説明

試片採取装置

【課題】 設備部材から現場で試片を採取でき、且つ加工変形及び熱変形の非常に少ない状態で試片を掬い取ることができる、コンパクトな試片採取装置の提供を課題とする。
【解決手段】 放電により放電加工用電極10に対峙する被採取体の部分を順次消耗させ、被採取体の表面から試片を掬いとるように採取する試片採取装置であって、回転駆動手段40と、アーム部30と、電極ホルダー20と、放電加工用電極10とを有し、放電加工用電極10は回転方向に直角な一定の幅Wをもつフレーム形状の電極とし、アーム部30は回転軸Xの回りに回転可能に構成すると共に回転軸Xに直角な方向にスライド可能に構成し、且つアーム部30の回転軸Xからのアーム長さを調節するアーム長さ調節手段を設け、これによってアーム部30の回転動作に伴う放電加工用電極10の軌跡が被採取体と交わる深さを調節して試片の掬い取り採取厚さを調節するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試片採取装置に関し、より詳しくはプラント等の実機設備の一部として現に実働しているパイプやその他の設備構成部材から、実機に与えるダメージを極力少なく、加工変形及び熱変形の無い状態で試片を採取することができる試片採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば稼動中の発電用プラント等、比較的苛酷な条件或いは安全性の確保が必要な設備においては、そのような稼動中の設備に実際に使用されている設備構成部材における強度の劣化程度を把握し、余寿命等を予測して、適切な時期にメンテナンスを行う必要がある。
このため、機器の継続使用を前提とした設備構成部材の検査は、一般には非破壊検査により行われている。
【0003】
他方、被採取体から試片を採取する方法としては、部材全体を交換したり、大型部材に対しては加工工場へ搬送した上で被採取体の一部から試片を採取するのが一般的である。採取装置を現場設備のところへ運び、設備構成部材から直接、試片の採取を行うことは、あまり行われていないのが現状である。
【0004】
また被採取体からの試片の採取は、その試片が機械的試験やその他の試験に供されるわけであるから、採取試片が採取時に加工変形や熱変形等の変質を起こしていては意味がない。この要請に対しては、例えば放電加工機を用いた試片の採取が考えられる。
放電加工機は被加工体との間で放電を行うことで被加工体に加工を施す装置である。この装置は加工ひずみが発生する領域を比較的狭い範囲に限定することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが上記非破壊検査では、実際の機械的強度を測定することができないことから、稼動設備の構成部材における劣化や寿命等を予測したりするには充分でない問題があった。
また従来の一般的な試片の採取装置は重量が大きく、また据え置き型であり、それらの採取装置を現場に運んで、且つ稼動設備の構成部材に対してセットするといった実際の採取作業には向かないものであった。
また前記放電加工機を利用して試片の採取を行う場合は、採取した試片の機械的、熱的変形の影響を小さく抑えることができるが、その一方、従来の放電加工機は本来的に加工機であり、試片を採取することを主たる目的とした装置ではないことから、試料採取には都合よくできていなかった。例えば放電加工機を用いて試片を採取する場合、放電電極の移動操作を複数回にわたって行わなければ試片が採取できない等の作業工程上の問題があり、作業に時間と手間がかかる問題があった。
【0006】
そこで本発明は上記従来の問題を解消し、設備部材から現場で試片を採取でき、且つ加工変形及び熱変形の非常に少ない状態で試片を掬い取ることができる、コンパクトな試片採取装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の試片採取装置は、放電加工用電極と被採取体との間で放電を行わせることにより放電加工用電極に対峙する被採取体の部分を順次消耗させていくことで、被採取体の表面から掬いとるようにして試片を採取する試片採取装置であって、回転駆動手段と、該回転駆動手段によって回転軸の回りに回転されるアーム部と、該アーム部に保持される電極ホルダーと、該電極ホルダーに対して着脱自在に取り付けられる放電加工用電極とを有し、該放電加工用電極は回転方向に直角な一定の幅をもつフレーム形状の電極とし、前記アーム部は前記回転軸の回りに回転可能に構成すると共に回転軸に直角な方向にスライド可能に構成し、且つアーム部の回転軸からのアーム長さを調節するアーム長さ調節手段を設け、これによって前記アーム部の回転動作に伴う放電加工用電極の軌跡が被採取体と交わる深さを調節し、試片の掬い取り採取厚さを調節するようにしたことを第1の特徴としている。
