説明

試薬廃棄装置

【課題】本発明は、マイクロプレート内の試薬等の廃棄を、複数枚まとめて処理することができる試薬廃棄装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、マイクロプレートを取り付けるローターポケットを複数個設け、制御用モーターにより回転可能な遠心ローターと、前記遠心ローターの遠心力により廃棄された試薬を回収して排出管から除去する廃液パンと、前記廃液パンに洗浄水を散水する洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルに洗浄水を供給する給水タンクとからなることを特徴とする試薬廃棄装置の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー関連の分析、研究又は開発等に使用するマイクロプレート内の試薬等を廃棄することができる試薬廃棄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジー関連において、分析、研究又は開発等に使用される容器としては、マイクロプレートがある。使用済みのマイクロプレートに残った試薬等の廃棄は、人が一つずつマイクロプレートを振ることにより行っている。
【0003】
特許文献1に記載されているように、遠心分離処理等の工程が終了したマイクロプレートの表面に吸収材を組み込んだ吸収パッドをかぶせて上下移動および反・正転するステージに固定し、ステージを上方に移動して反転した後、所定位置まで落下させることによって上清液を吸収材に吸収させて除去するマイクロプレートの自動廃液、撹拌方法および装置という発明も公開されている。
【特許文献1】特開2005−130837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、マイクロプレートの表面に吸収材を組み込んだ吸収パッドをかぶせて、マイクロプレートを落下させることにより、液体を除去するものであり、一枚一枚作業する必要があるため効率が良いとは言えない。
【0005】
そこで、本発明は、マイクロプレート内の試薬等の廃棄を、複数枚まとめて処理することができる試薬廃棄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、マイクロプレート5を取り付けるローターポケット4aが複数個設けられ、制御用モーター7により回転可能な遠心ローター4と、前記遠心ローター4の遠心力により廃棄された試薬を回収して排出管3bから除去する廃液パン3と、前記廃液パン3に洗浄水を散水する洗浄ノズル3aと、前記洗浄ノズル3aに洗浄水を供給する給水タンク6とからなることを特徴とする試薬廃棄装置1の構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上の構成であるから以下の効果が得られる。第1に、人が手作業で行っていた場合と同等以上の結果を得ることができる上に、一度に複数枚のマイクロプレートを処理することができ、作業効率の向上を図ることができる。また、分析、研究又は開発だけではなく、容器を破棄する際の前工程として用いることもできる。
【0008】
第2に、マイクロプレートの取付け、試薬等の廃棄、及びマイクロプレートの取出しの作業を自動化し、供給ロボット等と併用することにより、無人にて大量の処理を行うことができるようになる。
【0009】
第3に、手動又は自動のいずれの装置の場合においても、操作パネル等で回転速度及び回転時間等を変更することにより、マイクロプレート内の試薬の除去量を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、マイクロプレート内の試薬等の廃棄を、複数枚まとめて処理するという目的を、マイクロプレートを取り付けるローターポケットが複数個設けられ、制御用モーターにより回転可能な遠心ローターと、前記遠心ローターの遠心力により廃棄された試薬を回収して排出管から除去する廃液パンと、前記廃液パンに洗浄水を散水する洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルに洗浄水を供給する給水タンクとからなる試薬廃棄装置とすることで実現した。
【実施例1】
【0011】
以下に、添付図面に基づいて、本発明である試薬廃棄装置について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の斜視図であり、図2は、本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の平面図であり、図3は、本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の正面図であり、図4は、本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の側面図であり、図5は、本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の蓋を開いた状態の側面図である。
