説明

試料水の採取測定装置及び試料水の採取測定方法

【課題】効率良く測定対象に係る試料水を正確に採取測定することができ、かつ、安価な試料水の採取測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】長手方向先端側を給水部2とし基端側を開放部3とする容器4と、該容器4の内部にて先端側基端側間を緊密状態で進退動可能なヘッド部5を有し、ヘッド部5を基端側へ退動することにより、給水部2から容器4内の採取領域Sに試料水を採取するスライド部材6とを備える。容器4は、その胴部7において薬品投入部8を有し、スライド部材6を退動することにより、あらかじめ薬品が投入された採取領域Sに試料水を採取し、該採取された試料水を投入された薬品により発色させて測定を行うこととする。薬品投入部7が採取領域Sに対して基端側に配設されているので、薬品投入、試料水の採取並びに測定の際に、いちいちスライド部材6を容器4から取付け取外しすることなく試料水の採取測定を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプール、大衆浴場、ホテルの貯水場、ビルの受水槽、河川、海洋などの水場から、成分を測定するための試料水を採取しその成分の測定を行う試料水の採取測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プール、大衆浴場、ホテルの貯水場、ビルの受水槽などに利用される水は、入水により身体と接触したり、飲料用として身体に摂取されることから、その水中の成分を測定し、人体に有害とならないよう厳重に管理する必要がある。また、河川に流れる水や海洋中の海水については、自然環境を維持、管理するため、定期的にその水質を測定する必要がある。
【0003】
一例として、遊泳用のプールにおいては、厚生労働省の策定に係る「遊泳用プールの衛生基準」(平成13年7月24日)にしたがって管理されている。すなわち、遊泳用のプールに利用される水については、次のような水質基準を満たすことが必要とされている。

また、このように定められる水質基準に対しては、その維持管理基準として測定回数が次のように定められている。

さらに、測定対象に係る水の採取地点は、「矩形のプールではプール内の対角線上におけるほぼ等間隔の位置3箇所以上の水面下20cm及び循環ろ過装置の取入口付近」とされ、被測定領域についても厳密に定められている。
【0004】
このように人体に関与する水については、その成分を管理するための基準が厳密に定められており、人体に関与する水を扱う業者、団体によって、各々の施設から該当する水が採取され、成分の測定が行われている。また、河川に流れる水や海水の環境水についても同様に環境維持に必要な基準が定められている。水場から試料水を採取測定する方法としては、比色法を用いた簡便な測定方法によるものと、比色法以外の測定方法によるものとがあり、比色法による簡便な方法では、従来、図14に示す採水容器100が用いられている。すなわち、この採水容器100は胴部に紐101が巻き付けられた容器本体102と蓋103とからなり、先の遊泳用のプールを例とすれば、次のように利用される。すなわち、この採水容器100は監視員などのプール管理者が容器本体102から蓋103を取外し、紐101を把持した状態でプールサイドから容器本体102を被測定領域に向けて投げ入れるものであり、投げ入れられた容器本体102を引き上げると、被測定領域の水が試料水として容器本体102に汲み上げられる。この状態で、容器本体102内に採取された試料水の量を成分を測定する薬品に対する量(例えば10cc)にまで調整し、該薬品を投入した後、蓋103で容器本体102の口を閉じ、そして、採水容器100をよく振り薬品を採取された水に充分溶解させてから、その発色と予め薬品ごとに作成された色彩対照表(カラーチャート、図8参照)とを照らし合わせることで、被測定領域に係る試料水の成分測定が行われることとなる。
【0005】
また、比色法以外の測定方法によるものとしては、例えば残留塩素の測定であれば、電極計などからなる専用測定機器を用いて測定されるものとされていた。
【特許文献1】特開平11−83839
