説明

誘導加熱容器

【課題】 高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体を備えた誘導加熱容器であって、誘導加熱発熱体を発熱させて被加熱物を加熱するに際して、機器の操作によることなく、所定時間経過後に自動的に加熱を終わらせることができる誘導加熱容器を提供する。
【解決手段】 高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体3を容器本体2の底部2aから離間して取り付けるとともに、誘導加熱発熱体3の容器本体2の底部2aに対向する側の面の所定部位に気泡溜まり8を設け、誘導加熱発熱体3により被加熱物7が加熱されて沸騰していく際に発生する気泡を溜めて、誘導加熱発熱体3と被加熱物7とを隔てる中空層9が形成されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁調理器などが備える電磁誘導加熱コイルにより発生する高周波磁界によって渦電流が誘起され、そのジュール熱により発熱する誘導加熱発熱体を備えた誘導加熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガス機器が主流であった加熱調理機器に代わって、一般に、電磁調理器と称される加熱調理機器が、安全性、清潔性、利便性、経済性などの観点から、飲食業などにおける業務用のみならず、一般家庭においても広く普及するようになってきている。
【0003】
しかしながら、この種の電磁調理器は、内部に備えた電磁誘導加熱コイルにより高周波磁界を発生させ、誘起された渦電流によって生じるジュール熱により加熱対象物を加熱するというものである。このため、炎を使わずに加熱調理を行うことができる反面、その原理上、使用できる調理器具が限られてしまい、鉄、鉄ホーローなどの磁性金属からなる専用の調理器具を用いなければならないという不利があった。
【0004】
このような状況下、上記した電磁調理器の不利を解消するものとして、例えば、特許文献1には、蒸し鍋用土鍋の底に、発熱体としてアルミニウムや銀の薄い金属層を底部に配して電磁調理器で蒸し料理ができるようにした土鍋が提案されている。
【特許文献1】特開2002−238738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、食のインスタント化が進み、電子レンジで加熱するだけで食することができるようにされた種々の食品が、冷凍又は冷蔵されて市場に流通している。このような流通形態において、包装容器をそのまま調理容器として使用できれば便利であり、また、シューマイに代表されるような蒸し料理にあっては、本来の風味を損なわないためにも、電子レンジで加熱するのではなく、蒸気によって加熱するのが好ましい。
このため、包装容器をそのまま蒸し器として利用できれば、非常に手軽で、便利である。
【0006】
しかしながら、特許文献1には、電磁調理器で蒸し料理ができるようにした土鍋が提案されているものの、特許文献1に記載されているような蒸し鍋用土鍋は、上記のような用途に利用するには不向きである。
また、電磁調理器により包装容器を蒸し器として利用するにあたり、機器の操作によることなく、収容された調理対象に応じて、容器ごとに設定された時間で加熱処理を自動で終わらすことができれば、加熱不足や、過剰加熱を未然に防いで、常に適切な条件で調理対象を蒸して加熱処理できるようになることが期待されるが、特許文献1では、そのような検討はなされていない。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体を備えた誘導加熱容器であって、誘導加熱発熱体を発熱させて被加熱物を加熱するに際して、機器の操作によることなく、所定時間経過後に自動的に加熱を終わらせることができる誘導加熱容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る誘導加熱容器は、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体が、液状の被加熱物を収容するようにされた容器本体の底部から離間して取り付けられているとともに、前記誘導加熱発熱体の前記底部側の所定部位に、前記誘導加熱発熱体と前記被加熱物とを隔てる中空層を予め形成しておくか、又は前記誘導加熱発熱体により前記被加熱物が加熱されて沸騰していく際に発生する気泡を溜めて前記中空層が形成されるように気泡溜まりを設けた構成としてある。