【0013】
試薬廃棄装置1は、マイクロプレート5を取り付けるローターポケット4aが複数個設けられ、制御用モーター7により回転可能な遠心ローター4と、前記遠心ローター4の遠心力により廃棄された試薬を回収して排出管3bから除去する廃液パン3と、前記廃液パン3に洗浄水を散水する洗浄ノズル3aと、前記洗浄ノズル3aに洗浄水を供給する給水タンク6とからなることを特徴とする。
【0014】
試薬廃棄装置1は、手動式の装置であり、本体2、廃液パン3、遠心ローター4、及び給水タンク6等からなり、遠心力を利用してマイクロプレート5に付着した試薬等を廃棄することができる。
【0015】
本体2は、蓋2a、操作パネル2b、脚2c、ドレン管2d、及びアーム2e等を有し、試薬廃棄装置1の外形を構成する。廃液パン3、遠心ローター4、及び給水タンク6等は、本体2の内部に存在する。
【0016】
蓋2aは、試薬廃棄装置1の動作中に、マイクロプレート5から除去された試薬等が外に飛び出さないように、本体2の上面を覆う部材である。図4及び図5に示すように、蝶番により回動可能に本体2へ取り付けられており、前側から持ち上げるように開く。
【0017】
操作パネル2bは、試薬廃棄装置1の動作を制御する盤面である。電源、スタート、ストップ、ロック解除、及び洗浄のスイッチボタン等と、回転速度や回転時間を確認又は設定するメーター等を有する。
【0018】
電源を入れ、回転速度と回転時間を設定した後、スタートで遠心ローター4が回転し、設定時間経過後に停止する。尚、ストップボタンで途中停止することもできる。また、試薬廃棄後は、廃液パン3を洗浄することもできる。
【0019】
遠心ローター4が回転中は蓋2aがロックされるので、マイクロプレート5をセットする際、又はマイクロプレート5を取り出す際には、遠心ローター4が停止しているときにロック解除して蓋2aを開く。
【0020】
脚2cは、本体2の下面の四隅に設けられた本体2を支えるための部材である。ドレン管2dは、マイクロプレート5から除去した試薬等を洗浄水と共に排出する管であり、ホース等が接続される。
【0021】
アーム2eは、蓋2aが閉じないように支える棒状の部材である。蓋2aを閉じているときは、本体2内に収納され、蓋2aを開いたときは、図5に示すように伸びて蓋2aを支えることができる。
【0022】
廃液パン3は、試薬等の廃棄を行う円形状の容器であり、中心で遠心ローター4が回転する。マイクロプレート5から除去された試薬等は、廃液パン3の中に廃棄される。また、廃液パン3の上部には、洗浄ノズル3aが四箇所ほど設けられる。
【0023】
洗浄ノズル3aは、廃液パン3に付着した試薬等を洗い流すための洗浄水を放出する噴射口であり、給水タンク6から洗浄水を供給する。洗浄水を中心に向けて放出すると、遠心ローター4の遠心力により、廃液パン3に散水される。
【0024】
遠心ローター4は、回転軸8を軸として回転する八角柱状の回転子であり、側面には八つのローターポケット4aが設置される。最高で八枚のマイクロプレート5を同時に処理することができる。
【0025】
ローターポケット4aは、マイクロプレート5を挿入する箱状の容器である。マイクロプレート5の上面を外側に向けてローターポケット4aにセットすると、遠心力により試薬等を外側へ飛ばすことができる。
【0026】
給水タンク6は、洗浄ノズル3aから放出する洗浄水が入った内蔵型のタンクである。給水管6aにより各洗浄ノズル3aに洗浄水を供給する。尚、洗浄水には有機溶剤以外の精製水などが使用される。
【0027】
図6は、本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の蓋を外した状態の平面図であり、図7は、本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の遠心ローターを外した状態の平面図であり、図8は、本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の正面の断面図である。
【0028】
操作パネル2bでロックを解除して本体2の蓋2aを開けると、廃液パン3、遠心ローター4、及び給水タンク6等が現れる。尚、本体2に収納されていたアーム2eは、本体2側の端がスライドすることにより、蓋2a側の端が蓋2aと共に上がる。
【0029】
