説明

読取装置

【課題】波長域や放射角が異なる複数種類の光源を用いる場合でも読取対象物を適切に照明でき、かつ、読取対象物が浮き上がっても良好な画像が得られる読取装置を提供する。
【解決手段】読取装置1は、被読取ページ9を有するパスポート7が配置される載置面5と、第1光源である赤外光源21と、第2光源である白色光源31と、被読取ページ9を撮像するカメラ13とを有する。赤外光源21が読取処理用の第1の画像を取得するための赤外光を被読取ページ9に照射し、白色光源31が表示用を含む用途に用いる第2の画像を取得するための白色光を被読取ページ9に照射する。赤外光源21及び白色光源31は、被読取ページ9の正面領域の外側に配置されており、かつ、白色光源31が、赤外光源21と比べて、被読取ページ9から垂直方向に離れて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取対象物を撮像して読取処理を行う読取装置に関し、特に撮像のための光源の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の読取対象物から文字等のコードを読み取る読取装置が知られている。読取対象物は、例えば、複数のシートが綴じられた帳票であり、帳票は例えばパスポートである。
【0003】
従来の読取装置は、赤外光で読取対象物の被読取面を照明し、被読取面上のコードを撮像し、赤外光画像を取得するように構成されている。赤外光画像には、OCR等の読取処理が施されて、コードが認識される。照明光として赤外光を用いることにより、赤外光を吸収しやすい黒色インクの印刷が強調されるため相対的に背景画像が写りにくくなり、画像におけるコードのコントラストが大きくなる。
【0004】
また、操作者の目視による確認等のために読取対象物の画像をモニタ等に表示する場合には、赤外光ではなく可視光で読取対象物が照明され、可視光の画像が取得される。
【0005】
例えば、特許文献1は、赤外光と可視光の両方を読取対象物に照射するように構成された読取装置を開示している。この従来装置は、可視光を用いてホログラムの画像を生成するとともに、赤外光を用いてホログラムの下側の層に印刷されたコードを読み取る。
【0006】
また、読取装置においては、正反射条件での撮像を避ける必要がある。正反射条件とは、撮像の方向が照明光の正反射の方向に一致することをいう。正反射条件で被読取面を撮像すると、反射光が強すぎて、いわゆる「白とび」が生じ、良好な画像が得られない。「白とび」とは、画像の一部が撮像素子のダイナミックレンジの飽和によりホワイトアウトしてしまうことをいい、可視光画像においては白くなってしまい、被写体が写らなかったり、見づらくなる現象である。従来は、正反射条件を避けるために、被読取面を横方向から照明するとともに、被読取面が正面から撮像される。これにより、照明光の反射角(=入射角)を大きくすることができ、正反射条件を避けることができる(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−247084号公報
【特許文献2】特開2008−304860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の読取装置においては、以下に述べるように、赤外光源と可視光源の両方を備えた場合に照明を適切に行うのが容易でないという問題があった。すなわち、光源を読取対象物から遠くに配置すると、赤外光の放射角が狭いために、赤外光源で読取対象物の必要な範囲を十分に照明できなくなり、読取能力が低下する可能性がある。放射角とは、照明光の明るさが所定レベル以上である範囲であり、例えば、正面方向の明るさを基準値として、明るさが基準値に対して所定の割合以上である範囲の角度である。一方、光源を読取対象物に近づけると、被読取面の場所によって光源までの距離の違いが大きくなる。その結果、可視光の照明にムラが生じ、表示用の画像にもムラ生じてしまう可能性がある。
【0008】
また、パスポートなどが読取対象物である場合、表面が透明なラミネートフィルムで覆われていることが多い。更に、ラミネートフィルムの表裏又は内部に、偽造検出を目的として、光回折パターンが設けられることがある。また、パスポートなどの帳票では、縁部の反り(カール)やめくれが生じやすく、そのために帳票は読取装置から浮き上がりやすい。このような読取対象物を照明する場合、波長域の狭い赤外光は影響を受けにくいが、波長域の広い可視光は影響を受ける可能性がある。具体的には、被読取面の近くに可視光源を設けた場合に、ラミネートやその回折パターンの影響で、撮像画像に虹色などの意図しないパターンが現れ、良好な画像が得られず、モニタに表示された画像が視認しにくくなる可能性がある。