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、簡便な測定方法によると、試料水の採取並びに測定作業毎に、いちいち採水容器100の蓋103を開閉しなければならず、作業が煩雑であった。また、薬品に対する容器本体102内に採取された試料水の量(例えば10cc)の調整は、例えば、一旦ビーカーなど目盛りの付いた他の容器に移し替え、該容器からこぼしながら減じていくことで正確な量にまで調整し、その後本体容器102に戻して行われていたが、この作業は極めて煩雑であるため、実際には容器本体102内に採取された状態から直接こぼして減じていくことでおよその目分量としての調整が行われており、正確な測定の実現と作業性の向上の両立が望まれていた。
【0007】
また、被測定領域から採水容器100を汲み上げる際に、被測定領域以外の領域における水が試料水に混入してしまい、被測定領域における試料水の正確な成分測定が困難であった。この問題は、測定者が被測定領域に直接入水し、被測定領域における試料水を採取した時点で蓋103を閉じることで解消されるが、実際にこうした方法での採水は行われず、測定基準に合致した正確な測定が行われていなかった。
【0008】
また、比色法以外の測定方法においては、専用の測定機器は比較的高価なものであるため測定コスト上の問題があり、加えて測定対象ごとに専用の測定機器を用意しなければならないことから、異なる試料水の測定を行うには、測定コストがますます嵩むほか、その設置、管理等の作業が煩雑なものとされていた。
【0009】
本願発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、効率良く測定対象に係る試料水を正確に採取測定することができ、かつ、安価な試料水の採取測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
こうした課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、被測定領域から採取した試料水の薬品に対する発色と成分量毎の色彩を表示する色彩対照表(カラーチャート)とを比色して被測定領域中の試料水の成分を測定する試料水の採取測定装置であって、長手方向先端側を給水部とし長手方向基端側を開放部とする容器と、該容器の内部にて長手方向先端側長手方向基端側間を緊密状態で進退動可能なヘッド部を有し、前記ヘッド部を前記長手方向基端側へ退動することにより、前記給水部から、前記容器内の採取領域に試料水を採取するスライド部材と、を備え、前記容器はその胴部において、前記採取領域に対して長手方向基端側に配設される薬品投入部を有し、前記スライド部材を退動することにより、あらかじめ前記薬品投入部から前記薬品が投入された前記採取領域に前記試料水を採取し、該採取された試料水を前記投入された薬品により発色させて測定を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本願の請求項2に係る発明は、前記薬品投入部から投入される薬品は固形状のものとされ、該薬品をスライド部材のヘッド部と容器の給水部との間に配置した状態において、スライド部材の長手方向先端側に対する押動に応じて粉末状に粉砕する薬品の粉砕手段を備えてなることを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項3に係る発明は、前記薬品の粉砕手段は、容器の給水部内側に形成される凹部と、スライド部材のヘッド部から前記凹部に向けて突設される凸部とからなることを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項4に係る発明は、前記容器は、透明性あるいは半透明性を有する部材からなり、その胴部に給水部とスライド部材のヘッド部とで画成される試料水の採取領域に相応する採取量目盛りを付してなることを特徴とする。
【0014】