また、本体2の内部には、遠心ローター4を回転させる制御用モーター7、給水タンク6から洗浄ノズル3aに洗浄水を供給する給水管6a、及び廃液パン3からドレン管2dへ洗浄水を排出する排出管3b等も配置される。
【0030】
廃液パン3の中に設置された遠心ローター4は、周囲のローターポケット4aでマイクロプレート5を保持し、廃液パン3内で回転させることができるが、ネジ状の留具4bを緩めて取り外すと、円柱状に突出した部分の中央に回転軸8が現れる。
【0031】
回転軸8は、廃液パン3の中央を貫通する軸であり、上端にローター固定台8a、下部にプーリー8bを有する。プーリー8bは、制御用モーター7からの回転力を回転軸8に伝達するための滑車である。
【0032】
ローター固定台8aは、回転軸8と遠心ローター4を接続する箇所であり、遠心ローター4の上面から貫通する孔4cと、ローター固定台8aの上面に空けられた孔8cとを留具4bでネジ留めする。
【0033】
ローター固定台8aの孔8cを、回転軸8の中心からずれた位置に二箇所ほど設けることで、遠心ローター4を回転軸8にしっかり固定することができ、回転軸8と共に遠心ローター4を回転させることができる。
【0034】
制御用モーター7は、電気から回転力を発生させる電動機であり、プーリー7aを有する。制御用モーター7のプーリー7aと、回転軸8のプーリー8bに、ベルト7bを掛けて、制御用モーター7で発生した回転力を回転軸8に伝える。
【0035】
遠心ローター4の回転による遠心力でマイクロプレート5から飛ばされた試薬等は、廃液パン3に付着するため、給水タンク6の洗浄水を廃液パン3に散水することにより、洗浄することができる。
【0036】
洗浄水は、給水タンク6から給水管6aを通って各洗浄ノズル3aへ送られるが、給水管6aには、洗浄水を送出する洗浄液供給ポンプ6bと、洗浄水の送出を制御する洗浄液供給開閉バルブ6cとが設けられる。
【0037】
蓋2aを閉めて操作パネル2bから洗浄の指示を出すと、洗浄液供給開閉バルブ6cが開き、洗浄液供給ポンプ6bが給水タンク6から洗浄水を吸い上げて洗浄ノズル3aへ送り出すと共に、遠心ローター4が回転して洗浄水を廃液パン3に飛散させる。
【0038】
図8に示すように、廃液パン3の底は、一方向に傾斜しており、最も低い位置が排出管3bに繋がる。図7に示すように、廃液パン3の洗浄により洗い流された試薬等は、排出管3bからドレン管2dに送られ排出される。
【0039】
図9は、本発明である試薬廃棄装置の遠心ローターの斜視図であり、図10は、本発明である試薬廃棄装置のマイクロプレートの斜視図である。
【0040】
遠心ローター4は、上面が正八角形の柱状で、八つの側面にはそれぞれローターポケット4aが取り付けられ、下面が空いて内部は中空である。また、上面には中心からずれた位置に留具4bを通すための孔4cが空けられる。
【0041】
ローターポケット4aは、左右側板と背板を連設したコの字状の部材に底板を設けた箱状であり、ローターポケット4aの背板を、遠心ローター4の側面の一つに、ネジ等により取り付ける。
【0042】
ローターポケット4aの左右側板の先端は、内側に曲がった鉤状で、マイクロプレート5を引っ掛けて保持することができる。また、背面側からマイクロプレート5を押さえる機構も有する。
【0043】
マイクロプレート5は、板状のプレート上に試薬等を入れる孔であるウェル5aが多数設けられた容器である。マイクロプレート5の例としては、SBS規格でプレートの厚さが7.4mm〜22mmのもの等がある。
【0044】
マイクロプレート5のウェル5aに入れる試薬等は、バイオテクノロジー関連における分析、研究又は開発などに使用する液体又は固体である。一つのウェル5aのサイズが小さいため、手作業で試薬等を除去するのは困難である。
【0045】
マイクロプレート5をローターポケット4aにセットする際は、マイクロプレート5を縦向きにし、ウェル5aがローターポケット4aの空き面を向くようにして、ローターポケット4aの上側から挿入する。
【実施例2】
【0046】
図11は、本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の平面図であり、図12は、本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の正面図であり、図13は、本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の側面図であり、図14は、本発明である試薬廃棄装置の外付けの給水タンクの正面図である。
【0047】
