説明

読取装置およびプリント装置

【課題】 検査パターンの読み取りに要する総時間の短縮と精度向上の両立。
【解決手段】 押圧する押板と、センサユニットを保持し押板の上を移動するキャリッジと、センサユニットとキャリッジを収容し且つ押板を変位可能に保持する筐体とがユニットとなって読取部を構成している。読取部を、押板が支持面を押圧する第1位置と、押圧が解除される第2位置とに移動させる移動機構を有し、読み取りの際には第1位置とされ、支持面の上でシートを移動させる際には第2位置とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに形成されたカラーパターンを測色する読取装置、およびその読取装置を備えたプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、測色装置を備えたインクジェットプリンタが開示されている。この装置では、プリントした色校正用のカラーパターンを測色し、その測色データに基づいて次回以降にプリントするカラー画像の色を調整することによって、所望の色を再現する。色校正用のカラーパターンとして、カラーパッチを記録し、その後、測色センサがシートの幅方向に移動しながらカラーパッチを測色する。
【0003】
特許文献1の装置では、押板がシートの面を押さえた状態で、測色センサを搭載したキャリッジが車輪によって押板の上を走行し、測色センサによってカラーパッチを読み取って測色する。測色センサを搭載したキャリッジが押板から離れると、押さえ部材は回動シフトしてシートから離れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−281549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、シート測色を行う際には、通常は上方に跳ね上がっている押板を回動シフトさせてシートを押圧する。次いで、押板の上に測色センサを搭載したキャリッジが移動してきて、押板の上を走行しながら読み取りを行う。
【0006】
この構成では、キャリッジが押板の上に存在する間は、押板を回動させて逃がすことができない。つまり、シートを移動させるために押板の押圧を解除するためには、必ずキャリッジを押板の外側に逃がさなければならない。読み取りはキャリッジに往復移動の往路で行い、復路(バックフィード)では単にホームポジションに戻るだけある。キャリッジがバックフィードを終えて押板の上から外に逃げるまでは、次のシートの移動を開始させることができず、バックフィードに要する時間のロスが読み取りスループットの向上の妨げになる。とくに、多数の検査パターンを繰り返しのキャリッジ操作で順次読み取ろうとするときに、この問題は顕著なものとなる。
【0007】
加えて、特許文献1の装置では、キャリッジの車輪が押板に乗り上げる際には、押板の厚み分の段差を通過するので、その衝撃がキャリッジに伝わる。この衝撃が繰り返されると、測色センサの取り付け精度の劣化やセンサ故障の原因になる可能性がある。また、キャリッジが押板の外側に退避した際には、キャリッジの車輪が押板のないシート上を走行することになるので、そこにパターンや画像がプリントされて場合には、車輪の走行跡で傷が付く可能性がある。これらはいずれも、読み取りの精度劣化の要因となる。
【0008】
本発明は上述の課題の認識に基づいてなされたものである。本発明の目的は、パターン読み取りに要する総時間の短縮と精度向上の両立を実現することができる読取装置およびプリント装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の読取装置は、シートの情報を読み取るセンサユニットと、シートが支持される支持面を押圧する押板と、前記センサユニットを保持し前記押板の上を移動するキャリッジと、前記センサユニットと前記キャリッジを収容し且つ前記押板を変位可能に保持する筐体と、を含む読取部と、前記読取部を、前記押板が前記支持面を押圧する第1位置と、前記押圧が解除される第2位置と、に移動させる移動機構とを有し、前記読取部は、前記読み取りの際には前記第1位置とされ、前記支持面の上でシートを移動させる際には前記第2位置とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検査パターンを読み取る際のトータルスループットが向上し、読み取りに要する総時間の短縮と精度向上の両立が実現される。つまり、装置の使用者にとっては非生産的な時間であるキャリブレーションの時間が短縮され、本来の画像プリントにより多くの時間を割り当てることができ、プリント作業における生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】プリント装置の全体構成を示す断面図
【図2】スキャナ部の内部構成を示す断面図
