説明

誘導加熱装置

【課題】誘導加熱コイルとしての誘導加熱ユニット2の製造が容易であると共に、対象物を均一に加熱することが可能な誘導加熱装置1を提供することを目的とする。
【解決手段】誘導加熱装置1は、導電性を有する平板部材が渦巻き状に形成される誘導加熱部4と、誘導加熱部4における一方の面44bに沿うように配置されると共に、一方の面44bに接合される冷却パイプ部5と、を有する誘導加熱ユニット2と、誘導加熱部4に電流を供給する電源装置30と、冷却パイプ部5に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置31,32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱を利用した誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車車体、家電製品等は、鋼板、亜鉛メッキ鋼板等の金属材料を金属成型物とした後、この金属成型物の塗装及び組み立て等を行うことにより製品化される。
【0003】
金属成型物の塗装は、脱脂、表面調整、化成処理等を行った後、表面に塗膜を形成することにより行われる。塗膜は、所定形状の金属成型物の表面に塗料を塗布し、この塗料を乾燥させることにより形成される。
【0004】
ところで、金属成型物の表面に塗布された塗料は、塗布直後においては液状である。そのため、塗料を塗布した直後の金属成型物は、把持等により次の工程に搬送することができない。これにより、金属成型物は、塗料が塗布された後、一定時間放置するか、又は熱風等の所定の方法により乾燥させる必要がある。
【0005】
塗料の乾燥は、例えば、自動車のホイール等の工業部品における塗料の乾燥工程では、常温で放置するセッティング工程に3分から5分、乾燥炉中で熱風加熱する乾燥工程に25分、及び手で取り扱える温度まで冷却する冷却工程に2分から5分の所要時間を要している。これら一連の製造工程のなかでは、特に乾燥工程の占める割合が大きい。そのため、従来より、この乾燥工程にかかる時間の短縮化が望まれていた。
【0006】
これに対して、塗料が塗布された所定形状の金属成型物を塗料が乾燥可能な温度に短時間で加熱させる方法として、誘導加熱を利用した誘導加熱装置が提案されている。例えば、短時間の加熱と同時に加熱対象である部品全体を均一に加熱するために、部品全体の形状に応じて加熱する面に沿うように配置される誘導加熱コイルを有する誘導加熱装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、従来技術においては、対象物の温度を短時間で急速に高温域に上昇させる手段として誘導加熱装置を用いた誘導加熱が行われてきたが、誘導加熱は、金属成型物を加熱させる際に、誘導加熱コイルも発熱してしまう。そのため、従来は、断面が略円形状の丸パイプを螺旋状に加工して誘導加熱コイルを形成し、丸パイプの内部に冷却水を流通させることにより誘導加熱コイルを冷却させる方法が一般的であった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−124512号公報
【特許文献2】特開平7−116774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示の誘導加熱装置では、金属成型物を塗料が乾燥可能な温度に短時間で加熱させることが可能になるが、誘導加熱コイルを冷却する手段を備えていないため、誘導加熱コイルが過熱した場合に、当該コイルを冷却することができないという問題がある。そのため、誘導加熱装置が破損等をするおそれがあるという問題がある。
【0010】
また、特許文献2に開示の誘導加熱装置では、丸パイプは断面が略円形状に形成されているため、金属成型物の外表面と丸パイプの外周面との距離が均一にならない。そのため、金属成型物は、誘導加熱コイルとしての丸パイプの外表面に近い場所においては高温に加熱されるが、外表面から離れた場所においては低温にしか加熱されないという問題がある。つまり、特許文献2に開示の誘導加熱装置では、金属成型物が均一に加熱されないという問題がある。
【0011】
これに対しては、例えば、断面が矩形状の角パイプを連結させて螺旋形状に形成した誘導加熱コイルを用いることにより、金属成型物の外表面と誘導加熱コイルとしての角パイプの外表面との距離を均一にし、金属成型物を均一に加熱可能にすることが考えられる。しかし、断面が矩形状の角パイプは、角パイプ同士を連結させて螺旋状に加工することが困難であるという問題がある。
【0012】
本発明は、誘導加熱コイルとしての誘導加熱ユニットの製造が容易であると共に、対象物を均一に加熱することが可能な誘導加熱装置を提供することを目的の1つとする。
また、本発明は、金属製の成型物に塗布された塗料を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成装置であって、誘導加熱コイルとしての誘導加熱ユニットの製造が容易であると共に、成型物を均一に加熱することが可能な塗膜形成装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、導電性を有する平板部材が渦巻き状に形成される誘導加熱部と、前記誘導加熱部における一方の面に沿うように配置されると共に、前記一方の面に接合される冷却パイプ部と、を有する誘導加熱ユニットと、前記誘導加熱部に電流を供給する電源装置と、前記冷却パイプ部に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置と、を備える誘導加熱装置に関する。
