説明

誘導結合プラズマ(ICP)イオン源内において異なる処理ガスを迅速に切り替える方法および構造

【課題】集束イオン・ビーム・カラム用のプラズマ源内の処理ガスの迅速な変更または汚染の迅速な除去を可能にする方法および装置を提供すること。
【解決手段】開閉式ガス通路は、荷電粒子ビーム・システムの誘導結合プラズマ源内の処理ガスまたは焼出しガスの迅速な排出を提供する。一般に源電極またはガス入口の一部に配置された弁は、プラズマ室を排気するために開いているときにガスの導通を増大させ、プラズマ源の動作中は閉じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束イオン・ビーム(focused ion beam)(FIB)システム内で誘導結合プラズマ(inductively−coupled plasma)(ICP)イオン源を使用しているときの異なる処理ガス間の迅速な切替えを可能にする方法および構造に関する。
【背景技術】
【0002】
集束イオン・ビーム・システムは、集積回路の製造およびナノテクノロジ分野において、マイクロスコピックおよびナノスコピック構造を形成し、改変するさまざまな用途で使用されている。集束イオン・ビームは、イオンを生成するさまざまな源を使用することができる。液体金属イオン源は、高い分解能、すなわち小さなスポット・サイズを提供することができるが、一般に小さな電流を生成し、使用可能なイオンのタイプが限られている。異なるイオン種は異なる特性を有し、そのため、特定の用途に対してより好ましいイオン種とそうでないイオン種とが存在する。例えば、ヘリウム・イオンは画像化または弱い研磨に対して有用であり、キセノン・イオンは、バルク処理に有用なより高いミリング速度を提供する。プラズマ・イオン源は、多くの異なる種のイオンをより大きな電流で生成することができるが、しばしば、小さなスポットに集束させることができない。
【0003】
プラズマ・イオン源はプラズマ室内でガスをイオン化し、イオンを引き出して、加工物の表面に集束させるビームを形成する。プラズマ・イオン源では、多くの異なるタイプのガスを使用して、異なるイオン種を提供することができる。ビームを形成するためにプラズマ源からイオンが引き出されるにつれて、プラズマを維持するために、プラズマ中のガスを補充しなければならない。プラズマ・イオン源のガス入口は一般に、プラズマ室内の圧力を維持するためにそこを通してガスが供給される小さな開口を有する。ガスは非常にゆっくりと使用されるため、ガスを補充するためのこの小さな開口は非常に小さい。ユーザが別のイオン種からビームを形成するためにプラズマ室内のガスを変更したいときに、一方のガスを除去し、プラズマ室に第2のガスを充填するのに30分かかることもある。異なる処理ガスを使用して加工物を逐次的に処理する多くの用途において、この時間の長さは容認しがたい。
【0004】
図1は、参照により本明細書に組み込まれている、本出願の譲受人に譲渡された「Multi−source Plasma Focused Ion Beam System」という名称の米国特許出願第12/373,676号に記載されているものなどの集束イオン・ビーム・システムとともに使用される、一般的な先行技術の誘導結合プラズマ源100を示す。ガスは、外部ガス供給管路104から、ガス・フィルタ106、次いで流量絞り(flow restriction)110を有する毛管(capillary tube)108を通して、源管103(source tube)内のプラズマ室102へ供給される。エネルギーは、アンテナ・コイル114によってRF電源113からプラズマ室102へ供給され、イオンは、引出し電極120によって、源電極118の源電極アパーチャ(source electrode aperture)116を通して引き出される。プラズマ室102内へのガスの導通およびプラズマ室102から外部へのガスの導通は、(源管103の頂部にある)毛管の流量絞り110および源電極118のアパーチャ116(一般に直径175μm)を通してなされる。弁123を介してガス供給管路104に接続されたポンプ122が、毛管108およびガス供給管路104を通してプラズマ室102からガスを除去する。イオン・カラム・ポンプ(図示せず)が、源電極アパーチャ116を通してプラズマ室102からガスを抜き取る。ガス貯蔵装置(gas storage)130A、ガス貯蔵装置130B、ガス貯蔵装置130C、ガス貯蔵装置130Dなどの複数のガス源が、ガス供給管路104内へガスを供給する。ビーム電圧源132が、室102内のプラズマに高電圧を供給し、引出し電圧源134が、引出し電極120に電圧を供給する。引き出されたイオンまたは電子は、集束電極136によって集束する。集束カラムおよび試料室の他の詳細は示されていない。
【0005】