【0009】
このような構成とした本発明に係る誘導加熱容器は、電磁調理器による誘導加熱が可能となり、容器本体に収容された液状の被加熱物と接触した状態で誘導加熱発熱体を発熱させることによって、被加熱物を加熱することができる。
そして、誘導加熱発熱体の底部側に、誘導加熱発熱体と被加熱物とを隔てる中空層を形成することにより、被加熱物が減少して誘導加熱発熱体が露出していくに際して、より確実に中空層が形成された部位が優先的に過剰に発熱することとなり、その温度が誘導加熱発熱体の溶融温度以上になると、当該部位が溶融して破断し、機器の操作によらずとも、所定時間経過後に自動的に加熱を終わらせるようにすることが可能となる。
【0010】
このように、本発明に係る誘導加熱容器は、前記誘導加熱発熱体を発熱させて、前記容器本体に収容された液状の被加熱物を加熱するに際して、前記誘導加熱発熱体の前記中空層が形成された部位が、選択的に過剰に発熱して破断する構成とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る誘導加熱容器は、前記気泡溜まりを設けるにあたり、記誘導加熱発熱体の前記底部側の中央から外周縁に至る部位に、一部が前記外周縁に沿って垂下するように枠体を接合した構成とすることができる。
このような構成とすれば、枠体で囲まれた内側に気泡が溜まり、これによって誘導加熱発熱体と被加熱物とを隔てる中空層を、導加熱発熱体の中央から外周縁に至る部位に形成されるようにすることができる。
【0012】
また、本発明に係る誘導加熱容器は、少なくとも前記中空層が形成される部位を水平面に対して傾斜させ、当該部位が鉛直方向上位側に位置するように、前記誘導加熱発熱体を前記容器本体に取り付けた構成とすることができる。
このような構成とすれば、被加熱物が減少して誘導加熱発熱体が露出するに際して、中空層が形成される部位が先に露出するようになり、より確実に中空層が形成される部位が破断するようにして、破断部位を一意に定めることができる。
【0013】
また、このような構成において、前記気泡溜まりを設けるにあたり、少なくとも一部が鉛直方向上位側に位置する外周縁に沿って垂下するように枠体を接合した構成とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る誘導加熱容器は、前記被加熱物として水が収容され、前記容器本体に収容された水と接した状態で前記誘導加熱発熱体を発熱させることにより、容器内に蒸気が発生するようにした構成とすることができる。
このような構成とすることにより、本発明に係る誘導加熱容器は、安全、かつ、手軽に、電磁調理器により蒸し器として利用することができる。
【0015】
また、本発明に係る誘導加熱容器は、電磁調理器により蒸し器として利用するにあたり、蒸気孔が穿設されたトレーを前記容器本体に支持させ、前記トレー上に調理対象が載置されるようにした構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の誘導加熱容器は、誘導加熱発熱体を発熱させて被加熱物を加熱するに際し、誘導加熱発熱体の所定の部位が優先的に溶融して破断するため、機器の操作によらずとも、所定時間経過後に自動的に加熱を終わらせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
[第一実施形態]
先ず、本発明に係る誘導加熱容器の第一実施形態について説明する。
なお、図1は、本実施形態に係る誘導加熱容器の概略を示す説明図であり、後述する図2のA−A断面に相当する位置での容器縦断面を示している。
