説明

誘電体セラミックスおよびこれを備える誘電体フィルタ

【課題】高い比誘電率εr,Qf値と、良好な共振周波数の温度係数を示す誘電体セラミックス、ならびに気温差の激しい場所においても長期間にわたって安定して良好な性能を維持できる誘電体フィルタの提供。
【解決手段】組成式aBaO・bNd・c[{1-(x/2)-(y/2)}TiO+1/2xNb+1/2yAl]と表したとき、a,b,c,x,yが、13.5≦a≦16.1、17.6≦b≦19.4、64.5≦c≦68.8、0.01≦x≦0.15、0.01≦y≦0.15、a+b+c=100を満足する誘電体セラミックスを得る。この誘電体セラミックスは高い比誘電率εr,Qf値と、良好な共振周波数の温度係数を示し、この誘電体セラミックス5と電磁界結合された入力端子3および出力端子4とを備える誘電体フィルタ1は、気温差の激しい場所においても長期間にわたって安定して良好な性能を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波、ミリ波等を含む高周波領域において、高い比誘電率εr(真空の誘電率εoとの比)および高い品質係数Qf値を有する誘電体セラミックスおよびこれを備えるフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話、パソコン等のモバイル通信市場の急速な技術の進展に伴い、コンデンサなどに使用される誘電セラミックスには、高い誘電率が要求されることはもちろんであるが、誘電損失が小さく、なおかつ温度係数が良好であるなど諸条件を同時に満足することが要求される。最近では、使用機能の多様化により使用周波数もより高周波帯へシフトし、特に高周波領域(800MHz〜2GHz)での誘電特性が要求されるようになってい
る。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1では、組成式xBaO-y((1−a)Nd・aS
)−zTiO(ここで、14<x<18、11<y<15、67<z<75、0.07<a<0.6、x+y+z=100(モル比))で表される主成分に対して、副成分としてBiを10〜20%、Alを0.1〜1.5%、MnOを0.01〜1.5%の割合で含有する誘電体磁器
組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2003−292373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のBaO−Nd−Sm−TiO系の誘電体磁器組成物では、BiおよびAlを添加することによって共振周波数の温度特性τfを0ppm/℃近傍に近づけることができるものの、Qf値を向上すること
ができなかった。
【0006】
本発明は、高い比誘電率εr、高いQf値と、0ppm/℃に近い安定した共振周波数の温度係数τfとを有する誘電体セラミックスおよびこれを備える誘電体フィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の誘電体セラミックスは、組成式をaBaO・bNd・c[{1-(x/2)-(y/2)}TiO+1/2xNb+1/2yAl]と表したとき、
a,b,c,x,yが、13.5≦a≦16.1、17.6≦b≦19.4、64.5≦c≦68.8、0.01≦x≦0.15、0.01≦y≦0.15、a+b+c=100を満足することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の誘電体フィルタは、上記誘電体セラミックスと、該誘電体セラミックスと電磁界結合され、外部から電気信号が入力される入力端子と、前記誘電体セラミックスと電磁界結合されて前記誘電体セラミックスの共振周波数と対応した電気信号を選択的に出力する出力端子とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の誘電体セラミックスによれば、組成式をaBaO・bNd・c[{1-(
x/2)-(y/2)}TiO+1/2xNb+1/2yAl]と表した
とき、a,b,c,x,yが、13.5≦a≦16.1、17.6≦b≦19.4、64.5≦c≦68.8、0.01≦x≦0.15、0.01≦y≦0.15、a+b+c=100を満足するならば、高い比誘電率,高い
Qf値が得られ、また共振周波数の温度依存性を安定化させることができる。
【0010】
