。試料検査装置10は、試料のパターン12の透過光や反射光を測定画像生成部14で測定して、透過画像や反射画像の一方、又は両方の測定画像を生成する。試料検査装置10は、試料のパターンの設計データ20を参照画像生成部22で処理して、測定画像に類似する参照画像を生成する。
【0011】
試料検査装置10は、比較部24を備え、測定画像生成部14で偽像が排除された測定画像と基準画像とを比較処理して、その差異が所定値を超えたら場合、測定画像の欠陥を判定する。比較部24は、参照画像生成部22で生成した参照画像を基準画像として用い、偽像が排除された測定画像とD−DB比較を行い、又は、測定画像生成部14で生成した同一試料上の異なる場所の同一パターンを撮像して偽像が排除された測定画像を基準画像として用い、偽像が排除された測定画像とD−D比較を行う。
【0012】
(測定画像生成部)
測定画像生成部14は、受光装置30と偽像除去部40などを備えている。受光装置30は、図4に示すように、時間遅延積分センサ32を複数個つなげた受光部を備えている。時間遅延積分センサ(TDIセンサ)32は、フォトダイオードアレイ、CCD受光素子などが使用され、走行方向に積分段数だけキャリア(電荷)を積分するセンサである。時間遅延積分センサ32は、段数に比例する感度向上が得られ、素子のばらつきや照明の明るさの変動等のノイズを低減することができる。偽像除去部40は、各時間遅延積分センサ32で受像した画像の出力値について、基準値との比較、平均値の算出などの演算処理をして、光の強さなどから通常検出しない異常に大きな出力値、即ち基準値を超える異常な画素値、即ち偽像を除去するものである。ここで、基準値は、通常検出しない大きな出力値を考慮して、又は、すべての出力値の平均値などの種々の演算処理で得られた値を考慮して求められる。
【0013】
(試料検査装置)
図2は、試料検査装置10の内部構成を示す概念図である。試料検査装置10は、マスクやウェハ等の基板を試料100として、試料100のパターンの欠陥を検査するものである。試料検査装置10は、光学画像取得部110や制御系回路150などを備えている。光学画像取得部110は、オートローダ112、照明光を発生する照明装置114、XYθテーブル116、XYθモータ118、レーザ測長システム120、拡大光学系122、ピエゾ素子124、透過光や反射光を受信するCCD、フォトダイオードアレイなどの時間遅延積分センサ32を有する受光装置30、偽像除去部40、センサ回路128などを備えている。制御系回路150では、制御計算機となるCPU152が、データ伝送路となるバス154を介して、大容量記憶装置156、メモリ装置158、表示装置160、印字装置162、オートローダ制御回路170、テーブル制御回路172、オートフォーカス制御回路174、展開回路176、参照回路178、比較回路180、位置回路182などに接続されている。なお、偽像除去部40は、センサ回路128内に配置しても良い。また、展開回路176、参照回路178、比較回路180及び位置回路182は、図2に示すように、相互に接続されている。
【0014】
なお、図1の測定画像生成部14は、図2の光学画像取得部110により、構成することができる。参照画像生成部22は、展開回路176と参照回路178により構成することができる。又、比較部24は、比較回路180により構成することができる。図2では、本実施の形態を説明する上で必要な構成部分以外については記載を省略している。試料検査装置10にとって、通常、必要なその他の構成が含まれる。
【0015】
(光学画像取得部の動作)
試料100は、オートローダ制御回路170により駆動されるオートローダ112から自動的に搬送され、XYθテーブル116の上に配置される。試料100は、照明装置114によって透過光を得るために上方から光が照射され、また、図示していないが、反射光を得るために下方から光が照射される。試料100の下方には、拡大光学系122、受光装置30、偽像除去部40及びセンサ回路128が配置されている。露光用マスクなどの試料100を透過した光又は反射した光は、拡大光学系122を介して、受光装置30に光学像として結像する。オートフォーカス制御回路174は、試料100のたわみやXYθテーブル116のZ軸(X軸とY軸と直交する)方向への変動を吸収するため、ピエゾ素子124を制御して、試料100への焦点合わせを行なう。
【0016】
図3は、測定画像の取得手順を説明するための図である。試料100の被検査領域は、Y軸方向にスキャン幅Wで仮想的に分割される。即ち、被検査領域は、スキャン幅Wの短冊状の複数のストライプ102に仮想的に分割される。更にその分割された各ストライプ102が連続的に走査されるようにXYθテーブル116が制御される。XYθテーブル116は、X軸に沿って移動して、測定画像は、ストライプ102として取得される。ストライプ102は、図3では、Y軸方向のスキャン幅Wを持ち、長手方向がX軸方向の長さを有する矩形の形状である。試料100を透過した光、又は試料100で反射した光は、拡大光学系122を介して受光装置30に入射する。受光装置30上には、図3に示されるような仮想的に分割されたパターンの短冊状領域の一部が拡大された光学像として結像される。図3に示されるようなスキャン幅Wの画像を連続的に受光する。受光装置30は、第1のストライプ102における画像を取得した後、第2のストライプ102における画像を今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの画像を連続的に入力する。第3のストライプ102における画像を取得する場合には、第2のストライプ102における画像を取得する方向とは逆方向、即ち、第1のストライプ102における画像を取得した方向に移動しながら画像を取得する。なお、スキャン幅Wは、例えば2048画素程度とする。