【図3】スキャナ部を下から見た図
【図4】スキャナ部の姿勢が切り替わる様子を示す斜視図
【図5】制御部を中心とするシステム構成図
【図6】プリント装置の動作シーケンスを示すフローチャート図
【図7】動作中の装置の状態を示す説明図
【図8】シートに形成された検査パターンの例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態である読取装置(測色装置)を有するインクジェットプリント装置について説明する。図1は装置の全体構成を示す断面図である。プリント装置100は、大きく、シート供給部1、搬送部2、プリント部3、カッタ部4、プラテン5、固定ガイド6、読取部200、制御部300を有する。
【0013】
シート供給部1では、ロール状に巻かれた連続シートRを回転可能に保持する。ロールから引き出されたシートSは、搬送部2の搬送ローラ対でニップされ、下流に向けて搬送される。本明細書では、シートが搬送される経路の任意の位置において、シート供給部1に向う側を上流、その逆を下流という。
【0014】
プリント部3は、複数の色に対応した複数のプリントヘッドを有し、プラテン5の上を搬送されるシートSに対して、キャリッジを走査して1バンドずつプリントするシリアルプリント方式、もしくはラインヘッドを用いてプリント方式で画像を形成する。本実施形態ではシリアルプリント方式の例を説明する。プリントヘッドは、インクジェット方式でノズルからインクを吐出するインクジェットプリントヘッドである。インクジェット方式は、ヒータを用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式、静電素子を用いた方式など、その方式は問わない。
【0015】
プリント部3では、通常の所望の画像のほか、検査用の検査パターンをシートSに対してプリントすることができる。検査パターンとは、カラーキャリブレーション(色校正)用のカラーパッチなどのカラーパターン、ノズルの不吐検査用のパターンなどである。
【0016】
プリント部3の下流には、読取部200が設けられている。読取部200は、スキャナ部50と乾燥部60からなり、これらは一体のユニットとなっている。読取部200は、ユニットとしてプリント装置100から取り外すことが可能となっている。
【0017】
スキャナ部50は、シートSに形成された検査パターンを読み取って色情報などを取得する。スキャナ部50の詳細については後述する。乾燥部60は、スキャナ部50での読取の前にシートに付与されたインクの乾燥を促進させるためのユニットである。乾燥部60は、ヒータとファンを含む送風器と、送風器で生成された温風をシートSの表面に向けて送るダクトを有する。なお、乾燥部はヒータと乾燥ファンの両方を含む形態に限らず、必要な乾燥能力を発揮するのであればどちらか一方がなくてもよい。ダクトの終端の吹出口からは、乾燥させるシートSのシート幅以上の幅の口から温風を吹き出し、直下にあるシートSの幅全域を同時に乾燥させることができる。
【0018】
プリント部3と読取部200の間には、連続シートを切断するためのカッタ部4が設けられている。カッタ部4は、シートSの検査パターンが形成された領域を切断して切り離す、もしくはシートSにプリントされた複数の画像を画像単位で切断するためのものである。
【0019】
読取部200の先の装置下部には、バスケット形状のシート受け部7があり、プリントまたは検査が済んで排出されたシートが、重力で落下して中に蓄積される。
【0020】
制御部300の制御により、本実施形態のプリント装置は、通常の画像プリントを行う通常モードの他に、キャリブレーション等のために検査パターンをプリントして検査する検査モードを実行することができる。通常モードでは、プリント部3で1つまたは複数の画像がプリントされたシートSは、カッタ部4にて画像単位で切断して排出する。一方、検査モードでは、プリント部3で1つまたは複数の検査パターンがプリントされたシートSは、読取部200でパターンを読み取った後に、検査パターンの後端をカッタ部4で切断してから排出する。
【0021】
次に、本実施形態の特徴である、スキャナ部50の構成および動作の詳細について説明する。図2はスキャナ部の内部構成を示す断面図、図3はスキャナ部を下から見た図である。上述したように、読取部200は、スキャナ部50と乾燥部60を一体に含むユニットであり、ユニットの下に固定して設けられて固定ガイド6に対してユニットが上下に昇降することができるようになっている。
【0022】
固定ガイド6は、その上面の支持面24にシートSを支持するもので、支持面24は下流側(排出側)にいくほど重力方向で低くなるように下向きに傾斜している傾斜面である。支持面に支持されるシートSは、乾燥部60でインク乾燥がなされ、さらにスキャナ部50で読み取られる。
【0023】