また、本発明の誘電体フィルタによれば、高い比誘電率,高いQf値が得られ、共振周波数の温度依存性を安定化することができる誘電体セラミックスと、誘電体セラミックスと電磁界結合され、外部から電気信号が入力される入力端子と、誘電体セラミックスと電磁界結合されて誘電体セラミックスの共振周波数と対応した電気信号を選択的に出力する出力端子とを備えることから、気温差の激しい場所においても長期間にわたって安定して良好な性能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の誘電体フィルタの断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本実施形態の誘電体セラミックスおよびこれを備える誘電体フィルタの実施の形態の例について説明する。
【0013】
本実施形態の誘電体セラミックスは、組成式をaBaO・bNd・c[{1-(x/2)-(y/2)}TiO+1/2xNb+1/2yAl]と表したと
き、a,b,c,x,yが、13.5≦a≦16.1、17.6≦b≦19.4、64.5≦c≦68.8、0.01≦x≦0.15、0.01≦y≦0.15、a+b+c=100を満足することを特徴とする。
【0014】
ここで、a,b,c,xおよびyが上記数値範囲を満足することにより、NbおよびAlが固溶した主結晶が形成されると考えられ、この主結晶相によって、比誘電率εrおよび品質係数Qf値(Q値と共振周波数fの積)が高く、共振周波数の温度係数τfの絶対値が小さくなる傾向がある。例えば、比誘電率εrを70以上、Qf値を12000GHz以上
、共振周波数の温度係数τfの値を−10〜+20ppm/℃とすることができる。
【0015】
また、本実施形態の誘電体セラミックスは、組成式の成分100質量%に対して、マンガ
ンを酸化物換算で3質量%以下(0質量%を除く)含むことが好ましい。
【0016】
誘電体セラミックスに、組成式の成分100質量%に対して、マンガンを酸化物換算で3
質量%以下(0質量%を除く)含むときには、焼成時のマンガン酸化物の価数変化によって生じる酸素が、誘電体セラミックス内の酸素欠陥に入ることによって、誘電体セラミックス内に生じる酸素欠陥を抑制することで、Qf値を高めることができる。また、マンガンを酸化物換算で0.1〜2質量%質量%の範囲で含むことにより、Qf値をより高めるこ
とができる。
【0017】
なお、誘電体セラミックス中に含まれる各成分の含有量については、誘電体セラミックスの一部を粉砕し、得られた粉体を塩酸などの溶液に溶解した後、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析装置(島津製作所製:ICPS−8100)を用いて測定し、得られた各成分の金属量を酸化物換算することにより得られる。
【0018】
また、本実施形態の誘電体セラミックスはその表面および内部の平均ボイド率が5%以下であることが好ましい。
【0019】
本実施形態の誘電体セラミックスは、平均ボイド率を5%以下とすることで、比誘電率εr,品質係数Qf値を高く維持することができ、また誘電特性が安定しやすい。さらに
、誘電体セラミックスの平均ボイド率を5%以下とすると、誘電体セラミックスの密度が高いので、機械的特性を高く維持することができる。また、平均ボイド率を3%以下にすると、比誘電率εr,品質係数Qf値をより高く維持することができ、また誘電特性がより安定しやすくなるので好ましい。
【0020】
なお、平均ボイド率は、例えば以下のように求めればよい。
【0021】
まず、100μm×100μmの範囲が観察できるように、任意の倍率に調節した金属顕微鏡またはSEM(Scanning Electron Microscope)等により、誘電体セラミックスの磁器表面および内部断面の数カ所を写真または画像として撮影し、この写真または画像を画像解析装置により解析することで、単位面積あたりのボイドの面積が占める割合をボイド率として求めている。そして、数箇所のボイド率を平均すれば平均ボイド率が求められる。また、画像解析装置としては例えばニレコ社製のLUZEX−FS等を用いればよい。
【0022】
次に、本実施形態の誘電体セラミックスの製造方法について説明する。例えば以下の工程(1)〜(7)により製造することが可能である。
【0023】
