説明

誘導加熱調理器

【課題】誘導加熱調理器等に組み込まれるグリル庫において、輻射熱を抑えて被調理物を少ない焼きムラで素早く加熱する。
【解決手段】本体Aの上面に設けられ被調理鍋を載置するトッププレート9と、トッププレート9の下方に配置した加熱コイル22と、加熱コイル22の駆動を制御する基板51と、加熱コイル22と基板51を冷却するファン装置4と、加熱コイル22の下方に配置され上・下ヒータ11a,11bにより被調理物を上下から挟むようにして加熱調理を行うグリル庫1と、を備えた誘導加熱調理器において、グリル庫1の天井面に、グリル庫1内の空気を循環させる循環ファン32を設けた収納空間31を配置し、該収納空間31に循環ファン32の吸気と排気を行う通気孔33を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル庫を備えた誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導加熱調理器(IHクッキングヒータ)に設けられたロースター(グリル)は、魚などの被調理物を加熱する調理庫(グリル庫)内の上下に電熱ヒータからなる上・下ヒータを配置し、該上・下ヒータにより被調理物の両面を同時に加熱するものが一般的であり、前記電熱ヒータにはシーズヒータなどが用いられていた。
【0003】
また、グリル庫内では魚などを電熱ヒータの輻射熱で加熱する他に、庫内温度制御により、例えばピザやお菓子,ケーキなど多種の調理メニューに応じた加熱制御が行われている。
【0004】
しかしながら、誘導加熱調理器に設けられたグリルは、高さの低いグリル庫内の上下に電熱ヒータを配置した構造であるため、被調理物が電熱ヒータの輻射熱を直に受け、ヒータ形状に依存して焼きムラが生じるという課題があった。
【0005】
また、グリル庫内の温度を一定にして調理するオーブン加熱でも、高温空気で焼くよりも被調理物の表面が輻射熱の影響で焦げやすく、オーブン調理に適した調理が困難であった。
【0006】
一方、オーブンレンジ等のようにグリル庫内の容積が大きい加熱調理器では、調理メニューの幅を広げるためにグリル庫内に熱風を循環させるファンを搭載し、被調理物を速く、少ない焼きムラでオーブン調理する構成が一般的である。
【0007】
さらに、電熱ヒータ以外の熱源として、グリル庫内又はグリル庫外で発生した水蒸気を過熱し、この過熱水蒸気と熱風を併用して被調理物をスチームオーブン調理するものも知られている。
【0008】
特許文献1に示すものは、本体にグリル庫内の空気を循環させるファンを設けた焼物調理器で、その第二実施例には、グリル庫内の上方に循環排気ファンを設け、熱風の循環機能と脱臭機能を両立させたものである。
【0009】
また、特許文献2に示すものは、誘導加熱調理器の本体内にファンを搭載し、ヒータと蒸気を熱源として被調理物を加熱するものであり、具体的には、グリル庫内に蒸気発生手段と上加熱体(上ヒータ)を設け、グリル庫の上部と加熱コイルとの間に過熱蒸気発生手段を設け、グリル庫の背面側に過熱蒸気循環手段を設け、前記上加熱体と過熱蒸気発生手段と蒸気循環手段により、被調理物を輻射加熱と過熱蒸気により加熱調理するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−336465号公報
【特許文献2】特開2006−79968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術において、グリル庫内で被調理物を電熱ヒータにより加熱するものは、ヒータの表面温度が500℃以上に上昇して排熱が大きいため熱効率が悪く、食材の乾燥を避けることができないという問題があり、また、省エネ性も悪いという問題がある。
【0012】
また、誘導加熱調理器に設けられるグリル庫は、キッチンへの収納容積が限定されるため、グリル庫内の高さが10cm前後と低く、その内部の上下に設けられる電熱ヒータにより、内部で調理できる被調理物も背の高いものは不可である。
【0013】
従って、このグリル庫内でオーブンやスチームなどを使用して調理可能なメニューを広げるには、被調理物を均一加熱する必要があるが、電熱ヒータと被調理物が近接する従来構成では、焦げや加熱ムラの少ない調理を行うことは難しかった。
【0014】
また、特許文献1に示すように、誘導加熱調理器に搭載されるグリル庫は、本体容積に制限を受けることなくグリル庫の後方や上方などに部品を容易に配置することは難しい。
【0015】
さらに、循環排気ファンをグリル庫内に設け、その外周に上ヒータを配置する構成では、オーブン加熱のように庫内空気を高温にすることはできても、ファン直下の調理物に対して、ヒータの輻射熱が伝わり難いなど、輻射熱による本来のグリル加熱に適した構成になっていない。
【0016】
また、前記したように、グリル庫内にファンを設ける構成は、庫内高さが広い場合にのみ適用できるものであり、庫内高さが低い誘導加熱調理器に搭載されるグリル庫では、調理物の飛散によりファンが汚れ易い、調理物がファンに接触して取り出し難い、さらに加熱できる調理物の最大高さが低くなるなどの理由から、特許文献1の構成を容易に踏襲することができない。
【0017】
また、特許文献2に示すように、グリル庫内の空気を大風量で攪拌して庫内温度を均一化するために、背面にファンを設ける構成では、ファンを電熱ヒータの複数の給電端子を避けて配置する必要があるため、大型のファンやファンモータを配置することが困難である。