【0019】
図1に示す容器1は、水7などの液状の被加熱物を収容するようにされた容器本体2と、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体3と、調理対象6が載置されるトレー4と、容器本体2の開口部を覆う蓋体5とを備えている。そして、これらを備えて構成される本実施形態の容器1は、発熱する誘導加熱発熱体3が、容器本体2に収容された水7を加熱、沸騰させ、このときに発生する蒸気によって調理対象6を蒸すようにされている。
【0020】
容器本体2は、底部2aの周りを囲むようにして立設された側壁部2bを有しており、底部2aは、図示するような方形状とするほか、他の多角形状や、円形状など、任意の形状とすることができる。
また、容器本体2の開口部側には、側壁部2bの内周縁の全周に沿って、トレー4を支持するための段部2cが設けられている。容器本体2は、図示するように、この段部2cに調理対象6が載置されたトレー4を支持させるとともに、容器本体2の上端縁に載置した蓋体5で開口部が覆われるようになっており、これによって、容器内を蒸気で満たして、調理対象6を蒸すことができるようになっている。
【0021】
誘導加熱発熱体3としては、電磁調理器などが備える電磁誘導加熱コイルから発生する高周波磁界により渦電流が誘起され、その電気抵抗によりジュール熱が生じて発熱し得る導電性材料、例えば、アルミニウム,ニッケル,金,銀,銅,白金,鉄,コバルト,錫,亜鉛など、又はこれらの合金、あるいは、導電性を付与した樹脂フィルムや紙などの導電性材料を用いることができる。
より具体的には、例えば、金属材料としてアルミニウムを用いる場合、誘導加熱発熱体3は、0.10〜100μm程度の厚みのアルミニウム箔を用いて形成することができる。
【0022】
本実施形態では、図2に示すように、ほぼ円形状とされた誘導加熱発熱体3が、その外縁部近傍の四カ所において、容器本体2の底部2aから突出して形成された支持部2fに固定され、容器本体2の底部2aから離間するようにして取り付けられている。
なお、図2は、容器本体2に誘導加熱発熱体3を取り付けた状態の概略を示す平面図である。
【0023】
誘導加熱発熱体3を支持部2fに固定するには、図示するように、誘導加熱発熱体3の外縁部近傍の四カ所に設けたスリット3bから支持部2fの先端部分を突出させて、この先端部分にイーリング、シーリングなどの留め具を固着すればよいが、これに限定されない。例えば、スリット3bから突出させた支持部2fの先端部分を折り返したり、潰したりするなどのほか、ビス、鋲などの留め具を用いたり、ヒートシールや、接着剤によって固定するようにしてもよい。さらに、スリット3bの代わりに、十字、星形などに切り込みを入れてもよく、誘導加熱発熱体3と支持部2fとの接触面積を減らして、熱伝導が少なくなるような切り込み形状とするのが好ましい。
【0024】
このようにして誘導加熱発熱体3を容器本体2に取り付ければ、適度な張力を作用させながら誘導加熱発熱体3を固定できるので、水7が沸騰する際の勢いによって、誘導加熱発熱体3が激しく揺れ動いてしまうのを抑制することができる。
【0025】
さらに、誘導加熱発熱体3は、ほとんどの部分が、容器本体2とは非接触となり、誘導加熱発熱体3が発熱する際の熱による影響が少ない。このため、容器本体2を形成する材料には、冷凍又は冷蔵された食品などの包装容器として従来用いられているものと同様の材料、より具体的には、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂などの合成樹脂材料、さらには、紙や、ガラスなど、種々の汎用の非磁性材料を用いることができる。これにより、電磁調理器で使用可能な低コストの誘導加熱容器を容易に提供することが可能になる。
【0026】
また、図示する例において、誘導加熱発熱体3の容器本体2の底部2aと対向する側の面には、誘導加熱発熱体3の中央から外周縁に至る部位に枠体8aが接合され、この枠体8aで囲まれた気泡溜まり8が設けられている。本実施形態における枠対8aは、その一部が誘導加熱発熱体3の外周縁に沿って垂下するようにして四方を囲む枠状の構造体とされており、図3に示すように、接合しろ8bを介して誘導加熱発熱体3の所定部位に接合されるようになっている。