(1)原料として、99.5%以上の高純度の炭酸バリウム(BaCO),酸化ネオジウム(Nd),酸化チタン(TiO),酸化ニオブ(Nb)および酸化アルミニウム(Al)の各粉末を準備する。そして、BaCO,Nd,TiO,NbおよびAlを所望の割合となるように秤量する。次に秤量された粉末に純水を加え、混合原料の平均粒径が2.0μm以下となるまで1〜50時間、ジルコニア
ボール等を使用したボールミルにより粉砕を行ない、混合物を得る。
【0024】
(2)この混合物を乾燥後、1000〜1300℃で1〜10時間仮焼して仮焼原料を得る。仮焼温度が1000℃未満では、合成が進まず好ましい特性が得られない。
【0025】
(3)得られた仮焼原料を平均粒径0.5〜3μmとなるまで、ボールミル等により粉砕
し、得られた混合物を容器に移し、この仮焼原料をASTM E 11−61に記載されている粒度番号が80のメッシュの篩いに通すことによって、分級された仮焼粉末を得る。なお、仮焼原料の粉砕には、ボールミルの代わりに増幸産業社製のマスコロイダを用いてもよい。
【0026】
(4)(3)で得られた仮焼粉末に純水を加えた後、平均粒径が2.0μm以下となるま
で1〜30時間、ジルコニアボール等を使用したボールミルにより混合を行なう。
【0027】
(5)仮焼粉末100重量部に対して、3〜10質量%のバインダ、例えば、パラフィンワ
ックスやアクリル系ポリマー,ウレタン系ポリマー,ポリビニルアルコール(PVA),またはポリエチレングリコール(PEG)等の有機バインダを加えて、その後、例えばスプレードライ法等により造粒し、得られた造粒体を、例えば金型プレス法、冷間静水圧プレス法により任意の形状に成形する。また、得られた造粒体を用いて杯土を作製し、一般的な押出成形法を用いて任意の形状に成形してもよい。
【0028】
(6)得られた成形体を大気雰囲気中1350℃〜1550℃で1〜10時間保持して焼成し焼成体を得る。より好ましくは1400〜1500℃で焼成するのがよい。なお、このような焼成条件では、主結晶相にNbおよびAlの固溶が促進されやすく、主結晶相以外の異相の量を少なくできる傾向があるので、比誘電率,Qf値が高くなり、また誘電体セラミックスの共振周波数の温度依存性が安定しやすい。
【0029】
(7)必要に応じて、得られた焼成体を酸素5〜30体積%以上を含むガス中において、
温度900〜1500℃,圧力0.1〜300MPaで、30分〜100時間熱処理する。より好ましくは、温度1000〜1300℃,圧力0.1〜100MPaで1〜60時間熱処理するのがよい。
【0030】
次に、本実施形態の誘電体セラミックスを備える誘電体フィルタの一例について以下に説明する。
【0031】
本実施形態の誘電体フィルタは、上述した誘電体セラミックスと、誘電体セラミックスと電磁界結合され、外部から電気信号が入力される入力端子と、誘電体セラミックスと電磁界結合されて誘電体セラミックスの共振周波数と対応した電気信号を選択的に出力する出力端子とを備える。
【0032】
図1は、本実施形態の誘電体フィルタの断面を示す模式図である。
【0033】
図1に示すように、本実施形態のTEモ−ド型の誘電体フィルタ1は、金属ケース2,入力端子3,出力端子4,セラミック体5および載置台6を有する。金属ケース2は、軽量なアルミニウム等の金属からなり、入力端子3および出力端子4は、金属ケース2の内壁の相対向する両側に設けられている。また、セラミック体5は、本実施形態の誘電体セラミックスからなる。そして、セラミック体5は、入力端子3と出力端子4の間に配置され、入力端子3および出力端子4とそれぞれ電磁界結合されている。このような、誘電体フィルタ1において、外部から電気信号を入力端子3に入力することによって、金属ケース2内の入力端子3で磁界が発生する。その磁気エネルギーによって、セラミック体5は特定の周波数で共振を起こして、磁界が発生する。この磁気エネルギーによって出力端子4で磁界が発生して電流が流れ、出力端子4から電気信号が出力される。このように、誘電体フィルタ1は、誘電体セラミックスの共振周波数に対応した電気信号を選択的に出力することができる。
【0034】
なお、TEモードに限らず、TMモード,TEMモードもしくは多重モードとしてもよい。また、誘電体フィルタ1の構成は上述した構成に限定されず、入力端子3および出力端子4をセラミック体5に直接設けてもよい。また、セラミック体5は、本実施形態の誘電体セラミックスからなる所定形状の共振媒体であるが、その形状は筒状体,直方体,立方体,板状体,円板,円柱,多角柱またはその他共振が可能な立体形状であればよい。また、入力される高周波信号の周波数は500MHz〜500GHz程度であり、共振周波数としては2GHz〜80GHz程度が実用上好ましい。