【0018】
また、誘導加熱調理器本体の奥行き寸法はキッチンに収納できる奥行き寸法で規定されるので、グリル庫側面へのファン配置とグリル庫の庫内容積とはトレードオフの関係にあり、背面や側面などへのファン配置は庫内容器を減少させ、グリル庫で調理できる調理物サイズを小さくして使い勝手を悪化させる。つまり、ファンモータの高出力化やファンの大型化による風量アップは、グリル庫内容積の狭小化に直結する。
【0019】
また、特許文献2に示すものは、ファンで空気を循環させ、過熱水蒸気で調理を行うものであるが、この構成ではグリル庫内の背面下方から空気を吸込み、庫内の上面前方から下方に向けて空気を循環させるため、庫内の前後方向に温度差が生じやすく、調理物に均等に過熱蒸気が当たらないことも懸念される。
【0020】
さらに、調理物に対して加熱体を上方のみに二段配置しているため、被調理物の両面に同程度の焼き色を付けにくく、調理物の下面の加熱が困難である。
【0021】
さらに、加熱コイルと加熱体の距離が縮まるので、加熱コイル側への熱漏洩が増大して、加熱コイル及びトッププレート側の温度を上昇させてしまう。
【0022】
本発明は、上記課題のうち少なくとも1つを解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、本体の上面に設けられ被調理鍋を載置するトッププレートと、該トッププレート下方の前記本体内に配置された加熱コイルと、該加熱コイルの駆動を制御する基板と、前記加熱コイルと前記基板を冷却するファン装置と、前記加熱コイルの下方に配置され上・下ヒータよりなる電熱ヒータにより前記被調理物を上下から挟むようにして加熱調理を行うグリル庫と、を備えた誘導加熱調理器において、
前記グリル庫の天井面に、該グリル庫内の空気を循環させる循環ファンを収納した収納空間を設け、該収納空間のグリル庫内側に前記循環ファンの吸気と排気を行う吸込み通気孔と吹出し通気孔を設けたものである。
【0024】
請求項2では、前記循環ファンを駆動するファンモータを前記加熱コイルの外周より外方の本体内に設け、回転伝達手段を介して前記循環ファンの回転を制御するものである。
【0025】
請求項3では、前記グリル庫内に飽和水蒸気を供給するスチーム供給手段を備え、前記循環ファンにより飽和水蒸気を前記電熱ヒータに衝突させ、前記グリル庫内で過熱水蒸気を生成して前記被調理物を加熱調理するものである。
【0026】
請求項4では、前記電熱ヒータを利用して前記グリル庫内で飽和水蒸気を生成するスチーム発生手段を備え、前記循環ファンにより前記飽和水蒸気を前記電熱ヒータに衝突させ、前記グリル庫内で過熱水蒸気を生成して前記被調理物を加熱調理するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の請求項1によれば、電熱ヒータである上ヒータに積極的に循環ファンの吸込み空気と吹出し空気を衝突させ、効率よく上ヒータの熱を空気に伝達し、短時間でグリル庫内を高温に保つことができる。
【0028】
また、循環ファンからグリル庫内の前後左右四方壁面に向けて空気の流れを形成し、被調理物を少ない焼きムラで加熱することができる。
【0029】
また、循環ファンによる流れにより、上・下ヒータの表面温度を抑えたので、被調理物の距離が近くても輻射熱の影響を受けにくく、被調理物の表面だけでなく、被調理物の内側も均等に温度上昇させてオーブン加熱調理を行うことができる。
【0030】
また、輻射熱でグリル庫の内壁に伝熱される熱漏洩を少なくできるので、加熱調理時の無駄な消費電力量を抑え、省エネ性の高い誘導加熱調理器を提供できる。
【0031】
請求項2によれば、循環ファンのファンモータを加熱コイル外方の広い空間に配置できるので、ファンモータを大型化して高速回転化,高トルク化など容易に高出力化し、循環ファンの循環風量を増加させて、グリル庫内温度の均一化,被調理物の加熱の均一化を可能にすることができる。
【0032】
また、ファンモータは加熱コイルで生じる磁場の影響を受けにくくなり、安定した動作ができる。また、循環ファンを収納する収納空間が広くできるので、循環ファンを大きくして循環風量を増やすことができる。
【0033】
よって、さらにグリル庫内の昇温速度を向上させるとともに、熱漏洩を抑えた省エネ化,加熱調理時の焼きムラ抑制など、オーブン加熱時の調理性能を著しく向上できる。
【0034】
請求項3によれば、スチーム供給手段によりグリル庫内に飽和水蒸気を任意の量,任意のタイミングで供給することができ、上・下ヒータによる上下両面のグリル加熱調理,上・下ヒータにより庫内を一定温度に保つオーブン加熱調理に加え、庫内に蒸気を充満させて調理するスチーム加熱調理,スチームを上・下ヒータで高温に過熱して調理するスチームオーブン加熱調理など複数の加熱調理パターンをグリル庫内で行うことができる。
【0035】
請求項4によれば、グリル庫内の上・下ヒータとスチーム発生手段により過熱状態のスチームを生成することができるため、過熱水蒸気による加熱と電熱ヒータによる加熱の両方を適宜組み合わせることにより色々な被調理物に最適な調理を行うことができる。
【0036】
また、その過熱水蒸気で被調理物を加熱し、その凝縮潜熱と凝縮水により被調理物の余分な脂分や塩分を取り除くことができ、ヘルシーで健康的な調理を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第一実施例の誘導加熱調理器の分解斜視図である。
