説明

誘導加熱装置およびそれを備える発電システム

【課題】簡易な構成でありながら、熱媒体を加熱するのに適した良好な性能を有し、十分に実用的な誘導加熱装置およびそれを備える発電システムを提供する。
【解決手段】誘導加熱装置101は、回転軸21に固定され、外形が非円形の磁性材料からなる回転体11と、回転体に対向するように回転体の外周に、極性が交互になるように配置された固定磁極121〜124(固定磁極群12)と、各固定磁極に設けられ、直流磁場を発生させるコイル素子131〜134(コイル13)と、固定磁極と回転体との間に配置され、導電材料からなる加熱部14と、加熱部に設けられ、熱媒体が流通する配管15とを備える。そして、コイル13の直流通電により、固定磁極群12と回転体11とで磁気回路が形成され、回転体11の回転により、加熱部14を通過する磁束が変化することで、加熱部14が誘導加熱され、配管15内の熱媒体を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱を利用して熱媒体を加熱する誘導加熱装置およびそれを備える発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水を加熱する装置として、誘導加熱(渦電流)を利用した加熱装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の渦電流加熱装置では、外周に永久磁石が配置された回転可能なロータと、このロータの外周に固定して設けられ、内部に水を流通させる流通路が形成された導電材料の加熱部とを備える。そして、ロータが回転することより、ロータ外周の永久磁石による磁力線が加熱部を貫通して移動することで、加熱部に渦電流が発生して、加熱部自体が発熱する。その結果、加熱部で発生した熱が内部の流通路を流通する水に伝達され、水が加熱される。
【0003】
上記の技術は風力などのエネルギーを利用して給湯を行うことを主目的としたものであるが、近年、同じく風力、水力、波力などの再生可能エネルギーを利用した発電システムが注目されている。
【0004】
例えば非特許文献1〜3には、風力発電に関する技術が記載されている。風力発電は、風で風車を回転させ、発電機を駆動して発電するものであり、風のエネルギーを回転エネルギーに変換して、電気エネルギーとして取り出すものである。風力発電システムは、塔の上部にナセルを設置し、このナセルに水平軸風車(風の方向に対して回転軸がほぼ平行な風車)を取り付けた構造が一般的である。ナセルには、風車の回転軸の回転数を増速して出力する増速機と、増速機の出力によって駆動される発電機とが格納されている。増速機は、風車の回転数を発電機の回転数まで高める(例えば1:100)ものであり、ギアボックスが組み込まれている。
【0005】
最近では、発電コストを下げるため、風車(風力発電システム)を大型化する傾向があり、風車の直径が120m以上、5MWの風力発電システムが実用化されている。このような大型の風力発電システムは、巨大かつ重量物であるため建設上の理由から、洋上に建設されるケースが多い。
【0006】
また、風力発電では、風力の変動に伴い発電出力(発電量)が変動するため、風力発電システムに蓄電システムを併設し、不安定な電力を蓄電池に蓄えて、出力を平滑化することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005‐174801号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“風力発電(01‐05‐01‐05)”、[online]、原子力百科辞典ATOMICA、[平成21年12月18日検索]、インターネット<URL:http://www.rist.or.jp/atomica/>
【非特許文献2】“2000kW大型風力発電システム SUBARU80/2.0 PROTOTYPE”、[online]、富士重工業株式会社、[平成21年12月18日検索]、インターネット<URL:http://www.subaru-windturbine.jp/home/index.html>
【非特許文献3】“風力講座”、[online]、三菱重工業株式会社、[平成21年12月18日検索]、インターネット<URL:http://www.mhi.co.jp/products/expand/wind_kouza.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記した特許文献1に記載されるような従来の誘導加熱装置では、磁場(磁力線)を発生させる手段に永久磁石を用いているため、次のような不具合が起こり得る。
【0010】
誘導加熱エネルギーは、磁場の強さ(H)の二乗に比例することが知られているが、永久磁石では一般的に発生できる磁場が弱いため、十分な誘導加熱エネルギーが得られず、所望の温度まで熱媒体(例えば、水などの液体)を加熱できない虞がある。
【0011】
また、強力な磁場を得るためにネオジウム磁石を用いることが考えられるが、ネオジウム磁石は熱に弱く、温度が上昇すると、磁気特性が低下する(これは、一般的なフェライト磁石も同じ)。そのため、加熱部の近い位置に永久磁石が配置されるような従来の誘導加熱装置では、永久磁石の温度が上昇し易く、結果的に所望の温度まで熱媒体を加熱できない虞がある。さらに、永久磁石は、時間の経過とともに磁気特性が劣化することから、長時間の使用に耐えられない虞がある。ところで、熱による磁気特性の劣化を防止するために永久磁石の周囲に断熱材を設けることも考えられるが、断熱材は通常非磁性体であるため、結果的に磁場の低下を招いてしまう欠点がある。