スキャナ部50は、センサユニット32、押板21、センサユニット32を搭載して押板21の上を往復移動するキャリッジ33、および筐体20を有する。スキャナ部50において走査移動するのは、センサユニット32とキャリッジ33を合わせた移動体34である。移動体34は、シートの搬送方向である第1方向と直交する第2方向に沿って往復移動する。往復移動は例えば60インチのシート幅をカバーできるだけの移動範囲を持っている(図2は理解を容易にするため、実際よりも第2方向の長さを圧縮して描いている)。スキャナ部50は、筐体20の中にセンサユニット32とキャリッジ33が収容されている。そして、筐体20の底板である基準板25に、押板21が緩く連結されている。
【0024】
センサユニット32は、センサ部とこのセンサ部を保持するセンサホルダからなる。センサ部は、光源36と受光素子37を含み、プリント部3でシートSに形成された検査パターンに対して、光源36から光を照射し、反射して戻ってきた光を受光素子37で受光する。受光素子の信号強度からパターンの濃度や色に関する情報が得られる。なお、光源36と受光素子37の位置関係は逆であってもよい。
【0025】
センサユニット32は、キャリッジ33に対して第1方向を回転軸とする回転方向および上下方向に変位することを許容する機構で保持されている。バネ部材38は、キャリッジ33に対してセンサユニット32を下方に付勢するための付勢手段である。バネ部材38の中心の巻き部はセンサユニット32に側面に形成されたシャフトに固定され、バネ部材38の2つのアームはキャリッジ33の側面に形成された突起に係合している。同様の付勢構造のバネ部材38を、キャリッジ33の前面と後面の2カ所に設けるようにしてもよい。
【0026】
押板21はシートSの検査パターンを読み取る際に、センサユニット32の下方にある固定ガイド6の支持面24に対してシートSを上から押さえ付けるためのものである。押板21は、読取領域を挟んだ上流と下流の両側それぞれに、キャリッジの移動方向(第2方向)と平行な方向に所定の範囲に渡って延びた長尺形状の第1部位および第2部位を有する構造である。第1部位と第2部位は1枚の押板の異なる部位であっても、2つに分割された板のそれぞれの部位であってもよい。押板21の第1部位と第2部位の間には、第2方向に沿って細長い開口であるスリット26が形成されている。スリット26は、検査パターン読取のために光を通過させるための開口である。移動体34はスリット26の長手方向に沿って移動し、センサユニット32は、移動しながらスリットの開口からシートSの表面に光を照射して反射光を検出する。つまり、スリット26の直下が検査パターンの読取位置(読取領域)となる。
【0027】
センサユニット32のセンサホルダの下部には、移動体34が移動する際に押板21の第1部位の表面に接触する第1当接部材と、押板21の第2部位の表面に接触する第2当接部材が設けられている。より具体的には、センサホルダの下部には4カ所に車輪状の回転体35が設けられている(図3参照)。キャリッジ33がガイドレール30に沿って第2方向に移動する際には、押板の上面に接触しながら回転体35が従動回転して転がるようになっている。なお、当接部材は必ずしも回転体でなくてもよく、回転せずに小さな摩擦係数で摺動する部材であってもよい。
【0028】
移動体34を往復移動させる駆動手段31は、モータ、駆動ベルト、2つのプーリからなる。駆動ベルトは、第2方向に沿って2つのプーリの間に亘って帳架されており、駆動ベルトの一部がキャリッジ33に固定されている。この駆動手段31により、モータの回転はキャリッジ33の直進運動に変換される。また、ガイドレール30と押板21が、キャリッジ33の第2方向の移動をガイドするガイド手段となっている。移動体34の往復移動の際、回転体35と押板21の上面、ならびにキャリッジ33の一部とガイドレール30がそれぞれ当接して、移動体34の姿勢が維持される。
【0029】
押板21は、複数の位置(1つの押板につき2カ所、計4か所)に設けられた連結部を介してスキャナ部50の筐体20の基準板25に所定の調整ストローク(遊び)を持った状態で取付けられている。連結部は、押板21に固定されたシャフト状の柱23と、基準板25に形成された、柱23よりも大きな径の穴とが緩く結合した構造である。柱23の頭部には柱23よりも大きな径のストッパが設けられし、ストッパが穴の周りに当たることで、穴から柱23が抜けないようになっている。複数の連結部それぞれがこのように緩く結合しているので、筐体20に対して、柱23が所定の許容範囲で上下方向および傾き方向の変位が許容される。これにより、スキャナ部50に対する押板21の面の姿勢が、連結部の調整ストロークの範囲で微小変化することができるようになっている。ユニット50が持ち上がった状態では、押板21はその自重により最下端に位置する。