【0009】
上記の問題を避けるために、従来、コピー機などは、読取対象物を押さえるカバーを備えている。しかし、読取対象物がパスポートなどの場合、読取作業が迅速でなければならない。そのため、カバーなどを使用することなく、読取対象物が多少浮き上っても照明を適切に行えることが望まれる。
【0010】
さらに、パスポートなどの読取対象物は、例えば、持ち主のポケットに入れられたために汗で濡れることがある。濡れとその後の乾燥等が原因で、読取対象物の縁部に波状の変形(波打ち)が生じる。このような波状の変形が生じると、縁部での撮像が正反射条件下で行われ、白とびが生じる可能性がある。そして、縁部に文字等のコードが存在する場合、コードが鮮明に写らない可能性がある。そこで、縁部の波状の変形にも好適に対処し、コードを撮影できるように照明を適切に行うことが望まれる。
【0011】
例えば、パスポートは、ラミネート等のカバーで覆われており、正反射条件で白とびが生じやすい。しかも、パスポートには、コードがページの隅部まで印刷されているものも多く、そして、前述した紙面の波状の変形は隅部において大きくなりやすい。そのため、波状の変形が生じたパスポートを可視光で照明しながら撮影すると、隅部のコードが白とびにより見づらくなってしまうことがあり、特に、隅部の1〜2文字が見づらくなりやすい。そこで、このような縁部のコードの白とびを防ぐように照明を適切に行うことが望まれる。
【0012】
なお、ここでは、赤外光源と可視光源を用いて本発明の背景技術を説明した。しかし、赤外光源と可視光源には限られず、波長域や放射角が異なる複数種類の光源を用いる場合には、同様の問題が生じ得る。
【0013】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、その目的は、波長域や放射角が異なる複数種類の光源を用いる場合でも読取対象物を適切に照明でき、かつ、読取対象物が紙面の変形により浮き上がっても良好な画像が得られる読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の読取装置は、被読取面を有する読取対象物が配置される対象配置部と、読取処理用の第1の画像を取得するために第1波長域と第1放射角とを有する第1照明光を前記被読取面に照射する第1光源と、表示用を含む用途に用いる第2の画像を取得するために、前記第1波長域より広い第2波長域及び前記第1放射角より広い第2放射角を有する第2照明光を前記被読取面に照射する第2光源と、前記第1光源及び前記第2光源により照明された前記被読取面を撮像する撮像部と、を備え、前記第1光源及び前記第2光源は、前記被読取面の正面領域の外側に配置されており、かつ、前記第2光源が、前記第1光源と比べて、前記被読取面から垂直方向に離れて配置されている。
【0015】
この構成により、読取装置に読取処理用の第1光源と表示用の第2光源が設けられる。第1光源は、例えば赤外光源であり、第2光源は例えば光源である。本発明によれば、第1光源を被読取面に近づけて配置することにより、放射角が狭い第1光源であっても、被読取面上の必要な領域を照射でき、読取能力を確保できる。また、第2光源を第1光源よりも被読取面から遠くに配置することにより、被読取面の場所に依存した第2光源までの距離の違いが小さくなり、照明のムラが小さくなり、良好な表示用画像が得られる。さらに、例えば、読取対象物が光回折構造を有するラミネートで覆われており、読取対象物が載置面から浮き上がっている場合でも、第2光源を被読取面から比較的遠くに配置しているので、意図しない模様が表示用の画像に含まれるのを防止でき、表示された画像が視認しにくくなるのを防止できる。こうして、波長域や放射角が異なる複数種類の光源を用いる場合でも読取対象物を適切に照明でき、かつ、読取対象物が浮き上がっても良好な画像が得られる読取装置を提供することができる。ここで波長域とは光の波長の帯域を示し、単色光では波長域が狭く、白色光では波長域が広い。
【0016】
また、本発明の読取装置において、前記被読取面は、縁部の近傍に位置する縁近傍コードを含み、前記第2光源は複数の第2発光素子からなる第2発光素子列を含み、前記第2発光素子列のうちで前記縁近傍コードに対応した近傍コード位置の第2発光素子が、前記第2発光素子列の他の第2発光素子よりも前記垂直方向に前記被読取面の近くに配置されている。