また、本願の請求項5に係る発明は、長手方向先端側に配設される採水部と長手方向基端側に容器の給水部と着脱可能に結合される結合部とを有し、被測定領域に係る試料水を採取可能とする管部材を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項6に係る発明は、前記管部材は、可撓性を有する部材からなるとともに、その胴部に浮き部材が取付けられてなることを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項7に係る発明は、前記採水部に前記浮き部材を取付けられる管部材の胴部に対して前記採水部を被測定領域に係る水中に沈下可能とする錘部材が取付けられてなることを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項8に係る発明は、前記浮き部材は、前記管部材の胴部に対して、前記採水部から所定の長さ位置に着脱自在に取付けられてなることを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項9に係る発明は、長手方向先端側を給水部とし長手方向基端側を開放部とするとともに、その胴部において、該給水部からの給水を受ける採取領域に対して長手方向基端側に配設される薬品投入部を有する容器と、該容器の内部にて長手方向先端側長手方向基端側間を緊密状態で進退動可能なヘッド部を有するスライド部材と、を備えた試料水の採取測定装置を用いた試料水の採取測定方法であって、前記薬品を、前記薬品投入部から、前記ヘッド部と前記給水部との間に配置する薬品配置工程と、前記給水部を試料水の被測定領域と通じさせて、前記給水部からの給水を可能とする給水準備工程と、前記給水準備工程から前記スライド部材を長手方向基端側に退動させることにより、前記採取領域に試料水を採取する試料水採取工程と、該採取された試料水を前記薬品により発色させて測定を行う測定工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本願の請求項1に係る発明によれば、薬品の投入毎にいちいちスライド部材の取り付け、取外しを行う手間を省けるとともに、一旦薬品投入部から薬品を投入しておけばスライド部材を退動させるだけで試料水の採取測定を行うことが可能となることから、効率良く測定対象に係る試料水を正確に採取測定することができ、かつ、安価な試料水の採取測定装置を提供することができる。
【0020】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、固形状の薬品を粉砕して粉末状にすることで容易に試料水に溶解させることができるので、効率良く測定対象に係る試料水の測定を行うことができる。
【0021】
また、本願の請求項3に係る発明によれば、固形状の薬品を予め容器の給水部内側の凹部に薬品を配置した状態で、スライド部材のヘッド部から突出した凸部でこれを押圧すれば、効率良く固形状の薬品を粉末状にすることができる。
【0022】
また、本願の請求項4に係る発明によれば、容器の採取量目盛り位置にまでスライド部材を退動させるだけで成分を測定する薬品に対する正確な量の水(例えば10cc)を容易に採取することができ、効率良く正確な試料水の測定が可能となる。
【0023】
また、本願の請求項5に係る発明によれば、被測定領域が陸上あるいは船上から離れた位置に指定される場合であっても、効率良く正確な試料水の採取、測定が可能となる。
【0024】
また、本願の請求項6に係る発明によれば、被測定領域が水面から所定の深さに指定され、かつ、該領域が陸上から離れた位置に指定される場合であっても、浮き部を採水部から所定の長さ位置に取付けておけば、容易に被測定領域における試料水を採取することができ、効率良く正確な試料水の採取、測定が可能となる。
【0025】
また、本願の請求項7に係る発明によれば、被測定領域が陸上あるいは船上から離れた位置に指定される場合であっても、錘部材を錘として投げ入れることで、さらに容易に被測定領域における試料水を採取することができ、効率良く正確な試料水の採取、測定が可能となる。
【0026】
また、本願の請求項8に係る発明によれば、水面からの深さが異なる様々な被測定領域に対しても、容易に該領域に応じた試料水を採取することができ、効率良く正確な試料水の採取、測定が可能となる。
【0027】
また、本願の請求項9に係る発明によれば、薬品の投入、試料水の採取並びに測定を行うにあたり、いちいちスライド部材を取付けたり取外すことがないため、効率良く測定対象に係る試料水を正確に採取測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本願発明の第1実施形態に係る試料水の採取測定装置を図面を参照しながら、詳細に説明する。図1ないし図3には本願発明の第1実施形態に係る試料水の採取測定装置1が示されている。この試料水の採取測定装置1は、長手方向先端側を給水部2とし長手方向基端側を開放部3とする容器4と、該容器4の内部にて長手方向先端側と長手方向基端側との間を緊密状態で進退動可能なヘッド部5を有するスライド部材6と、を備える。