【0030】
スキャナ部50のユニットは、固定された固定ガイド6に対して、移動機構55により、上下に昇降して姿勢を変化させることができるようになっている。移動機構55は、昇降モータ56とギア列57からなる駆動手段を含む。ギア列57には回転軸51が固定され、回転軸51は筐体20から上流側に突き出た複数の支持アームに固定されている。つまり、回転軸51は、センサユニット32(筐体20)よりも上流に設けられている。この構造により、昇降モータ56が回転すると、ギア列57で減速されて回転軸51が回転し、スキャナ部50は回転軸51を中心に回動して昇降する。なお、移動機構55は、物理的な回転軸51を中心に回動する形態に限らず、リンクアーム機構などで仮想的な回転軸を中心にスキャナ部50が回動するような形態としてもよい。
【0031】
移動機構55によるスキャナ部50の回動により、押板21の押圧面と固定ガイド6の支持面24の間に、ワニ口のように下流側がが開閉する開口が形成される。開口の最も下流側の間隔はゼロから所定の最大値までの範囲を可変となる。図4は固定ガイド6に対してスキャナ部50の姿勢が切り替わる様子を示す図である。図4(a)はスキャナ部50が開いた昇状態(退避姿勢)、図4(a)はスキャナ部50が閉じた降状態(押圧姿勢)を示す。スキャナ部50が閉じると、スキャナ部50の筐体の底辺両端に形成された突き当て部52と、固定ガイド6の両脇に形成された支持部53とが2カ所では当接して、両者の位置関係が決まる。
【0032】
スキャナ部50は、読み取りの際には押板21が支持面24を押圧する押圧姿勢(間隔がゼロ、第1位置と称する)にある。一方、スキャナ部50は、シート送り動作や乾燥動作の際には押板21の押圧が解除されるよう退避する退避姿勢(第2位置と称する)に移動する。退避姿勢は1つに限らず、シートのステップ送り、シート乾燥時。シート先端の導入時にそれぞれ適した開き状態となるよう複数を設定可能にしてもよい。
【0033】
検査パターンを読み取るときには、押板21が支持面24に押圧されるので、スリット26は固定ガイド6で完全に覆われ、外光やインクミストがスリット26からスキャナ部Uの内部に侵入することが防止される。このため、精度の高い読取を行うことが可能となる。
【0034】
検査パターン読み取りのために、センサユニット32の直下に搬送されたシートSは、移動機構により読取部2が昇状態から降状態に移行することで、押板21の下面と固定ガイド6の支持面24の間に挟まれ固定される。
【0035】
センサユニット32において、高い読取精度を維持するためには、センサユニット32のセンサ部とこれと対向するシートSの表面との間の相対距離および相対角度は所定範囲内に保つことが望ましい。現実には、シートSはインクや空気中の水分を吸収し波打ち(コックリング)が生じたり、シートSがロール紙である場合にはカール癖を有していたりする場合がある。つまりシートSの表面は必ずしも平らではない。そこで、読み取りの際には、押板21でシートを固定ガイド6に押し付けて平らに馴らす。押板21に形成されたスリットは開口であるために、その部分ではシートを押さえることはできないが、スリットの幅(第1方向の幅)は非常に狭いので、スリット両脇でシートを押さえることで、読取領域でのシートの浮きは十分に矯正される。
【0036】
押板21は、シートSの表面(とくに検査パターンが形成された部位)に傷が付きにくいように、厚さ1〜3mm程度のABSやPC等の樹脂からなる材質でできた変形が容易な可撓性の部材でできている。これに対して、固定ガイド6は剛体で作られており、その支持面24も押板21よりも高い剛性を有している。シートSを押板21により押圧した際には、シートSと押板21は共に固定ガイド6の表面形状(平面)に倣った状態になる。
【0037】
シートSに、強いカールや波打ち(コックリング)が生じている場合には、可撓性の押板21がシートの浮いた箇所に部分的に持ち上げられて、シートの密着が不完全になる可能性がある。この場合でも、押板21の上面で回転体35が乗っている部位の近傍では、センサユニット32の自重とバネ部材38の付勢力の合計の力で、回転体35が押板21を集中的に押圧するので、読取位置の近傍では支持面24からのシートの浮きは解消される。したがって、高い読み取り精度が維持される。
【0038】