【図2】同誘導加熱調理器のグリル庫の斜視断面図である。
【図3】同誘導加熱調理器のグリル庫側の側面断面図である。
【図4】同第二実施例の誘導加熱調理器のグリル庫側の側面断面図である。
【図5】同誘導加熱調理器の分解斜視図である。
【図6】同誘導加熱調理器の正面断面図である。
【図7】同誘導加熱調理器の基板側の側面断面図である。
【図8】同第三実施例の誘導加熱調理器のグリル庫側の側面断面図である。
【図9】同第四実施例の誘導加熱調理器のグリル庫側の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施例について、グリル庫を有するビルトインタイプの誘導加熱調理器(IHクッキングヒータ)を例にとって説明する。但し、本発明は据置きタイプであっても適用可能である。
【実施例1】
【0039】
図1から図3により第一実施例を説明する。
【0040】
最初にグリル庫1の構成を説明する。
【0041】
金属製の箱体で構成されたグリル庫1は、その前面側に魚や肉,ピザ等の被調理物99の出し入れを行うための開閉自在のドア19が設けられ、被調理物99は焼き網15上に載置される。
【0042】
グリル庫1の内側には、輻射熱等を利用するシーズヒータ等の電熱ヒータからなる上ヒータ11aと下ヒータ11bが被調理物99の上下に所定距離を保持して挟み込むように設けられている。
【0043】
下ヒータ11bの下方には、被調理物99から落ちる脂分や水分を受ける受け皿14が配置され、焼き網15は受け皿14に載置されている。
【0044】
グリル庫1の背面側上方には庫内の油煙や蒸気などを排出する排気ダクト10が設けられ、トッププレート9の後方に設けた排気口9bから排気される。排気ダクト10内には、脱煙・脱臭処理を行う触媒などを配してもよい。
【0045】
次に、循環ファン32の配置について説明する。
【0046】
循環ファン32は、加熱コイル22の下方に位置するようにグリル庫1の天井面に設けた収納空間31内に収納されている。
【0047】
収納空間31は、図2及び図3に示すように、グリル庫1の天井面をトッププレート9側に略円盤状に絞り成形し、下面を平板31bで覆い、該平板31bの中央部と外周側に例えばパンチング孔などで構成した吸込み通気孔33aと吹出し通気孔33bを設け、その中に循環ファン32を収納する空間を形成している。なお、図示しないがグリル庫1の天上面に例えばパンチング孔などで構成した通気孔33a,33bを設け、該通気孔33a,33bと循環ファン32を覆うように、金属製の箱体を上方に配置して空間を形成してもよい。
【0048】
また、収納空間31は、グリル庫1と加熱コイル22bの間隙に設けられるため、その高さは30mm程度が最大であるが、加熱コイル22bの下方には該加熱コイル22bの冷却風路となる通風ダクト7を設ける間隙が必要であり、これに収納空間31上方の断熱材の厚さも加味すれば、20mm程度が妥当な高さ幅である。よって、その収納空間31内に配置される循環ファン32の翼の高さは最大で15mm程度のものが使用される。
【0049】
循環ファン32は、金属製のラジアルファン(遠心ファン)であり、ファン中央部下面の平板31bに設けた吸込み通気孔33aから空気を吸込み、ファン外周側下面に設けた吹出し通気孔33bからグリル庫1内の四方八方に向けて熱風を吹出す。
【0050】
従って、循環ファン32の回転によりグリル庫1内を循環する空気は、上ヒータ11a,下ヒータ11bを介して温度上昇し、高温熱風となって焼き網15上の被調理物99を加熱する。
【0051】
吹出し通気孔33bから吹出る熱風は、グリル庫1の壁面に沿って被調理物99を囲うように流れ、グリル庫1の内壁や庫内空気とともに被調理物99を急速に温度上昇させる。
【0052】
特に、上ヒータ11aには、吹出し通気孔33bからの流れが直接衝突するため、効率よく上ヒータ11aの熱を空気に伝える。
【0053】
循環ファン32は、上記したように、翼の高さを最大15mm程度以上に高くすることは難しいが、収納空間31をグリル庫1の幅及び奥行き一杯まで広く取れば、大口径の循環ファンを搭載して、循環風量を高めることも容易に可能である。
【0054】
循環ファン32を回転するファンモータ36は、加熱コイル22bの外周より外方である後方側の上下仕切り板40等に設けられ、回転伝達手段であるベルト35を介して循環ファン32の回転を制御する。つまり、循環ファン32とファンモータ36は、設置スペース上それぞれ分離して設けられているため、グリル庫1内の循環風量を増大させる方策である循環ファン32の大口径化や、ファンモータ36の高速回転化や高出力化など、別々に任意の設計仕様(大きさ)を決め易くできる。
【0055】
従って、循環ファン32によりグリル庫1内を循環させる風量を増し、被調理物99をより速く、均一に加熱することができる。
【0056】
また、ファンモータ36は、その回転力を循環ファン32に伝えるために、循環ファン32とファンモータ36の回転軸にそれぞれプーリー(滑車)36aを設け、回転トルクが伝達し易くする構成が採られる。
【0057】
回転伝達手段は、ファンモータ36を加熱コイル22下方の狭い空間から、加熱コイル外方の広い空間に配置させるために、ファンモータの回転力を伝達させるものであり、ベルト35でなく歯車などを介しても構わない。