【0012】
一方、一般に広く知られている風力発電システムでは、出力平滑化のため蓄電システムが設置されているが、蓄電システムには電力を蓄電池に蓄えるためにコンバータなどの部品が必要であるため、システムの複雑化、電力損失の増大を招く。また、大型の風力発電システムの場合では、発電量に応じた大容量の蓄電池が必要であり、システム全体としてのコスト増大を招く。
【0013】
また、風力発電システムの故障原因の多くは、増速機、より具体的にはギアボックスのトラブルによるものである。ギアボックスが故障すると、通常はギアボックスを交換することで対処しているが、塔の上部にナセルが設置されている場合は、ギアボックスの取り付け・取り外しに多大な時間と労力を要する。そこで最近では、増速機を必要としないギアレスの可変速式風力発電機もある。
【0014】
しかし、ギアレスの場合、具体的には発電機の極数を増やすこと(多極発電機)で対応するが、増速機を使用する場合と比較して、発電機が大型・重量化する。特に、5MWクラスの大型の風力発電システムでは、発電機の重量が300トン(300000kg)を超えるものと考えられ、ナセル内に配置することが困難である。
【0015】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、簡易な構成でありながら、熱媒体を加熱するのに適した良好な性能を有し、十分に実用的な誘導加熱装置を提供することにある。また、別の目的は、上記の誘導加熱装置を備える発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の誘導加熱装置は、回転体と、少なくとも一対の固定磁極と、コイルと、加熱部と、配管とを備える。回転体は、回転軸に固定され、外形が非円形の磁性材料からなる。固定磁極は、回転体に対向するように回転体の外周に配置され、各磁極の極性が異なる。コイルは、固定磁極に設けられ、直流磁場を発生させる。加熱部は、固定磁極と回転体との間に配置され、導電材料からなる。配管は、加熱部に設けられ、熱媒体が流通する。この装置は、コイルの直流通電により、一方の固定磁極、回転体、他方の固定磁極を通る磁気回路が形成される。そして、回転体の回転により、固定磁極と回転体との間に配置された加熱部の少なくとも一部を通過する磁束が変化することで、加熱部が誘導加熱され、熱媒体を加熱することを特徴とする。
【0017】
本発明の誘導加熱装置によれば、磁場発生手段にコイル(電磁石)を用いているため、従来の永久磁石を用いた装置に比較して、強い磁場を発生させることができる。具体的には、コイルに通電する直流電流を大きくすることで、強い磁場を発生させることができ、通電電流を制御することで磁場の強さを調整することも可能である。また、コイルであれば、永久磁石と比較して、温度上昇による磁気特性の低下や、経時的な磁気特性の劣化が起こり難い。さらに、コイルの温度上昇を防止するために断熱材を設ける場合、その断熱材を磁気回路の途中(具体的には固定磁極と加熱部との間)に配置する必要は必ずしもなく、断熱材をコイルの加熱部に対向する側にのみ設ければ、磁場の低下を招くこともない。例え断熱材を磁気回路の途中に配置する場合であっても、通電電流をより大きくすることで、十分な磁場強度を維持することができる。つまり、磁場発生手段としての機能を十分に発揮することができる。その結果、十分な誘導加熱エネルギーを得ることができるので、熱媒体を所定の温度(例えば、100℃〜600℃)まで加熱できる。したがって、熱媒体を効率良く加熱することができ、熱媒体を加熱するのに適した良好な性能を得ることができる。
【0018】
本発明の誘導加熱装置では、回転する回転体を磁性材料で形成し、回転せず固定された固定磁極にコイルが装着されていることで、コイルに接続する直流電源の取り回しが容易である。磁性材料としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、ケイ素鋼、パーマロイ、及びフェライトなどが挙げられる。また、回転せず固定された加熱部に配管を設けることで、配管に連通して外部から熱媒体を供給・排出する給排管と配管との接続に、配管の回動を許容する回転継手を用いる必要がなく、簡易な構成で、堅牢な接続を実現できる。具体的には、熱媒体を加熱すると配管内の圧力が上昇し、例えば熱媒体が水(蒸気)の場合では600℃で約25MPa(250気圧)に達する。加熱部(配管)が回転する場合は、その圧力に耐えられる特殊な回転継手が必要であるところ、回転しない場合は、回転継手の必要がなく、例えば給排管と配管とを溶接するといった単純な方法を採用することで、十分に堅牢な構造を実現できる。
【0019】
本発明の誘導加熱装置における熱媒体が加熱されるメカニズムについて説明する。本発明の誘導加熱装置では、コイルに直流通電することにより、回転体に対向する固定磁極に磁束が流れ、一方の固定磁極から回転体を通って他方の固定磁極に至る磁気回路が形成される。そして、非円形の回転体が回転することにより、固定磁極と回転体との間の一部において、固定磁極‐回転体間のギャップ(距離)が変化する。具体的には、固定磁極と回転体とが対向し、固定磁極‐回転体間の距離が狭小になり固定磁極と回転体とが連続状態になるとき、固定磁極から回転体に磁束が流れ易くなる。一方、回転体の回転により、固定磁極‐回転体間の距離が広大になり固定磁極と回転体とが非連続状態になるとき、固定磁極から回転体に磁束が流れ難くなる。その結果、固定磁極と回転体との間に配置された加熱部の少なくとも一部を通過する磁束(磁場)が変化することで、加熱部が誘導加熱され、熱媒体が加熱される。