プラズマ室の内部からガスを除去するためには、図示されているように、ガス供給管路104をポンピングして、毛管108の流量絞り110よりも上の源管内のガスを除去してもよい。主室の真空ポンプ(1つまたは複数)(図示せず)を使用して、源電極118よりも下のFIBシステムの容積を適宜にポンピングしてもよい。
【0006】
源電極アパーチャ116の直径および流量絞り110の直径はともに小さく、それに対応してガスのコンダクタンス(conductance)も非常に小さいため、迅速に源管103の内部をポンプによって排気することは不可能である。このことは特に、生産用のFIBシステムに関して欠点である。第1に、ベース圧力が、第2の処理ガスを導入するのに十分な低い圧力になるまで、源管103から第1の処理ガスを排出するのに、非常に長い時間がかかることがある。ガスの不十分な排気は、イオン化によるプラズマの汚染につながることがある。
【0007】
第2に、焼出し(bakeout)中に、源管103の内壁から熱により脱離させた汚染物質をポンプによって除去するのに長い時間がかかることがある。
【0008】
ガスの迅速な変更を提供する集束イオン・ビーム・システム用のイオン源が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願第12/373,676号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、集束イオン・ビーム・カラム用のプラズマ源内の処理ガスの迅速な変更または汚染の迅速な除去を可能にする方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
好ましい一実施形態によれば、プラズマ・イオン源は、ガスのコンダクタンスを、処理に最適な低いレベルにすることができ、ついでプラズマ室内のガスを迅速に入れ替えられるよう増大することが可能なように、ガスのコンダクタンスを切り替えることができる。弁が、プラズマ室内のガスを迅速に除去するための代替ガス経路を開き、次いで、通常の処理のためにその代替ガス経路を閉じる。
【0012】
上記では、以下の本発明の詳細な説明をより十分に理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり広く概説した。以下では、本発明の追加の特徴および利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成するために他の構造を変更しまたは設計するベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、このような等価の構造は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨および範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【0013】
次に、本発明および本発明の利点のより完全な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】固定された源電極およびガス毛管を有する先行技術の誘導結合プラズマ(ICP)イオン源を示す図である。
【図2】閉位置(下位置)にある可動構造物を有する、本発明のICP源の一実施形態を示す図である。
【図3】開位置(上位置)にある可動構造物を有する、図2のICP源を示す図である。
【図4】ICPイオン源の源管にガスを供給することを可能にするために押し下げられた毛管アセンブリと、毛管アセンブリをシールしているOリング402とを有する、本発明のICP源の他の実施形態を示す図である。
【図5】源管およびガス供給マニホルドの排気を可能にするために引き上げられた毛管アセンブリを有する、図4のICP源を示す図である。
【図6】ラビリンス・シール(labyrinth seal)を備える毛管アセンブリを有する、本発明のICP源の他の実施形態を示す図である。
【図7】Oリングまたはラビリンスによってシールされる変更された源管および毛管アセンブリを有する、本発明のICP源の他の実施形態を示す図である。
【図8】源管およびガス供給マニホルドの排気を可能にするために格納された毛管アセンブリを有する、図7のICP源を示す図である。
【図9】ICPイオン源システムから処理ガスを排出する方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ICPイオン源内における処理ガス間の比較的に迅速な切替えを可能にするいくつかの方法および対応する構造を含む。
【0016】