【0058】
従って、本実施例におけるオーブン調理では、電熱ヒータ11(上ヒータ11a,下ヒータ11b)と循環ファン32を利用する。電熱ヒータ11は、焼き網15上に載置された被調理物99を輻射熱で加熱する一方、循環ファン32が常時又は定期的に回転し、電熱ヒータ11と庫内空気の熱交換を促進し、庫内温度を急速に昇温させ、調理に必要な温度を維持させる。
【0059】
また、循環ファン32の吸込み通気孔33a,吹出し通気孔33bは、庫内中央付近で吸い込んだ空気を外方に吹出すので、被調理物99は熱風に包み込まれるように加熱され、表面を高温で均一に焼き上げられる。
【0060】
また、本実施例におけるグリル調理では、主に電熱ヒータ11(上ヒータ11a,下ヒータ11b)を利用する。つまり、このとき、循環ファン32は間欠駆動又は停止している。電熱ヒータ11では、焼き網15上に載置された被調理物99の上下に所定距離を保持して挟み込むように設けられた上ヒータ11aと下ヒータ11bを制御し、主に輻射熱を利用して加熱され、表面をこんがり焼き上げたりすることができる。
【0061】
循環ファン32は、回転すると上ヒータ11aの表面温度を下げるため、高速で長時間回転させると、輻射熱による加熱を妨げてしまう。このため、被調理物99に応じて適宜回転させることにより庫内に緩やかな流れを生じさせ、被調理物99の表面を素早く乾燥し、輻射熱による焦げ目などを付け易くする。
【0062】
次に、グリル庫1が収納されるIHクッキングヒータの内部構成について説明する。
【0063】
本体Aの上面後部には、トッププレート9と、本体A内部の空気を出入りさせる吸気口9a,排気口9bと、被調理鍋の火加減などを操作する操作部69が設けられている。尚、排気口9bは図1に示すグリル庫1の排気口と同じである。
【0064】
トッププレート9の前面右側には鍋載置部90a、左側には90b、後部中央には鍋載置部90cが描かれ、その略下側位置の本体A内の上部に加熱コイル22a,22b,電熱ヒータ29がそれぞれ設けられており、誘導加熱できる金属鍋を鍋載置部90a,90bに載置し、誘導加熱できない、例えば土鍋などを鍋載置部90cに載置して加熱調理する。
【0065】
また、本体Aの正面左側には魚などを焼くグリル庫1の投入口、正面右側には被調理鍋の火加減やグリル庫1の加熱具合を操作する操作パネル60を備えており、その火力調整量を本体Aの前面上部に設けた表示部65に表示する。表示部65は、トッププレート9を通して確認できる。
【0066】
また、グリル庫1の隣で、操作パネル60の後方となるグリル庫1の側面には、加熱コイル22に高周波電流を供給させる電子部品などが実装された基板51(51a,51b,51c)や、該基板51の電子部品52,ヒートシンク55,高発熱素子59などを冷却するファン装置4などが搭載される基板ケース5が配置されている。
【0067】
つまり、ファン装置4は基板ケース5の内部で基板51よりも本体Aの後方に設けられる。操作パネル60は、IHクッキングヒータ本体Aの前面右側部に配置され、調理を選択する操作ボタン60aや電源スイッチ60b等で構成されている。
【0068】
ここで、グリル庫1は、左右いずれの位置に設けても何ら差し支えないし、基板51の配置によらず適用できることは言うまでもない。
【0069】
本実施例では基板51を基板ケース5の高さ方向に三段積層した構成であるが、この配置に限定されるものではない。また、基板51やファン装置4は、基板ケース5に収納せず、例えば基板毎に樹脂ケースを設け、それらを積層する構成であってもよい。
【0070】
本構成では、ファン装置4の駆動によって吸気口9aに連通する基板ケース5の吸気部5aから吸い込んだ空気が基板51に向かって吹出され、一段目の基板51aと二段目の基板51b、三段目の基板51cも冷却する。
【0071】
基板ケース5の基板51を冷却した空気は、基板ケース5の上部、つまり左右の加熱コイル22a,22b下側に設けられた通風ダクト7に入り、通風ダクト7の吹出し口7a,7bから加熱コイル22a,22b下面に向かう流れを構成する。
【0072】
左側の加熱コイル22bの下方の通風ダクト7内には、循環ファン32の回転軸を収納しており、吹出し口7bから出る空気はベルト35やファンモータ36の冷却にも利用される。これらを冷却した空気はトッププレート9下方の加熱コイルが配置された空間を本体背面方向に向かって流れ、排気口9bから排気される。
【0073】
上記した本実施例の構成では、被調理物99を上ヒータ11aと下ヒータ11bのみで主に輻射熱で加熱するグリル調理に加え、被調理物99を電熱ヒータ11と循環ファン32による熱風のみで加熱するオーブン調理を行うことができる。
【0074】
次に、グリル庫1の焼き網15に載置された被調理物99をオーブン加熱する場合を例に説明する。
【0075】
まず、ドア19を開けて被調理物99をグリル庫1内に入れた後、操作パネル60で調理温度や時間,自動調理メニューを設定し、調理ボタンを押してオーブン調理を開始する。
【0076】
このとき、例えばローストビーフのような焦げ目を付けたいメニューでは、オーブンによる加熱が所定時間行われた後、電熱ヒータ11のみによる仕上げの輻射加熱が行われる。
【0077】
オーブン調理では、グリル庫1に被調理物99を入れる前にグリル庫1内を予熱する場合が一般的であり、設定温度になるまで、電熱ヒータ11が発熱するとともに、循環ファン32が回転し、収納空間31を介して庫内空気を循環させながら、昇温させていく。
