説明

読み取り装置及びプリンタ

【課題】簡単な構成で、適正な範囲に検出光を照射した状態での読み取りを行う。
【解決手段】センサ制御部51は、LED62への通電量を変化させ、検出光の照射範囲を調節しながら、電圧波形データを取得するとともに、この電圧波形データについて、IDコード20の読み取りに有効な信号成分と、読み取りの障害となるノイズ成分との比率(S/N)を算出する。次に、算出されたS/Nの値を、この値が得られた電圧波形データに対応付けしてRAM74に記憶する。そして、RAM74を参照し、最もノイズ成分の割合が少ない電圧波形データを解析し、振幅の幅や間隔から、IDコード20のバーとスペースの配列を検知することでIDコード20を読み取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子からの検出光を読み取り対象に照射して、読み取り対象にて反射された反射光を受光素子で受光するフォトリフレクタを用い、前記反射光の強度に基づいて読み取り対象に記録された情報を読み取る読み取り装置、及び、このような読み取り装置を用いたプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
文字情報や音声情報などの各種情報を、光学的に読み取り可能な符号化情報として記録した、例えば、バーコードが広く知られている。バーコードを読み取る読み取り装置では、発光素子と受光素子とが一体にパッケージングされたフォトリフレクタが用いられる。
フォトリフレクタは、発光素子から読み取り対象に検出光を照射して、読み取り対象にて反射された検出光を受光素子にて受光する。そして、読み取り装置では、この受光素子により受光された反射光の強度に基づいて、バーコードを読み取っている。
【0003】
しかし、検出光の照射範囲が適切でないと読み取りの障害となり問題であった。すなわち、検出光の照明範囲が読み取り対象物に対して広すぎると、反射光のうち読み取りに有効な光の量が少なくなってしまう。また、検出光の照明範囲が狭すぎると、読み取り対象物に付着した埃などの影響を受けやすくなってしまう。
【0004】
そこで、検出光が適正な範囲に照射されるように、検出光の照射範囲をレンズによって調節するといったことが考えられる。例えば、下記特許文献1には、記録、再生する媒体に応じて使用する対物レンズを切り替えるようにしたレンズアクチュエータが記載されており、このようなレンズアクチュエータを読み取り装置に設ければ、検出光を適正な範囲に照射することができる。
【特許文献1】特開平9−180218
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、検出光の照射範囲を調節に上述したようなレンズアクチュエータを用いると、部材数が増加し、装置が大型化してしまうといった問題があった。
【0006】
本発明は、簡単な構成で、検出光の照射範囲を調節できる読み取り装置、及び、このような読み取り装置を用いたプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の読み取り装置は、発光素子に供給する電力を増減させることで、検出光の照射範囲を変化させる照射範囲調節手段を備えたことを特徴としている。
【0008】
検出光の照射範囲を変化させながら得られた反射光のうち、最もノイズ成分の少ない反射光の強度に基づいて、対象物に記録された情報を読み取る制御手段を備えていることが好ましい。
【0009】
発光素子として、発光ダイオードを用いてもよい。
【0010】
また、本発明のプリンタは、上述したような読み取り装置を備え、この読み取り装置により記録紙に関する記録紙情報を読み取り、読み取った記録紙情報に基づいて印画条件を決定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光源に供給する電力を増減することによって、検出光の照射範囲を調節するので、レンズアクチュエータを設ける場合と比較して、構成が簡単であり、装置を小型化できる。
【0012】
また、検出光の照射範囲を変化させながら、ノイズ成分が最も少ない反射光の強度に基づいて読み取りを行うことで、最適な範囲に検出光が照射された状態での読み取りが自動的に行われるため便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を、感熱記録紙に対して画像を熱記録するカラー感熱プリンタに適用した場合について以下説明を行う。カラー感熱プリンタ10では、記録媒体として長尺のカラー感熱記録紙(以下、単に記録紙という)12が用いられる。そして、この記録紙12は、巻芯14に対してロール状に巻かれた記録紙ロール16の形態でカラー感熱プリンタ10にセットされる。