【0029】
容器4は、図1に示すように、長手方向先端側を給水部2とし長手方向基端側を開放部3とし、更にその胴部7において、試料水を測定する薬品を投入するための薬品投入部8と、採取された試料水の採取領域Sに相応する採取量目盛り9とを有している。この容器4は、例えばプラスチック材やアクリル樹脂材などの合成樹脂材やガラス材などの透明性を有する部材から形成され、胴部7の採取領域S内に採取された試料水の量及び色彩を外部から視認することが可能である。また、この容器4は円筒状に形成されてなり、その内部において、スライド部材6のヘッド部5が長手方向先端側から長手方向基端側の開放部3方向へ退動可能とされるとともに、給水部2の容器内側に形成される内壁面10と衝合する位置にまで長手方向基端側から長手方向先端側まで進動するように構成されている。なお、容器4は、全体を透明とする部材に代えて、例えば一部に採取領域S内に採取された試料水の量及び色彩を視認するための透明窓部を形成してなるものであって良い。
【0030】
容器4の内部においては、スライド部材6のヘッド部5と、給水部2の内壁面10とによって試料水の採取領域Sが画成されてなる。すなわち、該ヘッド部5は容器4内を緊密状態で摺動するものとされ、給水部2側に隣接させた状態からヘッド部5を開放部3方向へ退動させて容器4内を負圧状態とし、この負圧により採取領域Sに試料水を給水部2を通じて吸い込むこととして構成されている。また容器4には、採取領域Sに相応する採取量目盛り9が表示されている。すなわち、給水部2の内壁面10位置を基準線とし(0cc)、この基準線から採取領域S内における試料水の採取量ごとの採取量線(例えば5cc、10cc)が決定され、この基準線と採取量線に対応する容器4の胴部位置に目盛りが表示されている。
【0031】
給水部2は、図2に示すように、更に長手方向の先端外側に延設されるノズル11とスライド部材6のヘッド部5の先端側を覆うように容器4の長手方向の先端内側に立設される内壁面10とノズル11から容器4の採取領域S内に給水するための給水路12とから構成され、ノズル11内における給水路12を内壁面10に穿通させるようにし、試料水がノズル11の先端側から容器4の採取領域S内に給水されるようにしている。内壁面10には薬品投入部8から投薬される固形状の薬品を配置させる凹部13が形成されてなり、容器4を鉛直方向に方向付けしたときに固形状の薬品が該凹部13に落ち込み易いよう、円筒状の容器4の軸線上に形成するとともに、その周部外方を容器4の長手方向基端側の胴部に向けて傾斜するテーパ面として形成している。
【0032】
固形状の薬品を容器4内に投入するための薬品投入部8は、容器4の採取領域Sに対して長手方向基端側の胴部7に配設される。すなわち固形状の薬品を薬品投入部8から投入した後においては、薬品投入部8に対して長手方向基端側に位置するスライド部材6のヘッド部5を、該薬品投入部8に対する長手方向先端側の位置まで進動させて容器4の採取領域Sが画成されることとなる。言い換えれば容器4内におけるヘッド部5の位置によって薬品の投入、試料水の採取並び試料水の採取にともなう試料水の測定を行うことが可能であり、これらの作業を行うにあたり、いちいち容器4からスライド部材6を取付けたり取外すことがない。また薬品投入部8は、薬品投入口14と該薬品投入口14から容器4の胴部外方に向けて立設される誘導部15とから構成されている。該誘導部15は外周を薬品投入口14と接合される下部開口と、固形状の薬品の投入を行う上部開口とを備えた筒状部材からなる。この上部開口の径は下部開口の径に対して大きく設定されており、上部開口側からの薬品投入を容易とし、一旦薬品が投入されると容易に下部開口側から飛び出さないように構成されている。
【0033】
容器4の内部には、長手方向先端側にヘッド部5と、長手方向基端側にフランジ状に形成された操作部16と、これらヘッド部5と操作部16との間に架設されるプランジャ部17とを有するスライド部材6が配設される。このプランジャ部17は長手方向の中心軸に対して十字状に放射する板材からなり、長手方向基端側の操作部16近傍において、更に該十字状の板材の一片を親指程の間隔に切欠いて形成される切欠き部18を有するものとされる。