【0017】
XYθテーブル116は、CPU152の制御の下にテーブル制御回路172により駆動される。X軸方向、Y軸方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータ118のような駆動系によって移動可能となる。これらのXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。XYθテーブル116の移動位置は、レーザ測長システム120により測定され、位置回路182に供給される。受光装置30は、複数の時間遅延積分センサ32により同一のパターンの電子データを取得する。偽像除去部40は、各時間遅延積分センサの同一のパターンの電子データを用いて、宇宙線や電気的なノイズなどによって生じた偽像を排除する。センサ回路128は、偽像が排除された光学画像の電子データを測定画像として出力する。センサ回路128から出力された測定画像は、位置回路182から出力されたXYθテーブル116上における試料100の位置を示すデータとともに比較回路180に送られる。なお、XYθテーブル116上の試料100は、オートローダ制御回路170により検査終了後に自動的に排出される。なお、測定画像は、例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を表現している。
【0018】
(時間遅延積分センサによるパターンの受光手順)
図4は、3個の第1〜第3の時間遅延積分センサ32a、32b、32cをつなげた受光装置30を示している。各時間遅延積分センサは、図4では6段のラインセンサ34a〜34fを有しているが、例えば、256段、512段などのように多数のラインセンサ34を備えている。各ラインセンサ34a〜34fは、図4では、横方向に10個の画素36を有しているが、例えば、1024個、2048個などのように多数の画素36を備えている。第1〜第3の時間遅延積分センサ32a〜32cは、各々、第1〜第3のバッファメモリ38a〜38cを備えており、時間遅延積分センサ32で発生したキャリアをバッファメモリ38に排出する。バッファメモリ38は、時間遅延積分センサ32の受光した画像情報を一時的に保持する。
【0019】
受光装置30が試料100のパターンを受光する例として、図4のように、試料のパターンAの光が受光装置30の下方から上方に移動しながら投影される。その際、受光装置30の各時間遅延積分センサ32a〜32cは、パターンAを受光し、発生したキャリアを上方に移動する。上端に達したキャリアは、各時間遅延積分センサ32a〜32cに対応したバッファメモリ38a〜38cに排出される。第1時間遅延積分センサ32aは、他の時間遅延積分センサより早くパターンAを受光して第1バッファメモリ38aに排出し、第2時間遅延積分センサ32bは、次にパターンAを受光して第2バッファメモリ38bに排出し、第3時間遅延積分センサ32cは、最後にパターンAを受光して第3バッファメモリ38cに排出する。
【0020】
図5は、5個のラインセンサ34a〜34eを有する1個の時間遅延積分センサ32がパターンAを受光するステップS1〜S5を示している。ステップS1は、第1ラインセンサ34aがパターンAの上端のパターンを受光し、受光量に応じた量のキャリア(電荷)を蓄積した状態を示している。ステップS2は、第1ラインセンサ34aで蓄積したキャリアを第2ラインセンサ34bに転送した状態を示している。なお、図5において、受光量の多いパターン程、線の太さを大きくしてある。
【0021】
ステップS3は、第2ラインセンサ34bがパターンAの上端のパターンを受光し、第1ラインセンサ34aがパターンAの上端より少し下のパターンを受光し、受光量に応じた量のキャリアを蓄積した状態を示している。そのため、第2ラインセンサ34bのパターンAの上端は、キャリアの蓄積が多くなっていることを示している。第1ラインセンサ34aのパターンAの上端より少し下のパターンは、キャリアの蓄積が上端より多くないことを示している。ステップS4は、第2ラインセンサ34bで蓄積したキャリアを第3ラインセンサ34cに転送し、及び第1ラインセンサ34aで蓄積したキャリアを第2ラインセンサ34bに転送した状態を示している。
【0022】
ステップS5は、第3ラインセンサ34cがパターンAの上端の光を受光し、第2ラインセンサ34bがパターンAの上端より少し下のパターンを受光し、第1ラインセンサ34aがパターンAの上端より更に下のパターンを受光し、受光量に応じた量のキャリアを蓄積した状態を示している。そのため、第3ラインセンサ34cのパターンAの上端は、キャリアの蓄積が更に多く、第2ラインセンサ34bのパターンAの上端より少し下のパターンは、キャリアの蓄積が多く、第1ラインセンサ34aのパターンAの上端より更に下のパターンは、キャリアの蓄積が少ない状態を示している。