試薬廃棄装置1aは、マイクロプレート5を置くプレート置き台10と、前記プレート置き台10にマイクロプレート5を第1チャック爪11aで保持する第1チャックシリンダー11と、前記第1チャックシリンダー11で保持したマイクロプレート5を90°回転させる旋回シリンダー12と、前記旋回シリンダー12が回転させたマイクロプレート5を第2チャック爪13aで保持する第2チャックシリンダー13と、前記第2チャックシリンダー13で保持したマイクロプレート5を上昇又は下降させるプレート挿入シリンダー14と、前記プレート挿入シリンダー14がマイクロプレート5を挿入する位置をワーク検知用センサー17で確認して調整する制御用モーター15とからなり、マイクロプレート5の取付け又は取外しを自動化したことを特徴とする。また、給水タンク16を外付けにし、洗浄水を任意に選択することができる。
【0048】
試薬廃棄装置1aは、自動式の装置であり、本体9と、外付けの給水タンク16等からなり、マイクロプレート5を搬送する供給ロボット等と連携させることもできる。尚、脚9bで本体9を支えるのは同様である。
【0049】
本体9上に設けられたプレート置き台10にマイクロプレート5を載せると、第1チャック爪11aが左右両側から挟み込んで、カバー9a内へ送り、本体9内部の遠心ローター4にセットする。自動作業の設定、開始又は停止は、外部制御装置から行う。
【0050】
給水タンク16は、洗浄水の入ったタンクである。自動化すると処理枚数も増え、洗浄回数も増えることから、外付型にして容量を多くすることができる。尚、給水タンク16から本体9へ洗浄水を送るために給水管16aで接続する。
【0051】
図15は、本発明である試薬廃棄装置の自動式装置のカバー内部の平面図であり、図16は、本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の本体内部の平面図であり、図17は、本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の本体内部手前側の正面図であり、図18は、本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の本体内部奥側の正面図である。
【0052】
本体9のカバー9aを取り除くと、中央に空いた矩形状の穴の周辺に、圧力調整用レギュレーター9e、ワーク検知センサー用アンプ9f、中継基板9g、及びシリンダー動作用バルブ9h等が現れる。
【0053】
圧力調整用レギュレーター9eは、第1チャックシリンダー11、旋回シリンダー12、第2チャックシリンダー13、及びプレート挿入シリンダー14の各シリンダーの動作に必要な圧力を調整する機器である。
【0054】
ワーク検知センサー用アンプ9fは、ワーク検知用センサー17で検知した信号を増幅する機器である。ワーク検知用センサー17でマイクロプレート5を検知する際の感度を調整することができる。
【0055】
中継基板9gは、各機器と配線を接続し、信号のやり取りをする機器であり、試薬廃棄装置1aにおける作業の流れを管理する。各機器に対し、動作命令を出すと共に、各機器の動作状況を把握する。
【0056】
シリンダー動作用バルブ9hは、第1チャックシリンダー11、旋回シリンダー12、第2チャックシリンダー13、及びプレート挿入シリンダー14の各シリンダーの動作を制御するバルブを一箇所にまとめたものである。
【0057】
本体2の中央の穴には、マイクロプレート5をセットする機構として、プレート置き台10、第1チャックシリンダー11、旋回シリンダー12、第2チャックシリンダー13、及びプレート挿入シリンダー14等が設置される。
【0058】
図15においては、プレート置き台10に置いたマイクロプレート5を第1チャック爪11aで保持した後、旋回シリンダー12で第1チャックシリンダー11を奥側に90°回転した状態を示す。
【0059】
プレート置き台10は、マイクロプレート5を試薬廃棄装置1aにセットする際に、最初に載せる台である。第1チャックシリンダー11の上方に棒状又は板状の部材により取り付けられる。
【0060】
第1チャックシリンダー11は、本体2中央の穴の手前寄りに設置される装置で、アーム状の左右の第1チャック爪11aを有し、空気圧により第1チャック爪11aを開閉させることができる。
【0061】
第1チャック爪11aは、先端が爪状である。第1チャックシリンダー11が第1チャック爪11aを閉じることにより、左右両側からマイクロプレート5を挟み込んで保持することができる。
【0062】
旋回シリンダー12は、本体2の内部において第1チャックシリンダー11の側面に連結され、空気圧により第1チャックシリンダー11を回転させることができる。尚、プレート置き台10も、第1チャックシリンダー11の回転と共に回動する。
【0063】
第2チャックシリンダー13は、本体2中央の穴の奥寄りに設置される装置で、アーム状の左右の第2チャック爪13aを有し、空気圧により第2チャック爪13aを開閉させることができる。