【0034】
ヘッド部5は、凹部13に配置される薬品の粉砕手段として、先端側に該凹部13に向けて突設される凸部19を有してなる。すなわち、凸部19は凹部13と向かい合う位置に配設されており、薬品を凹部13、凸部19間に挟み込んだ状態で更にスライド部材6のヘッド部5を長手方向先端方向に押動させて、該薬品がこれら凹凸部材により押圧されて粉砕されるようにしている。凸部18の先端側は薬品を粉砕しやすいよう鋸状に形成されている。
【0035】
また、ヘッド部5は弾力性を有する部材(例えば、天然ゴム、合成ゴム等)からなり、容器4の長手方向先端側長手方向基端側間において緊密状態で進退動可能な外径からなる。すなわち、ヘッド部5の外径は容器4の胴部7内径よりわずかに大きな径に設定されている。ヘッド部5はこの外径を縮径させて容器4内に配設され、該配設状態において、ヘッド部5の外周面がヘッド部5の復元力によって容器4の胴部内周面に密接している。ところで容器4の開放部3近傍の内周位置には、容器4に厚みを与えて隆起させた胴部7内径より径の小さいストッパ部20が周設されてなり、測定者が誤ってスライド部材6を大きく退動操作した場合であっても、該ストッパ部20とヘッド部5の外周とが当接し、該ヘッド部5が容易に容器4から抜け出すことがない。なお、ヘッド部5は弾力性を有しない金属あるいは合成樹脂で形成されても良く、この場合、ヘッド部5の外径を容器4の内径に等しく設定する。
【0036】
図3には、更に、長手方向基端側を給水部2のノズル11と連結される管部材25と、該管部材25の胴部26に取付けられる浮き部材27と、該管部材25の長手方向先端側に配設される採水口28(採水部)とを含んで構成される試料水の採取測定装置1が示されている。
【0037】
第1実施形態に係る管部材25は、可撓性を有する長尺状の部材からなり、長手方向基端部を給水部2のノズル11と結合自在に結合される結合部29とするとともに、長手方向先端部を採水口28(採水部)とし、更に該採水口28(採水部)に錘部材30が取付けられて構成されている。すなわち、結合部29は管部材25における一端側の開口として形成され、該結合部29を端部開口側からノズル11に外挿することとし、給水部2に対して結合自在とされている。可撓性を有する長尺状の部材としては、ゴムチューブ、シリコンチューブなど可撓性を有する公知の管部材が適用されて良い。なお、管部材25は必ずしも可撓性を有する必要がなく、そうした管部材を適用した例に関しては後述の他の実施形態として説明する。
【0038】
浮き部材27は、空気を封入された本体部31と、該本体部31に配設される環状部32とから構成される。この環状部32は、天然ゴムや合成ゴムなどのゴム材から形成されてなり、該部を外周方向に伸展させて管部材25の結合部29側あるいは錘部材30側から管部材25を通した後、復元させて管部材25の胴部26の所定位置に装着させることとし、管部材25の胴部所定の位置に対して着脱自在に取付け可能とされるように構成されている。
【0039】
錘部材30は、必要な重量を付与するため胴部中央を肉厚に形成され、該胴部に対する一端側を管部材25の採水口28(採水部)に取付けるための取付部33とするとともに、他端側に試料水を採取するための錘部採水口34を備えて構成される。錘部材30の内部両端部間には、錘部採水口34から連通される送水路(不図示)が配設されており、錘部採水口34から採水された試料水を管部材25に送水可能である。錘部材30は、浮き部材27を取付けられる管部材25を被測定領域に係る水中に入れた状態において、その胴部26に対して採水口28(採水部)側を下向きに沈下させるためのものであり、金属や合成樹脂からなる部材で形成される。なお、錘部材30については管部材25の胴部26に対して採水口28(採水部)側を下向きに沈下させるものであれば良く、例えば、管部材25の採水口28(採水部)近傍の胴部に取付けられる錘として構成されても良い。この場合、採水口28(採水部)から直接採水することとされる。
【0040】