【0020】
本発明の誘導加熱装置において、回転体の外形は、非円形であり、回転体が1回転する間に加熱部が配置される固定磁極と回転体との間の距離が変化する形状であれば、特に限定されない。回転体の外形形状としては、例えば、矩形状、楕円形状、多角形状、十字形状、円弧形状(弓形状)、歯車形状などが挙げられる。また、熱媒体としては、例えば、水、油、液体金属(Na、Pbなど)、溶融塩などの液体並びに気体が挙げられる。
【0021】
本発明の誘導加熱装置の一形態としては、回転体が1回転する間、一方の固定磁極と回転体、並びに、回転体と他方の固定磁極が実質的に常に対向し、回転体が回転しても、固定磁極と回転体とで形成される磁気回路に流れる総磁束が実質的に一定であることが挙げられる。
【0022】
この構成によれば、固定磁極と回転体とで形成される磁気回路に流れる総磁束が実質的に一定であり、即ち、固定磁極に流れる磁束が実質的に変化しない。その結果、固定磁極に配置されたコイルに誘導起電力(逆起電力)が生じることが実質的になく、電力損失を抑制できる。また、固定磁極に渦電流が発生することが実質的になく、渦電流損を低減できる。さらに、コギングトルクの発生を抑制することができ、回転体の滑らかな回転を実現できる。
【0023】
本発明の誘導加熱装置の一形態としては、固定磁極と回転体とが対向するとき、固定磁極に対して回転体の面積が小さいことが挙げられる。
【0024】
この構成によれば、固定磁極と回転体とが対向し、固定磁極‐回転体間の距離が狭小になるとき、固定磁極に対して回転体の面積が小さいことで、固定磁極かから回転体に流れる磁束が集中し、加熱部を通過する磁束(磁場)を大きくすることができる。その結果、加熱部での磁場の変化を大きくとることができ、加熱効率を向上できる。
【0025】
本発明の誘導加熱装置の一形態としては、コイルが超電導コイルであることが挙げられる。
【0026】
本発明の誘導加熱装置に用いるコイルとしては、銅線などの常電導コイル、超電導コイルが挙げられる。本発明の誘導加熱装置では、コイルが直流電源に接続され、直流磁場を発生させるので、超電導コイルであれば、電気抵抗がゼロであり、大電流を流してもコイルに発熱が生じない。そのため、常電導コイルに比較して、大電流を流すことによるコイルの発熱を抑制することができ、また、より強い磁場を発生させることができる。
【0027】
本発明の誘導加熱装置の一形態としては、回転軸が風車に接続され、回転体を回転させる動力に風力を利用することが挙げられる。
【0028】
本発明の誘導加熱装置において、回転体(回転軸)の動力には、電動機やエンジンなどの内燃機関を用いることができる他、風力、水力、波力などの再生可能エネルギーを利用することができる。再生可能エネルギーを利用すれば、CO2の増加を抑制でき、中でも風力を利用することが好適である。
【0029】
本発明の発電システムは、上記した本発明の誘導加熱装置と、熱媒体の熱を電気エネルギーに変換する発電部とを備えることを特徴とする。
【0030】
本発明の発電システムは、上記した誘導加熱装置を利用して加熱した熱媒体の熱を発電に利用するものであり、従来にない新規な発電システムである。例えば、誘導加熱装置の回転軸に風車を接続し、回転体の動力に風力を利用すれば、風のエネルギーを回転エネルギー→熱エネルギーに変換して、電気エネルギーとして取り出すことができる。そして、本発明の発電システムによれば、熱を電気エネルギーに変換する構成としたことで、蓄熱器を用いて熱としてエネルギーを蓄えることにより、効率の良い安定した発電を実現できる。また、熱を蓄熱器に蓄え、発電に必要な熱を取り出すことができる蓄熱システムは、蓄電システムに比べて簡易であり、蓄熱器も蓄電池に比べれば安価である。さらに、従来の風力発電システムのように増速機を設ける必要がなく、ギアボックスのトラブルを回避することが可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の誘導加熱装置は、非円形の磁性材料からなる回転体と、回転体に対向する少なくとも一対の固定磁極と、固定磁極に設けられたコイルとを備えることで、簡易な構成でありながら、熱媒体を加熱するのに適した良好な性能を有する。また、本発明の発電システムは、上記した誘導加熱装置を利用して加熱した熱媒体の熱を発電に利用するものであり、従来にない新規な発電システムである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態1に係る誘導加熱装置の構成を示す概略図であり、(A)は、固定磁極と回転体の突部とが対向して、固定磁極‐回転体間の距離が狭い状態を示し、(B)は、(A)の状態から回転体が回転して、固定磁極‐回転体間の距離が広い状態を示す。
【図2】図1のC点における磁場の時間的変化を模式的に示す図である。
【図3】実施の形態2に係る誘導加熱装置の構成を示す概略図であり、(A)は、回転体が回転中の一状態を示し、(B)は、回転体が回転中の別の状態を示す。
【図4】実施の形態3に係る誘導加熱層装置の構成を示す概略図であり、(A)は、回転体が回転中の一状態を示し、(B)は、回転体が回転中の別の状態を示す。
【図5】実施の形態4に係る誘導加熱層装置の構成を示す概略図であり、(A)は、回転体が回転中の一状態を示し、(B)は、回転体が回転中の別の状態を示し、(C)は、回転体が回転中のさらに別の状態を示す。