【0014】
記録紙12は、周知のように、支持体上にシアン感熱発色層、マゼンタ感熱発色層、イエロー感熱発色層が順次層設されている。最上層となるイエロー感熱発色層は熱感度が最も高く、小さな熱エネルギーでイエローに発色する。最下層となるシアン感熱発色層は熱感度が最も低く、大きな熱エネルギーでシアンに発色する。また、イエロー感熱発色層は、波長が約420nmの青紫色の光であるイエロー定着光が照射されたときに発色能力が消失する。マゼンタ感熱発色層は、イエロー感熱発色層とシアン感熱発色層との中間程度の熱エネルギーでマゼンタに発色し、波長が約365nmの近紫外線であるマゼンタ定着光が照射されたときに発色能力が消失する。
【0015】
記録紙12としては、標準的な記録紙の他に、表面に光沢があり主に画像データの印画に用いられる光沢記録紙や、印画した画像をシールとして活用できるシール用記録紙など、様々なタイプのものが使用され、それぞれ最適な印画条件が異なる。このため、巻芯14の側面には、記録紙に関する記録紙情報を示すIDコード20が記されている。IDコード20は、巻芯14の回転方向に沿って並べられた複数のバーとスペースとからなるバーコード形態で記される。そして、このIDコード20は、カラー感熱プリンタ10によって読み取られ、印画条件の調整に用いられる。
【0016】
カラー感熱プリンタ10は、給紙ローラ22、搬送ローラ対24、サーマルヘッド26、光定着器28、カッタ装置30を備えている。これらカラー感熱プリンタ10の各部は、システムコントローラ32に接続され、システムコントローラ32によって駆動制御される。
【0017】
給紙ローラ22は、記録紙ロール16の外周面と当接するように配置され、記録紙ロール16から記録紙12の先端側を搬送路上に引き出して給紙を行う。搬送ローラ対24は、給紙された記録紙12をニップしてA方向及びB方向へ往復搬送する。給紙ローラ22及び搬送ローラ対24は、搬送モータ34によって駆動される。搬送モータ34としては、供給された駆動パルスの個数に応じて所定量回転するステッピングモータが用いられる。システムコントローラ32は、搬送モータ34に供給する駆動パルスの個数を調節することで、記録紙12の搬送量を制御する。
【0018】
この搬送中に、記録紙12に対して、サーマルヘッド26による熱記録と光定着器28による光定着が行われる。サーマルヘッド26は、記録紙12と圧接して各感熱発色層を加熱することによりイエロー,マゼンタ,シアンの各色の画像を熱記録する。サーマルヘッド26と対向する位置には、サーマルヘッド26からの押圧を受ける記録紙12を裏面から支持するプラテンローラ36が設けられている。記録紙12は、これらサーマルヘッド26とプラテンローラ36とで挟み込まれた状態で熱記録される。
【0019】
光定着器28は、イエロー定着光を発光するイエロー用定着ランプ38と、マゼンタ用定着光を発光するマゼンタ用定着ランプ40と、リフレクタ42とからなる。イエロー定着ランプ38は、イエロー画像を熱記録済みのイエロー感熱発色層に対してイエロー定着光を照射して光定着する。マゼンタ用定着ランプ40は、マゼンタ画像を記録済みのマゼンタ感熱発色層に対してマゼンタ定着光を照射して光定着する。リフレクタ42は、イエロー用及びマゼンタ用の各定着ランプ38、40が放射した光を記録紙12に向けて反射する。
【0020】
カッタ装置30は、記録紙12の幅方向に延びる固定刃44と、固定刃44に沿って移動する回転刃46とから構成される。回転刃46は、カッタモータ48に駆動される。システムコントローラ32は、カッタモータ48を制御して回転刃46を駆動し、記録紙12の切断を行う。切断された記録紙12は、図示しない排紙口より排紙される。
【0021】
また、カラー感熱プリンタ10には、前述したIDコード20を読み取るためのセンサとして、フォトリフレクタ50が設けられている。フォトリフレクタ50は、巻芯14の側面と対面するように配置され、システムコントローラ32内に設けられたセンサ制御部51から送信される駆動信号によって駆動制御される。
【0022】
