説明

誘導加熱による固定子の加熱方法、及び加熱装置

【課題】多品種の固定子を生産するに際し、誘導加熱の効率が良く、加熱用誘導コイルの段取り替えの作業効率の良い、誘導加熱による固定子の加熱方法、及び加熱装置を提供する。
【解決手段】電動機械の固定子を誘導加熱して当該固定子に巻装されたコイル付近に塗布したワニスを硬化させるに際し、誘導加熱部分が当該固定子の外周全体を近接して覆い、固定子の積み厚の厚みにほぼ一致する程度に巻き幅を合わせ、当該誘導加熱部分においてコイルに流れる誘導加熱電流が一方向になるように誘導加熱コイルを巻回配置し、当該誘導加熱コイルに誘導加熱電流を供給すると共に、当該固定子を回転させながら加熱することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機(モータ)や、発電機(ジェネレータ)又は、両者の機能を併せ持つ電気機械(以下、請求項をも含め、「電動機械」と称する)の固定子に巻き線された電線コイルや固定子コアの水分除去やアニール処理のための予備加熱や、ワニスを塗布した後ワニスを硬化させるための加熱(以下、「本加熱」と称する)に関する技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機械の固定子の予備加熱や本加熱をできるだけ少ないエネルギーで効率的に行う加熱方式として、固定子を誘導加熱する方式がある。この方式は、従来から予備加熱に多く使用されてきたが、本加熱への適用事例が無かった。予備加熱では、前項でも述べたように水分除去などができる100℃を少し超える程度の低い温度で短時間の加熱で十分であったため、比較的問題なく実施できていた。しかし本加熱は、固定子を誘導加熱した時に発生する発生熱を電線コイルまで熱伝導させる、いわゆる間接加熱方式であるため、まず固定子表面が高温加熱され、その熱が電線コイルの外側で保護している絶縁材を介して熱を電線コイルに伝達させ、かつワニスの硬化反応が終了するまでの比較的長い時間、これを保持する必要がある。
【0003】
また、ワニスが硬化する温度は、一般に、水分除去が可能な温度を超える高い温度であるため、電線コイルに塗布したワニスの硬化温度に適した温度に加熱させるには、結果的に間接加熱部分である固定子への誘導加熱時の加熱レベルを強くしなければならない。そのため、固定子の熱劣化の懸念や、誘導加熱に起因する急速加熱により、ワニスの揮発分が発泡し、これが抜けきらないまま硬化完了し、結果的に気泡の状態で硬化してしまう懸念がある。また、電線コイルの外側を覆った絶縁材への熱影響で劣化の問題などがあり、さらに、電動機械の固定子の種類が多い場合には専用的な設備になり使い勝手が悪いなどを理由として、実用化されていなかった。
【0004】
また、最近の課題として、ワニスのVOC規制(ワニス揮発成分の大気中への放出抑制)のため、ワニスに含まれる溶剤成分を抑制せざるを得ず、この場合、ワニスの粘度が高くなるため、固定子内部の電線コイルが挿入されているスロット部分へワニスが浸透し難くなるという課題がある。
【0005】
さらに、ワニスを塗布した状態で固定子に誘導加熱による本加熱を行うと、塗布したワニスが誘導加熱用の誘導加熱コイルに垂れて、それが堆積し固まったり、周囲の機構部に付着したりして、量産設備としては実用化が困難であった。この解決策として、加熱コイルを移動させる方式(例えば特許文献1)や、誘導加熱用コイルを上側のみの半円形状にしたり、下側に空洞を設ける(例えば特許文献2、特許文献3)等の対策が施されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−92733号公報
【特許文献2】特開2009−283439号公報
【特許文献3】特開2010−262828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1の方式では設備の複雑化を招き、また、特許文献2、特許文献3の方式では、固定子の上側のみを覆う半円状の特殊な誘導加熱用コイルで固定子を誘導加熱するが、この特殊な誘導加熱コイルは被加熱物の外周を複数ターンする通常のコイルとはインダクタンスが異なるため、一般の誘導加熱用電源の指定のインダクタンスに合わせることが非常に困難である。このため、インダクタンスのマッチングのアンバランスを解消するため、誘導加熱部とは別に、マッチングトランス(インダクタンスを誘導電源の指定値に合わせるためのトランス)が必要になる。この場合、マッチングトランスでも損失が発生して発熱が生じるため、誘導加熱の効率が悪化して、結果的にエネルギー効率が悪くなるという課題がある。
【0008】