また本発明の試片採取装置は、上記第1の特徴に加えて、アーム長さ調節手段により、放電加工用電極の軌跡が被採取体に交わる深さが一定になるように調節し、よって試片の掬い取り採取厚さが一定になるようにしたことを第2の特徴としている。
また本発明の試片採取装置は、上記第1又は第2の特徴に加えて、アーム部を回転軸に直角な方向へスライド可能とするスライド手段は、回転駆動手段側にあって回転駆動される回転基台に設備されたスライドガイドと、アーム部に固定設備されると共に前記スライドガイドによって回転軸に直角な方向に案内されるスライド子とを有することを第3の特徴としている。
また本発明の試片採取装置は、上記第1〜第3の何れか特徴に加えて、アーム部の回転軸からのアーム長さを調節するアーム長さ調節手段は、アーム部を回転軸に直角な方向にスライド付勢する付勢バネと、該付勢バネによって回転軸に直角な方向に付勢されながら回転するアーム部に対してその円周位置に設けられ、アーム部と当接することでアーム部の回転軸に直角な方向におけるスライド位置を定めるならいガイドとを有することを第4の特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、回転駆動手段によってアーム部が回転軸の回りに回転されると、それに伴ってアーム部に保持された電極ホルダーが放電加工用電極を伴って回転する。この回転は非常にゆっくりと行われることで、放電加工用電極とその回転方向に近接して対峙する被採取体の部分との間で放電が行われ、放電加工用電極の軌跡と交わる被採取体部分が順次消耗、消滅される。これによって放電加工用電極の軌跡に対応した分離面が被採取体に発生、拡大してゆき、最終的にその分離面で分離された被採取体の部分が試片として掬い取られる形で採取されることになる。
装置は設備の目標の被採取体部分にセットすることで、その部分の表面部分を一定の幅で且つ適当な深さで掬い取り、採取することができる。その際、掬い取り深さを調節することで、稼動の安全性を確保しつつ、目標部分の採取を行うことが可能である。
放電加工用電極は回転方向に直角な一定の幅を持つことから、この幅が大まかに試片の幅となる。また放電加工用電極はフレーム形状とすることで、フレーム内の空間部に対応する被採取体部分は消耗、消滅することがなく、掬い取られる試片として残留することができる。
そしてアーム部を回転軸に直角な方向にスライド可能とすると共に、アーム長さ調節手段によってアーム部のアーム長さを調節することで、回転中における放電加工用電極の回転半径を途中で変更調節することができ、これによって放電加工用電極の軌跡を円弧形状からより扁平な軌跡へ或いはその逆にする等、放電加工用電極の軌跡を、被採取体の厚みや形状、行う試験の種類等に応じて種々に変更することができる。即ち、より具体的には、放電加工用電極の軌跡と被採取体との交わる深さを調節して、試片の掬い取り採取深さを調節することができる。
よって請求項1に記載の発明によれば、設備部材の採取目的部分の表面から試片を現場等においても採取することができ、採取される試片は放電加工による採取試片であるから、適切な放電条件の設定により、採取時における試片の変質が少なく、正確な試験を行うことが可能である。これにより種々の機械的、物理的、化学的試験に供することができ、その部材の疲労状態や寿命の予測、メンテナンス時期等、種々の情報を的確に得ることが可能となる。
また採取される試片は、アーム部の1回の回転動作に従って自動的に掬い取り、採取すれることが可能であり、作業が容易で、簡単である。また大型構造部の応力集中部或いは溶接部等について、ストレンゲージを貼り付けた後、その部分を局部的に採取することにより、残留応力の測定が可能となる。
また設備は回転駆動手段、アーム部、電極ホルダー、放電加工用電極、アーム部のスライド手段、アーム部のアーム長さ調節手段等であるので、比較的簡単に且つコンパクトに構成することが可能であり、現場での運搬やセットも容易に行うことが可能である。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、上記請求項1に記載の構成による上記効果に加えて、アーム長さ調節手段により、アーム部の回転中におけるアーム長さを調節することで、アーム部と共に回転する放電加工用電極の軌跡と被採取体とが交わる深さを一定になるように調節することができ、よって掬い取られる試片の厚みを一定にすることができると共に、被採取体における表面からの掬い取り深さがむやみに深くなるのを防ぐことができる。試片の厚みを一定にできることは、機械的試験等を行うのに適した試片が採取できることであり、また目的の部材から試験に使用されないような無駄な部分の採取を無くすことにある。そして掬い取り深さがむやみに深くなるのを防ぐことは、部材の安全性を確保する上で重要な事柄である。
【0010】
また請求項3に記載の発明によれば、上記請求項1又は2に記載の構成による上記効果に加えて、アーム部は、該アーム部に固定設備されたスライド子が回転駆動手段側の回転基台に設備のスライドガイドによってガイドされることにより、容易に回転軸に直角な方向にスライドさせることが可能となる。