【0064】
第2チャック爪13aは、先端が爪状である。第2チャックシリンダー13が第2チャック爪13aを閉じることにより、左右両側からマイクロプレート5を挟み込んで保持することができる。
【0065】
プレート挿入シリンダー14は、本体2上方から本体2内部にかけて設置される縦に長いレール状の装置であり、第2チャックシリンダーの背面が連結され、空気圧により第2チャックシリンダー13を上下に移動させることができる。
【0066】
本体2の内部には、廃液パン3、遠心ローター4、回転軸8、制御用モーター15、及びワーク検知用センサー17等が配置され、また、給水管16a、ドレン管9c、又は給気管9d等も敷設される。
【0067】
廃液パン3は、試薬等を廃棄する円形状の容器であり、中心に遠心ローター4が配置される。廃液パン3の上部に設置された洗浄ノズル3aには、給水管16aが接続され、洗浄水を放出することができる。
【0068】
給水管16aは、給水タンク16から洗浄水を供給する管であり、洗浄水を洗浄ノズル3aに送る洗浄液供給ポンプ16bと、洗浄水の放出を制御する洗浄液供給開閉バルブ16cを有する。
【0069】
廃液パン3の底は一方向に傾斜しており、廃液パン3内に廃棄された試薬等及び洗浄水は、廃液パン3の傾斜した底の先に設けた排出管3bからドレン管9cに送られ、外部に排出される。
【0070】
遠心ローター4は、回転軸8を軸として回転する略円柱状の回転子であり、側面には四つのローターポケット4aが設置される。尚、ローターポケット4aの数は、八つ等にすることも可能である。
【0071】
回転軸8は、遠心ローター4を回転させる軸である。回転軸8のプーリー8bと、制御用モーター15のプーリー15aに、ベルト15bを掛けることにより、制御用モーター15から回転力を得る。
【0072】
制御用モーター15は、遠心ローター4の回転させると共に、マイクロプレート5の取付け又は取外し時の位置制御も行う。マイクロプレート5を取付け又は取外しをするローターポケット4aを、第2チャックシリンダー13の位置に移動させる。
【0073】
給気管9dは、ドライエアーを通す管である。ドライエアーは、第1チャックシリンダー11、旋回シリンダー12、第2チャックシリンダー13、及びプレート挿入シリンダー14の各シリンダーを動作させるのに使用する。
【0074】
また、ワーク検知用センサー17でマイクロプレート5を検知する際に、マイクロプレート5の裏側が結露して検知しづらい場合があるので、マイクロプレート5をローターポケット4aに挿入する際に、ドライエアーを噴射して結露を吹き飛ばす。
【0075】
図19は、本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の側面の断面図であり、図20は、本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の旋回シリンダーを動作させた状態の側面の断面図であり、図21は、本発明である試薬廃棄装置の自動式装置のプレート挿入シリンダーを動作させた状態の側面の断面図である。
【0076】
図19は、初期状態である。プレート置き台10は水平な状態であり、第1チャック爪11a及び第2チャック爪13aは開いた状態であり、第2チャックシリンダー13は上昇した状態である。
【0077】
まず、プレート置き台10の上にマイクロプレート5を載せる。第1チャックシリンダー11を動作させ、左右の第1チャック爪11aを閉じて、マイクロプレート5の奥側を挟んで保持する。
【0078】
図20は、旋回シリンダー12を動作させた状態である。第1チャックシリンダー11を奥側に90°回転させると、マイクロプレート5は、垂直な状態になり、第2チャック爪13aの位置に来る。
【0079】
第2チャックシリンダー13を動作させ、左右の第2チャック爪13aを閉じて、マイクロプレート5の上側を挟んで保持する。第1チャックシリンダー11は、解放して左右の第1チャック爪11aを開く。
【0080】
図21は、プレート挿入シリンダー14を動作させた状態である。第2チャックシリンダー13を下降させると、マイクロプレート5が遠心ローター4のローターポケット4aに挿入される。
【0081】
第2チャックシリンダー13は、解放して左右の第2チャック爪を開く。各装置を初期状態に戻し、次のローターポケット4aに対し同様に行う。尚、ローターポケット4aが空いているかどうかはワーク検知用センサー17で確認する。
【0082】
ワーク検知用センサー17は、廃液パン3内の設けられ、ローターポケット4aにマイクロプレート5が挿入されているか否かを検知することができる。ワーク検知用センサー17の傍には、ドライエアーを噴射するノズルも設けられる。
【実施例3】
【0083】