好ましい1つのシステムは、1)ポンピング速度が遅いプラズマ発生構成と、2)ポンピング速度がはるかに速く、だいたい秒単位で、主真空室内またはガス供給マニホルド内へ源管を排気することができる源管ポンプアウト構成の、2つの選択可能な構成を有する。本発明の実施形態は、代替ガス経路と、この代替ガス経路を露出させまたはシールする可動構造物とを提供する。「代替ガス経路」とは、源電極アパーチャまたは入口流量絞りを通らないガス経路を意味する。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記のことが、源電極がガス・ベント(gas vent)として機能するか、または毛管アセンブリがポペット弁(poppet valve)として機能するようにICPイオン源を変更することによって達成される。ポペット弁とは、軸方向に変位する弁、すなわち弁が露出させる穴に対して垂直に変位する弁を意味する。いくつかの実施形態は、プラズマをバイアスすることができる源電極構造であって、プラズマ室の内部に対するガス・ベント弁の働きをするシール可能な穴をさらに含む源電極構造を使用する。他の実施形態では、プラズマ室内に取り付けられた垂直に移動することができる毛管アセンブリが、排気通路を開閉する可動構造物として機能する。これらの実施形態はいずれも、先行技術のイオン源において、最小限の費用の追加または複雑さを増すことで、実現することができる。
【0018】
プラズマ室から主真空室を通してガスを排出する実施形態では、プラズマ室を通常動作させるために、源電極の1つもしくは複数の穴、あるいは源電極と同じ側のプラズマ室の端部のある構造物の1つもしくは複数の穴が、可動構造物によってシールされる。プラズマ発生中にシールを形成するため、いくつかの実施形態の源電極は、可動構造物がそこに位置することができる案内リングを含むように変更されている。案内リングに加えて、源電極は、ベント弁の機能を代替する所望の代替機能を提供する貫通穴を有することができる。
【0019】
他の実施形態では、ガス入口と同じ側のプラズマ室の端部に可動構造物を含む弁が移動して、ガス管路ポンプに対してガス経路を露出させまたはシールする。この可動構造物は、通常動作中にそこを通ってガスが室に入る毛管アセンブリを含むことが好ましい。いくつかの実施形態では、可動部材と源電極の間のシールまたは可動部材とプラズマ室の他の部分の間のシールを、ラビリンス・シール、Oリング・シールまたは他のシールを使用して達成することができる。
【0020】
図2および3は、プラズマ室204を排気するためにガスのコンダクタンスを選択的に増大させ、プラズマ室204内のプラズマを用いて動作するためにガスのコンダクタンスを選択的に低減させる弁202を有するプラズマ源200を示す。図2は、弁202が閉じられた、すなわち動作位置にあるプラズマ源200を示す。図3は、弁202が開いた、すなわちプラズマ室204からガスを迅速に排出する位置にあるプラズマ源200を示す。ある角度をなす「リード(lead)」を有する円形の案内リング210が、可動構造物214またはポペット弁を、源電極218の上面(シーリング面)216まで案内する。この実施形態では源電極218が、源管103の内部から源電極218の下の室へ通じる複数の貫通穴220を有する。図2では、可動構造物214が、源電極の上面216と接触した状態に配置されており、この接触が、源管103内のガス圧を、プラズマを発生させるのに必要な圧力に維持するのに十分なシールを提供する。プラズマ室204内のガス圧は概ね1トル(1.3ミリバール)未満であり、源電極218の下の室の圧力はそれよりも数桁低いため、可動構造物214の両側のガス圧は非常に小さく、いずれにせよ、存在する残留ガス圧は、可動構造物214を押し下げる傾向を有し、表面216に対してより良好なシールを形成する。
【0021】
図3は、可動構造物214が上位置にあり、源電極218の貫通穴220が露出したプラズマ源200を示す。可動構造物214を持ち上げると、プラズマ室204から主室へのさらなるガスの導通が生じる。これは、穴220を介したさらなる導通が、源電極218の中心穴116の導通よりもはるかに大きいためである(図1〜8においてこれらの穴は一律の尺度では示されていない)。矢印222は、貫通穴220を通ってイオン集束カラムに入り、システムの真空ポンプによって除去されるガス流を示す。可動構造物214を移動させる目的には異なるいくつかの方法を使用することができる。いくつかの実施形態では、デバイスはビーム電圧源132および/または引出し電圧源134からの高電圧の印加に起因する、源電極218からの可動構造物214の静電反発を使用する。他の実施形態では、RFアンテナ114から出るRF磁場によって生じる可動構造物214内の誘導渦電流に起因する、上方への磁気引力を使用する。この渦電流は次いで、B場の勾配に沿って(より高いB場の方に向かって)上方へ引き寄せられる。さらに他の実施形態では、プッシュ・ロッドを使用して、可動構造物214を機械的に上げ下げする。プッシュ・ロッド(図示せず)が、源電極218の下の室容積から上方へ延び、プラズマ室204の開口を通過すると、プッシュ・ロッドは、可動構造物214に上方への力を加え、それによって可動構造物214を源電極218から引き離し、図3に示した開位置まで持ち上げる。