即ちアーム部は、自己に設けたスライド子と回転駆動手段側に設けた回転基台及びスライドガイドとからなるスライド手段によって、簡単な構成で容易、確実に回転軸に直角な方向に移動することができる。
【0011】
また請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れかに記載の構成による上記効果に加えて、アーム部は回転中において、付勢バネによって回転軸に直角な方向に付勢されながら、その円周位置でならいガイドに当接することにより、容易に回転軸に直角な方向へのスライド位置が調整・制御される。
即ちアーム部は、付勢バネとならいガイドとを有するアーム長さ調節手段によって、簡単な構成で容易、確実にアーム部のアーム長さを回転中に変更・調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下の図面を参照しながら、本発明の試片採取装置についての実施形態を更に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る試片採取装置を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。図2は本発明の実施形態に係る試片採取装置の分解斜視図、図3は試片採取装置の機構を説明する簡略図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。図4は試片採取装置による試片採取の動作を説明する図である。
【0013】
先ず図1、図2を参照して、本発明の試片採取装置は、放電加工用電極10と、該放電加工用電極10を着脱自在に取り付けることができる電極ホルダー20と、該電極ホルダー20を保持するアーム部30と、該アーム部30を回転軸Xの回りに回転させる回転駆動手段40を有する。
【0014】
前記回転駆動手段40は、サーボモータ等のモータで構成されている。この回転駆動手段40はベース台50に固定され、該ベース台50の立設壁51に設けられた開口52から回転駆動手段40の回転駆動軸41が突出する形に構成されている。
回転駆動手段40の回転駆動軸41には、その先端に回転基台42が固定されて、回転駆動軸41と共に回転される。回転基台42はその中心で前記回転駆動軸41と固定され、その回転は自転となる。
また回転駆動手段40の回転駆動軸41には、その途中位置にリミット作用片43が固定されている。このリミット作用片43は前記ベース台50に設けられた一対のリミットスイッチ53に当接することで、該リミットスイッチ53をオンし、回転駆動手段40の回転駆動軸41のそれ以上の回転を停止するものである。このリミット作用片43とリミットスイッチ53はアーム部30の回転範囲を一定範囲内に規制する機能を果たすものである。
【0015】
前記アーム部30は、放電加工用電極10をアーム部30の回転軸の回りに公転させる役割を果たす部材である。
アーム部30は前記回転駆動手段40の回転駆動軸41の回転により、該回転駆動軸41と同軸の回転軸Xの回りに回転されると共に、回転軸Xに直角な方向にスライド可能に構成される。
アーム部30は、細長い長方体形状のアーム状に形成された本体31の一面側にスライド子32を固定し、他面側に絶縁ブロック33を介して電極ホルダー20を保持している。
前記スライド子32にはスライド溝32aが設けられている。一方、前記回転基台42の前記スライド溝32aと対向する面には、回転基台42の自転の中心である回転軸Xを通り且つ回転軸Xに対して直角方向に延びるスライドガイド42aが設けられている。そしてこのスライドガイド42aと前記スライド子32のスライド溝32aとが相互に摺動可能に嵌合される。これによってアーム部30は回転軸Xに直角な方向にスライド可能とされる。
前記スライド溝32aを備えたスライド子32と前記回転基台42に設備されたスライドガイド42aとでスライド手段が構成される。
【0016】
前記アーム部30は、付勢バネ61により回転軸Xに直角な方向に付勢されている。より詳細には、前記スライド手段(32、32a、42a)によるスライド方向に付勢バネ61によりバネ付勢されている。
付勢バネ61は、前記回転基台42の両側面に固定された一対のバネ取付プレート62の突出片部62aに設けられたバネ取付ボルト63と、前記アーム部30の本体31の両側面に設けられたバネ取付ボルト64との間に掛けられている。前記バネ取付プレート62の突出片部62aは回転基台42からアーム部30本体31の方に延長されて、そのバネ取付ボルト63が前記アーム部30の本体31側面のバネ取付ボルト64に対してちょうど上方に位置するように配置されている。