【0014】
また、前記誘導加熱部は、平板部材を打ち抜き加工することにより形成されることが好ましい。
【0015】
また、前記誘導加熱部は、直線部と、前記直線部に連続する屈曲部と、を有して構成されることが好ましい。
【0016】
また、前記冷却パイプ部は、前記直線部における一方の面に接合される直線パイプと、前記直線パイプに連結されると共に、前記屈曲部における一方の面に接合される屈曲パイプと、を有して構成されることが好ましい。
【0017】
また、前記直線パイプの両端には、螺合部が形成され、前記屈曲パイプの両端には、前記螺合部と螺合可能な被螺合部が形成されており、前記直線パイプと前記屈曲パイプとは、前記螺合部と前記被螺合部とが螺合固定されて互いに連結されることが好ましい。
【0018】
また、前記誘導加熱ユニットは、螺旋状であることが好ましい。
なお、ここでいう「螺旋状」とは、立体的に形成された渦巻き形状をいうものとする。
【0019】
また、前記誘導加熱ユニットを複数有する誘導加熱ユニット群を備え、前記誘導加熱ユニット群は、前記複数の誘導加熱ユニットが直列接続されて構成されることが好ましい。
【0020】
また、前記複数の誘導加熱ユニットそれぞれは、外形が矩形状に形成されており、前記誘導加熱ユニット群は、前記複数の誘導加熱ユニットそれぞれが互いに近接配置されて構成されることが好ましい。
【0021】
本発明は、導電性の被塗装物(被塗膜物)に塗布された塗料を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成装置であって、導電性を有する平板部材が渦巻き状に形成される誘導加熱部と、前記誘導加熱部における一方の面に沿うように配置されると共に、前記一方の面に接合される冷却パイプ部と、を有する誘導加熱ユニットと、前記誘導加熱部に電流を供給する電源装置と、前記冷却パイプ部に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置と、を備える塗膜形成装置に関する。
【0022】
また、前記誘導加熱部は、直線部と、前記直線部に連続する屈曲部と、を有して構成され、前記冷却パイプ部は、前記直線部における一方の面に接合される直線パイプと、前記直線パイプに連結されると共に、前記屈曲部における前記一方の面に接合される屈曲パイプと、を有して構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、誘導加熱コイルとしての誘導加熱ユニットの製造が容易であると共に、対象物を均一に加熱することが可能な誘導加熱装置を提供することができる。
また、本発明によれば、金属製の成型物に塗布された塗料を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成装置であって、誘導加熱コイルとしての誘導加熱ユニットの製造が容易であると共に、成型物を均一に加熱することが可能な塗膜形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る誘導加熱装置を模式的に示す外観斜視図である。
【図2】前記実施形態に係る誘導加熱ユニットの上面側を示す平面図である。
【図3】前記実施形態に係る誘導加熱ユニットの下面側を示す底面図である。
【図4】前記実施形態に係る誘導加熱ユニットの誘導加熱部と冷却パイプ部の接合状態を示す断面図である。
【図5】ベルトコンベアにより搬送される被塗物と誘導加熱ユニットとの位置関係を示す平面図である。
【図6】ベルトコンベアにより搬送される被塗物と誘導加熱ユニットとの位置関係を示す断面図である。
【図7】実施例に用いられる誘導加熱装置を示す模式図である。
【図8】比較例に用いられる誘導加熱装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
具体的には、本発明の誘導加熱装置(塗膜形成装置)1における一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明を実施するための誘導加熱装置1は、金属製の成型物(以下、「被塗物」という)の塗装乾燥に用いられる。塗装方法としては、スプレー、刷毛、ローラー、浸漬、静電、電着等が例示できるが、誘導加熱装置1は、これら被塗物において適宜使用することができる。
以下の説明においては、電着により塗装が行われる電着塗装を例に挙げて説明する。電着塗装は、前処理工程、電着塗装工程、乾燥工程、及び冷却工程を有し、誘導加熱装置1は、上述の各工程のうち、乾燥工程において好適に用いられる。まず、電着塗装における上述の各工程について簡単に説明する。
【0026】
前処理工程は、被塗物を水洗いする洗浄処理工程と、被塗物の表面に付着した油分を取り除く脱脂処理工程と、被塗物に付着した脱脂液を洗浄する水洗処理工程と、被塗物表面の化成性を向上させるためにその表面を調整する表面調整処理工程と、被塗物に化成皮膜を形成する化成処理工程と、被塗物に付着した化成処理液を洗浄する水洗処理工程と、更に純水によって被塗物を洗浄する純水処理工程と、を有する。