図5は、制御部を中心とする本実施形態のプリント装置のシステム構成図である。制御部300の中心となるのは、CPU100、入出力インターフェイス102、RAM103、ROM104からなるコンピュータシステムである。これらはASICとして構成してもよい。CPU100は、ROM104に記憶された制御プラグラムに従って、プリント動作、乾燥動作、読取動作、キャリブレーション動作の全体の制御を行う。RAM103はその際のワークエリアとして使用される。CPU100には、ホストコンピュータ101からプリントデータ、各種の設定情報等が入出力インターフェイス102を介して入力される。また、CPU100は、搬送部2の駆動モータ、プリント部3のプリントヘッド70、ヘッドキャリッジ用のモータ71、センサキャリッジ用のモータ72、昇降モータ73、乾燥部60のヒータやファンの駆動をそれぞれ制御する。さらにCPU100には、センサユニット32で取得された信号が入力され、入力された信号に基づいてキャリブレーション処理等を行う。
【0039】
次に、以上の構成を有するプリント装置において、検査パターンを読み取ってキャリブレーション(色校正)を行う動作について説明する。図6は制御部300により司られる動作シーケンスを示すフローチャート図、図7は動作中の装置の状態を示す説明図である。
【0040】
ステップS1では、検査に使用するシートを供給する。本実施形態のプリント装置で使用することができるシートは、ロール紙またはカット紙である。シート供給部1から供給されたシートSは、搬送部2によってプリント部3の下まで搬送される。
【0041】
ステップS2では、シートに検査パターンをプリントする。プラテン5の上に支持されるシートSに対して、キャリッジを走査しながらプリントヘッドからインクを吐出し、シートSに1バンド分のプリントを行う。シートSの1バンド分のステップ送りと、1バンドのプリントを交互に繰り返すシリアルプリント方式で、複数列のパターンからなる検査パターンをシートSに形成していく。なお、本発明はシリアルプリント方式に限定されず、ラインヘッドを用いてラインプリント方式で検査パターンを形成するものであってもよい。
【0042】
ステップS3では、プリントの済んだシートを乾燥部60まで搬送する。検査パターンのプリント工程を終えたら、シートに付与されたインクの乾燥を促進させるために、画像の読取工程の前に乾燥工程に移行する。強制乾燥させるのは、シートSに形成された検査パターンの色が安定するまでの時間を短縮させるためである。上述したように、読取部200には、スキャナ部50とその下流側のび乾燥部60が配置されている。そこで、シートSに形成された検査パターンの領域が、スキャナ部50をスキップして乾燥部60に到達するまでシートSを搬送する。検査パターンの後端領域が、乾燥部60の温風の吹出口の下に来るまでシートSを搬送する。
【0043】
ステップS4では、検査パターンが形成された領域を強制乾燥させる。乾燥部60の吹出口からシートSに向けて温風がって吹きつけられる。シートSを低速で逆方向に移動させながら検査パターンの後端から先端の順に強制乾燥させていく。なお、検査パターン全体を乾燥させるのに、シートを送り戻しながら乾燥させるのでなく、順方向に送りながら乾燥させるようにしてもよい。
【0044】
ステップS5では、検査パターンの読取を行うためにシートを搬送して送り戻す。検査パターンの領域後端がスキャナ部50のスリット26の直下である読取位置に到達するまで、シートSを逆方向に搬送して送り戻す。ステップS1からステップS5までは、スキャナ部50は退避姿勢(第2位置、昇状態)であり、押板21がバッキング24の支持面から離れているので、その隙間をシートは自由に移動することができる。図7(a)はそのときの状態を示す。
【0045】
ステップS6では、移動機構によって、スキャナ部50を退避姿勢(第2位置、昇状態)から押圧姿勢(第1位置、降状態)に移行させて押板21でシートSを押圧する。図7(b)はそのときの状態を示す。押板21と固定ガイド6の支持面24のとの間にシートSが挟まれて固定される。
【0046】
押圧の際には、スキャナ部50は上流側の回転軸51を中心に回動して下降する。押板21の押圧面は上流側が先にシートSに接触し、下流に向けて順次接触面が広がっていく。そのため、シートSに弛みやしわが発生することなく、押板21と固定ガイド6の支持面24との間にシートSが固定される。この際、押板21がスキャナ部50の筐体に変位可能に緩く結合されているので、最初の接触の衝撃が小さく以降もスムーズに接触面が広がっていく。加えて、押板21は支持面24に倣って姿勢が微小変化するので、両者はシートSを挟んで面同士が完全に密着する。
【0047】
ステップS7では、スキャナ部50によりシートSの検査パターンの一部(一列)を読み取る。移動体34の第2方向への移動と共にセンサユニット32も移動して、センサユニット32のセンサ部はシート表面の検査パターンの一列分を読み取って色情報を取得する。移動の際には、仮に押板21の表面に局所的な非平面があったとしても、イコライズ機能によりセンサユニット32が回転方向または上下方向に微小変位するので、読取位置が一定に維持されて、高い精度で読み取りを行うことができる。
【0048】