IDコード20の読み取り機構を表す図2において、フォトリフレクタ50は、発光回路52と、受光回路54とから構成される。発光回路52には、D/Aコンバータ56、アンプ58、FET60、発光ダイオード(LED)62が設けられている。D/Aコンバータ56は、センサ制御部51から入力されるデジタルの駆動信号をアナログの駆動信号に変換してアンプ58に出力する。アンプ58は、FET60のゲート電極と接続され、FET60の駆動に十分なだけ駆動信号を増幅する。
【0023】
FET60は、周知の電界効果型トランジスタから構成され、前述したゲート電極に加え、ソース電極、ドレイン電極を備えている。そして、FET60は、ゲート電極への印可電圧の大きさに応じた量の電流を、ソース電極とドレイン電極との間に流す。LED62は、FET60と接続され、ソース電極とドレイン電極との間を流れる電流によって発光し、IDコード20の記された巻芯14へ向けて検出光を照射する。
【0024】
他方、受光回路54には、フォトトランジスタ64、アンプ66、A/Dコンバータ68が設けられている。LED62からの検出光は、巻芯14で反射され、フォトトランジスタ64に入射する。これにより、フォトトランジスタ64の両端の電極には、検出光の反射強度に応じた大きさの電圧が発生する。この電圧は、アンプ66により増幅された後、A/Dコンバータ68によりデジタル変換され、電圧値の時間的な変化を表す電圧波形データとしてセンサ制御部51へ出力される。
【0025】
センサ制御部51は、記録紙ロール16を回転させながらフォトリフレクタ50を駆動し、電圧波形データを取得する。巻芯14に記されたIDコード20は、バー部分とスペース部分とで検出光の反射率が異なるため、記録紙ロール16を回転させながら得られた電圧波形データを解析することで、IDコード20を読み取ることができる。
【0026】
しかし、検出光の照射範囲が巻芯14の幅よりも広いと、フォトトランジスタ64に入射する光のうち、読み取りに有効な光の量が減り、また、検出光の照射範囲が巻芯14の幅よりも狭いと、巻芯14に付着した埃などの影響が大きくなってしまう。このように検出光の照射範囲が適切でないと、電圧波形データに含まれるノイズ成分の割合が大きくなってしまい、確実な読み取りを行えないといった問題がある。このため、センサ制御部51は、検出光の照射範囲を調節し、検出光が最適な照射範囲に照射された状態で読み取りを行うようにしている。
【0027】
図3に示すように、LED62からの検出光の照射範囲は、LED62への通電量によって変化し、通電量が大きくなれば照射範囲が広がり、通電量が小さくなれば照射範囲が狭くなるといった性質を有する。センサ制御部51は、この性質を利用し、D/Aコンバータ56、アンプ58を介してFET60のゲート電極へ印可する電圧値を調節することでLED62への通電量を変化させ、検出光の照射範囲を調節する。
【0028】
以下、検出光の照射範囲を調節しながら行う読み取りの手順について、図4に示すフローチャートをもとに説明を行う。センサ制御部51には、ROM70、ノイズ解析部72、RAM74、IDコード解析部76が設けられている(図3参照)。ROM70には、LED62への通電量を表す値として、最小値A(1)から最大値A(n)までが記憶されている。センサ制御部51は、最小値A(1)から最大値A(n)までLED62への通電量を変化させ、n個の電圧波形データを取得する。
【0029】
ノイズ解析部72は、新たな電圧波形データが取得されるごとに、IDコード20の読み取りに有効な信号成分と、読み取りの障害となるノイズ成分との比率(S/N)を算出する。S/Nの算出においては、例えば、電圧波形データの振幅のうち、予め設定された閾値以上の振幅を有効な信号とみなし、閾値未満の振幅をノイズとみなす。そして、有効な信号のうち最小の振幅をVsとし、ノイズ成分のうち最小の振幅をVnとし、これらの比、Vs/Vnを、S/Nとして取得する。得られたS/Nの値は、この値が取得された電圧波形データに対応付けされて、RAM74に記憶される。
【0030】
IDコード解析部76は、RAM74を参照し、最もノイズ成分の割合が少ない電圧波形データを抽出する。そして、IDコード解析部76は、この電圧波形データを解析し、振幅の幅や間隔から、IDコード20のバーとスペースの配列を検知することでIDコード20を読み取る。
【0031】
前述のように、検出光が適正な範囲に照射されていないと、電圧波形データに含まれるノイズ成分が多くなる。このため、最もノイズ成分の少ない電圧波形データは検出光が最適な照射範囲に照射された状態で取得されたものであり、この電圧波形データに基づいてIDコード20を読み取ることで確実な読み取りを行うことができる。