【0017】
この構成により、被読取面の縁部の近くにコードが存在する場所で第2光源を局所的に読取対象物に近づけてあるので、読取対象物の濡れなどが原因で被読取面の縁部に波状の変形が生じた場合でも、縁部に近いコードが正反射条件で撮影されるのを防ぐことができる。したがって、縁部のコードが白とびで見づらくなるのを防ぐように照明を適切に行うことができる。
【0018】
また、本発明の読取装置では、前記第1光源が複数の第1発光素子からなる第1発光素子列を含み、前記近傍コード位置の前記第2発光素子が、前記複数の第1発光素子に隣接して配置されている。
【0019】
この構成により、第2光源を局所的に読取対象物に近づけた構成を好適に実現でき、縁部の白とびを防ぎ、コードが適切に写った画像を取得することができる。
【0020】
また、本発明の読取装置では、前記縁近傍コードが前記被読取面の縁部の端部に設けられており、前記近傍コード位置の前記第2発光素子が、前記第2発光素子列の端部に位置している。
【0021】
この構成では、コードが被読取面の縁部の端部、すなわちコーナー部に位置している。コーナー部では変形の影響が大きくなる。しかし、本発明によれば第2光源を局所的に被読取面に近づけることにより、コーナー部の白とびを適切に防止できる。
【0022】
また、本発明の読取装置では、前記第1光源が赤外光源であり、前記第2光源が可視光源である。この構成により、赤外光源を用いて読取処理のための画像が得られ、可視光源を用いて表示用の画像が得られる。赤外光源と比べて、可視光源は、波長域が広く、放射角も広い。このような複数種類の光源を用いる場合でも読取対象物を適切に照明でき、かつ、読取対象物が浮き上がっても良好な画像が得られる。
【0023】
また、本発明の読取装置では、前記読取対象物がパスポートである。この構成により、読取対象物がラミネート等のカバーで覆われたパスポートである場合でも、第1照明光及び第2照明光による照明を適切に行うことができ、読取対象物が浮き上がっても良好な画像が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上記のように第1光源と第2光源を適切に配置することにより、波長域や放射角が異なる複数種類の光源を用いる場合でも読取対象物を適切に照明でき、かつ、読取対象物が浮き上がっても良好な画像が得られるという効果を有する読取装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係る読取装置について、図面を用いて説明する。
【0026】
本実施の形態では、読取対象物が帳票またはカードであり、特に、帳票の一例としてのパスポートがあり、カードの一例としては飛行機の搭乗整理券(ボーディングカード)がある。また、第1光源が赤外光源であり、第2光源が可視光源であり、特に白色光源である。
【0027】
本発明の実施の形態に係る読取装置を図1〜図4に示す。図1〜図3は断面図であり、図4は斜視図である。
【0028】
まず、図4を参照すると、読取装置1は、略直方体のハウジング3を有しており、ハウジング3の上面に載置面5が設けられている。載置面5は透明なガラス板である。載置面5は、読取対象物であるパスポート7を読取のために配置する場所であり、本発明の対象配置部に相当する。また、ハウジング3には、互いに直角な突当部41、43が設けられている。突当部41、43は突当壁を有している。パスポート7の直角な2辺が突当部41、43に突き当てられ、これによりパスポート7が載置面5上で位置決めされる。
【0029】
図5はパスポート7を概略的に示している。パスポート7は、上述のように帳票の一種であり、複数の用紙が中央で綴じられた構成を有する。パスポート7は被読取ページ9を有し、被読取ページ9は、綴じ部51に平行な長縁53と、綴じ部51に垂直な短縁55とを有する。長縁53及び短縁55は、長方形である被読取ページ9の長辺及び短辺に相当する。被読取ページ9には、写真57やコード59が設けられている。コード59は、読取装置1により読み取られるべき文字等の列である。パスポート7では、コード59が長縁53に沿って設けられる。パスポート7は、被読取ページ9が下を向くように、載置面5上に置かれる。
【0030】
図1は、図4のラインA−Aで読取装置1を切断した断面図である。図2は、図1と同じ方向から見たと光源配置を示す図であり、図3は、図2を矢印Bの方向から見たときの光源配置を示す図である。