一方、前記アーム部30の本体31の上部には、先端部にローラ65aを設備したならいボルト65を取り付けている。そしてこのならいボルト5に対応して、前記ベース台50の立設壁51に、ならいガイド66を設けている。
【0017】
前記ならいボルト65はアーム部30の回転軸Xと平行に設けられ、その先端のローラ65aが前記ならいガイド66の下面に構成されたガイド面66aに対して当接されている。ローラ65aは前記付勢バネ61によってガイド面66aに押された状態で、アーム部30の回転に伴ってガイド面66aを円周方向に移動してゆく。
前記ならいガイド66は、アーム部30の回転の円周位置に設けられる。ならいガイド66のガイド面66aは、放電加工用電極10が移動する軌跡を決定するものである。ガイド面66aの形状に沿ってローラ65aが移動していくことで、アーム部30の回転中における回転軸Xに直角な方向でのスライド位置が決められ、これによってアーム部30のアーム長さが調節される。即ち、アーム部30の回転中における回転軸Xから放電加工用電極10が保持された位置までのアーム長さが調節される。回転中にアーム長さが調節されることで、放電加工用電極10の軌跡が調節される。
前記付勢バネ61、ならいボルト65、ならいガイド66等(より詳細には、付勢バネ61、バネ取付プレート62、バネ取付ボルト63、64、ならいボルト65、ならいガイド65)によりアーム部の回転軸Xからのアーム長さを調節するアーム長さ調節手段が構成される。
【0018】
前記電極ホルダー20は、絶縁ブロック33を介して、アーム部30に保持される。電極ホルダー20には、放電加工用電極10を挟み込む形で着脱自在に保持する把持部21が設けられている。放電加工用電極10は把持部21の取付溝21aに嵌め込まれ、蓋21bで締め付けることで、挟持される。電極ホルダー20は前記アーム部30が回転することで、回転軸Xの回りを公転する。
【0019】
放電加工用電極10はフレーム形状の電極とし、回転方向に直角(回転軸Xに平行)な方向に一定の幅Wを持つように構成している。放電加工用電極10は、より具体的には、前記幅Wを構成する幅部10aと、該幅部10aの両端からの立上がり部10bとを有するフレーム形状としている。このようなフレーム形状の電極がアーム部30の回転に伴って描く軌跡がその途中で被採取体と交わるときに、前記幅部10aや立上がり部10bと近接して対峙する被採取体Zの部分が放電により消耗、消滅し、一方、フレームで囲まれた内空間に対応する被採取体Z部分は消耗、消滅されることがないので、結果として被採取体Zから、幅Wの試片Sが掬い取られる。
図に示す前記放電加工用電極10は、幅部10aと立上がり部10bとが90度の角度をもつ形状にされているが、幅部10aと立上がり部10bとがU字状の如き湾曲した形状のものであってもよい。また幅部10aと立上がり部10bとの角度は90度に限定されるものではなく、それ以上の角度を有するもの、それ未満のものであってもよい。
【0020】
試片採取装置を簡略化した図3、図4も参照して、本発明装置の機構、動作を更に説明する。
今、回転駆動手段40の回転駆動軸41が回転駆動されると、それに伴って回転基台42が回転し、この回転基台42の回転に伴ってアーム部30の本体31が回転する。そしてアーム部30の回転により、電極ホルダー20を介して放電加工用電極10が回転軸Xの回りを回転(公転)する。このときアーム部30は、スライド手段(32、32a、42a)によりスライド可能とされ、且つアーム長さ調節手段(61、65、66)により、ローラ65aがガイド面66aに押圧しながら移動することで、ガイド面66aの凹凸形状に呼応してそのアーム長さが変更される。アーム部30のアーム長さが回転の途中で変更されることで、放電加工用電極10の軌跡は円弧軌跡から途中で変更される。
【0021】
図3の(B)に示すように、ならいガイド66のガイド面66aは、全体として円弧面状に構成すると共に、その途中位置をその前後の位置よりも深く切り込んだ曲面とし、前記深く切り込んだ曲面位置をローラ65aが通る間においては、放電加工用電極10の回転のアーム長さが短くなるようにしている。従って、この場合に放電加工用電極10の軌跡は、最初と最後が円弧状で、途中が略直線状を呈する舟形の軌跡となる。
即ち図4の(A)、(B)、(c)に示すように、放電加工用電極10は被採取体Zに対して円弧状軌跡をもって交わりを開始した(A)後、途中ではその交わり深さが略一定な状態を保ち(B)、最後に再び円弧状軌跡となって被採取体Zとの交わりを解消するような(C)軌跡をたどることになる。そしてその結果、被採取体Zから舟形状の試片Sが掬い取られる。
【0022】
