説明

誘導加熱調理用容器

【課題】電磁誘導による発熱を利用して内容物を加熱する誘導加熱調理用容器について、誤って容器を空焚きしても、金属箔の過剰な加熱を抑制できて、容器の損傷や発火を防止できるようにする。
【解決手段】電磁誘導により発熱する金属箔が容器本体の底面に設けられている誘導加熱調理用容器において、金属箔4を、熱可塑性樹脂層5を接着剤層として、容器本体の底面の容器内面側に接着させると共に、この金属箔4の接着剤層5とは反対側の面に、熱硬化性樹脂層6を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導による発熱を利用して内容物を加熱する誘導加熱調理用容器に関し、特に、空焚き等による過剰な加熱によって容器が損傷したり発火したりするのを防止できるような誘導加熱調理用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導による発熱を利用して内容物を加熱調理するような誘導加熱調理用容器については、従来から既に提案されていて、例えば、電磁調理器を用いる加熱容器として、プラスチックや紙等を基材とする非磁性の容器本体の底部に0.10μm〜100μmのアルミ箔を設けることで、電磁調理器から生じる渦電流によりアルミ箔を発熱させて、容器本体の内容物を加熱調理する、というようなことが下記の特許文献1により従来公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−325327号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来公知の誘導加熱調理用容器によれば、電磁誘導による発熱を利用して内容物を容易に加熱することができるものの、内容物の水分が無くなった状態で更に加熱するような空焚きをしてしまった場合に、アルミ箔が過剰に加熱されることで、容器が損傷したり、発火したりするような虞がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであり、具体的には、電磁誘導による発熱を利用して内容物を加熱する誘導加熱調理用容器について、誤って空焚きしても、金属箔の過剰な加熱を抑制することができて、容器の損傷や発火を防止できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するために、電磁誘導により発熱する金属箔が容器本体の底面に設けられている誘導加熱調理用容器において、金属箔が、熱可塑性樹脂層を接着剤層として、容器本体の底面の容器内面側に接着されていると共に、この金属箔の接着剤層とは反対側の面に、熱硬化性樹脂層が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
上記のような本発明の誘導加熱調理用容器によれば、誤って空焚きすることで金属箔が過剰に加熱されたときに、容器本体の底面と金属箔との間の接着剤層である熱可塑性樹脂層は軟化して接着力が弱まると共に、加熱により金属箔は熱膨張するのに対し、金属箔の接着剤層とは反対側の面に形成された熱硬化性樹脂層は硬化して膨張しない。
そのため、半径方向外方へ膨張しようとする金属箔に対し、膨張方向とは反対方向に金属箔を引っ張るような力として熱硬化性樹脂層が作用することとなり、それによって、金属箔の周辺部では、熱硬化性樹脂層と積層された金属箔は、容器本体の底面から剥離して、容器本体の底面から上方に捲れ上がって反り返るように変形することとなる。
その結果、金属箔の周辺部が容器本体の底面から上方に浮き上がって、電磁調理器等のの誘導加熱コイルと金属箔との距離が離れることで、誘導加熱が生じ難くなって、金属箔の過剰な加熱が抑制されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の誘導加熱調理用容器の一実施例について、容器全体の構造を示す部分断面側面図である。
【図2】図1に示した容器の底部の周辺部付近を示す断面図である。
【図3】図1に示した容器の底部の周辺部付近で、容器が過剰に加熱されたときの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
電磁誘導による発熱を利用して内容物を加熱する誘導加熱調理用容器について、誤って空焚きしても、金属箔の過剰な加熱を抑えることができて、容器の損傷や発火を防止できるようにするという目的を、最良の形態として以下の実施例に具体的に示すように、電磁誘導により発熱する金属箔が、容器本体の底面に設けられている誘導加熱調理用容器において、金属箔を、熱可塑性樹脂層を接着剤層として、容器本体の底面の容器内面側に接着させ、この金属箔の接着剤層とは反対側の面に、熱硬化性樹脂層を形成するということで実現した。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の誘導加熱調理用容器の一実施例について説明すると、本実施例の誘導加熱調理用容器は、紙を基材として両面に熱可塑性樹脂被膜を積層した積層シート材料から容器本体が形成されたものであり、図1に示すように、胴部材2と底部材3からなる容器本体1に対して、その底面の容器内面側に金属箔4が固着されたものであって、この誘導加熱調理用容器を、図示しない電磁調理器上に載置し、電磁調理器を作動させることにより、金属箔4が電磁誘導により発熱することで、容器本体1の内部に収納された内容物を加熱するものである。
【0011】
本実施例の容器本体1では、紙を基材として両面に熱可塑性樹脂被膜を積層した積層シートを材料として使用しているが、この積層シートで紙基材に積層される熱可塑性樹脂被膜については、内容物の保護性や胴部材2と底部材3との接着性などを備えている限りにおいて、特に限定されるものではなく、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが好適に使用できるが、特に、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を使用することが好ましい。
【0012】
そのような積層シート材料からなる本実施例の容器本体1では、1枚の積層シート材料を丸めて両端を接合することで、上方から下方に向かって縮径するようなテーパ状の胴部材2が形成されている。また、円板状の底面部と底面部の周縁部から下方に垂下する脚部とを有するように底部材3が形成されている。そして、図2に示すように、胴部材2の下部を底部材3の脚部3bを挟み込むように内方に折り曲げ、胴部材2の下部と底部材3の脚部3bとを加熱圧着することで、カップ状の容器本体1が形成されている。