【0023】
このように、時間遅延積分センサ32は、試料のパターン画像を時間の経過と共に蓄積するので、宇宙線や電気ノイズなどのような一時的な偽像がセンサに発生しても、その影響を低減することができるが、本実施の形態では、更に、複数の時間遅延積分センサ32を用いることにより、一時的に発生する偽像の影響を除去することができる。
【0024】
(参照画像の生成)
試料100のパターン形成時に用いた設計データ20は、大容量記憶装置156に記憶される。設計データ20は、CPU152によって大容量記憶装置156から展開回路176に入力される。設計データの展開工程として、展開回路176は、試料100の設計データを2値ないしは多値の原イメージデータに変換して、この原イメージデータが参照回路178に送られる。参照回路178は、原イメージデータに適切なフィルタ処理を施し、参照画像を生成する。センサ回路128から得られた測定画像は、拡大光学系122の解像特性や受光装置30のアパーチャ効果等によってフィルタが作用した状態にあると言えられる。この状態では測定画像と設計側の原イメージデータとの間に差異があるので、設計側の原イメージデータに対して参照回路178によりフィルタ処理を施し、測定画像に合わせることができる。
【0025】
(第1の実施形態)
図6は、試料のパターンの検査の第1の実施形態を示し、受光装置30と偽像除去部40の関係を示している。受光装置30は、ラインセンサを2段以上用いた時間遅延積分センサ32を2個以上つなげたものを使用し、ここでは第1から第NまでのN個の時間遅延積分センサ32a、32b・・・32nを示している。時間遅延積分センサ32は、図5に示すように、試料のパターンAの移動に同期して測定データを転送しながら測定データの蓄積を行う。宇宙線などによるノイズは、一般に局所的な画素に対して一時的に発生するため、偽像除去部40は、その異常な輝度の出力値を演算処理して除去して測定画像を求め、これを被測定試料のパターンに対応した測定画像として検査を行うことにより、偽像に影響されず、高感度な検査が可能となる。この除去処理の例として、n段のラインセンサ34を用いた時間遅延積分センサ32をN個つないだ受光装置30の場合、各時間遅延積分センサ32に現れる宇宙線などによるノイズは、n×N段のラインセンサを用いたひとつの時間遅延積分センサに比べて、N倍になって現れるので、図6に示すように、その出力値があらかじめ与えられた基準値以下である時間遅延積分センサ32の集合の平均値を計算し、これを被測定試料のパターンに対応した測定画像として検査を行うことにより、偽像に影響されず、高感度な検査が可能となる。基準値は、光の強さなどから通常測定されない値を考慮して決められ、例えば、240階調程度とする。
【0026】
詳しくは、偽像除去部40において、第1の時間遅延積分センサ32aの各画素36の出力値(画素値)は、基準値と比較され、基準値を超える場合、偽像と判断して、廃棄される。同様に、第2〜第Nの時間遅延積分センサ(TDI2〜TDIN)32b〜32nについても、それぞれの出力値が基準値以下か否か判断される(ステップS10)。基準値以下でない画素値は、偽像として廃棄される(ステップS11)。基準値以下の画素値は、合計されて平均値として算出される(ステップS12)。平均値は、偽像を含まない測定画像として、比較部24に送られて、基準画像と比較されて、欠陥の有無が検査される(ステップS13)。
【0027】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態を示し、ラインセンサ34を2段以上用いた時間遅延積分センサ32を2個以上つなげたものを使用し、あらかじめ指定された所定の値に全ての時間遅延積分センサ32の出力の平均値を加算したものを基準値として用いる。第1の実施形態では、それぞれのセンサの出力値に対して、ひとつの基準値を基準に用いて、測定パターンデータとして使うかどうかを判定していたが、宇宙線などによるノイズは一般に出力値を大きくする方向に影響するので、あらかじめ指定された所定の値に全ての時間遅延積分センサ32の出力の平均値を加算したものを基準値として用いる。検査に使用する出力画像は、基準値以下である時間遅延積分センサ32の集合の平均値を計算して、測定画像として使用する。これにより、より精密に偽像を排除することができる。所定の値は、時間遅延積分センサ32の出力特性の安定性を考慮して設定され、例えば20階調程度とする。これにより、第1の実施形態よりも微小なエネルギーの宇宙線によるノイズも除去することが可能となる。
【0028】
詳しくは、偽像除去部40において、先ず、第1〜第Nの時間遅延積分センサ(TDI1〜TDIN)32a〜32nの各画素36の出力値の平均値を算出する(ステップS20)。算出された平均値と所定の値の和を求めて、基準値とし、第1〜第Nの時間遅延積分センサの各画素の出力値と比較される(ステップS21)。基準値を超える場合、偽像と判断して、廃棄される(ステップS22)。基準値以下の画素値は、合計されて、平均値として算出される(ステップS23)。平均値は、偽像を含まない測定画像として、比較部24に送られて、基準画像と比較されて、欠陥の有無が検査される(ステップS13)。