図22は、本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の動作手順を示す流れ図である。動作手順18は、マイクロプレート載置18a、遠心ローター確認18b、第1チャックシリンダー作動18c、旋回シリンダー作動18d、第2チャックシリンダー作動18e、プレート挿入シリンダー作動18f、セット作業繰返し18g、遠心ローター回転18h、取出し作業準備18i、第2チャックシリンダー作動18j、プレート挿入シリンダー作動18k、第1チャックシリンダー作動18l、旋回シリンダー作動18m、マイクロプレート取出し18n、及び廃液パン洗浄18oの手順からなる。
【0084】
マイクロプレート載置18aの手順は、供給ロボット等がマイクロプレート5をプレート置き台10に一枚置く。置いたマイクロプレート5が試薬廃棄装置1aにセットされたら、次のマイクロプレート5を置く。
【0085】
尚、供給ロボットは、マイクロプレート5の格納、マイクロプレート5の排出、洗浄開始、脱水開始、脱水停止、及び初期状態復帰などの命令が組み込まれ、自動的に作業を行わせることができる。
【0086】
遠心ローター確認18bの手順は、ワーク検知用センサー17により遠心ローター4のローターポケット4aの空きを確認し、制御用モーター15がマイクロプレート5を挿入する位置に空きのローターポケット4aを移動させる。
【0087】
マイクロプレート5は、遠心ローター4に対してバランスを取ってセットするように制御する。尚、マイクロプレート5の処理枚数がバランスの取れない枚数の場合は、ダミープレートをセットする。
【0088】
例えば、ローターポケット4aの数が4個又は8個等の偶数個の場合、対向位置にセットしてバランスを取る。即ち、まずマイクロプレート5を一枚セットしたら、次はその対向位置にセットするように制御する。
【0089】
第1チャックシリンダー作動18cの手順は、第1チャックシリンダー11を作動させ、マイクロプレート5が載ったプレート置き台10を第1チャック爪11aで両側から挟み込み、マイクロプレート5が動かないように保持する。
【0090】
旋回シリンダー作動18dの手順は、旋回シリンダー12を作動させ、マイクロプレート5を保持した第1チャックシリンダー11を、第2チャックシリンダー13がある側に対し90°回転させる。
【0091】
第2チャックシリンダー作動18eの手順は、第2チャックシリンダー13を作動させ、マイクロプレート5を第2チャック爪13aで両側から挟み込む。第1チャック爪11aは解放し、第2チャック爪13aでマイクロプレート5を保持する。
【0092】
プレート挿入シリンダー作動18fの手順は、プレート挿入シリンダー14を作動させ、マイクロプレート5を保持した第2チャックシリンダー13を下降させる。マイクロプレート5は、遠心ローター4のローターポケット4aに挿入される。
【0093】
ウェル5aを上向きにして水平に置かれたマイクロプレート5は、90°の回転により垂直にされ、遠心ローター4の外周面に設けられたローターポケット4aに、ウェル5aが外側を向くようにセットされる。
【0094】
第1チャック爪11aでは、マイクロプレート5の下側を保持し、第2チャック爪13aでは、マイクロプレート5の上側を保持しているため、マイクロプレート5をローターポケット4aに挿入しやすい。
【0095】
セット作業繰返し18gの手順は、マイクロプレート載置18aから作業を繰り返す。第1チャックシリンダー11、旋回シリンダー12、第2チャックシリンダー13、及びプレート挿入シリンダー14は、最初の状態に戻す。
【0096】
即ち、第2チャックシリンダー13が、第2チャック爪13aを解放した後、プレート挿入シリンダー14が、第2チャックシリンダー13を上昇させ、旋回シリンダー12が、第1チャックシリンダー11を逆方向に90°回転させる。
【0097】
指定した枚数分の作業を繰り返し、全てのマイクロプレート5が遠心ローター4にセットされたら、遠心ローター回転18hを開始する。尚、ローターポケット4aの数を超える分については、廃液パン洗浄18oまで完了した後に、改めて最初から行う。
【0098】
遠心ローター回転18hの手順は、回転軸8に対し制御用モーター15から動力を与え、遠心ローター4を回転させる。遠心力によりマイクロプレート5から試薬等を除去することができる。
【0099】
取出し作業準備18iの手順は、試薬等を廃棄した後に、マイクロプレート5を取り出す。準備作業として、旋回シリンダー12は、第1チャックシリンダー11を90°回転させ、プレート挿入シリンダー14は、第2チャックシリンダー13を下降させる。
【0100】