【0022】
図3は、均等に持ち上げられた、すなわち図2と同様に依然として水平に配向された可動構造物を示しているが、適切なポンピングのために必要なのは、可動構造物を持ち上げるということだけであり、可動構造物214の下面と源電極218の上面216との間の真空シールを破るものである限りにおいて、傾ける機構および垂直に持ち上げる機構も機能する。可動構造物は光学的機能を持たないため、可動構造物214を精確に配置する必要もないことに留意されたい。図1の先行技術のICPイオン源100と同様に、(固定された)源電極218の穴116の精確なアライメントは依然として必要である。源電極218をプラズマ室にろう付けする場合、または源電極218をプラズマ室に恒久的に取り付ける場合には、ろう付けの前に可動構造物214が既にプラズマ室204内部に(すなわち固定されずに内側に)なければならない。穴は、源電極自体にある必要はない。穴は、真空ポンプに接続する経路に通じているべきである。例えば、穴が、プラズマ室204の内部とイオン光学カラムの間をつなぐ限りにおいて、電極支持体または他の構造物にこの穴を配置することができる。
【0023】
図4および5は、プラズマ室404を排気するためにガスのコンダクタンスを選択的に増大させ、プラズマ室404内のプラズマを用いて動作するためにガスのコンダクタンスを選択的に低減させる弁402を有するプラズマ源400を備える他の実施形態を示す。図4は、弁402が閉じられた、すなわち動作位置にあるプラズマ源400を示す。図5は、弁402が開いた、すなわちプラズマ室404のガスを迅速に排出する位置にあるプラズマ源400を示す。矢印は、排気のためプラズマ室404から流出するガスの流れを示す。
【0024】
図4の実施形態では、毛管アセンブリ410を上方へ移動させて、図5に示すように、毛管アセンブリ410を囲む隙間502を開けることによって、ガスが入る側と同じ側のプラズマ室404の端部を通してガスが排出される。図4には、閉じた状態の弁402が示されている。毛管アセンブリ410は、プラズマ管416のカウンタボア(counterbore)414上に配置されており、毛管アセンブリをシールするためにOリング412に対してシールされている。毛管アセンブリ410がこの下位置にあるときに、毛管アセンブリ410内の毛管419の流量絞り418を通して、プラズマ室404に処理ガスを充填することができる。次いで、RF電源113によってRFアンテナ114にRF電力を印加して、プラズマ室404内においてプラズマを励起する。Oリング412を持ち上げてカウンタボア414から引き離すために、毛管アセンブリ410にはロッド420が取り付けられている。弁402の作動、すなわち毛管アセンブリ410の持上げは、手動で、またはソレノイド、空気圧アクチュエータもしくは他の手段を使用して実行することができる。ベローズ(bellows)422は、ロッド420の、源の内部領域から延びる部分をシールする。
【0025】
図5には、毛管アセンブリの周囲の円形の排気チャネル504を開くために機械的に引き上げられた毛管アセンブリ410が示されている。隙間502を通過した源管の内部からの処理ガスおよび脱離したガス(焼出し時)は、排気チャネル504を通過して上方へ流れることができ、最終的には、示されているように、ポンプ122によって、ガス供給/ポンプアウト管路104および弁123を通して排気される。一部のガスは、カラムのポンプ・システム(図示せず)によって、源引出し電極218の穴116を通してシステムから排出される。
【0026】
図6は、図5のプラズマ源に似ているが、毛管アセンブリ410と源管416の間にOリングの代わりにラビリンス・シール602を使用したプラズマ源600を有する荷電粒子ビーム・システムを示す。ラビリンス・シール602は、プラズマ発生中に源管416内への漏れの原因となりうる化学的または機械的な損傷を受けることがあるOリングを排除する。毛管アセンブリ410とプラズマ源管416との接触面がOリングよりも硬いため、ラビリンス・シール602はより多くのガス漏れを許す可能性がある。ラビリンス・シール602は、ガス供給管路104の環境とプラズマ室404との間をシールするため、この弁の漏れが、流量絞り418を通したガス流に比べて小さい場合には、この弁の漏れは許容しうる。希望する場合には、ガス供給管路104とプラズマ室404の間の導通が全体として同じになるように補償するため、ラビリンス・シール602を通した少量のガス漏れを較正し、流量絞り418のサイズを調整することができる。いくつかの実施形態では、毛管419を排除し、較正されたラビリンス・シールを通して全てのガスがプラズマ室に入るようにすることができる。
【0027】