このようにして構成される第1実施形態に係る試料水の採取測定装置1の作用を各使用工程とともに説明する。図4は、第1実施形態に係る試料水の採取測定装置1の最終的な使用状態を示すイメージ図である。操作者は陸上から、該試料水の採取測定装置1の管部材25を錘部材30側から投げ込み、試料水の被測定領域Tまで手繰り寄せ、該被測定領域Tにおける試料水を容器4の採取領域Sに採取して、その測定を行う。
【0041】
(薬品配置工程)
試料水の採取測定装置1の使用方法は、先ず、試料水を測定する薬品を薬品投入部8から投入し、ヘッド部5と給水部2との間に配置するものとされる。図5には、固形状の薬品として使用する第1実施形態における例を示している。すなわち、操作者は薬品投入部8に対して長手方向基端側(矢印B方向)までスライド部材6のヘッド部5を退動させておき、薬品投入部7から固形状の薬品35を投入して、給水部2の内壁面10に形成される凹部13に薬品35を配置するようにする(図5a参照)。この状態からスライド部材6のヘッド部5を給水部2側(矢印F方向)まで進動させ、凹部13に配置された薬品35をヘッド部5の先端側に突設された凸部19により押圧することで粉末状に粉砕し(図5b参照)、薬品35をヘッド部5と給水部2との間に配置するようにする。
【0042】
(給水準備工程)
次に、給水部2を試料水の被測定領域Tと通じさせて、給水部2からの給水を可能とする。すなわち、管部材25を錘部材30側から被測定領域に投げ込んだ後、管部材25の長手方向基端側の結合部29を水面付近にまで移動させて管部材25内の空気を抜き、結合部29位置にまで被測定領域における試料水が送水された状態とする。この状態から結合部29を給水部2のノズル11に結合させ、給水部2から試料水の容器4に対する給水を可能な状態とする。この際、図6に示すように、被測定領域の水面からの深度Dと等しい長さ距離をもって、浮き部材27の錘部材30の錘部採水口34からの距離dを設定しておけば、被測定領域から効率良く正確に試料水の採取を行うことが可能となる。
【0043】
(試料水採取工程)
そして、図7に示すように、操作者は容器4とスライド部材6とを片方の手で把持し(例えば右手)、該容器4の外方から試料水の測定領域Sにおける採取量を目視しながら、スライド部材6をそのヘッド部5が目標とする採取量線(例えば10cc)まで退動操作する。この際、操作者は親指をプランジャ部17の切欠き部18に置き、親指の爪先でフランジ状の操作部16を押し上げることでスライド部材6の退動操作を行う。すなわち、操作者は片方の手のみを用いて簡便に試料水を採取することができ、作業効率が高められることとなる。
【0044】
(測定工程)
最後に、こうして容器4の採取領域S内に適量の試料水が採取された状態で、容器4をよく振って薬品35を試料水中に溶解させ、試料水を発色させる。この試料水の発色と、使用されていないもう片方の手(例えば左手)に把持された成分量毎の色彩を表示する色彩対照表(カラーチャート、図8参照)とを比色し、試料水の測定が行われることとなる。こうした測定においては、いちいちスライド部材6を取付けたり取外すことなく予め投薬された薬品35を用いて、試料水の測定を行うことができるので、極めて作業性が向上されたものとなる。
【0045】
液体状または粉末状の薬品を用いる第2実施形態を図9を用いて説明する。この実施例に係る試料水の採取測定装置40は、容器41の長手方向の先端内側に立設される内壁面42を平坦に形成するとともに、スライド部材43のヘッド部44先端側を該内壁面42に対して平行な平坦面として形成したものである。試料水の採取測定装置40においては、薬品投入部45から投入された液体状または粉末状の薬品が給水路46から容器41の外方に飛び出さないように、容器41の長手方向を水平に保ちながら、試料水の採取測定を行うものとされる。なおその他の構成については第1実施形態に係る構成と共通するため、説明を省略する。
【0046】
次に、固形状の薬品を用いる第3実施形態を図10を用いて説明する。この実施例に係る試料水の採取測定装置50は、容器51の長手方向の先端内側に立設される内壁面52に細かな突条53を形成するとともに、スライド部材54のヘッド部55先端側を該内壁面52に対して平行な平坦面として形成したものである。この試料水の採取測定装置50においては、薬品投入部56から投入された固形状の薬品を内壁面52の突条53の近傍に配置した状態で、スライド部材54を長手方向先端側に進動させ、突条53とヘッド部55の先端側とで薬品を押圧することにより、該薬品を粉砕することとしている。なお、この薬品の粉砕操作においては、粉砕された粉末状の薬品が給水路56から容器51の外方に飛び出さないように、容器51の長手方向を水平に保ちながら、試料水の採取測定を行うのが望ましい。なおその他の構成については第1実施形態に係る構成と共通するため、説明を省略する。