ステップS8では、スキャナ部50を押圧姿勢(第1位置、降状態)から退避姿勢(第2位置、昇状態)に移行させて、押板21によるシートSの押圧を解除する。再び、図7(a)に示す状態に戻る。
【0049】
ステップS9では、検査パターンに未だ読み取りがされていない未読取のパターン部分残っているか(Yes)否か(No)を判断する。言い換えれば、検査パターンの読み取りがすべて完了したかを判断する。判断がYesの場合は、ステップS5に戻って、ステップ送りして次の読取1ライン分のパターン読み取りを繰り返す。判断がNoの場合は、ステップS10に移行する。
【0050】
このように、パターン読み取り際しては、複数列に渡って形成された検査パターンに対して、センサユニットによる列ごとの読み取りとシートのステップ送りと繰り返して読み取りを行うものである。そして、列ごとの読取では押板21と固定ガイド6の支持面24とが押圧された状態とし、ステップ送りでは押圧が解除された状態とする。
【0051】
ステップS10では、すべてのパターン読み取りが完了したシートSを、順方向に送ってプリント装置から排出する。
【0052】
ステップS11では、色に関するキャリブレーション処理を行う。ステップS7でのパターン読み取りで得られたデータを元にパターンの色に関する情報を取得する。そして、を制御部では、最終的なプリント結果物で所望の色が再現されるように、各色のプリントヘッドで付与するインク量を調整するカラーキャリブレーションを行う。
【0053】
なお、以上のシーケンスはカラーキャリブレーションを行うモードにおける動作の説明であり、検査パターンではない通常の所望画像をプリントする際には、読取動作は必要ないので、ステップS5〜ステップS9、およびステップS11は省略される。
【0054】
図8は、シートに形成された検査パターンの例を示す図である。多数のカラーパッチ42と、カラーキャリブレーション前後の比較用のサンプル画像41が混在するように形成されている。カラーパッチ42とサンプル画像41のレイアウトはユーザが自由に設定することができる。
【0055】
この例では、カラーパッチ42は、シートSの搬送方向A(バックフィード方向)において、a列〜f列の6列を有する。f列が最も下流側(シート先端側)のパッチ列であり、プリント部3で検査パターンを形成していくのは、f列〜a列の順である。a列、b列は、シート幅のほぼ全域であるBからDの範囲に形成されている。続くc列、d列、e列、f列は、シート幅の約半分のBからCの範囲にプリントされている。残り約半分のCからDの範囲には、サンプル画像41が形成されている。
【0056】
このようなレイアウトで形成されたカラーパッチ42は、バックフィードのステップ送りを繰り返しながら、a列からf列の順に一列ずつ読み取りがなさる。B側がキャリッジ33のホームポジションである。
【0057】
プリント部3でこれらの検査パターンが形成されたシートSは、最初のa列がスリット26の直下の読取位置にくるまでバックフィードされる。このとき、スキャナ部50は退避姿勢(図7(a)の状態)にある。次いで、スキャナ部50を押圧姿勢(図7(b)の状態)に移行させ、押板21と支持面24の間にシートSを挟んで押圧する。キャリッジ33をBからDに走査移動させながら、センサユニット32でa列のパッチ列をBからDの順にパッチ1つずつ読み取っていく。次いで、スキャナ部50を退避姿勢に移行させ、シートSをバックフィード方向にパッチ一列分の距離だけステップ送りする。そして、スキャナ部50を再び押圧姿勢に移行させ、こんどはキャリッジ33をDからBに走査移動させながら、センサユニット32でb列のパッチ列をDからBの順にパッチ1つずつ読み取っていく。b列の読み取りが終わったら、スキャナ部50を退避姿勢に移行させ、シートSをバックフィード方向にステップ送りする。
【0058】
このように、読み取りの走査方向は列ごとに交互に切り替わる。なお、上述したように、各パッチ列の読み取りの走査方向は常に同じ方向(BからD)としてもよい。この場合は、シートSをステップ送りしている最中にキャリッジ33をホームポジション(B側)に戻す動作を行う。
【0059】
続いて、c列、d列のパッチ列を読み取る場合には、走査の範囲をパッチ列のシート幅方向の長さに応じた距離とする。スキャナ部50を押圧姿勢に移行させ、キャリッジ33をBからCに走査移動させながら、センサユニット32でc列のパッチ列をBからCの順にパッチ1つずつ読み取っていく。次いで、スキャナ部50を退避姿勢に移行させ、シートSをバックフィード方向にステップ送りする。そして、スキャナ部50を押圧姿勢に移行させ、キャリッジ33をCからBに走査移動させながら、センサユニット32でd列のパッチ列をCからBの順にパッチ1つずつ読み取っていく。d列の読み取りが終わったら、スキャナ部50を退避姿勢に移行させ、シートSをバックフィード方向にステップ送りする。
【0060】