【0078】
このとき、循環ファン32で生じる熱風の流れによってグリル庫1内の空気温度や壁面温度が均一化される。しばらくして、庫内が設定温度に到達したとき、表示部65への表示又は音などで予熱の終了を報知し、被調理物99が庫内に載置される。
【0079】
オーブン調理は、電熱ヒータ11と循環ファン32を制御して設定温度を保ちつつ、熱風により被調理物99の表面をこんがり焼き上げる。自動調理の場合は、被調理物99の種類に応じて、電熱ヒータ11の発熱量,循環ファン32の動作が制御され、輻射加熱と熱風加熱を組み合わせて、メニューに適した仕上がりを実現する。
【0080】
このように、オーブン調理では、吸込み通気孔33aと吹出し通気孔33bの近傍に配置した上ヒータ11aに積極的に循環ファン32の吸込み空気と吹出し空気を衝突させ、効率よく電熱ヒータ11の熱を空気に伝達し、短時間でグリル庫1内を高温に保つことができる。
【0081】
また、グリル庫1の上面に設けた吸込み通気孔33aと吹出し通気孔33bにより、循環ファン32からグリル庫1内の前後左右,四方壁面に向けて空気の流れを形成し、被調理物99を少ない焼きムラで加熱することができる。
【0082】
また、循環ファン32の流れにより上下の電熱ヒータ11の表面温度を抑えることにより、被調理物99の距離が近くても輻射熱の影響を受けにくくなり、被調理物99の表面だけでなく被調理物99の内側も均等に温度上昇させ、良好なオーブン加熱調理ができる。
【0083】
また、輻射熱でグリル庫1内壁に伝熱される熱漏洩を少なくできるので、加熱調理時の無駄な消費電力量を抑え、省エネ性の高い誘導加熱調理器を提供できる。
【0084】
さらに、循環ファン32とファンモータ36を回転伝達手段であるベルト35を介して連結することにより、ファンモータ36を加熱コイル22外方の広い空間に配置できるので、ファンモータ36を大型化して高速回転化,高トルク化など容易に高出力化して、循環ファン32の循環風量を増加させ、グリル庫1内の温度の均一化,被調理物99の加熱の均一化を可能にすることができる。
【0085】
また、ファンモータ36は、加熱コイル22で生じる磁場の影響を受けにくい場所に配置されているので、電磁場の遮蔽などをしなくとも安定した動作ができる。
【0086】
また、循環ファン32を収納する収納空間31を十分に確保できるので、循環ファン32の循環風量も確保することができる。
【0087】
よって、グリル庫1内の昇温速度を向上させるとともに、熱漏洩を抑えた省エネ化,加熱調理時の焼きムラ抑制など、オーブン加熱時の調理性能を著しく向上できる。
【実施例2】
【0088】
図4から図7を用いて第二実施例を説明する。
【0089】
ここで、第一実施例と同様なグリル庫1内の部品配置,基板ケース5内の電子部品配置については説明を省略する。
【0090】
本実施例におけるグリル庫1の背面側には、庫内の油煙や蒸気などを排気する排気ファン16が設けられ、グリル庫1の上面後方に設けた触媒18を介した流れと、グリル庫1の背面側に配置し、受け皿14を冷却する冷却ダクト17を介した流れを混合して排気ダクト10に排出し、トッププレート9の後方に設けた排気口9bから排気させる。
【0091】
受け皿14は、温度上昇を抑えるため、あらかじめ水を入れておいてもよいが、排気ファン16により受け皿14の下方にも冷却風が流れて温度上昇が抑えられることと、後述するようにスチーム供給手段(ボイラー)34からグリル庫1内に供給されるスチームによって凝縮水が生成され、最終的に受け皿14に落下することにより、水を入れておかなくても安全である。
【0092】
また、本実施例では、グリル庫1の天井面で、収納空間31の隣にスチーム供給手段であるボイラー34を配置している。
【0093】
ボイラー34は、アルミダイキャスト製などで作られた略中空の容器にシーズヒータ等のヒータ34aが埋め込まれている。また、ボイラー34に給水するポンプ62は、箱体であるグリル庫1の後部外側に設けられている。ポンプ62は、ボイラー34及び水タンク61に連結されており、水タンク61から水が供給され、配管100によりボイラー34に送水する役目をしている。
【0094】
水タンク61に給水された水は、ボイラー34によって加熱され、生成された飽和スチームをグリル庫1内に向けて噴き出す構成となっている。
【0095】
ここで、水タンク61は、図5に示すように、本体Aの操作パネル60の下方に設けられており、本体Aの前面から容易に着脱できる構成になっている。水タンク61には取っ手(図示せず)を設けるとともに、中の残水量がわかるように水量確認窓を有してもよい。
【0096】
水タンク61に入れる水は、衛生面を考えると、塩素成分を若干含む水道水等が望ましい。また、ポンプ62,配管100の設置場所は、図5に示すグリル庫1の後部位置やグリル庫1と基板ケース5の間隙に限る必要はないが、本体A内部の空きスペースを考えると、ポンプ62はグリル庫1の後部側が最も望ましい。
【0097】
次に、本実施例の構成において、過熱水蒸気を利用したスチームオーブン調理を説明する。
【0098】
まず、ボイラー34に埋め込まれたヒータによってボイラー34を予め所定温度まで昇温させ、その後、ポンプ62によって水タンク61から給水した少量の水滴をボイラー34内に送水、滴下する。
【0099】