図7および8は、本発明の第3の実施形態の2つの動作モードを示す。図7は、プラズマを発生させるように構成されたFIBシステムを示し、図8は、源管から迅速に排気するように構成された同じFIBシステムを示す。この第3の実施形態でも、第2の実施形態と同様に、ガスが入る側のプラズマ管706の端部を通してプラズマ室704が排気される。この実施形態の場合には、動作モードに応じて、毛管アセンブリ710自体が、毛管アセンブリ710を上位置または下位置に自動的に配置する。排気中は、ばね712が、毛管アセンブリ710を持ち上げ、毛管アセンブリ710を源管706から引き離して、シール714を開く。プラズマ発生時(図7)には、処理ガスによって、毛管アセンブリ710が、ばねの力に逆らって押し下げられる。処理ガスは一般に、毛管アセンブリ710の上方において、200トル(270ミリバール)より高い圧力を有する。示した例では、毛管アセンブリ710を源管706に対してシールするのに、Oリング720が使用されている。図6に示したようなラビリンス・シールまたは開閉可能な他のタイプのシールを使用してもよい。源管706および毛管アセンブリ710は、毛管アセンブリ710が下位置にあるときにアセンブリ710が源管706と同一の面をなすような態様で係合する円錐形の面を有する。この構成は、シール714上に毛管アセンブリ710を案内し、源管706の円錐形の表面と毛管アセンブリ710の円錐形の表面との間に追加のシールを形成し、源管室704からの不要な漏れを防ぐ。プラズマ動作時、処理ガスはフィルタ711を通過し、次いで流量絞り418を備える毛管419へ入る。
【0028】
図8に示すように、プラズマ室704からガスを排出するためには、ガス供給源130Aないし130Dの弁をオフに切り替えることによって処理ガス圧をオフにし、排出弁123を開く。その結果、引上げばねとプラズマ室内のガス圧の合わさった力によって、毛管アセンブリ710が上昇して下部シール714を破り、ガスを切り替えるときにプラズマ室704から処理ガスを排出すること、または焼出し中に脱離したガスを排出することが可能になる。一部のガスは、源電極218のアパーチャ116を通してプラズマ室704から排出される。他の実施形態では、プラズマ室704の内部とガス供給管路104の間の別の経路を、別の可動構造物が開くことができる。例えば、毛管アセンブリ以外の可動構造物によってガス入口の隣の経路を開閉することができる。
【0029】
図9は、好ましい一実施形態を使用してICPイオン源システムから処理ガスを排出する方法を説明する流れ図を示す。始めに、ステップ902で、ガス供給源の弁を開くことによってプラズマ室に第1の処理ガスを供給する。ステップ904で、プラズマ室内に配置されたプラズマに点火する。点火した後、ステップ906で、プラズマ室からイオンを引き出す。イオンを引き出した後、ステップ907でガス供給弁を閉じ、ステップ908でプラズマを消火する。プラズマ室から第1の処理ガスを排出するため、ステップ910で、開閉式ガス通路を開く。ステップ912で、第1のガスを排出する。処理ガスを完全に排出した後、開閉式ガス通路を閉じる。ステップ914の後、このプロセスが完了している場合には、作業は停止する。そうでなければ、ステップ902と同様に、プラズマ室に新たな処理ガスを導入する。この新たな処理ガスは第1の処理ガスでも、または第1の処理ガスとは異なる第2の処理ガスでもよい。この開閉式ガス弁は焼出し中にも開かれて、汚染物質の除去速度を速める。この開閉式ガス弁は、源アパーチャたはガス入口絞りのガスのコンダクタンスよりも大きなガスのコンダクタンスを有する経路を通して、プラズマ室の内部をポンプに接続する。このポンプは、15分未満、より好ましくは10分未満、最も好ましくは5分未満で、プラズマ室から排気することができることが好ましい。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、誘導結合プラズマ・イオン源は、プラズマを維持するプラズマ室と、プラズマ室にガスを供給するガス導管(gas line conduit)と、そこを通してプラズマ室からイオンが引き出されるアパーチャと、プラズマ室からのガス・コンダクタンスを選択的に増大させる弁であり、動作中は第1の位置に置かれており、プラズマ室からガスをより迅速に除去するために第2の位置に置かれる弁とを備える。
【0031】
いくつかの実施形態では、プラズマ室からのガスのコンダクタンスを選択的に増大させる弁が、源電極と同じ側のプラズマ室の端部に、開閉可能な開口を備える。いくつかの実施形態では、この弁が、変位可能な部材によって覆うことができる源電極の開口を備える。いくつかの実施形態では、この部材が、電場または磁場によって変位する。いくつかの実施形態では、この電場が、プラズマ電極電圧源または引出し電極電圧源によって供給された電圧によって提供される。
【0032】