【0013】
なお、胴部材2の開口端部には、図1に示すように、外巻きにカールされたカール部2aが形成されており、図示していないが、容器本体1の内部に内容物を充填した後で、合成樹脂製フィルムやアルミニウム箔を主体とする蓋部材を、開口端部のカール部2aにヒートシールすることで、内容物を充填した容器が密封されることとなる。
【0014】
ところで、上記のような本実施例の容器本体1において、図2に示すように、容器本体の底面(底部材3の底面部3a)には、その上面側(容器内面側)に、電磁調理器等による電磁誘導によって発熱する金属箔4が、接着剤層となる熱可塑性樹脂層5を介して接着されており、また、金属箔4の上面側(接着剤層である熱可塑性樹脂層5とは反対側の外面側)には、熱硬化性樹脂層6が形成されている。
【0015】
金属箔4は、電磁調理器等が備える電磁誘導加熱コイルから発生する高周波磁界により渦電流が誘起され、その電気抵抗によりジュール熱が生じて発熱するような導電性材料から構成されるものであって、例えば、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、又はこれらの合金が好適に使用でき、特にコストの面でアルミニウム箔を使用するのが好ましい。なお、金属箔5の厚さについては、10〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0016】
容器本体1(底部材3の底面部)に金属箔4を接着するための接着剤層となる熱可塑性樹脂層5については、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂による接着剤により形成されるものであり、特にポリエステル系接着剤が好適に使用できる。なお、熱可塑性樹脂層5の樹脂の軟化点については、110〜180℃の温度範囲であることが好ましい。
【0017】
金属箔4の外面側(上面側)に形成される熱硬化性樹脂層6については、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂塗料を金属箔上に塗布することにより形成されるものである。なお、熱硬化性樹脂層6の厚さについては、1〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0018】
上記のような本実施例の誘導加熱調理用容器によれば、誤って空焚きすることで金属箔4が過剰に加熱されたときに、容器本体1の底面(底面部3a)と金属箔4との間の接着剤層である熱可塑性樹脂層5は軟化して接着力が弱まると共に、加熱により金属箔4は熱膨張するのに対し、金属箔4の接着剤層とは反対側の面に形成された熱硬化性樹脂層6は硬化して膨張しない。
【0019】
そのため、半径方向外方へ膨張しようとする金属箔4に対し、膨張方向とは反対方向に金属箔4を引っ張るような力として熱硬化性樹脂層6が作用することとなり、それによって、金属箔4の周辺部では、図3に示すように、熱硬化性樹脂層6と積層された金属箔4は、容器本体の底面(底面部3a)から剥離して、容器本体の底面(底面部3a)から上方に捲れ上がって反り返るように変形することとなる。
【0020】
その結果、金属箔4の周辺部が容器本体の底面(底面部3a)から上方に浮き上がって、電磁調理器等の誘導加熱コイル(図示せず)と金属箔4との距離が離れることで、金属箔4に渦電流が誘起され難くなるため金属箔4が発熱し難くなって、金属箔4の過剰な加熱が抑制されることとなる。
【0021】
なお、本実施例では、金属箔4の厚さは、10〜100μmの範囲となっており、熱硬化性樹脂層6の厚さは、1〜10μmの範囲となっていて、それにより、充分且つ確実に金属箔4を反り返らせることができる。
【0022】
すなわち、容器の違いや加熱の程度にもよるので一概には言えないかもしれないが、本実施例の場合について言うと、金属箔の厚さが10μmよりも薄いと、金属箔の剛性が低くなり過ぎて、金属箔が充分に反り返らず、皺状等の不規則な形状となって、容器本体の底面から充分に浮き上がらなくなるような虞があり、一方、金属箔の厚さが100μmよりも厚いと、金属箔の剛性が高くなり過ぎて、金属箔が変形し難くなることで、容器本体の底面から充分に浮き上がらなくなるような虞がある。
【0023】
また、熱硬化性樹脂層の厚さが1μmよりも薄いと、熱硬化性樹脂層の強度が弱くなり過ぎて、金属箔の熱膨張時に熱硬化性樹脂層にひび割れ等が発生し、金属箔は熱膨張するが充分に反り返らなくなるような虞があり、一方、熱硬化性樹脂層の厚さが10μmより厚いと、熱硬化性樹脂層の強度が強くなり過ぎて、金属箔の熱膨張による変形が妨げられることで、金属箔が充分に反り返らないような虞がある。
【0024】
以上、本発明の誘導加熱調理用容器の一実施例について説明したが、本発明は、上記のような実施例にのみ限定されるものではなく、例えば、容器本体については、上記の実施例に示したようなカップ容器に限らず、トレー容器のようなその他の形状のものであっても良く、また、その材質についても、紙を基材とする容器でなくても良く、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂などの合成樹脂製容器であっても良い等、適宜に設計変更可能なものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0025】
1 容器本体
2 胴部材
3 底部材
3a 底部材の底面部(容器本体の底面)
4 金属箔
5 熱可塑性樹脂層(接着剤層)
6 熱硬化性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導により発熱する金属箔が容器本体の底面に設けられている誘導加熱調理用容器において、金属箔が、熱可塑性樹脂層を接着剤層として、容器本体の底面の容器内面側に接着されていると共に、この金属箔の接着剤層とは反対側の面に、熱硬化性樹脂層が形成されていることを特徴とする誘導加熱調理用容器。
【請求項2】
金属箔の厚さが10〜100μmの範囲であり、熱硬化性樹脂層の厚さが1〜10μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱調理用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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