前処理工程は、被塗物表面の油やゴミ等を洗い流し、電着塗膜との密着性及び耐食性を向上させる化成皮膜を被塗物に形成させるための処理を施す。
【0027】
電着塗装工程は、電着槽において被塗物に電着塗膜を形成する電着処理工程と、被塗物の未乾燥塗膜上に付着した槽内塗料をUF処理したろ液により洗浄するUF水洗処理工程と、更に被塗物を洗浄する最終洗浄処理工程と、を有する。
電着塗装工程は、電着によって被塗物に塗膜成分を電気的に付着させ、電着塗膜を形成する。
【0028】
乾燥工程は、誘導加熱装置1を用いて被塗物を焼付乾燥させ、未乾燥塗膜を硬化させる乾燥処理工程を有する。
乾燥工程は、被塗物に形成された未硬化の塗膜の焼付・乾燥を行い、最終的に所望の硬度を有する塗膜を完成させる。
【0029】
冷却工程は、冷風により冷却させる冷却処理工程を有する。
冷却工程は、次の工程における諸処理を施すことが可能な温度、又は作業者が取り扱うことが可能な温度にまで被塗物を冷却する。
【0030】
次に、図1から図4を参照して、本発明を実施するための誘導加熱装置(塗膜形成装置)1の実施形態について具体的に説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る誘導加熱装置1を模式的に示す外観斜視図である。図2は、前記実施形態に係る誘導加熱ユニット2の上面側を示す平面図である。図3は、前記実施形態に係る誘導加熱ユニット2の下面側を示す底面図である。図4は、前記実施形態に係る誘導加熱ユニット2の誘導加熱部4と冷却パイプ部5の接合状態を示す断面図である。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係る誘導加熱装置1は、誘導加熱コイルを構成する誘導加熱ユニット2と、誘導加熱ユニット2に対して所定の操作を行う操作ユニット3と、を備えて構成されている。
【0033】
誘導加熱ユニット2は、渦巻き状に形成される誘導加熱部4と、誘導加熱部4に接合され、誘導加熱部4を冷却させる冷却パイプ部5と、を備える。
【0034】
図2から図4に示すように、誘導加熱ユニット2は、上面44a及び一方の面としての下面44bを有する平板部材としての導電性材料により形成される誘導加熱部4と、中空状の伝熱材料により形成される冷却パイプ部5と、を備える。
【0035】
誘導加熱部4は、板幅Wの導電性材料が屈曲しながら中心に向かって収束する渦巻き状に形成されている。具体的には、誘導加熱部4は、複数の直線部40と、複数の屈曲部41と、を有して構成されている。
複数の直線部40は、互いに略平行に隣接する直線部40同士の長手方向における長さが、誘導加熱部4の中心に近くなるにつれて短くなるように構成されている。
また、複数の直線部40は、互いに略平行に隣接する直線部40同士が所定間隔W3で離間するように構成されている。
【0036】
例えば、複数の直線部40は、図2に示すように、第1直線部40aと、第2直線部40bと、第3直線部40cと、第4直線部40dと、第5直線部40eと、第6直線部40fと、第7直線部40gと、第8直線部40hと、第9直線部40iと、第10直線部40jと、第11直線部40kと、第12直線部40lと、第13直線部40mと、第14直線部40nと、第15直線部40pと、を備える。
【0037】
第1直線部40a、第3直線部40c、第5直線部40e、第7直線部40g、第9直線部40i、第11直線部40k、第13直線部40m及び第15直線部40pは、X方向に互いに略平行に位置している。
また、第1直線部40a、第3直線部40c、第5直線部40e、第7直線部40g、第9直線部40i、第11直線部40k、第13直線部40m及び第15直線部40pは、隣接するもの同士の長手方向(本実施形態においてはX方向)における長さが、誘導加熱部4の中心近くに位置するに従い短くなっている。
更に、第1直線部40a、第3直線部40c、第5直線部40e、第7直線部40g、第9直線部40i、第11直線部40k、第13直線部40m及び第15直線部40pは、隣接するもの同士が所定間隔W3で離間している。
【0038】
第2直線部40b、第4直線部40d、第6直線部40f、第8直線部40h、第10直線部40j、第12直線部40l及び第14直線部40nは、Y方向(X方向と直交する方向)に互いに略平行に位置している。
また、第2直線部40b、第4直線部40d、第6直線部40f、第8直線部40h、第10直線部40j、第12直線部40l及び第14直線部40nは、隣接するもの同士の長手方向(本実施形態においてはY方向)における長さが、誘導加熱部4の中心近くに位置するに従い短くなっている。
更に、第2直線部40b、第4直線部40d、第6直線部40f、第8直線部40h、第10直線部40j、第12直線部40l及び第14直線部40nは、隣接するもの同士が所定間隔W3で離間している。
【0039】
複数の屈曲部41は、上述の直線部40同士の間に設けられており、直線部40同士を屈曲させた状態で連続させる。具体的には、複数の屈曲部41は、直線部40同士を、平面方向(図2に示すX方向及びY方向により規定される平面におけるいずれかの方向をいい、以下、これを「平面方向」という。)に直角に屈曲させた状態で連続させる。
【0040】