【0031】
図1に示されるように、載置面5の下方にはミラー11が設けられており、ミラー11の横方向にカメラ13が設けられている。カメラ13は本発明の撮像部に相当する。カメラ13は、ミラー11の反射を利用し、パスポート7を下方から撮像する。カメラ13が赤外光画像と可視光画像の両方を撮影してよい。あるいは、赤外光画像と可視光画像が別々のカメラで撮像されてもよい。この場合は、撮像部が複数のカメラで構成される。
【0032】
また、図1〜図3に示されるように、読取装置1は、ハウジング3内に赤外光源21及び白色光源31を有する。赤外光源21は赤外光LED列23で構成されており、赤外光LED列23は複数の赤外光LED25a〜25eからなる。また、白色光源31は白色LED列33で構成されており、白色LED列33は複数の白色LED35a〜35fからなる。赤外光LED25a〜25e及び白色LED35a〜35fは基板45に取り付けられている。
【0033】
図2に示されるように、赤外光源21(赤外光LED列23)及び白色光源31(白色LED列33)は、被読取ページ9の正面領域の外側であって、両方の短縁55の外側に配置されている。
【0034】
また、図1〜図3に示されるように、基本的には赤外光源21(赤外光LED列23)と比べて、白色光源31(白色LED列33)が、被読取ページ9から垂直方向に離れて配置されている。ここで、垂直方向は、載置面5に置かれた被読取ページ9に垂直な方向であり、すなわち、載置面5に垂直な方向である。本実施の形態では、被読取ページ9から赤外光源21までの垂直方向の第1距離D1と比べて、被読取ページ9から白色光源31までの垂直方向の第2距離D2が大きい(図3)。
【0035】
ただし、白色LED列33のうちで、綴じ部51から最も遠い一番端の白色LED35fは、例外的に、他の白色LED35a〜35eよりも垂直方向に被読取ページ9の近くに配置されている。具体的には、一番端の白色LED35fは、赤外光LED列23における一番端の赤外光LED25eの隣に配置されている。
【0036】
次に、本実施の形態に係る読取装置1の動作を説明する。まず、使用者により、被読取ページ9が下を向くようにして、パスポート7が載置面5に載置される。パスポート7の長縁53及び短縁55が突当部41、43に突き当てられて、パスポート7が位置決めされる。そして、使用者の操作に応答して、被読取ページ9が撮像される。
【0037】
読取処理を行う場合、赤外光源21により赤外光が被読取ページ9に照射され、カメラ13により赤外光画像が生成される。赤外光画像は、読取処理用の画像であり、本発明の第1の画像に相当する。そして、赤外光画像が図示しない読取処理部によって処理されて、文字等のコードが認識される。赤外光画像では、背景画像が写りにくくなり、認識すべき文字等のコードのコントラストが強くなる。したがって、読取処理を高精度に行うことができる。読取処理部はコンピュータで構成されてよい。また、読取処理部は読取装置1の外部に設けられてもよい。
【0038】
また、表示用の画像を取得する場合、白色光源31により白色光が被読取ページ9に照射され、カメラ13により可視光画像が生成される。そして、可視光画像が、図示しないモニタに出力され、表示される。可視光画像は本発明の第2の画像に相当する。
【0039】
次に、本実施の形態における赤外光源21及び白色光源31の配置について、更に詳細に説明する。
【0040】
まず、被読取ページ9から赤外光源21までの第1距離D1の設定について説明する。赤外光源21は、例えば、図5に示されるコード59を読み取る。コード59は、被読取ページ9の長縁53に沿って設けられている。
【0041】
これに対して、赤外光源21の赤外光LED25a〜25eは、波長域が狭く、放射角も狭い。放射角は、既に述べたように、照明光の明るさが所定レベル以上である範囲である。放射角は、例えば、正面方向の明るさを基準値として、明るさが基準値に対して所定の割合以上である範囲の角度と定義される。放射角が狭いため、第1距離D1が大きく、赤外光源21が被読取ページ9から遠いと、赤外光源21から遠い領域は照射できるが、赤外光源21に近い領域を照射できなくなり、読取能力が低下してしまう。そこで、第1距離D1は、赤外光源21に近い領域を含むコード59の全体を照射でき、読取能力を確保できる大きさに設定される。
【0042】