また、ワーク検知用センサー17が、マイクロプレート5がセットされているローターポケット4aを確認し、制御用モーター15がマイクロプレート5を取り出す位置にローターポケット4aを移動させる。
【0101】
第2チャックシリンダー作動18jの手順は、第2チャックシリンダー13を作動させ、ローターポケット4aにセットされているマイクロプレート5を、第2チャック爪13aで両側から挟み込んで保持する。
【0102】
プレート挿入シリンダー作動18kの手順は、プレート挿入シリンダー14を作動させ、マイクロプレート5を保持した第2チャックシリンダー13を上昇させる。遠心ローター4からマイクロプレート5が取り除かれる。
【0103】
第1チャックシリンダー作動18lの手順は、第1チャックシリンダー11を作動させ、マイクロプレート5を第1チャック爪11aで両側から挟み込む。第2チャック爪13aは解放し、第1チャック爪11aでマイクロプレート5を保持する。
【0104】
旋回シリンダー作動18mの手順は、旋回シリンダー12を作動させ、マイクロプレート5を保持した第1チャックシリンダー11を逆方向に90°回転させる。マイクロプレート5は、プレート置き台10上で水平となり、第1チャック爪11aが解放される。
【0105】
マイクロプレート取出し18nの手順は、供給ロボット等がプレート置き台10に置かれた状態のマイクロプレート5を取り出す。全てのマイクロプレート5を取り出すまで、取出し作業準備18iから作業を繰り返す。
【0106】
廃液パン洗浄18oの手順は、洗浄ノズル3aから洗浄水を散水し、廃液パン3内に放出された試薬等を洗い流す。尚、洗浄水は給水タンク16から供給される。また、洗い流された試薬等は、排出管3bから排出される。
【0107】
以上のように、本発明である試薬廃棄装置1は、人が手作業で行っていた場合と同等以上の結果を得ることができる上に、一度に複数枚のマイクロプレート5を処理することができ、作業効率の向上を図ることができる。分析、研究又は開発だけではなく、容器を破棄する際の前工程として用いることもできる。
【0108】
また、マイクロプレート5の取付け、試薬等の廃棄、及びマイクロプレート5の取出しの作業を自動化し、供給ロボット等と併用することにより、無人にて大量の処理を行うことができるようになる。
【0109】
更に、手動又は自動のいずれの装置の場合においても、操作パネル2b等で回転速度及び回転時間等を変更することにより、マイクロプレート5内の試薬の除去量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の斜視図である。
【図2】本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の平面図である。
【図3】本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の正面図である。
【図4】本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の側面図である。
【図5】本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の蓋を開いた状態の側面図である。
【図6】本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の蓋を外した状態の平面図である。
【図7】本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の遠心ローターを外した状態の平面図である。
【図8】本発明である試薬廃棄装置の手動式装置の正面の断面図である。
【図9】本発明である試薬廃棄装置の遠心ローターの斜視図である。
【図10】本発明である試薬廃棄装置のマイクロプレートの斜視図である。
【図11】本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の平面図である。
【図12】本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の正面図である。
【図13】本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の側面図である。
【図14】本発明である試薬廃棄装置の外付けの給水タンクの正面図である。
【図15】本発明である試薬廃棄装置の自動式装置のカバー内部の平面図である。
【図16】本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の本体内部の平面図である。
【図17】本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の本体内部手前側の正面図である。