なお、本実施形態における枠体8aは、その一部が誘導加熱発熱体3の外周縁に沿って垂下して気泡溜まり8を形成する枠状の構造体となっていれば、図示するような扇形の平面形状を有するものには限られない。
【0027】
枠体8aを形成する材料には、誘導加熱発熱体3と同様の導電性材料を用いてもよく、容器本体2と同様の汎用の非磁性材料などを用いてもよい。
また、枠体8aを誘導加熱発熱体3に接合するには、誘導加熱発熱体3に対して枠体8aをヒートシールによって接合したり、接着テープや接着剤などを用いて接合したりしてもよく、その具体的な取り付け手段は特に限定されない。
【0028】
以上のような容器1は、市販の電磁調理器の上に置いて使用される。この際、所定量の水7を容器本体2に注入して、誘導加熱発熱体3が水7に浸されるようにしつつ、容器本体2の段部2cにトレー4を支持させる。そして、このトレー4上に調理対象6を載置し、容器本体2の開口部を蓋体5で覆ってから、誘導加熱発熱体3が水7と接した状態で電磁調理器を作動させ、誘導加熱発熱体3を発熱させる。
これにより、誘導加熱発熱体3に接している水7が加熱されて沸騰し、容器内に発生する蒸気により調理対象6を蒸すことができる。
【0029】
水7を容器本体2に注入するに際して、水7には、必要に応じて、調理用の香料、油分、調味液などを含有させることもできる。
また、特に図示しないが、トレー4には一又は二以上の蒸気孔を穿設し、水7が沸騰して発生した蒸気が容器全体に行き渡るようにしておくことができる。蓋体5には、容器内に発生した蒸気を適度に外部に逃がすための蒸気抜きを設けておくこともできる。トレー4や、蓋体5は、前述したような容器本体2と同様の材料を用いて形成することができるが、蓋体5は、加熱対象6を目視できるように、透明性の高い材料により形成するのが好ましい。
【0030】
このように、容器1は、水7を注入するだけで、電磁調理器により蒸し器として利用することができるが、使用に際して容器内に蒸気が発生すると、これに伴って容器本体2に収容された水7が減少する。そして、水7が減少して水位が下がっていくと、誘導加熱発熱体3が水面から露出し、水7への熱の流れが途絶えて誘導加熱発熱体3が過剰に発熱することとなるが、沸騰する水7の水面は水しぶきを上げて激しく波打っており、誘導加熱発熱体3の裏面(容器本体2の底部2a側の面)は、誘導加熱発熱体3の表面が水面から露出した後も、しばらくは、このような水しぶきを浴びた状態となっている。
【0031】
したがって、誘導加熱発熱体3が水しぶきを浴びている間は、水しぶきを受けた部位の熱が奪われて誘導加熱発熱体3の過剰な発熱が抑制されるものの、水面から上がる水しぶきは誘導加熱発熱体3の全体にわたって均一にかかるわけではない。このため、誘導加熱発熱体3が過剰に発熱して、その温度が誘導加熱発熱体3の溶融温度以上になると、過剰に発熱した部位は溶融して破断するところ、誘導加熱発熱体3が水しぶきを受ける部位は不規則に変化し、過剰に発熱する部位と、発熱が抑制される部位とが定まらない。
その結果、誘導加熱発熱体3が過剰に発熱して破断するとしても、その時々によって異なる部位が破断するようになってしまい、また、破断するタイミングの制御も困難である。特に、図示する例のように、誘導加熱発熱体3が円形状とされている場合には、誘導加熱発熱体3に誘起される渦電流の密度に偏りが生じ難いため、破断部位や破断するタイミングが定まらない傾向が強い。
【0032】
そこで、本実施形態にあっては、前述したように、誘導加熱発熱体3の容器本体2の底部2aと対向する側の面には、誘導加熱発熱体3の中央から外周縁に至る部位に枠体8aを接合することによって、気泡溜まり8を設けている。このようにすることで、誘導加熱発熱体3により加熱されて水7が沸騰していく際に発生する気泡が、枠体8aで囲まれた気泡溜まり8に溜まっていき、気泡溜まり8内に、導加熱発熱体3と水7とを隔てる中空層9が形成されていく。