次に、白色光源31の配置について説明する。白色光源31の配置は、以下の(1)〜(3)を考慮して設定されている。
【0043】
(1)まず、白色光源31の位置と方向は、正反射条件を避けるように設定されている。正反射条件は、既に説明したように、撮像の方向が照明光の正反射の方向に一致することをいう。正反射条件で被読取ページ9を撮像すると、反射光が強すぎて、いわゆる白とびが生じ、良好な画像が得られない。本実施の形態では、白色光源31が被読取ページ9の正面領域の外側に配置されており、横方向から被読取ページ9を照明する。これにより、入射角が大きく設定され、正反射条件が避けられ、白とびも回避される。
【0044】
(2)また、白色光の明るさは、白色光源31からの距離によって大きく変化する。被読取ページ9から白色光源31の第2距離D2が小さいと、被読取ページ9の位置によって白色光源31までの距離が異なり、照明のムラが生じ、画像にもムラが生じる。具体的には、被読取ページ9の中央部分が、両側の白色光源31から遠いため、薄暗くなる。そこで、第2距離D2は、ムラを低減でき、必要な画質が得られる大きさに設定されている。その結果、第2距離D2は第1距離D1より大きく設定され、白色光源31が赤外光源21よりも被読取ページ9から遠くに位置している。
【0045】
(3)また、パスポート7の被読取ページ9は、透明なラミネートフィルムなどで覆われていることが多く、更に、ラミネートフィルムの表裏又は内部に、偽造検出を目的として、光回折パターンが設けられることも多い。また、パスポート7などの帳票では、縁部の反り(カール)やめくれが生じやすく、そのため、パスポート7は、読取装置1からの浮き上りが生じやすいという性質を有する。
【0046】
このようなパスポート7を照明する場合、波長域の狭い赤外光での照明は影響を受けにくい。しかし、波長域の広い可視光での照明は影響を受ける可能性がある。具体的には、被読取ページ9の近くに白色光源31を設けた場合に、ラミネートやその回折構造の影響で、撮像画像に虹色などの意図しないパターンが現れ、良好な画像が得られず、モニタに表示された画像が視認しにくくなる可能性がある。そこで、本実施の形態では、パスポート7の紙面が載置面5から変形等で浮いている場合でも、意図しない模様が画像に現れにくい大きさに、白色光源31の第2距離D2が設定されている。その結果、第2距離D2は第1距離D1より大きく設定され、白色光源31が赤外光源21よりも被読取ページ9から遠くに位置している。
【0047】
なお、上記の紙面の浮きを避けるために、従来、コピー機などは、読取対象物を押さえるカバーを備えている。しかし、パスポート7の読取は、空港の入出国審査などで行われるため、迅速性が求められる。そのため、いちいちカバーでパスポート7を押さえるのでは、作業に時間がかかる。これに対して、図1に示されるように、本実施の形態の読取装置1は、押さえカバーを設ける必要が無く、パスポート7を載置面5に短時間でセットすることができる。
【0048】
次に、図6を参照し、白色光源31における端部の白色LED35fの配置について説明する。白色LED35fの配置は、被読取ページ9のコード59の位置と関係している。コード59は、前述したように、被読取ページ9の長縁53の近くに、長縁53に沿って設けられている。そして、コード59の端は、被読取ページ9の短縁55の近傍まで達しており、被読取ページ9のコーナー部に位置している。
【0049】
白色LED35fは、白色LED列33のうちで一番端に位置しており、その位置は、列方向にてコード59と対応している。この白色LED35fは、白色LED列33の他の白色LED35a〜35eよりも高い位置、すなわち、垂直方向に被読取ページ9の近くに配置されている。具体的には、白色LED35fは、赤外光LED列23と同じ高さにある。このような配置により以下の利点が得られる。
【0050】
パスポート7は、持ち主のポケットに長時間入れられることがあり、持ち主の汗で濡れることがある。汗の濡れとその後の乾燥等、またポケットへの出し入れが原因で、パスポート7の縁部に波状の変形(波打ち)、端部のカール状の変形が生じる。ポケット内では短縁55が底部に位置するので、短縁55にこのような変形が生じやすい。
【0051】