いくつかの実施形態では、この弁が、ガス入口と同じ側のプラズマ室の端部に、開閉可能な開口を備える。いくつかの実施形態では、この弁が、第1の位置ではシールを形成し、第2の位置ではプラズマ室内へガスを通過させる可動構造物を含む。いくつかの実施形態では、ガス入口の一部分が、プラズマ室をシールしまたはプラズマ室のシールを解除するように変位可能である。
【0033】
いくつかの実施形態では、この誘導結合プラズマ・イオン源が、プラズマ室に入るガスを調節する毛管をさらに備え、可動構造物がこの毛管を支持している。
【0034】
いくつかの実施形態では、ガス圧の差が、バイアス力(biasing force)に逆らい、バイアス力に打ち勝って、動作している間、可動構造物をシールされた位置に維持する。いくつかの実施形態では、プラズマ源から排気しているときに、弁を手動で移動させる必要なしに、バイアス力によって弁が開く。いくつかの実施形態では、ばねがバイアス力を提供する。いくつかの実施形態では、弁がラビリンス・シールを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、この誘導結合プラズマ・イオン源が、プラズマ室を排気しているときに、弁を自動的に開くバイアス手段をさらに備える。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ICPイオン源システムから処理ガスを排出する方法は、排気可能なプラズマ室、流量絞りを含むガス入口であり、プラズマ室にガスを供給するガス入口、そこを通してプラズマ室からイオンが引き出されるアパーチャ、およびプラズマ室からの選択的な開閉式ガス通路であり、流量絞りおよびアパーチャ以外を通るガス通路を有するICPイオン源システムを提供するステップと、第1のガス源からプラズマ室内へ処理ガスを供給するステップと、プラズマ室内でプラズマに点火するステップと、源電極のアパーチャを通してプラズマ室からイオンを引き出すステップと、プラズマ室内のプラズマを消火するステップと、開閉式ガス通路を開くステップと、開閉式通路を通してプラズマ室からガスをポンピングするステップとを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、ICPイオン源システムから処理ガスを排出する方法がさらに、開閉式通路を通してプラズマ室をポンピングするステップの後に、開閉式通路を閉じるステップと、流量絞りを含むガス入口を通してプラズマ室内へ第2の処理ガスを供給するステップと、プラズマ室内でプラズマに点火するステップとを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、開閉式ガス通路を開くステップが、源アパーチャの穴を露出させるステップを含む。いくつかの実施形態では、開閉式ガス通路を開くステップが、ガス入口を移動させて通路のシールを解除するステップを含む。いくつかの実施形態では、開閉式ガス通路を開くステップが、ガス供給管路を通してガスを排出しているときに、ガス入口を自動的に開いて通路のシールを解除するステップを含む。
【0039】
代替ガス経路の特定の位置および代替ガス経路に対する特定のシールを例として説明したが、本発明は、代替ガス経路の特定の位置、または代替ガス経路を露出させシールする特定のタイプの装置に限定されない。さらに、本発明はプラズマ・イオン源だけに限定されず、例えばプラズマ電子源に対しても使用することができる。
【0040】
本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0041】
200 プラズマ源
202 弁
204 プラズマ室
212 案内リング
214 可動構造物
216 源電極の上面
218 源電極
220 貫通穴
222 ガス流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを維持するプラズマ室と、
前記プラズマ室にガスを供給するガス導管と、
そこを通して前記プラズマ室からイオンが引き出されるアパーチャと、
前記プラズマ室からのガス・コンダクタンスを選択的に増大させる弁であり、動作中は第1の位置に置かれており、前記プラズマ室からガスをより迅速に除去するために第2の位置に置かれる弁と
を備える誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項2】
前記弁が、前記源電極と同じ側の前記プラズマ室の端部に、開閉可能な開口を備える、請求項1に記載の誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項3】
前記弁が、変位可能な部材によって覆うことができる前記源電極の開口を備える、請求項2に記載の誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項4】