ボイラー34は、水滴が接触する部分の温度が100℃以上であれば、飽和状態(100℃)のスチーム33が生成されるが、より効率良く発生させるには、水滴が接触する部分の温度は150℃から300℃位が望ましく、より好ましくは200℃から250℃に制御するのがよい。
【0100】
そして、少量の水滴はボイラー34の内壁面等に接触して瞬間的に蒸発し、体積が急膨張して飽和状態のスチームを発生させる。このとき、ボイラー34内では高温の金属面に少量の水滴が接触するので、水蒸気爆発に近い現象が生じ、水からスチーム(蒸気)に約1600倍に体積が急膨張する。
【0101】
これにより、ボイラー34内の飽和スチームは、急膨張により押圧されて勢いよくグリル庫1内に噴出し、循環ファン32によって電熱ヒータ11に高風速で吹付けられ、過熱してさらに微細な過熱水蒸気が生成される。
【0102】
過熱水蒸気は、略100℃の飽和スチームをさらに過熱するので100℃以上となるが、調理内容によっては200℃から300℃の温度にまで昇温させることが望ましい。
【0103】
また、過熱水蒸気は、空気に比べると軽いので、上部の被調理物99の方向に容易に上昇し、被調理物99に接触して急速に加熱する。このとき、過熱水蒸気に含まれるか又は混ざっている最も径の小さいナノメートルオーダの超微細水蒸気(スチーム)は、被調理物99の内部や表面の凹部にどんどん浸透して行き、毛細管凝縮の現象によって凝縮しながら被調理物99を急速に加熱するとともに、該被調理物99に水分を補給する。これは、ナノメートルオーダの超微細水蒸気の大きさが、被調理物99の表層等の生地の細かさや凹凸より小さいため、被調理物99の表層から内部に容易に浸透して行けるためである。
【0104】
一方、過熱水蒸気に含まれるか又は混ざっているやや径の大きい微細水蒸気は、被調理物99の表面に接触して付着し、温度が低い被調理物99の表面で凝縮することにより大きな加熱エネルギーを発生し、効率良い加熱を行う。つまり、微細水蒸気が凝縮水滴になることによって発生する凝縮潜熱により、被調理物99を効率良く加熱調理する。
【0105】
そして、このような作用により、被調理物99を効率良く加熱するとともに、凝縮水滴によって被調理物99から余分な脂分や水分等を奪うこともできる。
【0106】
次に、電熱ヒータ11(上ヒータ11a,下ヒータ11b)を利用したグリル調理を説明する。
【0107】
このグリル調理においては、循環ファン32とスチーム供給手段であるボイラー34は間欠運転又は停止している。電熱ヒータ11は、焼き網15上に載置された被調理物99の上下に所定距離を保持して挟み込むように設けられた上ヒータ11aと下ヒータ11bを制御し、主に輻射熱を利用して加熱され、表面をこんがり焼き上げたりすることができる。循環ファン32による庫内流れは被調理物99の表面を素早く乾燥させ、輻射熱による焦げ目などを付け易くする効果があるし、ボイラー34によるスチームは食品を保湿させる効果があるので、被調理物99の仕上がりが循環ファン32とボイラー34の挙動によって制御できる。
【0108】
次に、電熱ヒータ11(上ヒータ11a,下ヒータ11b)と循環ファン32を利用したオーブン調理を説明する。つまり、このとき、ボイラー34は間欠運転又は停止している。電熱ヒータ11は、焼き網15上に載置された被調理物99を輻射熱で加熱する一方、循環ファン32が常時又は定期的に回転し、電熱ヒータ11と庫内空気の熱交換を促進し、庫内温度を急速に昇温させ、調理に必要な温度を維持させる。
【0109】
また、循環ファン32の吸込み通気孔33a,吹出し通気孔33bは、庫内中央付近で吸い込んだ空気を外方に吹出すので、被調理物99は熱風に包み込まれるように加熱され、表面が高温で均一に焼き上げられる。
【0110】
また、ボイラー34の駆動による保湿作用が、スポンジケーキやシュー皮作りにおける霧吹きの代わりとなるので、オーブン途中でドア19開閉する手間が無くなるし、ドア開閉による熱漏洩(庫内温度低下)を抑えられる。
【0111】
次に、ボイラー34を利用したスチーム調理を説明する。
【0112】
このスチーム調理では、循環ファン32と電熱ヒータ11は間欠運転又は停止している。ボイラー34で飽和水蒸気を吹出してグリル庫1内に充満させ、焼き網15上に載置された被調理物99をスチームで包まれた空間に置くことで蒸し調理を行える。このとき、グリル庫1内のスチームを撹拌するために循環ファン32を回転させてもよく、庫内にスチームの循環流を生じさせれば、スチームの温度ムラが少なくなり、被調理物99の仕上がりを向上できる。また、調理開始時に庫内温度を100℃以下に上げるために電熱ヒータ11で加熱してもよい。
【0113】
尚、上記4つの調理方法において、グリル庫1背面に設けた排気ファン16を稼動することによって、受け皿14の冷却と触媒を介した排気を行っている。排気ファン16の稼動は、調理メニューや庫内温度,受け皿温度,加熱方法によって適宜決められる。
【0114】
このように、本実施例では、被調理物99を上ヒータ11aと下ヒータ11bのみで主に輻射熱で加熱するグリル調理、被調理物99をボイラー34から供給される飽和スチームのみで加熱するスチーム調理、被調理物99を電熱ヒータ11と循環ファン32による熱風のみで加熱するオーブン調理、被調理物99を電熱ヒータ11と循環ファン32,ボイラー34を組み合わせた過熱水蒸気で加熱によるスチームオーブン調理を行うことができる。