【図6】実施の形態5に係る誘導加熱装置の構成を示す概略図である。
【図7】本発明に係る発電システムの全体構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態を、図を用いて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0034】
<誘導加熱装置>
(実施の形態1)
図1に示す実施の形態1の誘導加熱装置101は、回転体11と、固定磁極群12と、コイル13と、加熱部14と、配管15とを備える。以下、誘導加熱装置101の構成を詳しく説明する。
【0035】
回転体11は、回転可能に支持された回転軸21に固定されており、軸方向から見た外形形状が、4つの突部111〜114を有する略十字形状に形成されている。また、この回転体11は、磁性材料からなり、この例では、回転軸方向にケイ素鋼板を積層した積層鋼板で形成されている。その他、鉄粉等の磁性粉末の表面に絶縁被覆を施し、この粉末を加圧成形した圧粉磁心を用いてもよい。なお、ここでは、回転体11が反時計方向に回転するものとする(図3〜6も同じ)。
【0036】
固定磁極群12は、回転体11の外周を覆うように、回転体11との間に所定の空間をあけて配置されており、筒状のヨーク部120と、このヨーク部120から求心状に延出する4つの固定磁極121〜124とからなる。各固定磁極121〜124は、回転軸方向から見て、十字の位置に配置されており、この例では、固定磁極121〜124の幅が回転体11の突部111〜114の幅と略同じであり、固定磁極と回転体の突部とが対向したときの固定磁極と回転体の突部との対向面積が略等しい。この固定磁極群12は、磁性材料からなり、この例では、軸方向にケイ素鋼板を積層した積層鋼板で形成されている。また、固定磁極群12は、回転しないように固定されている。
【0037】
固定磁極群12には、直流磁場を発生させるコイル13が設けられており、各固定磁極121〜124のそれぞれにコイル素子131〜134が装着されている。また、各コイル素子131〜134には、図示しない直流電源が接続されている。この例では、各コイル素子131〜134に通電する直流電流の向きを制御して、各固定磁極121〜124に流れる磁束の方向を決定しており、各固定磁極121〜124の極性がN極とS極の交互になるように着磁している。具体的には、各固定磁極121〜124に流れる磁束の方向が、固定磁極121及び123では、ヨーク部120側から回転体11側に向かって流れ、固定磁極122及び124では、回転体11側からヨーク120部側に向かって流れる。また、各コイル素子は、超電導コイルであり、周囲を図示しない冷却用ジャケットで覆い、冷却することによって超電導状態に保持している。
【0038】
加熱部14は、固定磁極群12と回転体11との間に配置され、回転体11の周囲を覆うように円筒状に形成されている。加熱部14は、導電材料からなり、例えば、アルミニウムや銅、鉄などの金属で形成されている。また、加熱部14は、回転しないように固定されている。
【0039】
加熱部14には、熱媒体が流通する配管15が設けられている。この例では、加熱部14の内部に軸方向に沿って延びる複数の流通路を形成し、これらを熱媒体が流通する配管15に利用している。そして、加熱部14と配管15とは熱的に接続されている。この例では、加熱部14の周方向において、固定磁極121〜124に対応する位置に、配管15を集中的に設けている。
【0040】
また、加熱部14の周囲には、断熱材16を配置してもよい。この例では、加熱部14の内外周面、及び加熱部14の端面のうち配管15の配置箇所を除く箇所に断熱材16を設けている。断熱材16には、例えば、ロックウール、グラスウール、発砲プラスチック、レンガ、セラミックスなどを用いることができる。
【0041】
次に、誘導加熱装置101における熱媒体が加熱されるメカニズムについて詳しく説明する。
【0042】
誘導加熱装置101では、各コイル素子131〜134に直流通電することにより、各固定磁極121〜124に磁束が流れ、一方の固定磁極121及び123から回転体11を通って他方の固定磁極122及び124に至る磁気回路が形成される。また、他方の固定磁極122及び124に流れる磁束が、ヨーク部120を通って一方の固定磁極121及び123に至る。つまり、固定磁極群12と回転体11とで、閉じた磁気回路が形成される(図1中の点線矢印は磁束の流れのイメージを示す。図3〜6も同じ)。ここで、図1(A)の状態、即ち固定磁極121〜124と回転体11の突部111〜114とが各々対向し、固定磁極‐回転体間の距離が狭小になり固定磁極121〜124と回転体11とが連続状態になるとき、磁気抵抗が小さくなり、固定磁極121,123から回転体11、或いは回転体11から固定磁極122,124に磁束が流れ易くなる。一方、回転体11が回転し、図1(B)の状態、即ち固定磁極‐回転体間の距離が広大になり固定磁極121〜124と回転体11とが非連続状態になるとき、磁気抵抗が大きくなり、固定磁極121,123から回転体11、或いは回転体11から固定磁極122,124に磁束が流れ難くなる。その結果、回転体11の回転により、加熱部14の固定磁極121〜124に対応する位置を通過する磁束が変化し、この部分での磁場の強さが周期的に変化することで、加熱部14が誘導加熱され、配管15内の熱媒体が加熱される。
【0043】