また、固定子の形状は、電動機械の出力に応じ異なる。固定子の外径は、たとえばモータでは使用する利用者の利便性を考慮し、JISなどにより取り付け寸法の標準化がなされており、外径の種類は、これに合わせ標準化されている。ところが、外径だけでは、必要に応じたモータ出力の種類を増やせないため、外径を一定にし長手方向(以下積み厚と称する)で調整する方式が多く採用されていて、積み厚の種類は非常に多い。
【0009】
しかし、誘導加熱による方式の設備では、誘導加熱コイルと固定子との隙間や、固定子の積み厚に合わせた誘導加熱コイルの幅や巻き数により、インダクタンスをそれぞれの固定子に合わせるため、固定子の種類が多いほど、誘導加熱のための誘導加熱コイルの種類を増加させなければならない。また、多品種の固定子を生産する場合、予備加熱や本加熱のための誘導加熱コイルの段取り換えなどが多く発生してしまう課題がある。
【0010】
また、誘導加熱コイルの幅が、固定子の積み厚寸法より大きくなると、固定子の両端をはみ出た部分のコイルによる誘導加熱が、固定子の両端に集中して加熱されるため、固定子が均一に加熱されない問題がある。
【0011】
本発明は、固定子の表面を誘導加熱する方式に関し、本加熱時にワニスが誘導加熱コイルに垂れて付着することを防止し、VOC規制対応で高粘度になったワニスでも固定子のスロットに充分にワニスが充填でき、従来の方式に比べてエネルギー効率を向上できる。
【0012】
すなわち、本発明の目的は、多品種の固定子を生産するに際し、誘導加熱の効率が良く、加熱用誘導コイルの段取り替えの作業効率の良い、誘導加熱による固定子の加熱方法、及び加熱装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、電動機械の固定子を誘導加熱して当該固定子に巻装されたコイル付近に塗布したワニスを硬化させる固定子の加熱方法であって、
誘導加熱部分が当該固定子の外周全体を近接して覆い、固定子の積み厚の厚みにほぼ一致する程度に巻き幅を合わせ、当該誘導加熱部分においてコイルに流れる誘導加熱電流が一方向になるように誘導加熱コイルを巻回配置し、
当該誘導加熱コイルに誘導加熱電流を供給すると共に、当該固定子を回転させながら加熱することを特徴とする。
【0014】
また、上記に記載の誘導加熱による固定子の加熱方法において、誘導加熱部分が固定子の積み厚の違いに応じ、当該誘導加熱コイルのコイル幅を、固定子の積み厚幅に合わせ通電部分を切り替え回路で切り替えることを特徴とする。
【0015】
本発明は、電動機械の固定子に巻装されたコイル付近に塗布したワニスを、予熱、冷却、ワニス塗布、昇温、温度保持からなる温度プロファイルにより、当該固定子を硬化させるために、固定子を加熱する固定子の加熱方法であって、
誘導加熱部分が当該固定子の外周全体を近接して覆い、固定子の積み厚の厚みにほぼ一致する程度に巻き幅を合わせ、当該誘導加熱部分においてコイルに流れる誘導加熱電流が一方向になるように誘導加熱コイルを巻回配置し、
前記温度プロファイルにワニス塗布後のワニス半硬化工程を含み、予熱、昇温、温度保持において、当該誘導加熱コイルに誘導加熱電流を供給すると共に、当該固定子を回転させながら加熱することを特徴とする。
【0016】
また、上記に記載の誘導加熱による固定子の加熱方法において、誘導加熱部分が固定子の積み厚の違いに応じ、当該誘導加熱コイルのコイル幅を、固定子の積み厚幅に合わせ通電部分を切り替えることを特徴とする。
【0017】
また、上記に記載した誘導加熱による固定子の加熱方法において、前記固定子を回転しながらワニスを塗布し、ワニス塗布後もワニスが半硬化するまで回転を維持することを特徴とする。
【0018】
本発明は、電動機械の固定子を誘導加熱して当該固定子に巻装されたコイル付近に付着したワニスを硬化させる固定子の加熱装置であって、
固定子を回転させながら保持する固定子チャック冶具と、
前記固定子チャック冶具により保持された前記固定子の両端に配置される一対のコイルエンド雰囲気保温カバーと、
前記固定子チャック冶具により保持された前記固定子の外周全体を覆い、固定子の積み厚の厚みにほぼ一致する程度に巻き幅を有し、当該誘導加熱部分においてコイルに流れる誘導加熱電流が一方向になるように当該固定子の全周に巻回された誘導加熱コイルとを備え、
当該誘導加熱コイルに誘導加熱電流を供給することにより固定子を加熱することを特徴とする。
【0019】
また、上記に記載した固定子の加熱装置において、更に、前記固定子チャック冶具により保持された前記固定子と誘導加熱コイルとの間に、ワニスたれ受けを、固定子の周囲の全周にわたり、設けたことを特徴とする。
【0020】
また、上記に記載した固定子の加熱装置において、更に、前記ワニスたれ受けと誘導加熱コイルとの間に断熱材を設けたことを特徴とする。
【0021】
また、上記に記載した固定子の加熱装置において、前記誘導加熱コイルを構成する誘導加熱コイル回路を、固定子の積厚寸法に応じた複数回路で構成し、積厚寸法に応じて誘導加熱コイルの回路を電気的に切換えて誘導加熱電流を供給することを特徴とする。