【0035】
そして、本実施形態の誘電体フィルタは、フィルタとして、比誘電率εrおよびQf値が高く、共振周波数の温度依存性が安定した、本実施形態の誘電体セラミックスを備えることにより、気温差の激しい場所においても長期間にわたって安定して良好な性能を維持することができる。
【0036】
また、本実施形態の誘電体セラミックスは、各種誘電体フィルタ用材料以外に、MIC(Monolithic IC)用誘電体基板、誘電体導波路、誘電体アンテナまたは積層型セラミックコンデンサの誘電体等に使用してもよい。
【実施例1】
【0037】
本実施形態によるBaO−Nd−TiO−Nb−Al系材料のモル比a,b,c,xおよびyを種々変更して試料を作製し、比誘電率εr,品質係数Qf値および25〜85℃の共振周波数の温度係数τfの測定をした。製造方法および特性測定方法の詳細を以下に説明する。
【0038】
出発原料として、純度99.5質量%以上のBaCO,Nd,TiO,Nb
およびAlを準備した。
【0039】
次に、それぞれの材料を表1の割合となるように秤量する。そして、BaCO,Nd,TiO,NbおよびAlを混合したものを、ボールミル内に投入し、ボールミル内に純水を加える。その後、混合原料の平均粒径が0.5〜2.0μmの範囲内となるまで、ジルコニアボールを使用したボールミルにより粉砕して混合物を得た。
【0040】
そして、得られた混合物を乾燥後、1100℃で仮焼し仮焼原料を得て、その仮焼原料をASTM E 11−61に記載されている粒度番号が80のメッシュの篩いに通し、分級された仮焼粉末を得た後、その仮焼粉末に純水を加えて1〜30時間、ジルコニアボール等を使用したボールミルにより粉砕を行なうことによって0.5〜2μmの平均粒径となるようにして
、表1に示す試料No.1〜31それぞれのスラリーを得た。
【0041】
次に、上記スラリーに、それぞれ3〜10質量%のポリビニルアルコールを加えてから所定時間混合した後、このスラリーをスプレードライヤで噴霧造粒して2次原料を得た。この2次原料を金型プレス成形法によりφ20mm,高さ15mmの円柱体に成形し成形体を得た。
【0042】
得られた成形体を大気雰囲気中1400℃〜1500℃で2時間保持して焼成し、試料No.1〜31を得た。なお、これら試料は、焼成後に上下面と側面の一部に研磨加工を施し、アセトン中で超音波洗浄を行なったものである。
【0043】
次に、これら試料No.1〜31について、誘電特性を評価した。誘電特性の評価は、試料No.1〜31を用いて誘電体円柱共振器法(国際規格IEC61338-1-3(1999))により測定周波数4〜5GHzにおける比誘電率εrとQ値を測定した。なお、Q値については測定周波数fとの積で表される品質係数Qf値に換算している。また、25〜85℃の温度範囲における共振周波数を測定し、25℃での共振周波数を基準にして25〜85℃の共振周波数の温度係数τfを算出した。なお、試料は入力端子および出力端子が接続された金属キャビティ内にセットされ、その金属キャビティを恒温槽内にセットした後、所望の温度で観測される共振周波数を測定して、25〜85℃の共振周波数の温度係数τfは次の式で算出することができる。
【0044】
τf=(f85−f25)/f25/(85−25)
ここで、f85は85℃のときに測定された共振周波数、f25は25℃のときに測定された共振周波数である。
【0045】
結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1から、比誘電率εr,品質係数Qf値および25〜85℃の共振周波数の温度係数τfの値において、a,b,c,x,yが、13.5≦a≦16.1、17.6≦b≦19.4、64.5≦c≦68.8、0.01≦x≦0.15、0.01≦y≦0.15、a+b+c=100(小数点以下を四捨五入)を満
足するNo.2〜5,8〜11,14〜17,20〜24および27〜30は、比誘電率εrが70以上、品質係数Qf値が12000GHz以上、温度係数τfが−10ppm/℃以上20ppm/℃以
下と高い誘電特性を示す傾向がある。
【0048】
また、a,b,c,x,yが、14.3≦a≦15.2、18.2≦b≦18.8、66.0≦c≦67.5、0.04≦x≦0.11、0.04≦y≦0.11、a+b+c=100(小数点以下を四捨五入)を満足する、