上記のように放電加工用電極10の軌跡を舟形状の軌跡になるように、ならいガイド66のガイド面66aの形状を構成することで、被採取体Zの水平な表面から幅が略Wの舟形の試片Sを掬い取ることができる。舟形の試片Sの場合、試片Sの厚みを一定とすることが可能であるので、後の機械的試験やその他の試験を行うような場合の試片の調整が容易である。また被採取体Zにとっては掬い取られる深さが、例えば円弧状に掬い取られる場合に比べて十分に浅くなるので、該被採取体Zが例え稼動中の設備の一部として現に実働している場合であっても、その材料としての強度やその他の面での危険負担を最小限に抑えることができる。
【0023】
上記ならいガイド66のガイド面66aの形状は、掬い取りたい試片Sの形状や、被採取体Zの大きさや厚み等の条件に応じて、種々の形状に調整することができる。が、ならいガイド66のガイド面66aの形状は、放電加工用電極10の軌跡が被採取体Zに交わりを開始する(掬い取りを開始する)付近と交わりを終了する(掬い取りを終了する)付近とにおいては、被採取体Zに対する交わり角度(切り込み角度)が大きくなり、途中の位置(掬い取り途中の位置)では、被採取体Zの表面に平行に軌跡が進行するように、そのガイド面66aの形状を構成するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る試片採取装置を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る試片採取装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る試片採取装置の機構を説明する簡略図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る試片採取装置による試片採取の動作を説明する図で、(A)は掬い取り開始付近での動作、(B)は掬い取り途中での動作、(C)は掬い取り終了付近での動作を示す。
【符号の説明】
【0025】
10 放電加工用電極
10a 幅部
10b 立上がり部
20 電極ホルダー
21 把持部
21a 取付溝
21b 蓋
30 アーム部
31 本体
32 スライド子
32a スライド溝
33 絶縁ブロック
40 回転駆動手段
41 回転駆動軸
42 回転基台
42a スライドガイド
43 リミット作用片
50 ベース台
51 立設壁
52 開口
53 リミットスイッチ
61 付勢バネ
62 バネ取付プレート
62a 突出片部
63 バネ取付ボルト
64 バネ取付ボルト
65 ならいボルト
65a ローラ
66 ならいガイド
66a ガイド面
S 試片
W 放電加工用電極の幅
X 回転軸
Z 被採取体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電加工用電極と被採取体との間で放電を行わせることにより放電加工用電極に対峙する被採取体の部分を順次消耗させていくことで、被採取体の表面から掬いとるようにして試片を採取する試片採取装置であって、回転駆動手段と、該回転駆動手段によって回転軸の回りに回転されるアーム部と、該アーム部に保持される電極ホルダーと、該電極ホルダーに対して着脱自在に取り付けられる放電加工用電極とを有し、該放電加工用電極は回転方向に直角な一定の幅をもつフレーム形状の電極とし、前記アーム部は前記回転軸の回りに回転可能に構成すると共に回転軸に直角な方向にスライド可能に構成し、且つアーム部の回転軸からのアーム長さを調節するアーム長さ調節手段を設け、これによって前記アーム部の回転動作に伴う放電加工用電極の軌跡が被採取体と交わる深さを調節し、試片の掬い取り採取厚さを調節するようにしたことを特徴とする試片採取装置。
【請求項2】
アーム長さ調節手段により、放電加工用電極の軌跡が被採取体に交わる深さが一定になるように調節し、よって試片の掬い取り採取厚さが一定になるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の試片採取装置。
【請求項3】
アーム部を回転軸に直角な方向へスライド可能とするスライド手段は、回転駆動手段側にあって回転駆動される回転基台に設備されたスライドガイドと、アーム部に固定設備されると共に前記スライドガイドによって回転軸に直角な方向に案内されるスライド子とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の試片採取装置。
【請求項4】
アーム部の回転軸からのアーム長さを調節するアーム長さ調節手段は、アーム部を回転軸に直角な方向にスライド付勢する付勢バネと、該付勢バネによって回転軸に直角な方向に付勢されながら回転するアーム部に対してその円周位置に設けられ、アーム部と当接することでアーム部の回転軸に直角な方向におけるスライド位置を定めるならいガイドとを有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の試片採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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