図2は、図1のC点における磁場の時間的変化を模式的に示す図である。図1(A)の状態のとき、点Cの磁場は強くなり、固定磁極‐回転体間の距離が最も狭小になるとき、極大かつ最大となる。一方、図1(B)の状態のとき、点Cの磁場は弱くなり、固定磁極‐回転体間の距離が最も広大になるとき、極小かつ最小となる。
【0044】
また、誘導加熱装置101において、固定磁極121〜124に対して回転体11の突部111〜114の幅を小さくし、固定磁極と回転体の突部とが対向したときの固定磁極に対する回転体の突部の対向面積を小さくしてもよい。これにより、固定磁極から回転体に流れる磁束が集中し、固定磁極‐回転体間の距離が狭小になる箇所に対応する加熱部14を通過する磁束が増加する。その結果、加熱部14に印加される磁場の振幅が大きくなり、加熱効率を向上できる。例えば、固定磁極に対して回転体の突部の対向面積を半分以下にすることが挙げられる。
【0045】
また、誘導加熱装置101では、固定磁極121〜124のそれぞれにコイル素子131〜134を装着する場合を例に説明したが、コイルは、例えば一方の固定磁極121及び123、又は、他方の固定磁極122及び124のいずれかにのみ設けてもよい。一方の固定磁極121及び123にのみコイル素子が装着されている場合であっても、図1に示すのと同様の磁気回路が形成される。
【0046】
上記した実施の形態1の誘導加熱装置では、回転体11が1回転する間に、固定磁極121〜124が回転体11の突部と対向しない状態が生じる(図1(B)参照)。そのため、固定磁極群12と回転体11とで形成される磁気回路全体の磁気抵抗が変化することから、磁気回路に流れる総磁束も変化する。その結果、固定磁極121〜124に配置されたコイル素子131〜134に誘導起電力(逆起電力)が生じて電力損失が発生したり、また、固定磁極121〜124やヨーク部120に渦電流が発生して渦電流損が生じるなど、効率の低下が懸念される。ここで、例えば、回転体11及び固定磁極群12を形成する積層鋼板の1枚あたりのケイ素鋼板の厚みを薄く(例えば0.1mm以下)することで、渦電流損を低減できるが、高価になる。さらに、磁束変化によりコギングトルクが発生し、回転体11が滑らかに回転しない虞もある。
【0047】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1では解決できない上記課題をできる構成を説明する。なお、以下の説明において、図1に示す実施の形態1の誘導加熱装置と同一である点は説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0048】
図3に示す実施の形態2の誘導加熱装置102では、固定磁極121〜124における回転体11の突部111〜114に対向する対向面が実質的に回転軸21を中心とする円筒面を形成している。具体的には、隣接する固定磁極同士の対向面側での間隔が、回転体の突部の幅よりも狭く、例えば回転体の突部の幅の半分以下である。
【0049】
図3の誘導加熱装置102では、回転体11が1回転する間、一方の固定磁極121及び123と回転体11の突部、並びに、回転体11の突部と他方の固定磁極122及び124が実質的に常に対向することになる。そのため、回転体11が回転しても、固定磁極群12と回転体11とで形成される磁気回路に流れる総磁束が実質的に一定である。つまり、固定磁極と回転体とが実質的に常に対向することで、磁気回路全体で見れば実質的に磁気抵抗が変化しない。
【0050】
誘導加熱装置102における熱媒体が加熱されるメカニズムについて説明する。回転体11の回転に応じて、固定磁極121〜124における回転体11の突部111〜114と対向する箇所が回転方向に移動し、固定磁極‐回転体間の距離が狭小になる箇所では、固定磁極121,123から回転体11、或いは回転体11から固定磁極122,124に磁束が流れ易くなる。一方、固定磁極‐回転体間の距離が広大になる箇所では、固定磁極121,123から回転体11、或いは回転体11から固定磁極122,124に磁束が流れ難くなる。そして、固定磁極‐回転体間の距離が狭小になる箇所では、その間に位置する加熱部14を通過する磁束が増加し、一方で、固定磁極‐回転体間の距離が広大になる箇所では、その間に位置する加熱部14を通過する磁束が減少する。その結果、回転体11の回転により、加熱部14の全周にわたって磁場の強さが周期的に変化することで、加熱部14が誘導加熱され、配管15内の熱媒体が加熱される。なお、誘導加熱装置102では、加熱部14が周方向に均一に加熱されるため、配管15を加熱部14の周方向に等間隔に設けている。また、図示していないが、加熱部14を断熱材で覆うようにしてもよい。
【0051】
誘導加熱装置102では、例えば図3(A)の状態のとき、図中点Dの磁場は、固定磁極‐回転体間の距離が狭小になることから強くなり、また、図中点Eの磁場は、固定磁極‐回転体間の距離が広大になることから弱くなる。一方、回転体11が回転し、例えば図3(B)の状態のとき、図中点Dの磁場は、固定磁極‐回転体間の距離が広大になることから弱くなり、また、図中点Eの磁場は、固定磁極‐回転体間の距離が狭小になることから強くなる。
【0052】
(実施の形態3)
図4に示す実施の形態3の誘導加熱装置103は、回転体の形状、固定磁極の形状及び数が図3に示す実施の形態2の誘導加熱装置102と相違し、以下ではその相違点を中心に説明する。
【0053】