例えば、複数の屈曲部41は、図2に示すように、第1屈曲部41aと、第2屈曲部41bと、第3屈曲部41cと、第4屈曲部41dと、第5屈曲部41eと、第6屈曲部41fと、第7屈曲部41gと、第8屈曲部41hと、第9屈曲部41iと、第10屈曲部41jと、第11屈曲部41kと、第12屈曲部41lと、第13屈曲部41mと、第14屈曲部41nと、を備え、それぞれが複数の直線部40を直角に屈曲させた状態で連続させている。
【0041】
誘導加熱部4は、Y2方向に屈曲させる第1屈曲部41aを第1直線部40aと第2直線部40bとの間に設け、X2方向に屈曲させる第2屈曲部41bを第2直線部40bと第3直線部40cとの間に設け、Y1方向に屈曲させる第3屈曲部41cを第3直線部40cと第4直線部40dとの間に設けることにより、渦巻き形状における第1パターンを形成する。
なお、第1直線部40aの端部は、誘導加熱部4における一端部42を構成し、後述の第1給電ケーブル30aが接続される。
【0042】
また、誘導加熱部4は、X1方向に屈曲させる第4屈曲部41dを第4直線部40dと第5直線部40eとの間に設け、Y2方向に屈曲させる第5屈曲部41eを第5直線部40eと第6直線部40fとの間に設け、X2方向に屈曲させる第6屈曲部41fを第6直線部40fと第7直線部40gとの間に設け、Y1方向に屈曲させる第7屈曲部41gを第7直線部40gと第8直線部40hとの間に設けることにより、渦巻き形状における第2パターンを形成する。
【0043】
また、誘導加熱部4は、X1方向に屈曲させる第8屈曲部41hを第8直線部40hと第9直線部40iとの間に設け、Y2方向に屈曲させる第9屈曲部41iを第9直線部40iと第10直線部40jとの間に設け、X2方向に屈曲させる第10屈曲部41jを第10直線部40jと第11直線部40kとの間に設け、Y1方向に屈曲させる第11屈曲部41kを第11直線部40kと第12直線部40lとの間に設けることにより、渦巻き形状における第3パターンを形成する。
【0044】
また、誘導加熱部4は、X1方向に屈曲させる第12屈曲部41lを第12直線部40lと第13直線部40mとの間に設け、Y2方向に屈曲させる第13屈曲部41mを第13直線部40mと第14直線部40nとの間に設け、X2方向に屈曲させる第14屈曲部41nを第14直線部40nと第15直線部40pとの間に設けることにより、渦巻き形状における第4パターンを形成する。
なお、第4パターンの端部となる第15直線部40pの端部は、誘導加熱部4における他端部43を構成し、後述の第2給電ケーブル30bが接続される。
【0045】
このように、誘導加熱部4は、複数の直線部40と、平面方向に直角に屈曲する複数の屈曲部41とにより、板幅Wの導電性材料が屈曲しながら誘導加熱部4の中心に向かって収束する渦巻き状が形成される。
【0046】
なお、本実施形態に係る誘導加熱部4は、板状の導電性材料を所定の金型を用いて打ち抜き加工することにより渦巻き状に形成されている。
導電性材料としては、例えば、銅、黄銅、軟銅、アルミニウム、若しくは鉄等を用いることができるが、電気抵抗の小さい銅を用いることが好ましい。誘導加熱部4に、電気抵抗の小さな銅を用いることにより、誘導加熱部4の過熱を抑制することができる。
【0047】
図3に示すように、冷却パイプ部5は、渦巻き状に形成された誘導加熱部4の下面44bに沿って配置され、伝熱性を有する接合部6により誘導加熱部4の下面44bに伝熱可能に接合されている。つまり、冷却パイプ部5は、誘導加熱部4と同様に渦巻き状に形成される。
【0048】
冷却パイプ部5は、複数の直線パイプ50と、複数の屈曲パイプとしてのエルボ51と、を備えて構成されている。複数の直線パイプ50は、直線部40の下面44bに接合される。複数のエルボ51は、屈曲部41の下面44bに接合される。
【0049】
また、複数の直線パイプ50それぞれには、両端に雄ネジが切られた螺合部としての雄ネジ部(図示せず)が設けられている。一方、複数のエルボ51それぞれには、両端に雌ネジが切られた被螺合部としての雌ネジ部(図示せず)が設けられている。雄ネジ部と雌ネジ部とは、互いに螺合可能に形成されている。冷却パイプ部5は、直線パイプ50の雄ネジ部をエルボ51の雌ネジ部に押し込むように螺合させることにより連結される。冷却パイプ部5は、複数の直線パイプ50と複数のエルボ51とを連結させることにより、誘導加熱部4の下面44bに沿った渦巻き状に形成される。
【0050】
また、複数の直線パイプ50は、冷却液を流通可能な中空部(図示せず)を有している。同様に、複数のエルボ51は、冷却液を流通可能な中空部(図示せず)を有している。複数の直線パイプ50の中空部と複数のエルボ51の中空部とは、互いに連結されることにより流入部52から排出部53までをつなぐ一の中空空間を形成する。冷却パイプ部5は、複数の直線パイプ50と複数のエルボ51とを連結させることにより、互いの中空部が連通し、冷却液が流通可能になる。
【0051】
具体的には、冷却パイプ部5は、第1直線パイプ50aと、第1エルボ51aと、第2直線パイプ50bと、第2エルボ51bと、第3直線パイプ50cと、第3エルボ51cと、第4直線パイプ50dと、第4エルボ51dと、第5直線パイプ50eと、第5エルボ51eと、第6直線パイプ50fと、第6エルボ51fと、第7直線パイプ50gと、第7エルボ51gと、第8直線パイプ50hと、第8エルボ51hと、第9直線パイプ50iと、第9エルボ51iと、第10直線パイプ50jと、第10エルボ51jと、第11直線パイプ50kと、第11エルボ51kと、第12直線パイプ50lと、第12エルボ51lと、第13直線パイプ50mと、第13エルボ51mと、第14直線パイプ50nと、第14エルボ51nと、第15直線パイプ50pと、を備える。