【0115】
次に、図4から図7に示したビルトインタイプのIHクッキングヒータの動作について、グリル庫1の焼き網15に載置された被調理物99を、電熱ヒータ11とスチーム供給手段であるボイラー34を組み合わせた、グリル庫1によるスチームオーブン調理の一例で説明する。もちろん被調理物99の種類や調理法によって前記二つの加熱手段の利用方法は異なるので、以下の調理法や手順に限定されるものではない。
【0116】
まず、ドア19を開けて被調理物99を庫内に入れた後、メニュー設定し、調理ボタンを押して調理が開始される。
【0117】
メニュー設定の内容に応じてスチームの必要性が判断され、スチームが必要である場合は、ボイラー34を所定温度(例えば、200〜250℃)まで昇温する工程が行われ、所定温度に達すると、スチームオーブン(過熱水蒸気)調理がスタートする。この場合、ボイラー用のヒータの通電に加えて、ポンプ62の通電と下ヒータ6の通電が行われる。すると、少量の水滴が昇温後のボイラー34に送り込まれ、滴下して瞬時に蒸発して飽和状態のスチームを生成する。
【0118】
その後、飽和スチームは、循環ファン32で循環される熱風の流れによって過熱態のスチームとなり、被調理物99を急速加熱する。ここで、過熱水蒸気により被調理物99が、スチーム(蒸気)が水に相変化するときの凝縮潜熱により急速加熱されるとともに、凝縮水により被調理物99の余分な脂分や水分、さらには塩分が溶かし出されて下に落とされ、ヘルシーで健康的な調理を可能にする。
【0119】
また、メニュー設定に応じて、例えばこのスチームオーブンによる加熱が所定時間行われた後、電熱ヒータ11による加熱が行われる。
【0120】
この時、上下の電熱ヒータ11によるグリル調理を行えば、給水ポンプ62とボイラー34への通電がストップされ、上ヒータ11aと下ヒータ11bへの通電のみが行われる。ここでは、余分な脂分や塩分が落とされた被調理物99の表面を、上下二つの電熱ヒータ11の輻射熱でこんがり焼き上げる。そして、所定の加熱時間が経過すると調理終了となる。
【0121】
ここで説明したスチームオーブン調理の特徴は、まずボイラー34で供給させるスチームを循環ファン32で攪拌し、電熱ヒータ11で過熱を繰り返すことでグリル庫1内に過熱水蒸気を充満させ、該過熱水蒸気の作用により被調理物99の中身や表面の余分な脂分や塩分を落とし、さらに、電熱ヒータ11で被調理物99の表面をこんがり焼き上げて、ヘルシーで健康的な調理を実現することである。
【0122】
また、図5に示すIHクッキングヒータでは、着脱可能な水タンク61を本体正面のグリル庫1の右側部である、操作パネル60下方に設けた例を示したが、グリル庫1のドア19と操作パネル60の間(グリル庫1と基板ケース5の間)に設けてもよし、上面トッププレート9の後方、例えば吸気口9aと排気口9bの間や、吸気口9a或いは排気口9bの内側に設けてもよい。これらの設置でも、水タンク61を着脱可能にできる。
【実施例3】
【0123】
図8を用いて第三実施例を説明する。なお、本実施例においては、トッププレート9下方の加熱コイル22や基板ケース5の配置及び構成等が図4に示した実施例と同様であるので説明を省略する。
【0124】
本実施例では、グリル庫1内に電熱ヒータ11(主に下ヒータ11b)を利用してグリル庫1内で飽和水蒸気を生成するスチーム発生手段として蒸発容器14aを配し、さらに、循環ファン32により飽和水蒸気の流れを強制的に循環させることで、水蒸気を電熱ヒータ11(主に上ヒータ11a)に衝突させ、グリル庫1内で飽和水蒸気を過熱した過熱水蒸気を生成して被調理物99を加熱調理する構成になっている。つまり、本構成では水タンクやポンプ及びその配管など本体に収納する部品数を少なくし、調理性能の向上によるコストアップを抑えた構成となっている。
【0125】
よって、本実施例の構成では、被調理物99を上ヒータ11aと下ヒータ11bのみで主に輻射熱で加熱するグリル調理、被調理物99を電熱ヒータ11と循環ファン32による熱風のみで加熱するオーブン調理、被調理物99を電熱ヒータ11と循環ファン32,ボイラー34を組み合わせた過熱水蒸気で加熱によるスチームオーブン調理を行うことができる。
【0126】
ここで、蒸発容器14aは受け皿14に載置され、下ヒータ11bの輻射熱で加熱し易いように近接して配置させたことにより、温度の低い水道水などを入れた場合でも、素早く水蒸気を発生させスチームオーブン調理を行うことができる。
【0127】
また、蒸発容器14aに吸水する水量によって、グリル庫1内に発生させる水分量を調整できるし、調理開始から蒸気発生終了までの時間を任意に設置できるので、例えばオートメニューによる自動調理において、スチームオーブン加熱後のグリル加熱を行う工程に追従した加熱制御が可能である。
【0128】
また、本実施例ではグリル庫1内で飽和水蒸気を生成するスチーム発生手段を蒸発容器14aとしたが、ヒータが埋め込まれた蒸発容器をグリル庫1内に配置してもよいし、水タンクやポンプを配し、蒸発容器に自動給水させる構成であっても差し支えない。自動吸水させる構成とすれば、第一実施例と同様な加熱制御によって様々な調理メニューに応じた加熱ができる。
【実施例4】
【0129】
図9により第四実施例を説明する。本実施例においては、トッププレート9下方の加熱コイル22や基板ケース5の配置及び構成が図4に示した実施例と同様であり説明を省略する。また、循環ファン32の配置は図8と同様であり説明を省略する。