【0033】
ここで、図1(a)は、誘導加熱発熱体3が水面から露出する前の状態を示しており、このときの水位L1を破線で示している。また。図1(b)は、誘導加熱発熱体3が水面から露出するとともに、気泡溜まり8内に気泡が溜まって中空層9が形成された状態を示しており、このときの気泡溜まり8内における水位L3と、それ以外における水位L2を、それぞれ同様に鎖線で示している。
【0034】
図示するように、気泡溜まり8内における水位L3は、誘導加熱発熱体3と水7とを隔てる中空層9が形成されることにより、他の部位における水位L2よりも低くなっている。このため、水面から誘導加熱発熱体3までの距離が離れており、沸騰する水面から上がる水しぶきが誘導加熱発熱体3に達し難くなっているので、水しぶきによって誘導加熱発熱体3の発熱が抑制される程度を小さくすることができる。
【0035】
このように、本実施形態では、誘導加熱発熱体3の底部側2aに、誘導加熱発熱体3と被加熱物である水7とを隔てる中空層9が形成されるため、水7が減少して誘導加熱発熱体3が露出していくに際して、中空層9が形成された部位では、沸騰する水面から上がる水しぶきによって誘導加熱発熱体3から熱が奪われてしまうのを有効に回避することができる。これにより、誘導加熱発熱体3は、水7が減少していくにしたがって、中空層9が形成された部位が優先的に過剰に発熱することとなり、その温度が誘導加熱発熱体3の溶融温度以上になると、図4に示すように、当該部位が外縁部から中央部に向かって溶融して破断が生じる。そして、このようにして誘導加熱発熱体3が破断する際には、気泡溜まり8内における水位L3と、他の部位における水位L2との差によって、中空層9を形成する空気がわずかに陽圧状態となって誘導加熱発熱体3を押し上げて、破断を促すように誘導加熱発熱体3に張力が作用する。
なお、図4は、誘導加熱発熱体3が破断した状態を示す説明図であり、破断部を符号Cで示す。
【0036】
ここで、図示する例では、誘導加熱発熱体3のほぼ中央に、円形の抜き孔からなる貫通部3aが形成されている。このような貫通部3aを設けることで、誘導加熱発熱体3が、外縁部から中央部に向かって破断しやすくなるようにすることができる。貫通部3aは、図示するような円形の抜き孔とするほか、例えば、スリットを放射状に切り込んで形成するなどしてもよい。
【0037】
誘導加熱発熱体3が破断すると、安全機構が働いて電磁調理器が停止する。このため、調理対象6を蒸すのに要する時間に応じて、誘導加熱発熱体3や気泡溜め8を形成する枠体8aの形状、寸法、容器本体2に注入する水の量などを適宜調整することにより、誘導加熱発熱体3を発熱させてから、誘導加熱発熱体3が破断するまでの時間を管理して、電磁調理器の操作によらずとも、所定時間経過後に、加熱処理を自動的に終わらせることができる。
したがって、収容された調理対象6に応じて、容器ごとに設定された時間で加熱処理を自動で終わらすことができ、加熱不足や、過剰加熱を未然に防いで、常に適切な条件で調理対象を蒸して加熱処理できる。
【0038】
[第二実施形態]
次に、本発明に係る誘導加熱容器の第二実施形態について説明する。
なお、図5は、本実施形態の概略を示す説明図であり、前述の第一実施形態における図1に対応する。
【0039】
前述した第一実施形態では、誘導加熱発熱体3の底部2a側に接合された枠体8aで囲まれた気泡溜まり8に、水7が加熱されて沸騰していく際に発生する気泡が溜まっていくことにより、導加熱発熱体3と水7とを隔てる中空層9が形成されていくようにしてあるが、本実施形態では、中空層9が予め形成されるようにしてある。
【0040】
すなわち、本実施形態では、第一実施形態における枠体8aの開口部を塞いだような構造とされた囲繞体8bを、枠体8aの代わりに誘導加熱発熱体3に接合してある。これにより、誘導加熱発熱体3と囲繞体8bとに囲まれて中空層9が形成され、誘導加熱発熱体3と水7とが隔てられるようにしてある。
【0041】