【0022】
また、上記に記載した固定子の加熱装置において、前記コイルエンド雰囲気保温カバーを設け、コイルエンドに使用されている紐やチューブなどの材料に付着したワニスも硬化させることができることを特徴とする。
【0023】
また、上記に記載した固定子の加熱装置において、前記コイルエンド雰囲気保温カバーの少なくとも一方が、前記固定子チャック冶具により保持された前記固定子に対して移動可能になっていることを特徴とする。
【0024】
なお、本発明では、前記に記載した誘導加熱による固定子の加熱方法において、前記温度プロファイルの温度保持において、当該固定子の中央表面温度とスロット内部中央部の温度をほぼ絶縁材耐熱温度とすると共に、当該固定子のコイルエンドの温度を、前記絶縁材耐熱温度よりも低いワニス硬化温度にすることが好ましく、又は、前記温度プロファイルの予熱における当該固定子の温度上昇の傾斜より、前記ワニス塗布後の昇温における温度上昇の傾斜の方を低くすることが好ましい。
【0025】
そして、本発明では、固定子の加熱装置において、予備加熱後、多少の冷却・均熱時間を設け固定子の温度がワニスが発砲するなどの影響の無い程度の高温の状態で固定子を回転しながらワニスの塗布を開始し、ワニス塗布終了後もワニスが半硬化するまで回転を維持する。このことで、ワニスがゲル状になりワニスの垂れがほとんどなくなる。なお、設備保全・維持の観点で誘導コイルの内側を、耐熱プラスチックフィルムなどで覆い、多少の垂れはこれで受け止める。なお、このフィルムは定期的に交換したり清掃したりする。
【0026】
また、固定子の外径は標準化されても、積み厚方向の種類が多い場合は、固定子の多品種少量生産に対応するため、誘導加熱コイルの外径は一定とし、積み厚の種類別に加熱誘導コイルの巻き幅を積み厚に合わせた誘導加熱コイルとする。ただし、これでは誘導加熱コイルの種類が多くなるので、1つの同じ外径の誘導加熱コイルに積み厚の違いのごとに、積み厚違い別の誘導加熱コイル回路を設け、これを電気的に切り替えできるようにして、多品種の固定子に1つの誘導加熱コイルを用い、この電気的な回路切り替えのみで対応できるよう工夫した誘導加熱コイルとする。更には、前記に記載した固定子の加熱装置において、コイルエンド雰囲気保温カバー設け、コイルエンドを固定するための紐などに付着したワニスが硬化しづらい対策として、コイルエンド雰囲気保温カバーを設ける。さらに、前記コイルエンド雰囲気保温カバーの少なくとも一方が、前記固定子チャック冶具により保持された前記固定子に対して移動可能になっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、固定子の全周を一方向に巻回する誘導加熱コイルにより誘導加熱の効率が良く、大幅なエネルギーの削減が可能になる。また、固定子の積み厚に応じて加熱用誘導コイルの段取り替えが不要になり作業効率が良くなる。
【0028】
また、必要時のみエネルギーを投入するようコントロールできるため、従来の乾燥炉方式などでは、作業待ちなどの空の時でも常時エネルギーを投入しなければ成らない状態と比較すると大幅なエネルギーの削減が可能になる。また、この時、スロット内部中央部分は、コイルエンド部分より若干高くなるよう温度差をつけることで、コイルエンド部よりスロット内部中央部分でのワニスの粘性を下げることができる。このためワニスが毛細管現象でスロット内部まで充分に浸透できるという利点がある。このことにより、VOC規制対応で高粘度になるワニスでも、従来よりも、より充分にスロット内部にワニスを充填できる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1になる誘導加熱による固定子の加熱装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例2になる誘導加熱による固定子の加熱装置の構成を示す図である。
【図3】多品種の積み厚に対応した誘導加熱コイルを、最大の積み厚に合わせた誘導加熱コイル1つのみで、積み厚小の固定子を加熱した場合の図である。
【図4】本発明の誘導加熱コイルの、多品種の積み厚に対応した誘導加熱コイルの回路図で、片面基準にして誘導加熱コイルを組み合わせた図である。
【図5】本発明の誘導加熱コイルの、多品種の積み厚に対応した誘導加熱コイルの回路図で、固定子の中心を基準にして誘導加熱コイルとを組み合わせた図である。
【図6】上記の実施例による固定子の誘導加熱時における温度プロファイルを示す図である。
【図7】上記の実施例により得られる固定子のスロット部でのワニス充填状態を示す図である。
【図8】上記の実施例により得られる固定子のスロット部でのワニス充填状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて実施例を説明する。