図4の誘導加熱装置103では、回転体11の形状が略矩形状であり、固定磁極を一対の固定磁極121,122としている。各固定磁極121,122にはコイル素子131,132が装着されており、各コイル素子131,132に通電する直流電流の向きを制御して、固定磁極121の極性がN極、固定磁極122の極性がS極となるように着磁している。そして、各コイル素子131,132に直流通電することにより、一方の固定磁極121から回転体11、他方の固定磁極122、ヨーク部120を通って再び一方の固定磁極121に至る閉磁気回路が形成される。
【0054】
また、固定磁極121,122における回転体11に対向する対向面が実質的に回転軸21を中心とする円筒面を形成しており、一方と他方の固定磁極の対向面側の角部の間隔が、回転体の突部の幅よりも狭い。そのため、回転体11が1回転する間、一方の固定磁極121と回転体11の長手方向端部、並びに、回転体11の長手方向端部と他方の固定磁極122が実質的に常に対向することになる。そして、回転体11が回転しても、固定磁極群12と回転体11とで形成される磁気回路に流れる総磁束が実質的に一定である。
【0055】
誘導加熱装置103における熱媒体が加熱されるメカニズムも図3の誘導加熱装置102と同様である。回転体11の回転に応じて、固定磁極121,122における回転体11の長手方向端部と対向する箇所が回転方向に移動し、固定磁極‐回転体間の距離が狭小になる箇所では、固定磁極121から回転体11、或いは回転体11から固定磁極122に磁束が流れ易くなる。一方、固定磁極‐回転体間の距離が広大になる箇所では、固定磁極121から回転体11、或いは回転体11から固定磁極122に磁束が流れ難くなる。その結果、回転体11の回転により、加熱部14の周方向の全周にわたって磁場の強さが周期的に変化することで、加熱部14が誘導加熱され、配管15内の熱媒体が加熱される。
【0056】
誘導加熱装置103では、例えば図4(A)の状態のとき、図中点Fの磁場は、固定磁極‐回転体間の距離が狭小になることから強くなり、また、図中点Gの磁場は、固定磁極‐回転体間の距離が広大になることから弱くなる。一方、回転体11が回転し、例えば図4(B)の状態のとき、図中点Fの磁場は、固定磁極‐回転体間の距離が広大になることから弱くなり、また、図中点Gの磁場は、固定磁極‐回転体間の距離が狭小になることから強くなる。
【0057】
(実施の形態4)
図5に示す実施の形態4の誘導加熱装置104は、回転体の形状が図3に示す実施の形態2の誘導加熱装置102と相違し、以下ではその相違点を中心に説明する。
【0058】
図5の誘導加熱装置104では、回転体11の形状が弓形状であり、一対の対向する弓形状の磁性材料片115,116を支持部材117により支持し、この支持部材117を回転軸21に固定して回転体11を構成している。磁性材料片115,116はそれぞれ、磁性材料からなり、この例では、回転軸方向にケイ素鋼板を積層した積層鋼板で形成されている。また、支持部材117は、例えば棒状や平板状であり、非磁性材料からなる。非磁性材料としては、例えば、アルミニウム、銅、SUS301、SUS302などのステンレス、プラスチックなどが挙げられる。
【0059】
この場合も図3の誘導加熱装置102と同様、回転体11が1回転する間、一方の固定磁極121及び123と回転体11の磁性材料片、並びに、回転体11の磁性材料片と他方の固定磁極122及び124が実質的に常に対向することになる。そのため、回転体11が回転しても、固定磁極群12と回転体11とで形成される磁気回路に流れる総磁束が実質的に一定である。
【0060】
誘導加熱装置104における熱媒体が加熱されるメカニズムも図3の誘導加熱装置102と同様である。回転体11の回転に応じて、固定磁極121〜124における回転体11の磁性材料片と対向する箇所が回転方向に移動し、固定磁極‐回転体間の距離が狭小になる箇所では、固定磁極121,123から回転体11、或いは回転体11から固定磁極122,124に磁束が流れ易くなる。一方、固定磁極‐回転体間の距離が広大になる箇所では、固定磁極121,123から回転体11、或いは回転体11から固定磁極122,124に磁束が流れ難くなる。その結果、回転体11の回転により、加熱部14の周方向の全周にわたって磁場の強さが周期的に変化することで、加熱部14が誘導加熱され、配管15内の熱媒体が加熱される。
【0061】
誘導加熱装置104では、例えば図5(A)の状態のとき、一方の固定磁極121と回転体11の磁性材料片115の一部とが対向し、磁性材料片115の残部と他方の固定磁極122及び124とが対向して、固定磁極121から磁性材料片115を通って固定磁極122及び124に至る磁気回路が形成される。次に、回転体11が回転し、例えば図5(B)の状態のとき、一方の固定磁極121と回転体11の磁性材料片115の一部とが対向し、磁性材料片115の残部と他方の固定磁極124とが対向して、固定磁極121から磁性材料片115を通って固定磁極124に至る磁気回路が形成される。次に、回転体11がさらに回転し、例えば図5(C)の状態のとき、一方の固定磁極121と回転体11の磁性材料片115及び116の一部とが対向し、磁性材料片115及び116の残部と他方の固定磁極122及び124とが対向して、固定磁極121から磁性材料片115を通って固定磁極122及び124に至る磁気回路が形成される。ここでは主に固定磁極121に注目して説明したが、もう一方の固定磁極123においても同様に磁気回路が形成される。
【0062】
(実施の形態5)
図6に示す実施の形態5の誘導加熱装置105は、回転体の形状が図3に示す実施の形態2の誘導加熱装置102と相違し、以下ではその相違点を中心に説明する。
【0063】