【0032】
以下、上記構成による本発明の作用について説明する。記録紙ロール16の巻芯14には、記録紙12に関する情報が記録されたIDコード20が記されている。カラー感熱プリンタ10は、例えば、記録紙ロールが交換された際や、電源の投入時に、IDコード20を読み取る。そして、IDコード20に記録された記録紙情報に基づいて印画条件が調節される。
【0033】
IDコード20は、LED62から記録紙ロール16の巻芯14へ照射された検出光の反射強度を表す電圧波形データを解析することで読み取られる。このとき、LED62への通電量を変化させることで、検出光の照射範囲が調節され、複数の電圧波形データが取得される。そして、これら複数の電圧波形データのうち、ノイズ成分が最も少なく、適切な範囲に検出光が照射された状態で取得されたものに基づいて読み取りが行われる。これにより、確実な読み取りを行うことができる。また、LED62への通電量を変化させて検出光の照射範囲の調節を行うため、部材数の増加を抑えることができる。
【0034】
なお、本発明は、光源へ供給する電力を増減させて検出光の照射範囲を調節すればよいので、細部の構成は上記実施形態に限定されず適宜変更することができる。例えば、上記実施形態では、1つのフォトトランジスタによりIDコードを読み取る例で説明をしたが、複数のフォトトランジスタが並べられたラインセンサや、エリアセンサなどを用いてIDコードを読み取るようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、FETを用いてLEDへの通電量を制御する例で説明をしたが、例えば、可変抵抗を用いてLEDへの通電量を制御してもよい。さらに、1つのLEDを設けた例で説明をしたが複数のLEDを設けてもよい。また、カラー感熱プリンタに本発明を適用した例で説明をしたが、この他の機器に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】カラー感熱プリンタの構成図である。
【図2】IDコードを読み取る読み取り機構の構成図である。
【図3】LEDへの通電量と検出光の照射範囲の関係を表す説明図である。
【図4】IDコードの読み取り手順を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
10 カラー感熱プリンタ
12 記録紙
14 巻芯
16 記録紙ロール
20 IDコード
26 サーマルヘッド
28 光定着器
32 システムコントローラ
50 フォトリフレクタ
51 センサ制御部
60 FET
62 LED
64 フォトトランジスタ
70 ROM
72 ノイズ解析部
74 RAM
76 IDコード解析部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子からの検出光を読み取り対象に照射して、読み取り対象にて反射された反射光を受光素子で受光するフォトリフレクタを用い、前記反射光の強度に基づいて読み取り対象に記録された情報を読み取る読み取り装置において、
前記発光素子に供給する電力を増減させることで、前記検出光の照射範囲を変化させる照射範囲調節手段を備えたことを特徴とする読み取り装置。
【請求項2】
前記検出光の照射範囲を変化させながら得られた反射光のうち、最もノイズ成分の少ない反射光の強度に基づいて、対象物に記録された情報を読み取る制御手段を備えたことを特徴とする読み取り装置。
【請求項3】
前記発光素子として発光ダイオードを用いたことを特徴とする請求項1または2記載の読み取り装置。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の読み取り装置を備え、この読み取り装置により記録紙に関する記録紙情報を読み取り、読み取った記録紙情報に基づいて印画条件を決定することを特徴とするプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−338536(P2006−338536A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164521(P2005−164521)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】