【実施例1】
【0031】
図1により、本発明の実施例1になる、誘導加熱による固定子の加熱装置の構成を示す。
【0032】
図1(A)の、符号8は、ワニスを固定子に巻装されたコイル付近に塗布した固定子の両端に設けられたコイルエンド雰囲気保温カバーを示しており、符号7は、誘導加熱コイルを示している。また、上記誘導加熱コイル7の内側周囲には、ワニスタレ落ち受け11が設けられる。図1(B)は、図1(A)におけるA−A’断面を示しており、外形が略円筒状の固定子1は、その内周面側に複数のスロット部4を形成すると共に、その内部、更には、固定子の両端部(コイルエンド部6)に亘って、電線コイル3が巻装されている。また、固定子1の内部には、一方のコイルエンド雰囲気保温カバー8を貫通して、固定子チャック冶具9が挿入され、もって、当該固定子を固定している。
【0033】
さらに、この固定子など加熱が必要な部分を誘導加熱するための誘導コイル7が、固定子の幅にほぼ均しい幅で、その固定子1の全周の周囲に一方向巻きで巻回実装されている。また、図中において、符号T16は固定子中央表面温度の測定点を、T17はスロット内部中央部温度の測定点を、そして、T18はコイルエンド部温度の測定点を、それぞれ示している。
【0034】
また、図1(C)は、外形が略円筒状の固定子1の積み厚12が図1(B)より長い固定子2の事例を示している。この場合、誘導加熱コイル7を、固定子1の積み厚を超える部分に、図1(B)の誘導加熱コイルとほぼ同じピッチで同じ巻線方向で誘導加熱コイル7を延長して巻き線し、固定子2の積み厚の幅に合わせている。最終的に、図1(C)の長い固定子2の積み厚の幅12にあわせた長さのコイルを、固定子2の全周の周囲に一方向の向きに巻線実装した誘導加熱コイル7となる。この時、誘導加熱コイル7として、図1(B)に示すコイル部分と、図1(C)に示す延長のコイル部分とを、接続端子13で電気的に直列に接続し、全体として長い固定子2の幅12にほぼ合わせた寸法の誘導加熱コイル7が形成される。なお、この場合の誘導加熱コイル7の巻きピッチは、図1(B)と図1(C)はほぼ同じ程度とすることが望ましい。
【0035】
そして、図1(D)では、固定子1を破線で示すと共に、特に、上記誘導加熱コイル7の回路(誘導加熱コイルの巻線(配線)状態)を示している。この図からも明らかなように、上記誘導加熱コイル7は、固定子を覆うように同じ方向に複数回、巻回して構成されており、固定子1(または2)の全周を覆うように取り付けられる。さらに、上記誘導加熱コイル7は、固定子1の積み厚12の種類に合わせ、その積み厚12にほぼ合わせた長さで、それぞれ分割した回路とし、必要に応じ接続端子13(切替え回路)で回路を接続し、誘導加熱コイルの電気的通電が可能な領域を、固定子の幅にほぼ合わせることができるように工夫している。さらに、ワニスを硬化させる際には、ここでは図示しないが、例えば、モータ等により上記固定子チャック冶具9を回転することにより、当該固定子1を回転する。
【0036】
さらに、上記の図からも明らかなように、コイルエンド部6付近に塗布(滴下により塗布)されたワニスを浸透・硬化させる際、固定子1の外側に近接して配置された誘導加熱コイル7、特に、誘導加熱コイル7の誘導加熱部分では、複数回同一方向に巻き回したコイル内に加熱電流が一方向に流れるようにするため(図1(D)の矢印を参照)、これらのコイルは、固定子1の外周面に沿うように配置されている。より具体的な一例として、誘導加熱コイル7に流れる電流が、略円筒形の固定子1の回転軸方向に対して直角方向にのみ流れるように設定されている。しかしながら、この誘導加熱電流の流れは、一方向にすればよく、その方向が規定されるものではない。
【0037】
上述した加熱装置の構成によれば、固定子1を比較的均一に加熱できる。特に、鋼板を積層して固定子形状に形成した後に、固定子1の表面を溶接などで一体化固定しているような固定子1などの場合、その溶接部分に誘導加熱が多く発生し、固定子1の表面が急加熱状態になり、結果的にコイルエンド部6との温度差が大きくなってしまう。そこで、上述したように、電流の流れを一方向にして固定子1の全周を巻回することが重要である。
【0038】
また、コイルエンド部6の電線コイル3は、ワニスの硬化前では、ばらけたり、膨らんだりしまうため、紐10などで縛って予め固定したり、電動機械の電気の出入り口であるコイルエンド部6のリード側5のリード線の保護チューブにより固定するが、これらは、金属ではないため熱伝導性が悪く、誘導加熱コイル6の熱伝導だけでは、熱が十分に伝わりづらい。そのため、この部分に付着したワニスは硬化しづらい。特に、外気温度が低い場合などの時は、コイルエンド部6からの放熱が激しく、この部分の紐10などの硬化がより困難になってしまう。このことへの対策として、コイルエンド部6を覆うための雰囲気保温カバー8で、コイルエンド周囲の雰囲気温度を安定させる。このことで、この紐10や、リード側5の根元のリード保護チューブのワニスも完全硬化させる機能もあわせて具備することが可能となり、このことも大きな特徴である。