【0130】
本実施例は、収納空間31に循環ファン32とともに熱風ヒータ31aを設けた構成となっている。ここで、熱風ヒータ31aは上ヒータ11aと同様にシーズヒータなどの電熱ヒータであり、収納空間31内の循環ファン32の外周側に設けられる。つまり、循環ファン32で庫内を循環させる空気を上ヒータ11aや下ヒータ11bで加熱する前記の構成に比べて、循環ファン32から吹出す直接の流れを、熱風ヒータ31aに衝突させるので、熱交換が良好でさらに素早く庫内空気温度を上昇させることができる。
【0131】
さらに、本実施例では加熱コイル22b下方のグリル庫1が、被調理物99を上下から挟むように上ヒータ11aと下ヒータ11bの二つのヒータと、加熱コイル22bとグリル庫1の間のグリル庫1の天井面に、グリル庫内の空気を循環させる循環ファン32を設けた収納空間31と、収納空間31に循環ファン32の吸気と排気を行う通気孔33と、グリル庫1の排気を行う排気ダクト10と、排気ダクト10の流れを遮蔽する開閉手段10aを設けた構成となっている。
【0132】
ここで、開閉手段10aは、例えばソレノイドや電磁弁のような電磁作用などを利用したものでも、回転モータを利用したダンパ構造などであってよい。また、開閉手段10aに排気経路の遮蔽は完全に遮蔽しなくとも、通風抵抗を増減させ、排気し難さを制御できるものであれば何であっても差し支えない。
【0133】
排気ダクト10は、グリル庫1内で発生する油煙や熱気などを排気するものであるが、加熱方法によっては排気量を抑えることで、素早く庫内温度を上げる昇温特性,庫内温度を均一化させるオーブン性能,余分な蒸発量を抑えたスチーム性能、さらに庫内温度を一定に保つためのヒータ電力量を抑えた省エネ性などが改善できる。
【0134】
また、本実施例のような循環ファン32を配した構造では、庫内空気を積極的に循環させる流れを構成するので、開閉手段14aの制御により排気量を制御できれば、無駄な流れが生じず、より効率良く被調理物99の加熱を行うことができる。
【0135】
尚、本実施例における、熱風ヒータ31aや開閉手段10aは、図1から図8記載の実施例に設置できることは言うまでもないし、前記実施例においても熱風ヒータ31aや開閉手段10aにより、さらにグリル庫1の調理性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0136】
1 グリル庫
4 ファン装置
5 基板ケース
7 通風ダクト
9 トッププレート
9a 吸気口
9b 排気口
10 排気ダクト
11a 上ヒータ
11b 下ヒータ
14 受け皿
15 焼き網
16 排気ファン
17 冷却ダクト
18 触媒
19 ドア
21 コイルベース
22 加熱コイル
23 温度センサ
24 フェライト
27 コイル保持部
31 収納空間
32 循環ファン
33a 吸込み通気孔
33b 吹出し通気孔
34,46 スチーム供給手段
35 ベルト
39 ファンモータ
40 上下仕切り板
45 スチーム発生手段
51 基板
52 電子部品
55 ヒートシンク
59 高発熱素子
60 操作パネル
61 水タンク
62 ポンプ
68 断熱材
90 鍋載置部
99 被調理物
100 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体の上面に設けられ被調理鍋を載置するトッププレートと、該トッププレートの下方に配置した加熱コイルと、前記加熱コイルの駆動を制御する基板と、前記加熱コイルと前記基板を冷却するファン装置と、該加熱コイルの下方に、被調理物を上下から挟むように上ヒータと下ヒータの二つの電熱ヒータで該被調理物の加熱調理を行うグリル庫と、を備え、
前記加熱コイルと前記グリル庫の間の該グリル庫の天井面に、グリル庫内の空気を循環させる循環ファンを設けた収納空間を配し、該収納空間に循環ファンの吸気と排気を行う通気孔を設けたことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記循環ファンを回転するファンモータを加熱コイルの外周より外方に設け、回転伝達手段を介して該循環ファンの回転を制御することを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記電熱ヒータを利用して前記グリル庫内で飽和水蒸気を生成するスチーム発生手段を備え、前記循環ファンにより飽和水蒸気を前記電熱ヒータに衝突させ、該グリル庫内で過熱水蒸気を生成して前記被調理物を加熱調理することを特徴とする請求項1ないし請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記グリル庫内に飽和水蒸気を供給するスチーム供給手段を備え、循環ファンにより飽和水蒸気を前記電熱ヒータに衝突させ、グリル庫内で過熱水蒸気を生成して前記被調理物を加熱調理することを特徴とする請求項1ないし請求項2記載の加熱調理器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−272211(P2010−272211A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120462(P2009−120462)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】