【0047】
更に、本発明の第4実施形態を図11を用いて説明する。この実施例に係る試料水の採取測定装置60は、容器61の胴部62に対してカラーチャート63を付して構成されたものに係る。この試料水の測定装置60においては、容器61内で発色させた試料水とカラーチャート63とを、直接比色しながら測定することができるので、効率良く正確な試料水の測定を行うことが可能となる。なおカラーチャート63は、測定を行う試料水の成分に応じて、容器61の胴部62に複数付されて構成されても良い。こうした構成によれば、異なる試料水の測定毎に試料水の採取測定装置を準備する必要が無く、安価に試料水の採取測定を行うことができる。なおその他の構成については第1実施形態に係る構成と共通するため、説明を省略する。
【0048】
また図12は、管部材を用いないで構成する試料水の採取測定装置70を示したものである。第5実施形態においては、ノズル71を長尺状に形成して構成されている。したがって、試料水を採取するにあたり、管部材をノズル71に連結する必要がなく、被測定領域がプール側壁上部に配設される排水溝近傍とされる場合や被測定領域が所定の領域に限定されない場合など、長尺状の管部材を必要としない被測定領域に対する試料水の採取測定を効率良く行うことができる。なおその他の構成については第1実施形態に係る構成と共通するため、説明を省略する。
【0049】
また図13に示す試料水の採取測定装置80は、管部材81をプラスチックや金属など可撓性を有しない部材で形成することとし、浮き部材並びに錘部材を用いないで構成されている。したがって、第6実施形態においては、試料水を採取するにあたり、管部材81に浮き部材や錘部材を取付ける必要がなく、被測定領域がプール側壁に配設される排水溝近傍とされる場合や被測定領域が測定者の足下の水場とされる場合など、可撓性を有する管部材を必要としない被測定領域に対する試料水の採取測定を効率良く行うことができる。なおその他の構成については第1実施形態に係る構成と共通するため、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】容器とスライド部材とを含んで構成される試料水の採取測定装置の側面を示したものである。
【図2】第1実施形態に係る試料水の採取測定装置の内部構成を示す断面図である。
【図3】管部材と浮き部材と錘部材とを含んで構成される試料水の採取測定装置の斜視図である。
【図4】試料水の採取測定装置の被測定領域に対する使用状態を示すイメージ図である。
【図5】容器内に薬品が投入される状態と、該投入された薬品が粉砕される状態とを示す断面図である。
【図6】管部材の胴部に対する浮き部材および錘部材の取付状態を示す部分図である。
【図7】容器内の採取領域に試料水を採取する工程を示す部分斜視図である。
【図8】比色法に用いられるカラーチャートの一例を示したものである。
【図9】液体状または粉末状の薬品を用いて試料水の採取測定を行う第2実施形態に係る容器の内部構成を示す断面図である。
【図10】固形状の薬品を用いて試料水の採取測定を行う第3実施形態に係る容器の内部構成を示す断面図である。
【図11】容器の胴部にカラーチャートを付した第4実施形態に係る容器の側面を示したものである。
【図12】管部材を用いないで構成された第5実施形態に係る試料水の測定装置の斜視図である。
【図13】可撓性を有しない管部材を含んで構成された第6実施形態に係る試料水の測定装置の斜視図である。
【図14】従来例に係る試料水の採水容器の構成を示したものである。
【符号の説明】
【0051】
1,40,50,60,70,80 試料水の採取測定装置
2 給水部
3 開放部
4,41,51,61 容器
5,44,55 ヘッド部
6,43,54 スライド部材
7,62 胴部(容器)
8,45,56 薬品投入部
9 採取量目盛り
10,42,52 内壁面
11,71 ノズル
12,46 給水路