【0039】
ワニスの塗布方法は、上述したように、固定子1をほぼ水平に保持しながら、円周方向に、かつ一方向に回転させながら、両側のコイルエンド部5にワニスを滴下する方式であるが、回転や、滴下ノズルや滴下位置などに関する方法は、すでに公知の事例なので省略する。
【実施例2】
【0040】
図2により、本発明の実施例2になる加熱装置の構成を示す。なお、この実施例においても、上記の実施例と同様の構成要件は、上記と同じ符号により示されている。
【0041】
実施例2は実施例1とほぼ同じであるが、相違点はワニスたれ落ち受け11と、誘導加熱コイル7の間に、固定子が加熱されたとき発生する発生熱が、誘導加熱コイル7の外側に逃げないように保温するとともに、この発生熱の影響で誘導加熱コイル7が劣化しないよう断熱材14、断熱材15を挿入し工夫したところが相違点である。なお、誘導加熱コイル7は、固定子の発生熱で劣化しないよう外側から空冷するなどの対応は、常識的に考えられる手法でもあるが、実施例2の場合は、誘導加熱コイル7で発生した熱を閉じ込めることで、より省エネの観点で有効である。
【0042】
なお、実施例2で示したように、固定子の幅とほぼ同じ幅で誘導加熱コイル7を巻き線せず、積み厚の大小にかかわらず同じ幅の誘導加熱コイル7で共用化しようとすると、特に積み厚の小さい固定子を、巻き線幅が長い誘導加熱コイル7で加熱すると、誘導加熱は、略円筒状の固定子の円筒部分の両端の端部に電磁誘導がのりやすく、この部分が異常発熱をして、固定子を比較的均等に加熱、コントロールすることが難しくなる。特にワニスの硬化に必要な温度と、絶縁材など耐熱温度に限界がある部材を使用する場合、この方式で、誘導加熱コイル7を兼用化しようとすると、温度制御が困難になるので、固定子の幅と誘導加熱コイル7の幅をほぼ同じ程度に合わせる事が、より安定的な誘導加熱を行うに当たり非常に有効である。
【0043】
図3は、上記に示した内容を、具体的に解説した図である。図3(A)は、最大の積み厚幅に合わせた誘導加熱コイル7で、最小の積み厚幅の固定子を兼用した回路図を示す。積み厚大3の積み厚幅に合わせた誘導加熱コイル7を、ほぼ同じ幅で誘導加熱コイル7を巻き線した誘導加熱コイル7で、積み厚小1のような積み厚幅が小さい固定子を、積み厚大3用の誘導加熱コイル7で誘導加熱した場合、図3(B)に示すように略円筒状の固定子の端部が、積み厚大3の固定子の場合に比べ非常に高加熱の状態になる。これは、積み厚小1よりも、誘導加熱コイル7がオーバーハングした部分の電磁誘導エネルギーが、固定子の端部に集中しやすく、特に角部が熱の逃げ道がないなどの影響で高温になってしまう。この場合、ワニスを均一に硬化させるために必要な固定子を均一に加熱するコントロールが、非常に困難になる。このため、本発明の各実施例では、積み厚大3のように誘導加熱コイル7の巻き幅を固定子の積み厚と合わせて加熱を行うこととしている。
【0044】
図4により、本発明の実施例1,2の誘導加熱コイル7の部分の構成をよりわかりやすく解説する。
【0045】
固定子の外径が、誘導加熱電源で規定されている被誘導加熱材料との相対距離(ここでは固定子との隙間と以下称する)が、その範囲領域内であれば、外径に多少の差があっても誘導加熱コイルの外径は共用化できるので、この共用可能な範囲に入る外形の固定子は、同じ誘導加熱コイル7の径で共用化する。かつ、実施例3で示した問題点を解決するため、たとえば積み厚小1、積み厚中2、積み厚大3の固定子の幅に合わせて、夫々の固定子の積み厚幅からなる複数のコイル回路で誘導加熱コイル7を構成し、多品種の積み厚の固定子でも1つの誘導コイルで対応できるように工夫している。
【0046】
この時、誘導加熱コイル7の一方側の端部を基準面8とし、この基準面8を基点に巻き、積み厚違いに対応するための、誘導加熱の回路を積み厚長手方向に伸ばし、かつ必要数の回路を構成するものとする。そして、積み厚にあわせて誘導加熱コイルの回路を切り替えて通電する。これにより、後述する実施例5と比較して、簡素な設備で多様な積み厚の固定子を加熱することができる。なお、誘導加熱コイル7の巻きピッチは、同じピッチで同じ方向に巻き線することが望ましい。
【0047】
図5により、固定子1の中心を基準にして誘導加熱コイル7を形成した場合の事例を説明する。実施例3と同様に、固定子の外径が、誘導加熱電源で規定されている被誘導加熱材料との相対距離(ここでは固定子との隙間と以下称する)が、その範囲領域内であれば、外径に多少の差があっても誘導コイルの外径は共用化できるので、この共用可能な範囲に入る外形の固定子は、同じ誘導加熱コイル7の径で共用化する。