このようにすることで、沸騰する水面から上がる水しぶきが誘導加熱発熱体3にかからなくすることができ、水7が減少していくにしたがって、誘導加熱発熱体3は確実に、中空層9が形成された部位が優先的に過剰に発熱して破断するようになる。さらに、このようにして誘導加熱発熱体3が破断する際に、中空層9内に封入された空気が温められて膨張し、破断を促すように誘導加熱発熱体3に張力が作用する。
【0042】
本実施形態が第一実施形態と異なるのは、以上の点であり、それ以外は同様の構成を備えているので、他の構成についての詳細な説明は省略する。
【0043】
[第三実施形態]
次に、本発明に係る誘導加熱調理容器の第三実施形態について説明する。
なお、図6は、本実施形態の概略を示す説明図であり、前述の第一実施形態における図1に対応する。
【0044】
本実施形態が、前述の第一実施形態と異なるのは、誘導加熱発熱体3を容器本体2に取り付けるにあたり、誘導加熱発熱体3を水平面に対して傾斜させた点にある。そして、気泡溜まり8を設けるにあたっては、誘導加熱発熱体3の鉛直方向上位側に位置する辺と、この辺を挟む二辺の外周縁に沿って垂下するようにして三方を囲む枠状の構造体とされた枠体8aを接合している。
【0045】
すなわち、本実施形態にあっては、誘導加熱発熱体3が水平面に対して傾斜しているので、その上位側の三方を囲むだけで気泡溜まり8を形成することができ、枠体8aは、その少なくとも一部が誘導加熱発熱体3の鉛直方向上位側に位置する外周縁に沿って垂下するようにして、誘導加熱発熱体3に接合されていればよい。
【0046】
そして、水7が減少して誘導加熱発熱体3が露出する際には、上位側に位置する気泡溜まり8に気泡が溜まっていくことで中空層9が形成されるので、この中空層9が形成される部位が、他の部位よりも先に水面から露出するようになる。このように、少なくとも中空層9が形成される部位を水平面に対して傾斜させ、当該部位が鉛直方向上位側に位置するようにすれば、中空層9が形成される部位が他の部位よりも先に水面から露出し、より確実に破断するようになるため、破断部位を一意に定めることができる。
【0047】
本実施形態において、誘導加熱発熱体3は、図示するように、枠体8aを介して容器本体2に取り付けることができるが、誘導加熱発熱体3と枠体8aとの間や、枠体8aと容器本体2との間は、接着テープや接着剤などの適宜手段により接着することができる。
また、本実施形態における枠体8aを形成する材料には、誘導加熱発熱体3と同様の導電性材料や、容器本体2と同様の汎用の非磁性材料などを用いることができる。
【0048】
本実施形態が第一実施形態と異なるのは、以上の点であり、それ以外は同様の構成を備えているので、他の構成についての詳細な説明は省略する。
【0049】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0050】
例えば、前述した実施形態では、被加熱物として水7を容器本体2に収容し、容器1を蒸し器として使用して、調理対象6を蒸して加熱処理する例を示したが、被加熱物を直接に加熱するための加熱容器として使用するようにしてもよい。
【0051】
また、誘導加熱発熱体3に渦電流を誘起させて発熱させるにあたり、誘導加熱発熱体3の中央から外周に至る長さが短い部位ほど、その部位における渦電流密度が高くなって発熱しやすく、溶融により破断しやすい傾向にあるが、誘起される渦電流の密度に多少の偏りがあったとしても、本発明にあっては、中空層9が形成される部位を、より確実に破断させることができる。このため、誘導加熱発熱体3の形状は、前述した実施形態において図示した例には限られず、容器本体2への取り付けが妨げられない範囲で種々の形状とすることができる。
【0052】
また、前述した第三実施形態では、枠体8aを介して誘導加熱発熱体3を容器本体2に取り付けるようにしているが、前述した第一及び第二実施形態においても、枠対8aや囲繞体8bを介し、これらが支持部2fを兼ねるようにして、誘導加熱発熱体3を容器本体2に取り付けるようにしもよい。