【0052】
第1直線パイプ50aは、第1直線部40aとほぼ同じ長さに形成されている。第1直線パイプ50aは、第1直線部40aの長手方向(本実施形態においてはX方向)に沿って、第1直線部40aの下面44bにおける略中央部に配置される。第1直線パイプ50aは、第1直線部40aの下面44bに当接した状態で第1直線部40aの下面44bに接合される。
【0053】
また、第1直線パイプ50aには、図3に示すX方向におけるX1側の端部に冷却パイプ部5の流入部52が接合されている。流入部52は、Z方向におけるZ1側に開口が向くように接合されている。一方、第1直線パイプ50aの図3示すX方向におけるX2側には、第1エルボ51aが連結されている。
【0054】
第1エルボ51aは、略直角に屈曲した形状を有しており、X方向に沿って配置される第1直線パイプ50aと、Y方向に沿って配置される第2直線パイプ50bとを連結させる。第1エルボ51aは、第1直線パイプ50aと第2直線パイプ50bとを連結させた状態で、第1屈曲部41aの屈曲方向に沿うように、第1屈曲部41aの下面44bに接合されている。
【0055】
第2直線パイプ50bは、第2直線部40bの長手方向(本実施形態においてはY方向)に沿って、第2直線部40bの下面44bにおける略中央部に配置される。第2直線パイプ50bは、第2直線部40bの下面44bに当接した状態で第2直線部40bの下面44bに接合されている。第2直線パイプ50bは、第2直線部40bとほぼ同じ長さに形成されている。
【0056】
冷却パイプ部5は、上述の第1直線パイプ50a、第1エルボ51a及び第2直線パイプ50bに示す規則的な連結配列を繰り返すことにより、誘導加熱部4に沿って直角に屈曲しながら渦巻きの中心に向かって収束する所定の渦巻き状に形成される。
なお、冷却パイプ部5の端部を構成する第15直線パイプ50pの端部には、排出部53が接合されている。排出部53は、Z方向におけるZ1側に開口が向くように接合されている。
【0057】
冷却パイプ部5は、伝熱材料により形成されている。冷却パイプ部5は、伝熱材料を用いて冷却パイプ部5を形成することにより、誘導加熱部に発生した熱量を冷却パイプ部5に移動させ、効率よく誘導加熱部4を冷却させる。
伝熱材料としては、例えば、銅、黄銅、軟銅、アルミニウム、若しくは鉄等を用いることができるが、伝熱率の高い、銅を用いることが好ましい。
【0058】
図4に示すように、冷却パイプ部5は、誘導加熱部4の下面44bに当接した状態で接合されている。冷却パイプ部5は、接合部6により接合されている。冷却パイプ部5は、周面が誘導加熱部4の下面44bに当接していない部分において、接合部6により接合される。
【0059】
接合部6は、伝熱材料により形成されている。接合部6は、誘導加熱部4と冷却パイプ部5とを伝熱材料を用いて接合させることにより、誘導加熱部4が過熱された場合においても冷却パイプ部5を流通する冷却液により、誘導加熱部4の温度上昇が抑制される。
【0060】
操作ユニット3は、誘導加熱部4に電力(交流電流)の供給を行う電源装置30と、冷却パイプ部5に供給する冷却媒体としての冷却液を貯留する冷却媒体供給装置としての冷却液タンク32と、冷却パイプ部5に冷却液を流通させる冷却媒体供給装置としての循環ポンプ31と、冷却液を冷却する放熱器33と、を有する。
なお、冷却媒体としては、例えば、水、エチレングリコール等、一般に冷却液として適用できるものであれば、特に制約はない。
【0061】
電源装置30は、電源コード(図示せず)を有している。電源装置30は、電源コードにより、電源部(図示せず)に接続される。電源装置30は、電源コードを介して電源部に接続されることで、電源部からの電力(電流)の供給を受けることが可能になる。
また、電源装置30は、第1給電ケーブル30aと、第2給電ケーブル30bと、を有する。第1給電ケーブル30aは、誘導加熱部4の一端部42に接続される。第2給電ケーブル30bは、誘導加熱部4の他端部43に接続される。電源装置30は、第1給電ケーブル30aを誘導加熱部4の一端部42に接続し、第2給電ケーブル30bを誘導加熱部4の他端部43に接続することで、誘導加熱部4に電力(電流)を供給することが可能になる。
【0062】
電源装置30は、操作部(図示せず)を備えている。操作部は、誘導加熱部4に供給する電力(電流)の供給量を調整可能な調整部(図示せず)と、誘導加熱部4に加える電力(電流)の供給量を表示する表示部(図示せず)と、を備える。電源装置30は、操作部により誘導加熱部4に加える電力(電流)の大きさや、電力(電流)を加える時間を調整する。
【0063】
冷却液タンク32は、冷却パイプ部5の流入部52及び排出部53のそれぞれに接続されている。冷却液タンク32は、冷却パイプ部5の内部を流通する冷却液を一時的に貯留する。
循環ポンプ31は、冷却液タンク32と冷却パイプ部5の流入部52との間に設けられる。循環ポンプ31は、冷却液タンク32から冷却パイプ部5に冷却液を流通させる。