このように、測色の必要が無いサンプル画像41の領域を走査することなく次の列に移行できるので、読み取りスループットの向上が図れる。また、サンプル画像41上をキャリッジ33が走行しないので、回転体35が可撓性の押板21を介してサンプル画像41を強く押圧することがなく、サンプル画像41のダメージが少ない。
【0061】
続いて、e列、f列のパッチ列を読み取る場合も同様に、走査の範囲をパッチ列のシート幅方向の長さに応じた距離とする。ただし、この例では、e列の読み取りの後に、温度によって変化する可能性があるセンサの読み取り特性を一定に維持するためのセンサ校正処理を割り込ませる。センサ校正は、センサユニット32で色校正板の表面の色情報を読み取って、正しい読み取り結果が得られるようにセンサを調整またはセンサ出力を補正するものである。そのために、シートSの外側(ホームポジション側)で基準板25の上に色校正板43が設けられている。
【0062】
スキャナ部50を押圧姿勢に移行させ、キャリッジ33をBからCに走査移動させながら、センサユニット32でe列のパッチ列をBからCの順にパッチ1つずつ読み取っていく。ここで、f列の読み取りの前に、センサ校正処理を行う。色校正板43はB側に設けられているので、センサユニット32をそこまで移動させる必要がある。スキャナ部50を退避姿勢に移行させ、シートSをバックフィード方向にステップ送りする最中に、キャリッジ33をCからBに移動させ、さらにその外側に色校正板43の上まで移動させる。そして、スキャナ部50を押圧姿勢に移行させ、センサユニット32で色校正板43の表面を読み取って色情報を取得する。制御部300は、取得した色情報に基づいてセンサ校正処理を行う。センサ校正処理が終わったら、上述の手順と同様にして、最後のf列のパッチ列をBからCの順に読み取り、キャリッジをホームポジションに戻したら、一連の処理を終了する。
【0063】
こうしてすべてのパッチ列の読み取りが済んだら、制御部300では、最終的なプリント結果物で所望の色が再現されるように、各色のプリントヘッドで付与するインク量を調整するカラーキャリブレーションを行う。
【0064】
以上の実施形態によれば、複数列の検査パターンを順次読み取る際のトータルスループットおよび読み取り精度が向上する。つまり、装置のキャリブレーションに要する総時間の短縮と精度向上の両立が実現される。ひいては、装置の使用者にとっては非生産的な時間であるキャリブレーションの時間が短縮され、本来の画像プリントにより多くの時間を割り当てることができ、プリント作業における生産性が向上する。
【0065】
とくに本実施形態では、スキャナ部50は、シートが支持される支持面を押圧する押板21と、センサユニット32を保持し押板21の上を往復移動するキャリッジ33とが一体のユニットとなっていることが構成上の特徴の一つとなっている。これにより、押板21を含めてユニット全体がシートから退避してシート搬送を可能とするので、押板21の上でキャリッジ33がどこにあろうとも、シート搬送の動作に移ることができる。これは、読み取りとステップ送りを繰り返して検査パターンを読み取るシーケンスにおけるトータルスループットの向上に大きく貢献する。
【0066】
加えて、回転体35は段差のない押板21の上に常にあるので、移動体34の走行に際して衝撃が発生することが無い。そのため、センサユニット32の取り付け付け精度の劣化のセンサ故障は起きにくく、長期間に渡って高い読み取りの精度が維持される。
【0067】
さらに、押板21はスキャナ部50の筐体に対して変位可能に緩い結合で連結されている。このため、スキャナ部50を押圧姿勢にしたとき。押板21は支持面24に倣って姿勢が微小変化するので、両者はシートSを挟んで面同士が完全に密着する。さらに、押板21の上流側が最初にシートSに接触する際の衝撃が小さく、以降もスムーズに接触面が広がっていくので、シートSに弛みやしわが発生することがない。
【0068】
また、本実施形態では、読み取りとバックフィードのステップ送りの繰り返しにおいて、ある列の読み取りおよびステップ送りを行っている最中に、後に読み取られる別の列が含まれるシート領域を乾燥部で乾燥させることが特徴の一つとなっている。乾燥、読取、ステップ送りの3つを繰り返して検査パターンを読み取るシーケンスにおいて、読取およびステップ送りの処理と、乾燥処理とが時間的にオーバーラップして並行処理となるので、トータルスループットが大きく向上する。
【0069】
さらに本実施形態では、プリント部3よりも下流には搬送ローラが無く、且つバックフィードのステップ送りを繰り返して読取を行うことが特徴の一つとなっている。プリント部3でプリントされた検査パターンは、少なくともスキャナ部での読み取りが完了するまで、搬送ローラにニップされることがない。そのため、形成する検査パターンが搬送方向にどれだけ長くなろうとも、読み取りの前にパターンに傷が付与されたり、搬送ローラにインク汚れが付着したりすることが無く、長期間に渡って高い精度での読み取りを行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