また、前述したいずれの実施形態にあっても、容器本体2の底部2a又は側壁部2bの一部を突出させて、枠対8aや囲繞体8bを形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本発明は、市販の電磁調理器により誘導加熱発熱体を発熱させて、被加熱物を加熱する誘導加熱容器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る誘導加熱容器の第一実施形態の概略を示す説明図である。
【図2】本発明に係る誘導加熱容器の第一実施形態において、誘導加熱発熱体を容器本体に取り付けた状態を示す平面図である。
【図3】本発明に係る誘導加熱容器の第一実施形態における誘導加熱発熱体と枠体の一例を示す概略斜視図である。
【図4】本発明に係る誘導加熱容器の第一実施形態において、誘導加熱発熱体が破断した状態を示す説明図である。
【図5】本発明に係る誘導加熱容器の第二実施形態の概略を示す説明図である。
【図6】本発明に係る誘導加熱容器の第三実施形態の概略を示す説明図である。
【図7】本発明に係る誘導加熱容器の第三実施形態において、誘導加熱発熱体を容器本体に取り付けた状態を示す平面図である。
【図8】本発明に係る誘導加熱容器の第三実施形態における誘導加熱発熱体と枠体の一例を示す概略斜視図である。
【図9】本発明に係る誘導加熱容器の第三実施形態において、誘導加熱発熱体が破断した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 容器
2 容器本体
2a 底部
3 誘導加熱発熱体
4 トレー
6 調理対象
7 水
8 気泡溜まり
8a 枠体
9 中空層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する誘導加熱発熱体が、液状の被加熱物を収容するようにされた容器本体の底部から離間して取り付けられているとともに、
前記誘導加熱発熱体の前記底部側の所定部位に、
前記誘導加熱発熱体と前記被加熱物とを隔てる中空層を予め形成しておくか、又は前記誘導加熱発熱体により前記被加熱物が加熱されて沸騰していく際に発生する気泡を溜めて前記中空層が形成されるように気泡溜まりを設けたことを特徴とする誘導加熱容器。
【請求項2】
前記誘導加熱発熱体を発熱させて、前記容器本体に収容された液状の被加熱物を加熱するに際して、
前記誘導加熱発熱体の前記中空層が形成された部位が、選択的に過剰に発熱して破断するようにされた請求項1に記載の誘導加熱容器。
【請求項3】
前記気泡溜まりを設けるにあたり、
記誘導加熱発熱体の前記底部側の中央から外周縁に至る部位に、一部が前記外周縁に沿って垂下するように枠体を接合した請求項1〜2のいずれか1項に記載の誘導加熱容器。
【請求項4】
少なくとも前記中空層が形成される部位を水平面に対して傾斜させ、当該部位が鉛直方向上位側に位置するように、前記誘導加熱発熱体を前記容器本体に取り付けた請求項1〜2のいずれか1項に記載の誘導加熱容器。
【請求項5】
前記気泡溜まりを設けるにあたり、
少なくとも一部が鉛直方向上位側に位置する外周縁に沿って垂下するように枠体を接合した請求項4項に記載の誘導加熱容器。
【請求項6】
前記被加熱物として水が収容され、
前記容器本体に収容された水と接した状態で前記誘導加熱発熱体を発熱させることにより、容器内に蒸気が発生するようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘導加熱容器。
【請求項7】
蒸気孔が穿設されたトレーを前記容器本体に支持させ、前記トレー上に調理対象が載置されるようにした請求項6に記載の誘導加熱容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−237509(P2008−237509A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81666(P2007−81666)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】