放熱器33は、冷却パイプ部5の排出部53と冷却液タンク32との間に設けられる。放熱器33は、冷却パイプ部5の内部を流通して過熱した冷却液を冷却する。
なお、本実施形態においては、冷却液タンク32と放熱器33とは、直列に配置させる構成としたが、冷却液タンク32と放熱器33とは、並列に配置させる構成であってもよい。
【0064】
次に、図5及び図6を参照しながら、誘導加熱装置1における誘導加熱装置1の使用方法について説明する。
図5は、ベルトコンベア7により搬送される被塗物10と誘導加熱ユニット2との位置関係を示す平面図である。図6は、ベルトコンベア7により搬送される被塗物10と誘導加熱ユニット2との位置関係を示す断面図である。
【0065】
図5に示すように、誘導加熱装置1は、例えば、ネット式のベルトコンベア7の搬送路における所定の位置に誘導加熱ユニット2を配置して使用される。具体的には、誘導加熱ユニット2は、図6に示すように、ベルトコンベア7のZ方向におけるZ1側に配置されている。言い換えると、誘導加熱ユニット2は、搬送路に搬送された金属製の被塗物10とベルトコンベア7を介して対向するように配置される。ベルトコンベア7には、Z2方向側に塗膜が形成された金属製の被塗物10が載置される。ベルトコンベア7は、搬送方向Hに所定の搬送速度で被塗物10を搬送するように構成されている。
【0066】
まず、不図示の電源部に接続された電源装置30の電源を入れると、誘導加熱部4に交流電流Iが流れると共に、冷却液タンク32から所定の冷却液が冷却パイプ部5の内部に流通される。
誘導加熱部4に流される交流電流Iは、予め設定された大きさ(A)や時間(t)等に基づいて流れるように設定されており、例えば、5(A)の交流電流が誘導加熱部4に流される。同様に、冷却パイプ部5に流通される冷却液は、予め設定された流量が加えられるように設定されている。なお、冷却液は、循環ポンプ31により、冷却液タンク32から供給される。
【0067】
ここで、誘導加熱部4に電流が流れると、誘導加熱部4の有する電気抵抗により、誘導加熱部4にジュール熱が発生する。しかしながら、誘導加熱部4の下面44bには、伝熱性を有する接合部6により冷却パイプ部5が伝熱可能に接合されている。そのため、誘導加熱部4にジュール熱が発生しても冷却パイプ部5を流通する冷却液により誘導加熱部4は冷却される。
【0068】
図5に示すように、誘導加熱部4に流れる交流電流の向きは矢印Iであり、交流電流は誘導加熱部4の一端部42から他端部43に向かって流れる。つまり、交流電流Iは、渦巻き状に流れる。誘導加熱部4に所定の交流電流が流れると、誘導加熱部4の周りには、向き及び強度の変化する磁力線が発生する。
【0069】
ベルトコンベア7に載置された金属製の被塗物10が所定の搬送速度で搬送方向Hに搬送され、誘導加熱ユニット2が設置された領域に到達すると、金属製の被塗物10は、誘導加熱部4の周りに発生した磁力線の影響を受けて、その内部に渦電流を発生させる。ここで、被塗物は、金属製であり、通常、電気抵抗を有しているため被塗物10に電流が流れると、所定の電力分のジュール熱が発生する。被塗物10は、このジュール熱の発生により加熱され、塗膜を形成する。
【0070】
以上のような構成を有する本実施形態に係る誘導加熱装置1によれば、以下に示す各効果が奏される。
本実施形態に係る誘導加熱装置1は、平板部材を打ち抜き加工した誘導加熱部4と、冷却パイプ部5とにより構成した。つまり、誘導加熱部4の対象となる被塗物10と対向する面が平面状に形成される。そのため、例えば、ベルトコンベア7を介して誘導加熱部4と対向するように搬送される被塗物10と誘導加熱部4とのZ方向における距離が均一となる。これにより、被塗物10の外表面には、一様に電流が流れ、被塗物10の外表面には、一様なジュール熱が発生する。そのため、被塗物10を均一に加熱することができる。つまり、被塗物10に熱ムラが生じにくくなり、被塗物10に形成された塗膜が均一に乾燥される。
【0071】
また、このとき、冷却パイプ部5には、冷却液が流通されている。冷却パイプ部5は、伝熱性を有する接合部6により誘導加熱部4と接合されている。また、冷却パイプ部5は、誘導加熱部4の背面に当接した状態で接合されると共に、当接していない外周面において、接合部6により誘導加熱部4と接合されている。つまり、冷却パイプ部5と誘導加熱部4とは、接合面積が大きい。そのため、伝熱性が向上し、誘導加熱部4側に発生したジュール熱をより早く冷却させる。
【0072】
また、本実施形態に係る誘導加熱部4は、平板部材を打ち抜き加工することにより形成されている。そのため、誘導加熱部4は製造が容易となると共に、加熱の対象となる被塗物10に合わせた形状に容易に加工することも可能となる。例えば、誘導加熱部4は、対象となる被塗物10の形状に対し、好適な形状の誘導加熱部4を高い精度で形成させることが可能になる。また、例えば、誘導加熱部4は、打ち抜き加工を行った後に、折り曲げ加工を行うことにより、立体形状を構成させることが可能になる。これにより、様々な形状の被塗物に対して好適な形状で焼付乾燥を行うことが可能になる。また、複雑な形状等が必要な場合においても加工精度の高い誘導加熱部4を容易に形成することが可能になる。
【0073】