【0048】
さらに、例えば、積み厚小1、積み厚大3の固定子の中心を基準にして、誘導加熱コイル7を夫々の固定子の積み厚幅に合わせて、1つの誘導加熱コイル7に重ね巻きして、誘導加熱コイルを1つで共用化する方式である。この場合、誘導加熱の回路は、積み厚長手方向ごとに、誘導加熱コイル7の回路を個別に構成し、必要に応じ、その固定子1に合った幅の固定子用の誘導加熱コイル回路を電気的に切り替えて回路を構成するものとする。なお、誘導加熱コイル7の巻きピッチは、同じピッチで同じ方向に巻き線することが望ましい。
【0049】
なお、この方式の場合、積み厚の種類が多くなると、固定子中心部への誘導加熱コイルの重ね巻き線部材の量が増大し、場合によっては、中心部に誘導加熱コイル7が物理的に巻ききれない場合も発生する。この場合は、固定子の積み厚ごとに誘導加熱コイル7を個別に複数作成し、固定子の幅に合った誘導加熱コイル7に固定子を選択してセットし、誘導加熱などを行う方式になり、このため段取り替えなどの手間や自動機の場合は、設備構成が複雑になる問題点が発生する。
【0050】
続いて、図6には、上記の実施例で説明した固定子の加熱方法の詳細、特に、その温度プロファイルを中心に示す。
【0051】
この図6は、固定子1への予備加熱(予熱)S1(工程)から始まり、冷却S2、ワニス塗布S3、ワニス半硬化S4、昇温S5を経過し、温度保持S6にいたるまでの一連の温度プロファイルを示すもので、横軸は時間、縦軸は温度を表している。即ち、予熱S1→冷却S2→ワニス塗布S3→ワニス半硬化S4→昇温S5→温度保持S6を含む温度プロファイルモデルである。
【0052】
この温度プロファイルの特徴を、以下に示す。まず、水分除去やアニール処理のために予備加熱(予熱)S1を行った後、固定子1を冷却S2する。冷却S2の途中で固定子を回転させながら、ワニス塗布S3を開始する。このワニス塗布S3の開始温度は、ワニスが高温の固定子に接触しても発砲などを起こさない、できるだけ高温の状態で開始することが望ましい。このワニス塗布S3が完了後に、固定子を回転させながらワニスが半硬化するまでそのまま一定時間放置する。ワニス塗布時は、通常このような放置時間を設け余分に付着したワニスの除去などを行う場合が多い。このとき上記の通りワニス特性で許される上限の高温でワニス塗布を開始することで、この放置している間に、固定子の残留熱で、ワニスが半硬化するため、後工程でのワニスのたれが、かなり抑制できる。
【0053】
次いで、塗布したワニスを硬化させるため、昇温S5を始める。この昇温S5は、急速加熱にならないよう、上記実施例1から実施例3の何れかに示すような誘導加熱コイル7を用いて、ワニスに含まれる揮発性溶剤の発泡現象が起きない程度の緩やかなカーブにすることが必要である。即ち、昇温S5における温度上昇の傾斜が、予備加熱(予熱)S1における温度上昇の傾斜よりも小さくなるようにする。また、昇温S5が、ワニスに決められたワニス硬化に適した温度に達したら、この温度を保持するため、温度保持S6で温度と時間をワニスに決められた条件にて保持する。
【0054】
なお、たとえば、この温度保持S6のタイミングで、コイルエンド雰囲気保温カバー8を横にスライド(移動)させ(図1〜図2の白抜きの矢印を参照)、コイルエンド部6の周囲の温度をワニス硬化に適した温度に保持することで、電線コイル3の紐10やリード側5の保護チューブなどに付着したワニスも硬化させることができる。
【0055】
また、この温度プロファイルモデルでは、固定子1の表面を誘導加熱すると、間接加熱による熱の伝わり方の順番に従い、スロット4内部中央部の温度T17(一点破線)とコイルエンド部6の温度T18(実線)に温度差ΔTが発生するが、この温度差ΔTについては、絶縁材耐熱温度Tiよりも、若干、ワニス硬化温度Twが低いことが望ましい。このことで絶縁材の劣化を防止しかつ、ワニスを毛細管現象でスロット4内部に十分に浸透させることが可能になる。
【0056】
これにより、スロット部4の内部へのワニスの高密度充填が可能になる。なお、絶縁材耐熱温度Tiは、製品(たとえばモータ)に設定された製品の保証稼働時間や、保証負荷条件から求められるモータの温度上昇条件から決まる温度で、これら製品仕様の総合条件から決まり、その最悪条件に絶えうる絶縁材料を選定するのが一般的である。
【0057】
なお、コイルエンド雰囲気保温カバー8を横スライドしてコイルエンド部6を密閉するタイミングは、安全上、ワニスの揮発分のほとんどが揮発しきった後が望ましい。
【0058】
更に、図7は、上記に詳述した固定子の加熱装置及びそのための方法によって製造された固定子について説明する。図7(A)は、固定子1の鋼鈑の一部を拡大して示す図であり、図7(B)は、そのスロット部4の拡大図であり、これらの図に示すように、当該スロット部4の内部には、その内に設けた絶縁材23、絶縁材24の内部に収納されて、断面が円形の複数の電線コイル3が設けられている。