【図18】本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の本体内部奥側の正面図である。
【図19】本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の側面の断面図である。
【図20】本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の旋回シリンダーを動作させた状態の側面の断面図である。
【図21】本発明である試薬廃棄装置の自動式装置のプレート挿入シリンダーを動作させた状態の側面の断面図である。
【図22】本発明である試薬廃棄装置の自動式装置の動作手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0111】
1 試薬廃棄装置
1a 試薬廃棄装置
2 本体
2a 蓋
2b 操作パネル
2c 脚
2d ドレン管
2e アーム
3 廃液パン
3a 洗浄ノズル
3b 排出管
4 遠心ローター
4a ローターポケット
4b 留具
4c 孔
5 マイクロプレート
5a ウェル
6 給水タンク
6a 給水管
6b 洗浄液供給ポンプ
6c 洗浄液供給開閉バルブ
7 制御用モーター
7a プーリー
7b ベルト
8 回転軸
8a ローター固定台
8b プーリー
8c 孔
9 本体
9a カバー
9b 脚
9c ドレン管
9d 給気管
9e 圧力調整用レギュレーター
9f ワーク検知センサー用アンプ
9g 中継基板
9h シリンダー動作用バルブ
10 プレート置き台
11 第1チャックシリンダー
11a 第1チャック爪
12 旋回シリンダー
13 第2チャックシリンダー
13a 第2チャック爪
14 プレート挿入シリンダー
15 制御用モーター
15a プーリー
15b ベルト
16 給水タンク
16a 給水管
16b 洗浄液供給ポンプ
16c 洗浄液供給開閉バルブ
17 ワーク検知用センサー
18 動作手順
18a マイクロプレート載置
18b 遠心ローター確認
18c 第1チャックシリンダー作動
18d 旋回シリンダー作動
18e 第2チャックシリンダー作動
18f プレート挿入シリンダー作動
18g セット作業繰返し
18h 遠心ローター回転
18i 取出し作業準備
18j 第2チャックシリンダー作動
18k プレート挿入シリンダー作動
18l 第1チャックシリンダー作動
18m 旋回シリンダー作動
18n マイクロプレート取出し
18o 廃液パン洗浄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロプレートを取り付けるローターポケットを複数個設け、制御用モーターにより回転可能な遠心ローターと、前記遠心ローターの遠心力により廃棄された試薬を回収して排出管から除去する廃液パンと、前記廃液パンに洗浄水を散水する洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルに洗浄水を供給する給水タンクとからなることを特徴とする試薬廃棄装置。
【請求項2】
マイクロプレートを置くプレート置き台と、前記プレート置き台にマイクロプレートを第1チャック爪で保持する第1チャックシリンダーと、前記第1チャックシリンダーで保持したマイクロプレートを90°回転させる旋回シリンダーと、前記旋回シリンダーが回転させたマイクロプレートを第2チャック爪で保持する第2チャックシリンダーと、前記第2チャックシリンダーで保持したマイクロプレートを上昇又は下降させるプレート挿入シリンダーと、前記プレート挿入シリンダーがマイクロプレートを挿入する位置をワーク検知用センサーで確認して調整する制御用モーターとからなり、マイクロプレートの取付け又は取外しを自動化したことを特徴とする請求項1に記載の試薬廃棄装置。
【請求項3】
給水タンクを外付けにし、洗浄水を任意に選択できるようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の試薬廃棄装置。
【請求項4】
回転速度及び回転時間を変更してマイクロプレートの試薬除去量を調整できることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の試薬廃棄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−178355(P2007−178355A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379322(P2005−379322)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(302000634)日本サポートシステム株式会社 (2)
【Fターム(参考)】