前記部材が、電場または磁場によって変位する、請求項3に記載の誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項5】
前記電場が、プラズマ電極電圧源または引出し電極電圧源によって供給された電圧によって提供される、請求項4に記載の誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項6】
前記弁が、前記ガス入口と同じ側の前記プラズマ室の端部に、開閉可能な開口を備える、請求項1に記載の誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項7】
前記弁が、第1の位置ではシールを形成し、第2の位置では前記プラズマ室内へガスを通過させる可動構造物を含む、請求項6に記載の誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項8】
前記プラズマ室に入るガスを調節する毛管をさらに備え、前記可動構造物が前記毛管を支持している、請求項7に記載の誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項9】
前記ガス入口の一部分が、前記プラズマ室をシールしまたは前記プラズマ室のシールを解除するように変位可能である、請求項6に記載の誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項10】
ガス圧の差が、バイアス力に逆らい打ち勝って動作している間、前記可動構造物をシールされた位置に維持する、請求項6に記載の誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項11】
排気しているときに、前記弁を手動で移動させる必要なしに、前記バイアス力によって前記弁が開く、請求項10に記載の誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項12】
ばねが前記バイアス力を提供する、請求項10または請求項11に記載の誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項13】
前記弁がラビリンス・シールを含む、請求項10から12のいずれかに記載の誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項14】
前記プラズマ室を排気しているときに、前記弁を自動的に開くバイアス手段をさらに備える、請求項1に記載の誘導結合プラズマ・イオン源。
【請求項15】
ICPイオン源システムから処理ガスを排出する方法であって、
排気可能なプラズマ室、
流量絞りを含むガス入口であり、前記プラズマ室にガスを供給するガス入口、
そこを通して前記プラズマ室からイオンが引き出されるアパーチャ、および
前記プラズマ室からの選択的な開閉式ガス通路であり、前記流量絞りおよび前記アパーチャ以外を通るガス通路
を有するICPイオン源システムを提供するステップと、
第1のガス源から前記プラズマ室内へ処理ガスを供給するステップと、
前記プラズマ室内でプラズマに点火するステップと、
源電極の前記アパーチャを通して前記プラズマ室からイオンを引き出すステップと、
前記プラズマ室内の前記プラズマを消火するステップと、
前記開閉式ガス通路を開くステップと、
前記開閉式通路を通して前記プラズマから前記ガスをポンピングするステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記開閉式通路を通して前記プラズマ室をポンピングする前記ステップの後に、
前記開閉式通路を閉じるステップと、
流量絞りを含む前記ガス入口を通して前記プラズマ室内へ第2の処理ガスを供給するステップと、
前記プラズマ室内でプラズマに点火するステップと
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記開閉式ガス通路を開く前記ステップが、前記源アパーチャの穴を露出させるステップを含む、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記開閉式ガス通路を開く前記ステップが、前記ガス入口を移動させて通路のシールを解除するステップを含む、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記開閉式ガス通路を開く前記ステップが、前記ガス供給管路を通してガスを排出しているときに、前記ガス入口を自動的に開いて通路のシールを解除するステップを含む、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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