【0059】
本来、ワニスを充填したい部分は、ワニス25で示した、即ち、絶縁材22と絶縁材23で囲われた電線コイル3以外の空間、及び、固定子1の一部(鋼板)26のスロット部4と、絶縁材23、絶縁材24の隙間部分、スロット部4であり、これらの開口部にワニスを完全に充填できることが、もっとも理想である。なぜなら、これら全てがワニス25により、その内部に空気泡を生じることなく、完全に密着して充填できれば、電動機械を作動させるための電力を電線コイルに通電した時発生する発生熱を、ワニス25を介して固定子1側に効率的に放熱でき、かつ電動機械の作動、停止の繰り返し時に、微細な電磁誘導により電線コイル3が振動を起こし、電線コイル3などが擦れ合って磨耗し絶縁不良になることも防止することができるからである。
【0060】
図7(C)は、たとえば電線コイル3の断面の円形形状の大きさを小さく(即ち、線径を小さく)して、極細線で巻いたときの状態図である。しかしながら、電線コイル3の充填度合いが高まれば高まるほど(電線コイル充填率の向上)、充填しなければならないワニス25の隙間が少なくなってしまう。この場合においても、本実施形態の誘導加熱による固定子の加熱方法、及び加熱装置を用いることによれば、コイルエンド部の温度T18とスロット内部中央部の温度T17との温度差により、ワニス25が毛細管現象によりスロット部4に、より浸透し易くなるという特徴(効果)が達成される。
【0061】
更に、図8は、上記に詳述した固定子の加熱装置及びそのための方法によって製造されたほかの事例の固定子について説明する。図8の例は、固定子について図7とは別の電線コイル3形状の場合であり、コイルの断面が六角形状となっている。すなわち、占積率の高い固定子であり、本実施形態では、この場合であっても毛細管現象の効果によってワニスの浸透を容易に行うことができる。
【0062】
以上に詳細に述べたように、本実施形態によれば、以下のものが提供される。
【0063】
即ち、まず、(1)誘導加熱コイルと、この誘導加熱コイルを支持するコイル芯とを有する誘導加熱システムであって、前記コイル芯は、固定子1と同じコイル芯で円周に巻き線された誘導加熱コイル誘導加熱システムである。
【0064】
次に、(2)として、上記(1)において、コイル芯上に形成された誘導加熱コイルの巻き線量は、誘導コイルの巻き線のピッチが、ほぼ同じになるように形成される誘導加熱システムである。
【0065】
また、(3)として、上記(1)又は(2)において、ワニス塗布S3後にワニスが半硬化するまで、固定子を回転させながら保持する工程を設け、さらに昇温S5時に誘導加熱コイルと固定子の間に、ワニス垂れ落ち受けを設け、前記ワニスが直接誘導加熱コイルに付着することを防止した誘導加熱システムである。
【0066】
また、(4)として、上記(1)から(3)の誘導加熱部材によって、固定子とスロット部と電線コイルとコイルエンド部とを有する被加熱物を誘導加熱する誘導加熱システムにおいて、誘導加熱コイルの巻き線が、前記被加熱物の固定子の円周方向に一方向に整列巻きされた誘導加熱システムである。
【0067】
また、(5)として、上記(4)において、誘導加熱用のコイルにワニスが付着しないよう、誘導加熱用コイルの内側に、垂れたワニスを受けるカバーを設けた誘導加熱システムである。
【0068】
また、(6)として、被加熱物にワニスを含浸する含浸部と、含浸の前に被加熱物を予備加熱する予備加熱部又は含浸の後に被加熱物に含浸したワニスを加熱硬化する硬化部の少なくとも一方と、を有する電気絶縁処理装置であって、少なくとも前記予備加熱部又は硬化部には、被加熱物の加熱手段として、上記(1)から(5)の誘導加熱装置を有する電気絶縁処理システムである。
【0069】
また、(7)として、上記(6)において、予備加熱部で昇温しつつ水分を除去し、含浸部で冷却しつつワニスを含浸し、硬化部で所定温度まで昇温して保持しつつワニスを硬化する電気絶縁処理システムである。
【0070】
また、(8)として、電動機械の製造工程においてコイルに塗布ないし含浸されたワニスを硬化させることを目的とした加熱装置において誘導加熱方式及び熱風加熱方式を有する装置である。
【0071】
また、(9)として、上記(1)から(8)の加熱装置においてワニスからの揮発成分を排気することを目的とした電動機械周囲を囲った排気システムを有する加熱装置である。
【符号の説明】
【0072】
1…固定子、2…固定子、3…電線コイル、4…スロット部、5…リード側、6…コイルエンド部、7…誘導加熱コイル、8…コイルエンド雰囲気保温カバー、9…固定子チャック治具、10…紐、11…ワニスたれ落ち受け、13…切替え回路、14、15…断熱材、23…絶縁材、24…絶縁材、25…ワニス、26…固定子1の一部(鋼板)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機械の固定子を誘導加熱して当該固定子に巻装されたコイル付近に塗布したワニスを硬化させる誘導加熱による固定子の加熱方法であって、