3 プリント部
6 固定ガイド
50 スキャナ部
60 乾燥部
100 プリント装置
200 読取部
300 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの情報を読み取るセンサユニットと、シートが支持される支持面を押圧する押板と、前記センサユニットを保持し前記押板の上を移動するキャリッジと、前記センサユニットと前記キャリッジを収容し且つ前記押板を変位可能に保持する筐体と、を含む読取部と、
前記読取部を、前記押板が前記支持面を押圧する第1位置と、前記押圧が解除される第2位置と、に移動させる移動機構と、
を有し、前記読取部は、前記読み取りの際には前記第1位置とされ、前記支持面の上でシートを移動させる際には前記第2位置とされることを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記読取部を回動させ、前記第1位置と前記第2位置とに移動させることを特徴とする、請求項1記載の読取装置。
【請求項3】
前記支持面は下流側が重力方向に下がる傾斜面を有し、前記第1位置では前記押板が前記傾斜面に倣うように傾くことを特徴とする、請求項2記載の読取装置。
【請求項4】
前記押板は複数の位置に設けられた連結部によって前記筐体に保持されており、前記連結部では前記押板に固定された柱と前記筐体に形成された穴とが緩く結合していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の読取装置。
【請求項5】
前記連結部では、前記筐体に対して、前記柱が所定の許容範囲で上下方向および傾き方向の変位が許容されるよう、前記柱と前記穴が結合していることを特徴とする、請求項4記載の読取装置。
【請求項6】
前記押板は、前記センサユニットの読取領域を挟んだ両側それぞれに前記キャリッジの移動方向と平行な方向に所定の範囲に渡って延びた第1部位および第2部位を有し、
前記センサユニットの下部には、前記キャリッジが移動する際に前記第1部位の表面に接触する第1当接部材と、前記キャリッジが移動する際に前記第2部位の表面に接触する第2当接部材が設けられており、
前記押板の前記第1部位と前記第2部位は、それぞれ前記筐体に対して変位可能に保持されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の読取装置。
【請求項7】
前記第1当接部材および前記第2当接部材はともに、前記押板の表面に接触して従動回転する回転体であることを特徴とする、請求項6記載の読取装置。
【請求項8】
前記押板は、前記支持面よりも剛性が小さい可撓性の部材でできていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の読取装置。
【請求項9】
シートに情報を記録するプリント部と、請求項1から8のいずれか1項に記載の読取装置とを備えたことを特徴とするプリント装置。
【請求項10】
前記プリント部の上流にシートを搬送するための搬送ローラが設けられ、前記プリント部の下流には搬送ローラが設けられていないことを特徴とする、請求項9記載のプリント装置。
【請求項11】
前記プリント部でパターンが形成されたシートは、前記パターンが形成された領域が前記センサユニットの読取領域を通過するまで搬送され、次いで、シートを逆方向に搬送しながら前記センサユニットで前記パターンの読み取りを行うことを特徴とする、請求項9または10に記載のプリント装置。
【請求項12】
複数列に渡って形成された前記パターンに対して、前記キャリッジを移動させながら前記センサユニットで一列のパターンの読み取りと、シートのステップ送りと繰り返して読み取りを行うものであり、
前記列ごとの読み取りの際には前記読取部は前記第1位置にあり、前記ステップ送りの際には前記読取部は前記第2位置にあることを特徴とする、請求項11記載のプリント装置。
【請求項13】
前記読取部はシートに風を吹き付ける乾燥部をさらに含み、前記乾燥部は前記センサユニットよりも下流側に設けられていることを特徴とする、請求項9から12のいずれか1項に記載のプリント装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−115475(P2013−115475A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257426(P2011−257426)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】