試料No.3,4,9,10,15,16,21〜23,28および29は、特に、高い比誘電率εr,高いQf値が得られ、また温度係数τfの絶対値が小さくなる傾向がある。
【実施例2】
【0049】
次に、本実施の形態によるBaO−Nd−TiO−Nb−Al系材料中のマンガン含有量が、誘電特性に与える影響について確認する試験を実施した。
【0050】
試験に用いる試料の作製は、焼成温度を1450℃、焼成時間を2時間、2種類の仮焼原料を混合する際に予め準備した純度99.5以上の炭酸マンガン(MnCO)を表2に示す量添加する方法以外は、実施例1と同様の製造方法により実施した。また、試験組成については、マンガンを添加する以外は実施例1の試料No.3と同様の組成とした。製造した
試料No.32〜42については、比誘電率εr、Q値、共振周波数の温度係数τfを実施例1と同様の測定方法により測定した。
【0051】
結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
表2に示すように、BaO−Nd−TiO−Nb−Al系材料中のマンガン含有量の合計が3.0質量%以下では、実施例1の試料No.3と比較して、Q
f値がより高くなる傾向を示した。
【0054】
また、表2の試料No.32〜37によれば、BaO−Nd−TiO−Nb−Al系材料中のマンガン含有量が、酸化物換算で0.05質量%以上1.0質量%以下
であると、品質係数Qf値が13800以上と高い値となる傾向を示した。
【実施例3】
【0055】
次に、BaO−Nd−TiO−Nb−Al系材料の平均ボイド率が誘電特性に与える影響について確認する試験を実施した。
【0056】
試験に用いる試料の作製は、焼成時間を1450℃、焼成保持時間をそれぞれ10,8,6,4,3,2時間と変更した以外は実施例1と同様の製造方法により実施した。なお、焼成保持時間が長くなるほど、平均ボイド率は大きくなる。製造した試料No.43〜48については、比誘電率εr、品質係数Qf値、25〜85℃の共振周波数の温度係数τfを実施例1と同様の測定方法により測定した。また、平均ボイド率については、誘電体セラミックス表面の100μm×100μmの範囲が観察可能なSEM写真をとり、この写真を画像解析装置(ニレコ社製LUZEX−FS)により解析することにより、単位面積あたりのボイドの面積が占める割合をボイド率として、任意の5カ所のボイド率を算出し、この平均値を求めることで算出した。
【0057】
結果を表3に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
表3に示すように、試料No.43〜47は、平均ボイド率が5%以下であるので、比誘電率εr,品質係数Qf値,25〜85℃の共振周波数の温度係数τfが高く、特に品質係数Qf値が12800以上と高い値を示した。
【符号の説明】
【0060】
1:誘電体フィルタ
2:金属ケース
3:入力端子
4:出力端子
5:セラミック体
6:載置台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式をaBaO・bNd・c[{1-(x/2)-(y/2)}TiO+1/
2xNb+1/2yAl]と表したとき、前記a,b,c,x,yが、13.5≦a≦16.1、17.6≦b≦19.4、64.5≦c≦68.8、0.01≦x≦0.15、0.01≦y≦0.15、a+b+c=100を満足することを特徴とする誘電体セラミックス。
【請求項2】
前記組成式の成分100質量%に対して、マンガンを酸化物換算で3質量%以下(0質量
%を除く)含むことを特徴とする請求項1に記載の誘電体セラミックス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の誘電体セラミックスと、該誘電体セラミックスと電磁界結合され、外部から電気信号が入力される入力端子と、前記誘電体セラミックスと電磁界結合されて前記誘電体セラミックスの共振周波数と対応した電気信号を選択的に出力する出力端子とを備えることを特徴とする誘電体フィルタ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−116684(P2012−116684A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266366(P2010−266366)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】