図6の誘導加熱装置105では、回転体11の形状が、複数の突部を有する歯車形状であり、磁束の流れを阻害しない範囲で中央部に穴が形成されている。そして、図5の誘導加熱装置104と同じように支持部材117により回転体11を支持して、この支持部材117を回転軸21に固定している。このように、回転体11に穴開け加工を施すことで回転体11の軽量化を図ることができる。また、例えば図5の誘導加熱装置104のように、回転体11に磁性材料片115,116を利用する場合も、磁束の流れを阻害しない範囲で磁性材料片の中央部を薄肉化することで軽量化が可能である。
【0064】
この場合も図3の誘導加熱装置102と同様、回転体11が1回転する間、一方の固定磁極121及び123と回転体11の突部、並びに、回転体11の突部と他方の固定磁極122及び124が実質的に常に対向することになる。そのため、回転体11が回転しても、固定磁極群12と回転体11とで形成される磁気回路に流れる総磁束が実質的に一定である。
【0065】
誘導加熱装置105における熱媒体が加熱されるメカニズムも図3の誘導加熱装置102と同様である。回転体11の回転に応じて、固定磁極121〜124における回転体11の突部と対向する箇所が回転方向に移動し、固定磁極‐回転体間の距離が狭小になる箇所では、固定磁極121,123から回転体11、或いは回転体11から固定磁極122,124に磁束が流れ易くなる。一方、固定磁極‐回転体間の距離が広大になる箇所では、固定磁極121,123から回転体11、或いは回転体11から固定磁極122,124に磁束が流れ難くなる。その結果、回転体11の回転により、加熱部14の全周にわたって磁場の強さが周期的に変化することで、加熱部14が誘導加熱され、配管15内の熱媒体が加熱される。
【0066】
また、誘導加熱装置105では、回転体11の形状を歯車形状としたことにより、磁場の周期を短くすることができる。
【0067】
上記した実施の形態1〜5の誘導加熱装置101〜105では、加熱部14の内部に流通路を形成し、加熱部14と配管15とを一体に形成した場合を例に説明したが、加熱部14と配管15とを別体で形成してもよい。その場合、配管も導電材料で形成することが好ましい。配管を導電材料で形成することで、配管を加熱部として兼用することができる。また、加熱部と配管とを別体とし、配管を加熱部の表面に設けてもよい。ここで、配管を導電材料で形成し、配管を加熱部として兼用する場合は、例えば、配管のみを配置する他、円筒状の支持台の表面に配管を取り付けるようにしてもよい。このとき、円筒状の支持台を導電材料以外の材料で形成してもよい。
【0068】
以上説明した本発明の実施の形態に係る誘導加熱装置は、磁場発生手段にコイルを用いているため、従来の永久磁石を用いた装置に比較して、強い磁場を発生させることができる。特に、超電導コイルを採用したことで、大電流を流すことによるコイルの発熱を抑制することができ、また、より強い磁場を発生させることができる。また、加熱部(配管)が回転しない構造としたことで、例えば配管に連通して外部から熱媒体を供給・排出する給排管と配管との接続に、配管の回動を許容する回転継手を用いる必要がなく、簡易な構成で、堅牢な接続を実現できる。
【0069】
<発電システム>
次に、図7を用いて、本発明に係る発電システムの全体構成の一例を説明する。図7に示す発電システムPは、誘導加熱装置10と、風車20と、蓄熱器50と、発電部60とを備える。塔91の上部に設置されたナセル92に風車20が取り付けられ、ナセル92内に誘導加熱装置10が格納されている。また、塔91の下部(土台)に建てられた建屋93に蓄熱器50及び発電部60が設置されている。以下、発電システムPの構成を詳しく説明する。
【0070】
誘導加熱装置10は、本発明の誘導加熱装置であり、例えば、上記した実施の形態1〜5に係る誘導加熱装置101〜105を利用することができる。また、回転軸21が後述する風車20に直結され、回転体を回転させる動力に風力を利用している。なお、ここでは、熱媒体が水である場合を例に説明する。
【0071】
風車20は、水平方向に延びる回転軸21を中心に、3枚の翼201を回転軸21に放射状に取り付けた構造である。出力が5MWを超える風力発電システムの場合、直径が120m以上、回転数が10〜20rpm程度である。
【0072】
誘導加熱装置10の配管には、誘導加熱装置10に水を供給する給水管73と、誘導加熱装置10により加熱した水を蓄熱器50に送る輸送管51が接続されている。そして、誘導加熱装置10は、コイルの直流通電により、固定磁極群と回転体とで磁気回路が形成され、回転体の回転により、固定磁極と回転体との間に配置された加熱部を通過する磁束を変化させることで、加熱部を誘導加熱し、配管内の水を加熱する。誘導加熱装置10は、磁場発生手段にコイルを用いているため、強い磁場を発生させることができ、熱媒体である水を例えば100℃〜600℃といった高温に加熱することができる。また、誘導加熱装置10は、加熱部(配管)が回転しない構造であるので、配管と輸送管51及び給水管73との接続に回転継手を用いる必要がなく、例えば溶接などを用いて、簡易な構成で、堅牢な接続を実現できる。
【0073】
この発電システムPは、誘導加熱装置10により水を例えば200℃〜350℃まで加熱し、高温高圧水を発生させる。高温高圧水は、誘導加熱装置10と蓄熱器50とを連結する輸送管51を通って蓄熱器50に送られる。蓄熱器50は、輸送管51を通って送られてきた高温高圧水の熱を蓄え、また、熱交換器を用いて発電に必要な蒸気を発電部60に供給する。なお、誘導加熱装置10により蒸気を発生させてもよい。