誘導加熱部分が当該固定子の外周全体を近接して覆い、固定子の積み厚の厚みにほぼ一致する程度に巻き幅を合わせ、当該誘導加熱部分においてコイルに流れる誘導加熱電流が一方向になるように誘導加熱コイルを巻回配置し、
当該誘導加熱コイルに誘導加熱電流を供給すると共に、当該固定子を回転させながら加熱することを特徴とする誘導加熱による固定子の加熱方法。
【請求項2】
請求項1記載の誘導加熱による固定子の加熱方法において、
誘導加熱部分が固定子の積み厚の違いに応じ、当該誘導加熱コイルのコイル幅を、固定子の積み厚幅に合わせ通電部分を切り替え回路で切り替えることを特徴とする誘導加熱による固定子の加熱方法。
【請求項3】
電動機械の固定子に巻装されたコイル付近に塗布したワニスを、予熱、冷却、ワニス塗布、昇温、温度保持からなる温度プロファイルにより、当該固定子を硬化させるために、固定子を加熱する誘導加熱による固定子の加熱方法であって、
誘導加熱部分が当該固定子の外周全体を近接して覆い、固定子の積み厚の厚みにほぼ一致する程度に巻き幅を合わせ、当該誘導加熱部分においてコイルに流れる誘導加熱電流が一方向になるように誘導加熱コイルを巻回配置し、
前記温度プロファイルにワニス塗布後のワニス半硬化工程を含み、予熱、昇温、温度保持において、当該誘導加熱コイルに誘導加熱電流を供給すると共に、当該固定子を回転させながら加熱することを特徴とする誘導加熱による固定子の加熱方法。
【請求項4】
請求項3記載の誘導加熱による固定子の加熱方法において、
誘導加熱部分が固定子の積み厚の違いに応じ、当該誘導加熱コイルのコイル幅を、固定子の積み厚幅に合わせ通電部分を切り替えることを特徴とする誘導加熱による固定子の加熱方法。
【請求項5】
前記請求項3に記載した誘導加熱による固定子の加熱方法において、前記固定子を回転しながらワニスを塗布し、ワニス塗布後もワニスが半硬化するまで回転を維持することを特徴とする誘導加熱による固定子の加熱方法。
【請求項6】
電動機械の固定子を誘導加熱して当該固定子に巻装されたコイル付近に付着したワニスを硬化させる固定子の加熱装置であって、
固定子を回転させながら保持する固定子チャック冶具と、
前記固定子チャック冶具により保持された前記固定子の両端に配置される一対のコイルエンド雰囲気保温カバーと、
前記固定子チャック冶具により保持された前記固定子の外周全体を覆い、固定子の積み厚の厚みにほぼ一致する程度に巻き幅を有し、当該誘導加熱部分においてコイルに流れる誘導加熱電流が一方向になるように当該固定子の全周に巻回された誘導加熱コイルとを備え、
当該誘導加熱コイルに誘導加熱電流を供給することにより固定子を加熱することを特徴とする誘導加熱による固定子の加熱装置。
【請求項7】
請求項6に記載した誘導加熱による固定子の加熱装置において、更に、前記固定子チャック冶具により保持された前記固定子と誘導加熱コイルとの間に、ワニスたれ落ち受けを、固定子の周囲の全周にわたり、設けたことを特徴とする誘導加熱による固定子の加熱装置。
【請求項8】
請求項7に記載した誘導加熱による固定子の加熱装置において、更に、前記ワニスたれ受けと誘導加熱コイルとの間に断熱材を設けたことを特徴とする誘導加熱による固定子の加熱装置。
【請求項9】
請求項6に記載した誘導加熱による固定子の加熱装置において、前記誘導加熱コイルを構成する誘導加熱コイル回路を、固定子の積厚寸法に応じた複数回路で構成し、積厚寸法に応じて誘導加熱コイルの回路を電気的に切換えて誘導加熱電流を供給することを特徴とする固定子の加熱装置。
【請求項10】
請求項6に記載した誘導加熱による固定子の加熱装置において、前記コイルエンド雰囲気保温カバーを設け、コイルエンドに使用されている紐やチューブなどの材料に付着したワニスも硬化させることができることを特徴とする誘導加熱による固定子の加熱装置。
【請求項11】
請求項6に記載した誘導加熱による固定子の加熱装置において、前記コイルエンド雰囲気保温カバーの少なくとも一方が、前記固定子チャック冶具により保持された前記固定子に対して移動可能になっていることを特徴とする誘導加熱による固定子の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−5553(P2013−5553A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133208(P2011−133208)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】