波状の変形が生じると、被読取ページ9と白色光源31の角度が、短縁55に沿って周期的に増減する。角度が大きい場所では、入射角(=出射角)が小さくなり、正反射条件が局所的に成立する。したがって、波状の変形が生じると、短縁55に沿って正反射条件が周期的に成立する。その結果、図6の左半部に示されるように、複数の小さい白とび領域が短縁55に沿って間隔をあけて生じてしまう。そして、波の形状によっては、図示のように、白とび領域がコード59と重なり、コード59の端部が白とび領域に入ってしまう。そのため、白色光源31を用いて生成された画像では、コード59の端部が見づらくなる。特に、コード59の端の1〜2文字程度が見づらくなりやすい。
【0052】
コード59は、赤外光源21を用いた自動読取の対象である。しかし、白色光源31を用いた可視光画像でも、読取結果の確認などのために、コード59の全体が表示される必要がある。そのため、上記のような白とび現象を防止する必要がある。
【0053】
このような目的を達成するため、本実施の形態では、コード59と対応する位置にある白色LED35fを、局所的に、被読取ページ9の近くに配置している。これにより、コード59の位置では、白色光の入射角(=出射角)が他の場所より大きくなる。そのため、変形が生じて被読取ページ9の隅部の角度が変わっても、入射角が小さくなりすぎず、正反射条件を避けることができる。その結果、図6の右半部に示されるように、コード59に対応する位置に白とびが生じるのを避けることができる。
【0054】
なお、白色LED35fを被読取ページ9に近づけた場合、白色LED35fの照射範囲が狭まるので、照度ムラが懸念される。しかし、本実施の形態では、局所的に白色LED35fのみの位置を変えている。他の白色LED35a〜35eが、広い放射角で被読取ページ9の全域に照射されるので、画像の確認に影響する程の照度ムラは生じない。
【0055】
また、図6に示されるように、コード59が設けられていない場所では、白とびが残っている。しかし、コード59が書かれている領域以外では重要度の高い情報(たとえば顔写真等)は紙面の汚れ変形を嫌って紙面中央に近い場所に示されている。そこで、本実施の形態では、重要度の高い情報が書かれている可能性が低い領域の白とびをある程度許容しつつ、変形が生じやすいコード59の領域の良好な画像を取得している。
【0056】
次に、本実施の形態の変形例を説明する。上記のコード59は、本発明の縁近傍コードの一例である。本発明において、縁近傍コードは、読取対象物の縁部の近傍に位置するコードである。より詳細には、縁近傍コードは、表示用の画像を得るための光源側の縁部の近傍に位置するコードであり、コードの少なくとも一部が縁部の近傍に位置する。読取対象物がパスポートである場合は、上記のように縁近傍コードが縁部の端部に位置しており、一番端の第2発光素子が被読取面に近づけられる(第2発光素子は、表示用の照明光を発する発光素子である)。しかし、読取対象物の種類に応じて、縁近傍コードの位置などが異なり、それに応じて光源配置も異なってよい。
【0057】
例えば、縁近傍コードが縁部の中央に位置してよい。この場合、縁近傍コードに応じて、縁部の中央に対応する第2発光素子が、読取対象物に近づけられる。
【0058】
また、一つの縁近傍コードのために、複数の第2発光素子が読取対象物に近づけられてもよい。言い換えれば、本発明の範囲内で、少なくとも1つの第2発光素子が読取対象物に近づけられる。被読取面に近づけられるべき第2発光素子の数は、素子間隔とコード幅に応じて好適に決定される。
【0059】
また、縁近傍コードは1箇所でなくてよい。複数の縁近傍コードが設けられてよい。この場合、複数の第2発光素子が複数の位置でそれぞれ読取対象物に近づけられてよい。
【0060】
また、複数の縁近傍コードでは、目的、意味、用途、重要性等が異なり得る。そこで、必要な縁近傍コードに対応する第2発光素子の配置のみが変更されてよい。
【0061】
上記のように、本実施の形態の範囲で各種の変形が可能である。しかし、パスポート7は、飛行中などに持ち主のポケットに入れられることが多く、波状の変形が生じやすい。しかも、パスポート7は、被読取ページ9のコーナー部に達するコード59を有している。そして、コーナー部では大きな変形が生じやすく、白とびが生じやすい。したがって、パスポート7では、本発明の利点が顕著に得られる。
【0062】
以上に本発明の実施の形態に係る読取装置1について説明した。本実施の形態では、第1光源が赤外光源21であり、第1照明光が赤外光であり、第1波長域及び第1放射角は、赤外光源21の赤外光の波長域及び放射角である。更に、第1発光素子列及び第1発光素子が、赤外光LED列23及び赤外光LED25a〜25eである。また、第2光源が、可視光源の一例としての白色光源31であり、第2照明光が白色光であり、第2波長域及び第2放射角は、白色光源31の白色光の波長域及び放射角である。更に、第2発光素子列及び第2発光素子が、白色LED列33及び白色LED35a〜35fである。また、本実施の形態では、読取対象物がパスポート7であり、被読取面が被読取ページ9であり、対象配置部が載置面5である。