【0029】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態を示し、ラインセンサ34を2段以上用いた時間遅延積分センサ32を3個以上つなげたものを使用する。全ての時間遅延積分センサ32の出力値の平均値とそれぞれ個別の時間遅延積分センサ32の出力値の差の絶対値が、あらかじめ設定されている基準値を越えた場合に、その出力値を廃棄し、それ以外の時間遅延積分センサ32の出力値の平均値を測定画像として使用する。これにより、ノイズの影響している時間遅延積分センサ32が半数より少ない場合、多数決により、ノイズを除去することが可能となる。この基準値は、例えば20階調程度とする。
【0030】
詳しくは、偽像除去部40において、先ず、第1〜第Nの時間遅延積分センサ(TDI1〜TDIN)32a〜32nの各画素36の出力値の平均値を算出する(ステップS30)。算出された平均値と各時間遅延積分センサの各画素の出力値の差の絶対値を算出し、あらかじめ与えられた基準値と比較される(ステップS31)。基準値以下でない場合、偽像と判断して、廃棄される(ステップS32)。基準値以下の画素値は、合計されて、平均値として算出される(ステップS33)。平均値は、偽像を含まない測定画像として、比較部24に送られて、基準画像と比較されて、欠陥の有無が検査される(ステップS13)。
【0031】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態を示し、ラインセンサ34を2段以上用いた時間遅延積分センサを3個以上つなげたものを使用する。第2と第3の実施形態では、複数の時間遅延積分センサ32の全体の平均値を計算してから、個別の時間遅延積分センサ32の出力値と比較判定を行っていたが、第4の実施形態では、図9に示すように、N個の時間遅延積分センサ(1、2、・・、i、・・、N)において、i番目の時間遅延積分センサ32の出力値と1〜i−1個の出力値を用いた平均値とを比較し、その差の絶対値(以下、平均値差とする)があらかじめ指定された所定の値の基準値よりも低くない場合、i番目の時間遅延積分センサ32の出力値を廃棄する。平均値差が基準値よりも低い場合、i番目の時間遅延積分センサ32の出力値を加えて平均値を更新する。この処理を2番目の時間遅延積分センサ32の出力値から順に最後のN番目の時間遅延積分センサ32まで実行していく。これにより、第2、第3の実施形態にあるはじめの平均値の算出処理を省略でき、全ての時間遅延積分センサ32からの画素値が出力するまで待つことがなく、より効果的な検査を行うことができる。基準値は、受光装置30の全ての時間遅延積分センサ32の出力特性の安定性を考慮して設定され、例えば、20階調程度とする。
【0032】
詳しくは、偽像除去部40において、先ず、初期化処理として、ポインタi=2とし、平均値=第1時間遅延積分センサ32の出力値とする(ステップS40)。次に、第2番目(i=2)の時間遅延積分センサ32の出力値を読み出し(ステップS41)、平均値と比較し、その平均値差が基準値よりも低くない場合(ステップS42)、第2番目のセンサの出力値を廃棄する(ステップS43)。その平均値差が基準値よりも低い場合(ステップS42)、第2番目の時間遅延積分センサ32の出力値を加えて平均値を更新する(ステップS44)。次に、時間遅延積分センサ32が最後か否かチェックする(ステップS45)。最後の時間遅延積分センサでない場合、ポインタiに1を加える(ステップS46)。次の時間遅延積分センサ32の出力画像を読み出し(ステップS41)、同様の処理を行い、最後の時間遅延積分センサ32まで実行していく。最終的に求められた平均値は、偽像を含まない測定画像として、比較部24に送られて基準画像と比較されて、欠陥の有無が検査される(ステップS13)。
【0033】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。これらの実施の形態に示すように、宇宙線またはセンサ内部の電気的なノイズが原因となる偽像による画質の劣化は試料を検査する場合において、欠陥の検出感度に影響するため、感度を上げるために偽像を出力しないセンサを用いて検査を行うことは重要である。そのために、センサに入射した宇宙線や、センサ内部で発生した電気的なノイズによる偽像を検出し、蓄積データから取り除くことでノイズによる疑似欠陥を抑制でき、検出感度の高い検査を行うことができる。これらの実施の形態の検査は、測定画像のすべての画素について行うか、又は、必要に応じて、特に精密を要求する画素のみを行うか、又は、偽像が発生する確率の高い画素のみに行ってもよい。
【0034】