また、本実施形態に係る冷却パイプ部5は、複数の直線パイプ50と複数のエルボ51とにより構成されている。そのため、例えば、誘導加熱部4を複雑な形状に加工した場合においても、冷却パイプ部5は、直線パイプ50とエルボ51の組合せにより構成されるため、容易に誘導加熱部4の下面44bに沿って配置させることが可能になる。これにより、例えば、被塗物の形状に適した誘導加熱ユニット2を容易に製造することが可能になる。
【0074】
また、本実施形態に係る誘導加熱装置1は、誘導加熱部4が平板部材を打ち抜き加工することにより形成されているため、誘導加熱装置1は、誘導加熱部4の表面積を大きくすることが可能になる。そのため、誘導加熱装置1は、例えば、放熱効率を向上させることが可能になる。これにより、誘導加熱装置1は、誘導加熱ユニット2の冷却効率を向上させることが可能になる。
【0075】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0076】
<実施例>
図7と以下の記載により、本発明の実施例について説明する。
実施例では、図7に示す誘導加熱装置1により、被塗物としての矩形状の金属プレート10を加熱すると共に、複数箇所で金属プレート10の表面温度を測定している。
以下、実施例における金属プレート10を加熱する加熱条件等について説明する。
【0077】
図1に示される誘導加熱装置1を以下に示す条件で製造し、誘導加熱ユニット2をネット式のベルトコンベア7に配置した。金属プレート10をネット式のベルトコンベア7に載置し、金属プレート10を所定の速度で搬送しながら所定時間加熱した。
誘導加熱装置1による金属プレート10の表面到達温度を測定して、金属プレート10の昇温状況を観察した。
温度測定は、金属プレート10における左側後端部10a、中央後縁部10b、右側後端部10c、左側縁部10d、中央部10e、右側縁部10f、左側前端部10g、中央前縁部10h、右側前端部10iの9箇所で行った。
それらの測定結果を表1に示す。
<条 件>
1.誘導加熱装置1:
(1)誘導加熱ユニット2:
(誘導加熱部4+冷却パイプ部(パイプは円筒状の管)5)型
誘導加熱部:
1コイルパターン外径:(縦:W1)100mm×(横:W2)100mm
1コイルパターン内径:(縦)30mm×(横)20mm
板厚(t):2mm
電極板幅(W):8mm
電極間隙(W3):2mm
コイル巻き数:3回
材料:銅板
加熱電力:電圧:250(V)、電流:5(A)
印加時間:3(分)
冷却パイプ部:
パイプ外径(f1):φ6mm
パイプ内径(f2):φ4mm
材料:軟銅
2.金属プレート
材質:テストピース(塗膜評価用試験板)鋼板
形状:縦(L)150mm、横(W)70mm、厚さ(t)0.8mm
塗料名:パワースクエアー200(日本ペイント株式会社製 電着塗料)
測定位置 左側後端部10a
中央後縁部10b
右側後端部10c
左側縁部10d
中央部10e
右側縁部10f
左側前端部10g
中央前縁部10h
右側前端部10i
温度測定点:金属プレート上面
3.ネット式のベルトコンベア7:
ネット式のベルトコンベア
移動距離:10〜1000mm
搬送速度:0.3m/min
4.その他
温度測定は、非接触式の温度計を用いて測定した。
【0078】
<比較例>
以下に示される条件で、誘導加熱ユニット2Aを製造した。この誘導加熱ユニット2Aをネット式のベルトコンベア7に配置して、図8に示す誘導加熱装置1Aを製造した。この誘導加熱装置1Aを用いて実施例と同一の条件で同一の観察をした。それらの結果を表1に示す。
【0079】
1.誘導加熱装置1A:
(1)誘導加熱ユニット2A:
冷却パイプ型(パイプは円筒状の管)
誘導加熱部:
パイプ外径:φ6mm
パイプ内径:φ4mm
パイプ巻き数:3回
パイプ材料:軟銅
1コイルパターン外径:φ100mm
1コイルパターン内径:φ20mm
加熱電力:電圧:250(V)、電流:5(A)
印加時間:3(分)
2.金属プレート
材質:テストピース(塗膜評価用試験板)鋼板
形状:縦(L)150mm、横(W)70mm、厚さ(t)0.8mm
塗料名:パワースクエアー200(日本ペイント株式会社製 電着塗料)
測定位置 左側後端部10a
中央後縁部10b
右側後端部10c
左側縁部10d
中央部10e
右側縁部10f
左側前端部10g
中央前縁部10h
右側前端部10i
温度測定点:金属プレート上面
3.ネット式のベルトコンベア7:
ネット式のベルトコンベア
移動距離:
10〜1000mm
搬送速度:0.3m/min
4.その他
温度測定は、非接触式の温度計を用いて測定した。
【0080】
【表1】

【0081】
<結果>
表1から分かるように、実施例に用いられる誘導加熱ユニット2を備えた誘導加熱装置1は、比較例に用いられる誘導加熱ユニット2Aを備えた誘導加熱装置1Aよりも、すべての測定位置において3分間の印加時間での金属プレート(被塗物10)の表面温度が高いことが分かる。ここで、電着塗装における焼付乾燥工程においては、200℃以上の温度が必要である。そのため、比較例に係る誘導加熱装置1Aでは、更なる加熱を必要とすることが分かる。つまり、実施例に係る誘導加熱装置1の方が短時間で焼付乾燥が可能であることが分かる。
【0082】