【0063】
本実施の形態によれば、読取装置1に赤外光源21と白色光源31が設けられる。白色光源31は、赤外光源21より広い波長域及び赤外光源21より広い放射角を有する。本実施の形態では、赤外光源21及び白色光源31は、被読取面の正面領域の外側に配置されており、かつ、白色光源31が、赤外光源21と比べて、被読取面から垂直方向に離れて配置される。赤外光源21を被読取面に近づけて配置することにより、放射角が狭い赤外光源21であっても、被読取面上の必要な領域を照射でき、読取能力を確保できる。また、白色光源31を赤外光源21よりも被読取面から遠くに配置することにより、被読取面の場所に依存した赤外光源21までの距離の違いが小さくなり、照明のムラが小さくなり、良好な表示用画像が得られる。さらに、例えば、読取対象物が光回折構造を有するラミネートで覆われており、読取対象物が載置面から浮き上がっている場合でも、白色光源31を被読取面から比較的遠くに配置しているので、意図しない模様が表示用の画像に含まれるのを防止でき、画像が視認しにくくなるのを防止できる。こうして、波長域や放射角が異なる複数種類の光源を用いる場合でも読取対象物を適切に照明でき、かつ、読取対象物が浮き上がっても良好な画像が得られる読取装置を提供することができる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、被読取面は縁近傍コードを含む。縁近傍コードは、読取対象物が対象配置部に配置されたときに第2光源側に位置する縁部であり、上記の実施の形態では縁近傍コードがコード59である。白色光源31が、複数の白色LED35a〜35fからなる白色LED列33を含む。そして、白色LED列33のうちで、縁近傍コードに対応した近傍コード位置の白色LED35fが、白色LED列33の他の白色LED35a〜35eよりも垂直方向に被読取面の近くに配置されている。これにより、被読取面の縁部の近くにコード59が存在する場所で白色光源31を局所的にパスポート7に近づけて配置される。したがって、パスポート7の濡れなどが原因で被読取面の縁部に波状の変形が生じた場合でも、縁部に近いコード59が正反射条件で撮影されるのを防ぐことができ、縁部のコード59が白とびで見づらくなるのを防ぐように照明を適切に行うことができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、赤外光源21が複数の赤外光LED25a〜25eからなる赤外光LED列23を含み、近傍コード位置の白色LED35fが、複数の赤外光LED22〜25eに隣接して配置されている。上記の実施の形態では、白色LED35fが、赤外光LED25eの隣であって、赤外光LED列23の外に配置されている。白色LED35fは、隣接する2つの赤外光LEDの間に配置されてもよい。このような構成により、白色光源31を局所的に読取対象物に近づけた構成を好適に実現でき、縁部の白とびを防ぎ、コード59が適切に写った画像を取得することができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、コード59(縁近傍コード)が、被読取面の縁部の端部、すなわちコーナー部に設けられている。そして、コード59の位置に対応して、近傍コード位置の白色LED35fが、白色LED列33の端部に位置している。コーナー部では変形の影響が大きくなる。しかし、本実施の形態によれば白色LED35fを局所的に被読取面に近づけることにより、コーナー部の白とびを適切に防止できる。
【0067】
また、本実施の形態によれば、第1光源が赤外光源21であり、第2光源が白色光源31である。この構成により、赤外光源21を用いて読取処理のための画像が得られ、白色光源31を用いて表示用の画像が得られる。赤外光源21と比べて、白色光源31は、波長域が広く、放射角も広い。このような複数種類の光源を用いる場合でも読取対象物を適切に照明でき、かつ、読取対象物が浮き上がっても良好な画像が得られる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、読取対象物がパスポート7である。この構成により、読取対象物がラミネート等のカバーで覆われたパスポート7である場合でも、赤外光及び白色光による照明を適切に行うことができ、読取対象物が浮き上がっても良好な画像が得られる。