以上の説明において、「〜部」、「〜回路」或いは「〜工程」、「〜ステップ」と記載したものは、コンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。或いは、ソフトウェアとなるプログラムだけではなく、ハードウェアとソフトウェアとの組合せにより実施させても構わない。或いは、ファームウェアとの組合せでも構わない。又は、これらの組み合わせで実現しても良い。また、プログラムにより構成される場合、プログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録される。
【0035】
本発明は、上記の具体例に限定されるものではない。各実施の形態では、XYθテーブル116が移動することで検査位置が走査されているが、XYθテーブル116を固定し、その他の光学系が移動するように構成しても構わない。すなわち、相対移動すればよい。また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略してあるが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての試料検査装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0036】
10・・・試料検査装置
12・・・試料のパターン
14・・・測定画像生成部
20・・・試料のパターンの設計データ
22・・・参照画像生成部
24・・・比較部
30・・・受光装置
32・・・時間遅延積分センサ(TDI)
34・・・ラインセンサ
36・・・画素
38・・・バッファメモリ
40・・・偽像除去部
100・・試料
102・・ストライプ
110・・光学画像取得部
112・・オートローダ
114・・透過照明装置
1140・反射照明装置
116・・XYθテーブル
118・・XYθモータ
120・・レーザ測長システム
122・・拡大光学系
124・・ピエゾ素子
128・・センサ回路
140・・偽像除去部
150・・制御系回路
152・・CPU
154・・バス
156・・大容量記憶装置
158・・メモリ装置
160・・表示装置
162・・印字装置
170・・オートローダ制御回路
172・・テーブル制御回路
174・・オートフォーカス制御回路
176・・展開回路
178・・参照回路
180・・比較回路
182・・位置回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のパターンを測定して測定画像を生成する測定画像生成部と、
測定画像と基準画像とを比較する比較部と、を備え、
測定画像生成部は、2画素以上で構成されるラインセンサを2段以上用いた時間遅延積分センサを2個以上つなげた受光装置を有し、各時間遅延積分センサで積分され出力された画素値の中から異常な画素値を除いた画素値の平均値を測定画像とする、試料検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試料検査装置において、
測定画像生成部は、各時間遅延積分センサで積分され出力された画素値の中から、予め設定された画素値の基準値を超える画素値を前記異常な画素値として除いた画素値の平均値を前記測定画像とする、試料検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の試料検査装置において、
測定画像生成部は、各時間遅延積分センサで積分され出力された画素値の平均値と所定値の和を基準値とし、各時間遅延積分センサで積分され出力された画素値の中から前記基準値を超える画素値を前記異常な画素値として除いた画素値の平均値を前記測定画像とする、試料検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の試料検査装置において、
測定画像生成部は、2画素以上で構成されるラインセンサを2段以上用いた時間遅延積分センサを3個以上つなげた受光装置を有し、各時間遅延積分センサで積分され出力された画素値と、全ての時間遅延積分センサで積分され出力された画素値の平均値との差の絶対値が予め設定された画素値の基準値を超える画素値を前記異常な画素値として各時間遅延積分センサで積分され出力された画素値の中から除いた画素値の平均値を前記測定画像とする、試料検査装置。
【請求項5】
2画素以上で構成されるラインセンサを2段以上用いた時間遅延積分センサを2個以上つなげた受光装置により試料のパターンを測定して測定画像を生成し、測定画像と基準画像とを比較する試料検査方法において、
各時間遅延積分センサで積分され出力された画素値の中から異常な画素値を除いた画素値の平均値を測定画像とする、試料検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−175571(P2010−175571A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115066(P2010−115066)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【分割の表示】特願2008−68918(P2008−68918)の分割
【原出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(305008983)アドバンスド・マスク・インスペクション・テクノロジー株式会社 (105)
【Fターム(参考)】