【0074】
蓄熱器50としては、例えば、蒸気アキュムレーターや、溶融塩や油などを用いた顕熱型、或いは、融点の高い溶融塩の相変化を利用した潜熱型の蓄熱器を利用することができる。潜熱型の蓄熱方式は蓄熱材の相変化温度で蓄熱を行うため、一般に、顕熱型の蓄熱方式に比べて蓄熱温度域が狭帯域であり、蓄熱密度が高い。
【0075】
発電部60は、蒸気タービン61と発電機62とを組み合わせた構造であり、蓄熱器50から供給された蒸気によって蒸気タービン61が回転し、発電機62を駆動して発電する。
【0076】
蓄熱器50に送られた高温高圧水又は蒸気は、復水器71で冷却され水に戻される。その後、ポンプ72に送られ、高圧水にして給水管73を通って誘導加熱装置10に送られることで循環する。
【0077】
この発電システムPによれば、再生可能エネルギー(例、風力)を動力として回転エネルギーを得て熱を発生させ、その熱を蓄熱器に蓄熱して発電することで、高価な蓄電池を用いなくても、需要に応じた安定的な発電を実現できる。また、従来の風力発電システムのように増速機を設ける必要がなく、ギアボックスのトラブルを回避することが可能である。さらに、熱媒体の熱を輸送管により例えば塔の下部(土台)に設置された発電部に供給することで、ナセルに発電部を格納する必要がなく、塔の上部に設置されるナセルを小型・軽量化することができる。
【0078】
上記した発電システムでは、熱媒体に水を用いた場合を例に説明したが、水よりも熱伝導率の高い液体金属を熱媒体に用いてもよい。このような液体金属としては、例えば液体金属ナトリウムが挙げられる。液体金属を熱媒体に用いる場合は、例えば、導電体から熱を受け取る一次熱媒体に液体金属を用い、輸送管を通って送られてきた液体金属の熱で熱交換器を介して二次熱媒体(水)を加熱し、蒸気を発生させることが考えられる。
【0079】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、回転体の形状、固定磁極の形状及び数を適宜変更したり、回転体及び固定磁極を形成する材料を適宜変更したりすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の誘導加熱装置は、再生可能エネルギーを利用した発電システムに利用する他、例えば給湯システムに利用することも可能である。また、本発明の発電システムは、再生可能エネルギーを利用した発電の分野に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
10、101〜105 誘導加熱装置 P 発電システム
11 回転体 111〜114 突部 115,116 磁性材料片 117 支持部材
12 固定磁極群 120 ヨーク部 121〜124 固定磁極
13 コイル 131,132,133,134 コイル素子
14 加熱部 15 配管 16 断熱材
21 回転軸
20 風車 201 翼
50 蓄熱器 51 輸送管
60 発電部 61 蒸気タービン 62 発電機
71 復水器 72 ポンプ 73 給水管
91 塔 92 ナセル 93 建屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に固定され、外形が非円形の磁性材料からなる回転体と、
前記回転体に対向するように前記回転体の外周に配置され、極性が異なる少なくとも一対の固定磁極と、
前記固定磁極に設けられ、直流磁場を発生させるコイルと、
前記固定磁極と前記回転体との間に配置され、導電材料からなる加熱部と、
前記加熱部に設けられ、熱媒体が流通する配管と、を備え、
前記コイルの直流通電により、一方の前記固定磁極、前記回転体、他方の前記固定磁極を通る磁気回路が形成され、
前記回転体の回転により、前記固定磁極と前記回転体との間に配置された前記加熱部の少なくとも一部を通過する磁束が変化することで、前記加熱部が誘導加熱され、前記熱媒体を加熱することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
前記回転体が1回転する間、一方の前記固定磁極と前記回転体、並びに、前記回転体と他方の前記固定磁極が実質的に常に対向し、
前記回転体が回転しても、前記固定磁極と前記回転体とで形成される磁気回路に流れる総磁束が実質的に一定であることを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記固定磁極と前記回転体とが対向するとき、前記固定磁極に対して前記回転体の面積が小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記コイルが、超電導コイルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記回転軸が、風車に接続され、
前記回転体を回転させる動力に風力を利用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘導加熱装置と、
前記熱媒体の熱を電気エネルギーに変換する発電部と、を備えることを特徴とする発電システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−129433(P2011−129433A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288243(P2009−288243)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】