また、すべての測定位置の中で最も高い温度である最大温度と、すべての測定位置の中で最も低い温度である最小温度との温度差(Δt)が比較例に係る誘導加熱装置1Aよりも実施例に係る誘導加熱装置1の方が小さいことが分かる。そのため、実施例に係る誘導加熱装置1は金属プレート10全体の表面温度のばらつきは小さいが、比較例に係る誘導加熱装置1Aは表面温度のばらつきが大きくなることが分かる。その結果、実施例に係る誘導加熱装置1は、比較例に係る誘導加熱装置1Aよりも塗膜形成時における過熱むらによる塗膜形成状態のばらつきが生じにくいことが分かる。
【0083】
また、比較例に用いられる誘導加熱装置1Aは、渦巻き形状を形成するにあたり、専用の治具が必要となるが、実施例に係る誘導加熱装置1の場合においては、打ち抜き加工により形成された誘導加熱部4と、直線パイプ50及びエルボ51とにより構成されている。そのため、専用の治具は不要であり、容易に制作することが可能である。
【0084】
また、制作時間においても、例えば、比較例に係る誘導加熱装置1Aが9〜10時間の制作時間を要するのに対し、実施例に係る誘導加熱装置1は、4〜5時間の制作時間で制作可能である。更に、制作費用に関しても、実施例に係る誘導加熱装置1は、比較例に係る誘導加熱装置1Aの半分程度の費用で制作することが可能になる、
【符号の説明】
【0085】
1 誘導加熱装置
2 誘導加熱ユニット
3 操作ユニット
4 誘導加熱部
5 冷却パイプ部
30 電源装置
31 循環ポンプ(冷却媒体供給装置)
32 冷却液タンク(冷却媒体供給装置)
40 直線部
41 屈曲部
50 直線パイプ
51 エルボ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する平板部材が渦巻き状に形成される誘導加熱部と、
前記誘導加熱部における一方の面に沿うように配置されると共に、前記一方の面に接合される冷却パイプ部と、
を有する誘導加熱ユニットと、
前記誘導加熱部に電流を供給する電源装置と、
前記冷却パイプ部に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置と、
を備える誘導加熱装置。
【請求項2】
前記誘導加熱部は、平板部材を打ち抜き加工することにより形成される請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記誘導加熱部は、直線部と、前記直線部に連続する屈曲部と、を有して構成される請求項1又は2に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記冷却パイプ部は、
前記直線部における一方の面に接合される直線パイプと、
前記直線パイプに連結されると共に、前記屈曲部における一方の面に接合される屈曲パイプと、
を有して構成される請求項3に記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記直線パイプの両端には、螺合部が形成され、
前記屈曲パイプの両端には、前記螺合部と螺合可能な被螺合部が形成されており、
前記直線パイプと前記屈曲パイプとは、前記螺合部と前記被螺合部とが螺合固定されて互いに連結される請求項4に記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
前記誘導加熱ユニットは、螺旋状である請求項1から5のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項7】
前記誘導加熱ユニットを複数有する誘導加熱ユニット群を備え、
前記誘導加熱ユニット群は、複数の前記誘導加熱ユニットが直列接続されて構成される請求項1から5のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項8】
前記複数の誘導加熱ユニットそれぞれは、外形が矩形状に形成されており、
前記誘導加熱ユニット群は、前記複数の誘導加熱ユニットそれぞれが互いに近接配置されて構成される請求項7に記載の誘導加熱装置。
【請求項9】
導電性の被塗装物に塗布された塗料を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成装置であって、
導電性を有する平板部材が渦巻き状に形成される誘導加熱部と、前記誘導加熱部における一方の面に沿うように配置されると共に、前記一方の面に接合される冷却パイプ部と、
を有する誘導加熱ユニットと、
前記誘導加熱部に電流を供給する電源装置と、
前記冷却パイプ部に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置と、を備える塗膜形成装置。
【請求項10】
前記誘導加熱部は、直線部と、前記直線部に連続する屈曲部と、を有して構成され、
前記冷却パイプ部は、前記直線部における一方の面に接合される直線パイプと、前記直線パイプに連結されると共に、前記屈曲部における前記一方の面に接合される屈曲パイプと、を有して構成される請求項9に記載の塗膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−244870(P2010−244870A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92928(P2009−92928)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】