13 凹部
14 薬品投入口
15 誘導部
16 操作部
17 プランジャ部
18 切欠き部
19 凸部
20 ストッパ部
25,81 管部材
26 胴部(管部材)
27 浮き部材
28 採水口
29 結合部
30 錘部材
31 本体部
32 環状部
33 取付部
34 錘部採水口
35 薬品
53 突条
63 カラーチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定領域から採取した試料水の薬品に対する発色と成分量毎の色彩を表示する色彩対照表とを比色して被測定領域中の試料水の成分を測定する試料水の採取測定装置であって、
長手方向先端側を給水部とし長手方向基端側を開放部とする容器と、
該容器の内部にて長手方向先端側長手方向基端側間を緊密状態で進退動可能なヘッド部を有し、
前記ヘッド部を前記長手方向基端側へ退動することにより、前記給水部から、前記容器内の採取領域に試料水を採取するスライド部材と、を備え、
前記容器はその胴部において、前記採取領域に対して長手方向基端側に配設される薬品投入部を有し、
前記スライド部材を退動することにより、あらかじめ前記薬品投入部から前記薬品が投入された前記採取領域に前記試料水を採取し、該採取された試料水を前記投入された薬品により発色させて測定を行うことを特徴とする試料水の採取測定装置。
【請求項2】
前記薬品投入部から投入される薬品は固形状のものとされ、該薬品をスライド部材のヘッド部と容器の給水部との間に配置した状態において、スライド部材の長手方向先端側に対する押動に応じて粉末状に粉砕する薬品の粉砕手段を備えてなる請求項1に記載の試料水の採取測定装置。
【請求項3】
前記薬品の粉砕手段は、容器の給水部内側に形成される凹部と、スライド部材のヘッド部から前記凹部に向けて突設される凸部とからなる請求項2に記載の試料水の採取測定装置。
【請求項4】
前記容器は、透明性を有する部材からなり、その胴部に給水部とスライド部材のヘッド部とで画成される試料水の採取領域に相応する採取量目盛りを付してなる請求項1ないし請求項3に記載の試料水の採取測定装置。
【請求項5】
長手方向先端側に配設される採水部と長手方向基端側に容器の給水部と着脱可能に結合される結合部とを有し、被測定領域に係る試料水を採取可能とする採取管部材を備える請求項1ないし請求項4に記載の試料水の採取測定装置。
【請求項6】
前記管部材は、可撓性を有する部材からなるとともに、その胴部に浮き部材が取付けられてなる請求項5に記載の試料水の採取測定装置。
【請求項7】
前記採水部に前記浮き部材を取付けられる管部材の胴部に対して前記採水部を被測定領域に係る水中に沈下可能とする錘部材が取付けられてなる請求項6に記載の試料水の採取測定装置。
【請求項8】
前記浮き部材は、前記管部材の胴部に対して、前記採水部から所定の長さ位置に着脱自在に取付けられてなる請求項7に記載の試料水の採取測定装置。
【請求項9】
長手方向先端側を給水部とし長手方向基端側を開放部とするとともに、その胴部において、該給水部からの給水を受ける採取領域に対して長手方向基端側に配設される薬品投入部を有する容器と、該容器の内部にて長手方向先端側長手方向基端側間を緊密状態で進退動可能なヘッド部を有するスライド部材と、を備えた試料水の採取測定装置を用いた試料水の採取測定方法であって、
前記薬品を、前記薬品投入部から、前記ヘッド部と前記給水部との間に配置する薬品配置工程と、
前記給水部を試料水の被測定領域と通じさせて、前記給水部からの給水を可能とする給水準備工程と、
前記給水準備工程から前記スライド部材を長手方向基端側に退動させることにより、前記採取領域に試料水を採取する試料水採取工程と、
該採取された試料水を前記薬品により発色させて測定を行う測定工程と、
を備えることを特徴とする試料水の採取測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−107193(P2008−107193A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289874(P2006−289874)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(506359495)鈴研株式会社 (2)
【Fターム(参考)】