【0069】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明した。しかし、本発明は上述の実施の形態に限定されず、当業者が本発明の範囲内で上述の実施の形態を変形可能なことはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明にかかる読取装置は、上述のように第1光源及び第2光源の配置を異ならせることにより、波長域や放射角が異なる複数種類の光源を用いる場合でも読取対象物を適切に照明でき、かつ、読取対象物が浮き上がっても良好な画像が得られるという効果を有し、帳票読取装置等として有用であり、特にパスポート読取装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態における読取装置の断面図
【図2】本発明の実施の形態における読取装置の断面図であって、光源配置を示す図
【図3】本発明の実施の形態における読取装置の断面図であって、光源配置を示す図
【図4】本発明の実施の形態における読取装置の斜視図
【図5】読取対象物であるパスポートの被読取ページを示す図
【図6】パスポートに波状の変形が生じたときのコード位置の白とびを防ぐ本発明の原理を示す図
【符号の説明】
【0072】
1 読取装置
5 載置面
7 パスポート
9 被読取ページ
11 ミラー
13 カメラ
21 赤外光源
22 赤外光LED列
25a〜25e 赤外光LED
31 白色光源
32 白色LED列
35a〜35f 白色LED35a
51 綴じ部
53 長縁
55 短縁
59 コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被読取面を有する読取対象物が配置される対象配置部と、
読取処理に用いる第1の画像を取得するために第1波長域と第1放射角とを有する第1照明光を前記被読取面に照射する第1光源と、
表示用を含む用途に用いる第2の画像を取得するために、前記第1波長域より広い第2波長域及び前記第1放射角より広い第2放射角を有する第2照明光を前記被読取面に照射する第2光源と、
前記第1光源及び前記第2光源により照明された前記被読取面を撮像する撮像部と、
を備え、前記第1光源及び前記第2光源は、前記被読取面の正面領域の外側に配置されており、かつ、前記第2光源が、前記第1光源と比べて、前記被読取面から垂直方向に離れて配置されていることを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記被読取面は、縁部の近傍に位置する縁近傍コードを含み、
前記第2光源は複数の第2発光素子からなる第2発光素子列を含み、前記第2発光素子列のうちで前記縁近傍コードに対応した近傍コード位置の第2発光素子が、前記第2発光素子列の他の第2発光素子よりも前記垂直方向に前記被読取面の近くに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記第1光源が複数の第1発光素子からなる第1発光素子列を含み、前記近傍コード位置の前記第2発光素子が、前記複数の第1発光素子に隣接して配置されていることを特徴とする請求項2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記縁近傍コードが前記被読取面の縁部の端部に設けられており、前記近傍コード位置の前記第2発光素子が、前記第2発光素子列の端部に位置していることを特徴とする請求項2又は3に記載の読取装置。
【請求項5】
前記第1光源が赤外光源であり、前記第2光源が可視光源であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の読取装置。
【請求項6】
前記読取対象物がパスポートであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−200186(P2010−200186A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44995(P2009−44995)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】